JPWO2017135195A1 - アレルギー症状の予防又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

水溶性基剤と、前記水溶性基剤に溶解又は分散して含まれる前記アレルギー症状の予防又は治療に有用な有効成分と、を備える、製剤とする。本製剤を経粘膜投与することで、緊急性が高いときであっても、ひるむことなく、簡易にかつ確実に有効成分を投与することができる。

Description

本明細書は、アレルギー症状の予防又は治療剤に関する。
食物、薬物、花粉、ダニ、ハウスダスト等の日常的に存在する物質が、ヒトにとってアレルゲンとなり、アレルギー症状を引き起こす疾患がアレルギー疾患である。代表的なアレルギー疾患としては、食物アレルギー、薬物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息等が挙げられる。
アレルギー疾患の原因となるアレルギー反応のなかでも、アレルゲンが体内に侵入直後から数時間以内でアレルギー症状を引き起こすアレルギー反応は、I型(即時型)に分類される。多くのアレルギー疾患が、この即時型に分類される。
即時型アレルギー反応のなかでも、最も重症なものとしてアナフィラキシーがある。アナフィラキシーは、極めて短時間のうちに全身性でアレルギー症状が現れたり、複数のアレルギー症状が同時に現れたりなどする。さらに、血圧や意識レベルが低下したり呼吸困難になるなどのショック症状が現れたときは、アナフィラキシーショックと称する。アナフィラキシーやアナフィラキシーショックが現れたときには、速やかに適切な処置や治療をしないと生命に危険が生じる場合がある。
アナフィラキシーの症状が比較的軽い場合であって、皮膚や粘膜症状の場合には、抗ヒスタミン薬、呼吸器症状には気管支拡張薬のほか経口副腎皮質ステロイド薬等が用いられる。さらに、咽頭・下気道の呼吸器症状、激烈な消化器症状、ショック症状が一つでもある場合、もしくは過去にアナフィラキシーの既往がある場合や症状の進行が激烈な場合には、アナフィラキシーショックを疑い、アドレナリン自己注射薬を投与するべきとされている。例えば、アドレナリン自己注射薬としては、抗うつ剤との合剤が開示されている(特許文献1)。
特表2015-506907号公報
アナフィラキシーやアナフィラキシーショックには種々の対応策が存在する。しかしながら、それでも、アナフィラキシーショック等で死亡する患者は減少傾向にはない。これは、アドレナリン自己注射薬を自己投与することが困難である場合があるほか、周囲の家族や教職員による投与判断が困難であること、注射に対する恐怖感・抵抗感等が挙げられる。また、注射薬の投与に対する熟練度が低く、確実に投与できるとは限らないこと等が挙げられる。さらに、アドレナリン自己注射薬は、アナフィラキシーの可能性の高い人しか処方されず、その被処方者のみしか使用できない。このため、過去にアナフィラキシーを起こした事のないものが初めてアナフィラキシーに陥った場合、緊急処置を取ることができない場合もある。さらに、自己注射薬は、その投与のために所定の教育や訓練も必要となる。さらにまた、アナフィラキシー等の可能性の高い患者は、アドレナリン自己注射薬を常に携帯しておく必要がある。
本明細書は、アナフィラキシー及びアナフィラキシーショックを含むアレルギー症状に対応して速やかでかつ簡易な投与に適したアレルギー症状の予防又は治療剤を提供する。
本発明者らは、投与に対する抵抗性がなく簡易かつ確実にしかも速やかにアドレナリンなどを投与できる投与形態として、水溶性基剤に有効成分を含有する製剤形態とすることで、投与の容易性及び確実性のほか、全身循環性及び速効性を確保することができるという知見を得た。これらの知見に基づき、本明細書は以下の手段を提供する。
本製剤に適用されるアプリケータの一例を示す図である。 本製剤に適用されるアプリケータの他の一例を示す図である。 アドレナリン含有フィルム製剤(80mg/単位)を、ウサギ(雄)に投与したときの、血漿アドレナリン濃度及び血圧の経時変化を示す図である。
本明細書の開示は、アレルギー症状の予防又は治療剤に関する。本明細書に開示されるアレルギー症状の予防又は治療剤(以下、単に本治療剤という。)は、水溶性基剤と、当該水溶性基剤に溶解又は分散して含有されるアレルギー症状の予防又は治療に有効な有効成分とを備えている。本治療剤は、ヒトを含む霊長哺乳類のほか、イヌ、ネコ、ウサギなどの愛玩動物のほか、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物などの哺乳動物に適用される。
本治療剤は、粘膜を投与経路とする経粘膜投与剤とすることができる。ここで経粘膜投与剤とは、体腔粘膜など、体外から容易にアクセスできる粘膜を投与経路とする剤形という。経粘膜投与剤は、体腔粘膜を投与経路とすることが好ましい。経粘膜投与剤とする本治療剤によれば、アレルギー症状の予防又は治療のために、ヒト患者など哺乳動物個体の口腔粘膜などの粘膜に対して本治療剤を供給するという簡易な方法で、アレルギー症状の予防等のための有効成分を確実に投与できる。こうした投与形態であれば、例えば、患者本人ほか周囲の人間も、投与のための特別な訓練も必要なく、従来の筋肉注射による投与形態に比し投与にひるむことなく、速やかに必要な薬剤の投与を行うことができる。特に、水分も要さず、嚥下の必要もない、なかでも、口腔粘膜などの体腔粘膜への供給という投与形態は、緊急性が要請されるアナフィラキシー又はアナフィラキシーショックの場合において、特に有用である。
本治療剤は、舌下投与とすることが好ましい。舌下投与であると、アレルギー発症個体への投与の際の、投与位置の特定や口腔内保持も容易であるほか、誤飲の可能性も少ないからである。
また、投与方法としては、経口投与、注射(皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射)、舌下投与を含む口腔粘膜投与、直腸内投与、経膣投与、点眼、経鼻投与、吸入(経気管)、経皮投与(湿布剤など)がある。アドレナリンを経口投与した場合、小腸から吸収されたアドレナリンは門脈を介して肝臓を経て全身血へ移行するが、肝臓には多くの酵素が存在し、アドレナリンは代謝されてしまうため、薬理作用が減弱する(初回通過効果)。そのため、アドレナリンを投与する場合は、静脈注射かもしくは自己注射薬のような注射の形態がとられているが、口腔粘膜投与、舌下投与においては、有効成分が毛細血管網から直接体循環に入るため、初回通過効果を受けることなく速やかに組織に移行して吸収され即効性が得られる。また、直腸粘膜投与においても有効成分が直腸粘膜から吸収され下大静脈を経て直接体循環に入るため、初回通過効果を受けることなく速やかに吸収され即効性が得られる。投与方法の簡便さから言えば、舌下投与が好ましい。
本治療剤は、水溶性基剤を備えることができる。この場合には、投与時に、水分を摂取しなくても粘膜等を経由して投与することができる。さらに、本治療剤は、アナフィラキシー症状などを呈した個体の口腔内に投与した場合においても、口腔粘膜上に有効に保持された上、崩壊又は溶解して、有効成分の口腔粘膜からの吸収が速やかに実現される。
さらに、本治療剤の水溶性基剤がフィルム又はタブレットの形状を備える場合、携帯に便利であり、携行性に優れているとともに、投与にも便利である。また、上記のとおり水分の投与もなく、口腔などの体腔粘膜等に供給するだけでよいので、嚥下困難者ほか、幼児から高齢者まで幅広い年代のヒト患者などの個体に対して容易に投与できる。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたアレルギー症状の予防又は治療剤を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
(アレルギー症状の予防又は治療のための製剤)
(水溶性基剤)
本治療剤の一態様は、水溶性基剤と、水溶性基剤に溶解又は分散して含まれるアレルギー症状の予防又は治療に有用な有効成分と、を備えることができる。
本治療剤は、水溶性基剤を含んでいることにより、本治療剤は、各種の体腔等の粘膜上で溶解性又は崩壊性を有することができる。
水溶性基剤が備えることができる形態は、特に限定しない。所定の3次元形状を有する成形体であってもよい。水溶性基剤が成形体であるとき、その3次元形状は特に限定しないで、各種形態、いわゆるフィルム、タブレットなどのほか、その他投与部位となる部位に倣った形状等とすることができる。また、水溶性基剤は、チューブなどの容器やカプセル等に充填されうる不定形ゲル状であってもよい。
例えば、水溶性基剤がフィルム形状を有するフィルム剤の場合、フィルム剤は、適当な厚みで任意の平面形態を有するシート形態とすることができる。厚みは、特に限定するものではないが、体腔内投与を考慮すると、全体として5mm以下程度であることが好ましい。より好ましくは1mm以下程度であることが好ましい。より好ましくは10μm以上800μm以下程度である。また、上限は、さらに好ましくは600μm以下であり、なお好ましくは500μm以下であり、一層好ましくは400μm以下である。また、下限は、好ましくは40μm以上である。さらに好ましくは60μm以上である。また、40μm以上70μm以下であることも好ましい。こうした厚さは、特に、ヒト舌下投与剤として好ましい。
フィルム剤の平面形態も特に限定するものではない。投与対象、投与部位、含有量等に応じて適宜設定される。例えば、正方形状、長方形状、円形状、これらを組み合わせた形状、さらには、なんらかの天然物を模したデザインを有する形状等が挙げられる。大きさ(面積)も特に限定するものではないが、例えば、30mm2以上1500mm2以下程度とすることができる。より好ましくは、下限は40mm2以上であり、さらに好ましくは60mm2以上であり、なお好ましくは80mm2以上であり、一層好ましくは100mm2以上である。また、上限は、より好ましくは1300mm2以下であり、さらに好ましくは1000mm2以下であり、なお好ましくは800mm2以下である。上記面積は、特に、ヒト舌下投与剤として好ましい。
フィルム剤の質量も特に限定するものではないが、5mg以上300mg以下とすることができる。より好ましくは10mg以上100mg以下であり、さらに好ましくは40mg以上80mg以下である。
水溶性基剤がタブレット形状を有するタブレット剤の場合、タブレット剤は、適当な形状及び厚みを有する円柱体や棒状体等の形態、あるいは投与部位となる体腔の形状にならった形態とすることができる。例えば、直腸粘膜を投与経路とする場合には、いわゆる座剤のような紡錘形状とすることができる。タブレットの場合、フィルムに比して、そのサイズについては投与部位等に応じて任意に設定することが可能である。例えば、口腔粘膜投与、舌下投与の場合、厚みは、特に限定するものではないが、全体として10mm以下程度であることが好ましく、より好ましくは5mm以下程度とすることができる。
本治療剤は、2層以上の水溶性基剤層を有する積層構造を有し、少なくとも1つの水溶性基剤層に前記有効成分を含有することもできる。本治療剤は、水溶性基剤が所定の3次元形態を備えるフィルムやタブレットなどの成形体である場合において、こうした積層構造を備えることが好ましい。
本治療剤が、こうした積層構造を有するとき、3層以上の水溶性基剤層を有する積層構造を有していてもよい。好ましくは4層以下、より好ましくは3層以下である。また、有効成分を各層に含んでいてもよいし、特定の1層又は2層以上に含めるようにしてもよい。また、1つの層に2つ以上の有効成分を含めることができるほか、異なる層に異なる有効成分を含めることもできる。また、少なくとも1つの層に有効成分を含むが、他の1又は2以上の層に、本治療剤の有効成分以外の他の有効成分も含めることもできる。
より具体的には、例えば、水溶性基剤がフィルム剤又はタブレット剤であって、かつ3層の積層体の場合、粘膜に近い順から、粘膜付着層、中間層及び外層とすることができる。粘膜付着層は、主として粘膜への付着性を向上させるために用いることができる。また、中間層は、主として有効成分を含有させるのに用いることができる。さらに、外層は、主として崩壊性の調節層やフレーバー等の付与層に用いることができる。なお、必要に応じて、粘膜付着層及び中間層も崩壊性の調節やフレーバーの付与に用いることができる。また、必要に応じていずれかの層、2以上の層又は全層に対して、有効成分の安定性や水溶性基剤の安定性のための成分を付与することができる。また、特に、水溶性基剤の柔軟性や追従性を付与又は向上させる成分(例えば、グリセリンや界面活性剤等)を適宜、いずれかの層、2以上の層又は全層に付与することができる。
水溶性基剤としては、口腔粘膜投与を含む粘膜投与を意図して用いられる公知の水溶性マトリックス材料を適宜選択して用いることができる。水溶性マトリックス材料とは、水溶性を有するとともに、所定の形状又は不定形形状ではあるが固体としての形態に寄与できる材料である。水溶性マトリックス材料としては、概して水溶性ポリマーを用いることができる。かかる水溶性マトリックス材料としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、キサンタンガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カンテン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(別名:セルロースアセテートフタレート、CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、アラビアゴム、ローカストビーンズガム、グアーガム、ジェランガム、カラギーナン(カラゲナン)、デキストリン、デキストラン、アミロース、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、プルラン、キトサン、カルボキシメチルスターチナトリウム、プランタゴ種皮、ガラクトマンナン、オイドラギット、カゼイン、アルギン酸アルキルエステル、ゼラチン、セラック系樹脂(セラック、白色透明セラック)、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、水不溶性メタクリル酸共重合体、メタクリル酸エチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。
水溶性マトリックス材料としては、口腔内に投入した際に唾液の作用により粘着性を発揮して、口腔粘膜に対する高い付着性を発揮するものが好ましく、具体的には、特に、プルラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、デンプン及びこれらの混合物からなる群より選択される基剤が特に好ましく用いられる。
また、水溶性マトリックス材料としては、グルコースを基本構成単位として有し且つゲル化点を有しない多糖類および含カルボン酸若しくは含硫黄多糖類からなる水溶性マトリックス材料を用いるのが好ましい。グルコースを基本構成単位として有する多糖類としては、プルラン、アルギン酸、デンプン等を挙げることができる。また、含カルボン酸若しくは含硫黄多糖類としては、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができる。
水溶性マトリックス材料の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、水溶性基剤における媒体以外の固形成分の全質量に対して10質量部以上60質量部以下とすることができる。上限は好ましくは50質量部以下であり、また、40質量部以下であってもよい。また、下限は、好ましくは15質量部以上であり、20質量部以上である。
(添加剤)
水溶性基剤は、水溶性マトリックス材料のほか、各種の添加剤を含むことができる。添加剤としては、公知の口腔粘膜投与を意図するなどの製剤に一般的に用いられる添加剤を適宜選択して用いることができる。添加剤としては、例えば、乳化剤、可塑剤、ゲル化剤、賦形剤等が挙げられる。
乳化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、大豆由来レシチン等の界面活性剤を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、「サーフホープ」(ショ糖脂肪酸エステルの商品名、三菱化学フーズ社製)、「M−7D」(ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品、三菱化学フーズ社製)、「サンレシチンA−1」(大豆由来レシチンの市販品、太陽化学社製)、ポリソルベート80HM(日油株式会社製)等の市販品を用いることもできる。乳化剤を添加することにより、水溶性マトリックス材料の溶液中の薬物等の分散性を高めたり、製造過程における水溶性基剤形成用溶液を塗工する際の塗工性を確保することができる。上記乳化剤の使用量は、水溶性マトリックス材料の種類や有効成分の種類やその含有量によっても異なるが、例えば、水溶性マトリックス材料100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下程度とするのが好ましく、より好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。
可塑剤としては、特に限定するものではないが、例えば、グリセリン、ソルビトール、ポリグリセリン等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。なかでも、グリセリンが好ましい。また、市販品を用いることもできる。可塑剤は、水溶性基剤に柔軟性を付与することができる。可塑剤の使用量は、水溶性マトリックス材料の種類や有効成分の種類や含有量等によっても異なるが、例えば、水溶性マトリックス材料100質量部に対して5質量部以上15質量部以下とするのが好ましい。
賦形剤としては、特に限定するものではないが、例えば、沈降炭酸カルシウム、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、グルコマンナン、ジャガイモデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロピルセルロースを物理的に変性させたもの、L−HPC)等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。賦形剤の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、水溶性基剤の溶解性や崩壊性の確保の観点から、好ましくは水溶性マトリックス材料100質量部に対して、水溶性基剤の溶解性・崩壊性の観点からは、0.5質量部以上20質量部以下とすることができる。より好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上15質量部以下である。
ゲル化剤は、水溶性基剤の溶解性の調整に用いることができる。ゲル化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、二酸化チタン、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の金属塩を用いることができる。ゲル化剤の使用量は、水溶性マトリックス材料100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下とするのが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下とするのがさらに好ましい。また、水溶性基剤の速やかな溶解及び/又は崩壊ないしは有効成分の速やかな吸収を意図する場合には、同1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらには、0.2質量%以下であり、ゲル化剤を含んでいなくてもよい。
さらに、水溶性基剤は、本治療剤が意図する効果を阻害しない範囲で他の添加剤、たとえば、リン酸カリウム等のゲル化促進剤、麦芽還元糖水飴、ショ糖、乳糖、果糖又はサッカリン、アスパルテーム、アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビア等の甘味料、ペパーミント、ハッカ油、チェリーフレーバー、オレンジ油、ウイキョウ油、エチルマルトール、l−メントール等の香料、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤、酸化チタン等の不透明化剤、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等の着色剤を含むこともできる。
また、本治療剤は、製剤識別性、含有量を明示するほか、緊急性を明確にする等のため、着色及び/又は文字、数字、絵柄などのデザインが付与されていてもよい。例えば、幼児や小児への投与にあたり、味や香りなどのほか、色や絵柄等によって、投与時の不安感等を解消するように構成されていてもよい。特に、水溶性基剤がフィルム形状を有するとき、薬剤自体に種々の表示が可能であるほか、特に、口腔粘膜投与製剤であると、薬剤の投与と同時に、味や香り等により、アレルギー発症個体である幼児や小児に安心感等を与えることができる点において有利である。
着色剤としては、アセンヤクタンニン末、黄色三二酸化鉄、ウコン抽出液、褐色酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、カルミン、カロチン液、β-カロテン、カンゾウエキス、金箔、銀箔、プラチナ箔、黒酸化鉄、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、三二酸化鉄、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、タルク、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑葉抽出エキス、ミリスチン酸オクチルドデシル、薬用炭、リボフラビン、リボフラビン酪酸エルテル、リボフラビン酸エステル、緑茶末、ローズ油などを用いることができる。また、上記したように、アレルギー発症個体に対して、安心感等を付与できる各種フレーバーを含めることもできる。
(有効成分)
有効成分は、アレルギー症状の予防又は治療に有用な成分である。ここで、アレルギー症状とは、概してI型アレルギーに起因する症状をいう。アレルギー症状は、具体的には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、薬物アレルギー、蜂毒アレルギー、血清アレルギー、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック等が挙げられる。
アナフィラキシーは、アレルギー反応が短時間で全身性で複数の臓器(皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器など)に現れる症状である。アナフィラキシーは、あらゆるアレルゲンが誘因となるが、なかでも、薬物、蜂毒などの昆虫の毒液、卵、魚介類、ナッツ類などのある種の食物、アレルギー注射(アレルゲン免疫療法)、天然ゴムなどのラテックスなどが主たる誘因とされている。アナフィラキシーショックは、アナフィラキシーのなかでも、血圧低下や意識障害を生じる状態をいう。
なお、アレルギー症状としては、上記のほか、口腔アレルギー症候群・食物依存性運動誘発性アナフィラキシーなどにより生じるアナフィラキシー及びアナフィラキシーショックが挙げられる。
アレルギー症状の予防又は治療に有効な成分としては、概して、各種の抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬であるβ作動薬、各種のステロイド、グルカゴン、アドレナリン又はノルアドレナリンが挙げられる。本治療剤が、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックの予防又は治療のために用いられる場合、アドレナリン及びノルアドレナリンのいずれか又は双方を有効成分とすることが好ましく、より好ましくはアドレナリンを有効成分とする。有効成分は、目的等に応じて1又は2以上を組み合わせて用いることもできる。なお、アドレナリン及びノルアドレナリンなど、光学異性体が存在する場合には、投与目的に適合する異性体又はラセミ体等を適宜選択して用いることができる。
なかでも、アドレナリンは、フリーのアドレナリンのほか、塩酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩等の各種形態が挙げられる。溶解性、吸収性や安定性等の観点から、好ましくは塩酸塩を用いることができる。
有効成分は、水溶性基剤に溶解又は分散して含まれ、特に、水溶性基剤における存在形態は限定されない。好ましくは、吸収性を考慮すると、水溶性基剤に溶解して含まれる。有効成分の水溶性基剤に対する含有量は特に限定するものではないが、限定しないが、水溶性基剤100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは30質量部である。
本治療剤は、経粘膜投与のために製剤化された剤形を採ることができる。経粘膜投与のための投与経路としては、体腔粘膜が好ましい。体腔粘膜としては特に限定されないで、例えば、口腔粘膜、咽頭部粘膜、鼻腔粘膜、膣粘膜、直腸粘膜等が挙げられる。本治療剤は、より好ましくは、口腔粘膜投与のために製剤化された剤形を採ることができる。本治療剤が含有することができる有効成分の量はアレルギー症状の種類、治療等の目的、投与対象(種、体重、性別、成人か小児か等)によって異なる。
例えば、口腔粘膜投与製剤の場合には、口腔粘膜、なかでも、舌下投与製剤とすることができる。なお、本治療剤を舌下投与製剤とする場合、舌裏粘膜に直接付着保持させるようにしてもよいし、舌裏粘膜に本治療剤が接触しやすいように、舌の下側の下顎表面に本治療剤を付着保持させるようにしてもよい。
本治療剤が舌下投与製剤の場合、本治療剤はそれ自体舌下に投与しやすい形態や投与のためのアプリケータを別途に備えることができる。水溶性基剤がフィルム又はタブレット等の所定の3次元形状を備える製剤(以下、単に、成形製剤という。)の場合、それ自体舌下投与しやすい形態としては、例えば、成形製剤自体を舌下の形状に沿った3次元形態を有するようにしてもよい。
また、舌下投与のためのアプリケータ2としては、例えば、図1に示すように、舌下に差し込みやすい形態を備える挿入部4と、挿入部4上の成形製剤を保持し被覆するカバー部6と、当該挿入部4を舌下に挿入させるための手指で把持する長尺状の把持部8と、を備えることができる。アプリケータ2は、全体としてはヘラ状に形成されている。挿入部4は、例えば、成形製剤を舌裏粘膜へ付着させることを意図する場合には、成形製剤を保持する領域を、舌裏形状に倣って成形製剤を付着させやすいように舌裏側に凹状等となるように形成することができる。一方、成形製剤を舌下下顎粘膜に付着させる場合には、舌下下顎形状に倣って成形製剤を付着させやすいように舌下下顎側に凸状となるように形成することもできる。
カバー部6は、成形製剤が、意図した部位以外に付着しないように成形製剤を覆って挿入部4上に保持する部材である。カバー部6は、少なくとも成形製剤をカバーできる程度の先端部10と、先端部10に連結され、把持部8の長軸に沿って配置される支持部12とを備えることができる。支持部12は、把持部8の長軸にそって、スライド移動可能に設けられており、カバー部10を、成形製剤をカバーする位置から露出させる位置まで、把持部8に溝状などに設けたスライドガイド14によって挿入部4とは反対側に引くことが可能となっている。
こうしたアプリケータ2によれば、アプリケータ2の挿入部4に成形製剤を配置して、カバー部6で成形製剤をカバーして成形製剤を挿入部4上に保持することができる。そして、アプリケータ2の把持部8をもって、アレルギー発症個体の口腔内に挿入部4を差し込で、挿入部4を舌裏又は舌下に配置し、その後、カバー部6を手前に(口腔外に引き出すように)スライド移動させることで、挿入部4上の成形製剤が露出され、成形製剤が舌下口腔粘膜に付着される。なお、挿入部4に対して成形製剤をある程度の強度で保持させることができればカバー部6は必ずしも必要ない。かかるアプリケータ2は、舌下口腔粘膜以外に、口腔粘膜以外に、咽頭部粘膜等にも適宜適用可能である。
なお、アプリケータ2の挿入部4、カバー部6及び把持部8は、シリコーン樹脂などの粘膜を傷付けない柔軟性及び弾性と容易に破損しない強度を備えているプラスチックや木質系材料等で構成されることが好ましい。また、後述するように、成形製剤は、予め、挿入部6の所定位置に備えられていてもよいし、本治療剤とアプリケータ2とをキットとして、使用時に、本治療剤を挿入部6に保持させてもよい。
また、鼻腔粘膜、膣粘膜、直腸粘膜等に適用するのに好ましい形態としては、例えば、図2に示す態様が挙げられる。図2に示すアプリケータ22は、手指を使って鼻腔、膣、肛門に成形製剤を挿入するものである。アプリケータ22は、手指を所定長さにわたってカバーするサック又はバンド状等の挿入部24と、その挿入部24の先端部をカバーするカバー部26とから構成することができる。サック部24の先端には、成形製剤を保持することができるようになっている。カバー部26は、挿入部24先端に保持された成形製剤をカバーし、その後露出させることができるようになっている。具体的には、カバー部26は、図2に示すように、挿入部24の外周面を覆う筒状体とし、その全体を手前(例えば、肛門外など)にスライド移動させることができるようになっている。カバー部26はその全体を手前に引くように構成してもよいし、図2に示すように、ひも状又はスティック状等のガイド28を備えることもできる。挿入部24及びカバー部26は、いずれも柔軟性に富む、ゴムや樹脂などの材料で構成されていることが好ましい。
本治療剤は、アレルギー症状を予防又は治療に用いることができる。本治療剤を適用するアレルギー症状については既に説明したとおりである。アレルギー症状は、アレルゲンに曝露後において、一定時間をおいて引き起こされる。したがって、アレルゲンへの曝露が判明後、速やかに本治療剤を投与することで、アレルギー症状を予防することができる。また、アレルギー症状が引き起こされた後において、本治療剤を投与することで、アレルギー症状を治療し、あるいは治療を補助し、少なくとも症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐことができる。本治療剤は、アレルギー症状のなかでも、投与に緊急性が要求されるアナフィラキシー及びアナフィラキシーショックの予防や補助治療等に有用である。
本治療剤は、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックを発症した個体に対して、特に、医療従事者でない第三者が、緊急的に投与するのに都合がよい。体腔粘膜を投与経路とする場合には、注射剤や吸入剤とは異なり、特別な装置がなくても、直ちに、かつ容易に、しかも、訓練を要することなく躊躇することなく投与することができる。さらに、携行性にも優れており、複数回投与のために複数個携行するにも好適である。特に、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックの治療のためには、舌下投与剤であることが好ましい。舌下投与剤であれば、医療従事者でない第三者であっても、緊急事態に応じて本治療剤を一層容易に適切に投与することができる。
例えば、本治療剤が、ナフィキラシー又はアナフィラキシーショックの予防又は治療を目的とし、アドレナリンを有効成分とする場合において、アドレナリンの種類、投与対象の体重、性別、成人又は小児等によっても異なるが、例えば、舌下投与用の単回投与用としての本治療剤の投与量は、0.001mg以上10mg以下/kg体重として設定することが好ましい。より好ましくは0.01mg以上1mg以下/kg体重であり、さらに好ましくは0.01mg以上0.1mg以下/kg体重であり、なお好ましくは0.05mg以上0.08mg以下/kg体重である。その結果、例えば、体重30kg以上のヒト患者用として、単回投与剤として、アドレナリンなどの有効成分を0.01mg以上300mg以下含有することができる。概して、有効成分は0.1mg以上10mg以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mg以上2.4mg以下である。
また、体重が15kg以上30kg未満のヒト患者に投与するための舌下投与用の単回投与剤としての本治療剤は、アドレナリンなどの有効成分を0.005mg以上150mg以下含有することができる。概して、有効成分は0.05mg以上5mg以下であることが好ましく、より好ましくは0.75mg以上1.2mg以下である。
例えば、アドレナリンを有効成分として、約20mg/kg体重でウサギ舌下に投与した場合、投与後10分でも最大900ng/mlに到達させることができ、遅くても投与後20分以内において最大600〜900ng/mlの血漿アドレナリン濃度を提供することができる。血漿アドレナリン濃度の最大値までの到達時間は、アドレナリンを筋肉注射したときの到達時間(約8分)に匹敵するものであり、舌下投与などの粘膜投与製剤の有効性及び速効性が支持される。
本治療剤は、アレルギー発症個体に対して少なくとも必要な投与量を含む単回投与量毎の製剤形態を採ることができる。すなわち、本治療剤が、成形製剤の場合には、個々の成形製剤を個別包装することができる。また、本治療剤が、成形されていない不定形製剤の場合には、単回投与量を個々に充填したチューブ等の容器に充填することができる。
本治療剤は、個々の単回投与量に容易に分割可能に形成されていてもよい。すなわち、本治療剤が、フィルムやタブレットなどの形状を有する成形製剤の場合には、単位投与量に分割できるような割線のような脆弱部を備えるようにしてもよい。
本治療剤は、また、速やかに舌下投与等を可能とするために、既に説明したアプリケータ2、22等の舌下投与に適したアプリケーション要素を備えていてもよい。投与の際の、投与者の手指への付着を防ぎ、他の部位でなく、舌下などの標的部位に確実に到達させ配置できるように構成されたシート状、ヘラ状、サック状等の各種のアプリケーション要素を準備することができる。かかるアプリケーション要素の最も舌下投与に適した部位に本治療剤を予め付着しておくこともできる。また、別途アプリケーション要素を本治療剤に備えてキットとしてもよい。
本治療剤は、有効成分の安定性を考慮して各種形態の包装形態を採用することができる。本治療剤は、水溶性製剤であるため、包装によってもかさばることがない。また、水溶性製剤であるため、その外装形態や内装形態によって、光やガスなど、有効成分の分解を促進する可能性のある要素を容易に排除することができる。
また、本治療剤は、水溶性製剤であるため、各種の含有量で有効成分を含有する単位投与剤を容易に製造することができる。このため、複数回投与が必要な場合においての投与性や携行性等にも優れている。
本明細書の開示は、さらに、哺乳動物におけるアレルギー症状を予防又は治療するのに有効な量で、前記哺乳動物に本治療剤を投与する工程、を備える、哺乳動物のアレルギー症状を予防又は治療する方法(以下、本治療方法という。)を提供する。
本治療方法におけるアレルギー症状、本治療剤、その投与形態及び投与量等については、好ましい態様を含めて本治療剤についての既述の各種態様を適用することができる。
以下、本明細書の開示を具現化した実施例について説明する。なお、以下の実施例は本明細書の開示を限定するものではない。
(アドレナリン含有水溶性フィルム製剤の製造)
以下に示す組成1及び2のアドレナリン含有水溶性フィルム製剤(40mg製剤/単位及び0.4mg製剤/単位)を、以下に示す工程で製造した。
(調液工程)
無水エタノール32質量部に対し、無水クエン酸を1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを8.5質量部、濃グリセリン(局方)を12質量部加え溶解させる。その後、精製水125質量部加え、乳化させた。更に、甘味料を0.1質量部、結晶セルロースを6質量部、トウモロコシデンプン7質量部加え、溶解及び分散させる。この時、それぞれの原料を加えた後に攪拌し溶液を作製した。
以下、遮光し作業を行った。アドレナリン原末(DL−アドレナリン塩酸塩)40質量部(0.4mg製剤/単位の場合、0.4質量部)加え、攪拌した。次にプルラン25質量部加えアドレナリン溶液を作製した。
(脱泡工程)
調液工程で調製したアドレナリン溶液をアスピレーターを用いて脱泡した。
(コート工程)
脱泡後のアドレナリン溶液を、PETフィルムにコーティングし、乾燥機(乾燥温度50℃)で乾燥させた。その後、所定の重量毎にフィルムを裁断し、組成1及び組成2の単位製剤を得た。
以下に示す組成3に準じて、アドレナリン80mg/単位を含む水溶性フィルム製剤を作製した。この水溶性フィルム製剤を、日本白色種ウサギ(雄)(体重約3.4kg)に投与して、その血漿中のアドレナリン濃度及び血圧を測定した。
ウサギに麻酔薬(ミタゾラム、ブトルファノール、メデトミジン混合薬)を筋注にて投与し、右耳動脈で血圧を測定し、左耳動脈から採血を行った。
麻酔投与から約30分後、血圧が安定したところで、採血を行い(0分)、その後、直ちに、水溶性フィルム製剤(80mg/フィルム)(23.5mg/kg体重)をウサギの舌下に配置し、生理食塩液を滴下した。
その後、投与から5分、10分、15分、20分、30分、40分及び60分経過後に、採血を行い、遠心分離によって得られた血漿をHPLCにより分析して、アドレナリン濃度を測定した。なお、対照として、アドレナリンを含有しないことを除いては、同様に調製した水溶性フィルム製剤をプラセボとして、同程度の体重の日本白色ウサギ(雄)に投与し、同様に、血漿アドレナリン濃度及び血圧を測定した。結果を図3に示す。
図3に示すように、血漿アドレナリン濃度は、投与から10分経過後に、約900ng/mlにまで上昇し、その後概ね低下する傾向であった。また、血圧は、一旦低下する傾向を示した後、徐々に上昇した。これに対して、プラセボを投与した対照ウサギでは、血圧は徐々に低下する傾向を示した。血圧及びアドレナリン血漿濃度の推移の傾向は、アドレナリン筋注0.3mg及びアドレナリン舌下錠40mgの傾向であったが、アドレナリン筋注及び舌下錠が、それぞれ投与後30分でアドレナリン血漿濃度が30ng/ml及び同20分で同25ng/mlであることから、本フィルム製剤によれば、すぐれた吸収性を示していることがわかった(「Epinephrine (adrenaline) absorption from new- generation, taste-masked sublingual tablets: A preclinical study」, J.Allegy. Clin. Immumnol. Vol. 131, Number 1, P. 236-238)。
以上の結果から、アドレナリン含有水溶性フィルムを口腔粘膜(舌下)経由などの経粘膜投与を行うことで、血漿アドレナリン濃度を増大させ血圧を向上させうることがわかった。

Claims (11)

  1. アレルギー症状の予防又は治療のための製剤であって、
    水溶性基剤と、
    前記水溶性基剤に溶解又は分散して含まれる前記アレルギー症状の予防又は治療に有用な有効成分と、
    を備える、経粘膜投与剤である製剤。
  2. 前記水溶性基剤は、フィルム又はタブレットの形状を備える、請求項1に記載の製剤。
  3. 前記製剤は、2層以上の水溶性基剤層を有する積層構造を有し、少なくとも1つの前記水溶性基剤層に前記有効成分を含有する、請求項1又は2に記載の製剤。
  4. 体腔粘膜投与剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
  5. 口腔粘膜投与剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
  6. 舌下投与用である、請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
  7. 前記有効成分は、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、昇圧薬、グルカゴン、及び副腎皮質ステロイドからなる群から選択される1又は2以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。
  8. 前記昇圧薬は、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、フェニレフリン及びエフェドリンからなる群から選択される1又は2以上である、請求項7に記載の製剤。
  9. 前記昇圧薬は、アドレナリンである、請求項8に記載の製剤。
  10. 前記アレルギー症状は、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックであり、前記有効成分は、アドレナリン及びノルアドレナリンから選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の製剤。
  11. 前記アレルギー症状は、アナフィラキシー又はアナフィラキシーショックであり、前記有効成分は、アドレナリン及びノルアドレナリンから選択され、
    舌下投与剤である、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
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