以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
また、本出願では、2016年1月19日に日本国に出願された特許出願番号2016−007529の利益を主張し、当該出願の内容は引用することによりここに組み込まれているものとする。
図1は、測位装置1を示す図である。図1に示すように、測位装置1は、携帯可能な装置として構成されている。このような測位装置1としては、専用の端末装置の他に、スマートホンや携帯電話、タブレットなどが想定される。ただし、ここに挙げた装置に限定されるものではない。
なお、以下の説明では、測位装置1を携帯する者を、「歩行者」と称する。また、歩行者が立ち止まっているとき、当該歩行者の位置は変化しない。その一方で、例えば、立ち止まっている歩行者が測位装置1を所持した腕を振った場合、厳密には、測位装置1の位置は変動する。以下において詳細は省略するが、測位装置1は、測位装置1の位置の細かな移動(歩行者の位置の変動とみなされない位置の移動)をキャンセルするように、測位装置1の位置を求める。したがって、以下の説明において、特に断らない限り、「測位装置1の位置」とは、当該測位装置1を携帯する歩行者の位置であるものとする。
詳細は後述するが、測位装置1は、自機の存在位置を示す位置情報118(図3参照)を取得し、表示する装置として構成されている。そして、測位装置1の存在位置とは、先述のように、測位装置1を所持している歩行者の位置である。したがって、測位装置1は、当該測位装置1を携帯する歩行者の位置を取得し、表示することができる。また、歩行者の位置を継続して記録しつづけることにより、当該歩行者の移動軌跡を記録することもできる。
図1に示すように、測位装置1は、操作部12と表示部13とを備えている。
操作部12は、歩行者が測位装置1に対して様々な指示を与えるための情報を入力するために、当該歩行者によって操作されるハードウェアである。操作部12としては、各種ボタン類、キー、回転式セレクタ、あるいは、タッチパネルなどが該当する。
表示部13は、各種情報を表示することにより出力する機能を有している。すなわち、表示部13は、歩行者が視覚によって知覚する状態で情報を出力するハードウェアである。特に、測位装置1の表示部13は、先述の位置情報118を表示する。したがって、歩行者は、表示部13を視認することにより、自身の存在位置を確認することができる。なお、表示部13としては、例えば、液晶パネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ランプ、あるいは、LEDなどが該当する。
図2は、測位装置1のブロック図である。測位装置1は、すでに説明した操作部12および表示部13の他に、CPU10、記憶装置11、観測装置14および第2測位部15を備えている。
CPU10は、記憶装置11に格納されているプログラム110を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU10は、測位装置1が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。すなわち、測位装置1は、一般的なコンピュータとして構成されている。
記憶装置11は、測位装置1において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置11が測位装置1において電子的に固定された情報を保存する。特に、本実施の形態における記憶装置11は、プログラム110、基準位置情報111、距離情報112、パラメータ情報113、地図情報114および観測情報115を記憶するために使用される。ただし、記憶装置11に記憶される情報は、ここに示すものに限定されるものではない。
記憶装置11としては、CPU10の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、比較的大容量のデータを記憶するハードディスク、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(PCカードやSDカード、USBメモリなど)等が該当する。図2においては、記憶装置11を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置11は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置11は、データを記憶する機能を有する装置群の総称である。
また、現実のCPU10は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU10が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置11に含めて説明する。すなわち、以下の説明では、一時的にCPU10自体が記憶するデータも、記憶装置11が記憶するとして説明する。
プログラム110は、CPU10(コンピュータ)による読み取りが可能な指令の集合である。プログラム110は、記憶装置11を構成する記録媒体のうち、不揮発性の記録媒体に格納される。したがって、測位装置1の電源が切られた場合でも、測位装置1(記憶装置11)からプログラム110が失われることはない。プログラム110は、必要に応じてCPU10によって読み取られ、実行される。
図2に示す基準位置情報111は、基準点における測位装置1の絶対的な位置を示す情報である。基準点とは、測位装置1が存在する地点であって、絶対位置が既知の地点であれば、いつの時点における地点であってもよい。しかし、詳細は後述するが、位置情報118を作成するためには、いずれかの地点における絶対位置が必要となる。したがって、以下の説明では、基準位置情報111は、歩行者が位置情報118を表示するように指示した地点(位置情報118の作成開始を指示した地点)の絶対位置を示す情報であるものとする。測位装置1は、歩行者からの指示に応じて、その時点における測位装置1の存在位置を基準点と定義し、当該基準点の絶対位置を取得して、基準位置情報111として記憶装置11に記憶させるものとする。
パラメータ情報113は、測位装置1が、測位装置1の相対的な位置を求めるために用いる情報である。パラメータ情報113としては、例えば、歩行者の歩幅の値がある。測位装置1は、予め歩行者に当該歩行者自身の身長を入力させて、当該身長から1[m]を減じた値を、歩幅の初期値としてパラメータ情報113とする。ただし、歩行者が、直接、歩幅の値を入力してもよい。また、歩行者による入力がされるまでは、人の歩幅の平均的な値を初期値として記録していてもよい。また、以下の説明において、パラメータ情報113に含まれる歩幅を「歩幅L」と称する。また、測位装置1は、歩幅Lの他に、誤差角θと、伸縮比γとをパラメータ情報113とする。詳細は後述するが、誤差角θの初期値は「0」であり、伸縮比γの初期値は「1」である。
地図情報114は、測位装置1の周囲(ある任意の範囲)の状態を視覚的に表現した画像情報である。詳細は後述するが、測位装置1は、地図情報114に、歩行者が過去に訪れたことがあるか否かを示す情報を含めるものとする。また、地図情報114は、位置情報118とともに表示部13に表示される。
なお、図2に示す距離情報112および観測情報115については後述する。また、図2において図示を省略しているが、測位装置1はタイマを備えており、時間に関する情報を取得し、記憶することが可能である。
観測装置14は、観測情報115を取得する機能を有する装置の総称である。ここに示す例では、測位装置1は、観測装置14として、気圧センサ140、照度センサ141、マイク142、および、運動検出センサ143を備えている。
気圧センサ140は、周囲の気圧を測定して観測情報115として記録する装置である。気圧センサ140により取得される観測情報115によって、測位装置1の鉛直方向における移動を検出することができる。
照度センサ141は、周囲の照度(明るさ)を観測して、観測情報115として記録する装置である。
マイク142は、周囲の音波を電気信号に変換して、音声情報(観測情報115)として記録する装置である。
運動検出センサ143は、測位装置1の動きに関する運動情報116を取得する機能を備えた装置の総称である。ここに示す運動検出センサ143は、ジャイロセンサ144、加速度センサ145および磁気センサ146を備えている。
ジャイロセンサ144は、測位装置1における角速度を測定する。ここに示すジャイロセンサ144は、いわゆる3軸のジャイロセンサとして構成されており、互いに垂直な3つの軸方向回りの角速度を測定し、当該測定値を運動情報116として出力する。
加速度センサ145は、測位装置1における加速度を検出する。加速度センサ145は、測位装置1について定義された3軸に従って表現された出力値を運動情報116として作成する。
磁気センサ146は、周囲の地磁気を検出する。磁気センサ146によって取得された地磁気に関する情報(運動情報116)は、方位を決定するために使用される。
第2測位部15は、測位装置1の絶対位置を示す絶対位置情報150を取得する機能を有している。測位装置1では、CPU10から伝達される制御信号に応じて、第2測位部15が絶対的測位(絶対位置情報150の取得)を行う。すなわち、絶対位置情報150とは、第2測位部15が絶対的測位を行った時点における測位装置1の絶対的な位置を示す情報である。したがって、絶対位置情報150には、当該絶対位置情報150が取得されたときの時間も記録される。なお、以下の説明では、第2測位部15に絶対的測位を実行させるために、CPU10から伝達される制御信号を、「タイミング信号」と称する。
詳細は図示しないが、ここに示す測位装置1は、第2測位部15として、GPS受信部を備えている。言い換えれば、測位装置1は、GPS受信部を第2測位部15として採用可能である。
GPS受信部は、衛星から送信される電波を受信して、受信した信号を解析することにより、受信位置(絶対位置情報150)を取得する。GPS受信部の構成および機能は、従来の技術を適宜採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
以下の説明において、「絶対位置の取得」とは、特に断らない限り、GPS受信部により実行されるものとする。ただし、測位装置1は、CPU10および操作部12によって絶対位置を取得することも可能なように構成されている。
例えば、CPU10は、地図情報114における歩行者の想定ルート上の特徴点(例えば、出発地や曲がり角)と、観測ルート上の特徴点(例えば、開始点や進路変更地点)とを照合する。これにより、CPU10は、当該想定ルート上の特徴点の位置を、当該観測ルート上の特徴点の絶対位置とみなして絶対位置情報150を取得することが可能である。すなわち、状況に応じて、CPU10によって絶対位置情報150を取得するように構成すれば、CPU10が第2測位部15に含まれることとなる。
また、歩行者が操作部12を操作して、自身の存在位置(絶対位置)を入力すれば、操作部12によって絶対位置情報150が取得されることになる。すなわち、状況に応じて、操作部12によって絶対位置情報150を取得するように構成すれば、操作部12が第2測位部15に含まれることとなる。すでに説明したように、基準位置情報111については、このように取得されてもよい。
ただし、第2測位部15を構成する装置としては、これらに限定されるものではない。例えば、ビーコン信号受信機を設けて、外部に設置されたビーコンから送信される信号を受信して絶対位置情報150を取得するように構成してもよい。また、WiFi通信用のアクセスポイントから送信される信号を受信して絶対位置情報150を取得してもよい。あるいは、デジタルカメラ(撮像部)を設けて、絶対位置が既知の被写体(マーカーやコード画像など)を撮像し、絶対位置情報150を取得してもよい。
このように、測位装置1は、GPS受信部以外の構成によっても絶対位置情報150を取得可能なように構成されている。したがって、例えば、GPS測位精度が低下している場合であっても、測位装置1は絶対位置情報150を取得することができる。なお、以下の説明において、絶対位置情報150に示される地点を、「観測点」と称する。
図3は、測位装置1が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。図3に示す第1測位部100、位置演算部101、状況判定部102、タイミング制御部103、データ更新部104、および、補正部105は、CPU10がプログラム110に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
第1測位部100は、観測情報115とパラメータ情報113とに基づいて測位装置1の相対的な位置を示す相対位置情報117を作成することにより、相対位置情報117を取得する。言い換えれば、第1測位部100が相対位置情報117を作成することによって、測位装置1において相対位置情報117が取得される。より詳細に説明すると、第1測位部100は、相対位置情報117の作成に際して、観測情報115に含まれる運動情報116を参照する。逆に言えば、観測情報115に含まれる情報のうち、第1測位部100が相対位置情報117を作成するために用いる情報が運動情報116である。
本実施の形態における測位装置1は、相対位置情報117に基づいて位置情報118を作成すると、当該相対位置情報117を初期化するものとする。すなわち、相対位置情報117は、位置情報118を作成するために一時的に作成される情報である。第1測位部100による相対位置情報117の作成は、自律航法(相対的測位)として、従来の技術を適宜採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
位置演算部101は、基準位置情報111と相対位置情報117とに基づいて位置情報118を演算する。より詳細には、位置演算部101は、基準位置情報111を用いて、相対位置情報117を絶対位置に変換し、位置情報118を作成する。その後は、位置情報118に対する相対的な位置として、新たな相対位置情報117に基づいて新たな位置情報118を演算することにより、位置情報118を更新しつづける。
なお、本実施の形態における測位装置1は、測位装置1の現在の存在位置だけでなく、過去の存在位置も位置情報118に含めて記録しておくものとする。これにより、位置情報118は、基準点から現在までの測位装置1の絶対位置を示す情報となる。また、これらの位置を時系列順に繋げると、基準点から現在位置までの歩行者の歩行軌跡となる。したがって、位置情報118を表示部13に表示することにより、歩行者は、自分の現在の位置だけでなく、例えば、歩行軌跡も確認することができる。
また、位置情報118において、最新の観測点から現在の位置情報118の終点までの区間は、後述する補正部105による位置補正がされていない区間である。以下の説明では、当該区間を「未補正区間」と称する場合がある。未補正区間を構成する各位置は、位置演算部101によって絶対位置に変換されている。しかし、未補正区間における絶対位置は、あくまでも最新の観測点からの相対的な位置である。
また、未補正区間における歩行軌跡の長さは、最新の観測点(直前の絶対的測位を実行した位置)から現在までに歩行者が移動した距離を示す。以下の説明では、当該距離を「移動距離δ」と称する。
状況判定部102は、観測情報115(運動情報116を含む。)に基づいて状況を推定する。さらに、状況推定部102は、推定結果をデータ更新部104に伝達する機能を有している。
本実施の形態における状況判定部102が検出する具体的な状況(相対的測位の精度が低下すると予測される状況)としては、階段を歩行している状況、乗り物(エレベータやエスカレータ、ムービングウォークなど)に乗っている状況、悪路を歩行している状況、地磁気異常の状況、人混みを歩行している状況、および、所持状態としての「手振り状況」である。なお、これらの状況を検出しなかったとき、状況判定部102は、第1測位部100による相対的測位の信頼度が高い状況であると推定する。
歩行者が階段を歩行している状況では、通常の歩行状態とは異なる状況となる。より具体的には、歩行者の歩幅が変化し、設定されている歩幅の値の信頼度が低下すると予測される。したがって、状況判定部102は、歩行者が階段を歩行している状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。
具体的には、状況判定部102は、気圧センサ140によって観測された観測情報115に基づいて、歩行動作において、上下方向(鉛直方向)への移動が閾値以上であるか否かを判定する。そして、上下方向への移動が閾値以上の場合に、階段を歩行していると判定する。また、スロープや坂道などを歩行する場合も、階段を歩行する場合と同様とみなして判定する。なお、上下方向への移動が大きい場合で、かつ、求まる歩幅(後述)が大きい場合には、別の状況と判定する(後述)。
歩行者が乗り物に乗っている状況では、乗り物の動きによって通常の歩行状態とは異なる状況となる。したがって、状況判定部102は、乗り物に乗っている状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。ここでは、歩行動作において利用する乗り物として、エスカレータ、ムービングウォークおよびエレベータを想定する。
具体的には、状況判定部102は、まず、気圧センサ140によって観測された観測情報115に基づいて、気圧の変化を検出することにより、上下方向の移動の有無を判定する。次に、ある期間における移動距離をその間に観測された歩数で除すことにより、その間の歩幅を求め、当該歩幅が想定される人の歩幅より長いか、短いか、あるいは、想定内かを判定する。
これにより、状況判定部102は、上下方向への移動が検出され、かつ、求めた歩幅の値が異常に大きいとき、歩行者がエスカレータに乗っていると判定する。また、状況判定部102は、上下方向への移動が検出され、かつ、求めた歩幅が異常に小さい(移動距離が小さいことを示す)とき、歩行者がエレベータに乗っていると判定する。さらに、状況判定部102は、上下方向への移動が検出されなかったときであって、求めた歩幅の値が異常に大きいとき、歩行者がムービングウォークに乗っていると判定する。また、これらの乗り物に乗っていると判定された時点で、運動情報116に基づいて歩行動作による周期運動が観測された場合、状況判定部102は、歩行者がこれらの乗り物上を歩行していると判定する。
歩行者が悪路を歩行している状況では、当該歩行者は慎重に歩行すると予想される。このような状況では、例えば、歩行者の歩幅が小さくなり、通常の歩行状態とは異なる状況となる。したがって、状況判定部102は、悪路を歩行している状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。
具体的には、状況判定部102は、歩行動作における歩行周期の変動が大きいとき(歩行周期が安定しないとき)に、歩行者が悪路を歩行している状況であると判定する。
なお、状況判定部102は、上記の移動距離や歩行周期などを、観測情報115に基づいて演算により求める。しかし、例えば、第1測位部100が相対位置情報117を作成する過程で求める情報などにより、上記の移動距離や歩行周期などを取得してもよい。この場合、これらの情報は、必要に応じて、第1測位部100から伝達するように構成してもよい。
また、階段の存在位置、エスカレータなどの乗り物の敷設位置、および、悪路の位置は、地図情報114に示されている。したがって、状況判定部102は、位置情報118を参照して地図情報114と照合することにより、歩行者が階段を歩行しているか否か、乗り物を利用しているか否か、あるいは、悪路を歩行しているか否かを判定することも可能である。あるいは、このような判定を併用してもよい。
歩行者の周囲に磁性体が存在し、磁気センサ146によって観測される地磁気が異常となる状況では、絶対方位の取得が困難となり、やはり相対的測位の精度が低下すると予測される。したがって、状況判定部102は、地磁気異常の状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。
具体的には、ジャイロセンサ144により得られる回転角と、磁気センサ146により得られる回転角とを比較する。そして、これらの値の誤差が大きい場合、状況判定部102は、磁気センサ146の出力値が信頼できない状況(地磁気異常の状況)であると判定する。
歩行者が人混みを歩行している状況では、周囲の人を避けるために歩幅が小さくなると予測される。また、頻繁に進路が変更されることが予測されるため、進行方向(方位)に関する誤差も蓄積しやすい。したがって、状況判定部102は、歩行者が人混みを歩行している状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。
具体的には、状況判定部102は、観測情報115(運動情報116)に基づいて、歩行動作における進行方向の変更の頻度が閾値以上か否かを判定する。運動情報116を用いて相対位置情報117を求める過程において、歩行者の進行方向を求める手法は従来より知られている。したがって、状況判定部102は、このようにして得られる進行方向を比較することにより、時々刻々の進行方向の変化を検出することができる。すなわち、進行方向の変更頻度を検出することができる。
また、状況判定部102は、マイク142によって観測された観測情報115(音声情報)を解析して、周囲の話し声などを認識し、雑踏か否かを判定する。さらに、地図情報114が日常的に人混みを形成する場所を特定していれば、状況判定部102が位置情報118と地図情報114とを照合することにより、歩行者が人混みを形成する場所に存在しているか否かを判定することができる。
所持状態とは、測位装置1が歩行者に所持されているときの状態である。例えば、測位装置1がポケットやホルダーに挿入されるようにして歩行者に携帯されているか、あるいは、手に持った状態で所持されているかといった状態が想定される。また、手に所持されている場合でも、所持した手を前後に振りながら歩行している(手振り状態)か、それとも顔の前に保持して歩行している(閲覧状態)かなどの区別も想定される。
測位装置1がポケットやホルダーに挿入されているか否かは、例えば、照度センサ141から出力される観測情報115に応じて判定することができる。
測位装置1が手振り状態で所持されている場合、測位装置1の位置(この場合の位置とは、歩行者の位置とはみなせない位置を含む。)の変動が大きく、通常の歩行状態とは異なる状況となる。したがって、状況判定部102は、所持状態のうち、特に手振り状態となっている状況を、相対的測位の精度が低下する状況として検出する。
具体的には、状況判定部102は、観測情報115のうちの特に運動情報116を参照して、歩行動作を解析することにより、手振り状態を検出する。
タイミング制御部103は、位置情報118と距離情報112とに応じてタイミング信号を生成する。より詳細には、タイミング制御部103は、位置情報118を参照しつつ、移動距離δ(未補正区間の長さ)を求める。そして、移動距離δを監視しつつ、当該移動距離δが距離情報112に示される距離Dtに到達したとき(δ=Dt)にタイミング信号を生成する。また、タイミング制御部103は、生成したタイミング信号を第2測位部15に伝達することにより、第2測位部15に絶対位置情報150を取得させる。
位置情報118における未補正区間を構成する各位置は、相対位置情報117に基づいて求められた位置である。したがって、タイミング制御部103は、相対位置情報117に基づいて移動距離δを演算し、当該移動距離δと距離情報112とに応じて、第2測位部15に絶対位置情報150を取得させる機能を有する。
これにより、測位装置1は、一定の時間間隔ではなく、歩行者の移動距離δに応じて絶対的測位を実行する。したがって、例えば、歩行者が移動することなく立ち止まっている場合、測位装置1は、絶対的測位を行わない。
データ更新部104は、状況判定部102による推定結果に応じて、位置情報118と絶対位置情報150とに基づいてパラメータ情報113を更新する。
相対的測位によって得られた歩行者の位置と、絶対的測位によって得られた歩行者の位置との間に比較的大きな測位誤差が生じている場合、その原因として、相対的測位に使用されたパラメータの異常が考えられる。したがって、このような測位誤差が生じていることを検出した場合、当該測位誤差を縮小させる方向に、パラメータ情報113を変更することが好ましい。
ここで、データ更新部104によってパラメータ情報113を更新する原理の一例を説明する。
詳細な説明は省略したが、第1測位部100は、運動情報116に基づいて時間tの間の歩行者の歩数nを求め、(n×L)/tを演算することにより、歩行者の速さν0を求める。また、第1測位部100は、運動情報116に基づいて歩行者の進行方向φ0を推定しつつ、進行方向φ0と速さν0とに基づいて相対的測位における現在位置を推定する。このようにして、第1測位部100による相対的測位が行われ、相対位置情報117が作成される。
相対的測位により推定された歩行軌跡(移動軌跡)は、現実の歩行軌跡の相似形に近いものとなる。言い換えれば、ジャイロセンサ144や加速度センサ145の測定における蓄積誤差は、そのような形で顕在化する。したがって、例えば、推定された歩行軌跡に対して、回転処理および伸縮処理を施すと、現実の歩行軌跡と一致すると予想される。
すなわち、パラメータ情報113に含まれる誤差角θと伸縮比γとを用いると、現実の進行方向φaおよび速さνaについて、式1および式2が成立する。
φa=φ0+θ ・・・ 式1
νa=γ×ν0 ・・・ 式2
図4は、推定された歩行軌跡および現実の歩行軌跡の一例を示す図である。
図4に示すT1,T2は、それぞれ観測点である。観測点T2は最新の観測点であり、観測点T1は、最新以外の過去の観測点である。なお、本実施の形態では、過去の観測点T1として、前回(直前)の観測点を用いる例で説明する。ただし、過去の観測点T1は、前回の観測点に限定されるものではない。
図4に示す破線L1は相対的測位により推定された歩行軌跡である。また、実線L2は現実の歩行軌跡である。
破線L1を構成する各位置は、観測点T1を用いて絶対位置に変換されており、位置情報118に相当する。すなわち、破線L1は未補正区間における移動軌跡に一致する。また、地点P1は、観測点T2が得られた時間の位置情報118における終点である。言い換えれば、地点P1は相対的測位により、観測点T1からの相対的な位置として推定された現在位置である。
以上のことから、データ更新部104は、絶対位置情報150および位置情報118を参照することにより、観測点T2と、観測点T1および地点P1を参照することができる。
さらに、図4に示す直線L3は、観測点T1と観測点T2とを結んだ直線である。また、図4に示す直線L4は、観測点T1と地点P1とを結んだ直線である。
このような直線L3,L4を定義すると、現実の進行方向φaを求めるために必要となる誤差角θは、直線L3と直線L4とのなす角として求めることができる。また、現実の速さνaを求めるために必要となる伸縮比γは、直線L3,L4の長さをそれぞれd1,d2として、その比により求まる。すなわち、γ=d1/d2である。
本実施の形態におけるデータ更新部104は、上記のように、絶対位置情報150および位置情報118とを参照して、誤差角θおよび伸縮比γを求めて、パラメータ情報113を更新する。
ただし、データ更新部104によるパラメータ情報113の更新は、上記原理に限定されるものではない。すなわち、その他の従来の技術を適宜採用してもよい。
しかし、このようなパラメータ情報113の更新は、いわゆるフィードバック制御によって、将来推定される相対位置を補正することに相当するため、状況によってはパラメータ(ここに示す例では誤差角θおよび伸縮比γ)の変更が、かえって測位誤差を維持する(あるいは拡大させる)こともある。
例えば、歩行者の歩幅が小さくなる異常な状況(例えば、階段昇降など)が生じている場合、パラメータ情報113に記録されている通常の歩幅Lを用いて相対位置情報117を求めると、絶対的測位による位置と相対的測位による位置との間に大きな測位誤差を生じる。そして、このような大きな測位誤差が検出されたことにより、直ちに伸縮比γを小さい値に変更すると、異常な状況が通常の状況に戻った後も、変更後の遅い速さνaによって相対位置情報117を求めることになる。そうすると、パラメータ情報113を調整したにもかかわらず、絶対的測位による位置と相対的測位による位置との間の測位誤差は、依然として解消されないことになる。
したがって、データ更新部104は、相対的測位に使用するパラメータの異常が想定される場合において、さらに、状況判定部102による推定結果を参照して、パラメータ情報113を更新する。ここでデータ更新部104がパラメータ情報113を更新する状況とは、測位誤差が生じており、かつ、測位誤差を生じた原因がパラメータ異常以外にみあたらない状況である。
本実施の形態における測位装置1では、データ更新部104が、絶対位置情報150と位置情報118とを比較することにより、測位誤差が生じているか否かを判定する。しかし、当該判定を状況判定部102が実行してもよい。
本実施の形態におけるデータ更新部104は、測位誤差が生じているにもかかわらず、相対的測位の精度が低下する状況が検出されない状況を、パラメータ異常の状況と判定してパラメータ情報113を更新する。具体的には、階段を歩行している状況、乗り物に乗っている状況、悪路を歩行している状況、地磁気異常の状況、人混みを歩行している状況、所持状態が手振り状態の状況のうちのいずれでもない状況である。すでに説明したように、これらの状況は、状況判定部102によって推定され、データ更新部104に伝達される。
また、データ更新部104は、状況判定部102による推定結果に応じて、記憶装置11に記憶された距離情報112を更新する機能も有している。
すでに説明したように、測位装置1は、移動距離δ(未補正区間の長さ)が距離Dt(距離情報112)となったときに、タイミング制御部103によりタイミング信号を生成し、第2測位部15により絶対的測位を実行する。したがって、データ更新部104が距離情報112(距離Dt)を動的に変更することにより、測位装置1における絶対的測位のタイミングを動的に変更することができる。
データ更新部104は、第1測位部100による相対的測位の精度が低下する状況を状況判定部102が検出した場合に、距離Dtを短縮する方向に距離情報112を更新する。
なお、データ更新部104は、絶対位置情報150に示される位置と、当該絶対位置情報150に対応する位置情報118における位置(相対的測位による現在位置)とを比較して、それらの位置の誤差が大きいときを、相対的測位の精度が低下する状況として距離情報112を更新してもよい。図4に示す例で説明するならば、地点P1と観測点T2との距離が閾値を超える状況か否かを判定するようにしてもよい。
また、本実施の形態におけるデータ更新部104は、検出された状況(相対的測位の精度が低下する状況)にかかわらず、距離情報112から一定の値(調整幅)を減ずることにより、距離情報112を更新するものとする。ただし、検出された状況に応じて、データ更新部104による調整幅を変更してもよい。
ここで、距離Dtは、「0」以上の値であり、下限値としては「0」も想定される。しかし、測位装置1において、距離Dtが「0」とは、歩行者が移動しない場合にも絶対的測位を行うことを意味し、絶対的測位を常時実行しつづけることを意味する。
相対的測位の精度が低下し、もはや信頼することができない状況にまで陥った場合に、距離Dtを「0」とし、絶対的測位を間欠的に実行することを放棄して、絶対的測位に切り替えることも1つの実施例として考慮に値する。しかし、本実施の形態における測位装置1は、距離Dtに下限値を設け、距離Dtが下限値よりも短縮されることを禁止するものとする。
一方、データ更新部104は、第1測位部100による相対的測位の信頼度が高い状況が検出された場合、距離Dtを延長する。具体的には、第1測位部100による相対的測位の精度が低下する状況を状況判定部102が検出していない場合に、距離Dtを延長する方向に距離情報112を更新する。
なお、本実施の形態におけるデータ更新部104は、距離情報112に一定の値(調整幅)を加算することにより、距離情報112を更新する。ただし、検出された状況に応じて、データ更新部104による調整幅を変更してもよい。
ここで、距離Dtの値が大きくなると、それに応じて、絶対的測位が実行される間隔が延びる。これにより、消費電力を抑制することができる。しかし、相対的測位の精度が低下する状況が特に検出されない場合であっても、運動検出センサ143における誤差は蓄積されるものである。したがって、第1測位部100による相対的測位は、ある一定以下の間隔で、絶対的測位による較正が必要となる。
また、第2測位部15としてGPS受信部を採用する場合の事情もある。GPSにおいては、測位間隔が長期になると、保持しておいた情報(例えば、衛星の軌道などに関する情報)が無効となり、測位に必要な演算量が増えるという事情がある。すなわち、GPS受信部による絶対的測位は、ある一定以下の時間間隔で実行しなければ、結局、演算量の増加により、消費電力が増加するという特性がある。
したがって、データ更新部104は、相対的測位の精度が低下する状況が検出されない場合であっても、所定の上限値より距離情報112を大きくすることはない。すなわち、状況判定部102は、距離Dtが上限値より延長されることを禁止するものとする。
さらに、データ更新部104は、距離Dtの上限値または下限値による更新の可否だけでなく、他の状況によっても更新の可否を判定する。
データ更新部104は、電池残量や電源アダプタの装着の有無などを参照して、測位装置1に対する電力の供給状況に応じて、距離情報112を更新する。例えば、相対的測位の精度が低下していたとしても、電池残量が少ない場合には、当該精度よりも消費電力の抑制を優先して、距離Dtの値を小さくしない。これにより、現実の電力供給状態に応じて第2測位部15による測位のタイミングを最適化することができる。
また、データ更新部104は、地図情報114および位置情報118を参照して、位置情報118に示される位置が過去に歩行者が訪れた位置か否かを判定し、当該判定結果に応じて、距離情報112を更新する。例えば、歩行者が過去に訪れた場所については、相対的測位の精度が低下していても、深刻な問題とはならない場合が考えられる。したがって、位置情報118に示される位置が過去に歩行者が訪れた位置である場合には、それ以外の場合に比べて、距離情報112を大きな値とする。
また、データ更新部104は、タイマ(図示せず。)によって得られる時間情報を参照しつつ、昼夜の区別に応じて、距離情報112を更新する。例えば、昼間であれば、相対的測位の精度が低下していても、歩行者は周囲を容易に観察することができることから、深刻な問題とはならない場合が考えられる。したがって、データ更新部104は、昼間の場合には、夜間の場合に比べて、距離情報112を大きな値とする。
また、データ更新部104は、地図情報114および位置情報118を参照して、現在位置が屋内であるか屋外であるかを判定し、屋内外の区別に応じて、距離情報112を更新する。例えば、屋内であれば、相対的測位の精度が低下していても、周囲に位置を特定するための他の情報が比較的多いと予想され、深刻な問題とはならない場合が考えられる。したがって、データ更新部104は、現在位置が屋内の場合には、それ以外の場合に比べて、距離情報112を大きな値とする。
ただし、電力の供給状況、過去に訪れた位置か否か、昼夜の区別、あるいは、屋内外の区別などに応じて距離情報112を更新することは、測位装置1が自動的に決定すると不都合を生じることもあり得る。そこで、データ更新部104は、これらの状況を検出した場合には、歩行者の指示に応じて、最終的に距離情報112を更新する。具体的には、距離情報112の更新に関して、検出された状況と歩行者に可否を求めるメッセージとを表示部13に表示させ、それに対して歩行者が入力した指示に従って、更新の可否を決定する。
補正部105は、第2測位部15の絶対位置情報150の取得に応じて、取得された当該絶対位置情報150により位置情報118を補正する。より詳細には、位置情報118における未補正区間の終点(相対的測位による現在位置)を、当該絶対位置情報150に置換することにより補正する。
本実施の形態における補正部105は、信頼性の高い絶対位置情報150が取得されたときに、必ず、位置情報118に対する補正を実行するように構成されている。しかし、例えば、補正部105は、絶対位置情報150と位置情報118とを比較して、当該絶対位置情報150に示される位置と当該絶対位置情報150が取得された時間における位置情報118に示される位置との誤差を求め、当該誤差が閾値以上の場合にのみ、位置情報118を補正するように構成してもよい。図4に示す例で説明するならば、地点P1と観測点T2との距離が閾値を超えたときにのみ、補正を行ってもよい。
また、補正部105は、位置情報118に記録されている位置のうちの未補正区間についても、遡及的に補正し、測位装置1の過去の存在位置とする。この場合、補正部105は、パラメータ情報113を参照(図3において図示省略)しつつ、誤差角θおよび伸縮比γを用いて、未補正区間における各位置を補正する。これにより、未補正区間が解消され、当該区間が補正された区間となる。
以上が、本実施の形態における測位装置1の構成および機能の説明である。次に、測位装置1によって実現される測位方法について説明する。
図5および図6は、測位装置1による測位方法を示す流れ図である。
なお、図5および図6に示す各工程は、測位装置1に対する歩行者の開始指示により開始されるものとする。すなわち、図5および図6に示す各工程は、歩行者が、歩行軌跡の記録を所望し、歩行軌跡の記録を開始する指示を操作部12を操作して入力することにより開始される。また、特に断らない限り、図5および図6に示す各工程は、CPU10がプログラム110を実行することにより、実行される。また、図5および図6に示される各工程が開始されるまでに、距離情報112およびパラメータ情報113を記憶装置11に記憶させる工程が実行されているものとする。
まず、測位装置1は、基準位置情報111を取得し(ステップS1)、記憶装置11に記憶させる。本実施の形態では、歩行者が開始指示を入力したときに、操作部12から当該入力があったことを示す信号がタイミング制御部103に伝達され、タイミング制御部103がタイミング信号を生成し、第2測位部15に伝達する。
これにより、第2測位部15(GPS受信部)が基準点の絶対位置を測位することにより、測位装置1は基準位置情報111を取得する。だだし、GPS信号が受信できない、あるいは、信頼性が期待できないといった事情がある場合には、基準位置情報111を歩行者が操作部12を操作して入力してもよい。
なお、図5において図示を省略しているが、基準位置情報111の取得と並行して、観測装置14による観測情報115の取得も開始される。これにより、運動検出センサ143(ジャイロセンサ144、加速度センサ145および磁気センサ146)が起動され、相対的測位に必要な運動情報116の取得も開始される。以後、観測装置14は、観測情報115の取得を継続する。
次に、第1測位部100が運動情報116に基づいて、相対的測位を実行し(ステップS2)、相対位置情報117を取得する。そして、位置演算部101が相対位置情報117と基準位置情報111とに基づいて、位置情報118を作成する(ステップS3)。
なお、以後、ステップS3が実行されるときには、基準位置情報111の参照は行われず、位置演算部101は、その時点の位置情報118における終点位置と、相対位置情報117とに基づいて、位置情報118を更新することにより作成する。
ステップS3が実行されると、状況判定部102は、観測情報115に基づいて、相対的測位の精度が低下する状況が発生しているか否かを判定する(ステップS4)。
状況判定部102が、相対的測位の精度が低下する状況として検出する状況は、すでに説明したように、階段を歩行している状況、乗り物に乗っている状況、悪路を歩行している状況、地磁気異常の状況、人混みを歩行している状況、所持状態が手振りの状態である。
階段を歩行しているか否か、エスカレータまたはエレベータに乗っているか否かは、気圧センサ140からの出力情報である観測情報115を参照することにより、ステップS4において判定することができる(ただし、これらのうちのいずれの状況かを区別することは困難である。)。悪路を歩行しているか否か、地磁気異常の状況か否か、あるいは、手振りの状態か否かは、いずれも運動情報116を参照することにより、ステップS4において判定することができる。また、人混みを歩行している状況か否かは、運動情報116およびマイク142からの出力情報である観測情報115に基づいて判定することができる。
しかし、ステップS4が実行される時点では、未補正区間が徐々に延びている状況であり、当該未補正区間を較正するための絶対位置情報150は未だ取得されていない。この状況では、絶対位置情報150における位置と、位置情報118における位置との測位誤差を検出することはできない。したがって、測位誤差を検出の指標とする、ムービングウォークに乗っているか否か(平均歩幅が異常に長いか否か)の判定は、ステップS4が実行される時点では検出することができない。
ステップS4が実行される段階では検出することのできない他の状況が発生している場合には、距離Dtを延長すると絶対位置情報150による補正が遅れ、位置情報118の精度が低下する。そこで、ステップS4においてNoと判定した場合であっても、データ更新部104は、距離Dtをただちに延長しない。そして、測位装置1は、ステップS11の処理に移行する。
一方、ステップS4においてYesと判定した場合、状況判定部102は、検出フラグをONにセットし(ステップS5)、データ更新部104に伝達する。検出フラグとは、相対的測位の精度が低下する状況が発生していることを検出したか否かを示すフラグであって、「OFF」のとき未検出を示し、「ON」のとき検出済みを示す。なお、検出フラグの初期値は、「OFF」である。
ステップS5が実行されると、データ更新部104は、距離Dtを短縮させるべきか否かを判定する(ステップS6)。
まず、ステップS6においてデータ更新部104は、距離Dtがすでに下限値に達しているか否かを判定する。すでに説明したように、距離Dtが下限値に達しているならば、距離Dtをさらに短縮するべきではなく、データ更新部104はステップS6においてNoと判定する。
次に、ステップS6においてデータ更新部104は、電力供給が危ぶまれる状況か、現在位置が過去に訪れたことのある位置か、昼間か、あるいは、現在位置が屋内かを判定する。そして、これらの状況のうちのいずれかを検出した場合、データ更新部104は、検出した状況と、絶対的測位の間隔を狭くすべきか否か(距離Dtを短縮するか否か)を問い合わせるメッセージとを表示部13に表示させる。さらに、データ更新部104は、当該メッセージに対する歩行者の指示がNoである場合には、ステップS6においてNoと判定する。
上記に説明したデータ更新部104が「No」と判定する状況のうちのいずれにも該当しない場合に、データ更新部104は、ステップS6においてYesと判定する。
ステップS6においてYesの場合、データ更新部104は、距離Dtを短縮する(ステップS7)ことにより、距離情報112を更新する。
一方で、上記に説明したデータ更新部104が「No」と判定する状況のうちのいずれかに該当した場合、データ更新部104は距離Dtを短縮することはない(ステップS7をスキップする。)。
これにより、測位装置1は、相対的測位の精度が低下する状況が生じている場合には、距離Dtを短縮させて絶対的測位の頻度を上げることができる。その一方で、測位装置1は、距離Dtが短縮されて絶対的測位の頻度が不用意に上がることを抑制することもできる。
次に、タイミング制御部103が、位置情報118を参照して移動距離δを取得するとともに、取得した移動距離δが距離情報112に示される距離Dtに到達したか否かを判定する(ステップS11)。
移動距離δが距離Dtに到達していない場合(ステップS11においてNo。)、測位装置1は、ステップS2に戻って処理を繰り返す。すなわち、絶対的測位を行わずに、相対的測位(ステップS2)を繰り返す。
移動距離δが距離Dtに到達した場合(ステップS11においてYes。)、タイミング制御部103は、タイミング信号を生成し、第2測位部15に伝達する。これにより、第2測位部15による測位(絶対的測位)が実行される(ステップS12)。すでに説明したように、測位装置1では、絶対的測位はGPS受信部により実行される。したがって、ステップS12の処理は、GPSを用いた測位処理である。
次に、第2測位部15は、ステップS12において取得した位置(絶対的測位により得られた位置)が信頼できるか否か(高精度であるか否か)を判定する(ステップS13)。
そして、当該位置が信頼できる場合(ステップS13においてYes。)、第2測位部15は、絶対位置情報150を作成し(ステップS14)、記憶装置11に記憶させる。
一方、当該位置が信頼できない場合(ステップS13においてNo。)、絶対位置情報150が作成されることはなく、測位装置1はステップS2に戻って処理を繰り返す。
後述する更新処理では、補正部105が絶対位置情報150を用いて位置情報118を補正する。このとき、補正部105は、絶対位置情報150に対する評価をせずに、絶対位置情報150が高精度であることを前提に、位置情報118を補正する。したがって、取得された絶対位置情報150の精度が低い場合にも、更新処理を行うとすると、逆に、位置情報118の精度が低下するおそれもある。特に、絶対位置情報150を取得する手法がGPSを用いる場合、GPS信号の状態などの影響により、信頼性の低い絶対位置情報150が取得される場合もある得る。
しかし、測位装置1は、ステップS13を実行することにより、信頼できる絶対位置情報150が取得されるまで更新処理を実行しない。これにより、精度の低い絶対位置情報150が取得された場合であっても、不適切な更新処理が実行されることによる位置情報118の精度の低下を防止することができる。
本実施の形態では、ステップS13において、第2測位部15(GPS受信部)は、GPS信号に含まれる付加情報(GPS信号のフォーマットに含まれている。)を解析することにより、当該GPS信号の信頼性を判定するものとする。
ステップS14が実行され、絶対位置情報150が記録されると、測位装置1は更新処理(ステップS15)を実行する。
図7および図8は、更新処理を示す流れ図である。
更新処理が開始されると、状況判定部102は、距離情報112を更新するための状況推定に関する処理を開始する。
まず、状況判定部102は、検出フラグが「ON」か否かを判定する(ステップS21)。ステップS21が実行されるときに、すでに検出フラグが「ON」の場合とは、ステップS5が実行されたことを示している。そして、ステップS5が実行された後には、ステップS7が実行されるため、距離Dtに対する調整がすでに実行されている(もしくは、距離Dtを短縮すべきでない状況。)。この場合には、状況判定部102は、ステップS22ないしS27の処理をスキップすることにより、距離Dtのさらなる調整は行わない。
一方、検出フラグが「OFF」の場合(ステップS21においてNo。)、状況判定部102は、観測情報115に基づいて、相対的測位の精度が低下する状況が発生しているか否かを判定する(ステップS22)。
本実施の形態におけるステップS22の処理では、状況判定部102は、ステップS4において検出することができなかった状況として、歩行者がムービングウォークに乗っているか否かのみを判定する。ただし、例えば、測位誤差が大きい状況を、相対的測位の精度が低下している状況とみなす場合には、ステップS22においてそのような判定を行ってもよい。
ステップS22においてNoと判定すると、状況判定部102は、その旨をデータ更新部104に伝達する。これにより、データ更新部104は、距離Dtがすでに上限値か否かを判定し(ステップS23)、距離Dtが未だ上限値となっていない場合にのみ、距離Dtを延長する(ステップS24)。
ステップS22においてNoと判定される場合とは、状況判定部102が、最終的に、相対的測位の精度が低下する状況を検出できなかった場合である。したがって、そのような場合には、データ更新部104は、距離情報112に示される距離Dtを延長して、絶対的測位を実行する間隔を延ばすことにより、測位装置1における消費電力を抑制する。
一方、ステップS22においてYesと判定すると、状況判定部102は、その旨をデータ更新部104に伝達する。これにより、データ更新部104は、ステップS25ないしS27を実行する。なお、ステップS25ないしS27の処理は、ステップS5ないしS7の処理と同様に実行することができるため、説明を省略する。
更新処理において、ステップS21ないしS27の処理を終了し、距離情報112の更新に関する処理が完了すると、測位装置1は、パラメータ情報113の更新に関する処理を開始する。
まず、データ更新部104は、絶対位置情報150と位置情報118とに基づいて、両者における現在位置を比較して、絶対的測位と相対的測位との測位誤差を求める。次に、データ更新部104は、測位誤差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS31)。
測位誤差が閾値より小さい場合(ステップS31においてNo。)、データ更新部104は、パラメータ情報113を変更する必要はないとみなして、ステップS32,S33の処理をスキップする。これにより、相対的測位による位置が、比較的、精度よく得られている場合には、パラメータ情報113は変更されない。したがって、不要なパラメータ変更によって、相対的測位の精度が悪化することを防止することができる。
一方、測位誤差が閾値以上の場合(ステップS31においてYes。)、データ更新部104は、検出フラグが「ON」であるか否かを判定する(ステップS32)。
ステップS32が実行されるときにおいて、検出フラグが「ON」の場合とは、相対的測位の精度が低下する状況が状況判定部102により検出されている場合を示す。したがって、このような場合、データ更新部104は、測位誤差は、相対的測位の精度が低下しているためであるとみなして、パラメータの変更は行わないことが好ましい。
したがって、ステップS32においてYesと判定した場合、データ更新部104は、ステップS33をスキップし、パラメータ情報113を変更しない。
一方で、ステップS32においてNoと判定した場合、データ更新部104は、相対的測位の精度が低下する状況が検出されないにもかかわらず、閾値以上の測位誤差が生じているのは、パラメータ異常の状況であると判定し、パラメータ情報113を更新する(ステップS33)。なお、データ更新部104がどのようにしてパラメータ情報113(誤差角θおよび伸縮比γ)を変更するかについては、すでに説明したため、ここでは説明を省略する。
パラメータ情報113の変更に関する処理が完了すると、補正部105は、絶対位置情報150と位置情報118とに基づいて、位置情報118を補正する(ステップS34)。これにより、位置情報118における未補正区間が解消され、位置情報118における終点は、最新の観測点となり、絶対位置情報150に示される位置となる。なお、ステップS34における補正については、すでに説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
ステップS34が実行され、位置情報118に対する補正が完了すると、測位装置1は、検出フラグを「OFF」に初期化し(ステップS35)、更新処理を完了して図6に示す処理に戻る。さらに、更新処理を完了して図6に示す処理に戻ると、測位装置1は、再び、図5に示すステップS2に戻って処理を繰り返す。
以上のように、歩行者によって携帯される測位装置1は、基準位置情報111とパラメータ情報113とを記憶する記憶装置11と、観測情報115を取得する観測装置14と、観測情報115とパラメータ情報113とに基づいて測位装置1の相対的な位置を示す相対位置情報117を取得する第1測位部100と、測位装置1の絶対位置を示す絶対位置情報150を取得する第2測位部15と、基準位置情報111と相対位置情報117とに基づいて測位装置1の存在位置を示す位置情報118を演算する位置演算部101と、観測情報115に基づいて状況を推定する状況判定部102と、状況判定部102による推定結果に応じて、位置情報118と絶対位置情報150とに基づいて記憶装置11に記憶されたパラメータ情報113を更新するデータ更新部104とを備え、観測装置14は、測位装置1の動きに関する運動情報116を取得して、観測情報115に含める運動検出センサ143を備える。これにより、パラメータ情報を最適化することができる。
また、記憶装置11は、距離情報112を記憶しており、相対位置情報117に基づいて移動距離を演算し、当該移動距離と距離情報112とに応じて、第2測位部15に絶対位置情報150を取得させるタイミング制御部103をさらに備える。これにより、第2測位部15による絶対位置測位のタイミングを、距離に基づいて決定することができるため、時間に基づいて決定する場合に比べて、当該タイミングを最適化することができる。
また、データ更新部104は、状況判定部102による推定結果に応じて、記憶装置11に記憶された距離情報112を更新する。これにより、第2測位部15による絶対位置測位のタイミングをさらに最適化することができる。
また、記憶装置11は、測位装置1の周囲の地図情報114を記憶しており、状況判定部102は、地図情報114に基づいて、状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、観測装置14は、気圧を観測して観測情報115として取得する気圧センサ140を備え、状況判定部102は、観測情報115に示される気圧の変動に基づいて、状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に基づいて、階段を移動しているか否かを特定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に基づいて、エスカレータによって移動しているか否かを特定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に基づいて、エレベータによって移動しているか否かを特定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に含まれる運動情報116に基づいて、測位装置1が所持されている状態を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
特に、観測装置14は、照度を観測して観測情報115として取得する照度センサ141を備え、状況判定部102は、観測情報115に示される照度に基づいて、測位装置1が所持されている状態を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に含まれる運動情報116に基づいて歩行周期の変動の大きさを求めることにより、悪路を移動している状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、状況判定部102は、観測情報115に含まれる運動情報116に基づいて、人混みを移動している状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
特に、状況判定部102は、観測情報115に含まれる運動情報116に基づいて進行方向の変更頻度を求めることにより、人混みを移動している状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、観測装置14は、音声を観測して観測情報115として取得するマイク142を備え、状況判定部102は、観測情報115に示される音声を解析することにより、人混みを移動している状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
観測装置14は、磁気を観測して観測情報115として取得する磁気センサ146を備え、状況判定部102は、観測情報115に示される磁気に基づいて、地磁気異常の状況を推定する。これにより、第1測位部100による測位に影響を与える状況を正確に推定することができ、第2測位部15による測位のタイミングを、より最適化することができる。
また、データ更新部104は、測位装置1に対する電力の供給状況に応じて、距離情報112を更新する。これにより、現実の電力供給状態に応じて第2測位手段による測位のタイミングを最適化することができる。
また、データ更新部104は、位置情報118に示される位置が過去に訪れた位置か否かに応じて、距離情報112を更新する。これにより、例えば、すでに一度訪問したことのある場所などでは、絶対的測位の頻度を抑制するなど、汎用性に富んだ処理を実現することができる。
また、データ更新部104は、昼夜の区別に応じて、距離情報112を更新する。これにより、例えば、日中のように目標物(位置を特定するために有効な物体)が比較的目視しやすい状況においては、絶対的測位の頻度を抑制するなど、汎用性に富んだ処理を実現することができる。
また、データ更新部104は、屋内外の区別に応じて、距離情報112を更新する。これにより、例えば、屋内などの目標物(位置を特定するために有効な物体)が比較的多い状況においては、絶対的測位の頻度を抑制するなど、汎用性に富んだ処理を実現することができる。
また、データ更新部104は、歩行者の指示に応じて、距離情報112を更新することにより、不用意に距離情報112を更新してしまうことを防止することができる。
また、データ更新部104は、補正部105による位置情報118の補正の有無に関わらず、状況判定部102による推定結果に応じて、パラメータ情報113の更新の要否を決定する。これにより、位置情報118を補正すべきときと、パラメータ情報113を更新すべきときとを独立に扱うことができる。したがって、状況に応じた最適な対応が可能となる。
また、位置情報118は、測位装置1の過去の位置を含むことにより、例えば、歩行軌跡についても記録できる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
例えば、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、上記に示した順序や内容に限定されるものではない。すなわち、同様の効果が得られるならば、適宜、順序や内容が変更されてもよい。
また、上記実施の形態に示した機能ブロック(例えば、第1測位部100やタイミング制御部103)は、CPU10がプログラム110に従って動作することにより、ソフトウェア的に実現されると説明した。しかし、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路で構成し、ハードウェア的に実現してもよい。
また、上記実施の形態における測位装置1は、GPS受信部により取得した絶対位置が信頼できないとき、相対的測位を繰り返すと説明した。しかし、例えば、絶対的測位を実行する複数の第2測位部15を備えている場合には、それら複数の第2測位部15の中から、信頼できる1つを選択するようにしてもよい。これにより、絶対位置情報150が作成されない事態を抑制することができる。
また、上記実施の形態では、過去の補正結果や更新結果を参照することなく、位置情報118に対する補正処理、および、距離情報112やパラメータ情報113に対する更新処理を行うと説明した。しかし、過去に実行した補正処理や更新処理を記録しておき、これらの適否を評価して、次回の補正処理や更新処理の参考としてもよい。このようなフィードバック制御によっても、精度を向上させることができる。
また、上記実施の形態における観測装置14に含まれる装置群は例示である。したがって、測位装置1は、観測装置14としてその他の装置を備えていてもよい。観測装置14として採用する装置は、観測すべき事象(測位に影響を与える事象)や要求精度、許容される消費電力やコストなどに応じて決定することができる。観測装置14として採用可能な他の装置としては、例えば、周囲の温度を観測する温度センサ、湿度を観測する湿度センサ、周囲の被写体を撮像するデジタルカメラ、外部の装置から観測情報115を受信する通信装置などが想定される。温度センサや湿度センサは、例えば、周囲の天気を判定することができる。また、デジタルカメラ(撮像部)により撮像された画像を解析することにより、歩行者のルートが悪路(田舎道)か否かの区別や、屋内外の区別、人混みにおける混雑の程度、測位装置1の保持状態などを判定することができる。また、測位装置1においてリアルタイムに観測することが困難な情報(例えば、ビッグデータや天気)を通信装置により外部の装置から取得するように構成すれば、さらに汎用性に富んだ状況判定が可能となる。
また、観測装置14が備える装置のうち、いずれが運動検出センサ143に含まれるかは、任意である。例えば、歩行者の移動軌跡として上下方向(高さ方向)の移動軌跡も記録する場合には、気圧センサ140によって観測された情報を高さ方向の動きに関する情報として運動情報116に含めてもよい。あるいは、自律航法(相対的測位)に磁気センサ146の観測結果を用いないのであれば、磁気センサ146を運動検出センサ143に含めず、単に、周囲の磁気を観測する観測装置14(状況判定用)としてのみ用いてもよい。すなわち、運動検出センサ143とは、観測装置14として採用された装置のうち、自律航法に使用する情報(観測情報115のうちのどの情報を使用するかは任意である。)を取得する装置の便宜上の名称である。
また、データ更新部104は、パラメータ情報113に含まれるパラメータのうち、誤差角θおよび伸縮比γを更新することにより、センサにおける測定誤差を抑制し、将来の相対的測位の精度を向上させる。ただし、データ更新部104が更新するパラメータはこれらに限定されるものではない。例えば、データ更新部104がパラメータ情報113に含まれる歩幅Lを更新してもよい。例えば、γ×Lを新たな歩幅Lとするようにパラメータ情報113を更新してもよい。
また、上記実施の形態におけるデータ更新部104は、測位誤差が生じているにもかかわらず、相対的測位の精度が低下する状況が検出されない状況を、パラメータ異常の状況と判定してパラメータ情報113を更新すると説明した。しかし、相対的測位の精度が低下する状況が検出された場合であっても、状況によっては、パラメータ情報113を更新してもよい。例えば、悪路が続く場合などが想定される。
また、パラメータ情報113を更新する場合において、進行方向を示すパラメータまたは歩幅を示すパラメータのいずれか一方のみを更新してもよい。例えば、補正タイミングと補正タイミングとの間で、階段を通過したと判断した場合が想定される。階段を通過した後であれば、相対的測位が低下する状況ではなく、パラメータ異常の状況と判断して、パラメータ情報113を更新するが、この場合は、進行方向を示すパラメータのみを選択的に更新することが好ましい。