JPWO2017111069A1 - 止痒剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して即時的に止痒効果を発揮する止痒剤を提供することを目的としている。本発明は、スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有する止痒剤を提供する。
Description
本発明は、止痒剤に関する。
アトピー性皮膚炎は、表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応及び特異的アレルギー反応が関与して生じ、慢性に経過する炎症とそう痒をその病態とする湿疹皮膚炎群の一疾患である(非特許文献1)。
アトピー性皮膚炎に伴うそう痒の発現メカニズムは未だ十分には解明されてはいないが、マスト細胞やケラチノサイト等の細胞から放出される、ヒスタミンやロイコトリエンB4等の痒み誘発物質が、皮膚の痒みを伝える神経上の受容体に結合することで神経が興奮し、この痒みシグナルが脊髄後角を介して大脳皮質まで伝達され、痒みとして認識されると考えられている。
アトピー性皮膚炎においては、神経成長因子の働きにより、表皮内への神経伸長や神経の活性化閾値の低下が起こり、痒みシグナルを受容又は伝達しやすい、痒み過敏状態が形成されていると考えられている。また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒は、そう痒に対する引っ掻き行動を起こすことで皮膚炎の悪化を招き、皮膚炎の悪化によりさらにそう痒が増強されるという、「そう痒−引っ掻き−皮膚炎悪化」サイクルの原因となっており、アトピー性皮膚炎の治療においては、アトピー性皮膚炎自体の治療のみならず、そう痒を抑制することが早期改善に重要であると考えられている(非特許文献2)。
アトピー性皮膚炎に対する薬物療法では、外用では皮膚炎を抑えるために副腎皮質ステロイド剤又は免疫抑制剤が主に用いられ、皮膚の乾燥及びバリアー機能を補完し、皮膚炎の再燃を予防する目的で保湿剤等も用いられる。また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対しては、内服剤として抗ヒスタミン薬又は抗アレルギー薬が用いられている(非特許文献1)。
一方、スルフォラファンは、ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、カリフラワー、ケール及び芽キャベツ等のアブラナ科の植物に含まれる物質である。通常、植物中では、スルフォラファンは、その前駆物質であるスルフォラファングルコシノレートとして存在し、摂取後、体内で分解されることでスルフォラファンへと変化する(非特許文献3)。
スルフォラファンの作用としては、以下の報告がある。スルフォラファン前駆物質であるスルフォラファングルコシノレートを含むサプリメントを2ヶ月間摂取することにより、肝機能マーカーの値が高いヒトの肝機能を改善する効果を示すことが報告されている(非特許文献3)。また、胃炎や胃がんの原因の一つと考えられているヘリコバクターピロリに対する、スルフォラファンの静菌作用及び殺菌作用も報告されている(非特許文献4)。さらに、9,10−ジメチル−1,2−ベンズアントラセン誘発ラット乳がんモデルにおいて、スルフォラファンの抗がん作用も報告されている(非特許文献5)。
また、イソチオシアネート類は、好中球や好酸球といった炎症性細胞の遊走抑制作用、マスト細胞の脱顆粒抑制作用を有し、これにより生体のI型アレルギー症状が改善され、結果として花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息といったアトピー性疾患が改善することが報告されているが(特許文献1)、スルフォラファンの抗炎症作用は開示されておらず、スルフォラファンの止痒作用については開示も示唆もされていない。
古江ら、日本皮膚科学会雑誌、2009年、第119巻、p.1515―1534
石井ら、日本薬理学雑誌、2014年、第144巻、p.154―159
カゴメ株式会社、2014年11月19日研究成果サマリー、http://www.kagome.co.jp/research/summary/141119/f_index.html
Faheyら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2002年、第99巻、p.7610―7615
Zhangら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、1994年、第91巻、p.3147―3150
しかしながら、外用の副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤は、アトピー性皮膚炎の治療のために長期間にわたる投与が必要であり、副作用が懸念される。また、これら既存薬は、皮膚炎を抑制することにより二次的にそう痒を抑制することはできても、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を即時的に抑制することは困難であるのが現状である。
さらに、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が用いられてはいるが、そう痒を緩和することを示すエビデンスは少ないと報告されており(Kleinら、Archives of Dermatology、1999年、第135巻、p.1522)、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒の治療に単調に用いることは推奨されていない(Berkeら、American Family Physician、2012年、第86巻、p.35)。
このため、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する既存の薬物療法では、即時的に止痒効果を得ることができずに、患者が自身の皮膚を引っ掻くことで皮膚炎を悪化させ、皮膚炎の慢性化を引き起こし、難治性に至るという悪循環に陥っている。したがって、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、即時的に薬効を発揮する止痒剤の開発が切望されている。
そこで本発明は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して即時的に止痒効果を発揮する、止痒剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、難治性そう痒に対して有効性を示す新たな化学構造を有する化合物について鋭意研究を重ねた結果、スルフォラファン又はその前駆物質が難治性そう痒に対して、即時的に止痒効果を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有する止痒剤を提供する。
上記の止痒剤は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症に伴う難治性そう痒に対する止痒剤であることが好ましく、アトピー性皮膚炎に伴う難治性そう痒に対する止痒剤であることが特に好ましい。
上記の止痒剤は、難治性そう痒に対して即時的に薬効を発揮し、これまでに止痒効果が認められている薬剤(副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬等)とは異なるメカニズムでそう痒を治療又は予防できる。
また、本発明は、上記の有効成分を含有する、そう痒の改善又は予防のための化粧品組成物を提供する。
また、本発明は、上記の有効成分を含有する、そう痒の改善又は予防のための食品組成物を提供する。
本発明の止痒剤は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して、即時的に止痒効果を発揮する。このため、本発明の止痒剤は、「そう痒−引っ掻き−皮膚炎悪化」サイクルの停止と患者のQOLの改善に大きく貢献し、治療が困難とされるアトピー性皮膚炎に対しても、新たなメカニズムで治療効果を発揮できる。
また、本発明の化粧品組成物や食品組成物は、皮膚のそう痒を早期に改善又は予防できる点で有用である。
本発明の止痒剤は、スルフォラファンを有効成分として含有することを特徴とする。
上記のスルフォラファンは、1−イソチオシアネート−4−メチルスルフィニルブタンとしても知られる、下記式(I)で示される物質である。
上記式(I)で示されるスルフォラファンには、ラセミ体や光学異性体が存在するが、単一異性体のみならず、ラセミ体や光学異性体の混合物も包含する。なお、スルフォラファンのラセミ体は、例えば、D,L−スルフォラファン又はR,S−スルフォラファン等と表記される。
上記式(I)で示されるスルフォラファンは、植物中から単離・精製した天然スルフォラファン、化学合成により製造された合成スルフォラファンのいずれでもよい。スルフォラファンの単離・精製方法(特表2015−519358号)及び合成方法(特表2015−518041号、Schmidら、Helvetica Chimica Acta、1948年、第31巻(6)、p.1497―1505)は、当技術分野において公知である。また、上記式(I)で示されるスルフォラファンは市販されており、市販品を用いることもできる。
さらに、上記の止痒剤は、スルフォラファン前駆物質を有効成分として含有することを特徴とする。上記のスルフォラファン前駆物質とは、酵素によってスルフォラファンに変換又は代謝される物質である。上記のスルフォラファン前駆物質としては、好ましくは、スルフォラファングルコシノレートである。なお、スルフォラファングルコシノレートはグルコラファニンとも呼ばれる。
上記のスルフォラファン前駆物質には、ラセミ体や光学異性体が存在するが、単一異性体のみならず、ラセミ体や光学異性体の混合物も包含する。
上記のスルフォラファン前駆物質(好ましくは、スルフォラファングルコシノレート)は、植物中から単離・精製した天然スルフォラファン前駆物質、化学合成により製造された合成スルフォラファン前駆物質のいずれでもよい。スルフォラファン前駆物質の単離・精製方法及び合成方法は、当技術分野において公知である。また、スルフォラファン前駆物質は、市販されており、市販品を用いることもできる。
「そう痒」とは、引っ掻く欲求を伴う皮膚特有の感覚であり、例えば、アトピー性皮膚炎、神経性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自己感作性皮膚炎、毛虫皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、虫刺症、光線過敏症、蕁麻疹、痒疹、疱疹、膿痂疹、湿疹、白癬、苔癬、乾癬、疥癬若しくは尋常性座瘡等の皮膚疾患を原疾患とするそう痒、悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析若しくは多発性硬化症を原疾患とするそう痒又は薬剤性若しくは心因性で起こるそう痒が挙げられる。また、そう痒は、ヒスタミンが介在するそう痒と、ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)とに大別されるが、本発明の止痒剤は、特に、ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)に対して有効である。ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)としては、例えば、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症等を原疾患とするそう痒が挙げられ、抗ヒスタミン薬に対して治療抵抗性を示す。
「止痒剤」とは、そう痒を軽減する目的で用いられる薬剤等であり、例えば、内服剤としては主に抗ヒスタミン薬が用いられ、血液透析患者に対してはオピオイドκ受容体作動薬が用いられることもある。また、外用剤としては、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤又は非ステロイド系抗炎症剤が用いられている。なお、これらの止痒剤は、そう痒が起こらないように制御する目的で、予防的に用いることもできる。
「即時的」とは、単回の投与によって、投与後6時間以内、好ましくは投与後3時間以内、更に好ましくは投与後1時間以内に止痒効果が得られることを意味する。
上記の止痒剤の止痒効果は、そう痒モデル動物を用いたin vivoの実験系で評価でき、ヒスタミン、クロロキン又サブスタンスPに代表される各種起痒物質によって惹起されるマウスの引っ掻き行動を指標とするそう痒モデルが一般的である。例えば、Togashiらの文献(European Journal of Pharmacology、2002年、第435巻、p.259)やAndohらの文献(European Journal of Pharmacology、2002年、第436巻、p.235)に記載されているマウスを用いたサブスタンスP誘発引っ掻き行動や、Marinoらの文献(Journal of Neuroscience Methods、2012年、第211巻、p.1)に記載されているマウスを用いたクロロキン誘発引っ掻き行動は、抗ヒスタミン薬が無効の難治性そう痒モデルの一つとして利用できるものである。
また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する止痒剤の止痒効果は、例えば、アトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物の引っ掻き行動を指標としたin vivoの実験系で評価できる。アトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物としては、例えば、通常飼育環境下で皮膚炎を自然発症するNC/Nga系マウス(Takanoら、European Journal of Pharmacology、2004年、第495巻、p.159)、又は、ハプテンである2,4,6−トリニトロクロロベンゼン若しくは4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン(以下、オキサゾロン)をマウスの皮膚へ反復塗布することにより皮膚炎を誘発したモデル(オキサゾロン誘発皮膚炎モデル)(Uedaら、International Immunopharmacology、2006年、第6巻、p.1609又はTsukumoら、Journal of Pharmacological Sciences、2010年、第113巻、p.255)等を用いることができる。これらアトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物の引っ掻き行動は、オピオイドμ受容体拮抗薬で抑制されるため、疼痛関連反応ではなく、そう痒関連反応として認知されている。
上記の止痒剤は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ウシ、ヒツジ又はヒト)、特にヒトに対して投与した場合に、有用な医薬等(特に、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する止痒剤)として用いることができる。あるいは、上記のスルフォラファン又はその前駆物質を化粧料組成物又は食品組成物の有効成分として使用するか、又はこれに含有させてもよい。
上記の止痒剤を臨床で使用する際には、スルフォラファン又はその前駆物質をそのまま用いてもよいし、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤又は等張化剤等の添加剤が適宜混合されていてもよい。また、上記の止痒剤は、これらの薬剤用担体を適宜用いて、通常の方法によって製造することができる。上記の止痒剤の投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口剤、吸入剤、注射剤、座剤若しくは液剤等による非経口剤又は局所投与をするための軟膏剤、クリーム剤若しくは貼付剤等が挙げられる。また、公知の持続型製剤としても構わない。また、スルフォラファン前駆物質の場合は、スルフォラファンに変換させる酵素(例えば、ミロシナーゼ)を配合又は併用して使用しても構わない。
上記の止痒剤は、スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として0.001〜90重量%含有することが好ましく、0.01〜70重量%含有することがより好ましい。用量は、症状、年齢、体重、性別及び投与方法等に応じて適宜選択されるが、成人に対する有効成分量として、注射剤の場合1日0.001mg〜5g、経口剤の場合0.01mg〜10gであり、それぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。
上記の止痒剤の薬理学的に許容される担体又は希釈剤としては、例えば、結合剤(シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド又はトラガント等)、賦形剤(砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン等)又は滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク又はシリカ等)を挙げることができる。
上記の止痒剤は、止痒の補完若しくは増強又は投与量の低減のために、他の薬剤と適量配合又は併用して使用しても構わない。
また、本発明の化粧品組成物は、スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有することでそう痒を改善又は予防することを特徴とする。
化粧料組成物の形態は適宜選択することができ、溶液、乳液、粉末、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、タブレット等の固形、エアゾール、ミスト、カプセル、シート等任意の形態とすることができる。また、化粧料組成物の製品形態も任意であり、例えば、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム、サンスクリーン等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロー、頬紅、ネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、染毛料、育毛剤等の毛髪化粧料、石鹸、ボディソープ、デオドラント化粧料、浴用剤等のボディ洗浄料、歯磨剤及び洗口剤等の口腔化粧料、香水等の芳香化粧料等が挙げられる。
化粧料組成物は、化粧品、医薬部外品及び医薬等に許容される担体、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
また、本発明の食品組成物は、スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有することでそう痒を改善又は予防することを特徴とする。
上記の食品組成物は、食料、飲料、飼料、ペットフードに添加又は配合して使用することができる。あるいは、製剤形態の食品は、医薬製剤と同様に製造することができ、スルフォラファン又はその前駆物質と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等に、上記の食品組成物を添加又は配合して、食品組成物を製造することができる。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1) D,L−スルフォラファンのオキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動に対する抑制効果:
オキサゾロンの反復塗布により皮膚病変を誘発したアトピー性皮膚炎モデルマウス(オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウス)は、公知文献(Tsukumoら、Journal of Pharmacological Sciences、2010年、第113巻、p.255等)記載の方法に基づき、作製した。また、引っ掻き行動の評価は、公知文献(Hashimotoら、Allergology International、2004年、第53巻、p.349)記載の方法に基づき、MicroAct(ニューロサイエンス社)を用いて自動的に検出し、客観的に行った。
オキサゾロンの反復塗布により皮膚病変を誘発したアトピー性皮膚炎モデルマウス(オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウス)は、公知文献(Tsukumoら、Journal of Pharmacological Sciences、2010年、第113巻、p.255等)記載の方法に基づき、作製した。また、引っ掻き行動の評価は、公知文献(Hashimotoら、Allergology International、2004年、第53巻、p.349)記載の方法に基づき、MicroAct(ニューロサイエンス社)を用いて自動的に検出し、客観的に行った。
1.実験方法
(1)オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの作製
オキサゾロンの濃度が3w/v%となるように、オキサゾロンをアセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液に溶解した。3w/v%オキサゾロン溶液100μLを、イソフルラン麻酔下にて、7〜8週齢の雌性HR−1マウス(星野試験動物飼育所)の背部全体に塗布することにより、感作を行った(感作日を「Day −7」とする)。感作1週間後(Day 0)から、イソフルラン麻酔下にて、3w/v%オキサゾロン溶液又はその溶媒(アセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液)60μLを、1日につき1回、週3回(2又は3日間隔)の頻度で吻側背部へ塗布した。オキサゾロンを反復塗布したマウスを「皮膚炎惹起群」とし、溶媒を反復塗布したマウスを「皮膚炎非惹起群」とした。
(1)オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの作製
オキサゾロンの濃度が3w/v%となるように、オキサゾロンをアセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液に溶解した。3w/v%オキサゾロン溶液100μLを、イソフルラン麻酔下にて、7〜8週齢の雌性HR−1マウス(星野試験動物飼育所)の背部全体に塗布することにより、感作を行った(感作日を「Day −7」とする)。感作1週間後(Day 0)から、イソフルラン麻酔下にて、3w/v%オキサゾロン溶液又はその溶媒(アセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液)60μLを、1日につき1回、週3回(2又は3日間隔)の頻度で吻側背部へ塗布した。オキサゾロンを反復塗布したマウスを「皮膚炎惹起群」とし、溶媒を反復塗布したマウスを「皮膚炎非惹起群」とした。
(2)D,L−スルフォラファンの投与
D,L−スルフォラファン投与液は、D,L−スルフォラファン(Santa Cruz Biotechnology社)をジメチルスルホキシド及びTween80と混和した後、蒸留水を添加し、ジメチルスルホキシド及びTween80が、各々1v/v%の濃度となるように調製した。D,L−スルフォラファン投与液又はその溶媒を10mL/kgの容量で、引っ掻き行動回数の測定開始の60分間前に、皮膚炎惹起群又は皮膚炎非惹起群のマウスに単回経口投与した。D,L−スルフォラファンは、100mg/kgの用量で投与した。皮膚炎非惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎非惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群にD,L−スルフォラファンを投与した群を「皮膚炎惹起−D,L−スルフォラファン(100mg/kg)投与群」とした。
D,L−スルフォラファン投与液は、D,L−スルフォラファン(Santa Cruz Biotechnology社)をジメチルスルホキシド及びTween80と混和した後、蒸留水を添加し、ジメチルスルホキシド及びTween80が、各々1v/v%の濃度となるように調製した。D,L−スルフォラファン投与液又はその溶媒を10mL/kgの容量で、引っ掻き行動回数の測定開始の60分間前に、皮膚炎惹起群又は皮膚炎非惹起群のマウスに単回経口投与した。D,L−スルフォラファンは、100mg/kgの用量で投与した。皮膚炎非惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎非惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群にD,L−スルフォラファンを投与した群を「皮膚炎惹起−D,L−スルフォラファン(100mg/kg)投与群」とした。
(3)引っ掻き行動の評価
Day 7に、イソフルラン麻酔下にて、マウスの両後肢甲部皮下にパラフィルムでコーティングしたネオジム磁石(直径1mm、長さ3mm)を挿入した。Day 79に、引っ掻き行動回数を測定し、各群の引っ掻き行動回数の平均値がほぼ均等になるように群分けを行った。Day 81に、引っ掻き行動に対するD,L−スルフォラファンの抑制効果を評価した。なお、引っ掻き行動回数の測定開始の少なくとも30分間前から、測定用チャンバー(直径11cm、高さ18cm)内へマウスを1匹ずつ収容し、試験環境へ馴化させた。D,L−スルフォラファン投与液又はその溶媒の単回経口投与の60分間後に、引っ掻き行動回数の測定を開始し60分間測定した。引っ掻き行動回数は、測定用チャンバー周囲のラウンドコイル内で、後肢に挿入された磁石の動きによって誘導された電流を増幅して記録した。
Day 7に、イソフルラン麻酔下にて、マウスの両後肢甲部皮下にパラフィルムでコーティングしたネオジム磁石(直径1mm、長さ3mm)を挿入した。Day 79に、引っ掻き行動回数を測定し、各群の引っ掻き行動回数の平均値がほぼ均等になるように群分けを行った。Day 81に、引っ掻き行動に対するD,L−スルフォラファンの抑制効果を評価した。なお、引っ掻き行動回数の測定開始の少なくとも30分間前から、測定用チャンバー(直径11cm、高さ18cm)内へマウスを1匹ずつ収容し、試験環境へ馴化させた。D,L−スルフォラファン投与液又はその溶媒の単回経口投与の60分間後に、引っ掻き行動回数の測定を開始し60分間測定した。引っ掻き行動回数は、測定用チャンバー周囲のラウンドコイル内で、後肢に挿入された磁石の動きによって誘導された電流を増幅して記録した。
統計学的処理としては、皮膚炎惹起−溶媒投与群に対する皮膚炎惹起−D,L−スルフォラファン(100mg/kg)投与群の検定としてt検定を行った。有意水準は5%(両側)とした。
2.結果
図1に、オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動回数に対する、D,L−スルフォラファンの効果を示す。縦軸は、60分間の引っ掻き行動回数(平均値±標準誤差、n=8〜18)を示す。横軸は、皮膚炎非惹起−溶媒投与群、皮膚炎惹起−溶媒投与群及び皮膚炎惹起−D,L−スルフォラファン(100mg/kg)投与群を示す。図中の*印は、皮膚炎惹起−溶媒投与群との比較で統計学的に有意であることを示す(*:p<0.05、t検定)。
図1に、オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動回数に対する、D,L−スルフォラファンの効果を示す。縦軸は、60分間の引っ掻き行動回数(平均値±標準誤差、n=8〜18)を示す。横軸は、皮膚炎非惹起−溶媒投与群、皮膚炎惹起−溶媒投与群及び皮膚炎惹起−D,L−スルフォラファン(100mg/kg)投与群を示す。図中の*印は、皮膚炎惹起−溶媒投与群との比較で統計学的に有意であることを示す(*:p<0.05、t検定)。
この結果から、D,L−スルフォラファンは、アトピー性皮膚炎モデルとして知られるオキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動を顕著に抑制し、優れた止痒効果を有することが明らかとなった。
さらに、D,L−スルフォラファンを、引っ掻き行動回数の測定開始の60分前に単回経口投与することにより、引っ掻き行動が抑制されたという結果は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、即時的に止痒効果を有することを示唆するものである。
本発明は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対する止痒剤やそう痒の改善又は予防のための化粧品組成物又は食品組成物として利用できる。
Claims (5)
- スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有する、止痒剤。
- アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症に伴う難治性そう痒に対する、請求項1記載の止痒剤。
- アトピー性皮膚炎に伴う難治性そう痒に対する、請求項2記載の止痒剤。
- スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有する、そう痒の改善又は予防のための化粧品組成物。
- スルフォラファン又はその前駆物質を有効成分として含有する、そう痒の改善又は予防のための食品組成物。
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