JPWO2017061519A1 - ケイ素酸化物で被覆された酸化鉄粒子を含む積層塗膜用組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を含む積層塗膜用組成物であり、上記酸化鉄粒子の粒子径が1〜50nmであり、上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の波長620〜750nmの光線の平均反射率が25%以下であることを特徴とする積層塗膜用組成物を提供する。
また、本発明は、上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、複数個の酸化鉄粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したものであって、上記凝集体の大きさが50nm以下であり、且つ、上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、その粒子径が、上記凝集体の径の100.5%以上、190%以下であるものとして実施することができる。
特に、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を赤色系の塗装に対するクリアー塗膜用途目的の塗装用組成物や顔料としての使用、並びにケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子と他の顔料等と混ぜることで積層塗膜用組成物として好適に用いることが可能であることから、酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部を被覆するケイ素酸化物は非晶質を含むことが好ましい。
なお、酸化鉄粒子とは、酸化鉄を主成分とする粒子の意味に解釈すべきであり、意図せずに混入する不純物やもしくは意図的に配合された他の成分を含むものであっても、酸化鉄が他の成分よりも重量部とモル比との少なくとも何れか一方において多く配合されている粒子にあっても、本発明における酸化鉄粒子に含まれる。
本発明においては、1個の酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子にあっては、上記酸化鉄粒子の一次粒子径が1〜50nmであることが好ましく、上記酸化鉄粒子の一次粒子径に対するケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の一次粒子径の割合が100.5%以上190%以下であることが好ましい。酸化鉄粒子に対するケイ素酸化物の被覆が薄すぎると、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が有する色特性に関する効果並びに光触媒能の低減効果を発揮し得なくなる恐れがあることから、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の一次粒子径が、酸化鉄粒子の一次粒子径の100.5%以上であることが好ましく、被覆が厚すぎる場合や、粗大な凝集体を被覆した場合には色特性の制御が困難となることから、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の一次粒子径が、酸化鉄粒子の粒子径の190%以下であることが好ましい。
また、本発明に係るケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、複数個の酸化鉄粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子であってもよいが、一定の大きさを超えた上記凝集体をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、1個の酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に比べて反射率等の色特性の効果が得にくいことから好ましくない。ここで、一定の大きさを超えた上記凝集体とは、例えば、その大きさが50nmを超えるものを言う。そして、1個の酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子と同様の理由により、複数個の酸化鉄粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、その粒子径が、上記凝集体の径の100.5%以上190%以下であることが好ましい。ここで、上記凝集体の径とは、上記凝集体の最大外周間の距離とする。
ここで、波長620〜750nmの光線の平均反射率とは、波長620〜750nmの波長領域における、各測定波長の反射率の単純平均値をいう。
波長620〜750nmの光線の平均反射率が25%以下であるケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を含む積層塗膜用組成物を塗料に適用した場合には、塗料の発する色特性を損なわず、また積層塗膜においてはハイライトとシェードとの差を大きくすることが出来ることから、本発明の積層塗膜用組成物は、積層塗膜に好適に用いることが可能である。本発明の積層塗膜用組成物を単層塗膜に用いても構わない。
本発明に係るケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、粒子径が従来のものよりも小さいことによって表面積が増大しただけでなく、コアとなる酸化鉄粒子の結晶性が高いことも、上記波長200〜420nmの光線に対する透過率が低いものとなる要因であると考えている。
このように、本発明においては、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子について、FT−IR測定とXRD測定を行い、FT−IR測定においてケイ素酸化物に由来するピークを確認するとともに、XRD測定においてはケイ素酸化物に由来するピークを確認しないことをもって、ケイ素酸化物が非晶質であることを確認した。その他、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子について、STEM観察を行い、ケイ素酸化物由来の結晶格子を確認しないことをもって、ケイ素酸化物が非晶質であることを確認することもできる。
また、本発明においては、酸化鉄粒子のケイ素酸化物による被覆の状態は、TEMやSTEMなどの電子顕微鏡で確認した。
また、蛍光発光の影響を考えたが、蛍光分光光度計(製品名:FP−6500、日本分光製)にて励起波長220〜750nm、蛍光波長220nm〜750nmの測定範囲おいて、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に含まれる官能基を変更する前後の該粒子の蛍光スペクトルを測定したところ、両者において蛍光発光は見られなかった。
本発明に係るケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の製造方法は、例えば、第1のマイクロリアクターを用いて酸化鉄粒子を作製し、これに続く第2のマイクロリアクターによって酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆する方法や、希薄系での反応をバッチ容器内で行うなどの方法で酸化鉄粒子を作製し、引き続き希薄系での反応によって先述した酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部にケイ素酸化物の被覆を行うなどの方法、またビーズミルなどの粉砕法で酸化鉄粒子を作製し、その後に反応容器内で酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部にケイ素酸化物の被覆を行う方法などが挙げられる。また本願出願人よって提案された特開2009−112892号公報にて記載されたような装置並びに方法を用いても良い。特開2009−112892号公報に記載の装置は、断面形状が円形である内周面を有する攪拌槽と、該攪拌槽の内周面と僅かな間隙を在して付設される攪拌具とを有し、撹拌槽には、少なくとも二箇所の流体入口と、少なくとも一箇所の流体出口とを備え、流体入口のうち一箇所からは、被処理流体のうち、反応物の一つを含む第一の被処理流体を攪拌槽内に導入し、流体入口のうちで上記以外の一箇所からは、前記反応物とは異なる反応物の一つを含む第二の被処理流体を、上記第一の被処理流体とは異なる流路より攪拌槽内に導入するものであり、攪拌槽と攪拌具の少なくとも一方が他方に対し高速回転することにより被処理流体を薄膜状態とし、この薄膜中で少なくとも上記第一の被処理流体と第二の被処理流体とに含まれる反応物同士を反応させるものであり、三つ以上の被処理流体を攪拌槽に導入するために、図4及び5に示すように導入管を三つ以上設けても良いことが記載されている。
本発明においては、少なくとも酸化鉄粒子の作製を、マイクロリアクターを用いて行うことが好ましく、特許文献6に記載の流体処理装置と同様の原理の装置を用いて、酸化鉄粒子の作製と作製された酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆してケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を作製することが好ましい。マイクロリアクターを用いて酸化鉄粒子を作製することによって酸化鉄粒子の結晶性に歪等が発生しにくいことから、反射率等の色特性を制御する上で好適である。
本発明においては、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、目的や必要に応じて各種の分散剤や界面活性剤を用いてもよい。特に限定されないが、分散剤や界面活性剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化物原料液、酸化物析出溶媒、ケイ素酸化物原料液の少なくともいずれか1つの流体に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化鉄原料液、酸化物析出溶媒、ケイ素酸化物原料液とも異なる、別の流体に含まれていてもよい。
本発明に係る積層塗膜用組成物にC.I.Pigment Red 123やC.I.Pigment Red179のようなペリレン系顔料を含むことによって、より彩度が高く、ハイライトとシェードの差が大きい塗装体を構成できるため、特に赤色の塗装体には好適である。
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、酸化鉄原料液、酸化鉄析出溶媒、並びにケイ素酸化物原料液を調製した。具体的には表1の実施例1に示す酸化鉄原料液の処方に基づいて、酸化鉄原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄原料液を調製した。また、表1の実施例1に示す酸化鉄析出溶媒の処方に基づいて、酸化鉄析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄析出溶媒を調製した。さらに、表1の実施例1に示すケイ素酸化物原料液の処方に基づいて、ケイ素酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、ケイ素酸化物原料液を調製した。
なお、表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、97wt%H2SO4は濃硫酸(キシダ化学製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、Fe(NO3)3・9H2Oは硝酸鉄九水和物(関東化学製)を使用した。
実施例で得られた洗浄処理後のケイ素酸化鉄被覆酸化鉄粒子のウェットケーキサンプルの一部をプロピレングリコールに分散させ、さらにイソプロピルアルコール(IPA)で100倍に希釈した。得られた希釈液をコロジオン膜またはマイクログリッドに滴下して乾燥させて、TEM観察用試料またはSTEM観察用試料とした。
TEM−EDS分析によるケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の観察及び定量分析には、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(JEOL製)を備えた、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を1万倍以上とした。実施例1〜3の粒子径(D)は一次粒子径であり、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の最大外周間の距離より算出し、100個の粒子について粒子径を測定した結果の平均値を示した。同じく実施例1〜3のコア粒子径(Dc)は酸化鉄粒子の一次粒子径であり、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のコアとなる酸化鉄粒子の最大外周間の距離より算出し、100個の粒子についてコア粒子径を測定した結果の平均値を示した。また、粒子一個についてEDS分析を行い、コアとなる酸化鉄粒子に含まれる元素と、シェルとなるケイ素酸化物に含まれる元素とのモル比から、SiO2/Fe2O3のモル比に換算し、10個の粒子について平均値を算出した。また、シェルとなるケイ素酸化物の厚み(以下、シェル層の厚みともいう)を計測した。粒子1個について4箇所測定し、粒子10個の平均値を表2の「被覆厚み」の項目に記載した。以下、コアとなる酸化鉄粒子をコアともいい、シェルとなるケイ素酸化物をシェルもしくはシェル層ともいう。
STEM−EDS分析による、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子中に含まれる元素のマッピング及び定量には、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(JEOL製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 EMPYREAN(スペクトリス株式会社PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10〜100[°2Theta] Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度0.3°/minとした。各実施例で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の乾燥粉体を用いてXRD測定を行った。
FT−IR測定には、フーリエ変換赤外分光光度計、FT/IR−4100(日本分光製)を用いた。測定条件は、ATR法を用い、分解能4.0cm−1、積算回数1024回である。
透過スペクトルは、可視紫外吸光分光光度計(製品名:UV−2450、島津製作所製)を使用した。測定範囲は200〜800nmとし、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。
透過スペクトルは、実施例2を除き、プロピレングリコールにケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をFe2O3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液を測定試料として用い、実施例2については、酢酸ブチルにケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をFe2O3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液を測定試料として用いた。
ヘーズ値測定には、ヘーズ値メーター(型式 HZ−V3、スガ試験機製)を用いた。光学条件としてJIS K 7136、JIS K 7361に対応した、ダブルビーム方式で、光源としてD65光を使用した。測定には、厚み1mmの液体用セルを用いた。
反射スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:SolidSpec−3700、島津製作所製)を使用した。測定範囲は250〜2500nmとし、サンプリングレートを2.0nm、測定速度を中速、測定方式はダブルビーム測光方式として測定し、鏡面反射と拡散反射とを測定する全反射測定を行った。また粉末を測定する際のバックグラウンド測定(ベースライン設定)には、標準白板(製品名:Spectralon(商標)、Labsphere製)を使用した。各実施例で得られケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の乾燥粉体を用いて反射スペクトルを測定した。波長620〜750nmの波長領域について、各測定波長における反射率から単純平均値を算出し、平均反射率とした。
実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に、アセチル基を付与するために、以下の操作を行った。まず、実施例1で得られた1重量部のケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を99重量部のプロピレングリコールに投入し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、65℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理し、分散液を調製した。上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のプロピレングリコール分散液に1重量部のケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に対して2重量部のピリジンと1重量部の無水酢酸を投入し、上記高速回転式分散乳化装置を用いて、65℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理した。得られた処理液を26,000G、15分の条件で遠心分離し、上澄みを分離して沈降物を得た。その沈降物の一部を−0.10MPaG、25℃にて20時間乾燥させて乾燥粉体を得た。TEM観察の結果、実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子はコア粒子径(Dc)が5.47nm、粒子径(D)が8.19nmであり、実施例1と略同様の粒子径であることを確認した。D/Dcは149.7%であった。
比較例1として、C液としてケイ素酸化物原料液を用いないこと以外は、実施例1と同じ条件(C液の条件を除く)とすることで、表面をケイ素酸化物で被覆されていない酸化鉄粒子を作製した。実施例1と同様の方法で、TEM観察、反射スペクトル、XRD、透過スペクトル及びヘーズ値を測定した。実施例1のコア粒子径と同様の方法で測定した粒子径は6.40nmであり、XRD測定結果より、酸化鉄のピークのみが検出された。吐出液のpHは13.89(測定温度29.6℃)であった。得られた酸化鉄粒子分散液中の酸化鉄粒子は既に凝集していた。
実施例3として、特開2009−112892号公報に記載の装置並びにA液(酸化鉄原料液)、B液(酸化鉄析出溶媒)、C液(ケイ素酸化物原料液)の混合・反応方法を用いた以外は、実施例1と同じ条件とすることでケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を作製した。ここで、特開2009−112892号公報の装置とは、同公報の図4に記載の装置であって、攪拌槽の内径が均一であるものを用い、撹拌槽の内径が420mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周面と間隙が1mm、攪拌羽根の回転数は実施例1で用いた流体処理装置の処理用部10の回転数と同じ(1130rpm)とした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させ、攪拌槽の内周面に圧着されたA液とB液の混合液からなる薄膜中にC液を加えて混合し反応させた。TEM観察の結果、コアが1個の酸化鉄粒子であり、コアの表面の一部をケイ素酸化物で被覆した、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が観察され、コアとなる酸化鉄粒子の表面に厚み1.0〜2.0nm程度のケイ素酸化物の被覆層(シェル)が観察された。同じく実施例3で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子について、実施例1と同様にSTEMを用いたマッピングを行った結果、HADDF像にて観察された粒子に対して、酸素(O)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、鉄(Fe)についてはHADDF像で観察された粒子よりも半径で約1.0〜2.0nm程度小さく観察され、ケイ素(Si)については主として被覆層に分布している様子が観察された。粒子径(D)が16.9nm、シェルとなるケイ素酸化物の厚み(被覆厚み)が1.0〜2.0nmで、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のD/Dcは113.4〜131.0%であった。実施例3で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のXRD測定結果より、酸化鉄(Fe2O3)に由来するピークが観察され、その他のピークは観察されなかった。
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、酸化鉄原料液、酸化鉄析出溶媒、並びにケイ素酸化物原料液を調製した。具体的には表3の実施例4に示す酸化鉄原料液の処方に基づいて、酸化鉄原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄原料液を調製した。また、表3の実施例4に示す酸化鉄析出溶媒の処方に基づいて、酸化鉄析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄析出溶媒を調製した。さらに、表3の実施例4に示すケイ素酸化物原料液の処方に基づいて、ケイ素酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、ケイ素酸化物原料液を調製した。
なお、表3に記載の化学式や略記号で示された物質については、97wt%H2SO4は濃硝酸(キシダ化学製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、Fe(NO3)3・9H2Oは硝酸鉄九水和物(関東化学製)を使用した。
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、酸化鉄原料液、酸化鉄析出溶媒、並びにケイ素酸化物原料液を調製した。具体的には表5の比較例2に示す酸化鉄原料液の処方に基づいて、酸化鉄原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄原料液を調製した。また、表5の比較例2に示す酸化鉄析出溶媒の処方に基づいて、酸化鉄析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化鉄析出溶媒を調製した。さらに、表5の比較例2に示すケイ素酸化物原料液の処方に基づいて、ケイ素酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、ケイ素酸化物原料液を調製した。
なお、表5に記載の化学式や略記号で示された物質については、60wt%HNO3は濃硝酸(キシダ化学製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、Fe(NO3)3・9H2Oは硝酸鉄九水和物(関東化学製)を使用した。
比較例3として、和光純薬製酸化鉄(III)(α−Fe2O3)を、実施例1と同様の方法でTEM観察、ヘーズ値、透過スペクトル、反射スペクトル、XRDを測定した。図9に比較例3の酸化鉄粒子のTEM写真を示す。平均一次粒子径は119.6nmであった。なお、比較例3のTEM観察用試料の作製にあっては、上記の市販の酸化鉄(III)(α−Fe2O3)を洗浄せずに用いた。XRD測定の結果、α−Fe2O3(ヘマタイト)のピークが明らかに検出された。
また、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、比較例1で得られた酸化鉄粒子に比べて、波長550〜780nm付近の反射率が低く、非晶質のケイ素酸化物被覆が色特性に変化を与えたことを示している。実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の場合にあっては、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子よりも、波長550〜780nm付近の反射率が高く、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子にアセチル基を付与することによっても、色特性が変化することが示された。これは粒子に含まれる官能基を変更することによって、色特性が変化することが示されたものであると考えられる。また実施例3で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子については、波長550〜780nm付近の反射率が実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の反射スペクトルより低く、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の反射スペクトルよりも高い反射率であった(図示無)。しかし、表面をケイ素酸化物で被覆していない酸化鉄である比較例1と、酸化鉄粒子の凝集体をケイ素酸化物で被覆した比較例2(酸化鉄粒子の凝集体の粒子径が50nmを超えるケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子)とは、反射率に大きな違いは見られなかった。また、実施例4で得られた、酸化鉄粒子の凝集体を被覆したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子(酸化鉄粒子の凝集体の粒子径が50nmを超えないケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子)は、波長550〜780nmの光線に対する反射率が、実施例1に比べて高いものであったが、近いものであり、比較例2のように酸化鉄粒子の凝集体の粒子径が50nmを超えるケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に比べて低いものであった。酸化鉄粒子に対するケイ素酸化物による表面の被覆状態によって反射率を制御出来ることがわかった。一方、酸化鉄の凝集体、特に酸化鉄粒子の50nmを超える凝集体にケイ素酸化物の被覆をした場合には、色特性に関する効果が下がることがわかった。
なお、実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を、酢酸ブチルに対して酸化鉄(Fe2O3)としての濃度が0.05重量%となるよう分散させた分散液の透過スペクトルを測定したところ、上述の実施例1並びに比較例1の各分散液の透過スペクトルと略同じ結果が得られた。
上記実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を酢酸ブチルにFe2O3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.12%であり、また、酢酸ブチルにFe2O3として0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.22%であり、どちらも非常に透明性の高い分散液であった。さらに、上記実施例2で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を酢酸ブチルにFe2O3として2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.99%であり、非常に透明性の高い分散液であった。
上記実施例3で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFe2O3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.09%であり、また、水にFe2O3として0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.14%であり、どちらも非常に透明性の高い分散液であった。さらに、上記実施例3で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFe2O3として2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.54%であり、非常に透明性の高い分散液であった。
上記実施例4で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFe2O3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.91%であり、また、水にFe2O3として0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は1.46%であり、実施例1で得られたケイ素被覆酸化鉄粒子程ではないが、透明性の高い分散液であった。さらに、上記実施例4で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFe2O3として2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は1.64%であり、実施例1で得られたケイ素被覆酸化鉄粒子程ではないが、透明性の高い分散液であった。
Claims (8)
- 酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を含む積層塗膜用組成物であり、
上記酸化鉄粒子の粒子径が1〜50nmであり、
上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の波長620〜750nmの光線の平均反射率が25%以下であることを特徴とする積層塗膜用組成物。 - 上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を含む分散体が、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下であり、波長620〜780nmの光線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の積層塗膜用組成物。
- 上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を含む分散体における酸化鉄の濃度が2重量%において、ヘーズ値が2.0%以下であるケイ素酸化物被覆酸化鉄分散体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層塗膜用組成物。
- 上記ケイ素酸化物が非晶質を含むことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の積層塗膜用組成物。
- 上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、1個の酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したものであって、上記酸化鉄粒子の一次粒子径が50nm以下であり、且つ、上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の一次粒子径が、上記酸化鉄粒子の一次粒子径の100.5%以上、190%以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の積層塗膜用組成物。
- 上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、コアとなる1個の酸化鉄粒子の表面全体を、シェルとなるケイ素酸化物で被覆したコアシェル型ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子であることを特徴とする、請求項5に記載の積層塗膜用組成物。
- 上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、複数個の酸化鉄粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部をケイ素酸化物で被覆したものであって、上記凝集体の径が50nm以下であり、且つ、上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子は、その粒子径が、上記凝集体の径の100.5%以上、190%以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の積層塗膜用組成物。
- 上記積層塗膜用組成物に、ペリレン系顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の積層塗膜用組成物。
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