JPWO2016189583A1 - 生体試料の解析方法 - Google Patents

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    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/02Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms

Abstract

生体資料の解析方法は、解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質のレポーター遺伝子を導入した細胞を含む生体試料を生存状態で維持すること(S1)と、複数の前記細胞を含むような複数の領域を設定するとともに、前記複数の領域について、前記細胞から放射される発光を遮光状態で撮影することで静止画としての発光画像を経時的に複数取得すること(S2)と、前記複数の領域について、前記生体試料に対し光照明して撮影することで明視野の連続画像を経時的に複数取得すること(S3)と、同一の前記領域において前記発光画像及び前記連続画像のそれぞれから得られる生物学的情報を、異なる前記領域同士で比較すること(S5)とを含む。

Description

本発明は、生体試料の解析方法に関する。
発生過程や幹細胞の各種細胞への分化過程などにおいて、細胞又は組織は、形態的又は機能的な変化を伴う細胞特性の変化を起こす。このような変化のプロセスを解析する方法として、例えばRT−PCRやウェスタンブロッティングなどによって、遺伝子発現を解析する方法が知られている。しかしながら、RT−PCRやウェスタンブロッティングなどの方法では、同じサンプルを用いた経時的な観察ができないという課題がある。
同じサンプルを用いた経時的な観察を行える方法として、日本国特開2014−33617号公報には、遺伝子の発現に伴って発光タンパク質の発現が見られるように調製された細胞を用いた技術が開示されている。また、発光タンパク質を用いた幹細胞の心筋への分化過程における遺伝子発現を解析した事例として、非特許文献「発光イメージングによる心筋分化マーカー遺伝子発現の可視化、林太朗他、再生医療(メディカルレビュー社)、2014年1月27日発行、第13巻増刊号、p.323」が知られている。
これらの方法では、発光画像を取得することと明視野画像を取得することとが一定時間毎に繰り返し行われる。一定時間間隔で取得された発光画像からは遺伝子発現の経時的な変化が解析され、一定時間間隔で取得された明視野画像からは形態の経時的な変化が解析される。しかしながら、このような方法では、例えば心筋細胞の拍動のような比較的速い変化を明視野画像に基づいて定量的に解析することは困難である。
心筋の拍動のような速い変化を解析する技術として、短い時間間隔で連続的に取得された画像を用いて解析が行われる画像相関解析法のような手法が知られている。日本国特開2012−194168号公報、日本国特開2015−19620号公報、及び日本国特開2013−192468号公報には、連続して取得された画像から心筋細胞の拍動や、遺伝子発現の変化が解析されるという技術が開示されている。しかしながら、これらの技術では、心筋細胞の拍動という機能的な変化しか解析できなかったり、遺伝子発現の変化という遺伝的な変化しか解析できなかったりする。
幹細胞から拍動する心筋細胞への分化といったプロセスにおいては、実際には細胞内において、その変化を生じさせる遺伝子が発現し、タンパク質レベルの変化が起こった後、機能的・形態的変化が起こる。このため、遺伝子発現と機能的・形態的変化とにはタイムラグが存在すると考えられる。しかし、従来のRT−PCR又はウェスタンブロッティングといった遺伝子解析又はタンパク質解析の手法を用いて、遺伝子発現と機能的・形態的変化とのタイムラグを解析した報告はない。また、RT−PCR又はウェスタンブロッティングを用いると、遺伝子発現と拍動細胞の運動という機能的変化を同じサンプルで定量的に検出することはできない。
そこで、例えばレポーター遺伝子を導入することで、解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質を発現する細胞を生存状態で維持し、遺伝子発現と機能的・形態的変化とを解析することが考えられる。
また、対象とする生体試料の異なる領域において、互いに異なる分化状態となることが考えられる。このため、対象とする生体試料の異なる領域における各々の状態を評価することが求められる。
本発明は、生体試料の異なる領域における各々の状態を評価できる生体試料の解析方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、生体試料の解析方法は、解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質のレポーター遺伝子を導入した細胞を含む生体試料を生存状態で維持することと、複数の前記細胞を含むような複数の領域を設定するとともに、前記複数の領域について、前記細胞から放射される発光を遮光状態で撮影することで静止画としての発光画像を経時的に複数取得することと、前記複数の領域について、前記生体試料に対し光照明して撮影することで明視野の連続画像を経時的に複数取得することと、同一の前記領域において前記発光画像及び前記連続画像のそれぞれから得られる生物学的情報を、異なる前記領域同士で比較することとを含む。
本発明によれば、生体試料の異なる領域における各々の状態を評価できる生体試料の解析方法を提供できる。
図1は、一実施形態に係る生体試料の解析方法の一例の概略を示す図である。 図2は、一実施形態に係る生体試料の解析を行うためのシステムの構成例の概略を示す図である。 図3は、一実施形態に係る生体試料の解析方法の一例を示すフローチャートである。 図4は、一実施形態に係る生体試料の解析方法の一例を示すフローチャートである。 図5は、一実施形態に係る撮影処理の一例を示すフローチャートである。 図6は、一実施形態に係る解析処理の一例を示すフローチャートである。 図7は、関心領域の一例を示す図である。 図8は、心筋特異的に発現するcTnTのプロモーターにルシフェラーゼを繋いだレポーターベクターを導入したマウスiPS細胞由来の胚様体が心筋に分化する過程に係る図である。 図9は、ROI1における、時間に対する遺伝子発現量及び拍動強度の計測結果の一例を示す図である。 図10は、ROI2における、時間に対する遺伝子発現量及び拍動強度の計測結果の一例を示す図である。 図11は、ROI3における、時間に対する遺伝子発現量及び拍動強度の計測結果の一例を示す図である。 図12は、ROI4における、時間に対する遺伝子発現量及び拍動強度の計測結果の一例を示す図である。 図13は、時間に対する同期性指標値の計測結果の一例を示す図である。 図14は、ROI1乃至ROI4における、T、T、T及びE(72)の計測結果の一例を示す図である。 図15は、T−TとT−Tとの関係の一例を示す図である。 図16は、T−TとE(72)との関係の一例を示す図である。
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、生体試料の解析方法に関する。本実施形態に係る方法の概略を図1に示す。
ステップS1に示すように、本方法は、解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質のレポーター遺伝子を導入した細胞を含む生体試料を生存状態で維持することを含む。
細胞は、種々の生物に由来する細胞であり得る。細胞は、例えば、多細胞生物に由来する細胞であり得る。細胞は、特に、ヒトやマウスといった哺乳類に由来する細胞であり得る。細胞は、培養細胞であってもよい。細胞は、単一の種類であってもよい。また、細胞は、複数の種類を含んでいてもよい。また、細胞は、細胞シートなど層状の構造を有していてもよい。細胞は、未分化の状態の細胞であり、分化能を有していてもよい。また、細胞は、ある程度分化しているものの、さらに分化し得る状態の、例えば前駆細胞といった細胞でもよい。前駆細胞には、例えば心筋前駆細胞や繊毛前駆細胞が含まれる。細胞は、本実施形態の実施において時間経過とともに分化が進行してもよい。細胞は、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの幹細胞でもよい。また、細胞は、幹細胞から分化した細胞でもよい。また、生体試料は、ゼブラフィッシュ、ニワトリ、マウス等の胚などの細胞でもよい。
解析対象である遺伝子には、例えば特定の細胞に分化したか否かを判断するために用いられる分化マーカーが含まれる。分化マーカーは、例えば特定の細胞に分化する過程で発現する遺伝子である。これらの遺伝子は、分化に関連する遺伝子であり、分化の開始前に、分化の進行途中で、又は分化の完了後に、発現が変動する。これらのマーカー遺伝子は、対象とする細胞が本来有する遺伝子であることが好ましい。また、これらのマーカー遺伝子は、解析対象とする細胞の由来生物とは異なる生物のホモログ遺伝子であってもよい。例えば、解析対象がマウス由来の細胞である場合にヒトの同等機能のマーカー遺伝子が用いられてもよいし、解析対象がヒト由来の細胞である場合にマウスの同等機能のマーカー遺伝子が用いられてもよい。
また、解析対象である遺伝子には、例えば心筋分化マーカーが含まれる。心筋分化マーカーは、例えば心筋分化の過程で発現する遺伝子であり、心筋細胞に分化にしたときに特異的に発現する遺伝子である。心筋分化マーカーとしては、異なる複数の遺伝子が挙げられる。心筋分化マーカー遺伝子は、例えば、cTnT、GATA4、NCX1などを含む。繊毛細胞分化マーカーは、例えば繊毛細胞への分化の過程で発現する遺伝子であり、例えばFoxj1などを含む。未分化マーカー遺伝子は、例えば、幹細胞が未分化な状態において発現する遺伝子である。未分化マーカー遺伝子は、例えばNanog、Tcf3などを含む。
本実施形態に係る方法は、特定の細胞への分化能を有する少なくとも1つの細胞を、分化マーカー遺伝子又は未分化マーカー遺伝子の発現に応じて発光する発光タンパク質で標識することを含む。本実施形態に係る方法は、さらに緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Proein;GFP)のような蛍光タンパク質を併用することを含んでもよい。また、本実施形態に係る方法は、心筋細胞への分化能を有する細胞を、心筋分化マーカー遺伝子又は未分化マーカー遺伝子の発現に応じて発光する発光タンパク質で標識することを含む。
マーカー遺伝子は、例えば、その発現に依存して発光タンパク質の発現が促進されるように設計されている。例えば、細胞が有する核酸において、これらのマーカー遺伝子のための転写因子結合領域の下流に、発光タンパク質の遺伝子が配置され得る。この場合、本来マーカー遺伝子の発現を制御するための転写因子が、発光タンパク質の遺伝子の上流の転写因子結合領域に結合することで、発光タンパク質の遺伝子の発現が促進される。
発光タンパク質とは、照明光による光エネルギーに依存することなく、発光が生じる化学反応を触媒する酵素を意味する。発光タンパク質の遺伝子を細胞内の特定の遺伝子に組み込むことでレポーター遺伝子として機能する。発光タンパク質の一例として、ルシフェラーゼが挙げられる。ルシフェラーゼは、ATPが存在する場合に、基質であるルシフェリンの酸化反応を触媒する。この反応の際、ルシフェリンが発光する。
ルシフェラーゼは、ホタルやバクテリアといった種々の生物に由来するものであり得る。ルシフェラーゼは、例えば、緑色の発光を生じさせるEmerald Lucルシフェラーゼ、赤色の発光を生じさせるCBRルシフェラーゼ、青色の発光を生じさせるウミシイタケルシフェラーゼなどであり得る。これらルシフェラーゼの遺伝子は、市販されているものであってよい。ルシフェラーゼ遺伝子を予め含有する市販のべクターの例として、Emaerald Luc vetor(東洋紡)、CBR vector(Promega)、Renilla vector(Promega)、Nano−Luc vector(Promega)等が挙げられる。
解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質のレポーター遺伝子を導入した細胞とは、例えば、マーカー遺伝子の転写因子結合領域と、その下流に位置する発光タンパク質の遺伝子とを含む核酸が導入された細胞である。マーカー遺伝子の転写因子結合領域と発光タンパク質とのセットは、複数使用されていてもよい。複数使用される場合、これらの複数のセットは互いに異なるものであってもよい。
細胞が生存状態で維持されるとは、例えば、細胞が固定されていない状態である。好ましくは、細胞は、分化し得る状態で維持される。また、細胞は、未分化の状態に戻り得る状態で維持される。具体的には、細胞は、LIF、Dorsomorphin C、Cycrosporine Aなどが添加された培地において培養される。あるいは、細胞は、分化が阻害される条件下で培養され、例えば、分化の阻害剤が添加された培地において培養される。
ステップS2に示すように、本実施形態に係る方法は、複数の細胞を含むような領域を複数設定することを含む。また、本方法は、その複数の領域について、細胞から放射される発光を遮光状態で撮影することで静止画としての発光画像を取得することを含む。すなわち、細胞が標識された後、細胞は生存状態で維持される。この状態で、静止画としての発光画像が取得される。この際、各々が複数の細胞を含むような複数の領域が解析領域として設定される。これら複数の領域について、それぞれ発光画像が得られる。このとき、1回の撮影で複数の領域の発光画像が取得され、取得された画像から各領域の画像が抽出されてもよい。また、複数の領域について、それぞれ個別に撮影が行われてもよい。また、複数の画像のそれぞれから1つ又は複数の領域の画像が抽出されてもよい。
領域の選択は、例えば、コンピューター上で実行されるプログラムを用いて行われ得る。この場合、1つの発光画像において、細胞を含む領域を円若しくは四角等で囲むことで、又はフリーハンドで囲むことで関心領域(region of interest;ROI)が指定され得る。
発光画像の取得条件は、例えば次のように設定される。すなわち、解析すべき遺伝子の発現が変動することを考慮して、取得すべき下限値において発光を検出できる程度の露光時間が必要である。また、発光タンパク質としてのルシフェラーゼ等の酵素反応により発生する生物発光の光量を検出できる撮像感度が必要である。また、当該撮像感度に応じてバックグラウンドと有意に区別し得る程度に比較的長い露光時間が必要である。さらに、定量性の高い解析を実行するために、できるだけ短時間で鮮明な発光画像を得るような発光イメージングシステムを使用することが好ましい。発光画像を取得するための露光時間は、例えば1乃至60分の範囲から選ばれる。発現量の多い遺伝子解析では、数秒乃至1分の露光時間で発光画像が取得されてもよい。発現量又は発現量の変動が少ない遺伝子解析では、30分乃至90分の露光時間で発光画像が取得されてもよい。このように、露光時間は種々の条件に応じて適宜に選択され得る。一般に遺伝子発現量の変動は、数時間乃至数週間の長期間で経時的に比較されることが多い。したがって、例えば10分以上の露光時間で得られた静止画でも、比較され得るのに充分に短い露光時間で得られた画像となり得る。binningについては、1×1が好ましいが、2×2や4×4でもよい。
生物発光は、経時的に撮影される。その結果、複数の静止画としての発光画像が取得される。発光画像は、発光する細胞に由来する発光シグナルが検出される領域と、発光しない細胞及び細胞が存在しない部分に由来する発光シグナルが検出されない領域とを含む。これらの領域に基づいて、細胞毎又はコロニー毎の発光の状態、すなわち、遺伝子発現の状態が解析され得る。また、経時的に複数枚の発光画像が取得されることで、例えば心筋の拍動が薬剤等による刺激や心臓疾患に応じて変動するといった解析が可能になる。またマイクロウェルプレート等のマルチウェル容器や、複数のディッシュ等が併用されることで、多数の試料について発光画像の取得が行われてもよい。複数の試料の観察が並行して行われることで、化合物、増殖因子、siRNA等の添加物の有無による比較評価、また、添加物の濃度依存性の比較評価が行われ得る。さらに、複数の反応容器が用いられることで、実験の再現性の検討も可能となる。
撮影は、例えば、発光に応じた特定の波長を有した光のみを主に透過させる光学フィルターと、光を電気信号に変換する撮像素子と、電気信号から発光画像を作り出す画像処理手段とを含む装置を用いて行われ得る。発光画像を取得するための装置の例として発光イメージングシステムが挙げられる。発光イメージングシステムは、例えば、発光イメージングシステムLV200(オリンパス株式会社)を含む。
ステップS3に示すように、本実施形態に係る方法は、複数の領域について、生体試料に対し光照明して撮影することで連続画像を取得することを含む。生体試料に対し光照明して撮影することで得られる画像は、いわゆる明視野画像である。明視野画像とは、例えば、細胞に対して照射された照明光が、細胞で反射され又は細胞を透過して撮像素子に到達し、撮像素子がこの光を光電変換することにより得られる画像である。すなわち発光に基づくことなく、細胞の位置及び形態等が観察され得る。明視野画像は、位相差画像や微分干渉観察画像(DIC観察画像)を含む。本方法において、明視野画像は、発光画像の取得とほぼ同じタイミングで取得され得る。あるいは、明視野画像は、発光画像の取得からは独立して、任意のタイミングで取得され得る。このような明視野画像が連続して取得されることで連続画像が取得される。連続画像は、例えばビデオレートの動画となる。
例えば心筋細胞の解析が行われるとき、連続画像に基づいて細胞群の拍動が解析される。拍動とは、互いに接着した細胞集団が協調して収縮と弛緩とを繰り返すことによる細胞集団単位の周期的運動をいう。拍動現象は、細胞集団に属する個々の細胞の位置が、一定の軌道上を周期的に移動することによって認識され得る。顕微鏡による観察では、拍動において個々の細胞は、典型的には一定の直線上を往復するように観察される。拍動現象は、同一の細胞集団が同一の周期で運動することと、個々の細胞が周辺の細胞と類似した方向・大きさで運動することとの2点によって、拍動以外の位置変位と明確に区別され得る。
撮影画像によって拍動を認識するためには、収縮及び弛緩の過程に要する時間に比べて速いフレームレートによって連続的に撮影された連続画像(動画)が必要である。各フレームにおける個々の細胞位置は、前後の時間のフレーム画像を手がかりとして、手動又は各種の画像認識手法によって決定され得る。また、個々の細胞位置が特定されずに、画像の明暗パターンの運動が例えばオプティカルフローや画像相関法などの手法によって解析されることによっても拍動が認識され得る。
ステップS4に示すように、撮影が繰り返されるか否かが判定され、ステップS2及びステップS3の撮影は経時的に行われる。すなわち、撮影は、任意の間隔で連続的に行われる。例えば、撮影は、1分から12時間の間隔で行われ得る。また、1回の撮影の時間は任意に設定され得る。1回の撮影時間は、発光シグナルや透過光が十分に検出されるように調整され得る。
ステップS5に示すように、本実施形態に係る方法は、同一の領域において発光画像及び連続画像のそれぞれから得られる生物学的情報を、異なる領域同士で比較することを含む。
生物学的情報には、例えば分化状態が含まれる。複数の発光画像からは、発光量の変化が読み取られる。この発光量の変化は、例えば分化状態が識別され得る表現形式に変換される。複数の画像において、対応する関心領域(ROI)が特定される。特定された領域について、例えばコンピューター上のプログラムを用いて発光量が数値化され、記録される。
選択されたーつ又は複数の領域の遺伝子の発現は、発光量の変化として解析され得る。選択された複数領域の発光量の比較が行われることで、細胞又は領域ごとの発光量変化の比較が行われてもよい。複数の異なる遺伝子の発現が解析される場合には、例えばそれぞれの遺伝子のマーカーとして赤色と緑色といった色の異なるルシフェラーゼが用いられる。各々のルシフェラーゼの発光量の比較が行われることで、各遺伝子の発現量の違いが検出され得る。また、異なるルシフェラーゼの発光量が経時的に観察されることで、各遺伝子発現の比率の変動が解析され得る。
連続画像から得られる生物学的情報は、細胞の運動量を示してもよい。この運動量は、画像相関法を用いて取得され得る。また、生物学的情報は、運動量ベクトルの時間変化に関する主成分分析により解析されうる。
また、生物学的情報を比較することは、遺伝的変化と機能的変化とを定量的に検出することと、遺伝的変化と機能的変化との時間差又はタイムラグを検出することとを含み得る。ここで、遺伝的変化は、例えば、心筋分化マーカー遺伝子、心筋に特異的に発現する遺伝子、又は心臓の分化・発生に関与する遺伝子の発現の変化によって検出され得る。また、機能的変化は、拍動細胞への分化、又は分化した拍動細胞の運動の変化を含み得る。
本方法は、動画としての明視野連続画像の取得を含み、この動画に基づいて、細胞の拍動といった運動解析を行うことをさらに含み得る。一般に、画像に基づいて物体の運動を解析する方法が知られている。このような運動解析の手法には様々なものがある。例えばコンピュータビジョンでしばしば用いられるオプティカルフローや、流体力学に関する解析でしばしば用いられる相関解析といった手法が知られている。相関解析では、画像の相関関数の演算から物質の流速が求められる。このような方法は、画像相関法と呼ばれている。
画像相関法には、同一の撮像素子に二重露光した画像の自己相関関数を演算する方法と、異なる時刻に撮影された2枚の画像の相互相関関数を演算する方法とがある。撮像素子の進歩に伴い、高速に画像を取得することが容易となったため、相互相関関数を用いることが主流となっている。
例えばWeismanらは、細胞移動に伴う足場タンパク質の移動を解析するために、時空間画像相関分光法(Spatio−temporal Image Correlation Spectroscopy;STICS)を開発した(B. Hebert et al. (2005), "Spatiotemporal image correlation spectroscopy (STICS) theory, verification, and application to protein velocity mapping in living CHO cells", Biophys. J. 88, 3601-3614.)。例えばSTICSといった画像相関法によれば、画像の中の濃淡が検出されることで、細胞のような輪郭がはっきりしない画像も解析対象となり得る。この点は、特徴点等を利用するオプティカルフロー等の解析と比較して、細胞等を解析対象とすることに特に効を奏する。
STICSについて簡単に説明する。なお、ここで説明するSTICSは画像相関法の一例であり、適宜、改変が加えられてもよいし、画像間の相関を求める処理を含む別の方法が用いられてもよい。説明のため、連続画像の空間座標x及びyと時間座標tとを整数として取り扱う。撮影倍率又は撮影間隔から決定する比例係数との積を取ることにより、容易に試料の実際の位置又は撮影時間が取得され得る。また、ここでは画像は二次元であるものとして説明するが、本方法は、立体的な情報を持つ三次元画像に対しても、容易に拡張可能である。
試料は、画像の大きさをM×Mピクセルとして一定時間間隔で撮影され、動画としてのN枚の連続画像が取得される。このN枚の連続画像から時間間隔τである2枚1組の画像について画像相関演算が行われる。N枚の連続画像からは、(N−τ)組の画像について画像相関演算が行われる。次に、画像相関演算によって得られた(N−τ)枚の相関像を平均した平均画像相関像が求められる。平均画像相関像は、それぞれの相関像の対応するピクセル位置の画像データを加算して平均値を演算することで求められる。
以上の処理を数式で表すと次のようになる。時刻tに取得された座標(x,y)における画像の信号強度がI(x,y;t)であるとき、平均画像相関像は、次式(1)で表される。
Figure 2016189583
ここで、δI(x、y;t)は、信号強度の変動値であり、次式(2)で表される。
Figure 2016189583
式(1)、式(2)中の<I(x,y;t)>は、M×Mピクセルの大きさの画像のx及びyについて画像データを平均化することを示している。すなわちx,y,tの関数Fに対して、<F(x,y;t)>は次式(3)で定義される。
Figure 2016189583
なお、x及びyについて、周期的境界条件、すなわち、整数n及びmについて、F(x+nM,y+mM;t)=F(x,y;t)が成立する場合は、式(1)の分子に記載される相互相関関数はフーリエ変換を用いて高速に計算され得る。
また、時間とともに試料中の発現分布が移動することを鋭敏に捉えるために、解析する時間区分内で不動な成分、又は低速な成分が予め除去され得る。除去の方法の一例として、B. Hebert et al. (2005) に記載されているように各座標ごとに信号強度変化の低周波成分を除去する方法が採用され得る。また、定常成分が除去されてもよい。すなわち、移動成分Imovが次式(4)に従って計算され、Imovが式(1)のI(x,y;t)の代わりに用いられてもよい。
Figure 2016189583
次に、平均画像相関像を用いた解析方法について説明する。連続画像中の分布画像が時間とともに特定の方向へ移動しているとき、上述の方法によって得られる平均画像相関像R(ξ,η;τ)は、画像の中心から外れた位置に極大値を持つ分布画像となる。この極大値の位置を決定する方法の一つとして、ガウシアン分布を仮定して、相互相関画像に対して当てはめを行う方法がある。
すなわち、次式(5)で表されるガウシアンをA,β,p,q,Cを可変パラメータとして平均画像相関像に対して最小二乗法によって当てはめを行う。
Figure 2016189583
当てはめによって得られたp,qが、時間間隔τにおける平均画像相関像の極大位置(pτ,qτ)である。したがって、時間間隔τ(=1〜N−1)ごとに平均画像相関像の極大位置(pτ,qτ)が決定される。
画像中の分布の移動速度(v,v)は、次式(6)で表される極大位置と遅延時間の比例係数として決定される。
Figure 2016189583
統計的に正確なv,vを導出するため、最小二乗法などを用いた回帰分析によって比例係数v,vが算出されてもよい。
M×Mピクセルの全体画像に内包される、m×mピクセルの部分領域内の画像に対して上述の解析が行われることにより、その部分領域内での局所的な移動速度が導出され得る。すなわち、xがxからx+m−1であり、yがyからy+m−1である部分領域Aに対して画像相関が計算され、その部分領域に対する移動速度が決定され得る。多数の部分画像について局所的な移動速度が求められことによって、移動速度の分布が得られる。
撮影時刻が異なる複数枚の画像から、時刻tの直近のn枚の画像からなる時間区分が取り出され、上記の解析が行われることにより、時刻tの時点での移動速度が導出され得る。すなわち、tがtからt+n−1である画像に対して画像相関が計算されることで、例えば、この時間区分の中央の時刻t=t+(n−1)/2における移動速度が決定され得る。この時間区分を連続的、あるいは離散的にずらして移動速度が求められることにより、変化する移動速度が把握され、移動速度の経時的な解析が行われ得る。
上述の解析方法によって得られた移動速度は、画面上に表示されることによって、結果が可視化される。このことは、利用者が結果を視覚的に理解することを補助する。表示方法としては、例えば、連続画像上に速度ベクトルを表す図形が重ねて表示される方法が考えられる。速度ベクトルを表す図形としては、長さが移動速度の大きさに比例し、矢頭がベクトルの方向を示す矢印がある。また、矢印の色彩が速度の大きさに応じて変更されてもよい。
画像中の部分領域内で解析が行われ、局所的な移動速度が解析される場合、各部分領域の中央にベクトル表示が行われることにより、速度分布が可視化され得る。経時的な解析が行われた場合、時刻tの画像上に、その時刻tにおける速度ベクトルが重ねて表示されることによって、移動速度の経時的変化が可視化され得る。
上記のような運動解析によれば、例えば心筋に分化した細胞の拍動が解析され得る。すなわち、この運動解析によれば細胞の機能発現が解析され得る。本方法では、発光画像と動画である明視野連続画像とが、同一の試料について同時に取得され得る。ここで同時にとは、物理的に完全に同時にということを意味せず、生物学的に同時に、すなわち、例えば数分の差があっても同時とみなせる同時期にということを意味する。発光画像と動画である明視野連続画像とが、同一の試料について同時に取得され得るので、例えば幹細胞から心筋細胞への分化が、遺伝子発現と機能発現との両面から詳細に解析され得る。
なお、ここではSTICSについて説明したが、STICSに限らず種々の画像相関法が用いられ得るし、さらにオプティカルフローなど種々の運動解析法が用いられてもよい。
拍動する心臓の画像を連続的に解析するためには、対象としての心筋の運動速度の上限よりも速く撮影する連続画像取得工程と、得られた連続画像を経時的に比較して画像ごとの移動速度を演算する画像演算工程とを含む連続画像解析工程を実行することが重要である。このような連続画像解析工程を実行するための撮像素子や画像処理用ソフトウェアは、一般に入手可能である。例えば、画像処理用ソフトウェアとして、浜松ホトニクスから販売されているアクアコスモスが使用され得る。連続画像取得工程における取得されるべき画像の種類としては、LED等の照明光による明視野画像としての透過画像、反射画像、位相差画像、微分干渉画像等が挙げられる。明視野画像以外に、励起光を照明することで得られる蛍光画像が連続画像として解析されてもよい。また、これら明視野画像及び蛍光画像が併用されることで高速な生物学的解析の項目が増やされてもよい。連続画像取得工程における動画の撮影条件としての撮影間隔は、例えば10乃至800msの範囲から選ばれる。心筋の拍動を解析する場合は、撮影間隔は、例えば100乃至200msの範囲に設定されることが好ましい。本発明は、心筋の再生に関する遺伝学的解析に限らず、心臓の拍動の異常に関連する疾病(例えば不整脈や心筋梗塞)の遺伝学的解析にも適用され得る。
このような、発光画像に基づく遺伝子発現の解析と明視野画像の動画に基づく機能発現の解析とを同時に行えるシステムの概略を図2に示す。図2に示すように、この解析システム1は、図示しないハウジングに遮光状態で格納された顕微鏡10と、例えばパーソナルコンピュータといった各種演算を行うことができる演算装置20と、例えばキーボードやマウスといった演算装置20にユーザによる指示を入力するための入力部29とを備える。
顕微鏡10には、光学系12と光源14と撮像装置16とが設けられている。光学系12は、種々のレンズやミラーを含む。光源14は、明視野画像を得るために必要な任意の照明光(例えば白色光)を射出し、この光源14から射出された光は、光学系12を介して例えば幹細胞といった試料50に照射される。この試料50は、好ましくは所定の培養環境により細胞が生存可能に維持されるよう、培養チャンバ内に収容されている。撮像装置16は、例えばCCD等による撮像素子を含み、光学系12を介して試料50の顕微鏡画像に係る画像信号を生成する。
演算装置20は、撮影制御部21と、画像取得部22と、光源制御部23と、光学系制御部24と、静止画解析部25と、動画解析部26と、記録部27とを備える。撮影制御部21は、撮像装置16の動作を制御する。画像取得部22は、撮像装置16から画像を取得し、必要な画像処理等を行う。
光源制御部23は、光源14の動作を制御する。光学系制御部24は、光学系12を制御する。例えば明視野画像が取得されるときは、光源14から射出された照明光は、光学系12を介して試料50に照射される。また、明視野画像が取得されるときは、露光時間は比較的短くされる。一方、発光画像が取得されるときは、光源14から射出された照明光は遮断され、試料50は照明されない。また、発光画像が取得されるときは、露光時間は比較的長く設定される。
静止画解析部25は、例えば発光画像といった静止画の解析を行う。動画解析部26は、例えば上述の運動解析といった解析を行う。記録部27は、例えば発光画像や動画や静止画の解析結果や運動解析の結果を記録する。
以上のような解析システム1は、上記したとおり発光画像と動画である明視野連続画像とを、同一の試料について同時に取得することができる。さらに、解析システム1は、取得した画像に基づいて、例えば細胞の特性について遺伝子発現と機能発現との両面から詳細に解析することができる。解析システム1は、例えば幹細胞から心筋細胞への分化を、遺伝子発現と機能発現との両面から詳細に解析することができる。このような解析システムは、幸いにも、上記発光イメージングシステムLV200において実現されている。
例えば、解析領域内の心筋細胞が個々に拍動しているのか、集団として同期性を持って拍動しているのかを識別することは、心筋細胞の機能的成熟をはかる上での重要な指標である。細胞集団の拍動の同期性の指標として、同じタイミングで場所ごとに決まった方向に運動する細胞の割合が挙げられる。その導出方法の一つとして、運動解析で得られたベクトルに対して主成分分析を行い、その固有値の分布を用いる方法が挙げられる。
解析領域内にM個のサブ領域があったとき、各時刻tごとに2M個の成分を持つベクトルV=(v1x(t),v1y(t),v2x(t),v2y(t),...,vMx(t),vMy(t))が定義される。ここで、vix(t)とviy(t)はi番目のサブ領域の時刻tにおける速度のx成分とy成分である。連続画像がN枚のフレームで構成されているとき、各行がVであるような(N−1)行・2M列のデータ行列Vが作られ得る。W=VVとして定義される対称行列Wの固有値分解を行うことにより、データ行列Vの主成分分析を行い得る。主成分分析はWの固有値分解の代わりにデータ行列Vに特異値分解を適用することによっても行い得る。主成分分析により、N−1と2Mとのうち小さい方をsとしたとき、零でないs個の固有値λと対応する固有ベクトルwとの組が得られる。以後、λは降順に並べられているものとする。最大の固有値λに対応する固有ベクトルwが第一主成分である。第一主成分は、同じタイミングで生じる最大の運動を表している。以下、2番目、3番目の大きさの固有値に対応する固有ベクトルが、2番目、3番目の大きさの運動を表している。
第i番目の固有値の比率λ/Σλを、その第i主成分の寄与率と定義する。寄与率は、対応する主成分が表す運動が全運動に占める割合を示す量である。寄与率は、固有値の和によって規格化されているため、拍動の大きさや拍動している領域の大きさに左右されない性質を持つ。第一主成分の寄与率は、最も顕著な集団運動に対応していて、拍動の同期性の指標として適している。以後、同期性指標値をE=λ/Σλと定義する。
観察開始からの時間Tにおける解析領域Rの拍動強度B(T)は、時間Tから開始された撮影シークエンス内に撮影された一定時間(例えば25秒間)の連続画像から上記のように求められる。同じ撮影シークエンス内に撮影された発光画像から、時間Tにおける解析領域内の遺伝子発現量G(T)が得られる。
心筋細胞への分化を解析し、品質のよい心筋細胞集団を選別する方法の具体的な一例を、図3乃至図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図3に示すように、本方法は、レポーター遺伝子を導入することと、撮影処理と、解析処理とを含む。すなわち、図3に示すように、ステップS101において、心筋細胞への分化能を有する細胞又は心筋細胞に心筋分化マーカー遺伝子や心筋に特異的に発現する遺伝子の発現に応じて発光するように構成されたレポーター遺伝子が導入される。続いて、ステップS102において、撮影処理が行われる。撮影処理では、発光画像と、明視野画像と、連続画像とが取得される。続いて、ステップS103において、解析処理が行われる。解析処理では、撮影処理で得られた画像が解析され、品質のよい心筋細胞集団が選別される。
解析処理は、撮影処理が完了した後に行われなくてもよい。すなわち、解析処理は、撮影処理により、画像の取得が行われながら、順次得られた画像の解析が行われるものであってもよい。すなわち、図4に示すように、初めに、ステップS111において、心筋細胞への分化能を有する細胞又は心筋細胞に心筋分化マーカー遺伝子や心筋特異的に発現する遺伝子の発現に応じて発光するように構成されたレポーター遺伝子が導入される。続いて、ステップS112の撮影処理と、ステップS113の解析処理とが並列処理されてもよい。
次に、撮影処理について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS201において、発光画像が取得される。すなわち、遮光状態において、発光タンパク質の存在に基づいて発生する光が、例えば数分間の露光によって捉えられる。この露光によって、静止画としての発光画像が取得される。
ステップS202において、明視野画像が取得される。すなわち、観察対象である生体試料に照明光が照射され、照明光の透過光又は反射光等が捉えられることによって、静止画としての明視野画像が取得される。
ステップS203において、明視野画像が連続撮影される。すなわち、観察対象である生体試料に照明光が照射され、照明光の透過光又は反射光等が連続的に捉えられることによって、連続画像が取得される。この連続画像を構成する明視野画像は、例えば、1秒間に数枚から数十枚取得される。連続画像を構成する1秒当たりの明視野画像の枚数は、何枚でもよい。
ステップS204において、撮影を終了するか否かが判定される。すなわち、例えばステップS201乃至ステップS203による画像取得の回数が予め設定されており、その回数が繰り返されたか否かが判定される。あるいは、ユーザによる撮影終了の指示があるまでステップS201乃至ステップS203が繰り返され、ユーザによる撮影終了の指示があったときに撮影が終了されるように構成されてもよい。撮影を終了しないと判定されたとき、処理はステップS201に戻る。このようにして、例えばタイムラプスデータが取得される。一方、撮影を終了すると判定されたとき、撮影処理は終了する。
次に解析処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。ここで示す解析処理は、一例として、幹細胞から拍動する心筋細胞へと分化していく細胞を含む生体試料の解析を行う場合であり、品質のよい心筋細胞の集団が選別される処理の例である。
ステップS301において、撮影されたタイムラプスデータが取得される。すなわち、撮影処理のステップS201乃至ステップS203の処理において取得された発光画像、明視野画像及び連続画像を含む各種画像データが読み出される。あるいは、図4に示すように撮影処理と解析処理とが並列処理されるときは、撮影中のデータが読み出される。
ステップS302において、解析領域が選択される。すなわち、ステップS301で読み出された各種画像データが示す画像において、解析対象とされる1つの関心領域(ROI)が設定される。この関心領域(ROI)は、1枚の画像に2つ以上設定されるか、又は複数枚に分割されて取得された画像の各々に1つ以上設定されるかによって、全体として複数設定される。ステップS302の処理では、この複数の関心領域(ROI)の中から後述するステップS303乃至ステップS307の処理で解析される1つの領域が選択される。ステップS302乃至ステップS307の処理が繰り返されるごとに異なる領域が選択されることで全ての関心領域(ROI)について解析が行われることになる。
ステップS303において、設定された解析領域の発光量の経時変化が解析される。すなわち、例えば撮影処理のステップS201で取得された発光画像の輝度が解析される。経時的に取得された複数の発光画像の輝度が解析されることで、撮影された生体試料の経時的変化が解析される。ここで、生体試料の発光がレポーター遺伝子に基づく発光タンパク質による発光であるとき、発光量は、解析対象である遺伝子の発現量を表すことになる。
ステップS304において、解析領域の拍動の経時変化が解析される。すなわち、例えば撮影処理のステップS203で取得された連続画像に基づいて、STICS解析が行われることで、細胞群の拍動の解析が行われる。経時的に取得された複数の連続画像について拍動の解析が行われることで、拍動の経時変化が解析される。
ステップS305において、解析領域の拍動の同期性の経時変化が解析される。すなわち、ステップS304で解析された拍動の経時変化の結果に基づいて、拍動の同期性の経時変化について解析が行われる。
ステップS306において、解析領域の遺伝子発現量と拍動とのタイムラグが算出される。すなわち、例えば、ステップS303で解析された発光量の経時変化、すなわち、遺伝子発現量の経時変化と、ステップS304で解析された拍動の経時変化とに基づいて、遺伝子発現の増加のタイミングと拍動強度の増加のタイミングとのタイムラグが解析される。
ステップS307において、解析領域の遺伝子発現と拍動の同期性とのタイムラグが算出される。すなわち、ステップS303で解析された遺伝子発現の経時変化と、ステップS305で解析された細胞の拍動の同期性の経時変化とに基づいて、遺伝子発現の増加のタイミングと拍動の同期性の増加のタイミングとのタイムラグが解析される。
ステップS308において、解析領域の選択が終了したか否かを判定する。すなわち、ステップS302で選択される解析領域として、解析されるべき領域の全てが選択されたか否かが判定される。解析領域の選択が終了していないとき、処理はステップS302に戻る。一方、解析領域の選択が終了したと判定されたとき、すなわち、全ての関心領域について解析が終了したと判定されたとき、処理はステップS309に進む。
ステップS309において、解析領域間で、ステップS306で取得された遺伝子発現と拍動とのタイムラグ、及び、ステップS307で取得された遺伝子発現と拍動の同期性とのタイムラグが比較される。
ステップS310において、ステップS309で行われた比較の結果に基づいて、品質のよい心筋細胞集団の選別が行われる。すなわち、例えば、複数の解析領域のうち、遺伝子発現と拍動とのタイムラグ、及び、遺伝子発現と拍動の同期性とのタイムラグがともに小さいとき、心筋細胞への分化が速やかに行われるとともに細胞間の接続も良好であり、品質がよい心筋細胞集団であると判定される。
なお、ここでは示さなかったが、ステップS202で取得された明視野画像に基づいて、例えば細胞の形態変化についても解析されてもよい。すなわち、細胞の形態変化等のタイミングと、遺伝子発現、拍動又は拍動の同期性のタイミングとが比較されてもよい。
本方法によれば、例えば幹細胞における遺伝子発現を生きた細胞で観察することが可能となる。生存状態で細胞が観察されることで、細胞が分化する際の遺伝子発現の過程が観察され得る。このとき、観察に発光イメージングが用いられることで、高い定量性が実現され得る。また、幹細胞から細胞が分化する過程の遺伝子発現が長時間経時的に観察され得る。
本方法によれば、発光観察が行われることで、例えば胚様体のような自家蛍光が強い標本においても、定量的な解析が行われ得る。励起光を照射することによる光毒性が懸念される蛍光を用いた観察に比べて、細胞へのダメージを小さくしつつ高精度で長時間細胞が観察され得る。複数のマーカー遺伝子が用いられることで、例えば分化の各過程が識別され得る。このとき、発光が利用されることにより、蛍光が用いられる場合よりも実験系のデザインの自由度が高まる。本方法のように遺伝子発現が観察されることによって、例えば拍動のみが観察されることで心筋細胞への分化が解析される場合に比べて、より多くの情報が取得され得る。
本方法は、例えば心筋分化マーカー遺伝子の発現に従ってレポーター遺伝子由来の発光タンパク質の発光が増減するように調製された、心筋細胞に分化可能な細胞、一部が心筋細胞に分化した胚様体、細胞シートのような構造体、又はゼブラフィッシュ、ニワトリ、マウスなどの胚といった生体試料を対象とした解析に適用され得る。この方法において、少なくとも胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)を含む幹細胞から分化した細胞が観察対象とされることで、再生医療等への応用において重要である分化に関する情報が得られる。
本方法は、例えば繊毛細胞分化マーカー遺伝子の発現にしたがってレポーター遺伝子由来の発光タンパク質の発光が増減するように調製された、繊毛細胞に分化可能な細胞、一部が繊毛細胞に分化した胚様体、細胞シートのような構造体、又はゼブラフィッシュ、ニワトリ、マウスなどの胚といった生体試料を対象とした解析に適用され得る。この方法において、少なくとも胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)を含む幹細胞から分化した細胞が観察対象とされることで、再生医療等への応用において重要である分化に関する情報が得られる。
本方法では、発光画像と明視野画像と連続画像とが同時に取得される。発光画像から生体試料の遺伝的変化のデータが取得され、明視野画像から生体試料の形態的変化のデータが取得され、連続画像からSTICS解析を用いて生体試料の機能的変化のデータが取得される。したがって、生体試料の経時的な遺伝的変化と形態的変化と機能的変化との関係やそれらのタイムラグが解析され得る。
この解析では、例えば、前記生体試料において、時間経過に伴う機能的変化としての運動解析とともに、遺伝的変化としての前記細胞や胚の心筋形成予定部位の心筋分化過程の解析が行われる。本方法は、前記生体試料における、例えば、薬剤刺激時における遺伝的変化と機能的変化とのタイムラグを解析することに用いられ得る。また、この方法は、前記生体試料に、例えば、心毒性のある薬物刺激を加えたときの遺伝的変化と機能的変化とのタイムラグを解析することに用いられ得る。このように、本方法は、例えば不整脈やQT延長症候群などに代表される心臓疾患に対する薬剤のスクリーニングや、新薬の毒性評価に用いられ得る。すなわち、評価対象である薬剤を添加した際に、生体試料の任意の場所における心筋マーカー遺伝子や、薬剤によって影響を受ける可能性がある遺伝子の発現がどのように変化するかや、さらにその場所における心筋細胞の拍動がどのように変化するかが解析され得る。その結果は、評価対象である薬剤による影響が遺伝子発現と拍動とにどのように影響するのかや、拍動の同期性がどのように変化するか等の評価に用いられ得る。
また、例えばゼブラフィッシュ、ニワトリ、マウスなどの胚の心臓形成予定部位における遺伝子発現と機能発現との解析は、注目する遺伝子の胚発生過程における役割の推定に効を奏する。このような解析には、例えば、心臓の形成に関与し、かつ何らかの薬剤、刺激、又は他の遺伝子の発現に影響を受けて発現量が増大若しくは低下する遺伝子の発現と、心臓の拍動の開始とのタイムラグが検出される。
また、本方法は、例えば幹細胞から分化した各種細胞の品質の評価に用いられ得る。例えば、心筋細胞への効率的な分化誘導法の開発において、均一な性質の心筋細胞を効率よく取得することに利用され得る。すなわち、分化させたい幹細胞の任意に設定した複数の解析領域における心筋分化マーカー遺伝子の発現と拍動する心筋細胞の出現とのタイムラグができるだけ均一になるような、また、任意に設定した各領域における拍動の同期性が同一タイミングで上昇し、各領域の拍動が一定の水準を維持するような条件を探索することで、均一な性質の心筋細胞が効率よく取得されるようになる。また、複数の解析領域のうち、状態が良好な領域が選択され、その領域の細胞のみが以降の解析等に用いられてもよい。
また、本方法は、例えば幹細胞から分化した各種細胞の品質の評価に用いられ得る。例えば、繊毛細胞への効率的な分化誘導法の開発において、均一な性質の繊毛細胞を効率よく取得することに利用され得る。すなわち、分化させたい幹細胞の任意に設定した複数の解析領域における繊毛細胞分化マーカー遺伝子の発現と繊毛運動を行う繊毛細胞の出現とのタイムラグができるだけ均一になるような条件を探索することで、均一な性質の繊毛細胞が効率よく取得されるようになる。また、複数の解析領域のうち、状態が良好な領域が選択され、その領域の細胞のみが以降の解析等に用いられてもよい。
[マウスiPS細胞の心筋分化誘導過程における心筋特異的マーカー遺伝子(cTnT)発現と拍動の運動解析]
心筋特異的トロポニンT(cardiac troponinT;cTnT)は心筋に特異的に発現するタンパク質である。cTnTは、心筋分化のマーカー遺伝子として利用されている。マウスiPS細胞の心筋分化誘導過程におけるcTnT発現と拍動の運動解析とを行った。
(1)cTnT遺伝子のプロモーター領域とルシフェラーゼ遺伝子とを含む核酸が導入されたマウスiPS細胞の作製
cTnT遺伝子のためのプロモーター領域のクローニングを、非特許文献「Jin et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 1995 Vol.214, No.3, p1168-1174」を参考に行い、プロモーター配列を取得した。このとき、マウスゲノムDNAを鋳型として使用した。また、プライマーは、以下の2つを使用した。
Forward primer 1:GCCTCGAGTCTAGACTGAGATACAATGCAAAAGCTGG(配列番号1)
Reverse primer 1:GCAGATCTGGTTGAGGGCAGGGCATGGGGAGAGC(配列番号2)。
取得したcTnT遺伝子のプロモーター配列の下流に、日本国特開2013−81459号公報に記載のシブイロヒゲボタル由来ルシフェラーゼ変異体を繋いで、ネオマイシン耐性のベクターに挿入することで、「cTnT遺伝子発現特異的発光ベクター」を構築した。
ベクターを導入するマウスiPS細胞(iPS-MEF−Ng−20D−17、京都大学)の培養には、KO DMEM培地を用いた。このiPS細胞は、マイトマイシンC処理で分裂を停止させたMEF細胞上で培養した。
Amaxa Nucleofector(Lonza)によるNucleofection法を用いて、プロトコルに従いマウスiPS細胞にcTnT遺伝子発現特異的発光ベクターをトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を一晩KO DMEM培地でネオマイシン耐性フィーダー細胞とともに培養した後、抗生物質G418(Invitrogen)を終濃度250μg/mlとなるよう加えたKO DMEM培地に培地を交換して、選択的な培養を行った。このようにして、安定発現細胞株を取得した。この細胞を以降「cTnT−ルシフェラーゼ発現マウスiPS細胞」と呼ぶ。
(2)cTnT−ルシフェラーゼ発現マウスiPS細胞の胚様体の形成
培養したcTnT−ルシフェラーゼ発現マウスiPS細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシンEDTAで剥がした後、KO DMEM培地を加え、37℃インキュベーターで4時間インキュベートした。フィーダー細胞(MEF)のみをディッシュに固着させることで、iPS細胞のみが浮遊する状態にした。iPS細胞が含まれた培地を遠心して細胞を回収し、1mlのIMDM培地に細胞を再懸濁した。溶液中の細胞数をセルカウンターで計測し、IMDM培地を加えたLipidure−Coat培養培地(96ウェル丸底;日油株式会社)の各ウェルに細胞数が2500個又は5000個になるように細胞懸濁液を加え、5日間37℃で培養し、胚様体を形成させた。
(3)cTnT−ルシフェラーゼ発現マウスiPS細胞の心筋分化過程のタイムラプス観察
形成させた胚様体をゼラチンコート処理した35mmディッシュ(IMDM培地、D−ルシフェリン終濃度1mM入り)に移し、37℃で24時間インキュベートし、ディッシュ表面に胚様体を接着させた。培地を新しいIMDM培地(D−ルシフェリン終濃度1mM)に交換し、アクアコスモス(浜松ホトニクス株式会社)を搭載した発光顕微鏡LV200(オリンパス株式会社)を用いて72時間観察を行った。撮影条件は以下として、cTnT遺伝子の発現を観察した。CCDカメラImagEM(浜松ホトニクス株式会社)をbinning1×1の条件で使用した。露光時間は発光撮影5分、明視野125ミリ秒、明視野連続画像についてはアクアコスモスのHDレコーディング機能を使用し、撮影間隔0.25秒でトータル100枚撮影、25秒間の連続画像を取得した。これらの発光撮影、明視野撮影、明視野連続画像撮影のセットを10分間隔で繰り返すことにより、タイムラプス観察を行った。このようにして得られたデータのうち、遺伝子発現量の経時変化観察結果である発光画像についてはアクアコスモスを用いて解析を行った。
(4)タイムラプス観察データの運動解析
タイムラプス観察により得られた明視野画像、明視野連続画像及び発光画像における512×512ピクセルの画像内に、半径80ピクセルの円形の解析領域を5箇所設定した。以後、遺伝子発現が認められる領域に設定した4つの解析領域をROI1乃至ROI4とし、観察期間を通して遺伝子発現が認められなかった領域をcontrol領域とする。画像におけるROI1乃至ROI4及びcontrol領域の一例を図7に示す。
各解析領域内にサブ領域を設定した。サブ領域の大きさは32×32ピクセルである。各サブ領域は、相互に縦又は横に8ピクセルずつずれるように設けられている。サブ領域の各々において以下のような運動解析を行い、サブ領域内の局所的な運動を定量的に評価した。また、画像のうち解析領域に含まれない部分についてもサブ領域を設定し運動解析を行った。解析領域に含まれない部分のサブ領域は、横にサブ領域を20ピクセルずつずれるように設けられている。解析領域に含まれない部分のサブ領域が解析領域に含まれるサブ領域よりも粗いのは、解析時間の短縮のためである。
各サブ領域において、連続画像の第nフレームが撮影された時刻をtとしたときに、tとtn+1の2枚の画像について相互相関画像を計算し、そのピーク位置をガウシアンのフィッティングによって決定した。ピーク位置が(p,q)であったとき、そのサブ領域の時刻tにおける被写体の速度を(p/Δt,q/Δt)であるとした。ここで、Δtは2枚の画像の撮影時刻の間隔tn+1−tである。この速度値に撮像光学系の倍率と撮像素子間隔から決定するピクセル・実距離の換算係数を乗じることによって試料位置での実速度を計算することができる。
各サブ領域において、上記のように計算した瞬間的な速度(v(t),v(t))の1分間の変位の標準偏差をその地点・時間領域での拍動強度と定義した。拍動強度の定義としては、今回採用した定義の他にも時間領域内の速度変位の分散や大きさの最大値を代わりに用いてもよい。上記のように各サブ領域で計算された拍動強度の値を自然近傍補間法によって512×512ピクセルの画像全体に補完して拍動強度分布画像を描画した。
解析領域単位での拍動強度は、解析領域内のサブ領域について、その拍動強度の二乗平均平方根を計算する事によって求めることができる。解析領域の拍動強度の定義としては、今回採用した定義の他にも、サブ領域の拍動強度の二乗和、二乗平均、最大値又は中央値などの適当な代表値を用いてもよい。
図8に、タイムラプス観察により得られた観察開始後12時間毎の胚様体の、明視野画像、cTnT遺伝子発現領域の発光画像、STICSにより解析した動きのベクトル、及び拍動強度分布について示す。
上述の実施形態で示したように、第i番目の固有値の比率λ/Σλを、その第i主成分の寄与率と定義する。寄与率は、対応する主成分が表す運動が全運動に占める割合を示す量である。第一主成分の寄与率は最も顕著な集団運動に対応していて、拍動の同期性の指標として適している。以後、同期性指標値をE=λ/Σλと定義する。
観察開始からの時間Tにおける解析領域Rの拍動強度B(T)は、時間Tから開始された撮影シークエンス内に撮影された25秒間の連続画像から上記のように求められる。同じ撮影シークエンス内に撮影された発光画像から、時間Tにおける解析領域内の遺伝子発現量G(T)が得られる。
観察開始からの時間Tに対する拍動強度B(T)と遺伝子発現量G(T)との値を図9乃至図12に示す。ここで、図9は、ROI1における時間Tに対する拍動強度B(T)と遺伝子発現量G(T)との関係を示す。図10は、ROI2における時間Tに対する拍動強度B(T)と遺伝子発現量G(T)との関係を示す。図11は、ROI3における時間Tに対する拍動強度B(T)と遺伝子発現量G(T)との関係を示す。図12は、ROI4における時間Tに対する拍動強度B(T)と遺伝子発現量G(T)との関係を示す。各図において、横軸は、経過時間を示す。各図において、左縦軸は、発光強度、すなわち遺伝子の発現量を示す。各図において、右縦軸は、瞬間的な速度の1分間の変位の標準偏差の二乗平均平方根、すなわち拍動強度を示す。また、各図において実線は、ROI1乃至ROI4の何れかの発現量を示し、破線はROI1乃至ROI4の何れかの拍動強度を示す。また、各図において、二点鎖線はcontrol領域の発現量を示し、一点鎖線はcontrol領域における拍動強度を示す。
同様に、観察開始からの時間Tにおける解析領域Rの同期性指標値E(T)も同様に求められる。時間Tに対するE(T)の値を図13に示す。図13において、横軸は経過時間を示し、縦軸は第1主成分の寄与率すなわち同期性指標値を示す。
遺伝子発現量G(T)が、特定の条件Cを満たした時間(遺伝子発現時間)がT、拍動強度B(T)が特定の条件Cを満たしたときの時間(機能発現時間)がTであったとき、T−Tを条件(C,C)のもとでの遺伝子発現量・機能発現時間のタイムラグTB―Gと定義する。
また、同期性指標値E(T)が条件Cを満たした時間(同期性発現時間)がTであったとき、T−Tを条件(C,C)のもとでの遺伝子発現量・同期性発現時間のタイムラグTE―Gと定義する。
遺伝子発現時間・機能発現時間・同期性発現時間のそれぞれに対する条件としては、例えば「全観察期間中の測定値の最大値と最小値の中間の値に達した時間」が挙げられる。また、それ以外にも最大値と最小値の間の下から10%の値に達した時間や、変化量が最大になった時間などでもよい。また、各条件を複数回満たすときは、最初に条件を満たした時間や最後に条件を満たした時間などの制限を設ける事によって各発現時間を一意に決定することが可能である。
遺伝子発現の見られるROI1からROI4の領域の心筋細胞としての性質を比較するため、各ROIについて「全観察期間中の測定値の最大値と最小値の中間の値に最初に達した時間」という条件でT・T・T及び最後の観察時間T=72時間における同期性指標値E(72)を求めた。その結果を図14に示す。また、各値をもとに(T−T)対(T−T)をプロットした結果を図15に示す。同様に、(T−T)に対してE(72)をプロットした結果を図16に示す。
(5)解析結果
図8乃至図12をみてわかるとおり、胚様体中において、拍動強度の増加よりも前に、cTnTの発現の増加が認められる。このように、遺伝子発現と拍動という機能を示す拍動細胞への分化とにはタイムラグが存在していることが分かる。また、cTnT遺伝子の発現量は部位によって異なり、分化した心筋細胞の拍動の大きさも部位によって異なることが分かる。
遺伝子発現量をROI間で比較すると、図9乃至図12より、各ROI1乃至ROI4において遺伝子発現量の最大値はROI1が最も高く、次いでROI2及びROI3が同程度の値を示している。
拍動の大きさをROI間で比較すると、図9乃至図12より、各ROI1乃至ROI4において拍動強度の最大値はROI1が最も大きく、次いでROI3が大きいことが分かる。
図13に結果を示す同期性の解析より、ROI1乃至ROI4の拍動細胞の同期性は、12時間経過前後から24時間経過の間で急激に上昇する。同期性が70%を超えて安定した拍動の同期性を示すのはROI3が最も早く、次いでROI1の順となることが分かる。
心筋の分化過程としては、遺伝子発現の後、速やかに拍動が始まることが望ましい。また同期性についても、速やかに同期性が高まると同時に最終的に到達する同期性が高いことが望ましい。
図15において左下の領域にプロットされるROI1中の細胞は、遺伝子発現と機能発現とのタイムラグ(T−T)が短く、遺伝子発現と同期性発現とのタイムラグ(T−T)も短いことから、速やかに分化が進んだことがわかる。また、図16において中左上の領域にプロットされるROI1中の細胞は、(T−T)が短くかつ最終的な同期性E(72)も高いことから、速やかに分化すると同時に、細胞間の接続も良好であることがわかる。また、図9乃至図12より、ROI1の遺伝子発現量の最大値と拍動強度の大きさは、ROI1乃至ROI4中最大であることが分かる。
以上の判断指標を用いて、ROI1の細胞が最も品質のよい心筋細胞であることが分かる。

Claims (16)

  1. 解析対象である遺伝子の発現に応じて発光量が変動するように構成された発光タンパク質のレポーター遺伝子を導入した細胞を含む生体試料を生存状態で維持することと、
    複数の前記細胞を含むような複数の領域を設定するとともに、前記複数の領域について、前記細胞から放射される発光を遮光状態で撮影することで静止画としての発光画像を経時的に複数取得することと、
    前記複数の領域について、前記生体試料に対し光照明して撮影することで明視野の連続画像を経時的に複数取得することと、
    同一の前記領域において前記発光画像及び前記連続画像のそれぞれから得られる生物学的情報を、異なる前記領域同士で比較することと
    を含む生体試料の解析方法。
  2. 前記生物学的情報は、前記細胞の運動量を示す、請求項1に記載の解析方法。
  3. 前記連続画像から得られる前記生物学的情報は、運動量ベクトルの時間変化に関する主成分分析により得られる、請求項2に記載の解析方法。
  4. 前記運動量は、画像相関法を用いて得られる請求項3に記載の解析方法。
  5. 前記細胞は、幹細胞、心筋前駆細胞又は繊毛前駆細胞を含む、請求項1に記載の解析方法。
  6. 前記生体試料は、胚様体又は細胞シートを含む、請求項1に記載の解析方法。
  7. 前記生物学的情報を比較することは、前記細胞の分化の状態を判定することを含む、請求項1に記載の解析方法。
  8. 前記生物学的情報を比較することは、
    遺伝的変化と機能的変化とを定量的に検出することと、
    前記遺伝的変化と前記機能的変化とのタイムラグを検出することと
    を含む、請求項1に記載の解析方法。
  9. 前記遺伝的変化は、心筋分化マーカー遺伝子、心筋に特異的に発現する遺伝子、又は心臓の分化若しくは発生に関与する遺伝子の発現の変化を含む請求項8に記載の解析方法。
  10. 前記機能的変化は、拍動細胞への分化、又は分化した拍動細胞の運動の変化を含む、請求項8に記載の解析方法。
  11. 前記遺伝的変化は、繊毛細胞分化マーカー遺伝子、繊毛細胞に特異的に発現する遺伝子、又は繊毛細胞の分化若しくは発生に関与する遺伝子の発現の変化を含む請求項8に記載の解析方法。
  12. 前記機能的変化は、繊毛細胞への分化、又は分化した繊毛細胞の運動の変化を含む、請求項8に記載の解析方法。
  13. 前記遺伝的変化を検出することは、前記発光画像に基づいて行われる、請求項8に記載の解析方法。
  14. 前記細胞は、心筋への分化能を有する細胞又は心筋細胞を含む、請求項1に記載の解析方法。
  15. 前記生体試料は、ゼブラフィッシュ、ニワトリ、又はマウスの胚を含む、請求項1に記載の解析方法。
  16. 前記細胞は、繊毛細胞への分化能を有する細胞又は、繊毛細胞を含む、請求項1に記載の解析方法。
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