JPWO2016157258A1 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

打抜き加工性に優れたTSが780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法を提供する。特定の成分組成と、面積率で、フェライト相:70%以上90%以下、マルテンサイト相:10%以上30%以下を含有し、前記フェライト相に含まれる未再結晶フェライトの含有量が30%以上50%以下であり、前記マルテンサイト相においてアスペクト比が1.0以上1.5以下である結晶粒の割合が面積率で40〜100%である鋼組織と、を備え、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板とする。

Description

本発明は、自動車車体の骨格部材用途への適用に好適な、打抜き加工性(punchability)に優れる、引張強度(TS)が780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法に関する。
自動車車体の軽量化のため、自動車部品の素材として高強度鋼板が積極的に使用されている。自動車の構造部材や補強部材に適用される鋼板として、引張強度(TS)780MPa以上の鋼板が主流になっている。鋼板の高強度化には組織強化の活用が有効であり、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトからなる複合組織とする方法がある。この複合組織を有する鋼板は、一般に延性が良好で優れた強度−延性バランス(両立性)を有しており、プレス成形性が比較的良好である。しかしながら、この複合組織を有する鋼板は、通常の連続焼鈍ラインでの製造時に生じる焼鈍温度等の条件変化に対して、引張強度(TS)などの材質変動が大きく、そのためコイル長手方向で材質が変動しやすい。
また、自動車部品の素材に用いられる高強度鋼板は、打抜き加工により成形されるため、打ち抜き加工性が要求される。要求される打抜き加工性には、打抜きパンチおよびダイスの摩耗が少ないこと、つまり連続打ち抜き性に優れることのほか、連続打抜き時に打抜き端面およびその近傍部のプレス成形性の変動が小さいことがある。
実際の部品の製造工程における打抜きでは、金型の取付け精度等の問題からクリアランス(ポンチとダイスの間のクリアランス)を一定に管理することは難しく、上記クリアランスは5〜20%の範囲で変動している。そのため、コイル内およびコイル間での材質変動が大きい場合、打抜き加工での打抜き端面およびその近傍部のプレス成形性が大きく変動することになる。そのため、自動車の連続プレスラインにおいて、安定的にプレス成形を行うことが困難となる。安定的にプレス成形を行うことが困難になる場合、作業性が大きく低下することが懸念される。
これに対し、特許文献1に記載の高加工性高強度冷延鋼板では、SiとAlを一定量添加することで、焼鈍条件変動による組織変化を小さくして、伸びおよび伸びフランジ性等の機械特性のばらつきを小さくする。
また、特許文献2には、鋼板中のTi系窒化物の含有量を低減することで打抜き加工性の劣化を抑制した熱延鋼板が開示されている。
特許第4640130号公報 特開2003−342683号公報
特許文献1に記載の技術では、いくら鋼板側の材質変動を低減したとしても、連続プレスラインにおける打抜きでは、打抜き回数の増加とともに打抜きポンチとダイスが損傷し、また、ポンチとダイスの間のクリアランスも変動することは避けられない。そのため、打抜き端面およびその近傍部の成形性を一定に保つことは難しく、時にプレス成形割れが発生することが問題となっている。特に、780MPa以上の高強度鋼板においては、590MPa以下の鋼板に比べて割れに対する感受性が高いため、780MPa以上の高強度鋼板の場合、打抜き端面およびその近傍部の成形性が変動することは、プレス成形割れに直結する。TSが780MPa以上の高強度鋼板では、高強度化のために鋼組織に硬質なマルテンサイトが含まれている。このため、上記高強度鋼板を打抜く際にマルテンサイトとフェライトの界面にボイドが発生し、その後の求められるプレス成形性が低下する。打抜き時のクリアランスが一定であれば、打抜き端面およびその近傍の成形性は安定しているが、クリアランスが変動すると打抜き端面の鋼板の損傷も変動し、安定した連続プレスすることが難しいという課題がある。
特許文献2の熱延鋼板では、フェライトを主体とするフェライト・ベイナイトからなる組織を推奨している。したがって、特許文献2の技術では、鋼組織がフェライトとマルテンサイトを主組織とした二相組織鋼の場合に生じる、マルテンサイト−フェライト界面の上記問題に取り組んではいない。さらに、特許文献2に記載の評価は、一定のクリアランスでの打抜きによる評価のみであって、クリアランスが変動した場合の打抜き端面の成形性を安定化するものではない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、打抜き加工性に優れたTSが780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、連続打抜きした際の打抜き端面およびその近傍の成形性変動の各種要因について鋭意検討した。その結果、鋼組織が基本的にフェライト相とマルテンサイト相の二相組織であって、フェライト相のうち30%以上50%以下は未再結晶フェライトであり、マルテンサイト相におけるアスペクト比が1.0以上1.5以下の結晶粒の割合を面積率で40〜100%とすることで、TSが780MPa以上で、打抜き加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることを知見した。
より具体的には本発明は以下のものを提供する。
[1]質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:1.6%以上2.4%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005%以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下を含有し、任意成分としてNb:0.01%以上0.10%以下を含有し、Ti含有量とNb含有量の合計が0.04%以上0.17%以下であり、下記(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、面積率で、フェライト相:70%以上90%以下、マルテンサイト相:10%以上30%以下を含有し、前記フェライト相に含まれる未再結晶フェライトの含有量(割合)が30%以上50%以下であり、前記マルテンサイト相においてアスペクト比が1.0以上1.5以下である結晶粒の割合が面積率で40〜100%である鋼組織と、を備え、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
0.05≦C−(12/93)Nb−(12/48)(Ti−(48/14)N−(48/32)S)≦0.10 (1)
上記(1)式において元素記号は各元素の含有量を意味し、含まないものは0とする。
[2]前記成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の高強度鋼板。
[3]前記成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[4]前記マルテンサイトの平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の成分組成からなる鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、2次焼鈍して、[1]〜[4]のいずれかに記載の高強度鋼板を製造する方法であって、前記1次焼鈍における、焼鈍温度(Ta1(℃))が下記(2)式を満たし、焼鈍時間(t1)が10秒以上200秒以下であり、焼鈍温度と焼鈍時間が下記(3)式を満たし、前記2次焼鈍における、焼鈍温度(Ta2(℃))が下記(4)式を満たし、焼鈍時間が10秒以上100秒以下であることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
0.50≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.85 (2)
−0.0012t1+0.65≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦−0.0025t1+1.0 (3)
0.70≦(Ta2−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.85 (4)
[6]前記2次焼鈍後に冷却し、該冷却後に亜鉛めっきを施すことを特徴とする[5]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[7]前記亜鉛めっきを施した後、亜鉛めっきの合金化処理を施す[6]に記載の高強度鋼板の製造方法。
なお、本発明において、高強度鋼板には、めっき層を有する高強度鋼板、合金化めっき層を有する高強度鋼板を含む。
本発明によれば、引張強度が780MPa以上の高強度で、打抜き加工性に優れる高強度鋼板が得られる。本発明の高強度鋼板を自動車車体の骨格部材に適用した場合は、衝突安全性の向上や軽量化に大きく貢献できる。
なお、本発明において「打抜き加工性に優れる」とは、実施例に記載の方法で導出するΔλが10以下、かつ、λ/aveλ5−20が0.90以上1.20以下であることを意味する。好ましくは、Δλが8以下であり、λ/aveλ5−20が1.00以上1.15以下である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<高強度鋼板>
先ず、本発明の高強度鋼板の成分組成について説明する。以下の説明において、成分の含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。
本発明の高強度鋼板は、質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:1.6%以上2.4%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下を含有し、任意成分としてNb:0.01%以上0.10%以下を含有し、Ti含有量とNb含有量の合計が0.04%以上0.17%以下であり、後述する(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。
C:0.07%以上0.15%以下
Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、マルテンサイトを形成することで高強度化に寄与する。また、CはNbやTiといった炭化物形成元素と微細な炭化物、あるいは、炭窒化物を形成することで高強度化に寄与する。これらの効果を得るためには、C含有量は0.07%以上とすることが必要である。一方、C含有量が0.15%超えではスポット溶接性が著しく劣化する。またC含有量が0.15%超えではマルテンサイト相の増加により鋼板が硬質化し、プレス成形性が低下する場合がある。したがって、C含有量は0.07%以上0.15%以下とする。780MPa以上のTSを安定的に確保する観点からは、C含有量を0.08%以上とすることが好ましく、打抜き後の打抜き端面およびその近傍の成形性を安定的に確保する観点からは、0.12%以下とすることがより好ましい。
Si:0.01%以上0.50%以下
Siの添加は、赤スケール等の発生により表面性状の劣化や、めっき付着・密着性の劣化を引き起こす。したがって、Si含有量は0.50%以下とする。溶融亜鉛めっき鋼板においては、0.20%以下が好ましい。一方で、Siは延性を改善するとともに強度向上に寄与する元素である。これらの効果を得るためにはSi含有量を0.01%以上とすることが必要である。以上より、Si含有量は0.01%以上0.50%以下とする。
Mn:1.6%以上2.4%以下
Mnは、鋼板の強度を向上させる上で有効な元素であり、複合組織を得るために有効に作用する元素である。加熱焼鈍時に存在するオ−ステナイトから冷却過程において安定的に低温変態相を得て強度を確保するには、Mn含有量を1.6%以上にすることが必要である。一方、Mn含有量が2.4%を超えると、いわゆるMnバンドと呼ばれる板厚1/2部分へのMn偏析が顕著となる。この偏析部分の焼入れ性が高まることで、マルテンサイトが圧延方向に列状に多く生成してしまい、プレス成形性が大幅に低下する。したがって、Mn含有量は1.6%以上2.4%以下とする。好ましくは、1.8%以上2.2%以下である。
P:0.001%以上0.050%以下
Pは、鋼中に固溶して鋼板の高強度化に寄与する元素である。一方で、Pは、粒界への偏析により粒界の結合力を低下させ加工性を劣化させ、また鋼板表面への濃化により化成処理性、耐食性などを低下させる元素でもある。P含有量が0.050%を超えると、上記影響は顕著に現れる。しかし、P含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、P含有量は0.001%以上0.050%以下とする。
S:0.0005%以上0.010%以下
Sは加工性に悪影響を及ぼす元素である。S含有量が増加すると、Sは介在物MnSとして存在し、特に材料の局部延性を低下させ、加工性を低下させる。また硫化物の存在により溶接性も悪くなる。このような悪影響はS含有量を0.010%以下とすることにより避けることができる。好ましくは、S含有量を0.005%以下とすることによりプレス加工性を顕著に改善することが可能となる。しかし、S含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、S含有量は0.0005%以上0.010%以下とする。
sol.Al:0.005%以上0.100%以下
Alは、脱酸材として有効な元素であり、この効果を発揮するために、sol.Al含有量を0.005%以上とする。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えると、原料コストの上昇を招くとともに、鋼板の表面欠陥を誘発する原因にもなる。したがって、sol.AlとしてのAl含有量は0.005%以上0.100%以下とする。
N:0.0001%以上0.0060%以下
Nは、本発明において、その含有量が少ないほど望ましい。本発明において、N含有量は0.0060%までは許容できる。また、N含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、N含有量は0.0001%以上0.0060%以下とする。
Ti:0.01%以上0.10%以下
Tiは、本発明における重要な元素である。Tiの微細析出物(主として炭化物、窒化物、炭窒化物。以下炭窒化物と称す)は、強度の上昇に寄与し、さらにフェライトおよびマルテンサイトの微細化にも有利に作用する。このような作用を得るためには、Ti含有量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上である。一方、多量のTiを添加しても、通常の熱間圧延工程における再加熱時においては、炭窒化物を全量固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残る。多量のTi含有により、プレス成形性が劣化するばかりでなく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Ti含有量は0.10%以下とする必要がある。以上より、Ti含有量は0.01%以上0.10%以下とする。
Nb:0.01%以上0.10%以下
Nbの微細析出物(主として炭窒化物)は、強度の上昇に寄与し、さらにフェライトおよびマルテンサイトの微細化にも有利に作用するのでNbを添加しても良い。Nb含有によりこのような作用を得るためには、Nb含有量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上である。一方、多量のNbを添加しても、通常の熱間圧延工程における再加熱時においては、炭窒化物を全量固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残るため、プレス成形性が劣化するばかりでなく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Nb含有量は0.10%以下とする必要がある。上記の通り、Nbを含有する場合に、Nb含有量は0.01%以上0.10%以下とする。
TiとNbが合計で0.04%以上0.17%以下
TiとNbの微細析出物が少なすぎると最終組織として未再結晶フェライトを残存させることが困難となり、優れた打抜き性を確保することが難しい。このためTi含有量とNb含有量の合計が0.04%以上になることが必要である。一方でこれらの微細析出物が多すぎると、冷間圧延において圧下の負荷が増大し問題となる。したがって、Ti含有量とNb含有量の合計は0.17%以下とする必要がある。好ましくは、0.06%以上0.16%以下である。なお、本発明の高強度鋼板がNbを含まない場合には、Ti含有量が上記範囲内にあることが必要である。
上記成分以外に、本発明の高強度鋼板の成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することができる。
Mo:0.05%以上1.00%以下
Moは焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるため、Mo含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方、Mo含有量が1.00%を超えると上記効果が飽和するだけではなく、原料コストの増加を招く。したがって、Mo含有量は0.05%以上1.00%以下が好ましい。
Cr:0.05%以上1.00%以下
Crは焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるため、Cr含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方、Cr含有量が1.00%を超えると上記効果が飽和するだけではなく、原料コストの増加を招く。したがって、Cr含有量は0.05%以上1.00%以下が好ましい。
V:0.02%以上0.50%以下
VはNb、Tiと同様、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与するため、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるためにはV含有量を0.02%以上とすることが好ましい。一方、V含有量が0.50%を超えると、効果が飽和するだけでなく原料コストの増加を招く。このためVの含有量は0.50%以下が好ましい。より好ましくは0.20%以下である。
Zr:0.02%以上0.20%以下
Zrも微細な炭窒化物を形成することで、強度を高めるのに有効であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるためには、Zr含有量を0.02%以上にする必要がある。一方、Zr含有量が0.20%を超えると効果が飽和するだけでなく原料コストの増加を招く。したがって、Zrの含有量は0.02%以上0.20%以下とするのが望ましい。
B:0.0001%以上0.0030%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するので必要に応じて含有させることができる。その効果は、0.0001%以上で得られる。一方、B含有量が0.0030%を超えると加工性が低下する。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量は0.0001%以上0.0030%以下の範囲とすることが好ましい。なお、Bを含有させるにあたっては、上記効果を得る上でBNの生成を抑制することが好ましく、このため、Tiと複合含有させることが好ましい。
Cu:0.05%以上1.00%以下
Cuは、鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効である。この効果を発揮するためには、Cu含有量を0.05%以上にする必要がある。しかし、Cu含有量が1.00%を超えても効果は飽和するのみならず、熱間延性が低下して表面疵の発生が顕著になり、さらには原料コストの増加も招く。したがって、Cu含有量は0.05〜1.00%とするのが望ましい。
Ni:0.05%以上1.00%以下
Niは、鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効である。この効果を発揮するためには、Ni含有量を0.05%以上にする必要がある。しかし、Ni含有量が1.00%を超えても効果は飽和するのみならず、熱間延性が低下して表面疵の発生が顕著になり、さらには原料コストの増加も招く。したがって、Ni含有量は0.05〜1.00%とするのが望ましい。
上記成分以外に、本発明の高強度鋼板の成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することができる。
Ca:0.001%以上0.005%以下
Caは、MnSなどの硫化物の形態制御により延性を向上させる効果がある。しかしながら、多量に含有させてもその効果は飽和する傾向にある。したがって、Caを含有させる場合、その含有量は0.0001%以上0.0050%以下が好ましい。
Sb:0.0030%以上0.0100%以下
Sbは、表面等に偏析する傾向が高い元素であり、吸窒や脱炭等の製造工程中での表層反応を抑制する働きがある。また、その添加により、熱間圧延工程の加熱時や焼鈍時、の高温雰囲気中に鋼材がさらされる状態でも、窒素や炭素等の成分変動しやすい元素の反応を抑制し、著しい成分変動を防止できる効果がある。そこで、Sbを含有する場合、本発明ではSb含有量が0.0030〜0.0100%であることが好ましい。なお、本発明において、さらに好ましいSb含有量は0.0060〜0.0100%である。
REM:0.001%以上0.005%以下
REMは、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有し、これによりプレス成形性の向上に寄与する。この効果を発揮させるためには、REM含有量を0.001%以上にする必要がある。一方、REMの多量の添加は硫化物系介在物の粗大化を招き、打抜き加工性を低下させるので、上限を0.005%以下とするのが好ましい。
また、本発明の成分組成において、上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
以上、本発明の基本組成について説明したが、本発明では、上記の基本組成を単に満足させただけでは不十分で、C、N、S、NbおよびTiの含有量について、下記(1)式に示す関係を満足させる必要がある。なお、下記(1)式において元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。
0.05≦C−(12/93)Nb−(12/48)(Ti−(48/14)N−(48/32)S)≦0.10 (1)
上記の(1)式の「C−(12/93)Nb−(12/48)(Ti−(48/14)N−(48/32)S)」は、炭化物として固定されないC含有量を規定するものである。このC含有量が0.10%を超えると、マルテンサイトの分率が増加し、延性も低下する。したがって、このC含有量は0.10%以下とする必要がある。一方、炭化物として固定されないC含有量が0.05%未満の場合、冷間圧延後の2相域における焼鈍においてオーステナイト中のC含有量が減少し、ひいては冷却後に生成するマルテンサイト相が減少する場合があるため、780MPa以上の高強度化が困難となる場合がある。このため、炭化物として固定されないC含有量は0.05%以上とする必要がある。好ましくは0.07%以上である。
次に、本発明の高強度鋼板の鋼組織について説明する。本発明の高強度鋼板の鋼組織は、面積率で、フェライト相:70%以上90%以下、マルテンサイト相:10%以上30%以下を含有し、フェライト相に含まれる未再結晶フェライトの含有量が30%以上50%以下であり、マルテンサイト相におけるアスペクト比が1.0以上1.5以下の結晶粒の割合が面積率で40〜100%である。なお、板厚の表面から3/8深さ位置の鋼組織が、上記範囲にあれば本発明の効果が得られる。
面積率で70%以上90%以下のフェライト相
フェライト相は軟質相であり、鋼板の延性に寄与するため、本発明においてはフェライト相を面積率で70%以上とする。一方、フェライト相が面積率で90%を超えて存在すると、780MPa以上のTSを安定的に確保することが難しくなる。したがって、フェライト相は面積率で70%以上90%以下とする。本発明において、フェライト相とは、再結晶フェライトのみならず、回復フェライトおよび未再結晶フェライトを含むものとする。
フェライト相のうち30%以上50%以下は未再結晶フェライト
本発明において、未再結晶フェライトは打抜き後の端面の成形性を確保する上で重要な役割をもつ。すなわち、フェライト相のうち一定範囲(一定の比率)で未再結晶フェライトが存在することで、打抜きの際にボイドが適度に生成されやすくなり、打抜きクリアランスが変動した場合であっても、鋼板の打抜き端面状態が変動しにくく、打抜き端面の成形性に優れた鋼板を得ることができる。フェライト相のうち未再結晶フェライトの割合が30%未満および50%を超える場合には、打抜きクリアランスが変動した際の鋼板の打抜き端面状態が変動してしまう。安定した打抜き成形性を確保する上では、未再結晶フェライトは面積率で35%以上45%以下がより好ましい。
面積率で10%以上30%以下のマルテンサイト相
マルテンサイト相は硬質相であり、変態組織強化によって鋼板の強度を増加させるのに有効である。780MPa以上のTSを安定的に確保するためには、マルテンサイト相は面積率で10%以上とする必要がある。また、マルテンサイト相は硬質のため、打抜きの際に、軟質なフェライト相との成形性の差からボイド発生の起点となる。安定した打抜き性を確保するためには、マルテンサイト相は一定量以上存在する必要があり、10%以上が好ましい。一方、マルテンサイト相の面積率が30%を超えると打抜き性を低下させる懸念があるため、マルテンサイト相は面積率で30%以下とする。好ましくは25%以下である。
なお、鋼組織は、フェライト相、マルテンサイト相以外の残部組織として、パーライト相、ベイナイト相、残留オーステナイト相および炭化物等を含む場合があり、これらは合計面積率で3%以下であれば許容できる。好ましくは1%以下である。
マルテンサイト相においてアスペクト比が1.0以上1.5以下の結晶粒の割合が面積率で40〜100%
マルテンサイト相は硬質相のため、鋼板が加工されるとその界面でボイドが生成しやすい。圧延方向に展伸した粒の場合には、球状の粒に比べボイドが発生しやすく、またボイド同士の連結も助長されてしまう。そのため、マルテンサイト相におけるアスペクト比が1.0以上1.5以下の結晶粒の割合は40〜100%とする。好ましくは、40〜90%とする。より好ましくはさらに1.0以上1.3以下の結晶粒の割合が30〜60%とする。ここで、マルテンサイト相のアスペクト比は、SEMを用いて倍率5000倍で撮影したSEM写真から個々のマルテンサイト相の短軸長さ、長軸長さを測定し、長軸長さを短軸長さで除して求めるものとする。
マルテンサイト相の平均粒径が2.0μm以下
マルテンサイト相の平均粒径(平均結晶粒径)とは、焼鈍時の旧オーステナイト粒径とは異なり、焼入れ時の旧オーステナイト粒径と等しいものである。本発明においては2次焼鈍後のマルテンサイト相の粒径も、打抜きの際のボイド生成に影響する場合がある。マルテンサイト相の結晶粒が粗大な場合、ボイドが発生しやすくなるため、小さい方が好ましい。したがって、マルテンサイト相の平均粒径は2.0μm以下が好ましい。より好ましくは1.8μm以下である。
<高強度鋼板の製造方法>
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。本発明の高強度鋼板は、上記成分組成からなる鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、必要に応じて軽圧下圧延し、必要に応じて酸洗し、その後2次焼鈍して製造される。以下、製造方法および条件について説明する。
鋼スラブの再加熱温度が、1200℃未満では、Tiおよび/またはNbを含む析出物が再溶解せず粗大化して析出強化能を失うだけでなく、再結晶抑制のためピン止め効果としての役割も失い、安定した打抜き性の確保が難しくなる場合がある。そのため、鋼スラブの再加熱温度は1200℃以上とすることが好ましい。上記再加熱温度の上限については、特に制限はないが、エネルギー効率、歩留まりの観点から1400℃未満が好ましい。より好ましくは1300℃以下である。
熱間圧延の仕上げ温度が、Ar3点温度以下では、表層に粗大粒が形成されるなど均一な鋼組織の作りこみが難しく、安定した打抜き性が得られない場合がある。そのため、仕上げ温度は、Ar3点以上が望ましい。また、仕上げ温度の上限は特に限定されないが、仕上げ温度は1000℃以下が望ましい。
巻取温度が500℃未満では、Tiおよび/またはNbを含む析出物の量が少なく、焼鈍時の再結晶抑制効果が十分得られない場合がある。一方、巻取温度が700℃超えの場合には、析出物が粗大となり焼鈍時の再結晶抑制効果が十分でなくなる場合がある。したがって、巻取温度は500〜700℃とすることが好ましい。より好ましくは550〜650℃である。
上記熱延鋼板は、その後、必要に応じて、常法で酸洗して脱スケールした後、冷間圧延して最終板厚の冷延鋼板とする。この冷間圧延の圧下率は40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%に満たないと、仕上焼鈍後の鋼板組織が粗粒となり、強度−延性バランスが低下するおそれがあるので好ましくない。より好ましくは50%以上である。一方、圧下率が90%を超えると、圧延ロールの負荷が増大し、チャタリングや板破断等の圧延トラブルを引き起こすようになる。このため、冷間圧延の圧下率は90%以下が好ましい。より好ましくは、80%以下である。
上記冷間圧延した鋼板に、1次焼鈍を施す。この1次焼鈍は、生産性を高める観点から、連続焼鈍とするのが好ましい。1次焼鈍における焼鈍温度(Ta1(℃))は、(2)式および(3)式を満足する必要がある。両式を満足することにより、2次焼鈍後に適量の未再結晶組織を残存させることができる。また、1次焼鈍の焼鈍時間(t1)が下記式(3)を満たすことも2次焼鈍後に最適な鋼組織を得る観点から重要である。
0.50≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.85 (2)
−0.0012t1+0.65≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦−0.0025t1+1.0 (3)
ここで、Ac1(℃)、Ac3(℃)は下記式を用いて求めることができる。下記式において元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味し、含まないものは0とする。
Ac1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn−16.9Ni+16.9Cr
Ac3(℃)=910−203(C)1/2+44.7Si−30Mn+700P+400Al−15.2Ni−11Cr−20Cu+31.5Mo+104V+400Ti
また、1次焼鈍の焼鈍時間は10秒以上200秒以下とする。焼鈍時間が10秒未満である場合には、再結晶があまり進行せず、所望の特性を有する鋼板を得ることができない。一方、1次焼鈍時間が200秒を超えると、消費エネルギーが多大となり、製造コストが増大する。このため、1次焼鈍時間は10秒以上200秒以下とする。
1次焼鈍における冷却の冷却速度(平均冷却速度)は、10℃/s以上であることが好ましい。平均冷却速度が10℃/s未満の場合、パーライトが多量に生成し、フェライト相とマルテンサイト相を主とした複合組織が得られない場合がある。平均冷却速度の上限は特に規定しないが、鋼板形状が悪化することがあるため、平均冷却速度は200℃/s以下とすることが好ましい。
上記1次焼鈍後、鋼板を軽圧下圧延し、酸洗する。軽圧下圧延は必須ではないが、鋼板の形状矯正を目的に行われる。この目的のためには圧下率を0.3〜3.0%にすることが好ましい。また、酸洗も必須ではないが、脱スケールのために行われ、一般的な条件を適宜採用すればよい。
1次焼鈍後に軽圧下圧延、酸洗された鋼板に2次焼鈍を施す。この2次焼鈍についても、連続焼鈍とするのが好ましい。2次焼鈍における焼鈍温度(Ta2(℃))は、(4)式を満足する必要がある。(4)式を満足する2次焼鈍を施すことで、打抜き性に優れる鋼板を得ることができる。
0.70≦(Ta2−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.95 (4)
ここで、Ac1、Ac3は上述の式で算出することができる。
2次焼鈍の焼鈍時間は10秒以上100秒以下とする。2次焼鈍の焼鈍時間が10秒未満である場合には、再結晶が抑制されすぎて、所望の特性を有する鋼板を得ることができない。一方、2次焼鈍の焼鈍時間が100秒を超えると、消費エネルギーが多大となり、製造コストが増大する。このため、2次焼鈍の焼鈍時間は10秒以上100秒以下が好ましい。
2次焼鈍における冷却の冷却速度(平均冷却速度)は、10℃/s以上であることが好ましい。平均冷却速度が10℃/s未満の場合、パーライトが多量に生成し、フェライト相とマルテンサイト相を主とした複相組織が得られない場合がある。平均冷却速度の上限は特に規定しないが、鋼板形状が悪化することがあるため、上記冷却速度は200℃/s以下とすることが好ましい。
以上のようにして、本発明の高強度鋼板を製造することができる。上記のようにして得た高強度鋼板は、そのまま製品としてもよいし、その後、冷却して、溶融めっきや電気めっき等のめっき処理を施して、製品としてもよい。
例えば、めっき処理として、自動車用鋼板等に広く用いられる溶融亜鉛めっきを施す場合には、連続溶融亜鉛めっきライン前段の連続焼鈍炉で、上記の均熱・冷却あるいはさらに過時効処理を行った後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を形成すればよい。さらに、その後、合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。なお、上記均熱・冷却あるいはさらに過時効処理する連続焼鈍と、めっき処理を分離し、それぞれ別のラインで行ってもよい。
亜鉛めっき層は、Znを主体として含む層である。合金化亜鉛めっき層とは、合金化反応によって亜鉛めっき中に鋼中のFeが拡散してできたFe−Zn合金を主体として含む層である。
亜鉛めっき層及び合金化亜鉛めっき層には、Zn以外にFe、Al、Sb、Pb、Bi、Mg,Ca、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、P、B、Sn、Zr、Hf、Sr、V、Se、REMを本発明の効果を害さない範囲で含んでもよい。
また、上記焼鈍後の鋼板あるいはめっき処理した鋼板に対して、形状矯正や表面粗度調整、機械的特性改善等の目的で、調質圧延またはレベラー加工を施してもよい。この際の調質圧延やレベラー加工における伸び率は、合計で0.2〜3%の範囲内とするのが好ましい。0.2%未満では、形状矯正等の所期の目的が達成できず、一方、3%を超えると、顕著な延性低下を招くようになるからである。
表1に示す成分組成からなる溶鋼を転炉で溶製し、スラブとした後、スラブ再加熱温度を1200℃で、熱間圧延仕上げ温度を880℃、巻取温度を600℃で熱間圧延を施し、酸洗し、冷間圧延の圧下率を60%で実施し、次いで、表2に示す種々の条件で、1次焼鈍のみ、または1次焼鈍と0.5%の軽圧下圧延及び酸洗と2次焼鈍を施し、板厚が1.2mmの冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)および合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)を製造した。ここで、溶融亜鉛めっき処理は付着量が片面あたり50g/m(両面めっき)となるように調整し、GA鋼板については、めっき層中のFe%が9〜12質量%となるように調整した。なお、1次焼鈍および2次焼鈍における平均冷却速度はそれぞれ20℃/sで実施した。
Figure 2016157258
Figure 2016157258
以上により得られた鋼板に対して、サンプルを採取し、下記の方法で鋼組織の特定、圧延方向に対して90°方向(C方向)を引張方向とする引張試験、および穴拡げ試験を行った。具体的には、フェライト相およびマルテンサイト相の面積率、フェライト相中の未再結晶フェライト相の割合、マルテンサイトの平均結晶粒径、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、全伸び(El)および穴拡げ率(λ)を測定した。
以下、評価方法を具体的に説明する。
(i)鋼組織の特定
鋼板から、組織観察用試験片を採取し、L断面(圧延方向に平行な垂直断面)を機械的に研磨し、ナイタール(nital)で腐食した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率3000倍で撮影した、板厚の表面から3/8深さ位置の組織写真(SEM写真)から、鋼板組織の特定とフェライトおよびマルテンサイトの面積率を測定した。なお、それぞれの相の面積率は、透明のOHPシートに組織写真を写し、各相ごとに層別して色付けし、画像を取り込み後、2値化を行い、画像解析ソフトにて求めた。さらに、フェライトのうち未再結晶フェライトの面積率については、EBSPの結晶方位測定によって求めた。本願においては、フェライトのうち未再結晶フェライトの面積率のみを区別できればよく、再結晶フェライトと回復フェライトを区別する必要はない。また、マルテンサイトの平均粒径はJIS G0522の規定に準拠し、切断法にて測定した。また、マルテンサイト相のアスペクト比は、SEMを用いて倍率5000倍で撮影したSEM写真から個々のマルテンサイト相の短軸長さ、長軸長さを測定し、長軸長さを短軸長さで除して求めた。
(ii)引張特性
鋼板から、圧延方向に対して90°方向(C方向)を引張方向とするJIS5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、YS、TS、Elを測定した。なお、引張試験の評価基準(良否判定基準)はTS≧780MPaとした。
(iii)伸びフランジ成形性
伸びフランジ成形性は、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠した穴拡げ試験により評価した。すなわち、得られた鋼板から、100mm×100mm角サイズのサンプルを採取し、サンプルにポンチ径10mmで打抜き穴を開け、頂角60°の円錐ポンチを用いて、バリが外側になるようにして、板厚を貫通する割れが発生するまで穴拡げ試験を行い、このときのd0:初期穴内径(mm)、d:割れ発生時の穴内径(mm)として、穴拡げ率λ(%)={(d−d0)/d0}×100を求めた。本発明における優れた打抜き性の評価基準として、下記で規定するΔλが10以下、かつ、下記で規定するλ/aveλ5−20が0.90以上1.20以下を満足することで評価した。
Δλについて
Δλは、打抜きクリアランスが5〜20%の範囲で打抜いて評価したλ値の最大値と最小値の差を表す。簡易的に、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して測定したλとクリアランス5%および20%を狙いに測定したλ値(λ、λ20)の3つの値間での最大値と最小値の差で代用できるものとする。また、狙いのクリアランスに対し、±1%以内であればその値を用いて評価してもよいとする。
λ/aveλ5−20について
日本鉄鋼連盟規格に準拠して測定したλを打抜きクリアランスが5〜20%の範囲で打抜いて評価したλ値の平均値で除した値を表す。簡易的に、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して測定したλとクリアランス5%および20%を狙いに測定したλ値(λ、λ20)の3つの値間での平均値で除した値を代用できるものとする。また、狙いのクリアランスに対し、±1%以内であればその値を用いて評価してもよい。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2016157258
表3より、No.1、2、11、12、18、19、22、23、25〜29、37、39、40の鋼板は、成分組成および製造方法が本発明に適合した発明例であり、TS≧780MPa以上を満足する鋼板となっている。また、打抜き性の指標である、Δλが10以下となっており、さらに、λ/aveλ5−20が0.90〜1.20を満足しており、打ち抜き後の端面の成形性に優れた鋼板となっている。
これに対して、比較例のNo.3〜10、13〜17、20、21、24、30〜36、38、41、42は、成分が本発明範囲外であるか、製造条件が適合していないため、所望のミクロ組織が得られておらず、所望の特性も得られていない。Δλとλ/aveλ5−20規定をともに満足しない場合には、特にλ/aveλ5−20が1.20を超える場合には、打ち抜き端面の成形性を安定確保することが難しく、実プレスでの自動車構造部材を製造時において、プレス割れ等のトラブル発生率が高まる。
本発明によれば、引張強度780MPa以上の強度を有し、打抜き加工性に優れる高強度鋼板を得ることができる。本発明の高強度鋼板は、従来、高強度鋼板の適用が困難であった例えば自動車構造部材等の難成形の部材として適用することが可能である。さらに、自動車構造部材として本発明の高強度鋼板を用いた場合、自動車の軽量化、安全性向上などに寄与し、産業上極めて有益である。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:1.6%以上2.4%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005%以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下を含有し、任意成分としてNb:0.01%以上0.10%以下を含有し、Ti含有量とNb含有量の合計が0.04%以上0.17%以下であり、下記(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
    面積率で、フェライト相:70%以上90%以下、マルテンサイト相:10%以上30%以下を含有し、前記フェライト相に含まれる未再結晶フェライトの含有量が30%以上50%以下であり、前記マルテンサイト相においてアスペクト比が1.0以上1.5以下である結晶粒の割合が面積率で40%以上100%以下である鋼組織と、を備え、
    引張強度が780MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
    0.05≦C−(12/93)Nb−(12/48)(Ti−(48/14)N−(48/32)S)≦0.10 (1)
    上記(1)式において元素記号は各元素の含有量を意味し、含まないものは0とする。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の高強度鋼板。
  4. 前記マルテンサイトの平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成からなる鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、2次焼鈍して、請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼板を製造する方法であって、
    前記1次焼鈍における、焼鈍温度(Ta1(℃))が下記(2)式を満たし、焼鈍時間(t1)が10秒以上200秒以下であり、焼鈍温度と焼鈍時間が下記(3)式を満たし、
    前記2次焼鈍における、焼鈍温度(Ta2(℃))が下記(4)式を満たし、焼鈍時間が10秒以上100秒以下であることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
    0.50≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.85 (2)
    −0.0012t1+0.65≦(Ta1−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦−0.0025t1+1.0 (3)
    0.70≦(Ta2−Ac1)/(Ac3−Ac1)≦0.85 (4)
  6. 前記2次焼鈍後に冷却し、該冷却後に亜鉛めっきを施すことを特徴とする請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
  7. 前記亜鉛めっきを施した後、合金化処理を施すことを特徴とする請求項6に記載の高強度鋼板の製造方法。
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