図1を参照すると、透視撮像装置200と薬液注入装置100とを有する、本発明の一実施形態による透視撮像システムが示されている。透視撮像装置200と薬液注入装置100とは、相互間でデータの送受信を行えるように互いに接続されることができる。透視撮像装置200と薬液注入装置100との接続は、有線接続とすることもできるし、無線接続とすることもできる。
透視撮像装置200は、撮像動作を実行するスキャナ201と、スキャナ201の動作を制御する撮像制御ユニット(不図示)とを有しており、薬液注入装置100によって薬液が注入された被験者の断層画像を取得することができる。スキャナ201は、電磁波を照射する電磁波照射器153(図6参照)を有しており、この電磁波照射器153は、電磁波の照射強度の設定が変更可能とされている。撮像制御ユニットは、撮像条件や取得した断層画像などを表示できる液晶ディスプレイなどの表示装置、および撮像条件などを入力するための、キーボードおよび/またはマウスなどの入力装置を含むことができる。表示装置は、入力装置を兼ねるタッチスクリーンを有していてもよい。
薬液注入装置100は、例えば、スタンド121の上部に旋回アーム122を介して上下方向に回動自在に取り付けられた注入ヘッド110と、薬液注入装置100全体の動作を制御するための各種機能を備えたコンソール101とを有している。注入ヘッド110とコンソール101とは一つの筐体に構成することもできるが、本実施形態では、注入ヘッド110とコンソール101とは別ユニットとして構成されている。この場合、注入ヘッド110はスキャナ201とともに検査室内に配置し、コンソール101は、透視撮像装置200の撮像制御ユニットとともに操作室内に配置することができる。スタンド121は、注入ヘッド110の移動を容易にするためにキャスター付きのスタンドとすることができる。
コンソール101はAC/DCコンバータを内蔵しており、交流から直流に変換された電力がコンソール101に供給される。図2に示すように、コンソール101は、注入を強制停止させるためのストップボタン102a、ホーム画面を表示させるためのホームボタン102bおよび電源オン/オフのための電源ボタン102cを含むボタン群102と、入力ユニットおよび表示ユニットを兼ねたタッチパネル103とを有している。
注入ヘッド110は、図3〜5に示すように、2本のシリンジ800を着脱自在に装着することができる。シリンジ800は、例えば、一方を造影剤用のシリンジとし、他方を生理食塩水用のシリンジとすることができる。シリンジ800は、薬液を収容し先端に導管が形成されたシリンダと、シリンダ内に進退移動可能に挿入されたピストンとを有する。注入ヘッド110は、このシリンダを保持するシリンダ保持機構111と、シリンダ保持機構111にシリンダが保持されたシリンジ800のピストンを操作する(例えば、シリンダ内に押し込む)ための、シリンジ800の軸方向に移動される直動ユニットとを、2つずつ有する。
直動ユニットは、モータの回転運動を直線運動に変換するリードスクリュー機構やラックピニオン機構等の適宜の回転運動変換機構によって進退移動させられるロッド113と、ロッド113の先端部に固定されたプレッサー112と、を有する。ピストンを進退移動させるための、これらモータ、回転運動変換機構、直動ユニット(ロッド113およびプレッサー112を含み、直進運動するユニット)を有する機構を、本発明ではピストン駆動機構という。本形態では、注入ヘッド110は2つのピストン駆動機構を備えている。
なお、本明細書では、造影剤用のシリンジのためのシリンダ保持機構およびピストン駆動機構を、それぞれ第1のシリンダ保持機構および第1のピストン駆動機構といい、生理食塩水用のシリンダ保持機構およびピストン駆動機構を、それぞれ第2のシリンダ保持機構および第2のピストン駆動機構ともいう。また、図示した例では、造影剤用のシリンダ保持機構およびピストン駆動機構が1つずつ配置されているが、その数は複数ずつであってもよい。同様に、生理食塩水用のシリンダ保持機構およびピストン駆動機構も、複数ずつであってよい。
ピストン駆動機構の駆動源となるモータとしては、直流モータを用いることができ、その中でも特に、直流ブラシレスモータを好ましく用いることができる。ブラシレスモータは、ブラシが無いことから、静音性および耐久性に優れている。また、ブラシレスモータは、より高速回転が可能であるため、外部ギア比を高くしてモータにかかるトルクを小さくすれば、所望の注入圧力で薬液を注入するのに必要な電流をブラシモータに比べて小さくすることができる。あるいは、超音波モータを、ピストン駆動機構の駆動源として用いることもできる。
注入ヘッド110は、ピストン駆動機構の一部(例えばプレッサー112)を除き、全体が合成樹脂製の筐体115で覆われている。筐体115の上面には、ユーザの操作によってピストン駆動機構を動作させることができるように、幾つかの操作ボタン116が配置されている。
例えば、本形態では、注入ヘッド110は、操作ボタン116として、注入可能な状態にするために操作されるチェックボタン116a、注入を開始する際に操作されるスタートボタン116b、プレッサー112を任意の距離だけ前進させる際(例えば、1.5ml/secの速度で)に操作される前進ボタン116c、プレッサー112の移動速度を加速する際(例えば、現在の速度にさらに8ml/sec加える。前進および後退のどちらも可。)に操作される加速ボタン116d、プレッサー112を任意の距離だけ後退させる際(例えば、1.5ml/secの速度で)に操作される後退ボタン116e、プレッサー112をイニシャライズ位置まで後退させる際に操作されるオートリターンボタン116f、動作を手動で停止または中断する際に操作されるストップボタン116g、116hおよびプレッサーを低速(例えば、0.7ml/sec)で前進/後退させる際に操作されるルートスイッチ116hと、を含むことができる。本形態では、各ピストン駆動機構を独立して動作させることができるように、前進ボタン116c、加速ボタン116d、後退ボタン116eおよびオートリターンボタン116fをそれぞれ2つずつ有している。
なお、オートリターンボタン116fの操作により後退する後退端であるイニシャライズ位置は、以下で述べるように様々なサイズのシリンジ800を装着できるようにシリンジ保持機構111が構成されている場合、シリンジ800のサイズ毎および/または充填されている薬液の種類毎に、異なる位置に設定されていてもよい。さらに、シリンジ800がアダプタ600を介して装着されるように構成される場合は、アダプタ600の種類毎にイニシャライズ位置が設定されてもよい。このイニシャライズ位置は、シリンジ800の種類おおび/またはアダプタ600の種類に応じて操作者が任意に設定できるようにしてもよいし、透視撮像システムによって自動的に設定されるようにしてもよい。
透視撮像システムによってイニシャライズ位置を設定できるようにする場合は、例えば、詳しくは後述するように、RFID技術を利用してシリンジ800の種類等を特定できるようにすれば、その結果に基づいてイニシャライズ位置を設定することができる。また、アダプタ600の種類を検出可能な適宜のアダプタセンサ(不図示)を注入ヘッドが有していれば、このアダプタセンサによる検出結果に基づいてイニシャライズ位置を設定することもできる。
イニシャライズ位置と同様、プレッサー112の最前進位置も、シリンジ800のサイズ毎および/または充填されている薬液の種類毎、さらにはアダプタ600の種類毎に異なる位置に設定されてもよい。プレッサー112の最前進位置の設定についても、イニシャライズ位置と同様、操作者が任意に設定できるようにされていてもよいし、RFID技術や適宜の検出センサなどを利用して、装着されたシリンジ800および/またはアダプタ600の種類等を特定できるようにし、その特定されたシリンジ800/およびまたはアダプタ600の種類等に応じて透視撮像システムが自動的に設定するようにすることもできる。
シリンダ保持機構111は、アダプタ600を介してシリンジ800が装着されるように構成されている。シリンジ800には、充填可能な薬液の容量に応じて様々なサイズのものがある。アダプタ600は、シリンジ800のサイズごとに用意されており、図4に示すように、それぞれ適合するシリンジ800のシリンダの末端に形成されているシリンダフランジ801を保持できるように構成されており、注入ヘッド110のシリンダ保持機構111に着脱自在に装着される。本形態ではアダプタ600を介してシリンジ800が装着されるように構成されているが、アダプタ600を介さずにシリンジ800が注入ヘッド110に直接装着されるように構成されていてもよい。
注入ヘッド110へのシリンジ800の装着は、例えば、注入ヘッド110のシリンダ保持機構111にアダプタ600を装着し、次いで、シリンジ800のシリンダフランジ801をアダプタ600に保持させることによって行うことができる。アダプタ600は、シリンダフランジ801を受け入れる溝を有しており、シリンダフランジ801が溝に挿入されることによってシリンジ800がアダプタ600に保持される。また、シリンダフランジ801がアダプタ600の溝に挿入された後、シリンジ800をその軸周りに所定の角度(例えば90度)回転させることによってシリンダをロックするロック機構を有していてもよい。このように、シリンジ800のサイズに応じてアダプタ600を用意することによって、種々のサイズのシリンジ800を注入ヘッド110に装着することができる。
シリンジ800は、薬液が充填された状態で製剤メーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。
被験者への薬液注入および画像の撮像に際し、上述した構成のうちスキャナ201、注入ヘッド110は検査室に設置され、透視撮像装置200の撮像制御ユニットおよび薬液注入装置100のコンソール101は、検査室とは壁で隔てられた操作室に設置される。したがって、コンソール101と注入ヘッド110との間での信号およびデータの送受信をケーブルによる有線通信で行う場合は、検査室と操作室を隔てる壁にケーブル用の通路を形成し、この通路を通してケーブルが引き回される。コンソール101と注入ヘッド110との間での信号およびデータの送受信を無線通信により行うこともでき、その場合は、壁にケーブル用の通路を形成する必要がなくなる。無線通信のために、例えばコンソール101および注入ヘッド110はそれぞれ無線通信ユニット(不図示)を備えることができる。
以下、上述した透視撮像システムにおけるデータ等の流れについて、図6に示すブロック図を参照しつつ説明する。なお、図6は、本形態の透視撮像システムにおける制御系の主要な機能のみを示しており、本発明はこれに限定されるものではない。
撮像制御部152は、例えば透視撮像装置200の撮像制御ユニットに組み込まれることができ、スキャナ201、撮像制御ユニットの表示装置など透視撮像装置200の動作を全般的に制御するように構成されている。撮像制御部152は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには透視撮像装置200の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、透視撮像装置200の各部の動作を制御する。また、撮像制御部152は、注入制御部150からデータおよび信号等を受信することができ、注入制御部150から受信したデータおよび信号を、透視撮像装置200の各部の動作の制御に利用することもできる。
電磁波照射器153は、透視撮像装置200(図1参照)に備えられている装置であり、電圧が印加されることにより、印加された電圧値に応じた強度で電磁波を照射するように構成されている。電磁波が被験者に照射されることで得られる信号に対して所定の処理を行うことで被験者の透視画像を撮像することができる。
注入制御部150は、例えばコンソール101に組み込まれることができ、コンソール101および注入ヘッド110の動作を全般的に制御するように構成されている。より詳しくは、注入制御部150は、入力ユニット156からのデータおよび情報等の入力、およびRFIDモジュール166からのデータおよび情報の入力に応じて、表示ユニット154に表示させる画面およびデータ等を制御したり、入力ユニット156から入力されたデータ等を用いて薬液の注入速度を求めたり、求められた注入速度に従ってピストン駆動機構140の動作を制御したりすることができる。
注入制御部150は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには薬液注入装置100の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、薬液注入装置100の各部の動作を制御する。また、注入制御部150は、CPUが持つクロックを利用した計時機能を有しており、例えば、現在時刻や、注入を開始してからの経過時間をカウントすることができる。注入制御部150は、撮像制御部152からもデータおよび信号等を受信することができ、撮像制御部152から受信したデータおよび信号を、注入撮像装置100の各部の動作の制御に利用することもできる。
表示ユニット154は、コンソール101のタッチパネル103であることができる。入力ユニット156は、本発明におけるデータ入力インターフェースのうち、操作者によるデータ入力操作を受け付けるように構成されたデータ入力インターフェースである。入力ユニット156としては、タッチパネル103や、コンソール101のボタン群102および注入ヘッド110のボタン群116を含むことができる。タッチパネル103は、通常、表示ユニット154として機能するディスプレイ、入力ユニットとして機能するタッチスクリーン、およびこれらの制御回路をモジュール化したものである。
ディスプレイとしては、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイなどを含む任意のディスプレイを用いることができる。タッチスクリーンとしては、静電容量式および感圧式など、任意のタッチスクリーンを用いることができる。タッチパネル103の制御回路は、注入制御部150から伝送された信号に基づいた所定の画面およびデータをディスプレイに表示させ、また、操作者などがタッチスクリーンに接触することによってタッチスクリーンから生成された信号に基づく入力情報を注入制御部150に伝送する。
RFIDモジュール166は、RFID制御回路164およびアンテナ165を有している。本形態では、シリンジ800は、シリンダの外周面にデータキャリアであるRFIDタグ802が貼付されており(図4参照)、RFIDモジュール166は、RFIDタグ802に記録された情報をアンテナ165によってRFIDタグ802から読み出し、読み出した情報を注入制御部150に伝送する。RFIDモジュール166は、注入制御回路150から伝送された情報をRFIDタグ802に書き込む機能をさらに有していてもよい。RFID制御回路164は、このRFIDモジュール166による情報の送受信動作を制御する。すなわち、RFIDモジュール166は、RFIDタグ802から情報を読み出すリーダ、または、さらにRFIDタグ802に情報を書き込むリーダ/ライタとして機能する。
透視撮像システムは、注入制御部152にデータを送受信可能に接続されたメモリーカードリーダ/ライタ158をさらに有することができる。メモリーカードリーダ/ライタ158は、例えば、図2に示すコンソール101に内蔵することができ、その場合、図2に示すように、コンソール101の筐体にはメモリーカードスロット104が設けられる。もちろん、透視撮像システムは、メモリーカードリーダ/ライタ158を独立したユニットとして備えていてもよい。
メモリーカードリーダ/ライタ158は、メモリーカード(不図示)にデータを書き込んだり、メモリーカードに記録されているデータを読み出したりするものである。例えば、メモリーカードに注入プロトコルをデータとして記録しておき、その記録された注入プロトコルを、メモリーカードリーダ/ライタ158を介して読み出し、注入制御部150へ送信することができるし、その逆に、注入制御部150に設定されている注入プロトコルを、メモリーカードリーダ/ライタ158を介してメモリーカードに書き込むこともできる。こうすることにより、例えば、ある薬液注入装置に設定されている注入プロトコルを、メモリーカードを介して他の薬液注入装置に伝送することができる。
このように、メモリーカードを介してデータの伝送を行うようにした場合、パスワード等の設定により、データの不正な送受信が行えないようにすることが好ましい。また、薬液注入装置の制御プログラムをメモリーカードに記録しておき、メモリーカードリーダ/ライタ158を介して注入制御部150に制御プログラムをインストールしたり、インストールされている制御プログラムを更新したりすることもできる。
メモリーカードは、CFメモリーカードやSDメモリーカードなど任意のメモリーカードであってよく、メモリーカードリーダ/ライタ158は、メモリーカードの読み出しおよび書き込みに適合した任意の機器を用いることができる。なお、ここでは、メモリーカードと注入制御部150との間でのデータのやり取りについて、のデータの書き込みおよびデータの読み出しの双方を行うことを説明したが、データの書き込みまたはデータの読み出しの何れか一方のみを行うメモリーカードリーダまたはメモリーカードライタが注入制御部150に接続されていてもよい。
上述のように、RFIDモジュール166は、RFIDタグ802からデータの入力を受け付けるものであり、その意味では、RFIDモジュール166は、入力ユニット156とともに、本発明におけるデータ入力インターフェースを構成する。
RFIDタグ802に記録されている情報としては、シリンジ800に充填されている薬液に関する情報、例えば、製造メーカー、薬液の種類、製品名、品番、含有成分(特に、薬液が造影剤の場合は造影剤単位量当たりのヨード含有量など)、充填量、ロット番号、消費期限などの他に、シリンジに関する情報、例えば、製造メーカー、製品名、品番といった固有識別番号、許容圧力値、シリンジの容量、ピストンストローク、必要な各部の寸法、ロット番号などが挙げられる。これらの情報の少なくとも一部は、透視撮像装置200へ伝送することができる。
RFID制御回路164は、任意の位置に設置することができるが、アンテナ165は、シリンジ800がシリンダ保持機構111に正常に保持された状態においてRFIDタグ802と対向する位置に設置されることが望ましい。
特に本形態では、図4に示すように、RFIDタグ802は長手方向を有する形状とされ、その長手方向をシリンジ800の周方向と一致させて貼付されている。シリンジ800は、シリンダ保持機構111に挿入されることによって正常に保持され、あるいは、挿入された後、シリンジ800を特定の向きとなるように回転させることによって正常に保持され、その正常に保持された状態でRFIDタグ802が下向きとなるように設計されている。
そして、RFIDモジュール166のアンテナ165は、導体からなる所定のパターン(例えば、1つまたは複数のループ状パターン)を形成したFPC(フレキシブルプリント回路基板)を有し、図7に示すように、シリンダ保持機構にシリンダが正常に保持されたシリンジ800のRFIDタグ802と対向する位置に、シリンジ800と同心状となるように円弧状に曲げられて配置されている。これにより、曲面上に貼付されたRFIDタグ802の検出範囲の拡大を図っている。
また本形態では、RFIDタグ802の貼付位置にばらつきがあったとしても、RFIDタグ802が確実にアンテナ165と対向することができるように、アンテナ165は、RFIDタグ802よりも大きな面積を有している。したがって、アンテナ165のサイズは、シリンジ800へのRFIDタグ802の貼付位置のばらつきを考慮して設計することが好ましい。
一方、アンテナ165を円弧状に曲げることにより、アンテナ165の曲率半径が小さくなるほど、また、アンテナ165の周方向での長さが長くなるほど、通信用の電波が干渉しやすくなり、通信感度が低下する傾向がある。そこで、電波の干渉を抑制するため、アンテナ165は、FPCのRFIDタグ802と対向する面と反対側の面に、フェライトシート165aを有することが好ましい。
RFIDモジュール166の出力は、例えば200mWとすることができる。このように微弱な出力とすることにより、RFIDタグ802がアンテナ165と正対する正常な位置にシリンジ800が装着された状態でRFIDタグ802からデータを良好に読み出すことができ、シリンジ800が正常な位置に装着されていない場合には読み出すことができないようにすることができる。これにより、RFIDタグ802からデータが読み出されない場合は、注入制御ユニット150は、シリンジ800が正常に装着されていない可能性がある旨、表示ユニット154へ表示させることなどにより操作者に注意を促すことができる。
次に、上述した透視撮像システムの動作などについて、透視撮像装置200がX線CT装置である場合を例に挙げて、薬液注入装置100の動作を中心により詳しく説明する。
まず、薬液注入装置100および透視撮像装置200の電源が投入され、薬液注入装置100および透視撮像装置200が起動される。次いで、薬液が充填されているシリンジ800が所定の手順で注入ヘッド110に装着される。シリンジ800が装着されると、RFIDモジュール166によってRFIDタグ802記録されている、シリンジ800および薬液に関するデータ/情報が読み出される。ここでは、2本のシリンジ800、具体的には造影剤が充填された造影剤用のシリンジおよび生理食塩水が充填された生理食塩水用のシリンジが注入ヘッド110に装着されるものとして説明する。本明細書では、シリンジの符号を充填されている薬液の種類で区別する場合、造影剤が充填されているシリンジについては添え字Cを付してシリンジ800Cと表記し、生理食塩水が充填されているシリンジについては添え字Pを付してシリンジ800Pと表記することがある。
注入ヘッド110への、造影剤が充填されているシリンジ800Cおよび生理食塩水が充填されているシリンジ800Pの装着が完了したら、操作者は、一例として図8に示すような延長チューブ400を各シリンジ800C、800Pに接続する。延長チューブ400は、T字コネクタを介して接続された3本のチューブを有している。各シリンジ800C、800Pに接続されるチューブの端部には接続コネクタ401、402が取り付けられており、被験者側に向かうチューブの端部には別の形態の接続コネクタ403が取り付けられている。各接続コネクタ401、402は、先端にねじ部が形成された円筒部を有し、ルアーロック方式でシリンジ800C、800Pの先端に設けられた導管部に接続されるものであってもよい。また、これらの接続コネクタ401、402のうち少なくとも生理食塩水用のシリンジ800Pに接続される接続コネクタ402は、一方弁としての機能を有するもの、例えば国際公開公報WO2012/060365号に記載されたようなものであってもよい。接続コネクタ403には、不図示の留置針またはカテーテルなどが接続される。このような延長チューブ400を用いることによって、造影剤および生理食塩水を同時または別々に被験者に注入することができる。
造影剤用のシリンジ800が装着されると、そのRFIDタグ802から、少なくとも造影剤単位量当たりのヨード含有量のデータが読み出され、注入制御部150内のメモリに一時的に格納される。注入制御部150は、RFIDタグ802から読み出したデータ/情報の少なくとも一部を表示ユニット154に表示させたり、プレッサー112を待機位置へ移動させたりする。待機位置とは、プレッサー112がシリンジ800のピストンの末端に当接する位置から最後端位置までの間の任意の位置である。待機位置への移動は、注入制御部150が、RFIDタグ802から読み出した情報に基づいてピストンの末端位置を求め、プレッサー112の可動範囲の最後端位置である初期位置からピストン末端位置までの距離を求め、その距離と予め決められていた任意のオフセット値分だけプレッサー112が前進するようにピストン駆動機構140を動作させることによって行うことができる。これにより、プレッサー112はピストンの待機位置へ移動される。
また、注入制御部150は、RFIDタグ802から取得したデータ/情報およびタッチパネル103から入力されたデータ等に基づいて、注入速度、注入量および注入時間などをパラメータとした注入プロトコルを作成する。作成された注入プロトコルは、薬液注入時の制御データとして注入制御部150のメモリに格納され、薬液の注入動作時には、注入制御部150は、この制御データにしたがってピストン駆動機構140の動作を制御する。また、作成された注入プロトコルは、タッチパネル103上に、グラフィック的、あるいは数値データの形式で表示することができる。操作者は、表示された注入プロトコルを任意に変更することができる。操作者が注入ヘッド110のチェックボタン116aを押下することによって、注入準備が完了する。
注入プロトコルとは、どのような薬液をどのような条件(量、速度、時間など)で注入するかを示すものである。また、複数種の薬液、すなわち造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの注入順序および各々の注入条件も注入プロトコルに含まれる。
図9Aに、表示ユニット154(例えばタッチパネル103)に表示される、注入条件設定用画面の一例を示す。図9Aに示す設定画面300には、撮像部位アイコン301、注入グラフサムネイル302を含む、各種データ/情報が表示される。なお、設定画面300中における「A」および「B」の表示は、それぞれ造影剤および生理食塩水を意味する。
撮像部位アイコン301は、撮像部位の表示および入力に用いられ、仰臥した人間を、例えば、頭部、胸部、腹部および脚部に区分してイラストレーション化した人体画像で表示される。操作者がこれらの区分のうち一つをタップすることなどによって、タップされた区分が撮像部位として選択される。あるいは、区分をタップすると、その区分に含まれる一つまたは複数の臓器の名称または画像がさらに表示され(例えば、区分が「胸部」の場合は「心臓」および「肺」など)、表示された臓器のいずれかをタップすることで、撮像部位が選択されるようにしてもよい。選択された撮像部位は、他の部位と視覚的に判別できるように表示が変更される。図9Aは、腹部の特に肝臓が撮像部位として選択されている状態を示す。
図示した例では、撮像部位アイコン301は、仰臥した人間を側方から見た状態をイラスト的に表した画像であるが、仰臥した人間を上方から見た状態を表した画像であってもよいし、また、画面上での人体画像の向きは縦向きであっても横向きであってもよい。さらに、撮像部位アイコン301は、人体を模した画像である必要はなく、臓器を表した画像のみで撮像部位を表したもの、文字のみで撮像部位を表したもの、およびこれらの組み合わせなど、任意であってよい。
体重アイコン305は、被験者の体重の表示および入力に用いられる。例えば、操作者が体重アイコン305をタップすると、体重アイコン305の近傍にテンキーを表示させるようにし、表示されたテンキーをタップしたり、あるいは、体重アイコン305をタップすると、体重アイコン305に表示されている数値を1つずつ増減させるための増減用アイコンを表示させるようにし、増減用アイコンをタップしたりすることなどによって、被験者の体重を入力することができる。
注入時間アイコン307は、造影剤の注入時間の表示および入力に用いられ、ヨード量アイコン308は、被験者の体重当たりの必要とされるヨード量の表示および入力に用いられる。注入時間は、透視撮像装置による撮像時間と同じ時間とされることが多い。注入時間およびヨード量の入力のための操作も、体重アイコン305の場合と同様とすることができる。なお、被験者の体重、注入時間およびヨード量は、デフォルト値が注入制御部150のメモリに格納されており、初期設定ではこのデフォルト値がそれぞれのアイコンに表示されるようにしてもよい。あるいは、薬液注入装置100の外部のユニットからこれらのデータの少なくとも1つが注入制御部150に伝送され、これら伝送されたデータが、それぞれ対応するアイコン表示され、注入条件の設定に用いられてもよい。外部のユニットとしては、透視撮像装置200、後述するRIS、PACKS、HISなどが挙げられる。
圧力リミットアイコン309は、装着されているシリンジ800の圧力リミット値の表示および入力に用いられる。圧力リミット値は、RFIDタグ802にそのデータが記録されている場合は、RFIDモジュール166によって読み出されたデータが、圧力リミットアイコン309に表示される。圧力リミットアイコン309は、体重アイコン305と同様にして操作者による数値の入力が可能とされており、RFIDタグ802にこれらのデータが記録されていない場合、あるいはRFIDタグ802を有していないシリンジが装着された場合は、体重アイコン305の場合と同様にして操作者がそれぞれの数値を入力することができる。シリンジ容量アイコン110には、プレッサー112(図3参照)の位置に対応して注入制御部150(図6参照)にて算出された、シリンジ800内の薬液の残容量が表示される。
造影剤アイコン311には、装着されたシリンジ800に充填されている造影剤の、RFIDタグ802に記録されている名称等が表示される。タイミングアイコン312は、薬液注入装置にテスト注入を実行させるためのアイコンである。テスト注入とは、後述するように、透視撮像装置200による断層画像の撮像開始タイミングを決定するために行われる造影剤の注入である。操作者がタイミングアイコン312をタップすると、注入制御部150は、表示ユニット154にテスト注入設定用の画面を表示させる。操作者は、表示された画面に従って、テスト注入のための所定の設定を行い、設定後、テスト注入開始のための所定の操作を行うことにより、注入制御部150は設定に従って薬液注入装置の動作を制御し、これによってテスト注入が行われる。
ルートアイコン313は、薬液注入装置にルートテストを実行させる際に操作されるアイコンである。ルートテストとは、シリンジ800から被験者までの薬液流通経路が正常に確保されているかどうかを確認するためのテストである。一般的には、ルートテストでは、生理食塩水を被験者に注入しながら、その生理食塩水が充填されているシリンジに作用する圧力を検出し、検出された圧力が予め設定された所定の範囲内にある場合に、薬液流通経路が正常に確保されていると判断する。一方、圧力が所定の範囲よりも低い場合は、薬液流通経路での液漏れなどが考えられ、その逆に高い場合は、薬液流通経路の詰まりなどが考えられる。
管電圧アイコン306は、透視撮像装置のX線管(電磁波照射器)に印加される管電圧値を入力するのに用いられる。X線管から照射されるX線の照射強度は、管電圧値の設定に応じて変化する。つまり、管電圧値は、X線の照射強度についての設定値であるということができる。管電圧値の設定そのものは透視撮像装置側で行われ、ここで管電圧値を入力するのは、透視撮像装置側で設定された管電圧の値を、造影剤および生理食塩水の注入条件の算出に利用するためである。なお、管電圧値は、通常よりも低い管電圧で撮像する場合に、管電圧を考慮して注入プロトコルを変更するときに利用される。したがって、通常は、管電圧アイコン306は表示されておらず、例えば「LOW kV」の文字が表示され、「LOW kV」の文字の部分をタップすることによって管電圧アイコン306が表示されるようにすることができる。
透視撮像装置が管電圧値の設定を変更可能に構成される場合、通常は、複数の管電圧値から1つを選択するように構成されている。よって、管電圧アイコン306も、それに合わせて複数の管電圧値から選択された値が入力されるようにすることが好ましい。その場合、例えば、管電圧値を120kV、100kV、80kVの3つの値から選択するようにした場合、管電圧アイコン306にはデフォルト値として、3つの値のうち最も高い値である120kVが表示されるようにすることができる。管電圧値を変更するのは、通常、被験者の症状等を考慮して、より少ない放射線被曝量で撮像する場合が多いからである。
そして、管電圧アイコン306の表示は、操作者が管電圧値アイコン306をタップする毎に、表示される管電圧値が100kV、80kVというように、降順に切り替わり、最も小さい値が表示されているときに管電圧アイコン306がタップされると、最も大きい値が表示されるようにすることができる。このようにすることにより、管電圧アイコン306の単純な操作だけで管電圧値を入力することができる。
次に、上述した設定画面300を利用した、注入プロトコル設定手順の一例を、管電圧値として120kV、100kV、80kVの中から選択する場合について説明する。
注入制御部150は、造影剤の名称、被験者の体重当たりの必要とされるヨード量、シリンジ800の圧力リミット値、各シリンジ800内の薬液の残容量、被験者の体重、造影剤の注入時間を、それぞれ造影剤アイコン311、ヨード量アイコン308,圧力リミットアイコン309、シリンジ容量アイコン310、体重アイコン305、注入時間アイコン307に表示させる。ここで、造影剤の名称、シリンジ800の圧力リミット値は、各シリンジ800のRFIDタグ802から読み出されて注入制御部150のメモリに一時的に格納されているデータである。被験者の体重、被験者の体重当たりの必要とされるヨード量、造影剤の注入時間は、注入制御部150のメモリに予め格納されているデフォルトの値であり、これらの値は必要に応じて操作者が任意に変更することができる。なお、設定画面300に表示はされないが、注入制御部150のメモリには、RFIDタグ802から読み出された、造影剤単位量当たりのヨード含有量のデータも格納されている。また、この段階では、管電圧アイコン306は表示されていない。
注入制御部150は、メモリに格納されたこれらのデータを用いて、造影剤の注入量L(mL)および注入速度S(mL/sec)を算出する。造影剤の注入量L(mL)は、被験者の体重をW(kg)、被験者の体重1kg当たりのヨード量をI(mgI/kg)、造影剤単位量当たりのヨード含有量をC(mgI/mL)、造影剤の注入時間をT(sec)としたとき、
で与えられ、造影剤の注入速度S(mL/sec)は、
S(mL/sec)=L(mL)/T(sec) ・・・式(2)
で与えられる。
例えば、W=60(kg)、I=600(mgI/kg)、C=300(mgI/mL)、T=30(sec)とすると、式(1)より、造影剤の注入量L=120(mL)と算出され、式(2)より、造影剤の注入速度S=4.0(mL/sec)と算出される。注入制御部150は、算出結果を、注入グラフサムネイル302として設定画面300上に表示させることができる。
上記式(1)では被験者の体重当たりに必要とされるヨード量Iを用いて造影剤の注入量Lを算出しているが、撮像部位(例えば、心臓など)によっては、被験者の体重当たりおよび時間当たりに必要とされるヨード量I’(mgI/kg/sec)を用いて注入量を算出することもできる。この場合の注入量の算出には、以下の式(1’)を用いることができる。
なお、前述したように、造影剤の注入量が少なすぎたり、造影剤の注入速度が低すぎたりすると、造影剤が目的の部位に到達するまでの間に、血液中に拡散したり、周囲の組織に吸収されたりする現象が生じ得る。そこで、造影剤の注入量および注入速度の下限値を注入制御部150に予め設定しておき、注入制御部150は、それらの値を算出された注入量および注入速度と比較し、算出された注入量および注入速度の少なくとも一方が、予め設定されている値より小さい場合に、警告を発するようにしてもよい。注入制御部150に設定される造影剤の注入量の下限値は、好ましくは30mlとすることができ、より好ましくは50mlとすることができる。注入制御部150に設定される造影剤の注入速度の下限値は、好ましくは3ml/secとすることができ、より好ましくは5ml/secとすることができる。これらの下限値は、撮像部位毎に設定されてもよいし、操作者が任意に変更できるようにされていてもよい。また、警告は、表示ユニット154(後述するように第2の表示ユニットを有する場合は、これらの少なくとも一方)に文字やグラフィックなどで表示させるようにしてもよいし、ブザーやスピーカ等の発音器を設け、この発音器からの音声による警告であってもよい。
この状態で、操作者がチェックアイコン314をタップするか、または注入ヘッド110のチェックボタン116aを操作することによって、算出した注入量および注入速度が注入制御部150内のメモリに一時的に格納され、注入プロトコルが確定する。その後、操作者が注入ヘッド110のスタートボタン116bを操作すると、それに応じた信号が注入制御部150に送られ、注入制御部150は、この信号をトリガーとして、メモリに格納されている各種データを読み出し、確定した注入プロトコルにしたがってピストン駆動機構140が動作するようにピストン駆動機構140の動作を制御する。これによって、シリンジ800内に充填されている薬液を被験者に注入することができる。
ここで、被験者の症状などによっては、撮像時の被験者の被曝量を抑制するために、より低い管電圧で撮像を行うことがある。その場合、管電圧値を考慮して注入プロトコルを設定することができる。管電圧を考慮した注入プロトコルの設定は、注入プロトコルの設定に必要な全てのデータが入力され、かつ、注入プロトコルが確定されていない段階で行うことができる。
管電圧を考慮した注入プロトコルを設定する場合、操作者は、設定画面300上に表示されている「LOW kV」の文字の部分をタップする。すると、「LOW kV」の文字の下方に管電圧アイコン306が表示される。管電圧アイコン306は、初期状態では、使用される透視撮像装置での撮像の際の通常の管電圧値、例えば「120kV」が表示されている。
この状態で操作者が管電圧アイコン306をタップすると、管電圧アイコン306に表示される管電圧値は100kV(図9B参照)に変更され、さらにタップすると80kV(図9C参照)に変更される。注入制御部150は、管電圧アイコン306がタップされる都度、この管電圧値に応じて注入プロトコルを設定する。
通常の管電圧よりも低い管電圧で撮像を行う場合、造影剤と生理食塩水とを同時に注入する注入プロトコル、すなわち、造影剤量が減量され、減量された分だけ造影剤が生理食塩水で希釈された希釈注入プロトコルが設定される。このときの造影剤の減量割合は、管電圧値が低ければ低いほど高くなる(別の言い方をすれば、造影剤の割合が低くなる)ように、例えば注入制御部150の適宜メモリにテーブルとして予め格納されていてもよいし、注入制御部150において算出されてもよい。造影剤と生理食塩水との割合を注入制御部150において算出する場合は、例えば、造影剤および生理食塩水の総注入量に対する造影剤の注入量の割合が、通常の管電圧値に対する変更後の管電圧値の割合にほぼ等しくなるように、造影剤と生理食塩水との割合を算出することができる。
以下、造影剤の減量割合が管電圧値に応じて予め定められている場合の注入プロトコルの設定例について説明する。
例えば、造影剤と生理食塩水との割合が、管電圧値に応じて以下のテーブルに示すように定められているとする。
表1において、管電圧値が120kVのときは、生理食塩水による造影剤の希釈は行わず、前述した式(1)で算出された注入量L(mL)および式(2)で算出された注入速度S(mL/sec)で造影剤のみを注入する注入プロトコルが得られる。
ここで、管電圧値が120kVよりも低い値の場合は、算出された造影剤の注入量および注入速度は、管電圧値に応じて予め定められた所定の割合で減量され、減量された分が生理食塩水の注入量および注入速度として算出される。
具体的には、管電圧値が100kVの場合は、造影剤と生理食塩水との割合が8:2とされ、注入制御部150は、テーブルから、造影剤の割合0.8および生理食塩水の割合0.2をそれぞれ読み出す。造影剤の注入量および注入速度は、注入制御部150において、造影剤のみを注入する場合の造影剤の注入量および注入速度をそれぞれ0.8倍した値として算出される。同様に、生理食塩水の注入量および注入速度が、造影剤のみを注入する場合の造影剤の注入量及び注入速度をそれぞれ0.2倍した値として算出される。
管電圧値が80kVの場合は、造影剤と生理食塩水との割合が6:4とされ、注入制御部150は、テーブルから、造影剤の割合0.6および生理食塩水の割合0.4をそれぞれ読み出す。造影剤の注入量および注入速度は、注入制御部150において、造影剤のみを注入する場合の造影剤の注入量および注入速度をそれぞれ0.6倍した値として算出される。同様に、生理食塩水の注入量および注入速度が、造影剤のみを注入する場合の造影剤の注入量及び注入速度をそれぞれ0.4倍した値として算出される。
なお、表1では管電圧値が80kVから120kVまで20kVの変化幅で変化させる場合を示しているが、管電圧値の範囲および変化幅は、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様によって異なることが多く、それらに応じて、例えば、管電圧値の範囲を70kVから140kVまでとしたり、変化幅を5kVあるいは10kVとしたりするなど、任意に設定することができる。管電圧値の範囲および変化幅の設定は、操作者が変更できるようにしてもよいし、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様に応じた値が注入制御部150のメモリ内にプリセットされており、操作者が製造メーカーおよび/または仕様を指定することにより自動的に変更されるようにしてもよい。
また、表1に示す管電圧値に応じた造影剤と生理食塩水との割合についても、管電圧値の範囲および変化幅と同様に、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様に応じて任意に変更することができる。
例えば、低い管電圧値(低線量)で撮像を行った場合、S/N比が小さくなりノイズが増加する傾向にある。このノイズを低減するために、透視撮像装置では、画像再構成時に逐次近似法による画像処理あるいは逐次近似法を利用した画像処理を行うのが一般的である。この画像処理は、透視撮像装置の製造メーカーごとに異なっており、さらには同じ製造メーカーであっても透視撮像装置のグレードごとに異なる場合もある。そして、どのような画像処理を行うかによって、同じ注入条件で薬液を注入したときに得られる画像の鮮明度等の画像品位が異なる。
よって、管電圧値に応じた造影剤と生理食塩水との割合を、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様(特に画像処理の仕様)に応じた値とすることにより、より良好な透視画像を取得することができる。
そのために、例えば、注入制御部150のメモリ内に、表1に示したようなテーブルを、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様ごとに用意しておき、注入制御部150は、操作者が管電圧アイコン306(図9A等参照)をタップして通常よりも低い管電圧が選択されたら、透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様に対応したテーブルを参照して造影剤と生理食塩水との割合を決定することができる。透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様は、例えば、低管電圧値の選択後、注入制御部150は、表示ユニット154に透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様の入力を受け付ける画面を表示させ、操作者が透視撮像装置の製造メーカーおよび/または仕様を入力するようにして特定することができる。あるいは、注入制御部150が透視撮像装置からその製造メーカーおよび/または仕様に関する情報を受信することによって特定することもできる。
算出結果は、図9Bおよび図9Cに示すように、設定画面300の注入グラフサムネイル302上に具体的な数値を表示させることができる。操作者は、表示された算出結果を確認し、チェックアイコン314をタップするか、または注入ヘッド110のチェックボタン116aを操作することによって注入プロトコルが注入制御部150に設定され、注入準備が完了する。
注入制御部150に設定された注入プロトコルは、透視撮像装置200に伝送されてもよい。また、注入制御部150に入力される管電圧値は、透視撮像装置200で設定された管電圧値が透視撮像装置200から注入制御部150へ伝送され、入力されるようにしてもよい。この場合、注入制御部150は、透視撮像装置200から伝送された管電圧値に応じて、造影剤の注入量および注入速度を算出し、さらに、必要に応じて生理食塩水の注入量および注入速度を算出することができる。
以上説明したように、被験者のX線被曝を少なくするためにより低い管電圧で撮像を行う場合、管電圧値に応じて造影剤の注入量を少なくすることで、所望のCT値を確保しつつ被験者への身体的負荷を軽減することができる。しかも、造影剤と生理食塩水とを合わせた薬液全体としての注入量および注入速度は管電圧値によらず一定であるので、注入された薬液の、被験者の血管内での流動性が大きく変化することはない。したがって、注入量が少なくなったために、薬液が所望の部位まで到達しにくくなったり、到達するのに時間を要したりといった問題が生じる可能性は極めて低く、良好な画像を撮像することができる。しかも、管電圧値といった撮像条件に応じて生理食塩水による造影剤の希釈比率が変更されるので、様々な造影剤濃度のシリンジを用意しておく必要はない。
なお、以上のようにして、造影剤用および生理食塩水用の両方のピストン駆動機構を駆動して生理食塩水で希釈された造影剤を注入した後、注入制御部150は、生理食塩水用のピストン駆動機構のみを駆動して生理食塩水のみを注入し、造影剤を生理食塩水で後押しするようにしてもよい。このとき、生理食塩水の注入速度は、最初に求めた、造影剤のみを注入する場合の造影剤の注入速度と等しい注入速度とすることが好ましい。
また、何らかの理由により造影剤を生理食塩水で希釈できない場合、注入制御部150は、上述した式(1)または式(1’)等により算出した造影剤量(従って、造影剤を生理食塩水で希釈した希釈造影剤量)と、造影剤単位量当たりのヨード含有量とから、算出した造影剤量中のヨード濃度を算出し、造影剤量およびヨード濃度を、例えば表示ユニット154に表示させることができる。そして操作者は、任意の薬液充填装置を用いて、空のシリンジに、算出された造影剤量の造影剤を、算出されたヨード濃度となるように生理食塩水と混合して充填する。そのようにして造影剤が充填されたシリンジを用い、薬液注入装置によって薬液を注入すれば、管電圧値に応じた造影剤の注入が可能となる。
また、これら造影剤量およびヨード濃度を注入制御部150から薬液充填装置へデータ伝送し、薬液充填装置は、伝送されたデータに従った造影剤量およびヨード濃度で造影剤がシリンジに充填されるように、造影剤を生理食塩水と混合してシリンジに充填することができる。そして、この薬液充填装置で造影剤が充填されたシリンジを薬液注入装置に装着し、装着されたシリンジ内の造影剤(希釈済み造影剤)を注入することにより、管電圧値に応じた造影剤の注入が可能となる。注入制御部150から薬液充填装置へのデータ伝送は、薬液充填装置がメモリーカードリーダを備えている場合は、注入制御部150は、前述したメモリーカードリーダ/ライタ158を介してメモリーカードに造影剤量およびヨード濃度を記録し、薬液充填装置は、これらのデータが記録されたメモリーカードから造影剤量およびヨード濃度を読み出すことによって行うことができる。あるいは、注入制御部150と薬液注入装置とが適宜のネットワークによってデータの送受信可能に接続されていれば、そのネットワークを介してデータを伝送することができる。
さらに、薬液充填装置によって薬液が充填される空シリンジがRFIDタグを備えていれば、そのRFIDタグに造影剤量およびヨード濃度をデータとして記録することができる。RFIDタグへのデータの記録はRFIDタグ用のライタまたはリーダ/ライタを用いることができる。ライタまたはリーダ/ライタは、薬液充填装置が備えていてもよいし、薬液充填装置とは別個のユニットであってもよい。
あるいは、注入制御部150は、造影剤量およびヨード濃度を算出した後、市販されているプレフィルドシリンジの製造メーカーおよび品名を、造影剤単位量当たりのヨード含有量やヨード濃度などその造影剤に含まれるヨードの量に関連するデータと対応付けたデータベース(またはテーブル)を参照し、造影剤単位量当たりのヨード含有量または算出したヨード濃度をデータベース(またはテーブル)のそれと比較し、値が同一または最も近い一つまたは複数のプレフィルドシリンジの製造メーカー、品名、容量などを、例えば表示ユニット154に表示させることもできる。この場合、操作者は、操作者は、表示されたプレフィルドシリンジを参考にして、必要に応じて適宜のプレフィルドシリンジを薬液注入装置に装着し、注入することができる。プレフィルドシリンジのデータベース(またはテーブル)は、注入制御部150が持っていてもよいし。注入制御部150の外部にあってもよい。
また、薬液注入装置100による薬液の注入モードとしては、造影剤をA、生理食塩水をBとしたとき、上述した造影剤のみを注入するフェーズ(A)、造影剤の注入フェーズ後に生理食塩水の注入フェーズを行うこと(A→B)、造影剤と生理食塩水とを同時に注入する混和注入フェーズ(A+B)を含め、例えば以下に示す、単一のフェーズまたは複数のフェーズを含む注入モードを有することができる。以下に示す注入モードにおいて、「→」は、その前後の動作が連続して行われ、「→」の前後の注入は異なるフェーズであることを意味する。また、「P」は、設定された任意の時間の経過後に次のステップへ移行するインターバル動作を表し、「H」は、所定の操作がなされるまで次のステップへは移行しない一時停止動作を表す。
(1)A
(2)A→B
(3)A→P→A→B
(4)A→(A+B)→B
(5)A→A→B
(6)(A+B)
(7)A→P→A
(8)A→A→A→A→A
(9)A→H→A
(10)B→A→(A+B)→B
(11)(A+B)→B
(12)A→A→A→A→B
(13)A→(A+B)
(14)A→B→P→(A+B)→B
(15)(A+B)→B→P→A→B
など。
上記のように各注入モードの中には、造影剤と生理食塩水との混和注入フェーズを含む注入モードもあるが、混和注入フェーズでは、造影剤と生理食塩水との混和比率を任意に設定(変更)することができる。図10に、混和注入フェーズを含む注入モードでの、混和比率設定画面の一例を示す。図10に示す例は、上記の注入モードのうち、「(13)A→(A+B)」の注入モードにおける混和比率設定画面350を示す。なお、注入モードは上記の注入モード(1)〜(15)に限定されるものではない。さらには、例えば、生理食塩水(B)の注入後、インターバル(P)または一時停止(H)を挟んで上記の注入モード(1)〜(15)の何れかを実行するといったことも可能である。
図10に示す混和比率設定画面350は、注入グラフ351、混和比率アイコン352および注入条件アイコン353を含むことができ、注入条件の設定操作中に操作者による所定の操作により、現在表示されている画面上に重ねて表示されるようにすることができる。注入グラフ251は、横軸を注入時間、縦軸を注入速度で表したグラフであり、図示した例では、薬液の注入が、造影剤(A)の注入後、造影剤と生理食塩水が同時に注入される(A+B)という2つのフェーズからなることを模式的に表している。また、各フェーズにおける薬液の注入速度および注入量が数値で表されている。
混和比率アイコン352は、造影剤(A)および生理食塩水(B)のそれぞれの混和比率が表示されており、一方の数値をタップする度に、その数値が1ずつ増加し、もう一方の数値が1ずつ減少するようになっている。注入条件アイコン353は、この注入モードの混和注入フェーズにおいて、造影剤および生理食塩水を混和比率アイコン352に表示された混和比率で注入する場合の、造影剤および生理食塩水の注入速度および注入量が表示される。注入制御部150は、これらの表示の制御を行う。操作者は、混和比率アイコン352に表示された混和比率の数値を確認し、その数値で良ければ承認アイコン354をタップする。注入制御部150は、この承認の入力操作を受け付け、入力がなされると、混和比率アイコン352に表示されている数値を、造影剤と生理食塩水との混和比率として設定する。混和比率設定画面350は、操作者による所定の操作によって表示を消すことができる。以降は、通常の注入条件設定手順に従って、他の注入条件を設定することができる。
なお、上述した造影剤のみの注入フェーズでは、造影剤が一定の注入速度で注入されてもよいし、経時的に変化する注入速度で注入されてもよい。同様に、上述した混和注入フェーズでは、造影剤および生理食塩水がそれぞれ一定の注入速度で注入されてもよいし、造影剤および生理食塩水がそれぞれ混和注入フェーズの間、経時的に変化する注入速度で注入されてもよい。いずれの場合であっても、注入速度の経時的な変化は、注入速度が経時的に増加または減少する線形的な変化であることができる。また、この線形的な変化の割合、すなわち横軸を経過時間とし、縦軸を注入速度としたグラフにおける傾きは、注入フェーズの間、一定であってもよいし、少なくとも1回変化してもよい。
混和注入フェーズにおいて造影剤の注入速度および生理食塩水の注入速度を経時的に変化させる場合、造影剤の注入速度と生理食塩水の注入速度との合計の注入速度が、混和注中フェーズの間、一定であることが好ましい。また、合計の注入速度は、混和注入フェーズの前および/または後に他の注入フェーズがある場合、それらの注入フェーズでの注入速度と等しいことが好ましい。
このように混和注入フェーズにおいて造影剤の注入速度を経時的に変化させることにより、CT値をより効果的に上昇させることができ、かつ/またはその高いCT値を比較的長時間保持することができる。よって、造影剤の注入速度を経時的に変化させることを含む注入フェーズは、例えば心臓系を含む血管の検査のようにスキャン時間が比較的長い検査において特に効果的である。
上述した事項は任意に組み合わせられてもよい。したがって、混和注入フェーズは、注入速度が一定のサブフェーズおよび注入速度が経時的に変化するサブフェーズといった複数のサブフェーズを含むこともできる。その一例を図10Aに示す。図10Aに示す例は、上記の注入モードのうち、「(11)(A+B)→B」の注入モードの一例であり、混和注入フェーズは、造影剤および生理食塩水がそれぞれ一定の注入速度で注入される第1のサブモードと、造影剤および生理食塩水がそれぞれ経時的に変化する注入速度で注入される第2のサブフェーズとを有している。
第1のサブフェーズでは、造影剤は生理食塩水よりも高い一定の注入速度で注入され、生理食塩水は、造影剤よりも低い一定の注入速度で注入される。第2のサブフェーズでは、第1のサブフェーズでの注入の後、造影剤は注入速度が経時的に一定の割合で増加する一方、生理食塩水は注入速度が経時的に一定の割合で減少し、造影剤の注入速度は、第2のサブフェーズの終了時点でゼロとなる。また、第2のサブフェーズの間、造影剤の注入速度と生理食塩水の注入速度との合計は一定であり、第1のサブフェーズでの造影剤の注入速度と生理食塩水の注入速度との合計と等しい。第1のサブフェーズと第2のサブフェーズとを含む混和注入フェーズの後、次の注入フェーズとして、生理食塩水のみが注入される。このフェーズでは、生理食塩水は、混和注入フェーズでの造影剤の注入速度と生理食塩水の注入速度との合計の注入速度と等しい一定の注入速度で注入される。
ところで、上記の注入モードにおける造影剤と生理食塩水との混和注入フェーズでは、X線管の管電圧値が通常の管電圧値である場合を前提にしている(上述した例では120kV)。しかしながら、被験者の放射線被曝量を低減するために、注入制御部150は、造影剤と生理食塩水との混和比率に応じて適切な管電圧値を求めることもできる。混和比率に応じた管電圧値は、例えば、表1に示したテーブルを参照し、設定された混和比率と同一または最も近い混和比率に対応する管電圧値を、適切な管電圧値として求めたり、混和比率に対応した管電圧値が定められたテーブルを参照して求めたりすることができる。あるいは、混和比率と管電圧値との関係を表す式が予め与えられている場合は、その式を用いて混和比率に対応した管電圧値を求めてもよい。
求めた管電圧値は、希釈の有無および混和の有無にかかわらず、お勧めの管電圧値として注入制御部150から撮像制御部152へ送信されてもよい。お勧めの管電圧値を受信した撮像制御部152は、それに応じてX線管の管電圧値を変更することができる。管電圧値の変更は、操作者の操作によって行ってもよい。
薬液として造影剤を注入する場合、造影剤による造影効果には被験者ごとの個人差がある。この造影効果の個人差の程度を把握するために、透視撮像装置200による断層画像の撮像のための注入に先立って、その撮像のための注入量よりも少ない注入量で薬液を注入するテスト注入を行い、その結果に基づいて、撮像タイミングを決定することなどが行われる。
このような場合、テスト注入後の薬液の注入動作は、透視撮像装置200から送信される指令を注入制御部150がその指令を撮像制御部152から受信することによって開始させることもできる。透視撮像装置200は、例えば、透視撮像装置200のモニタに表示されている断層画像をCCDカメラ(不図示)で撮影し、その断層画像のROIにおける明るさ(白さ)を監視し、明るさが予め定められた閾値以上となったとき、あるいは、モニタに接続されるケーブルからの信号強度を測定し、その測定結果が、予め定められた閾値以上となったときに、注入動作開始のための指令を注入制御部150へ送信することができる。また、断層画像の撮像のための注入(本注入)に先立ってテスト注入を実施する場合、テスト注入時のCT値およびTDC(Time Density Curve)をモニタし、その結果に応じて注入プロトコルを決定し、それに適した最適な撮像開始を薬液注入装置100から透視撮像装置200へ送信してもよい。
上述した実施形態は、透視撮像装置200がX線CT装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明において、透視撮像装置200としては、X線CT装置の他に、アンギオ装置、MRI装置、MRA装置、PET装置および超音波画像診断装置など、画像を取得するのに電磁波の照射を利用する任意の透視撮像装置であってもよい。透視撮像装置200がX線CT装置以外の装置である場合、それに応じて、薬液注入装置100の構成、画面の表示、操作手順および動作などが必要に応じて適宜変更されてもよい。
例えば、透視撮像装置200がMRI装置である場合、MRI装置は電磁波照射器として、高周波パルスを照射する高周波パルス送信器を有しており、高周波パルス送信器は設定により高周波パルスの照射強度を変更することができる。通常、高周波パルスは、照射強度が強いほど、造影剤による造影効果が増進されるため、注入制御部150は、電磁波照射器に設定される高周波パルスの照射強度が特定の照射強度よりも高い場合に、造影剤が生理食塩水で希釈するような処理を行う。この処理の具体的な手順は、電磁波照射器に設定される電磁波の照射強度の強弱の関係がX線CT装置の場合と逆になる他は、前述した手順と同様とすることができる。
また、上述した実施形態では、撮像制御部152が撮像制御ユニットに組み込まれ、注入制御部150が、薬液注入装置100のコンソール101に組み込まれたものとして説明した。しかし、撮像制御部152および注入制御部150がともに撮像制御ユニットに組み込まれていてもよいし、撮像制御部152および注入制御部150がともにコンソール101に組み込まれていてもよいし、あるいは、撮像制御部152および注入制御部150がともに、撮像制御ユニットおよびコンソール101とは別の、プログラム可能なコンピュータ装置(不図示)に組み込まれていてもよい。こうすることにより、薬液注入装置100のコンソール101または透視撮像装置200のコンソールが不要となり、システム全体を簡略化することができる。
さらには、注入制御部150の特定の機能を残りの他の機能とは別のユニットに組み込むこともできる。例えば、注入プロトコルの決定(演算)機能を透視撮像装置200の撮像制御ユニットに組み込み、残りの他の機能を薬液注入装置100のコンソール101に組み込むことができる。この場合は、撮像条件の設定および注入条件の設定に共通するデータを、透視撮像装置200および薬液注入装置100に重複して入力する必要がなくなる。注入条件の設定に際して不足するデータは、撮像制御ユニットから入力できるようにしてもよいし、薬液注入装置100のコンソール101から撮像制御ユニットに送信するようにしてもよい。
撮像制御部152の持つ機能および注入制御部150の持つ機能は、必要により各種ハードウェアを利用して実現し得るが、その主体はコンピュータプログラムに対応してCPUが機能することにより実現される。
そのコンピュータプログラムは、上述した手順の少なくとも一部、例えば、
所定のデータを用いて前記造影剤のみを注入する場合の前記造影剤の注入量および注入速度を求めるステップと、
撮像時に前記透視撮像装置の電磁波照射器から照射される電磁波の照射強度についての設定値が特定の設定値と異なる場合は、求めた造影剤の注入量および注入速度を、前記設定値に応じて定められた所定の割合で減量し、減量した分を前記生理食塩水の注入量および注入速度として求めるステップと、
を透視撮像装置200、薬液注入装置100またはこれら透視撮像装置200および薬液注入装置100を備えた透視撮像システムに実行させるためのコンピュータプログラムとして実装されることができる。
また、構造的な点では、注入ヘッド110とコンソール101とを一体に構成することもできる。コンソール101と注入ヘッド110が一体に構成された場合、コンソール101も検査室に配置されることになる。そこで、注入動作の開始および停止には、リモートコントローラ102(図1参照)を用いることができる。リモートコントローラ102を用いることにより、操作者は、操作室内で注入動作の開始および停止を制御できる。
シリンジとしては具体的には図11の(a)および(b)に示すようなものであってもよい。このシリンジは、例えば100ml用のものであることができる。このシリンジは、シリンダ部材501とピストン部材502とを備え、シリンダ部材501の末端に形成されたシリンダフランジ501aはIカット形状の輪郭形状を有し、同フランジ501aの外周部には2つの切欠き部505(一方のみを示す)が形成されている。シリンダ部材501の先端の導管部501bは、同軸状に配置された内側および外側の2つの筒状部を有するルアーロック接続用のものであってもよい。図11の(b)に示すように、シリンダフランジ501aの後面には、リング状の突起部501cが形成されていてもよい。
シリンジの他の例としては、図12の(a)、(b)に示すようなシリンジであってもよく、このシリンジは例えば200ml用のものであることができる。このシリンジも、上記シリンジと同様、シリンダ部材501とピストン部材502とを備え、シリンダ部材501の末端に形成されたシリンダフランジ501aはIカット形状の輪郭形状を有するものであってもよい。シリンダフランジ501aの外周部には2つの切欠き部505(一方のみを示す)が形成されている。シリンダ部材501の先端の導管部501bは、同軸状に配置された内側および外側の2つの筒状部を有するルアーロック接続用のものであってもよい。図12の(b)に示すように、シリンダフランジ501aの後面には、リング状の突起部501cと、その突起部501cから外側に向かって延びる複数のリブ501dが形成されていてもよい。
なお、図12ではシリンダフランジ501aに切欠き部505とリブ501dの両方が形成されたものが描かれているが、いずれか一方のみが形成されたもの(例えば、切欠き部505が形成されていないもの)であってもよい。また、リブ501dに関し、図示上下方向に並んだ複数のリブのうち上部と下部の2つのリブのみを残し、他のリブを省略したような形状としてもよい。このようなリブ群が、フランジ部の左右両側のいずれか一方のみに形成されたシリンジとしてもよい。
図11および12に示すような、シリンダフランジ501aに切欠き部505を有するシリンジが装着されるアダプタは、図示した姿勢でシリンダフランジ501aが上方から挿入される溝を有し、シリンダフランジ501aが挿入され、さらに軸周りに90度回転した状態で切欠き部505に係合する突起を有することが好ましい。これにより、シリンダがより確実に保持される。したがって、仮に注入動作中に注入圧力制御に不具合が発生し、過剰な圧力がシリンジに作用した場合であってもシリンジはしっかりと保持されるため、シリンダフランジ501aが破損しにくくなっている。また、シリンジが斜めに装着されることに起因する偏荷重も生じにくく、ピストンとシリンダとの隙間による液漏れも防止できる。
図11および12に示したシリンジも、前述したシリンジ800と同様、シリンダの外周面にRFIDタグを有していてもよい。
薬液注入装置は、注入圧力を検出するためのロードセルをさらに有していてもよい。ロードセルは、例えばプレッサー112に備えることができる。図3に示したように複数のプレッサー112を有する場合は、それらの中のいずれか少なくとも1つにロードセルを有していてもよい。注入圧力は、モータ電流を測定することによって検出することもできる。プレッサー112に作用する負荷が大きくなると、その負荷の大きさに応じて、ピストン駆動機構140の駆動源であるモータ電流が大きくなる。モータ電流を利用した注入圧力の検出には、そのことが利用される。注入圧力の検出は、ロードセルを用いた検出およびモータ電流を利用した検出のいずれか一方のみであってもよいし、両者を併用してもよい。両者を併用する場合、通常はロードセルによって注入圧力を検出し、ロードセルが故障したときのみモータ電流の測定結果を利用して注入圧力を測定することができる。
延長チューブは、造影剤と生理食塩水が良好に混合されるようにするミキシングデバイスを備えていることが好ましい。ミキシングデバイスを備えた延長チューブの一例を、図13A、図13Bおよび図13Cを参照して説明する。
この延長チューブは、造影剤が充填されるシリンジとミキシングデバイス241とを接続する第1のチューブ231aと、生理食塩水が充填されるシリンジとミキシングデバイス241とを接続する第2のチューブ231bと、ミキシングデバイス241の液体出口(詳細下記)に接続され患者側へと延びる第3のチューブ231cとを有している。特に限定されるものではないが、第1および第2のチューブ231a、231bはそれぞれ接続コネクタ239a、239bを介してシリンジの導管部に接続されるようになっていてもよい。同様に、第3のチューブ231cも、接続コネクタ239cを介してカテーテル等に接続されるようになっていてもよい。
なお、薬液注入装置による薬液の注入前には、エア抜きを目的としたプライミングが行われる。このプライミングにはいくつかの方法があり、延長チューブ内が生理食塩水、造影剤のいずれかの薬液で満たされる。具体的な一例としては、次のようなものがある:
(a)まず造影剤シリンジから造影剤を押し出し、ミキシングデバイスまでの第1のチューブを造影剤で満たす。次いで、生理食塩水シリンジから生理食塩水を押し出して、第2のチューブ、ミキシングデバイス、第3のチューブ、および、カテーテルまでを生理食塩水で満たす。これにより回路全体が薬液で満たされ、エアが抜かれた状態となる。他にも、
(b)まず、造影剤シリンジから造影剤を押し出し、次いで生理食塩水シリンジから生理食塩水を押し出した後に、両シリンジから同時に薬液を押し出す方法や、
(c)まず生理食塩水シリンジから生理食塩水を押し出し、次いで造影剤シリンジから造影剤を押し出して薬液の回路全体を薬液で満たす方法などもある。
なお、薬液注入装置には上記のようなプライミング動作を自動的に行わせる機能が備わっていてもよく、また、プライミング動作開始のトリガとなるものは例えば操作者による入力操作であってもよい。
続いて、ミキシングデバイス241について、詳しく説明する。ミキシングデバイス241は、図13A、図13Bに示すように、旋回流を生成する旋回流生成室242aである第1室と、旋回流を軸方向に集中させる狭窄室242bである第2室と有する本体部242を備えている。この例では、旋回流生成室242aは円柱状の内部空間を有し、狭窄室242bは旋回流生成室242aと共軸の円錐状の内部空間を有する。なお、旋回流生成室の短手方向の断面形状は、円、楕円、その他の曲線から形成される種々の形状が考えられる。また、旋回流生成室は、狭窄室に近づくにつれて先が狭まる狭窄形状を有するように構成することもできる。
ミキシングデバイス241の本体部242の流れ上流側には第1のチューブ231aが接続される導管部243aが設けられ、下流側には第3のチューブ231cが接続される導管部243cが設けられている。第2のチューブ231bが接続される導管部243bは、旋回流生成室242aの中央から上流側の位置に配置されている(詳細下記)。
この例では、導管部243aから造影剤が流入するとともに導管部243bから生理食塩水が流入し、ミキシングデバイス内で両薬液が混合される。その後、造影剤及び生理食塩水の混合薬液は、液体出口としての導管部243cから流出する。
比重の大きい薬液が流入する導管部243aは、流れ方向の上流側において、旋回流生成室242a上流側壁面の中央部に設けられている。液体出口である導管部243cは、この導管部243cの中心線と導管部243aの中心線とが一致するように、すなわち両者が共軸となるように設けられている。各部が共軸を有するように配置することにより、ミキシングデバイス内において発生する渦の等方性を高めることができる。つまり、渦を空間内で淀みなく均一に発生させ,混合効率を向上させることができる。
他方、比重の小さい薬液が流入する導管部243bは、は、旋回流生成室242aの側面に配置され、断面円形である旋回流生成室242aの円周の接線方向に延在する。別の言い方をすれば、導管部243bは、旋回流生成室242aが有する円柱状空間の中心軸線からの周縁側にずれた位置に設けられ、これにより、導管部243bから流入した比重の小さい薬液の旋回流が生成されるようになっている。より詳しくは、図13Cに示すように、流路241fbが、旋回流生成室242aの湾曲した内面の円周接線方向に延在するように構成されており、これにより、この流路から流入した薬液が旋回流となる。さらに狭窄室242bは、図面からも明らかなように、流れ方向下流側に向かってすぼまる傾斜した内面を有しているので、発生した旋回流は、渦の中心軸方向に集中することになる。
また、造影剤が流入する導管部243aは、流路241faを介して旋回流生成室242aと連通している。これにより、比重の大きい薬液を、比重の小さい薬液の旋回流の中心軸と平行な方向で旋回流生成室に導入することができる。つまり、比重の大きい薬液は、旋回流生成室が有する円柱状空間の中心軸線と平行な方向に導入される。また、生理食塩水が流入する導管部は、流路241fbを介して旋回流生成室と連通している。一例で、流路241fbの内径は、造影剤が流入する流路241faの内径よりも小さく形成されていてもよい。こうした構成によれば、所定の圧力で薬液を注入する場合、断面積が相対的に小さい流路241fbから流入する比重の小さい薬液の流速が、比重の大きい薬液の流速よりも速くなる。したがって、比重の小さい薬液の流速が遅い場合に生じうる、旋回流の慣性力の減衰やそれに伴う旋回強度の不足に起因する、薬液どうしの混合効率の低下を回避することができる。
上記のように構成されたミキシングデバイス241では、例えば造影剤および生理食塩水を同デバイス内に流入させると、流路241faから旋回流生成室に流入した造影剤は軸方向下流側に向かう流れとなる。一方、流路241fbから旋回流生成室に流入した生理食塩水は、同室内の湾曲した内面に沿って旋回する旋回流となり、そして、生理食塩水の旋回流は、狭窄室に導かれて旋回流の中心軸方向に集中する。このような渦はランキン渦として知られ、旋回流のもつ慣性力を渦の回転軸の近傍に集中させることができる。
そしてこのようなミキシングデバイス241を有する延長チューブで2つの薬液の同時注入を行う場合、両薬液が良好に混合されることとなる。すなわち、この例では、造影剤と生理食塩水とが良好に混合された希釈造影剤を得ることができ、その結果、造影剤の濃度のムラ等が無くなるので一般的な分岐チューブの場合と比較して優れた造影効果が期待できる。
透視撮像システムは、前述した表示ユニット154(コンソール101に備えられたタッチパネル103)とは別に、図14Aおよび図14Bに示すように、第2の表示ユニットA151を備えることができる。通常、注入ヘッド110は、透視撮像装置200とともに検査室に配置され、コンソール101は、検査室に隣接する操作室に配置されることが多い。薬液の注入に関する各種設定は、操作室内に配置されたコンソール101を操作者が適宜操作することによって行われるが、注入の準備段階では、被験者への注入針の穿刺あるいはカテーテルの挿入、チューブ内のエア抜き、および注入ヘッド110の動作確認などのため、操作者は検査室内で様々な作業を行う。この準備段階で、操作者が操作室に移動することなく注入条件などを確認することができるようにするために、第2の表示ユニットA151は、検査室内に配置されることが好ましい。
第2の表示ユニットA151には、薬液の注入に関する種々のデータ、例えば、撮像対象部位、被験者の体重、薬液の注入速度、薬液の注入量、注入する薬液の種類、薬液の注入プロトコルなどを表示することができる。これらの表示形式は任意であってよく、コンソール101に備えられたタッチパネル103と同一の画面上に表示されてもよいし、異なる画面上に表示されてもよい。また、図9A〜図9Cを用いて説明した注入条件設定用画面を表示させることもできる。併せて、準備動作および注入動作において、ピストン押圧部の動作を停止させたとき、その旨をメッセージやアイコンなどで表示表示させるようにすることもできる。
第2の表示ユニットA151は、タッチパネルであることが好ましい。第2の表示ユニットA151をタッチパネルとし、注入条件等の設定のためのデータ入力、注入ヘッド110の動作の開始および停止の操作などを第2の表示ユニットA151からも行えるようにすることで、準備段階および注入の初期段階において注入条件を変更したり注入を停止したりする場合が生じたときに、操作者は操作室に戻ることなくその場で注入条件を変更することができるようになる。注入条件を変更したり注入を停止したりする場合としては、例えば、被験者の体調が思わしくなく、正規の注入条件よりも注入条件を緩和したほうが良いと判断される場合や、血管からの薬液の漏れが生じた場合などが挙げられる。なお、第2の表示ユニットA151がタッチパネルでない場合であっても、第2の表示ユニットA151が適宜の操作スイッチを備える構成とすれば、操作スイッチの操作によって注入条件の設定および/または変更を行うことができる。
第2の表示ユニットA151は、検査室内でも特に、注入ヘッド110の近傍に配置することが好ましく、例えば、注入ヘッド110に一体に設けたり、注入ヘッドを支持する部材に設けたりすることができる。図14Aを参照すると、注入ヘッド110に一体に設けられた第2の表示ユニットA151の一例が示される。一方、図14Bに示す例では、ヘッド支持構造A158に、注入ヘッド110と第2の表示ユニットA151とが支持されている。ヘッド支持構造A158は、公知の可動式スタンドの一部であってもよいし、天井に固定される多関節の支持アームアセンブリの一部であってもよい。図14Bに示すように、支持アームアセンブリ160は、例えば、天井に固定されるベース部161と、ベース部161から延びる多関節のアーム部163を有するものとすることができる。図14Bに示す例では、第2の表示ユニットA151は、アーム部163の、鉛直方向に延びて下端部に注入ヘッド110が取り付けられるアームの中間部に取り付けられている。
第2の表示ユニットA151は、連結機構A155を介してヘッド支持構造A158に接続されている。特に限定されるものではないが、第2の表示ユニットA151が、注入ヘッド110と間隔をあけて、注入ヘッド110の上方に位置してもよい。連結機構A155は、例えば、鉛直軸周りおよび/または水平軸周りに注入ヘッド110が回動できるように注入ヘッド110を保持するものであってもよい。第2の表示ユニットA151と注入ヘッド110および/またはコンソール101との接続は、ケーブルを介した有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
上述のような構成によれば、第2の表示ユニットA151の向きを、注入ヘッド110の向きとは無関係に、上下方向および左右方向に広範囲で調整できるので、操作者が第2の表示ユニットA151をより視認しやすいものとなる。また、第2の表示ユニットA151を注入ヘッド110と間隔をあけて配置することにより、第2の表示ユニットA151を、注入ヘッド110やその他の装置にノイズの影響を与えにくい最適位置に配置することができる。さらに、第2の表示ユニットA151を無線接続とすることにより、ケーブルを介してのノイズの伝播を防止することができる。
透視撮像システムは、図15に示すように、薬液注入装置100および透視撮像装置200の他に、使用前のシリンジ800を所定の温度に加温する加温器900および使用済みであり廃棄されるべきシリンジ800を収納する廃棄ボックス910をさらに含んでいてもよい。加温器900および廃棄ボックス910は、薬液注入装置100および透視撮像装置200とは独立した装置であってもよいし、これらの少なくとも1つとネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。加温器900と廃棄ボックス910との間についても、互いに独立していてもよいし、ネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。加温器900および廃棄ボックス910はそれぞれ、RFIDタグ802に記録されている情報を読み出したり、情報をRFIDタグ802に書き込んだりするためのリーダ/ライタ902、912を備えることができる。シリンジ800には、加温器900により加温されることにより、リーダ/ライタ902によりシリンジ800のRFIDタグ802に加温された旨の情報が記録される。また、使用済みのシリンジ800は、廃棄ボックス910に収納される際に、廃棄されたシリンジ800である旨の情報が、912によってRFIDタグ802に記録される。
透視撮像システムは、薬液充填装置920をさらに備えることもできる。薬液充填装置920は、薬液が充填されていない空のシリンジを搭載し、この空シリンジに薬液を充填することのできる装置である。薬液充填装置920も、薬液注入装置100、透視撮像装置200、加温器900および廃棄ボックス910とは独立した装置であってもよいし、これらの少なくとも1つとネットワークを介してデータ通信可能に接続されていてもよい。空シリンジには、ピストンが最前進位置にある状態で、薬液が収容されている袋およびボトルといった任意の形態の薬液容器930が、チューブなどによって流体連通するように接続される。空シリンジと薬液容器930との接続後、薬液充填装置920によってピストンを後退させることで、空シリンジに薬液を充填することができる。空シリンジにはデータキャリアであるRFIDタグが装着されていることが好ましい。以下の説明では、空シリンジは、RFIDタグ802が装着された薬液が充填される前のシリンジ800であるものとして説明する。
薬液容器930にもデータキャリアであるRFIDタグ932が装着されている。RFIDタグ932には、例えば、収容されている薬液の種類、内容量、製薬メーカー、品番、粘度、消費期限、薬液が造影剤の場合はその単位造影剤量当たりのヨード含有量など、薬液に関する情報がデータとして記録されている。薬液充填装置920は、RFIDタグ932からデータを読み出すことのできるリーダ922aと、シリンジ800に装着されているRFIDタグ802にデータを書き込むことのできるライタ922bと、を備えている。
以上のような構成において、薬液充填装置920を用いて薬液容器930からシリンジ800に薬液を充填するとき、薬液容器930に装着されたRFIDタグ932に記録されたデータが、リーダ922aによって読み出される。薬液充填装置920は、メモリなどの記憶装置を備えており、読み出されたデータは、この記憶装置に一時的に記憶される。次いで、操作者は、薬液充填装置920に充填量を設定し、薬液充填装置920を動作させる。
これによって、設定された量の薬液がシリンジ800内に充填される。充填量は、薬液充填装置920の所定の操作手順に従って設定することができる。薬液の充填後、ライタ922bは、記憶装置に一時的に記憶されたデータとともに、薬液の充填量および充填日時をシリンジ800のRFIDタグ802に書き込む。以上により、シリンジ800には、薬液が充填され、充填された薬液に関するデータがRFIDタグ802に記録されることになる。
なお、RFIDタグ802には、前述したような、シリンジに関するデータが予め記録されていてもよい。また、薬液容器930のRFIDタグ932からデータを読み出すリーダ922aを、データの書き込みも行えるリーダ/ライタとすることもできる。この場合、薬液容器930に収容されていた充填前の内容量から充填量を減算した現在の内容量(残量)をRFIDタグ932に書き込むようにすることもできる。残量の計算は、薬液充填装置920が有するCPUにて行うことができる。
注入制御部150は、前述したように、現在時刻の計時機能を有している。これを利用し、RFIDタグ802に記録された充填日時をRFIDモジュール166(図6参照)にて読み出し、上記計時機能により計時された現在日時と、読み出した充填日時とを、注入制御部150(図6参照)にて比較し、その結果、現在日時が充填日時から所定の期間経過後、すなわち使用期限超過であれば、注入制御部150は、この薬液の注入防止のための処理を行うようにすることができる。薬液の注入防止のための処理とは、例えば、ピストン駆動機構140(図6参照)の動作を不能とすること、表示ユニット154(図6参照)に、薬液の使用期限が超過していることを表示させること、およびブザー等の発音ユニット(不図示)から音または音声による警告を発することなどが挙げられる。薬液の使用期限は、注入制御部150に予め設定されているが、設定された使用期限は操作者が任意に変更することもできる。このように、薬液の充填日時を管理することによって、注入される造影剤の安全性を確保することができる。
薬液注入装置100、透視撮像装置200、加温器900、廃棄ボックス910および薬液充填装置920等の、透視撮像システムを構成する各医療機器は、医療ネットワークに接続されていてもよい。これにより、被験者に対する処置の履歴、薬液の使用履歴、シリンジの使用履歴等を簡単に保存および追跡することができる。
また、少なくとも薬液注入装置100および透視撮像装置200が医療ネットワークに接続されていてもよい。これによって、薬液注入装置100により注入された薬液の注入速度、注入時間、注入量、注入グラフを含む注入結果、さらに、透視撮像装置200による撮像条件(撮像時間、撮像装置がCT装置の場合は管電圧、などを含む)は、医療ネットワークを通じて透視撮像装置、RIS(放射線科情報システム)、PACS(医用画像保管管理システム)、HIS(病院情報システム)などに注入データとして保存できる。これにより、保存した注入データは、注入履歴の管理に利用される。特に注入量などは、使用済薬液としてカルテ情報に記録したり、会計処理に利用したりすることができる。また、被験者の体重等の身体的情報、ID、氏名、検査部位、検査手法を、RIS、PACS、HISなどから取得して薬液注入装置に表示し、それにあった注入を実施することもできる。これらの情報、およびRFIDモジュール166によってRFIDタグ802から取得したデータは、薬液注入装置100から透視撮像装置200を経由してRIS、PACKS、HISなどに送信されてもよいし、薬液注入装置100から直接、RIS、PACKS、HISなどに送信されてもよい。
また、薬液充填装置920による薬液の充填量は、その薬液の被験者への注入量とすることができる。そうすることにより、充填した薬液を無駄なく使用できる。注入量は、被験者の体重といった身体的特徴、撮像部位および撮像時間などのファクターを考慮した計算式を用いて算出することもできるし、医師等が値を直接決定することもできる。注入量の算出に用いられる上記のファクター、あるいは医師等が決定した注入量の値は、操作者が入力することもできるし、ネットワーク経由あるいはダイレクト回線で接続されたRIS、HIS、PACS、外部サーバ、クラウドなどの外部データベースから入手することもできる。注入量の計算に用いるファクターを外部データベースから入手することで、操作者による入力ミスを防止することができる。
計算式を用いた注入量の計算は、注入制御部150で実行される。注入制御部150の機能は、薬液注入装置、透視撮像装置および薬液充填装置が含む各種制御回路など任意のコンピュータ装置の何れが有していてもよい。すなわち、薬液の注入量は、薬液注入装置ではなく、他の任意のコンピュータ装置の何れかが計算するように構成することができる。また、コンソール制御回路の機能を薬液注入装置ではなく他の任意のコンピュータ装置が有することで、薬液の注入量だけでなく、注入速度および注入時間などをパラメータとした注入プロトコルも、その任意のコンピュータ装置で作成することができる。
空シリンジへの薬液の充填は、薬液注入装置100で代用することができる。これにより、薬液充填装置は不要とすることができる。薬液注入装置100を用いて空シリンジに薬液を充填する場合は、プレッサー112は、注入ヘッド110に装着された空シリンジのピストン末端に形成されたフランジを着脱可能に保持するための、爪またはフックなどのフランジ保持構造を有する。このフランジ保持構造によってピストンのフランジが保持され、かつ、シリンジが薬液容器930に連結された状態でプレッサー112を後退させることで、薬液容器930内の薬液をシリンジに充填することができる。