JPWO2016104141A1 - 絶縁テープ及びその製造方法、並びに固定子コイル及びその製造方法、並びに発電機 - Google Patents

絶縁テープ及びその製造方法、並びに固定子コイル及びその製造方法、並びに発電機 Download PDF

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Abstract

回転電機のコイル絶縁に用いる絶縁テープ1であって、マイカ粒子3と水溶性高分子4と前記マイカ粒子3の一方の面に偏在するナノフィラー2とを含むマイカ層5と、マイカ層5上に積層され繊維補強材6を含む補強層7とを有することを特徴とする絶縁テープ1である。また、マイカ粒子3を含む分散液を抄造してマイカ層5を形成する工程と、マイカ層5に繊維補強材6を含む補強層7を貼り合わせた後、ナノフィラー2と水溶性高分子4とを含む混合液を前記マイカ層5に塗布する工程とを含むことを特徴とする絶縁テープ1の製造方法である。

Description

本発明は、回転電機の固定子に用いられる絶縁テープ及びその製造方法、並びにその絶縁テープを用いた固定子コイル及びその製造方法、並びにその絶縁テープを用いた発電機に関するものである。
回転電機の固定子は、固定子鉄心の内周側に形成された複数のスロット内に収納された固定子コイルを有する。固定子コイルは、銅などの良導体の金属からなるコイル導体、及びそれを被覆する固定子コイル絶縁物から構成される。大型の回転電機における固定子コイルは、マイカシートにガラスクロスなどの繊維補強材を貼り合わせた絶縁テープをコイル導体に数回巻きつけ、低粘度の液状熱硬化性樹脂組成物(絶縁ワニス)を減圧下で含浸させた後、所定の断面形状となるようにプレス成形しながら加熱することにより製造される。また、固定子コイルは、スロット内で上下2段など多段状に収納されており、これらの固定子コイル間にスペーサーを挿入すると共に、スロットの開口端部に固定子コイルを固定するためのウェッジを挿入することにより、回転電機の運転時に固定子コイルから発生する電磁振動を抑制している。
通常、このような回転電機の運転時には、固定子コイルの絶縁物は、常に高い電気的ストレスにさらされた環境に置かれる。また、このような回転電機は、20年以上の長期間に渡って使用されるものであり、絶縁物の耐電圧性の向上による製品の高信頼化が重要になっている。
そこで、柔軟性のある基材と、基材に接合されたマイカ母材構造とより成る柔軟な絶縁テープであって、マイカ母材構造は、母材であるマイカと、絶縁性樹脂と、ナノクレイ小板(ナノフィラー)と、Cr、Sn、Zn及びそれらの混合物より成る群から選択されナノクレイ小板内に添加された金属イオンとを含み、絶縁性樹脂及びナノクレイ小板はマイカの周囲または内部に存在する絶縁テープが提案されている(特許文献1を参照)。
特許第4073209号公報
一般に、絶縁テープにナノフィラーを担持させるためには、接着剤が用いられている。一方で、固定子コイルの製造において、絶縁テープは、コイル導体に巻き付けられた後、絶縁ワニスを含浸させて加熱硬化することによってコイル導体と一体化される。このため、フィラーを担持させるための接着剤と、含浸に用いられる絶縁ワニスとは、相溶性が良好であり、且つ加熱硬化時に接着剤と絶縁ワニスとが一体化することが求められる。
しかしながら、従来の絶縁テープを用いて固定子コイルを製造する場合、ワニス含浸時においては、接着剤によって絶縁テープに担時されたナノフィラーは、接着剤がワニスに溶解した後、ワニスと混合し、絶縁テープ内において流動性を有する状態となる。接着剤の流動に伴ってナノフィラーが流動すると、ナノフィラー同士の凝集が進行しやすくなるため、凝集した二次粒子が形成されて粒子サイズが大きくなる。そのため、ナノフィラーの比表面積は小さくなり、ナノフィラー特有の耐電圧性向上効果を得られにくいという問題があった。
本発明は上記の課題を解決するものであって、後述するように、ナノフィラーがマイカ粒子表面の片方面に偏在しており、また、ワニス含浸時、ナノフィラーはワニスに不溶な水溶性高分子に覆われているため、ナノフィラーが絶縁テープに担持された状態が維持される。これによって、ナノフィラーの凝集が進行せず、ナノフィラー特有の大きな比表面積をワニス含浸後の状態においても維持することができる。この効果によって、絶縁テープの耐電圧性の向上による製品の高信頼化が可能になる。
本発明は、リン片状のマイカ粒子と、水溶性高分子と、水溶性高分子により担持されてマイカ粒子の一方の面に偏在するナノフィラーとを含むマイカ層と、マイカ層上に積層され繊維補強材を含む補強層とを有することを特徴とする絶縁テープである。
また、本発明は、マイカ粒子を含む分散液を抄造してマイカ層を形成する工程と、マイカ層に繊維補強材を含む補強層を貼り合わせた後、ナノフィラーと水溶性高分子とを含む混合液をマイカ層に塗布する工程とを含む絶縁テープの製造方法である。
また、本発明は、コイル導体と、コイル導体に絶縁テープを巻き付け、絶縁テープに液状熱硬化性樹脂組成物を含浸して加熱加圧成形させた絶縁層とを有することを特徴とする固定子コイルである。
また、本発明は、コイル導体に前記絶縁テープを巻き付ける工程と、絶縁テープに液状熱硬化性樹脂組成物を含浸して加熱加圧成形する工程とを含むことを特徴とする固定子コイルの製造方法である。
また、本発明は、複数のスロットを備える鉄心と、複数のスロット内に挿入されたコイルとを備える発電機であって、コイルはコイル導体の外周に絶縁テープが巻かれており、絶縁テープは、扁平なマイカ粒子と水溶性高分子により担持されて前記マイカ粒子の一方の面に偏在するナノフィラーとを含むマイカ層と、マイカ層上に積層された補強層とを有する発電機である。
本発明によれば、ナノフィラーがマイカ粒子表面の片側の面に偏在しており、また、ナノフィラーはワニスに不溶な水溶性高分子に覆われているため、ナノフィラーが絶縁テープに担持された状態が維持される。これによって、ナノフィラーの凝集が進行せず、ナノフィラー特有の大きな比表面積をワニス含浸後の状態においても維持することができ、絶縁物の耐電圧性を向上させることができる絶縁テープ及びその製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態1による絶縁テープの模式断面図である。 本発明の実施の形態1による絶縁テープのマイカ層の模式拡大断面図である。 回転電機の固定子の部分拡大斜視図である。 本発明の実施の形態1による絶縁テープの製造工程を示すフロー図である。 本発明の実施の形態2に係る実施例および比較例のコイルの絶縁破壊電圧を相対的に示したグラフである。 本発明の実施の形態3による回転電機の断面図である。 本発明の実施の形態3による回転電機のスロット内部における固定子コイルを示す部分断面図である。 回転電機の固定子コイルに用いられるコイル導体の形状を示す図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による絶縁テープの模式断面図である。図1において、絶縁テープ1は、扁平な薄片であるマイカ粒子3と前記マイカ粒子3の一方の面に偏在して存在するナノフィラー2と水溶性高分子4を含むマイカ層5と、マイカ層5上に積層され繊維補強材6を含む補強層7とを有するものである。本発明の絶縁テープ1は、マイカ層5と、マイカ層5の支持材としての補強層7の2層からなる。各層には後述の構成からなる材料で構成される。この2層は耐電圧性を発現させるための、必要最小限の構成であって、絶縁テープの性能を改質するために、さらに層を追加してもよい。例えば、補強層7の上に高熱伝導性を付与するための、無機フィラーを積層した層や、さらに高耐電圧性を付与するために補強層7の上にマイカ層を設け、3層構造とすることが可能である。本発明の補強層7は、絶縁テープの固定子コイル巻回時に絶縁テープにかかる巻回張力に耐えるために設けるものである。また、ワニス含浸後の絶縁テープと樹脂との複合体における強度保持のために設けるものである。これらの目的に合致するものであれば、繊維、フィルムの形態を問わず用いることができる。繊維補強材6の例としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ポリアミド繊維等の織布が挙げられる。また繊維に限らず、同様の機能を発現するフィルムを用いてもよい。フィルムの例としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。なお上記の目的に合致するものであれば、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、ガラス繊維を用いた絶縁テープは特性が良好であり、低コストであるという点から優れている。
次にマイカ層5について説明する。本発明のマイカ層5は、マイカ粒子3とナノフィラー(ナノサイズの絶縁性無機粒子)2と、接着剤として水溶性高分子4を含むことを特徴としている。マイカ粒子3としては、層状ケイ酸塩鉱物の一種として知られる硬質マイカ(マスコバイト)、軟質マイカ(フロゴパイト)等を用いることができる。マイカ粒子2の形状としては、ブロックマイカ、剥がしマイカ、集成マイカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、厚さが均一であり、且つ低コストであるという点で、マイカ層5に集成マイカを用いることが好ましい。
固定子コイルの耐電圧性の観点から、マイカ粒子3の含有量は、1mの絶縁テープ1当たり100g〜200gであることが好ましい。マイカ粒子3の含有量が100g/m未満であると、所望の耐電圧性が得られず、課電劣化時の絶縁破壊時間が短くなる場合がある。一方、マイカ粒子3の含有量が200g/mを超えると、電気絶縁性は良好であるものの、絶縁テープ1が厚くなって巻き付け難くなる場合がある。
これらのマイカ粒子3はリン片状の形状であり、絶縁テープの厚み方向に積層している。これらの粒子間は、積層する粒子同士が重なり合った部分や、積層方向に粒子の形状、粒子の位置が違って、粒子同士がずれて配置して存在している。積層する粒子間に後述のナノフィラー2が介在している場合もある。
これらのマイカ粒子3は、水粉砕、せん断粉砕等によって、マイカの原鉱を微細化して得られるものであって、マイカ粒子3の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計で、単分散した状態での平均粒径が50〜800μmであると、絶縁テープの固定子コイル巻回時に巻き付けやすく望ましい。またマイカ粒子3の厚みは、同様の理由により、30μm以下であることが望ましく、特に平均厚みが1〜15μmであることが望ましい。
一般的に絶縁テープと樹脂との複合体においては、ワニスは耐電圧性が低く、部分放電によって侵食されていくのに対し、リン片状のマイカ粒子は、高耐電圧性を有し、部分放電による侵食は起こりにくいことが知られている。そのため、一般的に、コイルの絶縁物においては、マイカ粒子の積層面の方向がコイルの電界方向と垂直に並ぶように設置される。
マイカ粒子が上記のように配置された固定子コイルの絶縁材料においては、マイカ粒子の積層方向に対して垂直方向(リン片状粒子の厚み方向)の電界がかかり、絶縁破壊は樹脂を侵食しながら進行し、マイカ粒子に絶縁破壊先端が到達した時には、破壊進路はマイカ粒子の積層面に沿う方向に変わり、マイカ粒子の末端部まで侵食し再びワニスの絶縁破壊が電界方向に進行し、侵食が進むと考えられる。平均粒径と、平均厚みとの比により、マイカ粒子のアスペクト比が決定されるが、上記に記載した絶縁テープと樹脂複合体との絶縁破壊メカニズムから推測するとアスペクト比が大きいもの、または平均粒径が大きいものが耐電圧性に有利と考えられる。
次にマイカ層5に含有するナノフィラー(ナノサイズの絶縁性無機粒子)2について説明する。ナノフィラー2は、絶縁性無機粒子であれば、特に種類を限定するものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、グラファイト窒化ホウ素、ホウ化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライトなどのスメクタイトなどがあげられる。これらの中でも、誘電率が低く、絶縁物内の部分放電特性に良好な、シリカがナノフィラー2の材料として特に好ましい。ナノフィラーの形状としては、球形、楕円形、針形、リン片形等のいずれであってもよいが、フィラー粒子の形状によっては異方的な熱伝導性のために電気絶縁性にばらつきが出る場合があるため、そのばらつきを防止する観点から、粒子形状は球状であることが望ましい。
ナノフィラー2は、レーザー回折式粒度分布計で、単分散した状態での平均粒径が、5〜500nmであることが望ましい。500nm以上になると、積層したマイカ粒子3間に介在して配置された場合、マイカ粒子3間に大きな隙間が発生し、マイカ粒子3間の分子間力による相互作用が低下する。マイカ粒子3間の分子間力を失うと、絶縁テープそのものがもろくなり、固定子コイルへの巻回ができなくなるといった不具合がある場合がある。
ナノフィラー2は、リン片状のマイカ粒子3の一方の平面上に偏在して存在する。図2は、絶縁テープ1のマイカ層5の模式的な拡大断面図である。図2において、ナノフィラー2は実質的に水溶性高分子4内に包含されてマイカ粒子3に担持されており、詳細に見るとマイカ粒子3と水溶性高分子4の間の空隙が存在している(この空隙は図1には図示されていない)。絶縁テープ1を導体に巻き付けた後、この空隙に絶縁ワニスが含浸されて充填される。
ここで、図2に示すように、ナノフィラー2は、マイカ粒子3の一方の面、すなわち絶縁テープ1の厚み方向のうち片側の方向に偏在して存在する。具体的には、隣り合うマイカ粒子3とマイカ粒子3との間隙(図2示す隙間厚みをLとする)において、偏在しているマイカ粒子3の面から見てL/2以下の範囲におけるナノフィラー2が、L/2以上の範囲におけるナノフィラー2の量の1.5倍以上であることを特徴とする。絶縁テープ1のマイカ層5における電気的弱点は、マイカ粒子3とマイカ粒子3との間隙に存在するワニス等の樹脂であって、ナノフィラー2は、これらの電気的弱点を補強するものである。このようなナノフィラー2の偏在は、マイカ粒子3とマイカ粒子3との間に間隙を有する箇所に存在していればよく、全てのマイカ粒子3の表面にナノフィラー2が偏在する必要はない。これは、マイカ粒子3同士が密に接触した部位は、電気的な弱点となりにくいからである。絶縁破壊経路はこの電気的弱点を、ある確率で通過することにより生じるものであり、マイカ層5を構成するマイカ粒子3とマイカ粒子3との間隙を有する全ての部位において、ナノフィラー2が偏在する必要はない。ただし、高い耐電圧性を安定して発現するため、ナノフィラー2が上記のように偏在して存在する割合は、マイカテープ1の断面においてマイカ粒子の重なりによって形成される間隙100箇所あたり、10箇所以上存在することが望ましい。
以下に、上述の隙間厚みLについてのより詳しい定義を述べる。図2においては、互いにほぼ平行な4枚の平板状のマイカ粒子が記載されている。図2の上側から、マイカ粒子の記号をそれぞれA,B,C,Dとした時、マイカ粒子の積層方向の「隣り合うマイカ粒子とマイカ粒子の間隙」には、(1)A-B間、(2)A-C間、(3)A-D間、(4)B-C間、(5)B-D間、(6)C-D間の6種類がある。このうち、(1)は粒子同士が密着しているので、本定義の対象外とする。また、(3)については、マイカ粒子Bが間に介在しているので、本定義の対象外とする。すなわち、Lはマイカ粒子-マイカ粒子からなる間隙であって、その間隙がマイカ粒子の密着によって確認できない場合と、間隙に他のマイカ粒子が存在する場合とを除いたものであり、図2においては前述の(2),(4),(5),(6)の場合が相当する。
マイカテープ1の断面において、マイカ粒子の重なりによって形成される間隙100箇所あたり、10箇所以上の偏在箇所が存在することが望ましい理由は、電気的弱点であるマイカ粒子3とマイカ粒子3との間隙に存在する樹脂を絶縁破壊経路とした時、対地電極まで絶縁破壊が進む過程において、上記の割合以上の密度であれば、ナノフィラーの効果により、破壊の進展を有意な程度まで抑制し、その効果を発現できるためである。
本発明において、ナノフィラー2は、水溶性高分子4でマイカ粒子3に担持されていることを特徴とする。絶縁ワニスとしては、非水溶性成分を50%以上含み、また熱硬化性樹脂を含むものである。熱硬化性樹脂の種類としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。また、近年の環境問題を受け、有機溶剤未添加型であることが多い。そのため、ワニス粘度を調整するため、スチレンモノマやアクリルモノマといった、反応性の希釈成分を添加することが一般的である。これらは非水溶性であるため、ナノフィラーを担持する水溶性高分子はワニスに溶解しない。これらに用いる水溶性高分子としては、アラビアガム、グアガム、ペクチン、デンプン、ゼラチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、またはエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマ、ポリアクリル酸アミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールがあげられる。このなかでも、フィラーの接着性に優れたセルロース誘導体から選ばれるものが好ましい。これらの水溶性高分子4を用いることで、ワニス含浸時に、水溶性高分子4によって絶縁テープ1に担時されたナノフィラー2は、水溶性高分子4が絶縁ワニスに溶解しないため、絶縁テープ1内において流動性を有さない。
また、水溶性高分子4は絶縁ワニスと溶解しないため、ナノフィラー2の担持のために、大量に添加すると、ワニスの絶縁テープ1への含浸性を低下させる場合がある。そのため、水溶性高分子4の添加量は、絶縁テープ1m当たり10g以下であることが望ましい。水溶性高分子4の添加量の下限値は、絶縁テープ1m当たり0.5gである。
以上の構成の通り、ナノフィラー2を水溶性高分子4で担持し、且つナノフィラー2をマイカ粒子3の一方の面に偏在させることで以下の効果が得られる。
1点目の効果は、ナノフィラー2の凝集抑制効果である。ワニス含浸時においては、水溶性高分子4によって絶縁テープ1に担時されたナノフィラー2は、接着剤がワニスに溶解しないため、ワニス含浸後において凝集化は進行しない。そのため、ナノフィラー2特有の大きな比表面積を維持することができ、耐電圧性向上効果が得られる。
2点目の効果は、ナノフィラー2の濃度上限の向上である。一般的に、ナノフィラー2は比表面積が大きいために、少量の添加で、溶媒粘度が著しく増加することが知られているが、絶縁テープ1に担持したナノフィラー3は、ワニス含浸時、ワニスと混合しない。そのため、含浸工程においてワニスの粘度に影響を及ぼすことがなく、含浸可能な粘度を維持できる。これにより、高濃度にナノフィラーを添加でき、耐電圧性向上効果が得られる。
3点目の効果はナノフィラー2の偏在による耐電圧性向上効果である。絶縁破壊は、上記に記載の通りマイカの表面近傍を経路とする。固定子コイルの絶縁材料においては、マイカ粒子に垂直方向(図2の上下方向)の電界がかかり、絶縁破壊は樹脂を侵食しながら進行し、絶縁破壊先端がマイカ粒子の表面に到達した時には、破壊進路は約90°曲がってマイカ粒子の面方向に変わり、マイカ粒子の末端部まで侵食した後、再び電界方向にワニスの絶縁破壊が進行し、侵食が進むと考えられる。したがって、ナノフィラーをマイカの一方の面に偏在させることで、フィラー濃度を局所的に高めることができ、絶縁破壊経路の進展抑制に効果を発現させることができる。
そのため、この領域において、ナノフィラーが凝集せずに分散した状態でナノフィラー濃度が局所的に高い空間を形成することができれば、マイカ粒子の表面における絶縁破壊の進行を抑制することができる。本発明は、以上の構成の通り、ナノフィラー2を水溶性高分子4で担持し、且つナノフィラー2をマイカ粒子3の一方の面に偏在させることで、耐電圧性の向上を実現することができる。
また一方で、耐電圧性向上のため、テープ製造時や含浸工程で用いるレジンにナノフィラーを添加し、絶縁物中にナノ粒子を導入するといったことが考えられる。しかしながら、マイカ粒子間にナノフィラーを高密度充填すると、耐電圧性は向上するものの、マイカ粒子間の接着成分(ワニス)成分が少なくなるため、テープ間の接着力が低下する。そのため、長期間にわたり、発電機運転時の振動、ヒートサイクルによるストレスを受け続けると、テープ間の剥離が発生しやすく、絶縁破壊が進行する原因となる。
また、テープをコイルに巻回する際、マイカ粒子間全体にナノ粒子を充填すると、マイカ粒子間の密着性が低下し、テープとしての引張強度が低下する。そのため、水溶性高分子にマイカとナノ粒子と混合し、密着性を向上させる手法が考えられるが、ワニスの含浸性が悪くなる点が問題となる。さらに、ナノ粒子がランダムに配置されてしまうので、耐電圧性を向上させるには多量のナノ粒子を添加する必要があった。
本発明の、マイカ粒子の平面近傍にナノ粒子が偏在した構成によれば、絶縁破壊経路となるマイカ粒子面の近傍にナノ粒子が高濃度に含有されるため、高確率で絶縁破壊の進展を阻害し、耐電圧化を図ることができる。さらに、マイカ粒子間には、絶縁ワニスなどの接着成分が十分に含有されており、テープ間の接着力を維持することが可能である。
次に、絶縁テープ1の製造方法について説明する。図4は、本発明の絶縁テープの製造工程を示すフロー図である。本実施の形態1の絶縁テープの製造方法は、マイカ粒子を含む分散液を抄造してマイカ層を形成する工程と、前記マイカ層に繊維補強材を含む補強層を貼り合わせる工程と、貼り合わせの後に、ナノフィラーと水溶性高分子とを含む混合液を前記マイカ層に塗布する工程とを含むことを特徴とするものである。
具体的には、本実施の形態による絶縁テープの製造方法は、以下の手順により作製する。
まず、マイカ粒子3を含む分散液を混合し(S1)、撹拌(S2)してマイカ粒子3を含む分散液を調製する。得られた分散液を用いて抄造することによりマイカ層5を形成する(S3)。混合(S1)、撹拌(S2)は同時に行ってもよい。マイカ粒子3を含む分散液の調製方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、マイカ粒子3を水中に分散させることによって分散液を調製することができる。分散液におけるマイカ粒子3の含有量は、特に限定されず、マイカ粒子3の種類等に応じて適宜調整すればよい。
分散液の抄造方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、市販の抄紙機を用いて分散液を抄造することにより、マイカ層3となるマイカシートを得ることができる。
このとき、マイカシートは繊維補強材を含む補強層とは別の種類の支持材である、PETやポリイミドで形成された各種フィルムに貼り合わせてもよい。マイカシートを支持材に貼り合わせる場合、ロールコーター法、スプレー法等の公知の方法を用いてマイカシートに樹脂組成物を塗布した後、支持材と接着させればよい。
マイカシートと支持材との接着に用いられる樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂、硬化剤及び溶剤を一般に含む。熱硬化性樹脂としては、当該技術分野において公知のものを用いることができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性等の特性に優れているので好ましい。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環脂肪族エポキシ樹脂、グリシジル−アミノフェノール系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。硬化剤の具体例としては、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、コバルト(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛がより好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類等に応じて適宜設定する必要があるが、100質量部の熱硬化性樹脂に対して、一般的に0.1質量部〜200質量部である。
上記樹脂組成物に用いる溶剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。溶剤の具体例としては、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤の配合量は、樹脂組成物の所望とする粘度に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
次に、マイカ層5に繊維補強材6を含む補強層7を貼り合わせる(S4)。その後、ナノフィラー2と水溶性高分子4とを含む混合液をマイカ層4に塗布する。マイカシートに繊維補強材6を貼り合わせる方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、マイカシートと繊維補強材6とを樹脂組成物を用いて貼り合わせればよい。具体的には、ロールコーター法、スプレー法等の公知の方法を用いて樹脂組成物を繊維補強材6に塗布し、樹脂組成物中の溶剤を揮発させた後、その上にマイカシートを重ねる。その後、この積層物を60℃〜70℃の加熱下で熱ロール等により加圧して圧着させればよい。また上記の支持材としてのフィルムを同様に貼り合わせることができる。
次に、ナノフィラー2と水溶性高分子4を含む混合液を作製する(S5)。混合液の組成は特に限定されず、例えば、樹脂組成物にナノフィラー2と水溶性高分子4を配合したものを用いることができる。この混合液に用いられる樹脂組成物としては、マイカシートと支持材との接着に用いられる樹脂組成物と同じものを用いることができる。上記の混合液に樹脂組成物を含めることによって、ナノフィラー2を保持する層に柔軟性を付与することが可能となる。ナノフィラー2の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類等に応じて適宜設定する必要があるが、100質量部の熱硬化性樹脂に対して、一般的に20質量部〜200質量部である。
ナノフィラー2と水溶性高分子4を含む混合液としては、特に限定されず、例えば、上記したナノフィラー2と水溶性高分子4を溶剤で溶解させたものを用いることができる。溶剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。溶剤の具体例としては、水、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の配合量は、混合液の塗布性に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
次に、ナノフィラー2と水溶性高分子4を含む混合液を補強層7付きのマイカ層5に塗布する(S6)。ナノフィラー2と水溶性高分子4とを含む混合液の塗布方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。塗布方法の例としては、スプレー法、ロールコーター法等が挙げられる。ナノフィラー2と水溶性高分子4とを含む混合液のマイカ層5への塗布後、所定の温度に加熱して溶剤を揮発させる(S7)ことにより、マイカ粒子3の一方の面にナノフィラー2が偏在し、これらが水溶性高分子4によって担持された絶縁テープ1を形成することができる。
乾燥時に、ナノシリカは自重により、マイカ粒子の一方の面に沈降して偏在する状態となる。ナノフィラーの塗布液には、水溶性高分子と揮発性の溶剤が含まれていることにより、偏在した状態を得ることが容易になる。最後に完成した絶縁テープ1を巻き取って一連の工程を終了する。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2による固定子コイルは、コイル導体と、このコイル導体の外周部に巻き付けられた実施の形態1の絶縁テープ1に液状熱硬化性樹脂組成物を含浸して加熱しながら加圧することにより硬化させてコイル導体と一体化された絶縁層とを有する。本実施の形態の固定子コイルは、使用する絶縁テープに特徴があり、その他の構成は従来公知の構成(例えば、図3に示す構成)を採用することができる。図3に示すように、回転電機の固定子において、コイル導体8と絶縁層9とを有する固定子コイル10は、固定子鉄心11の内周側に形成された複数のスロット12内で上下2段に収納され、これらの固定子コイル10間にスペーサー13が挿入されると共に、スロット12の開口端部に固定子コイル10を固定するためのウェッジ14が挿入される。
このような構造を有する固定子コイル10は、以下のようにして製造される。まず、絶縁被覆された複数の素線導体を束ねて構成されたコイル導体8の外周部に、絶縁テープ1を一部(例えば、絶縁テープ1の幅の半分の部分)が互いに重なるように複数回巻き付ける。ここで、コイル導体8を構成する素線としては、導電性であれば特に限定されず、銅、アルミニウム、銀等からなる素線を用いることができる。
次に、コイル導体8に巻き付けた絶縁テープ1に液状熱硬化性樹脂組成物を含浸させる。ここで、含浸に用いられる液状熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、一般に、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含む。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、実施の形態1において例示したものと同じものを用いることができる。
硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。硬化剤の例としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸等の脂環式酸無水物;ドデセニル無水コハク酸等の脂肪族酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族酸無水物;ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等の有機ジヒドラジド;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール;ジメチルベンジルアミン;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン及びその誘導体;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類等に応じて適宜設定する必要があるが、100質量部の熱硬化性樹脂に対して、一般的に0.1質量部〜200質量部である。
液状熱硬化性樹脂組成物の含浸方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。含浸方法の例としては、真空含浸、真空加圧含浸、常圧含浸等が挙げられる。含浸の際の条件は、特に限定されることはなく、使用する液状熱硬化性樹脂組成物等の種類に応じて適宜調整すればよい。
液状熱硬化性樹脂組成物を絶縁テープ1に含浸させた後、コイル導体8を絶縁テープ1の外側から型締めすることにより、絶縁テープ1に圧力を加える。次に、絶縁テープ1を加熱等することにより、絶縁テープ1に含浸されている液状熱硬化性樹脂組成物を硬化させて絶縁層9を得る。これにより、固定子コイル10が得られる。
上記のようにして製造される本実施の形態の固定子コイル10は、実施の形態1の絶縁テープ1を用いているため、ワニス含浸時のナノフィラー2の凝集を抑制できる。またナノフィラー2は、ワニスに不溶な水溶性高分子4によって絶縁テープ1に担時され、ワニス含浸時にワニスと混合しない。そのため、ワニス粘度に影響を及ぼすことがなく、また高濃度にナノフィラー2を添加することが可能である。これらにより耐電圧性向上効果が得られる。また、ナノフィラー2の偏在により、マイカ粒子3の表面近傍にナノフィラー2が分散した状態で局所的に粒子濃度が高い空間を形成することができるため、マイカ粒子3の表面における絶縁破壊の進行を抑制することができる。
以下、実施例及び比較例によって本発明の詳細を説明する。なお、これらの例によって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
絶縁テープは上記の手法にて製造したもので、親水性のナノシリカをテープ目付量10g/m2で塗布し、水溶性高分子として、ヒドロキシエチルセルロース(目付量1g/m2)を用いている。
またコイル絶縁物は、各絶縁テープを導体に15回、半重ねで巻回し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と酸無水物からなる樹脂混合物に真空含浸し150℃で12時間加熱硬化してコイルを得た。
(比較例1)
ナノフィラーを含まない絶縁テープを用いて、コイル導体周辺にコイル絶縁物を形成した。その他のテープ材料およびコイル材料の構成は実施例1と同一とした。
(比較例2)
また、ナノフィラーの偏在の効果を確かめるため、ナノフィラーがマイカ層内に均一に分散したテープを作製した。同テープの製造においては、マイカと繊維補強材を貼り合わせる工程にて、ナノフィラーとエポキシ樹脂を溶剤に混合し、ホモジナイザを用いて、ナノフィラーを単分散化した溶液をマイカに塗布、乾燥させた。作成後の観察により、マイカ粒子の隙間にナノフィラーが均一に分散していることを確認した。これを用いてコイルを作製した。
(比較例3)
水溶性高分子の効果を確かめるため、本発明の方法にてナノフィラーをテープに付与する際、水溶性高分子を用いずに含浸に用いる樹脂と同じものを使用して作製した。これを用いてコイルを作製した。
図5は、実施の形態2に係る上記の実施例および比較例のコイルの絶縁破壊電圧を相対的に示したグラフである。図中のエラーバーは、複数の測定におけるデータのばらつき範囲を示す。絶縁破壊電圧測定の結果、実施例1の絶縁層は、比較例1と比較して約30%の特性向上効果が確認できた。また、比較例2と比較例3は、ナノフィラーを添加した絶縁テープを用いているが、実施例1の破壊電圧向上効果を発現できなかった。これは、フィラーが含浸用の樹脂とともに流動し、絶縁物系内に含有する量が低下したこと、または、ナノフィラーの凝集が進行したことが原因と推定される。
実施の形態3.
ここでは、上述の絶縁テープ1を、タービン発電機などの回転電機のコイル絶縁に適用した実施の形態について説明する。図6(a)は本発明の回転電機の回転軸Jに直交する断面図、図6(b)は、本発明の回転電機の回転軸Jに沿った断面を示す断面図である。なお、図6(a)は、図6(b)の1a−1a線における切断面に相当する。図6において、回転電機100の固定子は、図示しない回転子Kを収納する円筒状の固定子鉄心101と、鉄心締付部材102、保持リング103、フレーム104、中枠部材105、弾性支持部材106などを備えている。
鉄心締付部材102は、固定子鉄心101の外周部に周方向に所定間隔をあけて設けられ、該固定子鉄心101を軸方向に締付けるもので、この例では8本用いられている。
保持リング103は、固定子鉄心101の外周部に軸方向に所定間隔をあけて設けられ該固定子鉄心を鉄心締付部材102の上から中心部方向に締付ける如く保持する軸方向に扁平なリングであり、この例では4箇所で用いられている。
フレーム104は、固定子鉄心101の周りにあって固定子鉄心101と間隔をあけて固定子鉄心101を包囲する円筒状の容器である。
中枠部材105は、フレーム104内面に軸方向に所定間隔をあけて軸心方向に突設されたリング状の部材であり、この例では5箇所で用いられている。
弾性支持部材106は、隣り合う中枠部材105と、軸方向中央部で保持リング103に固定されたばね板であり、この例では4本の弾性支持部材106を備えている。
図6に示された固定子は、例えばタービン発電機の電機子を構成するものであり、固定子鉄心101の内周部には軸方向に形成されたスロットが周方向に所定数設けられ、そのスロット内には固定子コイルが配設されている。
図7は本実施の形態3による回転電機のスロット内部における固定子コイルを示す部分断面図である。この図では、スロット112の内部の構成が分かりやすいように、固定子コイル120の一部をスロットから引き出して示している。ここで、スロット112は鉄心111の積層方向、即ち回転軸Jの方向に伸びた形状で、固定子コイル120を挿入する溝である。鉄心111はケイ素鋼板を積層した固定子鉄心であり、固定子コイル120は、コイル導体108と、本発明に係る前述の絶縁素材からなる含浸可能な対地絶縁層109で、絶縁のためにコイル導体108の外側に巻回して構成されている。対地絶縁層109の外周には、半導電性の表面コロナ防止層115が形成されている。
また、スロット112への挿入口側に近いコイルが上口コイル116、スロットへの挿入口側から遠いコイルが下口コイル117である。上口コイル116をスロット112の溝に固定するため、挿入口にはウェッジ114が設けられている。また、スロット112内での固定子コイル120の応力緩和を図るため、スロット112の内面には、表面に離型処理を施した絶縁性スペーサー123が設けられ、絶縁性スペーサー123の内面となる離型面122に固定子コイル120が配置される。
さらに、本発明の回転電機は、図7に示すような固定子コイル120が環状に設置されて円筒形状を成し、中央部分に回転子Kが配置される。円筒形状の長手方向が固定子鉄心111の積層方向および回転軸Jの延伸方向と一致しており、環状に設けられた複数のスロット112のそれぞれに上口コイル116と下口コイル117が挿入されている。そして、このスロット112に挿入されている上口コイル116、下口コイル117および他のスロットのそれぞれに挿入されたコイルは電気的に接続されていなければならない。
タービン発電機などの回転電機にあっては、一層の高出力化や小型化が求められている。高出力化および小型化を実現するためにはコイル絶縁物の絶縁性能を向上させることが必須である。前述の本発明に係る絶縁テープを用いた絶縁層を回転電機の固定子コイルに適用することにより、一層の高出力化および小型化を図ることができる。
図8は、回転電機の固定子コイルに用いられるコイル導体108の形状の一例を示す図である。通常のコイル導体108は、スロット112に挿入される、断面が長方形となる四角柱状の直線部の両端に、スロットに挿入されないコイルエンド部118を有しており、コイルエンド部118は湾曲した形状を有している。従来は、湾曲したコイルエンド部118に絶縁テープを巻回する際に、テープがコイルの湾曲形状に沿って変形できず、テープの一部が断裂し、その結果、絶縁特性が低下することがあった。本発明の絶縁テープ1を用いると、水溶性高分子4の緩衝作用により、絶縁テープ1が巻回されるとともにコイルエンド部118に追従して変形することから、テープ断裂の発生確率は相対的に低くなる。実際、発電機などの回転電機が完成した後に、コイル絶縁特性を計測して絶縁性能を確認したところ、本発明の絶縁テープ1を用いることで、製造毎に製品の絶縁性能が安定していることを確認することができた。
1 絶縁テープ、2 ナノフィラー、3 マイカ粒子、4 水溶性高分子、5 マイカ層、6 繊維補強材、7 補強層、8 コイル導体、9 絶縁層、10 固定子コイル、11 固定子鉄心、12 スロット、13 スペーサー、14 ウェッジ、100 回転電機、101 固定子鉄心、102 鉄心締付部材、103 保持リング、104 フレーム、105 中枠部材、106 弾性支持部材、108 コイル導体、109 対地絶縁層、111 鉄心、112 スロット、114 ウェッジ、115 表面コロナ防止層、116 上口コイル、117 下口コイル、120 固定子コイル、122 離型面、123スペーサー

Claims (9)

  1. 扁平なマイカ粒子と水溶性高分子により担持されて前記マイカ粒子の一方の面に偏在するナノフィラーとを含むマイカ層と、
    前記マイカ層上に積層された補強層と
    を有することを特徴とする絶縁テープ。
  2. 前記ナノフィラーは、シリカの粒子であることを特徴とする請求項1記載の絶縁テープ。
  3. 前記水溶性高分子は、セルロース誘導体であることを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁テープ。
  4. 前記水溶性高分子は、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の絶縁テープ。
  5. マイカ粒子を含む分散液を抄造してマイカ層を形成する工程と、
    前記マイカ層に繊維補強材を含む補強層を貼り合わせる工程と、
    ナノフィラーと水溶性高分子とを含む混合液を前記マイカ層に塗布する工程と
    を含むことを特徴とする絶縁テープの製造方法。
  6. コイル導体と、
    前記コイル導体に請求項1〜3の何れか一項に記載の絶縁テープが巻き付けられており、前記絶縁テープに液状熱硬化性樹脂組成物が含浸している絶縁層と
    を有することを特徴とする固定子コイル。
  7. コイル導体に請求項1〜3の何れか一項に記載の絶縁テープを巻き付ける工程と、
    前記絶縁テープに液状熱硬化性樹脂組成物を含浸して加熱加圧成形する工程と
    を含むことを特徴とする固定子コイルの製造方法。
  8. 複数のスロットを備える鉄心と、前記複数のスロット内に挿入されたコイルとを備える発電機であって、
    前記コイルはコイル導体の外周に絶縁テープが巻かれており、
    前記絶縁テープは、
    扁平なマイカ粒子と水溶性高分子により担持されて前記マイカ粒子の一方の面に偏在するナノフィラーとを含むマイカ層と、
    前記マイカ層上に積層された補強層とを有する
    発電機。
  9. 前記コイルは、前記スロット外となるコイルエンド部においても前記絶縁テープが巻かれていることを特徴とする請求項8に記載の発電機。
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