JPWO2015079977A1 - 抗体分離方法、抗体評価方法、医薬の評価方法、及び、抗体の2次元電気泳動用キット - Google Patents

抗体分離方法、抗体評価方法、医薬の評価方法、及び、抗体の2次元電気泳動用キット Download PDF

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Abstract

ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を分離する抗体分離方法は、還元剤を含まない調製バッファに溶解した抗体タンパク質を、還元剤を含まないバッファを用いて1次元目電気泳動により分離する1次元目電気泳動工程と、上記1次元目電気泳動工程において電気泳動した上記抗体タンパク質を、還元剤を含まないバッファを用いて2次元目電気泳動により分離する2次元目電気泳動工程とを包含する

Description

本発明は、抗体分離方法、抗体評価方法、医薬の評価方法、及び、抗体の2次元電気泳動用キットに関する。
ポストゲノム時代の中心的な役割として、プロテオーム研究が盛んに行われている。「プロテオーム」とは、特定の細胞、器官及び臓器の中で翻訳生産されているタンパク質全体が意図される。プロテオーム研究においては、特に構造と機能とを対象としたタンパク質の大規模な解析が行われる。
タンパク質の大規模解析する手法の1つとして頻繁に用いられている方法として、タンパク質の電気泳動が挙げられる。全てのタンパク質は、各々が固有の電荷及び分子量を有しているため、生体中に存在するタンパク質混合液を電荷又は分子量に応じて分離することによって、各種タンパク質に分離することが可能である。
同じ種類のタンパク質であっても、翻訳後修飾によって電荷が異なるタンパク質種が存在し、それらのタンパク質の分子量はほとんど同じであるため、タンパク質を電荷に応じて分離することは特に重要である。また、タンパク質を電荷に応じて分離する方法と、分子量に応じて分離する方法との両者を組み合わせて2次元に分離する方法(2次元電気泳動)を用いることで、より多くのタンパク質を高分解能にて分離することができる。
2次元電気泳動は、タンパク質を電荷に応じて分離する等電点電気泳動、及び、分子量に応じて分離するスラブゲル電気泳動(特に、SDS−PAGE)の2つの電気泳動ステップからなる。また、2次元電気泳動では、変性剤存在下において変性したタンパク質を分離する、又は、変性剤非存在下において非変性状態のタンパク質を分離することが可能であり、数百種類〜数千種類のタンパク質を一度に分離可能であるため優れた手法である。
タンパク質サンプルのうち、特に抗体は高分子量であるため、変性剤存在下で2次元電気泳動を行うことが知られている。特許文献1には、変性剤存在下における2次元電気泳動を利用して、シアル酸修飾が異なる抗体を検出することが記載されている。このような抗体を検出することは、分子量に応じた電気泳動のみでは不可能であった。また、引用文献1には、ニトロ化、リン酸化等の異なる抗体を検出するために、2次元電気泳動を利用することが記載されている。
日本国公開特許公報「特開2009−244245号公報(2009年10月22日公開)」
plos one April 2012, Volume 7, Issue 4, e34511
2次元電気泳動の一般的な泳動条件として、まず、1次元目の等電点電気泳動においては、Urea、Thiourea等の変性剤、CHAPS等の界面活性剤、及び、DTT等の還元剤が添加された還元条件下で電気泳動を行う。そして、2次元目の、例えばSDS−PAGEにおいては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、及び、DTT等の還元剤が添加された還元条件下で電気泳動を行う。
生体内の抗体は、2本のHeavy Chain(H鎖)と2本のLight Chain(L鎖)とが、ジスルフィド結合により共有結合した4量体である。そのため、抗体の分子量は、4量体の状態では約160kDaと高分子量である。また、抗体のうちIgGは、特異的な塩基性の等電点を有する。このように、抗体は高分子量であり、特異的な等電点を有する上に、電気泳動により構造が変化しやすいため、好適に分離することは困難である。したがって、抗体を好適に分離することが可能な2次元電気泳動方法があれば有益である。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、2次元電気泳動を利用して、より好適に抗体を分離することが可能な抗体分離方法、当該抗体分離方法を利用した抗体評価方法及び医薬の評価方法、並びに、当該抗体分離方法に使用する抗体の2次元電気泳動用キットを提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る抗体分離方法は、還元剤を含まない調製バッファに溶解した抗体タンパク質を、還元剤を含まない泳動バッファを用いて1次元目電気泳動により分離する1次元目電気泳動工程と、上記1次元目電気泳動工程において電気泳動した上記抗体タンパク質を、還元剤を含まない泳動バッファを用いて2次元目電気泳動により分離する2次元目電気泳動工程とを包含することを特徴としている。
本発明の一態様によれば、非還元条件下で抗体タンパク質を2次元電気泳動するので、抗体をより好適に分離できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において使用するIPGゲルの作製器具を説明する模式図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において、非還元条件で分離した抗体サンプルの2次元電気泳動パターンを示す図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において、非変性条件で分離した抗体サンプルの2次元電気泳動パターンを示す図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において、非還元条件及び非変性条件のそれぞれで分離した抗体サンプルの2次元電気泳動パターンを比較する図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において、非還元条件で分離した他の抗体サンプルの2次元電気泳動パターンを示す図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において、非変性条件で分離した他の抗体サンプルの2次元電気泳動パターンを示す図である。 本発明の一実施形態に係る抗体分離方法における、泳動条件を比較する図である。 IPGゲルのアクリルアミド濃度を比較する図である。 従来の2次元電気泳動による分離パターンを比較する図である。
〔抗体分離方法〕
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る抗体分離方法は、抗体タンパク質を2次元電気泳動により分離する方法であって、1次元目電気泳動工程と2次元目電気泳動工程とを包含する。抗体分離方法の一実施形態においては、1次元目電気泳動工程の前に、電気泳動用のゲルを作成するゲル作製工程を行う。また、抗体分離方法の一実施形態においては、1次元目電気泳動工程と2次元目電気泳動工程との間に、1次元目電気泳動工程において分離した抗体サンプルを平衡化する平衡化工程を行う。さらに、抗体分離方法の一実施形態においては、2次元目電気泳動工程の後に、分離した抗体タンパク質を検出する検出工程を行う。本実施形態においては、固定化pH勾配(IPG:Immobilized pH gradient)ゲルを用いて、1次元目電気泳動工程において等電点電気泳動を行い、2次元目電気泳動工程においてSDS−PAGEを行う場合を例として説明する。
(ゲル作製工程)
ゲル作製工程においては、後述する1次元目電気泳動工程において電気泳動を行うIPGゲル、及び、2次元目電気泳動工程において電気泳動を行うスラブゲルを作製する。
IPGゲルは、例えば、図1に示すIPGゲル作製器具を用いて作製する。図1は、本発明の一実施形態に係る抗体分離方法において使用するIPGゲルの作製器具を説明する模式図である。図1に示すように、IPGゲル作製器具100は、ゲル作製治具10、グラジエントミキサ20及び30、ペリスタポンプ40、並びに、シリコンチューブ50を備えている。
まず、低比重溶液として、酸性アクリルアミドバッファ混合液をグラジエントミキサ20に添加し、高比重溶液として、塩基性アクリルアミドバッファ混合液をグラジエントミキサ30に添加する。そして、所望のpH勾配を有するように低比重溶液と高比重溶液とを混合したゲル溶液を作製する。作製したゲル溶液を、ペリスタポンプ40により、シリコンチューブ50を介してゲル作製治具10に、グラジエントを乱さないようにゆっくりと充填する。
低比重溶液及び高比重溶液は、従来公知の組成で調整すればよく、低比重溶液として酸性アクリルアミドバッファ混合液を、高比重溶液として塩基性アクリルアミドバッファ混合液を使用することができる。
酸性アクリルアミドバッファ混合液としては、例えば、0.2MイモビラインのpK3.6を941μl、pK6.2を273μl、pK7.0を243μl、pK8.5を260μl及びpK9.3を282μl、30%アクリルアミドストック水溶液(29.1%アクリルアミド、0.9% ビスアクリルアミド)を2.5ml、87% グリセロール溶液を4.2ml、10% APSを108μl、並びに、100% TEMEDを7.6μlそれぞれ混合し蒸留水で15mlにメスアップしたものを使用することができる。
塩基性アクリルアミドバッファ混合液としては、0.2MイモビラインのpK3.6を100μl、pK6.2を333μl、pK7.0を361μl、pK8.5を239μl及びpK9.3を326μl、30%アクリルアミドストック溶液(29.1%アクリルアミド、0.9% ビスアクリルアミド)を2.5ml、10% APSを108μl、並びに、100% TEMEDを7.6μlそれぞれ混合し蒸留水で15mlにメスアップしたものを用いることができる。
低比重溶液及び高比重溶液を混合して作製されるゲル溶液は、アクリルアミド等のゲル材料と共に、重合開始剤、重合促進剤、比重調整剤、変性剤、緩衝バッファ、アクリルアミド誘導体等を含むことができる。
重合開始剤としては、従来公知のものを使用可能であり、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、メチレンブルー等が挙げられる。
重合促進剤としては、従来公知のものを使用可能であり、例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)等が挙げられる。また、UV光照射により重合を促進するように構成してもよい。
比重調整剤としては、従来公知のものを使用可能であり、例えば、グリセロール、シュクロース等が挙げられる。
変性剤としては、従来公知のものを使用可能であり、例えば、尿素等が挙げられる。
緩衝バッファとしては、従来公知のものを使用可能であり、例えば、Bis−Trisバッファ、Trisバッファ、MOPSバッファ、MESバッファ等が挙げられる。
作製するゲルの網目構造の粗さは、ゲル溶液におけるアクリルアミドの濃度(%T)、及び、当該アクリルアミド中のビスアクリルアミドの濃度(%C)により決定される。したがって、%T及び%Cを、平均分子量が160kD以上である、高分子で複雑な高次構造をとる抗体分子を分離するために最適化すればよい。最適な%T及び%Cは、特に限定されないが、例えば、%Tが3.0以上、4.0以下、%Cが2.0以上、3.0以下であることがより好ましく、%Tが3.2以上、3.7以下、%Cが2.5以上、3.0以下であることが特に好ましい。
また、ゲル溶液中の重合開始剤、重合促進剤、比重調整剤、変性剤、緩衝バッファ等の濃度については、特に限定されず、従来公知の濃度であってもよい。さらに、IPGゲルに設けるpH勾配の範囲は、分離する抗体タンパク質の等電点(pI)を含む範囲であればよく、例えば、多くの抗体タンパク質の等電点が含まれるpH6以上、10以下にすればよい。
ゲル作製治具10内には、ゲルボンドフィルムを張り付けたゲル板を設置しており、ゲル溶液をゲル作製容器10内に充填し、当該ゲル板上においてゲル溶液をゲル化させる。そして、生成したゲルを洗浄することで、未反応のアクリルアミドを除去した後に乾燥させる。ゲル溶液をゲル化する時の温度は特に限定されないが、例えば、40℃以上、50℃以下であればよい。
乾燥したIPGゲルを短冊状にカットして、IPGドライストリップゲルを作製し、1次元目電気泳動工程において等電点電気泳動に供する。
次に、2次元目電気泳動工程においてSDS−PAGEを行うスラブゲルの作製について説明する。スラブゲルとしては、従来公知のスラブゲルを用いることが可能であり、例えば、ポリアクリルアミドゲル、デンプンゲル、寒天ゲル等を好適に用いることができる。このようなスラブゲルは、従来公知の方法により作製することができる。
(1次元目電気泳動工程)
1次元目電気泳動工程において、還元剤を含まない調製バッファに溶解した抗体タンパク質を、還元剤を含まないバッファを用いて1次元目電気泳動により分離する。
<抗体サンプルの調製>
1次元目電気泳動工程において、1次元目電気泳動により抗体タンパク質を分離する。抗体サンプルは、分離の対象となる抗体タンパク質を調製バッファ中に溶解したものである。抗体サンプルは、電気泳動による分離まで、熱による抗体タンパク質の変性を避けて保存することが好ましい。
本実施形態に係る抗体分離方法において分離可能な抗体タンパク質は、特に限定されず、従来公知の抗体を好適に用いることができる。このような抗体として、Infliximab、Trastuzumab、Cetuximab、Bevaczumab、Rituximab等が挙げられる。
抗体は、例えば、2D clean−up kit(GE Healthcare社製)を用いて脱塩処理した後、調製バッファ中に溶解する。また、抗体は、分離後の検出のために、IC5−OSu special packaging(同人化学研究所)等の蛍光色素で蛍光標識してもよい。本実施形態に係る抗体分離方法においては、調製バッファとして、還元剤を含まない非還元調製バッファ、及び、還元剤及びタンパク質変性剤を含まない非変性調整バッファのいずれかを使用する。
従来の抗体の電気泳動方法における調製バッファには、2−メルカプトエタノールのような還元剤が含まれており、還元剤による還元作用によりジスルフィド結合が解離した状態で抗体が分離されている。したがって、従来の電気泳動方法においては、電気泳動によりH鎖とL鎖とが別々の2本のバンド、又は、2つのスポットのラダーとして検出されてしまう。すなわち、抗体を4量体の状態を維持したまま分離することができない。
抗体は、抗体産生細胞から生成されて生化学実験等で使用されるが、タンパク質翻訳後修飾等が異なることにより不均一な抗体も存在する。したがって、抗体産生細胞から生成された抗体をそのまま2次元電気泳動に供し、生成された抗体が均一であるか否かを検討する方法があれば有益である。しかしながら、これまで、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を2次元電気泳動することは不可能であると考えられ、試みられていなかった。
また、抗体分子には複数の糖鎖が結合し、それぞれが異なる修飾を受ける場合があるため、非常に複雑なグライコフォームを形成する。これらの糖鎖の構造は、抗体分子のコンフォメーションや安定性を決定し、それによりターゲットとの親和性や薬としての効力にも影響を及ぼし得るのと考えられている。そのため、医薬品としての抗体は、ある疾患に対して最適となるようなグライコフォームであることが求められている。従来の抗体の電気泳動方法においては、このような糖鎖修飾を維持した状態で抗体を分離することもできず、グライコフォームを適切に分析することができなかった。
一方、本実施形態に係る抗体分離方法において使用する非還元調製バッファ及び非変性調製バッファは、タンパク質のジスルフィド結合を切断する還元剤を含まないバッファである。本実施形態に係る抗体分離方法によれば、調製バッファに還元剤を含まないため、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体をより好適に分離することができる。また、抗体をより完全体に近い状態で分離することができるので、グライコフォームの分析にも適している。
≪非還元調製バッファ≫
非還元調製バッファは、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含んでいる。抗体は、特異的な塩基性の等電点を有することや、4量体の状態では約160kDaと高分子量であることから、ジスルフィド結合を維持した状態で電気泳動して分離することは困難である上に、電気泳動による構造の変化を抑制する必要もある。したがって、これまで、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を分離することは不可能であると考えられ、試みられていなかった。本実施形態に係る抗体分離方法においては、非還元調製バッファに非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が含まれているので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離することができる。
非還元調製バッファに含まれる非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、3−[(4−ヘプチル)フェニル−3−ヒドロキシプロピル]ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(C7BzO)、又は、Triton Xを好適に使用可能である。
非還元調製バッファに含まれる両性界面活性剤としては、特に限定されないが、3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)、又は、3−[N,N−ジメチル(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート,アミドスルホベタイン−14(ASB−14)を好適に使用可能である。
非還元調製バッファ中の非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、0.1 w/v%以上、4 w/v%以下であることがより好ましく、2 w/v%以上、4 w/v%以下であることが特に好ましい。
非還元調製バッファは、さらに、尿素、チオ尿素等の変性剤、アンフォライト(ampholyte)等の両性担体、グリセロール(増粘剤)等を含むことができる。非還元調製バッファ中のこれらの物質の濃度は、特に限定されず、従来公知の濃度であることができる。非還元調製バッファの具体例として、8M 尿素、2M チオ尿素、4w/v% CHAPS、及び、0.5% アンフォライト(pH6〜11)を含むものが挙げられる。
≪非変性調製バッファ≫
非変性調製バッファは、還元剤を含まない上に、さらにタンパク質変性剤も含まない。非変性調製バッファは、タンパク質の水素結合等の分子間結合を切断するタンパク質変性剤を含まないバッファである。従来の抗体の電気泳動方法における調製バッファには、尿素等のタンパク質変性剤が含まれており、タンパク質変性剤の作用により水素結合等の分子間結合が解離した状態で抗体が分離されている。一方、本実施形態に係る抗体分離方法によれば、調製バッファに還元剤及びタンパク質変性剤を含まないため、ジスルフィド結合、水素結合等の分子間結合が維持され、高次構造がより維持された状態で抗体を分離することができる。
非変性調製バッファは、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含んでいる。抗体は、特異的な塩基性の等電点を有することや、4量体の状態では約160kDaと高分子量であることから、ジスルフィド結合、水素結合等を維持した高次構造のままでは電気泳動して分離することは困難である上に、電気泳動による構造の変化を抑制する必要もある。したがって、これまで、高次構造を維持した抗体を分離することは不可能であると考えられ、試みられていなかった。本実施形態に係る抗体分離方法においては、非変性調製バッファに、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤が含まれているので、高次構造を維持した状態で好適に抗体を分離することができる。
非変性調製バッファに含まれる非界面活性剤型スルホベタイン(non−detergent sulphobetaine(NDSB))類は、非界面活性剤であり、タンパク質の安定化剤としてタンパク質の保存液やタンパク質製剤等に添加する技術が報告されている(参考文献1:特開2006−189358号公報、及び、参考文献2:特開2007−516281号公報)。非変性調製バッファ中において、非界面活性剤型スルホベタイン類は可溶化及び安定化剤として機能し、抗体は溶解して安定化される。
非界面活性剤型スルホベタイン類として、例えば、グリシンベタイン(Glycine
betain)、並びに、Calbiochem社製のジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−195)、3−(1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−201)、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−211)、3−(1−メチルピペリジニウム)−1−プロパンスルホネート(NDSB−221)、ジメチルベンジルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−256)、及び、3−(4−tert−ブチル−1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−256−4T)が好適に使用可能であるが、中でも、グリシンベタインは、電荷的に中性であるためより好ましい。
非変性調製バッファに含まれるポリソルベート類は、界面活性剤であり、例えば、Tween 80(登録商標)(Poly(Oxyethylene)sorbitan monolaulate 80)は電荷的に中性であるため好適に使用可能である。
非変性調製バッファに含まれるポリオキシエチレンアルキルエーテル類は、非イオン性界面活性剤であり、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を好適に使用可能である。
非変性調製バッファに含まれる糖アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、ソルビトールを好適に使用可能である。
非変性調製バッファ中のこれらの添加剤の濃度は、特に限定されないが、0.1 w/v%以上、10 w/v%以下であることがより好ましく、1w/v%以上、6w/v%以下であることが特に好ましい。非変性調製バッファ中のNDSB等の添加剤の濃度が、特に、1w/v%以上、6w/v%以下であることによって、抗体をより完全体の状態で分離することができる。
非変性調製バッファは、さらに、グリセロール等の比重調整剤、アンフォライト等の両性担体、変性作用の少ない界面活性剤、色素等を含むことができる。非変性調製バッファ中のこれらの物質の濃度は、特に限定されず、従来公知の濃度であることができる。非変性調製バッファの具体例として、4w/v% NDSB、15v/v% グリセロール、及び、0.5% アンフォライト(pH6〜11)を含むものが挙げられる。
非変性調製バッファにより抗体サンプルを調製した場合、抗体が還元及び変性しないため、完全体の状態を維持した抗体を分離することができる。非還元調製バッファにより抗体サンプルを調製した場合は、抗体は、還元はされないが、変性する可能性はあるため、見かけ上は完全体の状態の抗体であっても、立体構造の一部が維持されていない可能性がある。したがって、抗体サンプルを非還元調製バッファ及び非変性調整バッファによりそれぞれ調製したものを分離した結果を比較することで、抗体サンプル中における、不純物、抗体の多量体、完全体以外の状態の抗体等の有無を確認することができる。
すなわち、抗体サンプルを非還元調製バッファ及び非変性調整バッファによりそれぞれ調製したものを本発明に係る抗体分離方法により分離し、そのパターンを比較し、抗体サンプル中における、不純物、抗体の多量体、完全体以外の状態の抗体等の有無を判断する工程を含む抗体評価方法についても、本願発明の範疇に含まれる。
<等電点電気泳動>
1次元目電気泳動工程における等電点電気泳動、及び、後述する2次元目電気泳動工程におけるSDS−PAGEは、例えば、シャープマニファクチュアリングシステム社製のAuto2Dを用いて自動で行ってもよい。本実施形態においては、上記Auto2Dを用いて、1次元目電気泳動工程及び2次元目電気泳動工程を行う場合を例として説明する。
Auto2Dを用いた場合、例えば、等電点電気泳動チップとして、pH6〜10のもの、PAGEチップとして、アクリルアミド濃度7.5%又は6.5%のものを用いることができる。等電点電気泳動のみの処理時間は、数分間以上、16分間以下であってもよく、例えば、45分間である。総処理時間は、30分間以上、20時間以下であってもよく、例えば、130分間である。
上述したとおり調製した抗体サンプルを、ゲル作製工程において作製したIPGドライストリップゲルに導入し、等電点電気泳動を行う。抗体サンプルのIPGドライストリップゲルへの導入時間は、1分以上、60分以下であってもよく、例えば30分間である。
抗体サンプルの導入後、膨潤液を用いてIPGドライストリップゲルを膨潤させる。膨潤液は、等電点電気泳動の泳動バッファとしても使用する。使用する膨潤液としては、従来公知の膨潤液を好適に使用可能であるが、還元剤は含んでいない。したがって、抗体サンプルを、還元剤を含まない非還元条件で、等電点電気泳動により分離することができる。また、膨潤液は、タンパク質変性剤を含まないことが好ましい。膨潤液の具体例として、4% NDSB−195、15% Glycerol、及び、0.2% Ampholyteを含むものが挙げられる。すなわち、非変性調製バッファを膨潤液として用いることができる。使用する膨潤液の量は、例えば100μLであり、膨潤時間は、例えば、5分以上、10分以下であるが、これらに限定されない。
膨潤後のIPGゲルに電圧を印加することで、抗体を等電点の違いに基づき分離する。IPGゲルに印加する電圧は、例えば、制御1(Step1:200V,5分間一定、Step2:1000V,5分間リニアグラジエント、Step3:1000V,5分間一定、Step4:7000V,15分間リニアグラジエント、Step5:7000V,15分間一定)、制御2(Step1:200V,5分間一定、Step2:1000V,5分間リニアグラジエント、Step3:1000V,5分間一定、Step4:4000V,10分間リニアグラジエント、Step5:4000V,10分間一定、Step6:7000V,10分間リニアグラジエント、Step7:7000V,20分間一定)、又は、制御3(Step1:200v,5分間一定、Step2:1000V,10分間リニアグラジエント、Step3:1000V,10分間一定、Step4:8000V,15分間リニアグラジエント、Step5:8000V,15分間一定)のように制御してもよい。
すなわち、上記1次元目電気泳動において、電圧を一定に維持して電流が0より大きい所定の電流値にまで減少したときに昇圧して電流を増加させ、昇圧中に電流が減少し始めたときに電圧を一定に維持し、かつ、電流値が0より大きく、100μA以下となるように電圧制御することが好ましい。ここで、所定の電流値は、電気泳動によるサンプルの分離状態等に応じて、0に近い所定の値に適宜設定すればよい。つまり、電圧を一定に制御している間に、電流が負の勾配を示し、勾配が0に近づいたときに、昇圧(リニアグラジエント)制御し、電圧を昇圧している間に、電流の勾配が減少し始めたときに、電圧を一定に維持する。また、電流値が可能な限り低く推移するように電圧を昇圧することが好ましいため、電流値の上限は100μAとすればよい。
また、温度等のその他の泳動条件については、従来公知の泳動条件であればよい。
(平衡化工程)
平衡化工程において、1次元目電気泳動工程において分離した抗体サンプルを平衡化する。抗体サンプルの平衡化は、1次元目電気泳動工程後のIPGゲルを平衡化液中に浸漬し、振とうすることで行うことができる。これにより、1次元目電気泳動により分離した抗体サンプルにSDS化処理を施すことができる。
IPGゲルの平衡化時間は、例えば、10分であるが、これに限定されない。ゲルの平衡化に使用する平衡化液としては、従来公知の平衡化液を使用可能であり、例えば、Tris−HCl、SDS、EDTA、グリセロール、BPB等を含むことができる。平衡化液の具体例として、0.5mM Tris−HCl(pH8.8)、4.75% SDS、0.5mM EDTA、20v/v% グリセロール、及び、0.005% BPBを含むものが挙げられる。
(2次元目電気泳動工程)
2次元目電気泳動工程において、1次元目電気泳動工程において分離した抗体タンパク質を、還元剤を含まないバッファを用いて2次元目電気泳動により分離する。2次元目電気泳動工程においては、1次元目電気泳動工程の等電点電気泳動により分離した抗体サンプルを、SDS−PAGEによって分子量の違いに基づき分離する。
1次元目電気泳動工程により等電点電気泳動を行ったIPGゲルと、2次元目電気泳動工程で使用するSDS−PAGE用のスラブゲルとを接触させ、これらのゲルに電流を流す。これにより、IPGゲルにおいて分離された抗体サンプルが、スラブゲルに移動し、分子量の違いに基づき分離される。2次元目電気泳動工程において、ゲルに流す電流は、例えば、10mAの定電流で10分間流した後、20mAの定電流で30分間流す、の通りに制御してもよい。
2次元目電気泳動工程のSDS−PAGEで使用する泳動バッファとしては、従来公知の泳動バッファを好適に使用可能であるが、還元剤は含んでいない。したがって、抗体サンプルを、還元剤を含まない非還元条件で、SDS−PAGEにより分離することができる。泳動バッファの具体例として、25mM Tris、192mM Glycin、及び、0.5% SDSを含むものが挙げられる。
また、泳動バッファのpH等の他の泳動条件については、従来公知の泳動条件であればよい。
(検出工程)
検出工程において、2次元目電気泳動工程において分離した抗体サンプルを検出する。抗体サンプルが蛍光標識されていれば、その蛍光を追跡することで、分離した抗体サンプルの各スポットを検出することができる。また、分離した抗体サンプルの各スポットをCBB染色、銀染色等により染色することで、これらを検出してもよい。蛍光標識された抗体サンプルの蛍光検出は、例えば、GE Healthcare社製のイメージャーtyphoonを用いて、検出波長:660nm、PMT 400Vにおいて行うことができる。
このように、本発明に係る抗体分離方法によれば、非還元条件下で抗体タンパク質を2次元電気泳動するので、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を分離することができるので、抗体及び医薬の分析に特に適している。
〔抗体評価方法〕
本発明に係る抗体評価方法は、上述した本発明に係る抗体分離方法により分離した抗体が、基準となる医薬に含まれる抗体と同一であるか否かを評価する評価工程を包含する。
評価工程においては、例えば、評価対象となる抗体を本発明に係る抗体分離方法で分離したパターンと、基準となる医薬に含まれる抗体を本発明に係る抗体分離方法で分離したパターンとが同一であるか否かを判断することで、抗体を評価する。また、評価対象となる抗体を分離したパターンが、基準となる医薬に含まれる抗体を分離したパターンとは異なる位置にも検出された場合、評価対象となる抗体に、基準となる医薬中には含まれない不純物、不完全抗体等が含まれると判断できる。
本発明に係る抗体評価方法によれば、評価する抗体を分離する時に、本発明に係る抗体分離方法により抗体を分離するので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離したパターンが得られる。したがって、抗体を、4量体を維持した状態でそのまま検出することができるので、より適切に評価することができる。
〔医薬の評価方法〕
本発明に係る医薬の評価方法は、上述した本発明に係る抗体分離方法により分離した医薬に含まれる抗体が均一であるか否かを評価する評価工程を包含する。本発明に係る医薬の評価方法は、例えば抗体医薬の評価、バイオ医薬の評価等に使用できる。
評価工程においては、例えば、評価対象となる医薬を本発明に係る抗体分離方法で分離したときに、単一のスポット(単一領域に検出されたラダー状のスポットも含む)が検出されたか否かを判断することで、医薬を評価する。評価工程において、医薬を分離したスポットが単一のスポットとして検出された場合には、医薬に含まれる抗体が均一であると判断し、医薬を分離したスポットが複数検出された場合には、医薬に含まれる抗体が不均一である又は不純物が混入していると判断できる。
本発明に係る医薬の評価方法によれば、評価する医薬を、本発明に係る抗体分離方法により分離するので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離したパターンが得られる。したがって、抗体を、4量体を維持した状態でそのまま検出することができるので、より適切に評価することができる。
〔抗体の2次元電気泳動用キット〕
本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含み、還元剤を含まない調製バッファ、又は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、還元剤を含まない調製バッファを備えている。すなわち、本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、非変性調製バッファ及び非還元調製バッファのいずれかを備えている。
本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットに含まれる非変性調製バッファ及び非還元調製バッファについては、本明細書における上記「抗体分離方法」の項においてそれぞれ説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、従来公知の電気泳動装置を用いて2次元電気泳動により抗体を分離する時に、抗体サンプルを調製するために用いることができる。
本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、非変性調製バッファ及び非還元調製バッファのいずれかと共に、1次元目電気泳動ゲル材料及び泳動バッファ、2次元目電気泳動ゲル材料及び泳動バッファ、検出用蛍光色素、取り扱い説明書等を備えていてもよい。また、本発明に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、シャープマニファクチュアリングシステム社製のAuto2Dのような泳動装置と共に提供されてもよい。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る抗体分離方法は、還元剤を含まない調製バッファに溶解した抗体タンパク質(抗体サンプル)を、還元剤を含まないバッファを用いて1次元目電気泳動により分離する1次元目電気泳動工程と、上記1次元目電気泳動工程において分離した上記抗体タンパク質を、還元剤を含まないバッファを用いて2次元目電気泳動により分離する2次元目電気泳動工程とを包含する。
上記の構成によれば、抗体の調製バッファとして、還元剤を含まない調製バッファを用い、1次元目電気泳動工程及び2次元目電気泳動工程を、還元剤を含まないバッファを用いて行う。すなわち、タンパク質のジスルフィド結合を切断する還元剤を含まない調製バッファを用いて、還元剤を含まないバッファを用いて抗体を分離することができる。
従来の抗体の電気泳動方法における調製バッファには、2−メルカプトエタノールのような還元剤が含まれており、また、泳動バッファにも還元剤が含まれているので、還元剤による還元作用によりジスルフィド結合が解離した状態で抗体が分離されている。すなわち、従来の方法においては、電気泳動によりH鎖とL鎖とが別々の2本のバンド、又は、2つのスポットのラダーとして検出されてしまう。
一方、本態様に係る抗体分離方法によれば、調製バッファに還元剤を含まず、還元剤を含まないバッファを用いて電気泳動するため、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を分離することができる。
本発明の態様2に係る抗体分離方法は、上記態様1において、上記調製バッファが、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含んでいてもよい。
抗体は、特異的な塩基性の等電点を有することや、4量体の状態では約160kDaと高分子量であることから、ジスルフィド結合を維持した状態で電気泳動して分離することは困難である上に、電気泳動による構造の変化を抑制する必要もある。したがって、これまで、ジスルフィド結合を維持した状態で抗体を分離することは不可能であると考えられ、試みられていなかった。
一方、本態様に係る抗体分離方法においては、調製バッファとして、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含む非変性調製バッファを用いるので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離することができる。
本発明の態様3に係る抗体分離方法は、上記態様2において、上記非界面活性剤型スルホベタイン類は、グリシンベタイン、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−195)、3−(1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−201)、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−211)、3−(1−メチルピペリジニウム)−1−プロパンスルホネート(NDSB−221)、ジメチルベンジルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−256)、及び、3−(4−tert−ブチル−1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−256−4T)からなる群より選択され、上記ポリソルベート類は、Tween 80(登録商標)であり、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は、ポリエチレングリコールであり、上記糖アルコール類は、ソルビトールであってもよい。
上記の構成によれば、抗体をより完全体の状態で分離することができる。
本発明の態様4に係る抗体分離方法は、上記態様2又は3において、上記調製バッファ中の上記添加剤の濃度が、1w/v%以上、6w/v%以下であってもよい。
上記の構成によれば、抗体をより完全体の状態で分離することができる。
本発明の態様5に係る抗体分離方法は、上記態様2〜4のいずれかにおいて、上記調製バッファが、タンパク質変性剤を含まなくてもよい。
上記の構成によれば、調製バッファが、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含み、還元剤及びタンパク質変性剤を含まない非変性調製バッファであるので、ジスルフィド結合、水素結合等を維持した高次構造のままで好適に抗体を分離することができる。
本発明の態様6に係る抗体分離方法は、上記態様1において、上記調製バッファが、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含んでいてもよい。
上記の構成によれば、調製バッファとして、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む非還元調製バッファを用いるので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離することができる。
本発明の態様7に係る抗体分離方法は、上記態様6において、上記非イオン性界面活性剤が、3−[(4−ヘプチル)フェニル−3−ヒドロキシプロピル]ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、又は、Triton Xであり、上記両性界面活性剤が、3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、又は、3−[N,N−ジメチル(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート,アミドスルホベタイン−14であってもよい。
上記の構成によれば、ジスルフィド結合を維持した状態でより好適に抗体を分離することができる。
本発明の態様8に係る抗体分離方法は、上記態様1〜7の何れかにおいて、上記1次元目電気泳動において、電圧を一定に維持して電流が0より大きい所定の電流値にまで減少したときに昇圧して電流を増加させ、昇圧中に電流が減少し始めたときに電圧を一定に維持し、かつ、電流値が0より大きく、100μA以下となるように電圧制御してもよい。
上記の構成によれば、電圧を一定に制御している間に、電流が負の勾配を示し、勾配が0に近づいたときに、昇圧(リニアグラジエント)制御し、電圧を昇圧している間に、電流の勾配が減少し始めたときに、電圧を一定に維持する。そして、電流値が可能な限り低く推移し、電流値の上限を100μAとするように電圧制御する。このように、適切に電圧制御することによって、好適な1次元目電気泳動が可能である。
本発明の態様9に係る抗体評価方法は、上記態様1〜8の何れかの抗体分離方法により分離した抗体が、基準となる医薬に含まれる抗体と同一であるか否かを評価する評価工程を包含する。
上記の構成によれば、評価する抗体を分離する時に、上記態様1〜8の何れかの抗体分離方法により抗体を分離するので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離したパターンが得られる。したがって、抗体を、4量体を維持した状態でそのまま検出することができるので、より適切に評価することができる。
本発明の態様10に係る医薬の評価方法は、上記態様1〜8の何れかの抗体分離方法により分離した医薬に含まれる抗体が均一であるか否かを評価する評価工程を包含する。
上記の構成によれば、評価する医薬を分離する時に、上記態様1〜8の何れかの抗体分離方法により医薬を分離するので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離したパターンが得られる。したがって、抗体を、4量体を維持した状態でそのまま検出することができるので、より適切に評価することができる。
本発明の態様11に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含み、還元剤を含まない調製バッファ(非変性調製バッファ)を備えている。
上記の構成によれば、還元剤を含まず、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含む非変性調製バッファを備えているので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離するために使用することができる。
本発明の態様12に係る抗体の2次元電気泳動用キットは、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、還元剤を含まない調製バッファ(非還元調製バッファ)を備えている。
上記の構成によれば、還元剤を含まず、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む非還元調製バッファを備えているので、ジスルフィド結合を維持した状態で好適に抗体を分離するために使用することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
〔実施例1:抗体(Infliximab)の非還元2次元電気泳動〕
抗体分子全体のグライコフォームや凝集体を検出するために、2次元電気泳動(等電点電気泳動およびSDS−PAGE)を非還元条件下で行った。
PBSに溶解した抗体(Infliximab、田辺三菱社製)は、脱塩精製を行わずに、蛍光体IC5標識キット(IC5−OSu special packaging、同仁化学研究所製)で標識し、2μg/μLに調整したものを2次元電気泳動に供した。2次元電気泳動を、シャープマニファクチュアリングシステム社製のAuto2Dを用いて自動で行った。IEFチップとして、pH6〜10のものを用い、PAGEチップとして、アクリルアミド濃度7.5%のものを用いた。等電点電気泳動時間を45分間とし、総処理時間を130分間とした。
IPGドライストリップゲルとして、上記組成の酸性アクリルアミドバッファ混合液及び塩基性アクリルアミドバッファ混合液を混合し、図1に示すIPGゲル作製器具100を用いて作製したゲルを用いた。IPGドライストリップゲルに、調製した抗体サンプルを導入した。サンプル導入時間は30分間とした。100μLの膨潤液で5分間IPGゲルを膨潤させた後、IPGゲルに電圧を印加し、非還元条件下で等電点電気泳動を行った。膨潤液として、上記非還元バッファを用いた。
電圧の印加を、Step1:200V,5分間一定、Step2:1000V,5分間リニアグラジエント、Step3:1000V,5分間一定、Step4:7000V,15分間リニアグラジエント、Step5:7000V,15分間一定、の通り制御した。
等電点電気泳動後のゲルを700μLの平衡化液(0.5mM Tris−HCl(pH8.8)(Wako社製)、4.75% SDS(Bio−Rad社製)、0.5mM
EDTA(Dojindo社製)、20v/v% グリセロール(Wako社製)、及び、0.005% BPB(Sigma社製))で10分間平衡化した後、IPGゲルとアクリルアミドゲルを接触させ、電流を流し、非還元条件下でSDS−PAGEを行った。ゲルに流す電流を、10mAの定電流を10分間、20mAの定電流を30分間、の通り制御した。泳動バッファとして、Tris、Glysin及びSDSを含むバッファを用いた。
SDS−PAGE後のアクリルアミドゲルにおいて、GE Healthcare社製のイメージャーtyphoonを用いて、検出波長:660nm、PMT 400Vで蛍光検出した。結果を図2に示す。
図2に示すように、160kD付近に主の抗体スポット群が検出され、300kD付近に2量体と思われるアイソフォーム群が検出された。また、主の抗体スポットと共に、主の抗体スポットよりも若干分子量の小さい抗体(LC脱離、糖鎖脱離等)由来のタンパク質スポットが検出された。Urea及びCHAPSを含み、還元剤を含まない非還元調製バッファを用いることにより、医薬品に含まれる多数のグライコフォームや多量体をクリアに分離できることが示された。
〔実施例2:抗体(Infliximab)の非変性2次元電気泳動〕
抗体を完全変性させずに2次元電気泳動で分離する方法を検討した。
抗体(Infliximab、田辺三菱社製)を、4w/v5 NDSB(Merck社製)、15v/v% Glycerol(Wako社製)、及び、0.5% Ampholyte(pH6−11)(invitrogen社製)を含む非変性調製バッファに溶解した以外は、実施例1と同様に、2次元電気泳動をAuto2Dにおいて行い、スポットを検出した。結果を図3に示す。
図3に示すように、等電点及び分子量方向に規則的に配列したスポット群が検出された。図3におけるスポット群において、縦方向のスポット位置の違いは、糖鎖付加数による分子量の違いを表しており、横方向のスポット位置の差は、シアル酸付加数による等電点の違いを表している。すなわち、抗体分子を修飾する糖鎖の数と末端修飾の種類が異なるグライコフォームが検出されたと考えられる。NDSB及びGlycerolを含み、還元剤及びタンパク質変性剤を含まない非変性調製バッファを用いることにより、タンパク質変性によるアーティファクトを防ぐと共に、分解やサブユニットの脱離のない状態のまま、抗体のアイソフォームをクリアに分離できることが示された。
ここで、非還元条件及び非変性条件のそれぞれで分離した抗体サンプルの2次元電気泳動によるパターンの違いについて解析する。図4に、実施例1の非還元2次元電気泳動(a)及び実施例2の非変性2次元電気泳動(b)のそれぞれで分離した抗体サンプルの2次元電気泳動の結果を示す。また、図4の(c)に、図4中(b)のb−b’間の蛍光強度を示すグラフを示す。
図4中(a)に示すように、非還元2次元電気泳動においては、Aの領域に複数の抗体の多量体と推測されるスポットが検出され、Bの領域に不純物(目的成分由来ではないタンパク質)と推測されるスポットが検出された。そして、160kDa付近のXの領域に抗体の完全体(目的成分)が検出されているが、110〜140kDa付近のYの領域及び60〜80kDa付近のZの領域に、一部立体構造が解離した、若干分子量の小さい抗体由来と推測されるスポットが検出された。一方、非変性2次元電気泳動においては、図4中(b)に示すように、160kDa付近のXの領域にスポットが検出された。また、図4中(b)では視認しづらいが、図4中(c)に示すように、Xの領域とは別に、Aの領域にも蛍光強度の上昇が見られるため、160kDa付近のAの領域にもスポットが検出されていることが分かる。
すなわち、図4中(b)においては、図4中(a)のように、Bの領域に不純物と推測されるスポット、110〜140kDa付近のYの領域、及び60〜80kDa付近のZの領域に、一部立体構造が解離した若干分子量の小さいスポットが検出されなかった。よって、Y、Z及びBの領域のスポットは抗体の目的成分由来のタンパク質であると判断できる。このように、図4中(b)のパターンを確認することで、抗体サンプル中の目的成分、多量体、目的成分由来のタンパク質、及び、不純物の有無を判断できる。
したがって、非還元条件及び非変性条件のそれぞれで分離した抗体サンプルの2次元電気泳動によるパターンを比較することで、抗体以外の不純物の有無、多量体共存の有無、インタクト(完全体)以外の抗体混入の有無などを評価することができる。
〔実施例3:他の抗体の非還元2次元電気泳動〕
抗体として、Trastuzumab(中外製薬社製)、Cetuximab(BMS社製)、Bevacizumab(Roche社製)、及び、Rituximab(中外製薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様に、2次元電気泳動をAuto2Dにおいて行い、スポットを検出した。結果を図5に示す。なお、図5(a)においては、pH範囲7〜10、図5(b)〜(c)においては、pH範囲6〜9を示している。
図5に示すように、Trastuzumab(a)、Cetuximab(b)、Bevaczumab(c)、及び、Rituximab(d)についても、図2に示すInfliximabと同様に、主の抗体スポット群と共に、2量体と思われるアイソフォーム群が検出された。
〔実施例4:他の抗体の非変性2次元電気泳動〕
Trastuzumab(中外製薬社製)及びCetuximab(BMS社製)を、実施例2の非変性調製バッファ(+NDSB)に溶解したもの、並びに、Trastuzumab(中外製薬社製)を、50v/v% Glycerol(Wako社製)、0.1% Ampholyte(pH6〜11)(invitrogen社製)、及び、水を含む調製バッファ(−NDSB)に溶解したものを用い、実施例2と同様に、2次元電気泳動をAuto2Dにおいて行い、スポットを検出した。結果を図6に示す。なお、図6(a)及び(c)においては、pH範囲7〜10、図6(b)においては、pH範囲6〜9を示している。
図6に示すように、NDSBを含む非変性調製バッファに溶解したTrastuzumab(a)及びCetuximab(b)は、図3に示すInfliximabと同様に、等電点及び分子量方向に規則的に配列したスポット群が検出された。NDSBを含まない調製バッファに溶解したTrastuzumab(c)については、抗体の多量体と推測されるスポットが検出されており、NDSBを含む調製バッファに溶解したTrastuzumab(c)の方がより安定した検出が可能であることが示された。
〔実施例5:泳動条件の違いによる1次元目電気泳動時の電流値の変化〕
1次元目の等電点電気泳動時の電圧制御条件の最適化を検討した。泳動条件1(Step1:200V,5分間一定、Step2:1000V,5分間リニアグラジエント、Step3:1000V,5分間一定、Step4:7000V,15分間リニアグラジエント、Step5:7000V,15分間一定)、及び、泳動条件2(Step1:200V,5分間一定、Step2:1000V,5分間リニアグラジエント、Step3:1000V,5分間一定、Step4:4000V,10分間リニアグラジエント、Step5:4000V,10分間一定、Step6:7000V,10分間リニアグラジエント、Step7:7000V,20分間一定)のそれぞれにより等電点電気泳動時の電圧を制御したときの電流値の変化を観察し、結果を図7に示す。図7中(a)は、泳動条件1の等電点電気泳動を行った時の電圧値及び電流値の変化を示すグラフであり、図7中(b)は、泳動条件2の等電点電気泳動を行った時の電圧値及び電流値の変化を示すグラフである。図7において、縦軸右側の数値は電流値を、縦軸左側の数値は電圧値を、横軸は時間(秒)を表している。
図7に示すように、電圧を一定に制御するステップでは、電流は負の勾配を示し、勾配が0に近づいたときに、昇圧(リニアグラジエント)制御することが理想的であることが示された。また、電圧を昇圧制御するステップでは、電流の勾配が減少し始めてから(負)、電圧を一定に保持することが理想的であることが示された。さらに、電流値が可能な限り低く推移するように電圧を昇圧することが好ましく、電流値の上限は100μAとすればよいことが示された。
〔参考例1:IPGドライストリップゲルの検討〕
1次元目の等電点電気泳動のIPGゲルにおいて、平均分子量が160kD以上と非常に高分子で複雑な高次構造をとる抗体を非還元条件で分離するために、アクリルアミド濃度(%T)とビスアクリルアミド濃度(%C)の最適化を検討した。作成するpH範囲は、多くの抗体の等電点をカバーするpH6〜10を選択した。
2次元電気泳動で一般的に用いられている、4.0%T、3.0%Cから各濃度を下方に変化させたゲルを作製し、電流値と分離パターンとから分離性能を評価した。分離サンプルとして、マウス肝臓可溶性タンパク質をIC5(IC5−OSu special packaging、同仁化学研究所製)で標識し、Auto2D(シャープマニファクチュアリングシステム社製)を用いて2次元電気泳動を行った。マウス肝臓可溶性タンパク質としては、マウス肝臓組織を可溶化バッファ(50mM Tris−HCl(pH7.6)、20% Glycerol、0.3M NaCl)下ですり潰し、その上澄み部分を用いた。
泳動条件は、上記泳動条件2の通りにした。4.0%T、3.0%Cのゲル(a)と3.6%T、2.7%Cのゲル(b)をそれぞれ用いた結果を図8に示す。
図8に示すように、ゲル中の各濃度を3.6%T、2.7%Cにすることで、高分子領域の分離とサンプルの導入効率とが改善したことが示された。
〔参考例2:従来の還元条件における抗体の2次元電気泳動〕
Cetuximab(BMS社製)を用いて、還元条件1(還元剤(DTT)を含む泳動条件で1次元目電気泳動及び2次元電気泳動を行う)、及び、還元条件2(還元剤(DTT)を含まない泳動条件で1次元目電気泳動を行い、還元剤(DTT)を含む泳動条件で2次元目電気泳動を行う)のそれぞれについて、Auto2D(シャープマニファクチュアリングシステム社製)を用いて2次元電気泳動を行った。CetuximabはIC5(IC5−OSu special packaging、同仁化学研究所製)で標識した。他の泳動条件は、上記泳動条件2の通りにした。
結果を図9に示す。図9中(a)は還元条件1の結果を示し、図9中(b)は還元条件2の結果を示す。従来一般的な還元条件1で抗体分子を分離すると、図9中(a)に示すように、約60kDにH鎖が検出され、約20kDにL鎖が検出された。また、図9中(b)に示すように、1次元目電気泳動を非還元条件で行い、2次元目電気泳動を還元条件で行う、還元条件2で抗体分子を分離しても、同様に、約60kDにH鎖検出され、約20kDにL鎖が検出されたが、還元条件1の場合より複雑な分離パターンを示した。
本発明は、医薬分野、農薬分野等に利用することができる。
10 ゲル作製治具
20 グラジエントミキサ
30 グラジエントミキサ
40 ペリスタポンプ
50 シリコンチューブ
100 IPGゲル作製器具

Claims (12)

  1. 還元剤を含まない調製バッファに溶解した抗体タンパク質を、還元剤を含まない泳動バッファを用いて1次元目電気泳動により分離する1次元目電気泳動工程と、
    上記1次元目電気泳動工程において分離した上記抗体タンパク質を、還元剤を含まない泳動バッファを用いて2次元目電気泳動により分離する2次元目電気泳動工程と
    を包含することを特徴とする、抗体分離方法。
  2. 上記調製バッファは、非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体分離方法。
  3. 上記非界面活性剤型スルホベタイン類は、グリシンベタイン、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−195)、3−(1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−201)、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−211)、3−(1−メチルピペリジニウム)−1−プロパンスルホネート(NDSB−221)、ジメチルベンジルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB−256)、及び、3−(4−tert−ブチル−1−ピリジノ)−1−プロパンスルホネート(NDSB−256−4T)からなる群より選択され、
    上記ポリソルベート類は、Tween 80(登録商標)であり、
    上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は、ポリエチレングリコールであり、
    上記糖アルコール類は、ソルビトールである
    ことを特徴とする請求項2に記載の抗体分離方法。
  4. 上記調製バッファ中の上記添加剤の濃度が、1w/v%以上、6w/v%以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の抗体分離方法。
  5. 上記調製バッファは、タンパク質変性剤を含まないことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の抗体分離方法。
  6. 上記調製バッファは、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体分離方法。
  7. 上記非イオン性界面活性剤は、3−[(4−ヘプチル)フェニル−3−ヒドロキシプロピル]ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、又は、Triton Xであり、
    上記両性界面活性剤は、3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、又は、3−[N,N−ジメチル(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート,アミドスルホベタイン−14である
    ことを特徴とする請求項6に記載の抗体分離方法。
  8. 上記1次元目電気泳動において、
    電圧を一定に維持して電流が0より大きい所定の電流値にまで減少したときに昇圧して電流を増加させ、昇圧中に電流が減少し始めたときに電圧を一定に維持し、かつ、電流値が0より大きく、100μA以下となるように電圧制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体分離方法。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載の抗体分離方法により分離した抗体が、基準となる医薬に含まれる抗体と同一であるか否かを評価する評価工程を包含することを特徴とする抗体評価方法。
  10. 請求項1〜8の何れか1項に記載の抗体分離方法により分離した医薬に含まれる抗体が均一であるか否かを評価する評価工程を包含することを特徴とする医薬の評価方法。
  11. 非界面活性剤型スルホベタイン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及び、糖アルコール類からなる群より選択される添加剤を含み、還元剤を含まない調製バッファを備えていることを特徴とする抗体の2次元電気泳動用キット。
  12. 非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、還元剤を含まない調製バッファを備えていることを特徴とする抗体の2次元電気泳動用キット。
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