JP2005027671A - 遺伝子組換え抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】
固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症あるいは乾鮮など異常な血管新生により病態が進行する疾患を診断、治療するための有用な方法が求められている。
【解決手段】
本発明は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する遺伝子組換え抗体を提供する。また、本発明は、ヒトVEGFの生物活性を阻害する遺伝子組み換え抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体を提供する。さらに、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮など血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断方法および治療剤を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮など血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断あるいは治療に有用であるヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に結合する遺伝子組換え抗体、該抗体を生産する細胞株および該抗体を用いてヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出する方法、並びに該抗体を用いた固形腫瘍、慢性関節リュウマチ、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮などの診断法および治療剤に関する。
血管新生は、脊椎動物の個体の発生および組織の構築に重要な役割を果たすとともに、成熟個体(雌)の性周期における黄体形成、子宮内膜の一過性の増殖および胎盤形成などにも密接に関与している。さらに、病的状態としては、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、糖尿病性網膜症および慢性関節リュウマチの病態形成あるいは促進に血管新生が深く関与している(非特許文献1)。血管新生は、血管新生因子の分泌が引き金となり、分泌された血管新生因子の近傍にある既存の血管の内皮細胞からのプロテアーゼ分泌による基底膜、間質の破壊、続いて起こる血管内皮細胞の遊走、増殖により、管腔が形成され、血管が新生される過程よりなる(非特許文献1)。血管新生を誘導する因子としては、Vascular permeability factor(以下、VPFと略記する)、Vascular endothelial growth factor(以下、VEGFと略記する)があり(以下、VPF/VEGFと記す)、これらは発生過程における血管新生および病的な状態における血管新生において最も重要な因子として知られている(非特許文献2)。VPF/VEGFはホモダイマーよりなる分子量約4万の蛋白質であり、1983年に血管透過性促進因子(Vascular permeability factor:VPF) として(非特許文献3)、1989年に血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growthfactor:VEGF) として(非特許文献4)報告されたが、cDNAクローニングの結果、両者は同一の物質であることが明らかとなった(非特許文献5、非特許文献6)(以下、VPF/VEGFはVEGFと記す)。VEGFの活性としてはこれまでに、血管内皮細胞に対する、増殖促進活性(非特許文献4)、遊走促進活性(非特許文献7)、メタロプロテアーゼ分泌促進活性(非特許文献8)、ウロキナーゼ、tPA分泌促進活性(非特許文献9)などが知られており、in vivoにおいて血管新生促進活性(非特許文献10)、血管透過性促進活性(非特許文献3)などがこれまでに知られている。VEGFは血管内皮細胞に極めて特異性の高い増殖因子であり(非特許文献4)、またmRNAのオルタナティブスプライシング(Alternative splicing)により分子量の異なる4種類の蛋白質が存在することが報告されている(非特許文献11)。
血管新生を伴う疾患の中で、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、糖尿病性網膜症、慢性関節リュウマチの病態形成にVEGFが深く関与していることが報告されている。固形腫瘍については、これまでに腎癌(非特許文献12)、乳癌(非特許文献13)、脳腫瘍(非特許文献14)、消化器癌(非特許文献15)、卵巣癌(非特許文献16)などの多くのヒト腫瘍組織におけるVEGFの産生が報告されている。また、乳癌患者の腫瘍におけるVEGF発現量と患者の生存率との相関性を検討した結果、VEGF高発現腫瘍は、VEGF低発現腫瘍に比べて腫瘍血管新生が盛んであり、かつVEGF高発現腫瘍の乳癌患者は、VEGF低発現腫瘍の乳癌患者に比べて生存率が低いことも明らかとなっている(非特許文献17)。また、ヌードマウスにヒト腫瘍を皮下移植したゼノグラフトモデル実験系において、抗VEGFモノクローナル抗体は腫瘍増殖抑制効果を示すことが報告されている(非特許文献18)。さらに、ヌードマウスにおけるヒト腫瘍の転移癌モデルにおいて、抗VEGFモノクローナル抗体は癌転移を抑制できることが報告されている(非特許文献19)。また、ヒトの癌性胸水、腹水中に高濃度のVEGFが検出されることから、胸水、腹水貯留の主要な因子である可能性も示されている(非特許文献20)。
糖尿病網膜症においては、血管新生の異常により網膜剥離や硝子体出血をおこして失明にいたるが、糖尿病性網膜症における血管新生と患者眼球内のVEGFレベルが正相関することが報告されている(非特許文献21)。また、サルの網膜症モデルにおいて抗VEGF中和モノクローナル抗体の眼内投与によりVEGF活性を抑制すると血管新生が抑制されることが報告されている(非特許文献22)。
慢性関節リュウマチの関節炎の病態の進展(骨、軟骨の破壊)には血管新生を伴うが、慢性関節リュウマチ患者の関節液中にはVEGFが高濃度で含まれていること、関節中のマクロファージがVEGFを産生することが報告されている(非特許文献7、非特許文献23)。
VEGF受容体としてはこれまでに受容体型チロシンキナーゼファミリーに属するfms-like tyrosine kinase(以下、Flt-1と略記する)(非特許文献24、非特許文献25)およびkinase insert domain-containing receptor(以下、KDRと略記する)(特許文献1、特許文献2、非特許文献26、非特許文献27)が報告されている。Flt-1およびKDRは、7個のイムノグロブリン様部位よりなる細胞外領域とチロシンキナーゼ部位よりなる細胞内領域とを有する、分子量180〜200キロダルトンの膜蛋白質である。VEGFと、Flt-1およびKDRとは、KD値が20pMおよび75pMで特異的に結合し、またFlt-1およびKDRは血管内皮細胞に特異的に発現していると報告されている(非特許文献28、非特許文献29)。Flt-1の様々な疾患における発現については、ヒトグリオブラストーマ組織の腫瘍血管内皮細胞(非特許文献30)、ヒト消化器癌組織の腫瘍血管内皮細胞(非特許文献15)で、正常組織の血管内皮細胞に比べflt-1 mRNAの発現が上昇していることが報告されている。さらに、慢性関節リュウマチ患者の関節の血管内皮細胞においてもイン・サイチュ・ハイブリダイゼーション(in situ hybridization)によりflt-1 mRNAの発現が認められることが報告されている(非特許文献23)。これらの結果は、腫瘍血管新生においてVEGF-VEGFレセプターFlt-1系が重要な役割を果たしていることを強く示唆するものである。Flt-1はVEGFが結合すること、細胞内ドメインが自己リン酸化されることが報告されているが(非特許文献25)、詳しい機能については不明である。しかし、flt-1遺伝子を破壊したflt-1ノックアウトマウスは発生初期の血島形成や、それに続く血管新生において、血管内皮細胞の形態異常により血管構築が異常となり胎生8.5〜9.5日齢で死亡することから、Flt-1は血管新生における血管内皮細胞の管腔形成に必須の機能を果たしていると推定されている(非特許文献31)。
以上のことから、VEGF受容体Flt-1に結合し、VEGFの生物活性を阻害できる抗体は固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮など異常な血管新生により病態が進行する疾患の診断、治療に有用であることが期待される。
一般にヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体をヒトに投与すると、異物として認識されることによりヒト体内にヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体に対する抗体ができる。その結果、投与されたヒト以外の動物抗体と反応し、副作用を引き起こしたり(非特許文献32、非特許文献33、非特許文献34、非特許文献35)、抗体がはやくクリアランスされたり(非特許文献33、非特許文献36、非特許文献37)、抗体の治療効果を減じてしまうことが知られている(非特許文献38、非特許文献39)。
これらの問題点を解決するため、遺伝子組換え技術を利用してヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体をヒト型キメラ抗体あるいはヒト型CDR(complementarity determining region;以下、CDRと略記する場合もある)移植抗体(再形成ヒト抗体)のようなヒト化抗体にすることが試みられている。ヒト型キメラ抗体は、抗体可変領域(以下、V領域と称す)がヒト以外の動物抗体由来で抗体定常領域(以下、C 領域と称す)がヒト抗体由来である抗体であり(非特許文献40)、ヒトに投与した場合、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体に対する抗体はほとんど惹起されず、血中半減期が6倍のびることが報告されている(非特許文献41)。ヒト型CDR移植抗体はヒト抗体のCDRをヒト以外の動物由来の抗体のCDRと置換した抗体であり(非特許文献42)、サルを用いた実験でマウス抗体に比べ免疫原性が低下し、血中半減期が4〜5倍伸びることが報告されている(非特許文献43)。
従って、ヒトVEGF受容体Flt-1に対して特異的に結合するキメラ抗体、ヒト化抗体は、ヒト体内に投与したときにヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体に対する抗体が生じないことによる、副作用の減少、および血中半減期の延長により、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮など異常な血管新生により病態が進行する疾患等に対する高い治療効果が期待される。
さらに、最近の蛋白質工学、遺伝子工学の進歩により、一本鎖抗体(非特許文献44)あるいはジスルフィド安定化抗体(非特許文献45)といった、より小さな抗体分子の作製が行われている。一本鎖抗体やジスルフィド安定化抗体はモノクローナル抗体あるいはヒト化抗体に比べ、その分子量が小さいことから組織移行性、血中からのクリアランスに優れ、イメージング等への応用、さらにはトキシンとの複合体の作製も行われ、治療効果も期待されている(非特許文献46)。従って、ヒトVEGF受容体Flt-1特異的に結合する一本鎖抗体およびジスルフィド安定化抗体は、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮など異常な血管新生により病態が進行する疾患等に対する高い診断、治療効果が期待される。
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固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リュウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症あるいは乾鮮など異常な血管新生により病態が進行する疾患を診断、治療するための有用な方法が求められている。抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体は、血管新生部位を検出および抑制することができ、上記のような異常な血管新生により病態が進行する疾患の診断および治療に役立つと期待される。
本発明は、以下の(1)〜(68)に関する。
(1)ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する遺伝子組換え抗体。
本発明の遺伝子組換え抗体は、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものである。遺伝子組換え抗体としては、ヒト化抗体、ならびに一本鎖抗体およびジスルフィド安定化抗体などの抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。
(2)ヒトVEGF受容体Flt-1のシグナル配列を含むN末端アミノ酸から750番目に存在するエピトープを認識する上記(1)記載の遺伝子組換え抗体。
(3)ヒトVEGF受容体Flt-1のシグナル配列を含むN末端アミノ酸から338番目に存在するエピトープを認識する上記(1)記載の遺伝子組換え抗体。
(4)ヒトVEGF受容体Flt-1のシグナル配列を含むN末端アミノ酸から数えて100〜204番目に存在するエピトープを認識する上記(1)記載の遺伝子組換え抗体。
(5)ヒトVEGFのヒトVEGF受容体Flt-1への結合を阻害し、かつヒトFlt-1に対する中和活性を有する上記(1)記載の遺伝子組換え抗体。
(6)遺伝子組換え抗体が、ヒト化抗体、抗体断片から選ばれる上記(1)記載の抗体。
本発明におけるヒト化抗体は、ヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体を包含する。
本発明の抗体断片は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体断片であるFragment of antigen binding(Fabと略記する)、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(single chain Fv; 以下、scFvと略記する) およびジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv; 以下、dsFvと略記する)を包含する。以下、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体または抗体断片を抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体と略記する。
(7)ヒト化抗体が、ヒト抗体IgG 型に属する上記(6)記載の抗体。
(8)ヒト化抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移植抗体である、上記(6)記載の抗体。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体重鎖可変領域(以下、重鎖はH鎖として、可変領域はV領域としてHVまたはVHとも称す)および軽鎖可変領域(以下、軽鎖はL鎖としてLVまたはVLとも称す)とヒト抗体の重鎖定常領域(以下、定常領域はC領域としてCHとも称す)およびヒト抗体の軽鎖定常領域(以下、CLとも称す)とからなる抗体を意味する。
本発明のヒト型キメラ抗体は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ製造することができる。
本発明のヒト型キメラ抗体の構造としては、いずれのイムノグロブリン(以下、Igと略記する)クラスに属するものでもよいが、IgG型、さらにはIgG型に属するIgG1、IgG2、IgG3、IgG4等のイムノグロブリンのC領域が好ましい。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト抗体のVHおよびVLのCDRをヒト以外の動物の抗体のCDR配列でそれぞれ置換した抗体を意味する。
本発明のヒト型CDR移植抗体は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDR配列で任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配列をそれぞれ置換したV 領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し、発現させることにより製造することができる。
本発明のヒト型CDR移植抗体C領域の構造としては、いずれのイムノグロブリン(Ig)クラスに属するものでもよいが、IgG型、さらにIgG型に属するIgG1、IgG2、IgG3、IgG4等のイムノグロブリンのC領域が好ましい。
(9)ヒト化抗体の抗体VHのCDRが、配列番号5、6および7記載のアミノ酸配列または配列番号11、12および13記載のアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト化抗体。
(10)ヒト化抗体のVLのCDRが、配列番号8、9および10記載のアミノ酸配列または配列番号14、15および16記載のアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト化抗体。
(11)ヒト型キメラ抗体が、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のVHおよびVLと、ヒト抗体のCHおよびCLとからなる、上記(8)記載のヒト型キメラ抗体。
(12)VHおよびVLのアミノ酸配列が、モノクローナル抗体KM1732(FERM BP-5698)またはモノクローナル抗体KM1750(FERM BP-5700)から選ばれるモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(13)VHのアミノ酸配列が配列番号86または88に記載されたアミノ酸配列である、上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(14)VLのアミノ酸配列が配列番号87または89に記載されたアミノ酸配列である、上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(15)VHのアミノ酸配列が配列番号86記載のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号87のアミノ酸配列を含む上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(16)VHのアミノ酸配列が配列番号88記載のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号89のアミノ酸配列を含む上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(17)ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するヒト型キメラ抗体が、KM2532およびKM2550から選ばれる上記(11)記載のヒト型キメラ抗体。
(18)上記(11)〜(17)のいずれか1つに記載のヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するヒト型キメラ抗体をコードするDNA。
(19)上記(18)記載のDNAとタンデムカセットベクターpKANTEX93とを含有する組換えベクター。
(20)上記(19)記載の組換えベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
(21)上記(20)記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に上記(11)〜(17)記載のヒト型キメラ抗体を生成蓄積させ、該培養物から該抗体を採取することを特徴とする抗体の製造方法。
(22)ヒト型CDR移植抗体がヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のH鎖およびL鎖のV領域CDRと、ヒト抗体のH鎖およびL鎖のC領域およびV領域フレームワーク領域とからなる抗体である上記(8)記載のヒト型CDR移植抗体。
(23)ヒト型CDR移植抗体のVHのCDRが、配列番号5、6および7または配列番号11、12および13である、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(24)ヒト型CDR移植抗体のVLのCDRが、配列番号8、9および10記載のアミノ酸配列または配列番号14、15および16記載のアミノ酸配列である、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(25)ヒト型CDR移植抗体が、配列番号5、6および7記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号8、9および10記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(26)ヒト型CDR移植抗体が、配列番号11、12および13記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号14、15および16記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(27)VHのアミノ酸配列が配列番号90記載のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号92記載のアミノ酸配列を含む、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(28)VHのアミノ酸配列が配列番号91または配列番号95のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号93、配列番号94または配列番号96のアミノ酸配列を含む、上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(29)ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するヒト型CDR移植抗体が、KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554およびKM8555から選ばれる上記(22)記載のヒト型CDR移植抗体。
(30)上記(22)〜(29)のいずれか1つに記載のヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するヒト型CDR移植抗体をコードするDNA。
(31)上記(30)記載のDNAとタンデムカセットベクターpKANTEX93とを含有する組換えベクター。
(32)上記(31)記載の組換えベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
(33)上記(32)記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に上記(22)〜(29)記載のヒト型CDR移植抗体を生成蓄積させ、該培養物から該抗体を採取することを特徴とする抗体の製造方法。
(34)抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体およびジスルフィド安定化Fvからなる群より選ばれるいずれか1つである、上記(6)記載の抗体。
Fabは、IgGのヒンジ領域で2本のH鎖を架橋している2つのジスルフィド結合の上部のペプチド部分を酵素パパインで分解して得られた、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体で構成された、分子量約5万の抗原結合活性を有するフラグメントである。
本発明のFabは、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体をパパイン処理して得ることができる。または、該抗体のFab断片をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ間のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有するフラグメントである。
本発明のFab’は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。
F(ab’)2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を酵素トリプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有するフラグメントである。
本発明のF(ab’)2は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体をトリプシン処理して得ることができる。または、該抗体のF(ab’)2断片をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、F(ab’)2を製造することができる。
一本鎖抗体(以下、scFvとも称す)は、一本のVHと一本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと称す)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドを示す。本発明で使用されるscFvに含まれるVHおよびVLは、本発明のモノクローナル抗体あるいはヒト型CDR 移植抗体のいずれをも用いることができる。
本発明の一本鎖抗体は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体を生産するハイブリドーマよりVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、一本鎖抗体発現ベクターを構築した後、該cDNAを該発現ベクターに挿入し、大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ該発現ベクターを導入することにより発現させ製造することができる。
ジスルフィド安定化抗体(以下、dsFvとも称す)は、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドをジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[Protein Engineering, 7, 697 (1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のジスルフィド安定化抗体に含まれるVHあるいはVLはモノクローナル抗体あるいはヒト型CDR 移植抗体のいずれをも用いることができる。
本発明のジスルフィド安定化抗体は、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体を生産するハイブリドーマよりVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、該cDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。
(35)一本鎖抗体が、抗体のVHおよびVLを含む、上記(34)記載の一本鎖抗体。
(36)一本鎖抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(35)記載の一本鎖抗体。
(37)一本鎖抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(35)記載の一本鎖抗体。
(38)一本鎖抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、それぞれ配列番号86および87であるモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(36)記載の一本鎖抗体。
(39)一本鎖抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、配列番号88および89であるモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(36)記載の一本鎖抗体。
(40)一本鎖抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、配列番号5、6および7記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号8、9および10記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(37)記載の一本鎖抗体。
(41)一本鎖抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、配列番号11、12および13記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号14、15および16記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(37)記載の一本鎖抗体。
(42)一本鎖抗体のVHのアミノ酸配列が配列番号90記載のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号92記載のアミノ酸配列を含む、上記(37)記載の一本鎖抗体。
(43)一本鎖抗体のVHのアミノ酸配列が配列番号91または配列番号95のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号93、配列番号94または配列番号96のアミノ酸配列を含む、上記(37)記載の一本鎖抗体。
(44)ジスルフィド安定化抗体が、抗体のVHおよびVLを含む、上記(34)記載のジスルフィド安定化抗体。
(45)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、それぞれヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(44)記載のジスルフィド安定化抗体。
(46)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、それぞれヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、上記(44)記載のジスルフィド安定化抗体。
(47)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、それぞれ配列番号86および87である、上記(45)記載のジスルフィド安定化抗体。
(48)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列が、それぞれ配列番号88および89である、上記(45)記載のジスルフィド安定化抗体。
(49)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、配列番号5、6および7記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号8、9および10記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(46)記載のジスルフィド安定化抗体。
(50)ジスルフィド安定化抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列が、配列番号11、12および13記載のアミノ酸配列をVHのCDRとして含み、かつ配列番号14、15および16記載のアミノ酸配列をVLのCDRとして含む、上記(46)記載のジスルフィド安定化抗体。
(51)ジスルフィド安定化抗体のVHのアミノ酸配列が配列番号90記載のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号92記載のアミノ酸配列を含む、上記(46)記載のジスルフィド安定化抗体。
(52)ジスルフィド安定化抗体のVHのアミノ酸配列が配列番号91または配列番号95のアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が配列番号93、配列番号94または配列番号96のアミノ酸配列を含む、上記(46)記載のジスルフィド安定化抗体。
(53)上記(1)に記載されたヒトVEGF受容体Flt-1 に特異的に反応する遺伝子組換え抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のCDRから選ばれるアミノ酸配列を含むペプチド。
(54)H鎖V領域およびL鎖V領域のCDRが、配列番号5、6、7、8、9および10記載のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1アミノ酸配列を含む、上記(53)記載のペプチド。
(55)H鎖V領域およびL鎖V領域のCDRが、配列番号11、12、13、14、15および16記載のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1アミノ酸配列を含む、上記(53)記載のペプチド。
(56)上記(1)〜(55)のいずれかに記載された抗体またはペプチドが、放射性同位元素、蛋白質または低分子の薬剤と化学的または遺伝子工学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドである抗体またはペプチド。
融合抗体または融合ペプチドは、上述の抗体またはペプチドに放射性同位元素、蛋白質、低分子の薬剤などを化学的あるいは遺伝子工学的に結合させた抗体またはペプチドをいう。
本発明の融合抗体または融合ペプチドは、ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応する抗体またはペプチドを放射性同位元素、蛋白質あるいは低分子の薬剤などと化学的に結合させることにより製造することができる。
また、蛋白質との融合抗体または融合ペプチドについては、抗体またはペプチドをコードするcDNAに蛋白質をコードするcDNAを連結させ、適当な発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞に発現させることにより製造することができる。
低分子の薬剤は、ナイトロジェン・マスタード、サイクロフォスファミドなどのアルキル化剤、5−フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、マイトマイシンC,ダウノルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤等の抗癌剤[臨床腫瘍学(日本臨床腫瘍研究会編 1996年 癌と化学療法社)]、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤等の抗炎症剤[炎症と抗炎症療法 昭和57年 医歯薬出版株式会社]などがあげられる。
(57)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出する方法。
(58)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に定量する方法。
(59)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出する方法。
(60)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に定量する方法。
(61)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を免疫学的に検出する方法。
(62)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を免疫学的に定量する方法。
(63)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1との結合を阻害する方法。
(64)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1機能を中和する方法。
(65)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いて、血管内皮細胞の遊走を阻害する方法。
(66)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを用いる、血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断方法。
(67)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを有効成分として含有する、血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断薬。
血管新生の異常により病態が進行する疾患とは、固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などをいう。固形腫瘍としては、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などがあげられる。
(68)上記(1)〜(17)、(22)〜(29)、(34)〜(56)のいずれか1つに記載された抗体またはペプチドを有効成分として含有する、血管新生の異常により病態が進行する疾患の治療薬。
以下に、ヒトVEGF受容体Flt-1 に特異的に反応する、またはヒトFlt-1に対する中和活性を有する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体および抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体断片の製造法、ならびに該抗体によるヒトVEGF受容体Flt-1の検出および定量法について説明する。
1.抗ヒトVEGF受容体Flt-1 モノクローナル抗体の製造法
(1)抗原の調製
抗ヒトVEGF受容体Flt-1 モノクローナル抗体を作製するために必要な抗原としては、ヒトVEGF受容体Flt-1 を細胞表面に発現した細胞あるいはその細胞膜画分、または、長さの異なる細胞外領域を有する可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1蛋白質あるいは該蛋白質と抗体のFc部分との融合蛋白質などをあげることができる。
ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現する細胞としては、NIH3T3-Flt-1細胞[Oncogene, 10, 135 (1995)]等をあげることができる。
また、遺伝子工学的手法を用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1をコードするDNAを取得し、アミノ酸の長さの異なる細胞外領域を有する可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 蛋白質あるいは該蛋白質と抗体のFc部分との融合蛋白質として発現させて抗原とすることもできる。
ヒトVEGF受容体Flt-1 をコードする全長あるいはその部分断片cDNA[Oncogene, 5, 519 (1990); 第18回日本分子生物学会年会議・講演要旨集、演題番号2P-227(1995年 12月) ]を適当なプロモーター下流に挿入した組み換えベクターを造成し、それを宿主細胞に導入することにより得られたヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞を、適当な培地中で培養することにより細胞内または培養上清中にヒトVEGF受容体Flt-1の全長または部分断片をそのまま、または融合蛋白質として生産することができる。
宿主としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであれば、いずれでもよい。細菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のエシェリヒア属、バチルス属等の細菌が例示される。酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が例示される。動物細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞等が例示される。昆虫細胞としては、Sf9、Sf21(ファーミンジェン社製)、High Five(インビトロジェン社製)等が例示される。
本発明のDNAを導入するベクターとしては、該DNAを組み込むことができ、宿主細胞で発現できるものであればいかなるベクターでも用いることができる。
細菌、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)を宿主として用いる場合の発現ベクターとしては、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、場合によってはプロモーターの制御配列より構成されているのが好ましいが、例えば、市販のpGEX(ファルマシア社製)、pET システム(ノバジェン社製)などが例示される。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63-248394)等、いずれの方法も用いられる。
酵母を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等が用いられる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば、例えば、エレクトロポレーション法[Methods. Enzymol., 194, 182 (1990)]、スフェロプラスト法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929 (1978)]、酢酸リチウム法[J. Bacteriol., 153, 163 (1983)]等、いずれの方法も用いられる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pAGE107[特開平3-22979 ; Cytotechnology, 33, 133 (1990)],pAGE103[J. Biochem. 101, 1307 (1987) ] 等が用いられる。
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいかなるものを用いてもよいが、例えば、サイトメガロウィルス(CMV)のIE(immediate early) 遺伝子のプロモーター、SV40あるいはメタロチオネインのプロモーター等があげられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターとともに用いてもよい。
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であれば、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等、いずれの方法も用いられる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ(サプルメント1〜34)、バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル(Baculovirus expression vectors, A laboratory manual)等に記載された方法によって、タンパク質を発現することができる。すなわち、以下に述べる組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得たのち、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質発現昆虫細胞を取得する。
遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII (ともにインビトロジェン社製)等が用いられる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus) などが用いられる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等が用いられる。
また、ファーミンジェン社製バキュロゴールドスターターキットなどを用いて組み換えバキュロウィルスを作製したのち、前述したSf9、Sf21あるいはHigh Five等の昆虫細胞に該組み換えウィルスを感染させることにより蛋白質を生産させることもできる[Bio/Technology, 6, 47(1988)]。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、分泌生産、融合蛋白質発現等が開発されており、いずれの方法も用いることができる。例えば、モレキュラー・クローニング 第2版、コールドスプリングハーバーラボ・プレス(Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Lab. Press) New York(1989)(以下、モレキュラー・クローニング 第2版と略記する)に記載されている方法に準じて行うことができる。
融合させる蛋白質としては、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのIgG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖(His-tag)、Sペプチド、DNA結合蛋白質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン、および任意の抗体のエピトープなどがあげられる[実験医学, 13, 469-474(1995)]。
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中にヒトVEGF受容体Flt-1の全長あるいは部分断片をそのままあるいは融合蛋白質として生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、ヒトVEGF受容体Flt-1の全長あるいは部分断片をそのままあるいは融合蛋白質として製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌あるいは酵母等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい(モレキュラー・クローニング 第2版)。培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下、15〜40℃で16〜96時間行う。培養期間中、pHは3. 0〜9. 0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。培養中は必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、EagleのMEM培地またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常5%CO2存在下、35〜37℃で3〜7日間行い、培養中は必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM-FH培地[ファーミンジェン(Pharmingen)社製]、Sf900IISFM[ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製]、ExCell400 、ExCell405 [いずれもJRH バイオサイエンシーズ(JRH Biosciences)社製]等が用いられる。培養は、25〜30℃で1 〜4 日間行い、培養中は必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
動物細胞および昆虫細胞の培地中に血清が含有されているが、ヒトVEGF受容体Flt-1 の全長あるいは部分断片をそのままあるいは融合蛋白質として精製することを容易にするため、好ましくは血清無添加の培地を用いる。
ヒトVEGF受容体Flt-1 の全長あるいは部分断片をそのままあるいは融合蛋白質として宿主細胞内に蓄積された場合には、培養終了後、細胞を遠心分離し、水系緩衝液にけん濁後、超音波法、フレンチプレス法などにより細胞を破砕し、その遠心分離上清に該蛋白質を回収する。
さらに、細胞内に不溶体を形成した場合には、不溶体をタンパク質変性剤で可溶化後、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、或いは透析し、タンパク質の立体構造を形成させることができる。
ヒトVEGF受容体Flt-1 の全長あるいは部分断片をそのままあるいは融合蛋白質として細胞外に分泌された場合には、培養上清中に発現蛋白質を回収することができる。単離精製については、溶媒抽出、有機溶媒による分別沈殿、塩析、透析、遠心分離、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、結晶化、電気泳動などの分離操作を単独あるいは組み合わせて行うことができる。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
免疫に用いる動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなどハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものでもよいが、本発明においてはマウスおよびラットを用いる例を説明する。
3〜20週令のマウスまたはラットに、上記1(1)で得られた蛋白質を抗原として免疫し、その動物の脾、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、適当なアジュバントとともに抗原を数回投与することにより行う。アジュバンドとしては、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund's Adjuvant)または、水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどがあげられる。各投与後3 〜7日目に免疫動物の眼底静脈叢あるいは尾静脈より採血し、抗原として用いた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 あるいはヒトVEGF受容体Flt-1 を細胞表面に発現しているNIH3T3細胞に対しての反応性について、酵素免疫測定法などで確認し[酵素免疫測定法(ELISA 法):医学書院刊(1976年)]、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを抗体産生細胞の供給源とする。抗原物質の最終投与後3 〜7 日目に、免疫したマウスより公知の方法[アンティボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアル、コールド・スプリングハーバー・ラボラトリー(Antibodies-A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、以下、アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアルと記す]に準じて脾臓を摘出し、脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させる。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞である、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(P3-U1) [Euro. J. Immunol., 6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[Nature, 276, 269 (1978) ]、P3-X63-Ag8653(653)[J. Immunol., 123, 1548 (1979)]、P3-X63-Ag8(X63) [Nature, 256, 495 (1975) ]など、イン・ビトロ(in vitro)で増殖可能な骨髄腫細胞であればいかなるものでもよい。これらの細胞株の培養および継代については公知の方法(アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアル)に従い、細胞融合時までに2×107個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
上記で得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを洗浄したのち、ポリエチレングライコール−1000(PEG-1000)などの細胞凝集性媒体を加え、細胞を融合させ、培地中に懸濁させる。細胞の洗浄にはMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g 、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g 、蒸留水1リットル、pH7.2)などを用いる。また、融合細胞を懸濁させる培地としては、目的の融合細胞のみを選択的に得られるように、HAT培地{正常培地[RPMI-1640培地にグルタミン(1.5mM) 、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)(CSL社製、10%)を加えた培地]にヒポキサンチン(10-4M)、チミジン(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を加えた培地}を用いる。
培養後、培養上清の一部をとり、酵素免疫測定法により、抗原蛋白質に反応し、非抗原蛋白質に反応しないサンプルを選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを行い、酵素免疫測定法により安定して高い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(5)マウスあるいはラット抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体の選択
マウスまたはラット抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択は、アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアルに述べられている方法などに従い、以下に述べる測定法により行う。これらの方法により、後述する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体、該抗体断片を産生する形質転換株の培養上清中に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体あるいはすべての精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体の結合活性を測定することができる。
酵素免疫測定法
抗原蛋白質あるいは抗原蛋白質を発現した細胞などを96ウェルプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは上述の方法で得られる精製抗体を第一抗体として反応させる。
第一抗体反応後、プレートを洗浄して第二抗体を添加する。
第二抗体とは、第一抗体のイムノグロブリンを認識できる抗体を、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗体である。具体的にはハイブリドーマ作製の際にマウスを用いたのであれば、第二抗体としては、マウスイムノグロブリンを認識できる抗体を用いる。
反応後、第二抗体を標識した物質に応じた反応を行ない、抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。
当該ハイブリドーマ株の具体例としては、ハイブリドーマ株KM1732(FERM BP-5698)、KM1748(FERM BP-5699)およびKM1750(FERM BP-5700)があげられる。
また、上述の第一抗体と、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識したヒトVEGFとを混合して反応させた後、標識物質に応じた反応を行うことにより、ヒトVEGFのヒトVEGF受容体Flt-1への結合阻害活性を測定することができる。該方法を用いることにより、ヒトVEGF阻害活性の高いハイブリドーマのスクリーニングを行うことができる。
(6)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5ml を腹腔内投与し、2 週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、1(4)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2×107〜5×106細胞/ 匹を腹腔内に注射する。10〜21日間でハイブリドーマは腹水癌化する。該マウスまたはヌードマウスから腹水を採取し、遠心分離、40〜50% 飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿法、DEAE- セファロースカラム、プロテインA- カラムあるいはセルロファインGSL2000(生化学工業社製)のカラムなどを用いて、IgG あるいはIgM 画分を回収し、精製モノクローナル抗体とする。
精製モノクローナル抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットなどを用いて行うことができる。蛋白質量は、ローリー法あるいは280nm での吸光度より算出することができる。
抗体のサブクラスとは、クラス内のアイソタイプのことで、マウスでは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、ヒトでは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4があげられる。
マウスIgG1、IgG2aおよびヒトIgG1タイプは、補体依存性細胞傷害活性(以下、CDC活性)および抗体依存性細胞傷害活性(以下、ADCC活性)を有し、治療への応用上、有用である。
2.組換え抗体の作製方法(I)−抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体の作製方法
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト以外の動物の抗体からヒト化抗体を作製するために必要なヒト化抗体発現用ベクターを構築する。ヒト化抗体発現用ベクターとは、ヒト抗体のC領域であるCHおよびCLをコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれ挿入することにより構築されたものである。
ヒト抗体のC領域としては、例えば、ヒト抗体H鎖ではCγ1やCγ4、ヒト抗体L鎖ではCκ等の任意のヒト抗体のC領域を用いることができる。ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンより成る染色体DNA を用いることができ、また、cDNAを用いることもできる。動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。
例えば、pAGE107[Cytotechnology, 3, 133 (1990) ]、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981)]、pSG1βd2-4[Cytotechnology, 4, 173 (1990) ]等があげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTR プロモーターとエンハンサー[Biochem. Biophys. Res. Comun., 149, 960 (1987)]、および免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]とエンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]等があげられる。
ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体H鎖、L鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)のどちらでも用いることができるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築のしやすさ、動物細胞への導入のし易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスがとれる等の点でタンデム型のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい[J. Immunol. Methods, 167, 271 (1994)]。
(2)ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得する。
抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を産生する細胞、例えば、マウスヒトVEGF受容体Flt-1抗体産生ハイブリドーマ等よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAを、ファージあるいはプラスミドなどのベクターに挿入し、cDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のC領域部分あるいはV領域部分をプローブとして用い、VHをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミド、およびVLをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージあるいは組換えプラスミド上の目的とする抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
前記2(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、キメラ抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にあらかじめヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングするための制限酵素の認識配列を設けておき、このクローニングサイトにヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAを下記に述べる合成DNAを介して挿入することにより、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを製造することができる。合成DNAは、ヒト以外の動物の抗体のV領域の3'末端側の塩基配列とヒト抗体のC領域の5'末端側の塩基配列とからなるものであり、両端に適当な制限酵素部位を有するようにDNA合成機を用いて製造する。
(4)ヒト以外の動物の抗体のCDR 配列の同定
抗体の抗原結合部位を形成するVH及びVLは、配列の比較的保存された4個のフレームワーク領域(以下、FR領域と称す)とそれらを連結する配列の変化に富んだ3個の相補性決定領域(CDR)から成っている[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest), US Dept. Health and Human Services,(1991);以下、シーケンシズ・ オブ・ プロテインズ・ オブ・ イムノロジカル・ インタレストと記す。]。そして各CDR アミノ酸配列(CDR 配列)は、既知の抗体のV 領域のアミノ酸配列(シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・ イムノロジカル・インタレスト)と比較することにより同定することができる。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得することができる。
まず、目的のヒト以外の動物の抗体のV領域のCDR を移植するためのヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列をVH、VLそれぞれについて選択する。ヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のV領域のFRのアミノ酸配列であればいかなるものでも用いることができる。
例えば、Protein Data Bank に登録されているヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のV 領域のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(シーケンシズ・ オブ・ プロテインズ・ オブ・ イムノロジカル・ インタレスト)があげられるが、充分な活性を有するヒト型CDR 移植抗体を創製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列と高い相同性、好ましくは65%以上の相同性を有することが望ましい。次に、選択したヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列をコードするDNA配列と目的のヒト以外の動物の抗体のV領域のCDRのアミノ酸配列をコードするDNA配列を連結させて、VH、VLそれぞれのアミノ酸配列をコードするDNA配列を設計する。CDR移植抗体可変領域遺伝子を構築するために設計したDNA 配列を得るためには、全DNA配列をカバーするように各鎖について数本の合成DNAを設計し、それらを用いてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと記す)を行う。PCRでの反応効率および合成可能なDNA の長さから各鎖について、好ましくは、6本の合成DNAを設計する。反応後、増幅断片を適当なベクターにサブクローニングし、その塩基配列を決定し、目的のヒト型CDR移植抗体の各鎖のV領域のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドを取得する。また、約100塩基よりなる合成DNAを用いてセンス、アンチセンスともに全配列を合成し、それらをアニーリング、連結することで、目的のヒト型CDR移植抗体の各鎖のV領域のアミノ酸配列をコードするcDNAを構築することもできる。
(6)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は目的のヒト以外の動物の抗体のV領域のCDRのみをヒト抗体のV領域のFR間に、単純に移植しただけでは、その活性はもとのヒト以外の動物の抗体の活性に比べて低下してしまうことが知られている[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991) ]。そこでヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列のうち、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用をしているアミノ酸残基、あるいは抗体の立体構造の維持に関与している等の可能性を有するアミノ酸残基をもとのヒト以外の動物の抗体に見出されるアミノ酸残基に改変し、活性を上昇させることが行われている。そして、それらのアミノ酸残基を効率よく同定するため、X線結晶解析あるいはコンピューターモデリング等を用いた抗体の立体構造の構築および解析を行っている。しかし、いかなる抗体にも適応可能なヒト型CDR移植抗体の製造法は未だ確立されておらず、現状では個々の抗体によって種々の試行錯誤が必要である。
選択したヒト抗体のV領域のFRのアミノ酸配列の改変は各種の変異導入プライマーを用いて前記2(5)に記載のPCRを行うことにより達成できる。PCR 後の増幅断片を適当なベクターにサブクローニング後、その塩基配列を決定し、目的の変異が導入されたcDNAを含むベクター(以下、アミノ酸配列改変ベクターと称す)を取得する。
また、狭い領域のアミノ酸配列の改変であれば、20〜35塩基からなる変異導入プライマーを用いたPCR変異導入法により行うことができる。具体的には、改変後のアミノ酸残基をコードするDNA配列を含む20〜35塩基からなるセンス変異プライマー及びアンチセンス変異プライマーを合成し、改変すべきV領域のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドを鋳型として2段階のPCRを行う。最終増幅断片を適当なベクターにサブクローニング後、その塩基配列を決定し、目的の変異が導入されたcDNAを含むアミノ酸配列改変ベクターを取得する。
(7) ヒト型CDR 移植抗体発現ベクターの構築
前記2(1)のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH及びCLをコードする遺伝子の上流に、前記2(5)および2(6)で取得したヒト型CDR移植抗体のVH及びVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト型CDR移植抗体のVH及びVLのアミノ酸配列をコードするcDNAを構築するためのPCRの際に5'末端および3'末端の合成DNAの末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、所望のヒト抗体のC領域をコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入することができる。
(8)ヒト化抗体の一過性(トランジェント)発現および活性評価
多種類のヒト化抗体の活性を効率的に評価するために、前記2(3)のヒト型キメラ抗体発現ベクター、および前記2(7) のヒト型CDR移植抗体発現ベクターあるいはそれらの改変ベクターをCOS-7細胞(ATCC CRL1651)に導入してヒト化抗体の一過性発現[Methods in Nucleic Acids Res., CRC Press, pp283 (1991)]を行い、その活性を測定することができる。
COS-7細胞への発現ベクターの導入法としては、DEAE-デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res., CRC Press, pp283 (1991)]、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413(1987)]等があげられる。
ベクターの導入後、培養上清中のヒト化抗体の活性は前記1(5)に記載の酵素免疫測定法(ELISA法)等により測定することができる。
(9)ヒト化抗体の安定(ステーブル)発現および活性評価
前記2(3)のヒト型キメラ抗体発現ベクターおよび前記2(7)のヒト型CDR移植抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによりヒト化抗体を安定に生産する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法[特開平2-257891; Cytotechnology, 3, 133(1990)]等があげられる。
ヒト化抗体発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653 細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、DHFR遺伝子と称す)が欠損したCHO 細胞[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216(1980)]、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、YB2/0 細胞と称す)等があげられる。
ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平2-257891に開示されている方法に従い、G418およびFCS を含むRPMI1640培地により選択する。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養液中にヒト化抗体を生産蓄積させることができる。培養液中のヒト化抗体の活性は前記1(5)に記載の方法などにより測定する。また、形質転換株は、特開平2-257891に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用してヒト化抗体の生産量を上昇させることができる。
ヒト化抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA カラムを用いて精製することができる(アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアル 第8章)。また、その他に、通常の蛋白質で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組合せて行い、精製することができる。精製したヒト化抗体のH鎖、L鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)[Nature, 227, 680(1970)]やウエスタンブロッティング法(アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアル 第12章)等で測定する。
精製したヒト化抗体の反応性、また、ヒト化抗体のVEGF受容体Flt-1に対する結合活性の測定は前記1(5)に記載の方法などにより測定することができる。
3.組換え抗体の作製方法(II)
(1)抗体断片Fab、Fab’およびF(ab’)2の作製方法
上述した抗体を酵素で処理することにより、抗体断片を生成させる。酵素としては、パパイン、トリプシンなどをあげることができる。
または、該抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体のFab、Fab’あるいはF(ab’)2断片をコードするDNAを動物細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、Fab、Fab’あるいはF(ab’)2を製造することができる。
生成される抗体断片は、ゲル濾過、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したFab、Fab’およびF(ab’)2の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)[Nature, 227, 680(1970)]やウエスタンブロッティング法(アンチボディズ・ア・ラボラトリー・マニュアル 第12章)等で測定する。
精製したFab、Fab’およびF(ab’)2の反応性、また、Fab、Fab’およびF(ab’)2のVEGF受容体Flt-1に対する結合活性の測定は前記1(5)に記載の方法などにより測定することができる。
(2)抗ヒトVEGF受容体Flt-1一本鎖抗体の作製方法
前記2(2)、2(5)および2(6)に記載のヒト以外の動物の抗体あるいはヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを一本鎖抗体発現用ベクターに挿入することによりヒト以外の動物の抗体の一本鎖抗体あるいはヒト型CDR移植抗体の一本鎖抗体の発現ベクターを構築することができる。ここで用いる一本鎖抗体発現用ベクターとしてはヒト以外の動物の抗体あるいはヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを組込み発現できるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
例えば、pAGE107 [Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAGE103 [J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274 [Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 78, 1527 (1981)]、pSG1βd2-4[Cytotechnology, 4, 173 (1990)]等があげられる。一本鎖抗体を発現させるための宿主としては、大腸菌、酵母、動物細胞等の中から適切なものを選択することができるが、その場合の発現用ベクターとしては、それぞれの宿主に適切なものを選択する必要がある。また、適切なシグナルペプチドをコードするcDNAを発現用ベクターに挿入することで一本鎖抗体を細胞外に分泌させ、ペリプラズマ領域に輸送させ、あるいは細胞内に留まらせることができる。
選択された発現用ベクターに、VH−P−VLあるいはVL−P−VH(Pはペプチドリンカー)からなる一本鎖抗体をコードするcDNAを適切なプロモーター、および必要に応じてシグナルペプチドの下流に挿入することにより、目的の一本鎖抗体をコードするcDNAが挿入された一本鎖抗体発現ベクターを構築することができる。
一本鎖抗体をコードするcDNAは、VHをコードするcDNAとVLをコードするcDNAとを、両端に適当な制限酵素の認識配列を有するペプチドリンカーをコードする合成DNAを用いて連結することにより得ることができる。リンカーペプチドは、その付加がVHおよびVLの抗原への結合に対して妨害しないように最適化することが重要で、例えばPantolianoらにより示されたもの[Biochemistry, 30, 10117 (1991) ]あるいはそれを改変したものを用いることができる。
(3)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ジスルフィド安定化抗体の作製方法
ジスルフィド安定化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAあるいはヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAのそれぞれの適切な位置の1アミノ酸残基に相当する塩基配列をシステイン残基に相当する塩基配列に改変し、発現および精製したのち、ジスルフィド結合を形成させることで作製することができる。アミノ酸残基のシステイン残基への改変は前記2(5)のPCR を用いた変異導入法により行うことができる。
得られた改変VHおよび改変VLをコードするcDNAを適切な発現用ベクターに挿入することによりジスルフィド安定化抗体H鎖発現ベクターおよびジスルフィド安定化抗体L鎖発現ベクターを構築することができる。ここで用いるジスルフィド安定化抗体発現用ベクターとしては改変VHおよび改変VLをコードするcDNAを組込み発現できるものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAGE103 [J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274 [Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981) ]、pSG1βd2-4[Cytotechnology, 4, 173 (1990) ]等があげられる。ジスルフィド安定化抗体を形成させるためにジスルフィド安定化抗体L鎖発現ベクターおよびジスルフィド安定化抗体H鎖発現ベクターを発現させるための宿主としては、大腸菌、酵母、動物細胞等の中から適切なものを選択することができるが、その場合の発現用ベクターとしては、それぞれの宿主に適切なものを選択する必要がある。
また、適切なシグナルペプチドをコードするcDNAを発現用ベクターに挿入することでジスルフィド安定化抗体を細胞外に分泌させ、ペリプラズマ領域に輸送させ、あるいは細胞内に留まらせることができる。
(4)各種抗体の発現および活性評価
前記3(1)〜(3)で構築された抗体断片発現ベクター、一本鎖抗体発現ベクター、ジスルフィド安定化抗体H 鎖発現ベクターあるいはジスルフィド安定化抗体L 鎖発現ベクターをエレクトロポレーション法[特開平2-257891; Cytotechnology, 3, 133 (1990)]等の方法により宿主細胞へ導入することにより、目的の抗体断片、一本鎖抗体、ジスルフィド安定化抗体H鎖あるいはジスルフィド安定化抗体L鎖を生産する形質転換株を取得することができる。発現ベクターの導入後、培養上清等に含まれる抗体断片、一本鎖抗体、ジスルフィド安定化抗体H鎖あるいはジスルフィド安定化抗体L鎖の発現は前記1(5)に記載の方法等により確認することができる。
一本鎖抗体、ジスルフィド安定化抗体H鎖あるいはジスルフィド安定化抗体L鎖の回収および精製は公知の技術を組み合わせることにより達成することができる。例えば、抗体断片、一本鎖抗体、ジスルフィド安定化抗体H鎖あるいはジスルフィド安定化抗体L鎖が培地中に分泌されるならば、限外濾過により濃縮することができ、次いで各種クロマトグラフィーあるいはゲル濾過を実行することにより達成することができる。また、宿主細胞のペリプラズマ領域へと輸送されるならば、その細胞に浸透圧ショックを与え、限外濾過により濃縮することができ、次いで各種クロマトグラフィーあるいはゲル濾過を実行することにより達成することができる。不溶性であり、かつ顆粒(インクルージョン・ボディー)として存在している抗体断片、一本鎖抗体、ジスルフィド安定化抗体H 鎖あるいはジスルフィド安定化抗体L 鎖は、細胞の溶解、顆粒を単離するための遠心分離と洗浄の繰り返し、例えばグアニジン-塩酸による可溶化後、各種クロマトグラフィーあるいはゲル濾過クロマトグラフィーを実行することにより達成することができる。
精製された一本鎖抗体は、前記1(5)に記載の方法等により測定することができる。
精製されたジスルフィド安定化抗体H鎖とジスルフィド安定化抗体L鎖は、各々を混合したのち、活性を有する構造へと導く操作[refolding 操作,Molecular Immunology, 32, 249 (1995)]によりジスルフィド結合を形成させた後、抗原アフィニティークロマトグラフィーもしくはイオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過により活性を有するジスルフィド安定化抗体を精製することができる。ジスルフィド安定化抗体の活性は前記1(5)に記載の方法等により測定することができる。
4.融合抗体および融合ペプチドの作製方法
本発明で使用される抗体またはペプチドに、放射性同位元素、毒素、サイトカインまたは酵素等の蛋白質、低分子の薬剤などを、化学的あるいは遺伝子工学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドも抗体の誘導体として使用することができる。
抗体またはペプチドと毒素蛋白質とを化学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドは、文献[Anticancer Research, 11, 2003 (1991); Nature Medicine, 3, 350 (1996)]記載の方法等に従って作製することができる。
抗体またはペプチドと、毒素、サイトカインまたは酵素等の蛋白質とを遺伝子工学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドは、文献[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 974 (1996); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 7826 (1996)]記載の方法等に従って作製することができる。
抗体またはペプチドと低分子抗癌剤を化学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドは、文献[Science, 261, 212 (1993)]記載の方法等に従って作製することができる。
抗体またはペプチドと放射性同位元素を化学的に結合させた融合抗体または融合ペプチドは、文献[Antibody Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals, 3, 60 (1990); Anticancer Research, 11, 2003 (1991)]記載の方法等に従って作製することができる。
これらの誘導体は、抗体分子の特異性に従って放射性同位元素、毒素、サイトカインまたは酵素等の蛋白質、低分子の薬剤などを標的組織周辺に集積させることで、より効果的で副作用の少ない診断あるいは治療を可能にすることが期待されている。
5.抗体の使用方法(I)
上述した抗VEGF受容体Flt-1抗体、ペプチド、それらと他分子との融合抗体、または融合ペプチドは、ヒトVEGF受容体Flt-1と結合し、ADCC、CDC等の抗体のエフェクター活性を介してVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現している細胞を破壊するため、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患の治療等に有用である。
本発明の抗体、ペプチド、融合抗体または融合ペプチドを含有する医薬は、治療薬として単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができ、抗体またはペプチド製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。
また、噴霧剤は該抗体またはペプチドそのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該抗体またはペプチドおよび用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
本発明のヒトVEGF受容体Flt-1に対する抗体またはペプチドは、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌など固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断薬あるいは治療薬に用いることができる。
さらに、本発明の抗体またはペプチドはヒトFlt-1に対して中和活性を有するため、ヒトVEGFのFlt-1への結合を阻害する。すなわち、Flt-1自己リン酸化を阻害し、VEGF依存的ヒト血管内皮細胞の遊走を阻害する。したがって、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患の治療薬として用いることができる。
また、本発明で使用される抗体またはペプチドの各種腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果を検討する方法は、インビトロ実験としては、補体依存性細胞障害活性(CDC活性)測定法、抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)測定法等があげられ、インビボ実験としては、マウス等の実験動物での腫瘍系を用いた抗腫瘍実験等があげられる。
CDC活性、ADCC活性、抗腫瘍実験は、文献[Cancer Immunology Immunotherapy, 36, 373 (1993), Cancer Research, 54, 1511 (1994)]記載の方法等に従って行うことができる。
6.抗体の使用方法(II) また、本発明は、ヒトVEGF受容体Flt-1またはヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を免疫学的に検出および定量する方法、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出および定量する方法、ヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1との結合を阻害する方法およびヒトVEGF受容体Flt-1機能を中和する方法、血管内皮細胞の遊走を阻害する方法に関する。
本発明の抗体またはペプチドを用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞または可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出および定量する方法としては、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA)、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC法、CSA法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、上記に記した酵素免疫測定法、サンドイッチELISA 法[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987年)、続生化学実験講座5 免疫生化学研究法(東京化学同人、1986年)]などがあげられる。
蛍光抗体法とは、分離した細胞あるいは組織などに、本発明の抗体またはペプチドを反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)などの蛍光物質でラベルした抗イムノグロブリン抗体あるいは結合断片を反応させた後、蛍光色素をフローサイトメーターで測定する方法である。
免疫酵素抗体法(ELISA)とは、分離した、細胞あるいはその破砕液、組織あるいはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水、眼液などに、本発明の抗体またはペプチドを反応させ、さらにペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識などを施した抗イムノグロブリン抗体あるいは結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する方法である。
放射性物質標識免疫抗体法(RIA)とは、分離した、細胞あるいはその破砕液、組織あるいはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水、眼液などに、本発明の抗体を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体あるいは結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する方法である。
免疫細胞染色法、免疫組織染色法とは、分離した、細胞あるいは組織などに、本発明の抗体またはペプチドを反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)などの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した抗イムノグロブリン抗体あるいは結合断片を反応させた後、顕微鏡を用いて観察する方法である。
また、ヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1との結合の阻害活性は、増殖因子と受容体の結合測定法[新生化学実験講座7 増殖分化因子とその受容体(東京化学同人、1991年)]等の方法に準じて、本発明の抗体を用いたVEGF-VEGF受容体Flt-1結合阻害試験を行うことにより確認することができる。
すなわち、Flt-1を発現している細胞あるいは組織に放射性物質等を標識したVEGFを反応させ、Flt-1発現細胞あるいは組織に結合したVEGFをシンチレーションカウンターなどで測定する方法である。放射性物質等を標識したVEGFと同時に本発明の抗体またはペプチドを反応させることで、放射性物質等を標識したVEGFがFlt-1に結合するのを阻害する活性を測定することが可能である。
VEGF受容体Flt-1の自己リン酸化阻害活性は、増殖因子受容体の自己リン酸化測定法[続生化学実験講座 情報伝達と細胞応答(東京化学同人、1986年)]等の方法に準じて、抗体またはペプチドを用いた、VEGF-VEGF受容体Flt-1の自己リン酸化阻害試験を行うことにより確認することができる。
すなわち、Flt-1を発現している細胞あるいは組織にVEGFを反応させ、VEGFが結合することで亢進するFlt-1の自己リン酸化を免疫沈降法およびウエスタンブロット法などで検出する方法である。VEGFと同時に本発明の抗体またはペプチドを反応させることで、VEGFが結合することにより亢進されるFlt-1の自己リン酸化を阻害する活性を測定することが可能である。
ヒトVEGFの阻害活性は、VEGF依存的な血管内皮細胞の増殖、遊走、およびチューブ形成試験[新生化学実験講座10 血管(内皮と平滑筋)(東京化学同人、1991年)]を行うことにより確認することができる。
VEGF依存的な血管内皮細胞の増殖試験とは、血管内皮細胞にVEGFを反応させ、VEGFが結合することで亢進する血管内皮細胞の増殖促進活性を細胞数を測定する方法である。VEGFと同時に本発明の抗体またはペプチドを反応させることで、VEGFにより亢進する血管内皮細胞の増殖促進活性を阻害する活性を測定することが可能である。
VEGF依存的な血管内皮細胞の遊走試験とは、血管内皮細胞にVEGFを反応させ、VEGFが結合することで亢進する血管内皮細胞の遊走促進活性を顕微鏡を用いて観察する方法である。VEGFと同時に本発明の抗体またはペプチドを反応させることで、VEGFにより亢進する血管内皮細胞の遊走促進活性を阻害する活性を測定することが可能である。
VEGF依存的な血管内皮細胞のチューブ形成試験とは、血管内皮細胞にVEGFを反応させ、VEGFが結合することで亢進する血管内皮細胞のチューブ形成促進活性を顕微鏡を用いて観察する方法である。VEGFと同時に本発明の抗体またはペプチドを反応させることで、VEGFにより亢進する血管内皮細胞のチューブ形成促進活性を阻害する活性を測定することが可能である。
以下、それらの一例について説明する。
(1)抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体を用いた免疫細胞染色
まず、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を調製する。浮遊細胞についてはそのまま、付着細胞についてはトリプシンEDTAにて細胞をはがした後、免疫細胞染色用緩衝液(1%BSA 、0.02%EDTA 、0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS )などに懸濁し、1×10〜2×10個ずつに分注する。1(4)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは2(9)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体産生形質転換株の培養上清、または1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体、または公知の方法(酵素抗体法:学際企画刊 1985年)でビオチン標識した該抗体を0.1〜50μg/mlの濃度になるように免疫細胞染色用緩衝液あるいは10%動物血清を含む免疫細胞染色用緩衝液を用いて希釈したものを20〜500μl ずつ分注し、氷冷下で30分間反応させる。1(4)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは2(9)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体産生形質転換株の培養上清、または1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体を反応させた場合、免疫細胞染色用緩衝液で細胞を洗浄後、FITCあるいはフィコエリスリンなどの蛍光色素で標識した抗マウスイムノグロブリン抗体、抗ラットイムノグロブリン抗体あるいは抗ヒトイムノグロブリン抗体を0.1〜50μg/ml程度の濃度で含む免疫細胞染色用緩衝液を50〜500μlずつ分注し、氷冷下で30分間遮光して反応させる。また、ビオチン標識した該抗体を反応させた場合、FITCあるいはフィコエリスリンなどの蛍光色素で標識したストレプトアビジンを50〜500μl ずつ分注し、氷冷下で30分間遮光して反応させる。反応後は、よく免疫細胞染色用緩衝液で洗浄し、セルソーターにより解析する。
(2)ウエスタンブロット法によるヒトVEGF受容体Flt-1の検出
ヒトVEGF受容体Flt-1を発現している細胞、例えばヒトVEGF受容体Flt-1発現N IH3T3 細胞(NIH3T3-Flt-1と称す)、およびコントロール細胞、例えばNIH3T3細胞(NIH3T3-Neoと称す)[Oncogene, 10, 135 (1995)]等より、細胞膜成分を調製し、還元条件下でレーンあたりの蛋白質量として0.1〜30μgの膜成分をSDS-PAGE法により泳動する。泳動された蛋白質をPVDF膜にトランスファーし1 %BSAを含むPBSに室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。1(4)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは2(9)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト化抗体産生形質転換株の培養上清、または1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体を反応させ、0.05% Tween を含むPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識した抗マウスIgG、抗ラットIgGまたは抗ヒトIgGを室温で2 時間反応させる。0.05% Tween を含むPBS で洗浄し、ECL Western blotting detection reagents (Amersham社製) 等を用いて、抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体が結合したバンドを検出する。
(3)抗ヒトVEGF受容体Flt-1抗体による可溶性VEGF受容体Flt-1定量
1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体を一次抗体として適当なプレートにコートし、1(1) で得られたヒトVEGF受容体Flt-1またはヒトVEGF受容体Flt-1と他の蛋白質との融合蛋白質などの組換え蛋白質 0.056〜10000ng/ml 、もしくはヒト血清などの検体を反応させる。プレートをよく洗浄した後、さらに第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体のうち一次抗体として使用した抗体とは異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体またはヒト化抗体を反応させた後、標識物質に応じた反応を行なう。精製可溶性VEGF受容体Flt-1に対する反応性をもとに検量線を描き、検体中の可溶性VEGF受容体Flt-1濃度を算出する。
ヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1との結合を阻害する方法については、以下の方法があげられる。
(4)抗体を用いたVEGF−VEGF受容体Flt-1結合阻害試験
96ウェル・マルチスクリーン・IPプレート(96-well MultiScreen-IP Plate;ミリポア社製)にメタノールを100 μl/ウエルで分注し、プレート底部のPVDF膜を親水化する。水で洗浄後、PBS で0.1〜10μg/mlの濃度に希釈したヒトVEGF受容体Flt-1またはヒトVEGF受容体Flt-1と他の蛋白質との融合蛋白質などの組換え蛋白質を、50μl/ウェルで分注し、4 ℃で一晩放置して吸着させる。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA) を含むPBS を100μl/ ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックする。PBSで洗浄後、前記1(4)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは前記2(9)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト化抗体産生形質転換株の培養上清、または前記1(6)、2(9)あるいは3(4)で得られた精製抗体を50μl/ウェルで分注し、さらに、0.1〜10ng/ml の125I標識VEGF(アマシャム社製)を50μl/ウェル加え、室温で1.5 時間反応させる。0.05%tween-PBSで洗浄後、50℃でウエルを乾燥させ、シンチレーターを20から100μl/ウエル加え、各ウエルに結合した125I標識VEGFの放射活性をトップカウント(パッカード社製)等を用いて測定する。
7.乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成に基づく疾患、異常な血管新生により病態が進行する疾患の診断方法
乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成に基づく疾患、異常な血管新生により病態が進行する疾患の診断方法としては、被験者の細胞あるいは組織に存在するヒトVEGF受容体Flt-1を、本発明の抗体またはペプチドを用いて、上述した免疫学的に検出または定量する方法があげられる。
以下、本発明の実施例を示す。
1.抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体をコードするcDNAの単離および解析
(1)抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体生産ハイブリドーマからのmRNAの取得
インビトロジェン社製のmRNA抽出キットであるFast Trackを用い、キットに添付の使用説明書に従って、参考例1で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750生産ハイブリドーマ(それぞれFERM BP-5698、FERM BP-5700)の各1×108 細胞より、それぞれmRNAを取得した。
(2)抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体生産ハイブリドーマの重鎖および軽鎖cDNAライブラリーの作製
実施例1の1(1)で取得したKM1732およびKM1750のmRNAの各5μgから、cDNA Synthesis Kit(ファルマシア バイオテク社製)を用い、キットに添付の使用説明書に従って、両端にEcoRI-NotIアダプターを有するcDNAをそれぞれ合成した。作製したそれぞれのcDNAの約6μgを10μlの滅菌水に溶解後、アガロースゲル電気泳動にて分画し、IgG型抗体の重鎖(以下、H鎖と表記する)に対応する約1.5kbのcDNA断片と軽鎖(以下、L鎖と表記する)に対応する約1.0kbのcDNA断片をそれぞれ約0.1μg回収した。次に、それぞれの約1.5kbのcDNA断片0.1μgおよび約1.0kbのcDNA断片0.1μgと、Lambda ZAPII Vector(Lambda ZAPII Vector をEcoRIで切断後、Calf Intestine Alkaline Phosphataseで処理したもの:ストラタジーン社製)の1μgをT4 Ligase緩衝液(宝酒造社製)11.5μlに溶解し、T4 DNA Ligase(宝酒造社製)175単位を加えて、12℃にて24時間インキュベートし、さらに室温にて2時間インキュベートした。それぞれの反応液のうち4μlを常法(モレキュラー・クローニング 第2版)に従い、Gigapack Gold Packaging Kit(ストラタジーン社製)を使用してラムダファージにパッケージングし、これらを常法(モレキュラー・クローニング 第2版)に従って、Gigapack Gold Packaging Kit(ストラタジーン社製)に付属の大腸菌株XL1-Blue[バイオテクニクス(Biotechniques), 5, 376 (1987)]に感染させて、KM1732およびKM1750のH鎖cDNAライブラリーおよびL鎖cDNAライブラリーとしてそれぞれ約4×103 個のファージクローンを取得した。
(3)抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体生産ハイブリドーマのH 鎖およびL鎖をコードするcDNAのクローニング
実施例1の1(2)で作製したそれぞれのファージを常法(モレキュラー・クローニング 第2版)に従い、ニトロセルロースフィルター上に固定した。各ニトロセルロースフィルターを用いてECL direct nucleic acid labelling and detection systems(アマシャム社製)に添付の使用説明書に従い、マウス免疫グロブリンの定常領域(以下、C領域と表記する)をコードするcDNA[H鎖はマウスCγ1cDNAの断片[セル(Cell), 18, 559 (1979)]、L鎖はマウスCκのcDNAの断片[セル(Cell), 22, 197 (1980)]をプローブとしてそれと強く結合したファージクローンを取得した。次に、Lambda ZAPII Vector(ストラタジーン社製)に添付の使用説明書に従い、ファージクローンをプラスミドpBluescriptSK(-)に変換し、最終的にKM1732のH鎖をコードするcDNAを含む組換えプラスミドKM1732HA2およびKM1732のL鎖をコードするcDNAを含む組換えプラスミドKM1732L2-1、KM1750のH鎖をコードするcDNA含む組換えプラスミドKM1750H2-1およびKM1750のL鎖をコードするcDNAを含む組換えプラスミドKM1750L3-1を取得した。組換えプラスミドKM1732HA2を有する大腸菌XL1-Blue MRF'/KM1732HA2、組換えプラスミドKM1732L2-1を有する大腸菌XL1-Blue MRF'/KM1732L2-1、組換えプラスミド1750H2-1を有する大腸菌XL1-Blue MRF'/KM1750H2-1および組換えプラスミドKM1750L3-1を有する大腸菌XL1-Blue MRF'/KM1750L3-1を有する大腸菌株は、それぞれFERM BP-6354、FERM BP-6352、FERM BP-6353、FERM BP-6355として、平成10年5月14日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
(4)抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体のH鎖およびL鎖をコードするcDNAの可変領域の塩基配列の決定
実施例1の1(3)で得られた各抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体のH 鎖およびL鎖をコードするcDNAの可変領域(以下、V領域と表記する)の塩基配列を、得られたプラスミドの0.1μgを用いてBigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(アプライド バイオシステムズ社製)に添付の説明書に従って反応後、ABI PRISMTM377(アプライド バイオシステムズ社製)により電気泳動し、決定した。決定したそれぞれのcDNAの塩基配列より、KM1732およびKM1750のH鎖のV領域(以下、VHと表記する)およびL鎖のV領域(以下、VLと表記する)のアミノ酸配列を決定した。配列番号1にKM1732のVH、配列番号2にKM1732のVL、配列番号3にKM1750のVH、配列番号4にKM1750のVLのそれぞれの塩基配列を、配列番号86にKM1732のVH、配列番号87にKM1732のVL、配列番号88にKM1750のVH、配列番号89にKM1750のVLのそれぞれのアミノ酸配列を示す。
(5)抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体のH鎖およびL鎖のCDR 配列の同定
実施例1の1(4)で決定した各抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列より、それぞれのVHおよびVLのCDR 配列を既知の抗体のV領域のアミノ酸配列(シーケンシズ・ オブ・ プロテインズ・ オブ・イムノロジカル・インタレスト)と比較することによって同定した。配列番号5、6および7にKM1732のVHのCDR1、2 および3、配列番号8、9および10にKM1732のVLのCDR1、2 および3、配列番号11、12および13にKM1750のVHのCDR1、2 および3、配列番号14、15および16にKM1750のVLのCDR1、2 および3のそれぞれのアミノ酸配列を示す。
2.抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の製造
ヒトVEGF受容体Flt-1の生物活性を阻害する活性を有する抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550を以下のようにして製造した。
(1)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX1732の構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用タンデムカセットベクターpKANTEX93および実施例1の1項で得られたプラスミドKM1732HA2およびKM1732L2-1を用いて抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX1732を以下のようにして構築した。
プラスミドpBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)の3μgを10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTT からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス- 塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01% トライトンX-100からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約2.95kbのApaI-NotI 断片を約2μg回収した。次に、プラスミドKM1732HA2の5μgを20mMトリス-酢酸(pH7.9)、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NlaIV(ニューイングランドバイオラブズ社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01% トライトンX-100からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.41kbのNlaIV-NotI断片を約0.5μg回収した。次に、配列番号17、18に記載の塩基配列を有する合成DNAを合成し(サワディー・テクノロジー社製)、各合成DNA の0.3μgずつを15μlの滅菌水に加え、65℃で5 分間加熱した。該反応液を室温にて30分間放置した後、10倍緩衝液[500mMトリス- 塩酸(pH7.6)、100mM 塩化マグネシウム、50mM DTT]2μlと10mM ATP 2μlを加え、更に10単位のT4polynucleotide kinase(宝酒造社製)を加えて37℃で30分間反応させ、5'末端をリン酸化した。
上記で得られたプラスミドpBluescript SK(-) 由来のApaI-NotI断片0.1μgとプラスミドKM1732HA2 由来のNlaIV-NotI断片0.1μgとリン酸化合成DNA0.05μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図1に示したプラスミドpBS1732Hを得た。
次に、WO97/10354に記載のプラスミドphKM1259LV0の3μgを50mMトリス- 塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/mlBSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約2.95kbのEcoRI-SplI断片を約2μg回収した。次に、プラスミドKM1732L2-1の5 μg を10mMトリス- 塩酸(pH7.5)、100mM 塩化マグネシウム、1mM DTTからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素MboII(東洋紡績社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.38kbのMboII-EcoRI 断片を約0.5μg回収した。次に、配列番号19、20に記載の塩基配列を有する合成DNA を合成し(サワディー・テクノロジー社製)、各合成DNA の0.3μgずつを15μlの滅菌水に加え、65℃で5 分間加熱した。該反応液を室温にて30分間放置した後、10倍緩衝液[500mMトリス-塩酸(pH7.6)、100mM 塩化マグネシウム、50mM DTT]2μlと10mM ATP 2μlを加え、更に10単位のT4 polynucleotide kinase(宝酒造社製)を加えて37℃で30分間反応させ、5'末端をリン酸化した。
上記で得られたプラスミドphKM1259LV0 由来のEcoRI-SplI断片0.1μg、プラスミドKM1732L2-1由来のMboII-EcoRI 断片0.1μgおよびリン酸化合成DNA0.05μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図2に示したプラスミドpBS1732Lを得た。
次に、ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93 の3μgを10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTT からなる緩衝液10μl に加え、更に10単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01% トライトンX-100 からなる緩衝液10μl に加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約12.75kb のApaI-NotI断片を約1μg回収した。次に、上記で得られたプラスミドpBS1732Hの5μgを10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTTからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01% トライトンX-100からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.46kbのApaI-NotI断片を約0.5μg回収した。
上記で得られたヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93 由来のApaI-NotI 断片0.1μgとプラスミドpBS1732H由来のApaI-NotI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図3に示したプラスミドpKANTEX1732Hを得た。
次に、上記で得られたプラスミドpKANTEX1732Hの3μgを50mMトリス- 塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI (宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約13.20kb のEcoRI-SplI断片を約1μg回収した。次に、上記で得られたプラスミドpBS1732Lの5μgを50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1 時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.39kbのEcoRI-SplI断片を約0.5μg回収した。
上記で得られたプラスミドpKANTEX1732H由来のEcoRI-SplI断片0.1μg、プラスミドpBS1732L由来のEcoRI-SplI断片0.1μgを全量10μl の滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図4に示したプラスミドpKANTEX1732を得た。
(2)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX1750の構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用タンデムカセットベクターpKANTEX93および実施例1の1項で得られたプラスミドKM1750H2-1およびKM1750L3-1を用いて抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX1750を以下のようにして構築した。
プラスミドKM1750H2-1の5μgを33mMトリス-酢酸(pH7.9)、10mM酢酸マグネシウム、66mM酢酸カリウムおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素Alw26I(ニューイングランドバイオラブズ社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01%トライトンX-100 からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.41kbのAlw26I-NotI 断片を約0.5μg回収した。次に、配列番号21、22に記載の塩基配列を有する合成DNAを合成し(サワディー・テクノロジー社製)、各合成DNA の0.3μgずつを15μlの滅菌水に加え、65℃で5 分間加熱した。該反応液を室温にて30分間放置した後、10倍緩衝液[500mMトリス-塩酸(pH7.6)、100mM 塩化マグネシウム、50mM DTT]2μlと10mM ATP 2μlを加え、更に10単位のT4 polynucleotide kinase(宝酒造社製)を加えて37℃で30分間反応させ、5'末端をリン酸化した。
実施例1の2(1)で得られたプラスミドpBluescript SK(-) 由来のApaI-NotI断片0.1 μg とプラスミドKM1750H2-1由来のAlw26I-NotI断片0.1μgとリン酸化合成DNA0.05μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図5に示したプラスミドpBS1750Hを得た。
次に、プラスミドKM1750L3-1の5μgを100mM トリス-塩酸(pH8.8)、440mM 塩化ナトリウム、12mM塩化マグネシウム、14mM 2-メルカプトエタノールおよび200μg/ml BSAからなる緩衝液10μl に加え、更に10単位の制限酵素MaeII(ベーリンガー・マンハイム社製)を加えて50℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.38kbのMaeII-EcoRI断片を約0.5μg回収した。次に、配列番号23、24に記載の塩基配列を有する合成DNAを合成し(サワディー・テクノロジー社製)、各合成DNA の0.3μgずつを15μlの滅菌水に加え、65℃で5 分間加熱した。該反応液を室温にて30分間放置した後、10倍緩衝液[500mMトリス-塩酸(pH7.6)、100mM 塩化マグネシウム、50mM DTT]2μlと10mM ATP 2μlを加え、更に10単位のT4 polynucleotide kinase(宝酒造社製)を加えて37℃で30分間反応させ、5'末端をリン酸化した。
実施例1の2(1)で得られたプラスミドphKM1259LV0 由来のEcoRI-SplI断片0.1μg、プラスミドKM1750L3-1由来のMaeII-EcoRI 断片0.1μgおよびリン酸化合成DNA0.05μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図6に示したプラスミドpBS1750Lを得た。
次に、上記で得られたプラスミドpBS1750Hの5μgを10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTTからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01% トライトンX-100 からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.46kbのApaI-NotI断片を約0.5μg回収した。
実施例1の2(1)で得られたヒト化抗体発現用タンデムカセットベクターpKANTEX93 由来のApaI-NotI断片0.1μgとプラスミドpBS1750H由来のApaI-NotI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図7に示したプラスミドpKANTEX1750Hを得た。
次に、上記で得られたプラスミドpKANTEX1750Hの3μgを50mMトリス-塩酸(pH7.5 )、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI (宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約13.20kb のEcoRI-SplI断片を約1μg回収した。次に、上記で得られたプラスミドpBS1750Lの5μgを50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.39kbのEcoRI-SplI断片を約0.5μg回収した。
上記で得られたプラスミドpKANTEX1750H由来のEcoRI-SplI断片0.1μg、プラスミドpBS1750L由来のEcoRI-SplI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図8に示したプラスミドpKANTEX1750 を得た。
(3)pKANTEX1732 およびpKANTEX1750 を用いた抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型キメラ抗体のラットミエローマYB2/0細胞(ATCC CRL1581)での発現
YB2/0細胞への抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体発現ベクターpKANTEX1732およびpKANTEX1750の導入は宮地らの方法に従い、エレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology), 3, 133 (1990)]にて行った。
実施例1の2項(1)、(2)で得られたpKANTEX1732およびpKANTEX1750の5μgを4×106 個のYB2/0細胞へ導入後、40mlのRPMI1640-FCS(10)培地[牛
胎児血清(FCS)を10%含むRPMI1640培地(日水製薬社製)]に懸濁し、96ウェルマイクロタイタープレート(スミロン社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO2 インキュベーター内で37℃、24時間培養後、ジェネティシン(以下、G418と表記する、ギブコ社製)を0.5mg/mlになるように添加してさらに1〜2週間培養した。G418耐性を有する形質転換株のコロニーが出現し、コンフルエントになったウェルより培養上清を回収し、上清中の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の活性を以下に示す酵素免疫測定法により測定した。
酵素免疫測定法
可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nは、Tanakaらの方法[ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ(Japanese Journal of Cancer Research), 88, 867-876 (1997)]に従い調製した。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBSで希釈した1μg/mlの可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSAを含むPBS(以下、1%BSA-PBSと表記する)を100μl/ウェル加え、室温で1 時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、形質転換株の培養上清を50μl/ウェルで分注し、室温で1時間反応させた。0.05%tween20を含むPBS(以下、0.05%tween-PBSと表記する)で洗浄後、1%BSA-PBSにて3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(アメリカン コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05% tween-PBS で洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6- スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nm の吸光度をEmax(モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
培養上清中に抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の活性が認められた形質転換株について、生産性を上げる目的で、0.5mg/ml G418および50nMメソトレキセート(以下、MTXと表記する、シグマ社製)を含むRPMI1640-FCS(10)培地に懸濁し、5%CO2 インキュベーター内で37℃、1 〜2週間培養し、50nM MTX耐性を有する形質転換株を誘導した。形質転換株がウェルにコンフルエントになった時点で培養上清中の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の活性を上記の酵素免疫測定法により測定した。活性の認められた形質転換株については、上記と同様の培養方法により、さらにMTX 濃度を100nM、200nMと上げて行き、0.5mg/ml G418および200nM MTXを含むRPMI1640-FCS(10)培地で増殖可能でかつ、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株については2回の限界希釈法によるクローニングを経て、最終的な抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体を生産する形質転換細胞株とした。発現ベクターpKANTEX1732を導入して得られた形質転換細胞株、すなわち、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732由来の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体を生産する形質転換株の例としてはKM2532があげられ、それが生産する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体をKM2532と命名した。また、発現ベクターpKANTEX1750を導入して得られた形質転換細胞株、すなわち抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750由来の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体を生産する形質転換株の例としてはKM2550があげられ、それが生産する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体をKM2550と命名した。得られた各形質転換細胞クローンの抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の生産性は約5μg/106 細胞/24時間であった。
(4)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の培養上清からの精製
実施例1の2(3)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体生産株KM2532およびKM2550を0.5mg/ml G418 および200nM MTX含むGIT培地(日本製薬社製)に1 〜2 ×105 細胞/mlとなるように懸濁し、175cm2フラスコ(グライナー社製)に200mlずつ計5本に分注した。5%CO2 インキュベーター内で37℃、5 〜7 日間培養し、コンフルエントになった時点で各培養上清約1.0Lを回収した。カラムに約1mlのプロセップA(バイオプロセッシング社製)を充填し、10mlの1グMリシン-0.15M NaCl(pH8.6)を用いて1ml/分の流速でカラムを洗浄した。洗浄後、上記のように調製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550を含む培養上清をそれぞれ1700、1800mlを70ml/時の流速でプロセップA カラムに通塔した。さらに10mlの1Mグリシン-0.15M NaCl(pH8.6 )を用いて1ml/分の流速で洗浄した後、pH6、pH5およびpH4の50mMクエン酸緩衝液各4mlで段階的に洗浄し、50mMクエン酸緩衝液(pH3.0)を7ml 通塔してヒト型キメラ抗体を溶出した。その結果、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550がそれぞれ0.4mg、0.3mg得られた。
精製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550は、SDS-PAGE法で解析した。SDS-PAGEは公知の方法[アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research), 12, 1121 (1992)]に従った。ゲルには5〜20%グラジエントゲル(アトー社製)を、分子量マーカーとしては低分子量タンパク質分子量マーカー「第一」II、高分子量タンパク質分子量マーカー「第一」III (第一化学薬品社製)を用い、還元および非還元条件下でレーンあたりのタンパク量として2.5μgの抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550をそれぞれ泳動し、クーマシーブリリアントブルーにて染色した。その結果を図9に示した。ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550は、非還元条件下では分子量約150キロダルトンにIgGのバンドが認められ、還元条件下では約50キロダルトンにH鎖のバンドが、約25キロダルトンにL鎖のバンドが認められた。IgG型の抗体は、還元条件下では分子間ジスルフィド結合が切断され、それぞれ2 本のH鎖およびL鎖に分解し、非還元条件下ではそれぞれ2 本のH鎖およびL鎖より構成される分子量150キロダルトンの分子として存在することと一致し、ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550は正しい構造の抗体分子であることが示された。
(5)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体のヒトVEGF受容体Flt-1 に対する結合活性
精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550のヒトVEGF受容体Flt-1に対する結合活性を以下の手順に従い、確認した。
可溶性ヒトFlt-1 7NはTanakaらの方法[ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ(Japanese Journal of Cancer Research), 88, 867-876 (1997)]に従い調製した。
まず、酵素免疫測定法を用いて96ウェルのEIA用プレートに吸着させる可溶性ヒトFlt-1 7N量を固定し、添加するヒト型キメラ抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBSで希釈した1μg/mlの可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを100μl/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBS を捨て、0.152〜333ng/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550を50μl/ウェルで分注し、室温で1時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、1%BSA-PBSにて3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(アメリカン コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05% tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6- スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nmの吸光度をEmax(モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
その結果を図10(A)に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550は抗体濃度依存的にヒトVEGF受容体Flt-1 7Nに結合した。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の結合活性はほぼ同等であった。
次に、酵素免疫測定法を用いて96ウェルのEIA用プレートに吸着させる可溶性ヒトFlt-1 7N量を変化させてヒト型キメラ抗体の結合活性を検討した。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBSで希釈した0.04〜10μg/mlの可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを100μl/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、10μg/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550を50μl/ウェルで分注し、室温で1時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、1%BSA-PBSにて3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(アメリカン コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05% tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nmの吸光度をEmax(モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
その結果を図10(B)に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550はプレートに吸着させた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nの濃度に依存した結合活性を示した。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の結合活性はほぼ同等であった。
次に、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を以下のようにして検討した。96ウェル・マルチスクリーン-IPプレート(ミリポア社製)にメタノールを100μl/ウェルで分注し、プレート底部のPVDF膜を親水化した。水で洗浄後、PBSで0.2μg/mlの濃度に希釈した可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを50μl/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。PBS で洗浄後、1%BSA-PBS溶液で希釈し0.004〜2μg/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550および精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732、KM1750を50μl/ウェルで分注し、さらに、3ng/mlの125I標識ヒトVEGF(アマシャム社製)を50μl/ウェルで加え室温で1.5時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、50℃にてウェルを乾燥させ、マイクロシンチ-O(パッカード社製)を30μl/ウェルで加え、トップカウント(パッカード社製)を用いて、各ウェルに結合した125I標識ヒトVEGFの放射活性を測定した。その結果を図11に示す。図11に示したように抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550は抗体濃度依存的にヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合を阻害した。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550は、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750と同等のヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を示し、ヒト型キメラ抗体はマウスモノクローナル抗体の活性を保持していることが示された。
(6)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の認識するエピトープの解析
(6-1)可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7N、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2の調製
可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7N、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2を以下のようにして調製した。
(6-2)可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7N発現ベクターの構築
ヒトVEGF受容体KDRのシグナルペプチドを構成する19アミノ酸及び成熟体のN末端アミノ酸から738番目に相当する可溶性ヒトVEGF受容体KDR断片(以下、可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nと称す)及びリンカー由来の2アミノ酸残基を発現するためのベクターを以下の手順で作製した。
可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nは、可溶性ヒトVEGF受容体KDRの細胞外領域のN末端側から7個のイムノグロブリン様部位より構成される。
ヒトVEGF受容体KDRの完全長cDNAをコードするcDNAクローンBCMGS-neo-KDR[Cell Growth & Differentiation 7, 213 (1996)]をEcoRIで切断し、KDRの細胞外領域及び膜結合領域をコードする約2.8 kbの断片をpUC18のEcoRI部位に組み込むことによって、pUC-KDRを作製した。pUC-KDRをXhoIで切断し、Klenow処理後、XbaIリンカー(配列番号57)を挿入することによってpUC-KDR-Xbを作製した。pUC-KDR-XbのXbaI-BamHI(2.3 kbp)断片をpBluescriptII KS(+)のXbaI/BamHI部位に挿入した後、SphI-BamHI(5.2kbp)断片を調製し、SnaBI部位を含む合成リンカー(配列番号58及び配列番号59)を挿入し、pBS-KDR-Xb-Sを作製した。
pBS-KDR-Xb-SをSnaBI/BamHIで切断し、終止コドンとNotI部位とを含む合成リンカー(配列番号60及び配列番号61)を組み込み、pBS-KDR(Xb)-S-Nを作製した。pBS-KDR-Xb-S-NのXbaI-NotI(2.3kb)断片をバキュロウイルス組み換えpVL1393プラスミドのポリヘドリン(Polyhedrin)遺伝子の転写開始点の下流5'側XbaI及び3'側NotI部位に組み込み、可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7N発現ベクターpVL-KDR-7Nを作製した。
(6-3)可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2発現ベクターの構築可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1のシグナル配列を含むN末端から750番目に相当する可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nのうち、N末端から2番目のイムノグロブリン様部位に相当する、100番目のアミノ酸から204番目のアミノ酸を、それぞれ2アミノ酸からなるリンカー(Gly-Ala,Gly-Thr)を介して、可溶性ヒトVEGF受容体KDRの2番目のイムノグロブリン様部位に相当する、95番目のアミノ酸から199番目のアミノ酸に置換したキメラタンパク質Flt-1.K2を発現させるためのベクターを以下の手順で作製した。
ヒトflt-1cDNA[Oncogene, 5, 519 (1990)]のEcoRI/HindIII(1.9 kb)断片をベクターM13mp1のEcoRI/HindIIIに挿入し、pM13-fltを作製した。pM13-fltを大腸菌XL1Blueに感染させ、宝酒造製の部位特異的変異導入用キットMutanK添付のマニュアルに従って、培養上清よりssDNAを調製した。本ssDNAを鋳型として、56塩基から成るオリゴヌクレオチド(配列番号62)及び部位特異的変異導入用キットMutanK(宝酒造製)を用い、宝酒造製の部位特異的変異導入用キットMutanK添付のマニュアルに従って部位特異的変異を行い、Flt-1の細胞外領域の2番目のイムノグロブリン様部位をコードする領域を欠失させた変異Flt-1遺伝子を運ぶプラスミド(pM13-flt’-D2N)を作製した。次に、BCMGSneo-KDR[Cell Growth and Diff., 7, 213, (1996)]DNA 10ngを鋳型として用い、配列番号63及び配列番号64に示した塩基配列を有するプライマー各10 pmol、TaqDNAポリメラーゼバッファー、及び、10mMデオキシヌクレオチド三リン酸を含む溶液100 mlに2.5 unitsのTaqDNAポリメラーゼを添加し、PCR反応を行った。反応は、95℃で90秒間、50℃で90秒間、72℃で90秒間の反応を30回繰り返し、増幅した、KDRの細胞外領域のN末端側から2番目のイムノグロブリン様部位をコードするDNA断片を回収した。該DNA断片をNarI/KpnIで切断し、340bpのNarI/KpnI断片を得た。該DNA断片及び、pM13-flt’-D2NのSmaI/NarI(0.5 kb)断片を、pBluescriptIIのSmaI/KpnI部位に挿入し、pBS-flt-1’-KDR2Nを作製した。pBS-flt-1’-KDR2NのBamH/KpnI(0.8kb)断片、pM13-flt’-D2NのKpnI/MunI(80 b)断片、及び、pVL-flt-1のMunI/NotI(1.5 kb)断片を、pVL1393のBamHII/NotI部位に挿入し、Flt-1.K2遺伝子を運ぶプラスミドPVL-fkfを作製した。
(6-4)昆虫細胞による可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nおよび可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2発現を行うための組み換えウィルスの作製
昆虫細胞による蛋白質の生産には目的遺伝子を組み込んだ組み換えウィルスの作製が必要であるが、その作製にはトランスファーベクターと呼ばれる目的蛋白質をコードするcDNAを特殊なプラスミドに組み込む過程と野生型ウィルスとトランスファーベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションし、相同組み換えにより組み換えウィルスを取得する過程を経る。以上の過程をファーミンジェン社製バキュロゴールドスターターキット(製品番号PM-21001K)を用いてそのマニュアルに従い以下の手順で行った。
TMN-FHインセクトメディウム(ファーミンジェン社製)にて培養した昆虫細胞Sf9(ファーミンジェン社製)に線状バキュロウィルスDNA [バキュロゴールド・バキュロウィルスDNA(BaculoGold baculovirus DNA)、ファーミンジェン社製]および作製したトランスファーベクターDNAをリポフェクチン法にて導入すること[蛋白質核酸酵素、37, 2701 (1992)]により、組み換えバキュロウィルスを以下のようにして作製した。
(6-2)で作製した発現ベクターの1μgと線状バキュロウィルスDNAの20ngとを12μlの蒸留水に溶解し、さらにリポフェクチン6μl と蒸留水6μl とを混和したものを加え室温で15分間放置した。一方Sf9 細胞1×106個を2mlのSf900-II培地[ギブコ(Gibco)社製]に懸濁し、直径35mmの細胞培養用プラスチックシャーレに入れた。ここに上記のプラスミドDNA、線状バキュロウィルスDNAおよびリポフェクチン混和溶液全量を加え27℃で3日間培養後、組み換えウィルスを含む培養上清1ml を採取した。シャーレには新たにSf900-II培地1mlを加え、さらに27℃で3日間培養し組み換えウィルスを含む培養上清をさらに1.5ml得た。さらに、(6-3)で作製した発現ベクターを用い同様の操作を行った。
次に蛋白質発現に用いるため、得られた組み換えウィルスを各々、以下の手順で増殖させた。
Sf9細胞2×107個を10mlのSf900-II培地に懸濁し、175cm2フラスコ(グライナー社製)に入れて室温で1時間放置して細胞をフラスコに付着させた。放置後上清を除き新たに15mlのTMN-FHインセクトメディウムと上記の組み換えウィルスを含む培養上清のうち1mlを加え27℃で3日間培養した。培養後上清を1500×gで10分間遠心分離して細胞を除き、蛋白質発現に使用する組み換えウィルス溶液を得た。
得られた組み換えウィルス溶液についてウィルスの力価をバキュロゴールドスターターキット・マニュアル(ファーミンジェン社製)に記載の方法で算定した。
Sf9細胞6×106個を4mlのSf900-II培地に懸濁し、直径60mmの細胞培養用プラスチックシャーレに入れ、室温で1 時間放置して細胞をシャーレに付着させた。次に上清を除き新たにSf900-II培地400μlとSf900-II培地で1000倍に希釈した上記組み換えウィルス溶液を加え室温で1時間放置した後、培地を除き5mlの1%低融点アガロース[アガープラーク・アガロース(Agarplaque Agarose)、ファーミンジェン社製]を含む培地(滅菌した1mlの5%アガープラークプラス・アガロース水溶液と4mlのTMN-FHインセクトメディウムを混和し、42℃に保温したもの)を該シャーレに流し込んだ。室温で15分間放置した後、乾燥を防ぐためビニルテープをシャーレに巻き、密閉可能なプラスチック製容器に該シャーレを入れ、27℃で6日間培養した。該シャーレに0.01%ニュートラルレッドを含むPBS 1mlを加えさらに1日間培養した後、出現したプラークの数を数えた。以上の操作より該組み換えウィルス溶液はいずれも約1×107プラークフォーミングユニット(以下、PFU と称す)/mlのウィルスを含んでいることがわかった。
(6-5)昆虫細胞における可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7N、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2の発現および精製
可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nおよび可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2は以下のようにして得た。High Five細胞4×107個を175cm2フラスコ(グライナー社製)中のEX-CELLTM400培地(JRH Bioscience社製)30mlに懸濁し、室温で1時間放置し、フラスコに付着させた。(6−3)および(6−4)で得られたトランスファーベクター由来の組み換えウィルスを約1〜3×108PFU /mlの濃度で含む溶液を1ml加え、室温で2時間感染させた。培養上清を除き新たに30mlのEX-CELLTM400培地30mlを加え27℃にて3〜4日間培養した。培養終了後、培養上清を回収し1500×gで10分間遠心分離を行い上清を得た。
可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nについては、以下のようにして精製した。
50mlのDEAE-Sepharose CL-6B(Pharmacia Biotech社製)を充填したカラムが液の入口側に、40mlのHeparin Sepharose CL-6B(Pharmacia Biotech社製)を充填したカラムが出口側になるように直列に接続し、300mlの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8)で洗浄した。洗浄後、可溶性ヒトVEGF受容体KDRを含む培養液400〜800mlを50〜100ml/時の流速で通塔した。更に、300mlの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8)で洗浄した後、Heparin Sepharose CL-6Bカラムのみに400mlの0〜1M NaCl/20mMリン酸ナトリウム緩衝液にて連続濃度勾配をかけ、吸着蛋白質の溶出を行った。溶出液は7mlずつ分画し、各分画に含まれる蛋白質をSDS-PAGEにて解析し、可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nを含む分画を60〜80ml回収した。回収した精製画分はセントリプレップ10(アミコン社製)を用いて濃縮し、可溶性ヒトVEGF受容体KDR 7Nを溶液として4.8ml(蛋白質濃度は815μg/ml、純度は70〜80%)得た。
可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2については、以下のように精製した。
カラムに約20mlのヘパリン−セファロースCL-6B ゲル[ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech) AB社製]を充填し、100ml の20mMトリス−塩酸(pH7.5) 緩衝液を用いて0.5ml/分の流速でカラムを洗浄した。洗浄後、上記のように調製した可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2を含む培養液900mlを0.5ml/分の流速でヘパリン−セファロースCL-6B カラムに通塔した。さらに100mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5)を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した後、濃度勾配が0 M〜1.5MのNaCl含有20mMトリス−塩酸(pH7.5)からなる緩衝液を200 ml通塔し、ヘパリン−セファロースに吸着した蛋白質の溶出を行うと共に8mlずつ溶出液を分画した。各分画に含まれる蛋白をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にて解析し、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2を含む分画を50〜70ml回収し、セントリプレップ10(アミコン社製)を用いて濃縮した。濃縮後、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2を溶液としてそれぞれ5.8ml(蛋白濃度は588μg/ml、純度65〜75%)得た。
(6-6)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体の認識するエピトープの解析
精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550の認識するエピトープを以下の手順に従い解析した。
可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N(シグナル配列を含むN末端アミノ酸から750番目に相当)、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3N(シグナル配列を含むN末端アミノ酸から338番目に相当)、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 2N(シグナル配列を含むN末端アミノ酸から223番目に相当)はTanakaらの方法[Japanese Journal of Cancer Research, 88, 867 (1997)]に従い調製した。可溶性ヒト受容体KDR 7N(シグナル配列を含まないN末端アミノ酸から738番目に相当)、可溶性ヒトVEGF受容体キメラタンパク質Flt-1 7N.K2(ヒトFlt-1 7Nのアミノ酸100〜204番目をリンカーを介してヒトKDRのアミノ酸95〜199番目に変換したもの)は(6-5)に従い調製した。実験に用いた可溶性ヒトVEGF受容体各種誘導体の模式図は図32に示した。
まず、酵素免疫測定法を用いて抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732、KM1750および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の反応性を比較した。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBSで希釈した4μg/mlのFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nをそれぞれ50μl/ウェルで分注し、4 ℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを100μl/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、0.1μg/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732またはKM1750、あるいは、精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532またはKM2550を50μl/ウェルで分注し、室温で1時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、1%BSA-PBS にて400倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ダコ社製)あるいは3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(アメリカン・コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05%tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nmの吸光度をEmax (モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
その結果を図30に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732、KM1750および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550はFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2Nに結合し、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nには結合しなかった。従って、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732、KM1750および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の認識するエピトープは、ヒトFlt-1のN末端アミノ酸から100〜204番目までの領域に含まれることが示された。
次に、酵素免疫測定法を用いて96ウェルのEIA 用プレートに吸着させるFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7N量を一定にし、添加するヒト型キメラ抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBS で希釈した4μg/mlのFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nをそれぞれ50μl/ウェルで分注し、4 ℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを100μ/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、0.0152〜100ng/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532またはKM2550を50μl/ウェルで分注し、室温で1 時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、1%BSA-PBSで3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG 抗体(アメリカン・コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05% tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nmの吸光度をE max(モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
その結果を図31(上図)に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550は抗体濃度依存的にFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2Nに結合し、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nには結合しなかった。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の結合活性はほぼ同等であった。
次に、酵素免疫測定法を用いて96ウェルのEIA 用プレートに吸着させるFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7N量を変化させてヒト型キメラ抗体の結合活性を検討した。96ウェルのEIA 用プレート(グライナー社製)に、PBSで希釈した0.041〜10μg/mlの可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nをそれぞれ50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA-PBSを100μl/ウェル加え、室温で1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、5μg/mlの精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532またはKM2550をそれぞれ50μl/ウェルで分注し、室温で1 時間反応させた。0.05%tween-PBS で洗浄後、1%BSA-PBS にて3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG 抗体(アメリカン・コーレックス社製)を50μl/ウェルで加えて室温で1時間反応させ、0.05% tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415nmの吸光度をEmax (モレキュラー・デバイシーズ社製)を用いて測定した。
その結果を図31(下図)に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550はプレートに吸着させた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2Nの濃度に依存した結合活性を示し、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nには反応しなかった。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の結合活性はほぼ同等であった。
3.抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の製造
ヒトVEGF受容体Flt-1に対する中和活性を有する抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732、KM1750および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550と同等の活性を有する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体を以下のようにして製造した。
(1)既知のヒト抗体のVHの共通配列を基礎とする抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVHをコードするcDNAの構築
カバットらは[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest), US Dept. Health and Human Services, 1991 、以下同様]、既知の様々なヒト抗体のVHをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループI〜III(HSG I 〜III)に分類し、各サブグループ毎に共通配列を同定した。そこで、それら共通配列を基礎として抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVHのアミノ酸配列を設計することとした。まず、基礎とする共通配列を選択するために、各サブグループのヒト抗体のVHの共通配列のフレームワーク領域(以下、FRと表記する)のアミノ酸配列と抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750のVHのFRのアミノ酸配列との間の相同性を調べた(表1)。
その結果、KM1732、KM1750ともにサブグループIと最も相同性が高いことが確認され、サブグループIの共通配列を基礎として抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVHのアミノ酸配列を設計し、そのアミノ酸配列をコードするcDNAをポリメラーゼチェーンリアクション法(以下、PCR法と表記する)を用いて以下のようにして構築した。
まず、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732のVHに由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVHをコードするcDNAの構築について以下に説明する。配列番号25から30の塩基配列を有する6本の合成DNA を合成した(サワディー・テクノロジー社製)。合成した各DNAを最終濃度が0.1μMとなるように200μM dNTP(宝酒造社製)、0.5μM M13primer RV(宝酒造社製)、0.5μM M13primer M4(宝酒造社製)および2.5単位のTaKaRa Ex Taq DNA ポリメラーゼ(宝酒造社製)を含む1倍濃度のEx Taq緩衝液(宝酒造社製)50μl に加え、50μlの鉱油で覆い、DNAサーマルサイクラーPJ480(パーキン エルマー社製)にセットし、94℃にて2分間、55℃にて2分間、72℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。該反応液をQIA quick PCR Purification Kit(キアジェン社製)を用いて添付の説明書に従い処理し、20μlの滅菌水で精製、溶出した。次に、得られた溶出液を10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTTからなる緩衝液30μlに加え、更に20単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01%トライトンX-100 からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.44kbのApaI-NotI 断片を約0.5μg回収した。
実施例1の2(1)で得られたプラスミドpBluescript SK(-)由来のApaI-NotI断片0.1μgと上記で得られたPCR増幅断片のApaI-NotI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。10個の形質転換大腸菌より各プラスミドを調製し、実施例1の1項(4)に記載の方法に従って、塩基配列を決定した結果、目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含む図12に示したプラスミドphKM1732HV0を得た。phKM1732HV0に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVH(以下、1732HV0と表記する)の塩基配列を配列番号31およびアミノ酸配列を配列番号90に示した。
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750のVHに由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVHをコードするcDNAの構築については、配列番号32から37の塩基配列を有する6本の合成DNA(サワディー・テクノロジー社製)を用いて上記と同様の反応を行い、図13に示した目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1750HV0を得た。phKM1750HV0に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVH(以下、1750HV0と表記する)の塩基配列を配列番号38およびアミノ酸配列を配列番号91に示した。
(2)既知のヒト抗体のVLの共通配列を基礎とする抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVLをコードするcDNAの構築
カバットらは既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループI〜IV(HSG I〜IV)に分類し、各サブグループ毎に共通配列を同定した。そこで、それら共通配列を基礎として抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVLのアミノ酸配列を設計することとした。まず、基礎とする共通配列を選択するために、各サブグループのヒト抗体のVLの共通配列のFRのアミノ酸配列と抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750のVLのFRのアミノ酸配列との間の相同性を調べた(表2)。
その結果、KM1732はサブグループIと最も高い相同性を示すこと、KM1750はサブグループIおよびIVとほぼ同等の高い相同性を示すことが確認され、それぞれサブグループIおよびサブグループIVの共通配列を基礎として抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVLのアミノ酸配列を設計し、そのアミノ酸配列をコードするcDNAをPCR法を用いて以下のようにして構築した。
まず、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732のVLに由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVLをコードするcDNAの構築について以下に説明する。配列番号39から44の塩基配列を有する6本の合成DNAを合成した(サワディー・テクノロジー社製)。合成した各DNAを最終濃度が0.1μMとなるように200μM dNTP(宝酒造社製)、0.5μM M13primer RV(宝酒造社製)、0.5μM M13primer M4(宝酒造社製)および2.5単位のTaKaRa Ex Taq DNA ポリメラーゼ(宝酒造社製)を含む1倍濃度のEx Taq緩衝液(宝酒造社製)50μlに加え、50μlの鉱油で覆い、DNAサーマルサイクラーPJ480(パーキン・エルマー社製)にセットし、94℃にて2分間、55℃にて2分間、72℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。該反応液をQIA quick PCR Purification Kit(キアジェン社製)を用いて添付の説明書に従い処理し、20μlの滅菌水で精製し、溶出した。次に、得られた溶出液を50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSA からなる緩衝液30μl に加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.39kbのEcoRI-SplI断片を約0.5μg回収した。
実施例1の2(1)で得られたプラスミドphKM1259LV0由来のEcoRI-SplI断片0.1μgと上記で得られたPCR増幅断片のEcoRI-SplI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。10個の形質転換大腸菌より各プラスミドを調製し、実施例1の1項(4)に記載の方法に従って、塩基配列を決定した結果、目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含む図14に示したプラスミドphKM1732LV0を得た。phKM1732LV0に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVL(以下、1732LV0と表記する)の塩基配列を配列番号45およびアミノ酸配列を配列番号92に示した。
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750のVLに由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVLをコードするcDNAの構築については、ヒトサブグループIVの共通配列を基礎として利用する場合には配列番号46から51の塩基配列を有する6本の合成DNA(サワディー・テクノロジー社製)を用いて上記と同様の反応を行い、図15に示した目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1750LV0(IV)を得た。phKM1750LV0(IV)に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVL[以下、1750LV0(IV)と表記する]の塩基配列を配列番号52、およびアミノ酸配列を配列番号93に示した。ヒトサブグループIの共通配列を基礎として利用する場合には配列番号65から70の塩基配列を有する6本の合成DNA(サワディー・テクノロジー社製)を用いて上記と同様の反応を行い、図33に示した目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1750LV0(I)を得た。phKM1750LV0(I)に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のVL[以下、1750LV0(I)と表記する]の塩基配列を配列番号71およびアミノ酸配列を配列番号94に示した。
(3)既知のヒト抗体のV 領域の共通配列を基礎とした抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターの構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用タンデムカセットベクターpKANTEX93および実施例1の3(1)、(2)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1732HV0、phKM1732LV0、phKM1750HV0、phKM1750LV0(I)およびphKM1750LV0(IV)を用いて抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターを以下のようにして構築した。
まず、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターの構築について以下に説明する。
プラスミドphKM1732HV0の5μgを10mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウムおよび1mM DTTからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素ApaI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をエタノール沈殿し、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTT、100μg/ml BSAおよび0.01%トライトンX-100からなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素NotI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.44kbのApaI-NotI断片を約0.5μg回収した。
実施例1の2(1)で得られたヒト化抗体発現用タンデムカセットベクターpKANTEX93由来のApaI-NotI断片0.1μgと上記で得られたプラスミドphKM1732HV0由来のApaI-NotI断片0.1μg を全量10μlの滅菌水に加え、DNA ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図16に示したプラスミドpKANTEX1732HV0を得た。
次に、得られたプラスミドpKANTEX1732HV0の3μgを50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI (宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約13.20kbのEcoRI-SplI断片を約1μg回収した。次に、プラスミドphKM1732LV0の5μgを50mMトリス-塩酸(pH7.5)、100mM 塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM DTTおよび100μg/ml BSAからなる緩衝液10μlに加え、更に10単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素SplI(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間反応させた。該反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約0.39kbのEcoRI-SplI断片を約0.5μg回収した。
上記で得られたプラスミドpKANTEX1732HV0由来のEcoRI-SplI断片0.1μg とプラスミドphKM1732LV0由来のEcoRI-SplI断片0.1μgを全量10μlの滅菌水に加え、DNA ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いて使用説明書に従い、連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、図17に示した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターpKANTEX1732HV0LV0を得た。
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターの構築についても、上記と同様の反応を行い、図18および図34に示した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターpKANTEX1750HV0LV0(IV)およびpKANTEX1750HV0LV0(I)を得た。
4.抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のV領域のFRのアミノ酸配列の解析とFRのアミノ酸を改変した改変型ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターの作製
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732およびKM1750のV領域のコンピューター三次元構造モデルおよび実施例1の3項で製造した各抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体のV 領域のコンピューター三次元構造モデルを構築、比較検討することにより、各抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のV領域のFRのアミノ酸配列と各抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体のV領域のFRのアミノ酸配列の間で異なっているアミノ酸残基のうち、各抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のV領域のFRのアミノ酸配列においてヒトVEGF受容体Flt-1との結合に重要と考えられるアミノ酸残基の位置を同定することを検討した。その結果、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1732に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体については、VHにおいて配列番号31に記載のアミノ酸配列の24位のアラニン、27位のチロシン、40位のアラニン、67位のアルギニン、69位のスレオニン、70位のイソロイシン、82位のグルタミン酸、93位のバリンの位置が、VLにおいて配列番号45に記載のアミノ酸配列の39位のプロリン、45位のロイシン、46位のロイシン、69位のアスパラギン酸、70位のフェニルアラニンの位置がヒトVEGF受容体Flt-1との結合において重要な役割を果たしていることが考えられた。
また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体については、VHにおいて配列番号38に記載のアミノ酸配列の3位のグルタミン、67位のアルギニン、82位のグルタミン酸、84位のセリン、95位のチロシンの位置が、VLにおいて配列番号71に記載のアミノ酸配列の17位のアスパラギン酸、18位のアルギニン、39位のプロリン、59位のセリン、69位のアスパラギン酸、70位のフェニルアラニンの位置がヒトVEGF受容体Flt-1との結合において重要な役割を果たしていることが考えられた。これらの事実は、上記で述べた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR 移植抗体の各アミノ酸残基の位置について、例えば、抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体の相当する位置に見い出されるアミノ酸残基への改変を行うことにより、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のヒトVEGF受容体Flt-1に対する結合活性を改変できることを示している。
(1)FRのアミノ酸を改変した改変型ヒト型CDR移植抗体のVHをコードするcDNAの構築
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のH鎖については、ヒトVEGF受容体Flt-1との結合において重要な役割を果たしていると考える上記に示した5つのアミノ酸残基の中で3残基(82位のグルタミン酸、84位のセリン、95位のチロシン)の位置が特に重要であると考えられるので、KM1750に見出される対応残基(82位のグルタミン、84位のアルギニン、95位のフェニルアラニン)へ置換したアミノ酸配列をコードするcDNAをPCR法を用いて以下のようにして構築した。
配列番号72から77の塩基配列を有する6本の合成DNA(サワディー・テクノロジー社製)を用いてPCR法により約0.39kbのMroI-ApaI断片を回収した。
プラスミドphKM1750HV0を制限酵素ApaIおよびMroIで処理後、約3.04kbのApaI-MroI断片を回収し、上記で得られたPCR増幅断片を連結し、得られた組換えプラスミドDNA 溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。10個の形質転換大腸菌より各プラスミドを調製し、実施例1の1項(4)に記載の方法に従って、塩基配列を決定した結果、目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含む図35に示したプラスミドphKM1750HV3を得た。
phKM1750HV3に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVH(以下、1750HV3と表記する)の塩基配列を配列番号78およびアミノ酸配列を配列番号95に示した。
(2)FRのアミノ酸を改変した改変型ヒト型CDR移植抗体のVLをコードするcDNAの構築
抗ヒトVEGF受容体Flt-1マウスモノクローナル抗体KM1750に由来する抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のL鎖については、ヒトVEGF受容体Flt-1との結合において重要な役割を果たしていると考えられる上記に示した6つのアミノ酸残基の中で4残基(17位のアスパラギン酸、18位のアルギニン、69位のアスパラギン酸、70位のフェニルアラニン)の位置がKM1750LV0(I)においては特に重要であると考えれるので、KM1750に見出される対応残基(17位のグルタミン酸、18位のグルタミン酸、69位のフェニルアラニン、70位のチロシン)へ置換したアミノ酸配列をコードするcDNAをPCR法を用いてを以下のようにして構築した。
配列番号79から84の塩基配列を有する6本の合成DNA(サワディー・テクノロジー社製)を用いて上記と同様の反応を行い、図36に示した目的のアミノ酸配列をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1750LV4を得た。phKM1750LV4に含まれる抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のVL(以下、1750LV4と表記する)の塩基配列を配列番号85およびアミノ酸配列を配列番号96に示した。
(3)FRのアミノ酸を改変した改変型ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターの構築
実施例1の4(3)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAを含むプラスミドphKM1750HV3、phKM1750LV4、および、実施例1の3(1)、(2)で得られたプラスミドphKM1750HV0、phKM1750LV0(I)、phKM1750LV0(IV)を用いて、FRのアミノ酸を改変した改変型抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターについては、実施例1の3(3)に示した方法と同様の反応を行い、図37、図38、図39および図40に示した改変型抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の発現ベクターpKANTEX1750HV3LV0(I)、pKANTEX1750HV3LV0(IV)、pKANTEX1750HV0LV4、pKANTEX1750HV3LV4を得た。
KM1750マウスH鎖、KM1750HV0、KM1750HV3のアミノ酸配列を図45に示した。KM1750マウスL鎖、KM1750LV0(I)、KM1750LV(IV)、KM1750LV4のアミノ酸配列を図46に示した。
組換えプラスミドpHKM1750HV0 を有する大腸菌DH5α/pHKM1750HV0、組換えプラスミドpHKM1750HV3 を有する大腸菌DH5α/pHKM1750HV3、組換えプラスミドpHKM1750LV0(I) を有する大腸菌XL1-Blue/pHKM1750LV0(I)、組換えプラスミドpHKM1750LV0(IV) を有する大腸菌XL1-Blue/pHKM1750LV0(IV)、組換えプラスミドpHKM1750LV4 を有する大腸菌DH5α/pHKM1750LV4は、それぞれFERM BP-6719、FERM BP-6720、FERM BP-6716、FERM BP-6717、FERM BP-6718として、平成11年5月12日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託されている。
5.抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の製造と活性評価
(1)pKANTEX1750HV0LV0(I)、pKANTEX1750HV0LV0(IV)、pKANTEX1750HV3LV0(I)、pKANTEX1750HV3LV0(IV)、pKANTEX1750HV0LV4およびpKANTEX1750HV3LV4を用いた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体のラットミエローマYB2/0細胞(ATCC CRL1581)での発現
YB2/0細胞への抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型CDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1750HV0LV0(I)、pKANTEX1750HV0LV0(IV)、pKANTEX1750HV3LV0(I)、pKANTEX1750HV3LV0(IV)、pKANTEX1750HV0LV4およびpKANTEX1750HV3LV4の導入は実施例1の1(1)に従い、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]にて行った。
実施例1の4項(3)で得られたpKANTEX1750HV0LV0(I)、pKANTEX1750HV0LV0(IV)、pKANTEX1750HV3LV0(I)、pKANTEX1750HV3LV0(IV)、pKANTEX1750HV0LV4およびpKANTEX1750HV3LV4のそれぞれ5μgを4×106個のYB2/0細胞へ導入後、40mlのRPMI1640-FCS(10)培地[牛胎児血清(FCS) を10%含むRPMI1640培地(日水製薬社製)]に懸濁し、96ウェルマイクロタイタープレート(スミロン社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO2インキュベーター内で37℃、24時間培養後、G418(ギブコ社製)を0.5mg/mlになるように添加してさらに1〜2週間培養した。G418耐性を有する形質転換株のコロニーが出現し、コンフルエントになったウェルより培養上清を回収し、上清中の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移抗体の活性を実施例1の2項(3)に示した酵素免疫測定法により測定した。
培養上清中に抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の活性が認められた形質転換株については2回の限界希釈法によるクローニングを経て、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体を生産する形質転換細胞株とした。発現ベクターpKANTEX1750HV0LV0(I)、pKANTEX1750HV0LV0(IV)、pKANTEX1750HV3LV0(I)、pKANTEX1750HV3LV0(IV)、pKANTEX1750HV0LV4、pKANTEX1750HV3LV4をそれぞれ導入して得られた形質転換株、すなわち、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1750由来の抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体を生産する形質転換株の例としてはとしてはそれぞれKM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555があげられ、それが生産する抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型CDR移植抗体をそれぞれKM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555と命名した。得られた各形質転換細胞クローンの抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体の生産性は約0.1〜1μg/mlであった。
(2)抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型CDR移植抗体の培養上清からの精製
実施例1の5(1)で得られた抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体生産株KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555を0.5mg/ml G418を含むGIT培地(日本製薬社製)に1〜2×105細胞/ml となるように懸濁し、175cm2フラスコ(グライナー社製)に200mlずつ計5本に分注した。5%CO2インキュベーター内で37℃、5〜7日間培養し、コンフルエントになった時点で各培養上清約1.1〜2.5Lを回収した。カラムに約1mlのプロセップA(バイオプロセッシング社製)を充填し、10mlの1Mグリシン-0.15M NaCl(pH8.6)を用いて1ml/分の流速でカラムを洗浄した。洗浄後、上記のように調製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体生産株KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555を含む培養上清それぞれ2.3L、2.5L、1.9L、2.4L、1.1L、2Lを70ml/時の流速でプロセップA カラムに通塔した。さらに10mlの1Mグリシン-0.15M NaCl(pH8.6)を用いて1ml/分の流速で洗浄した後、pH6、pH5、pH4の50mMクエン酸緩衝液各4mlで段階的に洗浄し、50mMクエン酸緩衝液(pH3.0)を7ml通塔してヒト型CDR移植抗体を溶出した。その結果、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555がそれぞれ1.1mg、1.8mg、1.6mg、2.2mg、1.3mg、1.6mg得られた。
精製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555は、実施例1の2項(3)に示したSDS-PAGE法で解析した。還元および非還元条件下でレーンあたりのタンパク質量として2μgの抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555、実施例1の2項(4)で示した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550およびコントロールヒト型CDR移植抗体としてヒトIgG1タイプで、ガングリオシドGM2に反応し、ヒトVEGF受容体Flt-1には反応しないKM8969(特開平10-257893)をそれぞれ泳動し、クーマシーブリリアントブルーにて染色した。その結果を図41に示した。ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555は、非還元条件下では分子量約150キロダルトンにIgGのバンドが認められ、還元条件下では約50キロダルトンにH鎖のバンドが、約25キロダルトンにL 鎖のバンドが認められた。この結果は、IgG 型の抗体は、還元条件下では分子間ジスルフィド結合が切断され、それぞれ2本のH鎖およびL鎖に分解し、非還元条件下ではそれぞれ2本のH鎖およびL鎖より構成される分子量150 キロダルトンの分子として存在することと一致し、ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555は正しい構造の抗体分子であることが示された。
(3)抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植キメラ抗体のヒトVEGF受容体Flt-1に対する結合活性
精製抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550のヒトVEGF受容体Flt-1に対する結合活性を実施例1の2項(5)の手順に従い、確認した。
プレートにコートするFlt-1 7Nは2μg/mlに固定し、精製抗体濃度を1.23〜900ng/mlまで変化させた(3倍希釈系列)。
その結果を図42に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550は抗体濃度依存的にヒトVEGF受容体Flt-1 7Nに結合した。また、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550の結合活性はほぼ同等であった。従って、本発明の6種のヒト型CDR移植抗体はヒト型キメラ抗体KM2550の有する結合活性を保持していることが明らかとなった。
次に、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550の結合特異性を検討するために、5種類の可溶性ヒトVEGF受容体誘導体タンパク質Flt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N(WO98/22616)、Flt-1 7N.K2[実施例1の2(6-5)]、KDR 7N[実施例1の2(6-5)]に対する反応性を酵素免疫測定法を用いて検討した。96ウェルのEIA 用プレートに吸着させる可溶性ヒトVEGF受容体誘導体蛋白質の濃度は10μg/ml(3倍希釈系列)に、抗体濃度は5μg/mlに固定した。
その結果を図43に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550は全て同等の反応特異性を示し、Flt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2Nに反応し、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nには全く反応しなかった。陰性コントロール抗体である抗GMヒト型CDR移植抗体KM8969(特開平10-257893)はいずれの可溶性ヒトVEGF受容体誘導体蛋白質にも反応しなかった。従って、本発明の6種のヒト型CDR移植抗体はヒト型キメラ抗体KM2550の有する結合特異性を保持していることが明らかとなった。
次に、抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を実施例1の2項(5)に記載した方法に従い検討した。添加する抗体濃度は0.0048〜15μg/ml(5倍希釈系列)とした。その結果を図44に示す。図44に示したように抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550は抗体濃度依存的にヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合を阻害した。また、従って、本発明で確立した6種のヒト型CDR移植抗体はヒト型キメラ抗体KM2550の有するVEGF-Flt-1結合阻害活性を保持していることが明らかとなった。
参考例1
1.抗原の調製
(1)可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3N発現ベクターの構築
ヒトVEGF受容体Flt-1のN末端アミノ酸から1〜338番目(シグナル配列を含む)に相当する可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1断片(以下、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3Nと称す)を発現するためのベクターを以下の手順で作製した。可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3Nは、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1の細胞外領域のN末端側から3個のイムノグロブリン様部位に相当する。
ヒトVEGF容体Flt-1の完全長cDNAをコードするcDNAクローンflt#3-7(M.Shibuyaら;Oncogene, 5, 519, 1990)をEcoRIとTaqIの両制限酵素により部分切断し、5’末端から1263bpのEcoRI-TaqI DNA断片を回収し、バキュロウイルス遺伝子組み換えベクターpVL1393プラスミド(インビトロジェン社製)のポリヘドリン(Polyhedrin)遺伝子の転写開始点の下流5’側EcoRIおよび3’側NotI部位に、人為的に終始コドンを導入したTaqI-NotIアダプター(配列番号53および配列番号54に示した塩基配列を有する合成DNA )を用いて組み込み、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3N発現ベクターpVL1393/Flt 3Nを作製した(図19)。
(2)可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N発現ベクターの構築
ヒトVEGF受容体Flt-1のN末端アミノ酸から1〜750番目(シグナル配列を含む)に相当する可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1断片(以下、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nと称す)を発現するためのベクターを以下の手順で作製した。可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nは、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1の細胞外領域の7個のイムノグロブリン様部位に相当する。
配列番号55および配列番号56に示した塩基配列を有するプライマー10 pmol、flt#3-7クローン[オンコジーン(Oncogene), 5, 519,(1990)]DNA 10 ng、および、10 mM デオキシヌクレオチド三リン酸(deoxynucleotide triphosphates)を含む10 mM MgCl2、0.001% (W/V)ゼラチン溶液100μlに2.5 units Taqポリメラーゼを加えた。反応は95℃で5分間の前処理した後に、95℃で90秒間、50℃で90秒間、最後に72℃で90秒間のポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を30回繰り返し、DNA断片を回収した。このDNA断片をHindIII(flt#3-7クローンで1893bpの位置)とNotIにより切断し、610 bpのHindIII-NotI DNA断片、すなわちflt#3-7クローンで1894-2499bp断片と終始コドンおよびNotI認識配列を含む DNA断片を回収した。次に、flt#3-7クローンをEcoRIとHindIIIの両制限酵素により切断し、5’末端から1893 bpのEcoRI-HindIII断片を回収した。続いて、610 bpのHindIII-NotI DNA断片、および、1893 bpのEcoRI-HindIII断片をバキュロウイルス遺伝子組み換えベクターpVL1393プラスミドのポリヘドリン(Polyhedrin)遺伝子の転写開始点の下流5’側EcoRIおよび3’側NotI部位に組み込み、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N発現ベクターpVL1393/Flt 7Nを作製した(図20)。
(3)昆虫細胞による可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1発現を行うための組み換えウィルスの作製
昆虫細胞による蛋白質の生産には目的遺伝子を組み込んだ組み換えウィルスの作製が必要であるが、その作製にはトランスファーベクターと呼ばれる目的蛋白質をコードするcDNAを特殊なプラスミドに組み込む過程と野生型ウィルスとトランスファーベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションし、相同組み換えにより組み換えウィルスを取得する過程を経る。以上の過程についてファーミンジェン社製バキュロゴールドスターターキット(製品番号PM-21001K )を用いてそのマニュアルに従い以下の手順で行った。
TMN-FHインセクトメディウム(ファーミンジェン社製)にて培養した昆虫細胞Sf9(ファーミンジェン社製)に線状バキュロウィルスDNA [バキュロゴールド・バキュロウィルスDNA(BaculoGold baculovirus DNA) 、ファーミンジェン社製]および作製したトランスファーベクターDNA をリポフェクチン法にて導入すること[蛋白質核酸酵素、37, 2701(1992)]により行い組み換えバキュロウィルスを以下のように作製した。
(2)で作製したpVL1393/Flt7Nあるいは(1)で作製したpVL1393/Flt3Nの1μgと線状バキュロウィルスDNA の20ngとを12μlの蒸留水に溶解し、さらにリポフェクチン6μlと蒸留水6μlとを混和したものを加え室温で15分間放置した。一方Sf9細胞1×106 個を2ml のSf900-II培地[ギブコ(Gibco) 社製]に懸濁し、直径35mmの細胞培養用プラスチックシャーレに入れた。ここに上記のプラスミドDNA 、線状バキュロウィルスDNA およびリポフェクチン混和溶液全量を加え27℃で3 日間培養後、組み換えウィルスを含む培養上清1mlを採取した。シャーレには新たにSf900-II培地1mlを加え、さらに27℃で3日間培養し組み換えウィルスを含む培養上清をさらに1.5ml得た。
次に蛋白発現に用いるために得られた組み換えウィルスを以下の手順で増殖させた。
Sf9細胞2×107個を10mlのSf900-II培地に懸濁し、175cm2フラスコ(グライナー社製)に入れて室温で1 時間放置して細胞をフラスコに付着させた。放置後上清を除き新たに15mlのTMN-FHインセクトメディウムと上記の組み換えウィルスを含む培養上清のうち1ml を加え27℃で3日間培養した。培養後上清を1,500×gで10分間遠心分離して細胞を除き、蛋白質発現に使用する組み換えウィルス溶液を得た。
得られた組み換えウィルス溶液についてウィルスの力価をバキュロゴールドスターターキット・マニュアル(ファーミンジェン社製)に記載の方法で算定した。
Sf9細胞6×106 個を4mlのSf900-II培地に懸濁し、直径60mmの細胞培養用プラスチックシャーレに入れ、室温で1時間放置して細胞をシャーレに付着させた。次に上清を除き新たにSf900-II培地400μlとSf900-II培地で10,000倍に希釈した上記組み換えウィルス溶液を加え室温で1時間放置した後、培地を除き5mlの1%低融点アガロース[アガープラーク・アガロース(Agarplaque Agarose)、ファーミンジェン社製]を含む培地[滅菌した1mlの5%アガープラークプラス・アガロース水溶液と4mlのTMN-FHインセクトメディウムを混和し、42℃に保温したもの]を該シャーレに流し込んだ。室温で15分間放置した後、乾燥を防ぐためビニルテープをシャーレにまき、密閉可能なプラスチック製容器に該シャーレを入れ、27℃で6日間培養した。該シャーレに0.01%ニュートラルレッドを含むPBS 1mlを加えさらに1日培養した後、出現したプラークの数を数えた。以上の操作より該組み換えウィルス溶液はいずれも約1×107 プラークフォーミングユニット(以下、PFUと称す)/mlのウィルスを含んでいることがわかった。
(4)昆虫細胞における可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nの発現、精製
可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nは以下のようにして得た。High Five細胞4×107個を175cm2フラスコ(グライナー社製)にEX-CELLTM400培地(JRH Bioscience社製)30mlに懸濁し、室温で1時間放置し、フラスコに付着させた。(3)で得られたトランスファーベクターpVL1393/Flt 7NおよびpVL1393/Flt 3N由来の組み換えウィルスを約1〜3×108PFU/mlの濃度で含む溶液を1ml加え、室温で2時間感染させた。培養上清を除き新たに30mlのEX-CELLTM400培地30mlを加え27℃にて3〜4日間培養した。培養終了後、培養上清を回収し1,500×gで10分間遠心分離を行い上清を得た。
カラムに約60mlのヘパリン−セファロースCL-6Bゲル[ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech) AB社製]を充填し、600mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5)緩衝液を用いて0.5ml/分の流速でカラムを洗浄した。洗浄後、上記のように調整した可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nを含む培養液1000mlを0.5ml/分の流速でヘパリン−セファロースCL-6Bカラムに通塔した。さらに600mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5)を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した後、濃度勾配が0M〜1.1MのNaCl含有20mMトリス−塩酸(pH7.5)からなる緩衝液を600 ml通塔し、ヘパリン−セファロースに吸着した蛋白質の溶出を行うと共に8ml ずつ溶出液を分画した。各分画に含まれる蛋白をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にて解析し、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3N を含む分画を60〜80ml回収し、セントリプレップ10(アミコン社製)を用いて濃縮した。濃縮後、可溶性のヒトFlt-1 7NおよびFlt-1 3Nを溶液としてそれぞれ5mlおよび13ml(蛋白濃度は331μg/mlおよび204μg/ml)得た。
(5)可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N, Flt-1 3Nの純度の確認
精製可溶性ヒトVEGF受容体Flt-17N, Flt-1 3Nの純度をSDS-PAGEを用いて確認した。SDS-PAGEは文献記載の方法(Anticancer Research, 12, 1121, 1992)に従った。ゲルには5 〜20%グラジエントゲル(アトー社製)を用い、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として2μgのFlt-1 7NおよびFlt-1 3Nをそれぞれ泳動し、クーマシーブリリアントブルーにて染色した。図21に結果を示した。Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nの純度は95%以上であった。
(6)可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nの対照抗原蛋白質の精製
可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nの対照抗原蛋白質(ネガティブコントロール蛋白質)は以下のようにして得た。High Five細胞4×107個を175cm2フラスコ(グライナー社製)にEX-CELLTM400培地(JRH Bioscience社製)30mlに懸濁し、室温で1時間放置し、フラスコに付着させ、27℃にて3〜4日間培養した。培養終了後、培養上清を回収し1,500×gで10分間遠心分離を行い上清を得た。
カラムにヘパリン−セファロースCL-6Bゲル[ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech) AB社製]約20mlを充填し、200mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5)緩衝液を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した。洗浄後、上記のように調製したHighFive細胞の培養液500ml を0.5ml/分の流速でヘパリン−セファロースCL-6Bカラムに通塔した。さらに200mlの0.2M NaClを含む20mMトリス−塩酸(pH7.5)を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した後、1M NaClを含む20mMトリス−塩酸(pH7.5)からなる緩衝液を200 ml通塔し、ヘパリン−セファロースに吸着した蛋白質を溶出した。1M NaCl溶出画分をセントリプレップ10(アミコン社製)を用いて濃縮し対照抗原蛋白を溶液として7ml(蛋白濃度として867μg/ml) 得た。
(7)可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3NのヒトVEGF結合活性の確認
可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3NのヒトVEGF結合活性を以下の手順により確認した。
96ウェル・イムオビロンTM-Pフィルトレーション・プレート(96-well ImmobilonTM-P Filtration Plate ;ミリポア社製)にメタノールを100μl/ウェルで分注し、プレート底部のPVDF膜を親水化した。水で洗浄後、PBS 希釈2μg/ml可溶性ヒトFlt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA) を含むPBSを100μl/ウェル加え、室温1時間反応させて残っている活性基をブロックした。PBS で洗浄後、(4)で取得した精製可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nを50μl/ウェルで分注し(最終濃度1〜1000 ng/ml)、さらに、125I標識ヒトVEGF(最終濃度3ng/ml:アマシャム社製)を50μl/ ウェル加え、室温で1.5 時間反応させた。0.05%tween-PBS で洗浄後、50℃にてウェルを乾燥させ、マイクロシンチ-O(パッカード社製)を20μl/ウェル加え、トップカウント(パッカード社製)を用いて、各ウエルに結合した125I標識ヒトVEGFの放射活性を測定した。
結果を図22に示す。可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nは濃度依存的に125I標識ヒトVEGFの可溶性ヒトFlt-1 7Nへの結合を阻害することが示された。可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nは同程度のヒトVEGF結合活性を示したことから、ヒトVEGFはFlt-1 3N部分(シグナル配列を含むN末端アミノ酸から1から338 番目)に結合することが明らかとなった。
(8)昆虫細胞におけるヒトVEGFの発現
ヒトVEGFは以下のようにして得た。High Five細胞4×107個を175cm2フラスコ(グライナー社製)にEX-CELLTM400培地(JRH Bioscience社製)30mlに懸濁し、室温で1時間放置し、フラスコに付着させた。文献[セル・グロース・アンド・ディファレンシエーション(Cell Growth & Differentiation),7, 213 (1996)]記載の方法により得られたヒトVEGF組み換えバキュロウィルス溶液を約1〜3×108PFU/mlの濃度で含む溶液を1ml 加え、室温で2時間感染させた。培養上清を除き新たに30mlのEX-CELLTM400培地30mlを加え27℃にて3〜4日間培養した。培養終了後、培養上清を回収し1500×gで10分間遠心分離を行い上清を得た。
カラムに約40mlのヘパリン−セファロースCL-6Bゲル[ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech) AB社製]を充填し、400mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5) からなる緩衝液を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した。洗浄後、上記のように調製したヒトVEGFを含む培養液1500mlを0.5ml/分の流速でヘパリン−セファロースCL-6Bカラムに通塔した。さらに400mlの20mMトリス−塩酸(pH7.5)を用いて0.5ml/分の流速で洗浄した後、0.2M、0.5Mおよび1MのNaCl含有20mMトリス−塩酸(pH7.5)からなる緩衝液各120 mlを順次通塔し、ヘパリン−セファロースに吸着した蛋白質を段階的に溶出を行うと共に8ml ずつ溶出液を分画した。各分画に含まれる蛋白をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析し、ヒトVEGFを含む分画(0.5〜1 MNaCl画分)を120ml回収した。セントリプレップ-10(アミコン社製)で濃縮後、ヒトVEGFを溶液として4ml(蛋白濃度1.2 mg/ml)得た。
2.動物の免疫と抗体産生細胞の調製
1(4)より得られた各種抗原50μgをそれぞれアルミニウムゲル2mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1×109 細胞とともに5 週令雌BALB/c(日本SLC社製)、B6C3F1マウス(日本チャールズリバー社製)あるいは雌SDラット(日本SLC社製)に投与し、2 週間後より10〜50μg の蛋白質を1 週間に1回、計4回投与した。また、NIH3T3-Flt-1細胞1×107 個を5週令雌BALB/c(日本SLC社製)3匹に投与し、計6回投与した。眼底静脈叢あるいは尾静脈より採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したマウスあるいはラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。なお、NIH3T3-Flt-1細胞を投与した5週令雌BALB/cでは免疫がかからず、可溶性Flt-1 7Nに対する抗体価は上昇しなかった。
脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離
(1200rpm、5分)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄し、細胞融合に用いた。
3.酵素免疫測定法
1(4)で得られた可溶性ヒトFlt-1 7NおよびFlt-1 3Nを免疫したマウスあるいはラットに由来する抗血清およびハイブリドーマの培養上清の測定に関しては、抗原として、1(4)の昆虫細胞培養上清より得られた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nを用いた。96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、PBS 希釈1 〜10μg/ml可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7N、Flt-1 3Nおよび対照抗
原として1(6)で得られたHigh Five細胞培養上清のヘパリンカラム吸着画分を、それぞれ50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA) を含むPBSを100μl/ウェル加え、室温1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBSを捨て、被免疫マウスあるいは被免疫ラット抗血清およびハイブリドーマの培養上清を50μl/ウェルで分注し2 時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリンあるいはペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットイムノグロブリン(ともにDAKO社製)を50μl/ウェルで加えて室温、1 時間反応させ、0.05% tween-PBS で洗浄後ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6- スルホン酸)アンモニウム]を用いて発色させOD415nmの吸光度Emax[モレキュラー・デバイシーズ(Molecular Devices)社製]を測定した。
4.マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3-U1を正常培地で培養し、細胞融合時に2×107 以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
5.ハイブリドーマの作製
2で得られたマウス脾細胞あるいはラット脾細胞と4で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5 分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1000(PEG-1000)2g、MEM 培地2ml およびDMSO 0.7mlの混液0.2〜1ml/108 マウス脾細胞を加え、1〜2分間毎にMEM 培地1 〜2ml を数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mlになるようにした。遠心分離(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吸出しでゆるやかに細胞をHAT培地100ml中に懸濁した。
この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2 インキュベーター中、37℃で10〜14日間CO2 5%下で培養した。この培養上清を実施例1の3 に記載した酵素免疫測定法で調べ、1(4)で得られた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NあるいはFlt-1 3Nに特異的に反応し、かつ1(6)で得られた対照抗原に反応しないウェルを選び、さらにHT培地と正常培地に換え、2 回クローニングを繰り返して、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ株を確立した。以下にその結果を示す。
(表3)
1(4)で得られた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを免疫したBalb/cマウス1匹、あるいはSDラット2匹から得られたハイブリドーマを可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを用いてそれぞれ約672ウェルおよび約2184ウェルずつスクリーニングした結果、それぞれ5クローンおよび6クローンの抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を得、これらをそれぞれKM1737、KM1739、KM1740、KM1742、KM1743およびKM1733、KM1735、KM1736、KM1745、KM1746、KM1747と命名した。これらのクローンの中で、8に示したヒトVEGFのFlt-1結合阻害作用を示すものはなかった。さらに、KM1735、KM1736、KM1742、KM1743およびKM1745は10で示した免疫細胞染色法においてヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞と反応したが、KM1730、KM1731およびKM1732に比較して極めて弱いものであった。
一方、1(4)で得られた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを免疫したB3C3F1マウス1匹、および、Balb/cマウス1匹から得られたハイブリドーマを1(4)で得られた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3Nを用いてそれぞれ約672ウェルおよび420ウェルスクリーニングした結果、それぞれから3クローンずつ抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を得、これらをそれぞれKM1748、KM1749、KM1750およびKM1730、KM1731、KM1732と命名した。これらクローンの中で後記8で示したヒトVEGFのFlt-1結合阻害作用を示すものとしてKM1732、KM1748およびKM1750の3クローンが認められた。さらに、KM1730、KM1731およびKM1732の3クローンは10で示した免疫細胞染色法においてヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞に極めて強く反応した。
モノクローナル抗体の抗体クラスはサブクラスタイピングキット[ザイメット(Zymed)社製]を用いた酵素免疫測定法を行った。その結果を以下の表に示す。
(表4)

本発明で確立したモノクローナル抗体はすべてIgGクラスであった。
6.モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8 週令ヌード雌マウス(Balb/c)に5.で得られたハイブリドーマ株を5〜20×106 細胞/匹それぞれ腹腔内に注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1 〜8ml/匹)し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去した後カプリル酸沈殿法(アンチボディーズ・ア・ラボラトリー・マニュアル)により精製し、精製モノクローナル抗体とした。
7.モノクローナル抗体の特異性の確認
5で述べた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体の特異性を3に記載した酵素免疫測定法を用いて確認した。
結果を図23に示す。Flt-1 7Nを免疫したマウス、ラットよりハイブリドーマを作製し、Flt-1 7Nを用いて選択したモノクローナル抗体(KM1733、KM1735、KM1736、KM1737、KM1739、KM1740、KM1742、KM1743、KM1745、KM1746、KM1747)の中で、KM1740だけはFlt-1 7NおよびFlt-1 3Nに反応したことから、Flt-1のN末端アミノ酸(シグナル配列を含む)から1〜338 番目に存在するエピトープを認識していることが明らかとなった。残りの10クローンは、Flt-1 7Nには反応するがFlt-1 3Nには反応しないことから、Flt-1のN末端アミノ酸(シグナル配列を含む)から339〜750番目に存在するエピトープを認識していることが明らかとなった。一方、Flt-1 7Nを免疫したマウスよりハイブリドーマを作製し、Flt-1 3Nを用いて選択した6種のモノクローナル抗体(KM1748、KM1749、KM1750、KM1730、KM1731、KM1732)はすべて、Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nに反応したことから、Flt-1のN末端アミノ酸(シグナル配列を含む)から1〜338番目に存在するエピトープを認識していることが明らかとなった。
8.抗Flt-1モノクローナル抗体によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性の確認
5で述べた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体のヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を以下の手順に従い確認した。
96ウェル・マルチスクリーン−IPプレート(96-well MultiScreen-IP Plate;ミリポア社製)にメタノールを100μl/ウェルで分注し、プレート底部のPVDF膜を親水化した。水で洗浄後、PBSで1.6μg/mlの濃度に希釈した可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nを50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA)含有PBSを50μl/ウェル加え、室温1 時間反応させて残っている活性基をブロックした。PBSで洗浄後、ハイブリドーマの培養上清あるいは0.5M NaCl を含む1%BSA-PBS溶液で希釈した精製モノクローナル抗体(0.01〜7.29μg/ml)を50μl/ウェルで分注し、さらに、3ng/mlの125I標識ヒトVEGF(アマシャム社製)を50μl/ウェル加え室温で1.5時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、50℃にてウェルを乾燥させ、マイクロシンチ-O(パッカード社製)を30μl/ウェル加え、トップカウント(パッカード社製)を用いて、各ウェルに結合した125I標識ヒトVEGFの放射活性を測定した。
ハイブリドーマの培養上清の活性を検討した結果を図24に示す。確立した17種のモノクローナル抗体の中で、3 種のモノクローナル抗体KM1748、KM1750、KM1732が、それぞれ阻害率62.6%、66.3%、83.1%でヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合を阻害した。
通常、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング方法としては、免疫原に用いた抗原と同一蛋白質で行う。今回、免疫原として用いたFlt-1 7Nで選択された計11種のモノクローナル抗体は全く結合阻害活性を示さず、Flt-1 3Nで選択された6種のモノクローナル抗体(KM1748、KM1749、KM1750、KM1730、KM1731、KM1732)のうち、KM1748、KM1750およびKM1732については結合阻害活性を示していた。ハイブリドーマのスクリーニングにFlt-1 3Nを用いたことにより、結合阻害活性を有するモノクローナル抗体が取得できたことは、予想外の効果であった。そして、Flt-1 3Nが結合阻害活性を有するモノクローナル抗体の確立に非常に重要であることが示された。
精製した抗Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1748、KM1750を用いて結合阻害活性を検討した結果を図25に示す。KM1732、KM1748、KM1750は濃度依存的にヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合を阻害した。ヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合の50%阻害を示すKM1732、KM1748、KM1750の濃度(IC50)は1.1 、1.3 、2.0μg/mlであった。一方、コントロールとして使用したマウスIgG1クラスである抗シアリルルイスAモノクローナル抗体KM231[アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research),10, 1579 (1990)]は全く阻害活性を示さなかった。
9.抗Flt-1モノクローナル抗体によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞の結合阻害活性の確認
抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1748およびKM1750によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を以下の手順に従い確認した。
96ウェル・マルチスクリーン−HVプレート(96-well MultiScreen-HV Plate;ミリポア社製)に1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBSを100μl/ ウェル加え、室温1時間反応させてウェル中の活性基をブロックし、0.05%NaN3を含む1%BSA-PBSに懸濁したNIH3T3-Flt-1細胞を5×104個/ウェル加えた。1%BSA-PBSで洗浄後、精製モノクローナル抗体(0.01〜7.29μg/ml)を50μl/ウェルで分注し、さらに、3ng/mlの125I標識ヒトVEGF(アマシャム社製)を50μl/ ウェル加え、氷上で2 時間反応させた。PBS で洗浄後、50℃にてウェルを乾燥させ、マイクロシンチ-O(パッカード社製)を30μl/ウェル加え、トップカウント(パッカード社製)を用いて、各ウェルに結合した125I標識ヒトVEGFの放射活性を測定した。
精製した抗Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1748、KM1750を用いて結合阻害活性を検討した結果を図26に示す。KM1732、KM1748、KM1750は濃度依存的にヒトVEGFとNIH3T3-Flt-1細胞への結合を阻害した。ヒトVEGFとNIH3T3-Flt-1細胞の結合の50%阻害を示すKM1732、KM1748、KM1750の濃度(IC50)は0.050 、0.037 、0.041μg/mlであった。一方、コントロールとして使用したマウスIgG1クラスである抗シアリルルイスAモノクローナル抗体KM231は全く阻害活性を示さなかった。
10.モノクローナル抗体のヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞との反応性の確認
5で述べた抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体の特異性を免疫細胞染色を用いて以下の手順に従い確認した。
ヒトVEGF受容体Flt-1発現NIH3T3細胞(NIH3T3-Flt-1)、コントロールNIH3T3細胞(NIH3T3-Neo)[オンコジーン(Oncogene), 10, 135 (1995)]5 ×105 個を丸底96ウェルプレートに免疫細胞染色用緩衝液(1%BSA 、0.02%EDTA 、0.05% アジ化ナトリウムを含むPBS )100μlに懸濁して分注した。4℃、350×gで1分間遠心分離後、上清を除き、ハイブリドーマ培養上清あるいは精製抗体(10μg/ml)50μlを加えて4℃で30分間反応させた。反応後、200μlの免疫細胞染色用緩衝液を各ウェルに加え4℃、350×gで1分間遠心分離後上清を除き細胞の洗浄を行った。この洗浄操作をさらに2回行った後、FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体あるいはFITC標識抗ラットイムノグロブリン抗体(和光純薬社製)を1μg/mlの濃度で含む免疫細胞染色用緩衝液50μlを加えて4℃で30分間反応させた。反応後、上記と同様の洗浄操作を3回行った後フローサイトメーター(コールター社製)を用いて解析を行った。
結果を図27に示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1730、KM1731およびKM1732はコントロール細胞には反応せずFlt-1発現細胞に特異的に顕著に反応した(A)。また、精製抗体である抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1748(10μg/ml)およびハイブリドーマ培養上清KM1748もコントロール細胞には反応せずFlt-1発現細胞に特異的に顕著に反応した(B)。この結果、モノクローナル抗体KM1730、KM1731、KM1732、KM1748およびKM1750は細胞表面上のヒトVEGF受容体Flt-1を特異的に認識することが明らかとなった。一方、KM1735、KM1736、KM1742、KM1743およびKM1745はヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞と反応したが、KM1730、KM1731、KM1732、KM1748およびKM1750に比較して極めて弱いものであった。
11.モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット法によるヒトVEGF受容体Flt-1の検出
NIH3T3-Flt-1細胞、コントロールNIH3T3細胞(NIH3T3-Neo)より、文献記載の方法[キャンサー・リサーチ(Cancer Research), 46, 4438 (1986) ]に従い細胞膜成分を調製し、SDS-PAGE法により泳動した。SDS-PAGEは文献記載の方法[アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research), 12, 1121 (1992)]に従い、ゲルには5〜20%グラジエントゲル(アトー社製)を用い、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として15μgの細胞膜成分を泳動した。泳動されたタンパク質を文献記載の方法[アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research), 12, 1121 (1992)]に従い、PVDF膜にトランスファーした。続いて、PVDF膜を1%BSAを含むPBSに室温で30分間反応させブロッキング操作を行い、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1737の培養上清を4℃にて1晩反応させた。0.05% Tweenを含むPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgG[5,000 倍希釈:ケミコン(Chemicon)社製)を室温で2時間反応させた。0.05% Tweenを含むPBSで洗浄し、ECLTMウェスタンブロッティングディテクションリアージェンツ(ECLTM Western blotting detection reagents ; アマシャム社製)を用いて、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1737が結合したバンドを検出した。
図28に結果を示す。抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1737は、NIH3T3-Flt-1細胞に発現している分子量180キロダルトンのヒトVEGF受容体Flt-1を特異的に検出できることが明らかとなった。
12.モノクローナル抗体を用いた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1の検出
96ウェルのEIA 用プレート(グライナー社製)に、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732をPBSで10μg/mlの濃度に希釈し、50μl/ウェルずつ分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBSを100μl/ウェル加え、室温1 時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBS を捨て、1%BSA-PBSで1000〜0.0056ng/mlの濃度に希釈した1(4)で得られた精製可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nを4℃で一晩反応させた。0.05%tween-PBS で洗浄後、公知の方法(酵素抗体法:学際企画刊 1985年)でビオチン標識した抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1730を1%BSA-PBSで0.1μg/mlの濃度に希釈して50μl/ウェルずつ加えて室温にて2 時間反応させた。0.05%tween-PBSで洗浄後、1%BSA-PBSにて4000倍に希釈したアビジン標識ペルオキシダーゼ(ベクター社製)を50μl/ウェルで加えて室温にて1 時間反応させた。0.05%tween-PBS で洗浄後ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6- スルホン酸)アンモニウム]を用いて発色させOD415nmの吸光度をEmax(モレキュラーデバイシーズ社製)を用いて測定した。
結果を図29に示す。この結果、抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732およびビオチン標識抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1730を用いることにより可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3Nは0.46 ng/mlより、Flt-1 7Nは1.37ng/mlより測定することができることが明らかとなった。
13.抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体を用いたVEGF依存性細胞遊走抑制試験
in vitroにおける血管新生活性の指標であるVEGF依存的なヒト血管内皮細胞の遊走活性に及ぼす抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体の効果を検討した。
細胞遊走試験はSatoらの方法[J. Cell Biology, 107, 1199 (1988)]に従い行った。3.5cmのディッシュでコンフルエントになるまで培養したHUVECをカミソリ刃で傷をつけた後PBSで洗浄した。5%FCSを含むM-199培地を1.5ml加え、さらにVEGF(終濃度10ng/ml)および5で得られた抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1750またはKM1732(終濃度0、1、10μg/ml)を添加し、24時間培養した。培養後、傷付けた位置より遊走した細胞数を測定した。
その結果、HUVECはVEGF添加により細胞遊走能が上昇したが、抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1750またはKM1732(終濃度1μg/ml)により完全に遊走が阻害された。従って、Flt-1は血管内皮細胞の遊走に関わる主な受容体であることが示された。
図47は抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1750およびKM1732の血管内皮細胞の遊走阻害活性を比較した結果を示した。モノクローナル抗体濃度0.1〜1μg/mlにおいて2つのモノクローナル抗体は濃度依存的に血管内皮細胞の遊走阻害活性を示した。
以上から、抗VEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体により、VEGFにより誘導される血管内皮細胞の遊走が完全に阻害されることが明らかとなった。
本発明により、新生ヒト血管内皮細胞上に特異的に発現されていると考えられるヒトVEGF受容体Flt-1 に特異的に結合する遺伝子組換え抗体が提供される。また、本発明により、ヒトVEGF受容体Flt-1に対する中和活性を有する遺伝子組換え抗体が提供される。本発明の遺伝子組換え抗体は癌、糖尿病性網膜症等の血管新生を伴う疾患の診断、治療等に有用であり、特にヒトにおいてはマウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が低く、その効果が長期にわたり持続することが期待される。
プラスミドpBS1732Hの造成工程を示した図である。 プラスミドpBS1732Lの造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1732Hの造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1732の造成工程を示した図である。 プラスミドpBS1750Hの造成工程を示した図である。 プラスミドpBS1750Lの造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750Hの造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750の造成工程を示した図である。 精製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550のSDS-PAGE(4〜15%グラジエントゲルを使用)の電気泳動パターンを示した図である。レーン1が低分子マーカー、レーン2が還元条件下でのKM2532、レーン3が還元条件下でのKM2550、レーン4が高分子マーカー、レーン5が非還元条件下でのKM2532、レーン6が非還元条件下でのKM2550の泳動パターンをそれぞれ示す。 精製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550の可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nとの結合活性を示した図である。(A)はプレートに吸着させる可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nの濃度を一定(1μg/ml)にし、添加するヒト型キメラ抗体濃度を変化させた場合の結果である。縦軸は可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nとの結合活性、横軸はヒト型キメラ抗体濃度をそれぞれ示す。△がKM2532、○がKM2550の活性をそれぞれ示す。(B)はプレートに吸着させる可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nの濃度を変化させ、一定濃度(10μg/ml)のヒト型キメラ抗体の結合活性を測定した結果である。縦軸は可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nとの結合活性、横軸はプレートに吸着させた可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nの濃度をそれぞれ示す。△がKM2532、○がKM2550の活性をそれぞれ示す。 精製した抗ヒトVEGF受容体Flt-1 ヒト型キメラ抗体KM2532およびKM2550によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を示した図である。○がKM1732、□がKM1750、●がKM2532、■がKM2550の活性をそれぞれ示す。 プラスミドphKM1732HV0の造成工程を示した図である。 プラスミドphKM1750HV0の造成工程を示した図である。 プラスミドphKM1732LV0の造成工程を示した図である。 プラスミドphKM1750LV0(IV)の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1732HV0の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1732HV0LV0の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV0LV0(IV)を示した図である。 プラスミドpVL1393/Flt 3Nの造成工程を示した図である。 プラスミドpVL1393/Flt 7Nの造成工程を示した図である。 精製したFlt-1 7NおよびFlt-1 3NのSDS ポリアクリルアミド電気泳動(5〜20%グラジェントゲルを使用)のパタ−ンを示した図である。左より、分子量マーカー、Flt-1 3N、Flt-1 7Nの泳動パターンをそれぞれ示す。還元条件下で電気泳動を行った。 プレートコートした可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nへの125I-ヒトVEGFの結合に及ぼす可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7NおよびFlt-1 3Nの阻害効果を解析した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1 モノクローナル抗体の結合反応性を酵素免疫測定法にて検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体によるVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1748およびKM1750によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1748およびKM1750によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞の結合阻害活性を検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1730、KM1731、KM1732、KM1748およびKM1750のヒトVEGF受容体Flt-1発現細胞NIH3T3-Flt-1およびコントロール細胞NIH3T3-Neo細胞との反応性をフローサイトメーターにて解析した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1737のヒトVEGF受容体Flt-1との反応性をウエスタンブロッティングにより検討した結果を示す。レーン1 は、NIH3T3-Flt-1細胞、レ−ン2 は、NIH3T3-Neo細胞のウエスタンブロッティングのパターンを示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732およびビオチン化KM1730を用いて可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 3NおよびFLT-1 7Nの定量系を検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732、KM1750、および抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の、可溶性ヒトVEGF受容体およびその誘導体であるFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2およびKDR 7Nの結合反応性を酵素免疫測定法で検討した結果を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2532、KM2550の可溶性ヒトVEGF受容体およびその誘導体であるFlt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2およびKDR 7Nの濃度依存性結合反応について酵素免疫測定法で検討した結果を示す。 可溶性ヒトVEGF受容体の各種誘導体の模式図を示す。 プラスミドphKM1750LV0 (I)の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV0LV0 (I)の造成工程を示した図である。 プラスミドphKM1750HV3の造成工程を示した図である。 プラスミドphKM1750LV4の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV3LV0 (I)の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV3LV0 (IV)の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV0LV4の造成工程を示した図である。 プラスミドpKANTEX1750HV3LV4の造成工程を示した図である。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550およびヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555のSDS-PAGE(4〜15%グラジエントゲルを使用)の電気泳動パターンを示した図である。レーン1〜9は非還元条件下での電気泳動パターン、レーン10〜19までは還元条件下での電気泳動パターンを示す。レーン1および10は高分子分子量マーカー、レーン19は低分子分子量マーカー、レーン2および11はコントロール抗体であるKM8969、レーン3および12はKM2550、レーン4および13はKM8550、レーン5および14はKM8551、レーン6および15はKM8552、レーン7および16はKM8553、レーン8および17はKM8554、レーン9および18はKM8555を示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550およびヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555の可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1 7Nとの結合活性を示した図である。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550およびヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555の可溶性ヒトVEGF受容体各種誘導体Flt-1 7N、Flt-1 3N、Flt-1 2N、Flt-1 7N.K2、KDR 7Nとの結合活性を示した図である。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体KM2550およびヒト型CDR移植抗体KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554、KM8555によるヒトVEGFとヒトVEGF受容体Flt-1の結合阻害活性を示した図である。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体およびCDR移植抗体のH鎖可変領域のアミノ酸配列を示した図である。図中、KM1750mouseとは、KM1750のH鎖可変領域アミノ酸配列、KM1750HV0とは、KM1750のH鎖可変領域内のCDRをヒトフレームワークに挿入して構成されるアミノ酸配列、KM1750HV3とは、KM1750HV0のフレームワークのアミノ酸配列を一部KM1750mouseのアミノ酸に置換したアミノ酸配列を、それぞれ示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型キメラ抗体およびCDR移植抗体のL鎖可変領域のアミノ酸配列を示した図である。図中、KM1750mouseとは、KM1750のL鎖可変領域アミノ酸配列、KM1750LV0(I)とは、KM1750のL鎖可変領域内のCDRをヒトフレームワークに挿入して構成されるアミノ酸配列、KM1750LV4とは、KM1750LV0(I)のフレームワークのアミノ酸配列を一部KM1750mouseのアミノ酸に置換したアミノ酸配列を、それぞれ示す。 抗ヒトVEGF受容体Flt-1モノクローナル抗体KM1732およびKM1750のVEGF依存性ヒト血管内皮細胞HUVECへの遊走阻害活性を検討したグラフである。

Claims (37)

  1. FERM BP-5698により生産される抗体KM1732またはFERM BP-5700により生産される抗体KM1750が結合し、かつヒトVEGF受容体Flt-1のシグナル配列を含むN末端アミノ酸から338番目のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
  2. 遺伝子組換え抗体が、ヒト化抗体である請求項1記載の抗体または該抗体断片。
  3. ヒト化抗体が、ヒトIgG型に属する請求項2記載の抗体または該抗体断片。
  4. ヒト化抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移植抗体である、請求項3記載の抗体または該抗体断片。
  5. ヒト化抗体の抗体重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号5、6、7または配列番号11、12、13で示されるアミノ酸配列を含む請求項4記載のヒト化抗体または該抗体断片。
  6. ヒト化抗体の抗体軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号8、9、10または配列番号14、15、16で示されるアミノ酸配列を含む請求項4記載のヒト化抗体または該抗体断片。
  7. ヒト化抗体の抗体重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号5、6、7または配列番号11、12、13で示されるアミノ酸配列を含み、ヒト化抗体の抗体軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号8、9、10または配列番号14、15、16で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲4記載のヒト化抗体または該抗体断片。
  8. H鎖V領域およびL鎖V領域のアミノ酸配列が、ハイブリドーマFERM BP-5698が生産するモノクローナル抗体KM1732およびハイブリドーマFERM BP-5700が生産するモノクローナル抗体KM1750からなる群から選ばれるモノクローナル抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  9. H鎖V領域およびL鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号86または88に記載されたアミノ酸配列である、請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  10. L鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号87または89に記載されたアミノ酸配列である、請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  11. H鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号86に記載されたアミノ酸配列を含み、L鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号87に記載されたアミノ酸配列を含む請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  12. H鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号88に記載されたアミノ酸配列を含み、L鎖V領域のアミノ酸配列が配列番号89に記載されたアミノ酸配列を含む請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  13. ヒトVEGF受容体Flt-1に特異的に反応するヒト型キメラ抗体が、KM2532およびKM2550から選ばれる請求項4記載のヒト型キメラ抗体または該抗体断片。
  14. 抗体のH鎖のV領域相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号5、6、7または配列番号11、12、13で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  15. 抗体のL鎖のV領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3が、それぞれ配列番号8、9、10または配列番号14、15、16で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  16. 抗体のH鎖V領域相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号5、6および7、L鎖V領域相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号8、9および10で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  17. 抗体のH鎖V領域相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号11、12、および13、L鎖V領域相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  18. 抗体のH鎖V領域が配列番号90で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  19. 抗体のL鎖V領域が配列番号92で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  20. 抗体のH鎖V領域が配列番号90で示されるアミノ酸配列を含み、L鎖V領域が配列番号92で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  21. 抗体のH鎖V領域が配列番号91または配列番号95で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  22. 抗体のL鎖V領域が配列番号93、配列番号94または配列番号96で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  23. 抗体のH鎖V領域が配列番号91または配列番号95で示されるアミノ酸配列を含み、L鎖V領域が配列番号93、配列番号94または配列番号96で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  24. ヒトVEGF受容体Flt-1ヒト型CDR移植抗体または該抗体断片が、KM8550、KM8551、KM8552、KM8553、KM8554およびKM8555から選ばれる請求項4記載のヒト型CDR移植抗体または該抗体断片。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片をコードするDNA。
  26. 請求項1〜24記載のDNAとタンデムカセットベクターpKANTEX93とを含有する組換えベクター。
  27. 請求項26記載の組換えベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
  28. 請求項27記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に請求の範囲1〜24のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を生成蓄積させ、該培養物から該抗体を採取することを特徴とする抗体または抗体断片の製造方法。
  29. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片が、放射性同位元素、蛋白質または低分子の薬剤と化学的または遺伝子工学的に結合させた融合抗体または融合抗体断片である抗体または該抗体断片。
  30. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出する方法。
  31. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に定量する方法。
  32. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に検出する方法。
  33. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、可溶性ヒトVEGF受容体Flt-1を免疫学的に定量する方法。
  34. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を免疫学的に検出する方法。
  35. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を用いて、ヒトVEGF受容体Flt-1を細胞表面に発現した細胞を免疫学的に定量する方法。
  36. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を有効成分として含有する、血管新生の異常により病態が進行する疾患の診断薬。
  37. 請求項1〜24および29のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を有効成分として含有する、血管新生の異常により病態が進行する疾患の治療薬。
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