以下、図面を用いながら、開示の無線通信方法、無線通信システム、無線基地局および無線端末の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
[問題の所在]
まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
上述したように、従来のLTEシステムにおいて無線端末が複数のセルとの2元接続を実現するために望ましいシグナリングは存在していない。そこで、従来のLTEシステムにおいて既に規定されている技術を利用することで2元接続を実現するために望ましいシグナリングが可能であるか検討する。
まず、従来のLTEシステムにおいて規定されている技術であるキャリアアグリゲーション(CA: Carrier Aggregation)について検討する。キャリアアグリゲーションは、無線基地局と無線端末の間の通信に用いる周波数帯域であるコンポーネントキャリア(CC: Component Carrier) あるいはセルを複数束ねて用いることで、高速・大容量な通信を実現するものである。LTEシステムでサポートされている帯域幅は最大20MHzという制限があるが、キャリアアグリゲーションの導入により、例えば20MHzのCCを2つ束ねることで40MHzの帯域幅を使用できることになる。
キャリアアグリゲーションの枠組みにおいて、例えば一つのCCをマクロセルが使用するとともに、他の一つのCCをスモールセルが使用することで、2元接続を実現できるようにも思われる。しかしながら、次に述べるような理由により、キャリアアグリゲーションに基づいて2元接続を実現するのは困難であると考えられる。
ここで、キャリアアグリゲーションをLTEシステムにおけるプロトコルスタックの観点で考えてみる。LTEシステムのプロトコルスタックは、下位層から順に、物理(PHY: PHYsical)層、MAC(Media Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、PDCP(Packet Data Control Protocol)層となっている(さらに上位の階層もあるがここでは割愛する)。慣用されているOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに対応させると、LTEシステムにおける物理層は、OSI参照モデルの第1層である物理層に対応する。また、LTEシステムにおけるMAC層、RLC層、およびPDCP層は、OSI参照モデルの第2層であるデータリンク層に対応する。MAC層はスケジューラ機能等を、RLC層はシーケンス制御等を、PDCP層はセキュリティ等をそれぞれ担当している。
キャリアアグリゲーションをプロトコルスタックの観点で見た場合、送信するデータを物理層で分離するものであると言える。また、受信するデータを物理層で統合するものであると言える。このことは、キャリアアグリゲーションにおいては、送受信側の双方において、物理層のエンティティが複数であるとともに、その上位のMAC層等のエンティティは一つであることを意味している。ここで、エンティティとは、処理主体を意味する用語である。エンティティは、プロトコルスタックの各層において存在し、装置と1対1であるとは限らず、N対1となりうる。例えば、前述したようにキャリアアグリゲーションによれば、送受信側の双方において、物理層のエンティティが複数となる。
図2に、LTEシステムにおける一般的なデータ通信(キャリアアグリゲーションを用いない場合)におけるプロトコルスタックを示す。各矩形がエンティティを示しており、無線基地局と無線端末とのそれぞれにおいて、物理層、MAC層、RLC層、PDCP層のエンティティが直列1列で作動している。なお、図2においてRLCエンティティのみが上りと下りで別個のものとなっているが、これは3GPPの仕様に基づいているためである。具体的には、下りのデータ通信について、下りのRLCエンティティが送信したデータを送受信するために、上りのRLCエンティティが個別に付随するような構成となる。
これに対し、図3にLTEシステムにおけるキャリアアグリゲーションに基づくデータ通信におけるプロトコルスタックを示す。図3においても無線基地局と無線端末とのそれぞれにおいて、物理層、MAC層、RLC層、PDCP層のエンティティが作動しているが、物理層のみが2つのエンティティに分離している点が図2と異なっている。このように、キャリアアグリゲーションをプロトコルスタックの観点で見た場合、送信するデータを物理層で分離するものであり、受信するデータを物理層で統合するものであると言える。
ところで、前述したように、LTEシステムにおけるMAC層はスケジューラ機能を担当する。スケジューラ機能とは、データをどのタイミングのどの周波数で送信するかを定める機能である。先にキャリアアグリゲーションではMAC層のエンティティは一つであると述べたが、このことはスケジューラが一つであることを意味している。
仮に、キャリアアグリゲーションで2元接続を実現しようとすると、例えばマクロ無線基地局に存在するMACエンティティ(スケジューラ)が、マクロ無線基地局とスモール無線基地局とのそれぞれに存在する物理エンティティ(CCあるいはセル)に対するスケジューリングを行うことになる。これは無線基地局間通信のレイテンシーの問題から実現は困難である。LTEシステムにおけるスケジューリングは1ミリ秒(1サブフレーム)を単位とする非常に微小な周期で行う必要があるためである。したがって、キャリアアグリゲーションによれば、1つの無線基地局が複数のキャリアを用いて送受信を行うことはできるが、複数の無線基地局が複数のキャリアを用いて送受信を行うのは現実的ではないと考えられる。
以上から、キャリアアグリゲーションに基づいて2元接続を実現するのは極めて困難であると考えられる。
ところで、以上で述べたキャリアアグリゲーションに関する考察に基づけば、2元接続を実現するためにはデータを物理層の上のデータリンク層で分離する必要がある。前述したように、LTEシステムにおいては、データリンク層がさらにMAC層、RLC層、PDCP層の3層に細分化されている。例えばMAC層でデータを分離すれば、MAC層のエンティティが複数になる。これにより、スケジューラが複数になり、例えばマクロ無線基地局とスモール無線基地局とがそれぞれ別個のスケジューラを備えることができる。そのため、MAC層でデータを分離することにより、前述した無線基地局間通信のレイテンシーに基づく問題を回避することができ、2元接続を実現することが可能となる。これと同様に、RLC層やPDCP層でデータを分離する場合においても、2元接続を実現することが可能である。
なお、データリンク層でのデータの分離が2元接続と等価である訳ではない点には注意を要する。一つの無線基地局が複数のMACエンティティを有する場合のように、データリンク層でデータが分離されても1元接続となる場合も存在するためである。
次に、2元接続においてデータリンク層でデータを分離するための処理シーケンスおよびシグナリングについて検討する。
例えば、データリンク層でデータを分離するために、従来のハンドオーバ時における処理シーケンスおよびシグナリングを流用することが考えられる。ハンドオーバにおいては、無線端末はサービング無線基地局(ハンドオーバ元無線基地局)との接続を解除するとともに、ターゲット無線基地局(ハンドオーバ先無線基地局)に接続する。したがって、このとき、無線端末がサービング無線基地局との接続を解除しないことにより、2元接続を実現できる可能性がある。そのため、2元接続に代表されるデータリンク層におけるデータの分離は、従来のハンドオーバ時の処理に沿えば良いようにも思われる。
具体的には、次のような方法が考えられる。まず、マクロセルで2元接続を開始することを決定する。この決定は、例えば処理負荷の増大等の所定事象の発生を検出することにより行うことができる。このときマクロセルは、無線端末をスモールセルにハンドオーバさせるのと同様の処理シーケンスおよびシグナリングを用いて、2元接続を実現できると考えられる。
ここで、ハンドオーバの際、サービング無線基地局(ハンドオーバ元無線基地局)から無線端末へのハンドオーバ指示の送信や、無線端末からターゲット無線基地局(ハンドオーバ先無線基地局)へのハンドオーバ完了通知はRRC(Radio Resource Control)信号により行われる。RRC信号はデータリンク層の上位層であるRRC層における制御信号である。LTEシステムにおけるRRC層は、OSI参照モデルの第3層であるネットワーク層に対応する。そのため、RRC信号はL3(Layer 3)信号と呼ばれることもある。RRC信号は下り(無線基地局から無線端末への方向)のみならず、上り(無線端末から無線基地局への方向)においても送信される。
RRC信号は、ハンドオーバ時の処理に限らず、無線基地局と無線端末との間において種々のパラメータ等の送受信に広く用いられている。RRC信号は拡張性が高く、多くのパラメータを柔軟に送受信することができるという利点があるためである。しかしながら、RRC信号には送受信処理に時間を要するという問題がある。RRC信号は上位層の信号であるため、送受信処理が通常のユーザデータに近いものとなるためである。そのため、一般にRRC信号は即時性を要する場合にはそれほど適さないという側面がある。
ここで、上述したように従来のハンドオーバの処理シーケンスおよびシグナリングを流用して2元接続を実現する場合を考える。このとき、2元接続を開始することを決定(所定事象を検出)してから、ハンドオーバに沿った処理が行われることになる。ここで、上記で述べたように、ハンドオーバ処理においては、2回のRRC信号の送受信が含まれる。具体的には、ハンドオーバ指示のRRC信号、およびハンドオーバ完了通知のRRC信号の送受信が必要となる。これにより、2元接続の開始の決定から、2元接続が開始されるまでの間に遅延が生ずることになる。
このような遅延が生ずると、例えばマクロ無線基地局の負荷が増大した場合に、スモール無線基地局への負荷分散(オフロード)を速やかに行うことができず、問題解決の遅れにも繋がるので都合が悪いと考えられる。また、例えばマクロ無線基地局の負荷が増大したので2元接続の開始を決定したが、2元接続が開始された時点ではマクロ無線基地局の負荷が減少してしまう場合も発生しうる。上記の方法は、このような処理の無駄を誘発することにもなるので、好ましくないものと思われる。
したがって、ハンドオーバの処理シーケンスおよびシグナリングに基づいてデータリンク層におけるデータの分離(2元接続)を行うのは、即時性や適時性という観点で望ましくないものと考えられる。この問題は、つまるところ、データリンク層におけるデータの分離(2元接続)をRRC信号を用いて行うことに起因している。そこで、RRC信号以外の信号を用いることで、この問題を回避できる余地がないか検討する。
例えばMAC層においてデータを分離する場合に、LTEシステムで規定されているMAC層のコントロールパケットを用いる方法が考えられる。また、RLC層やPDCP層にもそれぞれコントロールパケットが規定されている。これらデータリンク層の制御信号は、下位層の制御信号であるため、RRC信号と比較して送受信の処理遅延が小さいという利点がある。したがって、上記で述べたハンドオーバ処理のシーケンスにおいて、RRC信号で実現されていたハンドオーバ指示およびハンドオーバ完了通知の代わりに、データリンク層の制御信号を用いれば、前述した遅延の問題は生じないことになり、都合がよいものと考えられる。
しかしながら、データリンク層のコントロールパケットは、RRC信号のような高い拡張性を備えておらず、改変が容易ではないという問題がある。旧システムであるLTEとの互換性等の観点から、データリンク層のような下位層のコントロールパケットはできるだけ改変したくないという事情があるためである。そのため、データリンク層のコントロールパケットを用いて、従来のハンドオーバ指示およびハンドオーバ完了通知のような多くの情報を送ることは、非現実的であることは否めない。したがって、データリンク層のコントロールパケットを用いて、データリンク層におけるデータの分離(2元接続)を行うことは難しいものと考えられる。
なお、上記の説明においてはLTEシステムにおけるマクロ無線基地局(マクロセル)とスモール無線基地局(スモールセル)との2元接続に基づいて行ってきたが、本願発明の適用範囲はこれに限られず、一般的な無線基地局(セル)に拡張できることに留意する。例えば、マスターセルとスレーブセル、アンカーセルとアシスティングセル、プライマリセルとセカンダリセル等においても、本願発明は当然に適用可能である。さらに、本願において、それぞれのセル(無線基地局)の呼び方についてはこれらに限ったものではないことに留意する。一般的に、従来のLTE通信システムのように制御プレーンとデータプレーンの両方が接続され通信を行う無線基地局が主たる無線基地局であって、追加的にデータプレーンを接続して通信を行う無線基地局が従たる無線基地局であれば、この意図を逸脱しない範囲で、様々な呼称を用いることができる。
以上をまとめると、2元接続を行うためにはデータリンク層でデータを分離する必要がある。これを実現するために、仮にRRC信号を用いた場合には遅延の問題が生じるとともに、仮にデータリンク層の制御信号を用いた場合には拡張性の問題が生じることになるため、いずれの方法も採用できない。したがって、データリンク層でデータを分離するためには、これらの問題を解決したシーケンスおよびシグナリングが必要となる。前述したようにこの問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。以降では、この問題を解決するための本願の各実施形態を順に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は、例えば、無線基地局が無線端末に対し、追加するL2エンティティに関する情報をL3制御信号で予め送信しておき、L2エンティティを作動させる場合に、作動を指示する情報をL2制御信号で送信するものである。言い換えれば、第1実施形態は、第1無線局は、第2無線局の第1処理層において作動している第1論理処理主体と関連して該第2無線局の該第1処理層において作動する第2論理処理主体の作動を決定する前に、該第2論理処理主体の作動に関する第1情報を、該第1処理層よりも上位層の第1制御信号によって該第2無線局に送信し、前記第1無線局は、前記第2論理処理主体の作動を決定した場合に、作動を指示する第2情報を、前記第1処理層の第2制御信号によって前記第2無線局に送信し、前記第2無線局は、前記第2情報に応じて、前記第1情報に基づいて前記第2論理処理主体の作動を行う無線通信方法に係るものである。
図4に第1実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す。第1実施形態においては、無線端末20、第1無線基地局10a、および第2無線基地局10bが登場する。図4の典型例としては、第1無線基地局10aがマクロ無線基地局10であり、第2無線基地局10bがスモール無線基地局10である場合が考えられる。しかし、第1無線基地局10aがスモール無線基地局10であっても良い。また、第2無線基地局10bがマクロ無線基地局10であっても構わない。図4の説明において単に無線基地局10と呼ぶ場合には、第1無線基地局10aと第2無線基地局10bを総称しているものとする。
図4に示される第1実施形態の前提をいくつか説明する。図4においては、無線端末20は第1無線基地局10aに既に接続しているものとする。ここで「無線端末20が無線基地局10に接続」とは、無線端末20において無線基地局10と同期が取れるとともに必要な設定が完了することで、無線端末20と無線基地局10の間でデータの送受信が可能な状態を指すものとする。一方、無線端末20は第2無線基地局10bには接続していないものとする。
無線端末20が無線基地局10に接続しているとき、無線端末20と無線基地局10との間には、複数の階層から成る論理的な通信路が構築されている。この論理的な通信路はベアラ(Bearer)と呼ばれることがある。論理的な通信路は、下位から第1層(L1)である物理層、第2層(L2)であるデータリンク層、第3層(L3)であるネットワーク層を少なくとも含む。この論理的な通信路は、各階層において作動するエンティティと呼ばれる処理主体によって構成され、送信処理や受信処理は各エンティティが各階層の処理を行うことで実現される。本願においては、L1エンティティを物理エンティティ、L2以上のエンティティを論理エンティティと称することがある。
具体的には、下りデータ通信については、無線基地局10において、送信側のL3エンティティ、L2エンティティ、L1エンティティが少なくとも1つずつ作動することで下りデータの送信を行う。また、無線端末20において、受信側のL3エンティティ、L2エンティティ、L1エンティティが少なくとも1つずつ作動することで下りデータの受信を行う。一方、上りデータ通信については、無線端末20において、送信側のL3エンティティ、L2エンティティ、L1エンティティが少なくとも1つずつ作動することで上りデータの送信を行う。また、無線基地局10において、送信側のL3エンティティ、L2エンティティ、L1エンティティが少なくとも1つずつ作動することで上りデータの受信を行う。
ところで、前述したように、本願の目的の一つは2元接続を行うことである。そのため図4は、無線端末20が第1無線基地局10aおよび第2無線基地局10bと2元接続を実現する場合の処理シーケンスの一例となっている。第1無線基地局10aに接続している無線端末20が2元接続を行う場合、無線端末20においてL2エンティティを追加して作動させ、追加したL2エンティティに第2無線基地局10bに対する送受信を行わせる必要がある。図4に示す処理シーケンスはこれを実現するものとなっている。ただし、本実施形態は2元接続の実現には限られるものではなく、1つの無線基地局10が2つの並列するL2エンティティを作動させる場合にも適用できることに注意されたい。
ここで、図5は、第1実施形態に係る無線通信システムにおけるデータ通信のプロトコルスタックを説明する図である。図5に示すように、第1実施形態は2元接続に限られるものではなく、3元以上の多元接続についても適用可能であることは言うまでもない(図5ではM元接続となっている)。加えて、図5に示されるように、第1実施形態は上りと下りとのいずれにおいても適用可能である。さらに、第1実施形態は、各装置におけるプロトコルスタックに含まれるエンティティも少なくとも2層以上であればよいことにも留意する(図5ではn層構造となっている)。なお、これらの特徴は、第1実施形態に限られることではなく、本願における他の各実施形態においても同様に言えることであることに注意されたい。
図4の各処理について順を追って説明する。図4のS101で第1無線基地局10aは、追加するL2エンティティに関する情報を第1の制御信号で無線端末20に送信する。一方、無線端末20は、追加するL2エンティティに関する情報を第1の制御信号で無線基地局10から受信する。第1の制御信号としては、L3制御信号、例えばRRC信号を用いることができる。
ここで、追加するL2エンティティ(追加L2エンティティと称する)に関する情報を、便宜上、追加L2エンティティ情報と呼ぶ。追加L2エンティティ情報は、追加L2エンティティを作動させるために必要な情報を含む。追加L2エンティティ情報は、少なくとも追加L2エンティティが作動する無線基地局10を示す情報を含む。追加L2エンティティ情報は、これ以外にも種々の情報を含むことができる。例えば、追加L2エンティティが作動する無線基地局10における下りの周波数帯域や上りの周波数帯域に関する情報を含むことができる。また、追加L2エンティティにおける処理(L2層における処理)に関する各種パラメータを含むようにすることもできる。
図4の例では、第1無線基地局10aは、追加L2エンティティを作動させる無線基地局10として第2無線基地局10bを選択したものとする。第1無線基地局10aは、追加L2エンティティを作動させる無線基地局10の選択を任意の基準に基づいて行うことができ、一例としては、無線端末20における受信電力が相対的に大きい無線基地局10を選択することができる。図4のS101で第1無線基地局10aが送信する情報には、追加L2エンティティを作動させる無線基地局10が第2無線基地局10bであることを示す情報が少なくとも含まれているものとする。
なお、図4には示していないが、第1無線基地局10aは、無線端末20において追加されるL2エンティティの通信相手である旨を第2無線基地局10bに通知することとしても良い。これにより第2無線基地局10bは、無線端末20の存在を予め把握でき、後の処理をスムーズに行うことが可能となる。
図4のS102で第1無線基地局10aは、追加するL2エンティティ(追加L2エンティティ)を作動させることを決定する。第1無線基地局10aは、任意の規則に基づいて、S102の決定を行うことができる。一例としては、第1無線基地局10aは、自局の負荷が所定以上となった場合に、追加L2エンティティを作動させることを決定できる。他の例としては、第1無線基地局10aは、第2無線基地局10bの負荷を示す情報を第2無線基地局10bから受信しておき、自局の負荷と第2無線基地局10bの負荷の差分が所定以上となった場合に、追加L2エンティティを作動させることを決定できる。
ここで、図4のS102はS101の時後であることに注意する。すなわち、図4のS101はS102の時前となる。言い換えれば、図4のS101で第1無線基地局10aは、S102で追加L2エンティティを作動させることを決定する前に、追加L2エンティティに関する情報をL3制御信号で無線端末20に送信する。
なお、上記の説明によれば、S102で第1無線基地局10aは、無線端末20においてL2エンティティ(追加L2エンティティ)を作動させることを決定するものとなっている。しかしながら、S102の決定は、第2無線基地局10bにおいてL2エンティティを作動させることを決定するものであってもよい。また、S102の決定は、無線端末20および第2無線基地局10bの両方においてL2エンティティを作動させることを決定するものであってもよい。
S103で第1無線基地局10aは、S101で情報を送信した追加L2エンティティに関し、作動を指示する情報を第2の制御信号で無線端末20に送信する。一方、無線端末20は、S101で情報を受信した追加L2エンティティに関し、作動を指示する情報を第2の制御信号で無線基地局10から受信する。第2の制御信号としては、L2制御信号、例えばMAC制御パケット(MAC Control PDU (Protocol Data Unit))、RLC制御パケット(RLC Control PDU)、PDCP制御パケット(PDCP Control PDU)等を用いることができる。
ここで、S103のL2制御信号は、S101で情報を送信した追加L2エンティティに関し、作動を指示することを示す情報(便宜上、作動指示情報と呼ぶ)を含めば良いことに留意する。作動指示情報は、1ビットでも実現可能であるが、所定のビット列で実現することができる。作動指示情報は、例えば従来のL2制御信号に新たな領域を設けてそこに格納することとしてもよいし、従来のL2制御信号における予約ビットに格納することとしてもよい。一例としては、既存のL2制御信号が備える予約ビット中の1ビットを用いて作動指示情報を実現することが考えられる。
なお、図4には示していないが、第1無線基地局10aは、追加L2エンティティを無線端末20において作動させる旨を第2無線基地局10bに通知することとしても良い。これにより第2無線基地局10bは、後の処理をスムーズに行うことが可能となる。
S104で無線端末20は、S103で作動指示情報を受信したことに応じて、追加L2エンティティを作動させる。このとき無線端末20は、S101で受信した追加L2エンティティ情報に基づいて、追加L2エンティティを作動させる。例えば、前述したように、追加L2エンティティ情報は少なくとも追加L2エンティティが作動する無線基地局10(図4の例では第2無線基地局10b)を示す情報を含む。これにより、無線端末20は追加L2エンティティの接続先となる無線基地局10が第2無線基地局10bとなるように追加L2エンティティを作動させることができる。これにより、無線端末20は第2無線基地局10bに接続することになり、その結果2元接続が実現する。
また、例えば追加L2エンティティ情報が、追加L2エンティティが作動する無線基地局10における上りの周波数帯域に関する情報を含む場合、この情報に基づいて当該無線基地局10に対するランダムアクセスを行うことができる。さらに、例えば追加L2エンティティにおける処理(L2層における処理)に関する各種パラメータを含む場合、当該パラメータを設定した追加L2エンティティを作動させることもできる。
図4に示す処理シーケンスによれば、無線端末20は第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を実現できる。また、図4と同様の処理シーケンスにより、データリンク層におけるデータの分離(データリンク層におけるエンティティの追加)を実現することが可能となることは言うまでもない。
以下では、この処理シーケンスの作用および効果について考察する。
S103の作動指示情報は、上記で述べたように、L2制御信号で実現する。L2制御信号は比較的下位層の制御信号であるため、上位層の制御信号であるL3制御信号と比較して、処理が軽くて高速であるといった利点がある。S103の作動指示情報をL2制御信号で実現することにより、S102で追加L2エンティティの作動の開始を決定してから、速やかに、S104で当該追加L2エンティティを作動させることが可能となる。
また、上記で述べたように、作動指示情報は情報量が少ないため(1ビットでも実現可能)、L2制御信号の予約ビット等を利用して送信することができる。前述したように、L2制御信号に対する変更はできるだけ避けられるべきものであるため、このような実現形態は望ましいものであると考えられる。
一方、作動指示情報の情報量が少ないことの反作用として、予めL3制御信号で送信する追加L2エンティティ情報は情報量が比較的多くなることは避けられない。しかしながら、前述したように、L3制御信号は拡張性が高いため、情報量が多くなることによる弊害はほとんどないものと考えられる。
さらに、前述したように、L3制御信号は処理が重く送受信に時間を要するというデメリットがある。しかしながら、上記で述べたように、L3制御信号で送信される追加L2エンティティ情報は、事前に(追加L2エンティティの作動の開始を決定する前に)無線基地局10から無線端末20に送信される。そのため、追加L2エンティティの作動が決定された後に、作動までに時間を要するような問題は発生しないと考えられる。
したがって、図4に示される第1実施形態の処理シーケンスは、L2制御信号とL3制御信号を使い分けることで、互いの不足を補い合い、利点を享受できる方式となっている。
以上で説明した第1実施形態によれば、L3制御信号に伴う遅延の問題と、L2制御信号に伴う拡張性の問題とをいずれも解消しつつ、2元接続を始めとするデータリンク層でのデータの分離を実現することが可能となる。したがって、第1実施形態は、高速性と互換性とを兼ね備えた2元接続(データリンク層でのデータの分離)の切り替えを実現できるという従来技術には無い新たな効果を奏するものである。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに適用したものであり、具体的には、第1実施形態におけるL2エンティティ(処理主体)をRLCエンティティとし、第1制御信号をRRC信号とし、第2制御信号をRLCコントロールパケットとしたものである。すなわち、第2実施形態は、複数のRLCエンティティを作動させることで、RLC層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。
図6に第2実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、無線端末20、第1無線基地局10a、および第2無線基地局10bが登場する。典型例としては、第1無線基地局10aがマクロ無線基地局10であり、第2無線基地局10bがスモール無線基地局10である場合が考えられる。しかし、第1無線基地局10aがスモール無線基地局10であっても良いし、第2無線基地局10bがマクロ無線基地局10であっても構わない。
図6に示される第2実施形態の前提をいくつか説明する。図6においては、無線端末20は第1無線基地局10aにも第2無線基地局10bにも接続していないものとする。ここで「無線端末20が無線基地局10に接続」とは、無線端末20において無線基地局10と同期が取れるとともに必要な設定が完了することで、無線端末20と無線基地局10の間でデータの送受信が可能な状態を指すものとする。LTEシステムにおいては、このような接続状態をRRC_CONNECTED状態と呼ぶ。一方、無線端末20が無線基地局10に接続していない状態をRRC_IDLE状態と呼ぶ。
無線端末20が無線基地局10に接続しているとき、無線端末20と無線基地局10との間には、複数の階層から成る論理的な通信路が構築されている。この論理的な通信路はベアラ(Bearer)と呼ばれる。LTEシステムにおいては、2種類のベアラであるDRB(Data Radio Bearer) とSRB(Signalling Radio Bearer)が規定されている。DRBは、U-Plane(User Plane)と呼ばれるいわゆるユーザプレーン(データプレーン)に対応しており、ユーザデータの送受信に用いられる論理的な通信路である。SRBは、C-Plane(Control Plane)と呼ばれるいわゆる制御プレーンに対応しており、L3信号であるRRC信号の送受信に用いられる論理的な通信路である。
U-Plane(DRB)や C-Plane(SRB)は、階層的なプロトコルスタック(プロトコル層)により構成されている。以下では例としてU-Planeのプロトコルスタックを説明するが、C-Planeも同様に説明することが可能である。
U-Planeのプロトコルスタックは、下位から第1層(L1)である物理層、第2層(L2)であるデータリンク層、第3層(L3)であるネットワーク層を少なくとも含む。さらに、データリンク層は、下位からMAC(Media Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、PDCP(Packet Data Control Protocol)層に分かれている。MAC層はスケジューラ機能等を、RLC層はシーケンス制御等を、PDCP層はセキュリティ等をそれぞれ担当している。
U-Plane(DRB) のプロトコルスタックは、各階層において作動するエンティティと呼ばれる論理的な(あるいは仮想的な)処理主体によって構成され、送信処理や受信処理は各エンティティが各階層の処理を行うことで実現される。
図7に第2実施形態に係るU-Planeのプロトコルスタックの一例を示す。第2実施形態は、冒頭で述べたように、複数のRLCエンティティを作動させることで、RLC層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。図7には、第1無線基地局10a(例えばマクロ無線基地局10)と第2無線基地局10b(例えばスモール無線基地局10)で作動するエンティティが図示されており、PDCPエンティティは第1無線基地局10aのみで作動している。これに対し、RLCエンティティ、MACエンティティ、および物理エンティティは、第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとのそれぞれで作動している。このように複数のRLCエンティティを作動させることで、RLC層でデータを分離して2元接続等を実現することが可能となる。
なお、図7においてRLCエンティティのみが上りと下りで別個のものとなっているが、これは3GPPの仕様に基づいているためである。また、図7においては各無線基地局10で作動する物理エンティティが一つである場合を例示しているが、キャリアアグリゲーションを適用することにより複数の物理エンティティを作動させても構わない。本願においては、第1無線基地局10aで作動するRLCエンティティをプライマリRLCエンティティ、第2無線基地局10bで作動するRLCエンティティをセカンダリRLCエンティティと称する場合がある。
ところで、前述したように、本願の目的の一つは2元接続を行うことである。そのため図6は、無線端末20が第1無線基地局10aおよび第2無線基地局10bと2元接続を実現する場合の処理シーケンスの一例となっているとともに、図7は2元接続を実現するプロトコルスタックを示している。ただし、本実施形態は2元接続の実現には限られるものではなく、1つの無線基地局10が複数個の上り(下り)RLCエンティティを作動させる場合にも適用できることに注意されたい。
図6の各処理について順を追って説明する。図6のS201〜S204において,無線端末20は第1無線基地局10aに接続し、データを送受信可能な接続状態であるRRC_CONNECTED状態に移行する。具体的には、S201で無線端末20は第1無線基地局10aとの間でランダムアクセスを行う。これにより、無線端末20は第1無線基地局10aとの間で上りの同期を確立する。その後、S202で無線端末20は、接続状態のセットアップを要求するRRC信号であるRRC Connection Setup Requestメッセージを第1無線基地局10aに送信する。これに対し、S203で第1無線基地局10aは、無線端末20に接続状態のセットアップを行わせるためのRRC信号であるRRC Connection Setupメッセージを無線端末20に送信する。RRC Connection Setupメッセージは、無線端末20がRRC_CONNECTED状態に移行するために必要な各種パラメータを含んでいる。これに対し、S204で無線端末20は、接続状態(RRC_CONNECTED状態)のセットアップを行った上で、接続状態のセットアップが完了した旨を示すRRC信号であるRRC Connection Setup Completeメッセージを第1無線基地局10aに送信する。S201〜S204は一般的なLTEシステムにおいて行われている接続処理そのものであるため、ここでは詳細な説明は割愛する。
S201〜S204により無線端末20はRRC_CONNECTED状態に移行したことにより、U-Plane(DRB)およびC-Plane(SRB)を第1無線基地局10aとの間で確立する。U-PlaneやC-Planeにおいては、前述したように、下位から物理エンティティ、MACエンティティ、RLCエンティティ(上りと下り)、PDCPエンティティがそれぞれ作動する。これによって、無線端末20は第1無線基地局10aとの間でU-Planeを介してユーザデータの送受信を行うことができるようになる。また、無線端末20は第1無線基地局10aとの間でC-Planeを介して種々のRRC信号の送受信を行うことができるようになる。なお、SRBには3種類あり、S201〜S204の後に確立されるのはSRB2であり、その前にSRB0やSRB1が確立されることでごく一部のRRC信号(例えばS202〜S204)の送受信が可能であるが、ここでは詳細は割愛する。
次に、図6のS205で無線端末20は、近隣セルの測定結果である測定レポート(measurement Report)を第1無線基地局10aに送信する。無線端末20は、第1無線基地局10aに接続すると(RRC_CONNECTED状態に移行すると)、定期的に隣接セルからの受信電力等を測定して第1無線基地局10aに通知する。この測定レポートは、例えば無線端末20のハンドオーバ先無線基地局10の選定等に使用される。第1無線基地局10aは、無線端末20に測定させる1つ以上の隣接セルをRRC Connection Reconfigurationメッセージ(不図示)で事前に指示する。第1無線基地局10aがマクロ無線基地局10である場合、無線端末20に測定させる隣接セルとして、第1無線基地局10aが構成するマクロセル内に配置されるスモールセルを構成するスモール無線基地局10を含めることができる。
S206で第1無線基地局10aは、S205で受信した測定レポートに基づいて、追加するRLCエンティティを作動させる無線基地局10を決定し、当該RLCエンティティの追加を無線端末20に指示する。この決定は、無線端末20による2元接続におけるもう一方の接続先となる無線基地局10の決定に相当する。例えば第1無線基地局10aは、受信した測定レポートにおいて受信電力が最大であったスモール無線基地局10を、追加するRLCエンティティが作動する無線基地局10として決定することができる。図6の例では、追加するRLCエンティティが作動する無線基地局10として第2無線基地局10b(例えば、マクロ無線基地局10である第1無線基地局10aの配下のスモール無線基地局10の一つ)を選択したものとする。
S206の指示は、例えばRRC_CONNECTED状態の無線端末20に対して各種のパラメータを再設定するためのRRC信号であるRRC Connection Reconfigurationメッセージを用いて行うことができる。3GPPで規定されているRRC Connection Reconfigurationメッセージには、Radio Resource Config Dedicated 情報要素が含まれている。さらにRadio Resource Config Dedicated 情報要素にはRLC-Config情報要素が含まれている。Radio Resource Config Dedicated 情報要素には、RLC-Config情報要素は、DRB(U-Plane)とSRB(C-Plane)とで1つずつ設定される。このRLC-Config情報要素において、追加するRLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)に関する情報を格納することができる。
ここで、比較のために、図8に従来のLTEシステムにおけるRRC Connection Reconfigurationメッセージを示す(抜粋)。また、図9、図10に、従来のLTEシステムにおけるRadio Resource Config Dedicated 情報要素とRLC-Config情報要素を示す(それぞれ抜粋)。なお、これらの図のみならず、後述する図11〜図13におけるパラメータ名や情報要素名においては、同一のものであっても、英文字の大文字と小文字の差やスペースの有無の差等が含まれうることに注意されたい。
図8に示す従来のRRC Connection Reconfigurationメッセージには、3GPPの各Release(バージョン)で規定された接続設定に関するパラメータ群が入れ子構造で格納されている。例えば、図8に示されるように、RRC Connection Reconfigurationメッセージには、3GPPのRelease8で規定されたパラメータ群を含む情報要素であるRRCConnectionReconfiguration-r8-IEsが含まれている。そして、図8に示されるように、RRCConnectionReconfiguration-r8-IEs には、3GPPのRelease8(バージョン8.90)で規定されたパラメータ群を含む情報要素であるRRCConnectionReconfiguration-r890-IEsが含まれている。以下、図8においては省略されているが、3GPPの各Release(バージョン)で規定された接続設定に関するパラメータ群が入れ子構造で格納されている。図8に示すように、本願出願時においては、3GPPのRelease11(バージョン11.30)で規定されたパラメータ群を含む情報要素であるRRCConnectionReconfiguration-r1130-IEsが、入れ子構造における最も深い要素となっている。
ここで、前述したRRCConnectionReconfiguration-r8-IEsには、図8に示されるように、無線リソースの個別設定パラメータ群に相当するRadio Resource Config Dedicated(radioResourceConfigDedicated)情報要素が含まれている。次に、図9に示すように、従来のRadio Resource Config Dedicated 情報要素には、DRBに関する設定を行うためのDRB-ToAddMod情報要素とSRBに関する設定を行うためのSRB-ToAddMod情報要素が含まれている。そして、DRB-ToAddMod情報要素とSRB-ToAddMod情報要素のそれぞれにおいて、RLC-Config情報要素が一つずつ含まれている。
図10に示す従来のRLC-Config情報要素には、RLCエンティティの動作モード毎にパラメータが設定される。ここで、RLCエンティティにはAM(Acknowledge Mode)、UM(Unacknowledge Mode)、TM(Transparent Mode)という3つの動作モードがある。AMは最も信頼性が高いため一般的にはTCPトラフィック等に対して適用されやすく、UMはAM程の信頼性は無い代わりに遅延が少ないためVoipトラフィック等に適用されやすいが、必ずしもこの限りではない。RLC-Config情報要素においては、RLC自体を透過とするTMを除く、AMとUMに関する設定が行われる。前述したように、RLCエンティティは上りと下りで別個であるため、上りのAMを設定するul-AM-RLC、下りのAMを設定するdl-AM-RLC、上りのUMを設定するul-UM-RLC、下りのUMを設定するdl-UM-RLCがそれぞれ用意されている。また、UMについては双方向(Bi-Directional)の場合と一方向(Uni-Directional)の場合がある。RLC-Config情報要素に含まれる各情報要素の詳細については割愛する。
これに対し、図11に本実施形態に係る無線通信システムにおけるRRC Connection Reconfigurationメッセージの一例を示す(抜粋)。また、図12、図13に、本実施形態に係る無線通信システムにおけるRadio Resource Config Dedicated 情報要素とRLC-Config情報要素の一例を示す(それぞれ抜粋)。なお、各図において、従来のメッセージや情報要素に対して実質的に追加された箇所に下線を付している。また、各パラメータや情報要素の名前において、release12で規定されたことを示す接尾辞(suffix)である"-r12"が付されているが、これは慣例に基づく。
図11に示す本実施形態のRRC Connection Reconfigurationメッセージにおいては、前述したRRCConnectionReconfiguration-r1130-IEsがさらに、例えば3GPPのRelease12で規定されたパラメータ群を含む情報要素であるRRCConnectionReconfiguration-r1200-IEsをさらに含んでいる。そして、RRCConnectionReconfiguration-r1200-IEsは、図11に示されるようにSPCellToAddModList-r12情報構成要素を含んでおり、さらにSPCellToAddModList-r12情報構成要素は1以上のSPCellToAddMod-r12情報要素を含んでいる。なお、SPCellはSecondary Primary Cellの略称であるが、図11〜図13に示される各パラメータや各情報要素等の名称は一例にすぎないことは言うまでもない。
ここで、SPCellToAddMod-r12情報要素には追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)の追加や設定変更を行うための情報要素であり、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10に関する情報を含んでいる。SPCellToAddMod-r12情報要素は、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10を示す識別情報であるPhysCellID-r12を含む。図6のS206のRRC Connection Reconfigurationメッセージにおいては、PhysCellIDには第2無線基地局10bを示す識別情報が設定される。
また、SPCellToAddMod-r12情報要素は、図11に示されるように、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10が用いる周波数帯域の下りの周波数を示す情報であるdl-CarrierFreq-r12情報要素を含むことができる。SPCellToAddMod-r12情報要素は、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10における無線リソースの共通設定を行うためのradioResourceConfigCommonSPCell-r12や、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10における無線リソースの個別設定を行うためのradioResourceConfigDedicatedSPCell-r12を含むことができる。SPCellToAddMod-r12情報要素が含む各情報は、従来のLTEシステムにおいてキャリアアグリゲーションにおけるSCell(Secondary Cell)に関する情報を格納する情報要素であるSCellToAddMod-r10情報要素に含まれる各情報に沿ったものとすることができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
次に、図12に、SPCellToAddMod-r12情報要素に含まれる情報要素の一つであるradioResourceConfigDedicatedSPCell-r12情報要素(前述)の一例を示す。radioResourceConfigDedicatedSPCell-r12情報要素が含む各情報は、従来のLTEシステムにおけるradioResourceConfigDedicated情報要素(図9)に概ね沿ったものとすることができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。ただし、本実施形態におけるradioResourceConfigDedicatedSPCell-r12情報要素が含むRLC-Config-r12情報要素については、従来のLTEシステムにおけるradioResourceConfigDedicated情報要素(図9)が含むRLC-Config(図10)と実質的な差異があるため、ここで説明する。
図13に、本実施形態におけるRLC-Config-r12情報要素の一例を示す(図10との実質的な差分に下線を付している)。図13に示すRLC-Config-r12情報要素においては、プライマリRLCエンティティを設定するためのul-AM-RLC-r12、dl-AM-RLC-r12、ul-UM-RLC-r12、およびdl-UM-RLC-r12に加えて、セカンダリRLCエンティティを設定するためのul-AM-sRLC-r12、dl-AM-sRLC-r12、ul-UM-sRLC-r12、およびdl-UM-sRLC-r12を設定することができる。これらのパラメータには、前述したように慣例に基づいて接尾辞である"-r12"が付されているが、これが付されていないパラメータと同等に取り扱うことができるため詳細な説明は割愛する。
図6の説明に戻って、S207で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)に関する情報を、当該エンティティを作動させる無線基地局10である第2無線基地局10bに対して通知する。このとき、無線端末20に関する情報を通知してもよい。これにより、第2無線基地局10bは、自局が追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10として選択されたことを認識できる。なお、図6で図示していないが、第2無線基地局10bはS207の通知に対する応答信号(ACK)を、第1無線基地局10aに送信してもよい。S207の信号およびそれに対する応答信号は、無線基地局10間のインタフェースであるX2インタフェースにおけるメッセージであるX2 APメッセージにより実現することができる。
なお、前述したように、無線端末20はRRC_CONNECTED状態に移行したS203以降、定期的に、S206のような測定レポートを第1無線基地局10aに送信する。そして、第1無線基地局10aは、受信した測定レポートにおいて受信電力が最大であったスモール無線基地局10が第2無線基地局10bと異なる無線基地局10(第3無線基地局10とする)になった場合のように、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10を変更する必要が生じた場合、変更する旨の通知を無線端末20、第2無線基地局10b、第3無線基地局10に通知する。これは、S206〜S207と同様にして行えばよい。
また、前述したように、無線端末20はRRC_CONNECTED状態に移行したことにより、無線端末20は第1無線基地局10aとの間でU-Planeを介してユーザデータの送受信を行うことができるようになる。例えば、図6のS208で第1無線基地局10aは、下りのユーザデータを無線端末20に送信する。もちろん、無線端末20が上りのユーザデータを第1無線基地局10aに送信することも可能である。
ところで、第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させるか否かの判断を定期的に行うものとする。この判断は例えば次のようにして行うことができる。
まず、第1無線基地局10aは前記の判断を行うための判断材料として、配下のスモールセルから負荷に関する情報を受信するものとする。図6においては、例えばS209で第1無線基地局10aは、配下のスモールセルの一つである第2無線基地局10bから負荷に関する情報を受信している。負荷に関する情報は、プロセッサの使用率やメモリの使用率等のような計算機リソースに基づく情報であってもよいし、接続無線端末20数や無線リソース使用量のような無線リソースに基づく情報であってもよい。なお、図6で図示していないが、第1無線基地局10aはS209の通知に対する応答信号(ACK)を、第2無線基地局10bに送信してもよい。S209の信号およびそれに対する応答信号は、前述したX2 APメッセージにより実現することができる。
このとき第1無線基地局10aは、自局の負荷情報を取得し、これと他の無線基地局10から受信した他局の負荷情報とに基づいて、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させるか否かの判断を定期的に行うことができる。図6においては、例えばS210で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティを作動させるか否かの判断を行っている。この判断において、例えば第1無線基地局10aは、自局の負荷と他局の負荷の差分が所定以上となった場合に、追加RLCエンティティを作動させることを決定することができる。図6の例では、S211において第1無線基地局10aは、自局の負荷と第2無線基地局10bの負荷の差分が所定以上となったこと(負荷増大)により、追加RLCエンティティを作動させることを決定したものとする。
なお、上記の説明によれば、S210で第1無線基地局10aは、無線端末20において追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させることを決定するものとなっている。しかしながら、S210の決定は、第2無線基地局10bにおいてセカンダリRLCエンティティを作動させることを決定するものであってもよい。また、S210の決定は、無線端末20および第2無線基地局10bの両方においてセカンダリRLCエンティティを作動させることを決定するものであってもよい。
図6のS211で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動(Activation)するためのL2信号を無線端末20に送信する。本実施形態においては、S211におけるL2信号として、RLC層の制御パケットであるRLC Control PDUを用いて行う。
ここで、比較のために、図14に従来のLTEシステムにおけるRLC Control PDUを示す。図14に示すRLC Control PDUにおいて着目すべきは、CPT(Control PDU Type)と呼ばれる領域である。CPTは、RLC Control PDUのタイプ(種類)を示す3ビットの情報である。ここで重要なのは、CPTは、値が000以外の場合については予約(reserved)されていることである。CPT以外の領域については本願とはあまり関係がないので説明は割愛する。
これに対し、図15A〜図15Dに本実施形態で用いるRLC Control PDUを示す。図15Aに示すRLC Control PDUにおいては、CPTの値を予約されているビット列のいずれか(例えば001)に設定する。これにより、RLC Control PDUのタイプを、本願の目的に適う新規なものとすることができる。言い換えれば、RLC Control PDUのフォーマットを本願の目的に適う新規なものとしても、仕様との互換性を保つことが可能となる。
図15Aに示すRLC Control PDUにおいては、4つのパラメータP_DL、S_DL、P_UL、S_ULを含む。これらはそれぞれ1ビットであり、RLCエンティティそれぞれの作動(アクティベーション: Activation)を1で指定し、RLCエンティティの作動停止(デアクティベーション: Deactivation)を0で指定する。より具体的には、P_DLは下りのプライマリRLCエンティティの作動または作動停止を指定し、S_DLは下りのセカンダリRLCエンティティの作動または作動停止を指定し、P_ULは上りのプライマリRLCエンティティの作動または作動停止を指定し、S_ULは上りのセカンダリRLCエンティティの作動または作動停止を指定する。
図6のS211で第1無線基地局10aは、S210の決定に基づき、第2無線基地局10bにおける追加エンティティを作動させるためのRLC Control PDUを無線端末20に送信する。このとき図15Aに示すRLC Control PDUにおいては、CPTの値を001に、P_DLの値を1(作動)に、S_DLの値を1(作動)に、P_ULの値を1(作動)に、S_ULの値を1(作動)とすればよい。これは、第1局において作動中のRLCエンティティを維持しつつ、第2無線基地局10bにおける追加エンティティを作動させることに相当する。言い換えれば、無線端末20が第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を行うことに相当する。
ちなみに、例えば、図15Aに示すRLC Control PDUにおいて、CPTの値を001に、P_DLの値を1(作動)に、S_DLの値を0(作動停止)に、P_ULの値を1(作動)に、S_ULの値を1(作動)とすることもできる。この場合の無線端末20は、上りのみにおいて、第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を実現する。これにより上り送信の特性向上等の効果が得られる。
なお、図15AではプライマリRLCエンティティとセカンダリRLCエンティティとのそれぞれについて、上りと下りの作動または作動停止を別個に設定している。しかしながら、上りと下りの作動または作動停止を一括して設定することとしても良い。
図15Bに、本実施形態におけるRLC Control PDUの他の一例を示す。図15Bに示すRLC Control PDUにおいては、PはプライマリRLCエンティティ(上りおよび下り)の作動または作動停止を指定し、SはセカンダリRLCエンティティ(上りおよび下り)の作動または作動停止を指定する。前述したように、各RLCエンティティにおける上りと下りの設定は本実施形態におけるRLC-Config-r12情報要素(図13)において上りと下りで別個に行われる。そのため、RLC Control PDUによる作動または作動停止の指定は、上りと下りが一括であっても特に支障がないものと考えられる。
さらに、プライマリRLCエンティティについては作動または作動停止の指定を行わず、セカンダリRLCエンティティのみについて作動または作動停止の指定を行うこととしても良い。
図15Cに、本実施形態におけるRLC Control PDUの他の一例を示す。図15Cに示すRLC Control PDUにおいては、SはセカンダリRLCエンティティ(上りおよび下り)の作動または作動停止を指定する。図15Cに示すRLC Control PDUにおいては、プライマリRLCエンティティについては作動または作動停止の指定を行わない。プライマリRLCエンティティは常に作動していることを前提とすることも可能であるため、そのような場合には図15Cに示すRLC Control PDUで必要十分であると考えられる。
ところで、図15Aに示すRLC Control PDUにおいて例えばP_DL、S_DL、P_UL、S_ULの値を全て1とした場合、前述したように、無線端末20は第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を実現する。このとき、2元接続を上位レイヤでどのような態様で使い分けても構わない。一つ目の例としては、C-Plane(SRB)を第1無線基地局10aで作動するプライマリRLCエンティティで処理し、U-Plane(DRB)を第2無線基地局10bで作動するセカンダリRLCエンティティで処理させることができる。これによりユーザデータのオフロードを実現し、第1無線基地局10aの負荷を低減することができる。二つ目の例としては、まずはC-PlaneとU-Planeのいずれも第2無線基地局10bで作動するセカンダリRLCエンティティで処理し、フォールバック時にそれらを第1無線基地局10aで作動するプライマリRLCエンティティで処理することもできる。これにより、ユーザデータに加えL3信号(RRC信号)もオフロードできるとともに、フォールバック時の瞬断を回避することが可能となる。三つ目の例としては、C-Planeを第1無線基地局10aで作動するプライマリRLCエンティティで処理し、U-Planeを前記プライマリRLCエンティティと第2無線基地局10bで作動するセカンダリRLCエンティティとを併用して処理させることができる。これにより、ユーザデータのスループットを高めることができる。他にも様々な態様で2元接続を使い分けることができる。
なお、ここで上げた3つの例あるいはその他の態様を示す情報を、図6のS211におけるRLC Control PDUに含ませるようにすることもできる。図15Dに、そのようなRLC Control PDUの例を示す。図15Bに示すRLC Control PDUにおいては、8つのパラメータDRB_P_DL、DRB_S_DL、DRB_P_UL、DRB_S_UL、SRB_P_DL、SRB_S_DL、SRB_P_UL、SRB_S_ULを含む。例えばDRB_S_DLは、DRB(U-Plane)における下りのセカンダリRLCエンティティの作動または作動停止を指定する。その他の7つも同様である。これにより、例えばDRB_S_DL、DRB_S_UL、SRB_P_DL、SRB_P_ULの4つの値をそれぞれ1(作動)に、DRB_P_DL、DRB_P_UL、SRB_S_DL、SRB_S_ULの4つの値をそれぞれ0(作動停止)とすることで、上記の一つ目の例で示した2元接続の態様を示すことができる。上述したように、S206のRRC Connection ReconfigurationメッセージにおいてはDRBとSRBとについて別個にRLC-Config情報要素が設定されるため(図13)、S211のRLC Control PDUにおいても図15BのようにDRBとSRBとについて別個に設定を行っても特に問題は無いと考えられる。
図6の説明に戻って、S211で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動するため、図15A〜図15Dで例示されるRLC Control PDUを無線端末20に送信する。次にS212で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティを作動することを第2無線基地局10bに対して通知する。図6で図示していないが、第2無線基地局10bはS212の通知に対する応答信号(ACK)を、第1無線基地局10aに送信してもよい。S212の信号およびそれに対する応答信号は、前述したX2 APメッセージにより実現することができる。
一方、S213で無線端末20は第2無線基地局10bとの間でランダムアクセスを行う。このとき、無線端末20はS206のRRC Connection Reconfigurationメッセージに含まれる第2無線基地局10bの下りの無線周波数を示す情報(図11におけるdl-CarrierFreq-r12情報要素)を用いて、第2無線基地局10bと下りの同期を取った上で、ランダムアクセスを行うことができる。S213のランダムアクセスにより、無線端末20は第2無線基地局10bとの間で上りの同期を確立する。また、無線端末20と第2無線基地局10bとの間でU-PlaneおよびC-Planeが確立され、無線端末20に対する2元接続が実現される。これにより、無線端末20は第2無線基地局10bとの間で例えばUプレーンを介してユーザデータの送受信を行うことができるようになる。前述したように、2元接続をどのような態様で使い分けるかについては基本的には問わない。しかしながら、S211において図15Dで例示されるRLC Control PDUが用いられた場合には、無線端末20はそこで示される態様に沿って2元接続の使い分けを行う。
図6に示す例では、一例として、C-Plane(SRB)を第1無線基地局10aで作動するプライマリRLCエンティティで処理し、U-Plane(DRB)を第2無線基地局10bで作動するセカンダリRLCエンティティで処理する態様で2元接続を使うものとする。この場合、S213より以降において、第1無線基地局10aが無線端末20に下りのユーザデータを送信する場合、当該ユーザデータを第2無線基地局10bに一旦転送する必要がある。そして、第2無線基地局10bが、転送されたユーザデータを無線端末20に対して無線送信することになる。
第1無線基地局10aから第2無線基地局10bへのデータの転送方法を説明する。無線基地局10間のデータの転送にはGTP-U(GPRS (General Packet Radio Service) Tunnelling Protocol User)を用いるが、これには2通りの方法が考えられる。1つ目の方法は、RLC層のプロトコルデータ単位であるRLC PDUで転送を行うものである。1つ目の方法では、GTPのヘッダ部にGTPのSNを格納するとともに、ペイロード部にRLC層のサービスデータ単位であるRLC SDU(Service Data Unit)を格納して転送する。この意味では、RLC SDUで転送を行うといってもよい。RLC SDUは、RLC層の上位層であるPDCP層のプロトコルデータ単位であるPDCP PDUであり、PDCP層のサービスデータ単位であるPDCP SDUにPDCP層のシーケンス番号(SN: Sequence Number)が付加されたものとなっている。これに対し2つ目の方法は、前記のPDCP PDUで転送を行うものである。2つ目の方法では、GTPの拡張ヘッダ部にPDCPのシーケンス番号を格納するとともに、ペイロード部にRLC層のサービスデータ単位であるPDCP SDUを格納して転送する。この意味では、PDCP SDUで転送を行うといってもよい。
図6では例えば、S214で第1無線基地局10aは下りのユーザデータを第2無線基地局10bへ転送している。そしてS215で第2無線基地局10bは、下りのユーザデータを無線端末20に無線送信する。一方、例えばS216で第1無線基地局10aは、RRC信号(L3信号)を無線端末20に無線送信する。前述したように、図6の例ではC-Plane(SRB)を第1無線基地局10aで作動するプライマリRLCエンティティで処理するため、RRC信号は第1無線基地局10aにより(第2無線基地局10bを介することなく)無線端末20に送信されるためである。
ところで、前述したように、第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させるか否かの判断を定期的に行う。具体的には、第1無線基地局10aは、自局の負荷情報を取得し、これと他の無線基地局10から受信した他局の負荷情報(S217)とに基づいて、追加RLCエンティティを作動させるか否かの判断を定期的に行う。ここで、図6において、S218において第1無線基地局10aは、自局の負荷と第2無線基地局10bの負荷の差分が所定未満となったこと(負荷減少)により、追加RLCエンティティを作動停止させることを決定したものとする。
このとき、S219で第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティを作動停止(Deactivation)するためのL2信号を無線端末20に送信する。本実施形態においては、S219におけるL2信号として、既に詳述した図15A〜図15Dに例示されるようなRLC Control PDUを用いて行うことができる。一例として、図15Aに示すRLC Control PDUを用いる場合、CPTの値を001に、P_DLの値を1(作動)に、S_DLの値を0(作動停止)に、P_ULの値を1(作動)に、S_ULの値を0(作動停止)とすればよい。これは、第1局において作動中のRLCエンティティを維持しつつ、第2無線基地局10bにおける追加エンティティを作動停止させることに相当する。言い換えれば、無線端末20は2元接続を解除し、第1無線基地局10aのみとの1元接続に移行する。
次にS220で第1無線基地局10aは、RLCエンティティを作動停止することを第2無線基地局10bに対して通知する。図6で図示していないが、第2無線基地局10bはS220の通知に対する応答信号(ACK)を、第1無線基地局10aに送信してもよい。S220の信号およびそれに対する応答信号は、前述したX2 APメッセージにより実現することができる。
無線端末20は1元接続に移行したため、以降は、無線端末20はL3信号(RRC信号)のみならずユーザデータをも、(第2無線基地局10bを介さず)第1無線基地局10aから無線信号で受信する。図6においては、例えばS221で第1無線基地局10aは、下りのユーザデータを無線端末20に送信している。
図6に示される第2実施形態の処理シーケンスは、第1実施形態と同様に、L2制御信号(具体的にはRLC Control PDU)とL3制御信号(具体的にはRRC信号)を使い分けることで、互いの不足を補い合い、利点を享受できる方式となっている。第2実施形態によって得られる作用および効果は第1実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
以上で説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、L3制御信号(RRC信号)に伴う遅延の問題と、L2制御信号(RLC Control PDU)に伴う拡張性の問題とをいずれも解消しつつ、2元接続を始めとするデータリンク層(RLC層)でのデータの分離を実現することが可能となる。したがって、第2実施形態によれば、高速性と互換性とを兼ね備えた2元接続(データリンク層でのデータの分離)の切り替えを実現することができる。
なお、2実施形態に係るRRC Connection Reconfigurationメッセージ(図6のS206等)については、前述したように、図11に示したものは一例に過ぎない。ここでは他の例について簡単に説明する。
図16に第2実施形態に係るRRC Connection Reconfigurationメッセージの他の一例を示す。図16では、RRCConnectionReconfiguration-v1200-IFs情報要素において、図11のSPCellToAddMod-r12情報要素の代わりに、secondaryConnectivityControlInfo-r12情報要素が含まれている。
図17に、secondaryConnectivityControlInfo-r12情報要素の一例を示す。図17に示されるように、secondaryConnectivityControlInfo-r12情報要素には、前述したSPCellToAddMod-r12情報要素に含まれるのと同種の情報が含まれている。例えば、secondaryConnectivityControlInfo-r12情報要素には、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させる無線基地局10を示す識別情報であるsecondaryPhysCellID-r12を含む。また、secondaryConnectivityControlInfo-r12情報要素は、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10が用いる周波数帯域を示す情報(carrierFrweq-r12、carrierBandwidth-r12)を含むことができる。SPCellToAddMod-r12情報要素は、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10における無線リソースの共通設定を行うためのradioResourceConfigCommonSPCell-r12や、追加RLCエンティティを作動させる無線基地局10における無線リソースの個別設定を行うためのradioResourceConfigDedicatedSPCell-r12(図12)を含むことができる。SPCellToAddMod-r12情報要素が含む各情報は、従来のLTEシステムにおいてハンドオーバ先無線基地局10に関する情報を格納する情報要素であるMobility Control Info情報要素に含まれる各情報に沿ったものとすることができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
第2実施形態の最後に、以下では、第2実施形態に付随する各種の制御処理について説明する。これらの制御処理は第2実施形態において必須のものではないが、第2実施形態をさらに有用なものとすることができるため、可能であれば実現するのが望ましいと考えられる。なお、これらの制御処理は、本願における他の実施形態にも同様に適用可能であるが、他の実施形態においては説明を割愛していることに注意されたい。
第1に、第2実施形態において、第1無線基地局10aは、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)を作動させるか否かの判断を定期的に行っている。ここで、図6のS210やS218等に係る説明においては、この判断を第1無線基地局10aの負荷に基づいて行っていたが、他の判断基準に基づいて行うこととしても良い。
具体的には、例えば第1無線基地局10aは、無線通信の特性向上が見込める場合に追加RLCエンティティを作動させることを決定することができる。上述したように、第1無線基地局10aは無線端末20から測定レポートを定期的に受信しており、当該測定レポートには第2無線基地局10bからの受信品質を含ませることができる。受信品質としては、例えばRSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)等が挙げられる。これにより、第1無線基地局10aは、例えば無線端末20における受信品質が第1無線基地局10aより第2無線基地局10bが良好となった場合等に、追加RLCエンティティを作動させることができる。ここで、無線端末20における受信品質が第1無線基地局10aより第2無線基地局10bが良好となった場合に、一般的なハンドオーバを行うことも考えられる。しかしながら、上述したようにハンドオーバ処理は遅延が大きいことや、一旦ハンドオーバしてから無線品質がさらに変化した場合等において再ハンドオーバが必要となる等の問題がある。そのため、前述したように、無線端末20における受信品質が第1無線基地局10aより第2無線基地局10bが良好となった場合等に、追加RLCエンティティを作動させることはハンドオーバの問題を回避しつつ、受信品質の良い(無線通信の特性向上が見込める)方の無線基地局10に切り替えることが可能であり、意義は大きいものと考えられる。
第2に、2元接続時のハンドオーバ処理について説明する。例えば無線端末20がプライマリRLCエンティティで第1無線基地局10aと接続し、セカンダリRLCエンティティで第2無線基地局10bと接続する2元接続を実現しているときに、無線端末20と第1無線基地局10aとの間の無線品質が劣化したものとする。この場合、第1無線基地局10aは、まず無線端末20におけるセカンダリRLCエンティティを作動停止(ディアクティベーション)するためのRLC Control PDUを送信した上で、無線端末20に対するハンドオーバ処理を実行するのが望ましい。もし単にハンドオーバ処理を行うと、無線端末20においてセカンダリRLCエンティティが作動し続けるためである。なお、セカンダリRLCエンティティをタイマ制御により(RLC Control PDUを受信することなく)作動停止することも考えられるが、タイマが切れるまではセカンダリRLCが作動し続けるため、やはりRLC Control PDUで明示的に作動停止を指示する方が望ましいと考えられる。具体的なタイマ制御としては、例えば、無線端末20においてRLCエンティティを作動させるためのRLC Control PDUを受信するとタイマ(デアクティベーションタイマ)を始動し、予め設定された値(時間)に到達すると、タイマが切れる方法があげられる。タイマの値は、例えばS204やS206で設定できる。タイマを持つレイヤとしては、RLCレイヤが最も適するが、その他のレイヤであっても構わない。また、作動の停止は無線基地局10と無線端末20で同期することが好ましいので、無線基地局10でも同様にタイマを計時する。
第3に、追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)の作動(アクティベーション)または作動停止(デアクティベーション)するためのRLC Control PDUの送受信に失敗した場合の処理について説明する。まず、セカンダリRLCエンティティを作動するためのRLC Control PDUの送受信(例えば図6のS211)に失敗した場合を説明する。この場合、第1無線基地局10aと無線端末20(プライマリRLCエンティティ)との間の無線品質が悪化していると考えられるため、ハンドオーバ(RRC Connection Re-establishment including MobilityControlInfo)を実施するのが望ましい。あるいは、ハンドオーバの前に、RRC再接続(RRC Connection Re-establishment not including MobilityControlInfo)を実施し、無線基地局10との再接続を高速に試みることもできる。ここでの「無線基地局10」は、無線端末20のコンテキスト(セキュリティ情報や無線端末20の識別情報など、無線端末20を特定できる情報)を保持している無線基地局10であれば、どの無線基地局10でもよい。詳細は従来のLTEの手順と同じなので割合する。
一方、セカンダリRLCエンティティを作動停止するためのRLC Control PDUの送受信(例えば図6のS219)に失敗した場合を説明する。この場合、無線端末20が下りデータ信号(RLC Control PDUを含む)の受信に対する応答信号(ACK信号またはNACK信号)を第1無線基地局10aに送信する設定であるときは、第1無線基地局10aと無線端末20(プライマリRLCエンティティ)との間の無線品質が悪化していると考えられるため、ハンドオーバを実施するのが望ましい。前述のようにRRC再接続を実施してもよい。これに対し、無線端末20が応答信号を第2無線基地局10bに送信する設定であるときは、第1無線基地局10aと無線端末20との間の無線品質が悪化しているのか、第2無線基地局10bと無線端末20との間の無線品質が悪化しているのかを判別できない。そこでこの場合には、無線端末20におけるセカンダリRLCエンティティをタイマ制御により(RLC Control PDUを受信することなく)作動停止させる。タイマは無線端末20と第1無線基地局10aとで共有されているため、このとき第1無線基地局10aはタイマが切れるまで無線端末20に対する送受信を停止することになる。これにより、無線端末20と第1無線基地局10aとの1元接続に移行する。これにより、仮に第2無線基地局10bと無線端末20との間の無線品質が悪化していた場合には、不都合が解消する。その後、もし第1無線基地局10aと無線端末20との間の無線品質の悪化が検出された場合等に、第1無線基地局10aは無線端末20に対するハンドオーバ処理を行う。これにより、仮に第1無線基地局10aと無線端末20との間の無線品質が悪化していた場合にも、不都合が解消する。
なお、無線端末20が下りデータ信号(RLC Control PDUを含む)の受信に対する応答信号(ACK信号またはNACK信号)を第2無線基地局10bに送信する設定である場合に、当該下りデータ信号がセカンダリRLCエンティティを作動停止するためのRLC Control PDUである場合に限り、応答信号を第1無線基地局10aに送信することとしてもよい。このようにすることで、当該RLC Control PDUの送受信の失敗の原因が第1無線基地局10aと無線端末20との間の無線品質が悪化に限定される。したがって、当該RLC Control PDUの送受信が失敗した場合、第1無線基地局10aは無線端末20を即座にハンドオーバさせることができる。なお、前述のようにRRC再接続を実施してもよい。この方式は、第1無線基地局10aがタイマ切れを待たずにハンドオーバを行える点で、前記の方法よりも優れていると考えられる。
第4に、無線端末20の追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)と第2無線基地局10bとの間の無線品質が劣化した場合の処理について説明する。例えば第1無線基地局10aからの干渉等により、セカンダリRLCエンティティの無線品質が劣化する場合が考えられる。セカンダリRLCエンティティの無線品質の劣化は、前述したRSRP、RSRQ、RSSI等によって検出することができる。このような場合には、第1無線基地局10aは、セカンダリRLCエンティティを作動停止するためのRLC Control PDUを送信(例えば図6のS219)すればよい。これにより、セカンダリRLCエンティティが作動停止となり、問題が解消される。
第5に、無線端末20の追加RLCエンティティ(セカンダリRLCエンティティ)と第2無線基地局10bとの間のリンク接続が失敗した場合の処理について説明する。例えば、データの再送が最大回数に達したこと等により、セカンダリRLCエンティティにおけるリンク接続の失敗を検出することができる。このとき、多くの場合において、無線端末20におけるセカンダリRLCエンティティは前述したタイマ制御により(RLC Control PDUを受信することなく)作動停止するものと考えられる。もちろん、第1無線基地局10aがセカンダリRLCエンティティを作動停止するためのRLC Control PDUを送信(例えば図6のS219)してもよい。これにより、セカンダリRLCエンティティが作動停止となり、問題が解消される。
以上で説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第2実施形態によれば、L3制御信号(RRC信号)に伴う遅延の問題と、L2制御信号(RLC Control PDU)に伴う拡張性の問題とをいずれも解消しつつ、2元接続を始めとするデータリンク層(RLC層)でのデータの分離を実現することが可能となる。したがって、第2実施形態は、高速性と互換性とを兼ね備えた2元接続(データリンク層でのデータの分離)の切り替えを実現できるという従来技術には無い新たな効果を奏するものである。
[第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに適用したものであり、具体的には、第1実施形態におけるL2エンティティ(処理主体)をPDCPエンティティとし、第1制御信号をRRC信号とし、第2制御信号をPDCPコントロールパケットとしたものである。すなわち、第3実施形態は、複数のPDCPエンティティを作動させることで、PDCP層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。
第3実施形態は、第2実施形態と同様に、第1実施形態をLTEシステムに適用したものである。そのため、第3実施形態の処理は多くの点で第2実施形態の処理と共通している。そこで、以下では主として第3実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に説明することにする。
図18に第3実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す。第3実施形態においても、第1〜第2実施形態と同様に、無線端末20、第1無線基地局10a、および第2無線基地局10bが登場する。典型例としては、第1無線基地局10aがマクロ無線基地局10であり、第2無線基地局10bがスモール無線基地局10である場合が考えられる。しかし、第1無線基地局10aがスモール無線基地局10であっても良いし、第2無線基地局10bがマクロ無線基地局10であっても構わない。
第3実施形態は第2実施形態とプロトコルスタックが異なるので説明する。図19に第3実施形態に係るU-Planeのプロトコルスタックの一例を示す。第3実施形態は、冒頭で述べたように、複数のPDCPエンティティを作動させることで、PDCP層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。図19には、第1無線基地局10a(例えばマクロ無線基地局10)と第2無線基地局10b(例えばスモール無線基地局10)で作動するエンティティが図示されており、PDCPエンティティ、RLCエンティティ、MACエンティティ、および物理エンティティが、第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとのそれぞれで作動している。このように複数のPDCPエンティティを作動させることで、PDCP層でデータを分離して2元接続等を実現することが可能となる。
したがって、先に説明した第2実施形態は複数のRLCエンティティを作動させることでRLC層でデータを分離して2元接続等を実現するものであるのに対し、第3実施形態は複数のPDCPエンティティを作動させることでPDCP層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。言い換えれば、第3実施形態は、2元接続等を実現する処理の階層(レイヤ)が第2実施形態と異なるものとなっている。
次に、図18に示される第3実施形態の処理シーケンスを説明する。第3実施形態の処理シーケンスは、図6に示される第2実施形態の処理シーケンスとほとんど同じである。図18に示す第3実施形態の処理シーケンスに対する説明は、図6に示した第2実施形態における処理シーケンスの説明において「RLC」を「PDCP」と読み替えればほぼ事足りる。そのため、ここでは図18に示す処理シーケンスについては詳細な説明は割愛する。
ただし、図18のS311と図6のS211とは差異があるのでここで説明する。これらはいずれも、第1無線基地局10aが追加L2エンティティ(セカンダリL2エンティティ)を作動するためのL2信号を無線端末20に送信するものであるが、図6のS211がRLC Control PDUであるのに対し、図18のS311はPDCP Control PDUとなっている。すなわち、第3実施形態においては、図18のS311において、第1無線基地局10aが追加PDCPエンティティ(セカンダリPDCPエンティティ)を作動するためのPDCP Control PDUを無線端末20に送信する。
PDCP Control PDUは、図15A〜図15Dに示したRLC Control PDUとフォーマットが大きく異なるため、以下で説明する。
まず、比較のために、図20Aおよび図20Bに従来のLTEシステムにおけるPDCP Control PDUを示す。図20AはROHC(Robust Header Compression)の制御に関するPDCP Control PDUであり、図20BはPDCPステータスレポートと呼ばれるPDCP Control PDUである。図20Aおよび図20Bに示すRLC Control PDUにおいて着目すべきは、PDU Typeと呼ばれる領域である。PDU Typeは、PDCP Control PDUのタイプ(種類)を示す3ビットの情報である。ここで重要なのは、PDU Typeは、値が000、001以外の場合については予約(reserved)されていることである。PDU Type以外の領域については本願とはあまり関係がないので説明は割愛する。
これに対し、図21A〜図21Bに本実施形態で用いるPDCP Control PDUを示す。図21Aに示すPDCP Control PDUにおいては、PDU Typeの値を予約されているビット列のいずれか(例えば010)に設定する。これにより、PDCP Control PDUのタイプを、本願の目的に適う新規なものとすることができる。言い換えれば、PDCP Control PDUのフォーマットを本願の目的に適う新規なものとしても、仕様との互換性を保つことが可能となる。
図21Aに示すPDCP Control PDUにおいては、2つのパラメータP、Sを含む。これらはそれぞれ1ビットであり、PDCPエンティティそれぞれの作動(アクティベーション)を1で指定し、PDCPエンティティの作動停止(デアクティベーション)を0で指定する。より具体的には、PはプライマリRLCエンティティの作動または作動停止を指定し、SはセカンダリRLCエンティティの作動または作動停止を指定する。なお、図15Aや図15Dに示す第2実施形態のRLC Control PDUのように上りと下りで別々に設定されないのは、プロトコルスタックにおいてRLCは上りと下りが分離されているのに対し、PDCPは上りと下りが分離されていないためである。
図18のS311で第1無線基地局10aは、S310の決定に基づき、第2無線基地局10bにおける追加エンティティを作動させるためのPDCP Control PDUを無線端末20に送信する。このとき例えば図21Aに示すRLC Control PDUにおいては、PDU Typeの値を010に、Pの値を1(作動)に、Sの値を1(作動)とすればよい。これは、第1無線基地局10aにおいて作動中のPDCPエンティティを維持しつつ、第2無線基地局10bにおける追加PDCPエンティティを作動させることに相当する。言い換えれば、無線端末20は第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を行うことに相当する。
なお、PDCP Control PDUにおいても、図15Cに示したRLC Control PDUのように、プライマリRLCエンティティについては作動または作動停止の指定を行わず、セカンダリRLCエンティティのみについて作動または作動停止の指定を行うこととしても良い。図21Bに、本実施形態におけるPDCP Control PDUの他の一例を示す。
また、第3実施形態のPDCP Control PDUにおいて、C-Plane(SRB)とU-Plane(DRB)のそれぞれにおけるプライマリPDCPエンティティとセカンダリPDCPエンティティの使用の態様を示す情報を含ませるようにすることもできる。これは、図15Dに示される第2実施形態のRLC Control PDUと同様の考え方で行えばよいため、ここでの説明は割愛する。
ところで、第2実施形態で説明したように、作動の停止についてはタイマで制御を実施することも可能である。具体的なタイマ制御としては、例えば、無線端末20においてPDCPエンティティを作動させるためのPDCP Control PDUを受信するとタイマ(デアクティベーションタイマ)を始動し、予め設定された値(時間)に到達すると、タイマが切れる方法があげられる。タイマの値は、例えばS304やS306で設定できる。タイマを持つレイヤとしては、PDCPレイヤが最も適するが、その他のレイヤであっても構わない。また、作動の停止は無線基地局10と無線端末20で同期することが好ましいので、無線基地局10でも同様にタイマを計時する。
以上説明した第3実施形態によれば、第1〜第2実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第3実施形態によれば、L3制御信号(RRC信号)に伴う遅延の問題と、L2制御信号(PDCP Control PDU)に伴う拡張性の問題とをいずれも解消しつつ、2元接続を始めとするデータリンク層(PDCP層)でのデータの分離を実現することが可能となる。したがって、第3実施形態は、高速性と互換性とを兼ね備えた2元接続(データリンク層でのデータの分離)の切り替えを実現できるという従来技術には無い新たな効果を奏するものである。
[第4実施形態]
第4実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに適用したものであり、具体的には、第1実施形態におけるL2エンティティ(処理主体)をMACエンティティとし、第1制御信号をRRC信号とし、第2制御信号をMACコントロールパケットとしたものである。すなわち、第4実施形態は、複数のMACエンティティを作動させることで、MAC層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。
第4実施形態は、第2〜第3実施形態と同様に、第1実施形態をLTEシステムに適用したものである。そのため、第4実施形態の処理は多くの点で第2〜第3実施形態の処理と共通している。そこで、以下では主として第4実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に説明することにする。
図22に第4実施形態に係る処理シーケンスの一例を示す。第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、無線端末20、第1無線基地局10a、および第2無線基地局10bが登場する。典型例としては、第1無線基地局10aがマクロ無線基地局10であり、第2無線基地局10bがスモール無線基地局10である場合が考えられる。しかし、第1無線基地局10aがスモール無線基地局10であっても良いし、第2無線基地局10bがマクロ無線基地局10であっても構わない。
第4実施形態は第2実施形態とプロトコルスタックが異なるので説明する。図23に第4実施形態に係るU-Planeのプロトコルスタックの一例を示す。第4実施形態は、冒頭で述べたように、複数のMACエンティティを作動させることで、MAC層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。図23には、第1無線基地局10a(例えばマクロ無線基地局10)と第2無線基地局10b(例えばスモール無線基地局10)で作動するエンティティが図示されており、PDCPエンティティとRLCエンティティは第1無線基地局10aのみで作動している。これに対し、MACエンティティ、および物理エンティティが、第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとのそれぞれで作動している。このように複数のMACエンティティを作動させることで、MAC層でデータを分離して2元接続等を実現することが可能となる。
したがって、先に説明した第2実施形態は複数のRLCエンティティを作動させることでRLC層でデータを分離して2元接続等を実現するものであるのに対し、第4実施形態は複数のMACエンティティを作動させることでMAC層でデータを分離して2元接続等を実現するものである。言い換えれば、第4実施形態は、2元接続等を実現する処理の階層(レイヤ)が第2実施形態と異なるものとなっている。
次に、図22に示される第4実施形態の処理シーケンスを説明する。第4実施形態の処理シーケンスは、図6に示される第2実施形態の処理シーケンスとほとんど同じである。図22に示す第4実施形態の処理シーケンスに対する説明は、図6に示した第2実施形態における処理シーケンスの説明において「RLC」を「MAC」と読み替えればほぼ事足りる。そのため、ここでは図22に示す処理シーケンスについては詳細な説明は割愛する。
ただし、図22のS411と図6のS211とは差異があるのでここで説明する。これらはいずれも、第1無線基地局10aが追加L2エンティティ(セカンダリL2エンティティ)を作動するためのL2信号を無線端末20に送信するものであるが、図6のS211がRLC Control PDUであるのに対し、図22のS411はMAC Control PDUとなっている。すなわち、第4実施形態においては、図22のS411において、第1無線基地局10aが追加MACエンティティ(セカンダリMACエンティティ)を作動するためのMAC Control PDUを無線端末20に送信する。
MAC Control PDUは、図15A〜図15Dに示したRLC Control PDUとフォーマットが大きく異なるため、以下で説明する。
まず、図24Aに、LTEシステムにおけるMAC PDUに含まれる(MAC SDUに付随する)MACサブヘッダを示す。図24AにおけるMACサブヘッダにおいて注目すべきはLCID(Logical Channel ID)と呼ばれる5ビットのフィールドである。LCIDは、MAC Control PDUに含まれるMACサブヘッダにおいては、当該MAC Control PDUの種類を示すものとなる。例えば、ダウンリンクのMACサブヘッダにおいてLCIDの値が11011の場合、当該MACサブヘッダを含むMAC Control PDUは、前述したキャリアアグリゲーションにおける各キャリアのアクティベーションまたはデアクティベーション(作動または作動停止)を指定するものとなる。
次に、比較のために、図24Bに従来のLTEシステムにおけるMAC Control PDUを示す。MAC Control PDUにはいくつかの種類があるが、図24に示されているのは先ほど述べたキャリアアグリゲーションを制御するためのMAC Control PDUである(LCIDの値が11011の場合に該当)。図24に示すMAC Control PDUにおいて、まず着目すべきは、1ビットのリザーブビットRが含まれており、この値は常に0に設定されることである。
これに対し、図25A〜図25Dに本実施形態で用いるMAC Control PDUを示す。
まず、図25Aに示すMAC Control PDUにおいては、1オクテット目(Oct1)において、リザーブビットRの代わりに拡張ビットEを用意している。そして、拡張ビット値を1に設定することで、MAC Control PDUを本願の目的に適う新規なものとすることができる。一方、拡張ビット値を0に設定すれば、従来のMAC Control PDU(図24)と同じものとなる。したがって、図25Aに示すMAC Control PDUにおいては、MACサブヘッダに含まれるLCIDの値を11011(図24に示すものと同じ値)としても問題はないと考えられる。Eの値に基づいて図25Aと図24とのいずれのMAC Control PDUであるかを判別することができるためである。言い換えれば、図25Aに示すMAC Control PDUによれば、仕様との互換性を保ちつつ本願の目的に適う機能を追加することが可能となる。
図25Aに示される第4実施形態のMAC Control PDUにおいて、先に述べたように、拡張ビット値を1に設定する。これは、MAC Control PDUが継続する(2オクテット目が存在する)ことを意味していると言える。また、図25のMAC Control PDUの第1オクテット(Oct1)では、プライマリMACエンティティにおける各セル(キャリア)の作動または停止を表すこととする。
より具体的には、図25Aに示される第4実施形態MAC Control PDUにおいては、第1オクテット(Oct1)には、拡張ビットEの他にそれぞれ1ビットの7個のパラメータC1〜C7が含まれている。ここで、セルにはPCell(Primary Cell)とSCell(Secondary Cell)があるが、Oct1のC1〜C7はプライマリMACエンティティにおける最大7個のSCellそれぞれのアクティベーション(作動)、ディアクティベーション(停止)を設定するパラメータとなる。ここで、PCellとはキャリアアグリゲーションにおいて常時作動しているセル(キャリア)であり、SCellとは必要に応じて作動や停止が行われるセルのことである。図25AのOct1においてPCellに対する設定を行う領域がないのは、プライマリMACエンティティ(図18の例では第1無線基地局10a)におけるPCellは常に作動している前提だからである。
一方、図25Aに示される第4実施形態のMAC Control PDUの第2オクテット(Oct2)には、7個のパラメータC1〜C7と、1ビットのパラメータPが含まれている。セカンダリMACエンティティ(図18の例では第2無線基地局10b)におけるPCellは常に作動している前提でなくても構わないため、Oct2においてはPの1ビットでPCellの作動または作動停止を指定するとともに、C1〜C7の7ビットでSCell(最大7個)それぞれの作動または作動停止を指定する。Oct2のPおよびC1〜C7の合計8ビットが全て0(作動停止)の場合、セカンダリMACエンティティそのものの作動停止を示すものと解釈することもできる。ちなみに、図15Aや図15Bに示す第2実施形態のRLC Control PDUのように上りと下りで別々に設定されないのは、プロトコルスタックにおいてRLCは上りと下りが分離されているのに対し、MACは上りと下りが分離されていないためである。
なお、図25Aに示される第4実施形態のMAC Control PDUにおいて、3元以上の多元接続を実現するには2つの方法が考えられる。第1の方法は、多元接続の最大個数がNの場合、常にNオクテットのMAC Control PDUを用いることである。また、第2の方法として、LCIDの値に応じて多元接続の個数(図25AのMAC Control PDUのオクテット数に対応)を切り替える方法である。LCIDの値は01011〜11010の16個が予約されているため、これらを用いれば最大16個までの多元接続に対応することも可能となる。なお、これらの方法は次に述べる図25Bに示すMAC Control PDUにも同様に適用可能である。
第4実施形態におけるその他のMAC Control PDUについて簡単に説明する。図25Bに示すMAC Control PDUは、図25Aに示したものと異なり、第1オクテット(Oct1)の拡張ビットEが予約ビットRとなっている。図25Bに示すMAC Control PDUにおいては、MACサブヘッダに含まれるLCIDの値を例えば11010(予約された値の一つ)とする必要があることに留意する。仮にLCIDの値を11011(図24に示すものと同じ値)とすると、図25Bと図24とのいずれのMAC Control PDUであるかを判別することができないためである。
図25Cに示すMAC Control PDUは、図25Aに示したものと異なり、第2オクテット(Oct2)においてC7の代わりに拡張ビットEを設けている。各オクテットにおけるEの値により、多元接続に容易に対応することができるが、各MACエンティティにおいて最大6個のSCellにしか対応できないものとなっている。なお、図25Cに示すMAC Control PDUについても、図25Aに示したものと同様に、LCIDの値を11011(図24に示すものと同じ値)としても問題は生じないと考えられる。
図25Dに示すに示すMAC Control PDUは、図25Bに示したものと図25Cに示したものを組み合わせたものであるため説明は割愛する。なお、図25Dに示すMAC Control PDUにおいても、図25Bに示したものと同様に、MACサブヘッダに含まれるLCIDの値を例えば11010(予約された値の一つ)とする必要があることに留意する。
図22のS411で第1無線基地局10aは、S410の決定に基づき、第2無線基地局10bにおける追加エンティティを作動させるためのMAC Control PDUを無線端末20に送信する。このとき例えば図25Aに示すMAC Control PDUにおいては、第1オクテットの値を00000011、第2オクテットの値を00000001とすればよい。これは、第1無線基地局10aにおいて作動中のMACエンティティ(PCellのみ)を維持しつつ、第2無線基地局10bにおける追加MACエンティティ(PCellのみ)を作動させることに相当する。言い換えれば、無線端末20は第1無線基地局10aと第2無線基地局10bとの2元接続を行うことに相当する。
一方、図25Aに示すMAC Control PDUにおいて、第1オクテットの値を00000001、第2オクテットの値を00000011とすれば、第1無線基地局10aにおいて作動中であったMACエンティティ(PCellのみ)を維持しつつ、第2無線基地局10bにおける追加MACエンティティ(PCellと1つのScell)を作動させることに相当する。この場合、無線端末20は第2無線基地局10bとの2元接続を行うことになる。
なお、第4実施形態のMAC Control PDUにおいて、C-Plane(SRB)とU-Plane(DRB)のそれぞれにおけるプライマリMACエンティティとセカンダリMACエンティティの使用の態様を示す情報を含ませるようにすることもできる。これは、図15Dに示される第2実施形態のRLC Control PDUと同様の考え方で行えばよいため、ここでの説明は割愛する。
以上説明した第4実施形態によれば、第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第4実施形態によれば、L3制御信号(RRC信号)に伴う遅延の問題と、L2制御信号(MAC Control PDU)に伴う拡張性の問題とをいずれも解消しつつ、2元接続を始めとするデータリンク層(MAC層)でのデータの分離を実現することが可能となる。したがって、第4実施形態は、高速性と互換性とを兼ね備えた2元接続(データリンク層でのデータの分離)の切り替えを実現できるという従来技術には無い新たな効果を奏するものである。
[その他の実施形態]
ここではその他の変形例及び実施形態について簡単に説明する。
第1〜第4実施形態においては、追加L2エンティティ(セカンダリL2エンティティ)に関する情報はL3制御信号により送信していたが、これをL2制御信号で送信することも原理的には可能である。第2実施形態を例にとれば、例えば図11〜図13で示されるRRC Connection Reconfigurationメッセージに含まれる情報の全部または一部を、図6のS211で送信するRLC Control PDUに含ませることができる。その場合、RLC Control PDUにおける予約領域や予約ビットを適宜用いて、互換性を確保しつつ情報を格納すれば良い。詳細は割愛する。
また、第1〜第4実施形態においては、追加L2エンティティ(セカンダリL2エンティティ)の作動または作動停止を指示する情報はL2制御信号により送信していたが、これをL3制御信号で送信することも原理的には可能である。第2実施形態を例にとれば、例えば図15A〜図15Dで示されるRLC Control PDUに含まれる情報の全部または一部を、図6のS206で送信するRRC Connection Reconfigurationメッセージに含ませることができる。詳細は割愛する。
最後に、言うまでもないことであるが、上記の各実施形態において無線基地局10や無線端末20により送受信される制御信号における情報要素名やパラメータ名等は一例にすぎないことに留意する。また、パラメータの配置(順番)が異なっていたり、任意的な(オプショナルな)情報要素やパラメータが使用されていない場合においても、本願発明の趣旨を逸脱しない限りは、本願発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に図26に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。図26に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10と、無線端末20とを有する。無線基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。なお、本願においては無線基地局10や無線端末20を無線局と称することがあることに注意されたい。
無線基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。無線基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の無線基地局とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
無線基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、無線基地局10は、マクロ無線基地局、ピコ無線基地局等の小型無線基地局(マイクロ無線基地局、フェムト無線基地局等を含む)の他、様々な規模の無線基地局であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の無線基地局10に含まれることとしてもよい。
一方、無線端末20は、無線通信で無線基地局10と通信を行う。
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末であってよい。また、無線基地局10と無線端末との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
なお、無線基地局、無線端末の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、無線基地局、無線端末の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、図27〜図28に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。
図27は、無線基地局10の構成を示す機能ブロック図である。図27に示すように、無線基地局10は、送信部11と、受信部12と、制御部13とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、送信部11と受信部12とをまとめて通信部14と称する。
送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部11は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を送信する。下りのデータチャネルは例えば、物理下り共有チャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの制御チャネルは例えば、物理下り制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続状態の無線端末20に制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20にデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部11が送信する信号の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている第1無線基地局10aまたは第2無線基地局10bにより送信されている各信号が挙げられる。特に、送信部11は、図11〜図13または図16〜図17で示されるRRCメッセージ、図15A〜図15Dで示されるRLC Control PDU、図21A〜図21Bで示されるPDCP Control PDU、および図25A〜図25Dで示されるMAC Control PDUを送信しうる。送信部11が送信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が送信するあらゆる信号を含む。
受信部12は、無線端末20から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して第1無線通信で受信する。受信部12は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を受信する。上りのデータチャネルは例えば、物理上り共有チャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの制御チャネルは例えば、物理上り制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続状態の無線端末20から制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20からデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部12が受信する信号の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている第1無線基地局10aまたは第2無線基地局10bより受信されている各信号が挙げられる。受信部12が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が受信するあらゆる信号を含む。
制御部13は、送信するデータや制御情報を送信部11に出力する。制御部13は、受信されるデータや制御情報を受信部12から入力する。制御部13は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の無線基地局からデータや制御情報を取得する。制御部はこれら以外にも送信部11が送信する各種の送信信号や受信部12が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部13が制御する処理の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている第1無線基地局10aまたは第2無線基地局10bにより実行される各処理が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線基地局10が実行するあらゆる処理を含む。
図28は、無線端末20の構成を示す機能ブロック図である。図28に示すように、無線端末20は、送信部21、受信部22と、制御部23とを備える。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、送信部21と受信部22とをまとめて通信部24と称する。
送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部21は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を送信する。上りのデータチャネルは例えば、物理上り共有チャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの制御チャネルは例えば、物理上り制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続する無線基地局10に制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する無線基地局10にデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部21が受信する信号の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている無線端末20により送信されている各信号が挙げられる。送信部21が送信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が送信するあらゆる信号を含む。
受信部22は、無線基地局10から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。受信部22は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を受信する。下りのデータチャネルは例えば、物理下り共有チャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの制御チャネルは例えば、物理下り制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続する無線基地局10から制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する無線基地局10からデータチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部22が送信する信号の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている無線端末20により受信されている各信号が挙げられる。特に、受信部22は、図11〜図13または図16〜図17で示されるRRCメッセージ、図15A〜図15Dで示されるRLC Control PDU、図21A〜図21Bで示されるPDCP Control PDU、および図25A〜図25Dで示されるMAC Control PDUを受信しうる。受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が受信するあらゆる信号を含む。
制御部23は、送信するデータや制御情報を送信部21に出力する。制御部23は、受信されるデータや制御情報を受信部22から入力する。制御部23は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の無線基地局からデータや制御情報を取得する。制御部はこれら以外にも送信部21が送信する各種の送信信号や受信部22が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部23が制御する処理の具体例としては、図6、図18、および図22で示されている無線端末20により実行される各処理が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理を含む。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図29〜図30に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。
図29は、無線基地局10のハードウェア構成を示す図である。図29に示すように、無線基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ31を備えるRF(Radio Frequency)回路32と、CPU(Central Processing Unit)33と、DSP(Digital Signal Processor)34と、メモリ35と、ネットワークIF(Interface)36とを有する。CPUは、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。メモリ35は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
図27に示す無線基地局10の機能構成と図29に示す無線基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。送信部11および受信部12(あるいは通信部14)は、例えばRF回路32、あるいはアンテナ31およびRF回路32により実現される。制御部21は、例えばCPU33、DSP34、メモリ35、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
図30は、無線端末20のハードウェア構成を示す図である。図30に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ41を備えるRF回路42と、CPU43と、メモリ44とを有する。さらに、無線端末20は、CPU43に接続されるLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を有してもよい。メモリ44は、例えばSDRAM等のRAM、ROM、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
図28に示す無線端末20の機能構成と図30に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。送信部21および受信部22(あるいは通信部24)は、例えばRF回路42、あるいはアンテナ41およびRF回路42により実現される。制御部23は、例えばCPU43、メモリ44、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC、FPGA、LSI等が挙げられる。
ここで、キャリアアグリゲーションをLTEシステムにおけるプロトコルスタックの観点で考えてみる。LTEシステムのプロトコルスタックは、下位層から順に、物理(PHY: PHYsical)層、MAC(Media Access Control)層、RLC(Radio Link Control)層、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)層となっている(さらに上位の階層もあるがここでは割愛する)。慣用されているOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに対応させると、LTEシステムにおける物理層は、OSI参照モデルの第1層である物理層に対応する。また、LTEシステムにおけるMAC層、RLC層、およびPDCP層は、OSI参照モデルの第2層であるデータリンク層に対応する。MAC層はスケジューラ機能等を、RLC層はシーケンス制御等を、PDCP層はセキュリティ等をそれぞれ担当している。
これに対し、図11に本実施形態に係る無線通信システムにおけるRRC Connection Reconfigurationメッセージの一例を示す(抜粋)。また、図12、図13に、本実施形態に係る無線通信システムにおけるRadio Resource Config Dedicated 情報要素とRLC-Config情報要素の一例を示す(それぞれ抜粋)。なお、各図において、従来のメッセージや情報要素に対して実質的に追加された箇所に下線を付している。また、各パラメータや情報要素の名前において、release12で規定されたことを示す接尾辞(suffix)である「-r12」が付されているが、これは慣例に基づく。
図13に、本実施形態におけるRLC-Config-r12情報要素の一例を示す(図10との実質的な差分に下線を付している)。図13に示すRLC-Config-r12情報要素においては、プライマリRLCエンティティを設定するためのul-AM-RLC-r12、dl-AM-RLC-r12、ul-UM-RLC-r12、およびdl-UM-RLC-r12に加えて、セカンダリRLCエンティティを設定するためのul-AM-sRLC-r12、dl-AM-sRLC-r12、ul-UM-sRLC-r12、およびdl-UM-sRLC-r12を設定することができる。これらのパラメータには、前述したように慣例に基づいて接尾辞である「-r12」が付されているが、これが付されていないパラメータと同等に取り扱うことができるため詳細な説明は割愛する。