JPWO2014156290A1 - 抵抗スポット溶接システム - Google Patents
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この溶接法は、重ね合わせた2枚以上の鋼板を挟んでその上下から一対の電極で加圧しつつ、上下電極間に高電流の溶接電流を短時間通電して接合する方法であり、高電流の溶接電流を流すことで発生する抵抗発熱を利用して、点状の溶接部が得られる。この点状の溶接部はナゲットと呼ばれ、重ね合わせた鋼板に電流を流した際に鋼板の接触箇所で両鋼板が溶融し、凝固した部分であり、これにより鋼板同士が点状に接合される。
また、実際の施工においては、電極摩耗の進行状態にはバラツキがあるため、予め定めた溶接電流変化パターンが常に適正であるとはいえない。
この発熱量不足を補償し、必要な径のナゲットを得るには、予め高い溶接電流を設定することが必要となる。
例えば、特許文献1には、推算した溶接部の温度分布と目標ナゲットを比較して溶接機の出力を制御することによって、設定されたナゲットが得られるようにした抵抗溶接機の制御装置が記載されている。
1.複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接システムであって、
本溶接に先立つテスト溶接時に、定電流制御により通電して適正なナゲットを形成する場合の溶接中の電極間の電気特性から算出される瞬時発熱量の時間変化を計算し、記憶させる手段と、
上記記憶させた瞬時発熱量の時間変化に基づき、テスト溶接後の外部からの入力により、通電パターンを複数のステップに区切り、各ステップ毎の瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量を目標値として記憶させる手段と、
引き続く本溶接時に、目標値として記憶させた瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として溶接を開始し、いずれかのステップにおいて、瞬時発熱量の時間変化量が目標の時間変化曲線から外れた場合に、その差を当該ステップの残りの通電時間内で補償し、当該ステップの目標累積発熱量と一致するように瞬時発熱量および累積発熱量を発生させるように溶接中に溶接電流又は電圧を調整する適応制御手段と
を備える抵抗スポット溶接システム。
この加圧力変化状態検知手段により、前記テスト溶接における溶接中の加圧力が予め指定された値となるタイミングを求め、求められたタイミングを、前記通電パターンを複数のステップに区切る時間として入力する前記1に記載の抵抗スポット溶接システム。
また、記憶された瞬時発熱量の時間変化は、2段以上の複数のステップに分割され、各ステップ毎に瞬時発熱量の時間変化、累積発熱量が目標値として新しく記憶されるが、この複数のステップへの分割するタイミングの指定が外部からの入力により可能であるため、溶接中の電流、電極間電圧、電極間抵抗、電極間距離、加圧力などのパラメータをモニタリングすることにより、モニタリングの結果から作業者が望む適切なタイミングでテスト溶接を複数のステップに容易に分割することができる。
さらに、上記のように分割された各ステップにおいて、それぞれの瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量を目標値として記憶させることで、本溶接において、ステップ毎の累積発熱量が保証された多段適応制御溶接を可能としたため、電極先端の摩耗や外乱の存在にも有効に対応して、良好なナゲットを得ることができ、また多段通電が必要となる多段抵抗スポット溶接への適応制御溶接の適用が可能となる。
本発明の抵抗スポット溶接システムでは、本溶接に先立ち、テスト溶接を実施して、適正なナゲットを形成する場合の電極間の電気特性から算出される、瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量を記憶させる。そして、記憶させた瞬時発熱量の時間変化に基づき、外部からの入力により、通電パターンを複数のステップに分割し、各ステップ毎の瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量を目標値として記憶させる。引き続く本溶接において、いずれかのステップにおいて、瞬時発熱量の時間変化量に目標値からの差が生じたとしても、適応制御溶接を活用して、その差を当該ステップの残りの通電時間内で補償し、本溶接の累積発熱量をテスト溶接で求めた累積発熱量と一致させる。かくして、電極先端の摩耗や外乱の存在にも有効に対応して、良好なナゲットを得るところに特徴がある。
図1は、本発明に従う抵抗スポット溶接システムの構成を示したものである。
図中、符号1は抵抗スポット溶接電源、2は抵抗スポット溶接電源1へ制御信号を与える制御部、3は溶接電流の検出部で、検出した信号を制御部2に入れている。4は抵抗スポット溶接電源1の出力に接続された二次導体で、電極7に通電するために電極7に接続されている。
テスト溶接モードにおいては、溶接電流検出部3から入力された電流と、電極間電圧検出線11から入力された電圧から瞬時発熱量が計算され、その時間変化が記憶される。
記憶された瞬時発熱量の時間変化は、12の外部入力処理部から入力されたタイミングで複数のステップに分割され、各ステップ毎に瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量が目標値として別途記憶される。なお、外部入力処理部12への入力は、使用者による分割タイミングの数値入力の他、加圧力入力処理部10にて溶接中の加圧力が予め指定された値となるタイミングを収集データから自動的に求め、その数値を自動的に入力するように構成されていてもよい。
指定する加圧力は、1点に限定されず、必要に応じて2点、3点、それ以上と、複数指定することができる。また、ここでモニタリングするのは加圧力に限定されず、電極間距離の変化、加圧に用いているサーボモータのエンコーダからの値、抵抗値、あるいは電流、電圧等から何らかの式で計算された熱量など、溶接中の現象の変化を捉えることができるものであれば、いずれでも構わない。さらに、それらを組み合わせて複数のパラメータをモニタリングし、多くの分割タイミングを設けることは、溶接中の現象の変化に応答性良く適応制御していくことになるので、より有効である。
まず、本発明に従うテスト溶接について説明する。
被溶接材と同じ鋼種、厚みの試験を、ギャップや既溶接点への分流のない状態で、定電流制御にて種々の条件で溶接を行い、必要とするナゲット径が得られる溶接条件、すなわち適正な加圧力F、通電時間Tおよび溶接電流Iを見つける。
なお、溶接機としてはインバータ直流抵抗スポット溶接機が好適であり、また電極としてはDR形先端のクロム銅電極が有利に適合する。さらに、ナゲット径は、ピール試験やナゲット中央の断面観察(ピクリン酸飽和水溶液にてエッチング)により求めることができる。
以上の実験結果から、テスト溶接モードにて、加圧力F、通電時間T、溶接電流Iとして溶接を行い、溶接中における電極間の電気特性から算出される瞬時発熱量の時間変化を記憶させて、テスト溶接とする。
なお、本発明において電極間の電気特性とは、電極間抵抗あるいは電極間電圧を意味する。
・2段分割の場合
鋼板間に溶融部が形成され始めるまでと、それ以降のナゲット成長過程との分岐点である鋼板間に溶融部が形成される時点とするのが好適である。
というのは、既溶接点への分流は、電極直下に安定した通電経路(溶融部)が形成されるまでがその影響が大きいことから、溶融部が形成されるまで単位体積当たりの累積発熱量を保証するように適応制御溶接を行うことで、近くに既溶接点が存在しても安定して通電経路が形成され、その後の第2ステップで安定したナゲットの成長が可能になるからである。
なお、鋼板間に溶融部が形成され始めるタイミングは、通電時間を変化させた溶接を行い、そのピール試験による観察や、溶融部の断面観察により判断することができる。
また、被溶接材がめっき鋼板の場合、めっきの溶融を考慮した3段分割とすることが、より好適である。というのは、めっきが存在する場合、分流の影響が大きく、その結果、電極直下に安定した通電経路が形成されるまでの現象が大きく変化するためである。めっきの融点は鋼板より低いため、通電を開始するとはじめに鋼板間のめっきが溶融に至り、溶融しためっきは加圧力により鋼板間から一部が吐き出される。このとき吐き出されためっきが通電面積を広げることとなるため、溶接中の電極間抵抗が大きく減少する。一方で、被溶接材の固有抵抗は温度上昇とともに増加するため、通電時間とともに固有抵抗値も上昇し、通電面積拡大による電極間抵抗の減少から、被溶接材の温度の上昇による電極間抵抗の上昇が生じるようになり、その後、溶融部が形成されることになる。よって、めっきが溶融して急激に通電面積が拡大する段階と、その後の通電により電極間に安定した通電経路(溶融部)が形成されるまでの段階、および、その後のナゲット成長過程の3段に溶接プロセスを分割して、それぞれの段階で、単位体積当たりの累積発熱量を保証するように適応制御溶接を行うことで、めっき鋼板の抵抗スポット溶接で近くに既溶接点が存在しても、安定して通電経路が形成され、その後の第3ステップで安定したナゲットの成長が可能になるからである。
本溶接は、上記のテスト溶接で得られた瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として溶接を開始し、いずれのステップにおいても、瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線に沿っている場合には、そのまま溶接行って溶接を終了する。
ただし、いずれかのステップにおいて、瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合には、その差に応じて通電量を制御する適応制御溶接を行って、本溶接における累積発熱量がテスト溶接で予め求めた累積発熱量と一致するように、当該ステップの残りの通電時間内で補償するのである。
これにより、電極先端が摩耗したり、外乱の存在下においても必要な累積発熱量を確保して、適正なナゲット径を得ることができる。
この方法による単位体積当たりの累積発熱量Qの算出要領は次のとおりである。
2枚の被溶接材の合計厚みをt、被溶接材の電気抵抗率をr、電極間電圧をV、溶接電流をIとし、電極と被溶接材が接触する面積をSとする。この場合、溶接電流は横断面積がSで、厚みtの柱状部分を通過して抵抗発熱を発生させる。この柱状部分における単位体積・単位時間当たりの発熱量qは次式(1)で求められる。
q=(V・I)/(S・t) −−− (1)
また、この柱状部分の電気抵抗Rは、次式(2)で求められる。
R=(r・t)/S −−− (2)
(2)式をSについて解いてこれを(1)式に代入すると、発熱量qは次式(3)
q=(V・I・R)/(r・t2)
=(V2)/(r・t2) −−− (3)
となる。
なお、(3)式は電極間電圧Vから発熱量を計算しているが、電極間電流Iから発熱量qを計算することもでき、このときにも電極と被溶接物が接触する面積Sを用いる必要がない。
以上、特許文献3に記載の方法によって、累積発熱量Qを算出する場合について説明したが、その他の算出式を用いても良いのは言うまでもない。
また、本発明におけるテスト溶接に関しては、既溶接点等の外乱のない状態で行う場合について説明したが、既溶接点のある状態で行っても、テスト溶接と本溶接の状態の差が小さくなり適応制御が効果的に働きやすくなるだけであり、何ら問題はない。
被溶接材として、軟鋼(厚み:1.6mm)を準備した。また、溶接電流は2段通電方式で行うものとした。
この被溶接材を2枚重ねにし、ギャップや既溶接点への分流のない状態にて定電流制御にて溶接を行い、適切なナゲット径が得られる溶接条件を求めた。溶接機にはインバータ直流抵抗スポット溶接機を用い、電極にはDR形先端径6mmのクロム銅電極を用いた。なお、溶接条件は、加圧力は3.43kN(350kgf)、通電時間は16cyc(50Hz(以降、時間の単位はすべて50Hzにおけるcycle数とする))の一定とし、溶接電流を種々に変更して、ナゲット径:4√t(t:板厚)が得られる電流値を求めた。この例で、適正なナゲット径は4√t=5.1mmとなる。
このテスト溶接を行ったときの溶接部断面を図2(a)に、その時の溶接電流値、電気抵抗値、累積発熱量および加圧力の推移を図2(b)に示す。
ここに、このテスト溶接で得られた第1ステップでの目標累積発熱量は138J、第2ステップでの目標累積発熱量は167Jであった。従って、最終的な目標累積発熱量は305Jとなる。
溶接点の近傍に予め既溶接点(溶接点中央間隔:7.5mm)が存在し、分流の影響が大きい条件で、上記したテスト溶接を基準として本発明に従う多段適応制御抵抗スポット溶接を行った。すなわち、テスト溶接で得られた単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として抵抗スポット溶接を行った。
図3(a)にその時の溶接部断面を、また図3(b)に溶接電流値、電気抵抗値および累積発熱量の推移を示す。
図4(a)に定電流制御溶接を行った時の溶接部断面を、また図4(b)にその時の溶接電流値、電気抵抗値および累積発熱量の推移を示す。
また、図5(a)に従来の1段通電による適応制御溶接を行った時の溶接部断面を、また図5(b)にその時の溶接電流値、電気抵抗値および累積発熱量の推移を示す。
本発明例では、特に第1ステップの前段において、既溶接点に起因した分流の影響を受けて発熱量の不足が見受けられたが、第1ステップの後段では、この不足分を補うべく溶接電流を増加させて目標とする発熱量を確保していることが分かる。
ここに、本溶接における第1ステップでの累積発熱量は135J、第2ステップでの累積発熱量は172Jであり、テスト溶接とほぼ同様な累積発熱量307Jが得られている。
また、従来の1段通電による適応制御溶接では、電流の制御が溶接現象の変化に対応できず、累積発熱量がテスト溶接よりも多くなり、5.6mmとナゲット径が過大になっており、散りが発生しやすい状態になっていた。
2 抵抗スポット溶接電源へ制御信号を与える制御部
3 溶接電流の検出部
4 抵抗スポット溶接電源の出力に接続された二次導体
5 下部アーム
6 加圧シリンダ
7 電極
8 被溶接材
9 ひずみセンサ
10 加圧力入力処理部
11 電極間電圧検出線
12 外部入力処理部
Claims (2)
- 複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接システムであって、
本溶接に先立つテスト溶接時に、定電流制御により通電して適正なナゲットを形成する場合の溶接中の電極間の電気特性から算出される瞬時発熱量の時間変化を計算し、記憶させる手段と、
上記記憶させた瞬時発熱量の時間変化に基づき、テスト溶接後の外部からの入力により、通電パターンを複数のステップに区切り、各ステップ毎の瞬時発熱量の時間変化および累積発熱量を目標値として記憶させる手段と、
引き続く本溶接時に、目標値として記憶させた瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として溶接を開始し、いずれかのステップにおいて、瞬時発熱量の時間変化量が目標の時間変化曲線から外れた場合に、その差を当該ステップの残りの通電時間内で補償し、当該ステップの目標累積発熱量と一致するように瞬時発熱量および累積発熱量を発生させるように溶接中に溶接電流又は電圧を調整する適応制御手段と
を備える抵抗スポット溶接システム。 - 前記抵抗スポット溶接システムが、さらに溶接開始後の加圧力変化状態を検知する加圧力変化状態検知手段を備え、
この加圧力変化状態検知手段により、前記テスト溶接における溶接中の加圧力が予め指定された値となるタイミングを求め、求められたタイミングを、前記通電パターンを複数のステップに区切る時間として入力する請求項1に記載の抵抗スポット溶接システム。
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