JPWO2014133090A1 - 脳腫瘍治療のための多能性幹細胞 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]自殺遺伝子を導入した多能性幹細胞を含む、脳腫瘍を治療するための細胞製剤であって、ここで、該多能性幹細胞は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性細胞であり、該細胞製剤は、脳腫瘍を死滅させる又はその増殖を阻害する薬物のプロドラッグとともに使用され、該プロドラッグは、前記自殺遺伝子の発現によって生成する酵素に対する基質である細胞製剤。
[2]脳腫瘍を構成するグリオーマ細胞を治療対象とする、上記[1]に記載の細胞製剤。
[3]前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、上記[1]及び[2]に記載の細胞製剤。
[4]前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、上記[1]〜[3]に記載の細胞製剤。
[5]前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、上記[1]〜[4]に記載の細胞製剤。
[6]前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、上記[1]〜[5]に記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]〜[6]に記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[8]前記多能性幹細胞が、脳腫瘍部位に集積する能力を有する、上記[1]〜[7]に記載の細胞製剤。
[9]前記自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)遺伝子又はニトロレダクターゼ遺伝子である、上記[1]〜[8]に記載の細胞製剤。
[10]前記プロドラッグが、自殺遺伝子がHSVtk遺伝子である場合はガンシクロビル(GCV)、アシクロビル、ペンシクロビル、PMEAアデフォビル又はPMPAテノフォビルであり、自殺遺伝子がシトシンデアミナーゼ遺伝子の場合は5−フルオロシトシンであり、自殺遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の場合は5−フルオロウラシルであり、自殺遺伝子がgpt遺伝子の場合は6−チオキサンチン又は6−チオグアニンであり、自殺遺伝子がニトロレダクターゼ(ntr)遺伝子の場合はプロドラッグはCB1954である、上記[1]〜[8]に記載の細胞製剤。
本発明は、自殺遺伝子を導入した多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤を用いて、脳腫瘍の治療、特に、グリオーマ細胞の死滅又はその増殖を阻害する治療を目指す。ここで、「脳腫瘍」とは、任意のタイプの神経細胞が異常に増殖する状態を指す。脳腫瘍の例としては、限定されないが、グリオーマ(膠腫)、髄芽腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、原発性中枢神経系リンパ腫、肉腫、及び脊髄腫瘍が挙げられる。本発明の細胞製剤は、上記各種の脳腫瘍を対象とすることができるが、脳腫瘍の約1/4を占めるグリオーマを治療対象とすることが好ましい。
(1)多能性幹細胞(Muse細胞)
本発明の細胞製剤に使用される多能性幹細胞は、本発明者らの一人である出澤が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage−differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液や真皮結合組織等の皮膚組織から得ることができ、各臓器の結合組織にも散在する。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、それぞれの細胞表面マーカーである「SSEA−3(Stage−specific embryonic antigen−3)」と「CD105」のダブル陽性として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、これらの抗原マーカーを指標として生体組織から分離することができる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、国際公開第WO2011/007900号に開示されている。また、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、骨髄、皮膚などから間葉系細胞を培養し、それをMuse細胞の母集団として用いる場合、SSEA−3陽性細胞の全てがCD105陽性細胞であることが分かっている。したがって、本発明における細胞製剤においては、生体の間葉系組織又は培養間葉系幹細胞からMuse細胞を分離する場合は、単にSSEA−3を抗原マーカーとしてMuse細胞を精製し、使用することができる。なお、本明細書においては、脳腫瘍を治療するための細胞製剤において使用され得る、SSEA−3を抗原マーカーとして、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から分離された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA−3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織に含まれる細胞であって、「SSEA−3陽性細胞」以外の細胞を指す。
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。本発明の一局面では、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。ここで、上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、体細胞であるヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、肝細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨細胞、脂肪細胞等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで損傷を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、分化する能力を有する。上記(iii)について、Muse細胞は、浮遊培養では増殖速度約1.3日で増殖するが、10日間程度で増殖が止まるという性質を有し、さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。また、上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、1個のMuse細胞を浮遊培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞を培養し、再度胚様体様細胞塊を形成させることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
本発明は、自殺遺伝子を導入したMuse細胞を含む、脳腫瘍を治療するための細胞製剤であって、該自殺遺伝子に対応するプロドラッグとともに使用する細胞製剤を提供する。
(a)自殺遺伝子
本明細書において使用するとき、「自殺遺伝子」とは、細胞内で発現すると自己を殺傷することができる遺伝子を意味し、典型的には、代謝毒性遺伝子が挙げられる。自殺遺伝子には、限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子(Proc.Natl.Acad.Sci,USA,78,1441−1445(1981))、シトシンデアミナーゼ遺伝子(EG11326 codA 355395..356678,大腸菌)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(EG11332 upp 2618894..2618268,大腸菌)、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)遺伝子(EG10414 gpt 255977..256435,大腸菌)、ニトロレダクターゼ(ntr)遺伝子(EG11261 nfsA 890407..891129,大腸菌)が含まれる。
(b)プロドラッグ
本発明の細胞製剤は、プロドラッグとともに使用することにより脳腫瘍を治療することができる。ここで、本発明の細胞製剤とともに使用される「プロドラッグ」とは、目的とする腫瘍細胞を死滅させる又はその増殖を阻害する薬物のプロドラッグであって、それ自体ではこのような細胞毒性を持たない薬物を意味する。このプロドラッグは、自殺遺伝子の発現によって生成する酵素により薬理活性(細胞毒性)をもつ薬物に変換される。プロドラッグとしては、自殺遺伝子が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の場合、ガンシクロビル(GCV)、アシクロビル、ペンシクロビル、PMEAアデフォビル、PMPAテノフォビルなどが挙げられ、好ましくはGCV、アシクロビル、ペンシクロビルを用いることができる。これらは、いずれも核酸のプリン体のグアニンの類似物質でDNA合成に使われると、そこでDNA合成が停止し、抗ウイルス効果を発揮する。また、自殺遺伝子がシトシンデアミナーゼ遺伝子の場合、プロドラッグは5−フルオロシトシンを用いることができる(Human Gene Therapy,7,713−720(1996))。自殺遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の場合、プロドラッグは5−フルオロウラシルを用いることができる(Int.J.Oncol,18,117−120(2001))。自殺遺伝子がグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の場合、プロドラッグは6−チオキサンチン又は6−チオグアニンを用いることができる(Human Gene Therapy,8,2043−2055(1997))。自殺遺伝子がニトロレダクターゼ遺伝子の場合、プロドラッグはCB1954を用いることができる(Cancer Gene Therapy,7,721−731(2000))。
本発明の細胞製剤においては、自殺遺伝子を導入したMuse細胞が使用される。Muse細胞に前記自殺遺伝子を導入する方法としては、該遺伝子を組み込んだベクターを導入する方法が一般的である。ベクターの使用による遺伝子導入としては、限定されないが、ウイルス性又は非ウイルス性遺伝子導入(例えば、プラスミド導入、ファージインテグラーゼ、トランスポゾン、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びレンチウイスルなど)が挙げられる。より具体的には、自殺遺伝子として、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子を用いる場合、マウス由来のHSVtk−レトロウイルス産生細胞(PA317)培養の上清液により、ウイルスを細胞に感染させて遺伝子を導入することができる。シトシンデアミナーゼ遺伝子を用いる場合には、大腸菌のシトシンデアミナーゼ遺伝子のcDNAにサイトメガロウイルス初期遺伝子エンハンサー/プロモーターを付したアデノウイルスベクターに組み込み(Human Gene Therapy,6,1055−1063(1995))、細胞に導入することができる。また、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)遺伝子を用いる場合には、大腸菌のUPRT遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターLXSNを用いて遺伝子を導入することができる。グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)遺伝子を用いる場合には、大腸菌のgpt−レトロウイルス産生細胞(GP/E86gpt)培養の上清液により、ウイルスを細胞に感染させて遺伝子を導入することができる。また、ニトロレダクターゼ(ntr)遺伝子を用いる場合には、大腸菌のntr遺伝子にサイトメガロウイルス初期遺伝子エンハンサー/プロモーターを付したプラスミドを作成し、エレクトロポレーションにより細胞内に遺伝子を導入することができる。なお、遺伝子導入前に所定の細胞数を確保するために、適宜、細胞を増殖させてもよい。
Muse細胞の細胞製剤への使用においては、該細胞を保護するためにジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等を、細菌の混入及び増殖を防ぐために抗生物質等を細胞製剤に含有させてもよい。さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)や間葉系幹細胞に含まれるMuse細胞以外の細胞又は成分を細胞製剤に含有させてもよい。当業者は、これら因子及び薬剤を適切な濃度で細胞製剤に添加することができる。
(1)ヒトMuse細胞の調製
ヒトMuse細胞の調製は、国際公開第WO2011/007900号に記載された方法に従って行った。より具体的には、ヒト骨髄液から接着性を有する間葉系細胞を培養し、増殖を経て、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団をSSEA−3陽性細胞としてFACSにて分離した。また、非Muse細胞は、上記間葉系細胞のうち、SSEA−3陰性の細胞群であり、対照として用いた。その後、リン酸緩衝生理食塩水又は培養液を用いて、所定濃度に調整し、以下のバイスタンダー効果及び細胞遊走能の評価に使用した。なお、骨髄間葉系細胞などの間葉系細胞を培養して得たものをMuse細胞の母集団として用いる場合、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、SSEA−3陽性細胞は全て、CD105陽性細胞であることが分かっている。
(2)HSVtk遺伝子導入
HSVtkレトロウイルス産生細胞(PA317、マウス線維芽細胞、Genetic Therapy Inc.)(Gaithersburg,MDより提供)をMSC培地中で48時間培養した後、その上清よりHSVtkレトロウイルスを得た。これを8μg/mlポリブレン(Aldrich Chemical Company Inc.,Milwaukee,WI)とともに培養中のMuse細胞に添加し、さらに5時間培養し、続いて洗浄後に新鮮な培養液と交換した。150μg/ml G418(Sigma−Aldrich Japan K.K.,Tokyo,Japan)とともに1週間培養し、薬剤耐性細胞を選択することにより遺伝子導入細胞のみを得た。これらの細胞株の中からガンシクロビルGCV感受性の高い株を選び、さらに増殖させ、充分量のHSVtk遺伝子導入細胞(Muse−TK細胞)を得た。
ヒト対象から採取したヒトグリオブラストーマにMuse細胞が存在しているかどうかを検討した。採取したグリオブラストーマの組織切片を作製し、Muse細胞の細胞表面抗原(SSEA−3)に対する抗体を用いて、常法に従って免疫染色を行った。図1に示すように、Muse細胞はグリオブラストーマの周辺に存在することが分かった。
実施例1において作製したMuse−TKによるバイスタンダー効果を確認するために、インビトロにおいてMuse−TK細胞とグリオーマ細胞との共培養により検討した。96ウェルにヒトグリオーマ細胞(A172)を1.5×104細胞/ウェル、Muse−TK細胞をそれと同数(1/1)、1/4、1/8、1/16、1/32の細胞数として混ぜ、2μg/mlのガンシクロビル(GCV)の存在下に所定日数で培養し、位相差顕微鏡で観察し、撮像した。図2に示すように、GCV添加後の第9日目には、Muse−TK細胞とグリオーマ細胞の割合が1:1、1:4及び1:8の培養系において、グリオーマ細胞の死滅が観察された。さらに、図2の結果に基づいて、GCV添加後の第5日目と第9日目に培養中のグリオーマ細胞を実際にカウントした結果を図3に示す。この結果からも分かるように、1:1〜1:8の細胞比までグリオーマ細胞の細胞増殖を減退させた。このように、Muse−TK細胞において、グリオーマ細胞に対するバイスタンダー効果が認められた。
実施例2に示されるように、Muse細胞は腫瘍周辺に集積する性質を有する。そこで、グリオーマ細胞(A172及びYKG1)の培養上清を用いて、インビトロにおけるMuse細胞の遊走能を検討した。Muse細胞の遊走性をボイデンチャンバー法(Boyden,S.,J.Exp.Med.,Vol.115,p.453−466(1962))を用いて定量的に測定した。使用したボイデンチャンバーは、Milliporeから市販されているQCM Chemotaxis Cell Migration Assay Kit(QCM 24 Well Colorimetric Cell Migration Assay)を使用した。このボイデンチャンバーは、チャンバー内部に、8μmの均一な微細孔を有するフィルターを底部に有するインサートを含む。インサートのフィルター上部にMuse細胞又は非Muse細胞を含む培養液を添加し、インサートの下部にグリオーマ細胞の培養上清を添加し、18時間培養後、フィルターの微細孔を通過した細胞数をカウントした。その結果を図4に示す。「Muse A172」及び「Muse YKG−1」の系において、Muse細胞は、微細孔を通過して、顕著にインサート下部に移動した。一方、非Muse細胞に対してグリオーマ細胞の培養上清を用いた場合、及びこの培養上清の代わりにDMEMを用いた場合には、Muse細胞の移動能は発揮されなかった。このように、グリオーマ細胞の培養上清中には、Muse細胞の遊走能を活性化する何らかの因子が存在することが示唆され、インビボにおいては、この因子によってMuse細胞の脳腫瘍への集積を促しているものと考えられる。
実施例1において作製したMuse−TKによるバイスタンダー効果をインビボにおいて確認した。Muse−TK細胞とルシフェラーゼ遺伝子が導入されたU87−luc2細胞(グリオーマ細胞株)をヌードマウス(雄性8週齢)の右脳内に同時移植した。より具体的には、移植されるMuse−TK細胞及びU87−luc2細胞の細胞数は、それぞれ2.5×104個及び10×104個(1:4)とした。上記細胞を脳内に移植後(0日)、翌日(1日目)から、ガンシクロビル(GCV)(Wako)をPBSにより希釈して5mg/mlとし、マウス1匹あたり1回1mg/200μl PBSを1日2回、10日間、腹腔内に投与した。対照として、GCVの代わりにPBSを投与した群、及びMuse−TK細胞の非移植群(U87−luc2細胞のみ)を用いた。細胞移植後から1日目、及び移植後から7日目ごとに、IVIS200を使用し、Bioluminescence imaging(BLI)にて腫瘍形成(増大又は縮小)過程を観察した。その結果を図5に示す。腫瘍形成については35日目まで観察したが、対照群であるPBS投与群(2段目及び4段目)、及びMuse−TK細胞の非移植群(3段目)では、経時的に脳腫瘍の増大が見られた。一方、Muse−TK細胞+GCV群(1段目)では、移植後の7日目より脳腫瘍の形成が抑制され、35日目では脳腫瘍はほとんど消滅していた。実験した4群のそれぞれについて、ルシフェラーゼによる蛍光強度を経時的に測定した場合においも、上記と同様に、Muse−TK細胞+GCV群において蛍光強度の顕著な低下が見られた(データ示さず)。さらに、上記マウスの生存率を検討するためにKaplan−Meier曲線を作製した。その結果、移植後の54日目において、Muse−TK細胞+GCV群では、実験に使用した全てのマウスは生存していたが、その他の3群については、31〜37日目において全てのマウスは腫瘍死した(データ示さず)。これらの結果より、インビボにおいてもMuse−TK細胞によるグリオーマ細胞に対するバイスタンダー効果が確認された。
Claims (10)
- 自殺遺伝子を導入した多能性幹細胞を含む、脳腫瘍を治療するための細胞製剤であって、ここで、該多能性幹細胞は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA−3陽性細胞であり、該細胞製剤は、脳腫瘍を死滅させる又はその増殖を阻害する薬物のプロドラッグとともに使用され、該プロドラッグは、前記自殺遺伝子の発現によって生成する酵素の基質である細胞製剤。
- 脳腫瘍を構成するグリオーマ細胞を治療対象とする、請求項1に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、請求項1又は2に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。 - 前記多能性幹細胞が、脳腫瘍部位に集積する能力を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)遺伝子又はニトロレダクターゼ遺伝子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞製剤。
- 前記プロドラッグが、自殺遺伝子がHSVtk遺伝子である場合はガンシクロビル(GCV)、アシクロビル、ペンシクロビル、PMEAアデフォビル又はPMPAテノフォビルであり、自殺遺伝子がシトシンデアミナーゼ遺伝子の場合は5−フルオロシトシンであり、自殺遺伝子がウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の場合は5−フルオロウラシルであり、自殺遺伝子がgpt遺伝子の場合は6−チオキサンチン又は6−チオグアニンであり、自殺遺伝子がニトロレダクターゼ(ntr)遺伝子の場合はプロドラッグはCB1954である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞製剤。
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