JPWO2014051109A1 - 抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤 - Google Patents

抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2014051109A1
JPWO2014051109A1 JP2014538654A JP2014538654A JPWO2014051109A1 JP WO2014051109 A1 JPWO2014051109 A1 JP WO2014051109A1 JP 2014538654 A JP2014538654 A JP 2014538654A JP 2014538654 A JP2014538654 A JP 2014538654A JP WO2014051109 A1 JPWO2014051109 A1 JP WO2014051109A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
human
bmp9
seq
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014538654A
Other languages
English (en)
Inventor
清 清水
清 清水
山崎 雄司
雄司 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyowa Kirin Co Ltd
Original Assignee
Kyowa Hakko Kirin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyowa Hakko Kirin Co Ltd filed Critical Kyowa Hakko Kirin Co Ltd
Publication of JPWO2014051109A1 publication Critical patent/JPWO2014051109A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/22Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against growth factors ; against growth regulators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P19/00Drugs for skeletal disorders
    • A61P19/08Drugs for skeletal disorders for bone diseases, e.g. rachitism, Paget's disease
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/30Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency
    • C07K2317/34Identification of a linear epitope shorter than 20 amino acid residues or of a conformational epitope defined by amino acid residues

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Physical Education & Sports Medicine (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Orthopedic Medicine & Surgery (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

本発明は、ヒトBMP9(Bone morphogenetic protein−9)に結合する、抗BMP9モノクローナル抗体又はその抗体断片、該抗体又は該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体又は該抗体断片をコードするDNA、該DNAを含むベクター、該ベクターを導入して得られる形質転換体、該ハイブリドーマ又は該形質転換体を用いる抗体又は該抗体断片の製造方法、該抗体又は該抗体断片を有効成分とする治療薬を提供する。また本発明は、該抗体又は該抗体断片を有効成分として含有する、異所性骨化疾患の治療に使用するための医薬組成物及びそれを用いた異所性骨化疾患の治療方法を提供する。

Description

本発明は、ヒトBMP9(Bone morphogenetic protein−9)に結合し、ヒトBMP9とALK1との結合阻害活性を有し、かつ、ヒトBMPタイプI受容体のうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害する抗BMP9モノクローナル抗体又はその抗体断片、該抗体又は該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体又は該抗体断片をコードするDNA、該DNAを含むベクター、該ベクターを導入して得られる形質転換体、該ハイブリドーマ又は該形質転換体を用いる抗体又は該抗体断片の製造方法、該抗体又は該抗体断片を有効成分とする治療薬に関する。また本発明は、該抗体又は該抗体断片を有効成分として含有する、異所性骨化疾患の治療に使用するための医薬組成物及びそれを用いた異所性骨化疾患の治療方法に関する。
BMP9は、Bone Morphogenetic Protein 9の略で、別名GDF2とも呼ばれる。BMP9は約20種類からなるBMP(骨形成蛋白質)ファミリー分子に属し、ヒトBMP9は429アミノ酸からなる分泌蛋白質である(非特許文献1)。BMP9は、胎児期では脊髄または体節間膜で、成体期では肝臓で主に発現し(非特許文献2、3、4)、ヒトBMP9は血液中に2−12ng/mLの濃度で存在する血中循環因子であることが知られている(非特許文献5)。
生体内におけるBMP9の役割について、これまでBMP9欠損マウスまたは動物への抗BMP9抗体投与に基づく報告は行われたことがないが、in vitroの知見に基づく報告はいくつか行われている。例えば、肥大軟骨細胞の形成若しくは間葉細胞から軟骨への分化に対する促進作用の発現(非特許文献6、7、8)、または血液前駆細胞の産生若しくはコロニー形成に対する促進作用の発現(非特許文献9)である。
異所性骨化とは、本来骨形成の起こらない軟部組織(筋肉、腱、靭帯、臓器)に起こる骨形成の総称で、異所的骨形成ともいう。異所性骨化を伴う疾患である進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressiva:FOP、以下FOPと記載)では、小児期から全身の骨格筋、筋膜、腱または靭帯などの線維性組織が進行性に骨化し、このために四肢関節の可動域低下若しくは強直、または体幹の可動性低下若しくは変形を生じる。
本疾患は、BMP(Bone morphogenetic protein)のタイプI受容体であるactivin−like kinase receptor 2(ALK2、ACVR1とも呼ばれるときがある)の遺伝子変異(617G>A;R206H)が原因とされている(非特許文献10)。
この遺伝子変異は、ALK2のリガンドである、BMP5、BMP6、BMP7、BMP9、activinが結合しなくても、シグナルが細胞内に伝わることにより骨化が生じる、構成的活性化変異と考えられている(非特許文献10)。
また、この遺伝子変異のあるALK2(以下、FOP−ALK2と記載)は、ALK2リガンドの一つであるBMP6に対する応答性が亢進した変異体であるとの報告もなされている(非特許文献11)。
一方、このFOP−ALK2は、BMP9に対する対する応答性も亢進した変異体であるとの報告はない。さらに、FOPを含む、異所性骨化疾患とBMP9との関連性も報告されていない。つまり、従来技術から、抗BMP9抗体が異所性骨化疾患の治療作用を有することを予想することは極めて困難であった。
抗BMP9モノクローナル抗体として、R&Dシステムズ社よりBMP9に対する中和活性を有するモノクローナル抗体(R&Dシステムズ社製、クローンNo.360107、以下、R&D抗体と記載)が市販されているが、その他の抗体は知られていない。
現在のFOP治療は、骨化を抑えることが可能な根本的な治療法はなく、痛みを抑えるなどの対処的な療法に留まっている。ALK2に対するキナーゼ阻害活性を有する低分子化合物が、FOP治療に有効である可能性は示されているが(非特許文献12)、非選択的なキナーゼ阻害活性による副作用が懸念されている。このような背景から、FOPには新たな治療薬の開発が望まれている。
J.Biol.Chem.,280,26,25111(2005) Nat.Biotechnology,21,294(2003) J.Biol.Chem.,275,24,17937(2000) J.Physiology−Paris,96,53(2002) Circ.Res.,102,8,914(2008) Gene Ther.,11,17,1312(2004) J.Biol.Chem.,284,1,649(2009) J.Bone Miner.Res.,26,6,1166(2011) Growth Factors,21,2,71(2003) Best Pract Res Cli Rheumatol.,1,191(2008) J.Bone Miner.Res.,6,1208(2010) Nature Madicine,14,1363(2008)
本発明は、FOPを含む異所性骨化疾患の治療に用いることのできる、抗ヒトBMP9抗体を有効成分とする治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、BMP9欠損マウスを用いて抗BMP9抗体の取得を試みたところ、R&D抗体に比して、著しくBMP9に対する結合性が向上した抗BMP9抗体の取得に成功した。取得した抗BMP9抗体は、R&D抗体とは異なるエピトープを認識し、R&D抗体にはない、BMPタイプIレセプターへの結合阻害作用を有する抗体であった。さらに、この抗BMP9抗体は、BMP9によるALK1由来シグナルに対し、FOP−ALK2由来シグナルに基づく骨分化を選択的に阻害できる抗体であった。
本発明者らはこれらの知見に基づき、抗BMP9抗体を有効成分とする、異所性骨化疾患に対する治療剤を提供できると考え、本発明を完成させるに至った。
本発明の要旨は以下である。
(1)以下の(a)〜(d)から選ばれる1の抗体と競合してヒトBMP9に結合し、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害し、かつ、ヒトBMPタイプI受容体由来シグナルのうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害するモノクローナル抗体又は該抗体断片。
(a)相補鎖決定領域(complementarity determining region、以下CDRと記す)1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体の重鎖(以下、H鎖と記す)を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖(以下、L鎖と記す)を含む抗体
(b)CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含む抗体
(c)配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)を含み、及び/又は配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖可変領域(以下、VLと記す)を含む抗体
(d)配列番号51で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、及び/又は配列番号53で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含む抗体
(2)前記(a)〜(d)から選ばれる1の抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である、(1)に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
(3)遺伝子組換え抗体である、(1)または(2)に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
(4)ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体から選ばれる遺伝子組換え抗体である、(3)に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
(5)以下の(a)〜(b)から選ばれる1のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
(a)CDR1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及び該抗体断片
(b)CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及び該抗体断片
(6)配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域のアミノ酸配列のうち、1番目から74番目に含まれるアミノ酸に結合する、(1)〜(5)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体及び該抗体断片。
(7)Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である(1)〜(6)のいずれか1に記載の抗体断片。
(8)(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片をコードするDNA。
(9)(8)に記載のDNAを含有する組換えベクター。
(10)(9)に記載の組換え体ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換株。
(11)(10)に記載の形質転換株を培地に培養し、培養物中に(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を生成蓄積させ、培養物から該抗体又は該抗体断片を採取することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片の製造方法。
(12)(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を用いるヒトBMP9の免疫学的検出又は測定方法。
(13)(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片と薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(14)(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を投与することを含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療方法。
(15)(1)〜(7)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療薬。
(16)ヒトBMP9に結合し、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害し、かつ、ヒトBMPタイプI受容体のうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害するモノクローナル抗体又は該抗体断片を投与することを含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療方法。
本発明のモノクローナル抗体および該抗体断片は、R&D抗体とは異なるエピトープを認識し、R&D抗体にはない、BMPタイプIレセプターへの結合阻害作用を有する抗体である。また、本発明のモノクローナル抗体および該抗体断片は、BMP9によるALK1由来シグナルに対し、FOP−ALK2由来シグナルに基づく骨分化を選択的に阻害できるとともに、副作用の懸念が少ないという利点を有する。したがって、本発明のモノクローナル抗体および該抗体断片によれば、該抗体および抗体断片を有効成分とする、FOPを含む異所性骨化疾患に対する治療剤を提供することができる。
図1は、マウスBMP9 遺伝子ノックアウト用ベクターの構造を示す図である。mouse 5’ genomeは、BMP9遺伝子ノックアウトベクター 5’相同領域を、Neoはネオマイシン耐性遺伝子を、mouse 3’ genomeはBMP9遺伝子ノックアウトベクター3’相同領域を、DT−AはジフテリアトキシンA鎖遺伝子を、T3はT3プロモーターを、T7はT7プロモーターを、pBluescriptはクローニングベクターをそれぞれ表す。 図2は、取得した抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のヒトBMP9への結合特異性を酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって示した図である。縦軸は吸光度(450−570nm)を示す。固相化した抗原がヒトBMP9の場合を黒、ヒトBMP10の場合を白で示す。 図3は、取得した抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のヒトBMP9への結合性をELISAによって示した図である。横軸に抗体濃度(ng/mL)を、縦軸に各抗体濃度における吸光度(450−570nm)を示す。それぞれ、抗体なしは○、3B7−3−3抗体は△、3C7−3−1抗体は□、R&D抗体は●で示す。 図4は、取得した抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のヒトBMP9と標識R&D抗体の結合に対する阻害作用を示した図である。横軸は標識をしていない抗体濃度(ng/mL)を、縦軸は各抗体のBMP9/R&D抗体の結合に対する阻害活性(%)を示す。それぞれ、3B7−3−3抗体は△、3C7−3−1抗体は□、R&D抗体は●で示す。 図5は既存及び取得した抗BMP9モノクローナル抗体の非標識抗体による、各標識抗体とヒトBMP9の結合に対する阻害作用を酵素結合免疫吸着法(ELISA)で検出した図である。横軸は、検出に用いたビオチン標識抗体を、縦軸は吸光度(450−570nm)を示す。3B7−3−3抗体は黒、3C7−3−1抗体は斜線、R&D抗体は格子、抗体なしは白で示す。 図6は、取得した抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のヒトBMP9とヒトALK1の結合に対する阻害作用を示した図である。横軸は抗体濃度(ng/mL)を、縦軸は各抗体のBMP9/ALK1結合に対する阻害活性(%)を示す。それぞれ、3B7−3−3抗体は△、3C7−3−1抗体は□、R&D抗体は●で示す。 図7は、取得した抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のBMP9依存性ALK1由来シグナルに対する阻害作用を示した図である。横軸は抗体濃度(ng/mL)を、縦軸は各抗体のBMP9依存性ALK1由来シグナルに対する阻害活性(%)を示す。それぞれ、3C7−3−1抗体は□、R&D抗体は●で示す。 図8は、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の骨分化に対する血清(FCS)濃度の影響を5%と20%で比較した図である。縦軸は各細胞中のアルカリフォスファターゼ活性値;吸光度(414nm)を示す。FOP−ALK2遺伝子を黒、野生型hALK2遺伝子を斜線、コントロールベクターを白で示す。統計学的有意差検定はStudent’s t−testを用いて解析し、**はP<0.01を示す。図内のエラーバーは標準偏差(SD、n=3)を示す。 図9は、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の血清(FCS)高濃度添加による骨分化に対する、R&D抗体の作用を示した図である。縦軸は各細胞中のアルカリフォスファターゼ活性値;吸光度(414nm)を示す。R&D抗体添加時を黒、非添加時を白で示す。統計学的有意差検定はStudent’s t−testを用いて解析し、**はP<0.01を、***はP<0.001を示す。図内のエラーバーは標準偏差(SD、n=3)を示す。 図10は、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞株のヒトBMP9組換え蛋白質に対する反応性を示した図である。横軸はヒトBMP9組換え蛋白質添加濃度(ng/mL)を、縦軸は各細胞中のアルカリフォスファターゼ活性値;吸光度(414nm)を示す。それぞれ、野生型ALK2遺伝子導入2C12細胞株は△、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞株は□、コントロールベクター導入C2C12細胞株は●で示す。図内のエラーバーは標準偏差(SD、n=3)を示す。 図11は、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞株のヒトBMP9組換え蛋白質添加による骨分化(アルカリフォスファターゼ活性上昇)に対する、抗ヒトBMP9モノクローナル抗体の作用を示した図である。横軸は抗体濃度(ng/mL)を、縦軸は各抗体のBMP9組換え蛋白質添加による骨分化に対する阻害活性(%)を示す。それぞれ、3C7−3−1抗体は△、R&D抗体は●で示す。
本発明は、ヒトBMP9に結合するモノクローナル抗体に関する。
本発明において、抗体と競合してヒトBMP9に結合する抗体とは、ヒトBMP9に本発明のモノクローナル抗体と同一又は部分的に同一のエピトープ(抗原決定基ともいう)を有し、該エピトープに結合する抗体をいう。本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体とは、本発明のモノクローナル抗体が認識するヒトBMP9のアミノ酸配列と同じ配列を認識し結合する抗体をいう。
ヒトBMP9は、配列番号66で表されるアミノ酸配列を持つ、一本鎖の前駆体蛋白質蛋白質(Pre−Pro体)として合成される。この一本鎖のPre−Pro体は、配列番号66で表されるアミノ酸配列のうち、ゴルジ体にて、1から22番目までのシグナルペプチド領域が切断された後、392番目に存在するシステイン残基間によるジスルフィド結合を介し、2量体(Pro2量体)を形成する。
その後、furin様プロテアーゼにより、配列番号66で表されるアミノ酸配列の319番目と320番目のアミノ酸残基間で切断が起こり、ジスルフィド結合を持たないN末側段片のプロペプチド領域(配列番号66で表されるアミノ酸配列のうち、23番目のアミノ酸から319番目のアミノ酸までを含むペプチド)と配列番号67で表されるアミノ酸配列からなるC末側断片(mature領域)に分割される。
前記mature領域は、プロペプチド領域の切断後も、配列番号67で表されるアミノ酸配列の73番目に残るシステイン残基間によるジスルフィド結合を介し、2量体を形成する(以下、mature2量体と表記する)。
切断されたN末側のプロペプチド領域の2分子は、前記mature2量体1分子と非共有結合を介し複合体を形成し、その複合体の形で細胞から分泌される[J.Biol.Chem.,280,26,25111(2005)]。mature2量体及びmature2量体にN末プロペプチド領域が結合した複合体のいずれも、BMP9の機能を有している。
従って、本発明におけるヒトBMP9としては、配列番号66又はGenBankアクセッション番号NP_057288で示されるアミノ酸配列のうち、mature領域に相当する320番目から429番目までのアミノ酸配列(配列番号67)を含み、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチド、mature領域に相当する320番目から429番目までのアミノ酸配列(配列番号67)において、1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチド、及び配列番号67で示されるアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチド、ならびに上述のmature2量体、及びmature2量体にN末プロペプチド領域が結合した複合体も包含される。
前記BMP9の機能としては、BMP9の細胞内のシグナル伝達への関与をいう。細胞内のシグナル伝達では、BMP9がTGFβスーパーファミリーに属するBMPタイプI及びBMPタイプIIの2つの受容体に結合することにより、当該受容体が活性化され、Smad1/5/8がリン酸化され、さらにリン酸化により活性化されたSmad1/5/8が、Smad4と複合体を形成後、核内に移行し、転写因子として機能する。
BMPタイプI受容体としては、ALK1及びALK2が挙げられる。ALK2としては、FOPの原因とされている遺伝子変異(617G>A;R206H)のある、FOP−ALK2も含まれる。また、BMPタイプII受容体としては、BMPタイプII受容体(BMPRII)、activinタイプIIa受容体(ActRIIa)、及びactivinタイプIIb受容体(ActRIIb)が挙げられる。
配列番号67で示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得る方法としては、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in molecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research、10、6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、6409(1982)、Gene、34、315(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488(1985)]などを用いて、例えば、配列番号67で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子に部位特異的変異を導入する方法が挙げられる。
欠失、置換又は付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個〜数十個、例えば、1〜20個、より好ましくは1個〜数個、例えば、1〜5個のアミノ酸である。
ヒトBMP9をコードする遺伝子としては、配列番号68又はGenBankアクセッション番号NM_016204で示される塩基配列が挙げられる。そのうち、mature領域に相当する配列番号69で示される塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号69で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、ならびに配列番号69で示される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなり、かつヒトBMP9の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子なども、本発明のヒトBMP9をコードする遺伝子に包含される。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号69で示される塩基配列を有するDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法、又はDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAを意味する。
具体的には、ハイブリダイズしたコロニーもしくはプラーク由来のDNA、又は該配列を有するPCR産物又はオリゴDNAを固定化したフィルター又はスライドガラスを用いて、0.7〜1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Coretechniques、A Practical Approach、Second Edition、Oxford University(1995)]を行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルター又はスライドグラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
前記ハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号69で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
真核生物の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も、本発明のBMP9をコードする遺伝子に包含される。
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよい。塩基配列については、例えば、BLAST[J.Mol.Biol.、215、403(1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
また、アミノ酸配列については、例えば、BLAST2[Nucleic Acids Res.、25、3389(1997)、Genome Res.、7、649(1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.html]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、−E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、−q(Penalty for nucleotide mismatch)が−3、−r(reward for nucleotide match)が1、−e(expect value)が10、−W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、−y[Dropoff(X)for blast extensions in bits]がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムでは7、−X(X dropoff value forgapped alignment in bits)が15及びZ(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastnの場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/blastcgihelp.html)。
配列番号66又はGenBankアクセッション番号NP_057288で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができ、例えば、配列番号66で示されるアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。
また、上記の方法で作製されるポリペプチド又はDNAに基づいて、上記と同様の方法により、配列番号66又はGenBankアクセッション番号NP_057288で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
さらに、配列番号66又はGenBankアクセッション番号NP_057288で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチド、又は配列番号66又はGenBankアクセッション番号NP_057288で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法、t−ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明のモノクローナル抗体(以下、本発明の抗体ともいう。)は、ヒトBMP9のアミノ酸配列、又はその立体構造を認識し、かつ結合する抗体又はその抗体断片であり、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害し、ヒトBMPタイプI受容体由来シグナルのうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害する性質を有する。
本発明におけるヒトBMP9のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域のアミノ酸配列を2つ含み、73番目のシステイン残基間がジスルフィド結合を形成しているものが挙げられる。
本発明におけるヒトBMP9の立体構造としては、配列番号66、GenBankアクセッション番号NP_057288又は配列番号67で示されるアミノ酸配列を含むヒトBMP9が天然状態でとりうる構造と同等の構造を有していればいずれの構造でもよい。ヒトBMP9が天然状態でとりうる立体構造とは、ヒトBMP9の天然型の立体構造のことをいう。
本発明におけるヒトBMPタイプI受容体としては、ヒトALK1及びヒトALK2が挙げられる。ヒトALK1としては、配列番号18又はGenBankアクセッション番号AAH42637で示されるアミノ酸配列のうち、細胞外領域に相当する22番目から118番目までのアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。
ヒトALK2としては、配列番号70若しくはGenBankアクセッション番号NP_001096で示されるアミノ酸配列、又は、配列番号70若しくはGenBankアクセッション番号NP_001096で示されるアミノ酸配列中、206番目アミノ酸がアルギニンからヒスチジンに変異したアミノ酸配列(配列番号71)のうち、細胞外領域に相当する22番目から118番目までのアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。
前記抗体として、具体的には、以下の(i)及び(ii)のモノクローナル抗体及びその抗体断片が挙げられる。
(i)CDR1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
(ii)CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
また、本発明のモノクローナル抗体としてより具体的には、以下の(a)及び(b)のモノクローナル抗体及びその抗体断片が挙げられる。
(a)配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
(b)配列番号51で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号53で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
さらに、本発明のモノクローナル抗体としては、前記モノクローナル抗体が結合するヒトBMP9に存在するエピトープと、同じエピトープに結合するモノクローナル抗体及びその抗体断片を挙げることができる。
本発明の抗体又はその抗体断片が、ヒトBMP9のアミノ酸配列、又はその立体構造に結合することは、固相抗原を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)など、ヒトBMP9またはヒトBMP9を発現した組織に対する公知の免疫学的検出法、特定の抗原と特定抗原に対する抗体の結合性を調べることができる方法などにより確認することができる。
例えば、Biacoreシステム(GE Healthcare社製)などを用いた表面プラズモン共鳴、ITC(DKSH社製)などを用いた等温滴定カロリメトリーなどの方法が挙げられる。
抗原に対する抗体の結合解離定数(Kd値)は、ELISA、表面プラズモン共鳴、等温滴定カロリメトリー、いずれの方法からも、スキャッチャード・プロットまたは各装置の添付文書に従った解析を行うことで、求めることができる。
例えば、Biacoreシステム(GE Healthcare社製)を用いて測定したセンサーグラムから、シングルサイクルカイネティクス算出法(BIAevaluation Software ver.3、GE Healthcare社製)により解析することで、算出することができる。
また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
ヒトBMP9を発現した組織としては、該BMP9を発現していればいずれの組織でもよく、例えば、血液、肝臓などが挙げられる。
本発明の抗体又はその抗体断片が、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害することは、固相抗原を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)など、ヒトBMP9やまたはヒトBMP9を発現した組織に対する公知の免疫学的検出法により確認できる。例えば、固相化したヒトBMP9に対し、ヒトALK1又はヒトALK2が、本発明の抗体又はその抗体断片の存在下で結合しないことにより、確認することができる。
本発明の抗体又はその抗体断片が、ヒトBMPタイプI受容体シグナルのうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害することは、ヒトALK1発現細胞とヒトFOP−ALK2発現細胞を作製し、レポーターアッセイなど、公知の検出法を用いることにより確認できる。例えば、播種したヒトALK1発現細胞に、ヒトBMP9を添加することで観測される細胞の応答に比べ、播種したヒトFOP−ALK2発現細胞に、ヒトBMP9を添加することで観測される細胞の応答を、本発明の抗体又はその抗体断片がより強く阻害することにより、確認することができる。
ヒトALK1発現細胞としては、該ALK1と検出に必要な蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換した細胞であれば、いずれの細胞でもよい。ヒトFOP−ALK2発現細胞も、同様である。
本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマにより生産される抗体、又は抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により生産される遺伝子組換え抗体を挙げることができる。
モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(1次構造)が均一であることが特徴である。
エピトープとしては、例えば、モノクローナル抗体が認識し、結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、糖鎖が結合したアミノ酸配列及び糖鎖が結合したアミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
本発明のモノクローナル抗体は、ヒトBMP9のアミノ酸配列に結合することが好ましい。
本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープは、ヒトBMP9のアミノ酸配列に含まれることが好ましい。
ハイブリドーマは、例えば、上記のヒトBMP9を抗原として調製し、該抗原を免疫した動物より抗原特異性を有する抗体生産細胞を誘導し、さらに、該抗体生産細胞と骨髄腫細胞とを融合させることにより、調製することができる。該ハイブリドーマを培養するか、又は該ハイブリドーマ細胞を動物に投与して該動物を腹水がん化させ、該培養液又は腹水を分離、精製することにより抗BMP9モノクローナル抗体を取得することができる。
抗原を免疫する動物としては、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができるが、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、ニワトリ又はラビットなどが用いられる。また、このような動物から抗体産生能を有する細胞を取得し、該細胞にin vitroで免疫を施した後に、骨髄腫細胞と融合して作製したハイブリドーマが生産する抗体なども本発明の抗体に包含される。
本発明における遺伝子組換え抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体、ヒト抗体又は抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。遺伝子組換え抗体は、例えば、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものが挙げられる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLとヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)及び軽鎖定常領域(以下、CLと記す)からなる抗体をいう。本発明のヒト型キメラ抗体は、前記のハイブリドーマより、VH及びVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCH及びCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3又はhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラス又はλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体として、具体的には、配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むキメラ抗体が挙げられる。また、配列番号51で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、配列番号53で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むキメラ抗体が挙げられる。
ヒト型CDR移植抗体とは、ヒト化抗体という場合もあり、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVH及びVLの適切な位置に移植した抗体をいう。本発明のヒト型CDR移植抗体は、ヒトBMP9を特異的に認識し、かつヒトBMP9のアミノ酸配列、又はその立体構造に結合するヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVH及びVLのフレームワーク領域(以下、FRと表記する)に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCH及びCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3又はhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラス又はλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型CDR移植抗体として具体的には、CDR1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むヒト化抗体が挙げられる。
また、CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むヒト化抗体が挙げられる。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリー及びヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養上清中より該抗体を精製することができる。
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖及び2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法を用い、ヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を産生蓄積させることにより作製できる。
上述の抗体又は抗体断片を構成するアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換又は挿入され、かつ上述の抗体又はその抗体断片と同様な活性を有するモノクローナル抗体又はその抗体断片も、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片に包含される。
欠失、置換、挿入及び/又は付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning 2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research、10、6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、6409(1982)、Gene、34、315(1985)、Nucleic Acids Research、13、4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488(1985)]などの周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。例えば、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個である。
上記の抗体のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたとは、次のことを示す。即ち、同一配列中の任意、かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入又は付加があることを意味する。また、欠失、置換、挿入又は付加が同時に生じる場合もあり、置換、挿入又は付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型いずれの場合もある。
天然型アミノ酸残基としては、例えば、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、又はL−システインなどが挙げられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2、4−ジアミノブタン酸、2、3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明において、抗体断片としては、Fab、F(ab’)、Fab’、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドなどが挙げられる。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素であるパパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、本発明のモノクローナル抗体をパパインで処理して得ることができる。また、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することもできる。
F(ab’)は、IgGのヒンジ領域のジスルフィド結合の下部を蛋白質分解酵素であるペプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有する断片である。
本発明のF(ab’)は、本発明のモノクローナル抗体をペプシンで処理して得ることができる。また、下記のFab’をチオエーテル結合又はジスルフィド結合させ、作製することもできる。
Fab’は、前記F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のFab’は、本発明のF(ab’)をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することもできる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のscFvは、本発明のモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
本発明のdiabodyは、本発明のモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
dsFvは、VH及びVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基は既知の方法[Protein Engineering、7、697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
本発明のdsFvは、本発明のモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VH又はVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のモノクローナル抗体のVH及びVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明のモノクローナル抗体には、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的又は遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
抗体の誘導体を検出方法、定量方法、検出用試薬、又は定量用試薬として使用する場合には、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片に結合する薬剤として、通常の免疫学的検出又は測定法で用いられる標識体が挙げられる。
本発明における、抗体の誘導体は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片のH鎖又はL鎖のN末端側又はC末端側、抗体又はその抗体断片中の適当な置換基又は側鎖、さらにはモノクローナル抗体又はその抗体断片中の糖鎖などに、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的手法[抗体工学入門、地人書館(1994)]により結合させることにより製造することができる。
また、本発明における、抗体の誘導体は、本発明のモノクローナル抗体又は抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させる遺伝子工学的手法より製造することができる。
放射性同位元素としては、例えば、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77Lu、又は211Atなどが挙げられる。放射性同位元素は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性同位元素をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、例えば、1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)などが挙げられる。
低分子の薬剤としては、例えば、アクリジニウムエステルもしくはロフィンなどの発光物質、又はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光物質などが挙げられる。
低分子の薬剤と抗体とを結合させる方法としては、例えば、グルタールアルデヒドを介して薬剤と抗体のアミノ基間を結合させる方法、又は水溶性カルボジイミドを介して薬剤のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
高分子の薬剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、又はヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどが挙げられる。
これらの高分子化合物を抗体又は抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的又は生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失又は抗体産生の抑制、などの効果が期待される[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。
PEGと抗体を結合させる方法としては、例えば、PEG化修飾試薬と反応させる方法などが挙げられる[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。PEG化修飾試薬としては、リジンのε−アミノ基への修飾剤(日本国特開昭61−178926号公報)、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基への修飾剤(日本国特開昭56−23587号公報)、又はアルギニンのグアニジノ基への修飾剤(日本国特開平2−117920号公報)などが挙げられる。
蛋白質としては、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼもしくはルシフェラーゼなどの酵素が挙げられる。
また、本発明は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を有効成分として含有するBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療薬に関する。
BMP9が関与する異所性骨化疾患としては、例えば、FOPが挙げられる。
本発明の治療剤としては、上述した本発明のモノクローナル抗体又は該抗体断片を有効成分として含有する。
本発明の抗体又は該抗体断片、又はこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、又はこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましい。例えば、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内もしくは静脈内などの非経口投与が挙げられ、好ましくは静脈内投与もしくは皮下投与を挙げられる。
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、坐剤、注射剤、軟膏、又はテープ剤などが挙げられる。
投与量又は投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢及び体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜10mg/kgである。
さらに、本発明は、BMP9のアミノ酸配列、又はその立体構造を特異的に認識し、かつ結合するモノクローナル抗体又はその抗体断片を有効成分として含有する、BMP9の免疫学的検出又は測定方法に関する。
本発明においてBMP9の量を検出又は測定する方法としては、任意の公知の方法が挙げられる。例えば、免疫学的検出又は測定方法などが挙げられる。
免疫学的検出又は測定方法とは、標識を施した抗原又は抗体を用いて、抗体量又は抗原量を検出又は測定する方法である。免疫学的検出又は測定方法としては、例えば、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA又はELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、ウェスタンブロット法又は物理化学的手法などが挙げられる。
以下に、本発明の抗体の製造方法、及び疾患の治療方法について、具体的に説明する。
1.モノクローナル抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるBMP9又はBMP9を発現した組織は、BMP9全長又はその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は動物細胞などに導入することにより、得ることができる。また、BMP9を多量に発現しているヒト組織からBMP9を精製し、得ることが出来る。また、該組織などをそのまま抗原として用いることもできる。さらに、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によりBMP9の部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
本発明で用いられるBMP9は、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)又はCurrent Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)などに記載された方法などを用い、例えば以下の方法により、該BMP9をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
まず、BMP9をコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製又は染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。
宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞、又は動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、組換えベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、BMP9をコードする部分を含むDNA、及び転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。また、該組換えベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
該組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列(SD配列ともいう)と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
また、該BMP9をコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするBMP9の生産率を向上させることができる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233−2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58−110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry、48、669(1984)]、pLSA1[Agric Biol.Chem.、53、277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4306(1985)]、pBluescript II SK(−)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP−400)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP6798)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J.Bacteriol.、172、2392(1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)、又はpME18SFL3などが挙げられる。
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、又はT7プロモーターなどの、大腸菌又はファージなどに由来するプロモーターを挙げることができる。また、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、又はlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなども用いることができる。
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL−1Blue、大腸菌XL2−Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49、又は大腸菌DH5αなどが挙げられる。
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69、2110(1972)、Gene、17、107(1982)、Molecular&General Genetics、168、111(1979)]が挙げられる。
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、pcDNA I、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3−22979号公報;Cytotechnology、3、133(1990)]、pAS3−3(日本国特開平2−227075号公報)、pcDM8[Nature、329、840(1987)]、pcDNA I/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochemistry、101、1307(1987)]、pAGE210、pME18SFL3、又はpKANTEX93(国際公開第97/10354号)などが挙げられる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、又はモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーターもしくはエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、例えば、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞(Journal of Experimental Medicine、108、945(1958);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、60、1275(1968);Genetics、55、513(1968);Chromosoma、41、129(1973);Methods in Cell Science、18、115(1996);Radiation Research、148、260(1997);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216(1980);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、60、1275(1968);Cell、6、121(1975);Molecular Cellgenetics、Appendix I、II(pp.883−900))、CHO/DG44、CHO−K1(ATCC番号:CCL−61)、DUkXB11(ATCC番号:CCL−9096)、Pro−5(ATCC番号:CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies、Cat#11619)、Pro−3、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(又はYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14、シリアンハムスター細胞BHK又はHBT5637(日本国特開昭63−000299号公報)などが挙げられる。
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology、3、133(1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2−227075号公報)、又はリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、7413(1987)]などが挙げられる。
以上のようにして得られるBMP9をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物、又は動物細胞などの由来の形質転換体を培地に培養し、培養物中に該BMP9を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、BMP9を製造することができる。該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖又は糖鎖が付加されたBMP9を得ることができる。
誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association、199、519(1967)]、EagleのMEM培地[Science、122、501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology、8、396(1959)]、199培地[Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、73、1(1950)]、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地、又はこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO存在下などの条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン又はペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
BMP9をコードする遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、分泌生産又は融合蛋白質発現などの方法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]を用いることができる。
BMP9の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、又は宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞、又は生産させるBMP9の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
BMP9が宿主細胞内又は宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.、264、17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、8227(1989)、Genes Develop.、4、1288(1990)]、日本国特開平05−336963号公報、又は国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、BMP9を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2−227075号公報)を利用してBMP9の生産量を上昇させることもできる。
得られたBMP9は、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。BMP9が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、又はダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
前記無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、又は等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独又は組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
BMP9が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該BMP9の不溶体を回収する。回収した該BMP9の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈又は透析することにより、該BMP9を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
BMP9又はその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該BMP9又はその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
また、本発明において用いられるBMP9は、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル−ベガ社製、パーセプチブ社製、又は島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラット又はハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また、免疫原性が低く上記の動物で充分な抗体価の上昇が認められない場合には、BMP9ノックアウトマウスを被免疫動物として用いることもできる。
免疫は、動物の皮下、静脈内又は腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、又は水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)、又はKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
抗原の投与は、1回目の投与の後、1〜2週間おきに2〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
抗原の最終投与後3〜7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8−アザグアニン耐性マウス(Balb/C由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology、18、1(1978)]、P3−NS1/1Ag41(NS−1)[European J.Immunology、6、511(1976)]、SP2/0−Ag14(SP−2)[Nature、276、269(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunology、123、1548(1979)]、又はP3−X63−Ag8(X63)[Nature、256、495(1975)]などが用いられる。
該骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2−メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、及び8−アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimum Essential Medium(MEM)培地又はPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。
沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000)、MEM培地及びジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。さらに1〜2分間毎にMEM培地1〜2 mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50 mLになるようにする。遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、融合用抗体産生細胞にHAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、及びアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%COインキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、BMP9を含む抗原に反応し、BMP9を含まない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目はHT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウス又はヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水がん化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラム又はゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgG又はIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBS添加を添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、Hybridoma−SFM培地に懸濁し、3〜7日間培養する。得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA−カラム又はプロテインG−カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。なお、Hybridoma−SFM培地には5%ダイゴGF21を添加することもできる。
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法又は280nmでの吸光度より算出する。
(6)モノクローナル抗体の選択
モノクローナル抗体の選択は以下に示す酵素免疫測定法によるバインディングアッセイ、及びBiacoreによるkinetics解析により行う。
(6−a)バインディングアッセイ
抗原としては、(1)で得られるBMP9をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は動物細胞などに導入して得られた遺伝子導入細胞、リコンビナント蛋白質、又はヒト組織から得た精製ポリペプチド又は部分ペプチドなどを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA又はKLHなどのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いてもよい。
抗原を96ウェルプレートなどのプレートに分注し、固相化した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清又は精製モノクローナル抗体などの被験物質を分注し、反応させる。PBS又はPBS−Tweenなどで、よく洗浄した後、第2抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質又は放射線化合物などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。PBS−Tweenでよく洗浄した後、第2抗体の標識物質に応じた反応を行ない、免疫原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を選択する。
また、本発明のモノクローナル抗体は、上述のバインディングアッセイ系に、被検抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被検抗体を加えた時にモノクローナル抗体の結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、BMP9のアミノ酸配列、又はその立体構造への結合について、取得したモノクローナル抗体と競合するモノクローナル抗体を取得することができる。
さらに、本発明のモノクローナル抗体が認識するエピトープと、同じエピトープに結合する抗体は、上述のバインティングアッセイ系で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの、部分的な合成ペプチド、又はエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで、取得することができる。
(6−b)Biacoreによるkinetics解析
Biacore T100を用い、抗原と被験物の間の結合におけるkineticsを測定し、その結果を機器付属の解析ソフトウエアで解析をする。抗マウスIgG抗体をセンサーチップCM5にアミンカップリング法により固定した後、ハイブリドーマ培養上清又は精製モノクローナル抗体などの被験物質を流し、適当量結合させ、さらに濃度既知の複数濃度の抗原を流し、結合、解離を測定する。
得られたデータを機器付属のソフトウエアを用い、1:1バインディングモデルによりkinetics解析を行い、各種パラメータを取得する。又は、ヒトBMP9をセンサーチップ上に、例えばアミンカップリング法により固定した後、濃度既知の複数濃度の精製モノクローナル抗体を流し、結合、解離を測定する。得られたデータを機器付属のソフトウエアを用い、バイバレントバインディングモデルによりkinetics解析を行い、各種パラメータを取得する。
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体の作製方法を示す。
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCH及びCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCH及びκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol.、3、133(1990)]、pAGE103[J.Biochem.、101、1307(1987)]、pHSG274[Gene、27、223(1984)]、pKCR[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78、1527(1981)]、pSG1bd2−4[Cytotechnol.、4、173(1990)]、又はpSE1UK1Sed1−3[Cytotechnol.、13、79(1993)]などを用いる。
動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターとエンハンサーには、SV40の初期プロモーター[J.Biochem.、101、1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem.Biophys.Res.Commun.、149、960(1987)]、又は免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell、41、479(1985)]とエンハンサー[Cell、33、717(1983)]などを用いる。
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖及びL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖及びL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol.Methods、167、271(1994)]を用いるが、抗体H鎖及びL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma、17、559(1998)]などを用いる。
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得及びアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVH及びVLをコードするcDNAの取得及びアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージ又はプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。
前記ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分又はV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VH又はVLをコードするcDNAを有する組換えファージ又は組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージ又は組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVH又はVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVH又はVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物には、マウス、ラット、ハムスター、又はラビットなどを用いるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol.、154、3(1987)]、又はRNA easy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]、又はOligo−dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation Kit(インビトロジェン社製)、又はQuickPrep mRNA Purification Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
cDNAの合成及びcDNAライブラリーの作製には、公知の方法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、Supplement 1、John Wiley&Sons(1987−1997)]、又はSperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)、又はZAP−cDNA Synthesis Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。
例えば、ZAP ExPress[Strategies、5、58(1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research、17、9494(1989)]、λZAPII(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach、I、49(1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λEx Cell、pT7T3−18U(ファルマシア社製)、pcD2[Mol.Cell.Biol.、3、280(1983)]、又はpUC18[Gene、33、103(1985)]などが挙げられる。
ファージ又はプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリーを導入、発現及び維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。
例えば、XL−1Blue MRF[Strategies、5、81(1992)]、C600[Genetics、39、440(1954)]、Y1088、Y1090[Science、222、778(1983)]、NM522[J.Mol.Biol.、166、1(1983)]、K802[J.Mol.Biol.、16、118(1966)]、又はJM105[Gene、38、275(1985)]などが挙げられる。
cDNAライブラリーからの非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープ又は蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、又はプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]などを用いる。
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNA又はcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction法[以下、PCR法と表記する、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、Supplement 1、John Wiley&Sons(1987−1997)]を行うことよりVH又はVLをコードするcDNAを調製することもできる。
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74、5463(1977)]などの反応を行った後、ABI PRISM3700(PEバイオシステムズ社製)又はA.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
決定した塩基配列からVH及びVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVH及びVLの全アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVH及びVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
分泌シグナル配列を含む抗体のVH及びVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVH及びVLの全アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さ及びN末端アミノ酸配列を推定でき、さらにはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VH及びVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVH及びVLのアミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することによって見出すことができる。
また、得られたVH及びVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS−PROT又はPIR−Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J.Mol.Biol.、215、403(1990)]などの相同性検索を行い、VH及びVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCH又はCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVH及びVLのcDNAを作製する。
作製されたVH及びVLのcDNAを、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
また、非ヒト抗体VH又はVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
(4)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
非ヒト抗体のVH又はVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、又はヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]などを用いる。抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
次に、選択したヒト抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率及び合成可能なDNAの長さから、好ましくはH鎖、L鎖とも6本の合成DNAを設計する。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターに容易にヒト型CDR移植抗体のVH又はVLをコードするcDNAをクローニングすることができる。
又は、設計したDNA配列に基づき、1本のDNAとして合成された各H鎖、L鎖全長合成DNAを用いることで実施できる。
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は、非ヒト抗体のVH及びVLのCDRのみをヒト抗体のVH及びVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY、9、266(1991)]。
ヒト型CDR移植抗体では、ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、及び抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J.Mol.Biol.、112、535(1977)]又はコンピューターモデリング[Protein Engineering、7、1501(1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築及び解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有する改変ヒト型CDR移植抗体を取得できる。
ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(6)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVH又はVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。
例えば、(4)及び(5)で得られるヒト型CDR移植抗体のVH又はVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)及び(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、又はそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト型CDR移植抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えばCOS−7細胞(ATCC番号:CRL1651)を用いる[Methods in Nucleic Acids Res.、CRC Press、283(1991)]。
COS−7細胞への発現ベクターの導入には、DEAE−デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res.、CRC Press(1991)]、又はリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、7413(1987)]などを用いる。
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量及び抗原結合活性は酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)及び(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2−257891号公報、Cytotechnology、3、133(1990)]などを用いる。
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO−K1(ATCC番号:CCL−61)、DUkXB11(ATCC番号:CCL−9096)、Pro−5(ATCC番号:CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies、Cat#11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(又はYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3−X63−Ag8653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子が欠損したCHO細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216(1980)]、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular Genetics、12、55(1986)]、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC番号:CRL1662)などを用いる。
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2−257891号公報)。
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)、Hybridoma−SFM培地(インビトロジェン社製)、又はこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量及び抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、形質転換株は、DHFR増幅系(日本国特開平2−257891号公報)などを利用して遺伝子組換え抗体の発現量を上昇させることができる。
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA−カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]。また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過などの蛋白質の精製で用いられる方法を組み合わすこともできる。
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature、227、680(1970)]、又はウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
3.精製モノクローナル抗体又はその抗体断片の活性評価
精製した本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
BMP9及びBMP9発現組織に対する結合活性は、前述の1.(6−a)記載のバインディングアッセイ及び(6−b)記載のBiacoreシステムなどを用いた表面プラズモン共鳴法を用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol.Immunother.、36、373(1993)]などを用いて測定できる。
4.本発明の抗BMP9モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片は、BMP9が関与する異所性骨化を伴う疾患の治療に用いることができる。
本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片、又はこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、又はこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
投与経路としては、例えば、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内もしくは静脈内などの非経口投与が挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、坐剤、注射剤、軟膏、又はテープ剤などが挙げられる。
経口投与に適当な製剤としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤などでが挙げられる。
乳剤又はシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトールもしくは果糖などの糖類、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油もしくは大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、又はストロベリーフレーバーもしくはペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
カプセル剤、錠剤、散剤又は顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖もしくはマンニトールなどの賦形剤、デンプンもしくはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤又はグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、坐剤又は噴霧剤などが挙げられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、又はその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。
坐剤はカカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸などの担体を用いて製造する。
噴霧剤は受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。担体としては、例えば乳糖又はグリセリンなどを用いる。また、エアロゾル又はドライパウダーとして製造することもできる。
さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。使用する試薬類は、特に記載がない限り、添付文書に従い使用するものとする。
[実施例1]
マウスBMP9 遺伝子ノックアウト用ターゲティングベクターの構築
1−1)カセットベクターpBlueLAB−LoxP−Neo−DT−Aの構築
ノックアウト(KO)用ターゲティングベクターを作製するための基本ベクターとなるカセットベクターpBlueLAB−LoxP−Neo−DT−Aは、pBluescriptに制限酵素サイトを付加した後、ネオマイシン耐性マーカー遺伝子発現ユニットの両端にLoxP配列を有するLoxP−Neo及びジフテリア毒素A鎖遺伝子(DT−A)を挿入したベクターで、国際公開第2006/078072号の実施例7で記載したベクターと同一である。以下に、当該ベクター作製の概略を記載する。
pBluescript II SK(−)(東洋紡社製)ベクターに新たな制限酵素サイトを付加するため以下のオリゴDNA(LinkA1:配列番号1、LinkA2:配列番号2、LinkB1:配列番号3、及びLinkB2:配列番号4)を合成した。
pBluescript II SK(−)を制限酵素SalI及びXhoIで処理し、反応液からプラスミド断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。このプラスミド断片に、新たな制限酵素サイト、NruI、SgrAI及びAscIを付加するため、LinkA1及びLinkA2からなるリンカーを挿入し、大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体よりプラスミドpBlueLAを取得した。
pBlueLAを制限酵素NotI及びEcoRIで処理し、反応液からプラスミド断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。このプラスミド断片に新たな制限酵素サイト、PacI、FseI及びSalIを付加するため、LinkB1及びLinkB2からなるリンカーを挿入し、大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体よりプラスミドpBlueLABを取得した。
国際公開第00/10383号に記載されたプラスミドpLoxP−STneoをXhoIで酵素消化し、両端にLoxP配列を持つNeo耐性遺伝子(LoxP−Neo)を取得した。T4DNAポリメラーゼを用いてLoxP−Neoの両末端を平滑化しLoxP−Neo−Bを取得した。
pBlueLABをEcoRVで酵素消化し、反応液からプラスミド断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。得られたプラスミド断片に、LoxP−Neo−Bを挿入し、大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体よりプラスミドpBlueLAB−LoxP−Neoを取得した。
pMC1DT−A(ライフテックオリエンタル社製)をXhoI及びSalIで酵素消化後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いてDT−A遺伝子を含む断片を回収した。
pBlueLAB−LoxP−NeoをXhoIで酵素消化し、反応液からプラスミド断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。得られたプラスミド断片に、DT−A遺伝子を含む断片を挿入し、大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体よりカセットベクターpBlueLAB−LoxP−Neo−DT−Aを取得した。
1−2)マウスBMP9遺伝子3’側ゲノム領域断片の取得
Ensemble Genome Browserより取得したマウスBMP9(GDF2)遺伝子を含むゲノムDNA配列(アクセッション番号:ENSMUSG00000072625)よりプライマー(配列番号5、6)を設計した。
大腸菌人工染色体[Bacterial Artificial Chromosome(BAC)]のうちC57BL/6JマウスBMP9遺伝子を含むクローンRP23−181N8由来のDNAを鋳型とし、配列番号5及び6のプライマーを各10pmol、KOD−plus−(東洋紡社製)を含む50μLの反応液を調製し、94℃で3分間保温した後、98℃で10秒間、及び68℃で5分間を1サイクルとして35サイクルPCRを行った。
得られたPCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて2.1kbpの断片を回収した。回収したPCR増幅断片をClaI及びAscIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit を用いて酵素処理断片(ClaI−AscI断片)を回収した。
pBlueLABをClaI及びAscIで酵素消化し、Shrimp Alkaline Phosphatase(SAP)処理した後、このClaI−AscI断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。上記で回収したClaI−AscI断片を挿入し、大腸菌DH5αに導入した。
得られた形質転換体より、PCRに起因する変異がない挿入遺伝子を有するクローンを選択した。このプラスミドDNAをClaI及びAscIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて2.1kbpのマウスBMP9遺伝子の3’側ゲノム配列を含む酵素処理断片を回収した。
1−3)マウスBMP9遺伝子5’側ゲノム領域断片の取得
Ensemble Genome Browserより取得したマウスBMP9遺伝子を含むゲノムDNA配列(アクセッション番号:ENSMUSG00000072625)よりプライマー(配列番号7、8)を設計した。
BACクローンRP23−181N8由来のDNAを鋳型とし、配列番号7及び8のプライマーを各10 pmol、KOD−plus−(東洋紡社製)を含む50μLの反応液を調製し、94℃で3分間保温した後、98℃で10秒間、及び68℃で5分間を1サイクルとして35サイクルPCRを行った。
得られたPCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて5.1kbpの断片を回収した。回収したPCR増幅断片をPacI及びFseIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit を用いて酵素処理断片(PacI−FseI断片)を回収した。
pBlueLABをPacI及びFseIで酵素消化し、SAP処理した後、このPacI−FseI断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。上記で回収したPacI−FseI断片を挿入し、大腸菌DH5αに導入した。
得られた形質転換体より、PCRに起因する変異がない挿入遺伝子を有するクローンを選択した。このプラスミドDNAをPacI及びFseIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて5.1kbpのマウスBMP9遺伝子の5’側ゲノム配列を含む酵素処理断片を回収した。
1−4)カセットベクターへのマウスBMP9遺伝子3’側ゲノム領域断片の挿入
実施例1−1で得られたpBlueLAB−Lox−Neo−DT−AをClaI及びAscIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kitを用いてDNA断片を回収した。
回収した約7.6kbpのDNA断片に、実施例1−2で得られた酵素処理断片を挿入した後、大腸菌DH5αに導入した。得られた形質転換体よりDNA断片が挿入されているクローンを選択した。連結部分の塩基配列に問題がないことを確認した。
1−5)マウスBMP9遺伝子3’側ゲノム領域断片を持つカセットベクターへのマウスBMP9遺伝子5’側ゲノム領域断片の挿入
実施例1−4で得られたプラスミドをPacI及びFseIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit を用いて酵素処理断片を回収した。回収した9.7kbpのDNA断片に、実施例1−3で作製した酵素処理断片を挿入した後、大腸菌DH5αに導入した。
得られた形質転換体よりDNA断片が挿入されているクローンを選択した。連結部分の塩基配列に問題がないことを確認し、マウスBMP9 遺伝子ノックアウト用のターゲティングベクターpBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO(図1)を取得した。
[実施例2]
マウスBMP9遺伝子ターゲティングベクターの調製
実施例1−5で得られたpBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO 60μgを、終濃度が1mmol/Lとなるようにスペルミジン(シグマ社製)を添加し、pHを7.0に調整した、制限酵素用Hバッファー(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)中で、NotIで酵素消化した。
反応液から、ベクター断片をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿した。DNA濃度が0.5μg/μLとなるよう、pH7.05のHBS溶液[1リットルあたり、HEPES 5g、NaCl 8g、KCl 0.37g、NaHPO・2HO 0.125g、Dextrose(D−Glucose)1gを含む溶液]を加え、1時間室温で保存することによって、エレクトロポレーション用マウスBMP9遺伝子ターゲティング用ベクターpBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO−NotIを調製した。
[実施例3]
ゲノムサザンブロット解析用プローブの調製
3−1)マウスBMP9遺伝子の5’側ゲノム確認用プローブの作製
BACクローンRP23−181N8の塩基配列情報を基に、マウスBMP9遺伝子の5’側ゲノム領域約500bpを含むプローブを取得するため、プライマー(配列番号9、10)を設計した。
BACクローンRP23−181N8由来のDNAを鋳型とし、配列番号9及び10のプライマーを各10pmol、TaKaRa Z Taq(宝酒造社製)を含む50μLの反応液を調製し、94℃で2分間保温した後、94℃で30秒間、60℃で20秒間、及び72℃で1分間を1サイクルとして25サイクルPCRを行った。
得られたPCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて約500bpの5’側ゲノムサザンブロット用プローブ(5’KO−probe)を回収した。
3−2)マウスBMP9遺伝子の3’側ゲノム確認用プローブの作製
BACクローンRP23−181N8の塩基配列情報を基に、マウスBMP9遺伝子の3’側ゲノム領域約500bpを含むプローブを取得するため、プライマー(配列番号11、12)を設計した。
BACクローンRP23−181N8由来のDNAを鋳型とし、配列番号11及び12のプライマーを各10pmol、TaKaRa Z Taq(宝酒造社製)を含む50μLの反応液を調製し、94℃で2分間保温した後、94℃で30秒、60℃で20秒、及び72℃で1分間を1サイクルとして25サイクルPCRを行った。
得られたPCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて約500bpの3’側ゲノムサザンブロット用プローブ(3’KO−probe)を回収した。
[実施例4]
マウスBMP9 KO ES細胞株の取得
相同組換えを用いたマウスBMP9遺伝子KO ES細胞の取得のため、確立されている方法(相沢慎一著、バイオマニュアルシリーズ8、ジーンターゲティング、羊土社、1995)に従って、実施例2において調製したpBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO−NotIをマウスES細胞TT2(Yagiら、Analytical Biochem.、214:70、1993)へ導入した。詳細な方法を以下に記載する。
栄養細胞としてマイトマイシンC(シグマ社製)で処理したG418耐性初代培養細胞(インビトロジェン社製)を用いてTT2細胞の培養増殖を37℃、5%COの条件下に行った。TT2細胞をトリプシン処理し、3×10個/mLとなるように実施例2に記載したHBS溶液で懸濁した。
細胞懸濁液を0.5mLと、pBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO−NotIを10μg混和し、ジーンパルサーキュペット(電極距離:0.4cm、バイオラッド社製)に入れ、エレクトロポレーションを行った(容量:960μF、電圧:240V、室温)。
エレクトロポレーションした細胞を、ES培地[1リットルあたり、牛胎仔血清(FBS)180mL、D−グルコース3.5g、ダルベッコ改変イーグル培地粉末(インビトロジェン社製)10g、非必須アミノ酸溶液(100倍濃縮液;インビトロジェン社製)10mL、炭酸水素ナトリウム1.9gを含む溶液]10mLに懸濁し、あらかじめ前述の栄養細胞を播種した100mm組織培養用プラスチックシャーレ(ファルコン社製)1枚に播種した。
24時間後、培地を200μg/mLのネオマイシン(シグマ社製)を含むES培地に置き換えた。7日後に生じたコロニーをピックアップし、それぞれ24穴プレートに播種した。コンフルーエントになるまで増殖させた後、3分の1の細胞を12穴ゼラチンコートプレートに播種し、2日間培養することにより、10〜10個の細胞からゲノムDNAをPuregene DNA Isolation Kits(Gentra System社製)で調製した。これらネオマイシン耐性TT2細胞ゲノムDNAをEcoRIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。
次に、実施例3−2で得た3’KO−probeを用いたサザンブロットを行った。野生型TT2細胞では、1本のバンド(約15.5kbp)が検出され、相同組換え体においては、2本のバンド(約11.5kbpと約15.5kbp)が検出された。更に、相同組換えが確認されたクローンのゲノムDNAをNcoIで酵素消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。
次に、実施例3−1で得た5’KO−probeを用いたサザンブロットを行った。野生型TT2細胞では、1本のバンド(約13.4kbp)が検出され、相同組換え体においては、2本のバンド(約8.5kbpと約13.4kbp)が検出された。
以上の結果、マウスBMP9遺伝子を脱落したことが予想される相同組換え体は7株見出された。次に、相同組換体の核型解析を既報(相沢慎一著、バイオマニュアルシリーズ8、ジーンターゲティング、羊土社、1995)に従い行った結果、見出された7株のうち5株は正常核型を有するマウスBMP9遺伝子KO ES細胞であることが確認された。
[実施例5]
BMP9 KOヘテロ接合型マウスの作製
実施例4において取得したES細胞は、毛色が濃茶色CBA×C57BL/6 F1マウス由来(Yagiら、Analytical Biochemistry、214:70−76、1993)のTT2細胞である。そこで、ES細胞由来の遺伝子を有するキメラマウスと、ES細胞由来の遺伝子を有さない宿主マウスを簡便に判別するため、宿主マウスには、毛色が白色のICRマウスを選択した。
まず、実施例4において正常核型を持つことが確認できたマウスBMP9遺伝子KO ES細胞のうち4株を、ICR系統の雌雄マウスの交配により得られた8細胞期胚に、それぞれ胚1つあたり8〜10個注入した。その後、ES培地を用いて一晩培養することで、インジェクション胚を胚盤胞まで発生させた後、偽妊娠処理後2.5日の仮親ICRマウス(日本クレア社)の子宮に、片側の子宮あたりそれぞれ約10個の胚盤胞まで発生させたインジェクション胚を移植した。
胚盤胞まで発生させたインジェクション胚を計260個移植した結果、102匹の子キメラマウスが誕生した。誕生した102匹のうち毛色が濃茶色を含むマウス、すなわちES細胞の貢献が認められたキメラマウスは89匹であった。これら89匹のうち、毛色が全て濃茶色で白色部分を含まないマウス、すなわち、ES細胞由来のキメラ率の高いキメラマウスは40匹であった。次に、これらのキメラ率の高いオスのキメラマウスをC57BL/6のメスと交配させた結果、毛色が濃茶色の子マウスが誕生したことから、ES細胞ゲノムの生殖細胞系列への伝達が確認された。
BMP9遺伝子がターゲティングされたヘテロ接合型マウスのスクリーニングは、尾部生検由来DNAを鋳型としたPCR解析により行った。そのために、実施例1にて作製したマウスBMP9遺伝子ノックアウト用ベクターpBluemBmp9−Lox−Neo−DT−A−3’KO−5’KO内のネオマイシン耐性遺伝子領域に特異的なプライマーであるmBMP9_FW5915(配列番号13)及びmBMP9_RV17165(配列番号14)を作製した。
出生後3週以上を経たマウスから尻尾を取得し(勝木元也著、発生工学実験マニュアル、講談社サイエンティフィク、1987)、Puregene DNA Isolation Kitを用いてゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号13及び14のプライマーを各10pmol、EX Taq(宝酒造社製)を含む50μLの反応液を調製し、95℃で30秒、60℃で1分間、及び72℃で2分間を1サイクルとして35サイクルPCRを行った。
アガロースゲル電気泳動を行った結果、約1.3kbpの増幅産物が検出される個体が複数存在した。この結果は、内在性BMP9遺伝子が相同組換えされ、ネオマイシン耐性遺伝子が挿入されたヘテロ接合型マウス[BMP9KO(+/−)]が複数得られたことを示している。
[実施例6]
BMP9KOホモ接合型マウスの作製
実施例5で作製されたBMP9KO(+/−)の雌雄個体を交配させ、子マウスを得た。実施例5と同様に、マウスの尻尾からPuregene DNA Isolation Kitを用いてゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、実施例5と同様にPCRを行った。さらに、アガロース電気泳動を行うことにより、BMP9KOへテロ接合型[BMP9KO(+/−)]とホモ接合型[BMP9KO(−/−)]を選抜した。
選抜した個体のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号15及び16のプライマーを各10pmol、EX Taq(宝酒造社製)を含む50μLの反応液を調製し、95℃で30秒、60℃で30秒、及び72℃で1分間を1サイクルとして35サイクルPCRを行った。
アガロースゲル電気泳動を行った結果、約200bpの増幅産物が検出される個体、及び検出されない個体が存在することが明らかとなった。野生型対立遺伝子をもつBMP9KO(+/−)では約200bpの増幅産物が検出されるが、BMP9KO(−/−)では検出されないことから、この結果は、BMP9KO(−/−)が得られたことを示している。抗BMP9モノクローナル抗体取得には、得られた雌雄のホモ接合型[BMP9KO(−/−)]のうち、雌マウスを10匹用いた。
[実施例7]
抗ヒトBMP9モノクローナル抗体の作製
7−1)免疫原の調製
免疫原として用いたヒトBMP9組換え蛋白質は、国際公開第2010/126169号の実施例12に記載された方法に従い調製した。
7−2)動物への免疫と抗体産生細胞の調製
アジュバントに、RIBIアジュバント(Corixa社製)、又はTiter Max Gold(Titer Max社製)を用いて、実施例7−1で調製したヒトBMP9組換え蛋白質を、実施例6で得られたBMP9 KO(−/−)マウスに免疫した。
具体的には、RIBIアジュバントの添付文書に従って、ヒトBMP9組換え蛋白質の懸濁液を調製した後、1匹あたり25μgのヒトBMP9組換え蛋白質が投与されるよう、該懸濁液をKOマウスの腹腔内に投与した。Titer Max Goldを用いる際も同様に、添付文書に従い、ヒトBMP9組換え蛋白質の懸濁液を調製した後、1匹あたり25μgのヒトBMP9組換え蛋白質が投与されるよう、該懸濁液をKOマウスの皮下に投与した。免疫は最終ブーストを含めていずれも計3回行った。脾臓は、最終投与の3日後に摘出した。
摘出した脾臓をPBS(phosphate−buffered saline)中で細断した後、脾細胞を遠心分離(1500rpm、3分間)により回収した。得られた脾細胞画分は、赤血球を含むことから、RED Blood Cell Lysing Buffer(シグマ社製)を添加し、氷上で処理することにより、赤血球を除去した。得られた脾細胞は、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s Medium;インビトロジェン社製)培地で2回洗浄した後、細胞融合に供した。
7−3)マウス骨髄腫細胞の調製
マウス骨髄腫細胞株(Sp2/0, ATCC:CRL1581)を10%ウシ胎児血清添加DMEMにて培養し、細胞融合の親株として用いた。
7−4)ハイブリドーマの作製
実施例7−2で得られたマウス脾細胞と実施例7−3で得られた骨髄腫細胞を5:1になるよう混合し、遠心分離(1500rpm、3分間)した。得られた沈殿画分(細胞群)に対して、ポリエチレングリコール−1500(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)1mLを、穏やかに揺らしながら、徐々に加えた。
次に、該細胞液にDMEM培地5mLを穏やかに揺らしながら加え、更にDMEM培地を10mL添加した。次に、上記の該細胞液を含むチューブを37℃で5分間インキュベートし、遠心分離(1500rpm、3分間)した。得られた沈殿画分(細胞群)をコンプリート培地(FCS 10v/v%、β−メルカプトエタノール 50μmol/L、インシュリン 50μg/mL、及びIL−6 10ng/mLを含むDMEM培地]を用いて脾細胞数が1×10個/mLになるように懸濁した後、96ウェルプレートに100μLずつ播種した。
その1.5時間後、メーカーが推奨する終濃度の2倍のHAT media supplement(シグマ社製、Cat#H0262−10VL)を含むコンプリート培地を各ウェルに100μLずつ加え、37℃、5% COの条件下で培養した。培地交換は、ウェル内の細胞がスクリーニングに適した細胞数になるまで、メーカーが推奨する終濃度のHATmedia supplementを含むコンプリート培地を用いて週3回の頻度で行った。
7−5)ALK1/BMP9サンドイッチELISAの構築
ALK1/BMP9サンドイッチELISAは、抗ヒトBMP9マウスモノクローナル抗体(R&D抗体)、及びヒトBMP9のタイプI受容体として知られているヒトALK1細胞外領域ヒトIgG1 Fc領域フュージョン蛋白質(hsALK1−Fc)を用いて、以下のように構築した。
まず、96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#439454)に、国際公開第2010/126169号の実施例1に記載の方法に従い調製したhsALK1−Fcを、50mmol/L NaHCO緩衝液(Wako社製、Cat#191−01305)で0.05μg/mLに調整したものを100μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置して吸着させた。
固相化液を取り除いた後、SuperBlock(Thermo SCIENTIFIC社製、Cat#37535)を250μL/ウェル加え、室温で1時間静置してブロッキングし、0.1%のTween−20を含むPBS(PBS−T)で3回洗浄した。
次に、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製Cat#3209−BP)をSuperBlockとPBS−Tを1:9の割合で混合した10% SuperBlock in PBS−Tで1ng/mLの濃度に調整したものを100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置し、PBS−Tで4回洗浄した。
次に、SureLINK Chromophoric Biotin Labeling Kit(KPL社製)を用いてビオチン標識したR&D抗体を10% SuperBlock in PBS−Tで30ng/mLに調整した後、100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄した後、10% SuperBlock in PBS−Tで500倍希釈したStreptavidin−polyHRP80(Stereospecific Detection Technologies社製、Cat#SP80D50)を100μL/ウェルで分注し、室温で30分〜1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄し、TMB発色液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を100μL/ウェル添加して発色させ、適当な発色が得られたところで、1N 硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を100μL/ウェル添加し、ARVO(パーキンエルマー社製)を用いて450nmの吸光度を測定した。
7−6)ALK1/BMP9サンドイッチELISAを用いた抗ヒトBMP9抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
実施例7−5で構築したサンドイッチELISAにおいて、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質の添加の際に、1ng/mL濃度のヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質、及び50%濃度の実施例7−4で作製したハイブリドーマの培養上清を含むように調製した10% SuperBlock in PBS−T溶液を、100μL/ウェルで分注した。陰性コントロールには、ハイブリドーマ用培地を用いた。
ハイブリドーマ用培地を添加したウェルを基準として、発色が抑制されたウェルを陽性と判断し、hsALK1−Fcとヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質、又は、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質とR&D抗体の相互作用を阻害する抗体を産生するハイブリドーマ株を選抜した。
選抜したハイブリドーマについては、HT(シグマ社製、Cat#H0137−10VL)を含むコンプリート培地にて限界希釈し、96ウェルプレートに播種しクローン化を行った。クローン化は、1回目に陽性と判断したウェル由来のハイブリドーマに対して計3回行った。以上の操作により、ヒトBMP9中和活性を有する3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体を産生するハイブリドーマ株を単離した。
7−7)ハイブリドーマからの抗体の調製
実施例7−6で得た3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体を産生するハイブリドーマは、抗体取得のため、コンプリート培地を用いてスケールアップさせた後、培地をCDハイブリドーマ培地(インビトロジェン社製)に置換し、37℃にて6日間培養した。
フィルトレーションにて、培養上清から細胞除去を行った。細胞を除去した上清から、ProteinG Sepharose 4 Fast Flow(GE ヘルスケア社製)を充填したオープンカラムを用いて、抗ヒトBMP9抗体を精製した。得られた抗体は、0.22μmフィルターを用いて滅菌した後、in vitro試験に供した。
[実施例8]
固相抗原を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)による取得抗体の特異性の評価
取得した抗体のヒトBMP9への特異性を確かめるため、ヒトBMP9及びヒトBMP9とホモロジーが最も高い分子であるヒトBMP10への結合性を比較する実験を行った。
まず、96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#442404)に、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製、Cat#3209−BP)、又はヒトmature2量体BMP10組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製Cat#2926−BP)を、50mmol/L NaHCO緩衝液(Wako社製、Cat#191−01305)で100ng/mLに調製したものを50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置して吸着させた。
固相化液を取り除いた後、Super Block(Thermo SCIENTIFIC社製、Cat#37535)を200μL/ウェル加え、室温で1時間静置してブロッキングし、TBST(Tris Buffered Saline with Tween 20;SANTA CRUZ社製、SC−24953)で3回洗浄した。
次に、Biotin Labeling Kit−NH2(コスモ・バイオ社製、Cat#LK03)を用いてビオチン標識した3B7−3−3抗体、3C7−3−1抗体、R&D抗体、又は抗BMP10抗体(R&Dシステムズ社製、Cat#MAB2926)を、SuperBlockとTBSTを1:9の割合で混合した10% Super Block in TBSTで100ng/mLに調整した後、一次抗体として50μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをTBSTで3回洗浄した後、10% Super Block in TBSTで500倍希釈したStreptavidin−polyHRP80(Stereospecific Detection Technologies社製、Cat#SP80D50)を100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをTBSTで5回洗浄し、TMB基質液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を50μL/ウェル添加して発色させ、適当な発色が得られたところで、1N 硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を50μL/ウェル添加し、サンプル波長450nm、リファレンス波長570nmにおける吸光度(450nm−570nm)をプレートリーダー(Spectra Max,Molecular Devices社製)を用いて測定した。
結果を図2に記載する。3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、R&D抗体と同様に、ヒトBMP9に強く結合すること、またヒトBMP10には結合しないことが示された。この結果は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体が、ヒトBMP9に特異的に結合する抗体であることを示している。
[実施例9]
固相抗原を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)による取得抗体の結合性の評価
取得された抗ヒトBMP9抗体のヒトBMP9への結合活性を測定するために、以下の実験を行った。
まず、96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#439454)に、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製、Cat#3209−BP)を50mmol/L NaHCO緩衝液で100ng/mLに調整したものを50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩静置して吸着させた。
固相化液を取り除いた後、Super Block(Thermo SCIENTIFIC社製、Cat#37535)を200μL/ウェルで加え、室温で1時間静置してブロッキングし、TBSTで3回洗浄した。
次に、ビオチン標識した3B7−3−3抗体、3C7−3−1抗体又はR&D抗体を、10% Super Block in TBSTでそれぞれ1、5、20、100、300ng/mLになるように調整したものを、それぞれ50μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。このプレートをTBSTで3回洗浄した後、10% Super Block in TBSTで500倍希釈したStreptavidin−polyHRP80を100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをTBSTで5回洗浄し、TMB基質液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を50μL/ウェル添加して発色させ、適当な発色が得られたところで1N 硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を50μL/ウェル添加し、サンプル波長450nm、リファレンス波長570nmにおける吸光度(450nm−570nm)をプレートリーダー(Spectra Max、Molecular Devices社製)を用いて測定した。
結果を図3に記載する。3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、R&D抗体と同様に、抗体濃度が高くなるに従ってヒトBMP9に結合した。さらに3C7−3−1抗体のヒトBMP9に対する結合活性はR&D抗体に比して高いことが明らかとなった。
[実施例10]
ヒトBMP9とR&D抗体の結合に対する取得抗体の作用
実施例7で用いた系の特徴より、取得抗体はhsALK1−Fcとヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質の相互作用、もしくはヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質とR&D抗体の相互作用のいずれかを阻害する抗体であると考えられる。そこで、まず、ヒトBMP9とR&D抗体の結合アッセイ系を構築し、取得抗体のヒトBMP9とR&D抗体の結合に対する作用を検討した。
96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#439454)に、実施例7−1で調製したヒトBMP9組換え蛋白質を50mmol/L NaHCO緩衝液で100ng/mLに調整したものを100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置して吸着させた。
固相化液を取り除いた後、Super Blockを250μL/ウェル加え、室温で1時間静置しブロッキングし、PBS−Tで3回洗浄した。次に、10% Super Block in PBS−Tでそれぞれ100〜3000ng/mLに調整した取得抗体及び50ng/mLのビオチン標識したR&D抗体を含む溶液を100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄した後、10% Super Block in PBS−Tで500倍希釈したStreptavidin−polyHRP80(Stereospecific Detection Technologies社製、Cat#SP80D50)を100μL/ウェルで分注し、室温で30分〜1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄し、TMB発色液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を100μL/ウェル添加して発色させ、適当な発色が得られたところで、1N硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を100μL/ウェル添加し、ARVO(パーキンエルマー社製)を用いて450nmの吸光度を測定した。結果を図4に記載する。
ヒトBMP9とビオチン標識R&D抗体の結合は、非標識のR&D抗体の添加で阻害された。一方、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体の添加では、阻害されなかった。この結果は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体のヒトBMP9認識部位(エピトープ)は、R&D抗体の認識部位とは異なることを示している。
[実施例11]
固相抗原を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)による取得抗体のエピトープ解析
取得した抗体の性質の違いを更に明らかにするために、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を利用して、取得した抗体のエピトープ解析を行った。具体的には、固相化したBMP9にビオチン標識抗体を反応させる際に、過剰量のそれぞれの非ビオチン標識抗体を同時添加する方法で行った。
この方法によれば、非標識抗体により反応が減弱された場合、標識抗体と非標識抗体のエピトープが、同じ又は近傍であることが示唆される。さらに、標識抗体と非標識抗体の性質が、同じ又は似ていることが示唆される。
アッセイは実施例9と同様の方法で行った。ただし、実施例9の結果を踏まえて、最終的な吸光度が1.0から1.5前後となる様に、ビオチン標識した3B7−3−3抗体、3C7−3−1抗体、及びR&D抗体をそれぞれ最終濃度30.0、4.0及び5.0ng/mLで反応させた。さらに、これら標識抗体の添加と同時に、非標識抗体をそれぞれ最終濃度10μg/mLで添加した。
結果を図5に記載する。非標識抗体がない場合、吸光度は1.0から1.5前後となり、標識抗体と固相化したBMP9との結合が観察された。また、非標識抗体として、標識抗体と同じ抗体を用いた場合には、いずれも標識抗体の結合を阻害することが確認された。
さらに、3B7−3−3抗体と3C7−3−1抗体は、いずれが非標識抗体の場合でも、互いの標識抗体の結合を阻害することが明らかとなった。一方、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、実施例10の結果と同様に、R&D抗体の標識抗体とBMP9の結合を阻害しなかった。
この結果は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、エピトープが同じ又は近傍であることを示唆している。さらに、両抗体が認識するエピトープは、R&D抗体とは異なることを示唆している。
[実施例12]
ヒトBMP9とヒトALK1の結合に対する取得抗体の作用
実施例10の結果より、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質とR&D抗体の相互作用ではなく、ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質とhsALK1−Fcの相互作用を抑制する抗体である可能性が示唆された。そこで、ヒトBMP9とヒトALK1の結合アッセイ系を構築し、取得抗体のヒトBMP9とヒトALK1結合に対する作用を検討した。
96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#439454)に、実施例7−1で調製したヒトBMP9組換え蛋白質を50mmol/L NaHCO緩衝液で100ng/mLに希釈したものを100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置して吸着させた。固相化液を取り除いた後、Super Blockを250μL/ウェルで加え、室温で1時間静置しブロッキングし、PBS−Tで3回洗浄した。
次に、10% Super Block in PBS−Tでそれぞれ100、1000又は10000ng/mLに調整した取得抗体もしくはR&D抗体、及び100ng/mLのビオチン標識したhsALK1−Fc蛋白質を含む溶液を100μL/ウェルで分注し、室温で1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄した後、10% Super Block in PBS−Tで500倍希釈したStreptavidin−polyHRP80(Stereospecific Detection Technologies社製、Cat#SP80D50)を100μL/ウェルで分注し、室温で30分〜1時間静置した。
このプレートをPBS−Tで4回洗浄し、TMB発色液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を100μL/ウェル添加して発色させ、適当な発色が得られたところで、1N硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を100μL/ウェル添加し、ARVO(パーキンエルマー社製)を用いて450nmの吸光度を測定した。ビオチン標識したヒトALK1−Fcのみを添加したウェルの吸光度を0%、希釈液のみを添加したウェルの吸光度を100%とし、各抗体の阻害活性(%)を算出した。結果を図6に記載する。
ヒトBMP9とヒトALK1−Fcの結合は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体の添加で阻害された。一方、R&D抗体の添加では、阻害されなかった。この結果は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、ヒトBMP9とヒトALK1との結合を阻害する抗BMP9抗体であり、R&D抗体は、ヒトBMP9とヒトALK1との結合を阻害しない抗BMP9抗体であることを示している。
また、ヒトBMP9に対するヒトALK1とヒトALK2の結合領域は同じであることが知られていることから、この結果は、3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体は、ヒトBMP9とヒトBMPタイプI受容体との結合を阻害する抗BMP9抗体であることを示唆している。
[実施例13]
取得抗体のヒトBMP9組換え蛋白質に対する結合活性(ビアコア解析)
3C7−3−1抗体及びR&D抗体のヒトBMP9組換え蛋白質に対する結合活性(アフィニティー)をBIAcore 2000(GE Healthcare社製)を用いて検討した。Mouse Antibody Capture Kit(GE Healthcare社製)を用いて、抗マウスIgG抗体をセンサーチップCM5上に固定化した後、抗ヒトBMP9抗体をRU値として700−1100になるように結合させた。
その後、実施例7−1で調整したヒトBMP9組換え蛋白質をHBS−EP溶液(GE Healthcare社製)を用いて0.152nmol/L、0.457nmol/L、1.37nmol/L、4.1nmol/L、12.3nmol/L、36.89nmol/L、110.67nmol/L、322nmol/Lの濃度に調整したものをアナライトとして添加し、結合強度を測定した。
結合解離定数(Kd値)は、得られた値を基にシングルサイクルカイネティクス算出法(BIAevaluation Software ver.3、GE Healthcare社製)にて算出した。結果を表1に記載する。
Figure 2014051109
R&D抗体のKd値は、6.16×10−10 mol/Lであったのに対し、3C7−3−1抗体のKd値は、2.64×10−11 mol/Lを示し、3C7−3−1抗体のヒトBMP9への結合活性は、R&D抗体に比して、23.3倍と著しく高いものであることが明らかとなった。
[実施例14]
取得抗体のBMP9依存性ALK1由来シグナルに対する阻害作用
ヒトALK1発現レポーター細胞株を作製し、取得抗体のヒトBMP9依存性ヒトALK1由来シグナルに対する阻害作用を評価した。
14−1)ヒトALK1発現レポーター細胞株の作製
ヒトALK1発現レポーター細胞は、国際公開第2010/126169号の実施例2に記載のBMPシグナル検出株[p(GCCG)12−Luc/HepG2(38.5)]に全長ヒトALK1遺伝子を強制発現させることにより[ALK1/p(GCCG)12−Luc/HepG2(38.5)]、作製した。
ヒトALK1発現ベクターは、両端にEcoRI及びNotI制限酵素サイトを持つヒトALK1の全長cDNAをEcoRI及びNotIで消化したものを、pEAK8発現ベクター(Edge Biosystems社製)に組み込むことにより、作製した。
ヒトALK1の全長cDNA(cDNAのGenbank アクセッション番号:BC042637.1、配列番号17、アミノ酸配列のGenBank アクセッション番号:AAH42637、配列番号18)は、ヒト肺cDNAライブラリーとプライマー(配列番号19、20)を用いたPCRにより作製した。
14−2)ヒトBMP9添加によるALK1由来シグナルに対する抗ヒトBMP9抗体の作用
上記の方法により作出したヒトALK1レポーター細胞株[ALK1/p(GCCG)12−Luc/HepG2(38.5)]を1μg/mLのhsALK1−Fcを含むDMEM増殖培地[FCSを10%になるように添加したDMEM(Invitrogen社製)]に懸濁し、1.5×10個/ウェルになるように96ウェル白色プレート(パーキンエルマー社製)に播種した。
翌日、ウェル内を200μLの血清を含まないDMEMで洗浄した後、種々の濃度(10、30、100、300、1,000、3,000、10,000、30,000ng/mL)の抗ヒトBMP9抗体、及び10ng/mLのヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製、Cat#3209−BP)を含む0.1% BSA(Bovine serum albumin)含有DMEM培地を、100μLずつ添加し、5.5−6時間培養した。化学発光試薬[Steady Glo Luciferase assay system、プロメガ社製]を45μL添加し、Luciferase活性を測定した。
陰性対照ウェルには、0.1% BSA含有DMEM培地を添加した。ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質のみを添加したウェルのLuciferase活性を0%、0.1% BSA含有DMEM培地のみを添加したウェルのLuciferase活性を100%とし、各抗体のBMP9依存性ALK1由来シグナル阻害活性(%)を以下の式にて算出した。
BMP9依存性ALK1由来シグナル阻害活性(%)=[(ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質のみ添加したウェルのLuciferase活性)−(ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質及び抗ヒトBMP9抗体を添加したウェルのLuciferase活性)]/[(ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質のみ添加したウェルのLuciferase活性)−(0.1%BSA含有DMEM培地のみを添加したウェルのLuciferase活性)]×100
結果を図7に示す。
3C7−3−1抗体は、R&D抗体同様に、高濃度で添加するほどBMP9依存性ALK1由来シグナルを抑制し、ヒトBMP9に対する中和活性を持つ抗体であることが示された。しかし、その阻害活性はR&D抗体に比して1/16程度と弱いものであった。
これまでの結果から、3C7−3−1抗体は、R&D抗体に比べてヒトBMP9に対する高いアフィニティーを持ち(実施例13)、R&D抗体とは異なるエピトープを認識し(実施例10、11)、R&D抗体に比べてヒトBMP9依存性ALK1由来シグナルに対する阻害活性が弱いことが明らかとなった。
[実施例15]
ヒトFOP−ALK2変異体cDNA及び発現ベクターの作製
ヒトFOP−ALK2変異体cDNAは、変異を導入したプライマーを用いたPCRにより作製した。ヒト腎臓cDNAライブラリー(Marathon cDNA library;CLONTECH社製)より単離したヒトALK2 cDNAを鋳型として、5’末端にEcoRIサイトを含むhALK2 FPINT(配列番号21)と5’末端にNotIサイトを含むhALK2 G617A RP(配列番号22)をプライマーに、Ex taq(タカラバイオ社製)をPCR酵素に用いて、94℃で2分間、56℃で15秒間、及び72℃で1分間を1サイクルとした25サイクルのPCRを行った。
また同様に、ヒトALK2遺伝子を鋳型に、hALK2 RP(配列番号23)、hALK2 G617A FP(配列番号24)をプライマーに用いたPCRを行った。得られた各PCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて精製した。
得られた各フラグメントを約50ngずつ混合し、Taq酵素(タカラバイオ社製)を用いて94℃で2分間、56℃で15秒、72℃で1分間を1サイクルとした5サイクルのPCR伸長反応を行った。更に、同溶液にhALK2 FPINT(配列番号21)及びhALK2 RP(配列番号23)のプライマーを加え、94℃で2分間、56℃で15秒間、72℃で1分間を1サイクルとした25サイクルのPCRを行った。得られた各PCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
得られたPCRフラグメントを、pGEMT−easyベクター(プロメガ社製)とligationさせた後、大腸菌DH5α株に導入した。この形質転換クローンからプラスミドベクターを回収し、PCRフラグメントの挿入を確認した。更に、シークエンス解析により、変異部位の置換を確認した。
置換を確認できたFOP−ALK2 cDNA、野生型hALK2 cDNA、及びpTracerCMVベクター(Invitrogen社製)について、EcoRI、NotIを用いて制限酵素処理を行った後、アガロースゲル電気泳動に供し、各断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
得られたFOP−ALK2 cDNA断片及び野生型hALK2 cDNAは、それぞれpTracerCMVベクターとligationさせた後、DH5α大腸菌に導入した。目的とするcDNAが入っていることが確認できた各クローン(FOP−ALK2/pTracerCMV、又は野生型hALK2/pTracerCMV)を大量調製し、以下の実験に供した。
[実施例16]
FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の骨分化に対する血清濃度の影響(in vitro試験)
C2C12細胞を4×10個/ウェルにて96ウェルプレートに播種した。翌日、まず、0.2μgのFOP−ALK2/pTracerCMV、野生型hALK2/pTracerCMV、又はコントロールベクター(pTracerCMV)を、20μLのOpti−MEM I reduced serum medium(Invitrogen社製)に希釈し、5分後に0.05μLのPLUS試薬(Invitrogen社製)を加え、室温で5分間放置した。
次に、この混合溶液に、0.12μLのLipofectionamine LTX(Invitrogen社製)を加え、室温で30分間放置した後、C2C12細胞を播種したプレートに1ウェルあたり20μLずつ加えることにより、各ベクターをC2C12細胞に遺伝子導入した。
遺伝子導入してから9.5時間後、5%又は20%濃度のFCSを含むDMEM培地に交換し、約90時間培養した。その後、上清を取り除き、200μLのTBS[20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl]で洗浄した後、0.1% TritonX−100を含む0.1M Tris溶液(pH7.4)を100μL加え、プレートミキサーで10分間攪拌し、細胞を溶解させた。
その細胞溶解液を96ウェルプレートに回収し、3000rpm、10分間で遠心した後、沈殿画分を吸わないように上澄みを回収し、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性測定に供した。
ALP活性測定は、ラボアッセイALPキット(WAKO社製)を使用した。具体的には、回収した上澄み溶液20μLにALPキット添付の反応液を100μL加え、30分間反応させた後、414nmの吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。結果を図8に記載する。
FOPの原因遺伝子であるFOP−ALK2遺伝子を導入したC2C12細胞では、5%FCS存在下ではALP活性の上昇は認められなかったものの、20%のFCS存在下では、コントロールベクター又は野生型hALK2遺伝子を導入した細胞と比して、有意にALP活性の上昇が認められた。
C2C12細胞では、その骨分化に伴い、ALP活性が上昇することがわかっている。この結果は、FOP−ALK2による骨分化の誘導には、FOP−ALK2だけでは不十分であり、血清中に含まれる因子も必要であることを示唆している。
[実施例17]
FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の骨分化に対する抗ヒトBMP9中和抗体(R&D抗体)の作用(in vitro試験)
FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞においてALP活性の上昇(骨分化誘導)が生じる20%FCS存在下において、3μg/mLのR&D抗体を添加し、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の骨分化に対するBMP9の関与を調べた。結果を図9に記載する。
20%FCS存在下において、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞で観察されたALP活性の上昇は、R&D抗体の添加により、完全に抑制された。この結果は、FOP−ALK2遺伝子導入C2C12細胞の骨分化を誘導する血清中の因子は、BMP9であることを示唆している。また、BMP9に対する中和活性を持つ抗体は、FOP疾患治療薬になりうることを示唆している。
[実施例18]
FOP−ALK2安定発現C2C12細胞の骨分化に対する抗ヒトBMP9抗体の作用(in vitro試験)
18−1)FOP−ALK2安定発現C2C12細胞株の作製とBMP9に対する反応性の検討
20%FCS存在下におけるALP上昇が、FOP−ALK2を導入したC2C12細胞のみで認められた実施例16の結果は、FOP−ALK2のBMP9に対する応答性が野生型hALK2と比して亢進している可能性を示唆している。そこでまず、FOP−ALK2を安定発現するC2C12細胞を作製した。
実施例15で作製したFOP−ALK2/pTracerCMV、野生型hALK2/pTracerCMV及びpTracerCMVについて、ScaIで酵素消化し、それぞれ一本鎖化したプラスミド8μgを400μLのOpti−MEM I reduced serum medium(Invitrogen社製)に希釈した。5分後に2.0μL のPLUS試薬(Invitrogen社製)を加え、さらに室温で5分間放置した。
次に、4.8μLのLipofectionamine LTX(Invitrogen社製)を加え、室温で30分間放置した後、C2C12細胞を1.5×10個になるように播種した6ウェルプレートにそれぞれ約440μLずつ加え、37℃で24時間インキュベートした。
24時間後、プレートから細胞を回収し、150μg/mL Zeocin(Invitrogen社製)、1μg/mL hsALK1−Fc及び10%FCSを含むDMEM培地にて懸濁した。各懸濁細胞を新しいプレートに播種し、薬剤選別を行った。
得られた薬剤耐性細胞株(FOP−ALK2/C2C12細胞、野生型hALK2/C2C12細胞及びpTracerCMV/C2C12細胞)を用いてヒトBMP9に対する応答性を検討した。具体的には、それぞれの細胞を5%FCS入りDMEM培地で懸濁し、96ウェルプレートに4×10個/ウェルとなるように播種した。
翌日、ウェル内を200μLの血清を含まないDMEMで洗浄した後、種々の濃度(0.5、1.5、5.0、15.0ng/mL)のヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製、Cat#3209−BP)及び5%FCSを含むDMEM培地を、200μLずつ添加し、37℃にて72時間培養した。
上清を取り除き、200μLのTBS[20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl]で洗浄した後、0.1% TritonX−100を含む0.1M Tris溶液(pH7.4)を100μLずつ加え、プレートミキサーで10分間攪拌し、細胞を溶解させた。この細胞溶解液を新たな96ウェルプレートに移し、3000rpmにて10分間遠心した後、上清をALP活性測定に供した。
ALP活性測定は、ラボアッセイALPキット(WAKO社製)を使用した。具体的には、前述の上清20μLにALPキット添付の反応液を100μL加え、30分間反応させた後、マイクロプレートリーダーにて414nmの吸光度を測定した。結果を図10に記載する。
FOP−ALK2安定発現C2C12細胞は、コントロールベクターを導入した細胞及び野生型hALK2を導入した細胞に比して、ヒトBMP9に対する応答性が亢進していることが分かった。
18−2)FOP−ALK2安定発現C2C12細胞の骨分化に対する抗ヒトBMP9抗体の作用
実施例18−1で得られたFOP−ALK2安定発現C2C12細胞を用いて、骨分化に対する抗ヒトBMP9抗体の作用を検討した。
FOP−ALK2安定発現C2C12細胞を1μg/mL hsALK1−Fc及び5%FCSを含むDMEM培地で懸濁し、96ウェルプレートに4×10個/ウェルとなるように播種した。翌日、ウェル内を200μLの血清を含まないDMEMで洗浄した後、種々の濃度(30、100、300、1000、3000ng/mL)のR&D抗体又は3C7−3−1抗体、10ng/mL ヒトmature2量体BMP9組換え蛋白質(R&Dシステムズ社製、Cat#3209−BP)及び5%FCSを含むDMEM培地を、200μLずつ添加し、37℃にて72時間培養した。
上清を取り除き、200μLのTBS[20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl]で洗浄した後、0.1% TritonX−100を含む0.1M Tris溶液(pH7.4)を100μLずつ加え、プレートミキサーで10分間攪拌し、細胞を溶解させた。この細胞溶解液を新たな96ウェルプレートに移し、3000rpmにて10分間遠心した後、上清をALP活性測定に供した。
ALP活性測定は、ラボアッセイALPキット(WAKO社製)を使用した。具体的には、前述の上清20μLにALPキット添付の反応液を100μL加え、30分間反応させた後、マイクロプレートリーダーにて414nmの吸光度を測定した。結果を図11に記載する。
FOP−ALK2安定発現細胞におけるヒトBMP9依存性のALP活性の上昇は、3C7−3−1抗体又はR&D抗体の添加により抑制された。この結果は、3C7−3−1抗体及びR&D抗体に、BMP9依存性の骨分化に対する抑制作用があることを示唆している。
Figure 2014051109
また、表2に示すように、3C7−3−1抗体は、BMP9依存性のBMPタイプI受容体由来シグナルのうち、BMP9依存性のFOP−ALK2由来シグナルに基づく骨分化を選択的に抑制することが明らかとなった。
ALK1は血管内皮の機能維持に重要な受容体であることから、ALK1由来シグナルとFOP−ALK2由来シグナルに対する選択性がないR&D抗体に比べ、3C7−3−1抗体は、副作用の懸念が少ない抗体であると考えられ、治療薬として有用である可能性を示唆している。
[実施例19]
抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のVH及びVLをコードする遺伝子配列の単離
19−1)抗ヒトBMP9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞からの総RNAの調製
実施例7に記載の3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体を産生するハイブリドーマ 1×10個より、RNAeasy Mini kit(QIAGEN社製、Cat#74104)及びQIA shredder(QIAGEN社製、Cat#79654)を用いて、総RNAを調製した。
19−2)抗ヒトBMP9モノクローナル抗体のVH及びVLの遺伝子クローニング
実施例19−1で取得した各ハイブリドーマの総RNA 1μgから、SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社製、Cat#634924)を用いて、cDNAを作製した。
得られたcDNAを鋳型として、キット添付のユニバーサルプライマーA mix(フォワードプライマーを含有する)と、マウスのIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c重鎖定常領域をコードする特異的な異なる2種のリバースプライマーを組み合わせて使用することで、VHのcDNA配列決定を行った。
具体的には、マウスIgG1に特異的なプライマー(配列番号25及び26)、マウスIgG2aに特異的なプライマー(配列番号27及び28)、マウスIgG2bに特異的なプライマー(配列番号29及び30)、マウスIgG2cに特異的なプライマー(配列番号31)、又はマウスIgG3に特異的なプライマー(配列番号32及び33)を用いてそれぞれユニバーサルプライマーAと組み合わせることでPCR反応を行い、各抗体のVHのcDNA断片を増幅した。
また、マウスIg(κ)特異的なプライマー(配列番号34及び35)又は、マウスIg(λ)特異的なプライマー(配列番号36及び37)を同様に用いてそれぞれユニバーサルプライマーAと組み合わせることでPCRを行い、各抗体のVLのcDNA断片を増幅した。
PCRは、94℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを5回、94℃で30秒間、70℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを5回、94℃で30秒間、68℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを25回行った。
アガロースゲル電気泳動を行った結果、3B7−3−3抗体産生ハイブリドーマ由来のcDNAは、IgG2c重鎖定常領域をコードする特異的プライマーを用いたときにPCR増幅産物が得られた。一方、3C7−3−1抗体産生ハイブリドーマ由来のcDNAに関しては、IgG1重鎖定常領域をコードする特異的プライマーを用いたときにPCR増幅産物が得られた。
また、両ハイブリドーマ由来のcDNAは、マウスIg(κ)特異的プライマーを用いたときにもPCR増幅産物が得られた。それぞれのPCR増幅産物をGel Extraction Kit(QIAEX II、QIAGEN社製、Cat#20021)を用いて精製した。
得られた遺伝子断片を、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit for Sequencing(インビトロジェン社製、Cat#K287540SP)を用い、pCR4ベクター(インビトロジェン社製)に挿入した。得られたプラスミドを、大腸菌DH5α株に導入した。
得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、塩基配列を解析した。その結果、cDNAの5’末端に開始コドンと推定されるATG配列が存在する完全長のVH cDNA、及びVL cDNAが取得されたことを確認した。
19−3)抗ヒトBMP9モノクローナル抗体V領域の遺伝子配列の解析
実施例19−2で得られた3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体のVHの全塩基配列を配列番号38、39に、該配列から推定された、シグナル配列を含んだVHの全アミノ酸配列を配列番号40、41に、VLの全塩基配列を配列番号42、43に、該配列から推定された、シグナル配列を含んだVLの全アミノ酸配列を配列番号44、45にそれぞれ示した。
また、配列番号38、39からシグナル配列を除いた塩基配列を配列番号46、47に、配列番号42、43からシグナル配列を除いた塩基配列を配列番号48、49に、配列番号40、41からシグナル配列を除いたアミノ酸配列を配列番号50、51に、配列番号44、45からシグナル配列を除いたアミノ酸配列を配列番号52、53にそれぞれ示した。
既知のマウス抗体の配列データ[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest、US Dept.Health and Human Services(1991)]との比較から、単離した各々のcDNAは分泌シグナル配列を含む3B7−3−3抗体及び3C7−3−1抗体をコードする完全長cDNAであることが確認できた。
各モノクローナル抗体のVH及びVLのCDRを、既知の抗体のアミノ酸配列と比較することにより同定した。3B7−3−3抗体のVHのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を配列番号54、55及び56に、VLのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を配列番号57、58及び59にそれぞれ示した。3C7−3−1抗体のVHのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を配列番号60、61及び62に、VLのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を配列番号63、64及び65にそれぞれ示した。
[実施例20]
抗ヒトBMP9抗体のエピトープ解析
20−1)組換え3C7−3−1抗体の調製
3C7−3−1抗体の軽鎖、重鎖可変領域(シグナル配列含む)の塩基配列を、マウス軽鎖(κ鎖)、重鎖(IgG1)定常領域の塩基配列とそれぞれ結合させ、抗体発現用のベクターにサブクローニングした。3C7−3−1抗体の軽鎖および重鎖可変領域部分の塩基配列の増幅の際には、実施例19にて作製したベクターを鋳型として、配列番号72〜75で示される塩基配列からなるプライマーを用いてPCRを行った。
マウス軽鎖(κ鎖)、重鎖(IgG1)定常領域部分の塩基配列の増幅は、人工遺伝子合成(タカラバイオ社)によって作製された配列番号80、81で示される塩基配列をそれぞれ鋳型として、配列番号76〜79で示される塩基配列からなるプライマーを用いてPCRを行った。
いずれのPCRも、PrimeSTAR HS(Premix)(タカラバイオ社製、R040A)を用い、96℃で2分間保温した後、98℃で10秒、55℃で5秒、及び72℃で1〜2分間(増幅物のサイズによって調整した)を1サイクルとして30サイクル反応を行った。得られたPCR増幅段片をアガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて精製し、インサートとした。
N5KG1ベクター(Biogen IDEC社)をBglII、EcoRIを用いて酵素処理し、上記と同様の手順にて精製し、インサート挿入用ベクターとした。
3C7−3−1抗体の軽鎖可変領域およびマウス軽鎖定常領域のインサートをIn−fusion Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて酵素処理したN5KG1ベクターに組み込み、大腸菌に導入した。
得られた形質転換体より、正しい配列が挿入されたプラスミドDNAを選択した。このプラスミドDNAをSalI、BamHIを用いて酵素消化し、上記と同様の手順によって精製した。
3C7−3−1抗体の重鎖可変領域およびマウス重鎖定常領域のインサートを、既に軽鎖が挿入された上記のベクターに組み込み、大腸菌に導入した。得られた形質転換体より、軽鎖と重鎖の両方が挿入された抗体発現ベクターを選択した。シーケンスにより、このベクターには、3C7−3−1抗体(マウスIgG1、κ)配列が挿入されていることを確認した。
作製した3C7−3−1抗体発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、NucleoBond Xtra Maxi(タカラバイオ社製、U0414B)によってベクターを調製した。FreeStyle 293 Expression System(ライフテクノロジーズ社製を用いて一過性発現を行い、組換え抗体を発現させた。培養上清を、遠心分離と0.22μmフィルターを用いた濾過により培養液から取得した。
続いて、Protein G Sepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社製)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製した。NAP−25カラム(GEヘルスケア社製)を用いてバッファーをクエン酸バッファー(10mM クエン酸−NaOH(pH6.0)、150mM NaCl)に置換した。280nmの吸光度を測定して濃度を決定した。分子吸光係数として、1.4mL/(mg・cm)を使用した。
20−2)ヒトBMP9/BMP10キメラ蛋白質およびヒトBMP10蛋白質の調製
実施例8及び9の結果より、3C7−3−1抗体およびR&D抗体はヒトBMP9のmature領域に結合するが、ヒトBMP9と最も高い相同性を有するヒトBMP10には交差結合しないことが示されている。
次に、3C7−3−1抗体およびR&D抗体のエピトープを探索するため、ヒトBMP9 mature領域の一部をヒトBMP10 mature領域に置換したキメラ蛋白質を種々作成し、それらへの結合性を調べた。
置換体を作製するにあたり、ヒトBMP9 mature領域(配列番号67)を3つの領域に分け、それぞれヒトBMP9 mature領域A、BおよびCと定義した。
より具体的には、ヒトBMP9 mature領域Aは配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域の1番目から37番目までのアミノ酸配列であり、ヒトBMP9 mature領域Bは配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域の38番目から74番目までのアミノ酸配列であり、ヒトBMP9 mature領域Cは配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域の75番目から110番目までのアミノ酸配列である。またヒトBMP10 mature領域についても、BMP9との一次構造の相同性を基にして、対応する3領域(BMP10 mature領域A,BおよびC)を定義した。
より具体的には、ヒトBMP10 mature領域Aは配列番号96で表されるヒトBMP10 mature領域の1番目から36番目までのアミノ酸配列であり、ヒトBMP10 mature領域Bは配列番号96で表されるヒトBMP10mature領域の37番目から73番目までのアミノ酸配列であり、ヒトBMP10 mature領域Cは配列番号96で表されるヒトBMP10 mature領域の74番目から108番目までのアミノ酸配列である。
ヒトBMP9及びBMP10の各領域に含まれるアミノ酸を、配列番号82〜87で示す。キメラ蛋白質A、BおよびCは、BMP9 mature領域の領域A、BおよびCのアミノ酸残基を、BMP9と対応するBMP10のアミノ酸残基に置換することにより、設計した。このように設計したBMP9/10キメラ蛋白質A、BおよびCのアミノ酸配列を配列番号88〜90に示す。
ヒトBMP10発現ベクターは以下の手順で作製した。国際公開第2010/126169号の実施例12及び図7に記載のN末His型hBMP9 complex組換え体発現ベクター(以下、pLN1V5_hBMP9と記載)をNheIおよびXhoIを用いて酵素処理し、アガロースゲル電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
次に、Human Heart PCR−Ready cDNA(Ambion社、3326)をテンプレートとして、配列番号91〜94に示すFwd−1/Rv−1、Fwd−2/Rv−2のプライマーの組み合わせでPCRを行った。
PCRは、PrimeSTAR HS(Premix)を用い、96℃で2分間保温した後、98℃で10秒間、55℃で5秒間、及び72℃で2分間を1サイクルとして32サイクル反応を行った。
得られた2つのPCR増幅断片をアガロース電気泳動に供した後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、インサートとした。In−fusion Advantage PCR Cloning Kitを用いて、インサートを先に精製したpLN1V5ベクターに挿入してサブクローニングを行い、pLN1V5_hBMP10ベクターとした。
配列番号95〜98に、ヒトBMP10とそのmature領域のアミノ酸配列および塩基配列を示す。配列番号99及び100に、pLN1V5_hBMP10のNheI、XhoI認識部位間へ挿入された塩基配列および発現される蛋白質のアミノ酸配列を示す。
BMP9/10キメラ蛋白質A、BおよびCの発現ベクターは以下の手順で作製した。まず、DNA断片A−1を作製するために、配列番号101と102のプライマーを使用し、pLN1V5_hBMP9をテンプレートとしてPCRを行った。PCRにはPrimeSTAR HSを用い、96℃で2分間保温した後、98℃で10秒間、55℃で5秒間、及び72℃で2分間を1サイクルとして32サイクル反応を行った。アガロースゲル電気泳動により、得られたPCR断片を精製した。
同様に、他のDNA断片を作製した。それぞれの作製断片名、使用プライマー組わ合わせ、鋳型を{A−1,配列番号101/102、pLN1V5_hBMP9}のように記載すると、他のDNA断片は次の通りである。
{A−2,配列番号103/104、pLN1V5_hBMP10}
{A−3,配列番号105/106、pLN1V5_hBMP9}
{B−1,配列番号101/107、pLN1V5_hBMP9}
{B−2,配列番号108/109、pLN1V5_hBMP10}
{B−3,配列番号110/106、pLN1V5_hBMP9}
{C−1,配列番号101/111、pLN1V5_hBMP9}
{C−2,配列番号112/113、pLN1V5_hBMP10}
次に、insertA、BおよびCを作製した。前述のDNA断片と同様に記載すると、次の通りである。
{insertA,配列番号101/106、A−1とA−2とA−3精製断片の混合物}
{insertB,配列番号101/106、B−1とB−2とB−3精製断片の混合物}
{insertC,配列番号101/113、C−1とC−2精製断片の混合物}
得られたPCR増幅断片をそれぞれ制限酵素NheIおよびXhoIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って精製することにより、insertA、BおよびCを取得した。これらを、NheI、XhoIで切断されたpLN1V5の切断ベクターに、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ社製、6022)を用いて挿入し、pLN1V5_hBMP9/10A、pLN1V5_hBMP9/10BおよびpLN1V5_hBMP9/10Cをそれぞれ取得した。
pLN1V5_hBMP9/10A、pLN1V5_hBMP9/10BおよびpLN1V5_hBMP9/10Cはそれぞれ、ヒトBMP9のシグナル配列、His6タグ配列、ヒトBMP9プロペプチド領域配列に続き、ヒトBMP9のmature領域の一部(それぞれ領域A、BまたはC)がBMP10の対応する配列に置換されたヒトBMP9mature領域配列がpLN1V5に挿入されたヒトBMP9/10キメラ蛋白質発現ベクターである。
前項で作製したpLN1V5_hBMP9ベクター、pLN1V5_hBMP10ベクター、pLN1V5_hBMP9/10Aベクター、pLN1V5_hBMP9/10BベクターおよびpLN1V5_hBMP9/10Cベクターを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、NucleoBond Xtra Maxi(タカラバイオ社製、U0414B)を用いてベクターを調製した。
FreeStyle 293 Expression System(ライフテクノロジーズ社製)を用いて一過性発現を行い、ヒトBMP9、ヒトBMP10、およびヒトBMP9/10キメラ蛋白質A、BおよびCを培養液中に発現させた。細胞上清を遠心分離と0.22μmフィルターを用いた濾過により培養液から取得した。
続いて、Ni−NTA Agarose(QIAGEN社製)を用いて各蛋白質を精製した。Binding bufferとして20mM HEPES−NaOH(pH7.4)、500mM NaCl 40mM Imidazoleを用い、Elution bufferとして20mM HEPES−NaOH(pH7.4)、500mM NaCl 200mM Imidazoleを用いた。
NAP−25カラム(GEヘルスケア社製)を用いて、バッファーをPBSに置換した。280nmの吸光度を測定して各蛋白質溶液の濃度を決定した。分子吸光係数として、ヒトBMP9、ヒトBMP10、ヒトBMP9/10キメラA、BおよびCはそれぞれ 1.05、0.96、1.12、1.08および1.06mL/(mg・cm)を使用した。
20−3)3C7−3−1抗体のキメラ蛋白質に対する特異的結合性
キメラ蛋白質を用いて、取得抗体の固相抗原ELISAを行った。実施例20−2で調製したヒトBMP9、BMP10、BMP9/10キメラ組換え蛋白質A、BおよびCを50mmol/L NaHCO緩衝液で3μg/mLに調製し、96ウェルのELISA用プレート(F96 MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Thermo Fisher Scientific社製、Cat#442404)に50μL/ウェル加えて4℃で一晩静置して吸着させた。
固相化液を取り除いた後、1% BSA−PBSを200μL/ウェル加え、室温で1時間静置してブロッキングし、PBSTで5回洗浄した。次に、1% BSA−PBSで1000ng/mLに調整した3C7−3−1抗体(実施例20−1で作製したもの)、R&D抗体(マウスIgG2b)、BMP10抗体(R&D社製、Cat#MAB2926、マウスIgG2a)、BMP9ヤギポリクローナル抗体(R&D社製、Cat#AF3209)、陰性対照マウスIgG1、IgG2bモノクローナル抗体(R&D社製、それぞれCat#MAB002、Cat#MAB004)を50μL/ウェル加え、室温で1時間静置した。
このプレートをPBSTで5回洗浄した後、1% BSA−PBSで2000倍希釈したGoat anti−mouse IgG HRP(DAKO社製、Cat#P0447)またはRabbit anti−goat IgG HRP(DAKO社製、Cat#P0160)を50μL/ウェル加え、室温で1時間静置した。
プレートをPBSTで10回洗浄し、TMB発色液(TMB+ Substrate−Chromogen、Dako社製、Cat#S1599)を50μL/ウェル添加して発色させ、十分な発色が得られたところで、1N硫酸溶液(Wako社製、Cat#192−04755)を50μL/ウェル添加し、Multiskan Spectrum(Thermo Labsystems社製)を用いて450、570nmの吸光度を測定した。
結果を表3に記載する。表内の+および−は、吸光度の値が1以上であった場合を+とし、1未満であった場合を−とした。
Figure 2014051109
表2に示すように、抗原が適当量固相化されていることを確認するために用いたBMP9ヤギポリクローナル抗体については、ヒトBMP9、ヒトBMP9/10キメラ蛋白質A、BおよびCのいずれに対しても結合を示し、プレート上に十分な抗原が固相化できていることを確認した。
また、3C7−3−1抗体はヒトBMP9およびヒトBMP9/10キメラ蛋白質Cに特異的に結合したのに対し、ヒトBMP9/10キメラ蛋白質AおよびBには結合しなかった。さらに、R&D抗体はヒトBMP9およびヒトBMP9/10キメラ蛋白質AおよびBに特異的に結合したが、ヒトBMP9/10キメラ蛋白質Cには結合しなかった。
これらの結果は、3C7−3−1抗体は、ヒトBMP9の領域C以外、すなわち領域A、B内に存在するエピトープを認識していること、R&D抗体はヒトBMP9の領域C内にあるエピトープを認識していることを示している。以上のことから、3C7−3−1抗体は、既存のR&D抗体とは異なるBMP9のエピトープを認識する抗体であることが明らかとなった。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2012年9月28日付けで出願された米国仮出願(61/707,080号)に基づいており、その全体が引用により援用される。
配列番号1:LinkA1の塩基配列
配列番号2:LinkA2の塩基配列
配列番号3:LinkB1の塩基配列
配列番号4:LinkB2の塩基配列
配列番号5:Bmp9KOClaI−3’Fwの塩基配列
配列番号6:Bmp9KOAscI−3’Rvの塩基配列
配列番号7:Bmp9KOPacI−5’Fwの塩基配列
配列番号8:Bmp9KOFseI−5’Rvの塩基配列
配列番号9:Bmp9 KO5’ probe FW2の塩基配列
配列番号10:Bmp9 KO5’ probe RV2の塩基配列
配列番号11:Bmp9 KO3’ probe FW2の塩基配列
配列番号12:Bmp9 KO3’ probe RV2の塩基配列
配列番号13:mBMP9_FW5915の塩基配列
配列番号14:mBMP9_RV17165の塩基配列
配列番号15:mBMP9_FW1の塩基配列
配列番号16:mBMP9_RV1の塩基配列
配列番号17:ヒトALK1の全長cDNAの塩基配列
配列番号18:ヒトALK1の全長アミノ酸配列
配列番号19:shALK1 FPNの塩基配列
配列番号20:hALK1 RPの塩基配列
配列番号21:hALK2 FPINTの塩基配列
配列番号22:hALK2 G617A RPの塩基配列
配列番号23:hALK2 RPの塩基配列
配列番号24:hALK2 G617A FPの塩基配列
配列番号25:マウスIgG1に特異的なプライマーRV1の塩基配列
配列番号26:マウスIgG1に特異的なプライマーRV2の塩基配列
配列番号27:マウスIgG2aに特異的なプライマーRV1の塩基配列
配列番号28:マウスIgG2aに特異的なプライマーRV2の塩基配列
配列番号29:マウスIgG2bに特異的なプライマーRV1の塩基配列
配列番号30:マウスIgG2bに特異的なプライマーRV2の塩基配列
配列番号31:マウスIgG2cに特異的なプライマーRVの塩基配列
配列番号32:マウスIgG3に特異的なプライマーRV1の塩基配列
配列番号33:マウスIgG3に特異的なプライマーRV2の塩基配列
配列番号34:マウスIg(κ)特異的プライマーRV1の塩基配列
配列番号35:マウスIg(κ)特異的プライマーRV2の塩基配列
配列番号36:マウスIg(λ)特異的なプライマーRV1の塩基配列
配列番号37:マウスIg(λ)特異的なプライマーRV2の塩基配列
配列番号38:3B7−3−3抗体のVHの全塩基配列(シグナル配列を含む)
配列番号39:3C7−3−1抗体のVHの全塩基配列(シグナル配列を含む)
配列番号40:3B7−3−3抗体のVHの全アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号41:3C7−3−1抗体のVHの全アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号42:3B7−3−3抗体のVLの全塩基配列(シグナル配列を含む)
配列番号43:3C7−3−1抗体のVLの全塩基配列(シグナル配列を含む)
配列番号44:3B7−3−3抗体のVLの全アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号45:3C7−3−1抗体のVLの全アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号46:3B7−3−3抗体のVHの塩基配列(シグナル配列を除く)
配列番号47:3C7−3−1抗体のVHの塩基配列(シグナル配列を除く)
配列番号48:3B7−3−3抗体のVLの塩基配列(シグナル配列を除く)
配列番号49:3C7−3−1抗体のVLの塩基配列(シグナル配列を除く)
配列番号50:3B7−3−3抗体のVHのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)
配列番号51:3C7−3−1抗体のVHのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)
配列番号52:3B7−3−3抗体のVLのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)
配列番号53:3C7−3−1抗体のVLのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)
配列番号54:3B7−3−3抗体VHのCDR1のアミノ酸配列
配列番号55:3B7−3−3抗体VHのCDR2のアミノ酸配列
配列番号56:3B7−3−3抗体VHのCDR3のアミノ酸配列
配列番号57:3B7−3−3抗体VLのCDR1のアミノ酸配列
配列番号58:3B7−3−3抗体VLのCDR2のアミノ酸配列
配列番号59:3B7−3−3抗体VLのCDR3のアミノ酸配列
配列番号60:3C7−3−1抗体VHのCDR1のアミノ酸配列
配列番号61:3C7−3−1抗体VHのCDR2のアミノ酸配列
配列番号62:3C7−3−1抗体VHのCDR3のアミノ酸配列
配列番号63:3C7−3−1抗体VLのCDR1のアミノ酸配列
配列番号64:3C7−3−1抗体VLのCDR2のアミノ酸配列
配列番号65:3C7−3−1抗体VLのCDR3のアミノ酸配列
配列番号66:ヒトBMP9蛋白質のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号67:ヒトBMP9 mature領域のアミノ酸配列
配列番号68:ヒトBMP9蛋白質をコードする塩基配列(シグナル配列含む)
配列番号69:ヒトBMP9 mature領域をコードする塩基配列
配列番号70:ヒトALK2のアミノ酸配列
配列番号71:ヒトFOP−ALK2のアミノ酸配列
配列番号72:3C7−3−1抗体の軽鎖プライマーFwdの塩基配列
配列番号73:3C7−3−1抗体の軽鎖プライマーRvの塩基配列
配列番号74:3C7−3−1抗体の重鎖プライマーFwdの塩基配列
配列番号75:3C7−3−1抗体の重鎖プライマーRvの塩基配列
配列番号76:マウス軽鎖(κ鎖)定常領域プライマーFwdの塩基配列
配列番号77:マウス軽鎖(κ鎖)定常領域プライマーRvの塩基配列
配列番号78:マウス重鎖(IgG1)定常領域プライマーFwdの塩基配列
配列番号79:マウス重鎖(IgG1)定常領域プライマーRvの塩基配列
配列番号80:マウス軽鎖(κ鎖)定常領域の塩基配列
配列番号81:マウス重鎖(IgG1)定常領域の塩基配列
配列番号82:ヒトBMP9領域Aのアミノ酸配列
配列番号83:ヒトBMP10領域Aのアミノ酸配列
配列番号84:ヒトBMP9領域Bのアミノ酸配列
配列番号85:ヒトBMP10領域Bのアミノ酸配列
配列番号86:ヒトBMP9領域Cのアミノ酸配列
配列番号87:ヒトBMP10領域Cのアミノ酸配列
配列番号88:キメラ蛋白質Aのアミノ酸配列
配列番号89:キメラ蛋白質Bのアミノ酸配列
配列番号90:キメラ蛋白質Cのアミノ酸配列
配列番号91:ヒトBMP10蛋白質プライマーFwd−1の塩基配列
配列番号92:ヒトBMP10蛋白質プライマーRv−1の塩基配列
配列番号93:ヒトBMP10蛋白質プライマーFwd−2の塩基配列
配列番号94:ヒトBMP10蛋白質プライマーRv−2の塩基配列
配列番号95:ヒトBMP10蛋白質のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号96:ヒトBMP10 mature領域のアミノ酸配列
配列番号97:ヒトBMP10蛋白質をコードする塩基配列(シグナル配列含む)
配列番号98:ヒトBMP10 mature領域をコードする塩基配列
配列番号99:pLN1V5_hBMP10に挿入された塩基配列
配列番号100:pLN1V5_hBMP10ベクターにより発現するアミノ酸配列
配列番号101:キメラ蛋白質プライマー1の塩基配列
配列番号102:キメラ蛋白質プライマー2の塩基配列
配列番号103:キメラ蛋白質プライマー3の塩基配列
配列番号104:キメラ蛋白質プライマー4の塩基配列
配列番号105:キメラ蛋白質プライマー5の塩基配列
配列番号106:キメラ蛋白質プライマー6の塩基配列
配列番号107:キメラ蛋白質プライマー7の塩基配列
配列番号108:キメラ蛋白質プライマー8の塩基配列
配列番号109:キメラ蛋白質プライマー9の塩基配列
配列番号110:キメラ蛋白質プライマー10の塩基配列
配列番号111:キメラ蛋白質プライマー11の塩基配列
配列番号112:キメラ蛋白質プライマー12の塩基配列
配列番号113:キメラ蛋白質プライマー13の塩基配列

Claims (16)

  1. 以下の(a)〜(d)から選ばれる1の抗体と競合してヒトBMP9に結合し、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害し、かつ、ヒトBMPタイプI受容体由来シグナルのうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害するモノクローナル抗体又は該抗体断片。
    (a)相補鎖決定領域(complementarity determining region、以下CDRと記す)1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含む抗体
    (b)CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含む抗体
    (c)配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、及び/又は配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含む抗体
    (d)配列番号51で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、及び/又は配列番号53で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含む抗体
  2. 前記(a)〜(d)から選ばれる1の抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
  3. 遺伝子組換え抗体である、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
  4. ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体から選ばれる遺伝子組換え抗体である、請求項3に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
  5. 以下の(a)〜(b)から選ばれる1のモノクローナル抗体又は該抗体断片。
    (a)CDR1〜3がそれぞれ配列番号54〜56で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号57〜59で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及び該抗体断片
    (b)CDR1〜3がそれぞれ配列番号60〜62で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、及び/又はCDR1〜3がそれぞれ配列番号63〜65で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及び該抗体断片
  6. 配列番号67で表されるヒトBMP9 mature領域のアミノ酸配列のうち、1番目から74番目に含まれるアミノ酸に結合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体及び該抗体断片。
  7. Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体断片。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片をコードするDNA。
  9. 請求項8に記載のDNAを含有する組換えベクター。
  10. 請求項9に記載の組換え体ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換株。
  11. 請求項10に記載の形質転換株を培地に培養し、培養物中に請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を生成蓄積させ、培養物から該抗体又は該抗体断片を採取することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片の製造方法。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を用いるヒトBMP9の免疫学的検出又は測定方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片と薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  14. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を投与することを含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療方法。
  15. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は該抗体断片を含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療薬。
  16. ヒトBMP9に結合し、ヒトBMPタイプI受容体とヒトBMP9の結合を阻害し、かつ、ヒトBMPタイプI受容体のうち、FOP−ALK2由来シグナルを選択的に阻害するモノクローナル抗体又は該抗体断片を投与することを含む、ヒトBMP9が関与する異所性骨化疾患の治療方法。
JP2014538654A 2012-09-28 2013-09-27 抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤 Pending JPWO2014051109A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201261707080P 2012-09-28 2012-09-28
US61/707,080 2012-09-28
PCT/JP2013/076411 WO2014051109A1 (ja) 2012-09-28 2013-09-27 抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2014051109A1 true JPWO2014051109A1 (ja) 2016-08-25

Family

ID=50388499

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014538654A Pending JPWO2014051109A1 (ja) 2012-09-28 2013-09-27 抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2014051109A1 (ja)
WO (1) WO2014051109A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20160075772A1 (en) 2014-09-12 2016-03-17 Regeneron Pharmaceuticals, Inc. Treatment of Fibrodysplasia Ossificans Progressiva
TWI703156B (zh) 2015-01-30 2020-09-01 學校法人埼玉醫科大學 抗alk2抗體
WO2016176341A1 (en) * 2015-04-29 2016-11-03 Regeneron Pharmaceuticals, Inc. Treatment of fibrodysplasia ossificans progressiva
TN2017000417A1 (en) 2015-06-05 2019-01-16 Novartis Ag Antibodies targeting bone morphogenetic protein 9 (bmp9) and methods therefor
WO2019089506A1 (en) * 2017-10-30 2019-05-09 The Johns Hopkins University Heterotopic ossification and method of treatment
MA52366A (fr) 2018-04-25 2021-03-03 Prometheus Biosciences Inc Anticorps anti-tl1a optimisés
AU2020371725A1 (en) 2019-10-24 2022-05-26 Cedars-Sinai Medical Center Humanized antibodies to TNF-like ligand 1A (TL1A) and uses thereof
CN113817743B (zh) * 2021-09-30 2023-10-03 魏伟 IgDR基因、IgDR单克隆抗体及其制备方法与应用

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101657460A (zh) * 2006-12-13 2010-02-24 基利得科学公司 用于治疗肺炎症和支气管收缩的作为抗炎性信号转导调节剂(AISTM’S)和β-激动剂的相互前药的单磷酸酯
JP5841047B2 (ja) * 2009-05-08 2016-01-06 ノバルティス アーゲー 線維性障害の診断バイオマーカー
CN102781478A (zh) * 2010-02-03 2012-11-14 米韦林有限公司 用于细胞内靶向增殖和蛋白质合成的聚阴离子多价大分子

Also Published As

Publication number Publication date
WO2014051109A1 (ja) 2014-04-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6298762B2 (ja) 抗bmp9抗体を有効成分とする、腎性貧血、がん性貧血などの貧血に対する治療剤
TWI501777B (zh) 人類抗cd27單株抗體
WO2014051109A1 (ja) 抗ヒトbmp9抗体および該抗体を有効成分とする異所性骨化疾患の治療剤
US20120237518A1 (en) Anti-trop-2 antibody
TWI811260B (zh) 與CD40及EpCAM結合之雙專一性抗體
US20240262903A1 (en) Methods for treating hypertension using an anti-bmp10 monoclonal antibody or fragment thereof
JP6803231B2 (ja) 抗ヒトGas6モノクローナル抗体
JP2017025011A (ja) 抗bmp9抗体
US8093362B2 (en) Anti-PERP recombinant antibody
CN111527106B (en) Anti-BMP 10 antibody and therapeutic agent for hypertension and hypertensive disease containing the same as active ingredient
TWI825072B (zh) 抗bmp10抗體及以該抗體為有效成份之針對高血壓及高血壓性疾病之治療劑