JPWO2014030624A1 - スチルベン誘導体を有効成分として含有する筋緊張性ジストロフィー治療剤 - Google Patents

スチルベン誘導体を有効成分として含有する筋緊張性ジストロフィー治療剤 Download PDF

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Abstract

筋緊張性ジストロフィー特に耐糖能異常又は糖尿病を随伴した筋緊張性ジストロフィーに対する治療剤,及び筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤が開示されている。当該治療剤は,式(I)【式1】〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩を有効成分として含有する,筋緊張性ジストロフィー治療剤である。

Description

本発明は,筋緊張性ジストロフィー又はその随伴疾患の治療剤に関し,詳しくは,trans−スチルベン誘導体,特にtrans−レスベラトロール又はその誘導体を有効成分として含有する,緊張性ジストロフィー治療剤,特に耐糖能異常又は糖尿病を伴う筋緊張性ジストロフィーの治療剤,及び緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤に関する。
trans−スチルベン,
の誘導体の一種であるtrans−レスベラトロール(3,5,4’−トリヒドロキシ−trans−スチルベン),
は,天然に存在するポリフェノールである。trans−レスベラトロールは,ブドウの果皮の他,ピーナッツの皮,ラスベリー,クワの実,イタドリ等にも含まれており,食経験が豊富で安全性の高い物質である。グラス一杯の赤ワインには約640μgの,一握りのピーナッツには約73μgのtrans−レスベラトロールが含まれている。trans−レスベラトロールは,植物体において,昆虫の忌避や病原菌の殺菌を引き起こすフィトアレキシンとして機能する物質であり,抗酸化物質でもある。
trans−レスベラトロールはまた,抗変異原性及び抗炎症活性等の薬理学的活性を有し,また前骨髄性白血病細胞の分化を抑制し,発ガンの初発期(イニシエーション),促進期(プロモーション),悪性化(プログレッション)の3段階すべてを抑制する化学抗癌作用を有しており,その抗癌作用の濃度は,0.7〜5.7μg/mLであることが報告されている(非特許文献1)。その他,trans−レスベラトロールは,一酸化窒素の産生促進を介した血管内皮機能改善及び血管拡張作用(特許文献1),低密度リポ蛋白質の酸化阻害作用等を介した抗動脈硬化作用(非特許文献2),ペルオキシソーム増殖応答性受容体(PPAR)の活性化を介した循環器系障害の進展の抑制作用(特許文献2),リポキシゲナーゼの活性阻害を介した血栓予防作用(特許文献3),脱アセチル化酵素(Sirt1)の活性化を介した脂肪細胞の蓄積を防止する作用(特許文献4),中性脂肪吸収阻害作用(特許文献5),肝細胞コレステロール合成阻害活性を介した高コレステロール血症の予防作用(特許文献6),AMPキナーゼの活性化等を介した脂肪代謝促進作用(特許文献7),サーチュイン活性の増強を介した視覚機能障害の改善作用(特許文献8),細胞内でのβ−アミロイドの分解促進等を介したアルツハイマー抑制作用(特許文献9,非特許文献3及び非特許文献4),サーチュイン活性の増強を介した酵母での延命効果(非特許文献5),骨芽細胞の増殖促進作用(非特許文献6)等,多くの生理活性,効果を示すことが知られている。
更に,trans−レスベラトロールは,サーチュイン活性の増強を介した肥満及びインシュリン耐性障害抑制作用(特許文献10),アディポネクチンの産生促進作用(特許文献11),血糖値の低下作用(特許文献12)等の生理活性を有することが知られており,2型糖尿病患者のインスリン感受性を改善する効果を有することも知られている(非特許文献7)。また,trans−レスベラトロールによるインスリン感受性の改善は,酸化ストレスの抑制及びAkt経路の活性化によるものであることが示唆されている(非特許文献7)。
近年,trans−レスベラトロールは,survival motor neuron-2(SMN2)遺伝子を含む,種々の遺伝子のmRNAの選択的スプライシングのパターンに影響を与えることが報告されている。例えば,survival motor neuron-2 (SMN2)遺伝子の場合,エクソン7を欠くmRNAとエクソン7を有するmRNAの2種類のスプライシング変異体が存在するが,trans−レスベラトロールは,後者の比率を高める効果を有することが知られており(非特許文献8,非特許文献9),trans−レスベラトロールの,スプライシング異常を原因とする疾患の治療薬としての利用可能性が示唆されている(非特許文献8)。
筋緊張性ジストロフィーは,進行性の筋萎縮と筋力低下を特徴とする常染色体優性遺伝を示す遺伝性ミオパチーであり,筋緊張現象を合併する症候群である。筋緊張性ジストロフィーの患者は,高頻度で耐糖能異常が認められ,糖尿病を併発する。時には,本疾患が見逃されて糖尿病と診断されることもある。発症年齢は乳児期から成人に至る広い範囲を示す。症状に個人差が大きく,「ぐにゃぐにゃ乳児」として出生する先天性筋緊張性ジストロフィーから一生発症に気づかず過ごす軽症者まである。乳児期に発症したものは精神遅延を伴う重症型が多い。重症型は母親が保因者の場合に生じやすい。
筋緊張性ジストロフィーはI型とII型に分類される。I型の患者では,第19染色体に存在するミオトニンプロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子に異常が見出される。DMPK遺伝子の3’側非翻訳領域には不安定CTG反復領域があり,健常者ではその反復回数が5〜37回程度であるのに対し,I型の患者では,通常100回以上である。一般にこの反復回数と重症度は正の相関が認められ,重症者あるいは先天性筋緊張性ジストロフィー患者では反復回数は1000回以上に達する。II型の患者では,第3染色体に存在するZnフィンガー蛋白質9(ZNF9)遺伝子に異常が見出される。ZNF9遺伝子のイントロン1には不安定CCTG反復領域があり,健常者ではその反復回数が4〜11回程度であるのに対し,II型の患者では通常75回以上であり,11,000回以上に達する場合もある。
I型の患者では,DMPK遺伝子が転写されることにより生じるCUG反復回数が異常に増加したmRNAが,またII型の患者ではZNF9遺伝子が転写されることにより生じるCCUG反復回数が異常に増加したmRNAが,細胞質に移行せず細胞核内に留まることが知られている(非特許文献10)。また,この細胞核内に滞留した異常なmRNAは,mRNAのスプライシングを制御する因子の一つであるCUG結合蛋白質(CUGBP1)と結合して存在することが知られている(非特許文献11)。このようなCUGBP1の細胞核内での異常なmRNAとの結合は,mRNAのスプライシングの制御に影響を与えると考えられる。事実,本疾患の患者では,トロポニンT(非特許文献12),筋特異性Cl−チャネル(非特許文献13),微小管結合蛋白質タウ(非特許文献14),ミオチュブラリン関連蛋白質1(非特許文献15),インスリン受容体(非特許文献16),BIN1(非特許文献17)等で,スプライシング異常に起因する異常が生じることが知られている。特に,筋緊張性ジストロフィーの患者では,BIN1遺伝子が,スプライシング異常によりエクソン11がスキップされたmRNAが蛋白質に翻訳され,これが患者の筋力低下の一因となっていると考えられている(非特許文献17)。
本疾患の患者で高頻度に認められる耐糖能異常及び糖尿病は,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAのスプライシング異常に起因すると考えられている(非特許文献16)。インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAには,エクソン(Exon)11を欠くA型(IR-A型)とエクソン11を有するB型(IR-B型)の2種類のスプライシング変異体が存在する(図1)。インスリン感受性はIR-BがIR-Aと比較して高い。本疾患の患者では健常人と比較して,インスリン感受性が高いIR-Bの発現量が特に骨格筋で低下しており,これによりインスリンに対する感受性が低下し,耐糖能異常となると考えられている(非特許文献16)。健常人では,骨格筋においてこれら両変異体のうちIR-Bの発現比率〔[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])×100%〕は60〜80%であるが,本疾患の患者では,この比率が4〜40%程度に低下する(非特許文献16)。
筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常及び糖尿病に対しては,メトフォルミンやチアゾリジン系のピオグリタゾン等の糖尿病治療薬が患者に投与されている(非特許文献18,19)。これらの薬剤は,AMPキナーゼ(AMPK)の活性化剤であり,また,筋緊張性ジストロフィー患者由来の細胞において,エクソン11を有するIR-B型産物の比率を上昇若しくは変化させることが知られている(特許文献13)。
上記のように,筋緊張性ジストロフィーの発症メカニズムの解明は進んでいるが,本疾患に対する有効な治療法は存在せず,患者には食事療法等の対処療法が施されている現状である。
特開2012−41296 特開2003−300904 特開S61−171427 WO2008/136173 特開2011−132147 特開2001−72583 特開2006−273834 特表2008−538215 WO2001/034138 特表2007−527418 特開2008−255040 特開2007−126390 WO2011/121109
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上記背景の下で,本発明の目的は,筋緊張性ジストロフィーに対する治療剤を提供することであり,特に耐糖能異常又は糖尿病を随伴した筋緊張性ジストロフィーに対する治療剤,及び筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤を提供することである。
上記目的に向けた研究において,本発明者らは,trans−スチルベン誘導体の一種であるtrans−レスベラトロールが,インスリン受容体mRNAの選択的スプライシングに影響を与え,それによりエクソン11を欠くA型(IR-A)とエクソン11を有するB型(IR-B)の2種類のスプライシング変異体の比率を変化させ,インスリンに対する感受性がより高いIR-Bの発現比率を増加させることができることを見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を提供する。
1.次の一般式(I),
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩を有効成分として含有する,筋緊張性ジストロフィー治療剤。
2.一般式(I)において,m+nが3又は4である,上記1の筋緊張性ジストロフィー治療剤。
3.一般式(I)において,m+nが3である,上記1の筋緊張性ジストロフィー治療剤。
4.該trans−スチルベン誘導体が,次式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記1の筋緊張性ジストロフィーの治療剤。
5.該筋緊張性ジストロフィーが,耐糖能異常又は糖尿病を伴うものである,上記1〜4の何れかの筋緊張性ジストロフィー治療剤。
6.該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記5の治療剤。
7.次の一般式(I),
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩を有効成分として含有する,筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
8.一般式(I)において,m+nが3又は4である,上記7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
9.一般式(I)において,m+nが3である,上記7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
10.該trans−スチルベン誘導体が,式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
11.該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記7〜10の何れかの筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
12.筋緊張性ジストロフィーの治療のための式(I)
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩の使用。
13.一般式(I)においてm+nが3又は4である,上記12の使用。
14.一般式(I)においてm+nが3である,上記12の使用。
15.該trans−スチルベン誘導体が,式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記12の使用。
16.該筋緊張性ジストロフィーが,耐糖能異常又は糖尿病を伴うものである,上記12〜15の何れかの使用。
17.該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記16の使用。
18.筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療のための,次の一般式(I),
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩の使用。
19.一般式(I)においてm+nが3又は4である,上記18の使用。
20.一般式(I)においてm+nが3である,上記18の使用。
21.該trans−スチルベン誘導体が,式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記18の使用。
22.該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記18〜21の何れかの使用。
23.筋緊張性ジストロフィーの治療方法であって,次の一般式(I),
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩の有効量を筋緊張性ジストロフィーの患者に投与することを含んでなる方法。
24.一般式(I)において,m+nが3又は4である,上記23の治療方法。
25.一般式(I)において,m+nが3である,上記23の治療方法。
26.該trans−スチルベン誘導体が,次式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記23の治療方法。
27.該筋緊張性ジストロフィーが,耐糖能異常又は糖尿病を伴うものである,上記23〜26の治療方法。
28.耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記26の治療方法。
29.筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療方法であって,次の一般式(I),
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩の有効量を筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の患者に投与することを含んでなる方法。
30.一般式(I)においてm+nが3又は4である,上記29の治療方法。
31.一般式(I)においてm+nが3である,上記29の治療方法。
32.該trans−スチルベン誘導体が,式(II),
で示されるtrans−レスベラトロールである,上記28の治療方法。
33.該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるB型スプライシング変異体の発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,上記29〜32の何れかの治療方法。
本発明によれば,筋緊張性ジストロフィーの症状,特に筋力低下の改善又は防止,及び糖尿病を随伴した該筋緊張性ジストロフィーの症状の緩解,取り分け,筋緊張性ジストロフィーに随伴した糖尿病の症状を改善する治療剤を得ることができ,またそれによりそれら疾患を治療することができる。
図1は,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAのスプライシング変異を示す模式図である。 図2は,Hela細胞の全mRNAからPCRにより増幅させて得た,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるスプライシング変異体のDNA断片の解析結果を示す図面代用写真である。レーン1は通常培養のHela細胞から,レーン2はDMSOを添加して培養したHela細胞から,レーン3は100 μMtrans-レスベラトロールを含有する培地で培養したHela細胞から,それぞれ得た全mRNAの解析結果を示す。レーンMは分子量マーカーを示す。(A)はIR-A,(B)はIR-Bに由来するDNA断片を,それぞれ示す。 図3は,Hela細胞におけるtrans-レスベラトロールの濃度とIR-Bに由来するDNA断片の比率〔IR-B/([IR-A]+[IR-B])×100(%)〕の相関を示す図である。縦軸はIR-Bに由来するDNA断片の比率(%)を,横軸はレスベラトロールの濃度(μM)を,それぞれ示す。 図4は,筋緊張性ジストロフィー患者由来の繊維芽細胞におけるtrans−レスベラトロールの濃度とIR-Bに由来するDNA断片の比率〔IR-B/([IR-A]+[IR-B])×100(%)〕の相関を示す図である。縦軸はIR-Bに由来するDNA断片の比率(%)を,横軸はレスベラトロールの濃度(μM)を,それぞれ示す。 図5は,筋緊張性ジストロフィー患者由来の繊維芽細胞におけるtrans−レスベラトロールの濃度とBIN1のエクソン11型変異体に由来するDNA断片の比率〔[エクソン11型産物]/([エクソン11型産物]+[エクソン11型産物])×100(%)〕の相関を示す図である。縦軸はIR-Bに由来するDNA断片の比率(%)を,横軸はレスベラトロールの濃度(μM)を,それぞれ示す。
本明細書において,「筋緊張性ジストロフィー」の語は,ミオトニンプロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の不安定CTG反復領域の異常な増幅が認められるI型筋緊張性ジストロフィーと,Znフィンガー蛋白質9(ZNF9)遺伝子の不安定CCTG反復領域の異常な増幅が認められるII型筋緊張性ジストロフィーのいずれをも含み,これに限らず,筋緊張性ジストロフィーと診断される全ての症状を包含する。
本明細書において,「耐糖能異常」の語は,経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において正常型と糖尿病型の中間に位置する前糖尿病群をいう。ここに,経口ブドウ糖負荷試験は,世界保健機関(WHO)の推奨する基準に従い,成人につき8〜12時間の絶食後の,及びこれに続く75gのブドウ糖の経口投与の2時間後における,静脈血中のブドウ糖濃度の測定により行われ,次の表により,患者が正常,耐糖能異常,及び糖尿病の何れの群に属するかが判定される。
本発明において,trans−スチルベン誘導体は,次の一般式(I)
〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,nとmは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示され,塩の形態のものも包含する。
より好ましくは,m+nは3又は4であり,更に好ましくはm+nは3であり,特に好ましくは,trans−スチルベン誘導体は,次式(II),
で示されるtrans−レスベラトロール又はその塩である。
trans−スチルベン誘導体の塩の形態には特に限定はないが,例えば,元のtrans−スチルベン誘導体を含有する溶液を適当な塩基(例えば,水酸化ナトリウム)で中和して得られる塩が挙げられ,塩を形成したtrans−スチルベン誘導体と遊離trans−スチルベン誘導体との混合物であってよい。
本発明の治療剤は,該筋緊張性ジストロフィー患者に投与してその症状を緩解するために,特に,耐糖能異常又は糖尿病を伴う該筋緊張性ジストロフィー患者を治療するために用いることができ,また筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病を有する患者の治療に用いることができる。本発明の治療剤は,インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるエクソン11を欠くA型(IR-A)とエクソン11を有するB型(IR-B)の2種類のスプライシング変異体の総発現量に対するB型変異体(IR-B)の発現比率が正常に比べて減少している患者に投与することにより,IR-Bの発現比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])を増加させて正常に近づけることにより,耐糖能を改善させる。
筋緊張性ジストロフィー患者においては,BIN1(bridging integrator 1)遺伝子が,スプライシング異常によりエクソン11がスキップされたmRNAが優勢に翻訳されており,これが患者の筋力低下の一因となっていると考えられている。本発明の治療剤は,BIN1をコードするmRNAにおいて,エクソン11を欠く異常型mRNA(エクソン11型変異体)の比率を減じ,エクソン11を有する正常型mRNA(エクソン11型変異体)の比率を上昇させることができるので,耐糖能の改善のみならず,患者の筋力低下を防止することもできる。
本発明における治療剤は,有効成分であるtrans−レスベラトロール等のtrans−スチルベン誘導体を薬剤学的に許容される賦形剤その他の添加剤と共に,適宜の経口投与用剤又は坐剤の形態に製剤化して患者に投与することができる。また,注射剤等の静脈注射又は皮下注射等の非経口投与用剤とし,患者に投与してもよい。
本発明において,1日当たり投与される有効成分の量は,患者の症状により適宜調整される。経口投与溶剤又は坐剤の場合,一般的には1mg〜1g/日の範囲とすればよく,注射剤の場合は,通常,0.1mg〜100mg/日とすればよいが,これに限られず,適宜増減することができる。
経口投与用製剤の場合,錠剤,顆粒剤,カプセル剤,散剤等,任意の形態とすることができる。製剤の製造は,主薬であるポリフェノールに,製剤分野の当業者に知られている賦形剤,結合剤,滑沢剤,崩壊剤,湿潤剤その他から,採用する製剤の種類に応じて適宜選択して配合し,常法に従って行えばよい。
賦形剤としては,例えば乳糖,白糖,D−マンニトール,デンプン,結晶セルロース,軽質無水ケイ酸が挙げられ,結合剤としては,例えば,結晶セルロース,白糖,D−マンニトール,デキストリン,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポリビニルピロリドン等の高分子化合物が挙げられ,滑沢剤としては,例えば,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸カルシウム,タルク,及びコロイドシリカが挙げられ,崩壊剤としては,例えば,デンプン,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースカルシウム,クロスカルメロースナトリウム,及びカルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられ,湿潤剤としては,例えば,グリセリン,ブチレングリコール,プロピレングリコール,ソルビトール,及びトリアセチンが挙げられるが,これらに限られない。
坐剤の場合,油脂性基剤(カカオ脂,ハードファット),水溶性基剤(マクロゴール,ソフトゼラチン)その他の適宜の基剤に,必要に応じ乳化剤,懸濁化剤などを加え,これに有効成分であるtrans−レスベラトロール等のtrans−スチルベン誘導体を加え,混和して均等にした後,溶解法,冷圧法又は手工法によって,適当な形状とすればよい。
注射剤の場合,有効成分を注射用水等の水性基剤又は注射用に許容される油性基剤に溶解又は分散させて,静脈注射用又は皮下注射用の注射剤とすればよい。必要に応じて,緩衝剤,pH調整剤,等張化剤,溶解補助剤,懸濁化剤,安定化剤等の添加剤を適宜加えることができる。
注射剤用の場合,水性基剤の例としては,注射用水及びリンゲル液等の輸液が挙げられ;油性基剤の例としては,プロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ゴマ油,ダイズ油,トウモロコシ油,ラッカセイ油,綿実油,オリーブ油,プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ;緩衝剤の例としては,リン酸塩,酢酸塩,炭酸塩,クエン酸塩,ホウ酸塩,グルタミン酸塩,イプシロンアミノカプロン酸塩,トリス緩衝液等の緩衝液等が挙げられ;pH調整剤の例としては,塩酸,リン酸,硫酸,炭酸等の無機酸,酢酸,酒石酸,乳酸,クエン酸,酒石酸,コハク酸等の有機酸;水酸化ナトリウム等の無機塩基;クエン酸ナトリウム,酒石酸ナトリウム等の有機塩基が挙げられ;等張化剤の例としては,塩化ナトリウム等の無機塩類;D−マンニトール,ソルビトール,キシリトール等の糖アルコール;フルクトース,グルコース,ガラストース,リボース,キシロース,マンノース,マルトトリオース,マルトテトラオース等の糖類;グリシン,アルギニン等のアミノ酸が挙げられ;溶解補助剤の例としては,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,D−マンニトール,安息香酸ベンジル,エタノール,トリスアミノメタン,コレステロール,トリエタノールアミン,炭酸ナトリウム,クエン酸ナトリウム,レシチンや,ポリソルベート80等の非イオン界面活性剤が挙げられ;懸濁化剤の例としては,ステアリルトリエタノールアミン,ラウリル硫酸ナトリウム,ラウリルアミノプロピオン酸,レシチン,モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤や,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,カルボキシメチルセルロースナトリウム,メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース等が挙げられ,安定化剤の例としては,アルブミン,グロブリン,ゼラチン,ソルビトール,エチレングルコール又はプロピレングリコール,アスコルビン酸等が挙げられる。
以下,実施例をして本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
〔trans−レスベラトロールを含有する培地でのHeLa細胞の培養〕
12ウェルプレートの各ウェルに2.0×105
個のHeLa細胞を播種し,5% FBS(Gibco),及び1% ABAM (antibiotic-antimycotic
mixture,Invitrogen)を含むDMEM(D-MEM High Glucose; Wako)を用いて,37℃,5% CO2存在下で一晩培養した。trans−レスベラトロール(Wako)を200mMの濃度でDMSOに溶解させ,200mM trans−レスベラトロール溶液とした。これをDMSOで2段階希釈して,10〜200 mMの濃度のレスベラトロール溶液を作成した。
培地を除去し,細胞をPBSで2回洗浄した後,5% FBS(Gibco)を含むDMEM培地(D-MEM
High Glucose, Wako)を各ウェルに1mLずつ加えた。次いで,10〜200mMの濃度のレスベラトロール溶液を,レスベラトロールの培養液中での終濃度が10〜200μMとなるように,1ウェル当たり1μL添加した。コントロールとして,DMSOを1ウェル当たり1μL添加したものを置いた。軽く振り混ぜた後,37℃,5% CO2存在下で細胞を24時間培養した。
〔trans−レスベラトロールを含有する培地での筋緊張性ジストロフィー患者由来の繊維芽細胞の培養〕
6ウェルゼラチンコートプレート(Iwaki)の各ウェルに2.0×105 個の筋緊張性ジストロフィー患者由来の繊維芽細胞(GM04691, Criell Cell Repositories)を播種した。この細胞は,I型の筋緊張性ジストロフィーに罹患した4才女児[白色人種]から採取された繊維芽細胞である。細胞を,10% FBS(Gibco),及び1% ABAM (antibiotic-antimycotic
mixture,Invitrogen)を含むDMEM(D-MEM High Glucose; Wako)を用いて,37℃,5% CO2存在下で70%コンフルエントとなるまで培養した。
培地を除去し,細胞をPBSで2回洗浄した後,5% FBS(Gibco)を含むDMEM培地(D-MEM
High Glucose, Wako)を各ウェルに1 mLずつ加えた。次いで,10〜100 mMの濃度のレスベラトロール溶液を,レスベラトロールの培養液中での終濃度が10〜100μMとなるように,1ウェル当たり1μL添加した。コントロールとして,DMSOを1ウェル当たり1μL添加したものを置いた。軽く振り混ぜた後,37℃,5% CO2存在下で細胞を24時間培養した。
〔インスリン受容体蛋白質をコードするmRNAのスプライシング解析〕
各ウェルから細胞を回収し,常法により全RNAを精製した。500 ngの全RNAを純水で6μLの容量となるように溶解し,これに20×random hexamer primersを2μL,2.5 mM dNTP mixを5μL添加し,65℃で5分間加熱した後,25℃で10分間静置した。次いで,M-MLV
RT(Invitrogen)を1μL,RNase out(Invitrogen)を1μL,0.1 M DTTを1μL,5×First strand Bufferを4μL添加し,37℃で55分間反応させた後,70℃で15分間加熱し,cDNAを合成した。
合成したcDNA 2μLに対し,10×Ex Taq Bufferを2μL,2.5 mM dNTP mixを1.62μL,10 pM プライマーIR C10F(配列番号1)溶液を1μL,10 pM プライマーIR C12R(配列番号2)溶液を1μL,Ex Taq ポリメラーゼを0.5 Unitを添加し,純水を加えて液量を20μLに調製した後,PCRに供し,インスリン受容体cDNAのエクソン10〜12にかけての領域を含むDNA断片を増幅した(図1)。PCRは,反応混合物を94℃で3分加熱後,(94℃30秒,60℃30秒,72℃90秒)の条件で28回反応させ,最後に72℃で3分加熱することにより行った。
増幅したDNA断片をAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent technology),DNA1000 LabChip kit(Agilent technology),及び解析ソフトとして2100 Expet(Agilent technology)を用いて解析し,増幅したDNA断片中に含まれるIR-A由来のDNA断片(IR-A型産物)とIR-B由来のDNA断片(IR-B型産物)との比率を算出した。
予め,通常に培養したHeLa細胞について,上記のインスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるスプライシング解析を行ったところ,エクソン11を欠くA型(IR-A)とエクソン11を有するB型(IR-B)の2種類のスプライシング変異体に由来するDNA断片がほぼ同等に増幅されることがわかった(図2レーン1)。この結果は,HeLa細胞がIR-AとIR-Bの2種のスプライシング変異体を発現していることを示す。なお,PCRにより増幅させた,IR-A型産物(129 bp,図1バンドA)及びIR-B型産物(165 bp,図1バンドB)については,それぞれDNAシークエンシングを行い,IR-A及びIR-B由来のDNA断片であることを確認した。IR-A型産物及びIR-B型産物の配列番号を,それぞれ配列番号3及び配列番号4で示した。
上記の通常に培養したHeLa細胞におけるIR-Aに対するIR-B型産物の比率は,DMSOを添加した培地で培養したHeLa細胞では変化しなかった(図2,レーン2)。一方,trans−レスベラトロールを100 μMの濃度で含有する培地で培養したHeLa細胞では,IR-A型産物に対するIR-B型産物の比率が増加した(図2,レーン3)。また,IR-B型産物の比率(B型スプライシング変異体発現比率)を[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])×100(%)で表わしたとき,IR-B型産物の比率は,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が0〜200 μMの範囲であるとき,その濃度に依存して増加した(図3)。培地がtrans−レスベラトロールを含まない場合,IR-B型産物の比率は約50%であったが,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が200 μMの場合,その比率は約75%となった(図3)。
次いで,筋緊張性ジストロフィー患者由来の繊維芽細胞について,上記のインスリン受容体蛋白質をコードするmRNAにおけるスプライシング解析を行った。IR-B型産物の比率を[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])×100(%)で表わしたとき,IR-B型産物の比率は,培地がtrans−レスベラトロールを含まない場合,約48%であった(図4)。IR-B型産物の比率は,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が0〜100
μMの範囲であるとき,その濃度に依存して増加し,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が100 μMの場合,その比率は約73%となった(図4)。
以上の結果は,trans−レスベラトロールが,筋緊張性ジストロフィー患者の細胞内におけるインスリン受容体mRNAのスプライシングに影響を与え,インスリンへの感受性の高いB型スプライシング変異体の発現比率を高めることを示すものであり,trans−レスベラトロールが,筋緊張性ジストロフィー,特に耐糖能異常又は糖尿病を伴う筋緊張性ジストロフィーの治療剤,取り分け,緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病を治療するための薬剤として使用できることを示している。
〔BIN1をコードするmRNAのスプライシング解析〕
各ウェルから細胞を回収し,常法により全RNAを精製した。500 ngの全RNAを純水で6μLの容量となるように溶解し,これに20×random
hexamer primersを2μL,2.5 mM dNTP mixを5μL添加し,65℃で5分間加熱した後,25℃で10分間静置した。次いで,M-MLV RT(Invitrogen)を1μL,RNase out(Invitrogen)を1μL,0.1 M DTTを1μL,5×First strand Bufferを4μL添加し,37℃で55分間反応させた後,70℃で15分間加熱し,cDNAを合成した。
合成したcDNA 2μLに対し,10×Ex Taq
Bufferを2μL,2.5 mM dNTP mixを1.62μL,10 pM プライマーBIN1exon10F(配列番号5)溶液を1μL,10 pM プライマーBIN1exon12R(配列番号6)溶液を1μL,Ex Taq ポリメラーゼを0.5 Unitを添加し,純水を加えて液量を20μLに調製した後,PCRに供し,BIN1 cDNAのエクソン10〜12にかけての領域を含むDNA断片を増幅した(図1)。PCRは,反応混合物を94℃で3分加熱後,(94℃30秒,60℃30秒,72℃90秒)の条件で28回反応させ,最後に72℃で3分加熱することにより行った。
増幅したDNA断片をAgilent
2100 Bioanalyzer(Agilent technology),DNA1000 LabChip kit(Agilent Technology),及び解析ソフトとして2100 Expet(Agilent Technology)を用いて解析し,増幅したBIN1 cDNA断片中に含まれるエクソン11を有するDNA断片(エクソン11型変異体産物)とエクソン11を欠くDNA断片(エクソン11型変異体産物)との比率を算出した。エクソン11型変異体の発現比率(エクソン11型変異体発現比率)を[エクソン11型産物]/([エクソン11型産物]+[エクソン11型産物])×100(%)で表わしたとき,エクソン11型変異体発現比率は,培地がtrans−レスベラトロールを含まない場合,約2%であった(図5)。エクソン11型変異体発現比率は,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が0〜200 μMの範囲であるとき,その濃度に依存して増加し,培地中のtrans−レスベラトロールの濃度が100 μMの場合,その比率は約4%,その2濃度が200 μMの場合,その比率は約14%となった(図5)。
以上の結果は,trans−レスベラトロールが,筋緊張性ジストロフィー患者の細胞内におけるBIN1をコードするmRNAのスプライシングに影響を与え,エクソン11を有する正常型のBIN1 mRNAであるエクソン11型変異体の発現比率を高めることを示すものであり,trans−レスベラトロールが,筋緊張性ジストロフィー患者における筋力低下を改善する効果を有することを示すものであり,筋緊張性ジストロフィーの治療剤として使用できることを示している。
本発明によれば,有効な治療薬のない筋緊張性ジストロフィーに対し筋力低下を改善・防止する治療剤を,また,特に耐糖能異常又は糖尿病を伴う筋緊張性ジストロフィーにおいて当該耐糖能異常又は糖尿病に対する治療剤を提供することができる。

Claims (11)

  1. 次の一般式(I),

    〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩を有効成分として含有する,筋緊張性ジストロフィー治療剤。
  2. 一般式(I)においてm+nが3又は4である,請求項1の筋緊張性ジストロフィー治療剤。
  3. 一般式(I)においてm+nが3である,請求項1の筋緊張性ジストロフィー治療剤。
  4. 該trans−スチルベン誘導体が,次式(II),

    で示されるtrans−レスベラトロールである,請求項1の筋緊張性ジストロフィーの治療剤。
  5. 該筋緊張性ジストロフィーが,耐糖能異常又は糖尿病を伴うものである,請求項1〜4の何れかの筋緊張性ジストロフィー治療剤。
  6. 該耐糖能異常又は糖尿病が,インスリン受容体蛋白質の発現におけるB型スプライシング変異体の比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,請求項5の治療剤。
  7. 次の一般式(I),

    〔式中,Aはヒドロキシル基を表し,mとnは互いに独立して1〜3の整数であり,ヒドロキシル基の個数を表す。〕で示されるtrans−スチルベン誘導体又はその塩を有効成分として含有する,筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
  8. 一般式(I)においてm+nが3又は4である,請求項7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
  9. 一般式(I)においてm+nが3である,請求項7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
  10. 該trans−スチルベン誘導体が,式(II),

    で示されるtrans−レスベラトロールである,請求項7の筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
  11. 該筋緊張性ジストロフィーがインスリン受容体蛋白質の発現におけるB型スプライシング変異体の比率[IR-B]/([IR-A]+[IR-B])の低下を伴うものである,請求項7〜10の何れかの筋緊張性ジストロフィーに随伴する耐糖能異常又は糖尿病の治療剤。
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