JPWO2013146267A1 - 対物レンズ及び光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換が可能な単玉対物レンズにおいて、基板厚が厚いCD使用時においてもワーキングディスタンスを確保しつつ、且つBD、DVDの使用時にも適切なスポット径を形成することにより、安定した情報の記録/再生を行うことができる、コンパクトな光ピックアップ装置に好適な対物レンズ、及びこの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置を提供する。式(1)、式(3)を満たすように設計することで、BD、DVDにおけるスポット径の増大を防いでいる。1.0≦f1≦2.2 (1)0.66≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.75 (3)但し、f1:第1光束における対物レンズの焦点距離φ2:対物レンズの中間領域の外径m2:第2光束における対物レンズの結像倍率

Description

本発明は、異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生(記録/再生)を行える光ピックアップ装置、対物レンズ及び光情報記録再生装置に関する。
近年、光ピックアップ装置において、光ディスクに記録された情報の再生や、光ディスクへの情報の記録のための光源として使用されるレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザ等、波長390〜420nmのレーザ光源が実用化されている。これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物レンズを使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物光学素子のNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。
上述のようなNA0.85の対物レンズを使用する光ディスクの例として、BD(ブルーレイディスク)が挙げられる。光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、BDでは、DVD における場合よりも保護基板を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減している。
ところで、BDに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDやCD(コンパクトディスク)が販売されている現実をふまえると、BDに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDやCDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを、情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物レンズを共通化することが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、記録/再生波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物レンズを得るためには、球面収差の波長依存性を有する回折構造等の光路差付与構造を対物レンズに形成する必要がある。
また、BD、DVD、CDの3種類の光ディスクに共通して用いられる対物レンズは、BD、DVD、CDの必要開口数の違いに対応できるようにする必要がある。例えば、必要開口数の大きなBDにおいては、対物レンズの有効光学面のほぼ全領域を通過した光束をBDの情報記録面上に集光させ、一方で、必要開口数の小さなCDにおいては、対物レンズの中央付近の領域を通過した光束をCDの情報記録面に集光させるが、その外側の領域を通過した光束はCDの情報記録面に集光させないようにフレアとして飛ばす必要がある。従って、BD、DVD、CDの3種類の光ディスクに共通して用いられる対物レンズは図1に示すように、その光学面を同心円状の3つの領域(BD、DVD、CD用の光束を集光する中央領域CN、BDとDVD用の光束を集光する中間領域MD、BD用の光束を集光する周辺領域OT)に分割され、それぞれの領域において異なる光学性能の挙動を示すようにする必要が出てくる。また、異なる光学性能の挙動を示させるために、領域ごとに、異なる回折次数を発生させる異なる構造を持たせたレンズなどが考えられていた。
特許文献1には、回折構造である2つの基礎構造を重畳してなる光路差付与構造を有し、3種類の光ディスクに対して共通に使用可能な対物レンズ、及びこの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置が記載されている。
国際公開第2010/128653号
ところで、BDやDVDに対して情報の記録/再生を行える光ピックアップ装置において、ノート型PCや薄形テレビの背面等に搭載され得る、いわゆる比較的薄めの光ピックアップ装置が求められている。そのような光ピックアップ装置では、対物レンズの焦点距離を縮小してコンパクト化を図る必要がある。
ここで、特許文献1に開示された実施例では、BD使用時の焦点距離f1が2.2mmという設計となっている。しかし、焦点距離が2.2mmと比較的短くなってしまっているため、CD使用時のワーキングディスタンスが短くなり、回転する光ディスクに反りなどがあった場合、対物レンズとの衝突を招く恐れがある。特許文献1の上記実施例においては、中央領域における光路差付与構造のピッチ(光軸直交方向の幅)を小さくすることにより、言い換えると輪帯数を増やすことにより、回折の近軸パワーを増大させて、その問題を回避していることが窺える。特に、輪帯構造がブレーズ構造であるため輪対数の増加は顕著なものとなっている。尚、ワーキングディスタンスとは、光ディスクの表面から対物レンズの最も光ディスク側の位置までの光軸方向の距離をいう。
ところが、特許文献1の実施例に従いBD/DVD/CDの互換対物レンズを設計したところ、DVDに集光させる光学面上の領域径をDVDの専用レンズの場合と等しくしているにもかかわらず、波長λ2の光束をDVDの情報記録面に集光させた際のスポット径が大きくなってしまい、適切に情報の記録及び/又は再生ができない恐れがあることがわかった。
本発明者が上記問題について鋭意研究したところ、以下に示す2つの原因を突き止めた。まず、一つ目の原因はリム強度の低下である。CD使用時にワーキングディスタンスを確保するために、中央領域の光路差付与構造のピッチを小さくした結果、中央領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離も長くなってしまうため、それに合わせて中間領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離も長くする必要がある。そのためには、中間領域の光路差付与構造のピッチを小さくすることで、中間領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離が長くなるようにしなければならない。つまりは中間領域も中央領域も回折の近軸パワーを大きくする必要がある。また、回折によりBDとDVDの互換を行うため互換のための回折パワーが必要となること、2つの基礎構造を重畳させていること、等の理由から、ある領域内においては周辺ほど輪帯数が増加する。その結果、中間領域の周辺領域近傍における輪帯数が非常に多くなり、DVD使用時の光束の最大有効径付近となる中間領域の周辺領域近傍における光の透過率が光軸近傍における透過率よりも小さくなってしまい、リム強度が低下するため、DVD使用時のスポット径が拡大してしまう。
また、二つ目の原因は正弦条件の問題である。BD/DVD/CDの互換対物レンズである一方で、光学面が2面しかないために、全ての光ディスクにおいて正弦条件を満足させることができない。より厳しい精度を求められるBD使用時の正弦条件を優先して満足させなければならないため、DVD使用時の正弦条件が正側に崩れ、結果としてDVD使用時のスポット径が拡大してしまう。
さらに、DVDだけでなくBD使用時にも問題があることに気付いた。非点収差なく且つ、偏芯コマ収差をできるだけ小さくしてBDにおける記録及び/又は再生を可能とするために、波長λ1使用時の対物レンズにおける有効径付近では対物レンズの見込み角が大きくなってしまい、金型を削るバイトが光路差付与構造を設計通りに切削することが困難となり、加工精度が低下してしまう。加えて、対物レンズの見込み角が大きいため光学面への光の入射角が大きくなることに伴う反射率向上が生じる。これらにより、波長λ1使用時の有効径近傍、即ち周辺領域内の外径近傍においてはリム強度の低下を招き、集光スポットへの透過光量の低下が起きるため、アポダイゼーションの逆の現象が発生し、BD使用時においてもスポット径の増大が発生する恐れがあることが判明した。
本発明は、DVD及びBD使用時にスポット径が大きくなる上述の3つの問題を一気に解決することを目的としたものであり、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うことを可能としつつ、基板厚が厚いCD使用時においてもワーキングディスタンスを確保し、さらに、BD、DVDの使用時に適切なスポット径を形成することによる安定した情報の記録/再生を行うことが可能であり、コンパクトな光ピックアップ装置に好適な対物レンズ、及びこの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の対物レンズは、第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、
前記対物レンズは単玉レンズであり、
前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの中間領域と、前記中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、
前記中間領域は第2光路差付与構造を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物レンズは、前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記対物レンズは、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記第2基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記第2光路差付与構造は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
前記第3基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記第4基礎構造はブレーズ型構造であり、
前記対物レンズの前記第1光束における焦点距離をf1が
1.0≦f1≦2.2 (1)
であり、
前記第2光束における、前記対物レンズの光軸中心近傍に対する前記中間領域の前記周辺領域近傍における瞳透過率の比率r2が、
r2≦0.9 (2)
であり、
前記中間領域の外径をφ2、前記対物レンズの前記第2光束における結像倍率をm2とした場合に、
0.66≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.75 (3)
を満たすことを特徴としている。
請求項1に記載の対物レンズによれば、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換使用を共通の対物レンズで行うことができる。また、第1及び第2光路差付与構造がブレーズ型の基礎構造を2種類重畳してなるため、単一の構造で光路差付与構造を形成する場合に比して、設計の自由度が2倍になり、互換を達成しつつ、3つのディスクに対して自由に倍率を決めることが可能となる。さらに焦点距離が式(1)の範囲内であるため、厚さが薄い光ピックアップ装置にも好適に搭載できる。その一方で、焦点距離が比較的短い式(1)を満たしているため、ワーキングディスタンスを確保する関係上、中央領域の光路差付与構造の輪帯数が多くなってしまう。それにより、中央領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離が長くなってしまうため、中間領域の光路差付与構造の輪帯数を多くすることで中間領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離も長くしなければならない。その結果、中間領域の周辺領域近傍において、中間領域の光路差付与構造の輪帯数が非常に多くなってしまい、後述する影の効果の影響や成形誤差が大きくなり、光軸中心近傍に対する中間領域の周辺領域近傍における瞳透過率の比率r2が、第2光束において、式(2)の範囲となってしまう。なお、光軸中心近傍における「近傍」とは、光軸から光軸垂直方向に対して、BD使用時の有効径の10%の範囲を言う。また、中間領域の周辺領域近傍とは中間領域と周辺領域の境界から、周辺領域方向に対して、BD使用時の有効径の10%の範囲を言う。
ここで、影の効果について本発明者の研究により判明したことを以下に詳述する。図2は、一例としてブレーズ形状の光路差付与構造を設けた対物レンズの断面図の一部を示す図である。図2において、対物レンズの光学面S上には、非球面に沿って鋸歯状の輪帯Rが同心円状に形成されている。ここで、一つの輪帯Rに入射する光束を考えたとき、鋸歯の根本側に入射する光束LB1は、輪帯Rを通過することで、設計に基づく挙動を示し、対物レンズ内を進行するが、鋸歯の先端側に入射する光束LB2(ハッチングで示す)は、輪帯Rに入射した後、その内側側面(段差面)SPで外方に反射させられてしまうという、いわゆる「影の効果」が生じる。かかる影の効果により、光束LB2は、光ディスクの情報記録面に集光されず、その分、光の利用効率の低下を招くこととなる。影の効果は、対物レンズが高NAである場合、特に影響が顕著になる。加えて、成形技術上の問題から、鋸歯状の輪帯の先端や根元の近傍の形状は、設計形状に対し成形誤差が生じやすく、これにより散乱光を増加させてしまうため、光の利用効率の低下を招く。つまり、光路差付与構造の輪帯数を増大させると、集光に寄与しない光の領域が増加するため、それに応じて光の利用効率が低下することとなる。特に、対物レンズを小型化する際などには、CD使用時のワーキングディスタンスを確保するために、つまり回折の近軸パワーを強くするために、輪帯数が増加してしまい、この問題が顕著に表れる。
本発明の対物レンズは、中央領域と中間領域において、少なくとも二つの基礎構造が重畳しており、且つ式(1)を満たすことに起因して、中間領域の周辺領域近傍では特に輪帯数が多くなる。即ち、影の効果や成形誤差の影響が大きく、中間領域の周辺領域近傍における光の透過光量が光軸近傍における透過光量よりも小さくなってしまう。その結果、DVD使用時においてアポダイゼーションの逆の現象が発生してしまい、DVD使用時のスポット径が拡大してしまう。加えて、BD/DVD/CDの互換対物レンズであるため、正弦条件の関係からDVD使用時の正弦条件が正に崩れ、結果としてDVD使用時のスポット径がより一層拡大してしまう。しかし、式(3)の下限以上の値を満たすことにより、対物レンズのDVD使用時における第2光束の有効径が大きくなる、即ちNAが大きくなり、DVD使用時のスポット径が小さく絞られるため、DVD使用時におけるアポダイゼーションの逆の現象や正弦条件に起因するスポット径の拡大を抑制することが可能となる。特にBD/DVD/CDの3種類の光ディスクの再生専用の互換レンズに好ましく用いることができる。さらに、式(3)の上限以下の値を満たすことによりDVD使用時のスポット径が必要以上に小さく絞られ過ぎることがない。
また、波長λ1使用時の対物レンズにおける有効径付近においては対物レンズの見込み角が大きくなることから、加工精度の低下や光学面への光の入射角が大きくなることに伴う反射率向上が生じる。結果としてリム強度の低下を招き、BD使用時においてもスポット径が拡大してしまうという問題も発生するが、本発明の対物レンズは、式(3)の下限以上の値を満たすことにより、BD使用時には光軸近傍と比して相対的に透過光量が少ない中間領域が広がるため、アポダイゼーション効果を生じ、BDのスポット径が小さく絞られる。
請求項2に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明であって、前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した前記第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した前記第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した前記第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した前記第1光束のA次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した前記第2光束のB次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した前記第1光束のD次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した前記第2光束のE次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記X、Y、Z、L、M、N、A、B、D及びEは整数であり、以下の式を満たすことを特徴としている。
X=A (4)
Y=B (5)
L=D (6)
M=E (7)
請求項2に記載の対物レンズによれば、第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させ、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数を一致させているため、基準状態だけでなく温度や波長変化時においても、中央領域と中間領域の境界で光路差関数がほぼ連続となり、高次収差の発生を抑えることができる。即ち、式(4)〜(7)を満たすことにより環境変動に対して高次収差の発生を抑えることができる。また、式(4)〜(7)を満たすことにより、中央領域と比して、より一層中間領域、特に中間領域の周辺領域近傍では輪帯数が増加するため、本発明の課題は大きくなるが、そのような大きな課題も式(3)を満たすことで解決できる。
請求項3に記載の対物レンズは、請求項1または2に記載の発明であって、前記X及びAは奇数であり、前記L及びDは偶数であることを特徴としている。
X及びAが奇数のため、第1基礎構造により波長λ1の第1光束に付与される回折パワーと、波長λ1の約2倍の波長である波長λ3の第3光束に付与される回折パワーが異なり、BDとCDとで生じる相対的な球面収差の補正が良好に行うことができる。また、L及びDが偶数のため、第2基礎構造により残るBDとDVDとで生じる相対的な球面収差の補正が良好に行うことができる。また、第1〜第3光束の全てにおいて高い回折効率を得ることができる。X、A、L、Dは影の効果の抑制や、波長変動時の回折効率の変動抑制や製造容易性等の観点から低次であることが好ましい。
請求項4に記載の対物レンズは、請求項3に記載の発明であって、前記X、Y、Z、L、M、N、A、B、D、Eはそれぞれ
|X|=|A|=1
|Y|=|B|=1
|Z|=1
|L|=|D|=2
|M|=|E|=1
|N|=1
を満たすことを特徴としている。
X、Y、Z、L、M、N、A、B、D、Eの値が全て低次であるため、第1〜4基礎構造の段差量がそれぞれ大きくなり過ぎないため、金型加工においても樹脂成形においても製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、影の効果を抑制し高い光利用効率を確保でき、且つ波長や温度変化時の回折効率変動も低減することができる。また、互換を行う基礎構造として、(1/1/1)構造(第1光束、第2光束、及び第3光束のいずれにおいても、1次回折光を最も多く発生)を第1及び第3基礎構造とし、(2/1/1)構造(第1光束において2次回折光を最も多く発生し、第2光束及び第3光束においては、1次回折光を最も多く発生)を第2及び第4の基礎構造としているため、BD、DVD、CDのいずれにおいても対物レンズの倍率を0またはほぼ0としつつ3波長全てにおいて高い回折効率を得ることができる。
請求項5に記載の対物レンズは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明であって、以下の式を満たすことを特徴としている。
1.0≦f1≦2.0 (1)´
BD使用時の焦点距離f1が式(1)´の範囲内であると、より一層中間領域、特に中間領域の周辺領域近傍のピッチが小さくなるため、本発明の課題は大きくなるが、そのような大きな課題も式(3)を満たすことで解決できる。
請求項6に記載の対物レンズは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明であって、前記第3光束を用いて前記CDの情報の記録及び/又は再生を行う際のワーキングディスタンスをWD3(mm)とした場合に、以下の式を満たすことを特徴としている。
WD3≧0.25 (8)
CD使用時のワーキングディスタンスを式(8)を満たすようするためには光路差付与構造のピッチをさらに小さくし、輪帯数を増大させることなどにより近軸回折パワーを増大させる必要があるが、その結果、より一層強くリム強度が低下してしまう。しかし、式(3)を満たすことにより、式(8)の条件下においても、安定した情報の記録及び/又は再生を行うこと、且つ3種類の光ディスクの互換が可能な対物レンズを得ることができる。
請求項7に記載の対物レンズは、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明であって、以下の式を満たすことを特徴としている。
0.68≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.73 (9)
対物レンズが小型化すればするほど、基礎構造のピッチが小さくなってしまうが、式(9)の範囲内であれば、そのような対物レンズにおいてもBD・DVDの記録再生に適切なスポット径を得ることができる。
請求項8に記載の対物レンズは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明であって、前記対物レンズの光軸上の厚さをd(mm)とした場合に、以下の式を満たすことを特徴としている。
1.0≦d/f1≦1.5 (10)
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、上記構成により非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
また、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになると、CDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるため、式(10)の上限の値を超えないことが好ましい。さらに、式(10)の下限を超えないことにより、非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
請求項9に記載の対物レンズは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発明であって、
少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、
少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴としている。
これによって、第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造において、光軸方向の段差量をさらに低減でき、それにより影の効果の抑制や波長変動時の回折効率の低下のさらなる抑制が可能となる。
請求項10に記載の対物レンズは、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発明であって、前記対物レンズの前記第2光束における焦点距離をf2とした場合に、
0.61≦φ2/(2・f2・(1−m2))≦0.65 (11)
を満たすことを特徴としている。
請求項11に記載の対物レンズは、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発明であって、前記第1基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
前記第2基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
前記第3基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
前記第4基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いていることを特徴としている。
第1〜4基礎構造が、それぞれ独立して同じ方向を向いているため、CD使用時のワーキングディスタンスがよりとりやすくなる。
請求項12に記載の対物レンズは、請求項1〜11のいずれか一項に記載の発明であって、 前記中間領域の総輪帯数をN2とした場合に、以下の式を満たすことを特徴としている。
110(mm)≦N2・f1≦300(mm) (12)
式(12)の下限以上とすることで、CDのワーキングディスタンスを確保でき、光ディスクと干渉して傷をつける可能性を低減できる。一方、式(12)の値を上限以下とすることで、ピッチが小さくなりすぎることを防止できるため、影の効果の抑制ができ、また加工性の低下を防ぎ形状誤差を低減でき、結果として回折効率の低下を防止できる。
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の対物レンズを有することを特徴としている。
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、請求項13に記載の光ピックアップ装置であって、少なくとも前記第1光束と前記第2光束が通過するカップリングレンズと、前記カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有し、
前記第1光束が通過するときは、前記アクチュエータ―によって前記カップリングレンズが光軸方向に変位可能とされており、
前記第2光束が通過するときには、前記カップリングレンズは、光軸方向の位置を固定されていることを特徴としている。
例えば、複数の情報記録層を有するBDに対応するために、BDの使用時には、カップリングレンズを光軸方向に変位して、各情報記録層への記録/再生に対応させることが考えられる。そのような場合、既にカップリングレンズを光軸方向に変位させる機能は必須であるが、DVD使用時においては、カップリングレンズを光軸方向に変位させず、固定させておきたい、という場合がある。その理由としては、BD使用時には、フレアが発生しないが、DVD使用時には、フレアが発生するため、カップリングレンズを変異させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、ドライブによるカップリングレンズ変位の制御を単純化したいという理由などが挙げられる。そのような課題に対して、本発明の対物レンズを用いてDVD使用時の温度特性と波長特性を共に良好にすることで、結果として、DVD使用時に、第2光束が通過するときにカップリングレンズを光軸方向の位置を固定した状態でも、DVDの情報記録面に対して情報の記録/再生を行うことができるようになり、上述の課題を解決することができた。
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束をBDの情報記録面上に集光させ、第2光束をDVDの情報記録面上に集光させ、第3光束をCDの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、BD、DVD又はCDの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
BDは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。DVDは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。CDは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。なお、BD、DVD又はCDは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
本明細書において、BDとは、波長390〜415nmの光束、設計上のNAが0.80〜0.90の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.02〜0.125mmであるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、波長630〜670nmの光束、設計上のNAが0.550〜0.70の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、波長760〜820nmの光束、設計上のNAが0.40〜0.55の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(13)、(14)、(15)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (13)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (14)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (15)
本明細書において、第1光源、第2光源、第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(16)、(17) を満たすことが好ましい。
1.5・λ1 < λ2 < 1.7・λ1 (16)
1.8・λ1 < λ3 < 2.0・λ1 (17)
第1光源の第1波長λ1は390nm以上415nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は630nm以上670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は760nm以上820nm以下である。
また、第1光源、第2光源、第3光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいう。もちろん、第1光源、第2光源及び第3光源を全て1パッケージに固定収納するようにしてもよい。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録及び/または再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録/再生面上に集光する機能を有する単玉レンズを指す。また、本発明の単玉対物レンズは、プラスチックレンズであることが好ましい。好ましくは、凸レンズである。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
また、対物レンズを構成するプラスチック材料として、環状オレフィン系の樹脂材料等の脂環式炭化水素系重合体材料を使用することが好ましい。また、当該樹脂材料は、波長405nmに対する温度25℃ での屈折率が1.50〜1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃-1) が−20×10-5〜−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5〜−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物レンズがプラスチックレンズである場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
脂環式炭化水素系重合体の好ましい例を幾つか、以下に示す。
第1の好ましい例は、下記式(I)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(I)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(II)で表される繰り返し単位〔2〕及び/または下記式(III)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有し、前記ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであるブロック共重合体からなる樹脂組成物である。
(式中、R1 は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
(式中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(式中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
次に、第2の好ましい例は、少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(IV)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(A)と、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(V)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(B)とを含む樹脂組成物である。
〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
〔式中、R19〜R26はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。〕
樹脂材料に更なる性能を付加するために、以下のような添加剤を添加してもよい。
(安定剤)
フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれた少なくとも1種の安定剤を添加することが好ましい。これらの安定剤を適宜選択し添加することで、例えば、405nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ)−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
これらの各安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部であることが好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止することが可能となる。
界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
このような界面活性剤としては、より具体的には、例えば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑え、成形物の光透過率を高く維持するという観点から、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加されることが好ましい。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.3〜3質量部とすることが更に好ましい。
(可塑剤)
可塑剤は共重合体のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、共重合体の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
これらの樹脂としては、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、35以上80以下であることが好ましく、より好ましくは50以上80以下である。
対物レンズについて、以下に記載する。本発明の対物レンズは単玉レンズであり、対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図1に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、対物レンズの中央領域には第一光路差付与構造が設けられ、中間領域には第二光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
対物レンズの中央領域は、BD、DVD及びCDの記録/再生に用いられるBD/DVD/CD共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とDVDの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とCDの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
対物レンズの中間領域は、BD、DVDの記録/再生に用いられ、CDの記録/再生に用いられないBD/DVD共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、CDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図3に示すように、対物レンズを通過した第3光束がCDの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、CDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
対物レンズの周辺領域は、BDの記録/再生に用いられ、DVD及びCDの記録/再生に用いられないBD専用領域と言える。即ち、対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
第1光路差付与構造は、対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、光軸から離れる程、段差量が大きくなる。
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、光軸から離れる程、段差量が大きくなる。
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造の基礎構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
ブレーズ型構造とは、図4(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。鋸歯状という表現ではあるが、鋸歯の頂点部分が丸みを帯びているような形状も鋸歯状に含める。なお、図4の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図4(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図4(a)参照)
また、階段型構造とは、図4(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。なお、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。例えば、図4(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図4(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。2レベルの階段型構造について説明する。光軸を中心とした同心円状の複数の輪帯を含み、対物レンズの光軸を含む複数の輪帯の断面の形状は、光軸に平行に延在する複数の段差面Pa、Pbと、隣接する段差面Pa、Pbの光源側端同士を連結する光源側テラス面Pcと、隣接する段差面Pa、Pbの光ディスク側端同士を連結する光ディスク側テラス面Pdとから形成され、光源側テラス面Pcと光ディスク側テラス面Pdとは、光軸に交差する方向に沿って交互に配置される。また、階段型構造において、1つの階段単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという(図4(c)、(d)参照)。また、階段の光軸に平行方向の段差の長さを段差量B1,B2という。3レベル以上の階段型構造の場合、大段差量B1と小段差量B2とが存在することになる(図4(c)参照)。
なお、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
光路差付与構造が、ブレーズ型構造を有する場合、単位形状である鋸歯状の形状が繰り返された形状となる。図4(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図4(b)に示されるように、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状のピッチが長くなっていく形状、又は、ピッチが短くなっていく形状であってもよい。加えて、ある領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。なお、このようにブレーズ型構造の段差の向きを途中で切り替える構造にする場合、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の製造誤差による透過率低下を抑制できる。
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。光路差付与構造を有効径の大きい面に設けた場合、例えば基礎構造の最小輪帯幅をより広く設計することができ、輪帯の段差部分による光量損失を抑えることができるメリットがある。また、対物レンズがレンズクリーナーを用いて擦られた場合に輪帯構造が摩耗しない、などのメリットがある。尚、第1基礎構造と第2基礎構造を重畳せずに、それぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。第3基礎構造と第4基礎構造も、同様に重畳せずにそれぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。
次に、中央領域に設けられる第1光路差付与構造について説明する。第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造を重ね合わせた構造である。第1光路差付与構造は、第1基礎構造と第2基礎構造のみを重ね合わせた構造であることが好ましい。光路差付与構造がブレーズ型の基礎構造を2種類重畳してなるため、単一の構造で光路差付与構造を形成する場合に比して、設計の自由度が2倍になり、互換を達成しつつ、3つのディスクに対して自由に倍率を決めることが可能となる。
第1基礎構造は、ブレーズ型構造である。また、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。これを(X/Y/Z)構造と呼ぶ。このとき、X、Y、Zはそれぞれ整数である。Xは奇数であることが好ましい。Xが奇数であることにより、BDとCDとで異なる近軸パワーを付与できるため、BDとCDとで生じる相対的な球面収差の補正が良好に行える。さらに好ましいXの値は絶対値が5以下の奇数であることであり、最も好ましくは絶対値が1であることである。低次である1次回折光が発生するようにすると、第1基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。また、好ましいY及びZの値としては絶対値が1であることである。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸とは逆の方向を向いている」とは、図5(b)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1基礎構造とは、(X/Y/Z)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。中央領域に存在する第1基礎構造の全段差のうち、少なくとも5割以上が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましく、より好ましくは7割以上、さらに好ましくは9割以上の段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第1基礎構造の段差が光軸の方向を向いていてもよい。即ち、図6(b)に示すように、第1基礎構造が光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、中間領域付近では第1基礎構造の段差が光軸の方を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第1基礎構造の全ての段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
このように、第1光束における回折次数がX次となる第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスをより一層確保することが可能となる。
BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保するという観点からは、第1基礎構造が第1光束に対して近軸パワーを持つことが好ましい。ここで、「近軸パワーを持つ」とは、第1基礎構造の光路差関数を後述する数2式で表した場合、C22が0でないことを意味する。
第2基礎構造も、ブレーズ型構造である。また、第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。これを(L/M/N)構造と呼ぶ。このとき、L、M、Nはそれぞれ整数である。Lは偶数であることが好ましい。Lが偶数であることにより、第1〜第3光束の全てにおいて高い回折効率を得ることができる。さらに好ましいLの値は絶対値が4以下の偶数であることであり、最も好ましくは絶対値が2であることである。低次である2次回折光が発生するようにすると、第2基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。また、好ましいM及びNの値としては絶対値が1であることである。
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸の方向を向いている」とは、図5(a)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第2基礎構造とは、(L/M/N)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。中央領域に存在する第2基礎構造の全段差のうち、少なくとも5割以上が光軸の方向を向いていることが好ましく、より好ましくは7割以上、さらに好ましくは9割以上の段差が光軸の方向を向いていることである。
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第2基礎構造は、段差が光軸とは逆の方向を向いていてもよい。即ち、図6(a)に示すように、第2基礎構造が光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、中間領域付近では第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第2基礎構造は、全ての段差が光軸の方向を向いていることである。
(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造にすると、段差の高さを非常に低くできる。従って、より製造誤差を低減させることが可能となり、光量ロスを更に抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動をより抑えることが可能となる。
さらに、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸とは逆の方向を向いている第1基礎構造と、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸の方向を向いている第2基礎構造を重ね合わせることにより、第1基礎構造と第2基礎構造の段差の向きが同じになるように重ね合わせた場合に比べて、重ね合わせた後の段差の高さが高くなることをより一層抑制でき、それに伴い、影の効果の抑制や、製造誤差などに因る光量ロスをより抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動もより抑えることが可能となる。
また、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、BD/DVD/CDの3種類の何れの光ディスクに対しても、高い光利用効率を維持できる光利用効率のバランスが取れた対物レンズを提供することが好ましい。例えば、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を60%以上、波長λ3に対する回折効率を50%以上とする対物レンズを提供することが好ましい。更には、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を70%以上、波長λ3に対する回折効率を60%以上とする対物レンズも提供することがより好ましい。加えて、第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、波長が長波長側に変動した際に収差をアンダー(補正不足)の方向に変化させることがより容易に行える。
段差が光軸とは逆を向いている第1基礎構造と段差が光軸の方を向いている第2基礎構造とを重ね合わせた後の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造を以下のように表現することができる。少なくとも中央領域の光軸付近に設けられている第1光路差付与構造は、光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸の方向を向いている段差とを共に有し、光軸とは逆の方向を向いている段差の段差量d11と、光軸の方向を向いている段差の段差量d12とが、以下の条件式(18)、(19)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(18)、(19)を満たすことである。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。下記条件式において上限に1.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。但し、nは、第1の波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (18)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(2λ1/(n−1)) (19)
尚、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1光路差付与構造とは、少なくとも光軸に最も近い光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸に最も近い光軸の方向を向いている段差とを共に有する光路差付与構造をいう。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する段差を有する光路差付与構造である。
また、λ1は390〜415nm(0.390〜0.415μm)であるので、nが1.50〜1.60である場合には、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (20)
0.39μm<d12<2.31μm (21)
更に、第1基礎構造と第2基礎構造の重ね合わせ方としては、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせるように基礎構造の形状を微調整するか、第1基礎構造の全ての段差の位置と、第2基礎構造の段差の位置を合わせるように基礎構造の形状を微調整することが好ましい。
上述のように第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせた場合、第1光路差付与構造のd11、d12は以下の条件式(18)´、(19)´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(18)´、(19)´を満たすことである。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (18)´
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (19)´
また、λ1は390〜415nm(0.390〜0.415μm)であるので、nが1.50〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.39μm<d11<1.15μm (20)´
0.39μm<d12<1.15μm (21)´
更に好ましくは、以下の条件式(18)´´、(19)´´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(18)´´、(19)´´を満たすことである。
0.9・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (18)´´
0.9・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (19)´´
また、λ1は390〜415nm(0.390〜0.415μm)であるので、nが1.50〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
0.59μm<d11<1.15μm (20)´´
0.59μm<d12<1.15μm (21)´´
また、(X/Y/Z)構造である第1基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化し、(L/M/N)構造である第2基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化すると好ましい。このような構成により、光ピックアップ装置の温度の上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の変化を補正して、適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。これにより、対物レンズがプラスチック製であっても、温度変化時においても安定した性能を維持できる対物レンズを提供することができる。
第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の近軸パワーが大きいことが好ましい。つまりは、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチに比べて小さいことが好ましい。これにより、BD/DVD/CD互換用対物レンズという軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCDにおけるワーキングディスタンスを確保できる。更に、色収差を小さくし、光源が高周波重畳を起こしていても、良好な光スポットを形成させ、しかも、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させるためには、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。尚、この場合、第2基礎構造の光軸に最も近い「輪帯」と記載しているが、実際は、光軸を含む「円」であることが通常である。従って、ここで言う「光軸に最も近い輪帯」には、円状の形状も含まれる。また、中間領域に最も近い第2基礎構造の1つの輪帯において、第2基礎構造の輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が1〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることも好ましい。中央領域の第2基礎構造に対する第1基礎構造の総輪帯数の割合は1.0以上〜5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上3.0以下であることである。
尚、図7(d)に示すように、第1基礎構造と第2基礎構造とをそのまま重畳すると、点線で示すように一部が突出する場合があるが、突出部分の幅が5μm以下と狭ければ、突出した部分を光軸に沿って平行にシフトして、突出部分をなくしても大きな影響がなく、これにより第2基礎構造の1つの輪帯に、第1基礎構造の複数の輪帯が丁度のるようになる(実線参照)。よって、図7(d)の例では、第2基礎構造の1つの輪帯上に、3つの第1基礎構造の輪帯がのっているものとして扱う。第1基礎構造と第2基礎構造をそのまま重畳した場合に、幅が5μm以下と狭い凹みが発生する場合も同様にして凹みをなくしてもよい。
ここで、Δλ1(nm)は第1波長の変化量、ΔWD(μm)は第1波長の変化Δλに起因して発生する対物レンズの色収差とすると、以下の式を満たすと好ましい。
0.3(μm/nm)≦ΔWD/Δλ1≦0.6(μm/nm) (22)
尚、ここでいう「色収差」とは、光束の波長が変化した際に生じるフォーカス位置のずれである。即ち、光束の波長が変化した際に生じる「波面収差が最良となる位置」のずれである。
このような構成とするためには、上述したように、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれるようにすることが好ましい。色収差を上述の範囲にすることによって、BD/DVD/CD互換用対物レンズという軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCDにおけるワーキングディスタンスを確保しながら、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させることができ、さらにDVD使用時の温度特性及び波長特性を良好にできるため好ましい。また、第2基礎構造における中間領域に最も近い1つの輪帯上に重畳された第1基礎構造の輪帯の数は、第2基礎構造の輪帯一つ分にたいして、と1〜5個重畳されていることが好ましい。さらには、中央領域の第2基礎構造に対する第1基礎構造の総輪帯数の割合は1.0以上〜5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上3.0以下であることである。
第1基礎構造は正の回折パワーを持つことが好ましく、それによりBD/DVD/CD用の対物レンズといった軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCD使用時のワーキングディスタンスを確保できる。また、第2基礎構造は負の回折パワーを持つことが好ましい。このように第1基礎構造と第2基礎構造が共に回折パワーを持つことにより、複数の情報記録面を有する光ディスクを使用した際に、記録再生対象でない情報記録面で反射した不要光を必要光からより遠ざけることが可能となるため好ましい。
また、第1光路差付与構造の最小ピッチは15μm以下であることが好ましい。当該観点からは、第1光路差付与構造の最小ピッチpと第1波長λ1における焦点距離f1の比p/f1が0.004以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下である。また、第1光路差付与構造の平均ピッチが30μm以下となることが好ましい。より好ましくは20μm以下とすることである。この様な構成にすることにより、上記のように丁度よいレベルのアンダーの波長特性を得ることが可能となると共に、第1光路差付与構造を通過した第3光束において発生する、第3光ディスクの情報の記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置と、第3光ディスクの情報の記録/再生に用いられない不要光のベストフォーカス位置を離すことができ、誤検出を低減することも可能となる。尚、平均ピッチとは、中央領域の第1光路差付与構造の全てのピッチを合計し、中央領域の第1光路差付与構造の段差数で割った値である。
ここで、本発明の対物レンズは、軸上色収差が0.9μm/nm以下であることが好ましい。更に、好ましくは、軸上色収差を0.8μm/nm以下とすることである。第1基礎構造のピッチを小さくしすぎると、軸上色収差が悪化してしまう可能性があるため、軸上色収差が0.9μm/nmより大きくなるようなピッチにならないように留意して設計することが好ましい。当該観点からは、第1光路差付与構造の最小ピッチpと第1波長λ1における焦点距離f1の比p/f1が0.002以上であることが好ましい。一方で、CDにおけるワーキングディスタンスを十分に確保するためには、軸上色収差が0.4μm/nm以上であることが好ましい。
第1光路差付与構造を通過した第3光束によって、第3光束が形成するスポットの光強度が最も強い第1ベストフォーカス位置と、第3光束が形成するスポットの光強度が次に強い第2ベストフォーカス位置とが、以下の条件式(23)を満たすことが好ましい。なお、ここでいうベストフォーカス位置とは、ビームウェストが、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる位置を指すものである。第1ベストフォーカス位置がCDの記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置であり、第2ベストフォーカス位置がCDの記録/再生に用いられない不要光のうち、最も光量が多い光束のベストフォーカス位置である。
0.35≦L/f1≦0.7 (23)
但し、L[mm]は、第1ベストフォーカスと第2ベストフォーカスの間の距離を指す。
以上述べた第1光路差付与構造の好ましい例をいくつか図7(a)、(b)、(c)として示す。尚、図7は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、通常は単玉非球面の凸レンズ上に設けられているものである。(2/1/1)回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされている。図7(a)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図7(b)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差も光軸OAの方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図7(c)においては、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAと逆の方向を向いており、第2基礎構造BS2の段差も光軸OAと逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。
更に、中央領域の総輪帯数をN1としたときに、以下の式を満たすと好ましい。これによりCDのワーキングディスタンスが短くなりすぎることを抑制すると共に、輪帯のピッチが小さくなりすぎて加工性が低下することを抑制できる。尚、中央領域における光軸に略平行な段差数を、中央領域の総輪帯数とみなしてよい。
160(mm)≦N1・f1≦210(mm) (12)´
次に、中間領域に設けられる第2光路差付与構造について説明する。第2光路差付与構造は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造の2つの基礎構造を重ね合わせた構造であることが好ましい。より好ましくは、第3基礎構造と第4基礎構造のみを重ね合わせた構造であることである。光路差付与構造がブレーズ型の基礎構造を2種類重畳してなるため、単一の構造で光路差付与構造を形成する場合に比して、設計の自由度を大きく確保できるため、特に、有効径が小さい対物レンズにおいて有利となる。
第3基礎構造は、ブレーズ型構造である。また、第3基礎構造を通過した第1光束のA次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束のB次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第3光束のC次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。また、第4基礎構造もブレーズ型構造である。第4基礎構造を通過した第1光束のD次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束のE次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第3光束のF次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。このときA、B、C、D、E、Fはそれぞれ整数である。Aは奇数であることが好ましく、Aが奇数であることにより、BDとCDとで異なる近軸パワーを付与できるため、BDとCDとで生じる相対的な球面収差の補正が良好に行える。さらに好ましいAの値は絶対値が5以下の奇数であることであり、最も好ましくは絶対値が1であることである。低次である1次回折光が発生するようにすると、第3基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。また、好ましいB及びCの値としては絶対値が1であることである。Dは偶数であることが好ましく、Dが偶数であることにより、第1〜第3光束の全てにおいて高い回折効率を得ることができる。さらに好ましいDの値は絶対値が4以下の偶数であることであり、最も好ましくは絶対値が2であることである。低次である2次回折光が発生するようにすると、第4基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。また、好ましいE及びFの値としては絶対値が1であることである。
第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、以下の式(4)〜(7)を満たすことが好ましい。このようにすることにより、基準状態だけでなく温度や波長変化時においても、中央領域と中間領域の境界で光路差関数がほぼ連続となり、高次収差の発生を抑えることができる。
X=A (4)
Y=B (5)
L=D (6)
M=E (7)
さらに、X、Y、Z、L、M、N、A、B、D、Eがそれぞれ
|X|=|A|=1
|Y|=|B|=1
|Z|=1
|L|=|D|=2
|M|=|E|=1
|N|=1
であると、X、Y、Z、L、M、N、A、B、D、Eの値が全て低次であるため、第1〜4基礎構造の段差量がそれぞれ大きくなり過ぎず、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、段差量が小さいため影の効果を抑制し高い光利用効率を確保でき、且つ波長や温度変化時の回折効率変動も低減することができる。また、互換を行う基礎構造として、(1/1/1)構造(第1光束、第2光束、及び第3光束のいずれにおいても、1次回折光を最も多く発生)を第1及び第3基礎構造とし、(2/1/1)構造(第1光束において2次回折光を最も多く発生し、第2光束及び第3光束においては、1次回折光を最も多く発生)を第2及び第4の基礎構造としているため、BD、DVD、CDのいずれにおいても対物レンズの倍率を0またはほぼ0としつつ3波長全てにおいて高い回折効率を得ることができる。
より好ましくは、Z=C、N=Fも満たすことである。つまり、第1基礎構造と第3基礎構造が次数に関して同じ構造であり、第2基礎構造と第4基礎構造が次数に関して同じ構造であることが好ましい。
また、第1光束の有効径が1.9mmから3.0mmと小径である場合には、第3基礎構造と第4基礎構造からなる第2光路差付与構造において既にピッチが十分細かく、輪帯数の数も十分多いため、第3基礎構造と第4基礎構造に加えて更に別の基礎構造を重ねてしまうと、さらにピッチが細かくなり、輪帯数もより多くなってしまうため、製造誤差による回折効率の低下や、輪帯の影の効果による回折効率の低下といった問題が大きくなってしまう。特に、0/0/±1のバイナリ構造のような段差量が大きい構造を重ね合わせてしまうと、影の効果等による回折効率の低下という問題はより大きなものとなってしまう。そのため、第2光路差付与構造において、第3基礎構造と第4基礎構造のみを重ね合わせた構造とすると、光の利用効率を高めることができるので好ましい。
また、中間領域の第2光路差付与構造は、第3基礎構造が光軸とは逆の方向を向いている段差を有し、第4基礎構造が光軸の方向を向いている段差を有することが好ましい。したがって、第2光路差付与構造は、光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸の方向を向いている段差とを有することが好ましい。
さらに、第1基礎構造の全ての段差が同じ方向を向いており、第2基礎構造の全ての段差が同じ方向を向いており、第3基礎構造の全ての段差が同じ方向を向いており、第4基礎構造の全ての段差が同じ方向を向いていると、CD使用時のワーキングディスタンスがより一層とりやすくなる。
(A/B/C)構造である第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、(D/E/F)構造である第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化すると好ましい。
このような構成とすると、第2光路差付与構造においても、光ピックアップ装置の温度上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の劣化を補正するため、環境温度の変化時に、より適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。
一方で、第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにしてもよい。
第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにすると、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−30mλrms以上、+50mλrms以下にすることができるため好ましい。より好ましくは第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−10mλrms以上、+10mλrms以下にすることである。尚、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の5次球面収差の変化量は、−20mλrms以上、20mλrms以下であることが好ましい。より好ましくは、−10mλrms以上、+10mλrms以下である。
第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにすると、第3基礎構造と第4基礎構造のうち何れか一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化するので、第2光路差付与構造が、第3基礎構造と第4基礎構造のみからなっていても、CD使用時のフレア出しを容易に行うことが出来る。従って、CD使用時のフレア出しを、単純な形状の第2光路差付与構造で行えるため、影の効果による光利用効率の低下を抑制し、更に、製造誤差による光利用効率の低下も抑制し、結果として光利用効率を向上させることが可能となる。尚、これにより中間領域においてはBD使用時の温度特性補正効果が小さくなるが、中央領域の第1基礎構造と第2基礎構造が共に長波長において補正不足であるため、温度特性が悪くなりすぎることを防止でき、またBD使用時の波長特性補正効果を大きくすることができる。加えて、DVD使用時においては、DVDの温度特性及び波長特性を共に良好にすることができる。
なお、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化すると、CD使用時にフレアをより遠くに飛ばしやすくできるため、好ましい。
更にDVD使用時の波長特性を良好にするために、第2光路差付与構造において、第4基礎構造の中央領域に最も近い輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜3個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造において、第4基礎構造の周辺領域に最も近い輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることである。中間領域の第4基礎構造の総輪帯数に対する第3基礎構造の総輪帯数の割合は1.0以上〜5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上3.0以下であることである。
また、中間領域において、光軸とは逆の方向を向いている段差の段差量d21と、光軸の方向を向いている段差の段差量d22とが、以下の条件式(21)、(22)を満たすことが好ましい。
0.6・(λ1/(n−1))<d21<1.5・(λ1/(n−1)) (24)
0.6・(λ1/(n−1))<d22<1.5・(2λ1/(n−1)) (25)
但し、nは、λ1における対物レンズの屈折率を表す。
より好ましくは、以下の条件式を満たすことである。
0.9・(λ1/(n−1))<d21<1.5・(λ1/(n−1)) (24)´
0.9・(λ1/(n−1))<d22<1.5・(λ1/(n−1)) (25)´
また、本発明の対物レンズは、対物レンズの第1光束における焦点距離をf1とした場合に式(1)を満たす。
1.0≦f1≦2.2 (1)
焦点距離が式(1)の範囲内であるため、厚さが薄い光ピックアップ装置にも好適に搭載できる。その一方で、焦点距離が比較的短い式(1)を満たしているため、ワーキングディスタンスを確保する関係上、中央領域の光路差付与構造の輪帯数が多くなってしまう。それにより、中央領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離が長くなってしまうため、中間領域の光路差付与構造の輪帯数を多くすることで中間領域を通過するDVD使用時の光束の焦点距離も長くしなければならない。その結果、中間領域の周辺領域近傍において、中間領域の光路差付与構造の輪帯数が非常に多くなってしまい、影の効果の影響や成形誤差が大きくなり、光軸中心近傍に対する中間領域の周辺領域近傍における瞳透過率の比率r2が、第2光束使用時において、式(2)の範囲となってしまう。
r2≦0.9 (2)
なお、光軸中心近傍における「近傍」とは、光軸から光軸垂直方向に対して、BD使用時の有効径の10%の範囲を言う。また、中間領域の周辺領域近傍とは中間領域と周辺領域の境界から、周辺領域方向に対して、BD使用時の有効径の10%の範囲を言う。
r2が式(2)の範囲になってしまうことにより、DVD使用時においてアポダイゼーションの逆の現象が発生してしまい、DVD使用時のスポット径が拡大してしまう。加えて、BD/DVD/CDの互換対物レンズであるため、正弦条件の関係からDVD使用時の正弦条件が正に崩れ、結果としてDVD使用時のスポット径がより一層拡大してしまう。しかし、本発明の対物レンズにおいては以下に詳述する式(3)を満たすことにより上記2つの問題を一挙に解決している。なお、r2が0.4以上0.9以下であるとアポダイゼーションの逆の現象によるスポット径の拡大の程度が大きくなり過ぎないため本発明の効果がより顕著となり好ましい。より好ましくはr2が0.5以上0.8以下となることであり、さらに好ましくはr2が0.6以上0.75以下となることである。また、f1が以下の式(1)´を満たすと本願発明の効果がより顕著なものとなる。
1.0≦f1≦2.0 (1)´
本発明の対物レンズは中間領域の外径をφ2、対物レンズの第1光束における焦点距離をf1、対物レンズの第2光束における結像倍率をm2とした場合に、
0.66≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.75 (3)
を満たしている。式(3)の下限以上の値を満たすことにより、対物レンズのDVD使用時における第2光束の有効径が大きくなり、DVD使用時のスポット径を小さく絞ることができるため、DVD使用時におけるリム強度低下や正弦条件に起因するスポット径の拡大を抑制することが可能となる。また、BD/DVD/CDの互換対物レンズであるため、波長λ1使用時の対物レンズにおける有効径付近において対物レンズの見込み角が大きくなってしまうことによる加工精度の低下や、光学面への光の入射角が大きくなることに伴う反射率向上が生じる。結果としてリム強度の低下を招き、BD使用時においてもスポット径が拡大してしまうという問題も生じるが、式(3)の下限以上の値を満たすことにより、BD使用時には光軸近傍と比して相対的に透過光量が少ない中間領域を広げ、アポダイゼーションを発生させ、BDのスポット径を小さく絞り、BDのスポット径の拡大という問題を解決している。これは、特にBD/DVD/CDの3種類の光ディスクの再生専用の互換レンズに好ましく用いることができる。さらに、式(3)の上限以下の値を満たすことによりDVD使用時のスポット径が小さく絞られ過ぎることがない。
さらに好ましくは下記式(9)を満たすことである。
0.68≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.73 (9)
対物レンズが小型化すればするほど、基礎構造のピッチが小さくなってしまい、影の効果の影響が強く生じ、結果としてDVD使用時のスポット径が拡大してしまうが、式(9)を満たすことにより、そのような対物レンズにおいてもBD・DVDの記録再生により一層適切なスポット径を得ることができるため好ましい。
対物レンズが、対物レンズの第2光束における焦点距離をf2とした場合に、下記式(11)を満たすように設計されてもよい。
0.61≦φ2/(2・f2・(1−m2))≦0.65 (11)
式(11)を満たすことにより、DVD使用時の有効径を広げることができ、好ましい。
周辺領域に第3光路差付与構造を設ける場合、任意の光路差付与構造を設けることが可能である。第3光路差付与構造は、第5基礎構造を有することが好ましい。第5基礎構造は、第5基礎構造を通過した第1光束のP次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束のQ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のR次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。尚、波長変動時の回折効率の変動を抑えるためにも、Pが5以下であることが好ましい。より好ましくはPが2以下であることである。
ここで、図8に好ましい対物レンズの模式図を示す。光軸OAを含む対物レンズの断面のうち、光軸よりも上半分を示した図である。尚、図8は、あくまでも模式図であり、実施例に基づいた正確な長さの比率などを表した図面ではない。
図8の対物レンズは、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTを有している。中央領域には第1光路差付与構造ODS1が設けられており、中間領域には第2光路差付与構造ODS2が設けられており、周辺領域には第3光路差付与構造ODS3が設けられている。
図8の第1光路差付与構造ODS1は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第2基礎構造BS2と、(1/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸と逆の方を向いている第1基礎構造BS1とが重畳した構造となっている。図8においては、第2基礎構造BS2は3輪帯であり、第2基礎構造BS2における光軸に最も近い輪帯(円状)上に、第1基礎構造BS1の輪帯が2個含まれている。また、第2基礎構造BS2における中間領域に最も近い1つの輪帯に、第1基礎構造BS1の輪帯が3個含まれている。
図8の第2光路差付与構造ODS2は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第4基礎構造BS4と、(1/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸と逆の方を向いている第3基礎構造BS3とが重畳した構造となっている。図8においては、第4基礎構造BS4は3輪帯であり、第4基礎構造BS4における中央領域に最も近い輪帯上に、第3基礎構造BS3の輪帯が3個含まれている。また、第4基礎構造BS4における周辺領域に最も近い1つの輪帯に、第3基礎構造BS3の輪帯が4個含まれている。つまり、中間領域の周辺領域に最も近い輪帯の輪帯密度が高くなっているため、影の効果や成形誤差の影響が大きく、瞳透過率が光軸近傍と比べて小さくなってしまう。
図8の第3光路差付与構造ODS3は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第6基礎構造BS5のみからなっている。
BDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、DVDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、CDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.8以上、0.9以下であることが好ましい。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
対物レンズを通過した第3光束をCDの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
尚、対物レンズの第1光束に対する有効径をφ1(mm)は1.9以上4.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上3.0以下である。
特に、式(1)を満たすような小径のレンズである場合においてもWD3を0.25mm以上とするような場合には、光路差付与構造のピッチを小さくし、輪帯数を増大させることなどにより回折の近軸パワーを増大させる必要があるが、その結果、DVD使用時にアポダイゼーションの逆の現象がより一層強く発生してしまう。
しかし、本発明の対物レンズによれば、上述した式(3)の下限以上の値を満たすことにより、DVD使用時のスポット径を小さくすることができるため、安定した情報の記録及び/又は再生を行うこと、且つ3種類の光ディスクの互換が可能な対物レンズを得ることができる。
さらに、第3光ディスクにおける十分なワーキングディスタンスを確保するという意味では、対物レンズに形成された輪帯の層数Nallは、150以上250以下であることが好ましい。
また、中間領域の総輪帯数をN2としたときに、以下の式を満たすことが好ましい。これによりCDのワーキングディスタンスが短くなりすぎることを抑制すると共に、輪帯のピッチが小さくなりすぎて加工性が低下することを抑制できる。尚、中間領域における光軸に略平行な段差数を、中間領域の総輪帯数とみなしてよい。
110(mm)≦N2・f1≦300(mm) (12)
また、対物レンズは、以下の条件式(10)を満たすことが好ましい。
1.0≦d/f1≦1.5 (10)
但し、dは、対物レンズの光軸上の厚さ(mm)を表し、fは、第1光束における対物レンズの焦点距離を表す。
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(10)の下限の値を超えないことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
また、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになりやすく、CDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるため、条件式(10)の上限の値を超えないことが好ましい。
また、第3光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD3)は、0.15mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。好ましくは、0.25mm以上、0.5mm以下である。次に、第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD2)は、0.2mm以上、1.3mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD1)は、0.25mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
第1光束、第2光束及び第3光束は、平行光として対物レンズに入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物レンズに入射してもよい。トラッキング時においても、コマ収差が発生することを防止するためには、第1光束、第2光束、及び第3光束を全て平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが好ましい。本発明の第1光路差付与構造を用いることによって、第1光束、第2光束及び第3光束の全てを平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが可能となるため、本発明の効果がより顕著となる。第1光束が平行光又は略平行光になる場合、第1光束が対物レンズに入射する時の対物レンズの結像倍率m1が、下記の式(26)を満たすことが好ましい。
−0.01<m1<0.01 (26)
また、第2光束を平行光又は略平行光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(27)を満たすことが好ましい。
−0.01<m2<0.01 (27)
一方で、第2光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(27)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m2≦−0.01 (27)´
また、第3光束を平行光束又は略平行光束として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(28)を満たすことが好ましい。
−0.01<m3<0.01 (28)
一方で、第3光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(28)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m3≦−0.01 (28)´
これによりトラッキング時に発生するコマ収差が記録・再生可能な範囲となる。
光ピックアップ装置は、少なくとも第1光束と第2光束が通過するカップリングレンズを有していてもよく、カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有するようにしてもよい。特に、BDが2層や3層以上など複数の情報記録面を持っている場合には、或る層の記録/再生から他の層の記録/再生を行う際には、透明基板厚に差が生じるため、当該厚みの差に起因して発生する球面収差を補正しなければならない。その際に、カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって、当該発生する球面収差を補正することが考えられる。また、温度変化や波長変化の際に発生する球面収差も、カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって補正することができる。
しかしながら、例え、BD使用時にカップリングレンズを光軸方向に移動させて各種球面収差を補正する光ピックアップ装置であっても、DVD使用時においては、カップリングレンズの光軸方向の位置が固定されていることが好ましい。
その理由としては、BD使用時には、フレアが発生しないが、DVD使用時には、フレアが発生するため、カップリングレンズを変異させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、ドライブでのカップリングレンズの変位の制御を単純化したいという理由などが挙げられる。
DVD使用時にカップリングレンズの光軸方向の位置を固定させるためには、対物レンズの第2光路差付与構造を構成する第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化させることで、DVD使用時の温度変化や波長変化に伴う球面収差を記録・再生可能なレベルにすることが可能となり、結果として、DVD使用時に、第2光束が通過するときにカップリングレンズを光軸方向の位置を固定した状態でも、DVDの情報記録面に対して情報の記録/再生を行うことができるようになるため好ましい。
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
本発明によれば、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換が可能な単玉対物レンズにおいて、基板厚が厚いCD使用時においてもワーキングディスタンスを確保しつつ、且つBD、DVDの使用時に適切なスポット径を形成することによる安定した情報の記録/再生を行うことができる、コンパクトな光ピックアップ装置に好適な対物レンズ、及びこの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置を提供することができる。
本実施の形態にかかる単玉の対物レンズOLを光軸方向に見た図である。 影の効果を説明するための図である。 対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットを形成する状態を示す図である。 光路差付与構造の例を示す軸線方向断面図であり、(a)、(b)はブレーズ型構造の例を示し、(c)、(d)は階段型構造の例を示す。 (a)は段差が光軸の方向を向いている状態を示し、(b)は段差が光軸とは逆の方向を向いている状態を示す図である。 (a)は光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では段差が光軸とは逆の方を向くような形状を示し、(b)は光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では段差が光軸の方を向くような形状を示す図である。 第1光路差付与構造の概念図であり、(a)、(b)、(c)は好ましい第1光路差付与構造の例を示し、(d)は第1基礎構造と第2基礎構造とを重畳した例を示す。 好ましい対物レンズの模式図である。 異なる光ディスクであるBDとDVDとCDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。 実施例1における光軸からの距離の比率に対する瞳透過率の比率を表した図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図9は、異なる光ディスクであるBDとDVDとCDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、スリムタイプであり、薄型の光情報記録再生装置に搭載できる。ここでは、第1光ディスクをBDとし、第2光ディスクをDVDとし、第3光ディスクをCDとする。なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではない。
光ピックアップ装置PU1は、対物レンズOL、λ/4波長板QWP、コリメートレンズCOL、偏光ビームスプリッタBS、ダイクロイックプリズムDP,BDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ1=405nmのレーザ光束(第1光束)を射出する第1半導体レーザLD1(第1光源)と、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ2=660nmのレーザ光束(第2光束)を射出する第2半導体レーザLD2(第2光源)及びCDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ3=785nmのレーザ光束(第3光束)を射出する第3半導体レーザLD3を一体化したレーザユニットLDP、センサレンズSEN、光検出器としての受光素子PD等を有する。
図1に示されるように、本実施の形態にかかる単玉の対物レンズOLにおいて、光源側の非球面光学面に光軸を含む中央領域CNと、その周囲に配置された中間領域MDと、更にその周囲に配置された周辺領域OTとが、光軸を中心とする同心円状に形成されている。図示していないが、中心領域CNには既に詳述した第1光路差付与構造が形成され、中間領域MDには既に詳述した第2光路差付与構造が形成されている。また、周辺領域OTには、第3光路差付与構造が形成されている。本実施の形態では、第3光路差付与構造はブレーズ型の回折構造である。また、本実施の形態の対物レンズはプラスチックレンズである。対物レンズOLの中心領域CNに形成された第1光路差付与構造は、第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。
対物レンズOLの中間領域MDに形成された第2光路差付与構造は、第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた構造であり、第3基礎構造は、第3基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造は、第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。
青紫色半導体レーザLD1から射出された第1光束(λ1=405nm)の発散光束は、実線で示すように、ダイクロイックプリズムDPを通過し、偏光ビームスプリッタBSを通過した後、コリメートレンズCOLを通過して平行光となり、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、不図示の絞りによりその光束径が規制され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域と周辺領域により集光された光束は、厚さ0.1mmの保護基板PL1を介して、BDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOL、不図示の絞りを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、2軸アクチュエータAC1により対物レンズOLをフォーカシングやトラッキングさせることで、BDに記録された情報を読み取ることができる。ここで、第1光束に波長変動が生じた場合や、複数の情報記録層を有するBDの記録/再生を行う場合、波長変動や異なる情報記録層に起因して発生する球面収差を、倍率変更手段としてのコリメートレンズCOLを1軸アクチュエータAC2により光軸方向に変化させて、対物光学素子OLに入射する光束の発散角又は収束角を変更することで補正できるようになっている。
レーザユニットLDPの半導体レーザLD2から射出された第2光束(λ2=660nm)の発散光束は、点線で示すように、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCOLを通過し、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域により集光された(周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、厚さ0.6mmの保護基板PL2を介して、DVDの情報記録面RL2に形成されるスポットとなり、スポット中心部を形成する。
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOLを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いてDVDに記録された情報を読み取ることができる。本実施の形態ではカップリングレンズCOLを固定した状態でも、DVDに情報の記録/再生を行えるので、光ピックアップ装置の制御系が簡素化される。
レーザユニットLDPの半導体レーザLD3から射出された第3光束(λ3=785nm)の発散光束は、一点鎖線で示すように、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCOLを通過し、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域により集光された(中間領域及び周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、厚さ1.2mmの保護基板PL3を介して、CDの情報記録面RL3上に形成されるスポットとなる。
情報記録面RL3上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOLを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いてCDに記録された情報を読み取ることができる。
(実施例)
以下、上述した実施の形態に用いることができる実施例について説明する。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10-3)を、E(例えば、2.5×E−3)を用いて表す場合がある。また、対物レンズの光学面は、それぞれ数1式に表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、Aiは非球面係数、hは光軸からの高さ、rは近軸曲率半径である。
また、回折構造を用いた実施例の場合、その回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路差は、数2式の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
[数2]
Φ(h)=Σ(C2i2i×λ×m/λB)
ここで、λ:使用波長、m:回折次数、λB:製造波長、h:光軸から光軸垂直方向の距離である。
また、ピッチP(h)=λB/(Σ(2i×C2i×h2i-1))とする。
(実施例1)
表1A,1Bに実施例1のレンズデータを示す。実施例1の対物レンズはプラスチック単玉レンズであり、第1基礎構造、第3基礎構造の段差は光軸と逆の方向を向いており、第2基礎構造、第4基礎構造の段差は光軸の方向を向いている。また、実施例1の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。第2光路差付与構造は、中間領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第4基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第3基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。尚、実施例1における式(3)の値は0.70、瞳透過率の比率r2の値は0.70、中間領域の輪帯数N2の値は68、式(11)の値は0.621、式(12)の値は119.68となっている。
また、図10に実施例1における、第2光束使用時の瞳透過率の比率と光軸からの距離の比率のグラフを載せる。なお、図10において、縦軸は光軸近傍における瞳透過率を1とした場合の瞳透過率の値となっており、横軸はDVDの有効径の半分の値(実施例1においては1.23mm)を1とした場合の光軸からの距離を表している。また、中央領域と中間領域の境界BNを点線にて図示している。図10より、実施例1における、第2光束における、対物レンズの光軸中心近傍に対する中間領域の前記周辺領域近傍における瞳透過率の比率r2の値が0.7となっており、DVD使用時においてアポダイゼーションの逆の現象が生じていることが分かる。尚、中間領域の中心部が中央領域の周辺部より多少高くなっているのは、中間領域の1/1/1回折構造のブレーズ化波長を中央領域より高くした効果である。
(実施例2)
表2A,2Bに実施例2のレンズデータを示す。実施例2の対物レンズはプラスチック単玉レンズであり、第1基礎構造、第3基礎構造の段差は光軸と逆の方向を向いており、第2基礎構造、第4基礎構造の段差は光軸の方向を向いている。また、実施例2の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。第2光路差付与構造は、中間領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第4基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第3基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。尚、実施例2における式(3)の値は0.70、瞳透過率の比率r2の値は0.62、中間領域の輪帯数N2の値は142、式(11)の値は0.620、式(12)の値は251.34となっている。
(実施例3)
表3A,3Bに実施例3のレンズデータを示す。実施例3の対物レンズはプラスチック単玉レンズであり、第1基礎構造、第3基礎構造の段差は光軸と逆の方向を向いており、第2基礎構造、第4基礎構造の段差は光軸の方向を向いている。また、実施例3の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。第2光路差付与構造は、中間領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第4基礎構造に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第3基礎構造が重ねあわされた光路差付与構造となっている。尚、実施例3における式(3)の値は0.69、瞳透過率の比率r2の値は0.72、中間領域の輪帯数N2の値は58、式(11)の値は0.631、式(12)の値は127.6となっている。
本発明は、明細書に記載の実施形態、実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施形態や実施例や技術思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。
AC1 2軸アクチュエータ
B 段差量
BS 偏光ビームスプリッタ
CN 中央領域
COL コリメートレンズ
DP ダイクロイックプリズム
LD1 第1半導体レーザ又は青紫色半導体レーザ
LD2 第2半導体レーザ
LD3 第3半導体レーザ
LDP レーザユニット
MD 中間領域
OA 光軸
ODS 光路差付与構造
OL 対物レンズ
OT 周辺領域
P ピッチ
PD 受光素子
PL1 保護基板
PL2 保護基板
PL3 保護基板
PU1 光ピックアップ装置
QWP λ/4波長板
RL1 情報記録面
RL2 情報記録面
RL3 情報記録面
SEN センサレンズ

Claims (14)

  1. 第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、
    前記対物レンズは単玉レンズであり、
    前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの中間領域と、前記中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
    前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、
    前記中間領域は第2光路差付与構造を有し、
    前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
    前記対物レンズは、前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
    前記対物レンズは、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
    前記第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
    前記第1基礎構造はブレーズ型構造であり、
    前記第2基礎構造はブレーズ型構造であり、
    前記第2光路差付与構造は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
    前記第3基礎構造はブレーズ型構造であり、
    前記第4基礎構造はブレーズ型構造であり、
    前記対物レンズの前記第1光束における焦点距離をf1が
    1.0≦f1≦2.2 (1)
    であり、
    前記第2光束における、前記対物レンズの光軸中心近傍に対する前記中間領域の前記周辺領域近傍における瞳透過率の比率r2が、
    r2≦0.9 (2)
    であり、
    前記中間領域の外径をφ2、前記対物レンズの前記第2光束における結像倍率をm2とした場合に、
    0.66≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.75 (3)
    を満たすことを特徴とする対物レンズ。
  2. 前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した前記第1光束のX次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束のY次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束のZ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
    前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した前記第1光束のL次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束のM次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した前記第3光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
    前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した前記第1光束のA次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した前記第2光束のB次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
    前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した前記第1光束のD次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した前記第2光束のE次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
    前記X、Y、Z、L、M、N、A、B、D及びEは整数であり、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
    X=A (4)
    Y=B (5)
    L=D (6)
    M=E (7)
  3. 前記X及びAは奇数であり、前記L及びDは偶数であることを特徴とする請求項1または2に記載の対物レンズ。
  4. 前記X、Y、Z、L、M、N、A、B、D、Eはそれぞれ
    |X|=|A|=1
    |Y|=|B|=1
    |Z|=1
    |L|=|D|=2
    |M|=|E|=1
    |N|=1
    を満たすことを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ。
  5. 以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の対物レンズ。
    1.0≦f1≦2.0 (1)´
  6. 前記第3光束を用いて前記CDの情報の記録及び/又は再生を行う際のワーキングディスタンスをWD3(mm)とした場合に、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の対物レンズ。
    WD3≧0.25 (8)
  7. 以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の対物レンズ。
    0.68≦φ2/(2・f1・(1−m2))≦0.73 (9)
  8. 前記対物レンズの光軸上の厚さをd(mm)とした場合に、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の対物レンズ。
    1.0≦d/f1≦1.5 (10)
  9. 少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、
    少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の対物レンズ。
  10. 前記対物レンズの前記第2光束における焦点距離をf2とした場合に、
    0.61≦φ2/(2・f2・(1−m2))≦0.65 (11)
    を満たすことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の対物レンズ。
  11. 前記第1基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
    前記第2基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
    前記第3基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いており、
    前記第4基礎構造は、全ての段差が同じ方向を向いていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の対物レンズ。
  12. 前記中間領域の総輪帯数をN2とした場合に、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の対物レンズ。
    110(mm)≦N2・f1≦300(mm) (12)
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の対物レンズを有することを特徴とする光ピックアップ装置。
  14. 少なくとも前記第1光束と前記第2光束が通過するカップリングレンズと、前記カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有し、
    前記第1光束が通過するときは、前記アクチュエータ―によって前記カップリングレンズが光軸方向に変位可能とされており、
    前記第2光束が通過するときには、前記カップリングレンズは、光軸方向の位置を固定されていることを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
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