JPWO2013146256A1 - 磁気記録媒体基板用ガラス、磁気記録媒体用ガラス基板およびその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
この背景として、第一に、磁気ヘッドの浮上量(磁気ヘッドと磁気記録媒体表面との間隙)の大幅な低下(低浮上量化)が挙げられる。こうすることで、磁気ヘッドと媒体の磁性層との距離が近づくため、より小さい磁性粒子の信号も拾うことができるようになるため、高記録密度化を達成することができる。近年、従来以上の低浮上量化を実現するために、DFH(Dynamic Flying Height)という機能が磁気ヘッドに搭載されている。これは、磁気ヘッドの記録再生素子部の近傍に極小のヒーター等の加熱部を設けて、素子部周辺のみを媒体表面方向に向けて突き出す機能である。今後、この機能によって、磁気ヘッドの素子部と媒体表面との間隙は、2nm未満と極めて小さくなると見られている。このため、僅かな衝撃によっても、磁気ヘッドが媒体表面に衝突しやすくなる。
第二に、媒体の高速回転化が挙げられる。これにより、まず、磁気ヘッドとの衝突の際の衝撃が大きくなる。なお、外周部においては基板のたわみが大きくなるため、僅かな衝撃によっても磁気ヘッドと衝突しやすくなる。また内周部においては、スピンドルおよびクランプによる媒体の締め付け(固定)の影響によって、HDD自体に外的衝撃が加わった場合に基板が割れる可能性が高くなる。
本発明は、上記のように高い耐熱性と優れた耐衝撃性を兼備する磁気記録媒体用ガラス基板の材料に好適な磁気記録媒体基板用ガラスおよび磁気記録媒体用ガラス基板を提供すること、更に、前記基板を備える磁気記録媒体、および前記磁気記録媒体を搭載する磁気記録装置を提供することを目的とする。
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
である磁気記録媒体基板用ガラス、
に関する。
バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなる磁気記録媒体用ガラス基板、
に関する。
バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスからなる磁気記録媒体用ガラス基板、
に関する。
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
である磁気記録媒体用ガラス基板ブランク、
に関する。
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
であるガラスが得られるようにガラス原料を調合すること、
調合したガラス原料を熔融して熔融ガラスを得ること、および、
得られた熔融ガラスをプレス成形してガラスからなる基板ブランクを作製すること、
を含む磁気記録媒体用ガラス基板ブランクの製造方法、
に関する。
に関する。
前記基板ブランクを加工すること、
を含む磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、
に関する。
に関する。
に関する。
に関する。
また、本発明によれば、前記基板を備える磁気記録媒体、ならびに前記磁気記録媒体を搭載する磁気記録装置を提供することができる。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下であり、ガラス転移温度が650℃以上である。
また本発明において、「主表面」とは、ガラス基板またはガラスの表面のうち、最も面積の広い面を意味する。ディスク状ガラス基板の場合、ディスクの円形状の表裏対向する一対の表面(中心穴がある場合は中心穴を除く。)が主表面に相当する。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、ガラス転移温度が650℃以上と高く、優れた耐熱性を有し、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を形成するための磁気記録媒体用基板材料として好適である。磁性材料の高温処理などにおいて、ガラス基板は高温下に晒されることになるが、上記のようにガラス転移温度が高いガラス材料を使用すれば、基板の平坦性が損なわれることがない。耐熱性の高い基板材料を提供するという観点から、本発明においてガラス転移温度の好ましい下限は655℃、より好ましい下限は660℃、さらに好ましい下限は665℃、一層好ましい下限は670℃、より一層好ましい下限は675℃である。ただし、ガラス転移温度を過剰に高めると化学強化処理温度が高くなり、化学強化時に熔融塩の熱分解が起こり、ガラスの表面を侵蝕するため、ガラス転移温度の上限を740℃とすることが好ましい。なお、ガラス転移温度は化学強化の前後でほぼ一定の値となる。
ガラス中におけるアルカリ金属イオンの拡散速度はイオン半径が小さいイオンほど大きいため、熔融塩中のNa+イオンはガラス表面からより深層にまで達して深い圧縮応力層を形成し、熔融塩中のK+イオンはNa+イオンほど深層には達せず、圧縮応力層は表面から浅い部分に形成される。混合塩により化学強化されたガラスの深さ方向の応力分布は、Na+とLi+のイオン交換により形成される応力分布とK+とNa+のイオン交換により形成される応力分布を合成したものになる。そのため、深さ方向の応力分布は緩やかに変化し、図1に模式図を示すように、バビネ法により測定される2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状となる。この凸形状には、後述の図2に示すような圧縮応力側へ凹む凹み部は含まれない。また、比較的深い圧縮応力層が形成される。なお図1中、中央のL線よりも左側が圧縮応力の領域であり、右側が引張応力の領域である。
仮にガラス表面のクラックが成長して引張応力層に達しても、上記応力分布を有する化学強化ガラスでは、即、ガラスが破壊することはない。
一方、Na2Oを含み、Li2Oを含まないガラスを化学強化する場合は、ガラスをカリウム熔融塩に浸漬し、ガラス中のNa+イオンと熔融塩中のKイオンとの交換により、ガラス表面近傍に圧縮応力層を形成する。K+イオンはNa+やLi+と比較し拡散速度が小さいため、ガラス深層まで達せず、圧縮応力層は浅く、深さ方向の応力分布は急峻に変化し、図2に模式図を示すように、バビネ法により測定される2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、主表面間の中央部からそれぞれ主表面側に寄った箇所で極大となる。つまり、引張応力が極大となる位置は2箇所になる。このような極大は、アップヒルと呼ばれる。このようなガラスでは、仮にガラス表面のクラックが成長して引張応力層に達すると、クラックの先端が引張応力の極大領域に達するので、引張応力によって破壊の進行が助長され、所謂、遅れ破壊を引き起こす。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、ガラス成分としてLi2OおよびNa2Oを含むため、Na+、K+の混合塩で化学強化することにより、遅れ破壊を防止することができる。遅れ破壊の発生をより一層効果的に防止する観点からは、Li2O含有量は0.1モル%以上であることが好ましい。
本発明者らは、この点について検討した結果、次のような知見を得た。
アルカリ金属イオンLi+、Na+、K+、アルカリ土類金属イオンMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+のポーリングによるイオン半径は表1に示すとおりである。
CaOを含むガラスをナトリウム塩とカリウム塩の混合熔融塩を用いて高温で化学強化する場合、Na+(ガラス)⇔K+(熔融塩)の反応と並行してCa2+(ガラス)⇔Na+(熔融塩)が起こり、アルカリ金属イオン同士の交換が阻害されると考えられる。
ガラス中のMg2+は、リチウム熔融塩を用いなければMg2+(ガラス)⇔Li+(熔融塩)というイオン交換は起こらず、ガラス中のSr2+は、イオン半径が大きく拡散速度が遅いため、熔融塩中のK+と交換しにくい。
そこで、本発明では、アルカリ金属イオン同士のイオン交換を阻害すると考えられるCaOの含有量を制限し、高耐熱性ガラスの化学強化に特有のイオン交換効率の低下によって引き起こされると考えられる機械的強度の低下を解決する。すなわち、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.20以下とすることにより、上記の機械的強度の低下を解決した。イオン交換効率の維持、機械的強度の維持という観点から、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))の好ましい上限は0.18、より好ましい上限は0.16、さらに好ましい上限は0.15である。
したがって、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量は10〜25%とすることが好ましい。MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量のより好ましい上限は24%、さらに好ましい上限は22%、一層好ましい上限は20%であり、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量のより好ましい下限は11%、さらに好ましい下限は13%、一層好ましい下限は15%である。
上記酸化物の導入効果を得る上から、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Nb2O5、Ta2O5およびHfO2の合計含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、さらに好ましい下限は0.5%である。また熔融性、熱膨張係数を維持する観点から、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Nb2O5、Ta2O5およびHfO2の合計含有量の好ましい上限は8%、より好ましい上限は6%、さらに好ましい上限は4%である。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスがZrO2を含有する場合、ガラスの化学的耐久性を改善する上から、SiO2とZrO2の合計含有量を66%以上にすることが好ましい。SiO2とZrO2の合計含有量のより好ましい下限は66.5%、さらに好ましい下限は67.0%である。なおSiO2とZrO2の合計含有量の上限は、Al2O3、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、その他成分の各含有量により定まる。
上記ガラス成分に加えて、Sn酸化物、Ce酸化物、Sb2O3、F、Clなどのハロゲン化物等を清澄剤として少量添加してもよい。中でも、清澄剤としては、Sn酸化物およびCe酸化物を使用することが好ましい。これは以下の理由による。
Sn酸化物は、ガラス熔融時、高温で酸素ガスを放出し、ガラス中に含まれる微小な泡を取り込んで大きな泡にすることで浮上しやすくすることにより清澄を促す働きに優れている。一方、Ce酸化物は、低温でガラス中にガスとして存在する酸素をガラス成分として取り込むことにより泡を消す働きに優れている。泡の大きさ(固化したガラス中に残留する泡(空洞)の大きさ)が0.3mm以下の範囲で、Sn酸化物は比較的大きな泡も極小の泡も除く働きが強い。Sn酸化物とともにCe酸化物を添加すると、50μm〜0.3mm程度の大きな泡の密度が数十分の一程度にまで激減する。このように、Sn酸化物とCe酸化物を共存させることにより、高温域から低温域にわたり広い温度範囲でガラスの清澄効果を高めることができるため、Sn酸化物およびCe酸化物を添加することが好ましい。
Sn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計が0.02質量%以上であれば、十分な清澄効果を期待することができる。微小かつ少量であっても未熔解物を含むガラスを用いて基板を作製すると、研磨によってガラス基板表面に未熔解物が現れると、ガラス基板表面に突起が生じたり、未熔解物が欠落した部分が窪みとなって、ガラス基板表面の平滑性が損なわれ、磁気記録媒体用の基板としては使用できなくなる。これに対しSn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計が3.5質量%以下であれば、ガラス中に十分に熔解し得るため未熔解物の混入を防ぐことができる。
また、SnやCeは結晶化ガラスを作る場合には結晶核を生成する働きをする。本発明のガラス基板は非晶質性ガラスからなるので、加熱によって結晶を析出しないことが望ましい。Sn、Ceの量が過剰になると、こうした結晶の析出がおこりやすくなる。そのため、Sn酸化物、Ce酸化物とも過剰の添加は避けるべきである。
以上の観点から、Sn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計を0.02〜3.5質量%とすることが好ましい。Sn酸化物とCe酸化物の外割り添加量の合計の好ましい範囲は0.1〜2.5質量%、より好ましい範囲は0.1〜1.5質量%、さらに好ましい範囲は0.5〜1.5質量%である。
Sn酸化物としては、SnO2を用いることがガラス熔融中、高温で酸素ガスを効果的に放出する上から好ましい。Sn酸化物、Ce酸化物の添加量を調整することにより、Sb2O3を添加しなくても十分な清澄性を得ることもできる。
なお、清澄剤として硫酸塩を外割りで0〜1質量%の範囲で添加することもできるが、ガラス熔融中に熔融物が吹きこぼれるおそれがあり、ガラス中の異物が激増することから、上記吹きこぼれが懸念される場合は、硫酸塩を導入しないことが好ましい。なお、本発明の目的を損なわないものであって清澄効果が得られるものであれば、上記清澄剤以外のものを使用してもよい。ただし、前述のように環境負荷が大きいAsの添加は避けるべきである。
Sb2O3は清澄剤として単独で使用してもよいし、Sn酸化物またはCe酸化物と併用してもよいし、Sn酸化物およびCe酸化物と併用してもよい。
磁気記録媒体を組み込んだHDD(ハードディスクドライブ)は、中央部分をスピンドルモーターのスピンドルおよびクランプで押さえて磁気記録媒体そのものを回転させる構造となっている。そのため、磁気記録媒体基板とスピンドル部分を構成するスピンドル材料の各々の熱膨張係数に大きな差があると、使用時に周囲の温度変化に対してスピンドルの熱膨張・熱収縮と磁気記録媒体基板の熱膨張・熱収縮にずれが生じてしまい、結果として磁気記録媒体が変形してしまう現象が起きる。このような現象が生じると書き込んだ情報をヘッドが読み出せなくなってしまい、記録再生の信頼性を損なう原因となる。したがって磁気記録媒体の信頼性を高めるには、基板材料には、スピンドル材料(例えばステンレスなど)熱膨張係数にできるだけ近い熱膨張係数を有するガラスが求められる。特に、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する磁気記録媒体は、記録密度が極めて高いため、磁気記録媒体の僅かな変形によっても前記トラブルが起こりやすくなる。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスの好ましい態様では、100〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数が50×10-7/℃以上である。前記ガラスを用いて基板を作製することにより、HDDにおける上記信頼性を向上することができる。このように、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する磁気記録媒体に好適な基板材料を提供することができる。前記平均線膨張係数のより好ましい範囲は55×10-7/℃以上、さらに好ましい範囲は60×10-7/℃以上である。前記平均線膨張係数の上限は、スピンドル材料の熱膨張特性を考慮すると、例えば120×10-7/℃程度であることが好ましく、100×10-7/℃であることがより好ましい。なお、熱膨張係数は化学強化の前後でほぼ一定の値となる。
また、500〜600℃の温度範囲における平均線膨張係数は、60×10-7/℃以上であることが好ましく、70×10-7/℃以上であることがより好ましい。500〜600℃の温度範囲における平均線膨張係数は、例えば100×10-7/℃以下であることが好ましく、90×10-7/℃以下であることがより好ましい。500〜600℃の温度範囲における平均線膨張係数が上記範囲内であるガラスを用いて基板を作製することにより、高Ku磁性材料等の多層膜を成膜後、アニール処理する際に、アニール処理中や処理後に多層膜がガラス基板から剥離することや、アニール処理中に基板が保持部材から落下することを、確実に防止することができる。
ディスク状の磁気記録媒体では、媒体を中心軸の周りに高速回転させつつ、磁気ヘッドを半径方向に移動させながら、回転方向に沿ってデータの書き込み、読み出しを行う。近年、この書き込み速度および読み出し速度を上げるため回転数は5000rpmから7200rpm、更には10000rpmと高速化する方向で進んでいるが、ディスク状の磁気記録媒体では、予め、中心軸からの距離に応じてデータを記録するポジションが割り当てられるため、ディスクが回転中に変形を起こすと磁気ヘッドの位置ズレが起こり、正確な読み取りが困難となる。したがって上記高速回転化に対応するために、ガラス基板には高速回転時に大きな変形を起こさない高い剛性(ヤング率)を有することも求められる。本発明の磁気記録媒体基板用ガラスの好ましい態様では、75GPa以上のヤング率を有するため、前記ガラスを用いて基板を作製することにより、高速回転時の基板変形を抑制し、高Ku磁性材料を備えた高記録密度化された磁気記録媒体においても、データの読み取り、書き込みを正確に行うことができる。ヤング率のより好ましい範囲は78GPa以上であり、さらに好ましくは80GPa以上、一層好ましくは82GPa以上である。ヤング率の上限は、特に限定されるものではないが、他の特性を好ましい範囲にする上から、例えば90GPaを上限の目安と考えることができる。なおヤング率も化学強化の前後でほぼ一定の値となる。
磁気記録媒体を高速回転させたときの変形(基板のたわみ)を抑制する上から、基板材料として高い比弾性率を有するガラスが好ましい。比弾性率も化学強化の前後でほぼ一定の値となるが、本発明の磁気記録媒体基板用ガラスにおける比弾性率の好ましい範囲は、25MNm/kg以上であり、27MNm/kg以上であることがより好ましく、30MNm/kg以上であることがさらに好ましい。その上限は、例えば37MNm/kg程度であるが特に限定されるものではない。比弾性率はガラスのヤング率を密度で除したものである。ここで密度とはガラスの比重に、g/cm3という単位を付けた量と考えればよい。ガラスの低比重化によって、比弾性率を大きくすることができることに加え、基板を軽量化することができる。基板の軽量化により、磁気記録媒体の軽量化がなされ、磁気記録媒体の回転に要する電力を減少させ、HDDの消費電力を抑えることができる。本発明の磁気記録媒体基板用ガラスの比重の好ましい範囲は2.9以下、より好ましい範囲は2.8以下、さらに好ましい範囲は2.7以下である。比重も化学強化前後でほぼ一定の値となる。
磁気記録媒体用ガラス基板を生産する際には、ガラスをディスク形状に加工し、主表面を極めて平坦かつ平滑に加工する。そして、前記加工工程の後、通常、ガラス基板を酸洗浄して表面に付着した汚れである有機物を除去する。ここでガラス基板が耐酸性に劣るものであると、上記酸洗浄時に面荒れを起こし、平坦性、平滑性が損なわれ磁気記録媒体用ガラス基板として使用することが困難となる。特にガラス基板表面の高い平坦性、平滑性が求められる高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する、高記録密度化された磁気記録媒体用ガラス基板の材料には、優れた耐酸性を有するガラスが望ましい。
また、酸洗浄に続いて、アルカリ洗浄して表面に付着した研磨剤などの異物を除去して一層清浄な状態の基板を得ることができる。アルカリ洗浄時にも面荒れによる基板表面の平坦性、平滑性の低下を防ぐ上からガラス基板の材料として、耐アルカリ性に優れたガラスが好ましい。優れた耐酸性および耐アルカリ性を有し基板表面の平坦性、平滑性が高いことは、磁気ヘッドの低浮上量化の観点からも有利である。本発明では前記したガラス組成の調整、特に化学的耐久性に有利な組成調整を行うことにより、優れた耐酸性および耐アルカリ性を実現することができる。
ガラスを熔融し、得られた熔融ガラスを成形する際、成形温度が液相温度を下回るとガラスが結晶化し、均質なガラスが生産できない。そのためガラス成形温度は液相温度以上にする必要があるが、成形温度が1450℃を超えると、例えば熔融ガラスをプレス成形する際に用いるプレス成形型が高温のガラスと反応して、ダメージを受けやすくなる。熔融ガラスを鋳型に鋳込んで成形する場合も同様に鋳型がダメージを受けやすくなる。こうした点に配慮し、本発明のガラス基板を構成するガラスの液相温度は1450℃以下であることが好ましい。液相温度のより好ましい範囲は1430℃以下、さらに好ましい範囲は1400℃以下である。本発明では前記したガラス組成調整を行うことにより、上記好ましい範囲の液相温度を実現することができる。下限は特に限定されないが、800℃以上を目安に考えればよい。
磁気記録媒体は、ガラス基板上に磁気記録層を含む多層膜を成膜する工程を経て生産される。現在、主流になっている枚葉式の成膜方式で基板上に多層膜を形成する際、例えばまずガラス基板を成膜装置の基板加熱領域に導入しスパッタリングリングなどによる成膜が可能な温度にまでガラス基板を加熱昇温する。ガラス基板の温度が十分昇温した後、ガラス基板を第1の成膜領域に移送し、ガラス基板上に多層膜の最下層に相当する膜を成膜する。次にガラス基板を第2の成膜領域に移送し、最下層の上に成膜を行う。このようにガラス基板を後段の成膜領域に順次移送して成膜することにより、多層膜を形成する。上記加熱と成膜は真空ポンプにより排気された低圧下で行うため、ガラス基板の加熱は非接触方式を取らざるを得ない。そのため、ガラス基板の加熱には輻射による加熱が適している。この成膜はガラス基板が成膜に好適な温度を下回らないうちに行う必要がある。各層の成膜に要する時間が長すぎると加熱したガラス基板の温度が低下し、後段の成膜領域では十分なガラス基板温度を得ることができないという問題が生じる。ガラス基板を長時間にわたって成膜可能な温度を保つためには、ガラス基板をより高温に加熱することが考えられるが、ガラス基板の加熱速度が小さいと加熱時間をより長くしなければならず、加熱領域にガラス基板が滞在する時間も長くしなければならない。そのため各成膜領域におけるガラス基板の滞在時間も長くなり、後段の成膜領域では十分なガラス基板温度を保てなくなってしまう。さらにスループットを向上することも困難となる。特に高Ku磁性材料からなる磁気記録層を備えた磁気記録媒体を生産する場合、所定時間内にガラス基板を高温に加熱するために、ガラス基板の輻射による加熱効率を一層高めるべきである。
上記ガラスには、波長2750〜3700nmを含む領域に吸収ピークが存在し得る。また、後述する赤外線吸収剤を添加するか、ガラス成分として導入することにより、さらに短波長の輻射の吸収を高めることができ、波長700nm〜3700nmの波長領域に吸収を持たせることができる。ガラス基板を輻射、すなわち、赤外線照射により効率よく加熱するには、上記波長域にスペクトルの極大が存在する赤外線を用いることが望まれる。加熱速度を上げるには、赤外線のスペクトル極大波長と基板の吸収ピーク波長をマッチさせるとともに赤外線パワーを増やすことが考えられる。赤外線源として高温状態のカーボンヒータを例にとると、赤外線のパワーを増加するにはカーボンヒータの入力を増加すればよい。しかし、カーボンヒータからの輻射を黒体輻射と考えると、入力増加によってヒータ温度が上昇するため、赤外線のスペクトルの極大波長が短波長側にシフトし、ガラスの上記吸収波長域から外れてしまう。そのため、基板の加熱速度を上げるためにはヒータの消費電力を過大にしなければならず、ヒータの寿命が短くなってしまうなどの問題が発生する。
このような点に鑑み、上記波長領域(波長700〜3700nm)におけるガラスの吸収をより大きくすることにより、赤外線のスペクトル極大波長と基板の吸収ピーク波長を近づけた状態で赤外線の照射を行い、ヒータ入力を過剰にしないことが望ましい。そこで赤外線照射過熱効率を高めるため、ガラス基板としては、700〜3700nmの波長域に、厚さ2mmに換算した分光透過率が50%以下となる領域が存在するか、または、前記波長域にわたり、厚さ2mmに換算した分光透過率が70%以下となる透過率特性を備えるものが好ましい。例えば、鉄、銅、コバルト、イッテルビウム、マンガン、ネオジム、プラセオジム、ニオブ、セリウム、バナジウム、クロム、ニッケル、モリブデン、ホルミウムおよびエルビウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物は、赤外線吸収剤として作用し得る。また、水分または水分に含まれるOH基は、3μm帯に強い吸収を有するため、水分も赤外線吸収剤として作用し得る。ガラス組成に上記赤外線吸収剤として作用し得る成分を適量導入することにより、ガラス基板に上記好ましい吸収特性を付与することができる。上記赤外線吸収剤として作用し得る酸化物の添加量は、酸化物として質量基準で500ppm〜5%であることが好ましく、2000ppm〜5%であることがより好ましく、2000ppm〜2%であることがさらに好ましく、4000ppm〜2%の範囲がより一層好ましい。また、水分については、H2O換算の重量基準で200ppm超含まれることが好ましく、220ppm以上含まれることがより好ましい。
なお、Yb2O3、Nb2O5をガラス成分として導入する場合や清澄剤としてCe酸化物を添加する場合は、これら成分による赤外線吸収を基板加熱効率の向上に利用することができる。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、例えば、上記組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料を秤量し、混合して調合原料とし、この調合原料を熔融容器に投入して1400〜1600℃の範囲で加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製し、この熔融ガラスを成形して得ることができる。熔融ガラスの成形には、プレス成形法、キャスト法、フロート法、オーバーフローダウンドロー法などを使用することができる。後述する理由により、熔融ガラスの成形には、プレス成形法を用いることが特に好ましい。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化用ガラスとして好適である。
前述の組成調整により良好な化学強化性能を付与されているため、化学強化処理によってガラス表面にイオン交換層を容易に形成することができ、表面の一部または全部にイオン交換層を形成可能である。イオン交換層は、高温下、基板表面にアルカリ塩を接触させ、該アルカリ塩中のアルカリ金属イオンと基板中のアルカリ金属イオンを交換させることにより形成することができる。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の第一の態様(以下、ガラス基板Iという)は、上記本発明の磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化してなるガラス基板である。
本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化により前述の応力プロファイルを示すことができ、これにより遅れ破壊の発生を防ぐことができる。したがってガラス基板Iは、遅れ破壊が起きず、かつ、高い耐熱性と優れた機械的強度を有することができるガラス基板であり、上記磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化してなるガラスが有する諸々の特長を示すことができる。
ガラス基板IIの応力プロファイルの好ましい態様としては、両主表面近傍において圧縮応力値が極大となり、深さxが増加するにつれて圧縮応力値は減少し、圧縮応力と引張応力とが釣合う深さx0よりもさらに深くなるにつれて圧縮応力が引張応力に転じ、引張応力値が緩やかに増加して2つの主表面間の中央部または中央部近傍で極大値を取る態様を挙げることができる。当該極大値は、図1に示すように、深さ方向の一定領域で維持されている場合もある。このような応力プロファイルを取るガラス基板であれば、基板表面で発生したクラックの深さがx0より深くなっても引張応力によってクラックが急激に成長して破壊に至る遅れ破壊を防止することができる。
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスからなるガラス基板である。以下、図3および図4に基づき式(1)について説明する。
引張応力の最大値Tmaxとは、上記引張応力値の極大値である。図3中、引張応力と圧縮応力との中心線であるL線は、面積S1、S2、S3が、S1+S2=S3となるように決定される。S2側の主表面と平行な仮想直線と、2つの主表面に垂直でTmaxを通過する仮想直線との交点からS2側の主表面までの距離をDOLとすると、Tav=S3/(tsub−2×DOL)として、引張応力の平均値Tavが算出される。
ガラスIIIは、Tav/Tmax≧0.5であり、Tav/Tmax≧0.7であることが好ましく、Tav/Tmax≧0.8であることがより好ましい。Tav/Tmaxの上限値については、例えば、Tav/Tmax<1.0である。
式(1)で規定するTav/Tmaxは、先に図2を示し説明したアップヒルが存在しないことを示す指標として用いることができ、アップヒルが存在するガラス基板は、Tmaxが大きいため、Tav/Tmax<0.5となる。
これに対し、上記式(1)を満たすガラスは、アップヒルが存在しないため、遅れ破壊の発生が抑制されている。
なお図2に示すようにアップヒルが存在するガラス基板については、図4に示すように、L線は面積S4、S5、S6、S7、S8が、S4+S5+S6、=S7+S8となるように決定される。さらにTavは、Tav=(S7+S8−S6)/(tsub−2×DOL)として算出される。図2において、引張応力層はS6によって2つの層S7とS8とに分かれているが、図1に示すように引張応力層が一層からなる場合は、上記の通り、Tav=S3/(tsub−2×DOL)によりTavを算出すればよい。
このように、ガラス基板I、II、IIIは、高記録密度対応の磁気記録媒体用基板をはじめとする高い信頼性と優れた耐熱性を要求される用途に好適である。
例えば、好ましい態様としては、
バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなるガラス基板I;
バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスからなるガラス基板I;
バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まず、かつ引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスからなるガラス基板I;
などを挙げることができる。
本発明のガラス基板の好ましい態様は、破壊靭性値K1cが0.8MPa・m1/2以上、さらに好ましくは1.0MPa・m1/2以上、一層好ましくは1.1MPa・m1/2以上、より一層好ましくは1.2MPa・m1/2以上、さらに一層好ましくは1.3MPa・m1/2以上、なお一層好ましくは1.4MPa・m1/2以上、特に好ましくは1.5MPa・m1/2以上、最も好ましくは1.6MPa・m1/2以上であるガラス基板である。前述のように、磁気記録媒体の高記録密度化によって、媒体の回転速度が高速化し、磁気ヘッドと媒体との距離も益々減少傾向を辿っており、高速回転中の磁気記録媒体に磁気ヘッドが当たった衝撃基板が破損しないために、優れた耐衝撃性を有する基板が必要とされる。上記基板は破壊靱性値が大きいので、耐衝撃性に優れ、高記録密度化された磁気記録媒体用ガラス基板として好適である。
AKASHI社製の装置MVK−Eを用い、板状に加工した試料に押し込み荷重P[N]でビッカース圧子を押し込み、試料に圧痕およびクラックを導入する。試料のヤング率をE[GPa]、圧痕対角線長さをd[m]、表面クラックの半長をa[m]とすると破壊靭性値K1c[Pa・m1/2]は下式で表される。
K1c=[0.026(EP/π)1/2(d/2)(a)-2]/[(πa)-1/2]
なお、特記しない限り、本発明において破壊靭性値とは、荷重Pを9.81N(1000gf)として測定される破壊靭性値を意味する。破壊靱性値の測定は、圧痕対角線長さd、表面クラックの半長aを正確に測定する上から、ガラスの平滑面、例えば研磨された面において行うことが好ましい。上記破壊靱性値は、ガラス組成によっても変化し、また化学強化条件によっても変化するため、化学強化されたガラスからなる本発明の磁気記録媒体用ガラス基板を得るためには、組成調整および化学強化処理条件によって、上記破壊靱性値を所望の範囲とすることができる。
磁気記録層が形成される主表面は、下記(1)〜(3)のいずれか1つ以上の表面性を有することが好ましい。
(1)原子間力顕微鏡を用いて1μm×1μmの範囲で512×256ピクセルの解像度で測定される表面粗さの算術平均Raが0.15nm以下;
(2)5μm×5μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.12nm以下;
(3)波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waが0.5nm以下。
基板上に成膜する磁気記録層のグレインサイズは、例えば垂直記録方式では、10nm未満となっている。高記録密度化のため、ビットサイズが微細化されても、基板表面の表面粗さが大きいと、磁気特性の向上は見込めない。これに対し上記(1)、(2)の2種の表面粗さの算術平均Raが上記範囲の基板であれば、高記録密度化のためにビットサイズが微細化されても磁気特性の改善が可能である。また、上記(3)の表面うねりの算術平均Waを上記範囲にすることにより、HDDにおける磁気ヘッドの浮上安定性を向上させることができる。
したがって、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、(1)〜(3)のいずれかを満たすことが好ましく、(1)および(2)を満たすことがより好ましく、(1)〜(3)のすべてを満たすことがさらに好ましい。
ノートパソコン用のHDDには外径2.5インチサイズの磁気記録媒体が通常用いられ、それに使用されるガラス基板の板厚は0.635mmであったが、比弾性率を変えずとも基板の剛性を高め、耐衝撃性をさらに改善するため、板厚を厚くすることが好ましい。したがって、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板においては、板厚を0.5mm以上にすることが好ましく、基板の剛性を一層高める上から、例えば0.7mm以上の板厚とすることがより好ましく、0.8mm以上の板厚とすることがさらに好ましい。
さらに、高低熱性、高信頼性によって、エネルギーアシスト磁気記録用磁気記録媒体用のガラス基板に好適である。
また、上記(1)〜(3)の表面性を兼ね備えた基板を実現する上で、ガラスの耐酸性、耐アルカリ性を高めることは有効である。
次に磁気記録媒体用ガラス基板ブランクについて説明する。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板ブランクは、必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下であり、ガラス転移温度が650℃以上である。
ここで磁気記録媒体用ガラス基板ブランク(以下、基板ブランクという)とは、加工して磁気記録媒体用ガラス基板に仕上げる前の基板用ガラス母材を意味する。基板ブランクを構成するガラスの組成、特性、ならびに組成および特性の好ましい範囲については、先に説明したとおりである。
本発明の基板ブランクは磁気記録媒体用ガラス基板がディスク形状をしていることから、ディスク形状であることが好ましい。
プレス成形法では、流出する熔融ガラスを切断し、所要の熔融ガラス塊を得て、これをプレス成形型でプレス成形して薄肉円盤状の基板ブランクを作製する。
即ち、本発明は、必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下であり、ガラス転移温度が650℃以上であるガラスが得られるようにガラス原料を調合すること、調合したガラス原料を熔融して熔融ガラスを得ること、および、得られた熔融ガラスをプレス成形してガラスからなる基板ブランクを作製すること、を含む磁気記録媒体用ガラス基板ブランクの製造方法に関する。
プレス成形法の中でも、基板ブランク1個分に相当する熔融ガラスを落下させ、空中にある熔融ガラスをプレス成形する方法が好ましい。前記方法では、一対のプレス成形型で空中の熔融ガラスを挟んでプレスするので、各プレス成形型と接する面からガラスを均等に冷却することができ、平坦性のよい基板ブランクを製造することができる。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法の第一の態様は、上記本発明の基板ブランクを加工することを含む方法である。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法の第二の態様は、上記本発明の基板ブランクの製造方法により基板ブランクを作製すること、および前記基板ブランクを加工することを含む方法である。
いずれの態様においても、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む熔融塩にガラスを浸漬して化学強化する工程を備えることが好ましい。
上記ガラスを用いて基板ブランクが作られているので、ガラス基板の2つの主表面に垂直な仮想断面における引張応力が、前記2つの主表面間の中央部で極大になるように化学強化が行われる。
そのため、優れた耐熱性を備えるとともに、遅れ破壊が発生しにくいガラス基板を製造することができる。Li2Oを0.1モル%以上含むガラスを、前記熔融塩に浸漬して化学強化することが、遅れ破壊が発生しにくいガラス基板を得るうえで好ましい。
磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程では、化学強化工程後に化学強化の効果が維持される範囲で、更に研磨工程を行ってもよい。
次に磁気記録媒体について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、上記本発明の磁気記録媒体用ガラス基板上に磁気記録層を有する磁気記録媒体である。
前記磁気記録媒体は、例えば、ガラス基板の主表面上に、該主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成を有する、ディスク状磁気記録媒体(磁気ディスク、ハードディスクなどと呼ばれる)であることができる。
例えばガラス基板を、真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、ガラス基板主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。上記成膜後、例えばCVD法によりC2H4を用いて保護層を成膜し、同一チャンバ内で、表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(ポリフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
また、下地層と磁性層との間には、軟磁性層、シード層、中間層などを、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法などの公知の成膜方法を用いて形成してもよい。
上記各層の詳細については、例えば特開2009−110626号公報段落[0027]〜[0032]を参照できる。また、ガラス基板と軟磁性層との間には、熱伝導性の高い材料からなるヒートシンク層を形成することもできるが、その詳細は後述する。
このような磁気記録層を得るには、ガラス基板の主表面に、Feおよび/またはCoと、Ptとの合金を主成分とする磁性材料を成膜した後、アニール処理を行う。ここで、上記磁性材料の成膜温度は通常500℃超の高温である。更にこれら磁性材料は、成膜後に結晶配向性を揃えるため、上記アニール処理は成膜温度を超える温度で行われる。
したがって、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料を用いて磁気記録層を形成する際には基板が上記高温に晒されることとなる。ここで基板を構成するガラスが耐熱性に乏しいものであると、高温下で変形し平坦性が損なわれる。これに対し本発明の磁気記録媒体に含まれる基板は、優れた耐熱性(ガラス転移温度として650℃以上)を示すものであるため、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料を用いて磁気記録層を形成した後も、高い平坦性を維持することができる。
上記磁気記録層は、例えば、Ar雰囲気中、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料をDCマグネトロンスパッタリング法にて成膜し、次いで加熱炉内でより高温での熱処理を施すことにより形成することができる。
次に磁気記録装置について説明する。
本発明の磁気記録装置は、少なくとも磁気記録媒体の主表面を加熱するための熱源と、記録素子部と、再生素子部とを有する熱アシスト磁気記録ヘッド、および、上記本発明の磁気記録媒体を有するエネルギーアシスト磁気記録方式の磁気記録装置である。
本発明によれば、上記本発明の磁気記録媒体を搭載していることで、高記録密度かつ高い信頼性を有する磁気記録装置を提供することができる。
また、上記磁気記録装置は、破壊靱性の高い基板を備えるため、回転数が5000rpm以上、好ましくは7200rpm以上、より好ましくは10000rpm以上の高速回転においても十分な信頼性を有する。
さらに、上記磁気記録装置はDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載したものであることが、高記録密度化の観点から好ましい。
上記磁気記録装置として、デスクトップパソコン、サーバ用コンピュータ、ノート型パソコン、モバイル型パソコンなどの各種コンピュータの内部記憶装置(固定ディスクなど)、画像および/または音声を記録再生する携帯記録再生装置の内部記憶装置、車載オーディオの記録再生装置を例示することができる。
表2〜4に示す各組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料を秤量し、混合して調合原料とした。この原料を熔融容器に投入して1500〜1600℃の範囲で3〜6時間、加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製し、成形して8種のガラスを得た。得られたガラスNo.1〜No.16の中には泡や未熔解物、結晶の析出、熔融容器を構成する耐火物の混入物は認められなかった。
次に、下記方法AまたはBにより、円盤状の基板ブランクを作製した。
(方法A)
清澄、均質化した上記熔融ガラスをパイプから一定流量で流出するとともにプレス成形用の下型で受け、下型上に所定量の熔融ガラス塊が得られるよう流出した熔融ガラスを切断刃で切断した。そして熔融ガラス塊を載せた下型をパイプ下方から直ちに搬出し、下型と対向する上型および胴型を用いて、直径66mm、厚さ2mmの薄肉円盤状にプレス成形した。プレス成形品を変形しない温度にまで冷却した後、型から取り出してアニールし、基板ブランクを得た。なお、上記成形では複数の下型を用いて流出する熔融ガラスを次々に円盤形状の基板ブランクに成形した。
(方法B)
清澄、均質化した上記熔融ガラスを円筒状の貫通孔が設けられた耐熱性鋳型の貫通孔に上部から連続的に鋳込み、円柱状に成形して貫通孔の下側から取り出した。取り出したガラスをアニールした後、マルチワイヤーソーを用いて円柱軸に垂直な方向に一定間隔でガラスをスライス加工し、円盤状の基板ブランクを作製した。
なお、本実施例では上記方法A、Bを採用したが、円盤状の基板ブランクの製造方法としては、下記方法C、Dも好適である。
(方法C)
上記熔融ガラスをフロートバス上に流し出し、シート状のガラスに成形(フロート法による成形)し、次いでアニールした後にシートガラスから円盤状のガラスをくり貫いて基板ブランクを得ることもできる。
(方法D)
上記熔融ガラスをオーバーフローダウンドロー法(フュージョン法)によりシート状のガラスに成形、アニールし、次いでシートガラスから円盤状のガラスをくり貫いて基板ブランクを得ることもできる。
上記各方法で得られた基板ブランクの中心に貫通孔をあけて、外周、内周の研削加工を行い、円盤の主表面をラッピング、ポリッシング(鏡面研磨加工)して直径65mm、厚さ0.8mmの磁気ディスク用ガラス基板に仕上げた。得られたガラス基板は、1.7質量%の珪弗酸(H2SiF)水溶液、次いで、1質量%の水酸化カリウム水溶液を用いて洗浄し、次いで純水ですすいだ後に乾燥させた。表2に示す10種のガラスから作製した基板の表面を拡大観察したところ、表面荒れなどは認められず、平滑な表面であった。
次に上記ディスク状のガラス基板を硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合熔融塩に浸漬し、イオン交換(化学強化)によって表面にイオン交換層を有するガラス基板を得た。化学強化条件を表2〜4に示す。このようにイオン交換処理(化学強化処理)を施すことは、ガラス基板の耐衝撃性を高めるために有効である。イオン交換処理を施した複数枚のガラス基板から、サンプリングしたガラス基板の断面(イオン交換層を切る面)をバビネ法により観察し、イオン交換層が形成されていることを確認した。
イオン交換層はガラス基板表面の全域に形成してもよいし、外周面のみに形成してもよいし、外周面と内周面のみに形成してもよい。
また、イオン交換処理後、イオン交換層を残すように鏡面研磨処理を行ってもよい。破壊靭性値K1cを大きく低下させないためにはイオン交換層を十分残すことが好ましい。この点から、鏡面研磨処理による取代は、5μm以下とすることがより好ましい。
以下の方法により、上記ガラス基板の主表面上に、付着層、下地層、磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成し、磁気ディスクを得た。
まず、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にて、Ar雰囲気中で、付着層、下地層および磁性層を順次成膜した。
このとき、付着層は、厚さ20nmのアモルファスCrTi層となるように、CrTiターゲットを用いて成膜した。続いて枚葉・静止対向型成膜装置を用いて、Ar雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリング法にて下地層としてCrRuからなる10nm厚の層を形成した。また、磁性層は、厚さ10nmのFePtまたはCoPt層となるように、FePtまたはCoPtターゲットを用いて成膜温度400℃にて成膜した。
磁性層までの成膜を終えた磁気ディスクを成膜装置から加熱炉内に移し、650〜700℃の温度範囲において条件を適宜選択してアニールした。
続いて、エチレンを材料ガスとしたCVD法により水素化カーボンからなる保護層を3nm形成した。この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)を用いてなる潤滑層をディップコート法により形成した。潤滑層の膜厚は1nmであった。
以上の製造工程により、磁気ディスクを得た。
(1)ガラス転移温度Tg、熱膨張係数
化学強化処理を施す前の試料のガラス転移温度Tg、ならびに100〜300℃および500〜600℃における平均線膨張係数αを、リガク社製の熱機械分析装置(Thermo plus TMA8310)を用いて測定した。なお上記特性は、いずれも化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理後のガラス基板も、上記測定によって得られたガラス転移温度Tg、ならびに100〜300℃および500〜600℃における平均線膨張係数αを有するものとみなす。
(2)ヤング率
化学強化処理を施す前の試料のヤング率を超音波法にて測定した。なおヤング率は、化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理後のガラス基板も、上記測定によって得られたヤング率を有するものとみなす。
(3)比重
化学強化処理を施す前の試料の比重をアルキメデス法にて測定した。なお比重は、化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理後のガラス基板も、上記測定によって得られた比重を有するものとみなす。
(4)比弾性率
上記(2)で得られたヤング率および(3)で得られた比重から、比弾性率を算出した。
(5)破壊靭性値
AKASHI社製の装置MVK−Eを用い、板状に加工し表2〜4に記載の条件で化学強化処理を施した試料に押し込み荷重9.81Nでビッカース圧子を押し込み、試料に圧痕およびクラックを導入した。
試料のヤング率をE[GPa]、圧痕対角線長さ、表面クラックの半長を測定し、荷重、試料のヤング率から破壊靭性値K1cを算出した。
(6)Tav/Tmax
板状に加工し表2〜4に記載の条件で化学強化処理を施した試料について、板厚方向の断面をバビネ法で観察し、前述の方法でTmaxとTavを算出し、算出した値からTav/Tmaxを求めた。
化学強化処理前後の各基板の主表面(磁気記録層等を積層する面)の5μm×5μmの矩形領域を512×256ピクセルの解像度で原子間力顕微鏡(AFM)により観察し、1μm×1μmの範囲で512×256ピクセルの解像度で測定される表面粗さの算術平均Ra、5μm×5μmの範囲で512×256ピクセルの解像度で測定される表面粗さの算術平均Raを測定した。さらに、各基板の主表面を光学式表面形状測定装置により観察し、波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waを測定した。
測定の結果、1μm×1μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.05〜0.15nmの範囲、5μm×5μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.03〜0.12nmの範囲、波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waが0.2〜0.5nmであり、高記録密度の磁気記録媒体に用いられる基板として問題のない範囲であった。
一方、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が約0.29と大きい表5に示すガラス(No.17)を用いて熔融塩の温度500℃で化学強化を行ったところ、破壊靭性値は0.74MPa・m1/2であった。さらに、複数枚のガラスを同時に500℃の熔融塩に浸漬し、化学強化したところ、急激に熔融塩が劣化し、強化後の破壊靭性値は0.74MPa・m1/2に達しなかった。同様に複数枚のガラスを順次、500℃の熔融塩に浸漬し、化学強化しても、2回目以降に化学強化したガラスの破壊靭性値は急激に低下した。これは、前述のとおり、ガラス組成中に含まれるCa2+イオンが熔融塩中に溶け出し、アルカリ金属イオン同士のイオン効果を阻害したためと推察される。なお、同様の結果が、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.2より大きい場合にも見られた。
これに対し、表2〜4に示すNo.1〜16の各ガラスでは、同時に複数枚のガラスを熔融塩に浸漬して化学強化しても、0.80MPa・m1/2に以上の破壊靭性値を維持することができた。また、No.1〜16の各ガラスでは、複数枚のガラスを順次、熔融塩に浸漬して化学強化しても、0.80MPa・m1/2以上の破壊靭性値を維持することができた。
このように、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下のガラスでは、化学強化による熔融塩の劣化が生じにくく、高い破壊靭性値を有する化学強化ガラスを安定して生産することができる。これに対し、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20を超えると、化学強化によって熔融塩が劣化し、高い破壊靭性値を維持することが困難になる。
なお化学強化後のNo.1〜No.7のガラスには、表面に深さ30〜120μmの圧縮応力層が形成されており、圧縮応力の大きさは2.0kgf/mm2以上の値(19.6MPa以上の値)となっている。またNo.8〜No.16のガラスには、表面に深さ20〜120μmの圧縮応力層が形成されており、圧縮応力の大きさは2.0kgf/mm2以上の値(19.6MPa以上の値)となっている。
以上の結果から、本発明によれば、磁気記録媒体基板に求められる特性を兼ね備えたガラスが得られることが確認された。
また、イオン交換処理後に0.5〜5μmの範囲内の取代で鏡面研磨を実施したこと以外は上記と同様にしてガラス基板を作製した。得られた複数枚のガラス基板の断面をバビネ法により観察したところ、イオン交換層が形成されており、機械的強度の劣化は見られなかった。その他特性については上記と同様であった。
上記の応力プロファイルを示す化学強化ガラス基板が遅れ破壊を示さないことを実証するため、以下の試験を行った。
実施例において破壊靭性値を測定した化学強化処理後の試料には、押し込み荷重9.81Nでビッカース圧子を押し込んでできた圧痕が存在する。この圧痕のある試料を環境試験機に入れて温度80℃、相対湿度80%の環境下に7日間放置した後、取り出し、圧痕を観察した。試料は、各実施例ともに100枚ずつ用意し、上記試験を行った結果、いずれの試料においても圧痕からのクラックの伸長は認められなかった。
これに対し、Na2O、K2Oを含みLi2Oを含まないガラス、例えば、No.1のガラス組成において、Li2Oの全量をNa2Oに置換した組成を有するガラス、を硝酸カリウムの熔融塩に浸漬して化学強化した試料は、バビネ法による応力プロファイルにおいて、図2に示すようにアップヒルが観察され、Tav/Tmax<0.5であった。当該試料について、上記試験を行ったところ、100枚のうち8枚について、圧痕からのクラックの伸長が認められ、3枚についてはクラックの伸長が著しく、破損していた。
以上の遅れ破壊の加速試験の結果から、実施例の化学強化ガラス基板において遅れ破壊防止効果が得られていることを確認した。
(1)平坦性
一般に、平坦度が5μm以下であれば信頼性の高い記録再生を行うことができる。上記方法で実施例のガラス基板を用いて形成した各磁気ディスク表面の平坦度(ディスク表面の最も高い部分と、最も低い部分との上下方向(表面に垂直な方向)の距離(高低差))を、平坦度測定装置で測定したところ、いずれの磁気ディスクも平坦度は5μm以下であった。この結果から、実施例のガラス基板は、FePt層またはCoPt層形成時の高温処理においても大きな変形を起こさなかったことが確認できる。
(2)ロードアンロード試験
上記方法で実施例のガラス基板を用いて形成した各磁気ディスクを、回転数10000rpmの高速で回転する2.5インチ型ハードディスクドライブに搭載し、ロードアンロード(Load Unload、以下、LUL)試験を行った。上記ハードディスクドライブにおいて、スピンドルモーターのスピンドルはステンレス製であった。いずれの磁気ディスクもLULの耐久回数は60万回を超えた。また、LUL試験中にスピンドル材料との熱膨張係数の違いによる変形や高速回転によるたわみが生じると試験中にクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害が生じるが、いずれの磁気ディスクも試験中にこれら障害は発生しなかった。
(3)耐衝撃性試験
磁気ディスク用ガラス基板(2.5インチサイズ、板厚0.8mm)を作製し、ランスモント社製MODEL−15Dを用いて衝撃試験を行った。この衝撃試験は、磁気ディスク用ガラス基板を、HDDのスピンドルおよびクランプ部に似せて作製された専用の衝撃試験用治具に組み付け、1msecで1500Gの正弦半波パルスの衝撃を主表面に対する垂直方向に与え、この磁気ディスク用ガラス基板の破損状況を見ることによって行った。その結果、実施例のガラス基板においては破損が観察されなかった。
Claims (40)
- 必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
である磁気記録媒体基板用ガラス。 - モル%表示で、
SiO2を55〜78%、
Li2Oを0%を超えて5%以下、
Na2Oを2〜15%、
MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で10〜25%、
含む請求項1に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。 - Al2O3を0〜12モル%含む請求項2に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- Na2Oの含有量に対するCaOの含有量のモル比CaO/Na2Oが1.5以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、Nb2O5、Ta2O5およびHfO2からなる群から選ばれる一種以上を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、Nb2O5、Ta2O5およびHfO2の合計含有量が0〜10モル%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- SiO2、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Yb2O3、Nb2O5、Ta2O5およびHfO2の合計含有量が66モル%以上である請求項5または6に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- ZrO2を0〜6モル%含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- SiO2およびZrO2の合計含有量が66モル%以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
- 100〜300℃における平均線膨張係数が50×10-7/℃以上、
ヤング率が75GPa以上、かつ
比弾性率が25MNm/kg以上、
である請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。 - 請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化することにより得られた化学強化ガラスからなる磁気記録媒体用ガラス基板。
- 前記化学強化ガラスは、バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスである請求項11に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 前記化学強化ガラスは、バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
である化学強化ガラスである請求項11または12に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - ガラス転移温度が650℃以上であり、かつ、
バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなる磁気記録媒体用ガラス基板。 - ガラス転移温度が650℃以上であり、かつ、
バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスからなる磁気記録媒体用ガラス基板。 - 前記化学強化ガラスは、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む熔融塩に浸漬して化学強化されたガラスである請求項11〜16のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- Li2Oを0.1モル%以上含むガラスを前記熔融塩に浸漬して化学強化されたガラスである請求項16に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 破壊靭性値K1cが0.8MPa・m1/2以上である請求項11〜17のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 原子間力顕微鏡を用いて1μm角で512×256ピクセルの解像度で測定し主表面の算術平均粗さ(Ra)が0.15nm以下である請求項11〜18のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 板厚が0.5mm以上である請求項11〜19のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 回転数が5000rpm以上の磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用のガラス基板である請求項11〜20のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- DFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載した磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用のガラス基板である請求項11〜21のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- エネルギーアシスト磁気記録用磁気記録媒体に用いられる請求項11〜22のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
である磁気記録媒体用ガラス基板ブランク。 - ディスク形状である請求項24に記載の磁気記録媒体用ガラス基板ブランク。
- 必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下、
ガラス転移温度が650℃以上、
であるガラスが得られるようにガラス原料を調合すること、
調合したガラス原料を熔融して熔融ガラスを得ること、および、
得られた熔融ガラスをプレス成形してガラスからなる基板ブランクを作製すること、
を含む磁気記録媒体用ガラス基板ブランクの製造方法。 - 前記熔融ガラスをディスク形状にプレス成形する請求項26に記載の磁気記録媒体用ガラス基板ブランクの製造方法。
- 空中にある熔融ガラスをプレス成形する請求項26または27に記載の磁気記録媒体用ガラス基板ブランクの製造方法。
- 請求項24または25に記載の磁気記録媒体用ガラス基板ブランクを加工することを含む磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 請求項26〜28のいずれか1項に記載の方法により磁気記録媒体用ガラス基板ブランクを作製すること、および、
前記基板ブランクを加工すること、
を含む磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。 - ナトリウム塩およびカリウム塩を含む熔融塩にガラスを浸漬して化学強化することを含む請求項29または30に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- Li2Oを0.1モル%以上含むガラスを前記熔融塩に浸漬して化学強化する請求項31に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
Tav/Tmax≧0.5
を満たす化学強化ガラスとなるように前記化学強化を行う請求項31または32に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。 - バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスとなるように前記化学強化を行う請求項31または32に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 請求項11〜21のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板上に磁気記録層を有する磁気記録媒体。
- 前記磁気記録層はFeおよび/またはCoと、Ptとの合金を主成分とする磁性材料を含む磁気記録層であり、前記磁気記録媒体はエネルギーアシスト磁気記録用磁気記録媒体である請求項35に記載の磁気記録媒体。
- 請求項11〜23のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の主表面に、Feおよび/またはCoと、Ptとの合金を主成分とする磁性材料を成膜した後、アニール処理を行うことにより磁気記録層を形成することを含む磁気記録媒体の製造方法。
- 少なくとも磁気記録媒体の主表面を加熱するための熱源と、記録素子部と、再生素子部とを有する熱アシスト磁気記録ヘッド、および、請求項35または36に記載の磁気記録媒体を有するエネルギーアシスト磁気記録方式の磁気記録装置。
- 回転数が5000rpm以上である請求項38に記載の磁気記録装置。
- DFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載した請求項38または39に記載の磁気記録装置。
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