JPWO2013080705A1 - グラファイトフィルム及びグラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する矯正処理工程を実施する。この矯正処理によって、グラファイトフィルムのたるみを制御する。矯正処理工程において複数の表面状態の異なる内芯を用いることによって、それぞれが効果を有する2つ以上のたるみを1つのシートの中に有するグラファイトフィルムを作製することができる。

Description

本発明は、たるみを制御したグラファイトフィルム、及びグラファイトフィルムのたるみを制御したグラファイトフィルムの製造方法に関する。
放熱部品は、コンピュータなどの各種電子・電気機器に搭載されている半導体素子や他の発熱部品などに用いられる。放熱部品の中でも大型製品に用いられる場合において、グラファイトフィルムは高分子フィルムを原料とした長尺・大面積のグラファイトフィルムが好ましく、これを製造するための検討が行われている。例えば、外径150mmの炭素質円筒状内芯に幅250mm×長さ30mの高分子フィルムを巻き付けて熱処理する方法が提案されている(特許文献1)。
日本国公開特許公報「特開2006−327907号(2006年12月7日公開)」
特許文献1の方法では、グラファイトフィルムのたるみを制御することができず、図1のような大きなたるみZgsが生じていた。
すなわち、本発明は、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルム(請求項1)に関する。
本発明は、2つ以上の異なるたるみ形状のそれぞれの領域は、最も長手方向の長さがそれぞれ2.0m以上であるグラファイトフィルム(請求項2)に関する。
本発明は、2つの異なるたるみ形状が、フラットと中央たるみ、フラットと端部たるみ、フラットと片たるみ、中央たるみと端部たるみ、中央たるみと片たるみ、端部たるみと片たるみ、のいずれかの組み合わせであるグラファイトフィルム(請求項3)に関する。
本発明は、2つ以上の異なるたるみ形状が、それぞれ、フラット、中央たるみ、端部たるみ、片たるみから選ばれるいずれか1つのたるみ形状であり、隣り合う2つのたるみ形状は互いに異なっているグラファイトフィルム(請求項4)に関する。
本発明は、前記フラットは、JIS C2151によるフィルムの巻き取り性評価におけるたるみが4.9mm以下のたるみ形状であるグラファイトフィルム(請求項5)に関する。
本発明は、前記中央たるみは、グラファイトフィルムの中央部のたるみb値が5mm以上80mm以下のたるみ形状であるグラファイトフィルム(請求項6)に関する。
本発明は、前記端部たるみは、グラファイトフィルムの端部のたるみa値が5mm以上80mm以下のたるみ形状であるグラファイトフィルム(請求項7)に関する。
本発明は、前記片たるみは、グラファイトフィルムの曲がりが11mm以上80mm以下のたるみ形状であるグラファイトフィルム(請求項8)に関する。
また、本発明は、原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する矯正処理工程を含むグラファイトフィルムの製造方法であって、前記グラファイトフィルムは、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルムであるグラファイトフィルムの製造方法(請求項9)に関する。
本発明は、高分子フィルムから2000℃以上の熱処理によって得られたグラファイトフィルムを、少なくとも1度、2000℃未満の温度条件にまで冷やして前記原料グラファイトフィルムを得る工程を含み、当該工程の後で前記矯正処理工程を行なうグラファイトフィルムの製造方法(請求項10)に関する。
本発明は、前記矯正処理工程において、原料グラファイトフィルムを内芯に巻きつけた状態で熱処理するグラファイトフィルムの製造方法(請求項11)に関する。
また、本発明は、原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する矯正処理工程を含み、前記矯正処理工程において、原料グラファイトフィルムを少なくとも2本の内芯に巻きつけた状態で熱処理するグラファイトフィルムの製造方法であって、前記グラファイトフィルムは、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルムであるグラファイトフィルムの製造方法(請求項12)に関する。
また、本発明は、高分子フィルムに対して、下記a)〜d)のうちの少なくとも2つのたるみ制御工程を施す工程を含み、当該工程の後で、前記高分子フィルムを2000℃以上で熱処理するグラファイトフィルムの製造方法(請求項13)に関する。つまり、
a)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度を高分子フィルムの幅方向の中央部の温度に比べて高くし、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が3.5℃/m以上75.0℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
b)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度を高分子フィルムの幅方向の中央部の温度に比べて低くし、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が−75℃/m以上−3.5℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
c)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が−3.4℃/m以上3.4℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
d)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の一方の端部の温度をA、もう一方の端部の温度をC、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度をBとしたときに、温度A≧温度B≧温度C、かつ、温度A≠温度Cであり、温度Aから温度Cへの温度勾配が2.5℃/m以上200℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程。
なお、上記a)では、温度勾配の好ましい下限値は10.0℃/m以上であり、好ましい上限値は、50.0℃/m以下である。
また、上記b)では、温度勾配の好ましい下限値は−50.0℃/m以上であり、好ましい上限値は、−10.0℃/m以下である。
また、上記c)では、温度勾配は、好ましくは−3.0℃/m以上3.0℃/m以下であり、更に好ましくは−2.5℃/m以上2.5℃/m以下であり、特に好ましくは−2.0℃/m以上2.0℃/m以下である。
また、上記d)では、温度勾配の好ましい下限値は5.0℃/m以上であり、好ましい上限値は、150℃/m以下である。
本発明のグラファイトフィルムは、グラファイトフィルムのたるみ形状を制御するためのもので、特に、1つの連続するグラファイトフィルムに2つ以上の異なるたるみ形状を有するものである。
また、本発明のグラファイトフィルムの製造方法によれば、グラファイトフィルムのたるみを制御でき、それぞれに効果のある2つ以上のたるみ形状を1つのシートの中に有するグラファイトフィルムを作製することができる。
1つのたるみ形状が連続したグラファイトフィルム。 JIS C2151記載のたるみ測定の模式図。 フラット形状を有するグラファイトフィルム。 中央部にたるみのあるグラファイトフィルム。 端部にたるみを有するグラファイトフィルム。 片たるみを有するグラファイトフィルム。 シート状の原料グラファイトフィルムの面に荷重を加える方法。 内芯の熱膨張を利用して原料グラファイトフィルムを押し広げる方法。 拡張する機能を有する内芯で矯正処理を行う方法。 各種たるみを作製するための内芯を示す概念図。 中央外周、端部1外周、端部2外周についての説明図。 巻替工程の一例。 2つの内芯を使用し、2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製する方法。 a値の模式図。 b値の模式図。 JIS C2151記載の曲がり測定の模式図。 原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの熱拡散率測定サンプルとMIT測定サンプルの採取場所。 ラミネート性テストの模式図。 (第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点)−(第一ロールの中心点)−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度の説明図。 グラファイト複合フィルムにおける貼り合わせシワの概観写真。 圧延処理の概略。 圧延処理にて発生するグラファイトフィルムの折れシワの概観写真。 引裂け性テストの模式図。 グラファイトフィルムの裂け不良を示す図。 本発明の炭化処理に使用した冶具の例示。 横向きで黒鉛化工程を行うための容器の例示。 M形状及びW形状のグラファイトフィルムの模式図。 2つの内芯を使用し、3つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製する方法。 1つの内芯を使用し、2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製する方法。 長尺連続式でのたるみ制御工程の模式図。 実施例、比較例の炭化、黒鉛化工程のセット方法。 フィルムの端部、中央部の定義の説明図。
本発明は、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルムに関するものである。
グラファイトフィルムの「たるみ」とは、JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価によって測定できるフィルムに現れる「歪み」である。図2のようにある一定の長さのフィルムを巻き戻し、規定の条件の下で2本の平行な棒に直角方向に載せ、均一な懸垂線からの偏差を測定する。「たるみ」をもつフィルムは、フィルムを引っ張ったときに、フィルムの一部がたるむことで確認できる。
グラファイトフィルムは、たるみの形状によって様々な効果を発揮させることができる。
本発明において、「たるみ形状」とは、フラットな形状、端部にたるみを有する形状、中央にたるみを有する形状、片たるみを有する形状、のいずれかを意味する。たるみ形状の特徴としては、例えば、フラットなグラファイトフィルムは他シートとのラミネートが実施しやすいし、端部にたるみを有するグラファイトフィルムは、長手方向に張力を加えた際に端部に応力が集中しないために引裂け難いといった機能を有する。また、中央にたるみを有するグラファイトフィルムは、ロール圧延を実施した際に折れシワが発生し難いし、片たるみを有するグラファイトフィルムは曲面へのフィット性に優れる。
しかしながら、従来のグラファイトフィルムは、たるみを制御することができなかったために、このような機能を有していなかった。本発明のグラファイトフィルムは、連続するグラファイトフィルムにおいて2つ以上の異なるたるみ形状を有している。このように、たるみ形状を制御しているために、このような様々な機能を発現することが可能である。しかも、1つのシート内に2つ以上の異なるたるみ形状を有しているために、効率的に複数のたるみ形状を得ることができる。
<制御されたたるみ形状の種類>
その制御されたたるみ形状の種類としては、1)フラットなグラファイトフィルム(図3)、2)中央にたるみを有するグラファイトフィルム(図4)、3)端部にたるみを有するグラファイトフィルム(図5)、4)片たるみを有するグラファイトフィルム(図6)が挙げられる。これらの組み合わせにより、本発明の少なくともの2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムは構成される。
1)フラットなグラファイトフィルムとは、たるみが非常に小さくフラットなグラファイトフィルムのことをいう。このフラットなグラファイトフィルムは、たるみを測定すると、4.9mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下である。下限値は特に制限はない。たるみが4.9mm以下であれば、例えば銅箔テープ等の粘着テープとのラミネートにおいてシワなく貼り合わせできるために好ましい。たるみ形状の測定方法と、銅箔テープとのラミネート性評価についての詳細は実施例の項に示す。
2)中央にたるみを有するグラファイトフィルムとは、図4のように、フィルムの幅方向の中央部にたるみがあるフィルムをいう。この中央にたるみを有するグラファイトフィルムにおけるたるみは、たるみb値を測定することで評価できる。たるみb値とは、JIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしたとき、グラファイトフィルムの幅方向の中央部に生じるたるみである。
中央にたるみを有するグラファイトフィルムのb値は、5mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは40mm以上である。上限値は、好ましくは80mm以下、より好ましくは70mm以下、更に好ましくは60mm以下である。b値が5mm以上であれば、圧延処理の際に端部に折れシワが発生しにくいために、好ましい。一方、b値が80mm以下であれば、グラファイトフィルムを長手方向に引き伸ばした際に、引裂けにくいために好ましい。詳細の測定方法は実施例の項に示す。
3)端部にたるみを有するグラファイトフィルムとは、図5のように、フィルムの幅方向の両端部にたるみがあるフィルムをいう。端部にたるみを有するグラファイトフィルムにおけるたるみは、たるみa値を測定することで評価できる。たるみa値とは、JIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしたとき、グラファイトフィルムの幅方向の端部に生じるたるみである。
端部にたるみを有するグラファイトフィルムのa値は、5mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは40mm以上である。上限値は、好ましくは80mm以下、より好ましくは70mm以下、更に好ましくは60mm以下である。a値が5mm以上であれば、巻き替えの際に端部に応力が集中しないために引裂けにくく、好ましい。一方、a値が80mm以下であれば、グラファイトフィルムの巻き替えの際に端部がそろうために、好ましい。詳細の測定方法は実施例の項に示す。
4)片たるみを有するグラファイトフィルムとは、図6のように、フィルムの幅方向の片端部にたるみがあるフィルムをいう。片たるみを有するグラファイトフィルムの歪の程度は、JIC C2151記載の曲がりを測定することで評価できる。
片たるみを有するグラファイトフィルムの曲がりは、11mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。上限値は特に制限はないが、好ましくは80mm以下、より好ましくは70mm以下、更に好ましくは60mm以下である。曲がりが11mm以上であれば、Rのある板材への貼り合わせが実施しやすい特徴がある。一方、曲がりが80mm以下であれば、グラファイトフィルムを長手方向に引き伸ばした際に、引裂けにくいために好ましい。詳細の測定方法は実施例の項に示す。
<たるみ形状の応用>
本発明の概念を利用することで、これらの組み合わせからなるM字やW字などのような様々なたるみ形状を有するグラファイトフィルムを得ることも可能である。なお、M字やW字とは、図27のようにグラファイトフィルムを側面から見た際に、M形状やW形状に見えるグラファイトフィルムの形状をいう。
<たるみが制御されたグラファイトフィルムの製造方法の一例>
このようなグラファイトフィルムの製造方法の一例として、たるみ形状矯正処理工程を用いて、原料グラファイトフィルムからたるみを制御することができる。矯正処理工程とは、たるみ形状を変更するための工程であり、原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する工程である。たるみ形状を変更するとは、フラット形状、中央たるみ形状、端部たるみ形状、片たるみ形状の形状を、それとは異なるたるみ形状のいずれかに変更することをいう。原料グラファイトフィルムに2000℃以上の温度と圧力を加えることでたるみ形状を矯正させ、所望のたるみ形状に転換することができる。特に、内芯に原料グラファイトフィルムを巻きつけて内芯と原料グラファイトフィルムの熱膨張率の差によってグラファイトフィルムのたるみを制御する方法は、簡易的に所望のたるみ形状を作製することができる。さらに、図13や図28のように、2つ以上の内芯を使用することで、1つのシート内に2つ以上のたるみ形状を有するグラファイトフィルムを得ることができる。
なお、本明細書における「たるみ形状矯正処理工程」、「矯正処理工程」および「矯正処理」との記載は、同義で用いられている。
<たるみが制御されたグラファイトフィルムの製造方法の他の一例>
また、1つのシート内に2つ以上のたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製するための別の態様を説明する。
本発明において、グラファイトフィルムのたるみは、高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度と高分子フィルムの幅方向の中央部の温度を制御して高分子フィルムを熱処理する(以下、この熱処理工程を「たるみ制御工程」という)ことが重要であることを見出した。すなわち、本発明のグラファイトフィルムは、高分子フィルムをたるみ制御工程を経て、その後、2000℃以上で熱処理することによって得られる。本発明は、高分子フィルムの分解初期のある特定の温度域において特殊な熱処理を加えることによって、たるみが制御されたグラファイトフィルムを得るものである。
たるみ制御工程とは、高分子フィルムの分解初期のある特定の温度域において、フィルムの幅方向の温度勾配を制御した特殊な熱処理を加えることによって、たるみを制御する方法である。長尺の高分子フィルムにおいて、温度条件を長手方向で変更することで、1つのシート内に2つ以上のたるみ形状を有するグラファイトフィルムを得ることができる。
(たるみ制御工程の効果発現のメカニズム)
たるみ制御工程の効果発現のメカニズムについて、中央にたるみがあるグラファイトフィルムの場合を例に挙げて以下に説明する。
まず、高分子フィルムの熱分解初期において、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度を高分子フィルムの幅方向の中央部の温度に比べて相対的に低くして熱処理する。幅方向で異なった熱履歴を加えられた高分子フィルムは、炭化工程の後に行われる黒鉛化工程でグラファイト化の進行が幅方向で異なり(グラファイト結晶子の配向度が違ってくる)、グラファイトフィルムの中央部の長手方向の長さがグラファイトフィルムの両端部の長手方向の長さよりも長いグラファイトフィルムとなる。このグラファイトフィルムの幅方向を観察した際に、グラファイトフィルムの長手方向の長さが周辺部よりもより長い中央部では、グラファイトフィルムのたるみが現れる。
(たるみ制御工程と従来のGSの製造方法との関係)
一般的な高分子フィルムからグラファイトフィルムを得る製造方法として、例えば、通常1000℃程度までの温度にて加熱処理を行う炭化工程と、炭化工程で得られた炭化フィルムを2600℃以上の温度で加熱処理を行う黒鉛化工程と、を経る方法を挙げることができるが、本発明のたるみ制御工程は、この炭化工程の比較的初期の700℃以下の温度域において、高分子フィルムの幅方向の温度分布を制御するものである。
<高分子フィルム及びグラファイトフィルムの端部、中央部の定義>
高分子フィルム及びグラファイトフィルムの端部を、図32の端部52のように、フィルムを広げたときに長辺方向と平行なエッジ部分と定義する。また、高分子フィルム及びグラファイトフィルムの中央部を、両端部から等しい距離にある図32の中央部51のようなフィルムの中心と定義する。
<たるみ制御工程での幅方向の温度勾配>
高分子フィルムの分解初期の温度範囲において、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度と高分子フィルムの幅方向の中央部の温度とを制御して熱処理することで、その後の黒鉛化工程を経て得られるグラファイトフィルムは、たるみが制御されたグラファイトフィルムになる。その際、たるみ制御工程を終えた後の温度域では、フィルムの幅方向の温度勾配や温度分布を任意に設定しても、たるみが制御されたグラファイトフィルムを得ることができる。
また本発明の端部から中央部への間の温度勾配とは、端部1から中央部への温度勾配、及び端部2(端部1とは異なる他方側の端部)から中央部への温度勾配のことをいい、図32のようにフィルムの長手方向と垂直に交わる任意の直線上の端部と中央部の温度、及びフィルムの幅を用い、以下の式で表される。
端部から中央部への間の温度勾配=(端部の温度−中央部の温度)/(フィルムの幅/2)×100
ここで、ある任意の幅における両端部と中央部の温度は、同時に測定した値を用いる。本発明の温度A、温度B、温度Cとは、各々図32の53、54、55の温度、または、各々図32の55、54、53の温度のことをいう。また、本発明の温度Aから温度Cへの温度勾配とは、以下の式で表される。
温度Aから温度Cへの温度勾配=(温度A−温度C)/(フィルムの幅)×100
ここで、ある任意の幅における温度A、温度Cは、同時に測定した値を用いる。
本発明において、グラファイトフィルムのたるみは、高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度と高分子フィルムの幅方向の中央部の温度を制御して高分子フィルムを熱処理する(以下、この熱処理工程を「たるみ制御工程」という)ことが重要であることを見出した。すなわち、本発明のグラファイトフィルムは、高分子フィルムをたるみ制御工程を経て、その後、2000℃以上で熱処理することによって得られる。本発明は、高分子フィルムの分解初期のある特定の温度域において特殊な熱処理を加えることによって、たるみが制御されたグラファイトフィルムを得るものである。
<たるみ制御工程の分解反応と重量減少率>
高分子フィルムを熱処理すると、熱処理温度上昇に伴ってグラファイト骨格を形成しない炭素、酸素、水素、窒素などが、炭酸ガス、水、水素ガス、窒素ガス、タール分などの成分として順次排出される。分解が進行するにつれ、高分子フィルムは黒色化してガラス質となる。たるみ制御工程における高分子フィルムの重量減少率(以下、「重量減少率」ともいう)とは、出発原料である高分子フィルムの初期重量(熱処理を開始する前の23℃湿度50%での高分子フィルムの重量)と、たるみ制御工程直後の高分子フィルムの重量とを用いて、以下の式で計算できる。すなわち、
重量減少率(%)=(高分子フィルムの初期重量−たるみ制御工程直後の高分子フィルムの重量)/高分子フィルムの初期重量×100
との式で計算できる。
<フィルム温度の測定方法>
本発明は、高分子フィルムの熱分解開始温度から、たるみ制御温度までの間の温度範囲において、高分子フィルムの幅方向に温度を制御して熱処理することによって、たるみを制御することができる。
高分子フィルムの熱分解開始温度及びたるみ制御温度は、熱処理される高分子フィルム上の幅方向における中央部の実温度をいう。高分子フィルム上の実温度は、φ0.5mmのシース型K熱電対を使用して、高分子フィルムと熱電対とを接触させて測定できる。
なお、本発明において、たるみ制御工程以外の温度範囲、具体的には、高分子フィルムの熱分解開始温度より低い温度での熱処理条件や、一度たるみ制御工程を行った後のたるみ制御温度よりも高い温度での熱処理条件には、特に制限はない。
また、たるみ制御工程を実施後、一度フィルムを室温まで冷却して、次の熱処理工程(炭化工程や黒鉛化工程)を実施してもよいし、たるみ制御工程を実施後、温度を下げずにそのまま次の熱処理を連続して実施してもよく、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、更に好ましくは900℃以上まで実施することで、炭化工程を省略することも可能である。
<高分子フィルムの熱分解開始温度及びたるみ制御温度>
本発明において高分子フィルムの熱分解開始温度とは、熱処理を開始する前の室温(23℃、湿度50%)での高分子フィルムの重量に対して、その高分子フィルムを熱処理したときに1.0%の重量減少が生じる温度と定義する。本発明の熱分解開始温度の具体的な測定としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の熱分析システムEXSTAR6000及び熱重量測定装置TG/DTA 220Uを用いて、試料量は10mg、窒素雰囲気流通下(200mL/min)にて、室温(23℃)から1000℃まで10℃/minの昇温速度で熱処理を行い、高分子フィルムに1.0%の重量減少が生じる温度をその高分子フィルムの熱分解開始温度と定義する。
本発明において、高分子フィルムのたるみ制御温度とは、熱処理を開始する前の室温(23℃、湿度50%)での高分子フィルムの重量に対して、その高分子フィルムを熱処理したときに1.1%以上、好ましくは1.2%以上、より好ましくは2.8%以上、更に好ましくは10.0%以上、特に好ましくは15.0%以上、最も好ましくは20.0%の重量減少が生じる温度である。重量減少率1.1%以上となるたるみ制御温度であれば、たるみ制御の効果を発現させることができる。また、たるみ制御を高く設定することでたるみ制御の効果を大きくすることが可能である。たるみ制御温度が高分子フィルムの重量減少率20.0%(たるみ制御の上限値)を超えていない場合には、たるみ制御工程を1段階で実施しても、多段階で実施しても、複数回に分けて実施しても、たるみ制御の効果を増幅させることができる。その場合、重量減少率が20%を超える温度までフィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御する。重量減少率が20.0%を超えた温度域では、フィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御しても、そのような条件にしなくても、いずれの場合も最終的にグラファイトフィルムを製造した場合のグラファイトフィルムのたるみと変わらない。
本発明のたるみ制御温度の最も好ましい温度である高分子フィルムが重量減少率20%となる温度の具体的な測定としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の熱分解システムEXSTAR6000及び熱重量測定装置TG/DTA 220Uを用いて、試料量は10mg、窒素雰囲気流通下(200mL/min)にて、室温(23℃)から1000℃まで10℃/minの昇温速度で熱処理を行い、高分子フィルムの重量減少を測定し、20%の重量減少が生じた温度をたるみ制御温度とする。たるみ制御温度の下限値である高分子フィルムの重量減少率1.1%となる温度は、同様に、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の熱分解システムEXSTAR6000及び熱重量測定装置TG/DTA 220Uを用いて、試料量は10mg、窒素雰囲気流通下(200mL/min)にて、室温(23℃)から1000℃まで10℃/minの昇温速度で熱処理を行い、高分子フィルムの重量減少を測定し、1.1%の重量減少が生じた温度である。
たるみ制御工程を実施後、温度を下げてから、別の工程を実施する場合は、たるみ制御工程後のフィルムのハンドリング性が重要となる。その場合、好ましくは重量減少率が20.0%以下、より好ましくは重量減少率が15.0%以下、更に好ましくは重量減少率が10.0%以下、特に好ましくは重量減少率が2.8%以下となるようにたるみ制御温度を設定すると、高分子フィルムの炭化が完全に進行していないため、高分子の性質が残っており割れにくく、ハンドリング性がよい。また、高分子フィルムの収縮量が小さいために、シワも発生しにくい。
<本発明の実施例で用いる高分子フィルムの熱分解開始温度及びたるみ制御温度>
本発明の実施例で用いたポリイミドフィルム(カネカ製ポリイミドフィルムアピカルAH 厚み75μm、アピカルNPI 厚み75μm)の場合には熱分解開始温度とたるみ制御温度は次のようになる。熱分解開始温度は500℃(重量減少率1.0%)である。たるみ制御温度は、520℃(重量減少率1.1%)以上、好ましくは550℃(重量減少率1.2%)以上、より好ましくは580℃(重量減少率2.8%)以上、更に好ましくは600℃(重量減少率10.0%)以上、特に好ましくは630℃(重量減少率15.0%)以上、最も好ましくは655℃(重量減少率20.0%)である。たるみ制御温度が520℃以上であれば、たるみ制御工程の効果が得られる。たるみ制御温度を高くすると、たるみ制御工程の効果は高まる。たるみ制御温度が655℃(たるみ制御の上限値)を超えていない場合には、たるみ制御工程を1段階で実施しても、多段階で実施しても、複数回に分けて実施しても、たるみ制御の効果を増幅させることができる。その場合、655℃を超える温度までフィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御する。655℃を超えた温度域では、フィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御しても、そのような条件にしなくても、いずれの場合も最終的にグラファイトフィルムを製造した場合のグラファイトフィルムのたるみと変わらない。
<原料グラファイトフィルム>
本発明の原料グラファイトフィルムの熱拡散率は、0.15cm/s以上が好ましく、より好ましくは2.0cm/s以上、更に好ましくは4.0cm/s以上、特に好ましくは7.0cm/s以上であるとよい。
熱拡散率が、0.15cm/s以上であれば、グラファイト化が十分に進行しているため熱処理の際の寸法変化が小さく、矯正処理が実施しやすい。特に原料グラファイトフィルムを内芯に巻き付けて、内芯と原料グラファイトフィルムの熱膨張の差を利用して矯正処理を実施する場合には、原料グラファイトフィルムの寸法変化が小さいと内芯から原料グラファイトフィルムが押し広げられやすいために矯正の効果が出やすい。また、強度も強く柔軟で裂けにくいフィルムに転換されているため、後述する巻替作業も実施しやすい。さらに、熱拡散率が、0.15cm/s以上であれば、原料グラファイトフィルムの熱移動がスムーズであるために、均一に矯正処理が実施できる。原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの熱拡散率の測定方法は実施例の項に示す。
また、本発明の原料グラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験における屈曲回数は、100回以上が好ましく、より好ましくは500回以上、更に好ましくは5000回以上、特に好ましくは10000回以上であるとよい。屈曲回数が100回以上であれば、強度も強く柔軟で裂けにくいフィルムであるため、後述する巻替作業も実施しやすい。原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験の評価方法は実施例の項に示す。
矯正処理は、形状を変更したい原料グラファイトフィルムを対象に行ってもよいし、グラファイトフィルムの製造工程において、矯正処理工程を追加してもかまわない。また、一旦矯正処理を実施したグラファイトフィルムを再び原料グラファイトフィルムとし、もう一度矯正処理を実施してもかまわない。
また、本発明では、高分子フィルムから2000℃以上の熱処理によって得られた原料グラファイトフィルムを、少なくとも1度、2000℃未満の温度条件まで冷やし、その後矯正処理工程を行い、平坦性が矯正されたグラファイトフィルムを得ることもできる。2000℃未満の温度条件を経るとは、熱処理して合成された原料グラファイトフィルムを一旦冷却することを意味し、冷却することで巻き替え工程などの矯正処理の準備を実施しやすい。
<原料グラファイトフィルムの長さ、幅>
原料グラファイトフィルムの幅とは、原料グラファイトフィルムの連続体のシートにおいて短辺側の長さを示す。本発明の原料グラファイトフィルムの幅は特に制限がないが、幅が広いほどたるみの制御が難しくなるため、矯正処理工程によるたるみ制御の効果を顕著に発揮できる。本発明の原料グラファイトフィルムの幅は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、さらに好ましくは400mm以上である。100mm以上であれば、本発明のたるみ制御の効果が顕著に発揮できる。
原料グラファイトフィルムの長さとは、原料グラファイトフィルムの連続体のシートにおいて長辺側の長さを示す。本発明の原料グラファイトフィルムの長さは特に制限がないが、好ましくは4.0m以上、より好ましくは10.0m以上、さらに好ましくは20.0m以上の連続性を持つとよい。4.0m以上の連続性があれば、たるみが制御された長尺のグラファイトフィルムを得ることができる。
一般にプレス(枚葉)では広範囲の面積をようするため、本発明のように2000℃以上での熱処理を要する工程を伴う場合には、大面積や長尺のグラファイトを作製することは困難である。本発明では、0.4m以上、更には2.0m以上、特には8.0m以上の大面積や4.0m以上、更には10.0m以上、特には20.0m以上の長さのグラファイトフィルムを作製することができる。
<たるみ形状矯正処理工程にて圧力を加える方法>
圧力を加える方法は、特に制限を受けないが、1)シート状の原料グラファイトフィルムの面に対して荷重を加える方法や、2)ロール状に巻かれた原料グラファイトフィルムを内側から押し広げる方法、3)原料グラファイトフィルムを引っ張る方法などが挙げられる。
1)シート状の原料グラファイトフィルムの面に対して荷重を加える方法では、図7のように、フィルム面に重石を載せたり、熱処理中にプレスを実施して圧力を加えたりすることができる。本手法にて、平坦性を矯正するために必要な圧力は、5g/cm以上、好ましくは、50g/cm以上、より好ましくは100g/cm以上である。平坦性を矯正するために必要な圧力が5g/cm以上であれば、矯正の効果が得られる。圧力の上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。
2)ロール状に巻かれた原料グラファイトフィルムを内側から押し広げる方法では、拡張する機能を有する内芯を用いて、これに原料グラファイトフィルムを巻きつけ、内芯から原料グラファイトフィルムに圧力を加える方法がある。一例として図9に、分割した内芯を外側に押し広げる方法を示す。
本手法において、平坦性を矯正するために必要な圧力として、内芯に巻かれた原料フィルムの最内周の内面対して内芯から、5g/cm以上、好ましくは、50g/cm以上、より好ましくは100g/cm以上の圧力を加えるとよい。圧力が5g/cm以上であれば、矯正の効果が得られる。圧力の上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。
また、図8のように内芯の熱膨張を利用して原料グラファイトフィルムを押し広げる方法が挙げられる。この方法では、特殊な機構を炉内に設けることなく、簡易的に矯正処理が実施できるため好ましい。黒鉛化が十分に進行している原料グラファイトフィルムは、グラファイト結晶子が面方向に高度に配向しているため、面方向への熱膨張が小さく、黒鉛製の内芯に巻きつけて熱処理すると、原料グラファイトフィルムが熱膨張した内芯から押し広げられやすく、矯正処理工程の効果が大きい。巻物は内芯に巻きつけて処理することが好ましい。
本手法において、平坦性を矯正するために必要な圧力は測定できないが、代わりに巻替工程における巻き締め強さにて規定できる。本発明の巻替工程における巻き締め強さは1N・m/m以上、好ましくは5N・m/m以上、さらに好ましくは10N・m/m以上、更には100N・m/m以上、特に好ましくは200N・m/m以上である。巻き締め強さは1N・m/m以上であると、矯正処理工程時に、内芯に巻かれた原料フィルムの最内周の内面対して内芯から、十分な圧力がかかり、矯正の効果が得られる。巻き締め強さの上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。
3)原料グラファイトフィルムを引っ張りながら熱処理することでも平坦性を矯正することができる。
本手法において、平坦性を矯正するために必要な圧力は、フィルムにかかる張力として規定できる。平坦性を矯正するために必要な張力は、5g/cm以上、好ましくは20g/cm以上、更に好ましくは50g/cm以上である。張力が5g/cm以上であると、矯正の効果が得られる。張力の上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。平坦性を矯正するために必要な最高温度は、2000℃以上、好ましくは2200℃以上、更には2400℃以上、更には2600℃以上、更には2750℃以上、特に好ましくは2800℃以上である。2000℃以上になるとグラファイト結晶子が再配列をはじめるため原料グラファイトフィルムが矯正されやすい。また、内芯に巻き付けて、内芯と原料グラファイトフィルムの熱膨張の差で矯正処理を実施する場合にも、2000℃以上になると内芯と原料グラファイトフィルムの膨張量に差がつくため、矯正されやすい。本発明の原料グラファイトフィルムは、高分子焼成タイプのグラファイトフィルムであっても天然黒鉛系のグラファイトフィルムであっても構わない。高分子焼成タイプのグラファイトフィルムは天然黒鉛系のグラファイトフィルムより、グラファイト結晶子の配向がよいため、面方向の熱膨張率が小さい。そのため、原料グラファイトフィルムを内芯に巻いて矯正する場合の効果は、高分子焼成タイプのグラファイトフィルムの方が好ましい。
<炭化工程と矯正処理工程が一連のグラファイト製造工程の中に含まれるグラファイトフィルムの製造工程の一例>
炭化工程と矯正処理工程が一連のグラファイト製造工程の中に含まれるグラファイトフィルムの製造工程の一例を説明する。1)炭化工程、2)黒鉛化工程、3)矯正処理工程を含むとよい。
1)炭化工程は、高分子フィルムを少なくとも800℃程度の温度まで予備加熱する工程であり、高分子フィルムを加熱分解し、炭化フィルムを得る工程である。高分子フィルムを保持する方法として、シート状にカットして角型冶具内に板やシートで挟んで保持する方法や、長尺の高分子フィルムを内芯冶具に巻き付けて保持する方法などがある。このとき使用する冶具は黒鉛材のように耐熱性があるものが好ましい。また、高分子フィルムを巻き付ける内芯は円筒形状が好ましい。また、ロール状に巻いたフィルムを別のロールに巻替ながら焼成する方法もある。得られる炭化フィルムは、高分子フィルムの6割程度の重さとなり、ガラス状のフィルムである。
2)黒鉛化工程とは、炭化工程で作成された炭化フィルム、あるいは高分子フィルムを1800℃以上の温度で加熱し、原料グラファイトフィルムを作製する工程である。黒鉛化最高温度は、1800℃以上、好ましくは2000℃以上、更には2200℃以上、更には2400℃以上、更には2600℃以上、特に好ましくは2800℃以上である。1800℃以上であると、グラファイト化が十分に進行しているため、その後の矯正処理工程において寸法変化が小さく、平坦性を改善しやすい原料グラファイトフィルムが得られる。特に原料グラファイトフィルムを内芯に巻き付けて、内芯と原料グラファイトフィルムの熱膨張の差を利用して矯正処理を実施する場合に、原料グラファイトフィルムの寸法変化が小さいと内芯から原料グラファイトフィルムが押し広げられやすいために矯正の効果が出やすい。また、1800℃以上であると、グラファイト化により強度も強く、柔軟で裂けにくいフィルムに転換されているため、巻替作業も実施しやすい。炭化工程と黒鉛化工程は連続しておこなっても、炭化工程を終了させて、その後、黒鉛化工程のみを単独で行っても構わない。なお、黒鉛化工程を終えた後、矯正処理を行っていないグラファイトフィルムを原料グラファイトフィルムという。
3)矯正処理工程を追加する場合には、黒鉛化工程を実施し得られた原料グラファイトフィルムに対して、矯正処理工程を実施するとよい。矯正処理工程と黒鉛化工程は連続して行っても、黒鉛化工程を終了させて、その後、単独で行っても構わない。
<原料グラファイトフィルムを内芯に巻きつけた状態で熱処理し、内芯の熱膨張を利用して矯正する方法>
本発明の矯正処理工程では、原料グラファイトフィルムを内芯に巻きつけた状態で熱処理する方法が好ましい。この方法では、熱処理の過程で図8のように内芯の熱膨張により、低熱膨張性の原料グラファイトフィルムが押し広げられて矯正される。
(内芯について)
本発明において、原料グラファイトフィルムを巻き付ける内芯の形状は、特に限定されず、円柱状、多角柱状などが用いられる。円柱状の内芯は、矯正処理の際に、均一に原料グラファイトフィルムに力を伝えることができ、良質のグラファイトフィルムを得られるために、特に好ましい。
本発明で使用される内芯の外周は特に制限されないが、好ましくは62.80mm以上、より好ましくは157.00mm以上、さらに好ましくは251.20mm以上である。内芯の径が62.80mm以上であると、内芯の膨張量が十分なため原料グラファイトフィルムは押し広げられ、矯正される。また、グラファイトフィルムの巻き癖も少なく、容易に引き伸ばすことができる。
本発明で使用される内芯の熱膨張率は特に限定されないが、好ましくは0.3×10−6/K以上7.5×10−6/K以下、より好ましくは0.7×10−6/K以上6.5×10−6/K以下、さらに好ましくは2.0×10−6/K以上5.0×10−6/K以下である。内芯の熱膨張率が、0.3×10−6/K以上であると、内芯の膨張量が十分なため原料グラファイトフィルムは押し広げられ、矯正される。また、内芯の熱膨張率が、7.5×10−6/K以下であると、押し広げされ過ぎて原料グラファイトフィルムが裂けることがない。特に、内芯の線膨張が、2.0×10−6/K以上5.0×10−6/K以下であると、フィルムの裂け不良を発生させることなく、十分にたるみを矯正することができる。
内芯の材質は、耐熱性の観点から黒鉛製が好ましく、中でも押出成型品、型込成型品、CIP成型品などが適している。
(内芯の形状)
内芯と原料グラファイトフィルムの熱膨張の差によって、たるみを矯正する方法において、図10に、フラットなグラファイトフィルムを作製するための内芯101、中央部にたるみのあるグラファイトフィルムを作製するための内芯102、端部にたるみを有するグラファイトフィルムを作製するための内芯103、片たるみを有するグラファイトフィルムを作製するための内芯104を示す。
図11のように内芯に原料グラファイトフィルムを巻きつけた際の原料グラファイトフィルムの幅の中央に対応する部分の内芯の外周を中央外周106、原料グラファイトフィルムの端部に対応する端部1外周105、端部2外周107とする。外周の差は、以下の式、つまり、
外周の差(%)=(外周の最大値−外周の最小値)/外周の最小値×100
で表すことができる。
内芯の外周の測定方法は、分解能が1μm以下の精度で測定できる方法で測定を実施する。例えば、東京精密社から入手できる3次元測定機(型式:UPMC 850 CARAT Ultra)で測定すると非常に高精度に測定可能である。内芯101(すなわち、フラットな形状のグラファイトフィルムを作製する場合)は、中央外周、端部1外周、端部2外周が外周の差が好ましくは0.0027%未満、より好ましくは0.0010%以下、更に好ましくは0.0006%であるとよい。内芯102(すなわち、中央にたるみを有する形状のグラファイトフィルムを作製する場合)は、端部1外周と端部2外周より中央外周の方が大きく、外周の差が好ましくは0.0027%以上0.7000%以下、より好ましくは0.0426%以上0.5158%以下、更に好ましくは0.1500%以上0.3800%以下がよい。内芯103(すなわち、端部にたるみを有する形状のグラファイトフィルムを作製する場合)は、端部1外周と端部2外周より中央外周の方が小さく、外周の差が好ましくは0.0027%以上0.7000%以下、より好ましくは0.0426%以上0.5158%以下、更に好ましくは0.1500%以上0.3800%以下がよい。内芯104(すなわち、片たるみを有する形状のグラファイトフィルムを作製する場合)は、端部1外周、中央外周、端部2外周順番で大きく、外周の差が好ましくは0.0027%以上0.7000%以下、より好ましくは0.0426%以上0.5158%以下、更に好ましくは0.1500%以上0.3800%以下がよい。
(巻替工程について)
原料グラファイトフィルムを内芯に巻きつけて矯正処理工程を実施する際、原料グラファイトフィルムを緩みなく内芯に巻きつけた方が好ましい。したがって、本発明では矯正処理を実施する前に、内芯に原料グラファイトフィルムを巻きつける巻替工程を含むとよい。巻替工程では、巻替装置を用いることができる。その際、端部を揃えて巻いた方が、矯正処理の際に内芯からの力をムラなく伝えることができる。このことによって、フィルム上に圧力が伝わらない場所ができないため、矯正処理の効果が大きくなる。エッジポジションコントロール(フィルムエッジ、いわゆる”端部”を均一に揃える操作を自動的に行う制御装置)などを使用して、端部を揃えることも可能だが、図12のように縦型の巻替装置を使用して、端部を揃えた状態で巻替るとよい。巻替の際は、両面テープなどで、内芯と原料グラファイトフィルムを固定し巻き始めると作業がしやすい。
本発明の巻き締め強さとは、芯の回転軸のトルクと巻物状の原料グラファイトフィルムにおける最外周の半径の積である(図12参照)。回転軸を所定のトルクで回転させ、原料グラファイトフィルムの最外周が動かないように固定して、回転軸の回転が止まるまで、巻き締めをおこなう。例えば、図12の原料グラファイトフィルムの内芯の半径129が50mmであり、原料グラファイトフィルムの巻き厚み1210が5mm、回転軸のトルクが4N・mであれば、巻き締め強さは、220N・m/mである。
本発明の巻替工程における巻き締め強さは、1N・m/m以上、好ましくは5N・m/m以上、さらに好ましくは10N・m/m以上、更には100N・m/m以上、特に好ましくは200N・m/m以上である。巻き締め強さは1N・m/m以上であると、内芯の膨張の力が原料グラファイトフィルムの巻きの外周まで伝わるため、平坦性が改善されたグラファイトフィルムが得られる。特に、巻き締め強さは200N・m/m以上であると平坦性を十分に改善することができる。
(端部の固定方法について)
内芯に原料グラファイトフィルムを巻きつけた状態で矯正処理をおこなう場合、熱処理中に内芯から原料グラファイトフィルムが解けると、矯正の効果が得られにくい。したがって、原料グラファイトフィルムが解けてこないように巻きを固定する必要がある。一例として、内芯に巻かれた原料グラファイトフィルムの最外周に重石を乗せ、解けないようにすることができる。また、巻かれた原料グラファイトフィルムをそのまま横向きに炉床に置くだけで、自重で解けないように固定することもできる。また、原料グラファイトフィルムの最外周端部を引っ張って固定することも可能である。さらに、固定の圧力を制御しながら、解きを抑制する方法も有効である。固定の方法は、巻き緩みをしなければ特に制約はない。
(2種類の内芯を使用し、2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作
製する方法)
2種類の異なる形状を有する内芯を使用し、図13のように巻き替えることによって、2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製することができる。
他の方法として、図28のように、2つの内芯の間に一定の内芯を使わない範囲を設けた状態でたるみ形状矯正処理工程を実施することもできる。その際に原料グラファイトフィルムに特定のたるみ形状を予め付与させておくことで、内芯1側、内芯を使わない範囲、内芯2側で3つの制御されたたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製することも可能である。また、これらの手法を組み合わせることで、4つ以上の異なるたるみ形状を1つのグラファイトフィルムに付与する事ができる。
他の方法として、図29のように、1つだけの内芯と内芯を使わない範囲と、を設けた状態でたるみ形状矯正処理工程を実施することも可能である。その際に原料グラファイトフィルムに特定のたるみ形状を予め付与させておくことで、内芯1側、内芯を使わない範囲で2つの制御されたたるみ形状を有するグラファイトフィルムを作製することも可能である。なお、図29では内芯1(内芯131)に巻いていない側のグラファイトフィルムは巻き形状で表しているが、内芯1(内芯131)によって新たなたるみ形状を付与する際に、新たなたるみ形状を付与しない箇所の保持方法は目的を奏する範囲において特に制限されない。
<グラファイトフィルムの長さ、幅>
グラファイトフィルムの幅とは、グラファイトフィルムの連続体のシートにおいて短辺側の長さを示す。本発明のグラファイトフィルムの幅は特に制限がないが、幅が広いほどたるみの制御が難しくなるため、矯正処理工程によるたるみ制御の効果を顕著に発揮できる。本発明のグラファイトフィルムの幅は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、さらに好ましくは400mm以上である。100mm以上であれば、本発明のたるみ制御の効果を顕著に発揮できる。
グラファイトフィルムの長さとは、グラファイトフィルムの連続体のシートにおいて長辺側の長さを示す。本発明のグラファイトフィルムの長さは特に制限がないが、好ましくは4.0m以上、より好ましくは10.0m以上、さらに好ましくは20.0m以上の連続性を持つとよい。4.0m以上の連続性があれば、ラミネートや巻き替えなど実施しやすい。
また、2つの異なるたるみ形状を有するグラファイトフィルムがそれぞれ好ましくは2.0m以上、より好ましくは5.0m以上、さらに好ましくは10.0m以上の連続性を持つとよい。2.0m以上の連続性があれば、ラミネートや巻き替えなど実施しやすい。
<高分子フィルム>
本発明で用いる高分子フィルムは特に限定はされないが、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)からなる群より選択される高分子のフィルムを挙げることができる。これらの少なくとも1種を用いることにより、結晶性に優れ、熱拡散性・熱伝導性に優れる原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムを得やすい。ポリイミドを用いた場合には、特に好ましい。
以下において、本発明の種々の実施例をいくつかの比較例と共に説明する。
<各種物性測定条件>
<原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのJIS C2151記載のたるみの測定>
原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのたるみの評価は、JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価に基づくたるみ測定で、たるみの大きさを23℃湿度50%の雰囲気下24時間常態調整を行った後、23℃湿度50%雰囲気下で測定した。
(試験片)
試験片は、グラファイトフィルムの端から2mずつサンプルが取れなくなるまで採取する。例えば、11mの巻きにしているグラファイトフィルムであれば、5枚の試験片が取り出せる。
(装置について)
装置について次に説明する(図2参照)。
a)ロールを取り付けた架台について
本装置は、自由に回転する2本の金属製ロール及びこの2本のロールを平行に支える堅固な架台を有する。各ロールは、直径が100mm±10mmで、長さが試験するフィルムの最大幅を十分に載せられるものを準備する。2本のロールの軸は同一水平面にあり、互いに1500mm±15mmの間隔を置いて0.1度以内(すなわち、ロールの長さ1mについて1.8mm以内)で平行な状態に固定する。ロールは、円筒度0.1mm以内の円筒状とし、表面は適切な梨地仕上げ(研磨仕上げではない)を施したものとする。
b)フィルムに張力を加える装置について
架台の反対側の端で、2本目のロール(ロール2)から自由に垂れ下がったフィルムにおもり又はばね付きクランプを固定できるようにする。おもり又はばね荷重は、フィルムの幅1cm当たり50gをかけ、フィルムの幅方向にできるだけ均一に張力を加えられるように調節できるものとする。あるいは、テンションロールに巻きつけて、幅1cm当たり50gの、均一な張力を加えてもよい。
c)寸法測定器具について
2本のロール間の中央部でロールに平行な線に沿って、2本のロール間の平面と下に下がったフィルムとの距離を測定するための器具を準備する。測定に用いる器具は、長さ1525mm以上の鋼製直定規及び1mm目盛りの付いた長さ150mmの鋼製物差しとする。又は、フィルムの位置を自動的に又は半自動的に示すような複雑な器具を用いてもよい。
(測定手順)
図2のように、装置の2本のロール上に試験片を長さ方向に載せる。フィルムの自由端には張力(上述の1cm当たり50g)を加える。フィルムのロール2を通過する最終的な位置は、フィルムが2本のロールの中央でほぼ水平になるように調節する。鋼製直定規及び目盛り付きの鋼製物差しを用いて、2本のロールの中央部で幅方向に沿ってフィルムを確認する。
(結果)
目視で観察して、たるみが最も大きい箇所のたるみを測定し、全試験片の平均をたるみZgsとし結果として表1〜表3に記載した。
<端部のたるみa値の測定方法>
原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの端部のたるみa値の測定も、前述したJIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしてから実施した。図14のように、最端部の懸垂線からのたるみの長さを測定し、次に、最端部から30mm地点の懸垂線からのたるみの長さを測定した。その後、(最端部のたるみ)から(最端部から30mm地点のたるみ)を引いた。左右に対して同様の計測を実施し、その平均値を測定値とし、全試験片の測定値の平均を表1〜表3に記載した。
<中央部のたるみb値の測定方法>
グラファイトフィルムの中央のたるみb値の測定も、前述したJIS C2151記載のたるみ測定と同様の状態にフィルムをセットしてから実施した。図15のように、グラファイトフィルムの幅方向の中央部のたるみを測定し、全試験片の平均を表1〜表3に記載した。
<原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのJIS C2151記載の曲がりの測定>
原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの曲がりの評価は、JIS C2151に記載のフィルムの巻取り性評価に基づく曲がり測定で、曲がりの大きさを23℃湿度50%の雰囲気下24時間常態調整を行った後、23℃湿度50%雰囲気下で測定した。ある一定の長さのフィルムを巻き戻して平面上に置き、そのフィルムの両エッジについて直線からの偏差をそれぞれ測定する。
(装置)
装置について次に説明する。(図16参照)
a)テーブル
幅が試験するフィルムの最大幅より十分大きく、長さが1500mm±15mmで、両端の平行度が0.1度以内(又は、テーブルの幅1m当たり1.8mm以内)のものを使用する。適切な材質で表面を梨地仕上げをした(研磨仕上げしていない)平らで水平なものを使用する。テーブルの長さがこれより長い場合は、テーブルの表面に1500mm±15mm間隔で平行な2本の標線を明確に描く。標線の平行度は0.1度以内(標線の長さ1m当たり1.8mm以内)とする。
b)ブラシ
テーブル表面に載せたフィルムを平らにするための柔らかいブラシ。
c)直定規
長さが1525mm以上の鋼製のもの。
d)物差し
長さが150mmで1mm間隔の目盛りが付いた鋼製のもの。
(試験片)
試験片は、グラファイトフィルムの端から2mずつサンプルが取れなくなるまで採取する。例えば、11mの巻きにしているグラファイトフィルムであれば、5枚の試験片が取り出せる。
(測定手順)
試験片を、図16に示すようにテーブルの上に長手方向に置く。一方の端から、フィルムに軽い力で柔らかくブラシをかけ、テーブルとフィルムとの間に空気だまりができるだけ残らないように密着させる。直定規のエッジをフィルムの一方のエッジにそわせて置き、直線からフィルムエッジまえの偏差がよく観察できるようにする。鋼製の直定規は、テーブルの両端(又は、標線上)でフィルムのエッジに一致するように調節する。基準位置の間のおよそ中央で、鋼製の物差しを用いて鋼製の直定規とフィルムのエッジとの偏差d1を1mm単位まで測定する。同じ方法で、フィルムのもう一方のエッジと直定規との偏差d2を測定する。試験片の曲がりの値は、基準線の間隔の中央で、フィルムの両側における直定規のエッジとフィルムのエッジとの偏差の和(d1+d2)とする。なお、単位はミリメートルである。
(結果)
偏差の和(d1+d2)を曲がりの特性値とし、全試験片の平均を表1〜表3に記載した。
<原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率測定>
原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmの形状に切り取ったサンプルを、23℃の雰囲気下、10Hzにて測定した。3枚の試験片を、図17の1、2、3点から抜き出した。図17の1は原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの巻きの内側から50mmの中央付近、図17の3は外側から50mmの中央付近、図17の2は1と3の中間である。中央付近とは、TD幅200mm巻きのロールであれば、幅100mm付近を指す。3枚の試験片を用いて測定した熱拡散率の平均値を表1〜表3に記載した。
<原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験>
原料グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験を行った。1.5×10cmの試験片3枚を、図17の1、2、3点から抜き出した。東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重100gf(0.98N)、速度90回/分、折り曲げクランプの曲率半径Rは2mmでMIT耐屈曲試験をおこなった。23℃の雰囲気下、折り曲げ角度は左右へ135度で切断するまでの折り曲げ回数を測定した。3枚の試験片を用いて測定し、平均値を表1〜表3に記載した。
<各種評価>
<銅箔テープとのラミネート性評価>
図18のようなラミネートテストを実施した。より詳細には、紙製の径が3インチの紙管にまかれたグラファイトフィルムを、互いに平行に並んだ、外径50mm、長さ635mmの第一ロールと、第一ロールと同じ大きさの第二ロールとの間に、グラファイトフィルムが第一ロールと接触開始する点と第一ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点とのなす角度が120度(図19)となるように連続的に供給して、厚み10μm、幅150mmの銅箔テープと貼り合わせた。銅箔テープはDIC製のE−1100LCを使用し、第二ロールに、銅箔テープが第二ロールと接触開始する点と第二ロールの中点と第一ロール/第二ロールの接点のなす角度が120度となるように供給した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力は30g/cm、巻き替え速度は1m/minとした。
ラミネートテスト後の図20のようなシワについて、以下のように評価した。ロールの全領域にわたり、長さ5mm以上のシワの個数を数え、長手方向の単位長さ(1m)あたりで、幅方向全体に確認できるシワの個数を測定した。1mあたりで幅方向全体(本発明の実施例、比較例、参考例のグラファイトフィルムの幅は、450mmである)に確認できるシワの個数が、0個/mはA、0個/個より多く0.05個/m未満はB、0.05個/m以上〜0.2個/m未満はC、0.2個/m以上〜1個/m未満はD、1個/m以上はEとした。
<圧延性評価>
図21のようなグラファイトフィルムの圧延性を評価した。より詳細には、200mm幅×5mのGS3を、株式会社サンクメタル製2ton精密ロールプレス(クリアランス式)にて圧延した。下部の圧延ロールはφ200×幅250mm、SKD11製(硬度D95より大)の金属ロール、上部圧延ロールはφ200×幅250mm、硬度D77のウレタンロールを取り付けた。圧延体間のクリアランスは、−200μmに調整し、グラファイトフィルムにMD方向に30g/cmの張力を加え、上部圧延ロールと下部圧延ロールとの間に、グラファイトフィルムが上部圧延ロールと接触開始する点と上部圧延ロールの中点と上部圧延ロール/下部圧延ロールの接点のなす角度が120度(図21)となるように連続的に供給した。ライン速度は2m/minで実施した。
圧延テスト後の図22のようなシワについて、以下のように評価した。ロールの全領域にわたり、長さ5mm以上のシワの個数を数え、長手方向の単位長さ(1m)あたりで、フィルムの幅方向全体に確認できるシワの個数を測定した。1mあたりで幅方向全体(本発明の実施例、比較例、参考例のグラファイトフィルムの幅は、450mmである)に確認できるシワの個数が、0個/mはA、0個/個より多く0.05個/m未満はB、0.05個/m以上〜0.2個/m未満はC、0.2個/m以上〜1個/m未満はD、1個/m以上はEとした。
<引裂け評価>
巻き替えテストを実施し、その際に発生する裂け不良について評価した。巻き替えテストは、図23のように、紙製の径が3インチの紙管にまかれたグラファイトフィルムを、平行に配置された別の3インチの紙管に巻き替えた。紙管同士の距離は300mmで実施した。グラファイトフィルムのMD方向に加える張力を30g/cm、巻き替え速度を1m/minで実施した。
巻き替えのテストにおけるグラファイトフィルムの裂け不良の評価方法を説明する。巻き替えテスト終了後、フィルム全領域にわたり、図24のような長さ5mm以上の裂け不良を数え、長手方向の単位長さ(1m)あたりで、フィルムの幅方向全体に確認できる裂け不良の数を測定した。1mあたりで幅方向全体(本発明の実施例、比較例、参考例のグラファイトフィルムの幅は、450mmである)に確認できる裂け不良の数が、0個/mはA、0個/個より多く0.05個/m未満はB、0.05個/m以上〜0.2個/m未満はC、0.2個/m以上〜1個/m未満はD、1個/m以上はEとした。
<曲がり性の評価>
曲がり性の評価を実施した。JIS C2151記載の曲がりの測定において、曲がりが30mm以上をA、20mm以上30mm未満をB、15mm以上20mm未満をC、11mm以上15mm未満をD、11mm未満をEとした。
<ポリイミドフィルムAの製造方法>
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5重量%)を得た。この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。
重合工程で作られたポリアミド酸のDMF溶液をミキサーで硬化剤(無水酢酸、イソキノリン)と一定の比率で混合して、Tダイスからエンドレスベルト上に連続的に流延塗布し、ベルトを回転させながら熱風乾燥した。この混合ワニスは加熱される事により分子内の脱水が起こり、イミド化反応が進行した。溶媒が蒸発する事によりベルト室出口での残溶媒量が約46%となった自己支持性を有するフィルム(ゲルフィルム)をベルトから引き剥がし、ピン枠に固定し、テンター室で300℃〜580℃で合計4分の熱処理をおこない厚み50μmのポリイミドフィルムAを製造した。本検討では、同様の方法で製造されたカネカ製ポリイミドフィルム(製品名:アピカル200AV)を使用した。
(実施例1)
厚さ50μm、幅500mm、長さ50mのポリイミドフィルムAを外径100mm、長さ550mmの円筒状の黒鉛製内芯に図25のように巻き付け、内径130mmの外筒を被せた。この容器を電気炉内に横向きにセットした。1400℃まで2℃/minの昇温条件で炭化工程を実施した。
次に、得られたロール状の炭化フィルムを外径100mmの内芯に、図26のように、横向きに黒鉛化炉内にセットした(この時、支えにより内芯を浮かせた状態にある)。2900℃まで5℃/minの昇温条件で黒鉛化工程を実施し、その後、室温まで冷却した。黒鉛化工程実施後の原料グラファイトフィルムの各種物性を測定し、表1〜表3に記載した。なお、黒鉛化工程を終えた後、矯正処理を行っていないグラファイトフィルムを原料グラファイトフィルムという。原料グラファイトフィルムは、たるみZgs=120mm、a値=120mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=45m、幅=450mmであった。
次に、得られた原料グラファイトを、SECカーボン株式会社から入手できる黒鉛化材(型番:MSG、線膨張係数4.0×10−6/K)で作製した、中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(中心円周、端部1円周、端部2円周が同一)に両面テープで貼り付けて固定し、図12のように端が揃うように立てた状態で巻きつけた。その後、駆動軸に4N・mのトルクを与え、原料グラファイトフィルムの最外周が動かないように固定して、内芯にきつく巻き締めた。以上のようにして、巻替工程をおこなった。
さらに、得られた原料グラファイトを、内芯1と同素材で、中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯2(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)に両面テープで貼り付けて固定し、内芯2に対して、長さ22.5mまで同様の方法で巻き締めた。
次に、内芯に巻き締めた原料グラファイトフィルムを黒鉛化炉に横向きに置いてセットし、2900℃まで5℃/minの昇温条件でたるみ形状矯正処理工程を実施した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=0mm、b値=50mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例2)
中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)、中心円周314.00mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.83mmの内芯2(中心円周が最小値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に太くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例3)
中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)、中心円周314.42mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.00mmの内芯2(端部1円周が最大値で中心円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=25mm、b値=25mm、曲がり=30mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例4)
中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)、中心円周314.00mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.83mmの内芯2(中心円周が最小値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に太くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=0mm、b値=50mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例5)
中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)、中心円周314.42mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.00mmの内芯2(端部1円周が最大値で中心円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=0mm、b値=50mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=25mm、b値=25mm、曲がり=30mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例6)
中心円周314.00mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.83mmの内芯1(中心円周が最小値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に太くなる)、中心円周314.42mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.00mmの内芯2(端部1円周が最大値で中心円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=25mm、b値=25mm、曲がり=30mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に炭化工程、黒鉛化工程を実施した。たるみZgs=120mm、a値=120mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=45m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(比較例2)
たるみ形状矯正処理工程の最高温度を1800℃としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。内芯1、2に巻いていた側の形状とも、たるみZgs=120mm、a値=120mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(参考例1)
中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)、中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1、2に巻いていた側の形状とも、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(参考例2)
中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)、中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯2(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1、2に巻いていた側の形状とも、たるみZgs=50mm、a値=0mm、b値=50mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(参考例3)
中心円周314.00mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.83mmの内芯1(中心円周が最小値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に太くなる)、中心円周314.00mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.83mmの内芯2(中心円周が最小値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に太くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1、2に巻いていた側の形状とも、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(参考例4)
中心円周314.42mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周が最大値で中心円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)、中心円周314.42mm、端部1円周314.83mm、端部2円周314.00mmの内芯2(端部1円周が最大値で中心円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)を使用したこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1、2に巻いていた側の形状とも、たるみZgs=50mm、a値=25mm、b値=25mm、曲がり=30mm、長さ=22.5m、幅=450mmのグラファイトフィルムが得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例7)
参考例3で得られたグラファイトフィルム(連続した端部たるみを有するグラファイトフィルム)を原料グラファイトフィルム(原料グラファイトフィルムの、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=45m、幅=450mm)として中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)に両面テープで貼り付けて固定し、図12のように端が揃うように立てた状態で巻きつけた。その後、駆動軸に4N・mのトルクを与え、原料グラファイトフィルムの最外周が動かないように固定して、内芯にきつく巻き締めた。以上のようにして、巻替工程をおこなった。さらに、参考例3で得られたグラファイトフィルムを原料グラファイトフィルムとして、内芯1と同素材で、中心円周314.83mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯2(中心円周が最大値で端部1円周、端部2円周に向かって徐々に細くなる)に両面テープで貼り付けて固定し、長さ20.0mまで同様の方法で巻き締めた。内芯1に巻かれている長さが20.0mとなるように原料グラファイトフィルムをほどき、図28のように内芯1、2に巻かれていない領域が5mとなるように準備したこと以外は実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=20.0m、幅=450mm、内芯2に巻いていた側の形状が、たるみZgs=50mm、a値=0mm、b値=50mm、曲がり<2mm、長さ=20.0m、幅=450mm、内芯に巻かれていない領域の形状が、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=5.0m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を3種有するグラファイトフィルム(内芯1→内芯がない部分→内芯2の順に、フラット→端部たるみ→中央たるみの形状)が得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
(実施例8)
参考例3で得られたグラファイトフィルム(連続した端部たるみを有するグラファイトフィルム)を原料グラファイトフィルム(原料グラファイトフィルムの、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=45m、幅=450mm)として中心円周314.00mm、端部1円周314.00mm、端部2円周314.00mmの内芯1(端部1円周から端部2円周まですべて同一外周)に両面テープで貼り付けて固定し、図12のように端が揃うように立てた状態で22.5m巻きつけた。その後、駆動軸に4N・mのトルクを与え、原料グラファイトフィルムの最外周が動かないように固定して、内芯にきつく巻き締めた。以上のようにして、巻替工程をおこなった。
図29のように内芯1に巻かれていない領域を内芯を用いずに円筒状にまいたこと以外は実施例1と同様にグラファイトフィルムを作製した。内芯1に巻いていた側の形状が、たるみZgs=3.5mm、a値=3.5mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mm、内芯に巻かれていない領域の形状が、たるみZgs=50mm、a値=50mm、b値=0mm、曲がり<2mm、長さ=22.5m、幅=450mmである、異なったたるみ形状を2種有するグラファイトフィルム(内芯1→内芯がない部分の順に、フラット→端部たるみ の形状)が得られた。各種物性を測定した。表1〜表3に示す。
<たるみ形状矯正処理工程の効果>
表1〜表3のように、比較例1はたるみが制御できずZgsが120mmのグラファイトフィルムが得られた。一方、たるみ制御工程を実施した参考例1〜4は、それぞれ、フラットな形状、中央にたるみを有する形状、端部にたるみを有する形状、片たるみを有する形状にグラファイトフィルムを制御することができた。これは、内芯とそれに巻かれた原料グラファイトフィルムの熱膨張の差により、熱処理の過程で内芯により原料グラファイトフィルムが外側に押し広げられフィルムが矯正されたからである。更に、実施例1〜8は、1つのシートの中に2つ以上のたるみ形状を有するグラファイトフィルムを得ることができた。
比較例1は全ての評価において、評価Eと非常に悪かった。一方、実施例1〜3、7、8の形状評価でフラットと評価された部分及び参考例1のグラファイトフィルムは、銅箔テープとのラミネート性評価において、評価Aと非常に優れていた。また、実施例1、4、5、7の中央たるみと評価された部分及び参考例2のグラファイトフィルムは圧延性評価において、評価Aと非常に優れていた。また、実施例2、3、6、7、8の端部たるみと評価された部分及び参考例3のグラファイトフィルムは引裂け評価において、評価Aと非常に優れていた。さらに、実施例3、5、6の片たるみと評価された部分及び参考例4のグラファイトフィルムは曲がり性の評価において、評価Aと非常に優れていた。以上のように、実施例1〜8のたるみを制御されたグラファイトフィルムは、比較例1のたるみを制御されていないものと比較して各種評価において非常に優れていることがわかった。また、実施例1〜8のフィルムは、各種評価で効果を発揮するたるみ形状を1つのシート内に2つ以上有するため、効率が非常に高いことがわかった。
<たるみ形状矯正処理工程の最高温度>
実施例1、比較例2を比較すると、たるみ形状矯正処理工程の最高温度が高いほど、たるみが制御できた。これは、たるみ形状矯正処理工程の最高温度が高いほど、内芯とそれに巻かれた原料グラファイトフィルムの膨張量に差ができるために、より矯正されたためである。また、温度が高いほど、グラファイト結晶子の再配列が活発に起きるためである。
(実施例9)
高分子フィルムとして複屈折0.14、厚み75μm、幅200mm、長さ50mのカネカ製ポリイミドフィルム:アピカルNPIを用いて、図30のように、巻き替え装置にセットし、加熱処理装置に連続的に供給しながらたるみ制御工程を実施した。加熱処理装置のMD方向の長さは60cm、TD方向の長さは30cmとした。高分子フィルムの幅方向の中央部の温度について、加熱処理装置の入り口の温度を500℃に、入り口から50cm部分を最高温度580℃に、最高温度の位置から10cmに出口を設けてその温度を500℃に調整した。
高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が、図30の高分子フィルムの長手方向の温度分布になるように直線的な温度勾配をつけた。ライン速度は高分子フィルム上の実温度が500℃〜580℃の温度領域において昇温速度が80℃/minになるように調整した(ライン速度は50cm/minに相当する)。
全長50mのうち前半の25mは、図30の高分子フィルムの幅方向の温度分布になるように高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部(中央部から10cmの位置)に比べて0.4℃高くなるように、幅方向にも直線的な温度勾配をつけた。なお、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が500、530、560、580℃の4箇所の位置で、幅方向の温度勾配を測定した。4箇所の全測定点において中央部より両端部が0.4℃高いことを確認した。
全長50mのうち後半の25mは、中央部の温度が両端部に比べて0.7℃高くなるように、幅方向にも直線的な温度勾配をつけた。なお、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が500、530、560、580℃の4箇所の位置で、幅方向の温度勾配を測定した。4箇所の全測定点において両端部より中央部が0.7℃高いことを確認した。
フィルムに対して引張り強さ30kgf/cmで張力を加えながらフィルムを搬送した。加熱処理装置内は図30のように黒鉛製の冶具でフィルムを上下から挟みこみ、間を滑らせるように搬送した。フィルムの厚み方向に加わる圧力は2g/cmに調整した。
次に、たるみ制御工程後のフィルムを室温(23℃)にまで冷却し、内径100mmとなるようにロール状に巻いて、図31のようにフィルムの幅方向が垂直になるように炭化炉にセットして、フィルムの幅方向の両端部の温度とフィルムの幅方向の中央部の温度とを特に制御せずに、炭化炉内温度が室温から1400℃になるまで2℃/minの昇温速度で熱処理を行い、フィルムを炭化させた。
次に、炭化後の炭化フィルムを室温(23℃)にまで冷却し、炭化処理と同様に黒鉛化炉にセットし、フィルムの幅方向の両端部の温度とフィルムの幅方向の中央部の温度とを特に制御せずに、黒鉛化炉内温度が室温から2900℃になるまで0.5℃/minの昇温速度で熱処理を行い、フィルムを黒鉛化させた。各種物性を測定した。表8に示す。
(実施例10)
後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が両端部に比べて2.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例11)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて0.5℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が両端部に比べて10.0℃高くなるように、幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例12)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて0.6℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度が両端部に比べて15.0℃高くなるように、幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例13)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて0.7℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の一方の端部温度Cに比べて中央部温度Bが0.25℃高くなるように、かつ、高分子フィルムの幅方向の中央部温度Bに比べて他方の端部温度Aが0.25℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例14)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて2.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の一方の端部温度Cに比べて中央部温度Bが0.5℃高くなるように、かつ、高分子フィルムの幅方向の中央部温度Bに比べて他方の端部温度Aが0.5℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例15)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて10.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の一方の端部温度Cに比べて中央部温度Bが15.0℃高くなるように、かつ、高分子フィルムの幅方向の中央部温度Bに比べて他方の端部温度Aが15.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
(実施例16)
前半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度が中央部に比べて15.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと、後半の温度設定を、高分子フィルムの幅方向の一方の端部温度Cに比べて中央部温度Bが20.0℃高くなるように、かつ、高分子フィルムの幅方向の中央部温度Bに比べて他方の端部温度Aが20.0℃高くなるように幅方向に直線的な温度勾配をつけたこと以外は、実施例9と同様にグラファイトフィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表8に示す。
21 ロール1
22 ロール2
23 グラファイトフィルム
24 懸垂線
25 たるみ
31 フィルムの幅方向
32 フィルムの長手方向
51 中央部
52 端部
53 端部1の温度測定点
54 中央部の温度測定点
55 端部2の温度測定点
56 任意の幅方向
61 加熱処理装置
62 黒鉛製の重石
63 高分子フィルム
64 黒鉛製の炉床
65 温度測定ポイント
71 重石
72 原料グラファイトフィルム
73 土台
81 室温
82 熱処理中
83 原料グラファイトフィルム
84 内芯
91 拡張できる機能を有する内芯
92 原料グラファイトフィルム
93 拡張後の状態
101 フラットなグラファイトフィルムを作製するための内芯
102 中央部にたるみのあるグラファイトフィルムを作製するための内芯
103 端部にたるみを有するグラファイトフィルムを作製するための内芯
104 片たるみを有するグラファイトフィルムを作製するための内芯
105 端部1外周
106 中央外周
107 端部2外周
111 内芯
112 原料グラファイトフィルム
121 土台
122 駆動軸
123 内芯
124 両面テープ
125 原料グラファイトフィルム
126 巻替後の断面
127 原料グラファイトフィルムの最外周の巻きの半径
128 駆動軸の中心
129 内芯の半径
1210 原料グラファイトフィルムの巻き厚み
131 内芯1
132 内芯2
141 最端部のたるみ
142 最端部から30mm地点のたるみ
151 中央部のたるみ
161 テーブル
162 グラファイトフィルム
163 定規の位置
171 巻きの内側
172 巻きの外側
181 粘着層又は接着層を有するシート
182 粘着層又は接着層を有するシートの巻き出しロール
183 第一ロール
184 第二ロール
185 セパレーター
186 セパレーター巻取りロール
187 セパレーターを剥がしはじめるきっかけとなるバー
188 セパレーター付き銅箔テープ
189 グラファイトフィルムの幅
1810 粘着層又は接着層を有するシートの幅
1811 グラファイトフィルム
1812 巻き出し紙製
191 グラファイトフィルム
192 第一ロール
193 (第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点)−(第一ロールの中心点)
−(第一ロール/第二ロールの接点)のなす角度
194 第一ロールとグラファイトフィルムの接触開始点
195 第一ロールの中心点
196 第一ロール/第二ロールの接点
201 グラファイト複合フィルム
202 拡大図
203 貼り合わせシワ
211 (上部圧延ロールと原料グラファイトフィルムの接触開始点)−(上部圧延ロー
ルの中心点)−(上部圧延ロールと下部圧延ロールの接点)のなす角度b
212 上部圧延ロールとグラファイトフィルムの接触開始点
213 上部圧延ロールの中心点
214 上部圧延ロールと下部圧延ロールの接点
215 上部圧延ロール
216 下部圧延ロール
217 グラファイトフィルム
221 圧延後のグラファイトフィルム
222 MD方向
223 シワ
231 グラファイトフィルム
232 巻き出し紙製
233 巻き取り紙製
234 紙製同士の距離
241 裂け不良
251 円筒状の黒鉛製円筒内芯
252 外筒
253 円筒内芯に巻かれたポリイミドフィルム
254 通気性を持たせるための開口部
261 支え
262 炭化フィルム
271 M形状
272 W形状
281 内芯を使わない範囲
291 円筒状に巻かれた原料グラファイトフィルム
300 巻出し装置
301 巻取り装置
310 炭化フィルムの巻物
311 炉床
312 重力方向
<本発明の実施例で用いる高分子フィルムの熱分解開始温度及びたるみ制御温度>
本発明の実施例で用いたポリイミドフィルム(カネカ製ポリイミドフィルムアピカル(登録商標)AH 厚み75μm、アピカル(登録商標)NPI 厚み75μm)の場合には熱分解開始温度とたるみ制御温度は次のようになる。熱分解開始温度は500℃(重量減少率1.0%)である。たるみ制御温度は、520℃(重量減少率1.1%)以上、好ましくは550℃(重量減少率1.2%)以上、より好ましくは580℃(重量減少率2.8%)以上、更に好ましくは600℃(重量減少率10.0%)以上、特に好ましくは630℃(重量減少率15.0%)以上、最も好ましくは655℃(重量減少率20.0%)である。たるみ制御温度が520℃以上であれば、たるみ制御工程の効果が得られる。たるみ制御温度を高くすると、たるみ制御工程の効果は高まる。たるみ制御温度が655℃(たるみ制御の上限値)を超えていない場合には、たるみ制御工程を1段階で実施しても、多段階で実施しても、複数回に分けて実施しても、たるみ制御の効果を増幅させることができる。その場合、655℃を超える温度までフィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御する。655℃を超えた温度域では、フィルムの幅方向の温度を所望の温度に制御しても、そのような条件にしなくても、いずれの場合も最終的にグラファイトフィルムを製造した場合のグラファイトフィルムのたるみと変わらない。
本手法において、平坦性を矯正するために必要な圧力として、内芯に巻かれた原料フィルムの最内周の内面対して内芯から、5g/cm以上、好ましくは、50g/cm以上、より好ましくは100g/cm以上の圧力を加えるとよい。圧力が5g/cm以上であれば、矯正の効果が得られる。圧力の上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。
本手法において、平坦性を矯正するために必要な圧力は測定できないが、代わりに巻替工程における巻き締め強さにて規定できる。本発明の巻替工程における巻き締め強さは1N・m/m以上、好ましくは5N・m/m以上、さらに好ましくは10N・m/m以上、更には100N・m/m以上、特に好ましくは200N・m/m以上である。巻き締め強さは1N・m/m以上であると、矯正処理工程時に、内芯に巻かれた原料フィルムの最内周の内面対して内芯から、十分な圧力がかかり、矯正の効果が得られる。巻き締め強さの上限は、フィルムが破損しない程度であればよい。
重合工程で作られたポリアミド酸のDMF溶液をミキサーで硬化剤(無水酢酸、イソキノリン)と一定の比率で混合して、Tダイスからエンドレスベルト上に連続的に流延塗布し、ベルトを回転させながら熱風乾燥した。この混合ワニスは加熱される事により分子内の脱水が起こり、イミド化反応が進行した。溶媒が蒸発する事によりベルト室出口での残溶媒量が約46%となった自己支持性を有するフィルム(ゲルフィルム)をベルトから引き剥がし、ピン枠に固定し、テンター室で300℃〜580℃で合計4分の熱処理をおこない厚み50μmのポリイミドフィルムAを製造した。本検討では、同様の方法で製造されたカネカ製ポリイミドフィルム(製品名:アピカル(登録商標)200AV)を使用した。
比較例1は全ての評価において、評価Eと非常に悪かった。一方、実施例1〜3、7、8の形状評価でフラットと評価された部分及び参考例1のグラファイトフィルムは、銅箔テープとのラミネート性評価において、評価Aと非常に優れていた。また、実施例1、4、5、7の中央たるみと評価された部分及び参考例2のグラファイトフィルムは圧延性評価において、評価Aと非常に優れていた。また、実施例2、、6、7、8の端部たるみと評価された部分及び参考例3のグラファイトフィルムは引裂け評価において、評価Aと非常に優れていた。さらに、実施例3、5、6の片たるみと評価された部分及び参考例4のグラファイトフィルムは曲がり性の評価において、評価Aと非常に優れていた。以上のように、実施例1〜8のたるみを制御されたグラファイトフィルムは、比較例1のたるみを制御されていないものと比較して各種評価において非常に優れていることがわかった。また、実施例1〜8のフィルムは、各種評価で効果を発揮するたるみ形状を1つのシート内に2つ以上有するため、効率が非常に高いことがわかった。
(実施例9)
高分子フィルムとして複屈折0.14、厚み75μm、幅200mm、長さ50mのカネカ製ポリイミドフィルム:アピカル(登録商標)NPIを用いて、図30のように、巻き替え装置にセットし、加熱処理装置に連続的に供給しながらたるみ制御工程を実施した。加熱処理装置のMD方向の長さは60cm、TD方向の長さは30cmとした。高分子フィルムの幅方向の中央部の温度について、加熱処理装置の入り口の温度を500℃に、入り口から50cm部分を最高温度580℃に、最高温度の位置から10cmに出口を設けてその温度を500℃に調整した。

Claims (13)

  1. 2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルム。
  2. 2つ以上の異なるたるみ形状のそれぞれの領域は、最も長手方向の長さがそれぞれ2.0m以上である請求項1に記載のグラファイトフィルム。
  3. 2つの異なるたるみ形状が、フラットと中央たるみ、フラットと端部たるみ、フラットと片たるみ、中央たるみと端部たるみ、中央たるみと片たるみ、端部たるみと片たるみ、のいずれかの組み合わせであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラファイトフィルム。
  4. 2つ以上の異なるたるみ形状が、それぞれ、フラット、中央たるみ、端部たるみ、片たるみから選ばれるいずれか1つのたるみ形状であり、
    隣り合う2つのたるみ形状は互いに異なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラファイトフィルム。
  5. 前記フラットは、JIS C2151によるフィルムの巻き取り性評価におけるたるみが4.9mm以下のたるみ形状であることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラファイトフィルム。
  6. 前記中央たるみは、グラファイトフィルムの中央部のたるみb値が5mm以上80mm以下のたるみ形状であることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラファイトフィルム。
  7. 前記端部たるみは、グラファイトフィルムの端部のたるみa値が5mm以上80mm以下のたるみ形状であることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラファイトフィルム。
  8. 前記片たるみは、グラファイトフィルムの曲がりが11mm以上80mm以下のたるみ形状であることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラファイトフィルム。
  9. 原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する矯正処理工程を含むグラファイトフィルムの製造方法であって、
    前記グラファイトフィルムは、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
  10. 高分子フィルムから2000℃以上の熱処理によって得られたグラファイトフィルムを、少なくとも1度、2000℃未満の温度条件にまで冷やして前記原料グラファイトフィルムを得る工程を含み、当該工程の後で前記矯正処理工程を行なうことを特徴とする請求項9に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  11. 前記矯正処理工程において、原料グラファイトフィルムを内芯に巻きつけた状態で熱処理することを特徴とする請求項9または10に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  12. 原料グラファイトフィルムに圧力を加えながら2000℃以上まで熱処理する矯正処理工程を含み、
    前記矯正処理工程において、原料グラファイトフィルムを少なくとも2本の内芯に巻きつけた状態で熱処理するグラファイトフィルムの製造方法であって、
    前記グラファイトフィルムは、2つ以上の異なるたるみ形状を有し、フィルムの最も長手方向の長さが4m以上であるグラファイトフィルムであることを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
  13. 高分子フィルムに対して、下記a)〜d)のうちの少なくとも2つのたるみ制御工程を施す工程を含み、当該工程の後で、前記高分子フィルムを2000℃以上で熱処理することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
    a)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度を高分子フィルムの幅方向の中央部の温度に比べて高くし、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が3.5℃/m以上75.0℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
    b)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部の温度を高分子フィルムの幅方向の中央部の温度に比べて低くし、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が−75℃/m以上−3.5℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
    c)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の両端部から中央部への温度勾配が−3.4℃/m以上3.4℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程、
    d)高分子フィルムの熱分解開始温度から高分子フィルムのたるみ制御温度までの温度範囲で、高分子フィルムの幅方向の一方の端部の温度をA、もう一方の端部の温度をC、高分子フィルムの幅方向の中央部の温度をBとしたときに、温度A≧温度B≧温度C、かつ、温度A≠温度Cであり、温度Aから温度Cへの温度勾配が2.5℃/m以上200℃/m以下となるように高分子フィルムを熱処理する、たるみ制御工程。
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