本発明は、盛上げタップに関し、特に、おねじをめねじに螺合させる際に、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制するめねじを形成できる盛上げタップに関するものである。
従来より、工具本体の先端側におねじが螺刻されたねじ部を備え、被加工物に設けられた下穴の表層部にねじ部を食い込ませることにより、下穴の表層部を塑性変形させてめねじを形成する盛上げタップが知られている(特許文献1)。また、盛上げタップの中には、ねじ部とシャンクとの間に連設形成されると共に、ねじ部のおねじの谷の径よりも小径に設定された首部を備える盛上げタップがある(特許文献2)。
特開2006−068822号公報(図1など)
特開2011−152614号公報(図1(a)など)
ここで、図7を参照して、従来の盛上げタップにより形成されためねじのねじ山(内径山)の形状について説明する。図7は、従来の盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物Wの断面形状を模式的に表した模式図である。
図7に示すように、一般に、盛上げタップにより加工する被加工物Wに設けられる下穴の下穴径は、めねじ内径が所定の寸法内に入るように設定される。また、盛上げタップは、下穴の表層部にねじ部を食い込ませることによって、形成すべきめねじの谷の形状を形成しつつ、そのめねじの谷の両側へ余肉を盛上げることによってめねじのねじ山が形成される。
そのため、上述した従来の盛上げタップにより形成されためねじには、その形成されためねじの内径山の頂部にくぼみHが形成される。よって、おねじが形成されたボルト等をめねじに螺入させる際に、おねじのねじ山の山頂がくぼみHに嵌り込み、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれやすくなるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、おねじをめねじに螺合させる際に、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制するめねじを形成できる盛上げタップを提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために、請求項1記載の盛上げタップによれば、首部は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えているので、めねじの盛上げ加工時に首部を下穴の内部に挿入させ、下穴の表層部にねじ部を食い込ませることにより形成されためねじの内径山の頂部に対し、ねじ部の軸心方向における後端側に連設形成された首部の張出部を当接させることができる。これにより、くぼみが形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができるので、おねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことによっておねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制できるという効果がある。また、その結果、おねじ又はめねじが形成された部品の歩留まりを向上させることができるので、部品コストの抑制を図ることができるという効果がある。
また、首部には、張出部よりも外径が小さく設定される逃げ部が、張出部に対して周方向に隣接して形成されるので、張出部によるめねじの内径山の頂部の塑性変形をさせやすくすることができるという効果がある。
請求項2記載の盛上げタップによれば、請求項1記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部の外径の最大寸法が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下、に設定されるので、めねじを形成する下穴の下穴径が大きく設定されたことで下穴に形成されためねじの内径山の高さが低くなり、めねじの内径が大きくなった場合であっても、張出部をめねじの内径山の頂部に当接させやすくすることができる。よって、被加工物に形成する下穴の下穴径の寸法管理を緩和させることができるので、下穴径を設定する際の作業性を向上させることができ、被加工物にめねじを形成する際の作業性を向上させることができるという効果がある。
請求項3記載の盛上げタップによれば、請求項1又は2に記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部は、ねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定されるので、めねじの盛上げ加工時において、首部の2ピッチ以上が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップを移動させることで、下穴の口元部分近傍に形成されるめねじの内径山をより平坦に塑性変形させることができる。よって、ねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことをより確実に防止できるという効果がある。
請求項4記載の盛上げタップによれば、請求項1から3のいずれか記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部は、ねじ部のおねじを研削する研削砥石に研削されることで発生する残痕がねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に形成されるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
即ち、ねじ部とシャンクとの間に首部が設けられた従来の盛上げタップでは、首部の外径がねじ部のおねじの谷の径よりも小さくされていたのに対し、本発明における盛上げタップでは、首部の外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えている。また、一般に、ねじ部に形成されるおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定されるので、張出部はねじ部に形成されるおねじの谷の径よりも径方向外側へ張り出して形成される。
従って、盛上げタップの製造過程において、工具本体に対して研削砥石を工具本体の軸心方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体の先端側に当接させて、ねじ部のおねじを研削した後に研削砥石を工具本体から離間させる際、研削砥石をねじ部の終端から首部側へ移動させた場合、従来の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接することはなかったが、本発明の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接する。その結果、ねじ部との連設部分近傍に位置する首部の外周面には、研削砥石に研削されることによって形成された谷形状の残痕が発生する。この残痕が張出部に発生した盛上げタップを用いてめねじを形成した場合、張出部の外径が残痕の発生によって小さくなるので、残痕が発生した張出部をめねじの内径山の頂部に当接させることができず、内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができない。
これに対し、請求項4記載の盛上げタップでは、首部に対する残痕の発生をねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に収めることで、残痕による首部の剛性の低下を抑制でき、その結果、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できる。
また、張出部がねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定される場合では、軸心方向における残痕の終端から首部の後端までの寸法を1ピッチ以上確保できる。この場合、めねじの盛上げ加工時に、首部の2ピッチ以上が下穴に挿入される位置まで盛上げタップを軸心方向へ移動させることによって、ねじ部によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に形成された内径山の頂部に対して、張出部を当接させることができるという効果がある。その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじのねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじの最初のねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができるという効果がある。
請求項5記載の盛上げタップによれば、請求項1から4のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部の軸心方向における寸法がねじ部の軸心方向における寸法よりも小さく設定されるので、首部の軸心方向における寸法が長くなりすぎることによって盛上げタップの剛性が低下することを回避できる。よって、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
請求項6記載の盛上げタップによれば、請求項1から5のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、工具本体の軸心方向に沿って凹設される油溝が、ねじ部と首部の逃げ部とに形成されるので、張出部に油溝が凹設されることによって張出部の外径が小さくなることを回避できるという効果がある。さらに、油溝を凹設することによって、油溝と首部の外周面との連設部分にバリが発生した場合であっても、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを回避しやすくすることができるという効果がある。
本発明の一実施の形態における盛上げタップの側面図である。
(a)は、図1のIIa−IIa線における盛上げタップの断面図であり、(b)は、図1のIIb−IIb線における盛上げタップの断面図である。
(a)は、図1のIIIa方向視における盛上げタップの部分拡大図であり、(b)は、盛上げタップによって被加工物にめねじが盛上げ形成される過程を模式的に表した模式図である。
盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物の断面形状を模式的に表した模式図である。
めねじの盛上げ加工試験の試験結果を表した表である。
変形例における盛上げタップの側面図である。
従来の盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物の断面形状を模式的に表した模式図である。
100 盛上げタップ
10 工具本体
20 シャンク
30 ねじ部
40 首部
41 張出部
42 逃げ部
50 油溝
60 残痕
O 軸心
P ピッチ
D 張出部の外径の最大寸法
W 被加工物
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して、本発明の一実施の形態における盛上げタップ100の構成について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における盛上げタップ100の側面図である。図2(a)は、図1のIIa−IIa線における盛上げタップ100の断面図であり、図2(b)は、図1のIIb−IIb線における盛上げタップ100の断面図である。図3(a)は、図1のIIIa方向視における盛上げタップ100の部分拡大図であり、図3(b)は、盛上げタップ100によって被加工物Wにめねじが形成される過程を模式的に表した模式図である。なお、図2(b)では、ねじ部30のねじ山の谷底に沿って切断した断面図が図示されており、図3(b)では、図面を簡略化して説明を分かりやすくするため、被加工物のみを断面視している。
図1に示すように、盛上げタップ100は、マシニングセンタ等の加工機械から伝達される回転力とねじのリードに合った送りとによって、被加工物W(図3(b)参照)に形成された下穴にめねじを盛上げ形成するための工具であり、軸心O回りに回転される工具本体10と、その工具本体10の軸心O方向後端側(図1右側)に形成されるシャンク20と、工具本体10の軸心O方向先端側(図1左方向)に形成されるねじ部30と、工具本体10の軸心O方向におけるシャンク20及びねじ部30の間に連設形成される首部40と、ねじ部30の軸心O方向先端側から首部40に亘って凹設される2つの油溝50とを備えて構成されている。
工具本体10は、円柱状に形成される部材であり、高速度工具鋼から構成されている。なお、工具本体10は、高速度工具鋼に限らず、超硬合金等から構成されてもよい。
シャンク20は、ホルダ(図示せず)を介して盛上げタップ100を加工機械に取り付ける際にホルダによって保持されると共に軸心Oを有する円柱状に形成される部位であり、後述する首部40の張出部41よりも小径に形成される円柱状の小径部21と、その小径部21よりも軸心O方向後端側に連設されると共に軸心O方向後端側へ向かうにつれて拡径するテーパ状のテーパ部22と、そのテーパ部22よりも軸心O方向後端側に連設されると共に張出部41よりも大径に形成される円柱状の大径部23と、その大径部23よりも軸心O方向後端側に形成される断面視略四角形状のシャンク四角部24とを備えている。
図2(a)に示すように、ねじ部30は、下穴の表層部に食い込ませることにより被加工物Wにめねじを形成するための部位であり、複数のねじ山が所定のピッチPで螺刻されている。また、ねじ部30のねじ山には、径方向外側へ向けて突出した4つのマージン部31が周方向等間隔に設けられている。なお、ねじ部30のおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定され、これにより、めねじの盛上げ加工時において、ねじ部30のおねじの谷底が、下穴に形成されるめねじと当接することを回避している。
図2(b)に示すように、首部40は、ねじ部30によって形成されためねじの口元部分近傍の内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させるための部位であり、軸心O方向における寸法が3ピッチに設定されている。また、首部40は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される4つの張出部41と、その張出部41に対して周方向に交互に隣接して形成されると共に外径が張出部41よりも小さく設定される4つの逃げ部42とを備えている。なお、本実施の形態では、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが略相似形状になっており、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されている。
張出部41は、ねじ部30によって形成されためねじの内径山の頂部に当接される部位であり、ねじ部30の終端から首部40の終端に向けて軸心O方向に沿って延設されている。逃げ部42は、ねじ部30によって形成されためねじの内径山の頂部に当接されることを回避するための部位であり、首部40の軸心O方向の先端から後端に亘って延設されている。また、逃げ部42の外径は、その逃げ部42の外径の最小寸法dと張出部41の外径の最大寸法Dとの差の最大値がねじ部のおねじのピッチPの約0.1倍(0.1ピッチ)程度に設定されている。
油溝50は、めねじの盛上げ加工時において潤滑効果を高めるためにタッピングオイルを盛上げ面に供給するための部位であり、各油溝50がねじ部30及び首部40の互いに対向して位置する2つの逃げ部42の外周面に対し、ねじ部30の軸心O方向先端から首部40の逃げ部42に亘って軸心O方向に沿って形成されている。
次に、盛上げタップ100による被加工物Wへのめねじの盛上げ方法について説明する。被加工物Wに形成された下穴にめねじを形成する際は、盛上げタップ100の先端から、首部40の少なくとも一部が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させる。なお、本実施の形態では、少なくとも首部40の2ピッチ分が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させる。これにより、下穴の表層部にめねじが盛上げ形成される。
ここで、下穴に形成すべきめねじの内径は、原則として、ねじの種類や呼び等によってJISB0209−2等で規格された最小許容寸法から最大許容寸法の範囲内となるように設定される。一方、盛上げタップ100の首部40は、外径が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定された張出部41を備えている。従って、めねじの盛上げ加工時において、ねじ部30によってめねじが形成された下穴の内部に首部40の少なくとも2ピッチ分が挿入されることにより、下穴の口元(盛上げタップ100が挿入される入口となる開口)部分近傍に形成されためねじの内径山の頂部に張出部41を当接させることができる。
よって、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじの最初のねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじのねじ山およびめねじの内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
このように、ねじ部30を被加工物Wに形成された下穴の表層部に食い込ませ、余肉を盛り上げることで形成されためねじの内径山の頂部に対し、張出部41を当接させることによって、くぼみHが形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができる。よって、おねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことによっておねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制できる。また、その結果、おねじ又はめねじが形成された部品の歩留まりを向上させることができるので、部品コストの抑制を図ることができる。
また、めねじの内径山の頂部に張出部41を当接させて内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させる際に、その内径山の両側に形成された谷側に向けて張り出すバリが発生する場合がある。しかしながら、めねじの盛上げ加工終了後に盛上げタップ100を下穴から抜く際にねじ部30のねじ山のフランク面にバリが当接するので、バリを除去することができる。
なお、張出部41の外径の最大寸法Dは、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下、に設定されるのが好ましい。
即ち、張出部41は、その外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定されるので、少なくとも内径が最小許容寸法以上に設定されためねじの内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。しかしながら、盛上げタップ100でめねじを盛上げ形成する場合、切削タップでめねじを形成する場合と比べて、下穴径の加工公差が小さく、被加工物Wの材質によっても盛り上がるめねじの内径山の高さが異なるため、下穴径の寸法精度を厳格に管理する場合には、下穴径を設定する作業が繁雑になる。
よって、張出部41の外径の最大寸法Dの最小値を、その形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上に設定することによって、被加工物Wに形成した下穴の下穴径が大きく設定されたことで下穴に形成されためねじの内径山の高さが低くなり、めねじの内径が大きくなった場合であっても、張出部41をめねじの内径山の頂部に当接させやすくすることができる。よって、被加工物Wに形成する下穴の下穴径の寸法管理を緩和させることができるので、下穴径を設定する際の作業性を向上させることができ、被加工物Wにめねじを形成する際の作業性を向上させることができる。
さらに、張出部41の外径の最大寸法Dの最大値が形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下に設定されるので、張出部41によって頂部が平坦面状に形成されることによりめねじの内径が最大許容寸法を上回ることを回避できる。よって、めねじの内径山の頂部が平坦面状に塑性変形されためねじの内径山に対しても、ボルト等のおねじを強固に噛み合わせることができる。
また、首部40には、逃げ部42が張出部41に対して周方向に交互に隣接して形成されているので、張出部によるめねじの内径山の頂部を塑性変形させやすくすることができる。
なお、逃げ部42の外径の最小寸法dと張出部41の外径の最大寸法Dとの差の最大値は、形成すべきめねじの内径の許容差の1/2以上あれば良い。また、張出部41及び逃げ部42の形状は、本実施の形態に限られるものではなく、必要に応じて形状を変えてもよい。
さらに、油溝50は、工具本体10の軸心O方向に沿って、ねじ部30と首部40の逃げ部42とに凹設されるので、張出部41に油溝50が凹設されることによって張出部41の外径が小さくなることを回避できる。さらに、油溝50を凹設することによって油溝50と首部40の外周面との連設部分にバリが発生した場合であっても、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを回避しやすくすることができる。
ここで、ねじ部とシャンクとの間に首部が設けられた従来の盛上げタップでは、首部の外径がねじ部のおねじの谷の径よりも小さくされていたのに対し、本発明における盛上げタップ100では、首部40の張出部41の外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定されている。また、ねじ部30に形成されるおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定されるので、張出部41はねじ部30に形成されるおねじの谷の径よりも径方向外側へ張り出して形成される。
従って、盛上げタップ100の製造過程において、工具本体10に対して研削砥石(図示せず)を工具本体10の軸心O方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体10の先端側に当接させて、ねじ部30のおねじを研削した後に研削砥石を工具本体10から離間させる際、研削砥石をねじ部30と首部40との連設部分から首部30側(図3(a)右側)へ移動させた場合、従来の盛上げタップでは首部に研削砥石が当接することはなかったが、本発明の盛上げタップ100では首部40に研削砥石が当接する。その結果、ねじ部30との連設部分近傍に位置する首部40の外周面には、研削砥石に研削されることによって形成された谷形状の残痕60が発生する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、張出部41に残痕60が発生した盛上げタップを用いてめねじを形成した場合、張出部41の外径が残痕60の発生によって小さくなるので、残痕60が発生した部分の張出部41は、めねじの内径山の頂部に当接させることができず、内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができない。
よって、盛上げタップ100の製造過程において、工具本体10に対して研削砥石を工具本体10の軸心方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体10の先端側に当接させて、ねじ部30のおねじを研削した後、研削砥石がねじ部30の終端から軸心O方向へ1ピッチ移動するまでに研削砥石を工具本体10から離間させる。これにより、首部40に対して残痕60が発生する範囲を、ねじ部30の終端から1ピッチ分離間した位置までの範囲内に収めることができる。
本実施の形態では、首部40の軸心O方向における寸法が3ピッチに設定されているので、首部40に発生した残痕60の軸心O方向における終端から首部40の軸心O方向における後端までの寸法を2ピッチ以上確保できる。また、本実施の形態では、首部40の2ピッチが下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させるので、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に位置する内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。
なお、首部40に対して残痕60が発生する範囲をねじ部30の終端から1ピッチ分以上離間した位置までの範囲内とする場合には、首部40に発生した残痕60の軸心O方向における終端から首部40の軸心O方向における後端までの寸法が、1ピッチよりも大きくなる寸法に設定されていればよい。これにより、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に位置する内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。
その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじの最初のねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみHに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじのねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
さらに、首部40に対して残痕60が発生する範囲を、ねじ部30の終端から1ピッチ以下離間した位置の範囲内に収めることで、残痕60の発生による首部40の剛性の低下を回避できるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップ100の振れを抑制できる。
ここで、ねじ部30の終端から首部40の後端に向けて軸心方向に沿って延設される張出部41の軸心O方向における寸法は、少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定されるのが好ましい。これにより、めねじの盛上げ加工時において、首部40の2ピッチ以上が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を移動させることで、下穴の口元部分近傍に形成されるめねじの内径山をより平坦に塑性変形させることができる。よって、ねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことをより確実に防止できる。
また、この場合、首部40に対して残痕60が発生する範囲をねじ部30の終端から1ピッチ分以上離間した位置までの範囲内とすることで、軸心O方向における残痕60の終端から首部40の後端までの寸法を1ピッチ以上確保できる。よって、めねじの盛上げ加工時に、首部40の2ピッチ以上が下穴に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させることによって、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に形成された内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじのねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじの最初のねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
一方、首部40の軸心O方向における寸法をねじ部30の軸心O方向における寸法よりも小さく設定することにより、首部40の軸心O方向における寸法が長くなりすぎることによって盛上げタップ100の剛性が低下することを回避できるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップ100の振れを抑制できる。
このように、盛上げタップ100は、その盛上げタップ100の製造過程において首部40のねじ部30との連設部分近傍に残痕が形成されることを許容しつつ、盛上げタップ100によるめねじの盛上げ加工時において被加工物Wに形成された下穴の口元部分近傍に形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができる。
次に、図4及び図5を参照して、盛上げタップ100による被加工物へのめねじの盛上げ加工試験の試験結果について説明する。図4は、盛上げタップ100によりめねじが盛上げ形成された被加工物Wの断面形状を模式的に表した模式図である。図5は、めねじの盛上げ加工試験の試験結果を表した表である。なお、図4は、試験1における被加工物の断面形状と、試験2における被加工物の断面形状とがほぼ同一形状であったので、試験2における被加工物の断面形状の図示を省略し、試験1における被加工物の断面形状のみを図示している。
この試験は、上述のように構成される盛上げタップ100(図1参照)によって、下記の詳細諸元で被加工物Wに形成された下穴(通り穴)の内部に盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させつつ挿入させて下穴の表層部にめねじを盛上げ形成し、形成されためねじの形状を確認すると共に、下穴に形成されためねじの内径山のうち、最も下穴の口元側(盛上げタップ100が挿入される入口側、図4右側)に形成された内径山を基準とするめねじの内径、および、最も下穴の奥側(図4左側)に形成された内径山を基準とするめねじの内径をそれぞれ測定する。
なお、本試験の詳細諸元は、試験1では、被削材:ADC12(板厚12mm)、加工機:立型マシニングセンタ、ホルダ:タッパー、切削油:不水溶性切削油剤、切削速度:10.2mm/min、下穴:φ4.62(ドリル),φ4.62〜4.64(実測)、有効ねじ長:12mm(通り)、タップ加工ストローク:被加工物の口元側端面より13mmであり、試験2では、被削材:S45C(板厚10mm)、加工機:立型マシニングセンタ、ホルダ:タッパー、切削油:不水溶性切削油剤、切削速度:7.9mm/min、下穴:φ4.62(ドリル),φ4.62〜4.64(実測)、有効ねじ長:10mm(通り)、タップ加工ストローク:被加工物の口元側端面より15mmである。また、試験1及び試験2で使用した盛上げタップ100は、M5×0.8に設定されている。
図4及び図5に示すように、めねじ盛上げ加工試験の試験結果によれば、試験1では、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径がすべてφ4.28であり、内径山の頂部が平坦面状に形成されていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径はφ4.20〜4.23であり、内径山の頂部にはくぼみHが形成されていた。
また、試験2では、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径がいずれもφ4.28であり、試験1と同様、内径山の頂部が平坦面状に形成されていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径がいずれもφ4.18であり、試験1と同様、内径山の頂部にはくぼみHが形成されていた。
このように、試験1及び試験2のいずれにおいても、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径山の頂部は平坦面状になっていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径山の頂部にはくぼみが形成されていた。これは、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径山の頂部が、盛上げタップ100の首部40に形成された張出部41と当接したことによって内径山の頂部が平坦面状に塑性変形されたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径山の頂部には、張出部41が当接されず、ねじ部30によってめねじの内径山が盛上げられた際に内径山の頂部に形成されたくぼみHが残存したものと考えられる。
即ち、首部40が、軸心O方向における軸心Oから外周面までの寸法が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部41を備え、盛上げタップ100によるめねじの盛上げ加工時において、張出部41をめねじの内径山の頂部に当接させることによって、めねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができた。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施の形態では、張出部41の外径の最大寸法Dは、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの最大許容寸法以下、に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、被加工物Wの材質やめねじに螺合させるおねじとのひっかかり率等の関係により、必要に応じて張出部41の外径の最大寸法Dを、その形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和未満、又は、形成すべきめねじの最大許容寸法の内径よりも大きく設定してもよい。
上記実施の形態では、首部40が4つの張出部41を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、首部40は少なくとも1箇所以上の張出部41を備えていればよい。張出部41を少なくすることで、その分、首部40において逃げ部42が占める割合を多くすることができるので、めねじの盛上げ加工時におけるタッピングトルクを抑制できる。一方、張出部41を多くすることで、めねじの内径山の頂部に対して張出部41を当接させる回数を多くできるので、内径山の頂部により平坦面状に塑性変形させることができる。なお、首部40が1箇所の張出部41を備える場合、「張出部41の外径」とは、「軸心O方向に垂直な断面視における軸心Oから外周面までの寸法の2倍」を指すものとする。また、首部40に形成される張出部41の数が奇数である場合における「張出部41の外径」についても同様とする。
上記実施の形態では、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが略相似形状になっており、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが相似形状でなくてもよく、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されてなくてもよい。また、ねじ部30に形成されるマージン部31の数と首部40に形成される張出部41の数とは、一致していなくてもよい。これにより、盛上げタップ100の設計の自由度を高めることができる。
上記実施の形態では、盛上げタップ100が2つの油溝50を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、盛上げタップが1又は3つ以上の油溝50を備えていてもよく、油溝50を備えていなくてもよい。油溝50の形成を省略することにより、首部40の外周面と油溝50との連設部分にバリが発生することを回避できるので、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを防止できる。
また、上記実施の形態では、シャンク20が、首部40の張出部41よりも小径に形成される小径部21と、その小径部21に連設されるテーパ部22と、そのテーパ部22に連設されると共に張出部41よりも大径に形成される大径部23と、シャンク四角部24とから構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、シャンク220が小径部221と、シャンク四角部24とから構成されてもよい。
ここで、図6を参照して、変形例における盛上げタップ200について説明する。図6は、変形例における盛上げタップ200の側面図である。
図6に示すように、シャンク220は、首部40の張出部41よりも小径に形成される小径部221と、シャンク四角部24とを備えている。これにより、シャンク220の全体が張出部41よりも小径に形成されるので、盛上げタップ200による被加工物へのめねじの盛上げ加工時において、シャンク220が下穴の内部に入り込んだ位置まで盛上げタップ200を加工させた場合であっても、張出部41によってねじ山の頂部が平坦面状に塑性変形させられためねじの内径山に、シャンク220の外周面が当接することを回避できる。
本発明は、盛上げタップに関し、特に、おねじをめねじに螺合させる際に、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制するめねじを形成できる盛上げタップに関するものである。
従来より、工具本体の先端側におねじが螺刻されたねじ部を備え、被加工物に設けられた下穴の表層部にねじ部を食い込ませることにより、下穴の表層部を塑性変形させてめねじを形成する盛上げタップが知られている(特許文献1)。また、盛上げタップの中には、ねじ部とシャンクとの間に連設形成されると共に、ねじ部のおねじの谷の径よりも小径に設定された首部を備える盛上げタップがある(特許文献2)。
特開2006−068822号公報(図1など)
特開2011−152614号公報(図1(a)など)
ここで、図7を参照して、従来の盛上げタップにより形成されためねじのねじ山(内径山)の形状について説明する。図7は、従来の盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物Wの断面形状を模式的に表した模式図である。
図7に示すように、一般に、盛上げタップにより加工する被加工物Wに設けられる下穴の下穴径は、めねじ内径が所定の寸法内に入るように設定される。また、盛上げタップは、下穴の表層部にねじ部を食い込ませることによって、形成すべきめねじの谷の形状を形成しつつ、そのめねじの谷の両側へ余肉を盛上げることによってめねじのねじ山が形成される。
そのため、上述した従来の盛上げタップにより形成されためねじには、その形成されためねじの内径山の頂部にくぼみHが形成される。よって、おねじが形成されたボルト等をめねじに螺入させる際に、おねじのねじ山の山頂がくぼみHに嵌り込み、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれやすくなるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、おねじをめねじに螺合させる際に、おねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制するめねじを形成できる盛上げタップを提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために、請求項1記載の盛上げタップによれば、首部は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えているので、めねじの盛上げ加工時に首部を下穴の内部に挿入させ、下穴の表層部にねじ部を食い込ませることにより形成されためねじの内径山の頂部に対し、ねじ部の軸心方向における後端側に連設形成された首部の張出部を当接させることができる。これにより、くぼみが形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができるので、おねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことによっておねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制できるという効果がある。また、その結果、おねじ又はめねじが形成された部品の歩留まりを向上させることができるので、部品コストの抑制を図ることができるという効果がある。
また、首部には、張出部よりも外径が小さく設定される逃げ部が、張出部に対して周方向に隣接して形成されるので、張出部によるめねじの内径山の頂部の塑性変形をさせやすくすることができるという効果がある。
請求項2記載の盛上げタップによれば、請求項1記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部の外径の最大寸法が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下、に設定されるので、めねじを形成する下穴の下穴径が大きく設定されたことで下穴に形成されためねじの内径山の高さが低くなり、めねじの内径が大きくなった場合であっても、張出部をめねじの内径山の頂部に当接させやすくすることができる。よって、被加工物に形成する下穴の下穴径の寸法管理を緩和させることができるので、下穴径を設定する際の作業性を向上させることができ、被加工物にめねじを形成する際の作業性を向上させることができるという効果がある。
請求項3記載の盛上げタップによれば、請求項1又は2に記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部は、ねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定されるので、めねじの盛上げ加工時において、首部の2ピッチ以上が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップを移動させることで、下穴の口元部分近傍に形成されるめねじの内径山をより平坦に塑性変形させることができる。よって、ねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことをより確実に防止できるという効果がある。
請求項4記載の盛上げタップによれば、請求項1から3のいずれか記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部は、ねじ部のおねじを研削する研削砥石に研削されることで発生する残痕がねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に形成されるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
即ち、ねじ部とシャンクとの間に首部が設けられた従来の盛上げタップでは、首部の外径がねじ部のおねじの谷の径よりも小さくされていたのに対し、本発明における盛上げタップでは、首部の外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えている。また、一般に、ねじ部に形成されるおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定されるので、張出部はねじ部に形成されるおねじの谷の径よりも径方向外側へ張り出して形成される。
従って、盛上げタップの製造過程において、工具本体に対して研削砥石を工具本体の軸心方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体の先端側に当接させて、ねじ部のおねじを研削した後に研削砥石を工具本体から離間させる際、研削砥石をねじ部の終端から首部側へ移動させた場合、従来の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接することはなかったが、本発明の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接する。その結果、ねじ部との連設部分近傍に位置する首部の外周面には、研削砥石に研削されることによって形成された谷形状の残痕が発生する。この残痕が張出部に発生した盛上げタップを用いてめねじを形成した場合、張出部の外径が残痕の発生によって小さくなるので、残痕が発生した張出部をめねじの内径山の頂部に当接させることができず、内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができない。
これに対し、請求項4記載の盛上げタップでは、首部に対する残痕の発生をねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に収めることで、残痕による首部の剛性の低下を抑制でき、その結果、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できる。
また、張出部がねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定される場合では、軸心方向における残痕の終端から首部の後端までの寸法を1ピッチ以上確保できる。この場合、めねじの盛上げ加工時に、首部の2ピッチ以上が下穴に挿入される位置まで盛上げタップを軸心方向へ移動させることによって、ねじ部によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に形成された内径山の頂部に対して、張出部を当接させることができるという効果がある。その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじのねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじの最初のねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができるという効果がある。
請求項5記載の盛上げタップによれば、請求項1から4のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部の軸心方向における寸法がねじ部の軸心方向における寸法よりも小さく設定されるので、首部の軸心方向における寸法が長くなりすぎることによって盛上げタップの剛性が低下することを回避できる。よって、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
請求項6記載の盛上げタップによれば、請求項1から5のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、工具本体の軸心方向に沿って凹設される油溝が、ねじ部と首部の逃げ部とに形成されるので、張出部に油溝が凹設されることによって張出部の外径が小さくなることを回避できるという効果がある。さらに、油溝を凹設することによって、油溝と首部の外周面との連設部分にバリが発生した場合であっても、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを回避しやすくすることができるという効果がある。
本発明の一実施の形態における盛上げタップの側面図である。
(a)は、図1のIIa−IIa線における盛上げタップの断面図であり、(b)は、図1のIIb−IIb線における盛上げタップの断面図である。
(a)は、図1のIIIa方向視における盛上げタップの部分拡大図であり、(b)は、盛上げタップによって被加工物にめねじが盛上げ形成される過程を模式的に表した模式図である。
盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物の断面形状を模式的に表した模式図である。
めねじの盛上げ加工試験の試験結果を表した表である。
変形例における盛上げタップの側面図である。
従来の盛上げタップによりめねじが盛上げ形成された被加工物の断面形状を模式的に表した模式図である。
100 盛上げタップ
10 工具本体
20 シャンク
30 ねじ部
40 首部
41 張出部
42 逃げ部
50 油溝
60 残痕
O 軸心
P ピッチ
D 張出部の外径の最大寸法
W 被加工物
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して、本発明の一実施の形態における盛上げタップ100の構成について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における盛上げタップ100の側面図である。図2(a)は、図1のIIa−IIa線における盛上げタップ100の断面図であり、図2(b)は、図1のIIb−IIb線における盛上げタップ100の断面図である。図3(a)は、図1のIIIa方向視における盛上げタップ100の部分拡大図であり、図3(b)は、盛上げタップ100によって被加工物Wにめねじが形成される過程を模式的に表した模式図である。なお、図2(b)では、ねじ部30のねじ山の谷底に沿って切断した断面図が図示されており、図3(b)では、図面を簡略化して説明を分かりやすくするため、被加工物のみを断面視している。
図1に示すように、盛上げタップ100は、マシニングセンタ等の加工機械から伝達される回転力とねじのリードに合った送りとによって、被加工物W(図3(b)参照)に形成された下穴にめねじを盛上げ形成するための工具であり、軸心O回りに回転される工具本体10と、その工具本体10の軸心O方向後端側(図1右側)に形成されるシャンク20と、工具本体10の軸心O方向先端側(図1左方向)に形成されるねじ部30と、工具本体10の軸心O方向におけるシャンク20及びねじ部30の間に連設形成される首部40と、ねじ部30の軸心O方向先端側から首部40に亘って凹設される2つの油溝50とを備えて構成されている。
工具本体10は、円柱状に形成される部材であり、高速度工具鋼から構成されている。なお、工具本体10は、高速度工具鋼に限らず、超硬合金等から構成されてもよい。
シャンク20は、ホルダ(図示せず)を介して盛上げタップ100を加工機械に取り付ける際にホルダによって保持されると共に軸心Oを有する円柱状に形成される部位であり、後述する首部40の張出部41よりも小径に形成される円柱状の小径部21と、その小径部21よりも軸心O方向後端側に連設されると共に軸心O方向後端側へ向かうにつれて拡径するテーパ状のテーパ部22と、そのテーパ部22よりも軸心O方向後端側に連設されると共に張出部41よりも大径に形成される円柱状の大径部23と、その大径部23よりも軸心O方向後端側に形成される断面視略四角形状のシャンク四角部24とを備えている。
図2(a)に示すように、ねじ部30は、下穴の表層部に食い込ませることにより被加工物Wにめねじを形成するための部位であり、複数のねじ山が所定のピッチPで螺刻されている。また、ねじ部30のねじ山には、径方向外側へ向けて突出した4つのマージン部31が周方向等間隔に設けられている。なお、ねじ部30のおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定され、これにより、めねじの盛上げ加工時において、ねじ部30のおねじの谷底が、下穴に形成されるめねじと当接することを回避している。
図2(b)に示すように、首部40は、ねじ部30によって形成されためねじの口元部分近傍の内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させるための部位であり、軸心O方向における寸法が3ピッチに設定されている。また、首部40は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される4つの張出部41と、その張出部41に対して周方向に交互に隣接して形成されると共に外径が張出部41よりも小さく設定される4つの逃げ部42とを備えている。なお、本実施の形態では、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが略相似形状になっており、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されている。
張出部41は、ねじ部30によって形成されためねじの内径山の頂部に当接される部位であり、ねじ部30の終端から首部40の終端に向けて軸心O方向に沿って延設されている。逃げ部42は、ねじ部30によって形成されためねじの内径山の頂部に当接されることを回避するための部位であり、首部40の軸心O方向の先端から後端に亘って延設されている。また、逃げ部42の外径は、その逃げ部42の外径の最小寸法dと張出部41の外径の最大寸法Dとの差の最大値がねじ部のおねじのピッチPの約0.1倍(0.1ピッチ)程度に設定されている。
油溝50は、めねじの盛上げ加工時において潤滑効果を高めるためにタッピングオイルを盛上げ面に供給するための部位であり、各油溝50がねじ部30及び首部40の互いに対向して位置する2つの逃げ部42の外周面に対し、ねじ部30の軸心O方向先端から首部40の逃げ部42に亘って軸心O方向に沿って形成されている。
次に、盛上げタップ100による被加工物Wへのめねじの盛上げ方法について説明する。被加工物Wに形成された下穴にめねじを形成する際は、盛上げタップ100の先端から、首部40の少なくとも一部が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させる。なお、本実施の形態では、少なくとも首部40の2ピッチ分が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させる。これにより、下穴の表層部にめねじが盛上げ形成される。
ここで、下穴に形成すべきめねじの内径は、原則として、ねじの種類や呼び等によってJISB0209−2等で規格された最小許容寸法から最大許容寸法の範囲内となるように設定される。一方、盛上げタップ100の首部40は、外径が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定された張出部41を備えている。従って、めねじの盛上げ加工時において、ねじ部30によってめねじが形成された下穴の内部に首部40の少なくとも2ピッチ分が挿入されることにより、下穴の口元(盛上げタップ100が挿入される入口となる開口)部分近傍に形成されためねじの内径山の頂部に張出部41を当接させることができる。
よって、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじの最初のねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじのねじ山およびめねじの内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
このように、ねじ部30を被加工物Wに形成された下穴の表層部に食い込ませ、余肉を盛り上げることで形成されためねじの内径山の頂部に対し、張出部41を当接させることによって、くぼみHが形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができる。よって、おねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことによっておねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制できる。また、その結果、おねじ又はめねじが形成された部品の歩留まりを向上させることができるので、部品コストの抑制を図ることができる。
また、めねじの内径山の頂部に張出部41を当接させて内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させる際に、その内径山の両側に形成された谷側に向けて張り出すバリが発生する場合がある。しかしながら、めねじの盛上げ加工終了後に盛上げタップ100を下穴から抜く際にねじ部30のねじ山のフランク面にバリが当接するので、バリを除去することができる。
なお、張出部41の外径の最大寸法Dは、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下、に設定されるのが好ましい。
即ち、張出部41は、その外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定されるので、少なくとも内径が最小許容寸法以上に設定されためねじの内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。しかしながら、盛上げタップ100でめねじを盛上げ形成する場合、切削タップでめねじを形成する場合と比べて、下穴径の加工公差が小さく、被加工物Wの材質によっても盛り上がるめねじの内径山の高さが異なるため、下穴径の寸法精度を厳格に管理する場合には、下穴径を設定する作業が繁雑になる。
よって、張出部41の外径の最大寸法Dの最小値を、その形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上に設定することによって、被加工物Wに形成した下穴の下穴径が大きく設定されたことで下穴に形成されためねじの内径山の高さが低くなり、めねじの内径が大きくなった場合であっても、張出部41をめねじの内径山の頂部に当接させやすくすることができる。よって、被加工物Wに形成する下穴の下穴径の寸法管理を緩和させることができるので、下穴径を設定する際の作業性を向上させることができ、被加工物Wにめねじを形成する際の作業性を向上させることができる。
さらに、張出部41の外径の最大寸法Dの最大値が形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下に設定されるので、張出部41によって頂部が平坦面状に形成されることによりめねじの内径が最大許容寸法を上回ることを回避できる。よって、めねじの内径山の頂部が平坦面状に塑性変形されためねじの内径山に対しても、ボルト等のおねじを強固に噛み合わせることができる。
また、首部40には、逃げ部42が張出部41に対して周方向に交互に隣接して形成されているので、張出部によるめねじの内径山の頂部を塑性変形させやすくすることができる。
なお、逃げ部42の外径の最小寸法dと張出部41の外径の最大寸法Dとの差の最大値は、形成すべきめねじの内径の許容差の1/2以上あれば良い。また、張出部41及び逃げ部42の形状は、本実施の形態に限られるものではなく、必要に応じて形状を変えてもよい。
さらに、油溝50は、工具本体10の軸心O方向に沿って、ねじ部30と首部40の逃げ部42とに凹設されるので、張出部41に油溝50が凹設されることによって張出部41の外径が小さくなることを回避できる。さらに、油溝50を凹設することによって油溝50と首部40の外周面との連設部分にバリが発生した場合であっても、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを回避しやすくすることができる。
ここで、ねじ部とシャンクとの間に首部が設けられた従来の盛上げタップでは、首部の外径がねじ部のおねじの谷の径よりも小さくされていたのに対し、本発明における盛上げタップ100では、首部40の張出部41の外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定されている。また、ねじ部30に形成されるおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定されるので、張出部41はねじ部30に形成されるおねじの谷の径よりも径方向外側へ張り出して形成される。
従って、盛上げタップ100の製造過程において、工具本体10に対して研削砥石(図示せず)を工具本体10の軸心O方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体10の先端側に当接させて、ねじ部30のおねじを研削した後に研削砥石を工具本体10から離間させる際、研削砥石をねじ部30と首部40との連設部分から首部30側(図3(a)右側)へ移動させた場合、従来の盛上げタップでは首部に研削砥石が当接することはなかったが、本発明の盛上げタップ100では首部40に研削砥石が当接する。その結果、ねじ部30との連設部分近傍に位置する首部40の外周面には、研削砥石に研削されることによって形成された谷形状の残痕60が発生する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、張出部41に残痕60が発生した盛上げタップを用いてめねじを形成した場合、張出部41の外径が残痕60の発生によって小さくなるので、残痕60が発生した部分の張出部41は、めねじの内径山の頂部に当接させることができず、内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができない。
よって、盛上げタップ100の製造過程において、工具本体10に対して研削砥石を工具本体10の軸心方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体10の先端側に当接させて、ねじ部30のおねじを研削した後、研削砥石がねじ部30の終端から軸心O方向へ1ピッチ移動するまでに研削砥石を工具本体10から離間させる。これにより、首部40に対して残痕60が発生する範囲を、ねじ部30の終端から1ピッチ分離間した位置までの範囲内に収めることができる。
本実施の形態では、首部40の軸心O方向における寸法が3ピッチに設定されているので、首部40に発生した残痕60の軸心O方向における終端から首部40の軸心O方向における後端までの寸法を2ピッチ以上確保できる。また、本実施の形態では、首部40の2ピッチが下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させるので、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に位置する内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。
なお、首部40に対して残痕60が発生する範囲をねじ部30の終端から1ピッチ分以上離間した位置までの範囲内とする場合には、首部40に発生した残痕60の軸心O方向における終端から首部40の軸心O方向における後端までの寸法が、1ピッチよりも大きくなる寸法に設定されていればよい。これにより、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に位置する内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。
その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじの最初のねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみHに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじのねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
さらに、首部40に対して残痕60が発生する範囲を、ねじ部30の終端から1ピッチ以下離間した位置の範囲内に収めることで、残痕60の発生による首部40の剛性の低下を回避できるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップ100の振れを抑制できる。
ここで、ねじ部30の終端から首部40の後端に向けて軸心方向に沿って延設される張出部41の軸心O方向における寸法は、少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定されるのが好ましい。これにより、めねじの盛上げ加工時において、首部40の2ピッチ以上が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップ100を移動させることで、下穴の口元部分近傍に形成されるめねじの内径山をより平坦に塑性変形させることができる。よって、ねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことをより確実に防止できる。
また、この場合、首部40に対して残痕60が発生する範囲をねじ部30の終端から1ピッチ分以上離間した位置までの範囲内とすることで、軸心O方向における残痕60の終端から首部40の後端までの寸法を1ピッチ以上確保できる。よって、めねじの盛上げ加工時に、首部40の2ピッチ以上が下穴に挿入される位置まで盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させることによって、ねじ部30によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に形成された内径山の頂部に対して、張出部41を当接させることができる。その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじのねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじの最初のねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができる。
一方、首部40の軸心O方向における寸法をねじ部30の軸心O方向における寸法よりも小さく設定することにより、首部40の軸心O方向における寸法が長くなりすぎることによって盛上げタップ100の剛性が低下することを回避できるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップ100の振れを抑制できる。
このように、盛上げタップ100は、その盛上げタップ100の製造過程において首部40のねじ部30との連設部分近傍に残痕が形成されることを許容しつつ、盛上げタップ100によるめねじの盛上げ加工時において被加工物Wに形成された下穴の口元部分近傍に形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができる。
次に、図4及び図5を参照して、盛上げタップ100による被加工物へのめねじの盛上げ加工試験の試験結果について説明する。図4は、盛上げタップ100によりめねじが盛上げ形成された被加工物Wの断面形状を模式的に表した模式図である。図5は、めねじの盛上げ加工試験の試験結果を表した表である。なお、図4は、試験1における被加工物の断面形状と、試験2における被加工物の断面形状とがほぼ同一形状であったので、試験2における被加工物の断面形状の図示を省略し、試験1における被加工物の断面形状のみを図示している。
この試験は、上述のように構成される盛上げタップ100(図1参照)によって、下記の詳細諸元で被加工物Wに形成された下穴(通り穴)の内部に盛上げタップ100を軸心O方向へ移動させつつ挿入させて下穴の表層部にめねじを盛上げ形成し、形成されためねじの形状を確認すると共に、下穴に形成されためねじの内径山のうち、最も下穴の口元側(盛上げタップ100が挿入される入口側、図4右側)に形成された内径山を基準とするめねじの内径、および、最も下穴の奥側(図4左側)に形成された内径山を基準とするめねじの内径をそれぞれ測定する。
なお、本試験の詳細諸元は、試験1では、被削材:ADC12(板厚12mm)、加工機:立型マシニングセンタ、ホルダ:タッパー、切削油:不水溶性切削油剤、切削速度:10.2mm/min、下穴:φ4.62(ドリル),φ4.62〜4.64(実測)、有効ねじ長:12mm(通り)、タップ加工ストローク:被加工物の口元側端面より13mmであり、試験2では、被削材:S45C(板厚10mm)、加工機:立型マシニングセンタ、ホルダ:タッパー、切削油:不水溶性切削油剤、切削速度:7.9mm/min、下穴:φ4.62(ドリル),φ4.62〜4.64(実測)、有効ねじ長:10mm(通り)、タップ加工ストローク:被加工物の口元側端面より15mmである。また、試験1及び試験2で使用した盛上げタップ100は、M5×0.8に設定されている。
図4及び図5に示すように、めねじ盛上げ加工試験の試験結果によれば、試験1では、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径がすべてφ4.28であり、内径山の頂部が平坦面状に形成されていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径はφ4.20〜4.23であり、内径山の頂部にはくぼみHが形成されていた。
また、試験2では、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径がいずれもφ4.28であり、試験1と同様、内径山の頂部が平坦面状に形成されていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径がいずれもφ4.18であり、試験1と同様、内径山の頂部にはくぼみHが形成されていた。
このように、試験1及び試験2のいずれにおいても、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径山の頂部は平坦面状になっていたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径山の頂部にはくぼみが形成されていた。これは、下穴の最も口元側に位置するめねじの内径山の頂部が、盛上げタップ100の首部40に形成された張出部41と当接したことによって内径山の頂部が平坦面状に塑性変形されたのに対し、下穴の最も奥側に位置するめねじの内径山の頂部には、張出部41が当接されず、ねじ部30によってめねじの内径山が盛上げられた際に内径山の頂部に形成されたくぼみHが残存したものと考えられる。
即ち、首部40が、軸心O方向における軸心Oから外周面までの寸法が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部41を備え、盛上げタップ100によるめねじの盛上げ加工時において、張出部41をめねじの内径山の頂部に当接させることによって、めねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができた。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施の形態では、張出部41の外径の最大寸法Dは、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの最大許容寸法以下、に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、被加工物Wの材質やめねじに螺合させるおねじとのひっかかり率等の関係により、必要に応じて張出部41の外径の最大寸法Dを、その形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和未満、又は、形成すべきめねじの最大許容寸法の内径よりも大きく設定してもよい。
上記実施の形態では、首部40が4つの張出部41を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、首部40は少なくとも1箇所以上の張出部41を備えていればよい。張出部41を少なくすることで、その分、首部40において逃げ部42が占める割合を多くすることができるので、めねじの盛上げ加工時におけるタッピングトルクを抑制できる。一方、張出部41を多くすることで、めねじの内径山の頂部に対して張出部41を当接させる回数を多くできるので、内径山の頂部により平坦面状に塑性変形させることができる。なお、首部40が1箇所の張出部41を備える場合、「張出部41の外径」とは、「軸心O方向に垂直な断面視における軸心Oから外周面までの寸法の2倍」を指すものとする。また、首部40に形成される張出部41の数が奇数である場合における「張出部41の外径」についても同様とする。
上記実施の形態では、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが略相似形状になっており、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ねじ部30の軸心O方向に垂直な断面形状と、首部40の軸心O方向に垂直な断面形状とが相似形状でなくてもよく、ねじ部30のマージン部31と首部40の張出部41とが同位相となる位置に形成されてなくてもよい。また、ねじ部30に形成されるマージン部31の数と首部40に形成される張出部41の数とは、一致していなくてもよい。これにより、盛上げタップ100の設計の自由度を高めることができる。
上記実施の形態では、盛上げタップ100が2つの油溝50を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、盛上げタップが1又は3つ以上の油溝50を備えていてもよく、油溝50を備えていなくてもよい。油溝50の形成を省略することにより、首部40の外周面と油溝50との連設部分にバリが発生することを回避できるので、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを防止できる。
また、上記実施の形態では、シャンク20が、首部40の張出部41よりも小径に形成される小径部21と、その小径部21に連設されるテーパ部22と、そのテーパ部22に連設されると共に張出部41よりも大径に形成される大径部23と、シャンク四角部24とから構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、シャンク220が小径部221と、シャンク四角部24とから構成されてもよい。
ここで、図6を参照して、変形例における盛上げタップ200について説明する。図6は、変形例における盛上げタップ200の側面図である。
図6に示すように、シャンク220は、首部40の張出部41よりも小径に形成される小径部221と、シャンク四角部24とを備えている。これにより、シャンク220の全体が張出部41よりも小径に形成されるので、盛上げタップ200による被加工物へのめねじの盛上げ加工時において、シャンク220が下穴の内部に入り込んだ位置まで盛上げタップ200を加工させた場合であっても、張出部41によってねじ山の頂部が平坦面状に塑性変形させられためねじの内径山に、シャンク220の外周面が当接することを回避できる。
<その他>
<手段>
技術的思想1の盛上げタップは、軸心回りに回転される工具本体と、その工具本体の軸心方向先端側に形成され被加工物に形成された下穴にめねじを形成するためのおねじが所定のピッチで螺刻されたねじ部と、前記工具本体の軸心方向後端側に形成されホルダに保持されるシャンクと、前記工具本体の軸心方向における前記ねじ部および前記シャンクの間に連設形成される首部とを備えたものであり、前記首部は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される少なくとも1箇所以上の張出部と、その張出部に対して周方向に隣接し少なくとも前記張出部よりも外径が小さく設定される逃げ部とを備える。
技術的思想2の盛上げタップは、技術的思想1記載の盛上げタップにおいて、前記張出部は、その外径の最大寸法が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの最大許容寸法以下、に設定される。
技術的思想3の盛上げタップは、技術的思想1又は2に記載の盛上げタップにおいて、前記張出部は、前記ねじ部の終端から前記首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくとも前記ピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定される。
技術的思想4の盛上げタップは、技術的思想1から3のいずれかに記載の盛上げタップにおいて、前記首部は、前記ねじ部のおねじを研削する研削砥石に研削されることで発生する残痕が前記ねじ部の軸心方向における終端から前記1ピッチ分離間した位置の範囲内に形成される。
技術的思想5の盛上げタップは、技術的思想1から4のいずれかに記載の盛上げタップにおいて、前記首部は、軸心方向における寸法が前記ねじ部の軸心方向における寸法よりも小さく設定される。
技術的思想6の盛上げタップは、技術的思想1から5のいずれかに記載の盛上げタップにおいて、前記工具本体の軸心方向に沿って前記ねじ部と前記首部の逃げ部との外周面に凹設される油溝を備える。
<効果>
技術的思想1記載の盛上げタップによれば、首部は、外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えているので、めねじの盛上げ加工時に首部を下穴の内部に挿入させ、下穴の表層部にねじ部を食い込ませることにより形成されためねじの内径山の頂部に対し、ねじ部の軸心方向における後端側に連設形成された首部の張出部を当接させることができる。これにより、くぼみが形成されためねじの内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができるので、おねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことによっておねじのねじ山又はめねじの内径山がつぶれることを抑制できるという効果がある。また、その結果、おねじ又はめねじが形成された部品の歩留まりを向上させることができるので、部品コストの抑制を図ることができるという効果がある。
また、首部には、張出部よりも外径が小さく設定される逃げ部が、張出部に対して周方向に隣接して形成されるので、張出部によるめねじの内径山の頂部の塑性変形をさせやすくすることができるという効果がある。
技術的思想2記載の盛上げタップによれば、技術的思想1記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部の外径の最大寸法が、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法とその形成すべきめねじの内径の最小許容寸法および最大許容寸法の差の1/2との和以上、かつ、形成すべきめねじの内径の最大許容寸法以下、に設定されるので、めねじを形成する下穴の下穴径が大きく設定されたことで下穴に形成されためねじの内径山の高さが低くなり、めねじの内径が大きくなった場合であっても、張出部をめねじの内径山の頂部に当接させやすくすることができる。よって、被加工物に形成する下穴の下穴径の寸法管理を緩和させることができるので、下穴径を設定する際の作業性を向上させることができ、被加工物にめねじを形成する際の作業性を向上させることができるという効果がある。
技術的思想3記載の盛上げタップによれば、技術的思想1又は2に記載の盛上げタップの奏する効果に加え、張出部は、ねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定されるので、めねじの盛上げ加工時において、首部の2ピッチ以上が下穴の内部に挿入される位置まで盛上げタップを移動させることで、下穴の口元部分近傍に形成されるめねじの内径山をより平坦に塑性変形させることができる。よって、ねじが形成されたボルト等を螺合させる際に、ボルト等のおねじのねじ山の山頂がめねじの内径山の頂部に形成されたくぼみに嵌り込むことをより確実に防止できるという効果がある。
技術的思想4記載の盛上げタップによれば、技術的思想1から3のいずれか記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部は、ねじ部のおねじを研削する研削砥石に研削されることで発生する残痕がねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に形成されるので、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
即ち、ねじ部とシャンクとの間に首部が設けられた従来の盛上げタップでは、首部の外径がねじ部のおねじの谷の径よりも小さくされていたのに対し、本発明における盛上げタップでは、首部の外径が形成すべきめねじの内径の最小許容寸法以上に設定される張出部を備えている。また、一般に、ねじ部に形成されるおねじの谷の径は、形成すべきめねじの内径の最小許容寸法よりも小径に設定されるので、張出部はねじ部に形成されるおねじの谷の径よりも径方向外側へ張り出して形成される。
従って、盛上げタップの製造過程において、工具本体に対して研削砥石を工具本体の軸心方向に沿って相対移動させつつ、研削砥石を工具本体の先端側に当接させて、ねじ部のおねじを研削した後に研削砥石を工具本体から離間させる際、研削砥石をねじ部の終端から首部側へ移動させた場合、従来の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接することはなかったが、本発明の盛上げタップでは研削砥石が首部に当接する。その結果、ねじ部との連設部分近傍に位置する首部の外周面には、研削砥石に研削されることによって形成された谷形状の残痕が発生する。この残痕が張出部に発生した盛上げタップを用いてめねじを形成した場合、張出部の外径が残痕の発生によって小さくなるので、残痕が発生した張出部をめねじの内径山の頂部に当接させることができず、内径山の頂部を平坦面状に塑性変形させることができない。
これに対し、技術的思想4記載の盛上げタップでは、首部に対する残痕の発生をねじ部の軸心方向における終端から1ピッチ分離間した位置の範囲内に収めることで、残痕による首部の剛性の低下を抑制でき、その結果、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できる。
また、張出部がねじ部の終端から首部の後端に向けて軸心方向に沿って延設されると共に、軸心方向における寸法が少なくともピッチの2倍よりも大きくなる寸法に設定される場合では、軸心方向における残痕の終端から首部の後端までの寸法を1ピッチ以上確保できる。この場合、めねじの盛上げ加工時に、首部の2ピッチ以上が下穴に挿入される位置まで盛上げタップを軸心方向へ移動させることによって、ねじ部によって下穴に形成されためねじの内径山のうち、下穴の口元部分から少なくとも1ピッチの範囲内に形成された内径山の頂部に対して、張出部を当接させることができるという効果がある。その結果、めねじの内径山に対して最初に噛み合わせるおねじのねじ山の山頂が、そのおねじの最初のねじ山と最初に噛み合わせるめねじの内径山の頂部のくぼみに嵌り込むことを回避しやすくして、おねじの最初のねじ山およびめねじの最初の内径山どうしを正常に噛み合わせることができ、そのままおねじをめねじに螺入させることによって、全てのおねじのねじ山をめねじの内径山に正常に螺合させることができるという効果がある。
技術的思想5記載の盛上げタップによれば、技術的思想1から4のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、首部の軸心方向における寸法がねじ部の軸心方向における寸法よりも小さく設定されるので、首部の軸心方向における寸法が長くなりすぎることによって盛上げタップの剛性が低下することを回避できる。よって、めねじの盛上げ加工時における盛上げタップの振れを抑制できるという効果がある。
技術的思想6記載の盛上げタップによれば、技術的思想1から5のいずれかに記載の盛上げタップの奏する効果に加え、工具本体の軸心方向に沿って凹設される油溝が、ねじ部と首部の逃げ部とに形成されるので、張出部に油溝が凹設されることによって張出部の外径が小さくなることを回避できるという効果がある。さらに、油溝を凹設することによって、油溝と首部の外周面との連設部分にバリが発生した場合であっても、そのバリがめねじの内径山の頂部に当接することを回避しやすくすることができるという効果がある。