JPWO2013065621A1 - 光電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

安価な手法で膜厚方向へのモルフォロジが制御された光電変換層を具備し、高い光電変換効率を示し優れた光電変換性能を有する経済的な光電変換素子を提供する。光電変換素子は、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体の結晶部1及び非晶部2とn型有機半導体3とを含有する光電変換層が、正極と負極との間に挟まれている。光電変換層の膜厚方向における硫黄原子の存在量は、X軸に1で規格化された前記光電変換層の膜厚を、Y軸に最大値を1に規格化した前記膜厚方向における硫黄原子の存在量をプロットしたグラフの1次近似直線である下記数式(1)Y=aX+b ・・・(1) (式中、aは傾き、bは切片)で表されるaの絶対値が、0.07以上1.2以下である。

Description

本発明は、太陽電池や各種の光センサーとして有用である光電変換素子に関するものである。
太陽電池は、環境に優しい有力なエネルギー源として注目されている。現在、太陽電池の光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及びアモルファスシリコンのようなシリコン系材料や、GaAs、CIGS、及びCdTeのような化合物半導体材料などの無機物が使用されている。これらの光電変換素子は比較的高い光電変換効率を有するが、他の電源コストと比較して高価格なものである。コスト高の要因は、高真空かつ高温下で半導体薄膜を製造しなくてはならないプロセスにある。そこで、製造プロセスの簡略化が期待される半導体材料として、共役ポリマーや有機結晶などの有機半導体や有機色素を用いた有機太陽電池が検討されている。これらの有機半導体材料は、塗布法や印刷法により製膜できるため、製造プロセスが簡便化し、大量生産が可能で安価な有機太陽電池を得ることが可能であるとして注目されている。
有機太陽電池は、2つの異種電極間に光電変換層を設けた構造をしている。一般に光電変換層は、共役ポリマー及びフラーレン誘導体の混合物から形成されている。代表例としては、共役ポリマーとしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)、フラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)をそれぞれ含む組成物が挙げられる。
有機太陽電池の課題は、光電変換効率を高めることであり、特に光電変換層のモルフォロジを変えることで光電変換効率の向上を図る報告がなされている。光電変換層のモルフォロジを変える安価な方法として、例えば、熱や溶媒蒸気により処理する方法(特許文献1)、共役ポリマーやフラーレン誘導体を溶解させる溶媒を工夫する方法(特許文献2)、高沸点化合物を添加する方法、溶媒の揮発速度を小さくする方法などが挙げられる。
また別の取り組みとして、p型高分子半導体を用いて光電変換層のモルフォロジを制御することで光電変換効率の向上を目指す報告がなされている。ブロック共重合体は通常、十分な分子量があればミクロ相分離することが知られている。p型高分子半導体においても、ミクロ相分離し、光電変換層である活性層の構造を制御することで変換効率が向上したという報告がなされている(特許文献3)。
これまでに報告されている光電変換層のモルフォロジは、フラーレン誘導体の結晶状態(特許文献4)、共役ポリマーの単位構造の結晶状態(特許文献5)、相分離状態を制御するものがほとんどであり、膜厚方向へのモルフォロジ制御はなされていなかった。また、ナノインプリント法や無機の鋳型を用いて成形したり、使用する化合物の結晶成長の異方性を利用したりして、理想とされる櫛型構造を形成し変換効率の向上を検討している例が報告されている(非特許文献1〜3)。これらの方法は、実験室レベルの小さい面積でのみ達成可能であり、大面積化が困難なため不経済な方法であり、利用できる化合物が低分子に限定されるため高い変換効率が期待できる高分子には適用が難しく、また光電変換素子の変換効率の向上も限定的であった。
このような手法でモルフォロジが制御された場合は、膜厚方向のモルフォロジが制御されておらず、光電変換素子の性能向上は限定的であり、ナノインプリントや化合物由来の結晶成長を利用する場合は、比較的モルフォロジが制御されているものの、不経済であったり、適用できる化合物が限定的であったり、変換効率の性能向上も限定的であった。よって安価な手法で、膜の断面方向、つまり膜厚方向にもモルフォロジが制御された光電変換層を形成し、高い変換効率を達成し得る光電変換素子が望まれていた。
国際公開第2004/025746号 国際公開第2010/005094号 特許第4126019号公報 特許第4636889号公報 特開2011−100869号公報
アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials),2011年,第21巻,139−146頁 アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials),2010年,第20巻,540−545頁 マテリアルズ トゥデイ(Materials Today,),2010年,第13巻,14−20頁
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、安価な手法で膜厚方向へのモルフォロジが制御された光電変換層を具備し、高い光電変換効率を示し優れた光電変換性能を有する経済的な光電変換素子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、請求の範囲の請求項1に記載された光電変換素子は、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体とn型有機半導体とを含有する光電変換層が、正極と負極との間に挟まれており、最大値を1に規格化した前記光電変換層の膜厚をX軸の値とし、最大値を1に規格化した膜厚方向における前記光電変換層中の硫黄原子の存在量をY軸の値としてプロットしたグラフの1次近似直線が、下記数式(1)で表され、
Y=aX+b ・・・(1)
(式中、aは傾きであり、bは切片である)
数式(1)中のaの絶対値が、0.07以上1.2以下であることを特徴とする。
請求項2に記載された光電変換素子は、請求項1に記載されたものであって、前記光電変換層と前記正極との間に、正孔輸送層を有することを特徴とする。
請求項3に記載された光電変換素子は、請求項1に記載されたものであって、前記n型有機半導体がフラーレン誘導体を含有することを特徴とする。
請求項4に記載された光電変換素子は、請求項1に記載されたものであって、前記p型高分子半導体が前記縮環π共役骨格を構成単位に有するブロック共重合体であることを特徴とする。
請求項5に記載された光電変換素子の製造方法は、n型有機半導体と、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体と、溶媒とを含有する溶液を、基板上の電極層の上に塗布した塗膜中に、前記溶媒を少なくとも20質量%含有する状態で、前記塗膜を溶媒の蒸気に曝露させ、乾燥固化し光電変換層を形成する工程を含むことを特徴とする。
請求項6に記載された光電変換素子の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記溶媒の蒸気が、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体を溶解しないことを特徴とする。
請求項7に記載された光電変換素子の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記溶媒の蒸気が、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体に対する溶解度が1mg/mL未満である溶媒の蒸気である。
請求項8に記載された光電変換素子の製造方法は、請求項5〜7ののいずれかに記載されたものであって、前記溶媒の蒸気が、アセトン、シクロヘキサン、塩化メチレン、1−クロロナフタレン、1,2−ジブロモエタン、アニソール、メチルベンゾエート、ピリジン、ジメチルホルムアミド、モルホリン、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンから選ばれるいずれかの溶媒の蒸気である。
本発明の光電変換素子は、その光電変換層が膜厚方向へモルフォロジが制御されているため、優れた光電変換効率を示すことができる。また、この光電変換素子は、優れた光電変換性能を有し、光電変換機能や光整流機能を利用した種々の光電変換デバイスへ応用して用いることができる。
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、安価な手法でモルフォロジが制御された光電変換層を形成することができ、優れた光電変換効率を有する光電変換素子を実験室レベルに留まらず経済的に工場レベルで提供することができる。
本発明を適用する光電変換素子の光電変換層におけるモルフォロジの模式断面図である。 本発明を適用する実施例1の光電変換素子におけるスパッタ時間と硫黄強度との相間関係を示すグラフである。 本発明を適用する実施例1の光電変換素子における光電変換層の規格化された膜厚とその膜厚方向の硫黄の規格化された強度とをプロットしたグラフである。 本発明を適用する実施例2の光電変換素子における光電変換層の規格化された膜厚とその膜厚方向の硫黄の規格化された強度とをプロットしたグラフである。 本発明の適用外である比較例1の光電変換素子における光電変換層の規格化された膜厚とその膜厚方向の硫黄の規格化された強度とをプロットしたグラフである。 本発明の適用外である比較例2の光電変換素子における光電変換層の規格化された膜厚とその膜厚方向の硫黄の規格化された強度とをプロットしたグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の光電変換素子は、正極と負極との間に、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体とn型有機半導体とを含有する光電変換層が挟まれているものである。また、この正極と負極との間にある光電変換層中の、膜厚方向の硫黄原子の存在量を表す下記数式(1)
Y=aX+b ・・・(1)
で表される傾きaの絶対値が0.07以上1.2以下である。この数式(1)は、光電変換層の膜厚の最大値を1で規格化した値をX軸の値とし、硫黄原子の存在量の最大値1で規格化した値をY軸の値としてプロットしたグラフの一次近似直線である。数式(1)の傾きをa、切片をbとして、そのaの絶対値が0.07以上1.2以下である。
なお、本発明において硫黄原子の存在量は、後述する測定方法により得られた光電変換層中の硫黄原子の濃度または強度によって表すことができる。
この硫黄はp型高分子半導体に含有されるものであり、aの絶対値が0.07以上1.2以下であるということは、p型高分子半導体の厚み方向への分布が傾斜構造である光電変換層であることを示している。p型高分子半導体とは電子供与性の半導体特性を持つ有機高分子、n型有機半導体とは電子受容性の半導体特性を持つ有機高分子を意味する。p型高分子半導体及びn型有機半導体からなる光電変換層がこのようなモルフォロジを形成しているため、本発明の光電変換素子は光電変換効率に優れると考えられる。
このように特有なモルフォロジである光電変換層は、n型有機半導体と、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む前記縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体と、それらを混合する溶媒とを含有する有機半導体組成物である溶液から溶媒を除去して乾燥固化した膜である。光電変換層の膜厚は、目的とする用途により一概に定めることは困難であるが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜300nmである。膜厚が薄すぎると光が十分に吸収されず、逆に厚すぎるとキャリアが電極へ到達し難くなり、高い変換効率が得られない。
本発明の光電変換素子に好適に用いられるn型有機半導体は、n型有機半導体のHOMOエネルギーがp型高分子半導体のHOMOエネルギーよりも高く、かつ、n型有機半導体のLUMOエネルギーがp型高分子半導体のLUMOエネルギーよりも高くなるものである。
光電変換層に含有されるn型有機半導体としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60などのフラーレン類及びその誘導体、2、9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1、10−フェナントロリンなどのフェナントレン誘導体などが挙げられる。高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、カーボンナノチューブ及びその誘導体などが挙げられる。これらの中で特にフラーレン類及びその誘導体が好ましい。
フラーレン類及びその誘導体とは、C60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン類及びその誘導体の具体的な構造例を下記化学式(i)〜(x)に示す。
Figure 2013065621
本発明の光電変換素子の光電変換層に含有されるp型高分子半導体は、共役した二価の単量体から構成される重合体であって、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するものである。ここで、主鎖とは、二価の複素環基からなる化合物の最も長い鎖をいう。このp型高分子半導体を構成する共役した二価の単量体とは、分子中の結合の電子が非局在化している二価の基であり、二価の複素環基からなる化合物である。
少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格としては、具体的に、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、ジチエノゲルモールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、チエノチオフェンジイル基、チエノピラジンジイル基、チエノピロールジオンジイル基などが挙げられる。本発明に用いるp型高分子半導体は、前記縮環π共役骨格を主鎖に2種類以上有していてもよく、例えば、シクロペンタジチオフェンジイル基とチエノチオフェンジイル基とを主鎖に有する共重合体であってもよい。
前記p型高分子半導体の好ましい例としては、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノゲルモールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、チエノチオフェンジイル基、チエノピロールジオンジイル基からなる群から選ばれる縮環π共役骨格を1種または2種以上主鎖に有する重合体が挙げられる。また、前記p型高分子半導体はその繰り返し単位中に、前記縮環π共役骨格以外の他の骨格を有していてもよい。そのような他の骨格としては、例えば、ベンゾチアジアゾール基、ベンゾトリアゾール基などが挙げられる。
前記p型高分子半導体は、その縮環π共役骨格が置換基を有するものであることが好ましい。縮環π共役骨格が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基及びハロゲン原子などが挙げられる。中でも、炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。
前記p型高分子半導体の数平均分子量は、特に限定されないが、ホール移動度や力学的物性の観点から、600〜100万g/モルが好ましく、5000〜50万g/モルがより好ましく、1万〜20万g/モルがさらに好ましく、2万〜20万g/モルが最も好ましい。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
前記p型高分子半導体は、結晶性を有することが光電変換層のモルフォロジ制御の観点から重要である。ここで結晶性のp型高分子半導体とは、p型高分子半導体の一部が結晶化している、または液晶状態のp型高分子半導体のことである。結晶性p型高分子半導体の判別として、X線回折法や示差走査熱量測定により分析することが可能である。本発明では芳香環π−πスタックのみX線回折法で観測されるような、弱いp型高分子半導体のパッキング状態も結晶性があると判断する。
前記p型高分子半導体はランダム共重合体、ブロック共重合体、スター型重合体、グラフト共重合体のいずれの構造の重合体であってもよい。これらの中でランダム共重合体及びブロック共重合体が、モルフォロジ制御の観点からより好ましく、特にブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体の連結構造は、特に限定されるものではない。2種類の共役重合体ブロックを含有する場合は、例えば、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体などが挙げられる。3種類の共役重合体ブロックを含有する場合は、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体などが挙げられる。p型高分子半導体がブロック共重合体である場合、ブロック共重合体を構成する各重合体ブロックのうち少なくとも一つの重合体ブロックが、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有する重合体ブロックであればよい。
ブロック共重合体を製造する第一の方法としては、各ブロックを構成する少なくとも2種類の共役重合体ブロック、例えば共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBを別々に合成しておき、それらを連結する方法(以下、「連結法」と称することがある)がある。第二の方法としては、擬リビング重合により共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBを逐次重合する方法(以下、「逐次重合法」と称することがある)がある。第三の方法としては、共役重合体ブロックA存在下に共役ブロックBを重合する方法(以下、「マクロイニシエーター法」と称することがある)がある。連結法、逐次重合及びマクロイニシエーター法は、合成するp型高分子半導体によって最適な方法が使用できる。
光電変換層に含有されるp型高分子半導体とn型有機半導体との混合割合は、p型高分子半導体100質量部に対して、n型有機半導体が10〜1000質量部であると好ましく、50〜500質量部であるとより好ましい。またp型高分子半導体及びn型有機半導体以外の第3成分を含有していてもよい。第3成分の含有量としては、光電変換素子の性能の観点から、p型高分子半導体とフラーレン誘導体との総和の質量に対して30質量%以下であると好ましく、10質量%以下であるとさらに好ましい。
第3成分とは、例えば、1,8−ジクロロオクタン、1,8−ジブロモオクタン、1,8−ジヨードオクタン等のハロゲン化アルキル、ナフタレン、1−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン等の芳香族、置換または無置換チオフェン等のチオフェン誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコール、ポリジメチルシロキサン、ポリフッ化ビニリデン等の非共役重合体などが挙げられる。
本発明の光電変換素子の電極は、正極または負極のいずれかに光透過性を有することが好ましい。電極の光透過性は、光電変換層に入射光が到達して起電力が発生する程度であれば、特に限定されるものではない。電極の厚さは、光透過性や導電性を有する範囲であればよく、電極素材によって異なるが20nm〜300nmが好ましい。なお、一方の電極が光透過性を有する場合、もう一方の電極において導電性を有していれば必ずしも光透過性を有する必要はない。さらに、この電極の厚さは特に限定されるものではない。
電極材料としては、一方の電極には仕事関数の大きな導電性素材、もう一方の電極には仕事関数の小さな導電性素材を使用することが好ましい。仕事関数の大きな導電性素材を用いた電極は正極となる。この仕事関数の大きな導電性素材としては金、白金、クロム、ニッケルなどの金属のほか、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)など)が好ましく用いられる。ここで、正極に用いられる導電性素材は、光電変換層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する正孔輸送層を用いた場合においては、正極に用いられる導電性素材は正孔輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
仕事関数の小さな導電性素材を用いた電極は負極となるが、この仕事関数の小さな導電性素材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、具体的にはリチウム、マグネシウム、カルシウムが使用される。また、錫や銀、アルミニウムも好ましく用いられる。さらに、前記の金属からなる合金や前記の金属の積層体からなる電極も好ましく用いられる。また、負極と後述する電子輸送層との界面にフッ化リチウムやフッ化セシウムなどの金属フッ化物を導入することで、取り出し電流を向上させることも可能である。ここで、負極に用いられる導電性素材は、光電変換層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、電子輸送層を用いた場合においては、負極に用いられる導電性素材は電子輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。電極層とは電極または下記に説明する正孔輸送層や電子輸送層や無機層を備える電極を意味する。
本発明の光電変換素子は、基材上の電極の上に光電変換層が形成されるものである。この基板は、電極を形成し、光電変換層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、無アルカリガラス、石英ガラスなどの無機材料、アルミニウムなどの金属フィルム、またポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂などの有機材料から任意の方法によって作製されたフィルムや板が使用可能である。不透明な基板を用いる場合には、反対の電極即ち、基板から遠い方の上面電極が透明または半透明でなければならない。基板の膜厚は特に限定されないが、通常1μm〜10mmの範囲である。
また、前記基材上の電極の濡れ性を向上させるため、また光電変換層や正孔輸送層や電子輸送層と前記基材上の電極との界面密着性を向上させるために、紫外線オゾン処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの物理的な手段により、表面の洗浄や改質を施すことが好ましい。また、固体基材表面に、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、自己組織化単分子膜などの化学修飾を施す方法も同様に効果的である。
本発明の光電変換素子の製造方法を以下に示す。
本発明の光電変換素子の製造方法は、まず、n型有機半導体と、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に含有するp型高分子半導体と、溶媒とを混合して溶液である有機半導体組成物を調整する。次に、基板上に積層した正極または負極となる電極上に該組成物溶液を塗布して塗膜を形成する。次に、該塗膜中に有機半導体組成物由来の溶媒を含有する状態で、溶媒の蒸気に塗膜を曝露させ、乾燥固化し、前記に記載した特有なモルフォロジを有する光電変換層を形成する。そして、その光電変換層上に負極または正極となる上面電極を形成することで製造される。基板側に先に形成させておく電極は正極と負極のどちらでもよい。
p型高分子半導体及びn型有機半導体を混合する際に用いる溶媒(以下、可溶解溶媒と称する)としては、p型高分子半導体及びn型有機半導体の大部分が溶解する溶媒であれば特に限定されない。可溶解溶媒は、p型高分子半導体及びn型有機半導体のそれぞれについて、20℃における溶解度が1mg/mL以上であるものが好ましく、3mg/mL以上であるものがより好ましい。可溶解溶媒としては、具体的に、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテルなどのエーテル類;メチレンクロライド、クロロホルムなどのハロゲン溶媒;ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ピリジンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよいが、p型高分子半導体及びn型有機半導体の両方の溶解度が高いオルトジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、クロロホルム、オルトキシレン、及びこれらの混合物が好ましい。特に好ましくは、オルトジクロロベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルム及びこれらの混合物である。
有機半導体組成物の調製において、p型高分子半導体及びn型有機半導体の混合方法は、特に限定されるものではない。p型高分子半導体及びn型有機半導体の混合方法として、例えば、所望の比率で可溶解溶媒に添加した後、加熱、撹拌、超音波照射などの方法のうち、1種または複数種の組み合わせを用いて可溶解溶媒中に溶解・混合させる方法が挙げられる。
この有機半導体組成物は、公知の印刷法や塗布法により基板上の電極層の上に塗布し、光電変換層となる塗膜を形成することができる。塗膜手法として、具体的に、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法など、公知の手法を用いることができる。
特有なモルフォロジを形成させる手段としては、基板上の電極層の上に有機半導体組成物である溶液を塗布した塗膜中に、可溶解溶液由来の溶媒を含有する状態で、溶媒蒸気にその塗膜を曝露させることが有用である。この特有なモルフォロジを有する光電変換層の模式断面図を図1に示す。
曝露させる溶媒蒸気としては、p型高分子半導体を溶解しない溶媒が好適に用いられる。図1に示されるように、基板5上の電極層4の上に塗布された塗膜中に可溶解溶媒を含有している状態で、該塗膜が溶媒の蒸気に曝露されることで、p型高分子半導体が曝露された表面から析出し結晶化が進行し結晶部1が形成される。この際、塗膜中に含有する可溶解溶媒が蒸発するが、この溶媒は結晶部1の隙間であるp型高分子半導体の非晶部2を通過し大気中へ蒸発する。そのため、断面から見た膜のモルフォロジは、p型高分子半導体の結晶部と非晶部が傾斜構造を形成しており、その結晶部1は表面に多く存在する。さらに、p型高分子半導体は結晶の成長方向が膜厚方向であり、元々含有していた可溶解溶媒が揮発する経路により、その幅が数十ナノメートルに制限されるため、光電変換素子として理想的な櫛型構造を形成する。その結果、n型有機半導体3も傾斜構造を有し、櫛型構造を形成する。この構造は、櫛型構造であるため膜厚方向と膜面方向で異方性を有する。
塗膜中に含有する有機半導体組成物溶液由来の可溶解溶媒の含量は、n型有機半導体と少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体との合計量100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上1000質量部以下がより好ましく、50質量部以上300質量部以下がさらに好ましい。塗膜中に含有する可溶解溶媒の含量が少ないと、溶媒蒸気に曝露させる前にp型高分子半導体が結晶化してしまいモルフォロジを制御できず、また多すぎると、溶媒蒸気に曝露させても結晶化が進行しない場合がある。
溶媒蒸気として曝露させる溶媒としては、使用するp型高分子半導体が溶解しない溶媒であることが好ましく、またn型有機半導体が溶解する溶媒が好ましい。p型高分子半導体が溶解しない溶媒とは、例えば、p型高分子半導体に対する溶解度が1mg/mL未満であるものである。また、n型有機半導体が溶解する溶媒とは、例えば、p型高分子半導体に対する溶解度が1mg/mL以上であるもの、さらに好ましくは3mg/mL以上であるものである。このような溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン、1,2−ジブロモエタンなどのハロゲン溶媒、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、アニソール、メチルベンゾエート、ピリジンなどの芳香族溶媒、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、モルホリンなどの含窒素溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類が挙げられる。中でも、アセトン、シクロヘキサン、塩化メチレン、1−クロロナフタレン、1,2−ジブロモエタン、アニソール、メチルベンゾエート、ピリジン、ジメチルホルムアミド、モルホリン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが特に好ましい。
溶媒蒸気による曝露は、n型有機半導体と縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体と可溶解溶媒とを含有する組成物溶液を塗工して得られた塗膜と、曝露させる溶媒とを密閉空間内で一定時間保持することによって行うことができる。このとき、曝露させる溶媒と塗膜とは直接触れさせず、溶媒蒸気のみが塗膜に触れる状態で保持して行うことが好ましい。溶媒蒸気に曝露させる時間は特に限定されるものではないが、長時間の溶媒アニールはフラーレンの凝集を過度に促進させ、光電変換効率の低下を招くため、3秒〜1時間の範囲が好ましく、5分〜40分の範囲がより好ましい。また、溶媒蒸気に曝露させる温度は、−20℃〜200℃、より好ましくは0℃〜100℃である。温度が高すぎると光電変換層が酸化及び/または分解し、十分な光電変換特性を得ることができない。
溶媒蒸気による曝露は、空気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて正極と光電変換層との間に正孔輸送層を設けてもよい。正孔輸送層を形成する材料としては、ポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などの導電性高分子や、フタロシアニン誘導体(HPc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物が好ましく用いられる。特に、ポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたものが好ましく用いられる。正孔輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは20nm〜300nmである。
光電変換素子は、必要に応じて負極と光電変換層との間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を形成する材料としては、バソキュプロインなどのフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドなどのn型有機半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどのn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属化合物などを用いることができる。また、光電変換層に用いたn型有機半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
光電変換素子は、さらに無機層を有していてもよい。該無機層に含まれる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸ナトリウムなどの金属酸化物;ヨウ化銀、臭化銀、ヨウ化銅、臭化銅、フッ化リチウムなどの金属ハロゲン化物;硫化亜鉛、硫化チタン、硫化インジウム、硫化ビスマス、硫化カドミウム、硫化ジルコニウム、硫化タンタル、硫化モリブデン、硫化銀、硫化銅、硫化スズ、硫化タングステン、硫化アンチモンなどの金属硫化物;セレン化カドミウム、セレン化ジルコニウム、セレン化亜鉛、セレン化チタン、セレン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、セレン化ビスマス、セレン化鉛などの金属セレン化物;テルル化カドミウム、テルル化タングステン、テルル化モリブデン、テルル化亜鉛、テルル化ビスマスなどの金属テルル化物;リン化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、リン化カドミウムなどの金属リン化物;ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられ、また、これらの2種以上の混合物であってもよい。混合物としては、例えば酸化亜鉛と酸化スズとの混合物、及び酸化スズと酸化チタンとの混合物などが挙げられる。
本発明の光電変換素子の構造解析手法について説明する。構造解析手法としては、特に制限されず、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、二次イオン質量分析法のダイナミックモード(D−SIMS)及びX線光電子分光法(XPS)などを用いて膜厚方向へのプロファイルを取得し解析する手法;光電変換素子の断面方向の薄膜切片を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、得られた二次元硫黄マッピング像を画像解析する手法;同じく透過型電子顕微鏡を用いて膜厚方向の硫黄分布をラインスキャンし、濃度プロファイルを取得する手法などが挙げられる。TOF−SIMSやD−SIMSは、定量性がない分析手法であるが、相対比較は可能であり、測定も容易なため本発明では有用な解析手法である。
TOF−SIMSで測定を行う際は、p型高分子半導体中の硫黄を含む二次イオンを感度良く検出する必要があるため、一次イオン源にビスマスクラスターイオンを、スパッタイオン源にセシウムイオン源を用い、ネガティブイオン取得モードで測定を行うことが望ましい。D−SIMSの場合は、一次イオンによりスパッタ処理と情報取得が共通して行われるため、一次イオン源に酸素イオンもしくはアルゴンイオン源を用い、同じくネガティブイオン取得モードで測定することが望ましい。また、D−SIMSの場合、p型高分子半導体に含まれる硫黄を検出対象として指定しておくことが重要である。XPSにて測定を行う場合は、D−SIMSと同様、硫黄を検出対象として指定して測定を行う必要がある。また、TOF−SIMS、D−SIMS、XPS測定の共通の留意点として、スパッタの影響による試料表面の帯電現象を防ぐため、電子銃からの電子照射などによる適切な帯電補正処理を行うことが望ましい。また、スパッタ時のクレータのエッジ部の情報はノイズとなるため、エッジ近傍の情報を取得せぬよう、分析領域はスパッタ領域の中心部のみに限定することが望ましく、具体的には分析領域の面積がスパッタ領域の20%以下となることが望ましい。
この構造解析は、光電変換層のみに着目し、光電変換層両側に存在する電極や任意成分である電子輸送層や無機層は考慮しない。例えば、TOF−SIMS、D−SIMS、XPSなどを用いた膜厚方向へのプロファイルでは、光電変換層界面で硫黄濃度の極端な変化を生じるため判別することが可能である。また透過型電子顕微鏡では界面が目視できるため判別は容易である。光電変換層の判別が困難な場合は、TOF−SIMS、D−SIMSまたはXPSと、透過型電子顕微鏡を用いた断面観察とを組み合せて用いることができる。
これらの種々の分析手法で取得した、光電変換層の膜厚に対する硫黄の濃度または硫黄の存在強度データは、次のように変換しパラメーターを算出する。TOF−SIMSやD−SIMSやXPSでは、膜厚ではなくスパッタ時間に対する硫黄の存在強度データが得られるが、スパッタ時間が膜厚に比例するとみなしてスパッタ時間を膜厚へ変換することができる。この膜厚に対する硫黄の濃度・強度データは、膜厚の最大値を1で規格化し、さらに硫黄の濃度・強度データの最大値を1で規格化し、それぞれX軸に膜厚の値を、Y軸に膜厚方向の硫黄の濃度・強度の値をプロットする。得られたプロットに対して1次の近似直線を引き、その傾きa及び切片bを算出する。得られた傾きaはp型高分子半導体の膜厚方向への偏析の度合いを示しており、その絶対値が大きいほど膜厚方向へ偏析している状態である。
光電変換素子の性能向上させるためには、光電変換層中でp型高分子半導体が均一に分布しているよりもある程度偏析している方が、孤立した相分離ドメインを作り難く、電極との接合が有利であるため好ましい。このaの絶対値は、0.07以上1.2以下であり、0.08以上1.2以下が好ましく、0.10以上1.0以下がより好ましい。このaの絶対値が大きく、偏析の度合いが大きすぎると膜厚方向へ2相分離した状態に近くなり、n型有機半導体とp型高分子半導体との界面が小さくなり光電変換素子の性能が低下してしまう。また逆にaの絶対値が0に近すぎると光電変換層の膜厚方向にp型高分子半導体が偏析しておらず、均一に分布しており、本発明の効果が得られ難い。
上記の特徴を備える本発明の光電変換素子は、膜厚方向へのモルフォロジが制御された光電変換層を具備し、高い光電変換効率を示し優れた光電変換性能を有する。従って、本発明の光電変換素子は、光電変換機能や光整流機能などを利用した種々の光電変換デバイスへの応用が可能である。例えば光電池(太陽電池など)、電子素子(光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなど)、光記録材(光メモリなど)などに有用である。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(重合例1)
下記反応式に従い重合体ブロックAの合成を行った。
Figure 2013065621
充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコAに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったテトラヒドロフラン(THF)25mLと、2−ブロモ−5−ヨ−ド−3−ヘキシルチオフェン1.865g(5mmol)と、i−プロピルマグネシウムクロリドの2.0M溶液2.5mLを加えて、0℃で30分攪拌し、前記反応式中の化学式(a1)で示す有機マグネシウム化合物の溶液を合成した。
乾燥させたアルゴン置換したナスフラスコBに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF25mLとNiCl(dppp)27mg(0.05mmol)を加えて35℃に加熱した後、有機マグネシウム化合物溶液(a1)を添加した。35℃で1.5時間加熱攪拌した後、5M塩酸50mLを加えて室温で1時間攪拌した。この反応液をクロロホルム450mLで抽出し、有機層を重曹水100mL、蒸留水100mLの順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの30mLに溶かし、メタノ−ルの300mLに再沈殿し、充分に乾燥したものを、分取用GPCカラムを用いて精製することにより重合体ブロックA(790mg)を得た。
ここで、重合体の精製には、分取用のGPCカラムを用いて精製を行なった。精製用の装置は、日本分析工業(株)製のRecycling Preparative HPLC LC−908を用いた。なお、カラムの種類は、日本分析工業(株)製のスチレン系ポリマーカラム 2H−40及び2.5H−40を2本直列に接続したものである。また、溶出溶媒はクロロホルムを用いた。
重合体ブロックAの重合溶媒は、和光純薬工業(株)製の脱水テトラヒドロフラン(安定剤不含)を、金属ナトリウム存在下蒸留精製を行なった後、和光純薬工業(株)製のモレキュラーシーブス5Aに一日以上接触させることで、精製を行った。
得られた重合体ブロックAの理化学分析を行った。
H−NMR(核磁気共鳴)測定により、分子構造を同定した。
H−NMR:δ=6.97(s、1H)、2.80(t、J=8.0Hz、2H)、1.89−1.27(m、10H)、0.91(t、J=6.8Hz、3H)
数平均分子量(Mw)及び重量平均分子量(Mn)は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求められたものである。ここでは、GPC装置として、東ソー(株)製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー(株)製のTSKgel Multipore HZの2本を直列に繋いだものを用いた。これらの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の値を用いて、(Mw)/(Mn)により分散度(PDI)を求めた。
GPC(CHCl):Mn=21,000g/モル、Mw=24,150g/モル、PDI=1.15
この理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
(重合例2)
下記反応式に従いブロック共重合体1の合成を行った。
Figure 2013065621
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに重合体ブロックA(0.70g)と2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(0.51g,0.90mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(0.35g,0.90mmol)、トルエン(17mL)、炭酸カリウム水溶液(17mL,3.6mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.9mg,18.0μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体としてブロック共重合体1を得た(1.11g,70%)。
前記重合例1と同様の方法及び条件で、得られたブロック共重合体1の理化学分析を行った。以下の理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
H-NMR(270MHz):δ=8.20−8.12(m、2H)、8.00−7.80(m、2H)、6.97(s、1H)2.91−2.72(m、2H)、1.79−1.58(m、4H)1.48−1.28(m、12H)、1.19−0.88(m、20H)、0.79−0.62(m、9H)
GPC(CHCl):Mn=33,700g/モル、Mw=78,800g/モル、PDI=2.34
(重合例3)
下記反応式に従い重合体ブロックBの合成を行った。なお、以下の反応式中、置換基である3−ヘプチル基を3−HepまたはHep−3、メチル基をMeと略記する。
Figure 2013065621
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに重合体ブロックBを構成する単量体として、2,6−ビス(トリメチルチン)−4,8−ジドデシルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(0.74g、0.87mmol)、1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(0.32g、0.75mmol)、DMF(1.1mL)、トルエン(4.3mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9.2mg、7.8μmol)を加え、115℃で1時間30分加熱した。次に、リンカー化合物として2,5−ジブロモチオフェン(1.84g,7.6mmol)を加え、115℃で8時間加熱した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。有機層を濃縮乾固し、得られた黒紫色の固体を、クロロホルム(30mL)に溶解させ、メタノール(300mL)で再沈殿した。得られた固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として重合体ブロックB(0.51g、86%)を得た。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、いずれもGPC装置として、Waters製のGPC/V2000を用い、カラムとして、昭和電工株式会社製のShodex AT−G806MSの2本を直列に繋いだものを用いた。また、カラム及びインジェクターは145℃とし、溶出溶媒として、o−ジクロロベンゼンを用いた。得られた重合体ブロックBの重量平均分子量は45,000、数平均分子量は18,000、多分散度は2.5であった。
H−NMR(270MHz,CDCl):δ=7.60‐7.30(br、3H),3.30‐3.00(Br、5H),2.00‐1.10(br、52H),1.00‐0.70(br、12H)
この理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
(重合例4)
下記反応式に従いブロック共重合体2の合成を行った。
Figure 2013065621
窒素雰囲気下、50mLフラスコに共役重合体ブロックB(160.0mg,0.12mol)、重合体ブロックBを構成する2種類の単量体として2,6−ビス(トリメチルチン)−4,8−ビス(2−エチルヘキシロキシ)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(113.0mg,0.16mmol)、2,6−ビス(トリメチルチン)−4,8−ジプロピルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(40.9mg,0.07mmol)及び1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(86.0mg,0.20mmol)、DMF(3.0mL)、トルエン(12mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(30mg、26μmol)を加え、容器内をアルゴンガスで20分間バブリングした後に、110℃で10時間加熱した。反応終了後、反応溶液をメタノール(300mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液を濃縮し、メタノール(300mL)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体としてブロック共重合体2を得た(221.0mg,75.4%)。
得られたブロック共重合体2の理化学分析を、前記重合例3と同様の方法及び条件で行った。以下の理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
GPC(CHCl):Mn=28800g/mol、Mw=86400g/mol、PDI=2.99
H−NMR(270MHz,CDCl):δ=7.60−7.30(br,3H)、4.40−4.00(br,4H)、3.30−3.00(Br,4H)、2.00−0.60(br,51H)
(実施例1)
(有機半導体組成物の調製)
n型有機半導体として[6,6]−フェニルC71−ブチル酸メチルエステル(略号:PC71BM;アメリカンダイソース社製ADS71BFA)を9.68mg、及び少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に含有するp型高分子半導体としてブロック共重合体1を4.15mgを密閉容器に秤量し、窒素雰囲気下にてオルトジクロロベンゼン0.432mLを加えた。この溶液を80℃6時間撹拌して溶解させた後、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過して有機半導体組成物を得た。
(電極層の形成)
ガラス基板上に、スパッタ法により150nmの厚みでITO膜(抵抗値10Ω/□)を付け、15分間オゾンUV処理して表面処理を行った。その上に、正孔輸送層となるPEDOT:PSS水溶液(H.C.Starck社製:CLEVIOS PH500)をスピンコート法により40nmの厚さに成膜し、ホットプレートにより140℃で20分間加熱乾燥して、電極層とした。
(成膜及び溶媒による曝露)
電極層にスピンコートにより前記調製した有機半導体組成物の溶液を塗布した。スピンコート開始から10秒でスピンを停止し、溶媒を含んだ状態の有機半導体組成物の塗膜を得た。次に300mL容量の蓋付ガラス容器の底に200μLのアニソールを入れ、高さ約4cmのガラス製の台を蓋付ガラス容器の中に設置し蓋をした。このガラス容器の中にある台の上に溶媒を含んだ状態の有機半導体組成物の塗膜を置き、すぐさま蓋をしてから室温25℃にて30分間アニソール蒸気に曝露させた。30分後に容器から有機半導体組成物の塗膜を取り出し、室温にて乾燥させた後、さらに室温にて減圧乾燥させた。触針式表面形状測定器((株)アルバック製;Dektak)を用いて得られた光電変換層の膜厚を測定したところ、膜厚は約110nmであった。
(上面電極層の成膜)
得られた光電変換層のITOとは逆面に真空蒸着機によりフッ化リチウムを膜厚1nmで蒸着し、次いでフッ化リチウム膜の上にAlを膜厚100nmで蒸着した。これによりブロック共重合体1による光電変換素子が得られた。光電変換素子の形状は5×5mmの正四角形であった。
(光電変換素子の評価)
得られた光電変換素子の光電変換効率を150Wのソーラシミュレーター(ペクセルテクノロジー(株)製、商品名PEC L11:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)で測定した。測定結果を下記表1に示す。
(ToF−SIMSによる硫黄の強度分析)
得られた光電変換素子の膜厚方向の硫黄の存在強度を分析した。分析には飛行時間型二次イオン質量分析計を用いた。
使用分析装置:TOF-SIMS5 (ION-TOF GmbH製)
一次イオン源:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++
一次イオンエネルギー条件:25 keV
一次イオンターゲット電流:0.2 pA(周波数10 kHz)
スパッタイオン源:セシウムイオン
スパッタイオンエネルギー:10 KeV
スパッタイオンターゲット電流:30 nA
スパッタ方式:Non-interraced
mode(1次イオン照射/スパッタ処理を交互に行う方式)
帯電補正:装置付属の電子銃(条件は固定)にて帯電補正を行いつつ測定
検出器:ネガティブイオン取得モードにて測定
測定(二次イオン検出)範囲:100 × 100 μm(ランダムラスターモード)
スパッタ範囲:300 × 300 μm
ピクセル数: 128 × 128 × 600〜800 ピクセル
(PEDOT/PSSとITOとの界面到達確認後に測定をストップさせた)
備考:1サイクル中の一次イオンの照射量は、下記解析方法に記載した二次イオンが十分な強度(ピーク強度が1サイクルで100カウント以上が望ましい)で検出され、かつイオンドーズ量がスタティックリミットを上回らない条件であることが望ましく、本実施例では1サイクルについて4スキャン測定を行った。
測定方法:ネガティブイオンの質量スペクトルより、硫黄の濃度分布を反映した二次イオンを検出し、その1次元プロファイルを得た。硫黄の濃度分布を反映した二次イオンとしては、重合体の構造を考慮して、例えばS、HS、CS、C4S、C4HSなどが挙げられる。これらの二次イオンについて得られた1次元プロファイルから、硫黄の膜厚方向の濃度勾配を導出した。一連の作業は、同装置に付属の解析ソフトウェアを用いて行った。
測定した光電変換層中の膜厚方向の硫黄の強度プロファイルを図2に示す。図2において、点線Pで示す範囲は光電変換層であり、点線Qで示す範囲はPEDOT/PSS層である。この図2に示される光電変換層部位(Pで示す範囲)の硫黄の強度を最大値1で規格化しY軸の値として、図2の光電変換層部位のスパッタ時間が膜厚に比例するとして、膜厚を最大値1で規格化しX軸の値としてプロットして図3を作成した。このプロットに対して1次の近似直線を求め、パラメーターを算出した。結果を図3及び表1に示す。
(実施例2)
n型有機半導体として[6,6]−フェニルC71−ブチル酸メチルエステル(略号:PC71BM;フロンティアカーボン社製E110)を6.00mg、及び少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に含有するp型高分子半導体としてブロック共重合体2を4.00mgを密閉容器に秤量し、窒素雰囲気下にてクロロベンゼン0.500mLを加えた。この溶液を100℃6時間撹拌して溶解させた後、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過して有機半導体組成物を得た。
(電極層の形成)
実施例1と同様の方法、条件にて電極層を作製した。
(成膜及び溶媒による曝露)
有機半導体組成物の塗膜を10分間アニソール蒸気に曝露させた点以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。触針式表面形状測定器((株)アルバック製;Dektak)を用いて得られた光電変換層の膜厚を測定したところ、膜厚は約100nmであった。
(上面電極層の成膜)
実施例1と同様の方法、条件にて上面電極層を作製した。
(光電変換素子の評価及びToF−SIMSによる硫黄の強度分析)
実施例1と同様に、得られた光電変換素子の光電変換効率を測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例1と同様に膜厚方向の硫黄の存在強度を測定し、同様にパラメーターを算出した。結果を図4及び表1に示す。
(比較例1)
実施例1においてスピンコートにより前記調製した有機半導体組成物である溶液の塗布を180秒行い、アニソール蒸気による曝露を実施しなかった点以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
実施例1と同様に、得られた光電変換素子の光電変換効率を測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例1と同様に膜厚方向の硫黄の存在強度を測定し、同様にパラメーターを算出した。結果を図5及び表1に示す。
(比較例2)
(バイレイヤー素子の評価)
実施例1に記載の基板上の電極層の上に、PC71BM(フロンティアカーボン社製E110)のクロロベンゼン溶液からスピンコートにて約25nmに成膜した。合成例1で得た重合体ブロックAの単独重合体のクロロベンゼン溶液からスピンコートにてシリコン基板上に約60nmに成膜した後、蒸留水上にこの重合体ブロックAの膜をフロートさせ、PCBMを成膜した電極付基板でPC71BM層の上にすくい取って、有機半導体が2層に積層されたバイレイヤーを作製し、室温にて1晩真空乾燥させた。得られた光電変換層に実施例1と同様にして上面電極(LiF及びAl)を蒸着し、光電変換素子を作製した。
実施例1と同様に、得られた光電変換素子の光電変換効率を測定した。その測定結果を下記表1に示す。また、実施例1と同様に膜厚方向の硫黄の存在強度を測定し、同様にパラメーターを算出した。結果を図6及び表1に示す。
Figure 2013065621
表1から明らかなように、最大値を1に規格化した光電変換層の膜厚をX軸の値とし、最大値を1に規格化した膜厚方向の硫黄の濃度または強度(存在量)をY軸の値としてプロットした図において、1次の近似直線の傾きaの絶対値が0.07以上1.2以下の範囲内である本発明の光電変換素子は、光電変換特性に優れ、高い光電変換効率が得られる。
1はp型高分子半導体の結晶部、2はp型高分子半導体の非晶部、3はn型有機半導体、4は電極層、5は基板。

Claims (8)

  1. 少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格を主鎖に有するp型高分子半導体とn型有機半導体とを含有する光電変換層が、正極と負極との間に挟まれており、
    最大値を1に規格化した前記光電変換層の膜厚をX軸の値とし、最大値を1に規格化した膜厚方向における前記光電変換層中の硫黄原子の存在量をY軸の値としてプロットしたグラフの1次近似直線が、下記数式(1)で表され、
    Y=aX+b ・・・(1)
    (式中、aは傾きであり、bは切片である)
    数式(1)中のaの絶対値が、0.07以上1.2以下であることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記光電変換層と前記正極との間に、正孔輸送層を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記n型有機半導体がフラーレン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  4. 前記p型高分子半導体が前記縮環π共役骨格を構成単位に有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  5. n型有機半導体と、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体と、溶媒とを含有する溶液を、基板上の電極層の上に塗布した塗膜中に、前記溶媒を少なくとも20質量%含有する状態で、前記塗膜を溶媒の蒸気に曝露させ、乾燥固化し光電変換層を形成する工程を含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  6. 前記溶媒の蒸気が、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体を溶解しないことを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
  7. 前記溶媒の蒸気が、前記縮環π共役骨格を有するp型高分子半導体に対する溶解度が1mg/mL未満である溶媒の蒸気である請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
  8. 前記溶媒の蒸気が、アセトン、シクロヘキサン、塩化メチレン、1−クロロナフタレン、1,2−ジブロモエタン、アニソール、メチルベンゾエート、ピリジン、ジメチルホルムアミド、モルホリン、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンから選ばれるいずれかの溶媒の蒸気である請求項5〜7のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
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