JPWO2013022046A1 - 有機強磁性体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明に係る有機強磁性体は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを反応させて得られ、強磁性を有することを特徴とする。

Description

本発明は、有機強磁性体及びその製造方法に関する。
従来から磁性材料は、自動車、磁気記録、電気・電子、医療など多くの分野において、幅広く用いられている。磁性材料の原料には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の遷移元素、又はネオジウム(Nd)等の希土類元素からなる無機化合物を用いた無機磁性材料が用いられている。有機磁性材料(有機磁性体)は、無機磁性材料に比べ、軽量、低コストかつ加工性など種々の点で優れ、多くの利点を有していることから、近年、無機磁性材料に代えて、有機磁性体の研究開発が積極的に行われている。
有機磁性体は、高分子の重合度に応じて低分子系と高分子系とに分けられる。一般に、有機磁性体が強磁性を発現するためには電子スピンを揃える必要があり、主鎖や側鎖の電子スピンをいかにして同一方向に揃えるかが重要である。低分子系の有機磁性体は、強磁性を発現する温度が極めて低温(例えば0.65K)であることなどから、磁性材料として実用化するのは困難である。
一方、高分子系の有機磁性体では、1分子内に多数の電子スピンを整列させたπ共役系ラジカル高分子の開発が盛んに行われている。高分子系の有機磁性体は、高温(例えば300K)において強磁性を発現する高分子化合物が確認されている。
こうした高分子系の有機磁性体として、例えば、電子供与基を有するベンゼン誘導体と、2環以上の縮合多環芳香族化合物と、複素環化合物と、メタロセン化合物の中から選ばれる化合物とを、メタロセンカルボアルデヒド化合物を連結剤として用いて結合させた重縮合物からなる有機強磁性体(例えば、特許文献1、参照)、非局在ビラジカル分子である1,4−ビス(4,5−ジフェニル−2H−イミダゾリル−2−イリデン)−2,5シクロヘキサジエンを繰り返し構造としたπ共役ラジカル高分子(例えば、特許文献2、参照)等が提案されている。
特許文献1に記載の有機強磁性体では、飽和磁化が5emu/gであり、保磁力が20Oeであったと記載されている。また、特許文献2に記載のπ共役ラジカル高分子では、室温において飽和磁化が3.02×10-4emu/gであり、保磁力が10Oeであったと記載されている。
特開平05−109522号公報 特開2009−173788号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている有機磁性体は強磁性を示すが、合成が難しく、再現性が例えば数百回に1回程度と極めて低く、実用的でなかった。
また、特許文献2に記載されているπ共役ラジカル高分子は再現性は良好であるが、強磁性を示す値は小さく、実用化できるほど高い強磁性を有していなかった。すなわち、特許文献2に記載のπ共役ラジカル高分子を用いて作製された有機強磁性体は、高い磁場をかけると磁化するが、磁石に引きつけられるほどの磁性は有していなかった。
このように、従来の有機強磁性体は、低分子系の場合では、磁性発現の温度が極めて低温であり、室温付近では強磁性は発現しなかった。また、高分子系の場合では、強磁性の値が小さく磁気特性が低いか、高い強磁性を発現する磁気特性の再現性に課題があったことから、実用的ではなかった。そのため、高温領域に強磁性体へ転移するキュリー点を有し、室温において優れた磁気特性を有する有機強磁性体及びその有機強磁性の再現性が良好な有機強磁性体の製造方法が求められている。
本発明は、前記問題に鑑み、室温において高い強磁性を有し、且つ再現性良く製造できる有機強磁性体及びその製造方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは有機強磁性体について鋭意研究をした。その結果、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体の磁性の挙動、再現性に着目した。π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を混合して反応させることにより得られる有機強磁性体の室温における磁気特性と、その再現性を解明した。この得られた知見に基づいて、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して熱処理して、π共役系ラジカル構造を含む高分子化合物により形成される有機強磁性体を得ることで、室温において高い強磁性を有する有機強磁性体を、再現性良く製造できることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを反応させて得られ、強磁性を有することを特徴とする有機強磁性体である。
第2の発明は、第1の発明において、前記アルカリ金属が、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記アルカリ土類金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、前記13族元素が、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明の有機強磁性体を含むことを特徴とする磁性薄膜である。
第6の発明は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理し、前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上の水素元素の少なくとも一部を、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上で置換して、π共役系ラジカル構造を含み、強磁性を有する高分子化合物を形成することを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
第7の発明は、第6の発明において、前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上を、モノマー単位のモル比で1.5倍以上混合することを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記アルカリ金属として、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
第9の発明は、第6乃至8の何れか1つの発明において、前記アルカリ土類金属として、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
第10の発明は、第6乃至9の何れか1つの発明において、前記13族元素として、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
本発明によれば、室温において高い強磁性を有し、且つ再現性良く製造できる有機強磁性体を得ることができる。
図1は、印加磁場を変化させた時の磁化の変化を示す図である。 図2は、図1の部分拡大図である。 図3は、ZFCとFCとの温度と磁化との関係を示す図である。 図4は、実施例2−1により得られた黒色粉末の400K、300Kおよび10Kの温度におけるそれぞれの磁化を測定した結果を示す図である。 図5は、比較例2−1での300Kおよび10Kの温度におけるそれぞれの磁化を測定した結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)及び実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための実施形態及び実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態及び実施例で記載した構成要素は適宜組み合わせても良いし、適宜選択して用いてもよい。
<有機強磁性体>
本実施形態に係る有機強磁性体は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上(高分子群)と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを反応させて得られる有機強磁性体において、π共役系ラジカル構造を含む高分子化合物により形成され、強磁性を有するものである。
なお、強磁性とは、磁界内に置くと、磁界と同じ方向に強く磁化され、磁界を除いても磁気を残す性質をいい、隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質の磁性をいう。
[高分子群]
高分子群は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上である。π共役系高分子は、一般に飽和結合(一重結合)と不飽和結合(二重結合、三重結合)とが交互に並んだ構造、つまりπ共役が発達した主鎖、側鎖のいずれか一方又は両方を有する高分子である。π共役系高分子は、高分子の主鎖、側鎖のいずれか一方又は両方に広がったπ電子を有する。π共役系高分子としては、例えば、鎖状又は環式のπ共役系炭化水素化合物を含むπ共役系炭化水素高分子、ヘテロ原子を含有する鎖状又は環式のπ共役系炭化水素化合物を含むπ共役系炭化水素高分子、π共役系複素環式化合物を含むπ共役系複素環式高分子などを挙げることができる。π共役系高分子は、これらから選択される少なくとも1種の高分子を含むものが好ましい。π共役系高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレンビニレン(poly(phenylene vinylene):PPV)、ポリペリナフタレン、ポリフラン、ポリチエニレン、ポリピリジンジイル、ポリイソチアナフテン、ポリキノキサリン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリインドール、インドール三量体、ポリアミノアントラキノン、ポリイミダゾールおよびこれらの誘導体などが挙げられる。また、π共役高分子は、上記高分子に限定されるものではなく、π共役高分子は主鎖にジアセチレン構造など上記高分子を有し、側鎖に上記高分子のようにπ電子共役系構造を拡張した高分子を有するものを用いてもよい。
π共役系ラジカル高分子は、π共役系高分子の主鎖、側鎖のいずれか一方又は両方にラジカルを含むものである。また、π共役系ラジカル高分子も、上記高分子の主鎖、側鎖のいずれか一方又は両方にラジカルを含む高分子に限定されるものではなく、π共役系ラジカル高分子は主鎖にジアセチレン構造などでラジカルを含む高分子を有し、側鎖に上記高分子でπ電子共役系ラジカル構造を拡張した高分子を有するものを用いてもよい。π共役系高分子の側鎖のラジカル源としては、炭素ラジカルに限定されるものではなく、ニトロキシドラジカル、ニトロニルニトロキシドラジカル、ガルビノキシラジカル等もラジカル(スピン)源として用いることができる。
π共役系高分子、π共役系ラジカル高分子の質量平均分子量Mwは、高分子の分子量により異なり、特に限定されるものではない。この質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)法によるポリスチレン換算値として測定することができる。
高分子群は、π共役系高分子、π共役系ラジカル高分子の1種だけを用いてもよいし、それ以上用いてもよい。
π共役系高分子は、Poly(1−[5'−(ethynyl)−2’,2’’−biphenylenyl]−2−phenyl−3−(2,2’−biphenylenyl)propene)のように、下記式(I)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことが好ましい。
Figure 2013022046
π共役系ラジカル高分子は、Poly(1−[5'−(ethynyl)−2’,2’’−biphenylenyl]−2−phenyl−3−(2,2’−biphenylenyl)allyl)のように下記式(II)で表される繰り返し単位を有するポリフェニルアセチレンポリマーからなる有機ラジカル化合物、ポリ(1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル)のように下記式(III)で表される繰り返し単位を有するポリフェニルアセチレンポリマーからなる有機ラジカル化合物の何れか一方または両方を構成成分として含むことが好ましい。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
なお、上記式(III)で表される有機ラジカル化合物は、下記式(IV)で表される1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを重号させて合成される。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
[アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素]
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素は、電子供与性が強く、π共役系高分子に電子を与えてラジカルあるいはアニオンラジカルを生成させる作用を有する。特に、π共役系ラジカル高分子を用いて重合する場合、ラジカルは不安定であるため、高分子の直鎖や側鎖のCH2などの炭素には水素が結合し易く、ラジカルが残っている割合は低くなりやすい。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素をπ共役系高分子やπ共役系ラジカル高分子に混合することで、π共役系高分子やπ共役系ラジカル高分子には安定してラジカルを生成させることができるといえる。アルカリ金属としては、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。13族元素としては、例えばホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(TI)等が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素の1種又はそれ以上を用いることが好ましい。特に、電子供与性が強く、π共役系高分子、π共役系ラジカル高分子に電子を与えてラジカルを生成させ易い観点から、Kを用いることが好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素の配合量の和は、高分子群の配合量の和に対して、モノマー単位のモル比で1.5倍以上9.0倍以下が好ましく、より好ましくは3.0倍以上9.0倍以下であり、更に好ましくは6.0倍以上9.0倍以下である。用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素の配合量の和が1.5倍以上の場合には、得られる有機強磁性体は室温において高い強磁性を示すことができる。また、用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素の配合量の和が9.0倍以下の場合には、得られる有機強磁性体は再現良く強磁性を発現することができる。用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素の配合量の和が、高分子群の配合量の和に対して、モノマー単位のモル比で1.5倍を下回る場合には、得られる有機強磁性体は極低温でのみ弱い強磁性を示す程度である。これに対し、高分子群にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素を上記範囲内で混合することで、ラジカルを規則的に並べることができ、得られる有機強磁性体は室温において高い強磁性を有し、再現性良く製造することができる。
なお、本明細書において、室温とは、288K(15℃)〜308K(35℃)を含む範囲内をいい、特に温度が300K(27℃)程度の場合をいう。
<有機強磁性体の製造方法>
本実施形態に係る有機強磁性体は、高分子群と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理することにより製造される。これにより、高分子群の水素元素の少なくとも一部が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上で置換され、高分子群にπ共役系ラジカル構造が含まれることで、ラジカルが規則的に整列して強磁性を有する高分子化合物が形成され、本実施形態に係る有機強磁性体が得られる。
用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素の配合量の和は、上述の通り、高分子群の配合量の和に対して、モノマー単位のモル比で1.5倍以上9.0倍以下とするのが好ましく、より好ましくは3.0倍以上9.0倍以下であり、更に好ましくは6.0倍以上9.0倍以下である。
高分子群と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理する際は、不活性ガス雰囲気又は真空状態で行うことがこのましい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)や窒素(N2)などが用いられる。本実施形態において、真空状態とは、例えば、5×10-3Pa以下をいう。
熱処理する際の熱処理温度と熱処理時間とは用いる高分子等の種類により異なるが、一般にπ共役系高分子、π共役系ラジカル高分子の場合には、100℃以上300℃以下で数日間(5日以上15日以下)、熱処理してπ共役系高分子、π共役系ラジカル高分子と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素とを反応させる。
本実施形態に係る有機強磁性体は、上述した高分子群と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群と以外に、必要に応じて本発明の目的を損わない範囲で、他の成分を含有していてもよい。
このように、本実施形態に係る有機強磁性体は、高分子群と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理し、反応させることにより、高分子群にπ共役系ラジカル構造が含まれることで、ラジカルが規則的に並んだ高分子化合物を形成し、室温において強磁性を有するものである。このようにして得られた本実施形態に係る有機強磁性体は、室温において高い強磁性を有し、且つ再現性良く製造することができる。
すなわち、これまで一般にπ共役系高分子を用いて有機強磁性体を作製する際には、以下のような知見に基づいていた。π共役系高分子を用いて作製される有機強磁性体は、π共役系高分子の主鎖あるいは側鎖にラジカルを含んでこれをスピン源とする。そして、強磁性体を得るためには、これらスピン源のスピン磁気モーメントを分子内および分子間で平行に揃える必要がある。π共役系高分子では、スピン源のスピン磁気モーメントが隣接する結合電子のスピン源を逆向きに誘起し、さらに誘起を繰り返し、このスピン分極と位相が合うように第2のスピン源を配置するとスピンが平行に揃うことが期待できる。
係る知見に基づいて、従来ではπ共役系高分子としてポリアセチレンやポリジアセチレンを用いて強磁性体を作製することが検討されていた。しかし、これまでは、π共役系高分子を作製する際の重合反応でラジカルが介入してスピン濃度が理論値より減少したり、スピン間相互作用が期待されるものより小さいなどといったことから、実用化が期待できるほどの強磁性体はこれまで作製できなかった。
また、縮合多環多角芳香族樹脂(COPNA樹脂)や従来の特許文献1に記載の重縮合物などを用いて作製される強磁性体は、熱処理することによりCOPNA樹脂や重縮合物中のCH2などの炭素にラジカルを発生されると共に、グラファイト化を進めてπ電子共役系を発達させて、ラジカル同士を相互作用させるものである。そのため、COPNA樹脂や特許文献1に記載の重縮合物などを用いて作製される有機強磁性体もπ電子共役系高分子を用いて作製された有機強磁性体と同様の仕組みであるといえる。しかし、熱分解を行って有機強磁性体を作成する場合等においては、熱分解により得られた有機強磁性体の構造を決定することは極めて困難であり、更に得られる有機強磁性体の構造を制御することも著しく困難である。
これに対し、本実施形態に係る有機強磁性体は、高分子群に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して熱処理し、反応させることにより製造される。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素は、電子供与性が強く、π共役系高分子に電子を与えてラジカルあるいはアニオンラジカルを生成させる作用を有する。これにより、従来のπ共役系高分子を用いて有機強磁性体を作製する際に用いられるπ共役系高分子のスピン濃度が理論値より低くなってしまうことを改善することができる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上をπ共役系高分子、π共役系ラジカル高分子の1種又はそれ以上に所定量含めることで、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素はπ共役高分子のπ共役鎖に負の電荷を有するポーラロン(ラジカルアニオン)やバイポーラロンなどを生成させ、ラジカルを規則的に並べることができ、強磁性の発現に寄与していると考えられる。
例えば、π共役系ラジカル高分子として上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリフェニルアセチレンを含む有機強磁性体は、ラジカルからのスピンの寄与により、極低温でのみ弱い強磁性を示す程度である。しかし、このポリフェニルアセチレンに金属カリウムをモノマー単位のモル比で3倍程度混合し、真空状態で167℃程度で数日間加熱して反応させ、有機強磁性体を作製する。超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting QUantum Interference Device)磁束計を用いて得られた有機強磁性体を磁気測定すると、2Kから300Kまでの温度範囲において磁場中冷却(FC:Field Cooling)と零磁場冷却(ZFC:Zero Field Cooling)とにおける磁化曲線に明確な差異が観測された。そして、FCにおける磁化曲線とZFCにおける磁化曲線とが300K程度で交差することから、得られた有機強磁性体は強磁性を有しており、強磁性体へ転移するキュリー温度が300K以上であるといえる。また、SQUID磁束計を用いて、印加磁界を変化させて得られた有機強磁性体の磁化を測定すると、飽和磁化、残留磁化、保磁力等を測定することができ、強磁性に特徴的なヒステリシスが観測できたことから、得られた有機強磁性体は強磁性を有するといえる。また、上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリフェニルアセチレンに金属カリウムをモノマー単位のモル比で3倍程度混合し、同様にして繰り返し作製して得られる有機強磁性体は室温で強磁性を有していたことから、再現性も良好であるといえる。
したがって、高分子群に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して熱処理して反応させることで、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からπ共役系高分子に電子が供与される。これにより、π共役系高分子にラジカルが生成され、高分子群にπ共役系ラジカル構造が含まれることで、ラジカルが規則的に整列した高分子化合物を得ることができ、高い強磁性を有する有機強磁性体が製造される。
本実施形態に係る有機強磁性体をSQUID磁束計を用いて磁場強度を200Oeとして、ZFCとFCとにおいて温度を変化させた時の各々の磁化曲線に明確な差異が観測される。ZFCとFCとにおける各々の磁化曲線は300K程度で交差することから、本実施形態に係る有機強磁性体のキュリー温度は少なくとも300K程度である。よって、本実施形態に係る有機強磁性体は、室温において強磁性を有している。
また、本実施形態に係る有機強磁性体をSQUID磁束計を用いて、300Kにおける印加磁場を変化させた時の磁化の変化を測定すると、得られる磁化曲線(ヒステリシス曲線)の形状は略S字形に近い形状となることから、室温において高い強磁性を有するといえる。また、本実施形態に係る有機強磁性体は磁石に引き付けられることから、本実施形態に係る有機強磁性体は高い強磁性を有しているといえる。よって、本実施形態に係る有機強磁性体は、室温において高い強磁性を有することができる。
また、本実施形態に係る有機強磁性体を電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)法を用いて測定すると、本実施形態に係る有機強磁性体は金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子に比べて線幅ΔHは減少することから、ラジカルが規則的に整列しているといえ、本実施形態に係る有機強磁性体は、高い強磁性を有することが確認できる。
ESR法は、磁場中に置かれた原子の不対電子がエネルギー準位の分裂幅と同じエネルギー(周波数)の電磁波(マイクロ波)を吸収して、エネルギーの低いスピン状態からエネルギーの高いスピン状態に移り変わるときに生じるエネルギー準位間の遷移を観測する分光分析である。
ESR法では、磁場の変化に対するマイクロ波の吸収強度の変化をESRスペクトル(1次微分吸収スペクトル)として測定する。このスペクトルに現れるESR信号の強度から、不対電子の数についての情報が得られる。また、ESR信号の位置を表すg値からは、不対電子の存在状態の情報が得られる。また、ESR信号の広がりである線幅ΔHからは、不対電子とその存在する空間との相互作用についての情報が得られる。
π共役系高分子に金属カリウムを混合すると、金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子に比べて線幅ΔHが減少するのは、ラジカルが規則的に整列し、スピン・スピン相互作用が増加し、内部の原子の間でお互いのスピンの方向を揃えるように相互作用が働いたことによるものといえる。よって、π共役系高分子に金属カリウムを混合すると、金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子に比べて線幅ΔHが減少したことから、ラジカルが規則的に整列し、本実施形態に係る有機強磁性体は強磁性を有するといえる。
また、上記と同様にして繰り返し作製して得られる本実施形態に係る有機強磁性体は、室温で高い強磁性を有していたことから再現性良く製造できる。
したがって、本実施形態に係る有機強磁性体は、室温において高い強磁性を有し、且つ再現性良く製造することができる。
このようにして得られる本実施形態に係る有機強磁性体は、無機化合物を用いた無機磁性材料に比べ、軽量、且つ低コストで容易に加工できるという利点を有することから、本実施形態に係る有機強磁性体は、例えば、磁気記録材料、電磁波遮断材料、透明磁性薄膜材料、モータなどの磁石、トランスのコア、磁性流体、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)、静電トナー、黒色塗料、研磨剤の高配向剤、磁気テープの記録状態を光学的パターンに変換する現像液等として好適に用いることができる。
本実施形態に係る有機強磁性体は、磁性薄膜として用いることができる。本実施形態に係る有機強磁性体を用いることで、任意の厚さや形状の磁性薄膜を容易に低コストで作製できるため、磁気記録媒体、電磁シールド、帯電防止フィルム等として好適に用いることができ、これらの軽量化、低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態に係る有機強磁性体を原料として任意の所定形状の磁石を容易に低コストで作製できるため、本実施形態に係る有機強磁性体を用いて得られる磁石は、ロータ表面に磁石を取り付けた表面磁石型(Surface Permanent Magnet:SPM)モータ、インナーロータ型のブラシレスモータのような内部磁石埋込型(Interior Permanent Magnet;IPM)モータ、PRM(Permanent magnet Reluctance Motor)などに適用できる。そのため、本実施形態に係る有機強磁性体を用いて得られる磁石は、例えば、ハードディスクドライブのハードディスク回転駆動用スピンドルモータやボイスコイルモータ、電気自動車やハイブリッドカー用モータ、自動車の電動パワーステアリング用モータ、工作機械のサーボモータ、携帯電話のバイブレータ用モータ、プリンタ用モータ等の用途として好適に用いることができ、モータ等の軽量化、低コスト化を図ることができる。
以下、本実施形態に係る発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本実施形態に係る発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[有機強磁性体の作成]
(実施例1−1)
まず、次のようにして有機強磁性体を作成した。π共役系ラジカル高分子としてPoly(1−[5'−(ethynyl)−2’,2’’−biphenylenyl]−2−phenyl−3−(2,2’−biphenylenyl)allyl)88.2mg(0.2mmol)と金属カリウム23.46mg(0.6mmol)を、Ar雰囲気に維持されたドライボックス中で秤量し、直径が約1cmの耐熱ガラス製の円筒型反応管に入れた。この反応管に真空コックを取り付けてArガスを封入して真空コックを閉じた状態でドライボックスから取り出した。その後、反応管に真空ラインに接続し、反応管の内部を真空ポンプで2×10-3Pa程度にまで排気した後、反応管をガスバーナーを用いて封じた。次に、この反応管をマッフル炉に入れて、167℃程度で9日間放置して、π共役系ラジカル高分子と金属カリウムとを反応させた。その後、室温まで冷却した。これにより、有機強磁性体を作製した。なお、反応管の加熱開始後の数日間は数時間おきに定期的にマッフル炉から取り出して反応管を振り混ぜた。また、本実施例において用いたπ共役系ラジカル高分子であるPoly(1−[5'−(ethynyl)−2’,2’’−biphenylenyl]−2−phenyl−3−(2,2’−biphenylenyl)allyl)のラジカルの含有率は、60%程度であった。
(比較例1−1)
金属カリウムをπ共役系ラジカル高分子に混合しないこと以外は、実施例1−1と同様にして、有機強磁性体を作製した。
[有機強磁性体の評価]
得られた有機強磁性体の300Kにおける磁化の磁場依存性と、磁場冷却したときの温度依存性とを求め、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)を測定し、有機強磁性体の磁気特性を評価した。
(300Kにおける磁化の磁場依存性)
実施例1−1及び比較例1−1により得られた有機強磁性体をSQUID磁束計(MPMS(Magnetic Property Measurement System)、QUANTUM DESIGN社製)を用いて、300Kにおける印加磁場を変化させた時の磁化の変化を測定し、300Kにおける磁化の磁場依存性を評価した。
実施例1−1の有機強磁性体の印加磁場を変化させた時の磁化の変化を図1、2に示す。図1は、印加磁場を変化させた時の磁化の変化を示す図であり、図2は、図1の部分拡大図である。図1に示すように、磁化曲線(ヒステリシス曲線)の形状が略S字形に近い形状となった。よって、実施例1−1により得られた有機強磁性体は強磁性を有するといえる。また、図2に示すように、磁化曲線から実施例1−1により得られた有機強磁性体は、残留磁化は0.01emu/g程度であり、保磁力は100Oe程度であったことが確認された。また、この実施例1−1により得られた有機強磁性体はガラス反応管の外側に設けた磁石に引き付けられたことが確認された。よって、実施例1−1により得られた有機強磁性体は300Kにおいて強い強磁性を有しているといえる。
一方、比較例1−1により得られた有機強磁性体では、4.2Kでは極めて弱い強磁性が観測されたが、300Kにおいては強磁性は観測されなかった。
よって、印加磁場を変化させた時の磁化曲線から、π共役系ラジカル高分子に金属カリウムを所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体は、300Kにおいて強い強磁性を有するといえる。
(磁場冷却したときの温度依存性)
実施例1−1により得られた有機強磁性体を、磁場強度を200Oeとして、零磁場冷却(ZFC)と磁場中冷却(FC)とにおいて温度を変化させた時の磁化の変化を測定し、磁場冷却したときの温度依存性とを測定した。図3は、ZFCとFCとの温度と磁化との関係を示す図である。図3に示すように、FCとZFCとにおける磁化曲線に明確な差異が観測され、各々の磁化曲線が約300Kで交差していたことから、実施例1−1により得られた有機強磁性体のキュリー温度は300K以上であることが確認された。
よって、π共役系ラジカル高分子に金属カリウムを所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体は、少なくとも300Kで強磁性を有するといえる。
(ESRの測定)
内部構造中に存在する電子の状態を調べるため、比較例1−1の金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子と、実施例1−1により得られた有機強磁性体との各々のESRを測定した。ESRは、磁場中に設置したサンプルにマイクロ波を照射し、その吸収量を、磁場を掃引しながら測定することにより、サンプル中の不対電子の量と状態を評価する手法である。実施例1−1により得られた有機強磁性体及び比較例1−1により得られたπ共役系高分子を、各々、外径5mmの石英管に充填して分析用サンプルを作製した。ESRスペクトル測定装置(「Elexsys E580」、BRUKER社製)を用い、作製した分析用サンプルに外部磁場をかけてESRスペクトル(電子スピン共鳴スペクトル)を測定し、g値(分光学的分裂因子)、線幅(正負ピーク間距離)ΔHを求めた。なお、測定条件は以下の通りである。また、ESRのg値と線幅ΔHは、標準試料(Mn2+/MgO)を用いて決定した。
測定条件
測定温度:常温(約300K)
磁場掃引範囲:3373±50Gauss
マイクロ波:0.016mW、9.446GHz
(g値)
g値は、シグナル中心の磁場からMn2+で補正し求めた。
(線幅ΔH)
有機強磁性体のESR測定により、正ピークと、負ピークからなる一次微分型のスペクトルが得られる。この一次微分型で得られるESRスペクトルから観測される正負ピーク間隔を測定し、線幅ΔHを求めた。
実施例1−1により得られた有機強磁性体のg値は、2.00281であり、線幅ΔHは3.1Gaussであった。また、金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子のg値は2.0023であり、線幅ΔHは7.8Gaussであった。実施例1−1により得られた有機強磁性体は、金属カリウムを混合する前のπ共役系高分子と比較すると、線幅ΔHが減少した。これは、π共役系高分子に金属カリウムを混合したことにより、ラジカルが規則的に整列し、スピン・スピン相互作用が増加し、内部の原子の間でお互いのスピンの方向を揃えるように相互作用が働いたことによるものと考えられる。よって、実施例1−1により得られた有機強磁性体はラジカルが規則的に整列しているといえるので、強磁性を有していることが確認できたといえる。
(再現性)
上記と同様にして繰り返し有機強磁性体を作製した場合においても得られた有機強磁性体は、室温で高い強磁性を有していたことから、実施例1−1により得られた有機強磁性体は再現性良く製造できることが確認された。
このように、印加磁場を変化させた時の磁化曲線と、ZFCとFCとにおいて温度を変化させた時の磁化曲線と、ESRによる測定とから、π共役系ラジカル高分子に金属カリウムを所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体は、少なくとも300Kにおいて高い強磁性を有し、再現性良く製造できるといえる。
よって、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して熱処理して反応させることにより、室温において高い強磁性を有する有機強磁性体を再現性良く製造できることが判明した。
<実施例2>
[有機強磁性体の作成]
(実施例2−1)
まず、次のようにして有機強磁性体を作成した。フルオレン10g(60.2mmol)を、窒素気流下でフラスコに加え、次いで、エタノール300mlを加えて溶解した。次いで、フルオレンが溶解したエタノール溶液に、4−ブロモベンズアルデヒド11.13g(60.2mmol)と水酸化カリウム6.8g(120.03mmol)を加えて、2時間、還流を行った。なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過することにより、黄色を有する、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。この収率は81.5%であった。
また、得られた固体を、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)法により、1H−NMR(水素原子を観測核とした核磁気共鳴スペクトル)を測定し、1H−NMRスペクトルデータを得た。1H−NMRの測定は、次の装置および測定条件で行った。得られた固体のスペクトルデータを以下に示す。得られた固体の1H NMRスペクトルデータから、得られた固体が1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンであることを確認した。
1H−NMRの測定装置および測定条件)
測定装置:JEOL AL400(日本電子株式会社製)
測定核:1
内部基準の溶媒:テトラメチルシラン(TMS)
測定周波数:400MHz
積算回数:16回
測定温度:25℃
(スペクトルデータ)
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ= 7.75 (d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.69(d, 2H, J = 7.40 Hz), 7.57(d, 2H, J = 8.40 Hz), 7.55(s,1H), 7.50(d, 1H, J = 7.60), 7.48(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.37(t, 1H, J = 7.60 Hz), 7.31(t, 2H, J = 7.20 Hz), 7.20-7.10(m,3H), 7.06(t, 1H, J = 8.00 Hz).
次いで、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレン1g(0.3mmol)を、窒素気流下でフラスコに加えた後、酢酸11mlを加えて懸濁させ、懸濁液を得た。得られた懸濁液に臭素0.155mlを滴下して、1時間、攪拌した。その後、1時間、還流を行った。なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、淡黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過するとともに、少量のエタノールで洗浄することにより、淡黄色を有する、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。この収率は89.7%であった。
得られた固体を、NMR法により、1H−NMRを測定し、1H−NMRスペクトルデータを得た。1H−NMRの測定は、上述と同様の装置および測定条件で行った。得られた固体のスペクトルデータを以下に示す。
(スペクトルデータ)
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.81(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.71(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.619(s, 1H), 7.625(d, 2H, J = 8.00Hz), 7.43(t, 1H, J=7.20 Hz), 7.39-7.32(m, 3H), 7.25-7.21(m, 2H), 6.89(t, 1H, J = 7.6 Hz), 6.29(d, 1H, J = 8.00 Hz ).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレン4.21g(10.22mmol)を入れ、これにジメチルホルムアミド83mlを加えて溶解させ、溶解液を得た。その後、得られた溶解液にフルオレン1.7g(10.22mmol)を加えて溶解させた。次いで、この溶解液に、カリウムtert−ブトキシド4.59g(40.86mmol)を加えて、2時間、攪拌を行った後、1.8Mの塩酸溶液76.6mlを加えて、橙色を有する固体が析出した。次いで、この固体を濾過して、真空乾燥を行うとともに、エーテル及びヘキサンを使用して再結晶化させることにより、白色を有する、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。この収率は96.8%であった。
得られた化合物を、NMR法により、1H−NMRを測定し、1H−NMRスペクトルデータを得た。1H−NMRの測定は、上述と同様の装置および測定条件で行った。得られた化合物のスペクトルデータを以下に示す。
(スペクトルデータ)
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.73(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.65(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 1H, J = 7.20 Hz), 7.46(t, 1H, J = 7.60 Hz) 7.36-7.32(m, 3H), 7.27-7.21(m, 3H), 7.10(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.09(t, 1H, J = 8.00 Hz), 6.52(d, 2H, J = 8.40 Hz), 6.45(s, 1H), 5.96(d, 1H, J = 8.40 Hz).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペン1g(1.79mmol)とヨウ化銅50.37mg(0.264mmol)と3−メチル−1−ブチン−3−オール168mg(2.00mmol)と混合し、混合物を得た。得られた混合物を、テトラヒドロフラン10mlとトリエチルアミン5mlの混合液に溶解させた。次いで、この溶解液に、トリフェニルフォスフィン85.62mg(0.326mmol)とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド45.56mg(0.0663mmol)を加え48時間、攪拌した。その後、得られた混合液を濾過し、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開溶媒はジクロロメタン)を行うことにより、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。この収率は70.5%であった。
得られた化合物を、NMR法により、1H−NMRを測定し、1H−NMRスペクトルデータを得た。1H−NMRの測定は、上述と同様の装置および測定条件で行った。得られた化合物のスペクトルデータを以下に示す。
(スペクトルデータ)
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.80(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.67(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.58(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.49(d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.40(t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.35-7.28(m, 3H), 7.25-7.14(m, 3H), 6.77(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.74(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.53(d, 2H, J = 6.80 Hz), 6.39(s, 1H), 5.91(d, 1H, J = 8.00 Hz), 1.49(s, 6H).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペン3.53g(7.05mmol)を入れ、フラスコに、トルエン200mlを加えて溶解させ、溶解液を得た。次いで、得られた溶解液に水素化ナトリウム0.51g(21.25mmol)を加えて、3時間、還流を行った。還流後、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンにより分液を行った。次いで、有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、濃縮を行った。そして、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ジエチルエーテル:クロロホルム=4:1)を行うことにより、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。この収率は74.3%であった。
得られた化合物を、NMR法により、1H−NMRを測定し、1H−NMRスペクトルデータを得た。1H−NMRの測定は、上述と同様の装置および測定条件で行った。得られた化合物のスペクトルデータを以下に示す。
(スペクトルデータ)
1H NMR (400MHz, CDCl3) : δ= 8.40 (d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 8.40 Hz), 7.72(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.64(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.45(t, 1H, J =7.60 Hz), 7.36-7.30(m, 3H), 7.25-7.11(m, 3H), 7.10 (d, 2H, J = 8.40 Hz), 6.82(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.60(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.44(s, 1H), 5.94(d, 1H, J = 8.00 Hz), 2.99(s, 1H).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペン664.77mg(1.5mmol)とカリウムtert-ブトキシド0.253mg(2.25mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド28mlに溶解して、2時間、室温で撹拌した。次いで、蒸留水22mlにフェリシアン化カリ0.544mg(1.65mmol)を溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、1時間、室温で撹拌した。次いで、この反応溶液を濾過し、得られた固体を少量のジエチルエーテルで洗浄することにより、上記式(IV)で表される1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを得た。なお、得られた化合物を単結晶X線解析、磁化率及びESRスペクトルを下記装置及び測定条件で測定した結果、生成物が上記式(IV)で表される1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルであることを確認した。
(単結晶X線解析の測定装置および測定条件)
測定装置:CCD APEX(BRUKER社製)
(磁化率)
測定装置:SQUID磁束計(MPMS、QUANTUM DESIGN社製)
(ESRスペクトル)
測定装置:ESRスペクトル測定装置(「Elexsys E580」、BRUKER社製)
次いで、ドライアップを行ったシュレンク管に、上記式(IV)表される1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル300mg(0.678mmol)を入れ、シュレンク管に、トルエン4mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液にトリエチルアミン94.7μl(0.678mmol)を加えて、凍結乾燥を3回行った。次いで、トルエン1.5mlに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)3.13mg(6.78×10−6mol)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルが溶解した前記トルエン溶液に加えて、25℃の条件下で、24時間、攪拌を行った。攪拌終了後、12時間、放置し、反応液にメタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムを加えてクロロホルムに不溶なフラクションとして上記式(III)で表されるポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを得た。
次いで、クロロホルムに不溶なフラクションのポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル37.5mg(0.085mmol:モノマー基準)と金属カリウム23.5mg(0.601mmol)をガラス製反応管にいれ、10−4Paの真空度で封管した。この反応管を167℃のマッフル炉に入れて10日間放置して反応させた。その後、室温まで冷却した。これにより、有機強磁性体を作製した。なお、カリウムと反応前のポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルは暗赤色であったが、反応後は黒色に変化し、ガラス製反応管内には黒色粉末として存在していた。
(比較例2−1)
金属カリウムをポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルに混合せず、得られたポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを単独で用いた。
[有機強磁性体の評価]
得られた有機強磁性体の磁石との反応性と、300Kおよび10Kにおける磁化の磁場依存性と、磁場冷却したときの温度依存性とを求め、有機強磁性体の磁気特性を評価した。
(磁石との反応性)
ガラス封管内の黒色粉末をガラス封管の外部に近づけたネオジウム・鉄・ボロン磁石に反応して引きつけられることを観察した。このことから、実施例2−1により得られた有機強磁性体である黒色粉末は強磁性体であることが明らかとなった。
(300Kおよび10Kにおける磁化の磁場依存性)
黒色粉末を、SQUISD磁束計(QUANTUM DESIGN MPMS5S SQUID、QUANTUM DESIGN社製)を用いて、磁化−磁界曲線(MHカーブ)を測定した。なお、実施例2−1により得られた黒色粉末は、300Kおよび10Kの温度の他に、400Kでも測定を行った。図4に、実施例2−1により得られた黒色粉末の400K、300Kおよび10Kの温度におけるそれぞれの磁化を測定した結果を示す。図5に、比較例2−1により得られたポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル単独の300Kおよび10Kの温度におけるそれぞれの磁化を測定した結果を示す。なお、SQUID測定には試料粉末をNMR管(パイレックスガラス製)に少量のヘリウム存在下で減圧封管したものを用いた。実際の測定には、この試料の入った封管NMR管の下に、上端が開いている空でほぼ同じ長さのガラスブランクNMR管を合わせてSQUID測定用ストロー内に固定して、これをSQUID用サンプルとした。従って、測定された磁化には、封管NMR管の底部ガラスの反磁性とこのガラス中の磁性不純物の寄与が含まれている。図4に示すように、10K、300Kおよび400Kの飽和磁化はそれぞれ0.4emu/g、0.2emu/g、0.17emu/gと概ね見積もることができた。
図5に示すように、比較例2−1で得られた試料中の極微量不純物によると考えられる強磁性が認められるが、図4と比較すれば明らかのように、比較例2−1で得られた試料は常磁性を示した。なお、300Kの測定では、反磁性を示しているが、これは粉末試料の常磁性より、試料ホルダーとして用いたNMR管底部のガラスによる反磁性が大きくなった結果と考えられる。
よって、実施例2−1により得られた上記化式(III)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルは、400K、300Kおよび10Kにおいて強い強磁性を有しているといえる。一方、比較例2−1により得られたポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルが単独では、300Kおよび10Kにおいては強磁性は観測されなかった。
よって、上記化式(III)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルに金属カリウムを所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体は、400K、300Kおよび10Kにおいて強い強磁性を有するといえる。
(ESRの測定)
内部構造中に存在する電子の状態を調べるため、実施例1と同様、実施例2−1の金属カリウムを添加する前のπ共役系高分子と、実施例2−1により得られた有機強磁性体及び比較例2−1により得られたπ共役系高分子を、EPR分光器(「Elexsys E580」、BRUKER社製)とESR/EPR測定装置(「ESR900クライオスタット」、BRUKER社製)を用いてESRスペクトルを測定し、g値、線幅ΔHを求めた。なお、測定条件は以下の通りである。また、ESRのg値と線幅ΔHは、標準試料(Mn2+/MgO)を用いて決定した。
測定条件
測定温度:40K、80K、160K、295K
中心磁場:3370G付近
磁場掃引範囲:500Gauss
変調:100kHz、1G
マイクロ波:9.44GHz、0.025mW
(g値)
g値は、シグナル中心の磁場からMn2+で補正し求めた。
(線幅ΔH)
有機強磁性体のESR測定により、正ピークと、負ピークからなる一次微分型のスペクトルが得られる。この一次微分型で得られるESRスペクトルから観測される正負ピーク間隔を測定し、線幅ΔHを求めた。
実施例2−1により得られた有機強磁性体の各温度で3370G付近に幅が狭いピークと幅が広いピークが観察された。実施例2−1により得られた有機強磁性体の40Kにおけるg値は、2.1603であり、線幅ΔHは983Gaussであり、80Kにおけるg値は、2.0139であり、線幅ΔHは356Gaussであり、160Kにおけるg値は、2.0050であり、線幅ΔHは229Gaussであり、295Kにおけるg値は、2.0018であり、線幅ΔHは117Gaussであった。この幅が狭いピークは、π共役系高分子に金属カリウムを混合したことにより、カリウム添加によりポリマー中に生成したポーラロン(ラジカルアニオン)と考えられる。これにより、ラジカルが規則的に整列し、スピン・スピン相互作用が増加し、内部の原子の間でお互いのスピンの方向を揃えるように相互作用が働き、強磁性を引き起こしているものと考えられる。よって、実施例2−1により得られた有機強磁性体はラジカルが規則的に整列しているといえるので、強磁性を有していることが確認できたといえる。
一方、比較例2−1により得られたπ共役系高分子では、実施例2−1により得られた有機強磁性体のような温度に依存してg値と線幅が変化する幅が広いピークは観測されず、3370G付近に幅が狭いピークのみが観察された。この幅が狭いピークは、カリウムを添加する前のポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル単独のピークであるといえる。
(再現性)
上記と同様にして繰り返し有機強磁性体を作製した場合においても得られた有機強磁性体は、室温で高い強磁性を有していたことから、実施例2−1により得られた有機強磁性体は再現性良く製造できることが確認された。
以上のように、本発明に係る有機強磁性体は、例えば、磁気記録材料、電磁波遮断材料、透明磁性薄膜材料、モータなどの磁石、トランスのコア、磁性流体、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)、静電トナー、黒色塗料、研磨剤の高配向剤、磁気テープの記録状態を光学的パターンに変換する現像液等に用いられる磁性材料として有用である。
【0003】
強磁性体の製造方法が求められている。
[0011]
本発明は、前記問題に鑑み、室温において高い強磁性を有し、且つ再現性良く製造できる有機強磁性体及びその製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0012]
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは有機強磁性体について鋭意研究をした。その結果、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して反応させることにより得られる有機強磁性体の磁性の挙動、再現性に着目した。π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を混合して反応させることにより得られる有機強磁性体の室温における磁気特性と、その再現性を解明した。この得られた知見に基づいて、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上を所定量混合して熱処理して、π共役系ラジカル構造を含む高分子化合物により形成される有機強磁性体を得ることで、室温において高い強磁性を有する有機強磁性体を、再現性良く製造できることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
[0013]
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを反応させて得られ、強磁性を有し、前記π共役系ラジカル高分子において、ラジカルは、側鎖に存在することを特徴とする有機強磁性体である。
第2の発明は、第1の発明において、前記π共役系高分子は、式(I)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする磁性材料である。
【0004】
Figure 2013022046
第3の発明は、第1の発明において、前記π共役系ラジカル高分子は、式(II)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする磁性材料である。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
第4の発明は、第1の発明において、前記π共役系ラジカル高分子は、式(III)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする磁性材料である。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
[0014]
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、前記アルカリ金属が、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
[0015]
第6の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、前記アルカリ土類金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
[0016]
第7の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、前記13族元素が、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体である。
[0017]
第8の発明は、第1乃至第7の何れか1つの発明の有機強磁性体を含むことを特徴とする磁性薄膜である。
[0018]
第9の発明は、π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理し、前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上の水素元素の少なくとも一部を、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上で置換して、π共役系ラジカル構造を含み、強磁性を有する高分子化合物を形成し、前記π共役系ラジカル高分子において、ラジカルは、側鎖に存在することを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
[0019]
第10の発明は、第9の発明において、前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上を、モノマー単位のモル比で1.5倍以上混合することを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
第11の発明は、第9または第10の発明において、前記π共役系高分子は、式(I)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
Figure 2013022046
第12の発明は、第9または第10の発明において、前記π共役系ラジカル高分子は、式(II)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
第13の発明は、第9または第10の発明において、前記π共役系ラジカル高分子は、式(III)で表される繰り返し単位を構成成分として含むことを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
Figure 2013022046
(式中、黒丸はラジカルを表わす)
[0020]
第14の発明は、第9乃至第13の何れか1つの発明において、前記アルカリ金属として、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
[0021]
第15の発明は、第9乃至第13の何れか1つの発明において、前記アルカリ土類金属として、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法である。
[0022]
第16の発明は、第9乃至第13の何れか1つの発明において、前記13族元素として、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つを用いることを特

Claims (10)

  1. π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを反応させて得られ、
    強磁性を有することを特徴とする有機強磁性体。
  2. 請求項1において、
    前記アルカリ金属が、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体。
  3. 請求項1又は2において、
    前記アルカリ土類金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体。
  4. 請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
    前記13族元素が、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つであることを特徴とする有機強磁性体。
  5. 請求項1乃至4の何れか1つの有機強磁性体を含むことを特徴とする磁性材料。
  6. π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上とを混合して熱処理し、
    前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上の水素元素の少なくとも一部を、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上で置換して、π共役系ラジカル構造を含み、強磁性を有する高分子化合物を形成することを特徴とする有機強磁性体の製造方法。
  7. 請求項6において、
    前記π共役系高分子及びπ共役系ラジカル高分子からなる群より選ばれる1種以上に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素からなる群より選ばれる1種以上を、モノマー単位のモル比で1.5倍以上混合することを特徴とする有機強磁性体の製造方法。
  8. 請求項6又は7において、
    前記アルカリ金属として、Li、Na、K、Rb、Csの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法。
  9. 請求項6乃至8の何れか1つにおいて、
    前記アルカリ土類金属として、Be、Mg、Ca、Sr、Baの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法。
  10. 請求項6乃至9の何れか1つにおいて、
    前記13族元素として、B、Al、Ga、In、TIの少なくとも1つを用いることを特徴とする有機強磁性体の製造方法。
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