JPWO2012172767A1 - 分光感度測定装置、および、分光感度測定方法 - Google Patents
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Abstract
分光感度測定装置は、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定し、前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部とを備える。そのため、このような分光感度測定装置は、分光感度を測定している間に照射光が安定せずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流における分光感度を求めることができる。
Description
本発明は、太陽電池の分光感度を求めるための装置および方法に関する。
近年、太陽電池は広く普及し、メーカ間、製品間の競争が激しくなっている。また、その組成も、単結晶シリコンから、アモルファスシリコン、薄膜シリコン、有機化合物等の多くの種類が開発されている。
太陽電池は、材料及び構造に起因する固有の分光感度特性を有する。従って、その光電変換特性は、性能評価用の照射光の分光放射照度に大きく依存することになる。そこで、これらの太陽電池の光電変換効率を公正に評価するために、評価方法が、IEC60904やJIS(C8905〜C8991)で定義されている。太陽電池の性能測定は、国際的に協定された標準試験条件の下で、基準太陽光の分光放射照度(=E(λ))に近似させた分光放射照度L(λ)を持つソーラーシミュレータを用いて屋内で実施されることが多い。
このソーラーシミュレータの分光放射照度は、基準太陽光と完全には一致しておらず、異なるメーカ間ではもちろん、同じメーカにおいても機差が存在している。そのため、分光感度特性が同じ太陽電池であっても、異なるソーラーシミュレータで測定すると、太陽電池の発電量が異なってしまう。図2は、前記の基準太陽光の分光放射照度E(λ)を示すものであり、IEC60904に示されたものである。また、図3には、ソーラーシミュレータの分光放射照度L(λ)の一例を示す。図2において、横軸は、nm単位で表す波長を示し、縦軸は、μW/cm2/nm単位で表す照度を示す。また、図3において、横軸はnm単位で表す波長を示し、縦軸は、μW/cm2/nm単位で表す照度を示す。
そこで、測定者は、例えば、産業技術総合技術研究所(=国際的に統一された基準太陽光スペクトル等を持っている国立またはそれに準じる機関)等の公的機関に、サンプルとなる太陽電池を送付して測定を依頼する。それに応じてこれらの公的機関は、所有している限りなく基準太陽光に近い高近似のソーラーシミュレータを用いることによって自然太陽光AM1.5、100mW/cm2におけるそのサンプルの短絡電流ISTCを求め、その測定値(=A)を記載して測定者に返送する。
これを受けて測定者は、返送されて来たサンプルを、以降、自社の基準セルとして、ソーラーシミュレータの光量調整用に使用する。すなわち、測定者は、ソーラーシミュレータの照射光を基準セルに照射し、その短絡電流Iが前記測定値Aとなるように、ソーラーシミュレータの光量を調整する。そして、実際に測定すべき(検査対象の製品の)太陽電池の特性を測定する。これは、前述のように基準太陽光の分光スペクトルを厳密に再現することは困難であるが、可能な限り、各社のソーラーシミュレータをそれに合せ込むための手法である。
ところが、上述の手法では、基準セルを用いてソーラーシミュレータの校正を行う場合、事前に測定者がサンプルを作成して産業技術総合技術研究所等の公的機関に送付し、公的機関によって測定された短絡電流の測定値とサンプルとを受け取る必要がある。そのことは、手間や、時間、費用がかかってしまう。しかも、ソーラーシミュレータの校正は一度だけ行えばよいのでなく、測定すべき太陽電池の分光感度が変わる都度、新たに基準セルを作成して校正をやり直す必要がある。従って、ソーラーシミュレータの校正にかかる時間や費用は膨大なものとなっている。
そこで、ソーラーシミュレータの光量調整の際、基準セルの標準試験条件の光による短絡電流を値付けるために、すなわち、太陽電池の標準試験条件の光による短絡電流ISTCを算出する方法として、以下の方法が提案されている(非特許文献1参照)。
太陽電池の分光感度(微分分光応答)S(I,λ)と、基準セルの標準試験条件の分光放射照度EAM1.5 λ(λ)とから求めたs(I)=∫S(I,λ)・{EAM1.5 λ(λ)dλ/∫EAM1.5 λ(λ')dλ'}を用いて、以下の式Aを満足するISTCが、太陽電池の標準試験条件の光による短絡電流となる。
ESTC=∫0 ISTC 1/s(I)dI (ESTC=∫EAM1.5 λ(λ')dλ') ・・・・(式A)
J.Metzdorf"Calibrationof solar cells: The differential spectral responsivity method" Applied Optics 1 May 1987 Vol.26 No.9 P.1701
ここで、太陽電池は、図4に示すように、太陽電池に照射される照射強度が増えて、短絡電流が増加するに従い、長波長の分光感度が増加する。この様子を、図5に示す。参照符号F0で示されるグラフは、図4を模式化したグラフであり、参照符号F1、F2、F3等で示されるグラフはそれぞれ、図4の照射強度毎の分光感度を示すグラフである。図4において、横軸に、nm単位で表す波長を示し、縦軸に、A/Wで表す変換効率を示す。これらのF1、F2、F3等のグラフを、照射強度を横軸に、短絡電流を縦軸に変換すると、照射強度がΔEだけ変化した場合に短絡電流がΔI変化するグラフとなる。
ここで、線形特性の太陽電池の場合、短絡電流の変化は照射強度に依存せずに一定の値となるため、照射強度と短絡電流との関係を示すグラフは直線になる。しかし、太陽電池が非線形特性を持つ場合には、短絡電流の変化は照射強度により異なることになるため、照射強度と短絡電流との関係を示すグラフは、参照符号Faで示すような曲線のグラフになる。この例では、照射光エネルギーが増えるに従い、長波長側の感度が増えて、ΔI/ΔEの値が大きくなっている。
従って、上述の技術では、測定者は、非常に弱いバイアス光から略1.5・ESTC相当の強いバイアス光範囲で細かくバイアス光強度を変えて、そのときの分光感度S(Ii,λ) (i=0,1,2,・・・,N)を測定し、上記(式A)を満足するISTCを求めなければならない。
ここで、分光感度S(Ii,λ)の測定方法は、短絡電流Iiが測定されるバイアス光の照射を行いつつ、順次異なる単色光(実際には、数nmの狭波長帯域を持つ波長の光)を照射し、太陽電池からの電流を逐次求めるものである。そして、分光感度S(Ii,λ)は、太陽電池の特性に応じて所定の広い波長範囲で求める必要がある。例えば、CIS型太陽電池は、300nm〜1300nmの範囲で光感度を持つ。
従って、ある光強度のバイアス光を照射しつつ、所定の広い波長範囲において順次異なる単色光を照射して分光感度S(Ii,λ)を測定している間、そのバイアス光は安定している必要がある。
しかし、非常に弱いバイアス光から略1.5・ESTC相当の強いバイアス光範囲で細かくバイアス光強度を変えて照射し、且つ、一定期間に亘り安定したバイアス光を照射する為には、バイアス光源の駆動制御が複雑とならざるを得ず、装置が高価になってしまう。
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、分光感度を測定している間にバイアス光が安定せずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流Iiにおける分光感度S(Ii,λ)を求めることができる分光感度測定装置及び方法を提供することを目的とする。
本発明に係る分光感度測定装置は、測定対象の太陽電池に、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光を個別に照射することが可能な光源部と、前記複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定部と、前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部とを備える。そのため、このような分光感度測定装置は、分光感度を測定している間に照射光が安定せずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流における分光感度を求めることができる。
上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載と添付図面から明らかになるであろう。
<実施形態>
以下、本発明に係る実施の一形態である分光感度測定装置を説明する。
以下、本発明に係る実施の一形態である分光感度測定装置を説明する。
実施形態の分光感度測定装置は、例えば、上記(式A)を演算する際に用いるような分光感度S(Ii,λ)を、分光感度測定中のバイアス光の時間変動を考慮して求めるものである。すなわち、実際にはバイアス光が安定していなくても、安定している場合に測定される分光感度S(Ii,λ)を求めることができる。
<構成>
図1は、分光感度測定装置100の構成を示すブロック図である。
図1は、分光感度測定装置100の構成を示すブロック図である。
この分光感度測定装置100は、バイアスの光の照射を行いつつ、単色光(実際には、数nmの狭波長帯域を持つ波長の光)を照射し、太陽電池11からの電流を逐次求めることで分光感度を測定し、EAM1.5 λ(λ)の光による太陽電池11の分光感度を算出するものである。
分光感度測定装置100は、例えば、図1に示すように、光源2、分光光源駆動制御部1、光学系3a、光学系3b、光学系3c、光学系3d、モノクロメータ4、モノクロメータ制御部5、サーボモータ6、光ブレード6a、チョッピングモータ駆動制御部7、ハーフミラー20、ハーフミラー21、光源9、バイアス光源駆動制御部8、放射照度測定部10、太陽電池11、ロックインアンプ12、DCアンプ13、DCアンプ14、演算制御部15、データ入出力部16、データ記憶部17、設定部18、及び、表示部19を備える。
光源2は、太陽電池11に光を照射するキセノンランプ等であり、分光光源駆動制御部1は、光源2の出力光の強度を制御する装置である。光学系3a、光学系3b、光学系3c、光学系3dは、その用途に応じて光を集光、又は、コリメート(平行光化)させるためのレンズ等の光学素子である。
モノクロメータ4は、広範囲の波長の光を空間的に分散させ、それをスリット等で狭い範囲の波長のみを取り出す分光器である。モノクロメータ4は、例えば、入射スリット、第1反射鏡、回折格子、第2反射鏡、及び、出射スリットを備えて構成され、入射スリットを介して入射された入射光束を第1反射鏡で回折格子へ反射し、回折格子で回折された入射光束の回折光を第2反射鏡で出射スリットへ反射する装置である。このような構成のモノクロメータ4では、回折格子等を回転させてスリットの位置に到達する光の波長を選択させることで、所望の範囲の波長のみが取り出される。モノクロメータ制御部5は、前記所望する範囲の波長を取り出すようにモノクロメータ4を制御する機能部である。
光ブレード6aは、所定の幅で径方向に延びる切欠き部が周方向に一定間隔に並んでいる円板状の部材であり、サーボモータ6は、サーボ機構において光ブレード6aをその中心を回転軸として回転させるモータである。チョッピングモータ駆動制御部7は、所定周期Tのパルス光を生成すべく、光ブレード6aが所望の速度で回転するようにサーボモータ6を制御する装置である。
ハーフミラー20、及び、ハーフミラー21は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する光学素子であり、入射した光を2つに分配する光学素子である。光源9は、太陽電池11に光を照射するキセノンランプ等であり、バイアス光源駆動制御部8は、光源9の出力光の強度を制御する装置である。
放射照度測定部10は、ハーフミラー20による反射光(モノクロメータ4から射出された単色光)の放射照度を測定する装置であり、DCアンプ14は、放射照度測定部10で測定された、図5で示す放射照度ΔEを出力する。
太陽電池11は、測定対象の太陽電池である。
光源2から射出された光は、光学系3aを介してモノクロメータ4に入射し、モノクロメータ4で所定波長の光が切り出されて、モノクロメータ4から単色光が射出される。モノクロメータ4から射出された単色光は、光学系3bを介してハーフミラー20に入射し、入射した単色光の一部が反射されて放射照度測定部10に入射する。残余の単色光は透過して、光ブレード6aに入射する。光ブレード6aに入射した単色光は、サーボモータ6によって回転する光ブレード6aの周方向に並ぶ切欠き部によって透過又は遮光されることで所定周期TでON/OFFされてパルス化され、光学系3cを介し、ハーフミラー21を介して太陽電池11に入射する。
一方、光源9から射出された光は、光学系3dを介してハーフミラー21に入射し、ハーフミラー21で反射されたバイアス光は太陽電池11に入射する。すなわち、光源9から射出されたバイアス光は、モノクロメータ4から射出された単色光パルスと重畳されて、太陽電池11に入射する。
ロックインアンプ12、及び、DCアンプ13は太陽電池11の光電流を取り出す装置である。ここで、図6は、太陽電池11が出力する光電流のグラフの例を示す図である。太陽電池11には、後述のように、光源9から射出された光(バイアス光)と、光ブレード6aによって所定周期(周期T)でON/OFFされたパルスの単色光(単色光パルス、変調光)とが重畳された光が照射される。そのため、このグラフで示すように、太陽電池11が出力する光電流には、バイアス光による光電流と、所定周期Tで入射される単色光パルスによる光電流とが含まれている。ロックインアンプ12は、図6に示す単色光パルスによる光電流を所定周期Tと同期することで検出し、図5で示すΔI、すなわち、照射強度がΔE変化した場合の短絡電流の変化ΔIを出力する。また、DCアンプ13は、図4に示すバイアス光による光電流、すなわち、図5に示す参照符号Faのグラフの縦軸で示す太陽電池11の短絡電流の値を出力する。
演算制御部15は、ロックインアンプ12から取得したΔIと、DCアンプ14から取得したΔEと、DCアンプ13から取得した短絡電流Iとから、太陽電池11のEAM1.5 λ(λ)の光による太陽電池11の分光感度を算出し、分光光源駆動制御部1等を制御して分光感度測定装置100全体を制御する。分光感度の算出方法は、<分光感度の算出方法>の項で説明する。
データ入出力部16は、外部の機器とデータをやり取りするための、USB(Universal Serial Bus)ポート等のいわゆる外部インタフェースであり、データ記憶部17は、その用途に応じて、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、ROM(Read Only Memory)や書換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子、ハードディスク等により構成され、演算制御部15が動作するのに必要なプログラムや、データを記憶している。
設定部18は、分光感度測定処理を開始するコマンドや、処理を行う上で必要な分光光源駆動制御部1等の制御部に対するパラメータ等の各種データを、分光感度測定装置100に入力する機器である。例えば、キーボードやマウス等である。表示部19は、設定部18から入力されたコマンドやデータ、及び、演算制御部15が算出した分光感度値等を出力(提示)する機器である。例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、及び、プラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
分光感度測定装置100の演算制御部15、データ入出力部16、データ記憶部17、設定部18、及び、表示部19等は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリおよびその周辺回路を備えるコンピュータによって構成される。前記マイクロプロセッサは、いわゆるCPU(Central Processing Unit)等であり、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、分光感度測定装置100は、機能的に、演算制御部15〜表示部19等を備えることになる。
<分光感度の算出方法>
本実施形態での分光感度の算出方法を説明する。
本実施形態での分光感度の算出方法を説明する。
分光感度測定装置100は、所定の波長λjにおいて、一連の分光感度St(Iij,λj) (i=0,1,2,・・・,N)を測定する。バイアス光が不安定な場合には、Iijは変動していることになる。実施形態では、これら測定した一連の分光感度St(Iij,λj)から、分光感度測定装置100は、所望の短絡電流Iiにおける値S(Ii,λj)を推定する。そして、所望の広い波長範囲において、波長ごとに短絡電流Iiにおける値S(Ii,λj)を推定することで、その波長範囲における短絡電流Iiの分光感度S(Ii,λ)を求めることができる。
より詳細には、分光感度測定装置100は、ある波長λiにおける、相異なる複数の短絡電流Iijと、それぞれの短絡電流Iijが測定されるときの分光感度St(Iij,λj)とから、すなわち、
(Iij, St(Iij,λj)) (i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
から、補間多項式fj(I,λj) (j=0,1,2,・・・,M)を求め、所望の短絡電流Iiにおけるfj(Ii,λj)を算出し、分光感度S(Ii,λj)とする。
(Iij, St(Iij,λj)) (i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
から、補間多項式fj(I,λj) (j=0,1,2,・・・,M)を求め、所望の短絡電流Iiにおけるfj(Ii,λj)を算出し、分光感度S(Ii,λj)とする。
図7を用いて、分光感度の算出方法を説明する。図7(a)は、波長λjと、短絡電流Iiと、分光感度S(Ii,λj)とをそれぞれ互いに直交する各軸に割り当てたグラフである。分光感度測定装置100は、波長λ0からλMへと、波長(所定の狭波長帯域)を変えながら、所望する波長範囲を走査(スキャン)して、分光感度を、順に測定していくものとする。また、図7(b)は、短絡電流I0のときの分光感度S(I0,λ)を示す図である。図7のグラフにおいて、短絡電流Iiを示す破線は、バイアス光が安定せずに、波長λ0からλMへと順に分光感度を測定していくにつれて最初に設定した短絡電流が徐々に変動している様子を示し、実線は、最初に設定した短絡電流が変動しない場合を示す。
ここで、波長λ2において、短絡電流I0、I1、I2のときの分光感度を考える。短絡電流I0は、波長をかえながら分光感度を測定している間に、破線で示すように徐々に変動してI02になっているものとする。同様に、短絡電流I1は、I12になり、短絡電流I2は、I22になっているものとする。
短絡電流I02、I12、I22のときのそれぞれの分光感度は、St(I02,λ2)、St(I12,λ2)、St(I22,λ2)となる。分光感度測定装置100は、ここで、(I02, St(I02,λ2))、(I12, St(I12,λ2))、(I22, St(I22,λ2))から補間多項式f2(I,λ2)を求める。そして、分光感度測定装置100は、短絡電流I0のときの分光感度S(I0,λ2)を、補間多項式f2(I0,λ2)から求めることができる。
このように、分光感度測定装置100は、波長λ毎に、fj(I0,λj) (j=0,1,2,・・・,M)を求め、短絡電流I0のときの分光感度S(I0,λj)を求めれば、図7(b)に示すように、短絡電流I0のときの分光感度S(I0,λ)を求めることができる。すなわち、波長ごとにIijが変化しても、すなわちバイアス光が安定していなくても、所定の短絡電流Iiにおける値S(Ii,λj)を求めることができるので、分光感度測定装置100は、所望の波長域に亘って、一定の短絡電流Iiにおける分光感度S(Ii,λ)を求めることができることになる。
以下、より詳細に説明する。
(Ii j, St(Ii j,λj)), (Ii+1 j, St(Ii+1 j,λj)), (Ii+2 j, St(Ii+2 j,λj))を通る以下の2次補間式の、係数αij, βij, γijが算出される。
fj(I,λj)=αij・I2 +βij・I +γij (Iは、Ii j, Ii+1 j, Ii+2 jの近傍のIである。)
(i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
fj(I,λj)のIにIiが代入され
S(Ii,λj)=fj(Ii,λj) (i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
とされることでS(Ii,λj)を推定される。
fj(I,λj)=αij・I2 +βij・I +γij (Iは、Ii j, Ii+1 j, Ii+2 jの近傍のIである。)
(i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
fj(I,λj)のIにIiが代入され
S(Ii,λj)=fj(Ii,λj) (i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
とされることでS(Ii,λj)を推定される。
尚、短絡電流Iiと分光感度S(Ii,λj)を用いた補間式は、上記の2次補間式に限定するものではない。より簡便には、
ΔIij=Iij -Ii
(i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
が算出され、1次近似式
S(Ii,λj)=St(Iij,λj)-ΔIij・{∂S(Iij,λj)/∂I}
において、
∂S(Iij,λj)/∂Iを{S(Iij,λj)-S(Ii+1 j,λj)}/(Iij-Ii+1 j)で近似することによりS(Ii,λj)を推定してもよい。
ΔIij=Iij -Ii
(i=0,1,2,・・・,N (j=0,1,2,・・・,M))
が算出され、1次近似式
S(Ii,λj)=St(Iij,λj)-ΔIij・{∂S(Iij,λj)/∂I}
において、
∂S(Iij,λj)/∂Iを{S(Iij,λj)-S(Ii+1 j,λj)}/(Iij-Ii+1 j)で近似することによりS(Ii,λj)を推定してもよい。
<動作>
図8は、分光感度測定装置100の分光感度測定処理を示すフローチャートである。実施形態では、所望の波長範囲をM+1個の波長(狭波長幅)において、N+1個の短絡電流における分光感度を測定する。そして、N+1個の短絡電流それぞれにおける分光感度S(I,λ)を算出する(図7(a)参照)。また、M+1個の各波長λj (j=0,1,2,・・・,M)、及び、N+1個の短絡電流Ii (i=0,1,2,・・・,N)は、予め決められているものとする。
図8は、分光感度測定装置100の分光感度測定処理を示すフローチャートである。実施形態では、所望の波長範囲をM+1個の波長(狭波長幅)において、N+1個の短絡電流における分光感度を測定する。そして、N+1個の短絡電流それぞれにおける分光感度S(I,λ)を算出する(図7(a)参照)。また、M+1個の各波長λj (j=0,1,2,・・・,M)、及び、N+1個の短絡電流Ii (i=0,1,2,・・・,N)は、予め決められているものとする。
まず、光源9から照射されるバイアス光の放射照度Ebが略標準試験条件の光EAM1.5 λ(λ)になるように、光源9の制御パラメータの値β0が求められ、この求められた制御パラメータの値β0がバイアス光源駆動制御部8に設定される。ここでいう光源9の制御パラメータとは光源9の電流、電圧など光源9の光量を制御するパラメータである。
測定対象の太陽電池11がセットされ、測定開始コマンドが設定部18から入力されると、演算制御部15は、分光光源駆動制御部1及びバイアス光源駆動制御部8を制御して光源2及び光源9に光照射を開始させ、短絡電流Iのインデックスiに0(ゼロ)を設定する(ステップS10)。
次に、太陽電池11の短絡電流、すなわち、DCアンプ13から出力される短絡電流が短絡電流Ii (i=0)とほぼ等しくなるように、バイアス光が調整される(ステップS11)。
そして、演算制御部15は、波長λのインデックスjに0(ゼロ)を設定し、(ステップS12)、再度、波長λj (j=0)のときの短絡電流Iij (i=0,j=0)をDCアンプ13から取得する(ステップS13)。そして、演算制御部15は、モノクロメータ制御部5を制御して、モノクロメータ4から波長λj (j=0)の単色光(詳細には波長帯域Δλjの準単色光)を出射させる(ステップS14)。尚、ステップS13とステップS14は、順番が逆でもよい。
次に、演算制御部15は、放射照度測定部10が測定した放射照度ΔE(λj)を、DCアンプ14を介して取得し(ステップS15)、ロックインアンプ12から短絡電流の変化ΔI(λj)を取得する(ステップS16)。
そして、演算制御部15は、波長λjにおける短絡電流Iijの分光感度St(Iij,λj)=ΔI(λj)/ΔE(λj) (i=0,j=0)を算出する(ステップS17)。
ここで、jがM以下である場合、すなわち、所望の波長範囲の分光感度を測定していない場合は(ステップS18:N)、演算制御部15は、jに1を加算して(ステップS19)、波長λj (j=1)のときの短絡電流Iij (i=0,j=1)をDCアンプ13から取得する(ステップS13)。そして、演算制御部15は、モノクロメータ4から波長λj (j=1)の単色光を出射させ(ステップS14)、放射照度ΔE(λj)、ΔI(λj)を取得し(ステップS15、S16)、波長λjにおける短絡電流Iijの分光感度St(Iij,λj) (i=0,j=1)を算出する(ステップS17)。
このように、jがM以上になるまで、すなわち、短絡電流Ii (i=0)における所望の波長範囲での分光感度を測定するまで(ステップS18:Y)、ステップS13〜ステップS19の処理が繰り返される。このステップS13〜ステップS19の処理を繰り返している間、光源9から照射されるバイアス光の安定性が良くない場合、I0 jは一定ではないことになる。
短絡電流Ii (i=0)における所望の波長範囲での分光感度の測定が終了すると(ステップS18:Y)、演算制御部15は、i=0であるので(ステップS20:N)、iに1を加算して(ステップS21)、太陽電池11の短絡電流が短絡電流Ii (i=1)とほぼ等しくなるように、バイアス光を調整する(ステップS11)。そして、jに0を設定する(ステップS12)。そして、短絡電流Ii (i=1)において、波長λj (j=0)から測定を開始する。
演算制御部15は、ステップS13〜ステップS19の処理を繰り返し、短絡電流Ii (i=1)における所望の波長範囲での分光感度を測定する(ステップS18:Y)。
ステップS20において、演算制御部15は、iがN以上になるまで(ステップS20:Y)、ステップS11〜ステップS20の処理を繰り返す。すなわち、各波長λj (j=0,1,2,・・・,M)の各短絡電流Ii (i=0,1,2,・・・,N)の分光感度が測定されることになる。
ステップS20において、演算制御部15は、iがN以上になったら(ステップS20:Y)、jに0を設定し(ステップS22)、波長λj (j=0)における、補間多項式f(I,λ0)を求め、各短絡電流Ii (i=0,1,2,・・・,N)の分光感度S(Ii,λ0)を算出する(ステップS23)。
次に、演算制御部15は、jに1を加算し(ステップS25)、波長λj (j=1)における、補間多項式f(I,λ1)を求め、各短絡電流Ii (i=0,1,2,・・・,N)の分光感度S(Ii,λ0)を算出する(ステップS23)。演算制御部15は、jがM以上になるまで(ステップS24:Y)、ステップS23〜S25までの処理を繰り返す。
演算制御部15は、M+1個の波長(j=0,1,2,・・・,M)において、N+1個の短絡電流Ii(i=0,1,2,・・・,N)における分光感度S(Ii,λj)を算出すると(ステップS24:Y)、分光感度測定処理を終了する。
以上のように、波長ごとの分光感度を測定している間に短絡電流が変化してしまったとても、安定しているとした場合のIiにおけるS(Ii,λj)が求められたことになる。従って、∫S(Ii,λj)・{EAM1.5 λ(λ)/ESTC}dλを用いてEAM1.5 λ(λ)のときの短絡電流を正しく求めることが可能となる。
尚、EAM1.5 λ(λ)に限定されるものではなく、任意の分光放射照度Eλ(λ)を仮想的に太陽電池に照射したときの、短絡電流を算出することも可能である。
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に示す。
一態様に係る分光感度測定装置は、測定対象の太陽電池に、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光を個別に照射することが可能な光源部と、前記複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定部と、前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部とを備える。
また、他の一態様に係る分光感度測定装置は、測定対象の太陽電池に、所定の波長範囲で狭波長帯域の光の波長を変えることによって走査し、前記狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数のバイアス光を個別に照射することが可能な光源部と、前記複数のバイアス光のうちのいずれかのバイアス光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定部と、前記走査における狭波長帯域の光のうちのいずれかの狭波長範囲の光を重畳して、光量がそれぞれ異なるバイアス光を個別に照射したときに、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部とを備える。
また、他の一態様では、上述の分光感度測定装置において、前記分光感度算出部は、前記測定部が測定した短絡電流と分光感度とに基づいた補間式を用いて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する。
そして、他の一態様に係る分光感度測定方法は、測定対象の太陽電池に、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光を個別に照射することが可能な光源部を備える分光感度測定装置で用いられる分光感度測定方法であって、前記複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定ステップと、前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定ステップで測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出ステップとを備える。
また、他の一態様に係る分光感度測定方法は、太陽電池の分光感度測定方法であって、測定対象の太陽電池に、所定の波長範囲で狭波長帯域の光の波長を変えることによって走査し、前記狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数のバイアス光を個別に照射する照射ステップと、前記複数のバイアス光のうちのいずれかのバイアス光を受けたときの、前記太陽電池のそれぞれの短絡電流とそれぞれの分光感度とを測定する測定ステップと、前記走査における狭波長帯域の光のうちのいずれかの狭波長範囲の光を重畳して、光量がそれぞれ異なるバイアス光を個別に照射したときに、前記測定ステップで測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出ステップとを備える。
このような構成の分光感度測定装置及び分光感度測定方法では、所定の狭波長帯域の光が重畳され、光量がそれぞれ異なる複数の照射光(バイアス光)を個別に太陽電池に照射した場合に、測定されたそれぞれの短絡電流とその分光感度とに基づいて、所望する短絡電流の分光感度を算出するので、所望する短絡電流が測定されていない場合であっても、その分光感度を算出することが可能となる。従って、分光感度を測定している間にバイアス光が安定せずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流における分光感度を求めることが可能となる。また、例えば、所望する短絡電流における、広い波長範囲の分光感度を求めようとする場合では、重畳する光の波長帯域を変えて測定し、波長帯域毎に所望する短絡電流における分光感度を算出すればよい。
分光感度測定装置は、分光感度を測定している間バイアス光が安定しておらずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流Iiにおける分光感度S(Ii,λ)を求めることが可能となる。
この出願は、2011年6月14日に出願された日本国特許出願特願2011−131955を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明は、分光感度を測定している間にバイアス光が安定せずに短絡電流が変動したとしても、所望する短絡電流Iiにおける分光感度S(Ii,λ)を求めることができる分光感度測定装置及び方法を提供することができる。
Claims (5)
- 測定対象の太陽電池に、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光を個別に照射することが可能な光源部と、
前記複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定部と、
前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部と
を備えることを特徴とする分光感度測定装置。 - 測定対象の太陽電池に、所定の波長範囲で狭波長帯域の光の波長を変えることによって走査し、前記狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数のバイアス光を個別に照射することが可能な光源部と、
前記複数のバイアス光のうちのいずれかのバイアス光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定部と、
前記走査における狭波長帯域の光のうちのいずれかの狭波長範囲の光を重畳して、光量がそれぞれ異なるバイアス光を個別に照射したときに、前記測定部で測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出部と
を備えることを特徴とする分光感度測定装置。 - 前記分光感度算出部は、前記測定部が測定した短絡電流と分光感度とに基づいた補間式を用いて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分光感度測定装置。 - 測定対象の太陽電池に、狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数の照射光を個別に照射することが可能な光源部を備える分光感度測定装置で用いられる分光感度測定方法であって、
前記複数の照射光のうちのいずれかの照射光を受けたときの、前記太陽電池の短絡電流と分光感度とを測定する測定ステップと、
前記複数の照射光を順次個別に照射したときの、前記測定ステップで測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出ステップと
を備えることを特徴とする分光感度測定方法。 - 太陽電池の分光感度測定方法であって、
測定対象の太陽電池に、所定の波長範囲で狭波長帯域の光の波長を変えることによって走査し、前記狭波長帯域の光と重畳して、光量がそれぞれ異なる複数のバイアス光を個別に照射する照射ステップと、
前記複数のバイアス光のうちのいずれかのバイアス光を受けたときの、前記太陽電池のそれぞれの短絡電流とそれぞれの分光感度とを測定する測定ステップと、
前記走査における狭波長帯域の光のうちのいずれかの狭波長範囲の光を重畳して、光量がそれぞれ異なるバイアス光を個別に照射したときに、前記測定ステップで測定されたそれぞれの短絡電流と、当該短絡電流が測定されたときの分光感度とに基づいて、所望する短絡電流が測定されたとしたときの前記所定の狭波長帯域の分光感度を算出する分光感度算出ステップと
を備えることを特徴とする分光感度測定方法。
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