JPWO2012111249A1 - 質量分析法における質量変化を検出する方法及び安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法 - Google Patents

質量分析法における質量変化を検出する方法及び安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法 Download PDF

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Abstract

従来の質量分析計を用いた高感度のタンパク質定量方法では、標的タンパク質の断片化処理の過程に生ずる試料損失や未断片化率が、内部標準ペプチド断片によって補正されない問題があった。また、質量分析計を用いてタンパク質の翻訳後修飾などを同定及び/又は定量することは非常に困難であった。そこで、質量分析計を用いて高精度にタンパク質を定量し、タンパク質における翻訳後修飾や遺伝子変異の同定及び/又は定量を行う方法を開発することを課題とした。本発明者らは、安定同位体標識内部標準タンパク質を用いることで、一度に複数の標的タンパク質由来のペプチド断片を質量分析計で検出し、高感度かつ高精度にタンパク質を定量できるとの知見を得た。さらに、検出された標的タンパク質由来のペプチド断片の平均定量値を用いて、各ペプチド断片の翻訳後修飾や遺伝子変異を同定及び/又は定量することができることを見いだした。

Description

本発明は、質量分析装置を用いた分析において安定同位体標識タンパク質を内部標準として使用する方法に関し、より詳細には、標的タンパク質由来の複数のペプチド断片を一度に解析することにより、生体試料中のタンパク質を高感度に検出する方法や、標的タンパク質由来の複数のペプチド断片を一度に定量することから、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出し、未知の翻訳後修飾を定量及び/又は同定する方法や、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常を定量及び/又は同定する方法に関する。
ヒトゲノムプロジェクトによってヒトの遺伝子配列が網羅的に解析され、疾患の原因となる遺伝子が次々に同定された。しかしながら、いまだ多くの原因不明の疾患が解明されずに残されており、今後はタンパク質の翻訳後修飾や一塩基多型(SNPs)などの詳細な解析が期待されている。また、オーダーメイド医療などが現実となりつつある昨今では、人種の違いや個人の違いを生み、個人の疾患や薬剤への耐性などの体質などを決定すると考えられているタンパク質の翻訳後修飾や一塩基多型(SNPs)などの解析はさらに重要となっており、これらを同定及び/又は定量する方法が求められている。
タンパク質や翻訳後修飾を検出する方法としては、従来は抗体を用いた方法が主に用いられてきた。抗体を用いてタンパク質を検出するためには、標的タンパク質に特異的な抗体を入手する必要がある。しかしながら、抗体の作製や精製には時間と技術の熟練が必要であり、標的タンパク質の種類によっては、様々な工夫を凝らし、努力を重ねても、標的タンパク質に特異的な抗体を得ることができない例も数多くある。さらに翻訳後修飾を検出する抗体としては、タイロシンやセリン、スレオニンのリン酸化を検出できる抗体もあるものの、検出感度が十分でない例や、これらの各アミノ酸残基のリン酸化を区別できない例や、タンパク質の立体構造などによっては必ずしもこれらのリン酸化を検出できない例が数多くあることなどの問題がある。また、特定のタンパク質の特定のアミノ酸残基に対するリン酸化を検出する抗体の作製はさらに困難である。さらに、抗体を用いたタンパク質や翻訳後修飾の検出は、抗体がしばしば標的タンパク質以外のタンパク質などにも反応してしまうことが大きな問題となる。この抗体の非特異性は、ELISAなどの抗体を用いたタンパク質の定量において、タンパク質の定量の精度の上昇を阻害する大きな原因の一つである。そこで、これらの抗体を用いた方法に代わって、質量分析法を用いて高精度でタンパク質や翻訳後修飾を定量する技術が開発されつつある。
質量分析法(mass spectrometry)とは、試料をイオン化し、イオン化した分子を質量/電荷(m/z)に従って分離し検出する方法であり、種々の生物学材料の検出や測定にこの方法が検討、利用されてきた。近年の質量分析法の進展により、エレクトロスプレー・イオン化法(ESI:electrosprayionization)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:Matrix assisted laser desorptionionization)など様々なイオン化法を用いることが可能となり、またイオントラップ法、飛行時間法(TOF:Timeof Flight)、四重極法、フーリエ変換法などによるイオン化された試料を解析する様々なアナライザーを用いた様々な質量分析計が開発されている。また、液体クロマトグラフィーを接続した液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)や、質量分析計を2台結合した、タンデム質量分析計(MS/MS spectrum)等、種々の機能をもつ質量分析計が開発されており、これらの機能を組み合わせたものが、生物学材料の検出や測定や定量に利用されている(特許文献1〜3)。
従来の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法は、標的タンパク質における定量対象のペプチド断片を選択し、かかるペプチド断片の量を定量する方法であった。すなわち、図1に示すような(1)標的タンパク質における定量対象の任意のペプチド断片を選択する工程;(2)所定濃度段階の各ペプチド断片と、特定量の前記ペプチド断片に相当するアミノ酸配列である安定同位体標識内部標準ペプチド断片の混合物に対して質量分析を行い、非標識ペプチド断片/安定同位体標識内部標準ペプチド断片のマススペクトル面積比をそれぞれ算出して検量線を作成する工程;(3)断片化処理を施された標的タンパク質を含む試料及び、前記特定量の安定同位体標識ペプチド断片を含むサンプルに対し質量分析を行い、非標識ペプチド断片/安定同位体標識内部標準ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比をそれぞれ算出する工程;(4)工程(3)で算出した比から、工程(2)で作成した検量線を用いて、試料中の各標的タンパク質由来ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;の工程(1)〜(4)を備えた、質量分析装置を用いた、試料中の標的タンパク質の定量する方法であった。
しかし、従来の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法では、定量対象のペプチド断片を選択しなければならないという問題があった。ペプチド断片のイオン化されやすさは各ペプチド断片によって異なり、質量分析法によってタンパク質を定量するためには、どの配列のペプチド断片を標的とするかが非常で重要であるとともに、様々な選択のためのクライテリアが研究されつつあるものの、定量対象のペプチド断片の選択は困難が伴う工程であることが現状である。また、従来の方法では、試料中の標的タンパク質を断片化した後に、安定同位体標識内部標準ペプチド断片を添加して質量分析へ供するため、試料中の標的タンパク質を断片化する過程における誤差、すなわち断片化の未処理効率や標的タンパク質のチューブへの吸着等による試料損失が補正されない、などの問題があった。そのため、これまで十分に高感度で高精度の質量分析法を用いたタンパク質の定量方法はなかった。
従来の質量分析法を用いた翻訳後修飾の定量方法としては、安定同位体を含む培地又は安定同位体を含まない培地でそれぞれ別に培養した細胞を回収、又は合わせて培養した後に回収して質量分析に供することによりタンパク質のリン酸化部位などを同定する方法(特許文献4、5)などが開発されているが、これらはいずれも特定のペプチド断片の翻訳後修飾を検出するものであり、タンパク質における翻訳後修飾部位の同定や、翻訳後修飾の定量はできないという問題があった。
特開2004−28993号公報 特開2004−77276号公報 特表2004−533610号公報 WO00/67017号公報 特開2010−210641号公報
本発明の課題は、質量分析計を用いてタンパク質の翻訳後修飾の同定及び/又は定量や、タンパク質の遺伝子変異の同定及び/又は定量の方法や、そのための、高感度かつ高精度のタンパク質の定量方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、安定同位体標識内部標準タンパク質を用いることで、質量分析計を用いて一度に複数の標的タンパク質由来のペプチド断片を検出することにより、高感度かつ高精度にタンパク質を定量できるとの知見を得た(図2)。さらに、検出された標的タンパク質由来のペプチド断片の平均定量値を算出し、かかる平均定量値と各ペプチド断片の定量値を比較することにより、各ペプチド断片の翻訳後修飾及び/又は遺伝子変異を、同定及び/又は定量することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は[1](a)所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質又は試料中の標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比から各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;(b)全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求める工程;(c)平均定量値に対する、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の割合x(%)をそれぞれ算出し、ペプチド断片の質量変化を受けた割合(100−x)(%)をそれぞれ算出する工程;の工程(a)〜(c)を備えた、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出する方法や、[2]標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾の定量であることを特徴とする前記[1]記載の方法や、[3]標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾部位の同定であることを特徴とする前記[1]記載の方法や、[4]翻訳後修飾が、リン酸化又は糖化であることを特徴とする前記[2]又は[3]記載の方法や、[5]標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常の定量であることを特徴とする前記[1]記載の方法や、[6]標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常部位の同定であることを特徴とする前記[1]記載の方法や、[7]遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常が、一塩基多型(SNPs)によるものであることを特徴とする前記[5]又は[6]記載の方法や、[8]安定同位体標識タンパク質として、翻訳後修飾又は遺伝子変異がない安定同位体標識タンパク質を用いることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法に関する。
また、本発明は[9]翻訳後修飾部位又は遺伝子変異部位が、(1)公共のデータベースで翻訳後修飾又は遺伝子変異によるアミノ酸配列変化が公開されている部位であること;(2)セリンもしくはスレオニン、タイロシンを含む配列部位であること;(3)膜タンパク質の細胞外部位もしくは分泌タンパク質でアスパラギンを含む配列部位であること;(4)リジンを含む配列部位であること;(5)システインを含む配列部位であること;(6)グルタミン酸を含む配列部位であること;(7)プロリンを含む配列部位であること;(8)前記[1]記載の方法で求めた定量値が統計学的手法により平均定量値から外れ値を示す配列部位であること;の(1)〜(8)のいずれかの条件から設定されていることを特徴とする前記[2]〜[8]のいずれかに記載の方法や、[10]対象部位が、配列番号1〜6に示される翻訳後修飾及び遺伝子変異によるアミノ酸配列変化を受ける部位であることを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法や、[11]安定同位体標識タンパク質が、15N,13C,18O,Hのいずれかを含むアミノ酸によって標識されるタンパク質であることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の方法や、[12]ペプチド断片化が、トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いた断片化であることを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の方法や、[13]ペプチド断片化が、化学物質を用いた断片化であることを特徴とする前記[1]〜[11]のいずれかに記載の方法や、[14]標的タンパク質が、ヒトEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)であることを特徴とする前記[1]〜[13]のいずれかに記載の方法に関する。
さらに本発明は、[15](i)安定同位体標識アミノ酸を用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を合成する工程;(ii)前記安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質と、特定量の非安定同位体標識前記タグタンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して質量分析を行い、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質部分由来ペプチド断片/非安定同位体標識タグタンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比からタグ由来の各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;(iii)安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質由来の全ての各ペプチド断片の定量値の平均値を、合成した安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質の絶対量として求める工程;の工程(i)〜(iii)を備えた、質量分析法で内部標準として使用する安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法や、[16]タグタンパク質が、GSTタグタンパク質であることを特徴とする前記[15]に記載の定量方法や、[17]タグタンパク質が、Hisタグタンパク質であることを特徴とする前記[15]に記載の定量方法や、[18]タグタンパク質が、(I)アミノ酸残基数が、3から500残基であること;(II)アミノ酸残基数が、500残基数であること;(III)アルギニンを含む配列であること;(IV)リジンを含む配列であること;(V)トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いて断片化される配列であること;(VI)化学物質を用いて、ペプチドに断片化される配列であること;の(I)〜(VI)のいずれかの条件から設定されるアミノ酸の配列であることを特徴とする前記[15]〜[17]いずれかに記載の定量方法や、[19]非安定同位体標識タグタンパク質の量が、アミノ酸分析法により決定されることを特徴とする前記[15]〜[18]のいずれかに記載の定量方法や、[20]非安定同位体標識タグタンパク質の量が、生化学的比色法によって決定されることを特徴とする前記[15]〜[19]のいずれかに記載の定量方法に関する。
本発明によれば、対象ペプチド断片を選択する必要がないため従来法よりも簡便に、さらに複数のペプチド断片を一度に定量するため従来法よりも高感度かつ高精度に、タンパク質を定量することができる。また、従来の一ペプチド断片を用いた測定にかかっていた約20分の1のコストで、タンパク質を定量することができるという利点も有する。また、従来の抗体を用いたELISA法などよりも高精度にタンパク質を定量することができ、従来困難であったタンパク質の未知の翻訳後修飾部位や一塩基多型などの遺伝子変異の同定、翻訳後修飾率の定量なども行うことができる。さらに、本発明は翻訳後修飾の同定や定量、遺伝子変異の同定が、タンパク質の定量解析と同時に行うことができるため、一タンパク質あたりの解析時間が劇的に短縮し、スクリーニングなどの多分子同時解析にも有効に利用することができるという効果も有する。すなわち、定量精度、コスト、翻訳後修飾の定量、簡便性において特に優れた本発明の方法は、従来の手法に代わってライフサイエンス、医療技術の分野に貢献する技術といえる(表1)。
従来の質量分析によるタンパク質定量方法の概略及び、その課題を表す図である。 本発明の安定同位体標識タンパク質を内部標準として用いた方法の概略を表す図である。 ラットNephrinタンパク質を断片化してLC−MS/MS解析に供し、検出されたラットNephrinタンパク質由来ペプチド断片の結果を示す。グレー背景にて示したアミノ酸配列が、検出されたペプチド断片を表す。 本発明の方法によって、従来法よりも高精度なタンパク質の定量が実現していることを示す図である。本発明の方法(当該法;右棒グラフ)及び従来法(左棒グラフ)によって、ラット糸球体試料中のNephrinタンパク質を定量した結果を表すグラフである。 ラットNephrinタンパク質の翻訳後修飾の同定及び定量方法を表す図である。横軸のタンパク質のアミノ酸番号に対し、検出されたペプチド断片の定量値を縦軸にプロットしたグラフである。点線で示した値は、平均定量値を示す。平均定量値よりも定量値が統計学的に有意に小さいとき、定量値を、翻訳後修飾を受けていないペプチド断片、平均定量値から定量値を引いた量を、翻訳後修飾を受けたペプチド断片の量として算出する。
本発明において「標的タンパク質の質量分析法における質量変化」とは、標的タンパク質及び/又は標的タンパク質由来のペプチド断片の質量が、データベースや実際にDNA配列やアミノ酸配列を確認して得た情報などに基づいて算出された質量と異なることをいい、実質的な質量の変化を検出することを必ずしも意味しない。また、本発明において「検出する」とは、定量及び/又は部位同定することをいい、「標的タンパク質の質量分析法における質量変化」領域のスクリーニング方法も、標的タンパク質において、質量分析法における質量変化を示すアミノ酸配列領域を同定する方法として、本発明の「検出」に含まれる。したがって、本発明において、翻訳後修飾の検出とは「翻訳後修飾の定量」及び「翻訳後修飾部位の同定」を、遺伝子変異の検出とは「遺伝子変異の定量」及び「遺伝子変異部位の同定」をそれぞれ意味する。また本発明において「定量」とは、絶対量の測定だけでなく、相対量の測定をも含む。
本発明における「標的タンパク質の質量分析法における質量変化」としては、標的タンパク質の翻訳後修飾、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常、スプライシングバリアント、プロテアーゼによるタンパク質の切断や分解などによるものを挙げることができ、中でも標的タンパク質の翻訳後修飾や遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常を好適に例示することができる。翻訳後修飾としては、タンパク質の翻訳後に付加される修飾であれば特に制限されず、糖化(グリコシル化)、リン酸化、メチル化、アシル化、アルキル化、ジメチル化、ビオチニル化、ホルミル化、カルボキシル化、グルタミル化、グリシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、イソプレニル化、リポイル化、プレニル化、GPIアンカー形成、ADPリボシル化、FAD結合、ポリエチレングリコール化、ホスファチジルイノシトール付加、ホスホパンテテイニル化、ピログルタミン酸形成、ラセミ化、タイロシン硫酸化、セレノイル化、ISG化、SUMO化、ユビキチン化、NEDD化などを挙げることができ、中でも糖鎖が付加される糖化(グリコシル化)及びリン酸化を好適に例示することができる。また、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常としては、一塩基多型(SNPs)や、遺伝子配列の重複、欠失、挿入や、繰り返し配列の数の相違や、LINEやSINEなどのトランスポゾンの数の相違やトランスポゾンの挿入、欠失などの、遺伝子配列の変異によるものを挙げることができ、中でも一塩基多型を好適に例示することができる。また、翻訳後修飾部位又は遺伝子変異部位等の質量変化部位が、次の(1)〜(8)のいずれかの条件から設定されていることが好ましい。
(1)公共のデータベースで翻訳後修飾又は遺伝子変異によるアミノ酸配列変化が公開されている部位であること;
(2)セリンもしくはスレオニン、タイロシンを含む配列部位であること;
(3)膜タンパク質の細胞外部位もしくは分泌タンパク質でアスパラギンを含む配列部位であること;
(4)リジンを含む配列部位であること;
(5)システインを含む配列部位であること;
(6)グルタミン酸を含む配列部位であること;
(7)プロリンを含む配列部位であること;
(8)本発明の方法で求めた定量値が統計学的手法により平均定量値から外れ値を示す配列部位であること;
本発明の「所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質」は、濃度既知の標的タンパク質又は、測定対象試料中の標的タンパク質であればよく、試料中の標的タンパク質は多くの場合濃度不明である。濃度既知の標的タンパク質としては遺伝子工学的手法で細胞や大腸菌、コムギ胚芽などの無細胞系を用いて産生させ、精製及び抽出して濃度を測定したものや市販品を例示することができる。また、本発明において試料とは、細胞抽出液、組織抽出液、培養液、血液や髄液等の体液等の生体試料を例示することができる。「所定濃度段階」は測定対象の試料中の標的タンパク質の量や精製方法、質量分析計の感度や精度に応じて適宜設定することができ、例えば10fmol、50fmol、100fmol、500fmol、1000fmolの濃度段階とすることもできる。そして本発明の「特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質」(以下単に、「安定同位体標識タンパク質」又は「安定同位体標識内部標準タンパク質」ともいう)は、かかる標的タンパク質と同じアミノ酸配列からなるタンパク質であり、1種類又は2種類以上の安定同位体の元素を含むことにより安定同位体標識されたものであればよく、安定同位体元素としては窒素安定同位体15N、炭素安定同位体13C、酸素安定同位体18O、水素安定同位体Hを挙げることができる。かかる安定同位体標識タンパク質は、安定同位体標識された元素を含むアミノ酸を用いて人工的に化学合成することもできるし、安定同位体標識された元素を含む培養液中で細胞や大腸菌を培養することにより、又は安定同位体標識された元素の存在下で無細胞系にて安定同位体標識タンパク質を産生することもでき、かかる安定同位体標識タンパク質は翻訳後修飾又は遺伝子変異がないことが好ましい。前記「特定量」は特に制限されず、測定対象の試料中の標的タンパク質の量や精製方法、質量分析計の感度や精度に応じて任意の量とすることができ、例えば500fmolを例示することができる。なお安定同位体標識タンパク質濃度は、本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法を用いて測定することもできる。
本発明の「ペプチド断片化処理」としては、タンパク質を切断しペプチド断片を生成するものであれば使用することができ、化学物質を用いた断片化処理やタンパク質消化酵素を用いた断片化処理方法を挙げることができる。本発明の試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出する方法(以下、「本発明の方法」ともいう)は、標的タンパク質及び内部標準タンパク質を同一溶液中で断片化処理を行うため、標的タンパク質及び内部標準タンパク質は同条件の断片化処理を受ける。したがって、一般的にタンパク質消化酵素に比べ再現性が劣るといわれる、化学物質を用いた断片化方法も使用することができる。断片化に用いられる化学物質としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸などの酸性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などのアルカリ性化合物や臭化シアンなどを挙げることができる。また、断片化に用いられるタンパク質消化酵素としてはエンドペプチダーゼやエキソペプチダーゼ、より具体的にはキモトリプシン(chymotrypsin)、スブチリシン(subtilisin)などのセリンプロテアーゼ、ペプシン、カテプシンD(cathepsin D)、HIVプロテアーゼなどのアスパラギン酸プロテアーゼ、サーモリシン(thermolysin)などの金属プロテアーゼ、パパイン、カスパーゼなどのシステインプロテアーゼ、N−末端スレオニンプロテアーゼ(N-terminal threonine protease)やグルタミン酸プロテアーゼ、アルギニンエンドペプチダーゼなどを挙げることができ、中でもトリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンを好適に例示することができる。また、これらのペプチド断片化方法は、2種類以上の方法を組み合わせて行うこともできる。例えば、あるペプチド断片化処理方法にて検出できなかったペプチド断片に含まれる領域も、別のペプチド断片化処理方法や、複数の断片化処理方法の組み合わせによって異なるペプチド断片として質量分析に供することにより、検出できる可能性がある。したがって、複数のペプチド断片化処理方法を利用することにより、標的タンパク質の質量分析法において検出される領域、すなわち検出のカバー率を向上させることができる。
本発明において用いられる質量分析法は、試料をイオン化し、イオン化した分子を質量/電荷(m/z)に従って分離し検出する方法であれば特に制限されず、エレクトロスプレー・イオン化法(ESI:electrosprayionization)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:Matrix assisted laser desorptionionization)などによりイオン化し、イオントラップ法、飛行時間法(TOF:Time of Flight)、四重極法、フーリエ変換法などによってイオン化された試料を解析する方法を挙げることができる。また、質量分析計は単独で用いられてもよいし、液体クロマトグラフィーなどの分離機器や測定機器などと接続してもよく、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)や質量分析計を2台結合したタンデム質量分析計(MS/MS spectrum)や、液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析計を接続した液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC−MS/MS)などを挙げることもでき、LC−MS/MSを好適に例示することができる。また、液体クロマトグラフィーなどの機器と質量分析計やタンデム質量分析計の間に、適宜他の分離機器、測定機器などを1又は複数台配置してもよい。
本発明の質量変化を検出する方法の工程(a)においては標的タンパク質を定量する。ここでのペプチド断片の定量は、後述の検量線を作成して定量値を算出する方法によって得られた絶対量であっても、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比から得られた相対量であってもよい。かかる標的タンパク質の絶対量を定量する方法としては、濃度既知の所定濃度段階の各標的タンパク質(「人工標準タンパク質」ともいう)と安定同位体標識内部標準タンパク質を用いた質量分析法による測定を行い、検量線を作成して試料中の標的タンパク質の絶対量を定量値として算出する方法を挙げることができ(図2)、検量線はあらかじめ作成されたものでもよい。例えば以下の工程(A)〜(C)を備え、液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(LC−MS/MS)を用いた、試料中の標的タンパク質の量を測定する方法を好適に例示することができる。
(A)所定濃度段階の各標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、LC−MS/MSを用いた質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比をそれぞれ算出して検量線を作成する工程;
(B)標的タンパク質を含む試料に前記特定量の安定同位体標識タンパク質を添加した後、工程(A)におけるペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対しLC−MS/MSを用いた質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のマススペクトル面積比や強度比をそれぞれ算出する工程;(C)工程(B)で算出した面積比や強度比から、工程(A)で作成した検量線を用いて、試料中の各標的タンパク質由来ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
また、本発明の質量分析法における質量変化を定量する方法としては、上記の質量分析計を用いたタンパク質の定量方法にて標的タンパク質由来の全てのペプチド断片を定量し、全ての標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求め、平均定量値から各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値を引いた値を、質量分析法において質量変化が生じたペプチド断片の量とする方法であればよい。また、平均定量値に対する、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の割合x(%)をそれぞれ算出し、ペプチド断片の質量変化を受けた割合(100−x)(%)をそれぞれ算出することにより、質量分析法における質量変化が生じた割合を(100−x)(%)と表すこともできる。具体的には、以下の工程(a)〜(c)を備えた、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を定量する方法である。
(a)所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比及び/又はシグナル強度比から各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
(b)全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求める工程;
(c)平均定量値に対する、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の割合x(%)をそれぞれ算出し、ペプチド断片の質量変化を受けた割合(100−x)(%)をそれぞれ算出する工程;
また、本発明の質量分析法における質量変化を同定する方法としては、上記の質量分析計を用いたタンパク質の定量方法及び/又は本発明の質量分析法における質量変化を定量する方法を用いて、全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求め、かかる平均定量値と、全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値を比較して統計学的手法により外れ値を示す標的タンパク質由来ペプチド断片を選択する方法であればよい。あるいは、質量分析法における質量変化の割合に基づいて、統計学的手法により外れ値を示す標的タンパク質由来ペプチド断片を選択してもよい。かかる統計的手法は特に制限されず、例えばスミノルフグラブス検定を挙げることができる。このように、標的タンパク質において、質量分析法における質量変化を示すペプチド断片を同定することにより、標的タンパク質の質量分析法における質量変化をスクリーニングすることができる。具体的には、以下の工程(a’)〜(c’)を備えた、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を同定する方法を例示することができる。
(a’)所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比及び/又はシグナル強度比から各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
(b’)全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求める工程;
(c’)平均定量値に対し、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値が統計学的手法により平均定量値から外れ値を示す標的タンパク質由来ペプチド断片を同定する工程;
また、本発明の質量分析法における質量変化を検出する方法は、健常者及び疾患患者の検体中のタンパク質の質量分析法における質量変化の解析結果を比較することにより、疾患の原因遺伝子や疾患に関連する遺伝子の同定に利用することができる。また、疾患の原因遺伝子などを標的タンパク質として、質量分析法における質量変化を検出することにより、疾患メカニズムの解明や薬効の予測等に利用することができる。例えば、ヒトEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)は肺がんの原因遺伝子の一つとして同定され、肺がん治療薬ゲフィチニブ(商品名イレッサ(登録商標)、アストラゼネカ社製)の標的分子である。肺がん治療薬ゲフィチニブは、あるグループの患者に対し優れた治療効果を示すが、他のグループの患者には重い副作用を引き起こすことが知られており、社会問題にもなっている。このゲフィチニブの薬効の違いは、患者のEGFR遺伝子の変異やEGFRタンパク質のリン酸化などの翻訳後修飾により異なると考えられており、本発明の質量分析法における質量変化を検出する方法によって、ゲフィチニブの薬効に関する遺伝子変異や翻訳後修飾の同定、薬効の予測を行うことができる。具体的には、例えばヒトEGFRは表2に示した各アミノ酸に対する翻訳後修飾や、表3に示した遺伝子変異によるアミノ酸配列の変化を定量及び/又は同定することができる。
本発明の安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法は、質量分析法で内部標準として使用する安定同位体標識タンパク質の絶対量や、本発明の質量分析法における質量変化を検出する方法において使用する安定同位体標識タンパク質の絶対量の測定に用いることができる。本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法としては、
(i)安定同位体アミノ酸を用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を合成する工程;
(ii)前記安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質と、特定量の非安定同位体標識前記タグタンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して質量分析を行い、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質部分由来ペプチド断片/非安定同位体標識タグタンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比からタグ由来の各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
(iii)安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質由来の全ての各ペプチド断片の定量値の平均値を、合成した安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質の絶対量として求める工程;
の工程(i)〜(iii)を備えた、質量分析法で内部標準として使用する安定同位体標識タンパク質の定量方法であれば特に制限されない。工程(ii)のペプチド断片の定量においては、上記の試料中の標的タンパク質の量を測定する方法の工程(A)〜(C)と同様にして、所定濃度段階の安定同位体標識タグタンパク質と特定量の非安定同位体標識タグタンパク質を用いた質量分析によって作成した検量線を用いて、絶対量を算出することができる。かかる検量線はあらかじめ作成されたものを利用してもよい。
本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法では、濃度既知の非安定同位体標識タグタンパク質を内部標準として用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を定量することができる。本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法において非安定同位体標識タグタンパク質と安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質は同じ種類であればよく、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質を融合されるタンパク質は任意のタンパク質を使用することができる。すなわち安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質は、任意のタンパク質のN末端又はC末端に非安定同位体標識タグタンパク質と同種のタグタンパク質が融合した構造のタンパク質であればよい。安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質は、遺伝子工学や化学合成技術を用いて作製することができ、例えば任意のタンパク質のDNA配列のN末端又はC末端にタグタンパク質配列のDNA配列を結合した、タグタンパク質融合タンパク質発現ベクターを安定同位体標識アミノ酸存在下で発現させることにより合成することもできる。かかる量は、アミノ酸分析法やBradford法、Biuret法、Lowry法、BCA(ビシンコニン酸)法等の生化学的比色定量法で定量することができる。
本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法において、タグタンパク質は酵素消化や化学的断片化によって質量分析法で検出可能なペプチド断片を得られるものであればよく、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST:Glutathione-S-transferase)タグ、ヒスチジン(His)タグ、マルトース結合タンパク(MBP)タグ、c−Mycタグ、HAタグ、FLAGタグ、GFPタグ等を挙げることができ、中でもGSTタグ(配列番号7)やHisタグ(配列番号8)が好ましい。GSTタグは配列番号7のアミノ酸配列からなるものの他、かかる配列に置換や挿入、欠失を有するアミノ酸配列や、NCBI等の各種データベースに掲載されたGSTアミノ酸配列からなるものを用いることもでき、Hisタグはヒスチジンが3〜15個連結した任意の長さのHisタグを用いることもできる。また、タグタンパク質は、一種類のタグタンパク質のみでも、同じタグタンパク質又は異なる種類のタグタンパク質が複数、あるいは繰り返し連結されたものでもよい。
すなわち、本発明の安定同位体標識タンパク質の定量方法では、安定同位体標識タンパク質を、安定同位体標識タンパク質のN末端側又はC末端側にタグタンパク質が融合した、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質として合成する。安定同位体標識されていない前記タグタンパク質を内部標準として用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質部分由来ペプチド断片を対象として質量分析法で解析することで、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質の絶対量を測定することができ、かかるタグタンパク質の定量値を安定同位体標識タンパク質の定量値とすることができる。かかる安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質は、本発明の試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出する方法において、安定同位体標識タンパク質として使用することができる。
したがって、濃度既知の非安定同位体標識タグタンパク質を用いて、安定同位体で標識された、同種のタグタンパク質が融合したあらゆる種類のタンパク質を定量することができ汎用性が高い。安定同位体標識GSTタンパク質融合タンパク質及び非標識GSTタンパク質を用いた場合には、表4に示すペプチド断片を、質量分析法による定量に用い得る測定対象ペプチド断片の配列として利用することができる。
[ラット糸球体試料中のNephrinタンパク質の定量]
ラットの腎臓から糸球体50個をステンレスメッシュを用いたシービング法(文献J. Clin. Invest. 68: 920-93l, 1981 Schreiner GF et al.)にて単離し、かかるラット糸球体試料中のNephrinタンパク質(swissprot accession No.Q9R044)を従来法及び本発明の方法で定量し、比較した。
1.人工標準タンパク質の調製方法
Nephrin人工標準タンパク質の調製は次の方法によった。Nephrin(swissprot accession No.Q9R044)のcDNAを挿入したpET-vectorをトランスフォーメーションした大腸菌(BL21-CodonPlus(DE3)-RIPL)を、カナマイシン及びクロラムフェニコールをそれぞれ30mg/L、50mg/Lで添加したLB培地において一晩振盪培養した後、LB培地に希釈し、O.D.600nmが0.4付近の値を示すまで培養を行い、最終濃度100mMでIPTGを添加し、さらに3時間培養することで、タンパク質の発現誘導を行った。誘導を行った大腸菌は、8M尿素の存在下で超音波破砕を行い、可溶性画分と不溶性画分を調製した後、SDS−PAGEによって分画し、CBB R−250による検出を行った。コバルトレジンを充填したスピンカラムに、大腸菌可溶性画分を添加し、10mMイミダゾール溶液でカラムを洗浄後、50mM,150mM,500mMのイミダゾール溶液で人工標準タンパク質の溶出を行った。
2.安定同位体標識内部標準タンパク質の調製方法
Nephrinの安定同位体標識タンパク質の調製は次の方法によった。GSTとHisタグを付加したNephrin(swissprot accession No.Q9R044)の全長アミノ酸配列を挿入したpET-vectorをトランスフォーメーションした大腸菌(Rosseta(DE3)、Novagen社製)を、硫酸マグネシウム七水和物を添加(終濃度:0.25g/L)したC.H.L培地(クロレラ工業製)で37℃にてO.D.600nmが0.7になるまで培養を行った。その後、安定同位体(15N)標識アミノ酸を最終濃度0.5g/Lになるよう添加し、最終濃度1mMでIPTGを添加し、さらに4時間培養することでNephrinの発現誘導を行った。発現誘導した大腸菌を超音波破砕し、不溶性画分を調製した。界面活性剤を用いて不溶性画分を可溶化し、コバルトカラムおよびグルタチオンカラムを用いて安定同位体標識Nephrinを精製した。
3.安定同位体標識タンパク質の定量分析
安定同位体標識GST、Hisタグ融合Nephrinタンパク質(swissprot accession No.Q9R044)精製試料12μLに既知量のGSTタンパク質(swissprot accession No.P08515)1.4pmolを添加し、7Mグアニジン塩酸溶液で変性、DTTで還元処理した後に、メタノール、クロロホルム、水を混合し、遠心してタンパク質を沈殿させた。沈殿タンパク質を1.2M尿素存在下で可溶化し、トリプシンを添加して37℃で16時間酵素消化してペプチド試料とした。ペプチド試料の1/5液量を用いてLC−MS/MS測定を行った。ペプチド試料に含まれるGSTのペプチド断片のうち、GLVQPTR、LTQSMAIIR、DFETLK、VDFLSK、LPEMLK、IEAIPQIDKについて、安定同位体(15N)標識ペプチドと非標識ペプチドをLC−MS/MSのSRMモードで測定した。安定同位体標識体と非標識体のピーク面積比から、安定同位体標識体GSTの試料中濃度を定量した結果、103.5±4.93fmol/assayであった。
安定同位体標識されたGST、Hisタグ融合Nephrinタンパク質試料において安定同位体標識体及び非標識体GST(swissprot accession No.P08515)の各ペプチド断片を検出した結果を表5に示す。測定した6ペプチド断片における標識体と非標識体の比率の平均値は0.36±0.02であり、測定値の信頼性を示すCV値(%)は4.4%であった。すなわち、質量分析法を用いることで、GSTタンパク質を高精度に定量できることが示された。発現タンパク質試料中に安定同位体標識GSTタンパク質は融合タンパク質と等モル存在することから、安定同位体標識GSTタンパク質を定量することで、質量分析法を用いて全ての安定同位体標識GST融合タンパク質の定量が可能である。
4.タンパク質の定量分析
安定同位体標識内部標準タンパク質を用いて、以下の方法でNephrinタンパク質を定量した。10fmol、50fmol、100fmol、500fmol、1000fmolの人工標準タンパク質にそれぞれ500fmolの安定同位体標識内部標準タンパク質を添加し、検量線作成用サンプルとした。また、ラット糸球体試料に安定同位体標識内部標準タンパク質500fmolを添加した測定用サンプルを調製した。これらのサンプルを7M塩酸グアニジン溶液(0.1M Tris−HCl、10mM EDTA pH8.5に溶解)で変性させ、システイン残基のSH基を保護するために、DTTによる還元処理とヨードアセトアミドによるカルバミドメチル化処理を行なった。続いて、メタノールクロロホルム沈殿法により、脱塩濃縮し、1.2M尿素/10mM Tris−HClに再懸濁した。その後、タンパク質重量の1/100量のトリプシンを加え、37℃で16時間酵素消化して断片化した。これらの検量線作成用サンプル及び測定用サンプルをLC−MS/MSのSRMモードにより、以下の条件で測定し、MSスペクトル面積比(非標識ペプチド断片/安定同位体標識ペプチド断片)を取得した。
カラム:L-column ODS 0.1mm id×100mm, 5μm particles
HPLC:Paradigm MS4B
質量分析機:TSQ vantage
グラジエント条件:1−45%アセトニトリル/0.1%ギ酸,50μL/分,50分得られたMSスペクトル面積比(非標識ペプチド断片/安定同位体標識ペプチド断片)から、検量線を作成し、試料中のNephrinタンパク質を定量した結果、66.4±6.1fmol/assayであった。
また、検量線作成用サンプルにおいてNephrin(swissprot accession No.Q9R044)の各ペプチド断片を検出した結果を図3に示す。Nephrinアミノ酸配列のうち、グレーの背景で示した配列が、検出されたペプチド断片の配列を示す。1234アミノ酸からなるNephrinをトリプシンにより断片化して得られる計104ペプチド断片のうち48%ペプチド断片、そのうち7〜30アミノ酸である計56ペプチド断片の89%に相当する計50ペプチド断片が検出された。すなわち、一度で多量のペプチド断片について質量分析による定量を行うので、従来法に比べて高い検出感度と定量精度を得ることができるといえる。
5.従来法によるタンパク質の定量分析
従来の質量分析計を用いたタンパク質の定量方法は、標的タンパク質の特定のペプチド断片を検出することによりタンパク質を定量する方法である(図1)。そこで、従来法では、Nephrinの部分配列であるGGNPPATLQWLK(配列番号4)を対象ペプチド断片として、Nephrinタンパク質を定量した。Nephrin人工標準ペプチドの調製は次の方法によった。Nephrin(swissprot accession No.Q9R044)の部分アミノ酸配列GGNPPATLQWLK(配列番号4)を固相法を用いて化学合成し、アミノ酸分析法によって試料中のペプチド濃度を定量した。安定同位体標識されたロイシンを含む同配列のペプチドGGNPPATLQWL*K(L*に安定同位体標識)を、固相法を用いて化学合成し、アミノ酸分析によってペプチド濃度を定量した。
作製したGGNPPATLQWLK(配列番号4)のアミノ酸配列からなる人工標準ペプチド断片と、同じアミノ酸配列からなり、安定同位体で標識された安定同位体標識内部標準ペプチド断片GGNPPATLQWL*K(L*に安定同位体標識)を用いて、試料中のNephrinタンパク質を定量した。10fmol、50fmol、100fmol、500fmol、1000fmolの人工標準(非標識)ペプチド断片にそれぞれ500fmolの安定同位体標識ペプチド断片を添加した検量線作成用サンプルを調製した。また、ラット糸球体試料を7M塩酸グアニジン溶液(0.1M Tris−HCl、10mM EDTA pH8.5に溶解)で変性させ、システイン残基のSH基を保護するために、DTTによる還元処理とヨードアセトアミドによるカルバミドメチル化処理を行なった。続いて、メタノールクロロホルム沈殿法により、脱塩濃縮し、1.2M尿素/10mM Tris−HClに再懸濁した。その後、タンパク質重量の1/100量のトリプシンを加え、37度で16時間酵素消化して断片化した。かかるサンプルに500fmolの安定同位体標識内部標準ペプチド断片を添加し、これを従来法による測定用サンプルとした。これらの検量線作成用サンプル及び測定用サンプルをLC−MS/MSのSRMモードにより、以下の条件で定量を行った。
カラム:L-column ODS 0.1mm id×100mm, 5μm particles
HPLC:Paradigm MS4B
質量分析機:TSQ vantage
グラジエント条件:1−45%アセトニトリル/0.1%ギ酸,50μL/分,50分得られたMSスペクトル面積比(非標識ペプチド断片/安定同位体標識ペプチド断片)から検量線を作成し、試料中のNephrinタンパク質を定量した結果、51.0±5.6fmol/assayであった。
以上の結果から、試料中のNephrinタンパク質の定量値は、本発明の方法では66.4±6.1fmol/assay、従来法では51.0±5.6fmol/assayと定量され、従来法では本発明の方法に比べ約76%のタンパク質の量としてしか定量されなかった(図4)。従来法では酵素消化過程における試料タンパク質の未消化率や、標的タンパク質のチューブへの吸着等による試料損失が安定同位体標識内部標準ペプチド断片によって補正されておらず、その結果従来法では過小評価されたタンパク質量が定量値として算出されていると考えられる。本発明の方法は従来法より高い定量値を示しており、サンプル調製の最初、断片化処理の前に安定同位体標識内部標準タンパク質を加え、標的タンパク質及び安定同位体標識内部標準タンパク質が同時に断片化されることにより、酵素消化過程の損失率が補正されていることが示唆される。以上のように、本発明の方法では、従来法よりも高精度な定量が実現しており、タンパク質の定量方法としても優れていることが示された。
[質量分析法における質量変化の検出]
ラット糸球体試料中のNephrinタンパク質(swissprot accession No.Q9R044)を本発明の方法で定量した結果を元に、質量分析法における質量変化の割合を解析した。本発明の方法では、ラット糸球体試料中からは、Nephrinタンパク質をトリプシン消化して得られるペプチド断片のうち、38のペプチド断片の定量値が得られた。これらの定量値に基づき平均定量値を算出し、各ペプチド断片の定量値と、平均定量値を比較した。横軸のNephrinタンパク質のアミノ酸配列番号に対して、検出された各ペプチド断片の定量値を縦軸にプロットしたグラフを図5に示す。平均定量値を点線で示す。Nephrinタンパク質のアミノ酸配列と異なる質量のペプチド断片は検出されないため、翻訳後修飾又は遺伝子変異により質量が変化したペプチド断片は検出されない。したがって、ペプチド断片の定量値が平均定量値よりも統計学的に有意に小さいとき、ペプチド断片の定量値を翻訳後修飾を受けていないペプチド断片の量、平均定量値からペプチド断片の定量値を引いた量を、翻訳後修飾を受けたペプチド断片の量と算出できる(図5)。平均定量値に対する、各ペプチド断片定量値の外れ値をスミノルフグラブス検定により求めたところ、5ペプチド断片の定量値が外れ値を示し、有意に平均定量値よりも小さかった(表6、太字及び下線)。
そのうち、NVTLCCLTK(配列番号5)、ILSGGALQLWNVTR(配列番号2)は糖鎖修飾、SSTVSTAEVDPNYYSMR(配列番号3)はリン酸化修飾を受けることがそれぞれ報告されており、本発明の方法が翻訳後修飾の種類に関わらず検出可能な方法であることが示された。これらの定量値を平均定量値1.3fmol/糸球体から引いた値は、翻訳後修飾を受けたタンパク質の量を示す。翻訳後修飾を受けたタンパク質の量はNVTLCCLTK(配列番号5)は1.2fmol/糸球体、ILSGGALQLWNVTR(配列番号2)は1.3fmol/糸球体、SSTVSTAEVDPNYYSMR(配列番号3)は0.7fmol/糸球体であり、ラット糸球体試料中のNephrinタンパク質のうちNVTLCCLTK(配列番号5)に糖鎖修飾を受けたタンパク質は92.3%、ILSGGALQLWNVTR(配列番号2)に糖鎖修飾を受けたタンパク質は100%、SSTVSTAEVDPNYYSMR(配列番号3)にリン酸化修飾を受けたタンパク質は53.8%であると算出された。LEDVAAKPQSAPFK(配列番号1)、LAEEISEK(配列番号6)は外れ値を示したが、これらの部位に対する翻訳後修飾はこれまで報告されておらず、新規の翻訳後修飾を受けている可能性が示唆された。また、ラット糸球体試料中のNephrinタンパク質のこれらの領域のアミノ酸配列が、遺伝子変異によりデータベース上のアミノ酸配列と異なる可能性も考えられる。本発明の方法を用いることで、未知の翻訳後修飾部位や未知の遺伝子変異の検出が可能であることが示された。
本発明は、質量分析計を用いたタンパク質の解析の分野に好適に利用することができる。定量精度、コスト、翻訳後修飾の定量、簡便性に優れ、翻訳後修飾や遺伝子変異の同定と定量を同時に行うことができるため、一タンパク質あたりの解析時間を劇的に短縮でき、多分子同時解析やスクリーニングの分野、タンパク質解析の受託解析事業の分野においても有用である。また、従来困難であったタンパク質の未知の翻訳後修飾部位の探索と修飾率の定量を可能にする技術であり、疾患に関連する因子の解析などにも有用であり、疾患研究や薬剤開発など、ライフサイエンスや医療分野にも好適に利用することができる。

Claims (20)

  1. 以下の工程(a)〜(c)を備えた、試料中の標的タンパク質の質量分析法における質量変化を検出する方法。
    (a)所定濃度段階又は試料中の各標的タンパク質と、特定量の前記標的タンパク質に相当する安定同位体標識タンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して、質量分析を行い、標的タンパク質由来ペプチド断片/安定同位体標識タンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比から各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
    (b)全ての各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の平均値を平均定量値として求める工程;
    (c)平均定量値に対する、各標的タンパク質由来ペプチド断片の定量値の割合x(%)をそれぞれ算出し、ペプチド断片の質量変化を受けた割合(100−x)(%)をそれぞれ算出する工程;
  2. 標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾の定量であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、標的タンパク質の翻訳後修飾部位の同定であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 翻訳後修飾が、リン酸化又は糖化であることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
  5. 標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常の定量であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 標的タンパク質の質量分析法における質量変化の検出が、遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常部位の同定であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 遺伝子変異による標的タンパク質の配列異常が、一塩基多型(SNPs)によるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
  8. 安定同位体標識タンパク質として、翻訳後修飾又は遺伝子変異がない安定同位体標識タンパク質を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 翻訳後修飾部位又は遺伝子変異部位が、次の(1)〜(8)のいずれかの条件から設定されていることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
    (1)公共のデータベースで翻訳後修飾又は遺伝子変異によるアミノ酸配列変化が公開されている部位であること;
    (2)セリンもしくはスレオニン、タイロシンを含む配列部位であること;
    (3)膜タンパク質の細胞外部位もしくは分泌タンパク質でアスパラギンを含む配列部位であること;
    (4)リジンを含む配列部位であること;
    (5)システインを含む配列部位であること;
    (6)グルタミン酸を含む配列部位であること;
    (7)プロリンを含む配列部位であること;
    (8)請求項1記載の方法で求めた定量値が統計学的手法により平均定量値から外れ値を示す配列部位であること;
  10. 対象部位が、配列番号1〜6に示される翻訳後修飾及び遺伝子変異によるアミノ酸配列変化を受ける部位であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 安定同位体標識タンパク質が、15N,13C,18O,Hのいずれかを含むアミノ酸によって標識されるタンパク質であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. ペプチド断片化が、トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いた断片化であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. ペプチド断片化が、化学物質を用いた断片化であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  14. 標的タンパク質が、ヒトEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 以下の工程(i)〜(iii)を備えた、質量分析法で内部標準として使用する安定同位体標識タンパク質の絶対量の定量方法。
    (i)安定同位体標識アミノ酸を用いて、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質を合成する工程;
    (ii)前記安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質と、特定量の非安定同位体標識前記タグタンパク質との混合物にペプチド断片化処理を施し、得られるペプチド断片群に対して質量分析を行い、安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質部分由来ペプチド断片/非安定同位体標識タグタンパク質由来ペプチド断片のシグナル面積比やシグナル強度比からタグ由来の各ペプチド断片をそれぞれ定量する工程;
    (iii)安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質のタグタンパク質由来の各ペプチド断片の定量値の平均値を、合成した安定同位体標識タグタンパク質融合タンパク質の絶対量として求める工程;
  16. タグタンパク質が、GSTタグタンパク質であることを特徴とする請求項15に記載の定量方法。
  17. タグタンパク質が、Hisタグタンパク質であることを特徴とする請求項15に記載の定量方法。
  18. タグタンパク質が、次の(I)〜(VI)のいずれかの条件から設定されるアミノ酸の配列であることを特徴とする請求項15〜17いずれかに記載の絶対値の定量方法。
    (I)アミノ酸残基数が、3から500残基であること;
    (II)アミノ酸残基数が、500残基数であること;
    (III)アルギニンを含む配列であること;
    (IV)リジンを含む配列であること;
    (V)トリプシン、グルタミルペプチダーゼ、アスパラギンペプチダーゼ、キモトリプシンから選ばれるいずれかのタンパク質消化酵素を用いて断片化される配列であること;
    (VI)化学物質を用いて、ペプチドに断片化される配列であること;
  19. 非安定同位体標識タグタンパク質の量が、アミノ酸分析法により決定されることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の定量方法。
  20. 非安定同位体標識タグタンパク質の量が、生化学的比色法によって決定されることを特徴とする請求項15〜19のいずれかに記載の定量方法。
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