JPWO2011114678A1 - 哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤や、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法や、哺乳動物細胞の形質転換方法を提供することにある。tRNAをリポフェクション試薬と併用することを特徴とする。好適には、リポフェクション溶液中のtRNA濃度が3〜50μg/mLの範囲内であって、培養液中の濃度が約1/10になるように用いることができる。より好適には、tRNA及びPEGをリポフェクション試薬と併用することができる。本発明によれば、哺乳動物細胞への高い遺伝子導入効率を得ることができる。

Description

本発明は、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤や、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法や、哺乳動物細胞の形質転換方法に関する。
細胞への遺伝子導入方法には様々なものが知られている。例えば、生物学的方法としては、ウイルスベクターを利用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法が知られており、物理的方法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃法、超音波遺伝子導入法が知られており、化学的方法としては、リン酸カルシウム共沈殿法、リポソーム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、アルカリ金属法が知られている。上記リポフェクション法は、陽性荷電脂質等からなる脂質二重膜小胞(リポソーム)と、導入するDNAとの間の電気的な相互作用によって、リポソーム−DNA複合体を形成させ、その複合体を貪食や膜融合によって宿主細胞に取り込ませる方法である。DNAを必ずしもリポソーム内に封入しない点で、リポフェクション法は、リポソーム法と区別される。一般的に、遺伝子導入を行う場合には簡便さの点から、まずはリポフェクション法がおこなわれる。リポフェクション法は、汎用性及び簡便性が高く、また、多サンプル処理に適しているというメリットを有しているため、比較的広く用いられている。しかし、このリポフェクション法は、遺伝子導入効率の点で、エレクトロポレーション法や、ウイルスベクターを利用する方法に劣っているというデメリットもあった。一方、ウイルスベクターを利用する方法には、高い遺伝子導入効率を有するといったメリットがある反面、1)ウイルスベクターに目的遺伝子を入れた後、かかるウイルスベクターをウイルス産生細胞に導入し、その後目的遺伝子を含むウイルスを産生し、かかるウイルスを細胞に感染させるまで1週間程度もの時間が必要、2)ウイルスベクターを扱う施設が必要、3)ウイルスベクターを扱うのに十分な熟練の技術者が必要、4)ウイルスベクターが体細胞ゲノムに挿入され、残ってしまう場合があること、などの問題があった。したがって、ウイルスベクターを利用せずに、効率よく遺伝子導入する方法を開発できれば、有用な方法となる。
本発明者らは、これまでに、酵母への遺伝子導入効率を向上させる研究を行ってきた。例えば特許文献1には、酵母培養液に直接、該酵母細胞に導入するDNA、アルカリ金属イオンおよびポリエチレングリコール(PEG)を含有する溶液を混合して、形質転換を行なうことを特徴とする酵母の形質転換法が記載されている。また、特許文献1には、上記の混合溶液に、キャリアDNAやキャリアRNAをさらに用いることが記載されている。しかし、この特許文献1の方法は、酵母細胞を対象とし、また、アルカリ金属法に基づいた方法である。一方、本願発明の方法は、哺乳動物細胞を対象とし、また、リポフェクション法に基づいた方法であるため、特許文献1の方法とは全く異なる。加えて、特許文献1は、tRNAについて何ら教示していない。なお、酵母細胞は細胞壁を有するため、リポフェクション法は通常用いられない。
ところで、特許文献2には、哺乳動物細胞を宿主細胞とし、遺伝子導入効率が高い形質転換法が記載されている。特許文献2の形質転換法は、哺乳動物複製開始領域と、哺乳動物核マトリックス結合領域とを含む第1ベクター、および哺乳動物細胞内において機能するプロモーターと、分泌タンパク質をコードする目的遺伝子とを含む第2ベクターを、第2ベクターに対する第1ベクターのモル比が0.3〜5の範囲となるように、哺乳動物細胞へ同時に導入することを特徴としている。また、非特許文献1や非特許文献2には、特定の分子量のポリエチレングリコールを用いると、遺伝子導入効率が向上することが開示されている。しかし、上記のいずれの文献にも、哺乳動物細胞の遺伝子導入の際に、tRNAを用いることについて、何ら教示はない。
特開2005−269920号公報 特開2009−195197号公報
Journal of Applied Polymer Science, 114,2221-2225, 2009 The Journal of Gene Medicine, 3, 115-124, 2001
本発明は、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤や、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法や、哺乳動物細胞の形質転換方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、リポフェクション法による哺乳動物細胞への遺伝子導入の効率を向上させるべく、導入遺伝子の濃度、リポフェクション試薬の濃度、宿主細胞数などについて至適条件を検討したが、遺伝子導入効率をそれほど向上させることはできなかった。本発明者らは、さらに鋭意研究を続けた結果、tRNAをリポフェクション試薬と併用すると、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率を顕著に向上させ得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)tRNAを含有し、リポフェクション試薬と併用することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤や、(2)tRNA及びリポフェクション試薬を含有することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤や、(3)リポフェクション溶液中のtRNA濃度が3〜50μg/mLの範囲内となるように用いることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の向上剤や、(4)さらにポリエチレングリコールを併用することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の向上剤や、(5)ポリエチレングリコールの分子量が、2000〜6000の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の向上剤や、(6)ポリエチレングリコールの分子量が、3000〜5000の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の向上剤や、(7)哺乳動物が、ヒト、マウス、サルから選ばれる哺乳動物であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の向上剤に関する。
また、本発明は、(8)tRNAをリポフェクション試薬と併用することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法や、(9)tRNAをリポフェクション試薬と併用することにより、目的遺伝子を哺乳動物細胞へリポフェクションすることを特徴とする哺乳動物細胞の形質転換方法に関する。
本発明の遺伝子導入効率の向上剤や、遺伝子導入効率の向上方法によると、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率を顕著に向上させることができる。また、本発明の哺乳動物細胞の形質転換方法によると、哺乳動物細胞の形質転換を高効率で行うことができる。
[実施例1 遺伝子導入効率に対するtRNAの影響]の結果を示す図である。 [実施例2 各生物種由来のtRNAの効果]の結果を示す図である。 [実施例3 リポフェクション試薬の種類による効果]の結果を示す図である。 [実施例4 宿主細胞の種類による効果]の結果を示す図である。 [実施例5 リポフェクション試薬及びtRNAに、PEGをさらに添加することによる相乗効果]の結果を示す図である。左のグラフはHEK293細胞を用いた結果を示し、右のグラフはHeLa細胞を用いた結果を示す。 [リポフェクション試薬及びtRNAに、PEGをさらに添加することによる相乗効果]の結果を示す図である。EB5細胞を用いた結果を示す。 [参考例1 リポフェクション試薬にPEGを添加することによる効果]の結果を示す図である。 [参考例2 リポフェクション試薬の種類の影響]の結果を示す図である。 [参考例3 宿主細胞の種類による影響]の結果を示す図である。
1.本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤
本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤(以下、「本発明の向上剤」とも表示する。)は、tRNAを含有し、かつ、リポフェクション試薬と併用することを特徴とする。tRNAを含有する本発明の向上剤を、リポフェクション試薬と併用すると、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率を顕著に向上させることができる。なお、リポフェクション試薬と併用してリポフェクションを行ったときに、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率を向上させ得る効果を、本明細書において「本発明の遺伝子導入効率向上効果」とも表示する。本発明の遺伝子導入効率向上効果の作用機作は明確ではないが、tRNAをリポフェクション試薬と併用すると、哺乳動物細胞への遺伝子の取り込み効率が向上すると考えられる。
本明細書における「tRNA」としては、本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するtRNAである限り特に制限されず、仔ウシ肝臓(calf liver;Bovine)由来のtRNA(例えば配列番号1記載の配列からなるロイシンtRNA)、酵母(Yeasts;Saccharomyces cerevisiae)由来のtRNA(例えば配列番号2記載の配列からなるロイシンtRNA)、小麦胚芽(wheat germ;Wheat)由来のtRNA(例えば配列番号3記載の配列からなるフェニルアラニンtRNA)、大腸菌(E. coli)由来のtRNA(例えば配列番号4記載の配列からなるロイシンtRNA)を好適に例示することができ、中でも、本発明の遺伝子導入効率向上効果の程度が高いことから、酵母由来のtRNAをより好適に例示することができる。
本明細書における「tRNA」には、本発明の遺伝子導入効率向上効果を有している限り、tRNAの変異体(以下、単に「tRNA変異体」と表示する。)も含まれる。かかるtRNA変異体とは、配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドの変異体であって、かつ、いずれかの哺乳動物細胞において本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するポリリボヌクレオチドを意味する。
かかるtRNA変異体としては、
(a)配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドに対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有し、かつ、いずれかの哺乳動物細胞において本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するポリリボヌクレオチド:
(b)配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドにおいて、1若しくは2個以上のリボヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリリボヌクレオチドからなり、かつ、いずれかの哺乳動物細胞において本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するポリリボヌクレオチド:
(c)配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、いずれかの哺乳動物細胞において本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するポリリボヌクレオチド:
上記(b)における「1若しくは2個以上のリボヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリリボヌクレオチド」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、中でも1〜3個の任意の数のリボヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリリボヌクレオチドを意味する。
上記(c)における「ストリンジェントな条件下」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、具体的には、80%以上、好ましくは85%以上の同一性を有するDNA同士(又はDNAとRNA)がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士(又はDNAとRNA)がハイブリダイズしない条件あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である65℃、1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラークローニング第2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。上記(c)における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリリボヌクレオチド」としては、プローブとして使用するポリヌクレオチドと一定以上の同一性を有するポリリボヌクレオチドが挙げることができ、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有するポリリボヌクレオチドを好適に例示することができる。
上記の配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドは、化学合成法や、RNAポリメラーゼを利用した遺伝子工学的手法などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。
また、前述のポリリボヌクレオチドの変異体は、化学合成法、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。具体的には、配列番号1〜4のいずれかに示されるポリリボヌクレオチドに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的な手法等を用いて、これらポリリボヌクレオチドに変異を導入することにより、ポリリボヌクレオチドの変異体を取得することができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。
本発明におけるポリリボヌクレオチドとしては、一次構造として、一本鎖であるポリリボヌクレオチドを好適に例示することができ、二次構造として、Dアーム、アンチコドンアーム及びTアームを持つクローバーリーフ構造を有するポリリボヌクレオチドを好適に例示することができる。
本発明の向上剤と併用するリポフェクション試薬としては、本発明の遺伝子導入効率向上効果が得られる限り、特に制限されず、市販のリポフェクション試薬を用いることができる。市販のリポフェクション試薬としては、Fugene(登録商標)HD transfection reagent(Roche Applied Science社製)、Lipofectamine(登録商標)2000(invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX(invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX plus(invitrogen社製)、JetPEI(登録商標)(Polyplus-transfection社製)、GeneJuice(登録商標)(Takara Bio社製)、Turbofect(登録商標)(Fermentas社製)などを好適に例示することができ、中でも、より優れた本発明の遺伝子導入効率向上効果が得られることから、Fugene(登録商標)HD transfection reagent、Lipofectamine(登録商標)2000をより好適に例示することができる。
本発明において併用するtRNAとリポフェクション試薬の好適な組合せとしては、酵母由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、仔ウシ肝臓由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、麦胚芽由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、大腸菌(E. coli)由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、酵母由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、仔ウシ肝臓由来のtRNAとLipofectamine(登録商標)2000との組合せ、麦胚芽由来のtRNAとLipofectamine(登録商標)2000との組合せ、大腸菌(E. coli)由来のtRNAとLipofectamine(登録商標)2000との組合せを挙げることができ、中でも、酵母由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せ、仔ウシ肝臓由来のtRNAとFugene(登録商標)HD transfection reagentとの組合せをより好適に挙げることができる。
本発明の向上剤をリポフェクション試薬と併用する方法としては、通常のリポフェクション法において、リポフェクション試薬と共に本発明の向上剤を用いる方法である限り特に制限されず、より詳細には、リポフェクションを行う際に、本発明の向上剤と、導入する遺伝子と、リポフェクション試薬とが、宿主である哺乳動物細胞に共に接触している工程を含んでいる限り特に制限されず、該工程としては、蒸留水等の溶媒に、本発明の向上剤と、導入する遺伝子と、リポフェクション試薬とを添加、混合することによって作製したリポフェクション溶液を、哺乳動物細胞に添加する工程を好適に例示することができる。
本発明の向上剤をリポフェクション試薬と併用する際の、本発明の向上剤の濃度としては、本発明の遺伝子導入効率向上効果が得られる限り特に制限されず、用いるtRNAの種類や宿主細胞の種類に応じて適宜調節することができるが、リポフェクションのリポフェクション溶液のtRNAの濃度で換算して、例えば1〜100μg/mLの範囲内、好ましくは3〜50μg/mLの範囲内、より好ましくは5〜25μg/mLの範囲内で用いることを好適に例示することができる。本明細書において「リポフェクション溶液中の濃度」とは、目的遺伝子を宿主細胞にリポフェクションする際に用いる、リポフェクション試薬とDNAを混合した状態の溶液(リポフェクション溶液)中の濃度を意味する。なお、リポフェクションする際に用いるリポフェクション溶液の量としては、宿主細胞に接触する溶液に、リポフェクション溶液を添加することにより、リポフェクション溶液が5〜15倍、好適には7〜13倍、より好適には9〜11倍、特に好適には10倍に希釈されるような量を例示することができる。
上記の宿主である哺乳動物細胞としては、本発明の遺伝子導入効率向上効果が得られる限り特に制限されないが、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物由来の細胞を好適に例示することができ、中でも、ヒト、サル又はマウス由来の細胞をより好適に例示することができる。ヒト由来の細胞としては、293細胞(ATCC CRL−1573)、HeLa細胞(ATCC CCL−2)を好適に例示することができ、サル由来の細胞としては、COS7細胞(ATCC CRL−1651)を好適に例示することができ、マウス由来の細胞としては、NIH3T3細胞(ATCC CRL−1658)やEB5細胞(RIKEN BRC AES0151)を好適に例示することができる。これらの哺乳動物細胞は、例えば293細胞、HeLa細胞及びCOS7細胞はATCCから、前述のATCC番号に基づいて入手することができ、EB5細胞は、前述のRIKEN番号に基づいて独立行政法人理化学研究所から入手することができる。
哺乳動物細胞にリポフェクションする目的遺伝子は、宿主細胞内で発現可能なプロモーターの制御下に作動可能に配置されていることが好ましい。ここで、目的遺伝子が該プロモーターの制御下に作動可能に配置されているとは、該プロモーターに転写因子が結合することにより、その目的遺伝子の発現が誘導されるように、該プロモーターと、その目的遺伝子とが連結されていることを意味する。かかるプロモーターとしては、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター(CMVプロモーター)、SV40初期プロモーター、SRαプロモーター、ヒト伸長因子1−αプロモーター、ウシ成長ホルモンプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等を好適に例示することができる。上記「目的遺伝子」としては、任意の遺伝子であればよいが、なんらかの有用なタンパク質をコードする有用タンパク質遺伝子を好適に例示することができる。有用タンパク質遺伝子としては、エリスロポエチン等のサイトカイン遺伝子、抗体をコードする遺伝子や 、ウイルスワクチンタンパク質の遺伝子を好適に例示することができる。また、上記目的遺伝子やプロモーターは、宿主細胞内で複製し得るベクターに挿入して用いることが好ましく、かかるベクターとしては、宿主細胞内で複製し得るプラスミドを好適に例示することができ、中でも、CMVプロモーターを持つpCMVベクターを好適に例示することができる。
上記の目的遺伝子が宿主細胞内に導入されたかどうかは、目的遺伝子と共にマーカー遺伝子を導入し、形質転換体におけるそのマーカー遺伝子の発現を確認するなどして容易に確認することができる。
本発明の向上剤は、本発明の遺伝子導入効率向上効果を有する。あるtRNAが本発明の遺伝子導入効率向上効果を有するかどうかは、例えば、ガウシア由来の分泌型ルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase:GLuc)がCMV(Cytomegalovirus)プロモーターの支配下に配置されたプラスミドであるpCMV−GLucを用意する工程、蒸留水100μLに、0.5μgのpCMV−GLuc、0.1〜10μgの範囲内のtRNA、1μLのFugene(登録商標)HD transfection reagent(Roche Applied Science社製)添加した後、28℃で30分間静置してリポフェクション溶液を作製する工程、いずれか1種の哺乳動物細胞を96ウエル平底プレートに200μL/ウエル(2×10細胞/ウエル)ずつ播種して、20時間培養する工程、各ウエルの培地を取り除き、新たな培地を180μL/ウエルずつ添加する工程、その直後に、前述のリポフェクション溶液を、1ウエルにつき20μLずつ添加し、リポフェクションを行う工程、リポフェクション溶液の添加から24時間経過後に、各ウエルについて、ルシフェラーゼ活性を測定する工程、及び、0.1〜10μgの範囲内のtRNAを用いた場合におけるルシフェラーゼ活性の測定値(RLU(count/sec・μL))の最大値と、tRNAを用いないこと以外は同様のアッセイにより測定したルシフェラーゼ活性の測定値(RLU(count/sec・μL))(コントロール値)とを比較し、コントロール値よりも最大値が高い場合に本発明の遺伝子導入効率向上効果を有すると評価する工程を含むルシフェラーゼアッセイ等により容易に確認することができる。ここで「最大値」とは、0.1〜10μgの範囲内の5点以上(好適には8点以上)のtRNAを用いた場合におけるルシフェラーゼ活性の測定値(RLU(count/sec・μL))の最大値を意味し、より好適には0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.5μg、1μg、2.5μg、5μg、10μgの8点のtRNAを用いた場合におけるルシフェラーゼ活性の測定値(RLU(count/sec・μL))の最大値を例示することができる。また、上記の「いずれか1種の哺乳動物細胞」としては、NIH3T3細胞、COS7細胞、293細胞、HeLa細胞、及び、EB5細胞から選択される哺乳動物細胞を好適に例示することができる。
本発明の遺伝子導入効率向上効果の好ましい程度としては、例えば、上記のルシフェラーゼアッセイにおける最大値(RLU(count/sec・μL))が、コントロール値(RLU(count/sec・μL))に対して、2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは7倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは15倍以上、より好ましくは20倍以上、さらに好ましくは30倍以上、より好ましくは50倍、さらに好ましくは75倍以上であることを好適に含む。
本発明の向上剤におけるtRNAの含有量としては、特に制限されないが、本発明の向上剤に対して本発明におけるtRNAを例えば0.1〜100質量%、好適には0.5〜90質量%、より好適には1〜80質量%とすることができる。
本発明の向上剤には、tRNAの他に、さらにリポフェクション試薬を含有していることが好ましい。かかる本発明の向上剤には、tRNAとリポフェクション試薬を同一容器内で含有している場合や、tRNAとリポフェクション試薬を別々の容器で備えている場合が含まれる。また、本発明の向上剤は、本発明の遺伝子導入効率向上効果が得られる限り、本発明におけるtRNAの他に、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の他の向上剤や、ポリエチレングリコール(PEG)等の任意成分を含んでいてもよい。
ポリエチレングリコールをさらに併用すると、本発明の遺伝子導入効率向上効果がより高めることができるので、さらにポリエチレングリコールを併用することが好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は特に制限されないが、本発明の遺伝子導入効率向上効果をより高める観点から、2000〜6000の範囲内の分子量を好適に例示することができ、3000〜5000の範囲内の分子量をより好適に例示することができ、3000〜4000の範囲内の分子量をさらに好適に例示することができる。
また、ポリエチレングリコールの使用量としては、リポフェクション溶液中の濃度で3〜30質量%の範囲内を好適に例示することができ、3〜20質量%の範囲内をより好適に例示することができ、4〜6質量%の範囲内をさらに好適に例示することができる。ポリエチレングリコールの使用量の別の表現としては、用いるリポフェクション試薬に対して300〜1000質量%の範囲内を好適に例示することができ、300〜750質量%の範囲内をより好適に例示することができ、400〜600質量%の範囲内をさらに好適に例示することができる。
本発明の向上剤に含有されるtRNAは、常法によって適宜の製剤とすることができる。製剤の剤型としては、粉剤などの固形製剤、溶液剤などの液剤を例示することができるが、tRNAをより安定的に保存し得ることから、固形製剤を好適に例示することができる。本発明におけるtRNAを製剤とする場合には、製剤上の必要に応じて、適宜の担体、例えば、賦形剤、結合剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などの任意成分を配合することができる。なお、本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤は、本発明の哺乳動物への遺伝子導入剤とも表現することができる。
2.本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法
本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法は、tRNAをリポフェクション試薬と併用することを特徴とする。tRNAをリポフェクション試薬と併用する方法としては、前述した本発明の向上剤をリポフェクション試薬と併用する方法と同様の方法を好適に例示することができる。本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法によれば、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率を顕著に向上させることができる。なお、本発明の哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法は、本発明の哺乳動物への遺伝子導入方法とも表現することができる。
3.本発明の哺乳動物細胞の形質転換方法
本発明の哺乳動物細胞の形質転換方法は、tRNAをリポフェクション試薬と併用することにより、目的遺伝子を哺乳動物細胞へリポフェクションすることを特徴とする。tRNAをリポフェクション試薬と併用する方法としては、前述した本発明の向上剤をリポフェクション試薬と併用する方法と同様の方法を好適に例示することができる。本発明の哺乳動物細胞の形質転換方法によれば、哺乳動物細胞での形質転換を高効率で行うことができる。
[遺伝子導入効率に対するtRNAの影響]
遺伝子導入効率に対するtRNAの影響を調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
まず、レポータープラスミドとして、pCMV−GLuc(New England BioLab社製)を用意した。かかるpCMV−GLucでは、ガウシア由来の分泌型ルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase:GLuc)をコードする遺伝子が、CMV(Cytomegalovirus)プロモーターの支配下に配置されている。CMVプロモーターは、哺乳動物細胞において構成的に発現するプロモーターであるので、リポフェクション実験のレポータープラスミドの作製に適している。
次に、仔ウシの肝臓由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, transfer Type VI From Bovine liver」、Cat#R4752-50UN)と、トータルRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid from calf liver Type IV」、Cat# R7250-100MG)を用意した。なお、トータルRNAのほとんどが、rRNAからなる。次いで、蒸留水100μLにつき、0.5μgのpCMV−GLucと、所定量のRNA(tRNA又はトータルRNA)を添加した。その溶液にリポフェクション試薬の1種であるFugene(登録商標)HD transfection reagent(Roche Applied Science社製)を1μL添加して10μLとした。この溶液を28℃で30分間静置した。この溶液(以下、「リポフェクション溶液」とも表示する。)を合計404μLほど作製した。なお、上記の所定量とは、RNAがtRNA、トータルRNAのいずれの場合も、0μg、0.078μg、0.156μg、0.313μg、0.625μg、1.25μg、2.5μg、5μg、10μg(リポフェクション溶液における濃度換算で、それぞれ、0μg/mL、10.78μg/mL、21.56μg/mL、33.13μg/mL、56.25μg/mL、1012.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL)であった。
一方、マウスの胎児皮膚から分離した培養細胞であるNIH3T3(NIH−3T3)細胞を用意し、培地(RPMI1640に10%FCSを混合した培地)を含む96ウエル平底プレートに200μL/ウエル(2×10細胞/ウエル)ずつ播種して、NIH3T3細胞を20時間培養した。その後、各ウエルの培地を取り除き、新たな培地(RPMI1640に10%FCSを混合した培地)を180μL/ウエルずつ添加した。その直後に、前述のリポフェクション溶液を、1ウエルにつき20μLずつ添加し、リポフェクションを行った。リポフェクション溶液の添加から24時間経過後に、各ウエルについて、ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果を図1に示す。
図1の結果から分かるように、0.5〜2.5μg(リポフェクション溶液中の濃度で5〜25μg/mL)のtRNAを、リポフェクション試薬と併用すると、トータルRNAとリポフェクション試薬とを併用した場合と比べて、遺伝子導入効率が飛躍的に高まることが示された。特に、tRNAを1.25μg(リポフェクション溶液中の濃度で12.5μg/mL)用いたときは、RNAを用いなかった場合(コントロール)と比較して、遺伝子導入効率が58倍にも高まっていた。
[各生物種由来のtRNAの効果]
実施例1では、宿主細胞としてマウス由来の細胞を用い、及び、仔ウシ由来のtRNAを用いた。宿主細胞として他の哺乳動物細胞を用い、及び、他の生物種由来のtRNAを用いた場合であっても、遺伝子導入効率向上効果を有しているかを調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
tRNAとして、仔ウシ肝臓(calf liver)由来のtRNAの他に、酵母(Yeasts)由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, Type X-SA transfer from baker's yeast」、Cat#R8759-100UN)、小麦胚芽(wheat germ)由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, Type V, transfer from Wheat Germ」、Cat# R7876-500UN)、大腸菌(E. coli)由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, transfer Type XX from Escherichia coli strain W」、Cat#R1753-100UN)を用意した。また、宿主細胞として、サルの腎臓由来の培養細胞であるCOS7細胞を用意した。NIH3T3細胞に代えてCOS7細胞を用い、tRNAとして各生物種由来のtRNAを用いたこと以外は、実施例1におけるリポフェクション実験と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、コントロールとして、tRNAを用いない方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図2に示す。
図2の結果から分かるように、程度に差はあるものの、いずれの生物種由来のtRNAをリポフェクション試薬と併用した場合であっても、tRNAを用いなかった場合(fugene:コントロール)と比較して、遺伝子導入効率の向上効果が見られた。すなわち、リポフェクション溶液中のtRNA濃度が1〜100μg/mLの範囲内の濃度における遺伝子導入効率の最大値が、コントロールの遺伝子導入効率の何倍であるかを算出したところ、仔ウシ肝臓由来のtRNAの場合は2.8倍、酵母由来のtRNAの場合は16.5倍、小麦胚芽由来のtRNAの場合は6.5倍、大腸菌由来のtRNAの場合は5.2倍であった。また、酵母由来のtRNAは、0.5〜2.5μg(リポフェクション溶液中の濃度で5〜25μg/mL)において、それ以外の由来のtRNAは、1.25〜5μg(リポフェクション溶液中の濃度で12.5〜50μg/mL)において、遺伝子導入効率がとりわけ向上した。
[リポフェクション試薬の種類による効果]
実施例1や2では、リポフェクション試薬として、Fugene(登録商標)HD transfection reagent(Roche Applied Science社製)を用いた。そこで、他のリポフェクション試薬を用いた場合であっても、tRNAの遺伝子導入効率向上効果が得られるかを調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
リポフェクション試薬として、Fugene(登録商標)HD transfection reagent、Lipofectamine(登録商標)2000(invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX (invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX plus(invitrogen社製)、JetPEI(登録商標)(Polyplus-transfection社製)、GeneJuice(登録商標)(Takara Bio社製)、又は、Turbofect(登録商標)(Fermentas社製)を用い、及び、tRNAとして酵母由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, Type X-SA transfer from baker's yeast」、Cat#R8759-100UN)を0.625μg(リポフェクション溶液中の濃度で6.25μg/mL)用いたこと以外は、実施例2の方法と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、コントロールとして、tRNAを用いない方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図3に示す。
図3の結果から分かるように、いずれのリポフェクション試薬を用いた場合も、tRNAを併用すると、遺伝子導入効率が飛躍的に向上した。中でも、Fugene(登録商標)HD transfection reagentや、Lipofectamine(登録商標)2000は、遺伝子導入効率の向上の程度が顕著であった。
[宿主細胞の種類による効果]
実施例1では、宿主細胞としてNIH3T3細胞を用い、実施例2〜3では、宿主細胞としてCOS7細胞を用いた。そこで、宿主細胞として、他の哺乳動物細胞を用いた場合であっても、tRNAの遺伝子導入効率向上効果が得られるかを調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
宿主細胞として、NIH3T3細胞、COS7細胞、293細胞、又は、HeLa細胞を用い、及び、tRNAとして酵母由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, Type X-SA transfer from baker's yeast」、Cat#R8759-100UN)を様々な濃度で用いたこと以外は、実施例2の方法と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、コントロールとして、tRNAを用いない方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図4に示す。なお、293細胞は、ヒト胎児腎細胞由来の培養細胞であり、HeLa細胞は、ヒト子宮頸部がん由来の培養細胞である。
図4の結果から分かるように、いずれの哺乳動物細胞を用いた場合も、tRNAを併用すると、遺伝子導入効率が飛躍的に向上した。具体的には、COS7細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して17倍となり、293細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して17倍となり、NIH3T3細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して22倍となり、HeLa細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して27倍となった。
[リポフェクション試薬及びtRNAに、PEGをさらに添加することによる相乗効果]
リポフェクション試薬とtRNAに加えて、さらにPEGを用いた場合の影響を調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
tRNAとして酵母由来のtRNA(Sigma Aldrich社製、「Ribonucleic acid, Type X-SA transfer from baker's yeast」、Cat#R8759-100UN)を0.625μg(リポフェクション溶液中の濃度で6.25μg/mL)用い、哺乳動物細胞として293細胞又はHeLa細胞を用い、及び、リポフェクション溶液にさらにPEG3350(Sigma社製)を5質量%となるように添加したこと以外は、実施例2におけるリポフェクション実験と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、PEG3350を用いない方法でもリポフェクション実験を行った。さらに、コントロールとして、tRNAを用いない方法、及び、tRNAを用いないがPEG3350は用いる方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図5に示す。
図5から分かるように、「リポフェクション試薬及びtRNA」に加えて、さらにPEGを用いると、遺伝子導入効率が相乗的にさらに向上することが示された。具体的には、「リポフェクション試薬及びtRNA」に加えて、さらにPEGを用いることによって、宿主細胞が293細胞の場合は遺伝子導入効率が約5.9倍となり、宿主細胞がHeLa細胞の場合は遺伝子導入効率が約3.3倍となった。
上記図5で実施したリポフェクション実験を、マウスE14tg2a細胞由来のES細胞、すなわちEB5細胞においても同様に行った。図6から分かるように、「リポフェクション試薬及びtRNA」に加えて、さらにPEGを用いると、遺伝子導入効率が相乗的にさらに向上することが示された。具体的には、「リポフェクション試薬及びtRNA」に加えて、さらにPEGを用いることによって、EB5細胞における遺伝子導入効率が約10倍となった。
[参考例1 リポフェクション試薬にPEGを添加することによる効果]
tRNAを用いずに、リポフェクション試薬にPEGを添加した場合の影響、及び、PEGの分子量の影響を調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
tRNAを用いなかったこと、各分子量(600、1000、3350、6000、10000)のPEGをリポフェクション溶液における濃度で0〜30%(w/v)(リポフェクション溶液中の濃度で0〜3%(w/v))添加したこと以外は、実施例2におけるリポフェクション実験と同じ方法でリポフェクション実験を行った。これらの結果を図7に示す。
図7の結果から分かるように、程度に差はあるものの、いずれの分子量のPEGをリポフェクション試薬と併用した場合であっても、PEGを用いなかった場合(fugene:コントロール)と比較して、遺伝子導入効率の向上効果が見られた。中でも、分子量3350のPEGは、リポフェクション溶液における濃度が5%(w/v)のときに、コントロールと比較して21倍もの遺伝子導入効率を示した。
[参考例2 リポフェクション試薬の種類の影響]
参考例1や2では、リポフェクション試薬として、Fugene(登録商標)HD transfection reagent(Roche Applied Science社製)を用いた。そこで、他のリポフェクション試薬を用いた場合であっても、PEGの遺伝子導入効率向上効果が得られるかを調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
リポフェクション試薬として、Fugene(登録商標)HD transfection reagent、Lipofectamine(登録商標)2000(invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX (invitrogen社製)、Lipofectamine(登録商標)LTX plus(invitrogen社製)、Carri Gene(Nitto Denko Tech. corp.社製)、JetPEI(登録商標)(Polyplus-transfection社製)、GeneJuice(登録商標)(Takara Bio社製)、又は、Turbofect(登録商標)(Fermentas社製)を用い、及び、PEGとして、分子量3350のPEGを5%(w/v)で用いたこと以外は、参考例1の方法と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、コントロールとして、PEGを用いない方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図8に示す。
図8の結果から分かるように、いずれのリポフェクション試薬を用いた場合も、PEGを併用すると、遺伝子導入効率が顕著に向上した。
[参考例3 宿主細胞の種類による影響]
参考例1〜2では、宿主細胞としてCOS7細胞を用いた。そこで、宿主細胞として、他の哺乳動物細胞を用いた場合であっても、PEGの遺伝子導入効率向上効果が得られるかを調べるために、以下のようなリポフェクション実験を行った。
宿主細胞として、COS7細胞、NIH3T3細胞、293細胞、又は、HeLa細胞を用い、及び、PEGとして、分子量3350のPEGを5%(w/v)で用いたこと以外は、参考例1の方法と同じ方法でリポフェクション実験を行った。また、コントロールとして、PEGを用いない方法でもリポフェクション実験を行った。これらの結果を図9に示す。
図9の結果から分かるように、いずれの哺乳動物細胞を用いた場合も、PEGを併用すると、遺伝子導入効率が顕著に向上した。具体的には、COS7細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して27倍となり、293細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して24倍となり、NIH3T3細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して30倍となり、HeLa細胞の場合は、最大値がコントロールと比較して27倍となった。
本発明は、哺乳動物細胞への遺伝子導入の分野において、好適に利用することができる。

Claims (9)

  1. tRNAを含有し、リポフェクション試薬と併用することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤。
  2. tRNA及びリポフェクション試薬を含有することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上剤。
  3. リポフェクション溶液中のtRNA濃度が3〜50μg/mLの範囲内となるように用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の向上剤。
  4. さらにポリエチレングリコールを併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の向上剤。
  5. ポリエチレングリコールの分子量が、2000〜6000の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の向上剤。
  6. ポリエチレングリコールの分子量が、3000〜5000の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の向上剤。
  7. 哺乳動物が、ヒト、マウス、サルから選ばれる哺乳動物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の向上剤。
  8. tRNAをリポフェクション試薬と併用することを特徴とする、哺乳動物細胞への遺伝子導入効率の向上方法。
  9. tRNAをリポフェクション試薬と併用することにより、目的遺伝子を哺乳動物細胞へリポフェクションすることを特徴とする哺乳動物細胞の形質転換方法。
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