以下、実施の形態に係る電線の導体接触状態検出装置について説明する。ここでは、下記の各実施形態において、電線の導体接触状態検出装置を、電線の被覆をストリップ刃でストリップする際に、ストリップ刃と芯線との接触を検出する芯線接触検出装置に適用した例で説明する。
<実施形態1>
実施形態1では、下記の実施形態2〜実施形態4を包括する基本構成について説明する。
図1は電線ストリップ処理装置10を示す概略側面図である。この電線ストリップ処理装置10は、電線ストリップユニット12と芯線接触検出装置40とを備えている。
電線ストリップユニット12は、電線Wの端部の被覆Wbを皮剥ぎするための装置であり、一対のストリップ刃14A,14Bと、刃駆動部16と、電線保持部20と、被覆除去駆動部22とを備えている。
一対のストリップ刃14A,14Bは、電線Wの被覆Wbに切込み可能な刃形状に形成されている。被覆Wbにはポリ塩化ビニル製などの絶縁樹脂部材が用いられる。ここでは、一対のストリップ刃14A,14Bの先端部が略V字状に凹むV字刃形状に形成されている(図2参照)。そして、そのV字刃形状部分が電線Wの被覆Wbに切込み可能に形成されている(図3参照)。なお、ストリップ刃14A,14Bの形状は上記例に限られず、例えば、略円弧状凹刃形状であってもよい。
刃駆動部16は、一対のストリップ刃14A,14Bを接近及び離隔移動可能に構成されている。ここでは、刃駆動部16は、一対の刃支持部17A,17Bと、刃支持部17A,17Bを移動可能に支持するねじ部18と、ねじ部18を回転させるモータ19とを有している。
ねじ部18は、所定方向(ここでは上下方向)に沿って配設されており、その中心軸周りに回転自在に支持されている。ねじ部18の一端側部分18aには、所定の螺旋方向に沿ったネジ溝が形成され、ねじ部18の他端側部分18bには、逆の螺旋方向に沿ったネジ溝が形成されている。
モータ19は、サーボモータ等の回転量の駆動制御が可能なモータによって構成されており、その回転駆動力をねじ部18に伝達可能な態様で配設されている。ここでは、モータ19の駆動軸部がねじ部18に直接的に連結されている。そして、モータ19の回転駆動に応じて、ねじ部18が正逆両方向に回転可能に構成されている。
一対の刃支持部17A,17Bは、長尺状部材に形成されており、それぞれの先端部にストリップ刃14A,14Bが固定支持されている。また、一方の刃支持部17Aの基端部には、ねじ部18の一端側部分18aと螺合可能な螺合部17Aaが形成されており、他方の刃支持部17Bの基端部には、ねじ部18の他端側部分18bと螺合可能な螺合部17Baが形成されている。
そして、一対のストリップ刃14A,14Bの先端部を対向させる姿勢で、一方の刃支持部17Aの螺合部17Aaがねじ部18の一端側部分18aに螺合されると共に、他方の刃支持部17Bの螺合部17Baがねじ部18の他端側部分18bに螺合されている。この状態で、モータ19を正方向或は逆方向に回転制御することで、一対のストリップ刃14A,14Bを接近移動或は離隔移動させることができる構成となっている。
もっとも、刃駆動部としては上記構成に限られず、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ等で駆動する構成であってもよく、また、一対のストリップ刃14A,14Bをそれぞれ別々に駆動する構成であってもよい。
電線保持部20は、電線Wの端部を一対のストリップ刃14A,14B間に配設した姿勢で、当該電線Wを保持可能に構成されている。このような電線保持部20としては、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ等のアクチュエータの駆動により一対の把持爪を開閉駆動する周知のチャック機構等を採用することができ、要するに、電線を保持可能な構成を採用することができる。
被覆除去駆動部22は、一対のストリップ刃14A,14Bと上記電線保持部20とを離間方向に移動させることで電線Wの端部の被覆Wbを除去する運動を付与する機構として構成されている。ここでは、被覆除去駆動部22は、エアシリンダ、油圧シリンダ等のアクチュエータ等により構成されており、上記電線保持部20を、一対のストリップ刃14A,14Bから離間させる方向に移動させるように構成されている。
この電線ストリップユニット12は、ストリップ処理制御部28の制御下、次のようにして電線Wの端部の被覆Wbをストリップする。
すなわち、一対のストリップ刃14A,14Bを離間移動させた状態で、一対のストリップ刃14A,14B間に電線Wの端部を配設するようにして、電線Wを電線保持部20で保持する(図2参照)。この状態で、刃駆動部16の駆動により一対のストリップ刃14A,14Bを接近移動させる。すると、一対のストリップ刃14A,14BのV字刃形状部分に囲まれた領域に芯線Waを配設した状態で、V字刃形状部分が被覆Wbに切込んでいく(図3参照)。このように、V字刃形状部分を被覆Wbに切込ませた状態で、被覆除去駆動部22の駆動により一対のストリップ刃14A,14Bと電線保持部20とを離間方向に移動させると、被覆WbのうちV字刃形状部分より先端側の部分が、電線保持部20で保持された電線W部分から除去され、電線Wの端部に芯線Waが露出するようになる。なお、上記動作は、ストリップ処理制御部28から電線ストリップユニット12に与えられる動作信号に基づいて行われる。この動作信号には、一対のストリップ刃14A,14Bの動作制御に係る指令、例えば、一対のストリップ刃14A,14Bの駆動開始指令、一対のストリップ刃14A,14Bを被覆Wbに切込ませた状態で停止させるべき位置に応じた目標位置指令等が含まれている。この動作信号は、一対のストリップ刃14A,14Bの動作タイミングを表す信号として後述する接触状態判定処理部50に入力される。
ここで、一対のストリップ刃14A,14Bが被覆Wbに切込んだ際に、一対のストリップ刃14A,14Bが芯線Waに接触してしまうことがある(図4参照)。ストリップ刃14A,14Bが芯線Waに接触してしまうと、芯線に傷付き或は芯線切れ等が発生し、接触不良或は断線等の要因となり得る。
芯線接触検出装置40は、上記のように電線Wの被覆Wbをストリップ刃14A,14Bでストリップする際に、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触を検出する装置として構成されている。
すなわち、芯線接触検出装置40は、振動検知部42と、接触状態判定処理部50とを備えている。
振動検知部42は、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によって発生するエネルギーに応じた物理量を検知可能に構成されており、より具体的には、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によって生じる振動周波数を含む周波数域の振動を検知可能に構成されている。
つまり、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとが接触し芯線Waに傷等の破壊が生じてしまった場合、AE(Acoustic Emission)によってAE波が発生する。そこで、振動検知部42は、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によるAE波の振動周波数を含む周波数域の振動を検知可能に構成されている。このAE波は、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によって発生する振動エネルギーに応じた物理量を呈する波形を有しおり、その波形の振幅値は接触によって発生するエネルギーに応じた値を示す。なお、本出願において、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によって生じる振動周波数とは、当該接触によって生じる主たる範囲の振動周波数、或は、当該接触によって生じる主たる特定の振動周波数を意味している。
通常、芯線Waは金属で形成されており、また、ストリップ刃14A,14Bも金属で形成されている。そして、金属の破壊により発生するAE波は、100kHz〜300kHzの範囲内で減衰が少なく観測し易い。このため、振動検知部42は、100kHz〜300kHzの範囲に対して部分的に或は全体的に重複する周波数域の振動を検知可能であることが好ましい。より好ましくは、振動検知部42は、100kHz〜300kHzの範囲で感度よく振動を検知できることが好ましく、より具体的には、振動検知部42は100kHz〜300kHzの範囲内の共振周波数を持つ共振型AEセンサであることが好ましい。さらに好ましくは、200kHzの共振周波数を持つ共振型AEセンサであることが好ましい。
ここでは、振動検知部42はストリップ刃14Aに接触するようにして取付固定されている。より具体的には、振動検知部42の検知面をストリップ刃14Aの一主面に接触させるようにして、振動検知部42が取付固定されている。振動検知部42の取付固定は、ネジ締め、接着等種々の取付構造により行うことができる。また、振動検知部42の取付位置は、上記ストリップ作業を妨げない位置であれば、ストリップ刃14A自体であってもストリップ刃14Aを保持する部分等であってもよい。このように、振動検知部42をストリップ刃14Aに接触させた態様で取付固定することで、芯線Waとストリップ刃14Aとの接触によって生じるAE波の振動をより確実に検知することができる。
なお、芯線Waとストリップ刃14Bとの接触によって生じるAE波も、電線W,ストリップ刃14A等を介して振動検知部42に伝達される。このため、芯線Waとストリップ刃14Bとの接触によって生じるAE波の振動も、振動検知部42によって検知できる。もっとも、振動検知部42が一対のストリップ刃14A,14Bのそれぞれに設けられていてもよい。
この振動検知部42からの振動検知信号は、例えば、検知された振動に応じた電圧を持つアナログ信号として接触状態判定処理部50に入力される。
図5は接触状態判定処理部50のハードウエア構成を示すブロック図である。接触状態判定処理部50は、上記振動検知部42から入力される検知信号に基づいて、振動検知部42の出力信号に基づいて、判定対象期間におけるエネルギー発生状況に応じて芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無を判定する50としての処理を実行可能に構成されている。
ここで、判定対象期間とは、ある時間から他の時間までの幅を持つ期間を意味し、判定対象期間におけるエネルギー発生状況とは、そのような幅を持つ期間におけるエネルギーに応じた量、変化状況、或は、断続状況等を意味し、特定の時間における瞬間的なエネルギーの値だけに基づいて接触の有無を判定するものではなないないことを意味している。
より具体的には、接触状態判定処理部50は、CPU52、ROM53、RAM54、外部記憶装置55等がバスライン51を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM53は基本プログラム等を格納しており、RAM54はCPU52が所定の処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置55は、フラッシュメモリ或はハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置55には、芯線接触検出処理を行うための接触検出プログラム55aが格納されている。この接触検出プログラム55aに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU52が演算処理を行うことにより、後述するようにストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触を検出する各種機能が実現されるように構成されている。なお、以下の各実施形態で説明する各処理も、接触検出プログラム155aに実行手順として記述された処理であり、CPU52が接触検出プログラム155aに従って所定の演算処理を行うことにより実現される。接触検出プログラム55aは、通常、予め外部記憶装置55等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROM或はDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プロフラムプロダクト)で提供され或はネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され、追加的又は交換的に外部記憶装置55等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、上記接触状態判定処理部50が行う一部或は全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
また、外部記憶装置55には、上記芯線接触検出処理を行う際の基準となる判断基準55bが格納されている。
また、この接触状態判定処理部50では、検知信号入力回路部56,出力回路部57a,入力回路部57b,入力部58,表示部59もバスライン51に接続されている。
検知信号入力回路部56は、増幅回路、フィルタ回路、AD変換回路等を有している。そして、振動検知部42によって得られた振動検知信号がアナログ信号で入力されると、増幅回路及びフィルタ回路を経て、AD変換回路に入力されてデジタル信号に変換されるように構成されている。なお、フィルタ回路としては、例えば、金属の破壊によるAE波に応じた100kHz〜300kHzの通過領域を持つバンドパスフィルタを用いることが好ましい。この検知信号入力回路部56でデジタル信号に変換された振動検知信号は、例えば、振幅値が経時的に変化する波形データとしてRAM54或は外部記憶装置55に記憶され、後述する接触検出処理に供される。
出力回路部57aは、CPU52による制御下、他の機器への制御信号等を出力する出力回路である。入力回路部57bには、外部からの諸信号、ここでは、ストリップ処理制御部28からの動作信号が、本入力回路部57bを通じて入力される。
入力部58は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、上記判断基準55bの入力設定指示の他、接触状態判定処理部50に対する諸指示を受付可能に構成されている。
表示部59は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU52による制御下、接触状態の判定結果等の諸情報を表示可能に構成されている。
図6は接触状態判定処理部50による接触状態判定処理を示すフローチャートである。
接触状態判定処理開始後、接触状態判定処理部50は、ステップT1において、電線ストリップユニット12からの動作信号を元に、判定対象データを取得する。判定対象データは、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく少なくとも一部の期間を含む判定対象期間に対応するデータであることが好ましい。この範囲は、より好ましくは、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく際、芯線Waに接触してしまう可能性がある期間、例えば、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく途中から停止するまで或は停止する直前までの期間として設定される。上記判定範囲は、電線ストリップユニット12によるストリップ刃14A,14Bの動作開始指令時又は動作停止指令を基準として一定期間を切出したものであってもよい。或は、ストリップ刃14A,14Bの速度情報或は位置情報がフィードバックされている場合には、当該速度情報或は位置情報に基づいて切出されてもよい。速度情報に基づいて判定範囲を切出す場合には、例えば、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んだ後徐々に速度低下して停止することに鑑み、ストリップ刃14A,14Bが最高速度からある程度減速した期間で切出すようにするとよい。
次ステップT2では、取得された判定対象データに基づき、判定対象期間におけるエネルギーの発生状況を分析する。より具体的には、上記判定対象データに基づいて、複数の時点におけるエネルギーの大きさを表す値(データ)に基づいてエネルギーの発生状況に応じた評価値を算出する。このような評価値としては、例えば、判定対象期間を分割した複数の判定期間に対する所定の条件の充足性に関する評価値、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量を表す評価値或は判定対象期間におけるエネルギーの継続性を示す評価値、エネルギーの変化度合を表す評価値(例えば、波形の瞬間的な傾き、平均的な傾き等)等が考えられる。これらのより具体的な例については、実施形態2〜4で説明する。
次ステップT3では、分析されたエネルギーの発生状況が判断基準55bを満たすか否かを判断する。判断基準55bは、ストリップ刃14A,14Bが被覆Wbに切込んでいく際等、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの非接触状態期間におけるエネルギーの発生状況と、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとが接触する期間において観察されるエネルギーの発生状況とを区別するための判断基準(閾値等)であり、実験的経験的に決定され、記憶部55に予め格納されている。
そして、判断基準55bが満たされると判断されると、接触有りと判定され、その判定結果が出力される。判定結果に基づいて、表示部59において接触有る旨の表示がなされる。或は、判定結果に基づいて、ストリップ処理を停止させる旨の信号が電線ストリップユニット12に与えられる。これにより、電線ストリップユニット12側では、当該信号を受けてストリップ処理を一時的に停止するとよい。
一方、判断基準55bが満たされないと判定されると、接触無しと判定される。これにより、続けてストリップ作業等が実施される。
以上のように構成された芯線接触検出装置、芯線接触検出方法及び芯線接触検出プログラムによると、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとが接触すると、その際の振動が振動検知部42を通じて検知される。そして、振動検知部42より入力される振動検知信号に基づき、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定することができる。これにより、電線Wの被覆Wbをストリップする際に、検査用の電極を芯線に電気的に接続等しなくとも、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触を簡易に検出できる。
また、以下の理由により、ノイズの影響を抑制しつつ、ストリップ刃と芯線との接触をより正確に判定できる。
まず、振動検知部42からの振動検知信号には、ストリップ刃と芯線との接触による振動だけではなく、他の各種外来ノイズが含まれる。他の各種外来ノイズは、ストリップ刃と芯線との接触による振動による大きさに比べて大きいのが一般的である。とすると、単に、検知された振動の振幅が所定値を越えたときに、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触有りと判定する手法では、上記外来ノイズの影響を排除できず、正確な判定を行うことが困難となる。
ところで、ストリップ刃と芯線との接触による振動は、ストリップ刃と芯線との接触期間中、ある程度継続的に発生する。これに対して、各種外来ノイズは、機械の他の部分の金属同士の衝突或は擦れ期間中にのみ発生し、ストリップ刃と芯線との接触による振動発生期間と比べると、比較的短時間であるのが一般的である。
そこで、本実施形態のように、判定対象期間において、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によって発生するエネルギーの発生状況に応じて、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無を判定すると、大きな外来ノイズであっても、その発生時間が十分に短ければ、その外来ノイズの影響を抑制できる。このため、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触をより正確に判定できることになる。
以下、本実施形態1を前提として、実施形態2〜4に基づいてより具体的な構成を説明する。なお、下記の各実施形態の説明において、本実施形態1で説明した構成と同様構成については同一符号を付する等して説明を省略することがある。
<実施形態2>
実施形態2では、接触状態判定処理部が、判定対象期間を複数に分割した判定期間におけるエネルギーに応じた量に基づいて複数の期間毎に期間毎接触判定基準を満たすか否かを判定し、期間毎の判定信号に基づいてストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定する構成について説明する。
図7は接触状態判定処理部50のハードウエア構成を示すブロック図である。接触状態判定処理部50は、上記振動検知部42から入力される検知信号に基づいて、複数の判定期間毎に期間毎接触判定基準を満たすか否かを判定し、期間毎の判定結果に基づいてストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定する接触状態判定処理部50としての処理を実行可能に構成されている。
より具体的には、接触状態判定処理部50は、CPU52、ROM53、RAM54、外部記憶装置55等がバスライン51を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM53は基本プログラム等を格納しており、RAM54はCPU52が所定の処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置55は、フラッシュメモリ或はハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置55には、後述する芯線接触検出処理を行うための接触検出プログラム155aが格納されている。この接触検出プログラム155aに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU52が演算処理を行うことにより、後述するようにストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触を検出する各種機能が実現されるように構成されている。接触検出プログラム155aは、通常、予め外部記憶装置55等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROM或はDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プロフラムプロダクト)で提供され或はネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され、追加的又は交換的に外部記憶装置55等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、上記接触状態判定処理部50が行う一部或は全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
また、外部記憶装置55には、上記芯線接触検出処理を行う際の基準となるエネルギー閾値としての閾値155b、接触判定数としての規定値155cが格納されている。これらの閾値155b及び規定値155cについては後述する。
また、この接触状態判定処理部50では、検知信号入力回路部56,出力回路部57a,入力回路部57b,入力部58,表示部59もバスライン51に接続されている。
検知信号入力回路部56は、増幅回路、フィルタ回路、AD変換回路等を有している。そして、振動検知部42によって得られた振動検知信号がアナログ信号で入力されると、増幅回路及びフィルタ回路を経て、AD変換回路に入力されてデジタル信号に変換されるように構成されている。なお、フィルタ回路としては、例えば、金属の破壊によるAE波に応じた100kHz〜300kHzの通過領域を持つバンドパスフィルタを用いることが好ましい。この検知信号入力回路部56でデジタル信号に変換された振動検知信号は、例えば、振幅値が経時的に変化する波形データとしてRAM54或は外部記憶装置55に記憶され、後述する接触検出処理に供される。
出力回路部57aは、CPU52による制御下、他の機器への制御信号等を出力する出力回路である。入力回路部57bには、外部からの諸信号、ここでは、ストリップ処理制御部28からの動作信号が、本入力回路部57bを通じて入力される。
入力部58は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、上記閾値155b、規定値155cの入力設定指示の他、接触状態判定処理部50に対する諸指示を受付可能に構成されている。
表示部59は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU52による制御下、接触状態の判定結果等の諸情報を表示可能に構成されている。
図8は接触状態判定処理部50の機能ブロック図である。同図に示すように、接触状態判定処理部50は、比較部152aと判定部152bとしての機能を備えている。これら各機能は、上記したようにCPU52が接触検出プログラム155aに従って所定の演算処理を行うことにより実現される。
比較部152aは、入力された振動検知信号に基づいて、前記閾値を参照して期間毎接触判定基準を満たすか否かを判定する。この判定は、入力された振動検知信号のうち判定範囲となる期間(判定対象期間)を複数に分割し、その分割された期間毎になされる。そして、比較部152aは、その比較結果を判定部152bに与える。
判定部152bは、上記比較部152aによる期間毎の判定結果に基づいて、前記規定値を参照してストリップ刃と芯線との接触の有無を判定し、その判定結果を出力する。判定結果は、電線ストリップユニット12の停止制御、表示部59への表示等に供される。
図9は接触状態判定処理部50による接触状態判定処理を示すフローチャートである。
接触状態判定処理開始後、接触状態判定処理部50は、ステップS71において、電線ストリップユニット12からの動作信号を元に、振動検知部42により検知された振動を表す波形データを所定の判定範囲で切出す。ここで、判定範囲は、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく少なくとも一部の期間を含むことが好ましい。判定範囲は、より好ましくは、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく際、芯線Waに接触してしまう可能性がある期間、例えば、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく途中から停止するまで或は停止する直前までの期間として設定される。上記判定範囲は、電線ストリップユニット12によるストリップ刃14A,14Bの動作開始指令時又は動作停止指令を基準として一定期間を切出したものであってもよい。或は、ストリップ刃14A,14Bの速度情報或は位置情報がフィードバックされている場合には、当該速度情報或は位置情報に基づいて切出されてもよい。速度情報に基づいて判定範囲を切出す場合には、例えば、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んだ後徐々に速度低下して停止することに鑑み、ストリップ刃14A,14Bが最高速度からある程度減速した期間で切出すようにするとよい。
次ステップS72では、サンプリングされた波形データに基づき、上記判定範囲を複数の期間に分割し、それぞれの期間毎に、振動検知信号が表す振動エネルギー量(実際の振動に応じたエネルギー量を含む)を計算する。振動検知部42によって検知される振動のエネルギー量は、振幅波形の振幅の大きさに応じた量として表される。このため、振動エネルギー量は、各期間における上記波形データの振幅値(絶対値)の平均値、積算値、実効値(いわゆる近似的に算出された実効値であってもよいし、真の実効値であってもよい)、又は、後述する実施形態3或は実施形態4のように、波形データの振幅値、実効値等に基づいて振動エネルギー量に応じた値として近似的に算出される値、又は、各期間における代表値等によって表される。要するに、振動検知信号に基づいて、各期間において検知された振動エネルギーに応じた量が取得されればよい。判定範囲は、少なくとも2つに分割されていればよい。また、判定範囲は、通常、均等に複数に分割するとよいが、必ずしも均等に分割する必要はない。
次ステップS73では、計算された振動エネルギー量の値を個々に閾値155bと比較し、振動エネルギー量の値が閾値155bを超えた数をカウントする。ここで、閾値155bは、ストリップ刃14A,14Bが被覆Wbに切込んでいく際に観察される振幅値よりも大きな(好ましくはやや大きい程度)値であり、実験的経験的に決定され、記憶部55に予め格納されている。なお、振動エネルギー量の値が閾値155bと同じである場合には、カウント数に加算してもよいし、加算しなくともよい。そして、全ての期間についての比較が終了すると、次ステップS74に進む。
ステップS74では、カウント数が規定値155cを超えたか否かを判定する。ここで、規定値155cは、判定範囲において、振動エネルギー量の値が閾値155bを超えた期間の割合がどの程度であれば、ストリップ刃14A,14Bが芯線Waに接触したと判定するのかを示す基準値を示している。かかる規定値155cは、通常2以上の値であり、判定範囲を分割した期間の長さ、上記閾値155b等に応じて実験的経験的に決定され、記憶部55に予め格納されている。
そして、カウント数が規定値を超えたと判定されると、接触有りと判定され、その判定結果が出力される。判定結果に基づいて、表示部59において接触有る旨の表示がなされる。或は、判定結果に基づいて、ストリップ処理を停止させる旨の信号が電線ストリップユニット12に与えられる。これにより、電線ストリップユニット12側では、当該信号を受けてストリップ処理を一時的に停止するとよい。
一方、カウント数が規定値を超えないと判定されると、接触無しと判定される。これにより、続けてストリップ作業等が実施される。
カウント数が規定値と同じである場合には、接触有りと判定してもよいし、接触有りと判定してもよい。
以上のように構成された芯線接触検出装置、芯線接触検出方法及び芯線接触検出プログラムによると、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとが接触すると、その際の振動が振動検知部42を通じて検知される。そして、振動検知部42より入力される振動検知信号に基づき、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定することができる。これにより、電線Wの被覆Wbをストリップする際に、検査用の電極を芯線に電気的に接続等しなくとも、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触を簡易に検出できる。
また、以下の理由により、ノイズの影響を抑制しつつ、ストリップ刃と芯線との接触をより正確に判定できる。
まず、振動検知部42からの振動検知信号には、ストリップ刃と芯線との接触による振動だけではなく、他の各種外来ノイズが含まれる。他の各種外来ノイズは、ストリップ刃と芯線との接触による振動による大きさに比べて大きいのが一般的である。しかも、外来ノイズの発生源が機械の他の部分から生じる金属同士の衝突或は擦れによるものである場合には、ストリップ刃と芯線との接触による振動周波数と外来ノイズの周波数とは似ている。このため、判定に必要な信号と外来ノイズとを分離することは困難となってしまう。とすると、単に、検知された振動の振幅が所定値を越えたときに、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触有りと判定する手法では、上記外来ノイズの影響を排除できず、正確な判定を行うことが困難となる。
ところで、ストリップ刃と芯線との接触による振動は、ストリップ刃と芯線との接触期間中、ある程度継続的に発生する。これに対して、各種外来ノイズは、機械の他の部分の金属同士の衝突或は擦れ期間中にのみ発生し、ストリップ刃と芯線との接触による振動発生期間と比べると、比較的短時間であるのが一般的である。
そこで、本実施形態のように、振動検知信号に基づき、複数の期間毎に振動エネルギー量を計算して振動エネルギー量の値が閾値155bを超えた数をカウントし、カウント数が規定値を超えたと判定された場合に、接触有りと判定するようにすると、大きな外来ノイズであっても、その発生時間が十分に短ければ、その外来ノイズの影響を抑制して、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触をより正確に判定できることになる。
また、各期間における振動エネルギー量の値を閾値155bと比較することで、期間毎接触判定基準を満たすか否かの判定を比較的簡易な処理で行うことができる。
また、各期間における振動エネルギー量の値が閾値155bを超えたカウント数が規定値155cを超えるときに、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触有りと判定することで、接触の有無判定を比較的簡易に行うことができる。
また、上記動作範囲がストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく期間を含むと、その期間においてストリップ刃と芯線との接触の有無をより正確に判定できる。
ここで、判定範囲(判定対象期間)の他の設定例について説明する。図10は、ストリップ刃14A,14Bがストリップ処理を開始して最高速度に達した後からストリップ刃14A,14Bが減速しつつ被覆Wbに十分に切込んで停止する直前迄の期間における、振幅波形とストリップ刃14A,14Bの移動速度との経時的な変化例を示している。図10において、矢符A1で示す時間では、図11に示すようにストリップ刃14A,14Bは被覆Wbに切込む直前状態であり、矢符A2に示す時間では、図12に示すように、ストリップ刃14A,14Bは被覆Wbに切込んだ状態であり、矢符A3に示す時間では、図13に示すように、ストリップ刃14A,14Bは被覆Wbに十分に切込んだ状態となっている。
上記実施形態では、判定範囲は、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく途中から停止するまで或は停止する直前までの期間T1として設定する例を説明した。
判定範囲は、そのような場合に限定されず、ストリップ刃14A,14Bと電線Wとの接触により振動が発生し得る各種期間に設定されていてもよい。
例えば、判定範囲は、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んで停止した後の期間Taを含む期間T2に設定されていてもよい。
すなわち、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいき停止した状態でも、短期間ではあるものの、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触による振動が検知されることが確認された。
そこで、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んで停止した後の期間Taを含む判定期間T2によって、上記のように、接触の有無を判定することができる。しかも、電線Wに切込んで停止した後の期間Taは、ストリップ刃14A,14Bの駆動機構部分の動作が停止した状態であるため、外来ノイズの発生が抑制されている。そこで、当該期間Taを判定期間として含めることで、より正確にストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定できる。
また、例えば、判定範囲は、電線Wに切込んだストリップ刃14A,14Bが電線Wの端部側に相対移動して被覆Wbを除去する際の期間Taを含む期間T3に設定されていてもよい。
すなわち、電線Wに切込んだストリップ刃14A,14Bを電線Wの端部側に相対移動させて被覆Wbを除去する際にも、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触による振動が検知されることが確認された。そこで、被覆Wbを除去する期間Tbを含む期間T3によっても、上記のように接触の有無を判定することができる。
なお、判定範囲は、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んで停止した後の期間Taのみを含む期間、或は、被覆Wbを除去する期間Tbのみを含む期間等であってもよい。つまり、ストリップ刃14A,14Bと電線Wとの接触により振動が発生し得る期間であれば、どのような期間に設定されていてもよい。このような判定範囲(判定対象期間)の設定は、上記実施形態1,実施形態3及び4等にも同様に適用できる。
また、上記判定範囲が複数に区分され、区分毎に閾値が異なる値に設定されていてもよい。例えば、例えば、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んでいく期間における閾値に対して、ストリップ刃14A,14Bが電線Wに切込んで停止した後の期間Taの閾値が小さな値に設定されていてもよい。
ここで、実際の実験結果に基づき、ストリップ処理時に表れる振動の振幅波形と、期間毎に計算された振動エネルギー量の分布との関係を説明する。
図14はストリップを正常に行えた場合、つまり、芯線Waに傷、切断等を生じさせることなく、被覆Wbだけをうまく除去できた場合において、上記判定範囲における時間(s)と振幅(V)との関係(振幅波形)を示している。この場合、判定範囲初期に例外的に振幅が大きくなる箇所が観測されるものの、全体的には、比較的小さい振幅波形を示す。
図15は、上記判定範囲を20に区分して期間毎の振動エネルギー量を算出し、算出された振動エネルギー量の分布を時間順に示した図である。同図に示すように、ストリップを正常に行えた場合には、振動エネルギー量の分布は、2つの期間で0.1(V)を超える他は、概ね0.1(V)以下となり、比較的低い値となる。
図16は、ストリップを正常に行え、かつ、外来ノイズが混入した場合における振幅波形を示している。この場合、判定範囲中期において、外来ノイズに起因して極端に振幅が大きくなる箇所が観測され、他の箇所では比較的小さい振幅波形を示している。
図17は、図16の振動エネルギー量の分布を時間順に示す図である。同図に示すように、判定範囲中期において、外来ノイズに起因して振動エネルギー量が比較的大きくなる箇所が観測される。他の箇所は、上記図15に示す場合と同様となる。
図18は、ストリップ処理中に芯線Waに傷付きが発生した場合の振幅波形を示している。この場合、判定範囲全体において、比較的大きな振幅が観測されている。
図19は、図18の振動エネルギー量の分布を時間順に示す図である。同図に示すように、判定範囲全体において、振動エネルギー量が比較的大きくなっている。
これらに示すように、ストリップを正常に行えた場合には、複数の期間における振動エネルギー量は比較的小さく、また、外来ノイズの影響があったとしても、比較的少ない数の期間で振動エネルギー量が大きくなるだけであることが確認される。
一方、ストリップ刃14A,14Bが芯線Waに接触した場合には、より多くの期間で振動による振動エネルギー量が大きくなることがわかる。
このため、外来ノイズの影響による振動エネルギー量の変化を排除するように、上記閾値155b、規定値155c等を適切な値に設定することで、外来ノイズの影響を排除して、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無をより正確に判定できることが確認された。
なお、上記のような閾値、規定値は、実際には、芯線Wa、被覆Wbの材質、形状、ストリップ刃14A,14Bの材質、形状、ストリップ刃14A,14Bの動作状況等、実験的、経験的に、設定される。
なお、上記実施形態では、期間毎に振動エネルギー量が閾値を超えるか否かを判定することで、期間毎接触判定基準を満たすか否かを判定しているが、必ずしもその必要はない。例えば、期間毎の波形状(例えば、振幅の変化度合、ある基準波形との波形比較)等に基づいて、期間毎接触判定基準を満たすか否かが設定されていてもよい。
要するに、判定範囲が複数に分割され、分割された期間毎に何らかの判定基準を満たすか否かが判定されればよい。
また、そのような場合でも、その判定基準を満たす数が予め設定された接触判定数を超えるときに、ストリップ刃と芯線との接触有りと判定することができる。
また、本実施形態において、規定値は1であってもよく、この場合、分割された期間のいずれか一つにおいてエネルギーの量が閾値155bを超えていると判断されると、接触有りと判断されることとなる。
また、本実施形態において、分割された期間に対して求められたエネルギーの量の最大値及び最小値のいずれか一方を切捨てて上記判定処理を行ってもよい。これにより、偶発的な事情等による不安定要因を取り除いて、より確実に接触の有無を判定できる。
<実施形態3>
実施形態3では、接触状態判定処理部50が、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量に基づいて芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無を判定する例について説明する。
すなわち、上記したように、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触による振動エネルギーは、ある程度継続して観察される(図18参照)。これに対して、各種外来ノイズは、機械の他の部分の金属同士の衝突或は擦れ期間中にのみ発生し、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触による振動エネルギーの発生期間と比べると、比較的短時間である(図16参照)。
そこで、ある程度継続的な判定対象期間におけるエネルギーに応じた量に基づくことで、外来ノイズの影響を抑制して、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無をより確実に判定することが可能となる。ここで、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量は、振動検知部42からの出力信号波形データから直接的に得られる値であってもよいし、或は、出力信号波形データを加工したデータ(例えば、実効値演算処理したデータ、或は、一定期間毎に平均値演算処理したデータ等)であってもよい。また、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量は、それらのデータに基づいて近似計算、或は、簡易計算された値であってもよい。以下の実施形態3A、3Bはより具体的な例である。
<実施形態3A>
実施形態3Aでは、振動検知部42からの出力信号波形データから直接的に判定対象期間におけるエネルギーに応じた量(実施形態1における評価値、以下、便宜的に単に”エネルギー”と表記する場合がある)を求め、当該エネルギーの値が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定する例について説明する。
判定対象データの取得ステップ(ステップT1)、判断基準を満たすか否かの処理(ステップT3)等については、実施形態1における図6と同様であるため、振動検知部42からの出力信号波形データから直接的に判定対象期間におけるエネルギーを求める処理を中心に説明する。
図20は出力信号波形データから直接的に判定対象期間におけるエネルギーを求める処理を示すフローチャートであり、図21は波形例を示す説明図である。なお、対象波形は、振動検知部42から接触によって発生するエネルギーに応じた物理量を表す波形であれば、電圧波形であっても、電流波形であってもよい。
本処理では、概略的には判定対象期間Pにおいて、所定のベースレベル閾値を超えるエネルギーの量を求め、当該エネルギーの量に基づいて接触の有無を判定する。ベースレベル閾値は、電線ストリップ処理装置10の非動作状態で観察されるレベルを超える値に設定されている。これにより、主として、電線ストリップ処理装置10の動作を要因として発生するエネルギーの量を求めるようにしている。なお、判定対象期間Pにおいて、所定のベースレベル閾値を超える領域が複数観察された場合の処理については後で説明する。
図20に示すフローチャートは、レベル(振幅)が所定のベースレベル閾値を超える領域の面積を簡略的に求める処理を示している。すなわち、レベルが前記ベースレベル閾値を超えた時間軸上の位置をt1、その後、レベルがベースレベル閾値を下回った時間軸上の位置をt2として、t1からt2の期間で波形のピーク値をhとすると、(t2−t1)×h÷2の式からエネルギーの量を算出している。なお、式中における値2は常数であるため、接触の有無を判定する閾値にその点を考慮しておけば、当該値2は省略してもよい。
図20に示すフローチャートに即して説明する。なお、下記で、時点とは、判定対象期間Pにおける波形の横軸の位置(時間、サンプリングポイント等)を示しており、初期では、判定対象期間の初期時点に設定されている。また、下記の処理で、現在値とは、判断対象となる時点でのエネルギーの量を表す値(レベル値、振幅値等)であり、ゼロクロスの判定(ステップS8参照)を除いて、絶対値(現在値がマイナスの場合は符号を反転させる)で表される。
ステップS1において、変数t1aが記録済か否かが判断される。変数t1aは、ベースレベル閾値を超えた現在値を有する時点を一時的に格納しておくための変数であり、初期は未記録状態(例えば、0)である。変数t1aが記録済(何らかの時点を格納済)でないと判断されると、ステップS2に進み、記録済と判断されると、ステップS14に進む。
ステップS2では、ベースレベル閾値<現在値か否かが判断される。YESと判断されるとステップS3に進んで、変数t1aに現在の時点を書込み、その後、ステップS4に進む。一方、ステップS2において、NOと判断されるとステップS4に進む。なお、ベースレベル閾値=現在値である場合、いずれの処理へ進んでもよい。これらのステップS1〜S3によって、現在値がベースレベル閾値を超えた時点が変数t1aに記録される。
一方、ステップS14では、変数t2aが記録済か否かが判断される。変数t2aは、ベースレベル閾値を下回った現在値を有する時点を一時的に格納しておくための変数であり、初期は未記録状態(例えば、0)である。変数t2aが記録済(何らかの時点を格納済)と判断されると、ステップS4に進み、記録済でないと判断されると、ステップS15に進む。
ステップS15では、ベースレベル閾値>現在値か否かが判断される。YESと判断されると、ステップS16に進んで、変数t2aに現在の時点を書込み、その後、ステップS14に進む。なお、ベースレベル閾値=現在値の場合、いずれの処理に進んでもよい。これらのステップS14〜S16によって、現在値がベースレベル閾値を下回った時点が変数t2aに記録される。
ステップS4では、h<現在値か否かが判定される。ステップS4における判定結果がYESであればステップS5に進み、変数hに現在値を書込んだ後、ステップS6に進む。一方、ステップS4における判定結果がNOであれば、ステップS6に進む。変数hは、ベースレベル閾値を超えた現在値を有する時点を格納するための変数であり、複数の時点に対して上記ステップS4、S5が繰返されることで、最終的には当該複数の時点を含む期間におけるピーク値が記録されることになる。
ステップS6では、時点に1加え(時点を次の時点に進める)、次ステップS7に進む。
ステップS7では、時点が判定対象期間の終了時点に対応するものであるか否か等に基づいて、判定波形終了か否かを判断する。そして、判定波形終了でないと判断されると、ステップS8に進み、判定波形終了と判断されると、ステップS17に進む。
ステップS8では、ゼロクロスか否かが判断される。ゼロクロスか否かの判断は、レベル(振幅)に関する現在値とその一つ前の値がゼロレベルをまたぐ関係にあるか否かによって判断される。ステップS8は、ステップS6より前のステップS1〜S5、S14〜S16に係る処理が、波形が示す半周期分の一つの山における最終の時点に対する処理であるか否かを判断するステップであり、ステップS8での判断結果がYESであればステップS1に戻って、以降の処理を繰返す。一方、ステップS8においてYESと判断されると、ステップS9に進む。
ステップS9では、変数t1aが記録済か否かが判断され、NOと判断されるとステップS17に進み、YESと判断されるとステップS10に進む。
ステップS10では、変数t1が記録済か否かが判断される。判断結果がNOであれば、ステップS11に進んで、変数t1に変数t1aの値を書込む。変数t1は、初期では未記録状態(例えば、0が格納されている)であり、ステップS10、S11を経ることによって、最初に書込まれた変数t1aの値が変数t1に書込まれ、前記ベースレベル閾値を超えた時間軸上の最初の位置が変数t1の値として得られることになる。この後、ステップS12に進む。
ステップS12では、変数t2に変数t2aの値を格納し、その後、ステップS13に進む。本ステップS12によって、ベースレベル閾値を下回った時間軸上の位置が変数t2の値として得られる。
次ステップS13では、変数t1a、t2aをクリア(未記録状態に)し、その後、ステップS1に戻る。
一方、ステップS17では、変数t1が記録済か否かが判断され、NOと判断されると処理を終了する。つまり、ベースレベル閾値を超える現在値を持つ時点が生じなかった場合には、処理を終了する。一方、ステップS17において、YESと判断されると、ステップS18に進む。
ステップS18では、変数t2aが記録済か否かが判断され、NOと判断されるとステップS19に進み、YESと判断されるとステップS20に進む。ステップS19では、変数t2に現在の時点を格納する。すなわち、現在値がベースレベル閾値を下回る前での判定波形終了により変数t2が得られなかった場合には、便宜的に変数t2に現在の時点を格納する。この後、ステップS20に進む。
ステップS20では、各変数の値を(t2−t1)×h÷2に代入して、エネルギーの量を算出する。
そして、当該エネルギーの量が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定する。当該エネルギーの量が所定の閾値と同じである場合には接触有り、無しのいずれに判断してもよい。
ところで、判定対象期間Pが終了するまで、図20に示す処理を繰返すと、ベースレベル閾値を超える領域が複数観察され、それに応じて、エネルギーの量が複数算出される可能性がある。この場合には、複数の算出値のいずれか一つが閾値を超えた場合に接触有りと判定してもよいし、或は、複数の算出値それぞれについて所定の閾値との比較を行い、所定の閾値を超えたカウント数が所定のカウント閾値を超えた場合に接触有りと判断してもよい。または、複数の算出値の最大値を閾値と比較することで接触の有無を判定してもよいし、或は、複数の算出値の平均値或は合計値を閾値と比較することで接触の有無を判定してもよい。
なお、本実施形態では、レベルがベースレベル閾値を下回った時間軸上の位置をt2としたが、波形のピーク値hが表れた時点をt2として、上記と同様に(t2−t1)×h÷2により、エネルギーの量を算出してもよい。式中における値2を省略してもよい点は上記と同様である。
この場合に、判定対象期間Pにおいて複数のエネルギーの量が算出された場合における、接触の有無の判定例は上記した通りである。
ところで、発明者らが検討を行ったところ、芯線の接触とストリップ刃14A,14Bとの接触によって生ずる波形状は比較的緩やかに立上がる形状を呈し、電気的ノイズや機械的衝撃によって生ずる波形状は比較的急峻な立上がり形状を呈することが確認された。
そこで、判定対象期間におけるエネルギーの変化度合に応じて補正して、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量を求めるとよい。すなわち、上記のように算出したエネルギーの量に対して、波形状の立上がり度合に応じた係数を乗じることで、芯線の接触とストリップ刃14A,14Bとの接触によって生ずる波形状に基づくエネルギーの量を強調したエネルギーの量を求める。
そのような係数としては、例えば、次のような係数を採用するとよい。すなわち、図20におけるフローチャートから、時点t1におけるレベル、時点t2におけるレベル、ピーク値を呈する時点を容易に取得可能であることに鑑み、時点t1における波形ポイントQ1、時点t2における波形ポイントQ2、ピーク値を呈する時点における波形ポイントQ3とする(図21参照)。そして、係数として角Q2Q1Q3に対して逆相関の関係にある数を採用する。例えば、図22に示すように、角Q2Q1Q3が90度で0又は0に近くなり、0度で1に又は1に近くなるような係数を採用するとよい。このような係数は、角Q2Q1Q3を変数とする算出式によって求められるものであってもよいし、或は、複数の角Q2Q1Q3の値に対して係数を対応づけたテーブルが事前に格納され、当該テーブルに基づいて求められるものであってもよい。
<実施形態3B>
実施形態3Bでは、振動検知部42からの出力信号波形データを加工したデータ、より具体的には、実効値演算処理(又は平均値演算)した波形データに基づいて接触の有無を判定する例について説明する。
まず、実効値演算(或は平均値演算)された値自体が、所定の期間(例えば、一波長分)のデータに基づいて演算された値であることに鑑み、当該所定の期間が判定対象期間であると捉えると、実効値演算(或は平均値演算)された値が、幅を有する当該判定対象期間におけるエネルギーに応じた量を表していると考えることができる。
そこで、上記ある期間(例えば、上記判定対象期間Pにおける実効値(又は平均値)のピーク値(波高値)を特定し、当該ピーク値が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定することができる。
また、実効値演算処理(又は平均値演算)した波形データに基づいて判定対象期間Pにおけるエネルギーに応じた量(実施形態1における評価値、以下、単に”エネルギー”と表記する場合がある)を求め、当該エネルギーの値が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定する例について説明する。
判定対象データの取得ステップ(ステップT1)、判断基準を満たすか否かの処理(ステップT3)等については、実施形態1における図6と同様であるため、実効値演算処理(又は平均値演算)した波形データから判定対象期間におけるエネルギーを求める処理を中心に説明する。
図23は実効値演算処理(又は平均値演算)した波形データから判定対象期間Pにおけるエネルギーを求める処理を示すフローチャートであり、図24は振動検知部42からの出力信号波形データ例を示す図であり、図25は出力信号波形データから実効値演算処理(又は平均値演算)した波形データ例を示す図である。
すなわち、図24に示す出力信号波形データを実効値演算処理(又は平均値演算)すると、図25に示すような波形データが得られる。本処理では、概略的には判定対象期間Pにおいて、所定のベースレベル閾値を超えるエネルギーの量を求め、当該エネルギーの量に基づいて接触の有無を判定する。ベースレベル閾値は、電線ストリップ処理装置10の非動作状態で観察されるエネルギー(実効値又は平均値により表されている)を超える値に設定されている。これにより、主として、電線ストリップ処理装置10の動作を要因として発生するエネルギーの量を求めるようにしている。なお、判定対象期間Pにおいて、所定のベースレベル閾値を超える領域が複数観察された場合の処理については上記実施形態3Aで説明した場合と同様である。
図23に示すフローチャートは、レベル(実効値又は平均値)が所定のベースレベル閾値を超える領域の面積を簡略的に求める処理を示している。すなわち、レベルが前記ベースレベル閾値を超えた時間軸上の位置をt1、その後、レベルがベースレベル閾値を下回った時間軸上の位置をt2として、t1からt2の期間で波形のピーク値をhとすると、(t2−t1)×h÷2をエネルギーの量として算出している。なお、式中の値2は常数であるため、接触の有無を判定する閾値にその点を考慮しておけば、当該値2は省略してもよい。
図23に示すフローチャートに即して説明する。なお、下記で、時点とは、判定対象期間Pにおける波形の横軸の位置(時間、サンプリングポイント等)を示しており、初期では、判定対象期間の初期時点に設定されている。
ステップS31において、変数t1が記録済か否かが判断される。変数t1は、ベースレベル閾値を超えた現在値を有する時点を格納しておくための変数であり、初期は未記録状態(例えば、0)である。変数t1が記録済(何らかの時点を格納済)でないと判断されると、ステップS32に進み、記録済と判断されると、ステップS38に進む。
ステップS32では、ベースレベル閾値<現在値か否かが判断される。YESと判断されるとステップS33に進んで、変数t1に現在の時点を書込み、その後、ステップS34に進む。一方、ステップS32において、NOと判断されるとステップS34に進む。なお、ベースレベル閾値=現在値である場合、いずれの処理へ進んでもよい。これらのステップS31〜S33によって、現在値がベースレベル閾値を超えた時点が変数t1に記録される。
一方、ステップS38では、ベースレベル閾値>現在値か否かが判断される。YESと判断されると、ステップS39に進んで、変数t2に現在の時点を書込み、その後、ステップS34に進む。なお、ベースレベル閾値=現在値の場合、いずれの処理に進んでもよい。これらのステップS38〜S39によって、現在値がベースレベル閾値を下回った時点が変数t2に記録される。
ステップS34では、h<現在値か否かが判定される。ステップS34における判定結果がYESであればステップS35に進み、変数hに現在値を書込んだ後、ステップS36に進む。一方、ステップS34における判定結果がNOであれば、ステップS36に進む。変数hは、ベースレベル閾値を超えた現在値を有する時点を格納するための変数であり、複数の時点に対して上記ステップS34、S35が繰返されることで、最終的には当該複数の時点を含む期間におけるピーク値が記録されることになる。
ステップS36では、変数t2が記録済か否かが判断され、NOと判断されると、時点に1加える(時点を次の時点に進める)ステップS40を経て、ステップS31に戻る。一方、ステップS36においてYESと判断されると、ステップS37に進む。
ステップS37では、各変数の値を(t2−t1)×h÷2に代入して、エネルギーの量を算出する。
そして、当該エネルギーの量が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定する。当該エネルギーの量が所定の閾値と同じである場合には接触有り、無しのいずれに判断してもよい。
図23に示すフローチャートでは、レベルがベースレベル閾値を下回ることが前提となっていたが、レベルがベースレベル閾値を下回る前に判定対象期間Pが終了することもあり得る。この場合には、処理を途中で終了して、処理結果を破棄してもよいが、図26に示すフローチャートのようにしてもよい。
図26に示すフローチャートにおいて、ステップS51〜S56に至る処理、ステップS62、S63の処理は、図23に示すフローチャートのステップS31〜S36に至る処理、S38、S39に示す処理と同じである。
ステップS56では、変数t2が記録済か否かが判断され、YESと判断されると、ステップS61に進む。一方、ステップS56において、NOと判断されると、時点に1加える(時点を次の時点に進める)ステップS57を経て、ステップS58に進む。
ステップS58では、時点が判定対象期間の終了時点に対応するものであるか否か等に基づいて、判定波形終了か否かを判断する。そして、判定波形終了でないと判断されると、ステップS51に戻り、以降の処理を繰返す。一方、ステップS58において判定波形終了でないと判断されると、ステップS59に進む。
ステップS59では、変数t1が記録済か否かが判断され、NOと判断されると処理を終了し、YESと判断されるとステップS60に進む。
ステップS60では、変数t2に、現在の時点から1減算した値(現在時点よりも一つ前の時点)を書込み、その後、ステップS61に進む。
ステップS61では、各変数の値を(t2−t1)×h÷2に代入して、エネルギーの量を算出する。
そして、当該エネルギーの量が所定の閾値(判断基準)を超えたときに接触有りと判定する。当該エネルギーの量が所定の閾値と同じである場合には接触有り、無しのいずれに判断してもよい。
本処理によると、判定対象期間Pが終了した段階で、レベルがベースレベル閾値を下回っていなかったときでも、終了時点の一つ前の時点をt2として、エネルギーの量を算出することができる。
なお、上記波形のピーク値hが表れた時点をt2としてもよい点、また、判定対象期間Pにおけるエネルギーの変化度合に応じて補正して、判定対象期間におけるエネルギーに応じた量を求めてもよい点は、上記実施形態3Aと同様である。
<実施形態3に関する変形例>
なお、本実施形態において、分割された複数の期間のそれぞれに対してエネルギーの量を算出し、算出された複数のエネルギーの量の最大値(或は任意数順位の値)又は最小値(或は任意数順位の値)と判定基準である閾値とを比較することで、接触の有無を判定してもよい。
さらに、分割された複数の期間のそれぞれについて算出されたエネルギーの量の平均値を求め、その平均値と判定基準である閾値とを比較することで、接触の有無を判定してもよい。
また、分割された複数の期間について算出されたエネルギーの量の平均値のそれぞれに、各期間幅を乗算する等してエネルギーの総量を求め、当該総量と判定基準である閾値とを比較することで、接触の有無を判定してもよい。
また、これらの場合において、分割された期間に対して求められたエネルギーの量の最大値及び最小値のいずれか一方を切捨てて上記判定処理を行ってもよい。これにより、偶発的な事情等による不安定要因を取り除いて、より確実に接触の有無を判定できる。
<実施形態4>
本実施形態では、判定対象期間において発生するエネルギーの継続性に基づいて芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無を判定する構成について説明する。
すなわち、上記したように芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触による振動エネルギーはある程度継続的に発生するのに対して、各種外来ノイズは比較的短時間であるのが一般的である。そこで、判定対象期間において発生するエネルギーが継続的か否かを判断することで、接触の有無を判定することができる。
ここでは、判定対象期間におけるエネルギーの継続性の有無を振動検知部42の出力信号に含まれる周波数成分に基づいて判断する例について説明する。
図27は本実施形態における判定処理を示すフローチャートである。
すなわち、ステップS81に示すように、振動検知部42によって得られた判定対象波形を周波数エネルギー変換し、当該判定波形における周波数成分毎のエネルギー分布を求める。本処理自体は、FFT(Fast Fourier Transform)等の各種周波数解析手法によって実現することができる。周波数成分毎のエネルギー分布の一例を図28に示す。
次ステップS82において、任意周波数のエネルギーを求める。任意周波数は、予め設定された値であり、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触による振動周波数のうち最も大きなエネルギーとして観測されると考えられる周波数(例えば、200kHz)に設定されている。
次ステップS83では、求められた任意周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値を上回るか否かが判断される。判断結果がYESであれば接触有りと判定され(ステップS84)、NOであれば接触無しと判定され(ステップS85)、処理を終了する。なお、求められた任意周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値と同じである場合、いずれの判断としてもよい。
芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によってエネルギーが発生すると、前記任意周波数における振動周波数成分の振動エネルギーが継続する。このため、上記任意周波数成分のエネルギーが大きな値として観察される。そこで、上記のように判断することで、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触によると考えられる振動周波数成分のエネルギーの継続性によって、接触の有無を判定することができる。このため、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触の有無をより確実に判定することができる。
図29は本実施形態の変形例に係る判定処理を示すフローチャートであり、図30は周波数成分毎のエネルギー分布の一例を示す図である。
図29のステップS91は上記ステップS81と同じである。
次のステップS92においては、任意周波数帯域内のエネルギーの最大値を求める。任意周波数帯域は、予め設定された帯域であり、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触による振動周波数のうち比較的大きなエネルギーとして観察されると考えられる周波数帯域(例えば、180kHz〜220kHz)に設定されている。
次ステップS93では、求められたエネルギーの最大値が判断基準としての閾値を上回るか否かが判断される。判断結果がYESであれば接触有りと判定され(ステップS94)、NOであれば接触無しと判定され(ステップS95)、処理を終了する。なお、求められた任意周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値と同じである場合、いずれの判断としてもよい。
本処理によると、ある程度の幅を有する周波数帯域の中からエネルギーの最大値を求めて、接触の有無を判定するので、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触による振動周波数のうち最も大きなエネルギーとして観測されると考えられる周波数が実際とはずれてしまったような場合にも、より確実に接触の有無を判定できる。
図31は本実施形態の他の変形例に係る判定処理を示すフローチャートである。
図29のステップS101は上記ステップS81と同じである。
次のステップS102においては、周波数成分毎のエネルギー分布波形(ここではFFT波形)に、各周波数成分に応じた重み付け係数を乗じる。重み付け係数は、図32に示すように、芯線Waとストリップ刃14A,14Bとの接触による振動周波数のうちより大きなエネルギーとして観察されるであろう周波数成分に対してはより大きな値に設定され、より小さなエネルギーとして観察されるであろう周波数成分に対してはより小さな値に設定されている。この重み付係数は、周波数成分に応じた値を示すテーブル又は算出式として予め記憶されている。例えば、図30に示すエネルギー分布波形(FFT波形)に、図32に示す重み付計数を乗じると、図33に示すように、接触によって生じるであろう周波数成分が強調されたエネルギー分布波形が得られる。このため、より正確に接触の有無を判定することができる。
この後、次ステップS103において、任意周波数のエネルギーを求める。
次ステップS104では、求められた任意周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値を上回るか否かが判断される。判断結果がYESであれば接触有りと判定され(ステップS105)、NOであれば接触無しと判定され(ステップS106)、処理を終了する。なお、求められた任意周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値と同じである場合、いずれの判断としてもよい。
図34は本実施形態の他の変形例に係る判定処理を示すフローチャートである。
本処理におけるステップS111、S112、S114〜S116は、図31に示すステップS101、S102、S104〜S106と同じであり、異なるのはステップS113である。
すなわち、ステップS113では、接触によって生じるであろう周波数成分が強調されたエネルギー分布波形(図33参照)から任意周波数帯域内のエネルギーの最大値を求める。任意周波数帯域は、図29に示すフローチャートのステップS92において説明した通りである。
図35は本実施形態の他の変形例に係る判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートでは、上記した各処理を切替えられるようにしている。
すなわち、ステップS121において、振動検知部42によって得られた判定対象となる測定波形を周波数エネルギー変換し、当該測定波形における周波数成分毎のエネルギー分布を求める。
次ステップS122において、重み付け係数使用の有無が判断される。本判断は、本装置に対する利用者等による設定指示等に基づいて行われる。本ステップS122において、NOと判断されると、ステップS124に進み、YESと判断されるとステップS123に進む。
ステップS123では、周波数成分毎のエネルギー分布波形(FFT波形)に、各周波数成分に応じた重み付計数を乗じ、接触によって生じるであろう周波数成分が強調されたエネルギー分布波形を得る(図33参照)。この後、ステップS124に進む。
ステップS124では、周波数帯域の使用の有無が判断される。本判断は、本装置に対する利用者等による設定指示等に基づいて行われる。本ステップS124における判断結果がYESであればステップS125に進み、NOであればステップS128に進む。
ステップS125では、周波数成分毎のエネルギー分布(ステップS123を経ている場合には接触によって生じるであろう周波数成分が強調されたエネルギー分布波形)において、任意周波数帯域内のエネルギーの最大値を求める。その後、ステップS126に進む。
一方、ステップS128に進んだ場合、周波数成分毎のエネルギー分布(ステップS123を経ている場合には接触によって生じるであろう周波数成分が強調されたエネルギー分布波形)において、任意周波数のエネルギーを求めるその後、ステップS126に進む。
ステップS126では、求められたエネルギーが、判断基準としての閾値を上回るか否かが判断される。判断結果がYESであれば接触有りと判定され(ステップS127)、NOであれば接触無しと判定され(ステップS129)、処理を終了する。なお、求められた周波数におけるエネルギーが、判断基準としての閾値と同じである場合、いずれの判断としてもよい。
なお、上記各処理において、任意周波数帯域における最大値を求める代りに、quasi-peak値(QP値:準尖頭値)等のピーク値を反映した値を閾値と比較して接触の有無を判定してもよく、或は、任意周波数帯域におけるエネルギーの平均値又は総和と閾値とを比較して接触の有無を判定してもよい。
また、上記各処理の基となる周波数成分毎のエネルギー分布は、判定対象期間P全体を一つの対象区間として切出して行ったものである必要はない。
例えば、図36に示すように、判定対象期間Pを複数の期間1〜7に分割した期間として切出し、それぞれの期間を対象としてFFT変換等によって周波数成分毎のエネルギー分布を求め、図37に示すように、その複数の周波数成分毎のエネルギー分布を平均化してノイズ除去した周波数成分毎のエネルギー分布を得、その周波数成分毎のエネルギー分布に基づいて上記各処理を行ってもよい。
また、上記任意周波数、任意周波数帯域、重み付係数は、ストリップ刃14A,14B、芯線Waの材質等に応じて、異なる値に設定可能とされていてもよい。
<その他>
上記実施形態では、ストリップ刃14A,14Bと芯線Waとの接触の有無を判定する例で説明したが、必ずしもそのような例に限られない。電線の導体接触状態検出装置自体は、ストリップ刃と芯線との接触を検出する場合に限らず、切込み刃が電線に切込んでいく際に、切込み刃と電線の導体との接触を検出する各種構成に適用できる。電線の導体としては、例えば、電線の芯線以外に、電線の芯線を、内部被覆を挟んで囲うシールド部分等、金属導体で形成された各種部分が想定される。
例えば、図38及び図39に示すように、芯線201の外周囲に内部絶縁層202が被覆され、その外周囲に金属網等の編組層又は金属テープ等により構成されるシールド層203が被覆され、さらにその外周囲に外部絶縁層204が被覆されている電線200を対象としてもよい。そのような電線200に対しては、切込み刃210を外部絶縁層204に切込ませて、当該外部絶縁層204を除去する。この場合、切込み刃210がシールド層203に接触しないようにする必要がある。このような場合に、切込み刃210とシールド層203との接触を検知する装置として、上記接触状態検出装置を適用することができる。
また、複数の電線の外周囲をシールド層で覆うと共に、さらにその外周囲を外部絶縁層で覆った電線(ケーブルともいわれる)に対して、外部絶縁層を切込み刃で除去する場合にも、同様に上記接触状態検出装置を適用することができる。
なお、上記実施形態は例示であって、本発明の内容は当該実施形態で説明したものに限定されない。例えば、上記実施形態1〜4及び各種変形例で説明した内容は、相反する内容でない限り、適宜組合わせることができる。
ステップS8では、ゼロクロスか否かが判断される。ゼロクロスか否かの判断は、レベル(振幅)に関する現在値とその一つ前の値がゼロレベルをまたぐ関係にあるか否かによって判断される。ステップS8は、ステップS6より前のステップS1〜S5、S14〜S16に係る処理が、波形が示す半周期分の一つの山における最終の時点に対する処理であるか否かを判断するステップであり、ステップS8での判断結果がNOであればステップS1に戻って、以降の処理を繰返す。一方、ステップS8においてYESと判断されると、ステップS9に進む。
ステップS58では、時点が判定対象期間の終了時点に対応するものであるか否か等に基づいて、判定波形終了か否かを判断する。そして、判定波形終了でないと判断されると、ステップS51に戻り、以降の処理を繰返す。一方、ステップS58において判定波形終了であると判断されると、ステップS59に進む。