JPWO2011002024A1 - 生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法、分子マーカー及びキット - Google Patents

生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法、分子マーカー及びキット Download PDF

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Abstract

本発明は、被検者から採取した生体試料からDNAを抽出する工程と、抽出工程で得られたDNAに含まれる配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位における、メチル化の状態を解析する工程と、解析工程で得られた解析結果に基づいて、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する工程とを含む生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する方法を提供する。

Description

本発明は、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法、分子マーカー及びキットに関する。
上皮性癌の検出には、血液検査やレントゲンのような画像検査など種々の方法が知られている。例えば、上皮性癌の1つである乳癌の検出方法としては、現在、マンモグラフィー、MRI等の画像検査が知られている。これら画像検査は、乳癌を早期に発見することで、乳癌による死亡率の低下に貢献している。
しかしながら、これらの画像検査には熟練した技術が必要であること、検査において患者に不快感を与える場合があること及びコストが高いことなどの問題があった。
上述の画像検査における問題点を低減すべく、近年、遺伝子情報に基づく癌の検出方法の研究が行なわれている。そのような癌の検出方法としては、例えば遺伝子のメチル化に関する情報に基づく癌の検出方法が挙げられる。この方法では、特定の遺伝子におけるCpG部位(5'-(CG)-3')を分子マーカーとして用い、その分子マーカーのメチル化状態を解析して得た情報に基づいて癌を検出する。
乳癌においても遺伝子のメチル化の解析を利用した癌の検出方法の研究が行なわれている。この方法では、特定の遺伝子におけるCpG部位を分子マーカーとして用い、その分子マーカーのメチル化の状態を解析した結果を乳癌の検出に利用する。例えば、非特許文献1には、breast cancer 1(BRCA1)、cadherin 13(CDH13)及びserum deprivation response factor (sdr)-related gene product that binds to c-kinase(SRBC)のプロモーター領域のCpG部位が正常細胞ではメチル化されておらず、乳癌細胞ではメチル化されていることが開示されている。また、特許文献1には、breast cancer 2(BRCA2)、protocadherin 7(PCDH7)の遺伝子におけるメチル化の状態を解析することにより、乳房細胞増殖性疾患の診断が可能であることが開示されている。
特表2008−506407号公報
Manel Esteller. Nat Rev Genet, 2007 Apr;8(4):286-98.
上記のように、癌において異常メチル化される遺伝子がいくつか報告されている。しかしながら、遺伝子のメチル化解析を利用した癌検出を可能にする、より優れた新規分子マーカーのさらなる開発が望まれている。
本発明は、上皮性癌由来の細胞の存否を判定可能な新規分子マーカーを用いて、生体試料から抽出したDNAのメチル化状態を解析し、その結果に基づいて上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、メチル化解析によって上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための新規分子マーカーを提供することを目的とする。さらに、本発明は、新規分子マーカーを用いたDNAのメチル化解析により上皮性癌由来の細胞の存否を判定するためのキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、ヒトのゲノムDNAにおける、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれるCpG部位のメチル化状態が、上皮性癌細胞と正常細胞との間で異なることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、被検者から採取した生体試料からDNAを抽出する抽出工程と、抽出工程で得られたDNAに含まれる配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位におけるメチル化の状態を解析する解析工程と、解析工程で得られた解析結果に基づいて、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する判定工程と、を含む生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する方法が提供される。
また、本発明によれば、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4で示される少なくとも1つの領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位から選択される、メチル化解析を用いた上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための分子マーカーが提供される。
また、本発明によれば、被検者から採取した生体試料から抽出されたDNAに含まれる非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤と、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4の塩基配列で示される領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位のメチル化をメチル化特異的PCRによって確認するためのプライマーセットとを備える、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するためのキットが提供される。
本発明によれば、被験者から採取した生体試料から抽出したDNAについて、本発明の判定用分子マーカーのメチル化状態を解析することにより、該試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する方法を提供できる。
また、本発明によれば、その方法に用い得る判定用新規分子マーカーおよび判定用キットを提供することができる。
配列番号1の塩基配列で示される領域に含まれるCpG部位の位置を示す配列表である。 配列番号2の塩基配列で示される領域に含まれるCpG部位の位置を示す配列表である。 配列番号3の塩基配列で示される領域に含まれるCpG部位の位置を示す配列表である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれるCpG部位の位置を示す配列表である。 配列番号1の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の有無を示す表である。 配列番号2の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の有無を示す表である。 配列番号3の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の有無を示す表である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の有無を示す表である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の有無を示す表である。 配列番号1の塩基配列で示される領域における、メチル化の頻度を解析した結果を示すグラフである。 配列番号2の塩基配列で示される領域における、メチル化の頻度を解析した結果を示すグラフである。 配列番号3の塩基配列で示される領域における、メチル化の頻度を解析した結果を示すグラフである。 配列番号4の塩基配列で示される領域における、メチル化の頻度を解析した結果を示すグラフである。 配列番号4の塩基配列で示される領域における、メチル化の頻度を解析した結果を示すグラフである。 配列番号1の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の割合を示す表である。 配列番号2の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の割合を示す表である。 配列番号3の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の割合を示す表である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の割合を示す表である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に含まれる、各CpG部位のメチル化の割合を示す表である。 配列番号1の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号3の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号1の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号2の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号3の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。 配列番号4の塩基配列で示される領域に対してメチル化特異的PCRを行った後、増幅産物の有無を電気泳動で確認した写真である。
以下、本発明の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法、分子マーカー及びキットについて詳細に説明する。
本実施形態において、上皮性癌とは、上皮組織由来の悪性腫瘍のことである。上皮細胞由来の悪性腫瘍としては、例えば乳房、肺、肝臓、胃、大腸、膵臓、子宮、精巣、卵巣、甲状腺などの部位にできる悪性腫瘍が挙げられる。上皮性癌として、具体的には乳癌、肺癌、肝癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、子宮癌、精巣癌、卵巣癌、甲状腺癌などが挙げられる。
本実施形態において、生体試料としてはDNAを含むものであれば特に制限されない。具体的な生体試料としては、例えば血液、血清、リンパ液、尿、乳頭分泌液及び手術や生検により採取した組織などが挙げられる。また、被検者から採取した細胞や組織を培養して得られた試料を生体試料として用いることもできる。
本実施形態において、DNAの抽出は、生体試料に含まれるDNAを溶液中に遊離させる公知の方法を用いて行うことができる。DNAを抽出する公知の方法としては、例えば生体試料を可溶化する界面活性剤と生体試料とを混合し、物理的処理(攪拌、ホモジナイズ、超音波処理など)をする方法などが挙げられる。この場合、物理的処理の後、細胞などの破片を遠心分離によって沈殿させ、DNAを含む上清を後述の解析に用いることが好ましい。また、DNAの抽出は市販のキットを用いて行うこともできる。
本実施形態において、配列番号1〜4で示される塩基配列は、ヒトゲノムDNAの一領域である。ヒトゲノムDNAの塩基配列は、公共のデータベース(例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によるGenBank)から知ることができる。
配列番号1で示される塩基配列は、protocadherin gamma subfamily A, 10(PCDHGA10)遺伝子のプロモーター領域の一部である。この遺伝子は、カドヘリンスーパーファミリーに属するカルシウム依存性の細胞間接着因子である。また、PCDHGA10遺伝子は、脳における特定のニューロンの接続の構成や維持との関連性が示唆されている。
配列番号2は、protocadherin beta 6(PCDHB6)遺伝子のプロモーター領域の一部である。この遺伝子は、PCDHGA10と同様、カドヘリンスーパーファミリーに属する遺伝子である。
配列番号3は、ladybird homeobox 2(LBX2)遺伝子のイントロンの一部である。この遺伝子は、ショウジョウバエladybird遺伝子の相同遺伝子であり、Alstrom症候群との関連性が研究されている。
配列番号4は、ヒトゲノムDNAのchromosome1に含まれている塩基配列であるが、その機能はまだ明らかにされていない。
本実施形態において、CpG部位のメチル化とは、DNAの塩基配列中のCpG部位(5'-(CG)-3')のシトシンが、シトシン塩基の5位又は6位でメチル化されることをいう。
本実施形態において、「メチル化の状態を解析する」とは、解析対象の塩基配列で示される領域に存在するCpG部位のメチル化の有無、または該塩基配列に存在するCpG部位のメチル化の頻度を解析することを意味する。ここで「解析対象の塩基配列」とは、配列番号1〜4の塩基配列から選択される少なくとも1つの塩基配列である。
上記の「メチル化の有無」は、解析対象の塩基配列で示される領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位のシトシンがメチル化されているか否かを意味する。
また、「メチル化の頻度」は、解析対象の塩基配列で示される領域に存在する全てのCpG部位または任意のCpG部位のうち、メチル化されているCpG部位の数の割合を意味する。なお、メチル化の頻度は、配列番号1〜4の塩基配列のそれぞれについて解析されてもよいし、配列番号1〜4から選択される複数の塩基配列を一まとめにして解析されてもよい。
本実施形態における、メチル化の状態を解析するCpG部位としては、
配列番号1の塩基配列で示される領域における5’末端側から2〜12番目のCpG部位、
配列番号2の塩基配列で示される領域における5’末端側から23〜31番目のCpG部位、
配列番号3の塩基配列で示される領域における5’末端側から5〜10番目のCpG部位、及び
配列番号4の塩基配列で示される領域における5’末端側から13〜27番目のCpG部位
から選択されることが好ましい。
本実施形態において、メチル化の状態を解析する方法としては、解析対象であるCpG部位がメチル化されているか否かを解析可能な公知の方法を用いることができる。メチル化の状態を解析するための公知の方法としては、例えばバイサルファイトシークエンス法(例えばT. Turanら, "Methylation of human papillomavirus-18 L1 gene: A biomarker of neoplastic progression?" Virology 349 (2006) p.175-183参照)、メチル化特異的PCR法(James G.HERMANら, Methylation-specific PCR:A novel PCR assay for methylation status of CpG islands, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, pp.9821-9826, September1996を参照)及びガイドプローブを用いてメチル化されたシトシンを酸化させる方法(国際公開第2006/132022号パンフレット参照)などが挙げられる。
バイサルファイトシークエンス法では、下記のようにしてDNAのメチル化の状態を解析できる。
まず、生体試料から抽出されたDNAと非メチル化シトシン変換剤とを反応させる。非メチル化シトシン変換剤は、DNAに含まれる非メチル化シトシンを、シトシン以外の塩基(ウラシル、チミン、アデニン又はグアニン)に変換させる物質である。このような非メチル化シトシン変換剤としては、亜硫酸水素塩(バイサルファイト)が好ましく用いられる。亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などを用いることができる。これらのうちいずれか1つ以上を用いてDNAを処理(バイサルファイト処理)する。バイサルファイト処理により、DNA中のメチル化されていないシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンはウラシルに変換されない。
このバイサルファイト処理における亜硫酸水素塩の濃度は、DNAの非メチル化シトシンを充分に変換できる濃度であれば特に限定されない。より具体的な亜硫酸水素塩の濃度としては、通常1M以上、好ましくは1〜15 M、より好ましくは3〜10 Mである。
例えば、試料中の最終濃度が4Mとなるように亜硫酸水素ナトリウムを生体試料から抽出されたDNAに添加する場合、10〜90分間、50〜80℃でインキュベートすることにより、非メチル化シトシンをウラシルに変換させることができる。また、亜硫酸水素塩を低濃度で用いる場合は、非メチル化シトシンを充分に変換できる程度の処理時間及び温度に適宜変更すればよい。
次に、バイサルファイト処理後のDNAを、後述するプライマーセットを用いて核酸増幅させる。核酸増幅後、得られたDNA断片についてシークエンス解析することによって、バイサルファイト処理後のDNAの塩基配列を決定する。そして、決定された塩基配列からDNAのメチル化の状態を解析できる。
なお、核酸増幅させる方法は、PCR法やLAMP法など公知の核酸増幅法であれば特に制限されない。また、核酸増幅法の条件も、核酸増幅法の種類、増幅させる領域のDNA断片の塩基配列、プライマーの塩基配列などに応じて適宜選択できる。
バイサルファイトシークエンスで用いられるプライマーセットは、メチル化状態を解析されるCpG部位を含むDNAを増幅できるものであればよい。
具体的には、解析対象の塩基配列が配列番号1であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号13:ttttatgagttatagatgtaggtgatagt
配列番号14:ccaccttaatcaccaaataacc
解析対象の塩基配列が配列番号2であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号15:taaaggatttgggattgagggtggg
配列番号16:ttcaaaaacatttctctaacaaaaaattc
解析対象の塩基配列が配列番号3であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号17:gggagttaggtttaggtggggatatg
配列番号18:aaaatcaaaaaacaaaaaacccttaac
解析対象の塩基配列が配列番号4であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号19:ttgtagtattattgttatagttttgtttttttt
配列番号20:attccactcctataataacatttatcaaaatctct
メチル化特異的PCR法(MSP法)では、下記のようにしてDNAのメチル化の状態を解析できる。
まず、バイサルファイト処理により、生体試料から抽出されたDNAに含まれる非メチル化シトシンをウラシルに変換させる。この処理では、メチル化シトシンはウラシルに変換されない。
次に、バイサルファイト処理後のDNAを、後述するプライマーセットを用いてPCR法により核酸増幅反応を行う。反応後、核酸増幅産物の有無によって、解析対象であるCpG部位のシトシンがメチル化シトシンであるか否かを判定できる。
メチル化特異的PCR法で用いられるプライマーセットとしては、解析対象であるCpG部位のシトシンがウラシルに変換されていない塩基配列は増幅できるが、該CpG部位のシトシンがウラシルに変換された塩基配列は増幅できないプライマーセットを用いることができる。このようなプライマーセットを用いてPCR反応を行う場合、反応後に核酸増幅産物が検出されたとき、解析対象であるCpG部位がメチル化シトシンであることがわかる。
また、解析対象であるCpG部位のシトシンがウラシルに変換された塩基配列は増幅できるが、該CpG部位のシトシンがウラシルに変換されていない塩基配列は増幅できないプライマーセットを用いることもできる。このようなプライマーセットを用いてPCR反応を行う場合、反応後に核酸増幅産物が検出されないとき、解析対象であるCpG部位がメチル化シトシンであることがわかる。
これらのプライマーセットに含まれるプライマーは、メチル化または非メチル化シトシンへの特異性を高めるために、プライマーの3’末端近傍に解析対象であるCpG部位のシトシンを含むように設計されることが好ましい。
例えば、解析対象であるCpG部位が、配列番号1の塩基配列の5’末端側から3、4及び10番目であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号5:gatgtaggtgatagttagcgatagcg
配列番号6:cctataaaaccgtctataaaaaaaacgaa
解析対象であるCpG部位が、配列番号2の塩基配列の5’末端側から28及び30番目であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号7:gaggagttgtgtggttttattgagtc
配列番号8:tctctaacaaaaaattccgaaacgta
解析対象であるCpG部位が、配列番号3の塩基配列の5’末端側から6番目であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号9:ttagaggcgagtaagagttagggtagtc
配列番号10:acctacaaaaacgacacaaaaaacg
解析対象であるCpG部位が、配列番号4の塩基配列の5’末端側から23及び24番目であるとき、下記のプライマーセットを用いることができる。
配列番号11:gggttgttatttaaggttatattcgtacga
配列番号12:taaaccgcaaatacgaaaacacgat
本実施形態において、少なくとも1つのCpG部位のメチル化の有無を解析する方法としては、解析対象であるCpG部位がメチル化されているか否かを解析できるものであればよい。例えば、上記のバイサルファイトシークエンス法やメチル化特異的PCR法が挙げられる。それらの中でも、解析対象であるCpG部位特異的なプライマーセットを用いて、簡便且つ迅速にメチル化の有無を測定できるので、メチル化特異的PCR法が好ましい。
本実施形態において、メチル化の頻度を解析する方法としては、解析対象の塩基配列で示される領域に存在する、メチル化されたCpG部位の数の割合を解析できるものであればよい。そのような方法としては、例えば上記のバイサルファイトシークエンス法やメチル化特異的PCR法が挙げられる。それらの中でも、解析対象の塩基配列で示される領域をシークエンス解析できるプライマーセットを設計することによって、両プライマーに挟まれた領域内のCpG部位を一度に解析できるので、バイサルファイトシークエンス法が好ましい。
なお、解析対象の塩基配列で示される領域に存在する全CpG部位の数は既知であるので、該領域に存在するメチル化されたCpG部位の数自体をメチル化の頻度とすることができる。また、解析対象である領域に存在するメチル化されたCpG部位の数を、該領域に存在する全CpG部位の数で除した値を、メチル化の頻度とすることもできる。
本願発明は、上述のメチル化の状態を解析した結果に基づいて、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定できる。
例えば、配列番号1、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される領域に存在する少なくとも1つのCpG部位にメチル化が有ると解析された場合に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定でき、メチル化が無いと解析された場合に上皮性癌由来の細胞が存在しないと判定できる。
また、配列番号2の塩基配列で示される領域に存在する少なくとも1つのCpG部位にメチル化が無いと解析された場合に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定でき、メチル化が有ると解析された場合に上皮性癌由来の細胞が存在しないと判定できる。
メチル化の頻度に基づいて上皮性癌由来の細胞の存否を判定する場合には、解析対象である領域のメチル化の頻度と、予め設定された閾値とを比較することによって、上皮性癌由来の細胞の存否を判定できる。
具体的には、配列番号1、配列番号3又は配列番号4の塩基配列で示される領域におけるメチル化の頻度が閾値より高い場合に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定でき、該メチル化の頻度が閾値より低い場合に上皮性癌由来の細胞が存在しないと判定できる。
また、配列番号2の塩基配列で示される領域におけるメチル化の頻度が閾値より低い場合に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定でき、該メチル化の頻度が閾値より高い場合に上皮性癌由来の細胞が存在しないと判定することができる。
なお、上記の閾値は経験的に求めることができる。例えば、癌細胞が含まれていないことが予め確認されている生体試料と、上皮性癌由来の細胞が含まれていることが予め確認されている生体試料のメチル化の頻度を解析した結果に基づいて、閾値を設定できる。
具体的には、上皮性癌由来細胞でのメチル化の頻度が正常細胞でのメチル化の頻度よりも高い値を示す場合は、閾値は正常細胞のメチル化の頻度より高く、且つ上皮性癌由来細胞のメチル化の頻度より低い値に設定できる。上皮性癌由来細胞でのメチル化の頻度が正常細胞でのメチル化の頻度よりも低い値を示す場合、閾値は正常細胞のメチル化の頻度より低く、且つ上皮性癌由来細胞のメチル化の頻度より高い値に設定できる。
また、複数の正常細胞のメチル化の頻度と、複数の上皮性癌由来細胞のメチル化の頻度を解析し、最も高確率に正常細胞と上皮性癌由来細胞とを区別できる値を閾値とすることが好ましい。
上述のように、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される領域に存在するCpG部位の解析により、上皮性癌由来の細胞の存否を判定できる。したがって、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される領域に存在するCpG部位は、メチル化解析を用いて上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための分子マーカーとすることができる。また、非メチル化シトシン変換剤と、メチル化特異的PCR法で用いられるプライマーセットとを備えるキットを、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するためのキットとすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:細胞株を用いたMeDIP-chip法による網羅的メチル化解析
メチル化DNA免疫沈降法及びマイクロアレイ(MeDIP-chip法)を用いて、乳癌由来の細胞のメチル化状態を解析した。
〔検体試料の調製〕
(1)メチル化DNA免疫沈降法
乳癌由来細胞株MCF7、MB-MDA231及びSKBR3、並びに正常乳腺上皮細胞株HMECから抽出した各ゲノムDNA(4μg)を生体試料として、これらを制限酵素MseI(NEB社)と37℃で一晩反応させて300〜1000 bpになるように断片化した。次いで、反応後の各生体試料を95℃で10分間加熱して変性させ、一本鎖ゲノムDNAにした。
Chromatin Immuoprecipitationアッセイキット(Upstate biotechnology社)に添付のマニュアルに従って、変性させた生体試料を該アッセイキットに付属の希釈用緩衝液で希釈し、これらにProteinG Sepharoseビーズ(GEヘルスケア社)を添加した。そして4℃で30分ローテーションした後、遠心分離して上清を回収することにより、該ビーズに非特異的に結合するタンパク質などを除いた。回収した上清を二つ分けて、それらを別々のチューブに移し、一方に抗メチル化シトシン抗体(検体試料用)を添加し、他方に正常マウスIgG抗体(SantaCruz社;対照試料用)を添加して、4℃で一晩ローテーションした。
これらにProteinG Sepharose ビーズ(GEヘルスケア社)を添加して4℃で1時間ローテーションして、前記抗体と前記抗体が認識して結合するゲノムDNAとの複合体を前記ビーズに結合させて回収した。回収したビーズを前記アッセイキットに添付のマニュアルに従ってアッセイキットに付属の洗浄用緩衝液で洗浄した後、免疫沈降させた複合体中のゲノムDNAを溶出用緩衝液で溶出した。
上記のメチル化DNA免疫沈降法で得たゲノムDNAを、プロテイナーゼKと反応させた後、Qiaquick PCR purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製して、検体試料及び対照試料を得た。
(2)検体試料の確認
上記(1)のメチル化DNA免疫沈降法によりメチル化DNAを特異的に回収できたかを確認するためにPCR法及びアガロース電気泳動法行った。
(i)PCR反応液の調製
下記の試薬を混合し、25μlの反応液を調製した。
2 x fastStart SYBR Green Master Mix(ROCHE社) 12.5μl
フォワード(F)−プライマー(10μM) 1μl
リバース(Rv)−プライマー(10μM) 1μl
ゲノムDNA(0.4 ng/μl) 1μl
dH2O 9.5μl
用いたプライマーの塩基配列は、下記のとおりである。
<ポジティブコントロール用プライマー>
「細胞株がMCF7及びHMECの場合:GSTP1 primer配列」
配列番号21:F: gaggccttcgctggagtt
配列番号22:Rv: gtactcactggtggcgaaga
「細胞株がMB-MDA231の場合:CDH1 primer配列」
配列番号23:F: gtgaaccctcagccaatcag
配列番号24:Rv: agttccgacgccactgag
「細胞株がSKBR3の場合:ER primer配列」
配列番号25:F: gcctacgagttcaacgccg
配列番号26:Rv: aacgccgcagcctcagac
<ネガティブコントロール用プライマー(非メチル化プローブ)>
「非メチル化遺伝子プライマー配列」
(1)ch14-cgf1
配列番号27:F: ggaggagtcaagagaagttggaagc
配列番号28:Rv: cccacactccatttccattcctc
(2)ch14-cgf2
配列番号29:F: gggtactttgccaatatagccatgc
配列番号30:Rv: tggctaagtgggagggagaacag
(3)ch14-cgf3
配列番号31:F: ggatgggagacacctggttca
配列番号32:Rv: ggatggaccagctgctttgtactc
(ii)PCR反応条件
上記の反応液を用い、下記の条件でPCRを行った。
95℃で10分、
95℃で30秒、66℃で15秒、72℃で30秒を45サイクル、
95℃で1分、66℃で30秒、95℃で30秒を1サイクル。
(iii)アガロース電気泳動
上記の各PCR産物を、2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、増幅した核酸を確認した。
GSTP1遺伝子は、そのプロモーター領域がMCF7細胞においてメチル化修飾を受けるが、MB-MDA231及びHMEC細胞ではメチル化修飾を受けないことが知られている遺伝子である。また、ER遺伝子は、そのプロモーター領域がSKBR3細胞においてメチル化修飾を受けるが、MCF7細胞ではメチル化修飾を受けないことが知られている遺伝子である。ch14-cgf1遺伝子、ch14-cgf2遺伝子及びch14-cgf3遺伝子は、メチル化修飾を受けないことが知られている遺伝子である。
(3)検体試料中の核酸の増幅及び標識
上記検体試料及び対照試料に含まれる核酸を、WT-Ovation(商標)Pico RNA Amplification System Version 1.0(NuGEN社)を用いて増幅した。具体的な操作は該製品に添付のマニュアルに従って行った。次いで、各試料の吸光度(260 nm及び280 nm)を測定して増幅した核酸の濃度を確認した。
そして、上記で増幅した検体試料及び対照試料に含まれる核酸を、FL-Ovation(商標) cDNA Biotin Module V2(NuGEN社)を用いて断片化及びビオチン標識を行った。具体的な操作は該製品に添付のマニュアルに従って行った。
〔マイクロアレイ解析〕
(1)試料とマイクロアレイとの接触
上記で調製した検体試料及び対照試料を、マイクロアレイとしてのGeneChip(登録商標)Human Promoter 1.0R Array(Affymetrix社)に接触させて、マイクロアレイのプローブとのハイブリダイゼーションを行った。検体試料及び対照試料について、同種のマイクロアレイを1つずつ用いた。各試料の接触後の染色、洗浄及びスキャン(シグナルの測定)は、Affymetrix社から提供されるマニュアルに従って行った。
(2)メチル化状態の解析
スキャン後、得られたアレイデータを解析した。アレイデータ解析は、Tiling Analysis Software(TAS:Affymetrix社)を用いて、抗メチル化シトシン抗体のサンプルが高いシグナルを示す領域ファイル(BARファイル)を作成し、各プローブのsignal、p-value(-10log10(p-value))を取得した。ある閾値以下の統計学的に有意なp-valueを示す領域(-10log10(p-value)<20など)はBEDファイルとして作成した。作成したBARファイル及びBEDファイルの解析には、標準ブラウザーであるIntegrated Genome Browser(Affymetrix社)を用いた。
そして、TASから出力した各p-value、signal値に相当するアノテーション情報を付加したデータを用いて、乳癌由来の細胞の存否を判定できる、新規分子マーカーの探索を行った。
[結果]
メチル化状態の解析により特定した領域の塩基配列を、図1〜4に示す。解析の結果、正常乳腺上皮細胞株ではメチル化しておらず、乳癌細胞株ではメチル化しているDNA領域として、配列番号1、3及び4の領域を特定した。また、正常乳腺上皮細胞株ではメチル化しており、乳癌細胞株ではメチル化していないDNA領域として、配列番号2の領域を特定した。
すなわち、実施例1で特定した配列番号1〜4の領域は、正常細胞と乳癌由来の細胞との間でメチル化状態が異なる領域である。よって、これら領域は、メチル化解析における上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための分子マーカーとして利用できる可能性が示唆された。
実施例2:バイサルファイトシークエンスによる各CpG部位のメチル化の有無の解析
実施例1において特定された領域の塩基配列に含まれる、CpG部位のメチル化状態を、バイサルファイトシークエンスによって解析した。また、解析結果に基づいて、メチル化の頻度及び各CpG部位におけるメチル化の割合を求めた。
[バイサルファイト処理]
バイサルファイトシークエンスを行うため、細胞株から抽出したDNA及び組織由来ゲノムDNAをバイサルファイト処理し、分析用試料を調製した。
ロットが異なる3種類のヒト正常乳腺組織由来ゲノムDNA(BioChain社)を混合したものを、正常ヒト乳腺組織由来ゲノムDNAとして用いた。また、ロットが異なる3種類のヒト乳癌組織由来ゲノムDNA(BioChain社)を混合したものを、乳癌組織由来ゲノムDNAとして用いた。
各ゲノムDNA2μgに300μlの0.3 M NaOHを加え、37℃、10分間インキュベートした。次に、バイサルファイト処理を行うため、10 Mの亜硫酸水素ナトリウム溶液300μlを加え、80℃、40分間インキュベートした。バイサルファイト処理後の溶液中に含まれるDNAをQiaquick PCR purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製した。このようにして、バイサルファイト処理された正常乳腺組織由来ゲノムDNAを含む正常乳腺組織試料を取得し、バイサルファイト処理された乳癌組織由来ゲノムDNAを含む乳癌組織試料を取得した。
また、乳癌細胞株MCF7、及び正常乳腺上皮細胞株HMECは、QIAmp Blood Maxiキット(QIAGEN社)を用いてゲノムを抽出した。
抽出したゲノムDNA2μgに、300μlの0.3 M NaOHを加え、37℃、10分間インキュベートした。次に、バイサルファイト処理を行うため、10 Mの亜硫酸水素ナトリウム溶液300μlを加え、80℃、40分間インキュベートした。バイサルファイト処理後、溶液中に含まれるDNAをQiaquick PCR purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製した。このようにして、バイサルファイト処理された正常乳腺上皮細胞株HMEC由来ゲノムDNAを含む正常乳腺細胞株試料を取得し、バイサルファイト処理された乳癌細胞株MCF7由来ゲノムDNAを含む乳癌細胞株試料を取得した。
[分析用試料のPCR増幅]
上記で精製された正常乳腺組織試料、乳癌組織試料、正常乳腺細胞株試料及び乳癌細胞株試料について、下記に示す反応溶液を用いてPCRを行い、PCR増幅産物を得た。
正常乳腺組織試料及び乳癌組織試料のPCR反応で用いた反応液の組成、反応条件及びプライマーを下記に示す。
<PCR反応液>
10×Ex Taq Buffer(20 mM Mg2+plus)(TaKaRa社) 2.5μL
dNTP Mixture(各2.5 mM) 2μL
F-primer (10μM) 1μL
Rv-primer (10μM) 1μL
Template 1μL
TaKaRa Ex Taq HS(5U/μl) 0.2μL
dH 2 O 17.3μL
Total 25μL
<正常乳腺組織試料及び乳癌組織試料に含まれるDNAを増幅するためのPCR反応条件>
95℃ 4.5分
95℃ 30秒、57.3℃ 30秒、72℃ 30秒を40cycles
<配列番号1の領域をシークエンスするためのプライマー配列>
配列番号13:F: ttttatgagttatagatgtaggtgatagt
配列番号14:Rv: ccaccttaatcaccaaataacc
<配列番号2の領域をシークエンスするためのプライマー配列>
配列番号15:F: taaaggatttgggattgagggtggg
配列番号16:Rv: ttcaaaaacatttctctaacaaaaaattc
<配列番号4の領域をシークエンスするためのプライマー配列>
配列番号19: F: ttgtagtattattgttatagttttgtttttttt
配列番号20:Rv: attccactcctataataacatttatcaaaatctct
正常乳腺細胞株試料及び乳癌細胞株試料のPCR反応で用いた反応液、反応条件、及びプライマーを下記に示す。
<PCR反応液>
10×Ex Taq Buffer(20 mM Mg2+plus)(TaKaRa社) 2.5μL
dNTP Mixture(各2.5 mM) 2μL
F-primer (10μM) 1μL
Rv-primer (10μM) 1μL
Template 1μL
TaKaRa Ex Taq HS(5U/μl) 0.2μL
dH 2 O 17.3μL
Total 25μL
<正常乳腺細胞株試料及び乳癌細胞株試料に含まれるDNAを増幅するためのPCR反応条件>
95℃ 4.5分
95℃ 30秒、57.6℃ 30秒、72℃ 30秒を40cycles
<配列番号3の領域をシークエンスするためのプライマー配列>
配列番号17: F: gggagttaggtttaggtggggatatg
配列番号18:Rv: aaaatcaaaaaacaaaaaacccttaac
<配列番号4の領域をシークエンスするためのプライマー配列>
配列番号19: F: ttgtagtattattgttatagttttgtttttttt
配列番号20:Rv: attccactcctataataacatttatcaaaatctct
[PCR産物のクローニング]
上記PCRにより得られた増幅産物を、TAクローニングキット(TOPO TA Cloning キット(invitrogen社))を用いてベクターに組み込んだ。ベクターに組み込まれた構築物を用いて、大腸菌(TOP10)を形質転換した。その後、形質転換した大腸菌をLB寒天培地(組成:1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)塩化ナトリウム、1.5%(w/v)寒天)を用いて、37℃で一晩培養した。
[塩基配列解析]
培養後、得られた大腸菌から、GenElute Plasmid Miniprepキット(SIGMA社)を用いてプラスミドを精製した。精製したプラスミドに組み込まれている前記増幅産物の塩基配列を、BigDye terminator Cycle Sequencing法により、遺伝子解析システム(Applied Biosystems 3730xl DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ社))を用いて決定した。
塩基配列解析後、各サンプルにおいて、CpG部位がメチル化されているか否かを解析した。
[結果]
各領域(配列番号1〜4)における、メチル化されているか否かを解析した結果を図5〜9に示す。メチル化されているCpG部位を「黒丸」、メチル化されていないCpG部位を「白丸」で示す。
図5は、正常乳腺組織7サンプル、乳癌組織9サンプルにおける、配列番号1の塩基配列の5’末端側から数えて2〜12番目のCpG部位のメチル化の有無を示した表である。
図6は、正常乳腺組織2サンプル、乳癌組織5サンプルにおける、配列番号2の塩基配列の5’末端側から数えて23〜31番目のCpG部位のメチル化の有無を示した表である。
図7は、正常乳腺上皮由来細胞株(HMEC)9サンプル、乳癌由来細胞株(MCF7)7サンプルにおける、配列番号3の塩基配列の5’末端側から数えて5〜10番目のCpG部位のメチル化の有無を示した表である。
図8は、正常乳腺上皮由来細胞株(HMEC)7サンプル、乳癌由来細胞株(MCF7)7サンプルにおける、配列番号4の塩基配列の5’末端側から数えて13〜24番目のCpG部位のメチル化の有無を示した表である。
図9は、正常乳腺組織4サンプル、乳癌組織4サンプルにおける、配列番号4の塩基配列の5’末端側から数えて13〜27番目のCpG部位のメチル化の有無を示した表である。
図5〜9の結果に基づいて、各領域におけるメチル化の頻度を解析したグラフを図10〜14に示す。
図10〜14で示された、正常細胞(正常乳腺組織、又は正常乳腺上皮由来細胞株)のメチル化の頻度と、乳癌由来の細胞(乳癌組織、又は乳癌由来細胞株)のメチル化頻度とから、閾値を50%と設定する。
配列番号1、3及び4の塩基配列で示される領域のメチル化の頻度において、正常細胞では閾値より低く、乳癌由来の細胞では設定した閾値よりも高い。
このことから、被検者より採取された生体試料から抽出されたDNAに含まれる、配列番号1、3及び4の領域では、メチル化の頻度が高いという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定できることが示唆された。
また、配列番号2の塩基配列で示される領域のメチル化の頻度において、正常細胞では閾値より高く、乳癌由来の細胞では設定した閾値よりも低い。
このことから、被検者より採取された生体試料から抽出されたDNAに含まれる、配列番号2の領域では、メチル化の頻度が低いという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定できることが示唆された。
図15〜19は、図5〜9の結果に基づいて各CpG部位におけるメチル化されている細胞数の割合を示した表である。
図15〜19より、配列番号1、3及び4の塩基配列に存在するCpG部位のメチル化の割合は乳癌由来の細胞の方が高く、配列番号2の塩基配列に存在するCpG部位のメチル化の割合は正常細胞の方が高い。
このことから、配列番号1、3及び4の塩基配列に存在するCpG部位にメチル化が有ると解析されたときに生体試料中に乳癌由来の細胞が存在すると判定でき、配列番号2の塩基配列に存在するCpG部位にメチル化が無いと解析されたときに生体試料中に乳癌由来の細胞が存在すると判定できることが示唆された。
また、これらのCpG部位の中でも、正常細胞と乳癌由来の細胞とでメチル化の割合の差が大きいCpG部位は、メチル化状態を解析するのに適している。このようなCpG部位を標的としてメチル化特異的PCR用のプライマーを設計することによって、より正確に乳癌由来の細胞の存否を判定できるといえる。
実施例3:メチル化特異的PCR法を用いた乳癌由来の細胞の検出
乳癌のゲノムDNAにおける、配列番号1、3及び4の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化状態を、メチル化特異的PCR法によって解析した。
ゲノムDNAは、ロットの異なる3種類の正常ヒト乳腺組織由来ゲノムDNA(BioChain社)、及びロットが異なる3種類のヒト乳癌組織由来ゲノムDNA(BioChain社)を用いた。
各ゲノムDNA2μgに300μlの0.3 M NaOHを加え、37℃、10分間インキュベートした。次に、バイサルファイト処理を行うため、10 Mの亜硫酸水素ナトリウム溶液300μlを加え、80℃、40分間インキュベートした。バイサルファイト処理後の溶液中に含まれるDNAをQiaquick PCR purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製した。このようにして、バイサルファイト処理された正常乳腺組織由来ゲノムDNAを含む正常乳腺組織検体A、B及びCを取得し、バイサルファイト処理された乳癌組織由来ゲノムDNAを含む乳癌組織検体D、E及びFを取得した。
配列番号1と配列番号4のメチル化解析を行うためのPCR反応には、下記に示す反応溶液、反応条件及びプライマーを用いた。
配列番号1に対するメチル化特異的PCR用プライマーは、配列番号1の塩基配列の5'末端側から3、4及び10番目のCpGを標的としてメチル化の有無を解析するためのプライマーである。配列番号4に対するメチル化特異的PCR用プライマーは、配列番号4の塩基配列の5'末端側から23及び24番目のCpG部位を標的としてメチル化の有無を解析するためのプライマーである。
<PCR反応液>
2 x FastStart SYBR Green Master Mix(ROCHE社)12.5μL
F-primer (10μM) 1μL
Rv-primer (10μM) 1μL
Template 1μL
dH 2 O 9.5μL
Total 25μL
<配列番号1及び4のPCR反応条件>
95℃ 10分
95℃ 30秒、62℃ 30秒、72℃ 30秒を33cycles
95℃ 1分、62℃ 30秒、95℃ 30秒を 1cycle
<配列番号1のメチル化特異的PCR用プライマー>
配列番号5:F: gatgtaggtgatagttagcgatagcg
配列番号6:Rv: cctataaaaccgtctataaaaaaaacgaa
<配列番号4のメチル化特異的PCR用プライマー>
配列番号11:F: gggttgttatttaaggttatattcgtacga
配列番号12:Rv: taaaccgcaaatacgaaaacacgat
また、配列番号3のPCR反応には、下記の反応溶液、反応条件及びプライマーを用いた。配列番号3に対するメチル化特異的PCR用プライマーは、配列番号3の塩基配列の5'末端側から6番目のCpGを標的としてメチル化の有無を解析するためのプライマーである。
<PCR反応液>
2 x FastStart SYBR Green Master Mix(ROCHE社) 12.5μL
F-primer (10μM) 1μL
Rv-primer (10μM) 1μL
Template 1μL
dH 2 O 9.5μL
Total 25μL
<配列番号3のPCRの反応条件>
95℃ 10分
95℃ 30秒、62℃ 30秒、72℃ 30秒を35cycles
95℃ 1分、62℃ 30秒、95℃ 30秒を1cycle
<配列番号3のメチル化特異的PCR用プライマー>
配列番号9 :F: ttagaggcgagtaagagttagggtagtc
配列番号10:Rv: acctacaaaaacgacacaaaaaacg
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。
[結果]
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果を図17〜19に示す。
図17(配列番号1のメチル化特異的PCR解析)、図18(配列番号3のメチル化特異的PCR解析)、及び図19(配列番号4のメチル化特異的PCR解析)のいずれにおいても、正常乳腺組織検体A、B及びCと比較して、乳癌組織検体D、E及びFでは増幅産物の量が多いことが確認できた。
このことから、被検者より採取された生体試料から抽出されたDNAに含まれる、配列番号1〜4の塩基配列に存在するCpG部位を、メチル化特異的PCR法により解析することで、生体試料中の乳癌由来の細胞の存否を判定できることが示唆された。
実施例4:上皮性癌由来の細胞におけるPCDHGA10遺伝子(配列番号1)に含まれるCpG部位のメチル化特異的PCRによる解析
大腸癌、胃癌、子宮頸癌のゲノムDNAにおける、配列番号1の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化状態を、メチル化特異的PCR法によって解析した。
QIAmp Blood Maxiキット(QIAGEN社)を用いて、大腸癌細胞株HCT16、胃癌細胞株KATO3ならびに子宮頸癌細胞株C33A及びSiHaからゲノムを抽出した。抽出した各ゲノムDNA2μgに300μlの0.3 M NaOHを加え、37℃、10分間インキュベートした。次に、バイサルファイト処理を行うため、10 Mの亜硫酸水素ナトリウム溶液300μlを加え、80℃、40分間インキュベートした。バイサルファイト処理後の溶液中に含まれるDNAをQiaquick PCR purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製した。このようにして、バイサルファイト処理されたHCT16由来ゲノムDNAを含む大腸癌HCT16試料を取得し、バイサルファイト処理されたKATO3由来ゲノムDNAを含む胃癌KATO3試料を取得し、バイサルファイト処理されたC33A由来ゲノムDNAを含む子宮頸癌C33A試料を取得し、バイサルファイト処理されたSiHa由来ゲノムDNAを含む子宮頸癌SiHa試料を取得した。
さらに、ロットが異なる2種類のヒト大腸癌組織由来ゲノムDNA(BioChain社)及び1種類のヒト正常大腸組織由来ゲノムDNA(BioChain社)についても、上記細胞株と同様の処理を行った。このようにして、バイサルファイト処理された大腸癌組織由来ゲノムDNAを含む2種類の大腸癌組織試料(大腸癌組織試料A及び大腸癌組織試料B)を取得し、バイサルファイト処理された正常大腸組織由来ゲノムDNAを含む正常大腸組織試料を取得した。
得られた各試料を用いて配列番号1の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化解析を行うため、メチル化特異的PCRを行った。
配列番号1のメチル化解析を行うためのPCR反応には、実施例3に記載の反応溶液、反応条件及びプライマーを用いた。
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。
(結果)
配列番号1の塩基配列のメチル化特異的PCR法により増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果を図23に示す。この結果から、正常大腸癌組織試料と比較して、大腸癌乳癌組織試料A及びBでは増幅産物の量が多いことが確認できた。さらに、大腸癌HCT16試料、胃癌KATO3試料、子宮頸癌C33A試料及び子宮頸癌SiHa試料においても大腸癌乳癌組織試料A及びBとほぼ等しい量の増幅産物を確認できることが示された。
以上のことから、配列番号1の塩基配列に存在するCpG部位を、メチル化特異的PCR法によりメチル化解析することで、乳癌、大腸癌、胃癌、子宮頸癌などの上皮性癌由来の細胞の存否を判定できることが示唆された。
実施例5:上皮性癌由来の細胞におけるPCDHB6遺伝子(配列番号2)に含まれるCpG部位のメチル化特異的PCRによる解析
大腸癌のゲノムDNAにおける、配列番号2の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化状態を、メチル化特異的PCR法によって解析した。
測定試料として、上記の実施例4で得られた2種類の大腸癌組織試料(大腸癌組織試料A及び大腸癌組織試料B)ならびに正常大腸組織試料を用いた。
配列番号2の塩基配列のメチル化解析を行うためのPCR反応には、下記に示す反応溶液、反応条件及びプライマーを用いた。
配列番号2に対するメチル化特異的PCR用プライマーは、配列番号2の5'末端側から28及び30番目のCpGを標的としてメチル化の有無を解析するためのプライマーである。
<PCR反応液>
2 x FastStart SYBR Green Master Mix(ROCHE社) 12.5μL
F-primer (10μM) 1μL
Rv-primer (10μM) 1μL
Template 1μL
dH 2 O 9.5μL
Total 25μL
<配列番号2のPCR反応条件>
95℃ 10分
95℃ 30秒、62℃ 30秒、72℃ 30秒を33cycles
95℃ 1分、62℃ 30秒、95℃ 30秒を 1cycle
<配列番号2のメチル化特異的PCR用プライマー>
配列番号7:F : gaggagttgtgtggttttattgagtc
配列番号8:Rv: tctctaacaaaaaattccgaaacgta
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。
(結果)
PCDHB6遺伝子(配列番号2)のメチル化特異的PCR法により増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果を図24に示す。この結果から、大腸癌乳癌組織試料A及びBと比較して、正常大腸癌組織試料では増幅産物の量が多いことが確認できた。
以上のことから、配列番号2の塩基配列中に存在するCpG部位を、メチル化特異的PCR法によりメチル化解析することで、大腸癌などの上皮性癌由来の細胞の存否を判定できることが示唆された。
実施例6:上皮性癌由来の細胞におけるLBX2遺伝子(配列番号3)に含まれるCpG部位のメチル化特異的PCRによる解析
大腸癌及び子宮頸癌のゲノムDNAにおける、配列番号3の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化状態を、メチル化特異的PCR法によって解析した。
測定試料として、実施例4で得られた大腸癌HCT16試料、子宮頸癌C33A試料及び子宮頸癌SiHa試料、ならびに2種類の大腸癌組織試料(大腸癌組織試料A及び大腸癌組織試料B)及び正常大腸組織試料を用いた。
また、配列番号3の塩基配列のメチル化解析を行うためのPCR反応には、実施例3に記載の反応溶液、反応条件及びプライマーを用いた。
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。
(結果)
配列番号3の塩基配列のメチル化特異的PCR法により増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果を図25に示す。この結果から、正常大腸癌組織試料と比較して、大腸癌乳癌組織試料A及びBでは増幅産物の量が多いことが確認できた。さらに、大腸癌HCT16試料、子宮頸癌C33A試料及び子宮頸癌SiHa試料においても、大腸癌乳癌組織試料A及びBとほぼ等しい量の増幅産物を確認できることが示された。
以上のことから、配列番号3の塩基配列に存在するCpG部位を、メチル化特異的PCR法によりメチル化解析することで、乳癌、大腸癌、子宮頸癌などの上皮性癌由来の細胞の存否を判定できることが示唆された。
実施例7:上皮性癌由来の細胞における配列番号4の塩基配列に含まれるCpG部位のメチル化特異的PCRによる解析
大腸癌、胃癌、子宮頸癌のゲノムDNAにおける、chromosome1遺伝子(配列番号4)に含まれるCpG部位のメチル化状態を、メチル化特異的PCR法によって解析した。
測定試料として、上記実施例4で得られた大腸癌HCT16試料、胃癌KATO3試料、子宮頸癌C33A試料及び子宮頸癌SiHa試料、ならびに2種類の大腸癌組織試料(大腸癌組織試料A及び大腸癌組織試料B)及び正常大腸組織試料を用いた。
また、配列番号4のメチル化解析を行うためのPCR反応には、実施例3に記載の反応溶液、反応条件、及びプライマーを用いた。
メチル化特異的PCRにより増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した。
(結果)
配列番号4の塩基配列のメチル化特異的PCR法により増幅された増幅産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果を図26に示す。この結果から、正常大腸癌組織試料と比較して、大腸癌乳癌組織試料A及びBでは増幅産物の量が多いことが確認できた。さらに、大腸癌HCT16試料、胃癌KATO3試料、子宮頸癌C33A試料及び子宮頸癌SiHa試料においても、大腸癌乳癌組織試料A及びBとほぼ等しい量の増幅産物が確認できることが示された。
以上のことから、配列番号4の塩基配列に存在するCpG部位を、メチル化特異的PCR法によりメチル化解析することで、乳癌、大腸癌、胃癌、子宮頸癌などの上皮性癌由来の細胞の存否を判定できることが示唆された。
本出願は、2009年6月30日に出願された日本国特許出願特願2009−155572号に関し、これらの特許請求の範囲、明細書、図面及び要約書の全ては本明細書中に参照として組み込まれる。

Claims (13)

  1. 被検者から採取した生体試料からDNAを抽出する抽出工程と、
    抽出工程で得られたDNAに含まれる配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位における、メチル化の状態を解析する解析工程と、
    解析工程で得られた解析結果に基づいて、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定する判定工程と
    を含む、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための方法。
  2. 解析工程が、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位のメチル化の有無を解析する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 判定工程が、解析工程において、配列番号1、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位にメチル化が有るという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定する工程である、請求項2に記載の方法。
  4. 判定工程が、解析工程において、配列番号2の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位にメチル化が無いという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定する工程である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 解析工程が、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在する、CpG部位のメチル化の頻度を解析する工程である、請求項1に記載の方法。
  6. 判定工程が、解析工程において、配列番号1、配列番号3及び配列番号4の塩基配列で示される少なくとも1つの領域に存在するCpG部位のメチル化の頻度が高いという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定する工程である、請求項5に記載の方法。
  7. 判定工程が、解析工程において、配列番号2の塩基配列で示される領域に存在するCpG部位のメチル化の頻度が低いという解析結果が得られた場合に、生体試料中に上皮性癌由来の細胞が存在すると判定する工程である、請求項5又は6に記載の方法。
  8. CpG部位が、
    配列番号1の塩基配列で示される領域における、5’末端側から2〜12番目のCpG部位、
    配列番号2の塩基配列で示される領域における、5’末端側から23〜31番目のCpG部位、
    配列番号3の塩基配列で示される領域における、5’末端側から5〜10番目のCpG部位、及び
    配列番号4の塩基配列で示される領域における、5’末端側から13〜27番目のCpG部位
    から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4で示される少なくとも1つの領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位から選択される、メチル化解析を用いた、上皮性癌由来の細胞の存否を判定するための分子マーカー。
  10. CpG部位が、
    配列番号1の塩基配列で示される領域における、5’末端側から2〜12番目のCpG部位、
    配列番号2の塩基配列で示される領域における、5’末端側から23〜31番目のCpG部位、
    配列番号3の塩基配列で示される領域における、5’末端側から5〜10番目のCpG部位、及び
    配列番号4の塩基配列で示される領域における、5’末端側から13〜27番目のCpG部位
    から選択される、請求項9に記載の分子マーカー。
  11. 被検者から採取した生体試料から抽出されたDNAに含まれる非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤と、
    配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4の塩基配列で示される領域に存在する、少なくとも1つのCpG部位のメチル化をメチル化特異的PCRによって確認するためのプライマーセットと、
    を備える、生体試料中の上皮性癌由来の細胞の存否を判定するためのキット。
  12. CpG部位が、
    配列番号1の塩基配列で示される領域における、5’末端側から2〜12番目のCpG部位、
    配列番号2の塩基配列で示される領域における、5’末端側から23〜31番目のCpG部位、
    配列番号3の塩基配列で示される領域における、5’末端側から5〜10番目のCpG部位、及び
    配列番号4の塩基配列で示される領域における、5’末端側から13〜27番目のCpG部位
    から選択される、請求項11に記載のキット。
  13. プライマーセットが、
    配列番号5及び配列番号6の塩基配列で示されるプライマー、
    配列番号7及び配列番号8の塩基配列で示されるプライマー、
    配列番号9及び配列番号10の塩基配列で示されるプライマー、及び
    配列番号11及び配列番号12の塩基配列で示されるプライマー
    から選択される、請求項11又は12に記載のキット。
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