JPWO2010117010A1 - 腫瘍マーカーおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
被験体サンプル中のSNX5を検出する。甲状腺乳頭癌に特異的な腫瘍マーカーとして用いることによって、甲状腺乳頭癌の診断を容易にする。また、当該腫瘍マーカーを用いた甲状腺乳頭癌の判別技術を提供する。
Description
本発明は、腫瘍マーカーおよびその利用に関するものであり、より詳細には、甲状腺乳頭癌の診断に好適な腫瘍マーカーの検出方法および当該方法に用いられるツールに関するものである。
甲状腺乳頭癌は、甲状腺癌の中で最も発生頻度の高い悪性腫瘍であり、肺や頸部リンパ節へ転移した場合は予後不良となり得る。よって、甲状腺乳頭癌の確定診断は非常に重要である。甲状腺乳頭癌の確定診断には、病理組織学的な検討が不可欠である。しかし、乳頭状の構築物を呈する悪性腫瘍は、甲状腺乳頭癌以外にも多く存在するため、病巣が原発性であるか否かを判断することだけでなく、リンパ節転移の腫瘍性病変を判定することが非常に困難である。
甲状腺乳頭癌の病理組織の特徴は、甲状腺組織に特異的な分子の発現様式によって評価される。既知の甲状腺マーカーとして、サイログロブリンや甲状腺転写因子1(thyroid transcription factor 1:TTF−1)などが知られている。サイログロブリンは甲状腺組織から分泌される二量体の糖タンパク質であり、甲状腺疾患において、細胞中または血液中における濃度が上昇することが知られている。
Otsuki, T et al., SNX5, a New Member of the Sorting Nexin Family, Binds to the Fanconi Anemia Complementation Group A Protein. Biochemical and Biophysical Research Communications 265: 630-635 (1999)
Teasdale, R.D. et al., A large family of endosome-localized proteins related to sorting nexin 1. Biochem. J. 358: 7-16 (2001)
血液中のサイログロブリン量の測定は、甲状腺癌の手術後における経過の観察(特に、転移の可能性の判断)に用いられている。しかし、サイログロブリンの測定からは、甲状腺癌が良性であるのか、それとも悪性であるのかを判別することができない。また、甲状腺組織に特異的に発現していると報告されている分子の中には他の臓器にも発現している分子がある。よって、甲状腺乳頭癌に特異的な、優れた腫瘍マーカーが切望されている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、甲状腺乳頭癌に特異的な腫瘍マーカー、および当該腫瘍マーカーを用いた甲状腺乳頭癌の判別技術を提供することにある。
本発明者らは、ヒトSNX5タンパク質に対する抗体を作製し、この抗ヒトSNX5抗体を用いて種々のヒト正常組織および腫瘍性病変に対する免疫組織化学染色を行った結果、SNX5が、甲状腺の濾胞上皮に特異的に反応し、特に甲状腺由来の悪性腫瘍である甲状腺乳頭癌に強い反応性を示したこと、ならびに他の組織型を示す甲状腺癌、消化管由来の乳頭状腺癌、および肺由来の乳頭状腺癌においてはSNX5の発現がほとんど認められないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る方法は、腫瘍マーカーを検出する方法であって、被験体サンプル中のSNX5を検出する工程を包含することを特徴としている。
本発明に係る方法において、上記被験体サンプルは、被験体から採取した組織またはその培養物もしくは切片が好ましいが、被験体から採取した組織またはその培養物から調製された細胞溶解物であってもよい。また、上記組織は、甲状腺組織であることが好ましいが、血液等の体液であってもよい。
本発明に係る方法において、上記被験体は、甲状腺疾患に罹患している可能性がある患者であることが好ましいが、甲状腺乳頭癌をすでに発症している患者であってもよい。
上記SNX5は、SNX5タンパク質またはそのフラグメントであることが好ましい。この場合、上記SNX5を検出する工程は、抗SNX5抗体を用いる免疫アッセイであることが好ましい。用いられる抗SNX5抗体としては、抗ヒトSNX5抗体であることが好ましく、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体であることがより好ましく、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体または当該抗体と同等の結合活性を有するモノクローナル抗体であることが最も好ましい。
また、上記SNX5は、SNX5遺伝子またはそのフラグメントであってもよい。この場合、上記SNX5を検出する工程は、核酸プローブを、SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズさせる工程であることが好ましい。上記核酸プローブは、ハイブリダイゼーションプローブであることが好ましいが、PCRプライマーであってもよい。
本発明に係る方法は、SNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出する工程と、SNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出する工程とをともに包含することがより好ましい。
上記方法は、甲状腺乳頭癌の診断基準を提供する方法でもあり得、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の鑑別の判断基準を提供する方法であり得る。また、上記方法は、甲状腺乳頭癌の病変が原発巣であるか否かの判定基準を提供する方法でもあり得る。さらに、上記方法は、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか否かの判別基準を提供する方法でもあり得る。
本発明に係るキットは、腫瘍マーカーを検出するためのキットであって、抗SNX5抗体を備えていることを特徴としている。本発明に係るキットは、上記抗体を検出するための試薬をさらに備えていることが好ましい。上記抗体は、抗ヒトSNX5抗体であることが好ましく、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体であることがより好ましく、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体または当該抗体と同等の結合活性を有するモノクローナル抗体であることが最も好ましい。
本発明に係るキットは、腫瘍マーカーを検出するためのキットであって、SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴としている。本発明に係るキットは、上記オリゴヌクレオチドを検出するための試薬をさらに備えていることが好ましい。上記オリゴヌクレオチドは、SNX5遺伝子またはそのフラグメントに対するハイブリダイゼーションプローブであることが好ましいが、PCRプライマーであってもよい。
上記キットは、甲状腺乳頭癌の診断基準を提供するためのキットであることが好ましいが、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の鑑別の判断基準を提供するためのキットでもあり得る。また、上記キットは、甲状腺乳頭癌の病変が原発巣であるか否かの判定基準を提供するためのキットでもあり得る。さらに、上記キットは、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか否かの判別基準を提供するためのキットでもあり得る。
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
本発明を用いれば、甲状腺乳頭癌であるか否かの診断に好適な腫瘍マーカーを検出することができる。
上述したように、本発明者らは、SNX5が、甲状腺由来の悪性腫瘍である甲状腺乳頭癌に高度に発現しているが、他の組織型を示す甲状腺癌、消化管由来の乳頭状腺癌、および肺由来の乳頭状腺癌においては発現がほとんど認められないことを見出した。
ヒトsorting nexin−5(SNX5)は、細胞内の小胞体輸送に関与する分子であり、細胞の遊走に深く関係していることが示唆されている(例えば、非特許文献1および2参照)。また、特許文献1には、多発性骨髄腫に関連する遺伝子の候補が多数列挙されており、その1つとしてSNX5が挙げられている。特許文献2には、MHC分子を結合する腫瘍関連ペプチド(抗原ペプチド)の候補が多数列挙されており、その1つとしてSNX5タンパク質の部分断片(アミノ酸292〜300:特許文献2の配列番号524)が挙げられている。しかし、甲状腺乳頭癌におけるSNX5の特異性は、いずれの文献にも開示も示唆もされていない。このように、本発明は、甲状腺乳頭癌についての優れた腫瘍マーカーを提供する。
〔1.腫瘍マーカー〕
本発明は、甲状腺乳頭癌についての優れた腫瘍マーカーを提供する。一実施形態において、本発明の腫瘍マーカーはSNX5タンパク質またはそのフラグメントである。他の実施形態において、本発明の腫瘍マーカーはSNX5遺伝子またはそのフラグメントである。
本発明は、甲状腺乳頭癌についての優れた腫瘍マーカーを提供する。一実施形態において、本発明の腫瘍マーカーはSNX5タンパク質またはそのフラグメントである。他の実施形態において、本発明の腫瘍マーカーはSNX5遺伝子またはそのフラグメントである。
本明細書中で使用される場合、SNX5タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつSNX5活性を有するポリペプチド、である。また、SNX5タンパク質は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;配列番号2に示されるヌクレオチド配列の1または数個の塩基が欠失、置換または付加されたヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってコードされかつSNX5活性を有するポリペプチド;配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドによってコードかつSNX5活性を有するポリペプチド;あるいは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有するポリヌクレオチドによってコードかつSNX5活性を有するポリペプチド、であってもよい。
ポリペプチド(アミノ酸)の観点で用いられる場合、「1または数個」は、1〜30個の範囲内であることが好ましく、1〜20個の範囲内であることがより好ましく、1〜10個の範囲内であることがさらに好ましく、1〜5個の範囲内であることがなおさらに好ましい。なお、当業者は、目的のポリペプチドの長さに応じて、用語「1または数個」によって示されるアミノ酸数の範囲がどの程度であるのかを容易に理解し得る。
ポリヌクレオチド(塩基)の観点で用いられる場合、「1または数個」は、1〜100個の範囲内であることが好ましく、1〜50個の範囲内であることがより好ましく、1〜30個の範囲内であることがさらに好ましく、1〜15個の範囲内であることがなおさらに好ましい。なお、当業者は、目的のポリヌクレオチドの長さに応じて、用語「1または数個」によって示される塩基数の範囲がどの程度であるのかを容易に理解し得る。例えば、後述するオリゴヌクレオチドの場合、用語「1または数個」は、1〜10個の範囲内であることが好ましく、1〜7個の範囲内であることがより好ましく、1〜5個の範囲内であることがさらに好ましく、1〜3個の範囲内であることがなおさらに好ましい。
本明細書中で使用される場合、目的のポリペプチドまたはポリヌクレオチドについての相同性は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがなおさらに好ましい。
本明細書中で使用される場合、用語「SNX5活性」は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として用いて惹起される抗SNX抗体との結合能が意図される。上記SNX抗体は、後述する抗SNX5抗体であればよく、後述する48C2抗体が好ましい。また、上記ポリペプチドは、リコンビナントヒトSNX5タンパク質であっても単離精製された天然のヒトSNX5タンパク質であってもよい。
本明細書中で使用される場合、SNX5遺伝子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;あるいは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつSNX5活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。また、SNX5遺伝子は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;配列番号2に示されるヌクレオチド配列の1または数個の塩基が欠失、置換または付加されたヌクレオチド配列からなりかつSNX5活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドでありかつSNX5活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;あるいは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有するポリヌクレオチドでありかつSNX5活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、であってもよい。
配列番号1は、GenBank(アクセッション番号AF121855)に登録されているSNX5のアミノ酸配列であり、配列番号2は、配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であり、GenBank(アクセッション番号AF121855)に登録されているSNX5のヌクレオチド配列(配列番号3)のオープンリーディングフレーム(第181位〜第1395位)に対応する。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用され、アミノ酸の重合体が意図される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片が意図される。本発明に係るポリペプチドはまた、組換え的に生成されても、化学合成されても、天然供給源より単離されてもよい。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。また、ポリヌクレオチドの「フラグメント」は、当該ポリヌクレオチドの部分断片が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド配列」は、「核酸配列」または「塩基配列」と交換可能に使用される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図されるが、ハイブリダイゼーションさせるポリヌクレオチドによって、高ストリンジェンシーでの洗浄条件は適宜変更され、例えば、哺乳類由来DNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.5×SSC中にて65℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、E.coli由来DNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にて68℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、RNAを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にて68℃での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましく、オリゴヌクレオチドを用いる場合は、0.1% SDSを含む0.1×SSC中にてハイブリダイゼーション温度での洗浄(好ましくは15分間×2回)が好ましい。
本発明の腫瘍マーカーを用いることにより、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の判断基準を提供することができるので、甲状腺乳頭癌であるか否かの診断が容易になる。また、本発明は、病変が原発巣であるか否かを判定する際に非常に有効である。さらに、本発明を用いれば、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか、あるいは他の組織(肺、乳腺など)に由来するのかを、より明確に判別し得る。
〔2.腫瘍マーカーの検出方法〕
本発明は、腫瘍マーカーの検出方法を提供する。本発明に係る腫瘍マーカーの検出方法は、被験体サンプル中のSNX5を検出する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明に係る検出方法は、SNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出する工程を包含する。他の実施形態において、本発明に係る検出方法は、SNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出する工程を包含する。
本発明は、腫瘍マーカーの検出方法を提供する。本発明に係る腫瘍マーカーの検出方法は、被験体サンプル中のSNX5を検出する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明に係る検出方法は、SNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出する工程を包含する。他の実施形態において、本発明に係る検出方法は、SNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出する工程を包含する。
本明細書中において使用される場合、「被験体サンプル」は、被験体から採取された任意の組織(血液等の体液を含む。)または細胞が意図され、これらから調製された組織切片または細胞溶解物もまた被験体サンプルに包含され得る。本発明に用いるに好ましい被験体サンプルとしては、腫瘍組織および血清が挙げられるがこれらに限定されない。なお、サンプル取得の第一段階として組織または細胞を被験体から直接取り出す工程は、医師によるものであり、本発明の範囲外である。また、本発明の方法によって得られた結果を用いて、疾患か否かの判定を下す工程もまた、医師によるものであり、本発明の範囲外である。
本発明の対象とされるべき被験体は、甲状腺疾患に罹患している可能性がある患者が好ましく、甲状腺乳頭癌を発症している患者がより好ましいが、正常な患者であってもよい。本発明に係る方法において、上記被験体サンプルは甲状腺疾患に罹患している可能性がある患者から採取された甲状腺組織またはその培養物、あるいはこれらから調製された組織切片または細胞溶解物であることが好ましいが、これに限定されない。サンプルの取得手順は、所望される組織または細胞に応じて適宜選択され得ることを当業者は容易に理解する。
SNX5タンパク質を検出する実施形態において、SNX5を検出する工程は、抗SNX5抗体を用いる免疫アッセイであり得る。本明細書中で使用される場合、用語「免疫アッセイ」は、抗原抗体反応に基づいた免疫学的な結合反応を利用して行われるアッセイが意図される。免疫学的な結合反応を利用したアッセイとしては、免疫組織化学、免疫電子顕微鏡法、ウエスタンブロット、免疫沈降法、サンドイッチELISAアッセイ、放射性イムノアッセイ、および抗体アッセイ(例えば免疫拡散アッセイ)、ならびにアフィニティクロマトグラフィーなどが挙げられる。これらの技術は、当該分野において周知であり、当業者は、容易に本発明を実行し得る。
抗SNX5抗体としては、抗ヒトSNX5抗体が好ましく、モノクローナル抗体であることがより好ましく、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体(48C2抗体ともいう。)であることがより好ましい。本発明者らは、48C2抗体が、ヒトSNX5タンパク質のN末端側(配列番号1の1〜177位:配列番号10)を認識することを見出している(結果は示さず)。すなわち、「SNX5タンパク質のフラグメント」は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチドであり、配列番号10に示されるアミノ酸配列、またはその連続する8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドであることが好ましい。なお、48C2抗体と同等の結合特性を有するモノクローナル抗体もまた、本発明に好適に使用される抗体の範囲内であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
被験体サンプルが被験体から採取した組織またはその培養物もしくは切片である場合、上記免疫アッセイは、免疫組織化学染色であり得る。被験体から採取した組織またはその培養物から調製された細胞溶解物である場合、上記免疫アッセイはウエスタンブロットであってもよい。また、被験体サンプルが被験体から採取した血液である場合、上記免疫アッセイはELISAであり得る。これらの免疫アッセイは、術前の鑑別診断に用いられることが好ましいが、術後の転移の有無を調べる際に用いられてもよい。
ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体は、ウエスタンブロットによるSNX5タンパク質の検出や、ホルマリン固定パラフィン切片におけるSNX5タンパク質の検出に適しているだけでなく、パラホルム固定組織におけるSNX5タンパク質の同定も可能にした。これまでに、SNX5の細胞質における機能が報告されているが、このマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を用いた場合であっても、SNX5が細胞質内に局在することを示した。このことは、このマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体の特異性を支持する。なお、ハイブリドーマ48C2は、北海道公立大学法人札幌医科大学知的財産管理室(060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目)の管理下にて維持されており、必要に応じて分譲することが可能である。
悪性腫瘍の病理組織診断を行う際に、免疫組織化学的な検討は非常に重要である。特定の臓器または組織に特異的な腫瘍マーカーを用いれば、原発巣が未だ確定されていない転移性病変の確定診断を行うことが容易になり、診断または治療の方針を速やかに決定し得る。これまでに種々の臓器特異的な分子マーカーが見出されているが、病理組織診断に実際に用いられている抗体は限られている。特に、甲状腺乳頭癌を鑑別するに好適な抗体は未だ見出されていない。
通常の病理組織検査で用いられているホルマリン固定パラフィン切片に対する、マウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ、甲状腺由来の乳頭癌においてはSNX5の強い発現が認められたが、他の腺癌の代表例である肺癌または乳癌由来の癌組織においては発現が全く認められなかった。この結果を検証する目的で、市販のウサギ抗ヒトSNX5ポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ、同様に腫瘍細胞におけるSNX5の高い発現が認められた。このように、SNX5は甲状腺乳頭癌の腫瘍マーカーとして非常に優れている。また、上記マウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体は、パラホルム固定組織の免疫組織的解析を可能にした、非常に優れた検出ツールである。
SNX5遺伝子を検出する実施形態において、SNX5を検出する工程は、核酸プローブを、SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズさせる工程であり得る。本明細書中で使用される場合、「核酸プローブ」は、目的の核酸にハイブリダイズし得るものであれば特に限定されず、いわゆるハイブリダイゼーションプローブであってもPCRプライマーであってもよい。ハイブリダイゼーション技術およびPCR技術は、当該分野において周知であり、当業者は、容易に本発明を実行し得る。被験体サンプルが被験体から採取した組織サンプルである場合、当該分野にて公知の種々の手法が採用され得、例えば、in situハイブリダイゼーション技術、in situ PCR技術等が採用され得る。また、被験体サンプルが被験体から採取した血液である場合、例えば、慣用的なPCR技術が採用され得る。
核酸プローブは、SNX5遺伝子(またはその相補鎖)の部分配列を含むオリゴヌクレオチドであれば特に限定されず、配列番号4または5に示されるヌクレオチド配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであっても、配列番号6〜9に示されるヌクレオチド配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。また、48C2抗体が、ヒトSNX5タンパク質のN末端側を認識することから、核酸プローブは、上記「SNX5タンパク質のフラグメント」をコードするオリゴヌクレオチドであってもよい。
in situハイブリダイゼーションの場合、核酸プローブは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列またはその相補配列の、15〜50個連続する塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましく、より好ましくは20〜50個、さらに好ましくは20〜45個、最も好ましくは25〜40個連続する塩基からなるオリゴヌクレオチドである。また、PCR(in situ PCRを含む。)の場合、核酸プローブは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列またはその相補配列の、15〜50個連続する塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましく、より好ましくは15〜40個、さらに好ましくは15〜35個、最も好ましくは25〜35個連続する塩基からなるオリゴヌクレオチドである。
なお、本実施形態に係る検出方法は、SNX5遺伝子を検出する工程を包含することを特徴としているが、上述したSNX5タンパク質を検出する工程をさらに包含することがより好ましい。
このように、本発明に係る腫瘍マーカーの検出方法を用いることにより、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の判断基準を提供することができるので、甲状腺乳頭癌であるか否かの診断が容易になる。また、本発明は、病変が原発巣であるか否かを判定する際に非常に有効である。さらに、本発明を用いれば、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか、あるいは他の組織(肺、乳腺など)に由来するのかを、より明確に判別し得る。すなわち、本発明に係る方法は、甲状腺乳頭癌の診断基準を提供する方法(例えば、甲状腺乳頭癌を診断するためのデータを取得する方法)でもあり得、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の鑑別の判断基準を提供する方法(例えば、乳頭状形態を示す悪性腫瘍を鑑別するためのデータを取得する方法)でもあり得る。また、本発明に係る方法は、甲状腺乳頭癌の病変が原発巣であるか否かの判定基準を提供する方法(例えば、甲状腺乳頭癌の病変が原発巣であるか否かを判定するためのデータを取得する方法)でもあり得る。さらに、本発明に係る方法は、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか否かの判別基準を提供する方法(例えば、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか否かを判定するためのデータを取得する方法)でもあり得る。
〔3.腫瘍マーカーの検出ツール〕
本発明は、腫瘍マーカーを検出するためのキットを提供する。本発明に係るキットは、被験体サンプル中のSNX5を検出するためのツールを備えていることを特徴としている。
本発明は、腫瘍マーカーを検出するためのキットを提供する。本発明に係るキットは、被験体サンプル中のSNX5を検出するためのツールを備えていることを特徴としている。
本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図されるが、組成物としての一物質中に材料を含有している形態もまた、用語「キット」に包含される。キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましい。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。また、本発明に係るキットは、複数の異なる組成物を1つに梱包した包装であり得、溶液形態の場合は容器中に内包されていてもよい。本発明に係るキットは、物質Aおよび物質Bを同一の容器に混合して備えていても別々の容器に備えていてもよい。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。本発明に係るキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。さらに、本発明に係るキットは、被験体サンプルを採取するために必要な器具および試薬を備えていてもよい。また、本発明に係るキットは、被験体サンプルから切片または細胞溶解物を調製するために必要な器具および試薬を備えていてもよい。
一実施形態において、本発明に係るキットは、SNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出するための抗体を備えている。上記抗体は、抗ヒトSNX5抗体であることが好ましく、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体であることがより好ましく、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体または当該抗体と同等の結合活性を有するモノクローナル抗体であることが最も好ましい。なお、本発明に係るキットは、上記抗体を検出するための試薬をさらに備えていることが好ましいが、上述したように、SNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出するための抗体を含有している組成物として提供されてもよい。
他の実施形態において、本発明に係る検出キットは、SNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出するためのオリゴヌクレオチドを備えている。上記オリゴヌクレオチドは、SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドであることが好ましく、SNX5遺伝子またはそのフラグメントに対するハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーであることが好ましい。なお、本発明に係るキットは、上記オリゴヌクレオチドを検出するための試薬をさらに備えていることが好ましいが、上述したように、SNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出するためのオリゴヌクレオチドを含有している組成物として提供されてもよい。
本発明に係るキットは、甲状腺乳頭癌の診断基準を提供するためのキットであることが好ましいが、乳頭状形態を示す悪性腫瘍の鑑別の判断基準を提供するためのキットでもあり得る。また、本発明に係るキットは、甲状腺乳頭癌の病変が原発巣であるか否かの判定基準を提供するためのキットでもあり得る。さらに、本発明に係るキットは、頸部リンパ節転移した腫瘍が甲状腺に由来するのか否かの判別基準を提供するためのキットでもあり得る。
このように、本発明の目的は、腫瘍マーカーを提供するとともに、当該腫瘍マーカーを検出することによる甲状腺乳頭癌の診断基準を提供することにある。本明細書を読んだ当業者は、本明細書中の記載および技術常識に基づいて、種々の形態にて本発明を実行し得ることを容易に理解する。
〔1.ヒトSNX5 cDNAの取得〕
ヒトHacaT細胞から抽出した総RNAをテンプレートにして、フォワードプライマー(pCMV-HA-SNX5 FW: 5'-CAGGCCCGAATTCGGATGGCCGCGGTTCCCGAG-3'(配列番号4))およびリバースプライマー(pCMV-HA-SNX5 RV: 5'-GATCTCGGTCGACCGTGAAGGCATATCAGTTAT-3'(配列番号5))を用いたRT−PCRを行い、ヒトSNX5 cDNAを得た。得られたヒトSNX5 cDNAを、大腸菌用発現ベクターpET3c(Novagen)および哺乳動物用発現ベクターpCMV−HA(BD Bioscience)に挿入して、それぞれpET3c−SNX5およびpCMV−HA−SNX5を作製した。なお、pCMV-HA-SNX5 FWは、ヒトSNX5 cDNAの5’領域の配列(ATGGCCGCGGTTCCCGAG(配列番号6))に制限酵素部位等を連結したものであり、pCMV-HA-SNX5 RVは、ヒトSNX5 cDNAの3’領域の配列(ataactgatatgccttcac(配列番号7))の相補配列に制限酵素部位等を連結したものである。
ヒトHacaT細胞から抽出した総RNAをテンプレートにして、フォワードプライマー(pCMV-HA-SNX5 FW: 5'-CAGGCCCGAATTCGGATGGCCGCGGTTCCCGAG-3'(配列番号4))およびリバースプライマー(pCMV-HA-SNX5 RV: 5'-GATCTCGGTCGACCGTGAAGGCATATCAGTTAT-3'(配列番号5))を用いたRT−PCRを行い、ヒトSNX5 cDNAを得た。得られたヒトSNX5 cDNAを、大腸菌用発現ベクターpET3c(Novagen)および哺乳動物用発現ベクターpCMV−HA(BD Bioscience)に挿入して、それぞれpET3c−SNX5およびpCMV−HA−SNX5を作製した。なお、pCMV-HA-SNX5 FWは、ヒトSNX5 cDNAの5’領域の配列(ATGGCCGCGGTTCCCGAG(配列番号6))に制限酵素部位等を連結したものであり、pCMV-HA-SNX5 RVは、ヒトSNX5 cDNAの3’領域の配列(ataactgatatgccttcac(配列番号7))の相補配列に制限酵素部位等を連結したものである。
〔2.抗ヒトSNX5モノクローナル抗体の作製〕
pET3c−SNX5を導入した大腸菌BL21を培養し、IPTGによってタンパク質合成を誘導した。次いで、ヒトSNX5タンパク質を菌体成分から分離/濃縮した。得られたタンパク質を免疫原とし、アジュバントとして完全アジュバント(初回免疫のみ)または不完全アジュバント(2回目以降の免疫)を用いて、6〜8週齢のBalb/cマウスを腹腔内免疫した(100μg/個体)。追加免疫を隔週にて2ヶ月間行い、脾細胞を採取する3日前に最終免疫を行った。採取した脾細胞を、ポリエチレングリコールを用いてNS0マウスミエローマ細胞と融合させ、この融合細胞を、96ウェルプレート中にて、HAT、10%FBSを含むRPMI1640培地中にて2〜3週間培養した。培養上清を用いたウエスタンブロット法によって、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体をスクリーニングした。
pET3c−SNX5を導入した大腸菌BL21を培養し、IPTGによってタンパク質合成を誘導した。次いで、ヒトSNX5タンパク質を菌体成分から分離/濃縮した。得られたタンパク質を免疫原とし、アジュバントとして完全アジュバント(初回免疫のみ)または不完全アジュバント(2回目以降の免疫)を用いて、6〜8週齢のBalb/cマウスを腹腔内免疫した(100μg/個体)。追加免疫を隔週にて2ヶ月間行い、脾細胞を採取する3日前に最終免疫を行った。採取した脾細胞を、ポリエチレングリコールを用いてNS0マウスミエローマ細胞と融合させ、この融合細胞を、96ウェルプレート中にて、HAT、10%FBSを含むRPMI1640培地中にて2〜3週間培養した。培養上清を用いたウエスタンブロット法によって、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体をスクリーニングした。
〔3.哺乳動物細胞への遺伝子導入〕
10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMにて培養したヒト293細胞に、LF2000(インビトロジェン社)を製造業者の手引書に従って、pCMV−SNX5を導入した。なお、形質転換体におけるSNX5の発現を、形質転換体から抽出した総RNAをテンプレートにして、フォワードプライマー(SNX5 AMP FW: 5'-ccggttaaagagcaaagacg-3'(配列番号8))およびリバースプライマー(SNX5 AMP RV: 5'-agctctgcaaaagggagaca-3'(配列番号9))を用いたRT−PCRによって確認した。
10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMにて培養したヒト293細胞に、LF2000(インビトロジェン社)を製造業者の手引書に従って、pCMV−SNX5を導入した。なお、形質転換体におけるSNX5の発現を、形質転換体から抽出した総RNAをテンプレートにして、フォワードプライマー(SNX5 AMP FW: 5'-ccggttaaagagcaaagacg-3'(配列番号8))およびリバースプライマー(SNX5 AMP RV: 5'-agctctgcaaaagggagaca-3'(配列番号9))を用いたRT−PCRによって確認した。
〔4.ウエスタンブロット解析〕
pCMV−SNX5を導入したヒト293細胞を、3日間培養した後に0.5% NP−40を含む溶解用緩衝液を用いて可溶化した。可溶化した画分に含まれるタンパク質を5〜20%のグラジエントゲルを用いたSDS−PAGEによって分離した。分離したタンパク質をナイロンメンブレンに転写し、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体による一次抗体反応、ペルオキシダーゼ複合体化ヤギ抗マウスIgG抗体による二次抗体反応を各々1時間行った。ECLキット(アマシャム社製)を用いて、シグナルを可視化した。
pCMV−SNX5を導入したヒト293細胞を、3日間培養した後に0.5% NP−40を含む溶解用緩衝液を用いて可溶化した。可溶化した画分に含まれるタンパク質を5〜20%のグラジエントゲルを用いたSDS−PAGEによって分離した。分離したタンパク質をナイロンメンブレンに転写し、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体による一次抗体反応、ペルオキシダーゼ複合体化ヤギ抗マウスIgG抗体による二次抗体反応を各々1時間行った。ECLキット(アマシャム社製)を用いて、シグナルを可視化した。
図1に示すように、50kDaの位置に非特異的なバンドが検出されるものの、SNX5(分子量47kDa)に特異的なシグナルがpCMV−SNX5を導入した細胞にのみ検出された。同様のシグナルはネガティブコントロール(CMV、pCMV−mutant AIRE#1、pCMV−mutant AIRE#2)を遺伝子導入した細胞には認められなかった。
〔5.免疫組織化学染色〕
pCMV−SNX5を導入したヒト293細胞を、3日間培養した後にパラホルムアルデヒドにて固定し、一次抗体として抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を、2次抗体にはAlexa596を複合体化したヤギ抗マウスIgG抗体を用いて、室温で各々1時間反応させて免疫組織化学染色を行った。IX71蛍光顕微鏡(オリンパス社製)を使用して、シグナルを検出した。図2に、pCMV−SNX5を導入した細胞(左)、ネガティブコントロールとしてpCMVを導入した細胞(右)を示す。抗ヒトSNX5モノクローナル抗体がSNX5と特異的に反応していることがわかる。
pCMV−SNX5を導入したヒト293細胞を、3日間培養した後にパラホルムアルデヒドにて固定し、一次抗体として抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を、2次抗体にはAlexa596を複合体化したヤギ抗マウスIgG抗体を用いて、室温で各々1時間反応させて免疫組織化学染色を行った。IX71蛍光顕微鏡(オリンパス社製)を使用して、シグナルを検出した。図2に、pCMV−SNX5を導入した細胞(左)、ネガティブコントロールとしてpCMVを導入した細胞(右)を示す。抗ヒトSNX5モノクローナル抗体がSNX5と特異的に反応していることがわかる。
また、腺癌組織のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体による免疫組織化学染色を行った。自動免疫染色装置(DAKO社製)を使用して、シグナルを検出した(図3)。図3(a)に示すように、甲状腺乳頭癌においてはSNX5の強い発現が認められた。しかし、肺腺癌(図3(b))および乳腺腺癌(図3(c))においてはSNX5の発現は認められなかった(図3(b))。
さらに、樹立した抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を用いて調べた、腫瘍組織におけるSNX5発現分布を、市販のウサギ抗ヒトSNX5ポリクローナル抗体(H40:Santa Cruz Biotechnology)を用いて検証した(図4)。図4に示すように、甲状腺乳頭癌のホルマリン固定パラフィン切片を用いた免疫組織化学染色において、腫瘍細胞にSNX5の強い発現が認められた。
さらに、マウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を用いて、乳頭状増殖を示す各種の悪性腫瘍におけるSNX5の発現を解析した。結果を表1に示す。表1に示すように、甲状腺以外での上皮性悪性腫瘍(胃癌、大腸癌および膵癌を含む)20例、および肉腫・非上皮性悪性腫瘍5例のいずれにおいても、SNX5の発現は全く見られなかった。
〔6.定量的PCR〕
被験体から生検によって取得した正常な甲状腺組織、あるいは甲状腺癌を発症している患者から手術によって摘出した甲状腺癌組織から総RNAを抽出し、逆転写酵素(Invitrogen)を用いてcDNAを作製した。次いで、このcDNAを鋳型に用いて、PCRプローブ(製品番号:Hs00429583)を用いた定量的PCR(Applied Biosystems)を行った。得られた値を、ribosomal RNAを対照として解析し、delta delta CT法(ABI 7000、Applied Biosystems)によって比較検討した。なお、ヒト組織の遺伝子解析は、SNX5の発現解析のみに限定し、ヒト組織の使用に際しては、十分なインフォームドコンセントの下で倫理委員会を通じて研究を行った。データの保護には万全の注意を払い、人権の保護および法令を遵守した。
被験体から生検によって取得した正常な甲状腺組織、あるいは甲状腺癌を発症している患者から手術によって摘出した甲状腺癌組織から総RNAを抽出し、逆転写酵素(Invitrogen)を用いてcDNAを作製した。次いで、このcDNAを鋳型に用いて、PCRプローブ(製品番号:Hs00429583)を用いた定量的PCR(Applied Biosystems)を行った。得られた値を、ribosomal RNAを対照として解析し、delta delta CT法(ABI 7000、Applied Biosystems)によって比較検討した。なお、ヒト組織の遺伝子解析は、SNX5の発現解析のみに限定し、ヒト組織の使用に際しては、十分なインフォームドコンセントの下で倫理委員会を通じて研究を行った。データの保護には万全の注意を払い、人権の保護および法令を遵守した。
甲状腺癌3例についての結果を図5に示す。図に示すように、正常な甲状腺組織よりも甲状腺癌組織においてSNX5遺伝子の発現が高いことが確認された。
このように、本発明者らは、SNX5が甲状腺乳頭癌に高発現することを初めて見出した。また、本発明者らが樹立したマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体は、ホルマリン固定パラフィン切片だけでなくパラホルム固定組織の免疫組織的解析を可能にした。本発明によって得られた知見は、既知の甲状腺マーカーであるサイログロブリンやTTF−1などと比較して、SNX5は優れたマーカーであると考えられ、病理診断の際の有益な情報を提供し得ると考えられる。また、抗ヒトSNX5モノクローナル抗体を使用したELISA法などによって、甲状腺由来の腫瘍性病変の血清診断が可能であると考えられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
本発明を用いれば、甲状腺乳頭癌の早期診断および確定診断が容易になる。このように優れたツールを提供する本発明は、医学、薬学の分野において利用可能であり、医薬品、生化学試薬の開発に大いに寄与することができる。
Claims (13)
- 被験体サンプル中のSNX5タンパク質またはそのフラグメントを検出する工程を包含することを特徴とする甲状腺乳頭癌の腫瘍マーカーを検出する方法。
- 上記工程が、抗SNX5抗体を用いる免疫アッセイによって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上記抗SNX5抗体が、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体または当該抗体と同等の結合活性を有するモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 被験体サンプル中のSNX5遺伝子またはそのフラグメントを検出する工程を包含することを特徴とする甲状腺乳頭癌の腫瘍マーカーを検出する方法。
- 上記工程が、核酸プローブを、SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズさせることによって行われることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 上記核酸プローブが、配列番号4〜9のいずれかに示されるヌクレオチド配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 上記被験体サンプルが、被験体から採取した組織またはその細胞から調製された切片または細胞溶解物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 上記組織が甲状腺組織であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 上記被験体が、甲状腺疾患に罹患している可能性がある患者であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 抗SNX5抗体を備えていることを特徴とする甲状腺乳頭癌の腫瘍マーカーを検出するためのキット。
- 上記抗SNX5抗体が、ハイブリドーマ48C2から産生されるマウス抗ヒトSNX5モノクローナル抗体または当該抗体と同等の結合活性を有するモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項10に記載のキット。
- SNX5遺伝子またはそのフラグメントにハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴とする甲状腺乳頭癌の腫瘍マーカーを検出するためのキット。
- 上記オリゴヌクレオチドが、配列番号4〜9のいずれかに示されるヌクレオチド配列またはその相補配列からなることを特徴とする請求項12に記載のキット。
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