JPWO2010073388A1 - 液中レーザーアブレーションシステムおよび固形物微細化方法 - Google Patents

液中レーザーアブレーションシステムおよび固形物微細化方法 Download PDF

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松村 航
航 松村
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明夫 石黒
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義治 入内嶋
勲 梅田
勲 梅田
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Abstract

レーザー光を固形物を液中に分散させた分散液に照射することにより、前記分散液中の固形物を微細化する液中レーザーアブレーションシステムであって:前記レーザー光を発振する光源と;前記分散液を流動する流路が設けられたデバイスと;nを2以上の整数としたとき、前記光源から発振したレーザー光をn分割するビームスプリッターと;前記ビームスプリッターにより分割されたレーザー光を、前記流路中を流動する前記分散液に対して照射するプリズムと;を備える液中レーザーアブレーションシステム。

Description

本発明は、液中に難溶性固形物を分散させた分散液に対して、光源より発振されたレーザー光を照射することによって、分散液中の固形物を微細化する液中レーザーアブレーションシステムおよびこの液中レーザーアブレーションシステムを用いた固形物微細化方法に関する。
抗癌剤などの一部の医薬用有機化合物は、難水溶性のため細胞に吸収され難い。このような難水溶性医薬品の細胞取り込み効率を向上させるには、患部の細胞膜を通過し易い大きさまで薬物を極微粒子化する必要があった。正常な細胞の細胞膜を通過出来ないおよそ50nm以上、200nm以下の薬物でも、癌細胞の細胞膜は通過出来るとされている。従来、この大きさの薬物を調製するために、各種の極微粒子製造装置が提案されている。この極微粒子製造装置としては、例えば、ウェットボールミルと称せられる粉砕装置が挙げられる。
この装置は、多数の金属製、セラミックス製あるいはプラスチック製のボールを、鍔状リングを有するローターとともに円筒容器内に収納し、薬物をボールとローターの回転摩擦で粉砕する。
また、有機化合物の極微粒子製造方法としては、ナノ秒あるいはフェムト秒短パルスレーザービームを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法では、透明容器中の水中懸濁された薬物に対して、外部からパルスレーザーを照射し、薬物を水中粉砕する。
レーザーは良く知られているように、そのエネルギー密度が非常に高い。レーザーアブレーション技術では、対象とする材料(固形物)に対して高強度のレーザー光を照射する。これにより、光励起を生じさせ対象とする材料のイオン化や化学結合の切断をおこしたり、もしくは対象とする材料に高い熱エネルギーを蓄積させる。これより、被照射領域の温度が急激に上昇することを利用する。この急激な温度上昇により、材料は急激に液化・気化し、より温度の高い内部の爆発的な体積膨張にともなって、材料がクラスター・イオンとなって、その表面に対して垂直方向に噴出する。このクラスター・イオンなどによる薄膜の形成方法が、半導体製造分野などに用いられている。レーザーアブレーションは、多くの場合、気体中(窒素もしくは大気中)または真空中で行われている。
また、液中にて高強度のレーザーを固形物に照射して、固形物を微細化する、液中レーザーアブレーションは、液中に難溶性固形物を分散させた分散液に対して、高強度のレーザー光を照射することにより、被照射物質である分散液中の固形物を微細化する技術として用いられている。
このように液中にてレーザーアブレーションを行う技術的意義としては、(1)微細化された固形物が液中に保持されるため、空気中に飛散することを防止できる、(2)真空装置などの大掛かりな装置が不要、(3)液中にて実施するため、外部からの不純物の混入を防止できる、(4)固形物の周囲が液体で覆われているため、予期せぬ温度上昇が生じ難い、などが挙げられる。
また、有機化合物などの物質をレーザー光により微粒子化する方法としては、被処理液の溶媒中の物質を光破砕して、その微粒子を製造する製造方法であって、物質および溶媒が混合された被処理液を準備する準備ステップと、溶媒中にある物質の粒子のうちで、微粒子化対象となる大粒子を所定の処理位置に選択的に捕捉する捕捉ステップと、処理位置の被処理液に対して光破砕用レーザー光を照射することによって、溶媒中にある物質を微粒子化するレーザー光照射ステップとを備えた方法も開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2001−113159号公報 特開2004−267918号公報 特開2005−238342号公報 特開2005−238124号公報
しかしながら、ウェットボールミルなどの極微粒子製造装置によって微粒子化できる限界は、200nm程度までとされているため、薬物を十分に微細化することができなかった。また、この装置を用いた薬物の微細化では、ボール材料やローター材料が薬物に混入したり、摩擦熱によって薬物が変質したり、極微粒子紛が再凝集して所望の大きさまで小さくできなかったり、極微粒子紛の大きさが不均一になるなどの問題があった。
また、パルスレーザーを薬物に照射する方法は、容器毎に処理をするバッチ方式であるため、薬物が容器内の水溶液中で懸濁、攪拌されている状態でレーザー光を照射する。このため、照射条件の制御が困難であり、均一かつ変質のない極微粒子の薬物を工業レベルで生産するには適さなかった。また、この方法は、連続的に大量の極微粒子を生産するのにも適さなかった。
さらに、医薬品の製造には、1バッチ単位の品質検査・管理が義務付けられている。ところが、従来、液中レーザーアブレーションに用いられている容器において、レーザーより照射される光量子吸光の関係上、長い光路長を得ることが困難であり、その制約のため容器の大きさも限定されていた。よって、バッチ方式によるレーザーアブレーションでは、レーザー照射時の容器を1バッチとして取り扱うしかなく、容積が極めて限定されたものであり、品質管理が煩わしく困難なものであり、医薬品製造に適用することがほとんど不可能であった。
さらに、有機化合物などの物質をレーザー光により微粒子化する方法では、大粒子を所定の処理位置に選択的に捕捉する捕捉ステップは不可欠である。この捕捉ステップでは、大粒子が微細化されるまで、大粒子を静止位置に捕捉するために、被処理液の循環流路を構成する流路部材に設けられた、フィルタなどからなる流路制限部材を用いている。したがって、この方法では、被処理液中の物質にレーザー光を照射する際、物質は流動していないに等しく、実質的には、上記のバッチ方式によるレーザーアブレーションと同様に、レーザー光の照射条件が不均一であった。
従来、レーザーアブレーションに用いられている光源としては、例えば、Nd3+:YAGレーザーが挙げられる。この光源から出力されるレーザー光の照射面積は約φ6mm〜20mm程度である。よって、従来の方法(例えば、高さ×幅×光路長=50mm×10mm×10mmの石英セルを用いたバッチ式デバイス)では、容器全体(水分散液全体)に一様にレーザー光を照射させることが困難である。従来、スターラーにより容器内の水分散液を攪拌させながら、規定時間のレーザー光を照射することによってレーザーアブレーションが行われていた。しかし、上述のように、水分散液の一部にしかレーザー光が照射されないため、水分散液中の粒子に対する照射回数(もしくは時間)にばらつきが生じやすい。また、光路長が10mmと長いため、レーザー光の入射方向の下流側に位置している粒子は、レーザー光の入射方向の上流側に位置している粒子の影に存在している状態になる。このため、上流側の粒子に光量子が吸光されると、下流側の粒子には光量子が吸収されず、下流側の粒子にはレーザーアブレーションが生じない。よって、従来のバッチ式では、水分散液中の粒子へのレーザー光の照射回数(もしくは照射時間)を管理することが極めて困難であった。
また、レーザーアブレーションでは、アブレーション閾値以上のレーザー出力が求められる。また、レーザー出力が大き過ぎると、分散液中の粒子が熱変性を起こすため好ましくない。そのため、光源からのレーザー出力が被照射部において所望値より大きい場合、光路中に減光板などを設置して、レーザー光を調整している。ところが、減光板を設置すると、レーザー光を生じる際に用いたエネルギーが捨てられるため、エネルギーの有効活用の面では好ましくない。さらに、アブレーション開始初期には、数マイクロメートルスケールの大きな粒子が比較的多い。このため、レーザー出力をアブレーション閾値以上かつ熱変性が生じない範囲の中(以下、「アブレーション強度範囲」と言う。)で、比較的大きくしてマイクロメートルスケールの大きな粒子を迅速に微細化している。そして、アブレーションの進行に伴って大きな粒子の減少、および、ナノスケール粒子の増加が起こる。このとき、多数回(もしくは長時間)照射による熱変性を防止するため、レーザー出力を減少させるなどの極めて困難な制御が必要になる。また、規定回数(もしくは時間)以上のレーザー光の照射によって、ナノスケール粒子の収率が減少する実験結果も散見される。よって、レーザー光照射回数(もしくは時間)は、レーザーアブレーションにおいて極めて重要な要因の1つであり、その管理や制御を厳密に行う必要があるが、上述のような理由から、従来のバッチ式ではこれが極めて困難である。
また、特許文献1〜3に開示されたような従来技術は、連続的に大量の極微粒子を生産するには適さず、さらに照射時間の設定や分散粒子に均一に照射などの条件の制御が困難である。従って、従来技術は、薬物の品質を保証した(照射回数を均一化し、粒度分布が目標の範囲になるように制御した)工業レベルでの生産に適しておらず、疾病を抱えた多くの患者に提供するシステムは見当たらない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、大きさが均一な極微粒子を、連続的かつ大量に製造することを可能とする液中レーザーアブレーションシステムを提供することを一つの目的とする。また、微細化が不十分な粒子が生成することを防止し、想定した照射回数もしくは照射時間以上にレーザー光が照射されて、被照射有機化合物の分子構造が破壊されることを防止する液中レーザーアブレーションシステムを提供することを一つの目的とする。さらに、従来のバッチ式では極めて困難であった、分散液中の微粒子の存在比率に応じて、照射部におけるレーザー出力を変化させて、規定回数(もしくは時間)以上のレーザー光照射による熱変性、もしくはナノ化収率の減少などを防止できる液中レーザーアブレーションシステムを提供する。
また、本発明は、連続流路内に懸濁する固形物のうち固形物大粒子を、レーザー光の照射により微細化することを可能とするとともに、これまでのバッチ方式では化学構造を破壊せずに微細化することができなかった有機化合物の微細化も可能とする液中レーザーアブレーションシステムを提供する。
また、本発明は、粒度が目標とする均一な範囲に高精度で入り、かつ薬効に変化がなく、バイオアベイラビリティの高い、難水溶性粒子状医薬品を、高効率で製造することが可能な液中レーザーアブレーションシステムおよび固形物微細化方法の提供を目的とする。
(1)本発明の一態様は、以下の構成を採用する:レーザー光を固形物を液中に分散させた分散液に照射することにより、前記分散液中の固形物を微細化する液中レーザーアブレーションシステムであって:前記レーザー光を発振する光源と;前記分散液を流動する流路が設けられたデバイスと;nを2以上の整数としたとき、前記光源から発振したレーザー光をn分割するビームスプリッターと;前記ビームスプリッターにより分割されたレーザー光を、前記流路中を流動する前記分散液に対して照射するプリズムと;を備える液中レーザーアブレーションシステム。
(2)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記ビームスプリッターにて、前記レーザー光を、その強度が均等になるように分割する。
(3)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記流路は、前記レーザー光の入射方向と垂直な面上にて蛇行している。
(4)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記デバイスの前段に設けられ、前記分散液を貯留する分散液貯留槽と;前記デバイスに前記分散液貯留槽の分散液を供給するポンプと;前記デバイスの後段に設けられ、レーザー光が照射された分散液を回収する分散液回収槽と;をさらに備える。
(5)本発明の別の一態様は、以下の構成を採用する:固形物を液中に分散させた分散液を連続的に流動させる透明マイクロ流路と、レーザー光を発振する光源と、を備え、前記光源より発振したレーザー光を、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液に照射することにより、前記分散液中の固形物のうち固形物大粒子を連続的に微細化する液中レーザーアブレーションシステムであって、前記透明マイクロ流路の前記レーザー光の照射方向の深さをr、前記分散液中における前記固形物大粒子の平均中心間距離をS、前記固形物大粒子の最大直径をdmとすると、前記深さr、前記平均中心間距離S、前記最大直径dmが、dm<r<10Sを満たす。
(6)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記深さr、前記平均中心間距離Sが、S<r<2Sを満たす。
(7)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路の前記レーザー光の照射方向に垂直な幅をw、前記レーザー光の前記幅w方向の長さをDとすると、前記平均中心間距離S、前記幅w、前記長さDが、3S<w<Dを満たす。
(8)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路の全長をLL、前記固形物大粒子の微細化に必要なレーザーパルス数をMp、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液の流速をVf、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液の単位時間当たりの流量をQ、前記レーザー光のパルス周波数をfLとすると、前記全長LL、前記レーザーパルス数Mp、前記流速Vf、前記流量Q、前記パルス周波数fL、前記深さr、前記幅wが、LL>Mp・Vf/fL、Vf=Q/(w・r)を満たす。
(9)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路は、前記レーザー光の照射方向と垂直な面上に複数の屈曲部を有し、前記複数の屈曲部にて折り返す往復流路である。
(10)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路には、二層の連通した前記往復流路が積層されて設けられ、前記透明マイクロ流路の上流側の層をなす前記往復流路が、前記透明マイクロ流路の下流側の層をなす前記往復流路の側壁に重なっている。
(11)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路の流れ方向が鉛直に配置され、前記レーザー光が、前記透明マイクロ流路を含む平面に対して直角に照射される。
(12)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路を含む平面を水平に配置し、前記レーザー光を、前記透明マイクロ流路を含む平面に対して垂直に照射する。
(13)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記固形物は、医薬用有機化合物である。
(14)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記レーザー光の波長が、前記医薬用有機化合物の光吸収スペクトル帯内である。
(15)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記レーザー光の波長が、吸光帯の範囲内で長波長側の付け根付近である。
(16)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記透明マイクロ流路の上流側に設けられ、前記医薬用有機化合物を含む分散液を調整し、容積が100cm以上の分散液調整槽と;前記透明マイクロ流路の下流側に設けられ、容積が100cm以上の微粒子懸濁液回収槽と;前記透明マイクロ流路を介して前記分散液調整槽から前記微粒子懸濁液回収槽へ、前記分散液を送液する送液手段と;を更に備える。
(17)本発明の別の一態様は、以下の構成を採用する:レーザー光を発する光源を含み、固形物を分散させた分散液に前記レーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーションシステムであって:前記分散液が流動可能な液中レーザーアブレーション用マイクロ流路が設けられ、前記レーザー光が照射される位置に設けられたマイクロフローセルと;前記マイクロフローセルの第一の流路に第1通路を接続して設けられた三方弁と;前記三方弁の第2通路に吐出口が接続された第1シリンダーを有するピストンポンプと;前記分散液が貯留され、前記分散液を前記三方弁の第3通路に送る分散液供給管路が設けられたリザーバータンクと;前記マイクロフローセルの第2の流路に吐出口を接続した第2シリンダーを有するフリーピストンと;を備える、液中レーザーアブレーションシステム。
(18)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記ピストンポンプと前記フリーピストンとの一方または両方に、第1または第2シリンダー内の前記分散液中の前記固形物粒子の粒径を計測するゼータ電位計または粒度分布計が設けられる。
(19)上記の液中レーザーアブレーションシステムは、以下のように構成されてもよい:前記マイクロフローセル内の分散液中の固形物粒子のうち、微細化された粒子を分離して回収する分離フィルタさらに備える。
(20)本発明の別の一態様は、以下の方法を採用する:固形物を分散させた分散液にレーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーション微細化処理を行って微細化した固形物を製造する固形物微細化方法であって:上記の液中レーザーアブレーションシステムを用い;前記分散液を、前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとの間を、前記マイクロフローセルを介して複数回往復移動させ、前記マイクロフローセルにレーザー光を照射する、固形物微細化方法。
(21)本発明の別の一態様は、以下の方法を採用する:固形物を分散させた分散液にレーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーション微細化処理を行って微細化した固形物を製造する固形物微細化方法であって、上記の液中レーザーアブレーションシステムを用い:前記リザーバータンクに前記分散液を入れ、前記ピストンポンプを駆動させ、前記三方弁の第3通路と第2通路とを介して前記リザーバータンク内の分散液を前記第1シリンダー内に吸入する工程と;次いで、前記第1シリンダー内の分散液を、前記三方弁の第2通路と第1通路を介して前記マイクロフローセルを通して前記第2シリンダー内に圧入し、同時に前記マイクロフローセルにレーザー光を照射して分散液中の固形物を微細化する第1微細化処理工程と;次いで、前記第2シリンダーの分散液を、前記マイクロフローセルを通して前記第1シリンダーに吸入し、同時に前記マイクロフローセルにレーザー光を照射して分散液中の固形物を微細化する第2微細化処理工程と;を有し、必要に応じて前記第1微細化処理工程と前記第2微細化処理工程とを繰り返し行い、前記マイクロフローセルにおける液中レーザーアブレーション微細化処理を複数回行って、微細化した固形物を製造する、固形物微細化方法。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムによれば、ビームスプリッターとプリズムを組み合わせて用いることにより、単一光源から発振した大出力レーザー光を分割し、デバイスに設けられた流路中を流動する分散液に、その分割されたレーザー光を照射する。このため、レーザー光を効率的に配分でき、かつ、配分されたレーザー光を全て利用して、効率的に分散液中の固形物の微細化を進行できる。流路デバイス毎に別のレーザー光源を用いる場合、生成された微粒子の品質は個別に管理する必要がある。一方、単一の大出力レーザー光源を分割して用いる場合は、事前の調整により各流路のレーザー光照射条件を均等できる。このため、微粒子品質の管理は容易である。本発明は、特に固形物が医薬品である場合、ロット毎の製品検査回数を減らすことができ、かつ、製品品質が安定するため非常に望ましい方法である。また、光源から発振したレーザー光を分割することにより、光源の出力を調整しなくても、分散液中の固形物が熱変性する出力以下、かつ、アブレーションの閾値以上になったレーザー光を固形物に照射することができる。したがって、従来のバッチ式の液中レーザーアブレーションでは不可能であった、液中レーザーアブレーションによる固形物の微細化を連続的かつ効率的に行うことができる。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムによれば、固形物を液中に分散させた分散液を連続的に流動させる透明マイクロ流路を用い、この透明マイクロ流路におけるレーザー光の照射方向の断面寸法の深さrが所定の範囲内に調整されている。このため、透明マイクロ流路内の一の大粒子が、他の大粒子に遮られることなく、レーザー光源から発振されたレーザー光が、全ての大粒子に対して均一に照射される。また、分散液が透明マイクロ流路を流動する時間と、レーザー光のパルス数とから、最大被照射回数を制御することができる。このため、化学構造を破壊することなく、連続的に固形物を微細化することができる。
また、多くの場合、バッチ処理で実行可能である方法を、生産性の向上などを目的として、フロー処理に改良することが検討される。しかし、本発明によると、バッチ処理では不十分な結果しか得られないが、フロー処理によれば、初めて十分な結果が得られることを、本発明者等は見出した。また、パルスレーザーを用いたレーザーアブレーションであって、被処理液に対して必要な照射回数を超えてレーザー光を照射した場合、目的とする破砕、すなわち、微粒子化とは別に、処理対象物質に対して好ましくない化学変化を生じさせてしまう。よって、レーザーアブレーションにあっては、レーザー光の照射回数を適切な回数にする必要がある。しかし、バッチ処理では、被処理液に対して、レーザー光を均一に当てることができない。このため、十分な破砕、すなわち、微粒子化を行うためにはレーザーの照射回数を多くしなければならない。結果的に好ましくない化学変化が生じてしまう。一方、フロー処理によれば、対象物質に対して、比較的均一にレーザー光を照射することができる。このため、照射回数を少なくでき、好ましくない化学変化を生じさせることなく、微細化処理を行うことができる。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムによれば、粒度が目標とする均一な範囲に高精度で入り、薬効に変化がなく、バイオアベイラビリティの高い、難水溶性粒子状医薬品などの微細化固形物粒子を、高効率で製造することが可能となる。
本発明の固形物微細化方法によれば、粒度が目標とする均一な範囲に高精度で入り、薬効に変化がなく、バイオアベイラビリティの高い、難水溶性粒子状医薬品などの微細化固形物粒子を、高効率で製造することが可能となる。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図2は、円管内における層流境界層の速度分布を示す模式図である。 図3Aは、ベンド管内における二次流れを示す模式図である。 図3Bは、ベンド管内における二次流れを示す模式図である。 図4は、ベンド管内における流体の流動を示す模式図である。 図5は、円管の流路形状の具体例を示す模式図である。 図6は、図5に示す流路おける流れ解析結果の速度コンターを示す図である。 図7は、図5に示す流路おける流れ解析結果の速度コンターを示す図である。 図8は、本発明の第二の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図9は、ビームスプリッターの他の例を示す概略平面図である。 図10は、本発明の第三の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図11は、本発明の第四の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図12は、本発明の第五の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを構成するデバイスを示す概略断面図である。 図13は、分散液中の固形物のうち固形物大粒子を示す模式図である。 図14は、分散液中の固形物大粒子全体が占める容積率をxと、分散液中における固形物大粒子の平均中心間距離をSとした場合、容積率xと平均中心間距離Sとの関係を、固形物大粒子の直径dに対して計算した結果を示すグラフである。 図15は、上記の液中レーザーアブレーションシステムを構成する透明マイクロ流路を示す概略断面図である。 図16Aは、上記の液中レーザーアブレーションシステムを構成する透明マイクロ流路の変形例を示す平面図である。 図16Bは、上記の液中レーザーアブレーションシステムを構成する透明マイクロ流路の上記変形例を示す、図16AのD−Dに沿う断面図である。 図17は、上記の液中レーザーアブレーションシステムを示す模式図である。 図18は、本発明の第六の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図19は、本発明の第七の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図20は、液中レーザーアブレーションによる微細化の一例を示すグラフである。 図21は、本発明の第八の実施形態に係る液中レーザーアブレーションシステムを示す概略構成図である。 図22Aは、本発明の実施例で用いられる透明マイクロ流路を示す概略平面図である。 図22Bは、本発明の実施例で用いられる透明マイクロ流路を示す概略図であり、図22AのE−Eに沿う断面図である。 図23は、分光光度計により、難溶性薬物の溶液状態、および、結晶状態(固体状態)における吸収スペクトルを測定した結果を示すグラフである。 図24は、液中レーザーアブレーション後の粒子の粒径を測定した結果を示すグラフである。 図25は、液中レーザーアブレーション後の粒子の粒径を測定した結果を示すグラフである。 図26は、レーザー照射を行っていないサンプルを用いて、1000回のレーザー照射を行った後のサンプルに対する分析結果(クロマトグラム)を示すグラフである。 図27は、透明マイクロ流路を用いて、1000回のレーザー照射を行った後のサンプルに対する分析結果(クロマトグラム)を示すグラフである。
符号の説明
10 液中レーザーアブレーションシステム
11 レーザー光源
12 ビームスプリッター
13 プリズム
14 アッテネータ
15 デバイス
16 基材
17 第一の流路
18 第二の流路
19 受光部
20 第三の流路
50 液中レーザーアブレーションシステム
51 ビームスプリッターモジュール
52 第二のビームスプリッター
53 第三のビームスプリッター
54 ビームスプリッター
60 液中レーザーアブレーションシステム
61 レーザー光源
62 ビームスプリッター
63 プリズム
64 第一のデバイス
65 基材
66 流路
67 受光部
68 第二のデバイス
69 基材
70 流路
71 受光部
72 分散液貯留槽
73 ポンプ
90 液中レーザーアブレーションシステム
91 レーザー光源
92 ビームスプリッター
93 プリズム
94 第一のデバイス
95 基材
96 流路
97 受光部
98 第二のデバイス
99 基材
100 流路
101 受光部
102 第一の分散液貯留槽
103 ポンプ
104 第二の分散液貯留槽
105 ポンプ
200 デバイス
201 第一透明基材
202 第二透明基材
203 凹部
204 透明マイクロ流路
205 透明マイクロ流路の入口
206 透明マイクロ流路の出口
207 連通流路
208 側壁
209 側壁
210 分散液調整槽
211 微粒子懸濁液回収槽
212 送液手段
213 攪拌装置
220 固形物大粒子
221 分散液
301 レーザー光源
302 レーザー光
303 液中レーザーアブレーション用マイクロ流路
304 マイクロフローセル
305 一方の流路
306 他方の流路
307 三方弁
308 第1通路
309 第2通路
310 第3通路
311 分散液
312 分散液供給管路
313 リザーバータンク
314 吐出口
315 シリンダー
316 リニアアクチュエータ
317 ピストンポンプ
318 吐出口
319 フリーピストン
319A シリンダー
320 PAT装置
321 PAT装置
322 分離フィルタ
323 操作レバー
400 透明マイクロ流路
401 第一往復流路
402 第二往復流路
403 連通流路
404 側壁
405 側壁
406 透明基材
407 透明基材
408 透明基材
本発明の液中レーザーアブレーションシステムおよび固形物微細化方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
(1)液中レーザーアブレーションシステムの第一の実施形態
図1は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第一の実施形態を示す概略構成図である。
図1中、符号10は液中レーザーアブレーションシステム、11はレーザー光源、12はビームスプリッター、13はプリズム、14はアッテネータ、15はデバイス、16は基材、17は第一の流路、18は第二の流路、19はレーザー光の受光部、20は第三の流路をそれぞれ示している。
この液中レーザーアブレーションシステム10(以下、単に「システム」と言うこともある。)は、レーザー光源11と、デバイス15と、ビームスプリッター12と、プリズム13と、アッテネータ14とから概略構成されている。
ビームスプリッター12は、レーザー光源11から発振したレーザー光30を分割し、この分割されたレーザー光を、デバイス15の第二の流路18中を流動し、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液に対して照射する。
プリズム13は、ビームスプリッター12にて分割されたレーザー光の一部を反射し、デバイス15の第二の流路18中を流動する分散液に対して照射する。
アッテネータ14は、ビームスプリッター12にて分割されたレーザー光を、デバイス15の第二の流路18中を流動する分散液に対して照射する直前に、適切な強度まで減衰する。
ここで、ビームスプリッター12とプリズム13を用いて、レーザー光源11から発振したレーザー光30を八分割する場合を例示する。
詳細には、レーザー光源11から発振したレーザー光30は、ビームスプリッター12Aにて二分割され、一方のレーザー光31がデバイス15側に反射し、他方のレーザー光32がレーザー光30の進行方向に透過する。
次いで、レーザー光31は、ビームスプリッター12Dにて二分割され、一方のレーザー光33がデバイス15側に透過し、他方のレーザー光34がレーザー光30の進行方向に反射する。
次いで、レーザー光33は、ビームスプリッター12Gにて二分割され、一方のレーザー光35がレーザー光30の進行方向と反平行に反射し、他方のレーザー光36がデバイス15側に透過する。そして、レーザー光35はプリズム13Dにて反射され、アッテネータ14Aを介して、第二の流路18Aの受光部19Aに照射される。また、レーザー光36は、アッテネータ14Bを介して、第二の流路18Bの受光部19Bに照射される。
レーザー光34は、ビームスプリッター12Eにて二分割され、一方のレーザー光37がデバイス15側に反射し、他方のレーザー光38がレーザー光30の進行方向に透過する。そして、レーザー光37は、アッテネータ14Cを介して、第二の流路18Cの受光部19Cに照射される。また、レーザー光38は、プリズム13Bにて反射され、アッテネータ14Dを介して、第二の流路18Dの受光部19Dに照射される。
レーザー光32は、ビームスプリッター12Bにて二分割され、一方のレーザー光39がデバイス15側に反射し、他方のレーザー光40がレーザー光30の進行方向に透過する。
次いで、レーザー光39は、ビームスプリッター12Fにて二分割され、一方のレーザー光41がデバイス15側に透過し、他方のレーザー光42がレーザー光30の進行方向に透過する。そして、レーザー光41は、アッテネータ14Eを介して、第二の流路18Eの受光部19Eに照射される。また、レーザー光42は、プリズム13Cにて反射され、アッテネータ14Fを介して、第二の流路18Fの受光部19Fに照射される。
レーザー光40は、ビームスプリッター12Cにて二分割され、一方のレーザー光43がデバイス15側に反射し、他方のレーザー光44がレーザー光30の進行方向に透過する。そして、レーザー光43は、アッテネータ14Gを介して、第二の流路18Gの受光部19Gに照射される。また、レーザー光44は、プリズム13Aにて反射され、アッテネータ14Hを介して、第二の流路18Hの受光部19Hに照射される。
このようにして、ビームスプリッター12とプリズム13を組み合わせることにより、レーザー光源11から発振されたレーザー光30を、その強度が均等になるように八分割して、第二の流路18中を流動し、固形物を液中に分散させた分散液に対して照射することができる。
なお、受光部19とは、基材16の一面16aにおいて、レーザー光源11から発振されたレーザー光が照射される部分である。
デバイス15は、基材16と、この基材16に設けられ、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液を流動する第一の流路17、第二の流路18および第三の流路20とから構成されている。
第一の流路17は、基材16の長手方向に沿って貫通するように設けられ、かつ、分散液の流動方向(図1に示す矢印方向)に沿って次第に、その幅または深さのいずれか一方、あるいは、幅および深さの両方が短くなっている。
一方、第三の流路20は、基材16の長手方向に沿って貫通するように設けられ、かつ、分散液の流動方向(図1に示す矢印方向)に沿って次第に、その幅または深さのいずれか一方、あるいは、幅および深さの両方が長くなっている。
また、第一の流路17と第三の流路20は、第二の流路18を介して連通しており、この第二の流路18は、図1に示すように、レーザー光の入射方向と垂直な面上にて蛇行していることが好ましい。
以下、第二の流路18が蛇行していることが好ましい理由について検討する。
円管などの管内の流れのような内部の流れでは、境界層の発達による速度分布の不均一は避けられない。特に、代表寸法が数μm〜数mmの微少寸法流路では、レイノルズ数(Re数)が小さく、粘性の影響が大きいため、層流境界層が発達する。
仮に、直径(D)100μmの流路において、流速(V)1.0m/sで水を流通させた場合のRe数は、Re=DV/ν=(100×10−6×1.0)/10−6=10であるため、乱流に遷移している可能性はほとんどない。
ここで、νは水の動粘性係数で、10−6/sである。
ここで、図2に、円管内における層流境界層の速度分布を模式的に示す。
図2に示すように、層流境界層が発達した流れ場では、中心部の流速は平均流速(流量を断面積で除した値)の2倍の流速である。また、壁面近傍の流速は、ほぼ0である。
なお、平均流速をvとすると、円管の中心から管壁に向かって半径方向にaの距離の地点の流速uは、u=2v(1−a/r)で表される。
ここで、分散液中の粒子(固形物)が、分散液とほぼ同様に流路内を移流すると仮定すると、流路中央部の粒子は平均流速より速く流れ、壁面近傍の粒子は平均流速より遅く流れる。これは、マイクロ流路を用いた液中レーザーアブレーションシステムにおいて、粒子に対する被照射回数(デバイスの流路中の受光部の範囲における粒子の滞在時間)を一様にする際の大きな障害となる。
層流では流れ方向に対して垂直方向の移流はほとんど生じないため、デバイスの受光部の入口で中心部に位置する粒子の受光部中の滞在時間は短く、受光部の入口で壁面近傍に位置する粒子の受光部中の滞在時間は長くなる。
よって、層流のように流れと垂直(二次流れ)方向の速度成分がない流れ場では、受光部において粒子に対するレーザー光の照射回数(もしくは時間)を一様化することが極めて困難である。
そこで、デバイスの受光部において、粒子に対するレーザー光の照射回数(もしくは時間)を一様にするための様々な施策の1つとして、受光部においてマイクロ流路を蛇行させることが有効である。
受光部においてマイクロ流路を蛇行させることにより、粒子の滞在時間が一様になる理論を説明する。
Re数が比較的高い場合、粘性力に対して慣性力が比較的高い場合を示す(なぜならRe数は慣性力/粘性力であるから)。
ここで、図3A,3Bに、90°に曲がった円管(ベンド管)を例示する。
直線部から曲線部に流入した流れには遠心力が働くため、その遠心力に対抗するように曲線部の半径方向外側(図3A,3Bに示すα)で圧力が高くなり、半径方向内側(図3A,3Bに示すβ)で圧力が低くなる。
ところが、半径方向外側の壁の影響(壁面との摩擦により、外側壁面近傍において全圧が下がる)により、形成された圧力場では遠心力に対抗できない。その結果、半径方向内側(図3A,3Bに示すβ)から半径方向外側(図3A,3Bに示すα)への流れ(二次流れ、図3A,3Bを参照)が生じる。よって、二次流れ(流れ方向に対して垂直方向の流動)成分を積極的に活用することにより、二次流れ方向に粒子の移動を促すことが可能となる。
Re数が比較的低い場合、粘性力に対して慣性力が比較的低い場合を示す。
ここで、図4に、90°に曲がった円管(ベンド管)を例示する。
曲がり開始部の約5D(D:円管の直径)程度上流側のB−B断面、および、曲がり終了部から約5D程度下流側のC−C断面を定義する。
ここで、B−B断面およびC−C断面は、曲がり部から十分に離れているため、断面方向の圧力変化がない。流体は流動する際、できるかぎり損失の少ない経路を通過する傾向がある。
図4において、B−B断面からC−C断面に流体が流動する際、流体に対して最も大きな損失は壁面との摩擦損失である。流体と壁面との接触長さは、半径方向外側(図4に示すα)にて長く、半径方向内側(図4に示すβ)にて短い。よって、B−B断面からC−C断面に流体が流動する際、半径方向外側(図4に示すα)の壁面近傍を流動する流体と比較して、半径方向内側(図4に示すβ)の壁面近傍を流動する流体は、壁面との摩擦による摩擦損失が小さい。
上述のように、流体は摩擦が少ない経路を通過する傾向があるため、半径方向内側をより多くの流体が通過する傾向を示す。その結果、半径方向内側では流速が速くなり、半径方向外側では遅くなる。
上述のように、直線流路形状では、速度分布が放物形を呈して変化しないが、曲線部を通過させることによって速度分布形状に変化を促すことが可能である。
このように、Re数に関係なく、ベンド管の曲がり部において、半径方向外側では流速が遅くなり、半径方向内側の流速が速くなる。
ここで、図5に、曲線部を有した流路形状を例示する。
また、図6、7に、図5に示す流路おいて、水を0.5m/sで流したときの流れ解析結果の速度コンターを示す。
なお、解析モデルは、二次元として解析を行った。
本条件において、Re数は、Re=DV/ν=(500×10−6×0.5)/10−6=250であり、流れは、層流流れ場と予測される。
図6に、入口から直線部の解析結果を示す。この結果から、流路中心から対称な速度分布を示していることが分かる。
図7に、曲がり部の解析結果を示す。この結果から、曲がり部において、半径方向内側の流速が速くなっていることが分かる。
よって、図1に示す第二の流路18のように、流路が蛇行していても、受光部における粒子の通過速度の一様化を図ることができる。
このシステム10を用い、液中レーザーアブレーションによって、有機化合物などの対象とする固形物を微細化する場合、受光部19の範囲における第二の流路18の光路長および長さは、固形物の種類(材質)、固形物を含む分散液の濃度(分散液の単位体積中に含まれる固形物の量)、固形物の吸光度、第二の流路18を流動する分散液の流量、レーザー光の照射面積(受光部19の面積)、レーザー光源11(レーザー発振器)の仕様などに応じて適宜調整される。
レーザー光源11としては、エキシマレーザー、窒素レーザー、YAGレーザー、Arイオンレーザー、色素レーザー、半導体レーザー、チタンサファイヤレーザー、ガラスレーザーなどが用いられる。
また、デバイス15の前段には、流路(図示略)を介してデバイス15と接続され、微細化の対象とする固形物を液中に分散させた分散液に対して、超音波処理などを施した一次粒子を一時的に貯留するための分散液貯留槽(図示略)が設けられていてもよい。この分散液貯留槽は、固形物の飛散を防止するとともに、外部からの不純物の混入を防止し、分散液の濃度を一定に保つために、密閉可能とする。また、分散液貯留槽内の分散液の濃度が局所的に不均一にならないように、スターラーなどの攪拌装置を設け、分散液を攪拌することが好ましい。
また、分散液貯留槽とデバイス15の間には、デバイス15に分散液貯留槽中の分散液を供給するためのポンプ(図示略)が設けられていてもよい。ポンプとしては、分散液の流量の調整が比較的容易なシリンジポンプなどの容積型ポンプが好適に用いられる。また、固形物を大量に微細化するためには、ターボ型ポンプが用いられる。この場合、分散液貯留槽とデバイス15を接続する流路にバルブなどの流量制御機構および流量計などの流量管理機構が設けられる。
さらに、デバイス15の後段には、流路(図示略)を介してデバイス15と接続され、デバイス15にてレーザー光が照射された分散液を回収するための分散液回収槽(図示略)が設けられていてもよい。この分散液回収槽は、微細化された粒子の飛散を防止するとともに、外部からの不純物の混入を防止するために、密閉可能とする。この分散液回収槽に回収された分散液は、次の工程に送られるまでの間、貯留される。
なお、液中レーザーアブレーションによる固形物の微細化率が100%でない場合や、次工程において微細化前の一次粒子が存在してはならない場合には、デバイス15と分散液回収槽の間に、微細化された粒子と一次粒子を分離する機構を設ける。
また、このシステム10では、分散液貯留槽、分散液回収槽、および、これらとデバイス15を接続する流路の操作系を密閉系とすることができる。
次に、この液中レーザーアブレーションシステム10を用いた、固形物の微細化方法について説明する。
まず、対象とする有機化合物などの固形物を含む分散液を超音波処理し、一次粒子を含む分散液を調製し、この分散液を分散液貯留槽に注入する。
固形物を分散させる溶媒としては、微細化しようとする固形物を溶解せず、かつ、懸濁させることができるものが用いられ、例えば、水、アルコールなどの水溶液、有機溶媒、油状液体などが挙げられる。また、溶媒としては、液体ヘリウムや液体窒素などの不活性液体または準不活性液体を用いてもよい。不活性液体または準不活性液体を用いた場合、固形物を微細化した後、直ちに溶媒を蒸発させて、微細化した固形物を容易に回収することができる。これとともに、レーザー光を照射したときの温度上昇を抑えることができるので、温度上昇による固形物の変質も防止することができる。
液中レーザーアブレーションによる微細化の対象となる固形物としては、粒子状で、かつ、難溶性のものが挙げられ、例えば、難溶性の薬物などの有機化合物が挙げられる。また、分散液を調製する前に、固形物の粒径を予め1μm〜100μm程度にしておくことが好ましい。このようにすれば、微細化したときの固形物の粒径をほぼ均一にすることができる。
次いで、システム10の第二の流路18内への分散液の流入が開始すると同時に、レーザー光源11から発振したレーザー光30をビームスプリッター12により分割し、デバイス15の受光部19に対して、分割されたレーザー光の照射を開始する。
レーザー光源11から発振するレーザー光30の波長は、微細化する固形物の吸収波長あるいは多光子吸収の波長に応じて選択される。レーザー光30としては、例えば、紫外光レーザー光、可視光レーザー光、近赤外レーザー光、赤外レーザー光などが挙げられる。
紫外光レーザー光を用いる場合、エキシマレーザー(193nm、248nm、308nm、351nm)や、窒素レーザー(337nm)、YAGレーザーの3倍波および4倍波(355nm、266nm)などが挙げられる。また、可視光レーザー光を用いる場合、YAGレーザーの2倍波(532nm)、Arイオンレーザー(488nmまたは514nm)、その他の色素レーザーなどが挙げられる。さらに、近赤外レーザー光を用いる場合、種々の半導体レーザー、チタンサファイヤレーザー、YAGレーザー、ガラスレーザーなどが挙げられる。さらに、これらのレーザー光と光パラメトリック発振器を用いて、紫外から赤外領域の任意の光を発振させてもよい。
また、レーザー光源11から発振されるレーザー光30は、パルスレーザー光が好ましい。レーザー光源11は、レーザー光が発せられる点灯状態と、レーザー光が発せられない消灯状態とを交互に繰り返し、間欠的にレーザー光を発振することにより、パルスレーザー光を発振する。特に、レーザー光の強度がパルス状に変化することが好ましい。以下、1つのパルスのレーザー光をパルス光と称する。パルスレーザー光を用いた場合、1つのパルス光によって1回の照射が行われる。
また、レーザー光源11から発振されるレーザー光30の励起光強度Pは、1mJ/cm〜1000mJ/cm程度が好ましい。
また、パルス光とパルス光との間のパルス周期Tは、0.1Hz〜1000Hz程度が好ましい。ここで、パルス周期とは、ある一のパルス光の立ち上がりの時点から、その一のパルスと隣り合うパルスの立ち上がりの時点までの時間、または、パルス光の立ち下がりの時点から、隣り合うパルス光の立ち下がりの時点までの時間をいう。
さらに、パルス光の各々のパルス幅sが、10フェムト秒〜1マイクロ秒程度が好ましい。なお、パルス幅とは、ある一のパルス光の立ち上がりの時点から、立ち下がりの時点までの時間をいう。
レーザー光源11から発振したレーザー光30を、分散液中の固形物に照射することにより、固形物の内部に急激な温度差が生じ、この温度差によって、固形物に生じた内部応力によって固形物が破砕して、微細化する。
次いで、デバイス15にて微細化された粒子を含む分散液は、分散液回収槽に送り込まれ、貯留される。
この液中レーザーアブレーションシステム10によれば、ビームスプリッター12とプリズム13を組み合わせて用いることにより、レーザー光源11から発振したレーザー光30を、その強度が均等になるように八分割する。デバイス15に設けられた8つの第二の流路18中を流動する分散液に、その分割されたレーザー光が照射される。このため、レーザー光30を極めて効率的に配分し、かつ、配分されたレーザー光を全て利用して、効率的に分散液中の固形物の微細化を進行することができる。また、レーザー光30を分割することにより、レーザー光源11の出力を調整しなくても、分散液中の固形物が熱変性する出力以下、かつ、アブレーションの閾値以上になったレーザー光を固形物に照射することができる。したがって、従来のバッチ式の液中レーザーアブレーションでは不可能であった、液中レーザーアブレーションによる固形物の微細化を連続的かつ効率的に行うことができる。
なお、この実施形態では、レーザー光源11から発振したレーザー光30を、その強度が均等になるように八分割した場合を例示したが、本発明の液中レーザーアブレーションシステムはこれに限定されない。本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、上記のビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、レーザー光源から発振したレーザー光をn分割(nは2以上の整数)し、この分割されたレーザー光を、デバイスの流路中を流動する分散液に対して照射してもよい。
(2)液中レーザーアブレーションシステムの第二の実施形態
図8は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第二の実施形態を示す概略構成図である。
図8において、図1に示した第一の実施形態の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
図8中、符号50は液中レーザーアブレーションシステム、51はビームスプリッターモジュール、52は第二のビームスプリッター、53は第三のビームスプリッターをそれぞれ示している。
このシステム50が上述のシステム10と異なる点は、図8に示すように、上記のビームスプリッター12、第二のビームスプリッター52、第三のビームスプリッター53、および、プリズム13を組み合わせてなるビームスプリッターモジュール51を用いて、レーザー光源11から発振したレーザー光30を、その強度が均等になるように八分割している点である。
ビームスプリッターモジュール51は、そのレーザー光の出射面、すなわち、アッテネータ14と対向する面において、レーザー光の出射部が、デバイス15の第二の流路18の受光部19に対して位置合わせされている。
したがって、システム50では、各種のビームスプリッターとプリズムを組み合わせたビームスプリッターモジュール51を用いることにより、このモジュールにより分割されたレーザー光の光軸を、デバイス15の第二の流路18の受光部19に対して合わせる操作が不要となる。このため、システム10よりも、レーザー光30を効率的に配分し、かつ、配分されたレーザー光を全て利用して、効率的に分散液中の固形物の微細化を進行することができる。
なお、図9に示すような、第二のビームスプリッター52と第三のビームスプリッター53を一体化してなるビームスプリッター54を用いることもできる。
(3)液中レーザーアブレーションシステムの第三の実施形態
図10は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第三の実施形態を示す概略構成図である。
図10中、符号60は液中レーザーアブレーションシステム、61はレーザー光源、62はビームスプリッター、63はプリズム、64は第一のデバイス、65は基材、66は流路、67はレーザー光の受光部、68は第二のデバイス、69は基材、70は流路、71はレーザー光の受光部、72は分散液貯留槽、73はポンプ、74は流路をそれぞれ示している。
このシステム60が上述のシステム10と異なる点は、レーザー光源61から発振したレーザー光80を、ビームスプリッター62にて、その強度が均等になるように二分割し、その分割されたレーザー光81,82をそれぞれ、第一のデバイス64の流路66を流動する分散液と、第二のデバイス68の流路70を流動する分散液とに照射している点である。
第一のデバイス64と第二のデバイス65はそれぞれ独立した別体をなしている。また、第一のデバイス64の流路66には、ポンプ73により第一の分散液貯留槽72から供給された分散液が流動する。そして、第二のデバイス68の流路70は、流路74を介して、第一のデバイス64の流路66と接続され、第一のデバイス64の流路66にて微細化された粒子を含む分散液が流動する。
第一のデバイス64は、基材65と、この基材65に設けられ、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液を流動する流路66とから構成されている。同様に、第二のデバイス68は、基材69と、この基材69に設けられ、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液を流動する流路70とから構成されている。
それぞれのデバイスの流路66,70は、図10に示すように、レーザー光の入射方向と垂直な面上にて蛇行していることが好ましい。
このシステム60では、レーザー光源61から発振したレーザー光80は、ビームスプリッター62にて二分割され、一方のレーザー光81が第一のデバイス64側に反射し、他方のレーザー光82がレーザー光80の進行方向に透過する。そして、レーザー光81は、第一のデバイス64の受光部67に照射される。また、レーザー光82はプリズム63にて反射され、第二のデバイス68の受光部71に照射される。
このシステム60によれば、第一のデバイス64にてレーザー光81が照射された分散液中に含まれる固形物に対して、再び第二のデバイス65にてレーザー光82を照射するので、分散液中に含まれる固形物に対して一様にレーザー光を照射することができる。すなわち、同じ操作(レーザーアブレーション)を繰り返すことにより、全ての固形物に対して、照射回数もしくは照射時間が均等になるようにレーザー光を照射する。これによって、微細化が不十分な粒子が生成すること、および、想定した照射回数もしくは照射時間以上にレーザー光が照射されて、被照射有機化合物の分子構造が破壊されることを防止することができる。
なお、この実施形態では、レーザー光80をビームスプリッター62にて二分割し、その分割されたレーザー光を第一のデバイス64と第二のデバイス68の流路中を流動する分散液に照射する場合を例示したが、本発明の液中レーザーアブレーションシステムはこれに限定されない。本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、レーザー光源から発振したレーザー光を3分割以上し、この分割されたレーザー光を、連設された3つ以上のデバイスの流路中を流動する分散液に対して照射してもよい。
また、本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、微細化処理の進行によって変化する分散液中の固形物の粒度分布に応じて、レーザー光の強度が変化するように、レーザー光を分割してもよい。
また、本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、微細化処理の進行によって変化する分散液中の固形物の粒径が小さくなるにしたがって、その強度が小さくなるように、レーザー光を分割してもよい。
例えば、この実施形態において、第一のデバイス64に照射するレーザー光81の強度をレーザー光80の強度の3/4とし、第二のデバイス68に照射するレーザー光82の強度をレーザー光80の強度の1/4としてもよい。
(4)液中レーザーアブレーションシステムの第四の実施形態
図11は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第四の実施形態を示す概略構成図である。
図11中、符号90は液中レーザーアブレーションシステム、91はレーザー光源、92はビームスプリッター、93はプリズム、94は第一のデバイス、95は基材、96は流路、97はレーザー光の受光部、98は第二のデバイス、99は基材、100は流路、101はレーザー光の受光部、102は第一の分散液貯留槽、103はポンプ、104は第二の分散液貯留槽、105はポンプをそれぞれ示している。
このシステム90が上述のシステム10と異なる点は、レーザー光源91から発振したレーザー光110を、ビームスプリッター92にて、その強度が均等になるように二分割し、その分割されたレーザー光111,112をそれぞれ、第一のデバイス94の流路96を流動する分散液と、第二のデバイス98の流路100を流動する分散液とに照射している点である。
第一のデバイス94と第二のデバイス98はそれぞれ独立した別体をなしている。そして、第一のデバイス94の流路96には、ポンプ103により第一の分散液貯留槽102から供給された分散液が流動する。同様に、第二のデバイス98の流路100には、ポンプ105により第二の分散液貯留槽104から供給された分散液が流動する。
第一のデバイス94は、基材95と、この基材95に設けられ、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液を流動する流路96とから構成されている。同様に、第二のデバイス98は、基材99と、この基材99に設けられ、処理の対象となる固形物を液中に分散させた分散液を流動する流路100とから構成されている。
それぞれのデバイスの流路96,100は、図11に示すように、レーザー光の入射方向と垂直な面上にて蛇行していることが好ましい。
このシステム90では、レーザー光源91から発振したレーザー光110は、ビームスプリッター92にて二分割され、一方のレーザー光111が第一のデバイス94側に反射し、他方のレーザー光112がレーザー光110の進行方向に透過する。そして、レーザー光111は、第一のデバイス94の受光部97に照射される。また、レーザー光112はプリズム93にて反射され、第二のデバイス98の受光部101に照射される。
このシステム90によれば、ビームスプリッター92とプリズム93を組み合わせて用いることにより、レーザー光源91から発振したレーザー光110を、その強度が均等になるように二分割し、それぞれ独立した第一のデバイス94と第二のデバイス98の流路中を流動する分散液に、その分割されたレーザー光を照射するので、液中レーザーアブレーションによる固形物の微細化を効率的に行い、固形物を大量に微細化処理することができる。
また、このシステム90によれば、それぞれのデバイスにて、異なる固形物を微細化処理することができる。この際、それぞれのデバイスにて微細化処理される固形物に応じて、それぞれの固形物が熱変性する出力以下、かつ、アブレーションの閾値以上のレーザー光を固形物に照射することができる。
なお、この実施形態では、レーザー光110をビームスプリッター92にて二分割し、その分割されたレーザー光を第一のデバイス94と第二のデバイス98の流路中を流動する分散液に照射する場合を例示したが、本発明の液中レーザーアブレーションシステムはこれに限定されない。本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、レーザー光源から発振したレーザー光を三分割以上し、この分割されたレーザー光を、独立した3つ以上のデバイスの流路中を流動する分散液に対して照射してもよい。
また、本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、それぞれのデバイスに供給される分散液中の固形物の粒度分布に応じて、レーザー光の強度が変化するように、レーザー光を分割してもよい。
また、本発明の液中レーザーアブレーションシステムにあっては、ビームスプリッターとプリズムを適宜組み合わせることにより、それぞれのデバイスに供給される分散液中の固形物の粒径に応じて、レーザー光を分割してもよい。
(5)液中レーザーアブレーションシステムの第五の実施形態
図12は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムを構成するデバイスの第五の実施形態を示す概略断面図である。
図12中、符号200はデバイス、201は第一透明基材、202は第二透明基材、203は凹部、204は透明マイクロ流路、rは透明マイクロ流路におけるレーザー光の照射方向の断面寸法の深さ、wは透明マイクロ流路におけるレーザー光の照射方向の断面寸法の幅、220は固形物大粒子をそれぞれ示している。
また、図13は、分散液中の固形物のうち固形物大粒子を示す模式図である。
図13中、符号220は固形物大粒子、Sは分散液中における固形物大粒子の平均中心間距離、dは固形物大粒子の直径をそれぞれ示している。
このデバイス200は、第一透明基材201に設けられた凹部203と、この凹部203を覆うように第一透明基材201に接合された第二透明基材202とからなる透明マイクロ流路204を有している。
第一透明基材201および第二透明基材202の材料としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスなどのガラス類、およびアクリル、ポリカーボネートなどの樹脂類などの透過率が高く、かつ、照射するレーザー波長に対して吸光度が小さく、変質しないものが用いられる。
このデバイス200では、透明マイクロ流路204におけるレーザー光の照射方向(図12におけるデバイス200の厚み方向)の断面寸法の深さをr、分散液中における固形物大粒子220の平均中心間距離をS、固形物大粒子220の最大直径をdmとすると、深さr、平均中心間距離S、最大直径dmが、dm<r<10Sを満たしている。さらに、深さr、平均中心間距離Sが、S<r<2Sを満たすことが好ましい。
ここで、固形物大粒子220が分散液中に均一に分散されていると仮定し、固形物大粒子220の1個当たりの平均体積をVp、分散液中の固形物大粒子220全体が占める容積率をxとすると、平均中心間距離S、平均体積Vp、容積率xが、S=(Vp/x)1/3を満たす。
この関係式は、次のようにして導かれる。
単位体積V当たりの固形物大粒子220の個数をNとすると、このNは次の式で表される。
N={V・x/(4π/3・(d/2))}
ここで、Vを一辺の長さがLvの立方体とすると、この中にN個の固形物大粒子220が等間隔で分散されていると仮定すれば、平均中心間距離Sは次の式で表される。
S=Lv/(N)1/3=(V/N)1/3=(Vp/x)1/3
なお、Vp=4π/3・(d/2)である。
図14に、容積率xと平均中心間距離Sを、固形物大粒子の直径dに対して計算した結果を示す。図14に示すグラフにおいて、縦軸は平均中心間距離Sを表し、横軸は容積率xを表す。
透明マイクロ流路204の深さrを上記の条件に従って設計すれば、固形物大粒子220が分散液中に均一に分散されている場合、レーザー光の照射方向において、透明マイクロ流路204内に存在する固形物大粒子220は1個以上、10個未満となる。この場合、固形物大粒子220が他の固形物大粒子220に遮られる可能性は実用範囲で適切に制限され、光源から発振されたレーザー光が、全ての固形物大粒子220に対してほぼ均一に照射される。
また、デバイス200では、透明マイクロ流路204のレーザー光の照射方向(図12におけるデバイス200の厚み方向)の断面寸法の幅をw、レーザー光の幅w方向の長さをDとすると、上記の平均中心間距離S、幅w、長さDが、3S<w<Dを満たすことが好ましい。
透明マイクロ流路204の幅wを上記の条件に従って設計すれば、固形物大粒子220が分散液中に均一に分散されている場合、固形物大粒子220による透明マイクロ流路204の閉塞を防止し、透明マイクロ流路204内において、分散液を一定の流速で流動させることができる。したがって、液中レーザーアブレーションによる、分散液に含まれる固形物大粒子の連続微細化工程において、固形物大粒子に対するレーザー光の照射条件を一定にすることができるので、品質が均一な微細化された固形物粒子を得ることができる。
また、図15に示すように、透明マイクロ流路204は、レーザー光の照射方向と垂直な面上に複数の屈曲部204a,204a,・・・を有し、この複数の屈曲部204a,204a,・・・にて折り返す往復流路をなしていることが好ましい。なお、図15において、符号205は透明マイクロ流路の入口、206は透明マイクロ流路の出口、αはレーザー光の受光部を示している。
透明マイクロ流路204内の流れは低速で層流となることが予想されるため、分散液中の固形物大粒子は流動中に姿勢を変えることがなく、固形物大粒子の同一面に対して繰り返しレーザー光が照射される可能性が高い。そこで、透明マイクロ流路204に複数の屈曲部204a,204a,・・・を設けることにより、分散液の流れに乱れを生じさせて、分散液中の固形物大粒子の姿勢を変化させる。これによって、分散液中の全ての固形物大粒子に対するレーザー光の照射時間が均一になる。従って、固形物大粒子の表面に対して万遍なくレーザー光を照射することができる。これにより、分散液中の固形物大粒子の微細化を効率的に行うことができる。
この場合、透明マイクロ流路204の必要長さ(透明マイクロ流路204の全長)Lを、次のように定める。
透明マイクロ流路204の全長をL、固形物大粒子220の微細化に必要なレーザーパルス数をMp、透明マイクロ流路204を流動する分散液の流速をV、透明マイクロ流路204を流動する分散液の単位時間当たりの流量をQ、レーザー光のパルス周波数をfとすると、全長L、レーザーパルス数Mp、流速V、流量Q、パルス周波数f、深さr、幅wが、L>Mp・V/f、V=Q/(w・r)を満たすものとする。
透明マイクロ流路204の全長Lを上記の条件に従って設計すれば、固形物大粒子220を、その微細化に必要なレーザーパルス数だけレーザー光が照射されるまで、透明マイクロ流路204内に存在させることができる。したがって、固形物大粒子220を、その化学構造を破壊することなく微細化することができる。なお、流量Qと、上記の容積率xとから、固形物大粒子220を微細化して得られる微粒子の単位時間当たりの生産量が定まる。
さらに、図16A,16Bに示すように、透明マイクロ流路204は、2層の第一往復流路204Aと第二往復流路204Bとが、連通流路207を介して、連通するように積層されてなり、透明マイクロ流路204の上流側の層をなす第一往復流路204Aが、透明マイクロ流路204の下流側の層をなす第二往復流路204Bの側壁(流路でない部分)208に重なっており、かつ、第二往復流路204Bが、第一往復流路204Aの側壁(流路でない部分)209に重なっていることが好ましい。
透明マイクロ流路204をこのような構成とすることにより、レーザー光の受光部αの範囲において、第一往復流路204Aの側壁209を透過したレーザー光が、第二往復流路204Bに照射される。このため、レーザー光の照射に無駄が無く、効率の良い固形物大粒子220の微細化が可能となる。
透明マイクロ流路内の流速は、通常、数センチメートル毎秒程度の低速となるため、流路を通過する懸濁液内の固形物大粒子は沈降する傾向にある。透明マイクロ流路の流路面が垂直に設置され、流路長手方向が水平に配置されると、固形物大粒子は水平流路の側壁付近を流動することになり、レーザー光が均等に照射されない。そこで、透明マイクロ流路の流路面が垂直である場合、流路長手方向を鉛直に配置することで、固形物大粒子の偏流を防止できる。また、透明マイクロ流路の流路面を水平に設置し、レーザー光をこれに対して垂直に照射すれば、固形物大粒子は流路幅全体に均一に分散し、偏流を避けることができる。これにより、固形物大粒子に対するレーザー光照射条件を一定に維持することができ、均一な微粒子を製造できる。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムによる微細化の対象となる固形物は、特に限定されないが、本発明は医薬用有機化合物の微細化に好適に用いられる。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムを、医薬用有機化合物の微細化に用いる場合、光源から発振されるレーザー光の波長が、医薬用有機化合物の光吸収スペクトル帯内に存在することが好ましく、医薬用有機化合物の吸光帯の範囲内で長波長側の付け根付近に存在することがより好ましい。
このようにすれば、レーザー光の照射に無駄が無く、効率の良い固形物大粒子220の微細化が可能となる。
また、本発明の液中レーザーアブレーションシステムを医薬用有機化合物の微細化に適用する場合、図17に示すように、透明マイクロ流路204の上流側に、医薬用有機化合物を含む分散液を調整し、容積が100cm以上の分散液調整槽210が設けられ、透明マイクロ流路204の下流側に、容積が100cm以上の微粒子懸濁液回収槽211が設けられ、透明マイクロ流路204と分散液調整槽210とを接続する流路の途中に、透明マイクロ流路204を介して分散液調整槽210から微粒子懸濁液回収槽211へ分散液を送液する、送液ポンプなどからなる送液手段212が設けられる。
分散液調整槽210は、この槽内の分散液221を攪拌するためのスターラーなどからなる攪拌装置213を備えている。
また、分散液調整槽210と微粒子懸濁液回収槽211の容積は同等となっている。
従来のバッチ方式では、レーザー光の照射による医薬用有機化合物などの難水溶性有機化合物の液中微細化に関する実施例において、何れも数cm程度と、非常に少容量の透明容器が用いられている。レーザー光が分散液中を貫通することのできる距離や、レーザー光の照射面積には制限があることから、従来のバッチ方式の処理量を、容量100cm以上にスケールアップすることは困難である。
一方、本発明の液中レーザーアブレーションシステムによれば、レーザー光が照射される透明マイクロ流路204に、医薬用有機化合物などの難水溶性有機化合物を分散させた分散液が供給され続ける限り、無限にこの難水溶性有機化合物の微細化処理を行うことができる。このため、工業規模生産へのスケールアップは容易である。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムを医薬用有機化合物の微細化に適用する場合、微細化処理は1つのプロセスを構成するため、一定量のロット単位で処理を行うこと、ロット単位毎にあらかじめ定められた品質検査を行うことなどが義務付けられる。そこで、本発明を医薬用有機化合物の微細化に適用する場合、規定された1ロット相当の容量を有する分散液調整槽、および、微細化後の微粒子懸濁液を回収するための微粒子懸濁液回収槽の設置が不可欠となる。
(6)液中レーザーアブレーションシステムの第六の実施形態
図18は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第六の実施形態を示す概略構成図である。
この実施形態の液中レーザーアブレーションシステムは、パルスレーザー光を発するレーザー光源301を含み、固形物を分散させた分散液311にレーザー光302を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーションシステムであって:分散液311が流動可能な液中レーザーアブレーション用マイクロ流路303(以下、「マイクロ流路」と略記する。)と;レーザー光302が照射される位置に設けられたマイクロフローセル304と;このマイクロフローセル304の一方の流路305に第1通路308を接続して設けられた三方弁307と;この三方弁307の第2通路309に吐出口314が接続されたシリンダー315及び、このピストンを往復動させるリニアアクチュエータ316を有するピストンポンプ317と;分散液311が貯留され、分散液311を三方弁307の第3通路310に送る分散液供給管路312が設けられたリザーバータンク313と;マイクロフローセル304の他方の流路306に吐出口318を接続したシリンダー319Aを有するフリーピストン319と;を有する。
三方弁307は、その3つの通路308,309,310を個別に開閉することで、ピストンポンプ317のポンプ動作に応じて、分散液311をマイクロフローセル304、リザーバータンク313、ピストンポンプ317のいずれかの方向に流動可能な流路を形成できる。
この液中レーザーアブレーションシステムを自動運転させる場合、三方弁307には、システムに内蔵された制御装置の駆動信号に応じて各通路の開閉を行う電磁弁を用いることが好ましい。
この実施形態において、三方弁307の第1通路308は、マイクロフローセル304の一方の流路305に接続され、第2通路309はピストンポンプ317の吐出口314に接続され、第3通路310はリザーバータンク313に設けられた分散液供給管路312の上端に接続されている。
図18の例示において、ピストンポンプ317は、吐出口314が設けられたシリンダー315と、このシリンダー315内に往復動可能に設けられたピストンと、ピストンの一端に駆動軸を接続したリニアアクチュエータ316とを備える。
なお、ピストンポンプ317の構造は本例示に限定されず、ピストンの駆動源はピストンを上下動させることが可能であればよく、リニアアクチュエータ316以外の駆動源を用いてもよい。
また、ピストンポンプ317の代わりに、シリンジポンプを用いることもできる。
図18の例示において、フリーピストン319は、シリンダー319Aと、このシリンダー319A内に往復動可能に設けられたピストンとを備え、駆動源を有していない。このフリーピストン319は、ピストンポンプ317内に分散液311が吸い込まれた後、三方弁307を適宜に切り替え(第1通路308と第2通路309を開、第3通路310を閉)、リニアアクチュエータ316を吐出側に駆動させ、これに連動するピストンを下降させる。この時に、ピストンポンプ317内の分散液311が、三方弁307、一方の流路305、マイクロフローセル304、他方の流路306の順に通過する。そして、分散液311は、フリーピストン319のシリンダー319A内に圧入される。このシリンダー319A内に分散液311が入っている状態で、三方弁を前記と同じ開閉状態にする。そして、リニアアクチュエータ316を吸入側に駆動させ、これに連動するピストンを上昇させる。この時、フリーピストン319内の分散液311が、他方の流路306、マイクロフローセル304、一方の流路305、三方弁307の順に通過して、ピストンポンプ317のシリンダー315内に吸い込まれる。このように、ピストンポンプ317側の駆動状況に対応してピストンが往復動する。
この実施形態の液中レーザーアブレーションシステムは、分散液311をリザーバータンク313からピストンポンプ317に吸い上げた後、三方弁307を切り替えて、リニアアクチュエータ316を吐出側に駆動させる。これによって、ピストンポンプ317側の分散液が、マイクロフローセル304を通してフリーピストン319内に圧入される。一方、フリーピストン319側に分散液11がある場合には、リニアアクチュエータ316を吸入側に駆動させる。これによって、フリーピストン319側の分散液311を、マイクロフローセル304を通してピストンポンプ317側に吸入する。これによって、マイクロフローセル304のレーザー光照射位置に分散液311を必要な回数通過させることができる。分散液311を所望の回数通過させながら、マイクロフローセル304においてレーザー光を照射して分散液311中の固形物を微細化する液中レーザーアブレーション微細化処理を行うことができる。このため、粒度が目標とする均一な範囲に高精度で入り、薬効に変化がなく、バイオアベイラビリティの高い、難水溶性粒子状医薬品などの微細化固形物粒子を、高効率で製造することが可能となる。
また、この実施形態の液中レーザーアブレーションシステムは、分散液311をリザーバータンク313、ピストンポンプ317のシリンダー315、三方弁307、マイクロフローセル304、フリーピストン319のシリンダー319Aおよびこれらをつなぐ流路の中を流動させる。この流動中に、複数回の微細化処理が実行できる。従って、分散液311を系外の外気などと接触させることなく、微細化処理を実行できる、微細化処理の間に不純物が混入することが防がれ、衛生的かつコンタミネーションフリーの理想的な処理環境下で微細化処理することができる。
フローセルの中に、被処理液を、必要な時間滞在させるには、流速を極低速にすることも出来る。しかし、その場合、分散固形物がマイクロフローセルの底部に堆積して、レーザー光が均一照射され難くなり、固形物がマイクロフローセルの狭い通路で閉塞しやすくなる。
また、フローセルの中の被処理液を、必要回数通過させるには、経路をループ状にして被処理液を同一方向に循環させることもできる。しかし、この場合は連続送液が可能な機械式ポンプが必要となり、微細化粒子にポンプ可動部の磨耗紛などの混入が避けられない。
そこで、本発明者等は、本発明において、ピストンポンプあるいはシリンジポンプという容積型のポンプの特性を生かして、フローセル内に被処理液を必要回数往復させる構成により、より効率が高く、汚染や閉塞が少ないシステムにした。
次に、本発明に係る固形物微細化方法の実施形態として、図18に示す液中レーザーアブレーションシステムを用いて微細化した固形物を製造する場合を説明する。
この方法では、まず、前述した固形物のいずれかを水などの液中に入れ、超音波振動などで予備粉砕し、固形物が液相中に分散した状態の分散液を調製する。そして、分散液をリザーバータンク313内に入れる。分散液311に分散させる固形物の量は、分散液311の流動性が確保でき、また、マイクロフローセル304におけるレーザー光の照射において、レーザー光302が効率よく固形物の粒子に照射されるような量に調整することが望ましい。例えば、固形物としてMeloxicamの粉末を水に分散させる場合には、水100質量部に対して、0.05〜1質量部を加えて分散させることが望ましい。
次に、三方弁307の第2通路309および第3通路310を開き(第1通路308は閉)、リニアアクチュエータ316を吸入側に駆動させる。これにより、ピストンポンプ317のピストンが上昇し、リザーバータンク313内の分散液311が、分散液供給管路312、三方弁307の第3通路310、第2通路309を順に通って、シリンダー315の吐出口314からシリンダー内に吸入される。
次に、三方弁307を切り替え、第1通路308および第2通路309を開き、第3通路310を閉じ、リニアアクチュエータ316を吐出側に駆動させる。これにより、ピストンポンプ317のピストンが下降し、ピストンポンプ317のシリンダー315内の分散液311が、三方弁307の第2通路309、第1通路308、一方の流路305、マイクロフローセル304、他方の流路306、フリーピストン319の吐出口318の順に流動し、そのシリンダー319A内に圧入される。この分散液311の流動中、マイクロフローセル304のレーザー光照射位置において、レーザー光源301から発せられたレーザー光302が、マイクロ流路303内を連続的にまたは間歇的に流動する分散液311に照射される。そのレーザー光302のエネルギーによって、分散液311中の固形物が微細化される(第1微細化処理工程)。
次に、三方弁307をそのままの状態(第1通路308および第2通路309は開、第3通路310は閉)で維持したまま、リニアアクチュエータ316を吸入側に駆動させる。これにより、ピストンポンプ317のピストンが上昇し、フリーピストン319のシリンダー319A内の分散液311(第1微細化処理した分散液)が、フリーピストン319の吐出口318から、他方の流路306、マイクロフローセル304、一方の流路305、三方弁307の第1通路308、第2通路309、の順に流動し、ピストンポンプ317のシリンダー315内に吸入される。この分散液311の流動中、マイクロフローセル304のレーザー光照射位置において、レーザー光源301から発せられたレーザー光302が、マイクロ流路303内を連続的にまたは間歇的に流動する分散液311に照射される。そのレーザー光302のエネルギーによって分散液311中の固形物が微細化される(第2微細化処理工程)。
この実施形態の固形物微細化方法は、必要に応じて第1微細化処理工程と第2微細化処理工程とを繰り返し行い、マイクロフローセル304における液中レーザーアブレーション微細化処理を複数回行って、微細化した固形物を製造する。マイクロフローセル304における液中レーザーアブレーション微細化処理の回数は、微細化するべき固形物に要求される微細化後の粒径、固形物の種類などに応じて適宜設定され、例えば、5〜300回の範囲としてよく、10〜100回の範囲が好ましい。
このように、複数回の液中レーザーアブレーション微細化処理を行うことで、分散液311中の固形物は微細化され、好ましくは平均粒径が50〜200nmの範囲の微細化粒子となり、分散液の状態で、例えば、リザーバータンク313に返送されて回収される。回収した分散液は、そのままの状態で用いることもできるが、通常は、遠心分離、精密ろ過、あるいは乾燥などの方法で液相と微細化粒子とを分離し、さらに乾燥し、医薬品の製剤などに用いられる。
(7)液中レーザーアブレーションシステムの第七の実施形態
図19は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第七の実施形態を示す概略構成図である。
図19において、図18に示した第六の実施形態の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の液中レーザーアブレーションシステムは、図18の液中レーザーアブレーションシステムの構成に加え、ピストンポンプ317とフリーピストン319に、分散液311中に含まれる固形物の粒径を検出するPAT装置320,321を備える。
固形物として、特に医薬品を対象とする場合、医薬品としての品質は、Design by Quality(DbQ)のコンセプトの元に、PAT(Process Analysis Technology)による担保が求められ始めている。
この実施形態は、医薬品としての品質に直接関わるパラメータが、設計で計画された条件を予定通り実現しているかを、オンラインで計測することで確認する。粒度計測手段であるPAT装置320,321(例えば、インライン粒度分布計)は、2つのシリンダーの下部に設置する。計測は、分散液311の流れる方向に従って、マイクロフローセル304の下流側にあたるPAT装置320,321のいずれかによって行う。すなわち、分散液311をフリーピストン319のシリンダー319Aに移動させる場合は、フリーピストン319に設置されたPAT装置321のデータをモニタリングする。所定の粒度分布が得られた時点で、レーザー照射を完了させ、不必要なレーザー照射を回避する。
PAT装置320,321は、要求される品質に応じて、例えば、オンラインゼータ電位計など他の計器を適用することも可能である。
この実施形態では、実際の生産でのオンラインでの計測管理のために、PAT装置320,321を用いる。分散液311中の固形物の粒度を計測することにより、実際のモニタリングならびに制御を行う。これにより、往復動回数の終点管理を精密に行うことができる。従って、所定の粒度分布が得られた時点で、レーザー照射を完了させ、不必要なレーザー照射を回避することができる。
図20は、液中レーザーアブレーション微細化処理において、薬物(Meloxicam)の微細化処理を実施した際に、微細化処理後の分散液中の固形物の粒度分布を測定した一例を示すグラフである。図20に示すグラフにおいて、縦軸(右)は通過分積算(%)を、縦軸(左)は頻度(%)をそれぞれ表し、横軸は粒径(μm)を表す。
このグラフに示す通り、微細化処理後の分散液中の固形物は、粒径0.10〜0.15μmの範囲に大きなピークを有するが、それ以外にも、粒径1〜3μmや粒径10μm以上のものも存在している。
従来、液中レーザーアブレーション微細化処理において、レーザー照射の回数・時間により、固形物の微細化が進むことが知られている。しかし、実際に微細化の時間的推移を生産システムに反映させた例はない。
そこで、次の第八の実施形態は、微細化された固形物と微細化されていない固形物とを分離し、微細化されていない固形物のみに再度の液中レーザーアブレーション微細化処理を施す構成とした。
(8)液中レーザーアブレーションシステムの第八の実施形態
図21は、本発明の液中レーザーアブレーションシステムの第八の実施形態を示す概略構成図である。
図21において、図18に示した第六の実施形態の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の液中レーザーアブレーションシステムは、図18の液中レーザーアブレーションシステムの構成に加え、ピストンポンプ317の吐出口314と三方弁307の第2通路309とを接続する流路途中に、操作レバー323によるオン/オフ操作式の分離フィルタ322が設けられる。これにより、微細化された固形物だけをリザーバータンク313に送り、微細化されていない固形物は、往復動でレーザー照射する。従って、高効率でかつ不必要なレーザー照射を受けることを回避する液中レーザーアブレーション微細化処理を実行できる。
この実施形態で用いる分離フィルタ322は、微細化する固形物の特性や粒度分布に応じて、例えば、ろ布、セラミックフィルタなどの各種フィルタの中から適宜選択することができる。分離フィルタ322の設置場所は、本例示にのみ限定されないが、背圧のかかるシリンダー315の下流とすることが望ましい。この場合、分離フィルタ322のオン/オフ切替動作と三方弁307の開閉動作は、リンクさせる必要がある。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
「実施例」
本発明の液中レーザーアブレーションシステムにより、難溶性薬物であるMeloxicamの連続微細化処理を行った。
この難溶性薬物を超音波処理の前処理により、未粉砕時の粒径が約10μmの塊状で、長径の最大値が30μmとなるように調製した。
このように前処理を施した難溶性薬物を溶媒に分散させ、濃度が0.1重量%の分散液を調製した。ここでは、溶媒として、水を用いた。
図22A,Bに示す透明マイクロ流路400を用意した。
この透明マイクロ流路400は、2層の第一往復流路401と第二往復流路402とが、連通流路403を介して、連通するように積層されて構成されている。また、この透明マイクロ流路400では、直径12mmのレーザー光の受光部β内において、第一往復流路401および第二往復流路402の幅が500μm、深さが500μm、全長が110mmとなっている。また、透明マイクロ流路400の上流側の層をなす第一往復流路401が、下流側の層をなす第二往復流路402の側壁(流路でない部分)404に重なり、かつ、第二往復流路402が、第一往復流路401の側壁(流路でない部分)405に重なるように、第一往復流路401と第二往復流路402が設けられている。また、透明マイクロ流路400は、レーザー光を吸収しない石英ガラス製の透明基材406,407,408が積層されてなるものである。第一往復流路401は透明基材407を機械加工して形成されたものである。第二往復流路402は透明基材406を機械加工して形成されたものである。
レーザー光源としては、ビーム径12mmのNd3+:YAGのナノパルスレーザー装置を用いた。
パルスレーザー光の1回当たりの照射時間を約5ナノ秒とし、1秒間に10パルスを照射した。
また、レーザー光の波長を430nmとした。
なお、レーザー光の波長は、上記の難溶性薬物の結晶体の吸収スペクトラムの上限値に近い範囲のものを選定した。
この選定方法について説明する。
積分球(ISR−2200、島津製作所社製)を用いた分光光度計により、上記の難溶性薬物の溶液状態、および、結晶状態(固体状態)における吸収スペクトルを測定した。
この測定結果を図23に示す。図23に示すグラフにおいて、縦軸は吸光度を表し、横軸は波長を表す。
図23の結果から、メタノール溶液状態では、波長450nm以上の吸光は存在しなかった。また、波長400〜450nmの範囲では、下に凸の曲線を呈しており、この領域で急激に吸光が少なくなることが分かる。ところが、水分散液状態では、波長400〜450nmの領域にて吸収スペクトルが上に凸の曲線を呈している。これらの結果の違いは、溶液状態では存在しない分子相互の格子間結合による吸光が、分散液状態では生じるため吸収スペクトル全体が長波長側へシフトした結果として理解することができる。よって、波長430nmのレーザー光を用いることにより、分子構造に影響を及ぼすことなく、格子間にのみ作用する条件にてレーザーアブレーションを行えることが確認された。
次に、上記の透明マイクロ流路400を用いて、液中レーザーアブレーションにより、上記の難溶性薬物の連続微細化処理を行った。
難溶性薬物を含み、濃度0.1重量%の水分散液を調製した。
この水分散液を、連続して透明マイクロ流路400に導いて、この流路内を流動させた。その間、レーザー光の受光部βに、レーザー光源よりレーザー光を照射し、難溶性薬物を微細化した。
レーザー光の強度を26.54mJ/cm、レーザー光のパルス数を200回、400回、600回および1000回照射とした。液中レーザーアブレーション後に、粒子の粒径を測定した。この測定結果を図24に示す。図24に示すグラフにおいて、縦軸は通過分積算を表し、横軸は粒径を表す。「LA前」とは、レーザー照射前の測定結果を示す。
図24の結果から、パルス数が400回の時、薬物の約25%が、パルス数が600回の時、薬物の約46%が、およびパルス数が1000回の時、薬物の約81%が平均粒径200nm以下の微粒子に微細化された。
上記の実施例の比較として、バッチ方式による難溶性薬物の微細化試験を実施した。
特開2001−113159号公報または特開2004−267918号公報に記載されている方法と同様の方法により、上記の難溶性薬物の水分散液をバッチ槽に充填して、この水分散液を攪拌しながら、水分散液にパルスレーザー光を照射した。
ここで用いたバッチ槽は、内寸法が10mm×10mm×50mmの石英ガラス製であり、最大容積は5cmであった。
このバッチ槽に分散液3mlを入れた。前記のマイクロ流路を用いた実験と同様に、レーザー光の強度26.54mJ/cmで、バッチ槽に対して600回(1分間)、又は3000回(5分間)のレーザー照射を行った。この結果を図25に示す。図25に示すグラフにおいて、縦軸は通過分積算を表し、横軸は粒径を表す。
また、図24と同様に、「LA前」はレーザー照射前の測定結果を示す。Batch600およびBatch3000はバッチ方式により当該回数の照射を行った結果を示す。
図25の結果から、従来のバッチ方式においても、600回の照射では、ナノ粒子の生成を行うことができなかった。また、3000回照射後の結果でも、ナノ粒子の収率は25%であった。
上記実施例および比較例の結果に基づいて、透明マイクロ流路方式による微細化処理と、従来のバッチ方式による微細化処理との仕組みについて考察する。
平均粒径10μmの難溶性薬物からなる大粒子を含み、濃度0.1体積%(この場合、難溶性薬物の比重がほぼ1であるから、体積%は重量%とほぼ同じとする)の分散液において、この分散液1cm当たり約190万個の大粒子が存在する。
この場合、分散液中の大粒子の平均中心間距離は約0.08mmと算出される。従って、平均光路長が10mmのバッチ槽では、この槽内の分散液が十分に均一に攪拌されていれば、光路長方向に約125個の大粒子が存在する。このため、レーザー光の進行方向における大粒子相互の重なりによって、レーザー光の進行方向後方に存在する大粒子には、レーザー光が照射されない可能性が高い。そこで、バッチ槽内の分散液を常時攪拌することにより、未粉砕の大粒子がレーザー光の照射前面を順次通過するように工夫した。
しかしながら、攪拌しただけでは、分散液の流動状態を均一に制御することができない。このため、結果として、化学構造を破壊することなく、難溶性薬物を微細化することができなかった。
一方、透明マイクロ流路400は、その深さ、すなわち、光路長が500μmである。従って、分散液中の大粒子の平均中心間距離(約0.08mm)から推定して、光路長あたり大粒子が6個または7個しか存在しない。従って、透明マイクロ流路400内の一の大粒子が、他の大粒子に遮られない。よって、レーザー光源から発振されたレーザー光が、全ての大粒子に対して均一に照射される。
また、透明マイクロ流路400を用いれば、レーザー光のパルス数が400回でも、難溶性薬物の約63%が微細化されている。このことから、平均粒径が10μmの大粒子を、平均粒径が100nm以下の微粒子に微細化するためには、数百回のパルスレーザー光の照射で十分であることが分かった。
なお、微細化効率を向上させるためには、難溶性薬物の化学構造を破壊しない範囲にて、レーザー光の強度と、パルス数とを増加させればよい。
参考として、レーザー光の照射前後の化学構造の変化を調べるため、HPLC分析を行った結果を図26、27に示す。
図26は、レーザー照射を行っていないサンプルを用いて、1000回のレーザー照射を行った後のサンプルと比較するための分析結果(クロマトグラム)を示す。
図27は、透明マイクロ流路を用いて、1000回のレーザー照射を行った後のサンプルに対する分析結果(クロマトグラム)を示す。
また、それぞれのクロマトグラムより算出したMeloxicamの純度%(クロマトグラムの面積)も併載した。
レーザー照射前のサンプルに対する分析結果において、Meloxicamの純度(クロマトグラムの面積)が99.4%であった。それに対して、今回の実施例における430nmのレーザー光を26.54mJ/cmのレーザー光の強度で1000回照射したサンプルの分析結果では、Meloxicamの純度(クロマトグラムの面積)が98.7%であった。つまり、80%以上の粒子をナノサイズに微細化した際にも、約0.7ポイントしか純度の低下が生じなかった。
また、レーザー照射前(図26)およびレーザー照射後(図27)の分析結果を見比べても、Meloxicam以外には、分解物を示す際立ったピークは見当たらなかった。これは、前述のようにレーザー波長とレーザー光の強度を好適に設定すれば、本発明による施策を用いることによって非常に高い収率でナノ粒子を得ることが可能で、さらには分子構造に対する影響が極めて小さな手法を提供できることを示した一例である。
(透明マイクロ流路方式微細化技術の医薬品製造への適合性)
医薬品の製造では、品質のばらつきが許容範囲内であることを保証するために、各処理工程に対して1ロット毎に厳格な品質検査を行うことが義務付けられている。
レーザー光の照射による微細化処理は1つの処理工程となるが、この場合、処理槽(バッチ槽、透明マイクロ流路)に充填された原薬物が1ロットとなるため、バッチ方式では、その量がバッチ槽への充填量と同じとなる。
バッチ方式による微細化処理では、レーザー光の照射面積の制限、光路長の制限などから、従来のバッチ方式における1ロット量は最大でも液量で100cm程度、薬物量で数100mg程度と想定される。したがって、少なくともkgレベルの工業的生産を行うためには、1万バッチ以上の微細化処理、および、これと同数の品質検査が必要となるから、実用化は困難である。
一方、透明マイクロ流路方式による連続微細化処理においても、上記の分散液調整槽に充填された薬物を含む分散液量が1ロットとなる。しかし、この1ロット量はレーザー光の照射面積や光路長などの制限を受けることなく自由に設定できる。したがって、透明マイクロ流路方式によれば、kg/ロット単位以上の工業的生産システムを設計することは容易である。
本発明の液中レーザーアブレーションシステムによれば、微粒子品質の管理が容易である。本発明は、特に固形物が医薬品である場合、ロット毎の製品検査回数を減らすことができ、かつ、製品品質が安定するため非常に望ましい方法である。また、液中レーザーアブレーションによる固形物の微細化を連続的かつ効率的に行うことができる。

Claims (21)

  1. レーザー光を固形物を液中に分散させた分散液に照射することにより、前記分散液中の固形物を微細化する液中レーザーアブレーションシステムであって:
    前記レーザー光を発振する光源と;
    前記分散液を流動する流路が設けられたデバイスと;
    nを2以上の整数としたとき、前記光源から発振したレーザー光をn分割するビームスプリッターと;
    前記ビームスプリッターにより分割されたレーザー光を、前記流路中を流動する前記分散液に対して照射するプリズムと;
    を備える液中レーザーアブレーションシステム。
  2. 前記ビームスプリッターにて、前記レーザー光を、その強度が均等になるように分割する、請求項1に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  3. 前記流路は、前記レーザー光の入射方向と垂直な面上にて蛇行している、請求項1または2に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  4. 前記デバイスの前段に設けられ、前記分散液を貯留する分散液貯留槽と;
    前記デバイスに前記分散液貯留槽の分散液を供給するポンプと;
    前記デバイスの後段に設けられ、レーザー光が照射された分散液を回収する分散液回収槽と;
    をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  5. 固形物を液中に分散させた分散液を連続的に流動させる透明マイクロ流路と、レーザー光を発振する光源と、を備え、前記光源より発振したレーザー光を、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液に照射することにより、前記分散液中の固形物のうち固形物大粒子を連続的に微細化する液中レーザーアブレーションシステムであって、
    前記透明マイクロ流路の前記レーザー光の照射方向の深さをr、前記分散液中における前記固形物大粒子の平均中心間距離をS、前記固形物大粒子の最大直径をdmとすると、前記深さr、前記平均中心間距離S、前記最大直径dmが、dm<r<10Sを満たす、液中レーザーアブレーションシステム。
  6. 前記深さr、前記平均中心間距離Sが、S<r<2Sを満たす、請求項5に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  7. 前記透明マイクロ流路の前記レーザー光の照射方向に垂直な幅をw、前記レーザー光の前記幅w方向の長さをDとすると、前記平均中心間距離S、前記幅w、前記長さDが、3S<w<Dを満たす、請求項5または6に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  8. 前記透明マイクロ流路の全長をLL、前記固形物大粒子の微細化に必要なレーザーパルス数をMp、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液の流速をVf、前記透明マイクロ流路を流動する前記分散液の単位時間当たりの流量をQ、前記レーザー光のパルス周波数をfLとすると、前記全長LL、前記レーザーパルス数Mp、前記流速Vf、前記流量Q、前記パルス周波数fL、前記深さr、前記幅wが、LL>Mp・Vf/fL、Vf=Q/(w・r)を満たす、請求項7に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  9. 前記透明マイクロ流路は、前記レーザー光の照射方向と垂直な面上に複数の屈曲部を有し、前記複数の屈曲部にて折り返す往復流路である、請求項8に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  10. 前記透明マイクロ流路には、二層の連通した前記往復流路が積層されて設けられ、前記透明マイクロ流路の上流側の層をなす前記往復流路が、前記透明マイクロ流路の下流側の層をなす前記往復流路の側壁に重なっている、請求項9に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  11. 前記透明マイクロ流路の流れ方向が鉛直に配置され、前記レーザー光が、前記透明マイクロ流路を含む平面に対して直角に照射される、請求項5ないし9のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  12. 前記透明マイクロ流路を含む平面を水平に配置し、前記レーザー光を、前記透明マイクロ流路を含む平面に対して垂直に照射する、請求項5ないし9のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  13. 前記固形物は、医薬用有機化合物である、請求項5ないし12のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  14. 前記レーザー光の波長が、前記医薬用有機化合物の光吸収スペクトル帯内である、請求項13に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  15. 前記レーザー光の波長が、吸光帯の範囲内で長波長側の付け根付近である、請求項13に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  16. 前記透明マイクロ流路の上流側に設けられ、前記医薬用有機化合物を含む分散液を調整し、容積が100cm以上の分散液調整槽と;前記透明マイクロ流路の下流側に設けられ、容積が100cm以上の微粒子懸濁液回収槽と;前記透明マイクロ流路を介して前記分散液調整槽から前記微粒子懸濁液回収槽へ、前記分散液を送液する送液手段と;を更に備える、請求項13に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  17. レーザー光を発する光源を含み、固形物を分散させた分散液に前記レーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーションシステムであって:
    前記分散液が流動可能な液中レーザーアブレーション用マイクロ流路が設けられ、前記レーザー光が照射される位置に設けられたマイクロフローセルと;
    前記マイクロフローセルの第一の流路に第1通路を接続して設けられた三方弁と;
    前記三方弁の第2通路に吐出口が接続された第1シリンダーを有するピストンポンプと;
    前記分散液が貯留され、前記分散液を前記三方弁の第3通路に送る分散液供給管路が設けられたリザーバータンクと;
    前記マイクロフローセルの第2の流路に吐出口を接続した第2シリンダーを有するフリーピストンと;を備える、液中レーザーアブレーションシステム。
  18. 前記ピストンポンプと前記フリーピストンとの一方または両方に、第1または第2シリンダー内の前記分散液中の前記固形物粒子の粒径を計測するゼータ電位計または粒度分布計が設けられた、請求項17に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  19. 前記マイクロフローセル内の分散液中の固形物粒子のうち、微細化された粒子を分離して回収する分離フィルタさらに備える、請求項17または18に記載の液中レーザーアブレーションシステム。
  20. 固形物を分散させた分散液にレーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーション微細化処理を行って微細化した固形物を製造する固形物微細化方法であって:
    請求項17ないし19のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステムを用い;
    前記分散液を、前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとの間を、前記マイクロフローセルを介して複数回往復移動させ、前記マイクロフローセルにレーザー光を照射する、固形物微細化方法。
  21. 固形物を分散させた分散液にレーザー光を照射し、液中の固形物を微細化させる液中レーザーアブレーション微細化処理を行って微細化した固形物を製造する固形物微細化方法であって、
    請求項17ないし19のいずれか1項に記載の液中レーザーアブレーションシステムを用い:
    前記リザーバータンクに前記分散液を入れ、前記ピストンポンプを駆動させ、前記三方弁の第3通路と第2通路とを介して前記リザーバータンク内の分散液を前記第1シリンダー内に吸入する工程と;
    次いで、前記第1シリンダー内の分散液を、前記三方弁の第2通路と第1通路を介して前記マイクロフローセルを通して前記第2シリンダー内に圧入し、同時に前記マイクロフローセルにレーザー光を照射して分散液中の固形物を微細化する第1微細化処理工程と;
    次いで、前記第2シリンダーの分散液を、前記マイクロフローセルを通して前記第1シリンダーに吸入し、同時に前記マイクロフローセルにレーザー光を照射して分散液中の固形物を微細化する第2微細化処理工程と;を有し、
    必要に応じて前記第1微細化処理工程と前記第2微細化処理工程とを繰り返し行い、前記マイクロフローセルにおける液中レーザーアブレーション微細化処理を複数回行って、微細化した固形物を製造する、固形物微細化方法。
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