JPWO2010008069A1 - 細胞増殖阻害剤 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸を含む、細胞の増殖を阻害するための組成物。
〔2〕ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸が、siRNA、siRNAを発現するベクター、アンチセンスRNA、アンチセンスRNAを発現するベクター、アンチセンスDNA、リボザイム、又は、リボザイムを発現するベクターである、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕siRNAが、ROR1遺伝子のmRNAのいずれかの領域のセンス鎖RNA及び該センス鎖RNAのアンチセンス鎖RNAを有するsiRNAである、〔2〕に記載の組成物。
〔4〕細胞が癌細胞である、〔1〕に記載の組成物。
〔5〕細胞が、肺癌細胞、肺腺癌細胞、中皮腫細胞、膵臓癌細胞、または骨肉腫細胞である、〔1〕に記載の組成物。
〔6〕以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1タンパク質と試験化合物を接触させる工程、
(2)該ROR1タンパク質と試験化合物の結合レベルを測定する工程、及び、
(3)該ROR1タンパク質に結合する試験化合物を選択する工程。
〔7〕以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子を発現する細胞又は細胞抽出液と試験化合物を接触させる工程、
(2)ROR1遺伝子の発現レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下におけるROR1遺伝子の発現レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。
〔8〕以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞又は細胞抽出液と試験化合物を接触させる工程、
(2)レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下におけるレポーター遺伝子の発現レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。
〔9〕以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子を発現する細胞と試験化合物を接触させる工程、
(2)細胞の増殖レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下における細胞の増殖レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。
〔10〕ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸を含む癌を治療または予防するための組成物。
〔11〕癌が、肺癌、肺腺癌、中皮腫、膵臓癌、または骨肉腫である、〔10〕に記載の組成物。
〔12〕ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸を対象に投与する工程を含む、癌を治療または予防する方法。
〔13〕癌が、肺癌、肺腺癌、中皮腫、膵臓癌、または骨肉腫である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕癌を治療または予防するための組成物を製造するための、ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸の使用。
〔15〕癌が、肺癌、肺腺癌、中皮腫、膵臓癌、または骨肉腫である、〔14〕に記載の使用。
〔16〕癌を治療または予防するための方法に使用するための、ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸。
〔17〕癌が、肺癌、肺腺癌、中皮腫、膵臓癌、または骨肉腫である、〔16〕に記載の核酸。
核酸の切断
蛋白質の合成阻害
核酸以外の物質に対する結合
本発明の機能性RNAの一つの態様は、内因性のROR1遺伝子の転写産物と相補的なdsRNAである。RNAi(RNA interference;RNA干渉)は、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNA(以下dsRNA)を細胞内に導入すると、標的遺伝子mRNAの破壊を誘導し、標的遺伝子の発現が抑制される現象である。
本発明における機能性RNAとして、遺伝子に対してアンチセンス効果を有するRNAを用いることもできる。特定の遺伝子の発現を阻害(抑制)する方法として、アンチセンス技術を利用する方法が公知である。アンチセンス核酸による標的遺伝子の発現阻害には、以下のような複数のメカニズムが関与している。
本発明における機能性RNAとして、リボザイム活性を有するRNAを利用することもできる。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子を指す。リボザイムには種々の活性を有するものが存在する。たとえば、RNAを部位特異的に切断するリボザイムを設計することもできる。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子、蛋白質核酸酵素、35、2191、1990年)。
なお、本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
〔実施例1〕マイクロアレイを使ったTTF-1による発現誘導遺伝子ROR1の同定
HPL1D細胞によるTTF-1の発現、RNAの調整、マイクロアレイ解析の実施
ヒト正常末梢肺細胞由来細胞株HPL1D細胞にTTF-1(pCMV-puro-TTF-1)を遺伝子導入し(以下、HPL1D-TTF-1)、強制発現させた。HPL1D株に空ベクター(pCMV-puro-control vector)を導入したものを対照とした(以下、HPL1D-CV)。TTF-1及び、空ベクターを導入後、puromycin(1.5 μg/ml)でselectionを行い、3日後に細胞を回収し、RNeasyキット(Qiagen社)を用いてトータルRNAを抽出し、DNaseIで処理した。RNA量はNanoDrop ND-1000UV-Vis分光光度計(NanoDrop Technologies社)を用いて測定し、RNAの品質はAgilent 2100 bioanalyzer(Agilent社)を用いて測定した。各細胞から抽出したトータルRNA 500 ngから、Low RNA Fluorescent Linear Amplification kit(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、Cy3またはCy5で標識したcRNAを作成した(より詳細には、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素と及びT7プロモーターを含むポリdTプライマーを用いて二本鎖cDNAを合成した後、T7 RNAポリメラーゼとCy3またはCy5を用いて、Cy3またはCy5で標識されたcRNAを作成した)。41000個のプローブを有するマイクロアレイ(Agilent社製 Whole Human Genome)を用いて、HPL1D-TTF-1株とHPL1D-CV株の網羅的な発現解析を行った。マイクロアレイにcRNAをハイブリダイズした後、洗浄し、G2505Bマイクロアレイスキャナー(Agilent社)を用いてマイクロアレイのスライドをスキャンした。発現データはFeature Extraction 9.5.1ソフトウェア(Agilent社)を用いて取得した。HPL1D-CVと比較して、HPL1D-TTF-1にて5倍以上の発現上昇を認める遺伝子として、ROR1を見出した。
TTF-1による下流標的遺伝子(target molecule)の同定のため、マイクロアレイ解析を行った結果、HPL1D-CVと比較してHPL1D-TTF-1において、3倍以上の発現変化を示す8つの遺伝子群を同定した。それらのうち、5倍以上の発現変化(発現上昇)が認められる遺伝子として、ROR1(receptor tyrosine kinase-like orphan receptor 1)を同定した(表1)。この結果から、受容体型チロシンキナーゼの1つであるROR1がTTF-1による下流標的遺伝子である可能性が示唆された。
HPL1D細胞によるTTF-1の発現、cDNAの調整、リアルタイムPCR、ウェスタンブロッティング
ヒト正常末梢肺細胞由来細胞株HPL1D細胞にTTF-1(HPL1D-TTF-1)あるいは空ベクター(HPL1D-CV)を強制発現させた。TTF-1及び、空ベクターを導入後、puromycin(1.5 μg/ml)でselectionを行い、3日後に細胞を回収し、RNeasyキット(Qiagen社)を用いてトータルRNAを抽出し、DNaseIで処理を行った。その後、ランダムプライマーを用いて逆転写酵素Super Script II(invitrogen社)により、cDNAを抽出した。また、細胞回収後、一部についてはSDSサンプルバッファーを用いてライセートを作製した。同様に、本発明者らが樹立したTTF-1恒常的発現株(HPL1D-TTF-1 stable)、空ベクター恒常的発現株(HPL1D-CV stable)についても、cDNAを抽出し、ライセートを作製した。Primer 3 software(プライマー作製ソフトウェア: http://primer3.sourceforge.net/)によってROR1プライマーの設計を行い、各々のcDNAに対して、real-time PCRを行った(内部標準としてribosome18Sを選択)実際の数値については、何も発現させていないHPL1D細胞を基準とし、ΔΔCT法によって発現量比の算定を行った(3回実施)。各々のライセートについては、SDS-PAGEを行い、抗ROR1抗体(Cell signaling社)及び抗TTF-1抗体(WAKO)を使って、ウェスタンブロッティングを行った。
リアルタイムPCR法により、TTF-1の発現によってROR1のmRNAレベルでの発現変化を調べた結果、TTF-1一過性発現系(transient)及び、本発明者らが作製したTTF-1恒常的発現系(stable)、どちらにおいても、HPL1D-CVと比較してHPL1D-TTF-1において、有意な発現上昇が認められた(図2左図)。
TTF-1一過性発現系においては、約6倍、TTF-1恒常的発現系においては、約34倍のROR1 mRNAの発現上昇がみられた。
また、同様に、ウエスタンブロッティング法により、TTF-1の発現によってROR1のタンパク質レベルでの発現変化を調べた結果、TTF-1一過性発現系及びTTF-1恒常的発現系、どちらにおいても、HPL1D-CVと比較してHPL1D-TTF-1において、ROR1のタンパク質レベルでの発現を検出した(ヒト正常末梢肺細胞由来細胞株HPL1D細胞はもともとROR1を発現しておらず、HPL1D-CVにおいてもROR1の発現は認められない。図2右図)。
リアルタイムPCR法及びウエスタンブロッティング法の結果から、ROR1の発現(mRNA、タンパク質レベル共に)は、TTF-1の発現によって特異的に誘導されることが判明した。
TTF-1の発現抑制(RNA干渉法の実施)、ウェスタンブロッティング
TTF-1、ROR1ともに発現が認められる肺腺癌細胞株SK-LC-5、NCI-H1975について、ScrambleおよびTTF-1 siRNA(QIAGEN社)を最終濃度20nMで各々の細胞にRNAiMAX(invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、72hr後にSDSサンプルバッファーを用いてライセートを回収した。その時、何も処理を施していないサンプルも調整した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell signaling社)及び抗TTF-1抗体(WAKO社)、抗α-tubulin抗体(Cell signaling社)を使って、ウェスタンブロッティングを行った。
TTF-1、ROR1ともに発現が認められる肺腺癌細胞株であるSK-LC-5及びNCI-H1975を使って、RNA干渉法(RNAi)によるsiRNAを用いたTTF-1の発現抑制を行った結果、ウエスタンブロッティング法により、どちらの肺腺癌細胞株においても、コントロールsiRNA(scramble)と比較して、TTF-1 siRNA(siTTF-1)において、TTF-1の有意な発現抑制が認められ、特異的なROR1の発現低下が観察された(何も処理を行っていない無処理のnon-transfectedにおいてTTF-1及びROR1共に、各々の肺腺癌細胞株でバンドが検出されることから、SK-LC-5及びNCI-H1975では発現が認められる)。
α-tubulinの発現は、non-transfected、scramble、siTTF-1の三者間においてタンパク質量が均一であることを示すとともに、siTTF-1によって他のタンパク質量が影響を受けていないことを示すものである。
この結果から、肺腺癌細胞において、内因性のROR1の発現は、TTF-1の発現によって特異的に調節・制御されていることが判明した。
pGL4.1-ROR1プロモーターの作製、ルシフェラーゼアッセイ(レポーターアッセイ)
ルシフェラーゼアッセイを行うためにpGL4.1ルシフェラーゼレポーターベクター(Promega社)にhuman genome cDNAから抽出したROR1プロモーターを約1000 bpを組み込んだpGL4.1-ROR1プロモーターを作製した。CV(Control Vector)あるいはTTF-1を恒常的に発現している細胞株(CV-stableあるいはTTF-1-stable)を2×105 cellsで6 well plateにそれぞれ撒き、Dual-Luciferase Reporter Assay System (Promega社)に基づき、24時間後にpGL4.1-ROR1プロモーター1.8 μgをpRL-TKベクター0.2 μgとともに、各々の細胞にFuGENE6 Transfection Reagent (ロッシュ・ダイアグノスティックス社)を使ってトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、24時間後に、培養メディウムを取り除き、さらに、48時間後にPLB溶液を用いてライセートを回収した。回収したサンプル20μlに対して、LARII溶液30μlを加え、firefly luciferase activityをMinirumat LB9506を用いて測定した(M1)。次に、Stop & Glo溶液30μlを加え、Renilla luciferase activityを同様にMinirumat LB9506を用いて測定した(M2)。ルシフェラーゼ活性の測定値は、M=(M1-M2)で算出し、3回の測定値の平均をグラフ化した。
ROR1の発現がTTF-1によって転写レベルで調節されていることを調べるために、ROR1のプロモーター領域を組み込んだ発現ベクターを作製し、レポーターアッセイの1つであるルシフェラーゼアッセイを行った結果、TTF-1を恒常的に発現している細胞株(TTF-1-stable)において、CV (Control Vector)を恒常的に発現している細胞株(CV-stable)と比較して、有意なルシフェラーゼ活性(約8倍)が認められた。
この結果から、TTF-1の発現によってROR1の発現が誘導されることが分かり、ROR1の発現は、TTF-1によって転写レベルで制御されていることが判明した。
臨床検体を用いた免疫組織化学染色(TTF-1およびROR1)
各々の肺腺癌の臨床検体は、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)、抗TTF-1抗体(WAKO社)、いずれの抗体を用いた染色においてもホルマリン固定後パラフィン包埋組織切片を用いた。抗ROR1抗体による免疫組織化学染色については、脱パラフィン後、1mM EDTA液(pH8.0)に切片を浸し、98℃10分間マイクロウェーブ処理により抗原賦活化を行った。次に、3%過酸化水素加メタノール処理にて内因性ペルオキシダーゼを不活化させ、さらに10%ヤギ正常血清(ヒストファインSAB-PO(R)キット)にてブロッキングを行った。抗ROR1抗体は、100倍に希釈して1時間反応させ、二次抗体はビオチン標識抗ウサギ抗体IgG抗体(ヒストファインSAB-PO(R)キット)を用い,10分間反応させた。ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(ヒストファインSAB-PO(R)キット)を反応させDABにて発色させた。さらにヘマトキシリンにて対比染色を行った。抗TTF-1抗体による免疫組織化学染色については、自動免疫染色装置であるベンタナNXに基づいて行い、賦活化はTarget Retrieval Solution S1700(Dako Cytomation社)に切片を浸し、95℃30分間マイクロウェーブ処理を行った。ブロッキング反応の後、抗TTF-1抗体は、200倍に希釈して1時間反応させ、二次抗体反応、DAB等の試薬はベンタナi-view DABユニバーサルキットを用いた。最後にヘマトキシリンにて対比染色を行った。
実際の臨床検体を用いた肺腺癌組織におけるTTF-1とROR1の組織内局在を調べるために、免疫組織染色を行った結果、TRU (terminal respiratory unit)型肺腺癌において、特異的にTTF-1とROR1が局在することが明らかとなった。これに対して、より中枢側に由来する肺腺癌(non-TRU-type)では、TTF-1、ROR1ともに局在しないことが確認できた。
この結果から、TTF-1の発現が認められるTRU型肺腺癌では、TTF-1によってROR1が制御されている可能性を示すものであり、ROR1が重要な役割を担っていることを伺うことができる。また、この結果は、臨床応用としてROR1をターゲットにした治療法への応用が期待できる。
また、他の腫瘍においてもROR1の高発現が検出されるので、同様に、それらは、ROR1陽性癌細胞の生存に関わる重要な因子であり、治療標的になることが考えられる。
種々の癌細胞のサンプル調整、ウェスタンブロッティング
各種の肺癌細胞(肺腺癌、偏平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌)、骨肉腫細胞、結腸直腸腺癌細胞、乳癌細胞、慢性骨髄性白血病細胞、子宮頚癌細胞、肝臓癌細胞、膵臓癌細胞、中皮腫細胞について60mm dishにおいて細胞を増殖させ、SDSサンプルバッファーを用いてライセートを調整した。同様に気管支上皮細胞、末梢気管上皮細胞、中皮細胞、胚性腎細胞などの正常細胞についても60mm dishにおいて細胞を増殖させ、SDSサンプルバッファーを用いてライセートを調整した。また、ポジティブコントロール(Positive Control: P.C.)として、末梢気管上皮細胞株であるHPL1D細胞にpCMV-puro-ROR1(OriGene社からhuman ROR1 cDNAを購入し、pCMV-puroベクターに組み込んだプラスミド)を一過性に発現させ、2日間のpuromycin(1.5 μg/ml)のセレクションの後、SDSサンプルバッファーを用いて、同様にライセートを調整した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)および抗TTF-1抗体(WAKO社)を使って、ウェスタンブロッティングを行った。
種々の細胞におけるROR1とTTF-1のタンパク質レベルでの発現を確かめるために、ウエスタンブロッティング法により、それぞれの発現を調べた結果、ROR1は、様々な癌由来細胞において発現が認められ、TTF-1は、肺腺癌特異的に発現が認められた。また、ROR1は癌由来の細胞ではない正常な細胞においては、発現が認められないことが分かった。
この結果から、ROR1の発現は癌細胞特異的であり、様々な癌由来の細胞において発現が認められるのに対して、TTF-1の発現は肺腺癌特異的であることが判明した。
種々の癌細胞株におけるTTF-1およびROR1の発現一覧
実施例6におけるウェスタンブロッティングの結果に基づき、タンパク質レベルでのTTF-1およびROR1の発現結果を総括した(表2)。
種々の細胞におけるROR1とTTF-1のタンパク質レベルでの発現と相関関係について、実施例6の結果を総括したところ、ROR1は様々な癌由来の細胞、例えば、骨肉腫由来の細胞(U-2 OS)や結腸直腸腺癌由来の細胞(SW-620)、膵癌由来の細胞(MIA PaCa2、PANC-1 etc)、中皮腫由来の細胞(NCI-H28、NCI-H226、NCI-H2052 etc)、様々な肺癌由来の細胞においてその発現が認められる。しかし、正常細胞、例えば、気管支上皮細胞(BEAS-2B)や末梢気管上皮細胞(HPL1D、HPL1A)、中皮細胞(MeT-5A)などでは、ROR1の発現は、認められないことが分かった。
ROR1は、様々な癌由来の細胞において一様に発現している一方で、正常細胞ではその発現がほとんど認められないことから、その阻害による臨床応用への展望、癌細胞特異的な治療法への応用が期待できる。また、TTF-1は肺腺癌由来の細胞に発現していることが確認でき、肺腺癌においては、ROR1の発現はTTF-1によって調節されていると考えられる。他の腫瘍においては、ROR1は他の転写因子による転写活性化を受けているものと考えられる。
種々のソフトウェアを用いたHuman ROR1 siRNAのデザイン
Human ROR1 siRNAをデザインすることを目的として、2つのsiRNA design database[software](RNAi Central、siRNA Target Finder)を用いて、Human ROR1(NM_005012)に対するsiRNAの候補を検出した。それぞれのソフトウェアによって同定されたHuman ROR1 siRNAは、個々のsiRNA作製アルゴリズム(siRNA program)によって検出されたものであり、Human ROR1の発現抑制が見込める可能性のあるものとして見出されたものである。RNAi Centralについては、Human ROR1 siRNAとして発現抑制効果が期待できると思われるものをランキング形式で示してあり、293個のHuman ROR1 siRNAを検出した。siRNA Target Finderについては、Human ROR1 siRNAとして発現抑制効果が期待できると思われるものとして、174個のHuman ROR1 siRNAを検出した。
2つのsiRNA design database[software](RNAi Central、siRNA Target Finder)を用いて、Human ROR1(NM_005012)に対するROR1 siRNAをデザインし、候補を見出した。その結果、各々のsiRNAプログラムによってHuman ROR1 siRNAとして発現抑制効果が期待できると想定されるものを、RNAi Centralについては293個(図7)、siRNA Target Finderについては174個同定した。
以下、詳細に示す。
[Hannon Lab; Maintained by Sachidanandam Lab]
(http://katahdin.cshl.org:9331/homepage/portal/scripts/main2.pl)
以下にHuman ROR1(NM_005012: target sequence)に対するセンス鎖のsiRNAを示す。
NM_005012 Start position: 924
GATTGCATGTGCAAGATTT(配列番号:4)
NM_005012 Start position: 2727
CCCAGTGAGTAATCTCAGT(配列番号:5)
NM_005012 Start position: 1269
CCCAGAAGCTGCGAACTGT(配列番号:6)
NM_005012 Start position: 1394
GCCAGTGCCAGCCATGGAA(配列番号:7)
NM_005012 Start position: 1174
CTGTGTCAAACAGAGTACA(配列番号:8)
NM_005012 Start position: 1368
GACCGTCAGTGTGACCAAA(配列番号:9)
NM_005012 Start position: 1305
CATGGCAGATCCTATAAAT(配列番号:10)
NM_005012 Start position: 501
GTCAGTCAGTGCTGAATTA(配列番号:11)
NM_005012 Start position: 1950
GACGGAATTTCAACAAGAA(配列番号:12)
NM_005012 Start position: 2270
GAGAGCAACTTCATGTAAA(配列番号:13)
NM_005012 Start position: 1163
TGGAGAATGTCCTGTGTCA(配列番号:14)
NM_005012 Start position: 2400
CAAATTCTCTTCTGATTCA(配列番号:15)
NM_005012 Start position: 2647
GAGGGACTCTCAAGTCACA(配列番号:16)
NM_005012 Start position: 2921
CTCCCAGAGTGATTCAGCA(配列番号:17)
NM_005012 Start position: 520
GTGCCTACCTCATCATGGA(配列番号:18)
NM_005012 Start position: 1654
GCTTTACTCTTCTTCTTCA(配列番号:19)
NM_005012 Start position: 1033
TCCAGTCACTTATCTGATA(配列番号:20)
NM_005012 Start position: 956
CCGTCTATATGGAGTCTTT(配列番号:21)
NM_005012 Start position: 658
CCCACCATCCGCTGGTTCA(配列番号:22)
NM_005012 Start position: 1082
GCCACTATGCCTTCCCGTA(配列番号:23)
NM_005012 Start position: 2865
CCCAATACCTCCTGGATAT(配列番号:24)
NM_005012 Start position: 1140
GTGTCGCGATGAATGTGAA(配列番号:25)
NM_005012 Start position: 1038
TCACTTATCTGATAAGTGT(配列番号:26)
NM_005012 Start position: 2851
CCCATCAATGGATACCCAA(配列番号:27)
NM_005012 Start position: 2729
CAGTGAGTAATCTCAGTAA(配列番号:28)
NM_005012 Start position: 1772
CATATAAACCCAAGAGCAA(配列番号:29)
NM_005012 Start position: 785
TCCAGTGCGTGGCAACAAA(配列番号:30)
NM_005012 Start position: 2554
CCCAGAATGTACAGCCTCA(配列番号:31)
NM_005012 Start position: 1836
GGGTGAGTGTGCCTTTGGA(配列番号:32)
NM_005012 Start position: 545
CAAGTGAACTCAACAAAGA(配列番号:33)
NM_005012 Start position: 740
CTCGGCTGCGGATTAGAAA(配列番号:34)
NM_005012 Start position: 636
CAAAGTCTCTGGGAATCCA(配列番号:35)
NM_005012 Start position: 3181
CACACCGAATCTATGATTT(配列番号:36)
NM_005012 Start position: 1676
GCGTCTGTCGGAATAACCA(配列番号:37)
NM_005012 Start position: 2474
CATATTATGGATTCAGTAA(配列番号:38)
NM_005012 Start position: 2993
CTGGCCATGTGACTAGCTT(配列番号:39)
NM_005012 Start position: 706
CGGAGGCTCTCCTTTCGGT(配列番号:40)
NM_005012 Start position: 918
CAGAGGGATTGCATGTGCA(配列番号:41)
NM_005012 Start position: 2874
TCCTGGATATGCAGCGTTT(配列番号:42)
NM_005012 Start position: 1567
GCGTGCGATTCAAAGGATT(配列番号:43)
NM_005012 Start position: 1205
CAAATCCCATGATTCTGAT(配列番号:44)
NM_005012 Start position: 1211
CCATGATTCTGATGAGGCT(配列番号:45)
NM_005012 Start position: 781
TACTTCCAGTGCGTGGCAA(配列番号:46)
NM_005012 Start position: 2472
GCCATATTATGGATTCAGT(配列番号:47)
NM_005012 Start position: 2561
TGTACAGCCTCATGACAGA(配列番号:48)
NM_005012 Start position: 2398
GGCAAATTCTCTTCTGATT(配列番号:49)
NM_005012 Start position: 3055
CCACACATGTCAATTCCAA(配列番号:50)
NM_005012 Start position: 2841
GCGATTCATTCCCATCAAT(配列番号:51)
NM_005012 Start position: 1913
TCAAGACCTTGAAAGACTA(配列番号:52)
NM_005012 Start position: 1577
CAAAGGATTCCAAGGAGAA(配列番号:53)
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GGGAGGGACTCTCAAGTCA(配列番号:57)
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CAGATCACAGCTGCCTTCA(配列番号:205)
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CCTTCACTATGATTGGCAC(配列番号:244)
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ACCAGCGATTCATTCCCAT(配列番号:245)
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CTGCCAAACTGTGAAGATC(配列番号:246)
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CCGCCCTTCGTTTCCCAGA(配列番号:247)
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NM_005012 Start position: 1960
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TGCCCACCCAGAATGTACA(配列番号:250)
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TTTACTACCACACATGTCA(配列番号:255)
NM_005012 Start position: 2799
CCAGATTGCTGGTTTCATT(配列番号:256)
NM_005012 Start position: 3036
AGCAAATATTCCTTTACTA(配列番号:257)
NM_005012 Start position: 882
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NM_005012 Start position: 826
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TTCATTTGCGTCTGTCGGA(配列番号:260)
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TTCTAGGTGCCGTCACTCA(配列番号:261)
NM_005012 Start position: 1582
GATTCCAAGGAGAAGAATA(配列番号:262)
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NM_005012 Start position: 1706
CGGCACCAGTCCAGAGGCA(配列番号:264)
NM_005012 Start position: 1476
TTCCTACTGCCGCAACCCA(配列番号:265)
NM_005012 Start position: 3046
CCTTTACTACCACACATGT(配列番号:266)
NM_005012 Start position: 2612
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NM_005012 Start position: 2649
GGGACTCTCAAGTCACACA(配列番号:275)
NM_005012 Start position: 566
CTTACCTGACCCTCGATGA(配列番号:276)
NM_005012 Start position: 2856
CAATGGATACCCAATACCT(配列番号:277)
NM_005012 Start position: 2580
GTGCTGGAATGAGATTCCT(配列番号:278)
NM_005012 Start position: 1806
TCTTTCTGCTGTACGCTTT(配列番号:279)
NM_005012 Start position: 2704
CAGACAACCTCCCTCAGTG(配列番号:280)
NM_005012 Start position: 783
CTTCCAGTGCGTGGCAACA(配列番号:281)
NM_005012 Start position: 813
GGTGGTTTCTTCCACTGGA(配列番号:282)
NM_005012 Start position: 2751
CAGATATCCTAATTACATG(配列番号:283)
NM_005012 Start position: 1463
TGAATGGAGGCCATTCCTA(配列番号:284)
NM_005012 Start position: 2845
TTCATTCCCATCAATGGAT(配列番号:285)
NM_005012 Start position: 738
CTCTCGGCTGCGGATTAGA(配列番号:286)
NM_005012 Start position: 2264
TAATCGGAGAGCAACTTCA(配列番号:287)
NM_005012 Start position: 876
ATACTCAGATGAGTATGAA(配列番号:288)
NM_005012 Start position: 2383
GAAGCCATCATGTATGGCA(配列番号:289)
NM_005012 Start position: 3158
TAGGAGACGCCAATATTCA(配列番号:290)
NM_005012 Start position: 1027
GGCACTTCCAGTCACTTAT(配列番号:291)
NM_005012 Start position: 1649
CCATTGCTTTACTCTTCTT(配列番号:292)
NM_005012 Start position: 2810
GTTTCATTGGCCCGCCAAT(配列番号:293)
NM_005012 Start position: 1337
GTTATAACAGCACAGGTGT(配列番号:294)
NM_005012 Start position: 736
GGCTCTCGGCTGCGGATTA(配列番号:295)
NM_005012 Start position: 2605
AGACCAAGATTTAAAGATA(配列番号:296)
[Applied Biosystems.]
(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)
以下にHuman ROR1(NM_005012: target sequence)に対するセンス鎖のsiRNAを示す。
GGGAUCGCGCUCGCGGCAU(配列番号:297)
AGAGCUUUGCAGACGUCCC(配列番号:298)
GAGCCCGUGGAUGUUCUGC(配列番号:299)
UGCACCGGCCGCGCCGCCG(配列番号:300)
GAAACAGAGCUGUCAGUCA(配列番号:301)
ACAGAGCUGUCAGUCAGUG(配列番号:302)
UUAGUGCCUACCUCAUCAU(配列番号:303)
CAUCUCAAGUGAACUCAAC(配列番号:304)
GUGAACUCAACAAAGAUUC(配列番号:305)
CUCAACAAAGAUUCUUACC(配列番号:306)
CAAAGAUUCUUACCUGACC(配列番号:307)
AGAUUCUUACCUGACCCUC(配列番号:308)
CCAAUGAAUAACAUCACCA(配列番号:309)
UGAAUAACAUCACCACGUC(配列番号:310)
UAACAUCACCACGUCUCUG(配列番号:311)
CAUCACCACGUCUCUGGGC(配列番号:312)
CUGCACUGCAAAGUCUCUG(配列番号:313)
AGUCUCUGGGAAUCCACCU(配列番号:314)
UCCACCUCCCACCAUCCGC(配列番号:315)
AAAUGAUGCUCCUGUGGUC(配列番号:316)
AUGAUGCUCCUGUGGUCCA(配列番号:317)
ACCUCGACACCACAGACAC(配列番号:318)
CAAACGGCAAGGAGGUGGU(配列番号:319)
GGAGGUGGUUUCUUCCACU(配列番号:320)
GUUUGGCCCCCCUCCCACU(配列番号:321)
GUCCAGGAUACUCAGAUGA(配列番号:322)
GAAGAUGGAUUCUGUCAGC(配列番号:323)
GAUGGAUUCUGUCAGCCAU(配列番号:324)
GAUUUAUUGGCAACCGCAC(配列番号:325)
CCGCACCGUCUAUAUGGAG(配列番号:326)
GGGGAAAUAGAAAAUCAGA(配列番号:327)
AUAGAAAAUCAGAUCACAG(配列番号:328)
AAUCAGAUCACAGCUGCCU(配列番号:329)
UCAGAUCACAGCUGCCUUC(配列番号:330)
GUGUUCUCAGUUCGCCAUU(配列番号:331)
ACUUCAUCCGUCCCAAAGC(配列番号:332)
AGCCCCGUGACUUGUGUCG(配列番号:333)
UGUGAAAUCCUGGAGAAUG(配列番号:334)
AUCCUGGAGAAUGUCCUGU(配列番号:335)
UGUCCUGUGUCAAACAGAG(配列番号:336)
ACAGAGUACAUUUUUGCAA(配列番号:337)
GAUCAAAUCCCAUGAUUCU(配列番号:338)
AUCCCAUGAUUCUGAUGAG(配列番号:339)
ACUGCCAAACUGUGAAGAU(配列番号:340)
ACUGUGAAGAUCUCCCCCA(配列番号:341)
GAUCUCCCCCAGCCAGAGA(配列番号:342)
GCUGCGAACUGUAUCCGGA(配列番号:343)
CUGUAUCCGGAUUGGAAUU(配列番号:344)
UUCCCAUGGCAGAUCCUAU(配列番号:345)
AUAAAAAUCACAAGUGUUA(配列番号:346)
AAAUCACAAGUGUUAUAAC(配列番号:347)
AUCACAAGUGUUAUAACAG(配列番号:348)
GUGUUAUAACAGCACAGGU(配列番号:349)
CAGCACAGGUGUGGACUAC(配列番号:350)
AUCAGGGCGCCAGUGCCAG(配列番号:351)
UUCCCAGUAUCCCCACACA(配列番号:352)
UGGAGGCCAUUCCUACUGC(配列番号:353)
CCCAGGGAAUCAAAAGGAA(配列番号:354)
UCAAAAGGAAGCUCCCUGG(配列番号:355)
AAGGAAGCUCCCUGGUGCU(配列番号:356)
GGAAGCUCCCUGGUGCUUC(配列番号:357)
GCUCCCUGGUGCUUCACCU(配列番号:358)
AACUUUAAGUCUGAUCUGU(配列番号:359)
CUUUAAGUCUGAUCUGUGU(配列番号:360)
GUCUGAUCUGUGUGACAUC(配列番号:361)
AGGAUUCCAAGGAGAAGAA(配列番号:362)
GGAGAAGAAUAAAAUGGAA(配列番号:363)
GAAUAAAAUGGAAAUCCUG(配列番号:364)
UAAAAUGGAAAUCCUGUAC(配列番号:365)
AAUGGAAAUCCUGUACAUA(配列番号:366)
UGGAAAUCCUGUACAUACU(配列番号:367)
AUCCUGUACAUACUAGUGC(配列番号:368)
GUGUGGCCAUUCCCCUGGC(配列番号:369)
UAACCAGAAGUCAUCGUCG(配列番号:370)
CCAGAAGUCAUCGUCGGCA(配列番号:371)
GUCAUCGUCGGCACCAGUC(配列番号:372)
CCAAAACACGUCAGAGGUC(配列番号:373)
AACACGUCAGAGGUCAAAA(配列番号:374)
CACGUCAGAGGUCAAAAUG(配列番号:375)
AAUGUAGAGAUGUCAAUGC(配列番号:376)
UGUAGAGAUGUCAAUGCUG(配列番号:377)
UGCUGAAUGCAUAUAAACC(配列番号:378)
UGCAUAUAAACCCAAGAGC(配列番号:379)
ACCCAAGAGCAAGGCUAAA(配列番号:380)
GAGCAAGGCUAAAGAGCUA(配列番号:381)
GGCUAAAGAGCUACCUCUU(配列番号:382)
AGAGCUACCUCUUUCUGCU(配列番号:383)
GAAUUGGGUGAGUGUGCCU(配列番号:384)
UUGGGUGAGUGUGCCUUUG(配列番号:385)
AAAUCUAUAAAGGCCAUCU(配列番号:386)
AUCUAUAAAGGCCAUCUCU(配列番号:387)
AGGCCAUCUCUAUCUCCCA(配列番号:388)
GACCUUGAAAGACUAUAAC(配列番号:389)
AGACUAUAACAACCCCCAG(配列番号:390)
CAACCCCCAGCAAUGGACG(配列番号:391)
CCCCCAGCAAUGGACGGAA(配列番号:392)
UGGACGGAAUUUCAACAAG(配列番号:393)
UUUCAACAAGAAGCCUCCC(配列番号:394)
CAAGAAGCCUCCCUAAUGG(配列番号:395)
GAAGCCUCCCUAAUGGCAG(配列番号:396)
GCCUCCCUAAUGGCAGAAC(配列番号:397)
UGGCAGAACUGCACCACCC(配列番号:398)
CUGCACCACCCCAAUAUUG(配列番号:399)
UAUUGUCUGCCUUCUAGGU(配列番号:400)
CAACCUGUGUGCAUGCUUU(配列番号:401)
CCUGUGUGCAUGCUUUUUG(配列番号:402)
UCAGGGGGAUCUCCAUGAG(配列番号:403)
GAUGGGACUGUGAAAUCCA(配列番号:404)
AUCCAGCCUGGACCACGGA(配列番号:405)
UUCAGAUUGCAGCUGGCAU(配列番号:406)
UACCUGUCUAGUCACUUCU(配列番号:407)
GGACCUUGCAGCUCGCAAU(配列番号:408)
UAUUUUAAUCGGAGAGCAA(配列番号:409)
UCGGAGAGCAACUUCAUGU(配列番号:410)
CUUCAUGUAAAGAUUUCAG(配列番号:411)
AGAUUUCAGACUUGGGGCU(配列番号:412)
AUUUACUCCGCUGAUUACU(配列番号:413)
GUCCUUGCUGCCCAUUCGC(配列番号:414)
GCCAUCAUGUAUGGCAAAU(配列番号:415)
AUUCUCUUCUGAUUCAGAU(配列番号:416)
CCAGGAAGUGAUUGAGAUG(配列番号:417)
GUGAUUGAGAUGGUGAGAA(配列番号:418)
AACGGCAGCUCUUACCAUG(配列番号:419)
CGGCAGCUCUUACCAUGCU(配列番号:420)
GACUGCCCACCCAGAAUGU(配列番号:421)
UGUACAGCCUCAUGACAGA(配列番号:422)
UGAGAUUCCUUCUAGGAGA(配列番号:423)
GAUUUAAAGAUAUUCACGU(配列番号:424)
AGAUAUUCACGUCCGGCUU(配列番号:425)
GUCACACAAGCUCUACUAC(配列番号:426)
GCUCUACUACUCCUUCAGG(配列番号:427)
AUGCCACCACACAGACAAC(配列番号:428)
CCUCCCUCAGUGCCAGCCC(配列番号:429)
UCUCAGUAACCCCAGAUAU(配列番号:430)
CCCCAGAUAUCCUAAUUAC(配列番号:431)
UUACAUGUUCCCGAGCCAG(配列番号:432)
UACCUCAGAACCAGCGAUU(配列番号:433)
CCAGCGAUUCAUUCCCAUC(配列番号:434)
UGGAUACCCAAUACCUCCU(配列番号:435)
UACCUCCUGGAUAUGCAGC(配列番号:436)
CAGGUCCUCCCAGAGUGAU(配列番号:437)
GAGUCGGUCCCCAAGCAGU(配列番号:438)
GCAGUGCCAGUGGGUCGAC(配列番号:439)
UCAGGAAGCAAAUAUUCCU(配列番号:440)
GCAAAUAUUCCUUUACUAC(配列番号:441)
AUAUUCCUUUACUACCACA(配列番号:442)
UUCCAAAUCAUCCUGGUGG(配列番号:443)
AUCAUCCUGGUGGAAUGGG(配列番号:444)
UGGGUAUCACCGUUUUUGG(配列番号:445)
CAAAUCUCAAAAACCCUAC(配列番号:446)
AUCUCAAAAACCCUACAAA(配列番号:447)
AAACCCUACAAAAUUGACU(配列番号:448)
ACCCUACAAAAUUGACUCA(配列番号:449)
AAUUGACUCAAAGCAAGCA(配列番号:450)
UUGACUCAAAGCAAGCAUC(配列番号:451)
AGCAAGCAUCUUUACUAGG(配列番号:452)
GCAUCUUUACUAGGAGACG(配列番号:453)
UAUUCAUGGACACACCGAA(配列番号:454)
UCUAUGAUUUCUGCAGAAC(配列番号:455)
CUGUAAAAUGCACAACUUU(配列番号:456)
AAUGCACAACUUUUGUAAA(配列番号:457)
UGCACAACUUUUGUAAAUG(配列番号:458)
CUUUUGUAAAUGUGGUAUA(配列番号:459)
AUGUGGUAUACAGGACAAA(配列番号:460)
ACUAGACGGCCGUAGAAAA(配列番号:461)
AAGAUUUAUAUUCAAAUGU(配列番号:462)
GAUUUAUAUUCAAAUGUUU(配列番号:463)
AUGUUUUUAUUAAAGUAAG(配列番号:464)
AGUAAGGUUCUCAUUUAGC(配列番号:465)
GGUUCUCAUUUAGCAGACA(配列番号:466)
CAAGUACCUUCUGUGAAGU(配列番号:467)
GUACCUUCUGUGAAGUUUC(配列番号:468)
GUUUCACUGUGUCUUACCA(配列番号:469)
GCAGGACAGACACUCGGCC(配列番号:470)
Human ROR1 siRNAの肺腺癌細胞における発現抑制効果の確認
Human ROR1 RNA干渉法を行うために、ROR1 siRNAを作製した。siROR1-#1およびsiROR1-#2については、RNAi Central (siRNA design) Database[software] (siRNA & shRNAプロトコール: http://katahdin.cshl.org:9331/homepage/portal/scripts/main2.pl)により、同定した293個のHuman ROR1 siRNAのうち、上位にランキングされてきたものを採用した。デザインしたsiRNA-#1およびsiRNA-#2は、SIGMA GENOSYS社によって合成を行った。siROR1-#3(配列番号:471)については、human ROR1のターゲットsiRNAであろうと思われるHP GenomeWide siRNAをQIAGEN社から購入した。また、同様にsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNA (scramble; All Stars Negative Control siRNA)としてQIAGEN社から購入した。ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、および子宮頚癌細胞株HeLaについて、それぞれのROR1 siRNA (#1、#2、#3)およびscrambleを最終濃度40nMで各々の細胞株にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、72時間後にSDSサンプルバッファーを用いてライセートを調整した。その時、何も処理を施していないサンプル(non-transfected)も調整した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)を使って、ウェスタンブロッティングを行った。
Human ROR1 siRNA (#1, #2, #3)を使って、それぞれの発現抑制の効果をタンパク質レベルで確かめるためにウエスタンブロッティング法によりROR1の発現を調べた結果、siROR1-#1、siROR1-#2、siROR1-#3いずれにおいてもROR1の発現低下を認めた。
また、同様にsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNA (scramble)で処理した場合は、ROR1の発現抑制を示さないことが分かった。
今回使用した細胞は、肺腺癌由来の細胞としてNCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、子宮頚癌由来の細胞としてHeLaであり、それぞれにおいてROR1の発現が検出される細胞株である(non-transfected)。
この結果から、作製した3つのROR1 siRNAは、いずれにおいてもROR1の発現抑制の効果を示し、また、各々の細胞で特異的にROR1の発現を抑制することが判明した。
肺腺癌細胞におけるROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNA干渉法の実施)、MTTアッセイ
TTF-1、ROR1の発現がともに認められる肺腺癌細胞株NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、およびTTF-1、ROR1の発現がともに認められない肺腺癌細胞株NCI-H23、A549、また、子宮頚癌細胞株HeLaについて、1×105 cellsで6 well dishに種々の細胞を撒き、scrambleおよび各々のROR1 siRNA (#1、#2、#3)を最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。また、このとき、何も処理を施していない(non-transfected)コントロール群も設定した。トランスフェクション後、120時間後に、Cell Proliferation Assay System (生化学バイオビジネス社)に基づき、TetraColor ONEを培養メディウムの1/10量加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、吸光度測定器(ARVOmx-fa system; PerkinElmer社)を用いて、吸光度450nmおよび630nmを測定し、アッセイ値(450nm-630nm)-バックグラウンド(450nm-630nm)で測定値を算出し、グラフ化した。
ROR1の発現抑制による肺腺癌細胞の生細胞の割合を調べるために、それぞれの細胞 (NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、NCI-H23、A549)にROR1 siRNA (#1, #2, #3)をトランスフェクションし、MTT法により、生細胞の割合を測定した結果、ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1)において、それぞれのROR1 siRNAで顕著な生細胞の割合の低下が認められた。これとは対照的に、ROR1の発現が認められない肺腺癌細胞株(NCI-H23、A549)では、ROR1 siRNAの影響は認められなかった。
non-transfectedは、何も処理を施していないコントロールであり、また、scrambleはsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNAとして処理したものであり、どちらにおいても生細胞の割合に変化が見られないことが分かった。
また、子宮頚癌由来の細胞(HeLa)については、ROR1 siRNAにより、細胞生存率の低下が報告されており(MacKeigan JP, et al., Nat.Cell Biol. 2005)、本発明者らの作製した各々のROR1 siRNAにおいても同様の効果を得ることが分かった。
この結果から、ROR1は(TTF-1によって調節され)発現が認められる肺腺癌の生存に関与する非常に重要な制御因子であることが判明した。
肺腺癌細胞におけるROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNA干渉法の実施)、生細胞数の測定
TTF-1、ROR1の発現がともに認められる肺腺癌細胞株NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、およびTTF-1、ROR1の発現がともに認められない肺腺癌細胞株NCI-H23、A549、また、子宮頚癌細胞株HeLaについて、1×105 cellsで6 well dishに種々の細胞を撒き、scrambleおよび各々のROR1 siRNA (#1、#2、#3)を最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。また、このとき、何も処理を施していない(non-transfected)コントロール群も設定した。トランスフェクション後、120時間後に、細胞剥離のためのトリプシン処理を行い、non-transfected、scramble、siROR1-1、siROR1-2、siROR1-3について、それぞれの細胞ごとに計測盤を用いてカウンターで測定し、グラフ化した。
ROR1の発現抑制による肺腺癌細胞の生細胞数を調べるために、それぞれの細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、NCI-H23、A549)にROR1 siRNA (#1, #2, #3)をトランスフェクションし、細胞数を測定することにより、細胞数の変動を調べた結果、ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1)において、それぞれのROR1 siRNAで顕著な細胞数の減少が認められた。これとは対照的に、ROR1の発現が認められない肺腺癌細胞株(NCI-H23、A549)では、ROR1 siRNAの影響は認められなかった(non-transfectedやscrambleと非常に類似した細胞数の変化を示している)。
また、子宮頚癌由来の細胞(HeLa)についても同様にROR1 siRNAによって、細胞数の減少を認めた。
実施例10と同様に、ROR1は発現が認められる肺腺癌の生存に関与する非常に重要な制御因子であることが生細胞数の減少からも確認できた。
肺腺癌細胞におけるROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNA干渉法の実施)、TUNEL法(アポトーシス・細胞死測定法)
TTF-1、ROR1の発現がともに認められる肺腺癌細胞株NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、およびTTF-1、ROR1の発現がともに認められない肺腺癌細胞株NCI-H23、A549、また、子宮頚癌細胞株HeLaについて、1×105 cellsでカバーガラスの入った6 well dishに種々の細胞を撒き、scrambleおよび各々のROR1 siRNA (#1、#2、#3)を最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。また、このとき、何も処理を施していない(non-transfected)コントロール群も設定した。トランスフェクション後、72時間後に、培養メディウムを取り除き、細胞固定のために、3.7%ホルマリン溶液に10分間室温で反応させ、その後、PBSで洗浄後、試料の浸透化のために、0.1%トライトンX-100溶液に10分間室温で反応させ、またPBSで洗浄を行った。その後、PBSで溶かした1%BSA溶液でブロッキングを行った。In situ Cell Detection kit, Fluorescein (ロッシュ・ダイアグノスティックス社)に基づき、TUNEL反応液による標識・細胞染色を1時間室温で行った。PBSで洗浄後、細胞核を染色するために、核蛍光色素であるPI(Propidium Iodide; SIGMA ALDRICH社)をPBSで最終濃度1 μg/mlで溶解し30分室温で反応させた。その後、PBSで洗浄した後、免疫組織化学染色試薬Perma Fluor Aquaous Mounting Medium(Thermo Shandon社)を用いて、スライドガラスに固定し、それぞれプレパラートを作製した。その後、共焦点レーザー顕微鏡(μRadiance)にて観察を行い、染色されている細胞についてカウンターを用いて測定し、割合を算出し、グラフ化した。
ROR1の発現抑制による肺腺癌細胞のアポトーシスの細胞の割合を調べるために、それぞれの細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、NCI-H23、A549)にROR1 siRNA (#1, #2, #3)をトランスフェクションし、アポトーシスの細胞をTUNEL法によって測定することにより、細胞死の割合を調べた結果、ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1)において、それぞれのROR1 siRNAで顕著なアポトーシスの細胞の増加、細胞死の割合の上昇が認められた。これとは対照的に、ROR1の発現が認められない肺腺癌細胞株(NCI-H23、A549)では、ROR1 siRNAの影響は認められなかった(non-transfectedやscrambleでは、アポトーシスが引き起こされていない)。
また、子宮頚癌由来の細胞(HeLa)についても同様にROR1 siRNAによって、アポトーシスの細胞の割合の増加を認めた。
実施例10および実施例11と同様に、ROR1は発現が認められる肺腺癌の生存に関与する非常に重要な制御因子であることがアポトーシスの細胞の増加からも確認できた。
肺腺癌細胞におけるROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNA干渉法の実施)、画像の取得
TTF-1、ROR1の発現がともに認められる肺腺癌細胞株NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、およびTTF-1、ROR1の発現がともに認められない肺腺癌細胞株NCI-H23、A549、また、子宮頚癌細胞株HeLaについて、1×105 cellsで6 well dishに種々の細胞を撒き、scrambleおよび各々のROR1 siRNA (#1、#2、#3)を最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。また、このとき、何も処理を施していない(non-transfected)コントロール群も設定した。トランスフェクション後、120時間後に、細胞の状態を観察するために、オールインワンデジタル顕微鏡(Nikon社)により、画像を取得した。
実施例10と同様に、ROR1の発現抑制による肺腺癌細胞の生細胞の割合を調べるために、それぞれの細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1、NCI-H23、A549)にROR1 siRNA (#1, #2, #3)をトランスフェクションし、その時の細胞の状態を観察した結果、non-transfectedやscrambleと比較して、ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株(NCI-H358、SK-LC-5、NCI-H1975、SK-LU-1)において、それぞれのROR1 siRNAで顕著な生細胞の割合の低下、生細胞数の低下を観察した。
また、ROR1の発現が認められない肺腺癌細胞株(NCI-H23、A549)では、ROR1 siRNAの影響は認められず、non-transfectedやscrambleと同様の結果であった。
子宮頚癌由来の細胞(HeLa)についても、同様にROR1 siRNAによって、生細胞の割合の低下、生細胞数の減少を観察した。
実施例10−12と同様に、ROR1は発現が認められる肺腺癌の生存に関与する非常に重要な制御因子であることが生細胞数低下の観察からも確認できた。
Human ROR1 siRNAの様々な癌細胞における発現抑制効果の確認
Human ROR1 RNA干渉法を行うために、独自にデザイン(RNAi Central: siRNA design)したsiROR1-#2を使用した(SIGMA GENOSYS社により合成)。同様にsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNA (scramble; All Stars Negative Control siRNA)をQIAGEN社から購入した。中皮腫細胞として、NCI-H28(中皮腫細胞)、NCI-H2052(中皮腫細胞)、NCI-H2452(中皮腫細胞)、また、膵臓癌細胞として、MIA PaCa-2(膵臓癌細胞)、SW-1990(膵臓癌細胞)、さらに、骨肉腫細胞として、U-2 OS(骨肉腫細胞)について、ROR1 siRNA (#2)およびscrambleを最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、72時間後にSDSサンプルバッファーを用いてライセートを調整した。その時、何も処理を施していないサンプル(non-transfected)も調整した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)を使って、ウェスタンブロッティングを行った。
Human ROR1 siRNA (#2)の発現抑制の効果をタンパク質レベルで確かめるためにウエスタンブロッティング法によりROR1の発現を調べた結果、様々な癌由来の細胞において特異的なROR1の発現低下を認めた。
また、同様にsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNA (scramble)で処理した場合は、ROR1の発現抑制を示さないことが分かった。
今回使用した細胞は、中皮腫由来の細胞としてNCI-H28、NCI-H2052、NCI-H2452、膵臓癌由来の細胞としてMIA PaCa-2、SW-1990、骨肉腫由来の細胞としてU-2 OSであり、それぞれにおいてROR1の発現が検出される細胞株である(non-transfected)。
この結果から、独自にデザインしたROR1 siRNA(#2)は、ROR1の発現抑制の効果を示し、また、様々な癌由来の細胞において特異的にROR1の発現を抑制することが判明した。
様々な癌細胞におけるROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNA干渉法の実施)、MTTアッセイ
ROR1の発現が認められる中皮腫細胞NCI-H28、NCI-H2052、TTFNCI-H2452、また膵臓癌細胞MIA PaCa-2、SW-1990、骨肉腫細胞U-2 OS-1について、1×105 cellsで6 well dishに種々の細胞を撒き、scrambleおよびROR1 siRNA (siRNA-#2)を最終濃度40nMで各々の細胞にRNAiMAX (invitrogen社)を使ってトランスフェクションを行った。また、このとき、何も処理を施していない(non-transfected)コントロール群も設定した。トランスフェクション後、120時間後に、Cell Proliferation Assay System (生化学バイオビジネス社)に基づき、TetraColor ONEを培養メディウムの1/10量加え、1時間37℃でインキュベーションした。その後、吸光度測定器(ARVOmx-fa system; PerkinElmer社)を用いて、吸光度450nmおよび630nmを測定し、アッセイ値(450nm-630nm)-バックグラウンド(450nm-630nm)で測定値を算出し、グラフ化した。
ROR1の発現抑制による様々な癌由来の細胞での生細胞の割合を調べるために、それぞれの細胞 (中皮腫細胞:NCI-H28、NCI-H2052、NCI-H2452、膵臓癌細胞:MIA PaCa-2、SW-1990、骨肉腫細胞:U-2 OS)にROR1 siRNA (siRNA-#2)をトランスフェクションし、MTT法により、生細胞の割合を測定した結果、ROR1の発現が認められる各々の癌由来の細胞において、ROR1 siRNAで生細胞の割合の低下が認められた。また、今回本発明者らがデザインしたROR1 siRNA(siROR1-#2)は、顕著な生細胞の割合の低下を引き起こすことが判明した。
non-transfectedは、何も処理を施していないコントロールであり、また、scrambleはsiRNAの効果を示さないネガティブコントロールsiRNAとして処理したものであり、どちらにおいても生細胞の割合に変化が見られないことが分かった。
この結果から、ROR1の発現は、様々な癌細胞の生存に関与する非常に重要な制御因子であることが判明した。さらに、ROR1の発現抑制(siRNAを用いたRNAi干渉)により、これらの癌由来の細胞株が死滅することから、肺癌や骨肉腫、極めて治療が困難である中皮腫や膵臓癌に対して臨床応用としてのROR1をターゲットとした治療法への応用が期待でき、RNAi干渉法を用いた新規癌治療システムの開発等が考えられる。
肺腺癌細胞でのROR1発現抑制によるAKT及びp38のリン酸化反応の影響
ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株NCI-H1975を用いて、1×105 cellsで6 well dishに細胞を撒き、scramble siRNA及びROR1 siRNA(#2)を最終濃度40nMで、トランスフェクション試薬RNAiMAX(invitrogen)を使って、トランスフェクションを行った。トランスフェクション後、48時間後にSDSサンプルバッファーを用いて、ライセートを調製した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)、抗リン酸化AKT(セリン473)抗体(Cell Signaling社)、抗AKT抗体(Cell Signaling社)、抗リン酸化p38(スレオニン180及びチロシン182)抗体(Cell Signaling社)、抗p38抗体(Cell Signaling社)、抗α-tubulin抗体(SIGMA)を使って、ウエスタンブロッティング(WB)を行った。
肺腺癌細胞株を用いて、ROR1の発現抑制によるAKT及びp38のリン酸化反応の影響を調べるために、NCI-H1975でのROR1の発現抑制を行った。その結果、ROR1発現抑制下において、コントロール(対照群)として用いたscramble siRNAと比較して、AKTのリン酸化反応(セリン473)の有意な低下を認めた。また、p38のリン酸化反応(スレオニン180及びチロシン182)の有意な上昇を認めた。
以上の結果から、癌細胞株におけるROR1の発現抑制は、その癌細胞にとって最も重要な生存シグナルであるAKTのリン酸化反応の低下を引き起こし、さらには、細胞死の最も重要なアポトーシスシグナルの指標であるp38のリン酸化反応の上昇を引き起こすことが判明した。この結果は、細胞増殖阻害剤としての核酸組成物(ROR1 siRNA)の、癌を対象とした治療法としての有用性を示唆する。
ROR1恒常的発現細胞株におけるc-myc、cyclinD1、c-junの発現上昇
NIH3T3細胞株(マウス胚由来の線維芽細胞株)及び、MSTO細胞株(ヒト中皮腫由来の細胞株)を用いて、ROR1恒常的発現細胞株を作製した。なお、両細胞株とも、TTF-1、ROR1の内因性の発現は認められない。NIH3T3細胞株及びMSTO細胞株を用いて、ROR1(CMVプロモーター搭載)あるいは、空ベクター(VC)を強制発現させた(10 cm dish)。ROR1、空ベクターを導入24時間後に、それぞれの細胞株に対してpuromycinでselectionを行った(NIH3T3: 6μg/ml、MSTO: 1μg/ml)。selectionの後(NIH3T3: 6days、MSTO: 3days)、各々の細胞塊(コロニー)の形成を確認し、それぞれのコロニーを増殖・成長させることで、ROR1を恒常的に発現した純粋な細胞株を樹立した。図に示してある細胞株は、NIH3T3細胞株として、VC#8及び、ROR1#24であり、MSTO細胞株として、VC#1、VC#2、ROR1#1、ROR1#2である。なお、NIH3T3細胞株におけるmockとは、トランスフェクションを行う前のNIH3T3細胞株そのものである。次に、これらの細胞株を使って、SDSサンプルバッファーにより、ライセートを調製した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)、抗c-myc抗体(SantaCruz社)、抗cyclinD1抗体(BD Bioscience社)、抗c-jun抗体(Calbiochem社)、抗α-tubulin抗体(SIGMA)を使って、ウエスタンブロッティング(WB)を行った。
TTF-1及びROR1をともに発現していない細胞株(NIH3T3、MSTO)を用いて、ROR1恒常的発現細胞株を樹立した。これらの細胞株を用いて、癌関連タンパク質の発現を調べたところ、両細胞株において、ベクターコントロール(VC)細胞株と比較して、ROR1の発現特異的に、代表的な癌関連タンパク質であるc-mycやcyclinD1、c-junの発現上昇が認められた。
以上の結果から、ROR1遺伝子は、特異的に癌関連タンパク質であるc-mycやcyclinD1、c-junを調節しており、ROR1の特異的な発現は、これらのタンパク質の発現量を増加させることが判明した。この結果から、癌で特異的に発現しているROR1は、癌遺伝子である可能性が高く、c-mycやcyclinD1、c-junを調節していると考えられる。また、本発明が、ROR1遺伝子をターゲットとしていることから、癌におけるROR1を臨床的治療の対象とすることが適切であることを示唆するものである。
肺腺癌細胞でのROR1発現抑制によるc-myc、cyclinD1、c-junの発現低下
ROR1の発現が認められる肺腺癌細胞株NCI-H1975を用いて、1×105 cellsで6 well dishに細胞を撒き、scramble siRNA及びROR1 siRNA(#2)を最終濃度40nMで、トランスフェクション試薬RNAiMAX(invitrogen)を使って、トランスフェクションを行った。トランスフェクション後、48時間後にSDSサンプルバッファーを用いて、ライセートを調製した。SDS-PAGEに引き続き、抗ROR1抗体(Cell Signaling社)、抗c-myc抗体(SantaCruz社)、抗cyclinD1抗体(BD Bioscience社)、抗c-jun抗体(Calbiochem社)、抗α-tubulin抗体(SIGMA)を使って、ウエスタンブロッティング(WB)を行った。
肺腺癌細胞株を用いて、ROR1の発現抑制における癌関連タンパク質の影響を調べるために、NCI-H1975でのROR1の発現抑制を行った。その結果、ROR1発現抑制下において、コントロール(対照群)として用いたscramble siRNAと比較して、主要な癌関連タンパク質である、c-mycやcyclinD1、c-junの有意な発現低下を認めた。
以上の結果から、癌細胞株におけるROR1の発現は、特異的に、c-mycやcyclinD1、c-junに代表される癌関連タンパク質の発現を調節していることが分かり、実施例17で行った、ROR1恒常的発現細胞株を用いた実験の結果を支持するものである。さらに、このROR1 siRNA(#2)により、癌細胞株における主要な癌関連タンパク質(c-myc、cyclinD1、c-jun)の有意な発現低下を示したことから、本発明の意図とする細胞増殖阻害剤としての核酸組成物(ROR1 siRNA)の、癌の治療法としての有用性を強く示唆する結果である。
ROR1恒常的発現細胞株での少数細胞集団からの増殖能・コロニー形成能の亢進
実施例17で作製したROR1の恒常的発現細胞株であるMSTO細胞株を使って、ROR1の癌特性としての増殖能に対する評価を、コロニーフォーメーションアッセイ及びMTT法(生細胞の測定)を用いて行った。ROR1恒常的発現細胞株であるMSTO細胞株(VC#1、VC#2、VC#5、ROR1#1、ROR1#2、ROR1#5)を10 cm dishにそれぞれ、1×103 cellずつ撒き、経時的な細胞数の変化とコロニー形成能を2種類の方法で、評価した。まず、各々の細胞を撒いてから、0日目、11日目、18日目、21日目において、Cell Proliferation Assay System(生化学バイオビジネス社)に基づき、TetraColor ONEを培養メディウムの1/10量加え、1時間37℃でインキュベーションを行った。その後、吸光度測定器(ARVOmx-fa system; PerkinElmer社)を用いて、吸光度450nm及び630nmを測定し、アッセイ値(450nm-630nm)-バックグラウンド(450nm-630nm)で測定値を算出し、Microsoft Excelを用いて、グラフ化した。また、各々の細胞を撒いてから、21日目において、全ての培養メディウムを抜き取り、ギムザ染色液(MERCK社)を用いて、1時間室温で作用させたのち、水道水で2〜3回洗浄したのち、乾燥させることで、コロニー(細胞塊)を染色し、コロニー形成能として評価した。
ROR1恒常的発現悪性中皮腫細胞株(MSTO細胞株)を用いて、ROR1の癌特性としての生理的機能、増殖能を調べた。その結果、測定開始時の細胞数として、1×103 cellという少ない細胞数から開始したところ、18日後、あるいは21日後において、ベクターコントロール(VC#1、VC#2、VC#5)と比べて、有意にROR1恒常的発現細胞株(ROR1#1、ROR1#2、ROR1#5)の細胞数の増加、増殖能の亢進を認めた(21日後の場合、約4.5倍[MTTアッセイ])。また、21日後のコロニーフォーメーションアッセイの結果により、有意に、ROR1恒常的発現細胞株においてコロニー形成能が亢進していることが判明した。
ROR1恒常的発現悪性中皮腫細胞株を用いた実験から、ROR1の発現は、癌特性の1つである増殖能に関与していることが分かり、また、癌として最も重要視される、"少ないポピュレーション(細胞集団)からの増殖能"を獲得することが分かった。このことから、このような特性を有するROR1遺伝子をターゲットとすることが、癌を治療する上で非常に重要であり、このROR1遺伝子を標的とした核酸組成物(ROR1 siRNA)が治療法として有用と考えられる。
ROR1恒常的発現細胞株での足場非依存性増殖能(anchorage-independent growth)の亢進
実施例17で作製したROR1の恒常的発現細胞株である悪性中皮腫細胞株MSTO細胞株を使って、ROR1の癌特性としての足場非依存性増殖能に対する評価を、Soft agar assayを用いて行った。まず、Soft agar assayを行うために、100mLの滅菌水に対して1gのAgar Noble(BD Bioscience社)を溶解し、1% agar溶液を作製し、45℃で浴槽にて保温した。2×RPMI medium(SIGMA社)を作製し、1% agar溶液と混ぜ合わせることで、soft agar溶液とし、6 cm dishに適量加えた。そこに、ROR1の恒常的発現細胞株であるMSTO細胞株(VC#1、VC#5、ROR1#2、ROR1#5)をトリプシン処理にて、1つ1つの細胞(single cell)にさせた後、3×104 cellずつ、細胞を撒き、37℃で培養した。2週間後、ギムザ染色液(MERCK社)を用いて、室温で一昼夜作用させ、コロニー(細胞塊)を染色し、コロニー数の測定を行った。
ROR1恒常的発現悪性中皮腫細胞株(MSTO細胞株)を用いて、ROR1の癌特性としての生理的機能、足場非依存性増殖能を調べた。その結果、14日後において、ベクターコントロール(VC#1、VC#5)と比べて、有意にROR1恒常的発現細胞株(ROR1#2、ROR1#5)のコロニー数の増加、つまりは、足場非依存性増殖能の亢進を認めた(約6倍)。
ROR1恒常的発現細胞株を用いた実験から、ROR1の発現は、癌特性の1つである足場非依存性増殖能に関与していることが判明した。このことから、実施例19の結果と同様に、このような特性を有するROR1遺伝子をターゲットとすることが、癌を治療する上で非常に重要であり、このROR1遺伝子を標的とした核酸組成物(ROR1 siRNA)が有用な治療法の開発につながると考えられる。
Claims (9)
- ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸を含む、細胞の増殖を阻害するための組成物。
- ROR1遺伝子の発現を阻害する核酸が、siRNA、siRNAを発現するベクター、アンチセンスRNA、アンチセンスRNAを発現するベクター、アンチセンスDNA、リボザイム、又は、リボザイムを発現するベクターである、請求項1に記載の組成物。
- siRNAが、ROR1遺伝子のmRNAのいずれかの領域のセンス鎖RNA及び該センス鎖RNAのアンチセンス鎖RNAを有するsiRNAである、請求項2に記載の組成物。
- 細胞が癌細胞である、請求項1に記載の組成物。
- 細胞が、肺癌細胞、肺腺癌細胞、中皮腫細胞、膵臓癌細胞、または骨肉腫細胞である、請求項1に記載の組成物。
- 以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1タンパク質と試験化合物を接触させる工程、
(2)該ROR1タンパク質と試験化合物の結合レベルを測定する工程、及び、
(3)該ROR1タンパク質に結合する試験化合物を選択する工程。 - 以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子を発現する細胞又は細胞抽出液と試験化合物を接触させる工程、
(2)ROR1遺伝子の発現レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下におけるROR1遺伝子の発現レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。 - 以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する候補化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞又は細胞抽出液と試験化合物を接触させる工程、
(2)レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下におけるレポーター遺伝子の発現レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。 - 以下の(1)から(3)に記載の工程を含む、細胞増殖阻害活性を有する化合物のスクリーニング方法;
(1)ROR1遺伝子を発現する細胞と試験化合物を接触させる工程、
(2)細胞の増殖レベルを測定する工程、及び、
(3)試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下における細胞の増殖レベルを減少させる試験化合物を選択する工程。
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