JPWO2009157219A1 - Dnaコンジュゲートを利用した核酸の電気化学的検出法 - Google Patents
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Abstract
【課題】DNAの固定化等を必要としない、より簡便で、かつ精度の高い遺伝子検出技術を提供すること。【解決手段】本発明は、シクロデキストリン等のホスト化合物を一端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含む、修飾オリゴヌクレオチドを提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、DNAコンジュゲートを利用した核酸の電気化学的検出法に関する。
以前に本発明者はDNA末端にFcを修飾したコンジュゲートを合成し、これを用いて電気化学検出器を備えたHPLCを利用した超高感度遺伝子検出法を提案している(非特許文献1:S. Takenaka, Y. Uto, H. Kondo, T. Ihara, M. Takagi, Anal. Biochem., 1994, vol. 218, pp. 436-443; 非特許文献2:T. Ihara, Y. Maruo, S. Takenaka, M. Takagi, Nucleic Acids Res., 1996, vol. 24, pp. 4273-4280)。さらに同コンジュゲートと電極固定化DNAとを利用した遺伝子センサーも世界に先駆けて発表している(非特許文献3:T. Ihara, M. Nakayama, M. Murata, K. Nakano, M. Maeda, Chem. Commun., 1997, vol. 1997, pp. 1609-1610; 非特許文献4:M. Nakayama, T. Ihara, K. Nakano, M. Maeda, Talanta, 2002, vol. 56, pp. 857-866)。これらの研究に続いて世界中で遺伝子の電気化学的検出法が提案されたが、いずれもハイブリダイゼーションによりその電気化学的シグナルは変化しないためにターゲットDNAの一部を固相単体上に固定化した系を利用しており、検出する前にフリー、あるいは非特異的に結合したコンジュゲートを充分に洗浄、除去する必要があった。
DNAがハイブリダイズすることでシグナルが変化する系として、Fc-DNAコンジュゲートを電極上に固定化したものが報告されている(例えば、非特許文献5:C. E. Immoos, S. J. Lee, M. W. Grinstaff, J. Am. Chem. Soc., 2004, vol. 126, pp. 10814-10815)。これは、ターゲットDNAとのハイブリダイゼーションにより電極上に固定化されたコンジュゲートの構造が変化し(hairpin → duplex)、それに伴ってFcと電極との距離が変化することを利用して電流値を変化させる仕組みに基づいている。しかしながら、やはりこの系もDNAの固定化を必要とする。
本発明者らの研究を含め(例えば、非特許文献6:S. Takenaka, T. Ihara, M. Hamano, M. Takagi, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1990, vol. 1990, pp. 1271-1273)、DNAとの結合により電気化学的シグナルが変化する小分子はこれまでにも幾つか知られている。しかしながら、インターカレータなどのこれら小分子は塩基配列認識能がほとんどないために、現在必要とされている一塩基レベルの個人差(SNP)を見分ける目的で使用することは困難であった。
S. Takenaka, Y. Uto, H. Kondo, T. Ihara, M. Takagi, Anal. Biochem., 1994, vol. 218, pp. 436-443 T. Ihara, Y. Maruo, S. Takenaka, M. Takagi, Nucleic Acids Res., 1996, vol. 24, pp. 4273-4280 T. Ihara, M. Nakayama, M. Murata, K. Nakano, M. Maeda, Chem. Commun., 1997, vol. 1997, pp. 1609-1610 M. Nakayama, T. Ihara, K. Nakano, M. Maeda, Talanta, 2002, vol. 56, pp. 857-866 C. E. Immoos, S. J. Lee, M. W. Grinstaff, J. Am. Chem. Soc., 2004, vol. 126, pp. 10814-10815 S. Takenaka, T. Ihara, M. Takagi, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1990, pp. 1485-1487
S. Takenaka, Y. Uto, H. Kondo, T. Ihara, M. Takagi, Anal. Biochem., 1994, vol. 218, pp. 436-443 T. Ihara, Y. Maruo, S. Takenaka, M. Takagi, Nucleic Acids Res., 1996, vol. 24, pp. 4273-4280 T. Ihara, M. Nakayama, M. Murata, K. Nakano, M. Maeda, Chem. Commun., 1997, vol. 1997, pp. 1609-1610 M. Nakayama, T. Ihara, K. Nakano, M. Maeda, Talanta, 2002, vol. 56, pp. 857-866 C. E. Immoos, S. J. Lee, M. W. Grinstaff, J. Am. Chem. Soc., 2004, vol. 126, pp. 10814-10815 S. Takenaka, T. Ihara, M. Takagi, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1990, pp. 1485-1487
このような状況下、DNAの固定化等を必要としない、より簡便で、かつ精度の高い遺伝子検出技術が求められている。
本発明は、以下の修飾オリゴヌクレオチド、電気化学的遺伝子検出用キット、および電気化学的遺伝子検出方法を提供する。
(1)ホスト化合物を一端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含む、修飾オリゴヌクレオチド。
(2)上記ホスト化合物が5’末端に結合している、上記(1)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(3)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(1)または(2)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(4)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(1)または(2)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(5)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(2)上記ホスト化合物が5’末端に結合している、上記(1)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(3)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(1)または(2)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(4)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(1)または(2)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(5)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(6)ホスト化合物を5’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチド、および
レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(7)ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチド、および
レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(8)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(6)または(7)に記載のキット。
(9)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(6)または(7)に記載のキット。
(10)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(6)〜(9)のいずれかに記載のキット。
(11)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(10)に記載のキット。
(12)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(6)〜(11)のいずれかに記載のキット。
レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(7)ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチド、および
レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(8)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(6)または(7)に記載のキット。
(9)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(6)または(7)に記載のキット。
(10)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(6)〜(9)のいずれかに記載のキット。
(11)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(10)に記載のキット。
(12)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(6)〜(11)のいずれかに記載のキット。
(13)ホスト化合物を5’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチドおよびレポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、上記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(14)ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチドおよびレポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、上記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(15)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(13)または(14)に記載の方法。
(16)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(13)または(14)に記載の方法。
(17)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(13)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(17)に記載の方法。
(19)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(13)〜(18)のいずれかに記載の方法。
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、上記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(14)ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチドおよびレポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、上記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、上記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(15)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(13)または(14)に記載の方法。
(16)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(13)または(14)に記載の方法。
(17)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(13)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(17)に記載の方法。
(19)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(13)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。
(21)ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。
(22)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(20)または(21)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(23)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(20)または(21)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(24)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(20)〜(23)のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(25)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(24)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(26)電気化学的モレキュラービーコンである、上記(20)〜(25)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(27)上記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(20)〜(26)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。
(21)ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。
(22)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(20)または(21)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(23)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(20)または(21)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(24)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(20)〜(23)のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(25)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(24)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(26)電気化学的モレキュラービーコンである、上記(20)〜(25)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(27)上記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(20)〜(26)に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
(28)ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(29)ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを含む電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(30)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(28)または(29)に記載のキット。
(31)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(28)または(29)に記載のキット。
(32)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(28)〜(31)のいずれかに記載のキット。
(33)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(32)に記載のキット。
(34)上記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(28)〜(33)に記載のキット。
上記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(29)ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを含む電気化学的遺伝子検出用キットであって、
上記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。
(30)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(28)または(29)に記載のキット。
(31)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(28)または(29)に記載のキット。
(32)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(28)〜(31)のいずれかに記載のキット。
(33)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(32)に記載のキット。
(34)上記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(28)〜(33)に記載のキット。
(35)ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(36)ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(37)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(35)または(36)に記載の方法。
(38)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(35)または(36)に記載の方法。
(39)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(35)〜(38)のいずれかに記載の方法。
(40)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(39)に記載の方法。
(41)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(35)〜(40)のいずれかに記載の方法。
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(36)ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
上記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
上記レポーター分子は、上記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。
(37)上記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、上記(35)または(36)に記載の方法。
(38)上記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、上記(35)または(36)に記載の方法。
(39)上記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、上記(35)〜(38)のいずれかに記載の方法。
(40)上記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、上記(39)に記載の方法。
(41)上記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、上記(35)〜(40)のいずれかに記載の方法。
ターゲットとの結合に際して、その光学的性質を変えるプローブは多く知られているが、均一溶液中でその電気化学的性質をコントロールして、遺伝子検出に利用した例は従来にはない。本発明のDNAコンジュゲート(例えば、一実施形態としてのβ−シクロデキストリン(本明細書中、「βCyD」と略記することがある。)修飾DNAコンジュゲート)は、均一溶液中でその電気化学的性質をコントロールして遺伝子検出に利用され得る。
本発明によれば、コンジュゲートのDNAの塩基配列を適当に選んでやることでβCyDをテンプレートDNA(ターゲットDNA)上の望む位置に配置することができる。このDNAコンジュゲートに加えて、βCyDに包接される性質を持つ比較的疎水性の高いレポーター分子(発信号分子)を修飾したDNAコンジュゲートを調製する。これら2つのコンジュゲートのDNAの塩基配列を同じテンプレートDNAの隣り合うサイトにそれぞれ相補的となるように構成し、これらコンジュゲートをそのサイトにハイブリダイズさせてタンデム二本鎖を形成させることで、レポーター分子とβCyDがテンプレート上で対峙するように配置することができる。レポーター分子としては、βCyDに包接されることでそのシグナルが変化するような分子なら任意のものが使用できる。このようなDNAコンジュゲートは遺伝子解析に利用することができる。また、1つのDNAの両端にβCyDとレポーター分子とをそれぞれ修飾したDNAコンジュゲートも同様に遺伝子解析に利用することができる。
複数の異なるコンジュゲート(第一および第二の修飾オリゴヌクレオチド)の協同作業による本発明の遺伝子検出方法の一実施形態においては、タンデム二本鎖複合体の中でFcがβCyDに包接され、バルクから遮蔽されることでその電子移動速度が著しく低下することを利用している(図4)。電気化学法においてβCyDは蛍光法における消光剤に相当する機能を持つために、分光学的手法において用いられているシステムを電気化学法を利用したものに移行させることが可能である。たとえば、両末端に蛍光物質と消光物質を修飾したDNAはモレキュラービーコン(MB)としてよく知られているが、本発明の一実施形態として蛍光物質と消光物質の代わりにFcとβCyDにより両端を修飾したDNAコンジュゲートは、ヘアピン型から二本鎖への構造変化に伴い、その電流値が増加するタイプの電気化学的モレキュラービーコン(ECMB)として利用することができる(図6)。
本発明により、高感度な電気化学的遺伝子検出法、それに用いる修飾オリゴヌクレオチド、およびキットが提供される。本発明の電気化学的遺伝子検出法によれば、従来のインターカレータなどの小分子を用いた方法では困難であった一塩基レベルの個人差(SNP)を見分けることが可能である。
本発明の方法は、従来のFc-DNAコンジュゲートを用いる方法では必要であったオリゴヌクレオチドの固相への固定化が必要ではない点で有利である。本発明の電気化学的方法は、安価であり、用途に合わせて小型化が可能であるという利点がある。本発明は、バイオテクノロジー分野の中の特に遺伝子検出・解析技術において、その基礎技術として有用である。
また、本発明の遺伝子検出法では、レポーター分子としてFcの他に一般的な色素、蛍光性分子なども用いることが可能であり、該検出法は汎用性に優れた手法である。
1.本発明の修飾オリゴヌクレオチド
フェロセン(Fc)は、電気化学的に活性な分子としてよく知られているが、そのサイズはβ−シクロデキストリン(βCyD)の空孔によくフィットし、包接錯体を形成する。βCyDとFcを末端にそれぞれ修飾した2種類のDNAコンジュゲートを合成し、それらに相補的なDNAを足場としてこの包接反応を制御することによって、包接に伴う電気化学的シグナルの変化を遺伝子検出に利用することができる。
フェロセン(Fc)は、電気化学的に活性な分子としてよく知られているが、そのサイズはβ−シクロデキストリン(βCyD)の空孔によくフィットし、包接錯体を形成する。βCyDとFcを末端にそれぞれ修飾した2種類のDNAコンジュゲートを合成し、それらに相補的なDNAを足場としてこの包接反応を制御することによって、包接に伴う電気化学的シグナルの変化を遺伝子検出に利用することができる。
本発明の典型的な実施形態においては、ターゲットDNAの隣り合うサイトに相補的な2つのDNAの3’、5’末端にそれぞれFcとβCyDを修飾した2種類のDNAコンジュゲート、3’Fc−オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と5’CyD−ODNをプローブとして合成する。これらのコンジュゲートは、ターゲットと混合した場合、修飾部位が互いに向かい合うようにターゲットDNAとタンデム二本鎖を形成し、向かい合ったFcとβCyDは包接錯体を形成し(図4)、包接に伴うFcからの電気化学的シグナルの変化が検出されうる。本発明は、このような原理に基づく遺伝子検出法に関するものである。
したがって、本発明は、1つの実施形態において、β−シクロデキストリンを一端に結合した(conjugated)修飾オリゴヌクレオチドを提供する。好ましくは、β−シクロデキストリンはこのオリゴヌクレオチドの5’末端に結合される。このオリゴヌクレオチドの塩基配列は、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に相補的であるように構成される。但し、この相補性は完全(100%)である必要はなく、上記所望の部位に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的であればよいから、相補性の程度は目的に応じて適宜調節してよい。オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの特異性の程度は、ハイブリダイズする際の温度、塩濃度等によっても変化する(または調節しうる)ことは当業者に周知である。特異性を高めるには比較的低い塩濃度および/または高温の条件(例:約0.02mol/l〜約0.15mol/lの塩濃度および約50℃〜約70℃の温度)でハイブリダイズしうる程度の相補性が求められる。
上記オリゴヌクレオチドは、糖部がリボースからなるオリゴリボヌクレオチドまたは糖部がデオキシリボースからなるオリゴデオキシリボヌクレオチドでありうるが、好ましくは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドの長さの下限は、約2ヌクレオチド、好ましくは3ヌクレオチド、より好ましくは4ヌクレオチド、さらに好ましくは5ヌクレオチド、なおさらに好ましくは6ヌクレオチド、そして最も好ましくは7ヌクレオチドであるかまたはそれより大きく、上限は、約100ヌクレオチド、好ましくは約80ヌクレオチド、より好ましくは約60ヌクレオチド、さらに好ましくは約40ヌクレオチド、なおさらに好ましくは約30ヌクレオチド、そして最も好ましくは約20ヌクレオチドであるかまたはそれより小さい。典型的には、上記オリゴヌクレオチドの長さは、約5ヌクレオチド〜約20ヌクレオチドであるが、これに限定されない。本発明で使用するオリゴヌクレオチドは、自動合成機などを使用して所望の長さおよび塩基配列を有するものを合成することができる。
上記の修飾オリゴヌクレオチド(第一の修飾オリゴヌクレオチド)は、レポーター分子を一端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドとともに、遺伝子の電気化学的検出のために使用することができる。第二の修飾オリゴヌクレオチドは、第一の修飾オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするターゲットポリヌクレオチド上の上記所望の部位に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含む。
βCyDが第一のオリゴヌクレオチドの5’末端に結合されている場合には、レポーター分子は第二のポリペプチドの3’末端に結合され、第二のオリゴヌクレオチドは第一のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするターゲットポリヌクレオチド上の上記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含むように構成される。βCyDが第一のオリゴヌクレオチドの3’末端に結合されている場合には、レポーター分子は第二のポリペプチドの5’末端に結合され、第二のオリゴヌクレオチドは第一のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするターゲットポリヌクレオチド上の上記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含むように構成される。このように構成することで、第一の修飾オリゴヌクレオチドと第二の修飾オリゴヌクレオチドがターゲットポリヌクレオチドにハイブリダイズした際に、βCyDとレポーター分子とが互いに対峙するように配置することができる。
βCyDと対峙した上記レポーター分子は、β−シクロデキストリンと包接錯体を形成し得る。包接錯体が形成されるとレポーター分子の電気化学的シグナルが遮蔽され、減弱する。このシグナル強度の変化を検出することによって、ターゲットポリヌクレオチドと本発明の修飾オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを確認することができる。
ここで、「包接錯体(inclusion complex)」とは、クラスレート化合物(clathrate compound)ともいい、分子錯体の一種であり、一方の化学種が1〜3次元の分子規模の空間をつくり、その空間に寸法と形状が適合することを第一要件として他方の化学種が取り込まれる(包接される)ことによって生じる化合物のことをいう(大木他編 「化学大事典」 第1版 東京化学同人 1989)。空間を提供する化学種をホスト、包接される化学種をゲストという。本発明において使用される包接錯体の典型例は、ホストとしてβ−シクロデキストリン、ゲストとしてフェロセンからなる。しかしながら、本発明において使用しうる包接錯体の組み合わせはこれに限定されるものではなく、包接錯体の形成の前後で検出されるゲスト化合物の電気化学的シグナルが変化するものであればよい。
レポーター分子(本発明におけるゲスト化合物)は、β−シクロデキストリンその他のホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化するものならば特に限定されない。本発明において使用されるレポーター分子の例としては、フェロセン等の電気化学活性なメタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、これらの誘導体等の電気化学活性な小分子が挙げられる。
本発明で使用されるホスト化合物としては、レポーター分子が包接されうる空間を提供できるものであって、レポーター分子を取り込んだ場合にその電気化学的活性を遮蔽しうるものであれば特に限定されない。本発明において使用されるホスト化合物の例としては、シクロデキストリン(CyD)(例えば、β−シクロデキストリン(βCyD)、α−シクロデキストリン(αCyD)、γ−シクロデキストリン(γCyD)等)またはこれらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、キューカービチュリル類などが挙げられる。なお、カリックスアレーン類、シクロファン類、キューカービチュリル類には、カリックスアレーンおよびその誘導体、シクロファン類およびその誘導体、キューカービチュリルおよびその誘導体がそれぞれ含まれるものとする。
上記の電気化学活性なゲスト化合物とホスト化合物との好適な組合せ例としては、CyD−フェロセン(D. R. van Staveren, N. Metzler−Nolte, Chem. Rev., 104, 5931−5985 (2004))、CyD−メタロセン(F. Hapiot, S. Tilloy, E. Monflier, Chem. Rev., 106, 767−781 (2006))、CyD−アントラキノン(X. −J. Dang, J. Tong, H. −L. Li, J. Incl. Phenom., 24, 275−286 (1996))、キューカービチュリル−フェロセン(D. Sobransingh, A. E. Kaifer, Chem. Commun., 2005, 5071−5073)、CyD−フラビン、CyD−フラーレンなど多くの例が挙げられる。なお、CyD一般については、“Cyclodextrins and Their Complexes”, H. Dodziuk Ed., Wiley−VCH (2006)に詳説されている。
オリゴヌクレオチドの一端に上記ホスト化合物が結合した本発明のホスト化合物修飾オリゴヌクレオチドは、末端に第一級アミノ基またはチオール基を化学修飾したオリゴヌクレオチドと活性化したホスト化合物とのカップリング、または、ホスト化合物誘導体を基体とするアミダイト試薬を用いたDNA合成によって作製することができる。
レポーター分子(ゲスト化合物)を一端に結合したオリゴヌクレオチドは、末端に第一級アミノ基またはチオール基を化学修飾したオリゴヌクレオチドと活性化したレポーター分子とのカップリング、またはレポーター分子を基体とするアミダイト試薬を用いたDNA合成によって作製することができる。
ターゲットポリヌクレオチドは、本発明の遺伝子検出方法において、検出対象となるポリヌクレオチド(例:標的遺伝子)のことをいい、DNAまたはRNAでありうるが、好ましくは、DNAである。
本発明は、さらに別の実施形態において、1つのオリゴヌクレオチドの両端にβ−シクロデキストリンとレポーター分子とをそれぞれ結合した修飾オリゴヌクレオチドを提供する。β−シクロデキストリンが5’末端に結合される場合には、レポーター分子は3’末端に結合され、β−シクロデキストリンが3’に結合される場合には、レポーター遺伝子は5’末端に結合される。オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含むように構成される。上記レポーター分子は、β−シクロデキストリンと包接錯体を形成し得、β−シクロデキストリンに包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する。なお、この実施形態においても、β−シクロデキストリン以外に、α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはこれらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、キューカービチュリル類などのホスト化合物が用いられうる。また、レポーター分子としては、フェロセン等を含むメタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、これらの誘導体等の電気化学活性な小分子が用いられうる。
このように構成された修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドにハイブリダイズしていないときは、両端のβCyDとレポーター分子とが包接錯体を形成し、ヘアピン状の形態(ステム・ループ構造)をとる。ターゲットポリヌクレオチドとハイブリダイズする際には、ループ構造が解かれて伸長した形態をとる。この形態の修飾オリゴヌクレオチドがターゲットポリヌクレオチドとハイブリダイズしたときには、レポーター分子からの電気化学的シグナルの増大が検出される。例えば、両末端に蛍光物質と消光物質を修飾したDNAはモレキュラービーコン(MB)としてよく知られているが、本発明の一実施形態として蛍光物質と消光物質の代わりにFcとβCyDを修飾したDNAコンジュゲートは、ヘアピン型から二本鎖への構造変化に伴い、その電流値が増加するタイプの電気化学的モレキュラービーコン(ECMB)として利用することができる(図6)。
2.本発明の修飾オリゴヌクレオチドを用いる遺伝子検出方法
本発明は、さらに別の実施形態において、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを用いた電気化学的遺伝子検出法を提供する。本発明の電気化学的遺伝子検出方法は、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、およびその後のレポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程を含む。
本発明は、さらに別の実施形態において、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを用いた電気化学的遺伝子検出法を提供する。本発明の電気化学的遺伝子検出方法は、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、およびその後のレポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程を含む。
ターゲットポリヌクレオチドと本発明の修飾オリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーションをすると、レポーター分子(ゲスト化合物)がβ−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、キューカービチュリル類などのホスト化合物と包接錯体を形成してレポーター分子の電気化学的シグナルが減弱されるか、またはモレキュラービーコンタイプの修飾オリゴヌクレオチドの場合には反対にレポーター分子の電気化学的遮蔽が解除されてシグナルが増大する。
本発明の遺伝子検出法においては、ターゲットポリヌクレオチドを含有する試料溶液と上記第一および第二の修飾オリゴヌクレオチドとを混合した際の、この電気化学的シグナルの変化を検出することによって、ターゲットポリヌクレオチドの存在を検出することができる。レポーター分子が発する電気化学的シグナルは、例えば、βCyD修飾オリゴヌクレオチドとレポーター分子修飾オリゴヌクレオチドの混合溶液を、作用電極、対電極、および参照電極からなる3電極方式の電解セルに入れ、これにターゲットを添加した後に、サイクリックボルタンメトリー(CV)、ディファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)、スクエアウェーブボルタンメトリー(SWV)などの各種ボルタンメトリーにより観察する。または、フロー式の電気化学検出器内に先の試料を導入することでより高感度に測定することができる。また、ターゲットポリヌクレオチドを含有する試料の例には、細胞抽出液をPCRで増幅した試料等が含まれるが、これに限定されない。
3.本発明の修飾オリゴヌクレオチドを含む遺伝子検出用キット
3.本発明の修飾オリゴヌクレオチドを含む遺伝子検出用キット
本発明は、さらなる実施形態において、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを含む、電気化学的遺伝子検出用キットを提供する。本発明のキットは、本発明の電気化学的遺伝子検出法を実施するために用いることができる。本発明のキットは、必要に応じて、使用方法を記載した説明書、容器、ラベルなどを含んでいても良い。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
[実施例1]3’Fc−ODNおよび5’CyD−ODNの調製
フェロセンカルボン酸をN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、フェロセンカルボン酸の活性エステルとした。緩衝液とDMSO混合溶媒中、3’末端に第一級アミノ基を導入したオリゴヌクレオチドを大過剰のフェロセンカルボン酸の活性エステルとカップリングさせることで3’Fc−ODNを得た。HPLCで精製し、MALDI−TOF/MSで同定した。
フェロセンカルボン酸をN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、フェロセンカルボン酸の活性エステルとした。緩衝液とDMSO混合溶媒中、3’末端に第一級アミノ基を導入したオリゴヌクレオチドを大過剰のフェロセンカルボン酸の活性エステルとカップリングさせることで3’Fc−ODNを得た。HPLCで精製し、MALDI−TOF/MSで同定した。
β−シクロデキストリンの第一級水酸基のうちの一つをトシル化し、次いでこれをチオール基に変換した。チオール基はさらにアルドリチオールで活性化した。5’末端にチオール基を導入したオリゴヌクレオチドと先の活性化β−シクロデキストリンとをカップリングして5’CyD−ODNを得た。HPLCで精製し、MALDI−TOF/MSで同定した。
図1AおよびBは、それぞれ、A)3’Fc−ODN、およびB)5’CyD−ODNの構造を示す。図1Aは、15量体DNAの3’末端にFcを修飾したもの、図1Bは、7量体の5’末端にβCyDを修飾したものを示す。両コンジュゲートはターゲットDNAの隣り合うサイトに相補的である。両コンジュゲートの塩基配列はターゲットとのタンデム二本鎖を形成した際に修飾分子を互いに内側に向けるように設計されている。
[実施例2]ターゲットDNAとのタンデム二本鎖の溶融実験
実施例1で作製したタンデム二本鎖を用いて融解実験を行った。
実施例1で作製したタンデム二本鎖を用いて融解実験を行った。
(手順)
5’CyD−ODN、3’Fc−ODN、およびターゲットDNAを1μMとなるように緩衝溶液(10 mMリン酸緩衝液(pH7.0)、1M NaCl)に溶解し、3者からなるタンデム二本鎖(3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/target)を形成させた。0℃から溶液の温度をゆっくりと上昇させ(0.2℃/min以下)ながら、260 nmの吸光度を測定した。
5’CyD−ODN、3’Fc−ODN、およびターゲットDNAを1μMとなるように緩衝溶液(10 mMリン酸緩衝液(pH7.0)、1M NaCl)に溶解し、3者からなるタンデム二本鎖(3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/target)を形成させた。0℃から溶液の温度をゆっくりと上昇させ(0.2℃/min以下)ながら、260 nmの吸光度を測定した。
非線形最小二乗法により、融解曲線を二状態モデルを仮定した理論式にフィッティングして種々の熱力学的パラメータ(K、ΔG、ΔH、ΔS)を得た。
(結果)
その結果、融解過程で最初に解離する5’CyD−ODNの融解温度は隣接するDNAがFcを持たない未修飾のときに比べて20℃近く上昇していることがわかった。図2は、タンデム二本鎖の融解挙動を示す図である。低温側の融解が8量体の5’CyD−ODN、高温側が15量体の未修飾DNAまたは3’Fc−ODNの融解を示している。隣接する15量体の末端に何も修飾されていない場合(点線)の融解温度は18.7℃であり、Fcが修飾されているとき(実線)には37.4℃であった。この著しい安定化は両コンジュゲート末端でFcがβCyDに包接されて複合体が熱的に安定化した結果と考えられる。これはΔG298にして3 kcal/mol程度の安定化(結合定数にして約260倍の増大)に相当し、二本鎖上でFcがβCyDに包接されていることが示唆された。
その結果、融解過程で最初に解離する5’CyD−ODNの融解温度は隣接するDNAがFcを持たない未修飾のときに比べて20℃近く上昇していることがわかった。図2は、タンデム二本鎖の融解挙動を示す図である。低温側の融解が8量体の5’CyD−ODN、高温側が15量体の未修飾DNAまたは3’Fc−ODNの融解を示している。隣接する15量体の末端に何も修飾されていない場合(点線)の融解温度は18.7℃であり、Fcが修飾されているとき(実線)には37.4℃であった。この著しい安定化は両コンジュゲート末端でFcがβCyDに包接されて複合体が熱的に安定化した結果と考えられる。これはΔG298にして3 kcal/mol程度の安定化(結合定数にして約260倍の増大)に相当し、二本鎖上でFcがβCyDに包接されていることが示唆された。
[実施例3]電気化学的シグナルの測定
(手順)
リン酸緩衝液中(10mMリン酸緩衝液(pH7)、0.5M KCl)での電気化学測定を行った。作用電極、および対極として金、参照電極としてAg/AgClを用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。3’Fc−ODNのみ、3’Fc−ODN/5’CyD−ODN、3’Fc−ODN/target、およびタンデム二本鎖3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/targetについて測定した。
(手順)
リン酸緩衝液中(10mMリン酸緩衝液(pH7)、0.5M KCl)での電気化学測定を行った。作用電極、および対極として金、参照電極としてAg/AgClを用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。3’Fc−ODNのみ、3’Fc−ODN/5’CyD−ODN、3’Fc−ODN/target、およびタンデム二本鎖3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/targetについて測定した。
(結果)
電気化学測定を行った結果、タンデム二本鎖形成に伴ってFcの酸化電流が著しく減少することがわかった。図3は、DNA複合体のサイクリックボルタモグラムである。3’Fc−ODN/target、3’Fc−ODN/5’CyD−ODN系の電流値は3’Fc−ODNのみのときとほとんど変わらなかった。タンデム二本鎖(3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/target)が形成し、target上でFcとβCyDが接したときにだけ電流が著しく抑制された。
電気化学測定を行った結果、タンデム二本鎖形成に伴ってFcの酸化電流が著しく減少することがわかった。図3は、DNA複合体のサイクリックボルタモグラムである。3’Fc−ODN/target、3’Fc−ODN/5’CyD−ODN系の電流値は3’Fc−ODNのみのときとほとんど変わらなかった。タンデム二本鎖(3’Fc−ODN/5’CyD−ODN/target)が形成し、target上でFcとβCyDが接したときにだけ電流が著しく抑制された。
このことから、タンデム二本鎖複合体上でβCyDに包接されることによりFcが電極から遮蔽され、その電子移動が抑制されたものと考えられる。タンデム二本鎖複合体上でβCyDにFcが包接される様子を模式的に表したのが図4である。図4は、3’Fc−ODN/target/5’CyD−ODNのタンデム二本鎖の可能な構造の一つを示す。FcはβCyD内に包接され外界から遮蔽されることでその電極との電子移動反応が著しく抑制される。電気化学法においてβCyDには蛍光法における消光分子に相当する機能が期待できる。
以上の結果から、DNAをテンプレートとしたハイブリダイゼーションに基づくβCyDとの相互作用はFcの電気化学的シグナルを変化させるための汎用の基礎技術となり得ることがわかった。
[実施例4]本発明の修飾オリゴヌクレオチドの遺伝子解析への応用(その1)
実施例3の結果を踏まえて、TPMT遺伝子(チオプリンメチルトランスフェラーゼ:薬剤の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子。SNP(single nucleotide polymorphism)塩基の種類により抗ガン剤メルカプトプリンの投与量を決める)のホットスポットを含む遺伝子配列を化学合成し、遺伝子解析への応用可能性を検討した。
実施例3の結果を踏まえて、TPMT遺伝子(チオプリンメチルトランスフェラーゼ:薬剤の代謝に関わる酵素をコードする遺伝子。SNP(single nucleotide polymorphism)塩基の種類により抗ガン剤メルカプトプリンの投与量を決める)のホットスポットを含む遺伝子配列を化学合成し、遺伝子解析への応用可能性を検討した。
(手順)
まず、TPMT遺伝子のSNPサイトにそれぞれ4種類の塩基を提示した4つのターゲットについて先と同様の融解実験を行った。ここで利用した二本鎖に関しては野生型であるCをもつターゲットとの間に形成する二本鎖の融解温度は約50℃、それ以外のA、T、Gを含む変異型ターゲットの場合の融解温度は約25℃であった。よって、SNP解析はこの中間の温度である35℃で行った。グラッシーカーボンを作用電極、白金ワイヤーを対極、Ag/AgClを参照電極として用いて、リン酸緩衝液中(10mMリン酸緩衝液(pH7)、0.5M KCl)でスクエアウェープボルタンメトリーを行った。
まず、TPMT遺伝子のSNPサイトにそれぞれ4種類の塩基を提示した4つのターゲットについて先と同様の融解実験を行った。ここで利用した二本鎖に関しては野生型であるCをもつターゲットとの間に形成する二本鎖の融解温度は約50℃、それ以外のA、T、Gを含む変異型ターゲットの場合の融解温度は約25℃であった。よって、SNP解析はこの中間の温度である35℃で行った。グラッシーカーボンを作用電極、白金ワイヤーを対極、Ag/AgClを参照電極として用いて、リン酸緩衝液中(10mMリン酸緩衝液(pH7)、0.5M KCl)でスクエアウェープボルタンメトリーを行った。
(結果)
その結果、変異型G、T、Aの場合には大きな電流を示したが、野生型であるCの場合にだけこの電流値が著しく低下した(図5)。図5は、複合体のスクエアウェーブボンタンメトリーを示す。テンプレートDNA(ターゲットDNA)が3’Fc−ODNに完全に相補的な場合(G−C)には安定に二本鎖を形成するためにβCyDへの包接の影響で電子移動が著しく抑制されているが。一塩基が置換されたDNAをテンプレートとすると包接が完全に進行しないために大きな電流値を示した。
その結果、変異型G、T、Aの場合には大きな電流を示したが、野生型であるCの場合にだけこの電流値が著しく低下した(図5)。図5は、複合体のスクエアウェーブボンタンメトリーを示す。テンプレートDNA(ターゲットDNA)が3’Fc−ODNに完全に相補的な場合(G−C)には安定に二本鎖を形成するためにβCyDへの包接の影響で電子移動が著しく抑制されているが。一塩基が置換されたDNAをテンプレートとすると包接が完全に進行しないために大きな電流値を示した。
[実施例5]本発明の修飾オリゴヌクレオチドの遺伝子解析への応用(その2)
図6は、(A)従来のモレキュラービーコン(MB)と(B)本発明の電気化学的モレキュラービーコン(ECMB)の動作原理を示す図である。本発明では、FcとβCyDが両末端に修飾されたオリゴヌクレオチドは通常末端の相補的な数量体がステムを形成してヘアピン構造をとり、その際FcはβCyDに包接されてその電気化学活性を抑制される。ターゲットが添加されるとヘアピン構造が解消し、ターゲットとの二本鎖を形成する。これに伴ってFcはむき出しになり、本来の電気化学活性を取り戻す。すなわち、電気化学法においてβCyDは従来の蛍光法における消光剤と同等の役割を果たすユニットとして用いることができる。
図6は、(A)従来のモレキュラービーコン(MB)と(B)本発明の電気化学的モレキュラービーコン(ECMB)の動作原理を示す図である。本発明では、FcとβCyDが両末端に修飾されたオリゴヌクレオチドは通常末端の相補的な数量体がステムを形成してヘアピン構造をとり、その際FcはβCyDに包接されてその電気化学活性を抑制される。ターゲットが添加されるとヘアピン構造が解消し、ターゲットとの二本鎖を形成する。これに伴ってFcはむき出しになり、本来の電気化学活性を取り戻す。すなわち、電気化学法においてβCyDは従来の蛍光法における消光剤と同等の役割を果たすユニットとして用いることができる。
電気化学法は分光学的手法と比較すると高感度であり、使用する機器も安価であり、用途に合わせて小型化が可能である。本発明は、そのような電気化学的方法に基づく新たな遺伝子検出方法を提供するものであり、バイオテクノロジー分野の中の特に遺伝子検出・解析技術において、その基礎技術として有用である。
Claims (41)
- ホスト化合物を一端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含む、修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記ホスト化合物が5’末端に結合している、請求項1に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項1または2に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項1または2に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項1〜4のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- ホスト化合物を5’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチド、および
レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
前記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、前記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。 - ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチド、および
レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチド
を含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
前記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、前記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。 - 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項6または7に記載のキット。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項6または7に記載のキット。
- 前記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、請求項6〜9のいずれかに記載のキット。
- 前記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、請求項10に記載のキット。
- 前記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項6〜11のいずれかに記載のキット。
- ホスト化合物を5’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチドおよびレポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
前記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
前記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、前記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、前記所望の部位の3’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。 - ホスト化合物を3’末端に結合した第一の修飾オリゴヌクレオチドおよびレポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した第二の修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
前記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
前記第一の修飾オリゴヌクレオチドは、前記ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記第二の修飾オリゴヌクレオチドは、前記所望の部位の5’末端側に隣接する部位の塩基配列に対して特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接された場合に、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。 - 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項13または14に記載の方法。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項13または14に記載の方法。
- 前記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
- 前記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、請求項17に記載の方法。
- 前記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項13〜18のいずれかに記載の方法。
- ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。 - ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドであって、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、修飾オリゴヌクレオチド。 - 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項20または21に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項20または21に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、請求項20〜23のいずれかに記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、請求項24に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 電気化学的モレキュラービーコンである、請求項20〜25に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- 前記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項20〜26に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
- ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを含む、電気化学的遺伝子検出用キットであって、
前記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。 - ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを含む電気化学的遺伝子検出用キットであって、
前記修飾オリゴヌクレオチドは、ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出用キット。 - 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項28または29に記載のキット。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項28または29に記載のキット。
- 前記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、請求項28〜31のいずれかに記載のキット。
- 前記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、請求項32に記載のキット。
- 前記オリゴヌクレオチドがオリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項28〜33に記載のキット。
- ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、ホスト化合物を5’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を3’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
前記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。 - ターゲットポリヌクレオチドの所望の部位の塩基配列に特異的にハイブリダイズしうる程度に相補的な塩基配列を含み、ホスト化合物を3’末端に、レポーター分子(ゲスト化合物)を5’末端に結合した修飾オリゴヌクレオチドを、ターゲットポリヌクレオチドを含む試料溶液と混合する工程、ならびに
前記レポーター分子の電気化学的シグナルの変化を検出する工程、
を含む、電気化学的遺伝子検出法であって、
前記レポーター分子は、前記ホスト化合物と包接錯体を形成し得、該ホスト化合物に包接されている場合と包接されていない場合とで、その電気化学的シグナルが変化する、電気化学的遺伝子検出法。 - 前記ホスト化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体、カリックスアレーン類、シクロファン類、またはキューカービチュリル類のいずれかである、請求項35または36に記載の方法。
- 前記ホスト化合物が、β−シクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項35または36に記載の方法。
- 前記レポーター分子が、メタロセン、金属錯体、アントラキノン、ビオローゲン、メチレンブルー、フラビン、フラーレン、ドーノマイシン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される電気化学活性な小分子である、請求項35〜38のいずれかに記載の方法。
- 前記メタロセンが、フェロセンまたはその誘導体である、請求項39に記載の方法。
- 前記オリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチドである、請求項35〜40のいずれかに記載の方法。
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