JPWO2009107607A1 - ジャガイモシスト線虫の関与する植物生長促進剤 - Google Patents

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Abstract

本発明に係る、ナス科以外の植物に適用できる生長促進剤は、ジャガイモシスト線虫の関与する植物生長促進剤であり、ジャガイモシスト線虫に作用する物質として、下記一般式(1):R−CO−N(−R'−OH)(−R"−OH)・・・・・・・・(1)(一般式(1)において、Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基、R'、R"は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の置換されていてもよいアルキレン基を示す。)で表される脂肪酸ジアルカノールアミドを含有する。本発明の植物生長促進剤がジャガイモシスト線虫の卵が存在する土壌に散布されると、含有される上記脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化したジャガイモシスト線虫が、非寄主植物の生長を促進する。

Description

本発明は、土壌中に存在するジャガイモシスト線虫の作用を利用して、ビートや他の植物を早期に大きく生長させる生長促進剤およびその使用に関する。
ジャガイモシスト線虫(Potato Cyst Nematode:以下、「PCN」ともいう)が外国産肥料に混入して日本に侵入し、ジャガイモの主要生産地である北海道で初めて発見されて以来、長崎、青森などの日本各地でも相次いでその発生が確認されて来た。そのPCNによる被害は、実際にジャガイモの生産減として顕在化しており、また欧州を初めとして世界各地でも同様の被害が以前から表面化していた。ジャガイモは、世界の各地で多くの人々にとって主要な食糧になっていることから、PCNの防除によりその被害を抑制する方法の開発が重要な研究課題として農業関係者間でとりあげられている。
シスト(雌成虫の死骸)中に存在する卵(2期幼虫)は、孵化しなければ20年間もそのままの状態で休眠して、生存し続ける。しかし、その土地にPCNの寄主植物が栽培されれば、卵が寄主植物の根から分泌する液の作用で、2期幼虫は一斉に孵化し、孵化してきた線虫によってその寄主植物の生長が阻害されてしまう。そして線虫の密度が急激に増加して、その土地に線虫が蔓延すると、PCNによる農産物被害は年々急速に拡大していく。従来の知見によると、シスト中に生存するその卵は固い殻に守られていることから、現在使われている通常の農薬をただ単にその土壌に散布するだけでは、直接その卵を殺傷して被害を完全防除することにはならない。仮にある薬剤でPCNの防除がある程度可能になったとしても、完全防除(全滅)でなければ、残された卵によって数年の内に元の被害状況に戻ってしまう。このように従来法はPCNの防除に全く通用しないので、PCNによる被害を防除する画期的な薬剤または方法は未だ開発されていないのが現状である。
そこで本発明者は、PCNの卵を何らかの方法で強制的に孵化させることができれば、その後は孵化した幼虫を餓死させるか、あるいは通常の農薬で殺虫するといった間接的な方法を採用して、結果的にPCNによる被害を防除できるという生態的方法に注目した。PCNが寄主植物の分泌物質によって孵化することは古くから知られており、その分泌物質から孵化活性物質を単離し同定する研究が行われてきた。特許文献1によると、Solanoeclepin Aが孵化促進物質として示されているが、本発明者らの研究によると、その化合物は極性が低く、水溶性に乏しいため土壌中では活性本体ではないとの結論を得ている。
一方、従来からPCNの存在する土壌にトマト水耕栽培液を散布すると、PCNの卵が孵化することが確認されてきた。しかし、PCNが発生する圃場面積は国内だけでも約11,000 haと広大であって、また散布量が1m2当たり18リットルという多量の薬液を必要とするために、防除剤としては実用化されていないのが現状である。PCNの卵の孵化をより効果的に促進させるために、特殊な薬剤ではなく多量に入手容易であって、低価格の一般的な薬剤の開発が強く要望されている。
ところで、一般にシスト線虫が寄主植物の根に侵入すると、そこに巨大細胞を形成し、栄養を摂取することが知られている。しかし、シスト線虫が非寄主植物の根に同じように侵入した場合には、どのような現象が起こるかは全く研究がされてこなかった。
特表平7−505118号公報 特開平3−190807号公報 特開平4−145010号公報
本発明者は、ジャガイモシスト線虫(PCN)の孵化と防除法との関係を長期間に亘って研究してきたが、その過程で、ある薬剤が非寄主植物の生長に大きく関わってくることに気づいた。そこで本発明者は、PCNの卵(2期幼虫)の孵化促進物質と非寄主植物の生長との関連性に注目して鋭意検討し、その物質が結果的に甜菜、小豆などの非寄主植物である農作物の増収に寄与することを見出し、そのような栽培植物を対象とする、入手容易かつ安全な生長促進剤の提供という本発明の完成に至った。
本発明は、次の構成を有するものとして特定される。すなわち、
ジャガイモシスト線虫の卵に対し孵化促進作用を示す脂肪酸ジアルカノールアミドを含有し、該脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化したジャガイモシスト線虫が非寄主植物に対して生長を促すことを特徴とする植物生長促進剤である。
前記脂肪酸ジアルカノールアミドは下記の一般式(1)で表される化合物が好ましい:
R−CO−N(−R'−OH)(−R"−OH) ・・・・・・・・(1)
(一般式(1)において、Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基、R'、R"は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の置換されていてもよいアルキレン基を示す。)
さらに、前記の脂肪酸ジアルカノールアミドは、脂肪酸ジエタノールアミドであることが好ましく、より好ましくは、酢酸ジエタノールアミド、ヘキサン酸ジエタノールアミド、デカン酸ジエタノールアミド、オクタデカン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミドおよびヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であると一層好適である。
本植物生長促進剤はジャガイモシスト線虫の卵が存在する土壌に散布されることが望ましい。
本発明は、ジャガイモシスト線虫のある一定期間にわたる(北海道では1年間)生活環に表わされる特異な生態を巧みに利用した一種の生態的農薬であり、天然に存在するPCN孵化促進物質と違って安定であり、活性の発現に共力因子の存在は特に必要としないので製剤化は極めて容易である。
本発明によると、ジャガイモシスト線虫が存在する土壌に、脂肪酸ジアルカノールアミドを含む本発明の植物生長促進剤を適量散布すると、そこに存在するジャガイモシスト線虫の卵(2期幼虫)の殻を短期間の内に効率的に壊して、卵を孵化させ、その後餓死や殺虫剤投与などの方法により線虫を死亡させ得ることから、土壌中の線虫密度の低下を図ることもできる。そしてそこで農作物を含む多くの非寄主植物を栽培すると、ジャガイモシスト線虫が完全防除されていないにも拘らず、理由は明らかではないが、予想外のそして驚くべきことに、その生長を促進し、肥大化した農作物あるいは著しく生長した農作物を短期間で収穫することができ、結果的に増収を図ることが可能になる。
さらに、その植物生長促進物質そのものは、通常一般的に使用されている非イオン系の界面活性剤の一種でもあることから、土壌、農産物や環境を汚染するおそれはほとんどなく、環境への負荷、農作物に対する安全性の点でも問題はないと考えている。本発明の植物生長促進剤の利用により安全な農作物を高い生産性で栽培し、食料として提供し続けることができる。
同一圃場での輪作をやむをえず行う場合、本発明の植物生長促進剤の利用により、ジャガイモなどのナス科作物の次に栽培する農作物に増収効果をもたらすという、好都合な輪作体系(例えば、ジャガイモ→小麦→豆類→甜菜といった4年輪作など)を圃場で築くことが可能となる。
図1は、ジャガイモシスト線虫の生活環を模式的に示す。北海道では、1サイクルが実質上1年の期間(冬→春→夏→秋)にわたる。共力因子I、IIは、ジャガイモシスト線虫の孵化において天然に存在する孵化促進物質とともにその存在が必須とされる因子である。 図2は、ビート根部の肥大化を示す写真である。上段:酢酸ジエタノールアミド散布群の根部:1.8g散布(左)、5.5g散布(中央)、9.0g散布(右)。下段:いずれも未処理区(薬剤を散布せず)の平均的根部。 図3は、ビート肥大化の想定されるメカニズムである。共力因子I、IIは、図1において説明したとおり、天然に存在する孵化促進物質が必要とする因子である。
本発明の植物生長促進剤は、栽培植物の生長促進にジャガイモシスト線虫が関与する植物生長促進剤である。すなわち、本発明の植物生長促進剤はジャガイモシスト線虫の卵に対し孵化促進作用を発揮する脂肪酸ジアルカノールアミドを含有し、該脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化したジャガイモシスト線虫がおそらく関与して非寄主植物の生長を促すことを特徴としている。
本明細書でいう「寄主植物」とは、本来ジャガイモシスト線虫が寄生する植物であるが、この線虫が極めて寄主特異性が強くナス科植物に特化している。それ以外の植物を「非寄主植物」として区別する。
「ジャガイモシスト線虫の卵に対し孵化促進作用を示す」とは、ジャガイモシスト線虫の卵(2期幼虫)の孵化に作用するか、孵化を促がすように作用することを主としていうが、必ずしもこれだけに限定されるものではない。脂肪酸ジアルカノールアミドが、孵化(促進)物質としてジャガイモシスト線虫に対して孵化するように作用する実態の詳細は明らかにされていないが、後記のような推測がなされており、該脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により休眠打破され孵化したジャガイモシスト線虫の孵化2期幼虫は、非寄主植物の生長増進をもたらす。
ジャガイモシスト線虫は、図1に示されるような特異な一定期間の生活環で主にジャガイモなどが栽培される土壌、あるいはジャガイモなどのナス科植物内(特に寄主の根)に棲息している。本明細書では、「ジャガイモシスト線虫」は「PCN」と同じ意味で使用するが、主に孵化した幼虫、それが成長した成虫を指すが、特定の生活ステージに限定しないで表わすこともある。
具体的には、対象植物における生長促進作用の発揮には孵化したジャガイモシスト線虫の存在が前提とされ、脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化した線虫が対象植物の生長を促すことは確かである。このことは実際にジャガイモシスト線虫の存在しないところで脂肪酸ジアルカノールアミドを散布しても非寄主植物の生長促進が起こらなかった事実に基づく。その介在の実態は明らかではないが、ジャガイモシスト線虫の幼虫が非寄主植物、主としてその根に侵入して何らかの生長促進物質を分泌するのか、あるいは非寄主植物の植物生長ホルモン分泌を刺激する物質を分泌するのかもしれない。孵化したジャガイモシスト線虫によりもたらされる非寄主植物の生長増進は、その植物の肥大または著しい生長、結実の増大、果実であれば糖度の上昇などとして表れる。
・脂肪酸ジアルカノールアミド
本発明の植物生長促進剤に含める脂肪酸ジアルカノールアミドは、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい:
R−CO−N(−R'−OH)(−R"−OH) ・・・・・・・(1)
一般式(1)において、Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基であり、直鎖でも分岐していてもよい。R'、R"は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15、好ましくは1〜10の置換されていてもよいアルキレン基を示す。
脂肪酸ジアルカノールアミドは、脂肪酸とジアルカノールアミンとの反応物であって、脂肪酸としては、飽和脂肪酸でもよいし不飽和脂肪酸でもよく、また直鎖または分岐状の脂肪酸であってもよい。また上記化合物におけるR、R'およびR"の置換は、当該物質の作用を保持または強化する適当な置換基によるものでよい。そのような置換基として、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基などが例示される。
一般式(1)において、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基が好ましく、R'およびR"は炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキレン基が好ましい。Rとして、例えばメチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘプチル基、ノナン基、ウンデカン基、トリデカン基、ヘプタデカン基を挙げることができる。R'およびR"としては、例えばエチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。
前記した脂肪酸の中でも、特に飽和脂肪酸である酢酸(C2)、ヘキサン酸(C6,カプロン酸)、デカン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、オクタデカン酸(C18)が好ましく、またそれらの混合物であってもよい。混合物としては、ラウリン酸(C12)やミリスチン酸(C14)などを含むヤシ油脂肪酸を一例として挙げることができる。ジアルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどを挙げることができる。
好ましい脂肪酸ジアルカノールアミドの例として、酢酸ジエタノールアミド、ヘキサン酸ジエタノールアミド、デカン酸ジエタノールアミド、ラウロイルジエタノールアミド、ミリストイルジエタノールアミド、オクタデカン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを挙げることができ、これらの中でも特にヘキサン酸ジエタノールアミドやヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが好ましい。
脂肪酸ジアルカノールアミド水溶液によるジャガイモシスト線虫卵の孵化促進を測定すると、1000倍希釈のデカン酸ジエタノールアミドでは23.8%、同じく1000倍希釈の酢酸ジエタノールアミドでは21.7%、水のみの場合は5.0%の孵化割合であった。おそらく脂肪酸ジアルカノールアミドはPCNの卵殻を壊す作用があり、PCN卵の強制的孵化につながると考えられている。
・植物生長促進剤
本発明に係る植物生長促進剤は、孵化したジャガイモシスト線虫の関与を必要とする。すなわち本発明の植物生長促進剤は、生長促進が望まれる栽培植物に適用されるが、その生長促進物質の実体は完全には明らかになっていない。その生長促進作用に関して、生長促進対象の植物に産生されるそうした生長促進物質の生成もしくは誘導に、孵化したPCNが関与していることが後記の実験で実証されている。その植物生長促進剤の作用物質に関して、少なくとも脂肪酸ジアルカノールアミドをPCN卵から幼虫への孵化を促進する有効成分として含有するものである。その脂肪酸ジアルカノールアミドは、単一化合物で含まれていてもよく、または異なる脂肪酸ジアルカノールアミドの混合物として含まれていてもよい。脂肪酸ジアルカノールアミドは、PCN孵化促進物質として、寄主植物が分泌する孵化促進物質と違って化学的に安定であり、天然孵化促進物質のように付随する共力因子(I、II)の存在を必要としない。また脂肪酸ジアルカノールアミドの作用は、天然に存在するPCN孵化阻害物質の影響を受けない。
脂肪酸ジアルカノールアミドを本発明の植物生長促進剤に含有される有効物質として使用するに際して、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ラウロイルモノエタノールアミド、ミリストイルモノエタノールアミドなどの脂肪酸モノアルカノールアミドが少量含まれていてもよい。ただし、後述する参考例に示したように脂肪酸モノエタノールアミドのみでは効果に乏しい。また、他の非イオン系界面活性剤が共に含まれていてもよく、例えばポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明の製剤化に際して脂肪酸ジアルカノールアミドとともに、特にポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを併用してもよい。脂肪酸ジアルカノールアミドとして5〜10質量%、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルは0.1〜1.0質量%含有するのが好ましい。脂肪酸ジアルカノールアミドとして、特にヘキサン酸ジエタノールアミドやヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが好ましいが、これとポリエチレングリコールとを併用すると植物生長促進作用が著しい(後記の実施例10〜13)。
ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンオクチルエール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2−エチル−ヘキシル)エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが使用できる。
さらに、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えばポリエチレングリコールステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジオレイン酸エステル、その他、ポリエチレングリコールエーテルエステルを挙げることができる。
これらの脂肪酸ジアルカノールアミドは、本発明の植物生長促進剤に含有される有効物質として、必要に応じて他の界面活性剤とともに、あるいはアルコール、ケトン、酸、炭化水素などの有機溶剤を併用して、水溶液、乳濁液または懸濁液に変えて、土壌や植物への付着性を高めて散布することが好ましい。その際、炭酸カルシウム、タルク、カオリンなどの無機物質、ひまし油、ひまわり油、大豆油、オリーブ油などの天然油脂類と混合して使用してもよい。無機物質は、脂肪酸ジアルカノールアミドの担体としても機能し、長期間に亘り持続した植物の生長促進の効果を発揮する。また、本発明の植物生長促進剤には、必要に応じて、他の孵化促進物質(Solanoecepin Aなど)、殺菌剤、殺虫剤、防虫剤などを適宜配合してもよい。
また本発明においては、ナス科植物の分泌物質含有体を混合して使用することもできる。その分泌物質含有体は、ジャガイモやトマト、ナスなどのナス科植物がその根などから分泌する物質を含有するものであって、好ましくはトマトの分泌物質含有体である。現在トマトは大規模に水耕栽培されていることから、その水耕栽培液を収集し、必要に応じてそれから濃縮操作を施して使用すればよい。その濃縮方法は特に限定されるものではないが、例えば、トマトを水耕栽培したときの水耕液をイオン交換樹脂層に通したり、あるいは蒸留したりしてもよい。そのような分泌物質を使用する代わりに、ジャガイモやトマトなどのナス科植物を栽培植物の株間に適数を栽培してもよい。
本発明の植物生長促進剤をPCNが存在する土壌に散布すると、そこで栽培するナス科植物以外の農作物や花卉などの栽培植物の生長が促進される。PCNが存在する土壌は、ナス科植物、好ましくはジャガイモを栽培収穫した後の圃場であればよく、あるいはジャガイモ、トマトなどを栽培植物の株間に適数を栽培してもよい。これによりPCNの存在が確保され、本植物生長促進剤による非寄主植物の生長促進にPCNの介在の前提が満たされる。また、本植物生長促進剤をジャガイモなどのナス科植物の栽培においてPCN防除の防除剤として適用してもよい。寄主植物の栽培されていない時期の土壌に適用し、PCNの卵の強制孵化と餓死誘導などによってジャガイモなどのPCNによる被害を軽減できる。さらにこの場合PCNの完全防除には至らなくとも、ジャガイモ栽培跡地でナス科以外の栽培植物を栽培する際に生長促進作用が期待できる。このことは圃場でジャガイモを含む作物の輪作体系を築く上で極めて好都合である。
このように本発明の植物生長促進剤は、PCNが存在する土壌に適用されるとPCNの卵の孵化を促進し、その孵化PCNが近くで栽培される非寄主植物の生長亢進を該PCNの介在により生起させる植物生長誘発剤である。
本発明の植物生長促進剤を適用して増収を期待できる栽培植物としては特に限定されないが、一般に栽培される農作物や花卉などの植物が該当する。特に好適な農作物としてビート(甜菜)、大豆、アズキ、トウモロコシ、麦類などを挙げることができる。
本発明に係る植物の生長促進剤を実際に圃場に散布する場合、散布液中に脂肪酸ジアルカノールアミドを例えば0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の濃度で調製し、植物の栽培期間中に1回〜数回に分けて散布すると、農作物の増産を達成することが可能になる。例えば、北海道では、0.01質量%濃度で調製した散布液を、植物の一般栽培適期である5月から6月にかけて1〜数回散布することで、農作物の生長促進効果を得ることができる。
そして脂肪酸ジアルカノールアミドを含む薬剤をPCNが存在する土壌に散布すると、そこで栽培している農作物や花卉などの植物の生長が促進される。適用される農作物は、甜菜、アズキ、大豆などを例示することができる。例えば甜菜を栽培すると糖度を低下させることなく肥大化し、アズキや大豆では背丈が高くなり、鞘が大きくなって実を多くつけ、いずれも生長の促進がそうした農作物の生産量の増大につながっていく。特に、PCNの卵が存在する土壌では、ナス科植物では孵化した線虫による被害で農産物の生産減となって表れてくるが、実際に脂肪酸ジアルカノールアミドを含む薬剤を土壌に散布すると、非寄主植物の農作物では生産量が明らかに増加してくる。その理由は明らかではないが、脂肪酸ジアルカノールアミドを含む薬剤がシストおよび卵の殻を強制的に破壊して卵が孵化し、発生した線虫が非寄主植物中におそらく侵入して生長ホルモンのような作用を生じる物質(あるいは植物生長ホルモンの分泌を促す物質)を分泌するため、生長促進による肥大化を起こすと推測している(図3参照)。
換言すれば、本発明は一態様として、上記一般式(1)で表わされる脂肪酸ジアルカノールアミドを含有する植物生長促進剤を、非寄主植物が植えられ、しかもジャガイモシスト線虫の卵が存在する土壌に散布し、該脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化したジャガイモシスト線虫が非寄主植物に対してその植物の生長増進をもたらすことを特徴とする植物の生長促進方法、あるいはそのような成長促進方法においてみられる脂肪酸ジアルカノールアミドの使用方法を含むものである。ここで脂肪酸ジアルカノールアミドの配合量、植物生長促進剤の散布の方法、時期、量などは既に述べたとおりである。
次に実施例および参考例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。下記の実施例中で用いた装置名、使用材料およびその濃度、使用量、処理時間などの数値的条件、処理方法などはこの発明の範囲内の好適例にすぎない。
[実施例1〜3]
PCNによって汚染された圃場(北海道倶知安町富士見)を予め調査したところ、PCNの存在密度は、風乾土壌20g当り2000〜5000頭であった。
その圃場で、ビートを畝幅69cm、株間30cmの条件で、1m2あたり約7株のビートを栽培した。栽培を開始してから15cmに生育して本葉が展開した頃に、酢酸ジエタノールアミド水溶液を根もとに1回のみ散布した(2007年5月30日)。散布量を1.8、 5.5、 9.0(g/m2)の3段階に変え、各薬剤量を5リッターの水に溶解して散布液とした。その後112日間栽培を継続し、生育したビートを収穫して、最大株の重量(kg)、最大株を除いた3個の平均重量(kg)、および糖度(%)を測定し、その結果を表1に示した。糖度(%)は、糖度計(株式会社アタゴ製品 MASTER-M 型番2313)によって測定した。
なお、薬剤を散布しなかった未処理地区を使用した同様のビート栽培の結果を表に参考例1として記したが、この場合には収穫したビートの内4個の平均値を示した。
なお、PCNが存在しない土壌を使用し、そこに実施例1〜3で散布したと同じ薬剤を使用し、実施例1〜3と同様にビートを栽培した。その結果、PCNが存在していない土壌では、未処理区で栽培した場合(参考例1)と全く同じ結果であり、ビートの肥大化は起こらなかった。
[実施例4〜6]
薬剤としてデカン酸ジエタノールアミドを用いた以外は、実施例1〜3と同様に行なった。その結果を表2に示す。
[実施例7〜9]
薬剤としてオクタデカン酸ジエタノールアミドを用いた以外は、実施例1〜3と同様に行なった。その結果を表3に示す。
[実施例10〜13]
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドおよびポリエチレングリコールを含む混合薬剤を用いた以外は、実施例1〜3と同様に行なった。混合薬剤中にヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドは6質量%、ポリエチレングリコールは0.6質量%含有されていた。その結果を表4に示したが、散布量はヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドに換算して示した。
[参考例2〜5]
薬剤を散布する代わりに、温室栽培したジャガイモ根浸出液またはトマト根浸出液を各18リッター散布した以外は、実施例1〜3と同様に行なった。その結果を表5に示す。
また、薬剤を散布する代わりに、ビートの株一つおきに温室栽培したトマト苗(高さ約30cm)またはジャガイモを植え込み、約4週間後にトマトまたはジャガイモの枯れた株を除去した以外は、実施例1〜3と同様に行なった。その結果を表5に併せて示した。
ビートが大きく育つには、PCNの寄主植物であるジャガイモやトマトからの分泌物質が必要であることが表5に記した結果からわかるが、PCNとビートの肥大化との因果関係は未だ不明である。しかし、本発明に関わる生長促進剤が、ジャガイモやトマトからの分泌物質と同等以上の効果があることは、表1〜5を参照すると理解できる。
[参考例6〜11]
以前ジャガイモを栽培してPCNが発生した圃場(北海道倶知安町富士見)を利用し、そこに実施例1〜13で使用したと同じ薬剤を、またジャガイモ根浸出液およびトマト根浸出液を、次の条件で散布してジャガイモ栽培跡地におけるPCNの防除を試みた。
薬剤散布後、風乾土壌20gから全シストを採取し、シスト内の卵と2期幼虫の合計数を線虫密度として表6に示した。この土壌には実施例1〜3に記載したように、風乾土壌20g当り2000〜5000頭のPCNが存在していたので、表6の結果を参照すると、データにばらつきがあるものの、PCNの一部が孵化していることがわかる。
[実施例14〜16・参考例12〜14]
北海道倶知安町富士見の圃場は、PCN密度が2000〜4000(頭/風乾土20g)の土地で、そこへ種々の処置を施してから、実施例1と同様にしてビートの栽培を行った。
ビートの栽培は、まず畝幅69cm、株間30cmの条件で、2008年5月16日に1回薬剤散布(薬剤を水に溶解させ、ビートの根元の土壌に散布)を行い、同日にビート幼苗を植え込み、次いで2008年10月8日まで栽培を続けて収穫した。収穫したビートは茎葉を除いて重量を測定した。
表7に記載した区画2−1と区画1−1とのPCN濃度を比較することによって、ヘキサン酸ジエタノールアミドを散布することによって、PCN密度が減少し、PCN防除が進むことがわかった。また表8に記載したビートの栽培結果から、ヘキサン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミドを散布するとビート肥大化が実現し、酢酸モノエタノールアミドやデカン酸モノエタノールアミドでは生長促進の効果が乏しいことがわかった。

Claims (5)

  1. ジャガイモシスト線虫の卵に対して孵化促進作用を示す脂肪酸ジアルカノールアミドを含有し、該脂肪酸ジアルカノールアミドの作用により孵化したジャガイモシスト線虫が非寄主植物に対して生長を促すことを特徴とする植物生長促進剤。
  2. 前記脂肪酸ジアルカノールアミドが、下記の一般式(1):
    R−CO−N(−R'−OH)(−R"−OH) ・・・・・・・・(1)
    (一般式(1)において、Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基、R'、R"は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の置換されていてもよいアルキレン基を示す。)
    で表される、請求項1に記載の植物生長促進剤。
  3. 前記脂肪酸ジアルカノールアミドが、脂肪酸ジエタノールアミドである、請求項1または2に記載の植物生長促進剤。
  4. 前記脂肪酸ジアルカノールアミドが、酢酸ジエタノールアミド、ヘキサン酸ジエタノールアミド、デカン酸ジエタノールアミド、オクタデカン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミドおよびヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の植物生長促進剤。
  5. ジャガイモシスト線虫の卵が存在する土壌に散布される、請求項1〜4のいずれかに記載の植物生長促進剤。
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