JPWO2009101942A1 - スクリーニング方法 - Google Patents

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憲一 野口
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Abstract

本発明は、一連のタウ病変を十分に再現し得る細胞モデル系を提供し、該細胞モデルにおけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集、あるいは神経突起変性や細胞死を指標とした、神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供する。

Description

本発明は、神経変性疾患の予防および/または治療薬の新規スクリーニング方法に関する。
(発明の背景)
神経原繊維変化は老人班蓄積と並ぶアルツハイマー病 (AD) の主要な病変で、その広がりはAD進行の尺度として用いられ、認知機能の低下とよく相関する。神経原繊維変化は、paired helical filament (PHF) やstraight filament (SF) とよばれる正常の細胞には見られないらせん構造の繊維から構成されている。PHF、SFの主成分は微小管結合タンパクのタウであり、それが高度にリン酸化されβシート構造をとり蓄積している。タウの異常蓄積が認められる神経変性疾患はタウパシーと呼ばれ、AD以外にもPick病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上麻痺などが存在する。Pick病に含まれるfrontotemporal dementia with Parkinsonism linked to chromosome 17 (FTDP-17) と呼ばれる家族性前頭側頭型痴呆を罹患する家系は、タウ遺伝子の変異が原因であることが見出されている。このようにタウの異常蓄積と神経変性の間には密接な関係が示されている。
タウは非常に可溶性の高いタンパクで、そのC末端側にスプライシングにより生じる3回または4回のリピート構造の微小管結合部位をもち、微小管に結合してその安定化に関与していると考えられている。タウの微小管安定化能はタウに存在する20ヶ所にもおよぶリン酸化部位により調節されていると考えられている。実際、神経ネットワーク系の構築が盛んな胎児期には多くの部位のリン酸化が認められる一方で、成人期になるとほとんどリン酸化は見られなくなる。
健常人とは異なり、AD患者脳ではタウは高度にリン酸化され、微小管結合能を失って細胞体に蓄積し、凝集、不溶化している。AD患者のタウには、胎児期には認められない特異的なリン酸化部位が存在する。AT-100抗体はAD患者タウを特異的に認識することが報告されており、その認識部位にはリン酸化された214番のセリン残基 (S214) が含まれている。これらの事実は、タウのリン酸化と凝集、神経機能の低下との間に密接な関係があり、タウ病変の改善がADなどの神経変性疾患の予防、治療につながることを示している。
S214をリン酸化するキナーゼとしてProtein kinase A (cAMP依存性セリンスレオニンキナーゼ、PKA) が報告されている。PKAはin vitroのみならず、in vivoでS214をリン酸化する可能性が報告されている (非特許文献1)。PKAのサブタイプのうち、PKAβはneurofibrillary tangle (NFT) と共局在することが報告されており、タウ病変の進行と密接な関係が示唆されている (非特許文献2)。
Protein kinase X linked (PRKX) はX染色体上に存在するcAMP依存性セリンスレオニンキナーゼである。Y染色体上に存在する姉妹遺伝子のPRKYを除くと、PRKXはPKAと最も相同性が高く、PKA阻害剤として報告されているH-89はPRKXも阻害することが示されている (非特許文献3)。最近、PRKXの発現がADの進行に伴い上昇し、タウのリン酸化、神経細胞死と関係することが報告された(特許文献1)。
細胞を用いた評価系は創薬ターゲットや化合物の探索、評価に有効な手段である。ADなどの神経変性疾患の治療薬開発に際しては、タウのリン酸化とそれに続く凝集、細胞死といったタウ病変を再現する細胞モデルが、該病変の改善を指標にして、より直接的に候補化合物を探索、評価できるという点できわめて有用である。しかしながら、タウ病変の改善を指標とし得る程度に一連のタウ病変を十分に再現し得る細胞モデル系は、これまで得られていなかった。
WO 2006/128879 FEBS Lett., 579巻, 251-8頁, 2005年 J. Neurosci., 19巻, 7486-94頁, 1999年 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99巻, 9260-5頁, 2002年
したがって、本発明の目的は、一連のタウ病変を十分に再現し得る細胞モデル系を提供し、該細胞モデルにおけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集、あるいは神経突起変性や細胞死を指標とした、神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PRKX遺伝子をタウ過剰発現細胞株、あるいは初代神経細胞に導入することにより、当該細胞におけるタウのリン酸化とそれに続く明瞭なタウの不溶化および凝集、並びに細胞死を誘導し得ることを見出した。さらに、これらの細胞を用いて神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング系を構築することに成功した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討の重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]PRKXおよびタウ遺伝子を導入した、PRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[2]タウのリン酸化が214位のSerのリン酸化である、上記[1]記載の方法、
[3]界面活性剤不溶性タウ量を測定することを特徴とする、上記[1]記載の方法、
[4]βシート構造を認識するプローブに対して陽性な細胞数を測定することを特徴とする、上記[1]記載の方法、
[5]細胞が株化細胞である、上記[1]記載の方法、
[6]細胞がH4神経膠細胞である、上記[1]記載の方法。
[7]PRKX遺伝子を導入した、PRKX遺伝子を過剰発現する初代神経細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集、神経突起変性または細胞死を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[8]PRKX遺伝子がウイルスベクターにより導入されることを特徴とする、上記[1]または[7]記載の方法、
[9]ウイルスベクターがレンチウイルスである、上記[8]記載の方法、
[10]PRKX蛋白質およびタウ蛋白質に被験物質を接触させ、タウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[11]神経変性疾患がタウ病変が関与する疾患である、上記[1]、[7]または[10]記載の方法、
[12]タウ病変が関与する疾患がアルツハイマー病である、上記[11]記載の方法、等を提供する。
本発明は、PRKX遺伝子をタウ過剰発現細胞株または初代神経細胞に導入することにより得られる、一連のタウ病変を十分に再現し得る細胞モデルを評価系として用いることを特徴とし、それによって、従来不可能であったタウ病変の改善効果を指標とした、神経変性疾患の予防・治療薬の探索・評価を可能とするものである。
(発明の詳細な説明)
本明細書中「過剰発現」とは、ある細胞における特定の遺伝子の発現レベルが、自然に生じる内在性の該遺伝子の発現レベルに対して、例えば、10倍以上であることを意味する。
(1)PRKXおよびタウ遺伝子を導入した該遺伝子過剰発現細胞を用いるスクリーニング
本発明は、PRKXおよびタウ遺伝子を導入した該遺伝子過剰発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明で用いられる「PRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞」は、PRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸およびタウもしくはその部分ペプチドをコードする核酸が導入され、タウのリン酸化、不溶化および凝集が、当該タウ病変の改善を指標として被験物質の薬効を評価可能な程度に十分に観察される細胞(例えば、自然に生じる内在性の該遺伝子の発現レベルに対して、例えば、10倍以上発現する細胞)であれば、特に制限はない。
本発明におけるPRKXは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。また、本発明におけるタウは、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。本明細書において、蛋白質およびペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。
「配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」としては、配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、いっそう好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上、最も好ましくは約98%以上の類似性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「類似性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は蛋白質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247:1306-1310 (1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の類似性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の類似性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
より好ましくは、配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、いっそう好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上、最も好ましくは約98%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
「配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質」は、配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2(もしくは配列番号:4)で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質である。
ここで「活性」とは、PRKXについてはセリンスレオニンキナーゼ活性(特にタウのリン酸化活性)、タウの不溶化・凝集誘導活性、細胞死誘導活性などを意味し、タウについては高度にリン酸化された際に、細胞内に蓄積、凝集、不溶化して細胞死を誘導する活性などを意味する。また、「実質的に同質」とは、例えば生理学的に、あるいは薬理学的にみて、その性質が定性的に同じであることを意味する。したがって、PRKXおよびタウ活性は同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは0.5〜2倍)や、蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
PRKXおよびタウ活性の測定は、自体公知の方法に準じて行うことができ、例えば、後記実施例に記載の方法等に従って行うことができる。
また、本発明におけるPRKXとして、例えば、(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などのいわゆるムテインも含まれる。同様に、本発明におけるタウとして、例えば、(i)配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、上記PRKXおよびタウ活性が保持される限り、特に限定されない。
PRKX蛋白質の好ましい例としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトPRKX(RefSeq Accession No. NP_005035.1)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、GenBankにAccession No. NP_058675.1として登録されているマウスオルソログ、Accession No. NP_001029135.1として登録されているラットオルソログ、Accession No. XP_001141503.1として登録されているチンパンジーオルソログ、Accession No. XP_852513.1として登録されているイヌオルソログ等)、さらにはそれらの天然のアレル変異体などがあげられる。また、タウ蛋白質の好ましい例としては、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列(441アミノ酸)からなるヒトタウ(RefSeq Accession No. NP_005901.2)およびそのアイソフォーム(配列番号:4で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号45-102および275-305で示されるアミノ酸配列を欠く352アミノ酸からなるもの、アミノ酸番号45-102で示されるアミノ酸配列を欠く383アミノ酸からなるもの、アミノ酸番号74-102および275-305で示されるアミノ酸配列を欠く381アミノ酸からなるもの、アミノ酸番号74-102で示されるアミノ酸配列を欠く412アミノ酸からなるもの、並びにアミノ酸番号275-305で示されるアミノ酸配列を欠く410アミノ酸からなるもの)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、GenBankにAccession No. NP_001033698.1として登録されているマウスオルソログ、Accession No. NP_058908.2として登録されているラットオルソログ等)、さらにはそれらの天然のアレル変異体などが挙げられる。
本発明におけるPRKXおよびタウの部分ペプチドは、上記したPRKXおよびタウ蛋白質の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つPRKXと実質的に同質の活性を有するペプチドである。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様にして行うことができる。
PRKXの部分ペプチドは、上記の性質を有する限り特に制限されないが、具体的には、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号46-300(あるいは非ヒト哺乳動物におけるPRKXオルソログにおける対応する領域)で示されるプロテインキナーゼドメインを含むペプチドなどが挙げられる。
タウの部分ペプチドは、上記の性質を有する限り特に制限されないが、具体的には、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列中、PHFタウに見出される高度リン酸化部位を含む、アミノ酸番号198-262および396-422で示されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドなどが挙げられる。
PRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸は、前記した配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドをコードする限り特に制限はないが、例えば、配列番号:1で表される塩基配列を含む核酸、あるいは配列番号:1で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含み、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例、セリンスレオニンキナーゼ活性(特にタウのリン酸化活性)、タウの不溶化・凝集誘導活性、細胞死誘導活性など)を有する蛋白質もしくはペプチドをコードする核酸などが挙げられる。該核酸はDNAであってもRNAであってもよいが、好ましくはDNAである。
タウもしくはその部分ペプチドをコードする核酸は、前記した配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドをコードする限り特に制限はないが、例えば、配列番号:3で表される塩基配列を含む核酸、あるいは配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含み、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例、高度にリン酸化された際に、細胞内に蓄積、凝集、不溶化して細胞死を誘導する活性など)を有する蛋白質もしくはペプチドをコードする核酸などが挙げられる。該核酸はDNAであってもRNAであってもよいが、好ましくはDNAである。
配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸としては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、いっそう好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上、最も好ましくは約98%以上の類似性を有する塩基配列を含有する核酸などが用いられる。
本明細書における塩基配列の類似性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。塩基配列の類似性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
「ハイストリンジェントな条件」とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件をいう。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
PRKXをコードするDNAは、好ましくは配列番号:1で表される塩基配列からなるヒトPRKX蛋白質をコードする塩基配列を含むDNA、あるいは他の哺乳動物におけるそのオルソログである。また、タウをコードするDNAは、好ましくは配列番号:3で表される塩基配列からなるヒトタウ蛋白質(441アミノ酸)をコードする塩基配列または上記したそのアイソフォームをコードする塩基配列含むDNA、あるいは他の哺乳動物におけるそのオルソログである。
PRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドをコードするDNAは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]由来のcDNA、cDNAライブラリーから調製することができる。即ち、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(PCR)法およびReverse Transcriptase-PCR(RT-PCR)法によって直接増幅することができる。あるいは、該DNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
また、PRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドをコードするDNAは、例えば配列番号:1および配列番号:3で表される塩基配列に基づいて、公知の手法を用いて化学的に合成することもできる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
本発明のPRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞の作製に用いられる宿主細胞は、上記PRKXもしくはその部分ペプチド(以下、単に「PRKX」という場合がある)をコードする核酸およびタウもしくはその部分ペプチド(以下、単に「タウ」という場合がある)をコードする核酸が導入された際に、PRKXおよびタウを過剰に(即ち、被験物質の薬効を評価可能な程度にタウのリン酸化、不溶化および凝集を生じるのに十分な量、例えば、自然に生じる内在性の該遺伝子の発現レベルに対して、例えば、10倍以上)発現し得る細胞であれば特に制限はないが、好ましくは哺乳動物細胞、例えば、ヒト神経細胞株(例、SH-SY5Y、NB-1、PC12、NT-2、IMR-32)、ヒト神経膠細胞株(例、H4)、HepG2細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、ヒトFL細胞、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、dhfr遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞、ラットH4IIE-C3細胞、ラットGH3細胞などの種々の株化細胞が挙げられる。なかでも、H4神経膠細胞が好ましい。
PRKXおよびタウをコードするDNAは、好ましくは上記の宿主細胞に適合した発現ベクター中に挿入して該宿主細胞に導入される。発現ベクターとしては、動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;レンチウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
本発明の好ましい一実施態様においては、PRKXをコードするDNAはウイルスベクター、より好ましくはレンチウイルスベクターを用いて宿主細胞内に導入される。
発現ベクターに用いられるプロモーターは、宿主細胞で機能し得るものであればいかなるものでもよいが、例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子(メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子(G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損CHO細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
PRKXをコードするDNAとタウをコードするDNAの両方を宿主動物細胞に導入する場合、これらのDNAは同一ベクター上にジシトロニックに挿入されてもよいし、IRES配列を用いてモノシストロニックに挿入されてもよい。あるいは、これらのDNAは別個の発現ベクターにそれぞれ挿入され、コトランスフェクションにより宿主細胞に導入されてもよい。
遺伝子導入は、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより行うことができる。例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)に記載の方法を用いることができる。
上記のようにして得られるPRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞は、例えば、約5〜20%の胎仔牛血清を含む最小必須培地(MEM)〔Science,122巻,501(1952)〕,ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などの培地中で培養することができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
被験物質の上記細胞との接触は、例えば、上記の培地や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被験物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被験物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分〜約24時間が挙げられる。
当該スクリーニング方法における神経変性疾患の予防・治療活性の測定は、上記細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を指標にして行うことができる。
タウのリン酸化を指標とする場合、リン酸化タウにのみ特異的親和性を有し、非リン酸化タウに対しては親和性を有しない抗体(リン酸化タウ特異的抗体)を用いて、自体公知の各種イムノアッセイにより、被験物質の神経変性疾患予防・治療活性を測定することができる。用いるリン酸化タウ特異的抗体に特に制限はないが、PHFタウに特異的に見出されるリン酸化部位(例、S214、208位のセリン(S208)、210位のセリン(S210)、212位のスレオニン(T212)、403位のスレオニン(T403)、412位のセリン(S412)、422位のセリン(S422)等)を特異的に認識するものが好ましく、S214を認識するリン酸化タウ特異的抗体が特に好ましい。リン酸化タウ特異的抗体は、リン酸化タウもしくはその部分ペプチドを抗原として、自体公知のポリクローナルもしくはモノクローナル抗体作製技術を用いて作製することができる。また、種々のリン酸化タウ特異的抗体およびリン酸化タウ検出用ELISAキット等が市販されている(例、バイオソース社、シグマ−アルドリッチ社など)。
タウのリン酸化を指標とするスクリーニング方法としては、具体的には、例えば、
(i)リン酸化タウ特異的抗体と、試料液(上記細胞の溶解液)および標識化されたリン酸化タウもしくはその部分ペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたタンパク質(ペプチド)を検出することにより、試料液中のリン酸化タウを定量する方法、
(ii)試料液と、担体上に不溶化した抗タウ抗体および標識化されたリン酸化タウ特異的抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、試料液中のリン酸化タウを定量する方法等が挙げられる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、パーオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート、シアニン蛍光色素などが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
リン酸化タウ特異的抗体を用いるリン酸化タウの定量法は、特に制限されるべきものではなく、試料液中の抗原量に対応した、抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられる。感度、特異性の点で、例えば、後述するサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては、不溶化した抗タウ抗体に試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化したリン酸化タウ特異的抗体を反応させ(2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のリン酸化タウを定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
リン酸化タウ特異的抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、試料液中のリン酸化タウと標識したリン酸化タウとを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B、Fいずれかの標識量を測定することにより、試料液中のリン酸化タウを定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか(直接法)、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる(間接法)固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、試料液中のリン酸化タウと固相化したリン酸化タウとを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するか、あるいは試料液中のリン酸化タウと過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化したリン酸化タウを加えて未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し試料液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。試料液中のリン酸化タウの量がわずかであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
あるいは、上記の細胞を固定化し、リン酸化タウ特異的抗体を1次抗体とし、該抗体を認識する標識化した2次抗体を用いて、in situでリン酸化タウを検出する免疫染色法によりリン酸化タウ量を測定することもできる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてリン酸化タウの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、リン酸化タウ特異的抗体を用いることによって、細胞におけるリン酸化タウの量を感度よく定量することができる。
例えば、上記のスクリーニング法において、被験物質の存在下におけるタウのリン酸化が、被験物質の非存在下における場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害された場合、該被験物質を神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として選択することができる。
タウの不溶化を指標とするスクリーニング方法としては、具体的には、例えば、0.1〜1%の濃度の界面活性剤(例、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トライトンX-100(Triton X-100)、サルコシル(Sarcosyl:N-ラウロイルサルコシン・ナトリウム)、NP-40(Nonidet P-40)、Tween 20等)を含む緩衝液を用いて上記の細胞を溶解し、得られる不溶性画分(沈殿)をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動に供し、抗タウ抗体を用いたウェスタンブロット分析により該不溶性画分中のタウ量を測定する方法等が挙げられる。あるいは溶解した不溶性画分を、上述の各種イムノアッセイに供することにより、該画分中のタウ量を測定してもよい(ここで、検出用抗体はリン酸化タウ特異的抗体であってもよいし、通常の抗タウ抗体であってもよい)。
例えば、上記のスクリーニング法において、被験物質の存在下における界面活性剤不溶性タウの量が、被験物質の非存在下における場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上減少していた場合、該被験物質を神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として選択することができる。
タウの凝集を指標とするスクリーニング方法としては、具体的には、例えば、上記の細胞を、上記リン酸化タウ特異的抗体を用いた免疫染色法の場合と同様に固定化し、これにβシート構造を認識するプローブ(例、チオフラビンS、チオフラビンT、コンゴーレッドなど)を接触させて、該プローブにより染色される陽性細胞数を測定する方法等が挙げられる。
例えば、上記のスクリーニング法において、被験物質の存在下における該プローブ陽性細胞数が、被験物質の非存在下における場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上減少していた場合、該被験物質を神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として選択することができる。
(2)PRKX遺伝子を導入した該遺伝子過剰発現初代神経細胞を用いるスクリーニング
本発明はまた、PRKX遺伝子を導入した該遺伝子を過剰発現する初代神経細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集、神経突起変性または細胞死を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
当該スクリーニング方法に用いられる初代神経細胞は、内因的にタウを発現する、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、イヌ、サルなど)から単離された神経細胞であって、PRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸が導入された際に、タウのリン酸化、不溶化および凝集、並びに神経突起変性および細胞死が、当該タウ病変等の改善を指標として被験物質の薬効を評価可能な程度に十分に観察される細胞であれば、特に制限はない。各種哺乳動物からの初代神経細胞の調製は、自体公知の手法を用いて行うことができる。
PRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸、その初代神経細胞への導入および遺伝子導入された細胞の培養については、上記(1)のPRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞の場合と同様の材料および方法を用いることができる。PRKX遺伝子が導入され、発現している初代神経細胞は、例えば、抗PRKX抗体を用いた通常の免疫染色法により確認することができる。
また、PRKX遺伝子過剰発現初代神経細胞と被験物質との接触、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化および凝集の測定も上記(1)のスクリーニングの場合と同様に行うことができる。
PRKX遺伝子過剰発現初代神経細胞における神経突起変性を指標とするスクリーニング方法としては、例えば、該細胞を固定し、微小管蛋白質であるβ-チューブリンや微小管関連蛋白質であるMAP2に対する抗体を用いて、通常の免疫染色法により神経突起を染色し、神経突起長を測定する方法等が挙げられる。また、PRKX遺伝子過剰発現初代神経細胞の細胞死を指標とするスクリーニング方法としては、例えば、該細胞を固定し、DAPIなどの色素を用いて核を染色して陽性細胞数を測定する方法等が挙げられる。
上記のスクリーニング法において、被験物質の存在下における神経突起長が、被験物質の非存在下における場合に比べて有意に増大していた場合、該被験物質を神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として選択することができる。また、被験物質の存在下におけるDAPI陽性細胞数が、被験物質の非存在下における場合に比べて有意に増加していた場合、該被験物質を神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として選択することができる。
(3)PRKX蛋白質およびタウ蛋白質を用いるスクリーニング
本発明者らは、上記(1)および(2)のスクリーニングにおける、タウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を指標とする方法は、単離したPRKX蛋白質およびタウ蛋白質を用いた系にも応用できるのではないかと発想し、これを試みたところ、スクリーニング系として有効に機能することを確認した。したがって、本発明はまた、PRKX蛋白質およびタウ蛋白質に被験物質を接触させ、タウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
当該スクリーニング方法に用いられるPRKX蛋白質およびタウ蛋白質としては、上記(1)のスクリーニングにおいて詳述したPRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドが挙げられる。該蛋白質もしくはペプチドは、例えば、上記(1)におけるPRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸、あるいはタウもしくはその部分ペプチドをコードする核酸を、適当な宿主細胞に導入して得られる形質転換細胞を培養し、該培養物から該蛋白質もしくはペプチドを回収することにより得ることができる。宿主としては、上記の哺乳動物細胞のほか、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫などが用いられる。PRKXもしくはその部分ペプチドをコードする核酸、あるいはタウもしくはその部分ペプチドをコードする核酸を、該宿主細胞内に導入・発現させるための発現ベクターとしては、各宿主に適合したプロモーターを含むものを適宜選択して用いることができる。遺伝子導入も宿主の種類に応じて自体公知の方法から適宜選択され得る。得られる形質転換細胞の培養は、各宿主細胞の培養に用いられる公知の培地を用いて、通常の培養条件(温度、pH、通気・撹拌等の要否、培養時間等)下で実施される。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から、PRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドを自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、PRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。
このようにして得られた可溶性画分中に含まれるPRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
あるいは、PRKX蛋白質およびタウ蛋白質はそれらを産生する細胞・組織から、上記と同様の蛋白質分離・精製技術を組み合わせて単離することもできる。また、該蛋白質の部分ペプチドは、得られたPRKX蛋白質およびタウ蛋白質を適当なペプチダーゼ等を用いて、部分分解することにより得ることもできる。
さらに、PRKXもしくはその部分ペプチドおよびタウもしくはその部分ペプチドは、上述の各蛋白質のアミノ酸配列情報に基づいて、自体公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。PRKX蛋白質およびタウ蛋白質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質・ペプチドを製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の1) 〜5) に記載された方法に従って行われる。
1) M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
2) SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
3) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
4) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
5) 矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
PRKX蛋白質およびタウ蛋白質は、それぞれ適当な濃度となるように、水もしくは水溶液(例えば、、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)中に溶解する。例えば、PRKXの濃度としては200 ng/mL〜10 μg/mL、タウの濃度としては10〜40 μg/mLが挙げられる。
被験物質の上記PRKXおよびタウ溶液との接触は、該溶液中に被験物質を添加して一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被験物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分〜約24時間が挙げられる。
タウのリン酸化およびタウの不溶化を指標とする場合、上記(1)のスクリーニングの場合と同様にして測定・評価することができる。また、タウの凝集を指標とする場合、例えば、反応液を担体上にスポットした後、該担体にβシート構造を認識し得るプローブを添加して可視化することにより測定・評価することができる。
上記(1)〜(3)のいずれかのスクリーニング法によって選択された被験物質は、タウ病変の発生・進行を抑制することができるので、神経変性疾患、特にタウ病変が関与する疾患の予防・治療物質の候補として有用である。タウ病変が関与する疾患としては、例えば、アルツハイマー病、Pick病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上麻痺、前頭側頭葉型痴呆(FTDP-17)等が挙げられるが、それらに限定されない。本発明のスクリーニング方法により得られた神経変性疾患の予防・治療物質の候補物質は、例えば、タウの異常蓄積の表現型を示す動物モデル(例、変異型タウ(P301、LP301S、R406Wなど)Tgマウス、トリプルTgマウス、r4510Tgマウス、野生型タウTgラット)に投与して、そのタウ病変の改善を試験することにより、インビボでの予防・治療活性を確認することができる。
本発明の方法は、なかでも、アルツハイマー病の予防・治療物質のスクリーニングに有用である。
かくして得られる神経変性疾患の予防・治療物質は常套手段に従って製剤化することができる。
上記物質またはその塩は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、上記物質またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記物質またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。上記物質またはその塩は、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
上記物質またはその塩を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の予防・治療のために使用する場合には、上記物質またはその塩を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらによって何ら限定されるものではない。
実施例1
ヒト脳由来Marathon-Ready cDNA(クロンテック社)を鋳型とし、2個のプライマー、5’-GTGCCCCGGACCTGAGTGC-3’(hPRKX-1F;配列番号:5)および5’-ACATTTTGCTTCTGGTCTGCT-3’(hPRKX-1R;配列番号:6)を用いてPCR反応を行い、ヒトPRKX遺伝子断片を増幅し得られたDNA断片をクローニングした。それを鋳型に2個のプライマー5’-CCTCGAGCCACCATGGAGGCGCCCGGGCTGGCCCAGGCGGCCGCGGCG-3(change-1F;配列番号:7)とhPRKX-1Rを用いて増幅したヒトPRKX(hPRKXkai)をpTARGET発現ベクター(プロメガ社)のクローニング部位にTAクローニングでサブクローニングし塩基配列を確認した。作製したこのヒトPRKX強制発現プラスミドをpPRKXkaiと命名した。キナーゼ活性を持たない不活性型PRKXタンパク強制発現プラスミド (pD172A) はpPRKXkaiからPCR反応でPRKXタンパクの172番目のアスパラジン酸をアラニンに置換することにより作製した。すなわち、pPRKXkaiから変異の入った二本のPRKX部分DNA断片をchange-1Fと5’-GTTCTCTGGCTTCAAGGCCCTGTAGACG-3’ (D172A-1R;配列番号:8)、5’-CGTCTACAGGGCCTTGAAGCCAGAGAAC-3’ (D172A-1F;配列番号:9) とhPRKX-1Rを用いてPCRにより作製し、得られた断片をchange-1F、hPRKX-1Rをプライマーとして、再度PCR反応を行なうことにより結合させ変異PRKX 全長DNAとした。この断片をpTARGE発現ベクターのTAクローニング部位にクローニングした。
実施例2
pFB-neoベクター(Stratagene社)のマルチクローニングサイトにCMVプロモーターの下流に野生型のヒトタウ遺伝子を結合したDNA断片を挿入したpFB-Neo-CMV-tauプラスミドを、ViraPort(R) Retroviral Gene Expression System(Stratagene社)の説明書に従い、H4神経膠細胞に遺伝子導入し、タウの発現を確認した細胞をH4-tau細胞とした。H4-tau細胞はセルバンカー-1(十慈フィールド株式会社)を用いて-80℃で保存した。pPRKXkai、pD172AおよびコントロールとしてのpTARGETベクターをそれぞれFugene6トランスフェクション試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社)の説明書に従い、10% FBS(インビトロジェン社)を含むDMEM培地(インビトロジェン社)で一晩培養したH4-tau細胞に遺伝子導入した。一日後、細胞をSDSサンプルバッファー (第一化学社) で溶解し、NuPAGE 4-12% Bis-Tris gel (インビトロジェン社) を用いてタンパクを分離した。PVDF膜に転写後、一次抗体としてS214リン酸化タウの検出には抗S214リン酸化タウ抗体(バイオソース社)、全タウの検出にはAb-3抗体(ラブビジョン社)、ヒトPRKXの検出には、抗PRKX抗体(アビジェント社)を用い、ECL Advance Western Blotting Detection Kit (Amarsham Bioscience社) の説明書に従いウェスタンブロット法を行い、LAS-1000plus ルミノイメージアナライザー(フジフィルム社)により各タンパクを検出した。その結果、0.02 μg、0.06 μg、0.2 μgのPRKX発現プラスミドを導入した細胞でそれぞれ1.3、1.9、2.9倍のS214のリン酸化亢進が認められた。一方、pD172A遺伝子導入細胞ではS214のリン酸化亢進は認められなかった。また、細胞回収2時間前に10μMのH-89(BSOバイオソースインターナショナル社)を添加した細胞ではリン酸化の亢進は認められなかった。遺伝子導入細胞を細胞溶解バッファー(バイオソース社)に溶解し、S214リン酸化タウ量をヒトpS214タウELISAキット(バイオソース社)で、総タウ量をヒト総タウELISA キット (バイオソース社) で説明書に従いそれぞれ測定し、総タウ中のリン酸化タウ量について検討したところ、0.02 μg、0.06 μg、0.2 μgのPRKX発現プラスミドを導入した細胞でそれぞれ2.5、3.4、5.8倍のS214のリン酸化亢進が認められた。一方、pD172A導入細胞ではS214のリン酸化亢進は認められなかった。
実施例3
pPRKXkaiまたはpTARGET ベクターをそれぞれFugene6トランスフェクション試薬により10% FBSを含むDMEM培地で一晩培養したH4-tau細胞に遺伝子導入した。一日後、H-89を10〜0.1μMの濃度で添加した。2時間後、細胞を細胞溶解バッファーで溶解し、S214リン酸化タウ量をヒトpS214タウELISAキットで、総タウ量をヒト総タウELISA キットを用い測定し、総タウ中のリン酸化タウ量について検討したところ、0.7μMのIC50値でタウS214リン酸化量の抑制が認められた。
実施例4
H4-tau細胞を10% FBSを含むDMEM培地で96ウェルプレートに1 x 104 cell/wellの濃度で播種し、翌日、pPRKXkaiまたはpTARGET ベクターをそれぞれFugene6トランスフェクション試薬を用いて遺伝子導入した。一日後、H-89を培地に10〜0.1μMの濃度で添加した。2時間後、4% パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)で細胞を固定しリン酸緩衝液で洗浄後、1.5% BSA(シグマアルドリッチ社)、0.1% トライトンX-100(和光純薬工業株式会社)入りリン酸緩衝液でブロッキングした。その後一次抗体として抗S214リン酸化タウ抗体でリン酸化タウを、抗タウモノクローナル抗体HT-7(Pierce Biotechnology社)で総タウを標識し、洗浄後、2次抗体として抗ウサギアレクサフルオロ680標識2次抗体(インビトロジェン社)並びに抗マウスIRD800CW標識2次抗体(和光純薬工業株式会社)を反応させた。洗浄後、S214リン酸化タウ並びに総タウ量を、2蛍光式赤外蛍光イメージャーオデッセイ(アロカ株式会社)を用いて検出した。その結果、0.7μMのIC50値でタウS214リン酸化量の抑制が認められた。
実施例5
hPRKXkaiをpPRKXkaiから制限酵素Xho I、Not Iで切り出し、レンチウィルスベクターCSII-CMV-MCB(独立行政法人 理化学研究所)のXho I、Not I間隙に挿入し、PRKX発現用レンチウィルスプラスミド(hPRKXonlenti)を作成した。hPRKXonlentiをパッケージング用プラスミド(pCAG-HIVgp)とVSV-GとRev発現用プラスミド(pCMV-VSV-G-RSV-Rev)とともに10% FBS添加DMEM培地で一晩培養したHEK-293T細胞に遺伝子導入した。18時間後培地を除去し、10μMのフォルスコリン(和光純薬工業株式会社)を加えた10% FBS入りDMEM培地を加え48時間培養を行なった。上清を回収、0.45μMフィルターでろ過後、20℃、50000rpmで2時間遠心を行なった。遠心後沈殿を回収し、HBSS緩衝液(インビトロジェン社)に溶解し、HIV-1 p24 ELISA kit (パーキンエルマー社) を用い、1ngのp24を10000uとしてタイターを測定した。作製したウィルスは-80℃で保存した。タウ過剰発現ヒト神経芽細胞SHSY-5Y細胞に作製したPRKX過剰発現レンチウィルス並びにコントロールとしてlacZ過剰発現レンチウィルスをMOI=1で感染させた。3日後、細胞をSDSサンプルバッファーで溶解、タンパクを回収した。同時にウィルス未感染の細胞も回収した。それらのタンパクをNuPAGE 4-12% Bis-Tris gelを用いて分離後、PVDF膜に転写した。一次抗体としてS214リン酸化タウの検出には抗S214リン酸化タウ抗体、全タウの検出にはAb-3抗体、ヒトPRKXの検出には、抗PRKX抗体を用い、ECL Advance Western Blotting Detection Kitでウェスタンブロット法を行い、LAS-1000plus ルミノイメージアナライザーにより各タンパクを検出した。その結果、S214のリン酸化亢進がPRKX感染細胞で認められた。
実施例6
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したラット初代神経細胞(DIV13)に、PRKX過剰発現レンチウィルス(MOI=1、3、6)、lacZ過剰発現レンチウィルス(MOI=6)、さらに同様に作製したD172A過剰発現レンチウィルス(MOI=1、6)をそれぞれ感染させ、6日後、細胞溶解バッファーに溶解した。マウス総タウELISAキット (バイオソース) の捕捉用プレートにタウタンパクを捕捉させた後、ヒトpS214タウELISAキットの検出用試薬を用い溶液中のS214リン酸化タウ量を測定した。標準曲線を作製するスタンダード液にはフォルスコリンで1時間刺激し、S214のリン酸化を亢進させたラット初代神経細胞の細胞溶解液を用いた。総タウ量はマウス総タウELISA キット(バイオソース社)を用い説明書に従い測定したがスタンダード液には上記のラット初代神経細胞をフォルスコリンで1時間刺激した溶解液を用いた。その結果、MOI=1、3、6でPRKX過剰発現レンチウィルスを感染させた細胞でそれぞれ、3.0、4.2、6.3倍のS214リン酸化タウ量の亢進が認められた。一方、D172A過剰発現レンチウィルス、lacZ過剰発現レンチウィルスでは、S214リン酸化タウ量の亢進は認められなかった。
実施例7
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したDIV14のラット初代神経細胞にPRKX、lacZ、D172A過剰発現レンチウィルスをそれぞれMOI=2で感染させた。10日後細胞をSDSサンプルバッファーに溶解、タンパクを回収し、それらのタンパクをNuPAGE 4-12% Bis-Tris gelを用いて分離、PVDF膜に転写した。一次抗体としてS214リン酸化タウの検出には、抗S214リン酸化タウ抗体、全タウの検出にはAb-3抗体を用い、ECL Advance Western Blotting Detection Kitの説明書に従いウェスタンブロット法を行い、LAS-1000plus ルミノイメージアナライザーにより各タンパクを検出した。その結果、S214のリン酸化亢進がPRKX発現細胞で認められ、D172A過剰発現レンチウィルス、lacZ過剰発現レンチウィルスでは認められなかった。
実施例8
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したDIV13のラット初代神経細胞に作製したPRKX、lacZ、D172A過剰発現レンチウィルスをそれぞれMOI=3で感染させた。7日後、4% パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、リン酸緩衝液で洗浄後、1.5% BSA、0.1% Triton X-100入りリン酸緩衝液でブロッキングした。その後一次抗体として抗S214リン酸化タウ抗体でS214リン酸化タウを標識した。リン酸緩衝液で洗浄後、2次抗体として抗ウサギアレクサフルオロ594標識2次抗体(インビトロジェン社)を30分反応させた。リン酸緩衝液で洗浄後、核はDAPI(モレキュラープローブ社)を用いて染色した。染色されたS214リン酸化タウ並びに核をディスカバリー-1(モレキュラーデバイス社)を用いて撮影した。その結果、PRKX感染細胞でS214リン酸化タウ量の亢進が認められ、D172A過剰発現レンチウィルスでは認められなかった。
実施例9
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したDIV12のマウス初代神経細胞に、作製したPRKX過剰発現レンチウィルスをMOI=2で感染させた。5日後H-89を5μMの濃度で添加した。2日後、4% パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、リン酸緩衝液で洗浄後、1.5 % BSA、0.1%トライトン X-100入りリン酸緩衝液でブロッキングした。その後一次抗体として抗S214リン酸化タウ抗体でリン酸化タウを、抗MAP2モノクローナル抗体(ケミコンインターナショナル社)で神経細胞を標識した。洗浄後、抗ウサギアレクサフルオロ594標識二次抗体で抗S214リン酸化タウ抗体を抗マウスアレクサフルオロ488標識二次抗体(インビトロジェン社)で抗MAP2抗体を染色しディスカバリー-1により撮影を行った。その結果、H-89によるタウS214リン酸化量の低下が認められた。
実施例10
6ウェルプレートに1x105 cells/wellの濃度でH4-tau細胞を播種し、翌日MOI=1になるように、PRKXまたはlacZ過剰発現レンチウィルスを感染させた。5日後、細胞をリン酸緩衝液で洗浄し、高塩濃度RAB緩衝液 (0.1M 2-(Nmorpholino)-ethanesulfonic acid、0.75M NaCl、0.5mM MgSO4、1mM Phenylmethyl sulfonyl fluoride (PMSF)、0.1mM EDTA、1 mM EGTA、0.02M NaF、1mM Na3VO4およびProtease inhibitor cocktail (Roche diagnostics)、pH 7.2) 中に回収し、22Gの注射針と1mlの注射筒を用いて破砕、20分氷上で静置した。その後遠心(20,000 x g、20分間)を行い、得られた上清をRAB可溶画分として回収した。沈殿は3回高塩濃度RAB緩衝液で洗浄後、RIPA緩衝液 (10mM Tris-HCl pH 8.0、140mM NaCl、1% NP-40、0.5% sodium deoxycholate、1mM Iodoacetamide、0.1% SDS、0.02M NaF、1mM Na3VO4、1mM PMSFおよびProtease inhibitor cocktail) に溶解した。超音波破砕機で破砕後、20分間、20,000 x gの遠心を行った。さらにRIPA緩衝液での3回の洗浄を行い、沈殿をSDSサンプルバッファーに溶解し、RIPA不溶画分とした。サンプルバッファー中のタンパク濃度はEZQ タンパク定量キット (インビトロジェン社) を用いてBSAをスタンダートとして測定した。得られたRIPA不溶画分のタンパクについて、各2μgをNuPAGE 4-12% Bis-Tris gelで泳動、分離した。PVDF膜に転写後、抗総タウ抗体を用いてウェスタンブロットを行い、界面活性剤不溶性タウ (RIPA不溶性タウ) の検出を行なった。ウェスタンブロットで得られたタウのバンドを定量したところ、PRKX感染細胞では、LacZ感染細胞と比較して1.8倍、タウのバンド濃度が増加し、界面活性剤不溶性のタウが増加していることが示された。さらにPRKX感染細胞ではタウのダイマー、トライマーと予想される位置に薄いバンドが観察され、また高分子側に凝集タウのスメアな染色も認められた。
実施例11
24ウェルプレートに1x105 cells/wellの濃度でH4-tau細胞を播種し、翌日MOI=1または2.5になるように、PRKXまたはlacZ過剰発現レンチウィルスを感染させた。3日後、H-89を3μMの濃度になるように添加した。翌日、4% パラホルムアルデヒドで固定した細胞をリン酸緩衝液で洗浄後、1.5% BSA、0.1% Triton X-100入りリン酸緩衝液でブロッキングした。その後、一次抗体として抗S214リン酸化タウまたは総タウ抗体を、二次抗体として抗ウサギアレクサフルオロ594標識二次抗体でS214リン酸化タウを用い、細胞染色を行った。その後、細胞を0.005% チオフラビンS(シグマ社)水溶液中で5分静置し、70% エタノールで2回、水で1回洗浄した。さらに核をDAPIにより染色した。染色細胞をディスカバリー-1により撮影し、DAPI陽性細胞数、チオフラビンS陽性細胞数はディスカバリー-1で撮影した画像を元にメタモルフソフトウェア(モレキュラーデバイス社)で計測した。PRKX感染ウェルではlacZ感染ウェルと比較し、βシート構造を取ったチオフラビンSに染色される細胞数がMOI=1では2倍、MOI=2.5では5.2倍に増加していた。タウ特異的抗体と共染色により、ほとんど全てのチオフラビンS陽性像はタウ、S214リン酸化タウと共染色された。また、MOI=2.5で感染させた際に認められたチオフラビンS染色細胞の増加は3μM H-89添加により75%抑制された。
実施例12
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度でH4細胞を播種し、翌日MOI=1になるように、PRKXまたはlacZ過剰発現レンチウィルスを感染させた。二日後、H-89を3または10μM添加した。翌日細胞を固定し、DAPIで核を染色した。DAPI陽性の細胞はディスカバリー-1により撮影し、その画像からメタモルフソフトウェアでDAPI陽性細胞数を計測した。その結果、PRKX発現細胞で59%の細胞数の減少が認められた。この細胞死は3μMまたは10μMのH-89添加で、29%または46%抑制された。
実施例13
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したDIV14のラット初代神経細胞に、PRKXまたはlacZ過剰発現レンチウィルスをMOI=2で感染させた。感染6日後細胞を固定し、一次抗体として抗PRKX抗体でPRKXを、神経細胞を抗MAP2モノクローナル抗体(ケミコンインターナショナル社)で標識し、抗ウサギアレクサフルオロ594標識二次抗体で抗PRKX抗体を、抗マウスアレクサフルオロ488標識二次抗体で抗MAP2抗体を、DAPIで核を染色し、ディスカバリー-1により撮影した。細胞数、神経突起長はディスカバリー-1で撮影した画像を元にメタモルフソフトウェアで計測した。その結果、PRKX過剰発現細胞ではMAP2で染色される神経突起長が37 %減少し、神経突起の変性が誘導されることがわかった。さらにMAP2陽性細胞数の26%の減少も認められた。
実施例14
48ウェルプレートに3.5x103 cells/wellの濃度で播種したDIV14のラット初代神経細胞に、PRKX過剰発現レンチウィルスをMOI=1で感染させた。感染4日後にフォルスコリンを10μMの濃度で添加し、2日間培養した。細胞を固定後、一次抗体として抗PRKX抗体でPRKXを、神経細胞を抗MAP2モノクローナル抗体で標識し、抗ウサギアレクサフルオロ594標識二次抗体で抗PRKX抗体を、抗マウスアレクサフルオロ488標識二次抗体で抗MAP2抗体を、DAPIで核を染色し、ディスカバリー-1により撮影を行った。その結果、PRKX発現による神経変性をフォルスコリンが加速していた。
実施例15
48ウェルプレートに3.5x103cells/wellの濃度で播種したDIV12のマウス初代神経細胞に、PRKXまたはD172A過剰発現レンチウィルスをMOI=2で感染させた。感染4日後にH-89を10μMの濃度で添加し、2日間培養した。細胞を固定後、一次抗体として神経細胞を抗MAP2モノクローナル抗体で標識し、抗マウスアレクサフルオロ488標識二次抗体で抗MAP2抗体を染色し、ディスカバリー-1により撮影した。神経突起長はディスカバリー-1で撮影した画像を元にメタモルフソフトウェアで計測した。その結果PRKX過剰発現レンチウィルスで認められた神経突起長の減少がH-89によって76%抑制された。
実施例16
組換えPRKXタンパク(Invitrogen社)を4μg/ml、組換えタウタンパク(和光純薬工業株式会社)を40μg/mlを混和した反応液 (40mM Tris-HCl (pH 7.5)、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA) 25μlに、H-89溶液 (40mM Tris-HCl (pH 7.5)、0.1% DMSO、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA) を、反応時濃度が1または0.1μMになるように5μl添加した。コントロールとしては、40mM Tris-HCl (pH 7.5)、0.1% DMSO、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA液を5μl添加した。25μM ATP溶液(40mM Tris-HCl (pH 7.5)、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA) を20μl添加して反応を開始し、30℃で60分間放置した。SDSサンプルバッファーを添加し反応を停止させ、NuPAGE 4-12% Bis-Tris gelを用いて分離後、PVDF膜に転写した。一次抗体として抗S214リン酸化タウ抗体を用い、ECL Advance Western Blotting Detection Kitでウェスタンブロット法を行い、LAS-1000plus ルミノイメージアナライザーによりS214リン酸化タウを定量した。ATP未添加のコントロールに比べ、ATP添加時にS214リン酸化量の亢進が認められた。タウS214リン酸化反応は、最終濃度1または0.1μMのH-89の添加により、それぞれ未添加時の5%、52%まで低下した。
本発明のスクリーニング系によれば、従来不可能であったタウ病変の改善効果を指標とした、神経変性疾患の予防・治療薬の探索・評価が可能となるので、より効率的に、有望な神経変性疾患の予防・治療薬の候補物質をスクリーニングすることができる。
本出願は、日本で出願された特願2008−030946を基礎としており、それらの内容は本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (12)

  1. PRKXおよびタウ遺伝子を導入した、PRKXおよびタウ遺伝子過剰発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  2. タウのリン酸化が214位のSerのリン酸化である、請求項1記載の方法。
  3. 界面活性剤不溶性タウ量を測定することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. βシート構造を認識するプローブに対して陽性な細胞数を測定することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. 細胞が株化細胞である、請求項1記載の方法。
  6. 細胞がH4神経膠細胞である、請求項1記載の方法。
  7. PRKX遺伝子を導入した、PRKX遺伝子を過剰発現する初代神経細胞に被験物質を接触させ、該細胞におけるタウのリン酸化、不溶化もしくは凝集、神経突起変性または細胞死を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  8. PRKX遺伝子がウイルスベクターにより導入されることを特徴とする、請求項1または7記載の方法。
  9. ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項8記載の方法。
  10. PRKX蛋白質およびタウ蛋白質に被験物質を接触させ、タウのリン酸化、不溶化もしくは凝集を検出することを含む、神経変性疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  11. 神経変性疾患がタウ病変が関与する疾患である、請求項1、7または10記載の方法。
  12. タウ病変が関与する疾患がアルツハイマー病である、請求項11記載の方法。
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