JPWO2009098873A1 - 殺菌水及びその生成方法並びにその生成装置 - Google Patents
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Abstract
バイオフィルムを破壊する作用を併せ持たせることで、殺菌対象が広範であっても病原菌を確実に死滅させる。本発明に係る殺菌水の生成装置51は、原液52を貯留する原液タンク3と、該原液タンクに連通接続されたストロークポンプ4と、該ストロークポンプに連通接続された電解槽5と、該電解槽に連通接続された吐出管6と、希釈水57が貯留された希釈水タンク8とを備えるとともに、吐出管6の先端が希釈水タンク8に貯留された希釈水57の水位以下となるように、吐出管6の先端位置に対する希釈水タンク8の設置位置を相対的に位置決めしてある。原液52は、(a-1)〜(d)に示す方法のいずれかを選択して作製する。
Description
本発明は、主として人体の安全、健康又は衛生の確保が必要な環境で使用される殺菌水及びその生成方法並びにその生成装置に関する。
感染症をはじめとした様々な疾患の治療や予防を行うにあたり、その原因となる病原菌を殺菌することはきわめて重要であり、従来、病原菌の種類、適用部位、殺菌の程度などに応じて、さまざまな殺菌剤が開発されてきた。
例えば、エタノール、イソプロパノールといったアルコール系殺菌剤や、ヨードチンキ、ポビドンヨードといったヨード系殺菌剤は、生体消毒を含めて、旧来から広く使用されてきた。
また、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム(CPC)などが界面活性剤系の殺菌剤として知られており、とりわけCPCは、歯磨きやトローチの成分として広く使用されている。
一方、アルデヒド系殺菌剤であるフタラールや過酢酸は、内視鏡や透析機器などの医療器具に主として使用されている。
このような多種多様な殺菌剤の中で、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO、次亜塩素酸ソーダ)は、次亜塩素酸(HClO)がその有効成分であって、従来から果実や野菜の消毒、食品の製造ラインの殺菌消毒、浴室等の消毒、プール水の消毒、漂白剤、下水処理後の排水の消毒などに広く使用されているとともに、HBVやHIVといったウィルスのみならず、芽胞に対しても一定の有効性が確認されている。
一方、有効塩素(遊離残留塩素)は、pHによってその形態を大きく変化させることはよく知られており、pH7を越えると、殺菌力の強い次亜塩素酸の存在比率が急激に低下し、殺菌力の弱い次亜塩素酸イオン(ClO−)に形態を変化させてしまう一方、強酸性側では塩素ガスに変わる。そのため、殺菌水のpHは、次亜塩素酸の存在比率が高いpH3〜7に設定されるとともに(特許文献1〜9)、有効塩素濃度は数十ppmに制限される場合が多い。
しかし、この程度の有効塩素濃度では、たとえ次亜塩素酸の存在比が高いといえども、細菌を死滅させる、すなわち細菌の表面に存在する細胞膜を透過して細菌体内に含まれるタンパク質を変成させることはできない。
かかる状況下、本出願人は、細菌を死滅させることが可能な高濃度の次亜塩素酸を殺菌成分とした歯周病治療用の殺菌水を開発し、歯周病原菌を死滅し得ることを臨床試験で確認した(特許文献10)。
上記発明は、水道水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムのみを添加して電気分解することを特徴としており、かかる発明によれば、空気中に存在する二酸化炭素が溶媒に溶け込んで弱酸性となるため、塩酸や酢酸といった酸をわざわざ添加する必要がないという作用効果も奏するものであり、有効塩素濃度が数百ppm程度であっても、無味無臭の殺菌水を生成することができる。
しかしながら、上記殺菌水を用いる場合であっても、例えば物理的除去手段を用いることにより、バイオフィルムを予め破壊しておく必要があった。すなわち、病原菌は、それらのほとんどが浮遊菌としてではなく、自らが産生した菌体外多糖からなるバイオフィルムで保護されながら、また、該バイオフィルムで人体内の生体防御機構や抗生剤を遮断しつつ、緩やかに増殖を続ける。
そのため、歯科分野においては、歯周ポケット内に形成されているバイオフィルムを超音波スケーラやレーザーで予め破壊した後、上記殺菌水で歯周病原菌を殺菌しているが、人体の口腔を除く部位を殺菌する場合においては、殺菌対象となる部位が拡がる分、バイオフィルムの破壊は効率が悪くなる。
とりわけ昨今問題となっている院内感染に対しては、同時かつ広範な殺菌が必要とされるところ、院内感染に起因する病原菌を殺菌できる程度に広い範囲にわたってバイオフィルムを破壊することは、現実的にはきわめて困難である。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、バイオフィルムを破壊する作用を併せ持たせることで、殺菌対象が広範であっても病原菌を確実に死滅させることが可能な殺菌水及びその生成方法並びにその生成装置を提供することを目的とする。
本発明に係る殺菌水は請求項1に記載したように、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8であって、次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とするものである。
また、本発明に係る殺菌水の生成方法は請求項6に記載したように、塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加された水溶液を作製して原液とする工程と、該原液を、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるように電気分解する工程とを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とするものである。
また、本発明に係る殺菌水の原液は請求項18に記載したように、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水の原液であって、塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加されてなり、電気分解によって、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるようになっているものである。
また、本発明に係る殺菌水の生成装置は請求項23に記載したように、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水を生成する装置であって、塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加された原液を貯留する原液タンクと、該原液タンクに連通接続され前記原液を電気分解する電解槽とを備え、該電解槽は、前記原液を電気分解することによって、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8であって、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含む殺菌水を生成するようになっているものである。
従来技術の説明で述べたように、本出願人は、歯周病用の殺菌水を開発するにあたり、当初、井戸水や水道水に自然に溶け込んでいる二酸化炭素を利用して高濃度の次亜塩素酸(HClO)を含む殺菌水の生成に成功するとともに、歯周病原菌を死滅し得ることを臨床試験で確認した。
しかしながら、高濃度の次亜塩素酸を生成することができたとしても、バイオフィルムを破壊することができなければ、殺菌水を病原菌に接触させることができないため、バイオフィルムを破壊する手段が別途必要になる。
ここで、歯周病治療の臨床現場においては、超音波スケーラーやレーザーでバイオフィルムを物理的に破壊し、う蝕治療の臨床現場においては、炭酸水素ナトリウムの微粉末と水とを圧縮空気で歯の表面に吹き付ける歯面清掃方法で歯の表面に形成されているバイオフィルムを物理的に除去していた。
一方、人体の口腔以外の部位であっても、バイオフィルムは、細菌が付着できる硬質な足場があれば、あらゆる場所で形成され得るものであって、口腔以外の生体部位では、例えば尿路や血管内に留置されるカテーテルやステントといった医療材料が足場となり、生体外の部位では、配管やチューブの内面が足場となって、バイオフィルムが形成され、患者側では慢性的な感染症が持続進行するとともに、患者を取り巻く環境においては院内感染の原因となる。
そのため、口腔以外の部位では、広い範囲にわたって形成され分布しているバイオフィルムをいかにして破壊するかが大きな課題となっていた。
本出願人は、バイオフィルムの破壊についてさらに研究を進めた結果、塩化ナトリウム(NaCl)及び二酸化炭素が添加された水溶液を原液とし、かかる原液を、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように電気分解して殺菌水を作製すれば、次亜塩素酸(HClO)のみならず、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)も高濃度であらたに生成させ含有させることができるという新たな知見を得るとともに、試験を行った結果、細胞壁が非常に厚いために死滅させることが困難と考えられていたう蝕病原菌であっても、かつバイオフィルムで守られている環境下であっても、上記殺菌水を接触させるだけで数秒〜数十秒程度以内に死滅させることが可能であることを確認した。
これは、高濃度の炭酸水素ナトリウムがバイオフィルムを破壊し、その破壊されたバイオフィルム内の細菌を高濃度次亜塩素酸で死滅させるという、炭酸水素ナトリウムと次亜塩素酸との協働作用によって病原菌を完全殺菌することができることを意味するものであるとともに、超音波スケーラやレーザーによってバイオフィルムを除去する必要がないため、広範な部位をかつ短時間に殺菌することが可能となり、院内感染に起因する病原菌の殺菌には特に有効な手段となる。
本発明に係る殺菌水は、口腔内を除くすべての部位が殺菌対象であって、生体部位としては、例えば皮膚にできた外傷が殺菌対象となり、生体以外の部位としては、例えば医療機器や医療器具が殺菌対象となる。
本発明に係る殺菌水で殺菌される対象は、主として感染症の原因となる病原体であって、グラム陽性菌やグラム陰性菌をはじめ、酵母や糸状菌などの真菌、結核菌などの抗酸菌、HIVやHBVなどのウィルス及び芽胞が含まれる。ここで、グラム陽性菌には、ブドウ球菌(Genus Staphylococcus)、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、とりわけ院内感染に起因する病原体として、メチシリンやオキサシリンに耐性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus, MRSA)とメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus, MSSA)が含まれる。また、グラム陰性菌には、やはり院内感染に起因する病原体として緑膿菌や大腸菌が含まれる。
有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように電気分解するためには、塩化ナトリウムを例えば2〜5質量%添加するとともに、二酸化炭素についても、大気中に存在する二酸化炭素(380ppm、日本の大気中二酸化炭素の年平均濃度、「理科年表(第2版環境編)」から抜粋)による分圧で自然に溶け込む程度の量では全く足りず、強制溶解によって二酸化炭素の溶解度を高める必要がある。
すなわち、本明細書において二酸化炭素の強制溶解とは、二酸化炭素の溶解度を、自然に溶解し得る濃度(大気中に存在する二酸化炭素の分圧下における溶解度)よりも高くすることを意味するものとする。ここで、二酸化炭素を強制溶解させる具体的な方法としては、原液を、下記(a)〜(d)のいずれかの方法で作製すればよいが、いずれの方法においても、塩酸、酢酸その他炭酸を除く酸は一切添加しない。したがって、原液組成条件は、塩化ナトリウムの添加量が主たるパラメータとなる。
(a)水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加し、該塩化ナトリウムの添加工程と同時に又はその前後に炭酸ガスを吹き込み、又はドライアイスを添加する。
(b)純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加し、該塩化ナトリウムの添加工程と同時に又はその前後に炭酸ガスを吹き込み、又はドライアイスを添加する。
(c)水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、通過水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くする。
(d)純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、純水又は蒸留水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くする。
ここで、(a)及び(c)において原液の構成要素である水は、井戸水、水道水などを使用することが可能であり、あえて純水を使用する必要はない。但し、電解槽の電極損傷や電極反応の低下を未然に防止するためには、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含まない純水を使用した方がよいことは言うまでもない。
pHを6〜8としたのは、pHが6未満では、酸性環境下での金属腐食の懸念があるとともに、H2CO3、HCO3 -及びCO3 2-の濃度分率におけるHCO3 -の存在比率が低くなって、バイオフィルムを破壊できるだけの炭酸水素ナトリウムを生成させることが困難だからであり、pH8を上回ると、Cl2、HClO及びClO-の濃度分率におけるHClOの存在比率が低下して、細菌を殺菌することができるだけの高濃度の次亜塩素酸を生成させることが困難になるからである。
ここで、バイオフィルム内の細菌を死滅させるには、その周囲に存在するさまざまな有機物や他の菌体を酸化しても、なお十分な殺菌力を保持していることが必要であり、炭酸水素ナトリウムによる除去作用があったとしても、数十ppm程度の次亜塩素酸では殺菌力が低すぎる場合が少なくない。
また、バイオフィルム内には300〜400種の細菌が一定の均衡を維持しながら寄生的に繁殖して細菌叢(そう)を形成しているケースが多くが、これがなんらかの原因で他の菌と置換されたり、少数の菌が異常に増えたりすると、菌交代現象とよばれる細菌叢の変化が生じる。すなわち、一部の病原菌が殺菌されずに生き残ると、菌交代現象が発生し、残った細菌が急激に増殖する。このような事態を防止するためには、バイオフィルム内に棲息する細菌を全て死滅させなければならない。
そのため、有効塩素濃度は201ppm以上であることが望ましく、さらに、次亜塩素酸の存在比率が低いpH範囲、すなわちpH8近傍であっても、病原菌を殺菌あるいは溶菌できるだけの次亜塩素酸の濃度を十分に確保するため、500ppmが特に望ましい。
一方、700ppm以下としたのは、700ppmを上回る濃度は、上述した目的を達成するには不必要な濃度だからである。
51 殺菌水の生成装置
52 原液
3 原液タンク
5 電解槽
6 吐出管
57 希釈水
8 希釈水タンク
11 脱気モジュール
14 3次生成水タンク
52 原液
3 原液タンク
5 電解槽
6 吐出管
57 希釈水
8 希釈水タンク
11 脱気モジュール
14 3次生成水タンク
以下、本発明に係る殺菌水の生成方法及び装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る殺菌水の生成装置を図1に示す。
同図でわかるように、本実施形態に係る殺菌水の生成装置51は、原液52を貯留する原液タンク3と、該原液タンクに連通接続されたストロークポンプ4と、該ストロークポンプに連通接続された電解槽5と、該電解槽に連通接続された吐出管6と、希釈水57が貯留された希釈水タンク8とを備えるとともに、吐出管6の先端が希釈水タンク8に貯留された希釈水57の水位以下となるように、吐出管6の先端位置に対する希釈水タンク8の設置位置を相対的に位置決めしてある。
同図でわかるように、本実施形態に係る殺菌水の生成装置51は、原液52を貯留する原液タンク3と、該原液タンクに連通接続されたストロークポンプ4と、該ストロークポンプに連通接続された電解槽5と、該電解槽に連通接続された吐出管6と、希釈水57が貯留された希釈水タンク8とを備えるとともに、吐出管6の先端が希釈水タンク8に貯留された希釈水57の水位以下となるように、吐出管6の先端位置に対する希釈水タンク8の設置位置を相対的に位置決めしてある。
原液52は、後述するいずれかの方法で作製するが、いずれの方法においても、塩酸、酢酸その他炭酸を除く酸は一切添加されていない。
希釈水57は、井戸水、水道水、純水その他任意の水を使用することができるが、生成される殺菌水のpHが上述した範囲になるようにpHを適宜選択する。
本実施形態に係る生成装置51はさらに、1次生成水が希釈水タンク8内において希釈水57で希釈されてなる2次生成水60に注水側が連通された脱気モジュール11を備えており、該脱気モジュールは、真空ポンプ12による減圧によって2次生成水60の溶存酸素を除去するようになっているとともに、2次生成水60から溶存酸素が除去された3次生成水を殺菌水63として貯留する3次生成水タンク14を備えている。
なお、生成装置51に用いるチューブ類あるいは必要に応じて適宜設ける電磁弁は、高濃度の次亜塩素酸(HClO)による酸化で劣化のおそれがあるため、フッ素で形成するのが望ましい。
本実施形態に係る殺菌水の生成装置51を用いて殺菌水63を生成するには、有効塩素濃度が201〜700ppm、望ましくは300〜700ppm、さらに望ましくは400〜700ppmであり、かつpHが6〜8となるように、原液52の組成条件(主として塩化ナトリウムの添加量)、電気分解時の動作条件(例えば電圧値や電流値)及び希釈条件(希釈倍率や希釈水のpH)を定めるとともに、配合された原液52を原液タンク3に貯留する。
塩化ナトリウムは例えば2〜5質量%添加する。
二酸化炭素の溶解度を高めるためには、逆浸透膜に通された通過水、純水又は蒸留水を溶媒とし、該溶媒中に二酸化炭素を強制的に混入させることで二酸化炭素の溶解度を一時的に高める方法と、溶媒に接している二酸化炭素の分圧を上げる方法と、溶媒の温度を下げる方法とが考えられるが、電解時に生じる熱によって水温が上昇することを考えた場合、二酸化炭素を強制的に混入させる方法か、二酸化炭素の分圧を上げる方法のいずれかを選択するのが望ましい。
二酸化炭素の溶解度を一時的に高める方法としては、炭酸ガスの吹込みによる方法か、ドライアイスの添加による方法のいずれかにさらに分類することができる。ここで、一時的とは、溶媒に接している二酸化炭素の分圧が大気中に存在する二酸化炭素の分圧と等しいため、換言すれば、二酸化炭素の混入を大気圧下で行うため、一時的に強制圧入したとしても、空気に含まれる二酸化炭素の分圧との圧力平衡により、時間が経過するにしたがって、二酸化炭素の溶解度が減少する場合を指す。この場合、二酸化炭素の溶解度が低下しないうちに、速やかに電解処理を行う必要がある。
二酸化炭素の分圧を上げることで二酸化炭素の溶解度を高める方法としては、逆浸透膜を通過した通過水、純水又は蒸留水を溶媒として該溶媒を気密タンクに封入し、その気中空間に二酸化炭素を圧入するか、気密タンク内の溶媒に炭酸ガスを吹き込み若しくは溶媒にドライアイスを添加する方法を採用することができる。
この場合、所定の二酸化炭素分圧で二酸化炭素を溶媒に溶かすとともに、その分圧を維持したまま、原液52を電解槽5に送り込んで電気分解を行う必要があるため、二酸化炭素の分圧が低下しないよう、原液タンク3、ストロークポンプ4及び電解槽5を全体として気密に構成すればよい。
以上まとめると、二酸化炭素の強制溶解は、以下に示す方法のいずれかを選択して作製する。
(a-1) 水道水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後に炭酸ガスを吹き込むことで、二酸化炭素を通過水に強制的に溶解させる。
(a-2) 水道水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後にドライアイスを添加することで、二酸化炭素を通過水に強制的に溶解させる。
(b-1) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後に炭酸ガスを吹き込むことで、二酸化炭素を強制的に溶解させる。
(b-2) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後にドライアイスを添加することで、二酸化炭素を強制的に溶解させる。
(c) 水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、通過水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって、大気中の二酸化炭素分圧での溶解度よりも高い溶解度で二酸化炭素を通過水に溶解させる。
(d) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、純水又は蒸留水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって、大気中の二酸化炭素分圧での溶解度よりも高い溶解度で二酸化炭素を通過水に溶解させる。
(a-1) 水道水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後に炭酸ガスを吹き込むことで、二酸化炭素を通過水に強制的に溶解させる。
(a-2) 水道水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後にドライアイスを添加することで、二酸化炭素を通過水に強制的に溶解させる。
(b-1) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後に炭酸ガスを吹き込むことで、二酸化炭素を強制的に溶解させる。
(b-2) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、該塩化ナトリウムの添加工程と同時又はその前後にドライアイスを添加することで、二酸化炭素を強制的に溶解させる。
(c) 水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、通過水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって、大気中の二酸化炭素分圧での溶解度よりも高い溶解度で二酸化炭素を通過水に溶解させる。
(d) 純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、純水又は蒸留水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって、大気中の二酸化炭素分圧での溶解度よりも高い溶解度で二酸化炭素を通過水に溶解させる。
逆浸透膜に通す水は、どのような性状のものでもよいが、逆浸透膜やそれを使った浄水器の負担を軽減し、あるいは捨て水の量をなるべく少なくするという意味では、ある程度浄化された水が望ましい。例えば、地下水、水道水又は市販されているミネラルウォータ(市販水)を使用することができる。以下、本実施形態では、逆浸透膜に通す水として水道水を用いるものとする。
水道水を逆浸透膜に通すことで原液52を作製する場合には、逆浸透膜を備えた浄水器がいくつかのメーカーから市販されているので、それらから適宜選択し利用すればよい。また、二酸化炭素の分圧が高い環境下で通過水、純水又は蒸留水に二酸化炭素を溶解させる場合には、従来公知の二酸化炭素溶解装置を適宜利用することができる。
原液52を作製したならば、次に、かかる原液52を殺菌水1バッチ分に相当する量だけ計量し原液タンク3に貯留するとともに、同じく殺菌水1バッチ分に相当する量の希釈水57を希釈水タンク8に貯留する。殺菌水1バッチ分に相当する希釈水57の量は、希釈倍率や希釈水のpHに応じて適宜定めればよい。
次に、原液52をストロークポンプ4で電解槽5に送り、定められた動作条件で電解槽5を動作させ、原液52を電気分解する。
次に、電解槽5内で生成された1次生成水を、該電解槽に連通接続された吐出管6を介して、予め希釈水タンク8に貯留された希釈水57内に注入する。
ここで、希釈水タンク8は、吐出管6の先端位置が希釈水タンク8の中に貯留された希釈水57の水位以下となるように、その設置位置を相対的に位置決めしてある。
そのため、1次生成水は、空気(外気)と接触することなく、吐出管6を介して希釈水57内に注入される。また、1次生成水は、予め計量された希釈水57に注入されるいわばバッチ方式で注入されることになるため、従来のような配管内混合とは異なり、1次生成水は、希釈水57に均質に混合される。
次に、2次生成水60を脱気モジュール11に通すことにより、溶存ガス、特に溶存酸素が除去された3次生成水を生成し、これを殺菌水63として3次生成水タンク14に貯留する。
本実施形態に係る殺菌水63を用いて殺菌するには、対象となる細菌の棲息箇所に上記殺菌水を接触させるだけでよい。このようにするだけで、殺菌水に含まれる炭酸水素ナトリウムがバイオフィルムを破壊する一方、次亜塩素酸は、周囲に存在する有機物や他の菌体の酸化によって殺菌力を徐々に失いつつも、対象となる細菌を短時間にかつ確実に死滅させる。
具体的な殺菌部位としては、食器洗浄、手洗い、食品製造ライン、医療施設等が該当するが、生体内では口腔内を除くすべての部位が、生体外ではすべての部位が殺菌対象となる。特に、医療器具に適用した場合、院内感染を未然に防止しあるいは院内感染に起因した病原菌を滅菌することが可能となる。
医療器具は、人体への接触の度合いによって、無菌組織や血管に挿入されるクリティカル器具(critical items)と、粘膜又は健常でない皮膚に接触するセミクリティカル器具(semi-critical items)と、健常な皮膚とは接触するが粘膜とは接触しないノンクリティカル器具(non-critical items)の3つのカテゴリーに分類されている(Spauldingによる器具分類)。
本実施形態に係る殺菌水63は、これらのいずれにも適用することができるが、滅菌(sterilization)が必要とされるクリティカル器具(critical items)、例えば手術用器具、循環器、尿路カテーテル、移植埋込み器具、針等に適用し、あるいは高水準消毒(high-level disinfection)が必要とされるセミクリティカル器具(semi-critical items)、例えば呼吸器系療法の器具、麻酔器具、軟性内視鏡、喉頭鏡、気管内挿管チューブ、体温計などに適用することで、院内感染を未然に防止しあるいは院内感染に起因した病原菌を滅菌することが可能となる。
また、本実施形態に係る殺菌水63は、pHが6〜8であって、かつ殺菌成分が人体内でも生成されている次亜塩素酸であるため、血管を通じて人体内に入る可能性がある環境で使用するのが有用であり、例えば、人体の外傷部の殺菌に用いることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る殺菌水の生成方法及び生成装置51によれば、塩化ナトリウムを添加するとともに二酸化炭素が強制的に溶解された水溶液を原液とし、該原液を、有効塩素濃度が201〜700ppm、望ましくは300〜700ppm、さらに望ましくは400〜700ppm、pHが6〜8となるように電気分解するようにしたので、バイオフィルムを破壊できるだけの高濃度の炭酸水素ナトリウムと、病原菌を死滅させることができるだけの高濃度の次亜塩素酸とを両方生成することが可能となり、従来のように、レーザーや超音波スケーラーといった除去手段を用いてバイオフィルムを予め破壊せずとも、さまざまな病原菌を数秒〜数十秒で完全殺菌することができる。そのため、広範な部位を効率よく殺菌することが可能となり、院内感染の予防やその原因となる病原菌の殺菌に特に有効な手段となる。
図2は、従来知られていた有効塩素の存在比を示したグラフである(「浄水の技術」、技報堂出版株式会社発行から抜粋)。同図でわかるように、従来においては、次亜塩素酸の存在比はpH7以上で急激に低下し、pH8では存在比が20%になるものと考えられていた。
しかしながら、本出願人が臨床試験を行ったところ(詳細については後述)、pH6〜8の範囲でう蝕病原菌を死滅させることが可能であるという結果を得た。う蝕病原菌については上述したように、その細胞壁を透過させて内部のタンパク質を変成させる、いわゆる溶菌は、歯科分野では、次亜塩素酸であっても難しいと考えられており、ましてや次亜塩素酸イオン(ClO-)ではう蝕病原菌の細胞壁を破壊することなど到底不可能であると認識されている。
本実施形態に係る殺菌水63によれば、従来全く注目されてこなかったpH7〜8の範囲において次亜塩素酸が十分な殺菌力をもって細菌を死滅させることができるとともに、かかるpH領域において存在比率が高い炭酸水素ナトリウムのバイオフィルム破壊作用との相乗効果で、バイオフィルムを予め除去せずとも、該バイオフィルム内の細菌を死滅させることができるという産業上顕著な効果を奏するものである。加えて、上記殺菌水による細菌の死滅は、細胞壁を壊して内部のタンパク質を変成させる、いわゆる溶菌の状態に至らしめるものであって、耐性菌が出現するリスクもない。
また、本実施形態に係る殺菌水63によれば、次亜塩素酸(HClO)が炭酸水素ナトリウムと併存しているため、pHが酸性に変化して塩素ガスが発生したりアルカリに変化して次亜塩素酸(HClO)の存在比率が低下したりといった事態を未然に防止することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る殺菌水63に万一、酸やアルカリが添加されたとしても、炭酸水素ナトリウムが緩衝作用を発揮するため、本実施形態に係る殺菌水63は、pH6〜8を維持することが可能となり、塩素ガス発生のリスクや金属腐食の問題を大幅に改善することが可能となる。
また、本実施形態に係る殺菌水の生成装置51によれば、吐出管6の先端位置が希釈水タンク8の中に貯留された希釈水57の水位以下となるように、希釈水タンク8の設置位置を相対的に位置決めしたので、1次生成水は、空気(外気)と非接触の状態で希釈水57内に注入されることとなり、かくして、原液52の配合比率や電解槽5の動作条件が設計値と異なり、それが原因で万一、塩素ガスが発生したとしても、該塩素ガスは、pH環境が中性に近い希釈水57の中でその形態が次亜塩素酸に変化するとともに、塩素ガスとして気中に揮散する懸念もなくなる。
また、電解槽5内で生成された1次生成水は、予め計量された希釈水57内にバッチ方式で注入されるため、従来のような配管内混合とは違って均質な混合が可能となり、2次生成水60のpH及びそれに含まれる有効塩素濃度を設計値通りに合わせることが可能となる。
また、本実施形態に係る殺菌水の生成方法及び生成装置51によれば、2次生成水60から溶存ガスを除去して3次生成水63を生成し、これを殺菌水としたので、生体に対して使用する場合においては、例えば傷口での発泡現象を未然に防止し、細菌を体内(血管内)に送り込むという事態を未然に防止することが可能となる。
本実施形態では、2次生成水60中の溶存ガスを脱気モジュール11を用いて除去するようにしたが、2次生成水60中の溶存ガスの濃度が低いために発泡現象が起きる懸念がないのであれば、溶存ガスを除去する工程を省略してもかまわない。かかる場合には、2次生成水60がすなわち殺菌水となる。
図3は、溶存ガスの除去工程を省略する際に用いる生成装置51aを示した図であり、脱気モジュール11、真空ポンプ12及び3次生成水タンク14を生成装置21から省略してある。
また、本実施形態では、殺菌水1バッチ分に対応する量の原液52と希釈水57とを計量し、それぞれを原液タンク3と希釈水タンク8に予め貯留するようにしたが、これに代えて、殺菌水1バッチ分よりも多い量、例えば数バッチ分に対応する量の原液52を原液タンク3に予め貯留しておくのであれば、殺菌水1バッチ分に対応する原液52の量をそのつど計量するための水位計測手段を備えるようにすればよい。かかる水位計測手段は、例えば超音波センサや電極式センサ等で適宜構成することができる。
また、本実施形態では、原液を電気分解した後、これを希釈して殺菌水を生成するようにしたが(後希釈)、これに代えて、原液を希釈し、しかる後、該希釈水を電気分解して殺菌水を得るようにしてもかまわない(前希釈)。なお、かかる変形例の場合においては、希釈水タンク8を省略し、これに代えて、希釈された原液を貯留するための希釈原液タンクを原液タンク3と電解槽5との間に別途備えればよい。
(殺菌水の生成)
まず、逆浸透膜を備えた浄水器に水道水を注水し、次いで、逆浸透膜を通過した水に3質量%の塩化ナトリウムを添加するとともに、ドライアイスを添加して原液とし、次いで、この原液を5倍に希釈した(前希釈)。
まず、逆浸透膜を備えた浄水器に水道水を注水し、次いで、逆浸透膜を通過した水に3質量%の塩化ナトリウムを添加するとともに、ドライアイスを添加して原液とし、次いで、この原液を5倍に希釈した(前希釈)。
次に、希釈した原液を電解槽で電気分解して殺菌水とした。電解槽は、葵エンジニヤリング株式会社が「パーフェクトペリオ」(野口歯科医学研究所株式会社の登録商標)の商品名で販売している殺菌水生成装置の電解槽を用いた。
以上のプロセスで電気分解を行ったところ、pH6.3〜8の範囲内で有効塩素濃度が600〜700ppmの殺菌水を生成することができた。なお、殺菌水中における有効塩素の濃度を測定するにあたっては、200ppmを越える濃度測定が可能な計器や試験紙あるいは試薬がなかったため、二倍希釈を二度繰り返すことで有効塩素濃度を計測した。
また、500ppmの殺菌水の作用効果を確認するためのコントロール(標準試薬)として、同様な手順で40ppmの殺菌水も併せて作製した。
(殺菌水を用いた臨床試験の概要)
本発明に係る殺菌水は、人体の口腔以外の部位を殺菌部位とするものではあるが、滅菌が困難であったう蝕病原菌や、歯周ポケット内に棲息するがゆえに有機物による不活性化の影響を受けやすい歯周病原菌を試験対象とすれば、その殺菌性をより客観的に検証することができる。そのため、以下、歯周病原菌とう蝕病原菌に対する殺菌性について説明する。
まず、歯周病原菌に対する臨床試験を行った。試験を行うにあたっては、上記殺菌水を歯周ポケット内に注入する治療を行い、次いで、唾液に触れないようにして探針を歯周ポケット底部に挿入し、歯根面に付着したプラークを採取し、これをスライドガラスに載せて生理食塩水で懸濁した後、カバーガラスで覆い、これを3600倍の高解像度位相差顕微鏡で観察した。次に、その顕微鏡による観察によって殺菌できたかどうかを調べた。試験結果を表1に示す。
同表でわかるように、本発明に係る殺菌水によれば、すべての患者に対して歯周病原菌を溶菌できていることがわかる。
本発明に係る殺菌水は、人体の口腔以外の部位を殺菌部位とするものではあるが、滅菌が困難であったう蝕病原菌や、歯周ポケット内に棲息するがゆえに有機物による不活性化の影響を受けやすい歯周病原菌を試験対象とすれば、その殺菌性をより客観的に検証することができる。そのため、以下、歯周病原菌とう蝕病原菌に対する殺菌性について説明する。
まず、歯周病原菌に対する臨床試験を行った。試験を行うにあたっては、上記殺菌水を歯周ポケット内に注入する治療を行い、次いで、唾液に触れないようにして探針を歯周ポケット底部に挿入し、歯根面に付着したプラークを採取し、これをスライドガラスに載せて生理食塩水で懸濁した後、カバーガラスで覆い、これを3600倍の高解像度位相差顕微鏡で観察した。次に、その顕微鏡による観察によって殺菌できたかどうかを調べた。試験結果を表1に示す。
(殺菌水を用いた臨床試験の概要 〜う蝕病原菌〜)
次に、う蝕病原菌に対する臨床試験を行った。試験を行うにあたっては、上記殺菌水を口腔内に含んで10秒間、含嗽し、その後、唾液を採取して該唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)及びラクトバチラス(Lactobacilli)の菌体数(唾液1ml中当たり)を調べた。試験は、株式会社モリタから販売されている「シーエーティー21ファスト」(短時間う蝕活動性試験)を用いた。
次に、う蝕病原菌に対する臨床試験を行った。試験を行うにあたっては、上記殺菌水を口腔内に含んで10秒間、含嗽し、その後、唾液を採取して該唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)及びラクトバチラス(Lactobacilli)の菌体数(唾液1ml中当たり)を調べた。試験は、株式会社モリタから販売されている「シーエーティー21ファスト」(短時間う蝕活動性試験)を用いた。
20分培養後(37゜C)と24時間培養後(37゜C)の2ケースを行い、菌体数を調べたところ、有効塩素濃度が40ppmである場合においては、20分培養後では102〜103(安全域〜注意域)、24時間培養後では105〜106(危険域)であった。これらの試験結果から、有効塩素濃度が40ppm程度では、う蝕病原菌を十分に殺菌することができないことがわかった。
(殺菌水の生成に関する実験その2)
1)原液
原液として、以下の4つの試験溶液を準備した。
試験溶液A;
大気圧下かつ室温下で蒸留水にドライアイス5%(w/v)を添加することで、該蒸留水にドライアイスを構成する二酸化炭素を溶解させ(飽和炭酸水)、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液B;
試験溶液Aの中間生成物である飽和炭酸水を蒸留水で5倍に希釈し、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液C;
試験溶液Aの中間生成物である飽和炭酸水を蒸留水で10倍に希釈し、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液D;
大気圧下かつ室温下で蒸留水を大気に曝露することで、該蒸留水に空気中の二酸化炭素を溶解させ、次いで、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
2)試験方法
無隔膜タイプの電解槽に上記原液を4L投入し、2.8Aの直流電流で電気分解を行った。
1)原液
原液として、以下の4つの試験溶液を準備した。
試験溶液A;
大気圧下かつ室温下で蒸留水にドライアイス5%(w/v)を添加することで、該蒸留水にドライアイスを構成する二酸化炭素を溶解させ(飽和炭酸水)、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液B;
試験溶液Aの中間生成物である飽和炭酸水を蒸留水で5倍に希釈し、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液C;
試験溶液Aの中間生成物である飽和炭酸水を蒸留水で10倍に希釈し、しかる後、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
試験溶液D;
大気圧下かつ室温下で蒸留水を大気に曝露することで、該蒸留水に空気中の二酸化炭素を溶解させ、次いで、塩化ナトリウムを0.6%(w/v)を溶解させた。
2)試験方法
無隔膜タイプの電解槽に上記原液を4L投入し、2.8Aの直流電流で電気分解を行った。
同表でわかるように、飽和炭酸水を使った試験溶液A〜試験溶液Cでは、pH範囲は、次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが十分な濃度で存在し得る6〜8となった。それに対し、空気中の二酸化炭素を自然溶解させた試験溶液Dでは、pHが9.2となった。したがって、空気中の二酸化炭素を自然溶解させる方法では、次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムの両方を十分な濃度で生成することは困難であろうと思われる。
本発明に係る殺菌水は請求項1に記載したように、有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8であって、次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とするとともに、前記炭酸水素ナトリウムは、前記部位に形成されたバイオフィルムを破壊し、前記次亜塩素酸は、前記バイオフィルム内に棲息し感染症の原因となる病原体を殺菌するようになっているものである。
また、本発明に係る殺菌水の生成方法は請求項5に記載したように、塩化ナトリウムが添加され二酸化炭素が強制溶解された水溶液を作製して原液とする工程と、該原液を、有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるように電気分解する工程とを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とするとともに、前記炭酸水素ナトリウムは、前記部位に形成されたバイオフィルムを破壊し、前記次亜塩素酸は、前記バイオフィルム内に棲息し感染症の原因となる病原体を殺菌するようになっているものである。
また、本発明に係る殺菌水の原液は請求項13に記載したように、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水の原液であって、塩化ナトリウムが添加され二酸化炭素が強制溶解され、電気分解によって、有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるようになっており、前記炭酸水素ナトリウムは、前記部位に形成されたバイオフィルムを破壊し、前記次亜塩素酸は、前記バイオフィルム内に棲息し感染症の原因となる病原体を殺菌するようになっているものである。
また、本発明に係る殺菌水の生成装置は請求項17に記載したように、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水を生成する装置であって、塩化ナトリウムが添加され二酸化炭素が強制溶解された原液を貯留する原液タンクと、該原液タンクに連通接続され前記原液を電気分解する電解槽とを備え、該電解槽は、前記原液を電気分解することによって、有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8であって、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含む殺菌水を生成するようになっており、前記炭酸水素ナトリウムは、前記部位に形成されたバイオフィルムを破壊し、前記次亜塩素酸は、前記バイオフィルム内に棲息し感染症の原因となる病原体を殺菌するようになっているものである。
本出願人は、バイオフィルムの破壊についてさらに研究を進めた結果、塩化ナトリウム(NaCl)が添加され二酸化炭素が強制溶解された水溶液を原液とし、かかる原液を、有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8となるように電気分解して殺菌水を作製すれば、次亜塩素酸(HClO)のみならず、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)も高濃度であらたに生成させ含有させることができるという新たな知見を得るとともに、試験を行った結果、細胞壁が非常に厚いために死滅させることが困難と考えられていたう蝕病原菌であっても、かつバイオフィルムで守られている環境下であっても、上記殺菌水を接触させるだけで数秒〜数十秒程度以内に死滅させることが可能であることを確認した。
有効塩素濃度が201〜700ppm、pHが6〜8となるように電気分解するためには、塩化ナトリウムを例えば2〜5質量%添加するとともに、二酸化炭素についても、大気中に存在する二酸化炭素(380ppm、日本の大気中二酸化炭素の年平均濃度、「理科年表(第2版環境編)」から抜粋)による分圧で自然に溶け込む程度の量では全く足りず、強制溶解によって二酸化炭素の溶解度を高める必要がある。
そのため、有効塩素濃度は201ppm以上とするが、次亜塩素酸の存在比率が低いpH範囲、すなわちpH8近傍であっても、病原菌を殺菌あるいは溶菌できるだけの次亜塩素酸の濃度を十分に確保するため、500ppmが特に望ましい。
Claims (27)
- 有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8であって、次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とすることを特徴とする殺菌水。
- 有効塩素濃度を、前記1〜700ppmに代えて、201〜700ppmとした請求項1記載の殺菌水。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、400〜700ppmとした請求項2記載の殺菌水。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、500〜700ppmとした請求項2記載の殺菌水。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の殺菌水。
- 塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加された水溶液を作製して原液とする工程と、該原液を、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるように電気分解する工程とを含んでなり、人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とすることを特徴とする殺菌水の生成方法。
- 前記原液を、水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加し、該塩化ナトリウムの添加工程と同時に又はその前後に炭酸ガスを吹き込み又はドライアイスを添加することによって作製する請求項6記載の殺菌水の生成方法。
- 前記原液を、純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加し、該塩化ナトリウムの添加工程と同時に又はその前後に炭酸ガスを吹き込み又はドライアイスを添加することによって作製する請求項6記載の殺菌水の生成方法。
- 前記原液を、水を逆浸透膜に通し、その通過水に塩化ナトリウムを添加するとともに、前記通過水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって作製する請求項6記載の殺菌水の生成方法。
- 前記原液を、純水又は蒸留水に塩化ナトリウムを添加するとともに、前記純水又は前記蒸留水に接する二酸化炭素分圧を大気中の分圧よりも高くすることによって作製する請求項6記載の殺菌水の生成方法。
- 有効塩素濃度を、前記1〜700ppmに代えて、201〜700ppmとした請求項6乃至請求項10のいずれか一記載の殺菌水の生成方法。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、400〜700ppmとする請求項11記載の殺菌水の生成方法。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、500〜700ppmとする請求項11記載の殺菌水の生成方法。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項6乃至請求項10のいずれか一記載の殺菌水の生成方法。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項11記載の殺菌水の生成方法。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項12記載の殺菌水の生成方法。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項13記載の殺菌水の生成方法。
- 人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水の原液であって、塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加されてなり、電気分解によって、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8となるように、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムが生成されるようになっていることを特徴とする殺菌水の原液。
- 有効塩素濃度を、前記1〜700ppmに代えて、201〜700ppmとした請求項18記載の殺菌水の原液。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、400〜700ppmとした請求項19記載の殺菌水の原液。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、500〜700ppmとした請求項19記載の殺菌水の原液。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項18乃至請求項21のいずれか一記載の殺菌水の原液。
- 人体の口腔を除く全ての部位を適用対象とする殺菌水を生成する装置であって、塩化ナトリウム及び二酸化炭素が添加された原液を貯留する原液タンクと、該原液タンクに連通接続され前記原液を電気分解する電解槽とを備え、該電解槽は、前記原液を電気分解することによって、有効塩素濃度が1〜700ppm、pHが6〜8であって、かつ次亜塩素酸及び炭酸水素ナトリウムを含む殺菌水を生成するようになっていることを特徴とする殺菌水の生成装置。
- 有効塩素濃度を、前記1〜700ppmに代えて、201〜700ppmとした請求項23記載の殺菌水の生成装置。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、400〜700ppmとする請求項24記載の殺菌水の生成装置。
- 有効塩素濃度を、前記201〜700ppmに代えて、500〜700ppmとする請求項24記載の殺菌水の生成装置。
- pHを、前記6〜8に代えて、7〜8とした請求項23乃至請求項26のいずれか一記載の殺菌水の生成装置。
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