JPWO2009084122A1 - 鉄強化組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、血液中の鉄濃度を上昇させるための、組成物を提供する。本発明の組成物は、鉄量として同等であるヘム鉄又は水不溶性無機鉄と比較して、鉄の吸収がよく、また鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が少ない。したがって、繰り返し投与する場合、空腹時、又は食前、食間若しくは食後に投与する場合、胃への刺激が少ないことが望ましい対象に投与する場合に適している。

Description

本発明は、高い濃度で鉄を含有する酵母の利用に関する。本発明により、鉄を効果的に吸収することができる。本発明は食品、飼料及び医薬の分野で有用である。
鉄は生体に必要不可欠なものであり、食物において鉄を強化するために、様々な補強素材が開発されてきている。
水溶性の無機鉄は生体内での吸収性に優れるものの、鉄味が強く、またイオン化した鉄が胃壁に作用し、潰瘍の原因になることがあるという問題があり、一方、水不溶性の無機鉄は、凝集し、沈殿しやすく、生体吸収性に劣るという問題があった。このような問題を解決すべく、例えば、特許文献1は、25℃の水中での溶解度積が1.0×10−7以下の金属塩類100重量部に対して、HLBが6〜10の乳化剤を0.5〜50重量部含有してなり、かつ前記金属塩類が平均粒子径0.05〜1μmの微粒子であることを特徴とするミネラル組成物を開示する。また、特許文献2は、水不溶性鉄塩及びキレート剤を含有することを特徴とする鉄強化組成物を開示する。
また、吸収性がよく副作用の少ない鉄補給組成物の製造方法を得ることを課題として、特許文献3は、微細化した鉄原料に所定量の浄化水を加えて蒸煮殺菌し、つぎにこれに麹菌と糖質を加えて一次醗酵させたのち、麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌を単独でまたはこれらの2種以上の混合物と糖質を加えて二次醗酵させ、さらにこの醗酵鉄原料にクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸から選ばれるカルボキシル基を有する有機酸を単独でまたはこれらの2以上の混合物を混合して35℃〜45℃の温度に保持して熟成し、さらにこれを濾過抽出することを特徴と鉄補給組成物の製造方法を開示する。
さらに、酵母は、培地に金属を添加すると、その金属を菌体中に取り込むことが知られていることから、種々のミネラルを高い濃度で含有させた酵母が利用されつつある。例えば、特許文献4は、ミネラル酵母を含有することを特徴とするミネラル含有食品を開示する。また、特許文献5は、高濃度の鉄含有酵母を安定的に製造する手法を開発することを課題として、鉄の存在下で酵母をpH2.5以下において12時間以上撹拌することを特徴とする鉄含有酵母の製造法を開示する。
WO2005/004640 特開2007−215480 特開2007−209324 特開2000−125811 特開2006−238878
しかしながら、本発明者らの検討によると、水溶性の無機鉄を用いるものは、依然として胃への刺激が懸念され、また水不溶性の無機鉄を用いるものは乳化剤等の添加物が多いことから天然志向には合致せず、さらに粉っぽいという食味の点では好ましくない特徴があることが分かった。また、製造に手間がかかるものもあった。
そして、鉄高含有酵母については、含まれる鉄の生体利用性について検討されておらず、鉄強化を目的とする場合、実際にはどのように用いたら効果的なのかは一切明らかになっていなかった。
本発明者らは、鉄等のミネラル含有酵母について研究・開発してきた。そして、今般、鉄含有酵母の単回投与及び反復投与をラットに対して行い、鉄の生体利用性及び胃への障害性について検討した結果、本発明を完成した。
本発明は、以下のものを提供する:
1)乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、血液中の鉄濃度を上昇させるための、組成物;
2)繰り返し投与するための、1)に記載の組成物;
3)一日あたり1〜400mgの鉄を投与するための、2)に記載の組成物;
4)空腹時、又は食前、食間若しくは食後に投与するための、1)〜3)のいずれか1に記載の組成物;
5)乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、鉄量として同等であるヘム鉄又は水不溶性無機鉄と比較して、鉄の吸収がよい組成物;
6)鉄を酵母に含有させることを含む、血液中の鉄濃度を上昇させるための剤の製造方法;7)血液中の鉄濃度を上昇させるための剤が、鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が少ないものである、6)に記載の製造方法;
8)鉄を酵母に含有させることを含む、鉄の吸収を高める方法;
9)鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が低減されている、8)に記載の方法;
10)鉄欠乏に関連した疾患又は状態の処置方法であって、そのような疾患又は状態を有する対象に、乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を経口投与することを含む、方法;
11)胃への刺激が少ないことが望ましい対象に投与するための、10)に記載の方法。
図1は、血液中の鉄濃度の変化を表したグラフである。 図2は、対照群から摘出した胃内壁の写真である。 図3は、鉄酵母を鉄含有量として150mg/kgとなるように14日間反復投与し、投与最終日翌日に摘出した胃内壁の写真である。 図4は、硫酸鉄を鉄含有量として150mg/kgとなるように14日間反復投与し、投与最終日翌日に摘出した胃内壁の写真である。
本明細書で「酵母」というとき、特別な場合を除き、ビール酵母、パン酵母、清酒酵母を含む。また、圧搾酵母、乾燥酵母、活性乾燥酵母、死滅酵母、殺菌乾燥酵母などの種々の形態の酵母菌体を含む。また、酵母菌体と実質的に同じ組成からなる酵母菌体由来物(例えば、酵母菌体の破砕物、粉末)を含む。
本発明に用いられる酵母は、乾燥酵母菌体、酵母脱水物、菌体懸濁液等の種々の形態であり得る。食品、飼料又は医薬としての保存性、安定性、運搬・保管、取り扱い、投与の利便性・容易性の観点からは、殺菌乾燥酵母であることが好ましい。
本発明に用いられる酵母は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母であり、特に限定されるものではない。好ましくは食経験が豊富なサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)であり、より好ましくは酒酵母 Kyokai No.9、独立行政法人酒類総合研究所より譲渡)や、パン酵母、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT−4株(BP−8081)を挙げることができる。
鉄を所望の濃度で含有させた酵母(鉄含有酵母)の製造方法としては、特許文献5(特開2006−238878号)に記載された方法を参照することができる。鉄の取り込ませ方には、特に制限はないが、低pH法は、高濃度で鉄を含有させることができ、有益である。
酵母にどの程度の鉄を含有させるかは、鉄の一日の所要量(成人男性10mg、成人女性12mg)、許容上限摂取量(40mg)を考慮してもよい。あるいは、既存の、鉄剤の適用(例えば、血欠乏性貧血に対しては局方に収載された硫酸鉄(II)があるが、これは鉄欠乏状態にある患者に対し、成人一日100〜210mgを投与することとされている。)を考慮してもよい。例えば、乾燥菌体100gあたり0.3g〜30g、より好ましくは0.5g〜10g、さらに好ましくは1g〜5gとなるように、含量を調節するとよい。
本明細書で酵母について鉄の含有量をいうときは、特別な場合を除き、乾燥酵母菌体の100gあたりに含まれる量をいう。酵母の鉄含量は、例えば、原子吸光法、詳細には、乾燥酵母菌体2gを秤取し、灰化し(500℃で1〜5時間)、塩酸抽出し、ろ過し、そして定容する。得られた溶液について原子吸光分光光度計により測定することにより、決定することができる。
本発明に用いられる酵母には、鉄のほか、他のミネラルの一種又は複数種の組み合わせ、例えば、亜鉛、銅、マンガン、セレン、モリブデン、クロム、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ヨウ素およびナトリウムよりなる群から選択される一種以上が含有される場合もある。
本明細書で酵母に関連して「組成物」というときは、特別な場合を除き、酵母及び酵母以外の成分を含むものをいう。本発明の組成物は、食品組成物、飼料組成物又は医薬組成物とすることができ、鉄含有酵母のほか、食品、飼料又は医薬として許容される添加物を含んでもよい。本発明の「血液中の鉄濃度を上昇させるための剤」は、鉄含有酵母自体であってもよい。本明細書で「食品」というときは、特別な場合を除き、ヒトを対象とした飲食物を含み、「飼料」というときは、特別な場合を除き、ヒト以外の動物を対象とした飲食物を含み、また本明細書で「医薬」というときは、特別な場合を除き、ヒトのための医薬、及びヒト以外の動物のための医薬を含む。
本発明の組成物は、血液中の鉄濃度を上昇させるためのものである。本明細書では、本発明の組成物について説明することがあるが、特別な場合を除き、組成物についての説明は、本発明の血液中の鉄濃度を上昇させるための剤にもあてはまる。
本発明者らの検討によると、ヘム鉄を含む従来の製剤や水不溶性無機鉄を含む従来の製剤を経口投与しても、血液中の鉄濃度は充分には上昇しなかった。これに対し、鉄含有酵母を含む本発明の組成物は経口投与した場合には、顕著な血液中の鉄濃度の上昇がみられ、また上昇の程度がそれらの製剤に比較して、高かった(実施例参照)。したがって、本発明の組成物は、鉄量として同等であるヘム鉄又は水不溶性無機鉄塩と比較して、鉄の吸収がよく、また血液中の鉄濃度が、より上昇する。本明細書で「鉄量として同等(である)」というときは、特別な場合を除き、比較する各々において鉄(Fe)分量を一致させることをいう。
ある試料が、鉄量として同等であるヘム鉄又は水不溶性無機鉄塩と比較して、鉄の吸収がよいかどうかは、試料を適切な条件で経口投与し、血液中の鉄濃度を経時的に測定し、血中濃度の時間経過をグラフで表し、そして血中濃度−時間曲線下面積(AUC)を求め、比較することによって判断することができる。あるいは、試料を適切な条件で経口投与し、鉄の最高血中濃度(Cmax)を求め、比較することによって判断してもよい。最高血中濃度の比較は、血液中の鉄の濃度が、より上昇するものであるかどうかを判断する際にも指標とすることができる。
比較の際に用いることができるヘム鉄は、ヘム鉄(鉄ポルフイリン複合体)そのもののほか、ヘム鉄を含む製剤の形態のものでもよい。同様に、水不溶性無機鉄塩としては、水不溶性無機鉄塩そのもののほか、それを含む製剤の形態のものを用いてもよい。水不溶性無機鉄塩には、ピロリン酸第二鉄が含まれる。比較に用いるヘム鉄の具体例は、血液から得られたヘモグロビンを酵素処理し、精製して得られたものであって、鉄を2%以上(o−フェナントロリン比色法)、窒素化合物を60%以上(窒素定量換算法)含み、粒度が60メッシュ通過95%以上であるものである(例えば、ヘムロンSH(秋田十條化成株式会社))である。比較に用いる水不溶性無機鉄塩の具体例は、ピロリン酸第二鉄及び乳化剤からなり、鉄分を80.0±4.0mg/g含有する鉄製剤(例えば、サンアクティブFeP80(太陽化学株式会社))である。
本発明は、別の態様として、乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、絶食時のラットに10mg/kgとなる用量で単回経口投与した際に得られる鉄の最高血中濃度(Cmax)が、250μg/dL、好ましくは300μg/dLである、組成物を提供する。
各種の鉄を含む製剤を経口投与したときの血液中の鉄濃度は、当業者であれば適宜確認することができる。詳細な条件は、本明細書の実施例の記載を参照することができる。
本発明の組成物は、鉄含有酵母を含むが、硫酸鉄(II)を含む従来の製剤には胃などの消化管への刺激が強いという不都合があったのに対し、本発明の組成物は胃への刺激が低減されている(実施例参照)。これは、本発明の組成物においては、鉄は、無機の鉄およびそのイオンが遊離の状態で存在しているのではなく、生体由来の蛋白質や多糖類などの酵母由来の高分子の物質中に取り込まれている形で存在しているために、胃などの消化管には刺激を与えずに、適度に吸収されて始めて栄養分として機能するためであると考えられる。
ある試料が、「鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が少ないものである」かどうかを判断する際には、硫酸鉄(II)そのものを用いる。硫酸鉄(II)の具体例は、硫酸鉄(和光純薬工業株式会社)である。
本発明は、別の態様として、鉄を酵母に含有させることを含む、血液中の鉄濃度を上昇させるための剤の製造方法であって、該剤が胃への刺激が少ないものである(すなわち、鉄含有量として150mg/kg/dayの用量で、14日間ラットに反復投与した際に胃内壁に潰瘍を形成しないものである)該製造方法;及び鉄を酵母に含有させることを含む、鉄の吸収を高める方法であって、該酵母を鉄含有量として150mg/kg/dayの用量で、14日間ラットに反復投与した際に胃内壁に潰瘍を形成しないものである、該方法を提供する。
本発明は、さらに別の態様として、鉄を酵母に含有させることを含む、鉄を経口投与する際の胃への刺激を低減する方法も提供する。
胃への負担が少ないことから、本発明の組成物は繰り返し(例えば1日1〜3回で、3日以上、好ましくは7日以上)投与するのに適しており、また多量(例えば、一日あたり1〜400mg、例えば、鉄欠乏状態にある成人に対しては一日あたり100〜400mg、鉄欠乏状態にない成人に対しては一日当たり1〜40mg)の鉄の摂取が必要である場合に用いるのに適している。
また、硫酸鉄(II)を含む従来の製剤については、副作用(胃腸障害;吐き気・嘔吐・下痢・便秘・心窩部痛、潰瘍等)が強い場合には食事直後又は食事中に投与することが勧められていたが、本発明の組成物の場合は、空腹時にも投与することができ、又は食前、食間若しくは食後に投与してもよい。本発明において「食前、食間若しくは食後」というときは、食事直後及び食事中を含まない趣旨である。また、本発明の組成物は、胃への刺激が少ないことが望ましい対象、例えば前述の副作用が気になる場合に投与するのに適している。
各種の製剤を経口投与したときの胃への刺激の程度は、当業者であれば適宜確認することができる。詳細な条件は、本明細書の実施例の記載を参照することができる。
本発明の組成物は、呈味性にも優れている。本発明の組成物に含まれる鉄含有酵母には、鉄に由来する収斂味(鉄味)がなく、ヘム鉄のような生臭さもない。
また、本発明の組成物は、保存安定性にも優れている。ヘム鉄の賞味期限が12ヶ月であるのに対して、鉄含有酵母は、本発明者らの検討によると、既に24ヶ月まで保存試験終了し、変化は見られていない。
なお、本発明者らの更なる検討によると、鉄含有酵母をラットに28日間反復経口投与したときの、ラットの肝臓における鉄の貯蔵を確認したところ、肝臓中の総鉄量に投与用量依存的な増加が認められ、また、一定量の投与群の肝臓中の総鉄量は、対照群と比較して有意な増加が認められた。したがって、本発明の組成物は、肝臓中の鉄の蓄積量を増加させるためのものでもある。
本発明においては、鉄含有酵母は、血液中の鉄濃度を上昇させるための剤として、そのまま投与することができ、また、鉄含有酵母を組成物に配合して投与することもできる。
鉄含有酵母を含む本発明の組成物は、食品組成物とすることができる。本明細書でいう「食品」には、飲料の形態であるものも含まれる。本発明の食品組成物は、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、ドリンク剤、サプリメント、治療食(濃厚流動食、嚥下障害用食品、その他の治療食)、アスリート向け製品(飲料、粉末プロテイン)、栄養調理食品(ブロック状食品、飲料、ゼリー飲料、粉末、シリアル)等とすることができ、またカプセル剤、錠剤、丸剤、タブレット、散剤、顆粒剤等の形態とすることができる。
鉄含有酵母を含む本発明の組成物は、ヒト以外の動物(例えば、ペット、家畜)を対象とした飼料組成物とすることができる。飼料組成物には、ペットフード、ペット用サプリメント、ペット用ドリンク、ペット用おやつ、ペット用養生食、家畜用飼料が含まれる。ヒト以外の動物には、ヒト以外の哺乳類(例えば、イヌ、ネコ、牛、馬、豚、山羊、羊、兎)、鳥類(例えば、鶏、インコ)、は虫類、両生類、魚類が含まれる。
鉄含有酵母を含む本発明の組成物は、医薬組成物とすることができる。医薬組成物には、ヒトを対象にしたものと、ヒト以外の動物を対象とした動物用医薬組成物とが含まれる。医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、タブレット、散剤、顆粒剤等の形態とすることができる。医薬組成物は、経口投与剤の形態とすることが好ましい。
本発明の医薬組成物は、鉄欠乏に関連した疾患又は状態の処置のために用いることができる。処置の対象には、ヒト及び上述のヒト以外の動物が含まれる。本明細書において、疾患又は状態を「処置(する)」というときは、特別な場合を除き、対象となる疾患もしくは状態を、予防もしくは治療すること、軽度に抑えること、又は進行を抑えることを意味する。「処置」には、対処的な治療と根本的な治療が含まれ、また長期的な予防及び/又は治療とが含まれる。本明細書でいう「鉄欠乏に関連した疾患又は状態」には、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏からくる疲れ、だるさ、及び鉄の補給が好ましい状態(肉体疲労、妊娠授乳期、病中病後、食欲不振、栄養障害、又は発熱性消耗性疾患等の場合に生じる鉄欠乏)が含まれる。鉄欠乏性貧血は、成長期、妊娠中、授乳中等の際の需要の増大;慢性的な出血(潰瘍、腫瘍による消化管出血、痔からの出血);胃、十二指腸切除後等の吸収不良;月経過多(子宮筋腫、子宮内膜症等)の際に生じることが多い。
本発明の食品組成物、飼料組成物又は医薬組成物は、食品、飼料又は医薬として許容可能な種々の添加物及び/又は他の成分、例えば乳化剤、安定剤、甘味料、着色料、保存料、酸化防止剤、香料、酸味料、調味料、防かび剤(防ばい剤)、ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、葉酸)、ミネラル(例えば、カルシウム、銅、コバルト、マンガン)を含んでもよい。食品組成物、飼料組成物又は医薬組成物中への鉄含有酵母の配合量は、その食品の対象となる者(例えば、成人、子供、高齢者、男性、女性、病者、健常者、アスリート)又は動物、目的とする効果(例えば、特定の成分の補給・強化、栄養バランスの改善、疾病の予防・治療、健康維持)、その食品が摂取される場面・頻度等を考慮して、適宜設計することができる。また、鉄含有酵母の配合の段階も、適宜選択することができる。鉄含有酵母の特性を著しく損なわない限り配合の段階は特に制限されない。例えば、食品製造の初期の段階に原材料に配合することができる。
[実施例1:鉄含有酵母の製造]
(種酵母の培養)
500mlバッフル付き三角フラスコに下表の組成の培地を用意し、マザーシャーレより1白金耳を植菌し30℃で24時間振とう培養を行った。得られた菌体を遠心分離により集菌し、さらに無菌水で2回洗浄した後水に固形分量20%になるように加え、種酵母とした。
(鉄含有酵母の製造)
種酵母をサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT−4株(BP−8081)を用いて下表の培地で、32℃で24時間撹拌培養を行い、菌体分離後、培養液と同量の水で3回懸濁、遠心分離を繰り返し、培地成分を除去した後に、集菌し、水分含量24%の菌体を得た。
この菌体を、60℃15分加熱殺菌後、直ちにスプレードライヤーにて、入り口温度180℃、出口温度90℃にて乾燥し、鉄濃度5.91g/100gの乾燥鉄含有酵母(以下、「鉄酵母」という。)を得た。なお、鉄濃度は、乾燥酵母を灰化した後、原子吸光度計により乾燥菌体当りの鉄含量として測定した。
[実施例2:ラットによる単回投与試験]
ラットに鉄酵母を単回投与し、投与前、投与1、2、4、6及び9時間後に採血を行い、血液中の鉄濃度を測定した。測定結果より鉄酵母の血液中の鉄濃度に及ぼす影響を検討した。また、採血終了後に、すべてのラットの胃を摘出し、肉眼的観察を行った。
[実験方法]
投与液:
実施例1で得られた鉄酵母(鉄含有量5.91g/100g)101.52mg、338.4mg、1015.2mg、及び3384mgを、精密電子天秤(FB−2000、研精工業株式会社)を用いて秤量し、乳鉢及び乳棒で細かく粉砕した。各々を注射用水で懸濁し、充分均一化したのを確認して、全量を30mLとした。各々の懸濁液を、順に、50.76mg/kg投与液、169.2mg/kg投与液、507.6mg/kg投与液、及び1692mg/kg投与液とした。調製後の投与液は投与時まで室温保存した。
被験動物:
体重233〜251gの10週齢のラット(SPF、系統:Slc:Wistar、雄、日本エスエルシー株式会社(静岡県浜松市)30匹を用いた。なお、ラットは、入荷後8日間の検疫・馴化期間を設けて馴化させ、検疫・馴化期間中の一般状態と体重成績で順調な発育が認められた健康なものを試験に使用した。
検疫・馴化終了日に測定した体重を用いてコンピュータを用いた完全無作為抽出法により各群の体重の平均が等しくなるよう5群に群分けを行った。
ラットは、温度20.0〜26.0℃、相対湿度40.0〜70.0%、換気回数10〜20回/時間、照明時間12時間(7:00〜19:00)の環境下で、ステンレス製網ハンガーケージ(43cm×27cm×15cm)で飼育した。1ケージ当たりの匹数は2〜3匹とした。
飼料は、放射線滅菌固型飼料[FR−2;株式会社船橋農場(千葉県船橋市)]を自由に摂取させた。なお、被験物質投与日前日17:00より絶食を行った。また、上水道水を給水瓶により自由に摂取させた。
投与量及び投与方法:
下表に示したとおり、対照群1群及び被験物質投与群4群の計5群構成とした。動物数は6匹/群とした。
経口ゾンデ及びシリンジを用いて強制経口投与した。なお、投与液量は投与日に測定した体重より算出した。単回投与とした。
観察及び検査項目:
(1)一般状態及び生死の観察
試験期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回観察した。
(2)血液中の鉄濃度測定
各被験物質投与前、投与1、2、4、6及び9時間後に頸静脈より0.4mL採血を行った。採取した血液は、4℃、1700×gで15分間遠心分離し、得た血漿について、LタイプワコーFe(和光純薬工業株式会社)を用いて、自動分析装置(7170形、日立計測エンジニアリング株式会社)により鉄濃度を測定した。
鉄濃度の測定値は平均値±標準誤差で表した。鉄濃度は、各測定時間で注射用水投与群を対照としてDunnett多重比較検定を行った。有意水準は5%及び1%で表示した。データの解析にはExcel 2003及びExcel 2004(マイクロソフト株式会社)、SAS ver.8.02(株式会社SASインスティチュートジャパン)及びEXSAS ver.7.14(株式会社サイエンティスト社)を使用した。
(3)剖検
採血終了後に、すべての動物を剖検して胃の幽門部を結紮し、口から生理食塩水3mLを流し込み胃を膨らませた後、胃の噴門部を結紮し胃を摘出した。摘出した胃を中性緩衝ホルマリン溶液に浸し、15分後に胃を切開し、胃内壁の肉眼的観察を行った。
[結果]
(1)一般状態及び生死の観察
全例において死亡例及び一般状態に異常は認められなかった。
(2)血液中の鉄濃度測定
結果を下表に示した。
各々の濃度の鉄酵母投与群において、注射用水投与群と比較して、投与1及び2時間後の血液中の鉄濃度に有意な増加が認められた。
(3)剖検
採血終了後に行った胃内壁の肉眼的観察において、すべての投与群で出血等の異常は認められなかった。
[まとめ]
鉄酵母投与後の血液中鉄濃度の変化に関しては、すべての投与用量で投与後1及び2時間後で鉄濃度の有意な増加が認められた。これは鉄酵母に含まれている鉄成分が血液中に吸収され、血液中の鉄濃度を増加させたと考えられる。また、血液中鉄濃度は用量依存的な増加を示した。
剖検時の胃内壁の肉眼的観察においては、すべての投与群で出血等の異常が認められなかったことから、本試験において鉄酵母の最高用量である1692mg/kgでは胃内壁に障害を与えないことが明らかとなった。
[実施例3:素材による比較試験]
ラットに鉄酵母、硫酸鉄、水不溶性無機鉄塩、ヘム鉄を、鉄含有量として10mg/kgとなる用量で単回経口投与した。投与前、投与1、2、4、6及び9時間後に採血を行い、血液中の鉄濃度を測定し、各被験物質の血液中の鉄濃度に及ぼす影響を検討した。また、採血終了後、すべてのラットの胃を摘出し、胃内壁の肉眼的観察を行った。
[実験方法]
投与液:
(1)鉄酵母投与液
実施例1の鉄酵母(鉄含有量:5.91g/100g)338.4mgを用い、実施例2と同様に、169.2mg/kg投与液を調製した。
(2)硫酸鉄投与液
硫酸鉄(和光純薬工業株式会社、ロット番号:LTE1372、鉄含有量:20.08g/100g)99.5mgを精密電子天秤を用いて秤量し、乳鉢及び乳棒で細かく粉砕した。注射用水で懸濁し、充分均一化したのを確認して全量を30mLとし、この懸濁液を49.75mg/kg投与液とした。
(3)水不溶性無機鉄塩投与液
ピロリン酸第二鉄及び乳化剤を含む製剤、サンアクティブFeP80(太陽化学株式会社、鉄含有量:8g/100g)250mgを用い、同様に125mg/kg投与液とした。
(4)ヘム鉄投与液
ヘムロンSH(秋田十條化成株式会社、ロット番号:180718−2、鉄含有量:2g/100g)1000mgを用い、同様に500mg/kg投与液とした。
被験動物:
体重234〜249gの10週齢のラット(SPF、系統:Slc:Wistar、雄、日本エスエルシー株式会社(静岡県浜松市)30匹を用いた。免疫・馴化、群分け、管理、飼育方法は、実施例2に記載したのと同様とした。なお、被験物質投与日前日17:00より、絶食を行った。また、上水道水を給水瓶により自由に摂取させた。
投与量及び投与方法:
下表に示したとおり、対照群1群及び被験物質投与群4群の計5群構成とした。動物数は6匹/群とした。
経口ゾンデ及びシリンジを用いて強制経口投与した。なお、投与液量は投与日に測定した体重より算出した。
観察及び検査項目:
(1)一般状態観察及び生死の観察
投与期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回以上観察した。
(2)血液中の鉄濃度測定
各被験物質投与前、投与1、2、4、6及び9時間後に頸静脈より0.4mL採血を行い、実施例2と同様にして、鉄濃度を測定した。また、実施例2と同様にして、測定値を統計学的方法により処理した。
(3)剖検
実施例2と同様にして、胃内壁の肉眼的観察を行った。
[結果]
(1)一般状態及び生死の観察
全例において死亡例及び一般状態に異常は認められなかった。
(2)血液中の鉄濃度測定
結果を下表及び図1に示した。
鉄酵母投与群は、注射用水投与群と比較して、投与1、2及び4時間後の血液中の鉄濃度に有意な高値が認められた。硫酸鉄投与群は、鉄酵母投与群と比較して、投与1及び2時間後の血液中の鉄濃度に有意な高値が認められた。
一方、水不溶性無機鉄塩投与群は、鉄酵母投与群と比較して、投与1及び2時間後の血液中の鉄濃度に有意な低値が認められた。また、ヘム鉄投与群は、鉄酵母投与群と比較して、投与1、2、4及び6時間後の血液中の鉄濃度に有意な低値が認められた。
(3)剖検
胃内壁の肉眼観察において、すべての投与群で出血等の異常は認められなかった。
[まとめ]
硫酸鉄投与群の血液中の鉄濃度がすべての投与群の中で最も高値を示したが、その理由としては、硫酸鉄以外の被験物質は人体が摂取する鉄製剤であり調製後の投与液が懸濁液であったのに対して、硫酸鉄は試験・研究用に使用する試薬で調製後の投与液が溶液であり、遊離の鉄イオンが直接ラット体内に吸収されたためと考えられた。
鉄酵母投与群、水不溶性無機鉄塩投与群及びヘム鉄投与群の中では、鉄酵母投与群が他の群と比較して有意な鉄濃度の高値を示したことから、より鉄吸収性に優れていることが明らかとなった。
剖検時の胃内壁の肉眼的観察において、すべての投与群で胃内壁に出血等の異常が認められなかったことから、本試験において投与した投与用量では胃内壁に障害を与えないことが明らかとなった。
[実施例4:潰瘍形成試験]
ラットに鉄酵母又は硫酸鉄を、鉄含有量として150mg/kgとなるように14日間反復投与し、投与開始日、投与8日目及び投与最終日翌日に採取した血液で血液中の鉄濃度を測定し、さらに、投与最終日翌日に採取した全血液で血液・血液生化学的検査を実施した。投与最終日翌日の採血終了後、すべての動物の胃を摘出し、胃内壁の写真撮影を行った。また、注射用水投与群及び鉄酵母投与群の肝臓及び脾臓を摘出し、臓器中の貯蔵鉄量を測定した。測定結果より鉄酵母の胃に与える影響及び臓器貯蔵鉄に対する影響を検討した。
[実験方法]
投与液:
(1)鉄酵母投与液
実施例1の鉄酵母(鉄含有量:5.91g/100g)5.0964mgを用い、実施例2と同様に、2548.2mg/kg投与液として調製した。
(2)硫酸鉄投与液
硫酸鉄(和光純薬工業株式会社、ロット番号:LTE1372、鉄含有量:20.08g/100g)1.5gを用い、同様に750mg/kg投与液として調製した。
被験動物:
体重240〜252gの10週齢のラット(SPF、系統:Slc:Wistar、雄、日本エスエルシー株式会社(静岡県浜松市)18匹を用いた。免疫・馴化、群分け、管理、飼育方法は、実施例2に記載したのと同様とした。なお、被験物質投与前の絶食は行わなかった。ただし、被験物質投与14日目の17:00より絶食し、15日目に採血した。また、上水道水を給水瓶により自由に摂取させた。
投与量及び投与方法:
下表に示したとおり、対照群1群及び被験物質投与群2群の計3群構成とした。動物数は6匹/群とした。
経口ゾンデ及びシリンジを用いて強制経口投与した。なお、投与液量は投与日に測定した体重より算出した。投与期間は、投与開始日を1日目と起算して、14日間とした。
観察及び検査項目:
(1)一般状態観察及び生死の観察
投与期間中は、全例について一般状態及び生死を1日1回観察した。
(2)体重測定及び摂餌量測定
投与開始日、投与8日目の投与前及び剖検日に体重測定を実施した。摂餌量測定は、投与開始前、投与7日目及び投与14日目に実施した。
(3)血液中の鉄濃度測定
投与開始日の投与前、投与8日目の投与前及び投与最終日翌日に頸静脈より0.4mL採血を行った。採取した血液を4℃、1700×gで15分間遠心分離し、得た血漿について、LタイプワコーFe(和光純薬工業株式会社)を用いて、自動分析装置(7170形、日立計測エンジニアリング株式会社)により鉄濃度を測定した。なお、投与開始日及び投与8日目の採血は絶食を行わず、投与最終日である14日目の17:00より絶食を行い、15日目に採血した。
(4)血液・血液生化学的検査
投与最終日翌日の採血終了後、ラットの頚動脈より2.5mLの採血を行った。採取した血液の1.0mLを血液学的検査に使用し、残りの1.5mLは4℃、1700×gで15分間遠心分離し、得た血漿について血液生化学的検査に使用した。
血液学的検査:RBC、HGB、HCT、PLT、WBC、MCV、MCH、MCHC、RET、NEUT、LYMPH、MONO、EO、BASO
血液生化学的検査:AST(ALT)、ALP、TP、ALB、A/G、BUN、CRE、T−BIL、グルコース、TG、総コレステロール、Ca、P、Na、K、Cl
(5)剖検
腹部大動脈からの全採血終了後に、注射用水投与群及び鉄酵母投与群において心臓から生理食塩水を還流させ血液を除去した。
肝臓及び脾臓を摘出して−80℃の液体窒素で凍結して、−80℃の冷凍庫で保存した後、臓器中の貯蔵鉄量測定に用いた。
注射用水投与群及び鉄酵母投与群においては肝臓及び脾臓摘出後に、硫酸鉄投与群は全採血終了後に、実施例2と同様に、胃を切開し、胃の内壁をデジタルカメラ(FinePix4900Z、富士フィルム株式会社)で撮影し、撮影時に潰瘍形成の有無を確認した。
(6)臓器中貯蔵鉄量測定
剖検時に摘出した肝臓及び脾臓を用いて、以下のようにして臓器中の貯蔵鉄量測定を行った。
1)凍結臓器を測定日当日に解凍した。
2)各臓器20〜30mgを秤量し(XS105 Dual Range、METTLER)、10倍容量の生理食塩水を加えて11倍希釈した。
3)ホモジナイザーで充分に破砕、撹拌した。
4)ホモジネート200μLをエッペンチューブに移し、200μLの1%Triton含有0.4M−酢酸緩衝液(pH6.25)を添加した。
5)ボルテックスミキサーで2分間撹拌した。
6)遠心分離(12000rpm、4℃、10分間)し、上清を新しいエッペンチューブに回収した。
7)測定キットを用いて、各検体5回ずつ測定を行い、平均値を求めた。
測定キット:ランピアリキッド SFe(極東製薬工業株式会社)
キャリブレータ:Fe標準液 200μg/dL(極東製薬工業株式会社)
測定機器:マイクロプレートリーダー マルチスキャンJX(サーモエレクトロン)
(7)統計学的方法
測定値は平均値±標準誤差で表した。体重及び鉄濃度は各測定日で注射用水投与群と鉄酵母投与群、注射用水投与群と硫酸鉄投与群のそれぞれ2群間でStudent t検定を行った。有意水準は5%及び1%で表示した。データの解析は、実施例2と同様に行った。
[結果]
(1)一般状態及び生死の観察
全例において死亡例は認められなかった。注射用水投与群及び鉄酵母投与群では一般状態に異常は認められなかったが、硫酸鉄投与群では投与1日目から投与終了日まで投与直後に自発運動の減少が認められ、翌日には回復していた。
(2)体重及び摂餌量の測定
結果を下表に示した。
鉄酵母投与群は、注射用水投与群と比較して、体重及び摂餌量ともに有意な変化は認められなかった。他方、硫酸鉄投与群の体重は、摂餌量の減少が認められた。また、注射用水投与群と比較して、投与8及び14日目の体重に有意な低値が認められた。
(3)血液中の鉄濃度測定
結果を下表に示した。
鉄酵母投与群及び硫酸鉄投与群とも、注射用水投与群と比較して、鉄濃度に有意な変化は認められなかった。
(4)血液学的検査及び血液生化学的検査
結果を下表に示した。
注射用水投与群では血液学的検査及び血液生化学的検査において異常は認められなかった。鉄酵母投与群は、注射用水投与群と比較して、K値に有意な低値が認められた。硫酸鉄投与群は、注射用水投与群と比較して、RBC、HGB、HCT、ALP、TP、ALB、BUN及びK値が有意な低値を、MCV、RET及びLYMPH値が有意な高値を示した。
(5)剖検
各群について典型的な結果を図2〜4に示した。注射用水投与群及び鉄酵母投与群では胃内壁に潰瘍は認められなかった(図2及び3)。硫酸鉄投与群で全例において胃内壁に潰瘍形成が認められた(図4)。
(6)臓器中貯蔵鉄量測定
結果を下表に示した。
脾臓の貯蔵鉄量は注射用水投与群で18.80μg/g、鉄酵母投与群で20.93μg/gであり注射用水投与群と比較して有意な高値が認められた。
[まとめ]
本試験で使用した鉄酵母及び硫酸鉄は鉄を含有しており、鉄含有量として150mg/kgとなるように投与を行った。また、本試験を実施する前に絶食させた動物に硫酸鉄1000mg/kg及び750mg/kgを、投与したところ、どちらの投与用量とも投与6時間後には動物が死亡したため、本試験では絶食は行わず、投与用量は750mg/kgとした。なお、絶食させた動物に鉄分量として同投与量となる鉄酵母3397.6mg/kg及び2548.2mg/kgを投与したところ、異常は認められなかった。
本試験の結果より、鉄酵母2548.2mg/kgの投与量で14日間反復投与しても胃内壁に潰瘍を形成せず、体重、摂餌量及び血液・血液生化学的検査でもK値以外の項目に影響を与えないことから、鉄酵母は安全であることが明らかとなった。一方、硫酸鉄750mg/kg投与は、一般状態観察において投与1日目から自発運動の減少、摂餌量の減少及びそれに伴う体重の増加抑制が認められ、全例において胃内壁に潰瘍形成が認められた。また、これらの変化に伴い血液・血液生化学的検査でも、様々な検査項目で変化が認められた。このことから、本試験条件下における硫酸鉄の反復投与は種々の異常を起こす毒性があることが明らかとなった。
また、肝臓の貯蔵鉄量においては注射用水投与群と比較して、鉄酵母投与群に有意な変化は認められなかったが、脾臓の貯蔵鉄量において有意な高値を認めた。
[実施例5:肝臓中の貯蔵鉄測定]
酵母鉄を反復経口投与したときの肝臓における鉄の貯蔵を確認するために、鉄酵母28日間反復経口投与後のラットの肝臓を採取し、肝臓中の総鉄量の測定を行った。
[実験方法]
飼料:
実施例1の鉄酵母と粉末飼料(FR−2、販売元:株式会社船橋農場、ロット番号:474、性状:粉末)とを5g:95gの割合で用手法により混合し、5%(w/w)鉄酵母混合飼料を調製した。また、5%(w/w)鉄酵母混合飼料と粉末飼料FR−2を1g:1gの割合で用手法により混合し、2.5%(w/w)鉄酵母混合飼料を調製した。被験物質の調製は1回/週の頻度で実施した。調製後、給餌するまで室温保存した。
粉末飼料FR−2及び鉄酵母混合飼料は、粉末用給餌器により自由に摂取させた。飲料水は上水道水を自動給水装置により自由に摂取させた。
被験動物:
ラット(Slc:SD、SPF、雄、日本エスエルシー株式会社(静岡県浜松市)を用いた。免疫・馴化、群分け、管理、飼育方法は、実施例2に記載したのと同様とした。ラットの週齢及び使用数は、下記に示したとおりである。
使用数 :18匹
操作開始時週齢:5週齢
剖検時週齢 :9週齢
下表に示したように、対照群(粉末飼料)1群及び鉄酵母投与群2群の計3群構成とした。
肝臓中の総鉄量の測定:
(1)剖検及びホモジナイズ
最終投与日翌日に、エーテル麻酔下でラットを剖検し、臓器に異常がないか確認を行い、肝臓を摘出し冷凍保存した。
肝臓組織約1gに10倍量の生理食塩水を添加し、ホモジナイズした。ホモジナイズ後、ホモジェネートの50μLに対して500μLの緩衝液(20mMチオグリコール酸と界面活性剤を含む0.4M酢酸緩衝液、pH6.25)を添加してよく攪拌し、12000rpmで10分間遠心分離して上清を得た。上清30μLに60μLの緩衝液を添加してよく攪拌して標本を得た。
(2)ブランクの測定
上記の標本について、790nmの吸光度を4回測定し、この値の平均値をブランクとした。
(3)肝臓中の総鉄量の測定
上記の標本に、発色剤(血清鉄測定用Fe C−テストワコーを精製水で2倍希釈)を10μL添加してよく攪拌し、室温で5分間放置した。その後、790nmの吸光度を4回測定し、この値の平均値からブランクの値を減じて最終の測定値とした。
統計学的方法:
測定値について、各群毎に各検査時点の平均値及び標準偏差値を算出した。
測定値について、個別データを用いてBartlettの方法による分散の一様性検定を実施し(有意水準、片側1%)、分散が一様な場合にはDunnett法により、一様でない場合にはノンパラメトリックDunnett法により、対照群に対する鉄酵母投与群の差を検定した(有意水準、両側5%及び1%)。
[結果]
結果を下表に示した。
肝臓中の総鉄量に用量依存的な増加が認められた。また、5%(w/w)投与群の肝臓中の総鉄量は、対照群と比較して有意な増加が認められた。
[まとめ]
鉄酵母をラットに28日間反復経口投与したときの、ラットの肝臓における鉄の貯蔵を確認するために、28日間反復経口投与終了後のラットの肝臓を採取し、肝臓中の総鉄量の測定を行った。
その結果、肝臓中の総鉄量に用量依存的な増加が認められた。また、5%(w/w)投与群の肝臓中の総鉄量は、対照群と比較して有意な増加が認められた。
以上の結果から、鉄酵母混合飼料をラットに28日間反復経口投与したとき、肝臓中の鉄の蓄積量が増加することが確認された。

Claims (11)

  1. 乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、血液中の鉄濃度を上昇させるための、組成物。
  2. 繰り返し投与するための、請求項1に記載の組成物。
  3. 一日あたり1〜400mgの鉄を投与するための、請求項2に記載の組成物。
  4. 空腹時、又は食前、食間若しくは食後に投与するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を含み、鉄量として同等であるヘム鉄又は水不溶性無機鉄と比較して、鉄の吸収がよい組成物。
  6. 鉄を酵母に含有させることを含む、血液中の鉄濃度を上昇させるための剤の製造方法。
  7. 血液中の鉄濃度を上昇させるための剤が、鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が少ないものである、請求項6に記載の製造方法。
  8. 鉄を酵母に含有させることを含む、鉄の吸収を高める方法。
  9. 鉄量として同等である硫酸鉄(II)と比較して、胃への刺激が低減されている、請求項8に記載の方法。
  10. 鉄欠乏に関連した疾患又は状態の処置方法であって、そのような疾患又は状態を有する対象に、乾燥菌体100gあたり0.3g以上の鉄を含有する酵母を経口投与することを含む、方法。
  11. 胃への刺激が少ないことが望ましい対象に投与するための、請求項10に記載の方法。
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