JPWO2009041175A1 - クロロヒドリン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

グリセリン等の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素のエステルと塩素化剤を反応させることによるクロロヒドリン類の製造方法であって、反応効率が高く、さらに経済性にも優れた製造方法を提供する。本発明のクロロヒドリン類の製造方法は、(A)多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程、及び(B)得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す工程を含む。(C)放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程を、更に含む製造方法が、より好ましい。

Description

本発明は、エピクロロヒドリン及びグリシドール等の有機化合物の製造のために用いられるクロロヒドリン類の製造方法に関する。
エピクロロヒドリンの製造に用いられるジクロロプロパノールは、アリルクロライドをクロロヒドリン化することにより一般的に製造される。しかし、この一般的な製造方法は、以前より副生成物であるトリクロロプロパン等の塩素化物が生成するという問題及び排水が多量に生じるという問題があり、新しい製造方法が望まれている。
ジクロロプロパノールの他の製造方法として、ギ酸や酢酸等の触媒存在下、グリセリンと塩化水素ガスを反応させてジクロロプロパノールを製造する方法(例えば、特許文献1〜3参照)が知られている。この方法はトリクロロプロパン等の塩素化物を副生することなく、ジクロロプロパノールが製造できる点で好ましい。
更に、この製造方法で使用される原料のグリセリンは、植物油や動物油を原料とする反応又はバイオディーゼルの製造により生成する低コストの再生可能資源であり、経済的又は環境的観点からも望ましい原料と考えられる(例えば、特許文献4参照)。
上記理由によりグリセリンを原料とするクロロヒドリンの製造方法に関し、反応に有効な触媒の探索、反応条件及び製造工程等について、近年活発に研究されている(例えば、特許文献5〜8参照)。現在は、触媒としてカルボン酸、カルボン酸誘導体及びカルボン酸構造を有する化合物等のカルボン酸系化合物が使用されている。
上述のグリセリンと塩化水素ガスを反応させるクロロヒドリンの製造方法は、一般に前記カルボン酸系触媒存在下、例えば、下記式(1)で示される。
Figure 2009041175
式(1)の反応が進むとともに、即ち、グリセリンが塩化水素ガスと反応し、モノクロロプロパンジオールと水が生成し、更に、そのモノクロロプロパンジオールが塩化水素ガスと反応し、ジクロロプロパノールと水が生成すると、反応は平衡に近づき反応速度が低下する。従って反応を効率的に進めるには、反応により生成した水と目的とするクロロヒドリン(即ち、モノクロロプロパンジオール及び/又はジクロロプロパノール)を反応混合物から除去することが好ましい。
反応により生じた水の除去は、一般に、反応混合物を加熱し、蒸留することにより行われるが、水は塩化水素と共沸する性質があるために、水に塩化水素が大量に同伴するので、工業的には塩化水素の損失が大きく、経済的に好ましくない。
DE197308 DE238341 US2144612 GB14767 WO2005/021476 WO2005/054167 WO2006/020234 WO2006/110810
本発明の目的は、上述したグリセリン等の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素のエステルと塩素化剤を反応させることによりクロロヒドリン類を得る製造方法において、反応効率が高く、さらに経済性にも優れた製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、反応混合物から、生成するクロロヒドリンと水をより効果的に取り出すことに注目し、検討を進めたところ、驚くべきことに、クロロヒドリンの製造において、得られた反応混合物を、放散用ガス(又は同伴用ガス)と向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出すことにより、上記課題を解決することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、一の要旨において、
(A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程、及び
(B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す工程
を含むクロロヒドリンの製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、反応混合物を放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出すので、反応を効率的に、また経済的に進めることができる。
放散用ガスは、塩化水素ガスを含む場合、(B)工程においても反応を進めることができるので、より反応を効率的に進めることができる。
(B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、クロロヒドリンの少なくとも一種と水を含んで成る場合、目的とするクロロヒドリンを(B)工程で取り出すことができ、より反応を効率的に進めることができる。
上述の本願製造方法において、(C) (B)工程で取り出され、放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程を、更に含む場合、(B)工程で取り出された反応生成物を凝縮して放散用ガスと分離することができ、より経済的に反応を進めることができる。
上述の本願製造方法において、(C)工程で凝縮しなかった放散用ガスを、(B)工程に使用することで、放散用ガスを(B)工程と(C)工程で循環させる場合、放散用ガスが再利用されるので、より経済的に反応を進めることができる。
図1は、本発明のクロロヒドリンの製造装置の一の態様を模式的に示す。
符号の説明
10 反応器、 11 グリセリン導入管、 12 触媒導入管、 13 塩化水素ガス導入管、 14 塩化水素ガス導入管、 15 管、 16 管、 17 管、 20 放散塔、 21 気液接触領域、 22 管、 23 管、 24 管、 25 管、 26 管、 27 管、 30 水分凝縮器、 31 管、 32 管、 33 循環部ブロア
発明を実施するための形態
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のクロロヒドリンの製造方法は、
(A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程(以下「(A)反応工程」ともいう)と
(B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す(又は除去する)工程(以下「(B)放散工程」ともいう)
の少なくとも二つの工程を有する。
まず、(A)反応工程について説明する。
出発原料である「多水酸基置換脂肪族炭化水素」とは少なくとも二つ以上の水酸基が別々の炭素原子に結合した脂肪族炭化水素を示し、脂肪族炭化水素の炭素数は、2〜60であることが好ましく、2〜40であることがより好ましく、2〜20であることが更に好ましく、2〜6であることが特に好ましく、2〜3であることが最も好ましい。そのような多水酸基置換脂肪族炭化水素として、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール等を例示できる。「多水酸基置換脂肪族炭化水素」は、グリセリンであることが好ましい。
「多水酸基置換脂肪族炭化水素のエステル」とは、多水酸基置換脂肪族炭化水素をエステル化した化合物をいい、例えば、エチレングリコールモノアセテート、グリセリンモノアセテート及びグリセリンジアセテート等を例示できる。
多水酸基置換脂肪族炭化水素及びそのエステルは、水、有機溶媒、塩、有機化合物を含んだものであってもよい。そのような出発原料として、例えば水、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を含んだ粗製グリセリン等を例示できる。また粗製多水酸基置換脂肪族炭化水素及びそのエステルを精製し、出発原料として精製後の多水酸基置換脂肪族炭化水素及びそのエステルを用いてもよい。多水酸基置換脂肪族炭化水素及びそのエステルの純度は、50〜99.9重量%であることが好ましく、80〜99重量%であることがより好ましい。
本発明に係る「塩素化剤」として、塩化水素ガス及び塩化水素ガスと不活性ガス(窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等)を混合したガスを使用することができる。
また、塩化水素は溶媒に溶かした溶液状態で使用してもよく、例えば、塩化水素を出発原料であるグリセリン、又はモノクロロヒドリン等のクロロヒドリンに溶解させた溶液であってもよい。更に、塩素化剤は、反応器の気相部分、又は液相部分に加えてもよい。
「多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステル」と「塩素化剤」とを反応させる際に、適宜触媒を使用することができる。「触媒」は、本発明が目的とするとするクロロヒドリン類を製造することが出来る触媒であれば特に制限されるものではない。そのような触媒として、例えば、カルボン酸、カルボン酸誘導体、ラクトン、ラクタム、固体触媒及びこれらの組み合わせを例示することができる。
「カルボン酸」として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ステアリン酸、コハク酸、フタル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マロン酸及びアジピン酸等を例示することができる。
「カルボン酸誘導体」として、例えば、上記カルボン酸の塩化物、臭化物、無水物及びエステル、上記カルボン酸のナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニア等のアンモニウム塩等のカルボン酸塩を例示することができる。
「ラクトン」として、例えば、カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等を例示することができる。
「ラクタム」として、例えば、ε-カプロラクタム及びγ-ブチロラクタム等を例示することができる。
「固体触媒」として、例えば、無機酸化物、無機ハロゲン化物及び強酸性有機化合物及びそれらの組み合わせを例示することができる。
「無機酸化物」として、例えば、金属酸化物、複合酸化物、オキシ酸及びオキシ酸塩が好ましい。
「金属酸化物」として、例えば、SiO、Al、TiO、Fe、ZrO、SnO、Ga、La、CeO及びMoO等を例示することができる。
「複合酸化物」として、例えば、SiO−Al、SiO−TiO、TiO−ZrO、SiO−ZrO及びMoO−ZrO等、ゼオライト、ヘテロポリ酸(例えば、P、Mo、V、W、Si等の元素を含有するポリ酸等)及びヘテロポリ酸塩等を例示することができる。
「オキシ酸」及び「オキシ酸塩」として、例えば、BPO、AlPO、ポリリン酸、酸性リン酸塩、HBO、酸性ホウ酸塩及びニオブ酸(Nb・nHO)等を例示することができる。
「無機ハロゲン化物」として、例えば、金属ハロゲン化物が好ましい。「金属ハロゲン化物」として、遷移金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド及びアクチノイド等の周期表3A族元素、チタン、ジルコニウム及びハフニウム等の周期表4A族元素、バナジウム、ニオブ及びタンタル等の周期表5A族元素、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金等の周期表8族元素、亜鉛等の周期表2B族元素等)、アルミニウム及びガリウム等の周期表3B族金属、ゲルマニウム及びスズ等の周期表4B族金属等の金属のフッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物等を例示できる。
「強酸性有機化合物」として、例えば、有機スルホン酸化合物が好ましい。有機スルホン酸化合物として、例えば、スルホン酸基含有イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂及び炭素縮合環を含むスルホン酸化合物(C)等を例示することができる。
触媒の濃度は、塩素化剤と反応させる出発原料の「多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステル」を100重量部として0.01〜90重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましく、0.3〜20重量部であることが更に好ましい。
また、固体触媒を使用する場合には、触媒を適当な大きさに成型して、例えば、管型反応器に充填した固定床流通式の反応装置を使用することもできる。
出発原料の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルを、例えば、槽型反応器、管型反応器等の適する反応器に入れて、場合により触媒を使用し、塩素化剤を導入して、(A)反応工程を行う。
(A)反応工程の反応温度は、20℃〜300℃であることが好ましく、50℃〜200℃であることがより好ましく、90℃〜150℃であることが特に好ましい。
(A)反応工程の圧力は反応を効率的に進めるために加圧条件であることが好ましいが、常圧または減圧条件であってもよい。反応圧力は、0.01MPaA〜10MPaAであることが好ましく、0.01MPaA〜2MPaAであることがより好ましく、0.1MPaA〜0.6MPaAであることが特に好ましい。
本発明の製造方法で得られる目的とする「クロロヒドリン」とは、少なくとも一つの水酸基及び少なくとも一つの塩素原子が別々の炭素原子と結合した化合物を示す。但し、グリセリンの三つの水酸基の一つが塩素原子で置換された2−クロロ−1,3−プロパンジオールは、クロロヒドリンの一種であるが、水酸基を二つ有するので、上述した「多水酸基置換脂肪族炭化水素」にも含まれる。従って、2−クロロ−1,3−プロパンジオールは、更に塩素化剤との反応に付することができるが、この場合、更なる反応により得られるクロロヒドリン、例えば、2,3−ジクロロ−1−プロパノールは、反応前のクロロヒドリンの2−クロロ−1,3−プロパンジオールより塩素原子が多く結合しており、塩素化度が高くなったといえる。言い換えれば、本発明では、より塩素化度が高いクロロヒドリンが目的物である。
クロロヒドリンとして、例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール及び2,3−ジクロロ−1−プロパノールを例示できる。
尚、本出願において、例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール及びこれらの混合物を総称して「モノクロロヒドリン」ともいい、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール及びこれらの混合物を総称して「ジクロロヒドリン」ともいう。
上述のように得られる反応混合物には、目的とする反応生成物であるジクロロヒドリン、中間生成物であるモノクロロヒドリン、未反応多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステル、反応により生成する水、例えばカルボン酸等の触媒、カルボン酸エステル等が含まれる。
上述の出発物は、例えば一度に反応器に加えるバッチ式で反応させてもよいが、例えば出発物を反応器に連続的に加える連続式で反応させてもよい。
次に、(B)放散工程について説明する。
上述の反応によって得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す。
反応混合物は、上述のような反応生成物を含み、一般的に液状で流動性の高い混合物であり、これを、放散用ガスと向流で接触させる。
(B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、水を含むことが好ましく、(B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、クロロヒドリンの少なくとも一種と水を含むことがより好ましく、その「クロロヒドリンの少なくとも一種」は、ジクロロヒドリンを含むことが好ましい。
上述したような液相中の成分を、気体との接触、即ち、気液接触によって、気相中に移動させる操作を「放散」と呼ぶ。「放散」は、蒸留塔内部で行われるような、液体を加熱して沸騰状態で塔下部に供給し、塔の内部で液体を沸騰状態で気液接触させる、いわゆる蒸留とは異なる。
ところで、多水酸基置換脂肪族炭化水素が有する水酸基を塩素原子に置換すると沸点が低下する傾向にある。例えば、エチレングリコール(沸点:197℃)の水酸基を塩素原子に一つ置換した2−クロロ−1−エタノールの沸点は、129℃であり、エチレングリコールの水酸基を二つ置換した1,2−ジクロロエタンの沸点は、57℃である。また、グリセリン(沸点:290℃(分解))の水酸基を一つ置換した3−クロロ−1,2−プロパンジオールの沸点は、213℃であり、グリセリンの水酸基を二つ置換した1,3−ジクロロ−2−プロパノールの沸点は、174℃である。これは、水酸基が有する水素結合がなくなるためであると考えられる。
従って、塩素原子による水酸基の置換度(以下「塩素化度」ともいう)がより高いクロロヒドリンは、出発原料である多水酸基置換脂肪族炭化水素と、塩素原子による水酸基の置換度がより低いクロロヒドリンよりも、沸点がより低いことが期待され、これのみを有機成分として溜出させることができる。従って、本発明は、目的とする塩素化度が高いクロロヒドリンを、高濃度で含有する組成物を得る方法であるともいえる。
例えば、目的とする塩素化度の高いクロロヒドリンが、ジクロロヒドリンである場合、反応混合物中に存在する未反応原料の多水酸基置換脂肪族炭化水素や中間生成物のモノクロロヒドリンは、ジクロロヒドリンと比較して蒸気圧が低いことが期待されるので、放散用ガスに同伴される有機物成分はほとんどがジクロロヒドリンであり得る。従って、放散により放散用ガスに同伴させて分離したジクロロヒドリンは、より高沸点化合物と分離する精留工程を経ずに、その後のけん化等の工程に使用することができる。
本発明に係る「放散用ガス」とは、反応混合物と接触させて、反応混合物から、比較的低沸点の反応生成物の少なくとも一部を同伴させて、反応混合物から取り出すために用いるガスをいう。この放散用ガスと反応混合物の接触は、効率の点から、向流で行う。
そのような放散用ガスとして、一般的に、例えば、窒素ガス等の不活性ガスや空気を例示することが出来るが、本願発明の製造方法においては放散用ガスは塩化水素ガスを含むことが好ましい。本願の製造方法を効率的に進めるために、放散用ガス、より好ましくは塩化水素ガスと上述の反応混合物を連続的に接触させて、連続的に反応混合物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出すことが好ましい。
放散用ガスとして、塩化水素ガスを利用することには、下記のようないくつかの長所がある。(i)(A)反応工程で使用される塩化水素ガスと同じガスなので、ガスの回収、再利用がし易い。(ii)(B)放散工程においても、未反応原料の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルの塩素化反応が進行し得る。
(B)放散工程の温度は、30℃〜200℃であることが好ましく、60℃〜150℃であることがより好ましい。また、放散工程の条件によっては、90℃〜130℃であることがより好ましい。
(B)放散工程の圧力は、放散が効率的に行われるならば、加圧条件であっても、常圧または減圧条件であってもよい。その圧力は、0.01MPaA〜2MPaAであることが好ましく、0.01MPaA〜1MPaAであることがより好ましく、0.05MPaA〜0.4MPaAであることが特に好ましい。
耐酸性の材料、例えば、磁製又はガラス製ラッシヒリング、ポールリング、インタックサドル、カスケード、ミニリング、テラレッド及びハイレックス等の不規則充填物、スルザーパック及びテクノパック等の規則充填物等の充填材及びトレー等で構成された気液接触領域を設けて、そこで、反応混合物と放散用ガスの接触を行ってもよい。上述の気液接触領域を通る反応混合物に関し、気液接触領域の断面積当たりの反応混合物の質量速度(L:kg/m・h)と気液接触領域の断面積当たりの放散用ガスである塩化水素ガスの質量速度(G:kg/m・h)との比(L/G)は、0.5〜100であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、2〜25であることが特に好ましい。
気液接触させた反応混合物は、更に繰り返し気液接触させてもよいし、反応工程に戻してもよいし、その一部を再び気液接触させ、一部を反応工程に戻してもよい。反応混合物の温度を適当な温度に保つために、反応混合物を適する方法で保温及び/又は加熱してよく、例えば、ヒーター、ジャケット、熱交換器等を利用してよい。
気液接触領域における放散用ガスの平均滞留時間は下記式で求められる。
平均滞留時間=気液接触領域(m)/単位時間当たりの気体の流量(m/s)
(ここで、「気液接触領域」の体積は、充填材が占める空間の体積である。)
放散用ガスの平均滞留時間は0.01〜30秒であることが好ましく、0.01〜20秒であることがさらに好ましく、0.01〜10秒であることが特に好ましい。平均滞留時間は水とジクロロヒドリンが効率的に留出すれば特に制限されることはない。しかし、平均滞留時間が長時間に及ぶ場合には、気液接触領域が巨大になり、さらには水、ジクロロヒドリンが留出しにくくなるので、適宜適切な大きさにすることが好ましく、上記の滞留時間にすることが好ましい。
(A)反応工程と(B)放散工程は、各々独立した条件で行うことができる。例えば、(A)反応工程は、反応速度を上げるために加圧条件下で行い、(B)放散工程は、その圧力より低い圧力で行ってもよい。それによって、各工程で各々最適な条件を用いることができる。例えば、高圧下で塩化水素ガスが溶解している反応混合物を、低圧の気液接触領域に入れることにより、圧力の低下による塩化水素ガス等の溶液からのガス化によって気液接触をより促進することができる。気液接触をより促進するために、(B)放散工程は、(A)反応工程での反応域の圧力より、0.01MPa以上低い圧力で行われることが好ましく、0.05MPa以上低い圧力で行われることがより好ましい。
本発明の製造方法は、
(C) (B)工程で取り出され、放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程(以下「(C)凝縮工程」ともいう)を更に含むことが好ましい。
凝縮工程は、放散用ガスに同伴された反応生成物を含む気流を、凝縮することができる工程であれば、特に制限されることはなく、通常用いられる凝縮工程でよい。
そのような凝縮工程に、例えば、凝縮器、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、充填塔式凝縮器等を使用することができる。
(C)凝縮工程の温度は、―10℃〜150℃であることが好ましく、0℃〜100℃であることがより好ましく、10℃〜80℃であることが特に好ましい。
(C)凝縮工程の圧力は、凝縮が効率的に行われるならば、加圧条件であっても、常圧または減圧条件であってもよい。その圧力は、0.01MPaA〜2MPaAであることが好ましく、0.01MPaA〜1MPaAであることがより好ましく、0.05MPaA〜0.4MPaAであることが特に好ましい。
(B)工程で得られる放散用ガスに同伴された反応混合物を含む気流は、凝縮工程で冷却され、水分と反応混合物を含む有機物を含む凝縮液を得ることが好ましい。水分には、塩化水素ガスが一部溶解している。凝縮液は、通常、一相であるが、場合により、水相と有機相に相分離する。相分離していれば、凝縮液は、二相に分離後、場合により有機相の洗浄、中和及び蒸留等の処理がされて、目的とするジクロロヒドリンが得られる。
更に、(C)凝縮工程によって、凝縮されなかった、好ましくは少なくとも塩化水素ガスを含む放散用ガスを、(B)放散工程に循環させて、再使用することが、経済的により好ましく、(B)放散工程−(C)凝縮工程の間を繰り返し循環させることが特に好ましい。尚、放散用ガスが塩化水素ガスの場合、上述の(B)放散工程と(C)凝縮工程の間の循環に加えて、(A)反応工程と(C)凝縮工程の間でも循環させることができる。
更にまた、本発明の製造方法は、多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルの塩素化反応を行う前に、多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルを精製する工程を含んでよい。多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルの精製は、ろ過による金属塩類等の不溶物の除去、不活性ガスによる低沸点成分の放散除去、酸又は塩基による中和、蒸留、蒸発、抽出、濾過又は遠心分離等の一般的な方法を用いることができ、多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルを精製することができる限り、特に制限されるものではない。
本発明の製造方法を用いるジクロロヒドリンの製造終了後に、未反応の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステル及びモノクロロヒドリン等の反応中間体をそのまま出発原料とすることによって、又は新たな出発原料である多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルに加えることによって、未反応の多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又はそのエステル及び反応中間体を、再利用することも可能である。
生成したクロロヒドリンは一般的に既知の方法を用いる、他の有機化合物の原料として使用することができる。例えば、モノクロロヒドリンと塩基を反応させることによりグリシドールを製造することができ、ジクロロヒドリンと塩基を反応させることによりエピクロロヒドリンを製造することができる。
本発明の製造方法は、従来の製造方法と比較して、(B)放散工程を有することを一つの特徴とする。この点について、更に詳細に説明する。
従来の製造方法は、一般的に、反応混合物を加熱して沸騰させて、反応系から水を除去する。
塩素化剤として塩化水素ガスを用いる反応工程において、水を反応系外へ除去するために反応混合物を加熱すると、水とクロロヒドリンが沸騰して除去されるとともに塩化水素が大量に同伴するため、塩化水素の損失量が多く経済的ではない。
ところで、水とクロロヒドリンは、共沸し、水とクロロヒドリンの沸点より低い温度(共沸点)で沸騰するので、クロロヒドリンを含む留分をより低い温度で回収することができる。
しかし、水との共沸蒸留を用いて、クロロヒドリン(ジクロロヒドリン等)を効率的に回収するためには大量の水が必要であるが、必要な量の水は反応で生成しないので、共沸現象を利用したクロロヒドリンの回収は技術的に不可能である。また、蒸留操作による加熱は、ジクロロヒドリン等のクロロヒドリンの熱分解又は重合による変質を生じ得る。更に、過度な加熱を避けるため、蒸留を減圧して行うと、塩酸の同伴量が更に増加し、ますます経済性が低下する。
そこで、塩化水素を回収利用するために、塩素化剤として塩酸を用い、水とクロロヒドリンを共沸させて留出させた後、凝縮液の水相を反応液に戻すことで、共沸蒸留によるクロロヒドリンの回収に必要な水を確保する方法も考えられる。
凝縮液を静置して油相と水相に相分離し、水相をリサイクルすると、水相に溶解した塩酸を、水層とともに反応液に戻すことができる。
しかし、このような方法は、水相へのクロロヒドリンの溶解性が、比較的高いことを考慮すると経済的ではない。特にクロロヒドリンがジクロロヒドリンの場合、塩化水素が共存する場合のジクロロヒドリンの水への溶解度は高く、留出したジクロロヒドリンが水相に溶解することによる損失を無視することはできず、効率の低下をもたらす。
従って、本発明の方法は、これまでの製造方法に比較し、クロロヒドリンと水を反応系外に効率よく除外し、反応を効率よく進行せしめることが可能な、極めて有用な製造方法である。
具体的には本発明によりグリセリンと塩化水素を反応させる場合において、ジクロロヒドリン、水、塩化水素を含んだ反応混合物から、40〜70重量%のジクロロヒドリン、20〜35重量%の水、10〜25重量%の塩化水素を含んだ組成物を得ることができる。更に好ましくは50〜65重量%のジクロロヒドリン、25〜30重量%の水、15〜25重量%の塩化水素を含んだ組成物を得ることができる。
WO2005/054167は、共沸蒸留によって、23〜43重量%のジクロロヒドリンと43〜63重量%の水と4〜24重量%の塩化水素を含む組成物を得られることを開示するのに対し、本発明は、WO2005/054167が開示するような共沸蒸留によって得られる組成物と比較して、高濃度でジクロロヒドリンを含有する組成物を得ることができる。この組成物はジクロロヒドリンが高濃度であることに加え、水分の含有量が少ない。従って、排水の量が少量になり、環境負荷が少なくなり、エピクロロヒドリンを製造するためのけん化工程において非常に有用な組成物であると言える。
添付した図面を参照しながら、以下、本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明のクロロヒドリンの製造装置の一の態様を模式的に示す。
攪拌機、温度計、グリセリン導入管(11)、触媒導入管(12)及び塩化水素ガス導入管(13)及び(14)を備えた反応器(10)に、管(11)からグリセリンを導入し、管(12)から触媒、例えば、カルボン酸を導入する。触媒は、例えば、グリセリンと混合して又はグリセリンに溶かして、一緒に管(11)又は管(12)から導入してもよい。
塩化水素ガスを、管(13)から反応器(10)の気相部分に加えて所定の圧力まで、加圧する。塩化水素ガスを、管(14)から反応器(10)の液相部分に加えてもよい。
また、グリセリン等の液相と塩化水素ガスとの接触を効率的に行うために、攪拌羽根等の攪拌方法の改良、配管内部でスタティックミキサー等を用いる、又は液相の一部を反応器(10)の外部に循環させる等の改良を適宜行ってよい。
反応器(10)を所定の温度、例えば120℃に加熱する。加熱することで、グリセリンと塩化水素との反応が開始し、反応混合物を与える。
反応が進行すると塩化水素が消費されて圧力が低下するので、管(13)又は管(14)を通して、塩化水素ガスで加圧して、反応器(10)内の圧力を上述の所定の圧力に保つ。
上述の出発物は、反応器に例えば一度に加えるバッチ式で反応させて、得られた反応混合物を後述する工程に送ってもよいが、反応混合物を後述する工程に送るとともに、出発物を連続的に加える連続式で反応させてもよい。
尚、反応混合物には、目的とする反応生成物であるジクロロプロパノール、中間生成物であるモノクロロプロパノール、未反応グリセリン、反応により生成する水、例えばカルボン酸等の触媒、カルボン酸エステル、グリセリンが縮合したエステル等が含まれる。
一方、管(15)及び管(16)を介して、放散塔(20)の塔頂と、反応器(10)の底部が接続されている。放散塔(20)は、その内部に、耐酸性の材料、例えば、磁製又はガラス製ラッシヒリング、ポールリング、インタックサドル、カスケード、ミニリング、テラレッド及びハイレックス等の不規則充填物、スルザーパック及びテクノパック等の規則充填物等の充填材及びトレー等で構成された気液接触領域(21)を有する。管(22)から放散塔(20)の塔底に放散用ガスの塩化水素ガスを導入し、放散塔(20)内の気液接触領域(21)を通して、塔頂の管(23)へと塩化水素ガスを流通させながら、例えば、120℃に放散塔(20)内部を加熱して、導入する反応混合物の温度を保つようにする。
反応器(10)から、反応器(10)の内圧又はポンプ等を用いて、管(15)及び(16)を介して反応混合物を放散塔(20)の塔頂に入れる。反応混合物は、放散用ガスである塩化水素と向流で接触しながら気液接触域(21)を通り、塔底に移動する。放散用ガスの塩化水素ガスと接触した反応混合物から、水及び有機物(例えば、ジクロロヒドリン)が放散され、塩化水素ガスに同伴されて、塩化水素ガスとともに、水及び有機物は放散塔の塔頂から管(23)を通って放出される。尚、反応混合物には、上述したように、ジクロロプロパノール、モノクロロプロパノール、グリセリン、水、カルボン酸等の触媒、カルボン酸エステル、グリセリンが縮合したエステル等が含まれるが、ジクロロプロパノールは、モノクロロプロパノール及びグリセリンより沸点が低いので、主に、水とジクロロプロパノールが、反応混合物から放散されて気相に移動する。触媒のカルボン酸及びカルボン酸エステルは、その沸点が低い場合、放散されて気相に移動し得るが、触媒は、反応系に留まる方が好ましいので、液相に移動しないように沸点の高いカルボン酸を触媒として使用することが好ましい。
放散塔(20)内部に供給される適切な液量を確保し、気液接触領域(21)での効率的な放散を行うために、塔底の反応混合物の一部を、管(24)を通して、放散塔(20)の塔頂に送り、再び放散用ガスの塩化水素と接触させてよい。塔底の反応混合物を放散塔(20)の塔頂に送る量は、気液接触領域(21)を通る反応混合物の合計(反応器(10)からの反応混合物+放散塔(20)の底部からの反応混合物)に関して、塔の断面積当たりの反応混合物の合計の質量速度(L:kg/m・h)と塔の断面積当たりの放散用ガスの塩化水素ガスの質量速度(G:kg/m・h)との比(L/G)が、0.5〜100であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、2〜25であることが特に好ましい。
更に、管(24)の途中に、加熱用熱交換器を設置して、管(16)内の液温と同じ温度に加熱することが好ましい。放散塔(20)内部では、液相から気相へ、水及び有機物の放散、即ち物質移動を生ずるので、反応混合物は蒸発熱を奪われて、温度が低下して、放散の効率が低下し得るからである。尚、この温度保持は、反応混合物を放散させるために適切な温度に保つことを目的とするものであり、反応混合物を沸騰状態として、放散塔(20)の内部で蒸留操作を行うことを目的とするものではない。
また塔底の反応混合物の一部は、管(25)及び(26)を通って、反応器(10)に戻されることが好ましい。塔頂に送り再度塩化水素ガスと接触させる塔底の反応混合物の量と反応器(10)に戻す塔底の反応混合物の量との比(即ち、塔頂に送る量/反応器に戻す量)は、上述のL/G、充填物に対するフラッディング等を考慮しながら、適宜選択することができる。一般的には、100/1〜1/100であることが好ましく、20/1〜1/20であることがより好ましい。また、放散工程の条件によっては、5/1〜1/5であることが好ましい。塔底の反応混合物は、放散塔(20)で、水と有機物(主にジクロロプロパノール)が除かれているので、反応器(10)に戻すことで、反応を進行させる効果を奏し得る。
本発明では、反応混合物から、水とジクロロプロパノールを、放散を用いて上述のように分離する。ところで、従来技術では、水とジクロロプロパノールを主に共沸蒸留を用いて分離する。例えば、水と2,3−ジクロロ−1−プロパノールの共沸混合物の共沸点は、99℃で、その組成は水:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=87:13である。共沸混合物の水の割合が多いため、共沸蒸留でジクロロプロパノールを取り出すには、多量の水の供給が必要であり、共沸させるために大量のエネルギーを必要とする。また、この水に塩化水素ガスが大量に溶け込むので、経済性にも問題がある。
本発明で用いる放散操作では、放散される水に溶ける塩化水素ガスの量を最小にすることができ、塩化水素ガスのロスを最小にすることができる。(尚、放散される水に溶解する塩化水素ガスの量については、後述する実施例を参照。)
尚、更に塩化水素ガスを放散用ガスとして用いる場合、上述したように、(B)放散工程の間に、未反応の多水酸基置換脂肪族炭化水素やモノクロロヒドリン等のクロロヒドリンと塩化水素ガスの反応も同時に生じ得るので、反応塔としても機能する点で好ましい。また放散塔の下部にタンクを設置し、滞留時間を確保することが出来れば、放散塔を反応器として見立てて、反応を進行させることが出来る。
放散塔(20)の塔頂を出た水分、有機物及び塩化水素ガスを含む混合気流は、管(23)を通り、水分凝縮器(30)に入れられる。ここで、気流は、冷却され、水分及び有機物(例えばジクロロヒドリン)を含む凝縮液が得られる。尚、水分には、塩化水素ガスが一部溶解している。凝縮液は、通常、一相と成っているが、場合により、水相と有機相に相分離する。凝縮液は、管(31)から取り出され、そのままケン化工程へ送ってもよいが、二相の分離後、有機相の洗浄、中和及び蒸留等の処理をして、目的とするジクロロヒドリンを得てもよい。
水分凝縮器(30)で凝縮しなかった塩化水素ガスは、管(32)及び循環ブロア(33)を通り、更に管(22)を通って、放散塔(20)の塔底へ送られる。従って、放散用ガスの塩化水素ガスは、放散塔(20)と水分凝縮器(30)の間を循環する。なお、この塩化水素ガスは、その一部を必要に応じて反応器に送ってもよい。
目的生成物であるジクロロプロパノールは、水分凝縮器(30)で得られる凝縮液から、その全てを回収することも可能であるが、上述の反応操作の間に、ジクロロプロパノールは、反応器(10)内部及び放散塔(20)の底部にも蓄積し得るので、ガスクロマトグラフ(GLC又はGC)等で純度等をモニターしながら、粗ジクロロプロパノールを、管(15)と(16)の間で分岐する管(17)から、又は管(25)と管(26)の間で分岐する管(27)から取り出すことができる。
上述した本願の製造方法の一の態様では、塩化水素ガスを、放散塔(20)と水分凝縮器(30)との間で循環させている。この循環させる塩化水素ガスは、反応器(10)に供給されて、グリセリンと反応させる塩化水素ガスと異なる役割を有する。即ち、循環させる塩化水素ガスは、放散塔(20)内部の気液接触領域(21)で、塔頂から供給された反応混合物中に存在する水と反応生成物であるジクロロプロパノールが、液相から気相に物質移動することを促進する役割を有する。更に、循環する塩化水素ガスは、放散塔(20)の塔頂から、気相に移動した水とジクロロプロパノールを同伴して、水分凝縮器(30)に連行する役割を有する。
循環する塩化水素ガスは、一部が上述の水分凝縮器(30)にて、凝縮液に溶解して減少し得るので、適宜、塩化水素ガスが循環する管(23)、(32)又は(22)のいずれかの箇所で、追加の塩化水素ガスを補充してよい。また、反応器(10)で加える塩化水素ガスの圧力によっては、反応器(10)から管(15)及び(16)を経由して送られる反応混合物によって塩化水素ガスを補充してよい。
反応条件によっては、循環する塩化水素ガスが過剰と成り得る。その場合は、圧力設備によって、塩化水素ガスの一部を循環系から取り出してもよい。尚、取り出した塩化水素ガスは、そのまま再度循環系に加えてもよいし、反応器(10)に管(13)又は(14)から加えてもよいし、グリセリンに加えて塩化水素ガスをグリセリンに吸収させて反応器(10)に加えてもよい。
本発明の製造方法では、反応を行うために、元々反応器(10)の内部に、過剰な塩化水素ガスが存在するので、本質的に、塩化水素ガスに対応し得る材料を装置に使用することが必要であるとしても、通常、腐食性の高い塩化水素ガスを循環させることは、装置の材料的に有利ではない。しかし、不活性ガスを用いることなく、出発原料と同じガスである塩化水素ガスを循環させるガスとして選択することにより、不活性ガスを分離する装置が不要となるので、設備の単純化を図ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン452g(4.91mol)とコハク酸22.6g(0.191mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
一方、放散塔(放散塔内の気液接触域は95cm、塔の内径は、2.0cmΦ、充填物はΦ10mm×H10mmのガラス製ラッシヒリング、充填物を充填した領域の高さは30cm)を準備し、その内部に耐食性ポンプを用いて、放散用ガスとして塩化水素ガス(流量:7L/分、重量11.5g/分相当、L/G=3.5)を、塔底から塔頂へと流通させながら、放散塔を120℃に加熱した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、40g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応混合物は、全体的に液状であり、塔頂から塔底へと移動しながら、放散用ガスの塩化水素ガスと向流で、気液接触した。
尚、放散用ガスとして塩化水素ガスを用いたので、反応混合物中のわずかの未反応のグリセリンと3−クロロ−1,2−プロパンジオールは、更に反応が進行してほぼ1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
グリセリンと塩化水素との反応で生じた水及び有機物(主に1,3−ジクロロ−2−プロパノール)は、放散用ガスの塩化水素ガスに同伴して、放散塔の上部から、取り出された。
放散塔から取り出されたこの水、有機物及び塩化水素ガスの混合物を、水分凝縮器に供給し、冷却し、凝縮した。凝縮物は、水分凝縮器の底部から取り出した。
水分凝縮器で凝縮しなかった放散用ガスの塩化水素ガスは、再び放散塔に送ることで、再利用した。即ち、塩化水素ガスを、放散塔と水分凝縮塔との間で循環させた。凝縮物に、放散用ガスとしての塩化水素ガスは溶解し得、その結果取り出されて減少し得るので、適宜追加の塩化水素ガスを、循環され再利用される塩化水素ガスに、放散塔の前で加えた(図示せず)。
以上の、反応器内から、反応混合物の放散塔への供給、放散塔内での反応混合物と放散ガスとしての塩化水素ガスとの接触、放散塔内の反応混合物の反応器への戻し、放散ガスの塩化水素ガスに同伴させた水と有機物の水分凝縮器への供給、及び放散ガスの塩化水素ガスの水分凝縮器から放散塔への循環を、4時間連続的に行うことで、402.8gの凝縮液を得た。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、1.34:2.15:1であった。凝縮液中に、ジクロロヒドリン192.9g(1.50mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率30.5%)。
また、反応器中には411.4gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは404.8g(3.14mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率64.0%)を得た。従って、実施例1のジクロロヒドリンの全収率は94.5%であった。
実施例2
反応器にグリセリン458g(4.97mol)とコハク酸22.9g(0.194mol)を加え、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えたこと、放散塔を流通する塩化水素ガスの流量を3L/分とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ジクロロヒドリンの製造を行った。そして以下の結果を得た。
凝縮液は、153.7gであり、反応器中の残渣液は、659.0gであった。
凝縮液中に含まれる水:有機物:塩化水素(重量比)は、1.44:1.72:1であった。
凝縮液中に、ジクロロヒドリン63.5g(0.492mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率9.9%)。
残渣液中に、ジクロロヒドリン500.2g(3.88mol)を得た(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率78.1%)。
従って、ジクロロヒドリンの全収率は、88.0%であった。
比較例1
反応器にグリセリン455g(4.94mol)とコハク酸22.9g(0.194mol)を加え、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力をかけたこと、放散塔及び水分凝縮器を使用しないで、110℃の油浴でそのまま6時間反応させたこと、を除いて、実施例1と同様にジクロロヒドリンを製造した。ジクロロヒドリン446g(3.46mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率70.0%)。
比較例2
100mlの四口フラスコにグリセリン60.0g(0.651モル)及びコハク酸3.0g(0.025モル)を仕込み、110℃に加熱した。反応液を激しく攪拌しつつ、塩化水素ガスを250ml/分の割合でフラスコに吹き込み、反応させた。反応の進行に伴って、水とジクロロヒドリンが留出し、留出した水とジクロロヒドリンは冷却後、受器にトラップした。未反応の塩化水素は、受器の後ろに設けたアルカリ水溶液で中和した。110℃で6時間反応させ、22.79gの凝縮液を得た。6時間の反応の間に要した塩化水素ガスの量は、90L(4.02モル)であり、グリセリン(0.651モル)をジクロロヒドリンに転化するために必要な理論量(1.302モル)の3倍の量の塩化水素ガスを使用した。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、1.40:1.56:1であった。凝縮液中のジクロロヒドリンの重量は、8.89g(0.069モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1)であり、その収率は、10.5%であった。また、反応器中には、81.1gの残渣液を確認した。残渣液をGCで分析すると、ジクロロヒドリンは、27.9g(0.22モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=97:3)含まれ、収率は、33.8%であった。従って、ジクロロヒドリンの全収率は、44.3%であった。比較例2では、反応器中に、31.2g(0.28モル)のモノクロロヒドリン(即ち、ジクロロヒドリンの中間体)が確認され、その収率は43.4%であった。
グリセリンの反応器への供給を、バッチ式にて行った場合の反応結果を表1にまとめた。
Figure 2009041175
実施例3
実施例1では、原料のグリセリンの全量を、反応開始時に反応器に加えた。従って、実施例1では、反応は、バッチ式で行った。本実施例では、原料のグリセリンを反応器に連続的に投入する連続式で反応を行った。使用した装置は、実施例1で用いたものと同様である。
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン301g(3.27mol)とコハク酸30.2g(0.256mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
一方、放散塔(放散塔内の気液接触域は95cm、塔の内径は、2.0cmΦ、充填物はΦ10mm×H10mmのガラス製ラッシヒリング、充填物を充填した領域の高さは30cm)を準備し、その内部に耐食性ポンプを用いて、放散ガスとして塩化水素ガス(流量:14L/分、重量23.0g/分相当、L/G=5.7)を、塔底から塔頂へと流通させながら、放散塔を120℃に加熱した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、130g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応混合物は、全体的に液状であり、塔頂から塔底へと移動しながら、放散用ガスの塩化水素ガスと向流で、気液接触した。また、反応器から放散塔への供給を開始すると同時に、90g/hの速度で、グリセリンの反応器への供給を開始した。その後、6時間、グリセリンの反応器への供給及び反応器から反応混合物の放散塔への供給を行った。使用したグリセリンの量の合計は、841.4g(9.14モル)であった(最初に反応器に加えた301gを含む)。
この間、水分凝縮器中に、819.8gの凝縮液を得た。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、1.47:2.51:1.0であった。凝縮液中に、ジクロロヒドリン413.2g(3.20mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率35.0%)。
また、反応器中には685.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは385.0g(2.98mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率32.6%)を得た。従って、実施例3のジクロロヒドリンの全収率は67.6%であった。
実施例4
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン303g(3.29mol)とコハク酸30.4g(0.257mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.2MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
実施例1と同様に、放散塔(放散塔内の気液接触域は212cm、塔の内径は、3.0cmΦ、充填物はΦ10mm×H10mmのガラス製ラッシヒリング、充填物を充填した領域の高さは30cm)を準備し、その内部に耐食性ポンプを用いて、放散用ガスとして塩化水素ガス(流量:24L/分、重量39g/分相当、L/G=3.3)を、塔底から塔頂へと流通させながら、放散塔を120℃に加熱した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、130g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応器から放散塔に反応混合物の供給を開始すると同時に、原料の残りのグリセリンを90g/hの速度で反応器に供給開始した。2時間、グリセリンの反応器への供給及び放散塔への反応混合物の供給を行った。グリセリンの最終的な使用量は、483.2g(5.25mol)(予め加えた303gを含む。)である。尚、グリセリンの供給による反応器の液面の上昇は認められなかった。
以下、実施例1と同様の方法を用いてジクロロヒドリンの製造を行い、335.2gの凝縮液を得た。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、1.18:3.59:1であった。凝縮液中に、ジクロロヒドリン208.6g(1.62mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率30.9%)。
また、反応器中には482.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GLCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは270.4g(2.10mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率40.1%)を得た。従って、実施例4のジクロロヒドリンの全収率は71.0%であった。
比較例3
温度計、攪拌機、精留カラムを有する500mLの反応器を使用した。油浴を用いて反応器を130℃に保ちながら、チューブポンプを用いて、グリセリン26g/h(0.28モル/h)、14%塩酸153g/h(0.60モル/h)及びコハク酸2.8g/h(0.023モル/h)を、17時間連続的に仕込んだ。生成するジクロロプロパノールは、反応器内の塩酸水溶液と共に留出させ、凝縮液として得た。
使用したグリセリンの量の合計は、442g(4.80モル)であり、2453gの凝縮液を得た。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、8.7:0.3:1であった。凝縮液中に、ジクロロヒドリン61g(0.48モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=96:4、収率9.8%)を確認した。
また、反応器中には638.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリン11g(0.09mol、収率1.8%)と共に、モノクロロヒドリン255g(2.3モル、収率48.0%)、及び未反応のグリセリン110g(1.2モル)を得た。従って、比較例3のジクロロヒドリンの全収率は11.6%であった。
グリセリンを連続的に反応器に供給して反応させた結果を表2に示した。
Figure 2009041175
上述のように、塩化水素ガスの循環量を増やすことで、ジクロロヒドリンの留出速度が向上し、反応器の液面を上昇させることなく連続反応を行うことができる。連続反応を行う場合、留出速度が遅いと、反応器から直接反応混合物を取り出すことが必要であるが、本発明においては、上述したように、グリセリンの供給量の調節と塩化水素ガスの循環量を増やすことによって、ジクロロヒドリンの留出速度が向上されるので、放散塔からの塩化水素ガスによる同伴のみで、全てのジクロロヒドリンを取り出すことができる。
多水酸基置換脂肪族炭化水素と塩素化剤を反応させるクロロヒドリン類の製造方法において、本発明は、多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤の反応混合物を放散用ガスと接触させて、反応生成物のクロロヒドリンと水を放散用ガスに同伴させて効率よく取り出すことを特徴とする。このクロロヒドリンはエピクロロヒドリンやグリシドール等の有機化合物の製造に用いられる。
また、本発明の製造方法でクロロヒドリンを製造すると、例えば、グリセリンを塩素化してクロロヒドリンを製造する場合、不純物、例えばクロロアセトンに代表されるハロゲン化ケトン類の生成が非常に少なく、それらを除去する必要がない。
[関連出願]
尚、本出願は、2007年9月28日に日本国で出願された出願番号2007−254970を基礎出願とするパリ条約又は日本国特許法第41条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。

Claims (5)

  1. (A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程、及び
    (B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す工程
    を含むクロロヒドリンの製造方法。
  2. 放散用ガスは、塩化水素ガスを含む請求項1に記載のクロロヒドリンの製造方法。
  3. (B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、クロロヒドリンの少なくとも一種と水を含んで成る請求項1又は2に記載のクロロヒドリンの製造方法。
  4. (C) (B)工程で取り出され、放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程を、更に含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. (C)工程で凝縮しなかった放散用ガスを、(B)工程に使用することで、放散用ガスを(B)工程と(C)工程で循環させる請求項4記載の製造方法。
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