JPWO2009041175A1 - クロロヒドリン類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
反応により生じた水の除去は、一般に、反応混合物を加熱し、蒸留することにより行われるが、水は塩化水素と共沸する性質があるために、水に塩化水素が大量に同伴するので、工業的には塩化水素の損失が大きく、経済的に好ましくない。
(A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程、及び
(B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す工程
を含むクロロヒドリンの製造方法を提供する。
(B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、クロロヒドリンの少なくとも一種と水を含んで成る場合、目的とするクロロヒドリンを(B)工程で取り出すことができ、より反応を効率的に進めることができる。
上述の本願製造方法において、(C)工程で凝縮しなかった放散用ガスを、(B)工程に使用することで、放散用ガスを(B)工程と(C)工程で循環させる場合、放散用ガスが再利用されるので、より経済的に反応を進めることができる。
本発明のクロロヒドリンの製造方法は、
(A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程(以下「(A)反応工程」ともいう)と
(B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す(又は除去する)工程(以下「(B)放散工程」ともいう)
の少なくとも二つの工程を有する。
まず、(A)反応工程について説明する。
また、塩化水素は溶媒に溶かした溶液状態で使用してもよく、例えば、塩化水素を出発原料であるグリセリン、又はモノクロロヒドリン等のクロロヒドリンに溶解させた溶液であってもよい。更に、塩素化剤は、反応器の気相部分、又は液相部分に加えてもよい。
「カルボン酸誘導体」として、例えば、上記カルボン酸の塩化物、臭化物、無水物及びエステル、上記カルボン酸のナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニア等のアンモニウム塩等のカルボン酸塩を例示することができる。
「ラクトン」として、例えば、カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等を例示することができる。
「ラクタム」として、例えば、ε-カプロラクタム及びγ-ブチロラクタム等を例示することができる。
「無機酸化物」として、例えば、金属酸化物、複合酸化物、オキシ酸及びオキシ酸塩が好ましい。
「金属酸化物」として、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、ZrO2、SnO2、Ga2O3、La2O3、CeO2及びMoO3等を例示することができる。
「複合酸化物」として、例えば、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、TiO2−ZrO2、SiO2−ZrO2及びMoO3−ZrO3等、ゼオライト、ヘテロポリ酸(例えば、P、Mo、V、W、Si等の元素を含有するポリ酸等)及びヘテロポリ酸塩等を例示することができる。
「オキシ酸」及び「オキシ酸塩」として、例えば、BPO4、AlPO4、ポリリン酸、酸性リン酸塩、H3BO3、酸性ホウ酸塩及びニオブ酸(Nb2O5・nH2O)等を例示することができる。
「強酸性有機化合物」として、例えば、有機スルホン酸化合物が好ましい。有機スルホン酸化合物として、例えば、スルホン酸基含有イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂及び炭素縮合環を含むスルホン酸化合物(CiHjOkSm)等を例示することができる。
また、固体触媒を使用する場合には、触媒を適当な大きさに成型して、例えば、管型反応器に充填した固定床流通式の反応装置を使用することもできる。
(A)反応工程の反応温度は、20℃〜300℃であることが好ましく、50℃〜200℃であることがより好ましく、90℃〜150℃であることが特に好ましい。
尚、本出願において、例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール及びこれらの混合物を総称して「モノクロロヒドリン」ともいい、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール及びこれらの混合物を総称して「ジクロロヒドリン」ともいう。
上述の出発物は、例えば一度に反応器に加えるバッチ式で反応させてもよいが、例えば出発物を反応器に連続的に加える連続式で反応させてもよい。
上述の反応によって得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す。
反応混合物は、上述のような反応生成物を含み、一般的に液状で流動性の高い混合物であり、これを、放散用ガスと向流で接触させる。
例えば、目的とする塩素化度の高いクロロヒドリンが、ジクロロヒドリンである場合、反応混合物中に存在する未反応原料の多水酸基置換脂肪族炭化水素や中間生成物のモノクロロヒドリンは、ジクロロヒドリンと比較して蒸気圧が低いことが期待されるので、放散用ガスに同伴される有機物成分はほとんどがジクロロヒドリンであり得る。従って、放散により放散用ガスに同伴させて分離したジクロロヒドリンは、より高沸点化合物と分離する精留工程を経ずに、その後のけん化等の工程に使用することができる。
平均滞留時間=気液接触領域(m3)/単位時間当たりの気体の流量(m3/s)
(ここで、「気液接触領域」の体積は、充填材が占める空間の体積である。)
放散用ガスの平均滞留時間は0.01〜30秒であることが好ましく、0.01〜20秒であることがさらに好ましく、0.01〜10秒であることが特に好ましい。平均滞留時間は水とジクロロヒドリンが効率的に留出すれば特に制限されることはない。しかし、平均滞留時間が長時間に及ぶ場合には、気液接触領域が巨大になり、さらには水、ジクロロヒドリンが留出しにくくなるので、適宜適切な大きさにすることが好ましく、上記の滞留時間にすることが好ましい。
(C) (B)工程で取り出され、放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程(以下「(C)凝縮工程」ともいう)を更に含むことが好ましい。
凝縮工程は、放散用ガスに同伴された反応生成物を含む気流を、凝縮することができる工程であれば、特に制限されることはなく、通常用いられる凝縮工程でよい。
そのような凝縮工程に、例えば、凝縮器、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、充填塔式凝縮器等を使用することができる。
従来の製造方法は、一般的に、反応混合物を加熱して沸騰させて、反応系から水を除去する。
塩素化剤として塩化水素ガスを用いる反応工程において、水を反応系外へ除去するために反応混合物を加熱すると、水とクロロヒドリンが沸騰して除去されるとともに塩化水素が大量に同伴するため、塩化水素の損失量が多く経済的ではない。
ところで、水とクロロヒドリンは、共沸し、水とクロロヒドリンの沸点より低い温度(共沸点)で沸騰するので、クロロヒドリンを含む留分をより低い温度で回収することができる。
しかし、水との共沸蒸留を用いて、クロロヒドリン(ジクロロヒドリン等)を効率的に回収するためには大量の水が必要であるが、必要な量の水は反応で生成しないので、共沸現象を利用したクロロヒドリンの回収は技術的に不可能である。また、蒸留操作による加熱は、ジクロロヒドリン等のクロロヒドリンの熱分解又は重合による変質を生じ得る。更に、過度な加熱を避けるため、蒸留を減圧して行うと、塩酸の同伴量が更に増加し、ますます経済性が低下する。
凝縮液を静置して油相と水相に相分離し、水相をリサイクルすると、水相に溶解した塩酸を、水層とともに反応液に戻すことができる。
しかし、このような方法は、水相へのクロロヒドリンの溶解性が、比較的高いことを考慮すると経済的ではない。特にクロロヒドリンがジクロロヒドリンの場合、塩化水素が共存する場合のジクロロヒドリンの水への溶解度は高く、留出したジクロロヒドリンが水相に溶解することによる損失を無視することはできず、効率の低下をもたらす。
従って、本発明の方法は、これまでの製造方法に比較し、クロロヒドリンと水を反応系外に効率よく除外し、反応を効率よく進行せしめることが可能な、極めて有用な製造方法である。
WO2005/054167は、共沸蒸留によって、23〜43重量%のジクロロヒドリンと43〜63重量%の水と4〜24重量%の塩化水素を含む組成物を得られることを開示するのに対し、本発明は、WO2005/054167が開示するような共沸蒸留によって得られる組成物と比較して、高濃度でジクロロヒドリンを含有する組成物を得ることができる。この組成物はジクロロヒドリンが高濃度であることに加え、水分の含有量が少ない。従って、排水の量が少量になり、環境負荷が少なくなり、エピクロロヒドリンを製造するためのけん化工程において非常に有用な組成物であると言える。
図1は、本発明のクロロヒドリンの製造装置の一の態様を模式的に示す。
攪拌機、温度計、グリセリン導入管(11)、触媒導入管(12)及び塩化水素ガス導入管(13)及び(14)を備えた反応器(10)に、管(11)からグリセリンを導入し、管(12)から触媒、例えば、カルボン酸を導入する。触媒は、例えば、グリセリンと混合して又はグリセリンに溶かして、一緒に管(11)又は管(12)から導入してもよい。
塩化水素ガスを、管(13)から反応器(10)の気相部分に加えて所定の圧力まで、加圧する。塩化水素ガスを、管(14)から反応器(10)の液相部分に加えてもよい。
また、グリセリン等の液相と塩化水素ガスとの接触を効率的に行うために、攪拌羽根等の攪拌方法の改良、配管内部でスタティックミキサー等を用いる、又は液相の一部を反応器(10)の外部に循環させる等の改良を適宜行ってよい。
反応器(10)を所定の温度、例えば120℃に加熱する。加熱することで、グリセリンと塩化水素との反応が開始し、反応混合物を与える。
反応が進行すると塩化水素が消費されて圧力が低下するので、管(13)又は管(14)を通して、塩化水素ガスで加圧して、反応器(10)内の圧力を上述の所定の圧力に保つ。
尚、反応混合物には、目的とする反応生成物であるジクロロプロパノール、中間生成物であるモノクロロプロパノール、未反応グリセリン、反応により生成する水、例えばカルボン酸等の触媒、カルボン酸エステル、グリセリンが縮合したエステル等が含まれる。
本発明で用いる放散操作では、放散される水に溶ける塩化水素ガスの量を最小にすることができ、塩化水素ガスのロスを最小にすることができる。(尚、放散される水に溶解する塩化水素ガスの量については、後述する実施例を参照。)
水分凝縮器(30)で凝縮しなかった塩化水素ガスは、管(32)及び循環ブロア(33)を通り、更に管(22)を通って、放散塔(20)の塔底へ送られる。従って、放散用ガスの塩化水素ガスは、放散塔(20)と水分凝縮器(30)の間を循環する。なお、この塩化水素ガスは、その一部を必要に応じて反応器に送ってもよい。
反応条件によっては、循環する塩化水素ガスが過剰と成り得る。その場合は、圧力設備によって、塩化水素ガスの一部を循環系から取り出してもよい。尚、取り出した塩化水素ガスは、そのまま再度循環系に加えてもよいし、反応器(10)に管(13)又は(14)から加えてもよいし、グリセリンに加えて塩化水素ガスをグリセリンに吸収させて反応器(10)に加えてもよい。
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン452g(4.91mol)とコハク酸22.6g(0.191mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、40g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応混合物は、全体的に液状であり、塔頂から塔底へと移動しながら、放散用ガスの塩化水素ガスと向流で、気液接触した。
尚、放散用ガスとして塩化水素ガスを用いたので、反応混合物中のわずかの未反応のグリセリンと3−クロロ−1,2−プロパンジオールは、更に反応が進行してほぼ1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
グリセリンと塩化水素との反応で生じた水及び有機物(主に1,3−ジクロロ−2−プロパノール)は、放散用ガスの塩化水素ガスに同伴して、放散塔の上部から、取り出された。
水分凝縮器で凝縮しなかった放散用ガスの塩化水素ガスは、再び放散塔に送ることで、再利用した。即ち、塩化水素ガスを、放散塔と水分凝縮塔との間で循環させた。凝縮物に、放散用ガスとしての塩化水素ガスは溶解し得、その結果取り出されて減少し得るので、適宜追加の塩化水素ガスを、循環され再利用される塩化水素ガスに、放散塔の前で加えた(図示せず)。
以上の、反応器内から、反応混合物の放散塔への供給、放散塔内での反応混合物と放散ガスとしての塩化水素ガスとの接触、放散塔内の反応混合物の反応器への戻し、放散ガスの塩化水素ガスに同伴させた水と有機物の水分凝縮器への供給、及び放散ガスの塩化水素ガスの水分凝縮器から放散塔への循環を、4時間連続的に行うことで、402.8gの凝縮液を得た。
また、反応器中には411.4gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは404.8g(3.14mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率64.0%)を得た。従って、実施例1のジクロロヒドリンの全収率は94.5%であった。
反応器にグリセリン458g(4.97mol)とコハク酸22.9g(0.194mol)を加え、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えたこと、放散塔を流通する塩化水素ガスの流量を3L/分とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ジクロロヒドリンの製造を行った。そして以下の結果を得た。
凝縮液は、153.7gであり、反応器中の残渣液は、659.0gであった。
凝縮液中に含まれる水:有機物:塩化水素(重量比)は、1.44:1.72:1であった。
凝縮液中に、ジクロロヒドリン63.5g(0.492mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率9.9%)。
残渣液中に、ジクロロヒドリン500.2g(3.88mol)を得た(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率78.1%)。
従って、ジクロロヒドリンの全収率は、88.0%であった。
反応器にグリセリン455g(4.94mol)とコハク酸22.9g(0.194mol)を加え、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力をかけたこと、放散塔及び水分凝縮器を使用しないで、110℃の油浴でそのまま6時間反応させたこと、を除いて、実施例1と同様にジクロロヒドリンを製造した。ジクロロヒドリン446g(3.46mol)を確認した(1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率70.0%)。
100mlの四口フラスコにグリセリン60.0g(0.651モル)及びコハク酸3.0g(0.025モル)を仕込み、110℃に加熱した。反応液を激しく攪拌しつつ、塩化水素ガスを250ml/分の割合でフラスコに吹き込み、反応させた。反応の進行に伴って、水とジクロロヒドリンが留出し、留出した水とジクロロヒドリンは冷却後、受器にトラップした。未反応の塩化水素は、受器の後ろに設けたアルカリ水溶液で中和した。110℃で6時間反応させ、22.79gの凝縮液を得た。6時間の反応の間に要した塩化水素ガスの量は、90L(4.02モル)であり、グリセリン(0.651モル)をジクロロヒドリンに転化するために必要な理論量(1.302モル)の3倍の量の塩化水素ガスを使用した。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、1.40:1.56:1であった。凝縮液中のジクロロヒドリンの重量は、8.89g(0.069モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1)であり、その収率は、10.5%であった。また、反応器中には、81.1gの残渣液を確認した。残渣液をGCで分析すると、ジクロロヒドリンは、27.9g(0.22モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=97:3)含まれ、収率は、33.8%であった。従って、ジクロロヒドリンの全収率は、44.3%であった。比較例2では、反応器中に、31.2g(0.28モル)のモノクロロヒドリン(即ち、ジクロロヒドリンの中間体)が確認され、その収率は43.4%であった。
実施例1では、原料のグリセリンの全量を、反応開始時に反応器に加えた。従って、実施例1では、反応は、バッチ式で行った。本実施例では、原料のグリセリンを反応器に連続的に投入する連続式で反応を行った。使用した装置は、実施例1で用いたものと同様である。
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン301g(3.27mol)とコハク酸30.2g(0.256mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、130g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応混合物は、全体的に液状であり、塔頂から塔底へと移動しながら、放散用ガスの塩化水素ガスと向流で、気液接触した。また、反応器から放散塔への供給を開始すると同時に、90g/hの速度で、グリセリンの反応器への供給を開始した。その後、6時間、グリセリンの反応器への供給及び反応器から反応混合物の放散塔への供給を行った。使用したグリセリンの量の合計は、841.4g(9.14モル)であった(最初に反応器に加えた301gを含む)。
この間、水分凝縮器中に、819.8gの凝縮液を得た。
また、反応器中には685.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは385.0g(2.98mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=98:2、収率32.6%)を得た。従って、実施例3のジクロロヒドリンの全収率は67.6%であった。
温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する1Lの反応器に、グリセリン303g(3.29mol)とコハク酸30.4g(0.257mol)を加えた後、塩化水素ガスを導入して、塩化水素ガスで0.2MPaAの圧力を加えた。そして、110℃の油浴で加熱しながら、反応混合物を2時間攪拌した。反応混合物の組成をGCで調べたところ、グリセリンは、ほぼ消失し、3−クロロ−1,2−プロパンジオールと1,3−ジクロロ−2−プロパノールに転化した。
上述の反応器内の反応混合物を、引き続き塩化水素ガスで加圧しつつ、110℃で加熱攪拌を続けながら、反応器内の反応混合物の一部を、上述の放散塔の塔頂に、130g/分の速度で、供給を開始した。反応混合物の供給の間は、放散塔の温度を、約120℃に保った。反応器から放散塔に反応混合物の供給を開始すると同時に、原料の残りのグリセリンを90g/hの速度で反応器に供給開始した。2時間、グリセリンの反応器への供給及び放散塔への反応混合物の供給を行った。グリセリンの最終的な使用量は、483.2g(5.25mol)(予め加えた303gを含む。)である。尚、グリセリンの供給による反応器の液面の上昇は認められなかった。
以下、実施例1と同様の方法を用いてジクロロヒドリンの製造を行い、335.2gの凝縮液を得た。
また、反応器中には482.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GLCによる分析を行って、ジクロロヒドリンは270.4g(2.10mol、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=99:1、収率40.1%)を得た。従って、実施例4のジクロロヒドリンの全収率は71.0%であった。
温度計、攪拌機、精留カラムを有する500mLの反応器を使用した。油浴を用いて反応器を130℃に保ちながら、チューブポンプを用いて、グリセリン26g/h(0.28モル/h)、14%塩酸153g/h(0.60モル/h)及びコハク酸2.8g/h(0.023モル/h)を、17時間連続的に仕込んだ。生成するジクロロプロパノールは、反応器内の塩酸水溶液と共に留出させ、凝縮液として得た。
使用したグリセリンの量の合計は、442g(4.80モル)であり、2453gの凝縮液を得た。
凝縮液に含まれる水、有機物と塩化水素の重量比は、8.7:0.3:1であった。凝縮液中に、ジクロロヒドリン61g(0.48モル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール:2,3−ジクロロ−1−プロパノール=96:4、収率9.8%)を確認した。
また、反応器中には638.0gの残渣液を確認した。残渣液から、GCによる分析を行って、ジクロロヒドリン11g(0.09mol、収率1.8%)と共に、モノクロロヒドリン255g(2.3モル、収率48.0%)、及び未反応のグリセリン110g(1.2モル)を得た。従って、比較例3のジクロロヒドリンの全収率は11.6%であった。
尚、本出願は、2007年9月28日に日本国で出願された出願番号2007−254970を基礎出願とするパリ条約又は日本国特許法第41条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
Claims (5)
- (A) 多水酸基置換脂肪族炭化水素及び/又は多水酸基置換脂肪族炭化水素エステルと塩素化剤とを反応させる工程、及び
(B) 得られた反応混合物を、放散用ガスと向流で接触させて、反応生成物の少なくとも一部を放散用ガスに同伴させて、反応混合物から取り出す工程
を含むクロロヒドリンの製造方法。 - 放散用ガスは、塩化水素ガスを含む請求項1に記載のクロロヒドリンの製造方法。
- (B)工程で取り出される反応生成物の少なくとも一部は、クロロヒドリンの少なくとも一種と水を含んで成る請求項1又は2に記載のクロロヒドリンの製造方法。
- (C) (B)工程で取り出され、放散用ガスに同伴された反応生成物の少なくとも一部を凝縮させる工程を、更に含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- (C)工程で凝縮しなかった放散用ガスを、(B)工程に使用することで、放散用ガスを(B)工程と(C)工程で循環させる請求項4記載の製造方法。
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