JPWO2009011148A1 - 圧電薄膜共振素子及びこれを用いた回路部品 - Google Patents

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Abstract

圧電薄膜共振素子(1)は、楕円の平面形状を有し、外周に25°〜55°の範囲内の所定の角度(例えば、およそ30°)で傾斜した傾斜部(3a)を有する下面電極(3)と楕円の平面形状を有する上面電極(5)と両電極に挟まれた圧電膜(4)との積層構造からなる共振部を具備する。上面電極(5)の下面電極(3)の傾斜部(3a)が対向する位置の一部に付加膜(8)が設けられ、これにより共振部の下面電極(3)の傾斜部(3a)における積層厚のうち一部の積層厚Hcが共振部の下面電極(3)の傾斜部(3a)より内側部分における積層厚HAよりも厚くなっている。

Description

本発明は、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)タイプやSMR(Solidly Mounted Resonator)タイプの圧電薄膜共振素子、この圧電薄膜共振素子を用いたフィルタや分波器などの回路部品に関する。
圧電薄膜共振素子は、周知のように、圧電膜の上面及び下面を電極で挟み、下面電極の下部に空隙または音響多層膜を設けた構造を有している。圧電薄膜共振素子は、圧電膜の上面電極と下面電極との間に電気信号を入力し、圧電膜によって機械的変位に変換するとともに、圧電膜、上面電極及び下面電極の部分の膜厚と下面電極下部の空隙または音響多層膜によって特定の周波数の機械的変位のみを抽出し、その機械的変位を電気信号に再変換して外部に出力する機能を有する。
圧電薄膜共振素子のうち、下面電極の下部に空隙を設けたタイプは「FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)」と呼ばれ、下面電極の下部に音響多層膜を形成したタイプは「SMR(Solidly Mounted Resonator)」と呼ばれている。
例えば、FBARタイプの圧電薄膜共振素子は、基本的な構造として、図22、図23に示す構造を有している。なお、図22は、FBARタイプの圧電薄膜共振素子の平面図であり、図23は、図22のX−X線断面図である。図22の点描部は圧電薄膜共振素子の共振部を示している。
圧電薄膜共振素子100は、主要構成要素として基板101、下面電極102、圧電膜103、上面電極104、端子電極102A及び端子電極104Aを有している。下面電極102、圧電膜103及び上面電極104は、矩形形状をなし、基板101の上面にこの順に積層されている。下面電極102と上面電極104はほぼ同じ面積を有し、圧電膜103は下面電極102及び上面電極104よりも広い面積を有している。基板101の下面電極102と上面電極104が対向する位置に、その対向する部分よりも僅かに広い開口面を有する空隙105が形成されている。
上面電極104と下部電極102との間に高周波信号を印加すると,圧電膜103の内部に、逆圧電効果によって弾性波が励振される。この弾性波は、圧電膜103の膜厚方向の面(図23のzy面)に沿って振動する波106b(以下、「縦振動波」という。)と圧電膜103の膜に平行な方向の面(図22のxy面)に沿って振動する波106a(以下、「横振動波」という。)を含む。
縦振動波106bは圧電膜103の上面電極104側の端面と下面電極102側の端面でそれぞれ反射されるので、圧電膜103内では、圧電膜103、上面電極104及び下面電極102の各膜厚の合計Hとこれらの材料によって決定される弾性波の伝播速度Vによって決定される所定の周波数の縦弾性波106bに対して共振が生じ、それ以外の周波数の縦弾性波106bは減衰する。従って、縦弾性波106bの周波数fにはf=n×V/2H(nは整数)の関係を満たす周波数(共振周波数)が含まれ、その共振周波数の縦弾性波106bが電気信号に再変換されて外部に出力される。
圧電薄膜共振素子100は、上記のように、高周波の電気信号(電気エネルギー)を逆圧電効果と機械構造に基づく共振現象を利用して特定の周波数の弾性波(機械エネルギー)に変換する構成と、特定の周波数の弾性波(機械エネルギー)をその周波数の電気信号(電気エネルギー)に再変換する構成とを有している。電気−機械エネルギー変換の部分で発生する弾性波のうち、横弾性波106aの機械エネルギーは電気エネルギーに再変換され難いので、横弾性波106aは圧電薄膜共振素子のエネルギー変換動作においてエネルギー損失を生じさせる。
また、横弾性波106aは、圧電薄膜共振素子100の共振特性にスプリアスを発生させ、その共振特性における振幅特性及び位相特性を悪化させる。この結果、例えば、複数個の圧電薄膜共振素子100を組み合わせて作成されるフィルタの通過帯域にリップルを生じさせるとともに、挿入損失や群遅延の特性などを悪化させる要因となる。
ところで、圧電薄膜共振素子は、高周波の電気信号から特定の周波数を抽出するフィルタに適した素子であり、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)を用いた共振素子よりも低損失で、耐電力性やESD(electro-static discharge;静電気放電)特性等に優れていることから、携帯型無線機器等の送受信用のフィルタや分波器などの構成素子として需要が高まっている。
そして、携帯型無線機器等の送信用のフィルタや分波器では低消費電力が要求され、受信用のフィルタでは高受信感度が要求されることから、圧電薄膜素子にはエネルギー損失の低減と高いQ値が求められている。
そこで、従来、圧電薄膜共振素子のQ値を高める方法や横弾性波の発生を抑制し、エネルギー損失やスプリアスを低減する方法が提案されている。
例えば、特表2003−505906の公報(特許文献1)や特開2006−5924の公報(特許文献2)には、圧電膜103を、角周波数ωが遮断周波数ωcより低い領域で波数kが実数となる分散関係k(ω)を有する材料で構成し、図24に示すように、上面電極104の外縁部の膜厚をそれよりも内側部分の膜厚よりも薄くすることにより、スプリアスを低減させることが示されている。なお、図24は、図23において、上面電極104の外縁部に段差を設け、その段差部分104aの膜厚H2をそれよりも内側部分の膜厚H1よりも薄くしたものである。上記の分散関係k(ω)を有する圧電膜103は、ポアソン比が1/3以下の均質な材料を用いた場合が該当し、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を用いて実現される。
また、特開2006−109472(特許文献3)の公報には、圧電膜103を上記の分散関係k(ω)を有する材料で構成し、図25に示すように、上面電極104の外縁部の膜厚をそれよりも内側部分の膜厚よりも厚くすることにより、共振特性のQ値を高めることが示されている。なお、図25は、図23において、上面電極104の外縁部に突出部104bを設け、その突出部104bの膜厚H3をそれよりも内側部分の膜厚H1よりも厚くしたものである。
また、特開2006−128993の公報(特許文献4)には、図26に示すように、圧電膜103の上面電極104からはみ出している部分を除去することにより、横弾性波106aの漏れを抑制することが示されている。なお、図26では、圧電膜103の幅(y方向の寸法)を上面電極104の幅よりも僅かに長くしているが、圧電膜103の存在を示すために作図上、そのように描いたもので、圧電膜103の幅は上面電極104の幅と略同一である。
また、特開2006−128993の公報(特許文献4)には、図27に示すように、上面電極104の端子電極104Aの上面に付加電極107を設けることにより、横弾性波106aの漏れを抑制し、共振特性のQ値および電気機械結合係数の改善を図ることが示されている。なお、図27において、付加電極107の先端と下面電極102の先端との間に距離Dを設けているのは、付加電極107の先端と下面電極102の先端とが重複すると特性が劣化するので、製造上で両先端が重複しないようにするためである。
特表2003−505906 特開2006−5924 特開2006−109472 特開2006−128993
ところで、特表2003−505906、特開2006−5924及び特開2006−109472の各公報に示される、圧電薄膜共振素子100の上面電極104の外縁部の膜厚を調整してスプリアスを低減したり、共振特性のQ値を改善したりする方法は、膜厚を厚くすると、スプリアス特性は改善されるが、共振特性のQ値は悪化し、逆に膜厚を薄くすると、共振特性のQ値は改善されるが、スプリアス特性は悪化する傾向がある。
このような傾向が生じる原因は、図28を用いて、以下のように解釈することができる。なお、図28は、図25において、下面電極102、圧電膜103及び上面電極104の積層部分の領域を、上面電極104の外縁部に設けられた突出部104bと下面電極102とが対向する領域を領域(B)、その領域(B)よりも外側の領域を領域(C)、領域(B)よりも内側の領域を領域(A)の3つの領域に分割し、各領域(A),(B),(C)の音響インピーダンスをZA,ZB,ZCと定義した図である。
上面電極104の外縁部に突出部104bを設けた場合、領域(A),(B),(C)の各領域の厚みHA,HB,HCはHC<HA<HBの関係になるから、音響インピーダンスZA,ZB,ZCの大小関係はZC<ZA<ZBとなる。領域(B)の音響インピーダンスZBが領域(A),(C)の音響インピーダンスZA,ZCよりも大きくなることにより、領域(A)と領域(C)の音響インピーダンスの不整合は増大されるので、高次の対称および非対称の横モードの弾性波が領域(B)で反射され、領域(C)には漏洩し難くなる。
この結果、主振動の周波数近傍での横弾性波の漏洩の減少が圧電薄膜共振素子100の共振特性のQ値の向上に寄与することになるが,領域(A)では、領域(B)での横弾性波の反射によりスプリアスの発生要因となる横弾性波の定在波が生じ易くなるので、圧電薄膜共振素子100のスプリアス特性は逆に悪化することになる。
一方、図24に示すように、上面電極104の外縁部に段差104aを設けた場合、領域(A),(B),(C)の各領域の厚みHA,HB,HCはHC<HB<HAの関係になるから、音響インピーダンスZA,ZB,ZCの大小関係はZC<ZB<ZAとなる。領域(B)の音響インピーダンスZBが領域(A),(C)の音響インピーダンスZA,ZCの中間になることにより、領域(A)と領域(C)の音響インピーダンスの不整合は緩和されるので、高次の対称および非対称の横モードの弾性波が領域(C)に漏洩し易くなる。
この結果、領域(A)では、領域(B)から領域(C)への横弾性波の漏洩によりスプリアスの発生要因となる横弾性波の定在波が生じ難くなるので、圧電薄膜共振素子100のスプリアス特性は改善されるが、同時に主振動の周波数近傍での横弾性波の漏洩も増加するので、圧電薄膜共振素子100の共振特性のQ値は逆に悪化することになる。
従って、単純に領域(B)の厚みを領域(A),(C)より厚くしたり、領域(A),(C)の中間にするように調整するだけでは、圧電薄膜共振素子100の共振特性のQ値とアプリアス特性の両方を改善することは困難である。
次に、特開2006−128993の公報に示される、上面電極104の端子電極104Aの上面に付加電極107を設ける方法には以下の問題がある。
圧電薄膜共振素子100の製造において、下面電極102のエッジ部分が直角になっていると、このエッジ部分を基点としてクラックが入り、共振部を形成するメンブレンが破壊しやすく信頼性に問題があるので、下面電極102の先端には、図29に示すように、傾斜面102aが設けられている。このため、下面電極102の上側に積層される圧電膜103に傾斜が生じ、圧電膜103の上側に積層される上面電極104にも傾斜面104cが生じ易い。この結果、下面電極102、圧電膜103及び上面電極104の傾斜部分の膜厚がそれ以外の部分の膜厚よりも薄くなり、この傾斜部分で音響インピーダンスが変化する。
すなわち、図29に示すように、下面電極102、圧電膜103及び上面電極104の積層部分の領域を、下面電極102の傾斜面102aと上面電極104の傾斜面104cとが対向する領域を領域(B)、その領域(B)よりも外側の領域を領域(C)、領域(B)よりも内側の領域を領域(A)の3つの領域に分割し、各領域(A),(B),(C)の音響インピーダンスをZA,ZB,ZCとすると、ZC<ZB<ZAとなる。
この音響インピーダンスの大小関係は、図24に示した上面電極104の外縁部に段差104aを設けた場合と同じであり、上面電極104の端子電極104Aの上面に付加電極107を設ける方法は圧電薄膜共振素子100の共振特性のQ値が悪化する要因を含むという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みて考案されたものであり,共振特性の高Q化とスプリアス及びエネルギー損失の低減とを図った圧電薄膜共振素子とこの圧電薄膜共振素子を用いたフィルタや分波器などの回路部品を提供することを目的とする。
本発明の第1の側面によって提供される圧電薄膜共振素子は、所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備した圧電薄膜共振素子であって、前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されていることを特徴としている。
なお、上記の圧電薄膜共振素子において、前記傾斜部は、前記下面電極の外周の一部に設けられているとよい。
本発明の第2の側面によって提供される圧電薄膜共振素子は、所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層領域の一部の音響インピーダンスが前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側の積層領域の音響インピーダンスよりも大きく設定されていることを特徴としている。
本発明の第3の側面によって提供される圧電薄膜共振素子は、所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記上面電極の前記傾斜部が対向する位置の一部に付加膜を設けることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴としている。
なお、上記の圧電薄膜共振素子において、前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は前記上面電極の上面の前記傾斜部が対向する位置から前記端子電極に渡って設けられているとよい。
あるいは、上記の圧電薄膜共振素子において、前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は、前記上面電極の前記下面電極の傾斜部よりも内側から当該傾斜部が対向する位置を通って前記上面電極の前記端子電極に渡って設けられているとよい。
更に、上記の圧電薄膜共振素子において、前記付加膜に代えて、前記上面電極の当該付加膜が設けられる部分の膜厚をそれ以外の部分の膜厚よりも厚くすることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっているようにしてもよい。
また、上記の圧電薄膜共振素子において、前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分の積層厚と略同一の積層厚を有する前記共振部の外周部分における前記圧電膜に、膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部が設けられ、前記圧電膜の外周が前記上面電極の外周より内側に設定されているとよい。
また、本発明の第2または第3の側面によって提供される圧電薄膜共振素子において、前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されているとよい。
また、本発明の第1ないし第3の側面によって提供される圧電薄膜共振素子において、前記圧電膜は、(002)方向を主軸とする配向性を有する窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛で形成するとよい。
本発明の第4の側面によって提供される回路部品は、本発明に係る圧電薄膜共振素子を少なくとも一つ含むことを特徴としている。
本発明に係るFARタイプの圧電薄膜共振素子の第1実施形態の基本的な構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 約2GHzの共振周波数を有する第1実施形態の圧電薄膜共振素子を試作し、1ポート特性のリターンロスを測定した測定結果を示す図である。 約2GHzの共振周波数を有する比較用の圧電薄膜共振素子の基本的な構造を示す図である。 図3に示す圧電薄膜共振素子の1ポート特性のリターンロスを測定した測定結果を示す図である。 下面電極の端部の傾斜が圧電薄膜共振素子の共振特性に及ばす影響を数値解析によって考察するための圧電共振素子のモデル図である。 下部電極の端部の傾斜角をパラメータとして共振周波数におけるインピーダンスを計算した結果を示す図である。 下部電極の端部の傾斜角をパラメータとして反共振周波数におけるインピーダンスを計算した結果を示す図である。 傾斜角を90°としたときの反共振周波数における圧電膜の厚み方向の変位分布を数値解析した結果を示す図である。 傾斜角を90°としたときの反共振周波数における圧電膜の横方向の変位分布を数値解析した結果を示す図である。 傾斜角を8°としたときの反共振周波数における圧電膜の厚み方向の変位分布を数値解析した結果を示す図である。 傾斜角を8°としたときの反共振周波数における圧電膜の横方向の変位分布を数値解析した結果を示す図である。 図7の反共振周波数インピーダンスの特性に、図5に示す圧電薄膜共振素子のモデルにおいて、右側の端面を完全に固定したと仮定した場合の反共振周波数インピーダンスの特性を重ねた図である。 図12に示す反共振周波数インピーダンスの2つの特性の差分の特性を示す図である。 本発明に係るFARタイプの圧電薄膜共振素子の第2実施形態の基本的な構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明に係るFARタイプの圧電薄膜共振素子の第3実施形態の基本的な構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明に係るFARタイプの圧電薄膜共振素子の第4実施形態の基本的な構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明に係るSMRタイプの圧電薄膜共振素子の基本的な構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明に係るフィルタの構造を示す平面図である。 図18に示すフィルタの電気回路を示す図である。 図19に示すラダー型バンドパスフィルタの通過特性を測定した結果を示す図である。 分波器の基本的なブロック構成図である。 FBARタイプの圧電薄膜共振素子の基本的な構造を示す平面図である。 図22のX−X線断面図である。 従来のFBARにおけるスプリアスを低減する構造を示す断面図である。 従来のFBARにおけるQ値の改善を図る構造を示す断面図である。 従来のFBARにおける横弾性波の漏れを抑制する構造を示す断面図である。 従来のFBARにおける横弾性波の漏れを抑制し、共振Q値および電気機械結合係数の改善を図る構造を示す断面図である。 図25の構造に音響インピーダンスの異なる3つの領域を定義した図である。 図27の構造において、下面電極の端部に傾斜が生じた状態を示す要部断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明に係る圧電薄膜共振素子の第1実施形態の基本的な構造を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。なお、図1(a)では付加膜8を端子電極7より僅かに内側に描いているが、端子電極7の存在を示すために作図上、そのように描いたもので、付加膜8と端子電極7はほぼ同じサイズである。また、上面電極5及び端子電極7は見やすくするために太線で描き、付加膜8には点描を付している。これらの点は他の対応する平面図でも同様である。
図1に示す圧電薄膜共振素子1はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)タイプである。圧電薄膜共振素子1は主要構成要素として基板2、下面電極3、圧電膜4、上面電極5、端子電極6、端子電極7及び付加膜8を有している。
下面電極3は楕円形状をなし、その楕円形状を長軸で二分した一方の楕円状の端部(図1では左側の端部)に短軸に沿って端子電極6が延設されている。同様に、上面電極5も楕円形状をなし、その楕円形状を長軸で二分した他方の楕円状の端部(図1では右側の端部)に短軸に沿って端子電極7が延設されている。従って、下面電極3及び端子電極6と上面電極5及び端子電極7とはそれぞれ全体として前方後円形の電極膜となっている。
下面電極3のうち共振部を構成する部分は、エッジが直角になっているとクラックなどにより破壊するおそれがあるので、図1(b)に示すように、その端部を基板2の上面に対して傾斜させている。特に、図1(a)の(イ)から時計回りに(ロ)までの範囲W1では、弾性波の横漏れを防ぐための最適な傾斜角αがあり、上面電極5の範囲W1の部分の傾斜角αは、25°〜55°の範囲内の最適な傾斜角(例えば、およそ30°)に設定されている。なお、傾斜角αを25°〜55°の範囲に選定する技術的意義については後述する。
なお、下面電極3及び端子電極6は一体的にパターニングがされるので、本実施形態では、下面電極3及び端子電極6の前方後円形の電極膜の端部をおよそ30°の傾斜角αで傾斜させている。
また、上面電極5及び端子電極7の前方後円形の電極膜についても、下面電極3及び端子電極6と同様に、その端部におよそ30°の傾斜角αが設けられている。特に、図1(a)の(イ)から反時計回りに(ロ)までの範囲W2の部分の傾斜角αはおよそ30°に設定されている。
圧電膜4は上面電極5及び端子電極7とほぼ同じ前方後円形の形状を有している。付加膜8は端子電極7とほぼ同じ矩形形状を有しているが、上面電極5に一部重なるように、付加膜8の上面電極5側を臨む端部(図1では左側の端部)が端子電極7よりも僅かに長く延びている。その端部は、上面電極5の傾斜部分を超え、平坦部に寸法d1だけ食み出すように延びている。
圧電膜4の端部の周囲は、図1(b)に示すように、下面電極3の上面に対して角度β(例えば、50°〜60°程度)で傾斜している。なお、図1(b)では、圧電膜4の右端の断面も傾斜させているが、この傾斜は積極的に傾斜させたものではない。
下面電極3及び端子電極5の各電極膜、圧電膜4、下面電極5及び端子電極7の各電極膜、付加膜8は基板2の上面にこの順に積層されている。基板2の下面電極3と上面電極5が対向する位置に、その対向する部分よりも僅かに広い開口面を有する空隙9が形成されている。
基板2はシリコン(Si)基板やガラス基板で構成される。空隙9は基板2の裏面から、例えば、フッ素系のガスでドライエッチングを行うことにより形成される。なお、空隙9は基板表面に設けた犠牲層にウェットエッチング等を行うことによっても形成することができる。
下面電極3及び端子電極6の各電極膜と上面電極5及び端子電極7の各電極膜はアルミニウム(Al),銅(Cu),モリブデン(Mo),タングステン(W),タンタル(Ta),白金(Pt),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir)等を含む金属電極膜で構成される。圧電膜4はポアソン比が1/3以下の均質な材料を用いた薄膜で構成される。圧電膜4には、(002)方向を主軸とする配向性を示す窒化アルミニウム(AlN),酸化亜鉛(ZnO),チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PbTiO3)等を用いた薄膜が含まれる。
下面電極3及び端子電極6の各電極膜、上面電極5及び端子電極7の各電極膜、圧電膜4は、例えば、製膜,露光,エッチング工程により形成される。下面電極3の傾斜部3aは、例えば、イオンミリング法を用いて斜めにエッチングすることにより角度αに傾斜させて形成される。或いは、フォトレジストをマスク材としてArイオンによるドライエッチング法を用いて下面電極3を形成する場合は、フォトレジストの端部形状を制御することにより下面電極3の端部の傾斜角αを所望の角度に形成される。なお、フォトレジストの端部形状は、現像後の過熱温度、過熱時間、加熱雰囲気を制御することにより調整することができる。また、圧電膜4の傾斜した部分4a(以下、「傾斜部4a」という。)はウェットエッチング法を用いて圧電膜4をエッチングすることにより所望の角度βに傾斜させて形成される。
付加膜8は金(Au)、チタン(Ti)等を含む金属膜で構成される。例えば、付加膜8は下地膜としてチタン(Ti)の薄膜を形成し、その上に金(Au)の薄膜を形成した二層膜によって構成される。付加膜8を金(Au)とチタン(Ti)の二層膜で形成する場合は、この二層膜をフリップチップ実装のためのバンプ形成用の下地に兼用することができるので、製造工程を複雑化させることがない利点がある。
次に、圧電薄膜共振素子1の共振動作について説明する。
図1において、下面電極3、圧電膜4及び上面電極5が重なる部分は弾性波が共振する部分(以下、「共振部」という。)であり、それ以外の部分は弾性波が共振しない部分(以下、「非共振部」という。)である。下面電極3及び上面電極5の重なる部分は楕円形状であるので、圧電薄膜共振素子1の中央の楕円形状の部分が共振部となる。
図1(b)に示すように、楕円形状の共振部の短軸方向の領域を、下面電極3の傾斜部3aと上面電極5及び付加膜8とが重なる領域を領域(C)、この領域(C)よりも外側の圧電膜4と上面電極5及び付加膜8とが重なる領域を領域(D)、領域(C)よりも内側の領域で下面電極3と上面電極5及び付加膜8とが重なる領域(付加膜8の端部が上面電極5にd1だけ延び出した領域)を領域(B)、この領域(B)よりも内側の下面電極3と上面電極5とが重なる領域を領域(A)の4つの領域に分割し、各領域(A),(B),(C),(D)の膜厚をHA,HB,HC,HDとし、音響インピーダンスをZA,ZB,ZC,ZDとする。
なお、音響インピーダンスは材料の密度と音速の積で表され、材料が決まると、その材料の固有の値を有する。領域(A)の音響インピーダンスZAは、下面電極3、圧電膜4及び上面電極5の積層部分全体で決定される固有の値であり、領域(B),(C)の音響インピーダンスZB,ZCは、下面電極3、圧電膜4、上面電極5及び付加膜8の積層部分全体で決定される固有の値であり、領域(D)の音響インピーダンスZDは、圧電膜4、上面電極5及び付加膜8の積層部分全体で決定される固有の値である。
領域(A),(B),(C),(D)の膜厚の大小関係を、図1(b)に示されるように、HA<HD<HC<HBとし、音響インピーダンスの大小関係もZA<ZD<ZC<ZBとなるように設定する。領域(B),(C)の音響インピーダンスZB,ZCが領域(A),(D)の音響インピーダンスZA,ZDよりも大きくなることにより領域(A)と領域(D)の音響インピーダンスの不整合は増大するので、楕円形状の共振部の中心Oから放射状に伝播した横弾性波のうち端子電極7側に伝播した高次の対称および非対称の横モードの弾性波(より具体的には、図1(a)の(イ)から時計回りに(ロ)までの範囲W1に伝播した横弾性波)が領域(B)で反射され、領域(C),(D)には漏洩し難くなる。
一方、楕円形状の共振部のうち、図1(a)の(イ)から反時計回りに(ロ)までの範囲W2は、圧電膜4の断面形状が、図1(b)に示すように下面電極3の上面に対して角度βで傾斜し、上面電極5の端部が庇のように突出しているので、このような断面形状を有していない場合に比べて共振部の反共振インピーダンスが大きい。従って、楕円形状の共振部の中心Oから放射状に伝播した横弾性波のうち上記の範囲W2に伝播した横弾性波の非共振部側への漏洩が抑制される。
この結果、横弾性波の非共振部側への漏洩が抑制され、圧電薄膜共振素子1のエネルギー損失の低減と共振特性のQ値の向上を図ることができる。
また、楕円形状の共振部の外周に付加膜8を設けた場合、その付加膜8の幅寸法によってスプリアスの発生周波数が変化するが、付加膜8は、図1(a)に示すように、楕円形状の共振部の端子電極7との境界部分にのみ設けられ、それ以外の部分には設けられていないので、共振部の付加膜8が設けられている部分(図1(a)の(イ)から時計回りに(ロ)までの範囲W1の部分)とそれ以外の部分で共振部におけるスプリアスの発生周波数が異なることになる。
すなわち、共振部におけるスプリアスの発生は非対称になる。このため、共振部における付加膜8が設けられている部分と設けられていない部分で発生するスプリアスが相互に打ち消し合う作用をすることになり、スプリアス発生も抑制される。
すなわち、従来では共振特性のQ値、スプリアス特性及びエネルギー損失の全てを改善することはできなかったが、本実施形態に係る圧電薄膜共振素子1によれば、共振特性の高Q化とスプリアスの低減とを図ることができる。
また、付加膜8を導体で構成しているので、上面電極5及び端子電極7の抵抗を下げることができ、圧電薄膜共振素子1のQ値がより改善される。
また、付加膜8を領域(B),(C),(D)に亘って形成するので、上部電極5及び端子電極7の傾斜部分にクラックが発生することを防止することができ、信頼性を向上させることができる。
図2は、約2GHzの共振周波数を有する圧電薄膜共振素子1を試作し、1ポート特性のリターンロスを測定した測定結果を示す図である。
試作した圧電薄膜共振素子1は、シリコンの基板2に、ルテニウム(Ru)240nmmとクロム(Cr)100nmの2層膜からなる下面電極3及び端子電極6、窒化アルミニウム(AlN)1150nmの1層膜からなる圧電膜4、ルテニウム(Ru)240nmmの1層膜からなる上面電極5及び端子電極7、金(Au)500nmとチタン(Ti)100nmの2層膜からなる付加膜8を積層したものである。共振部は長軸200μm、短軸165μmのサイズを有する楕円形状である。下面電極3の傾斜部3aの傾斜角は約30°である。付加膜8が上面電極5側に延出している寸法d1は2μmである。
図2において、P点は共振周波数fP(1963MHz)であり、Q点は反共振周波数fQ(2024MHz)である。縦軸は減衰量(dB)を示し、横軸は周波数(MHz)を示している。
0dBからの減衰量が小さいほど、圧電薄膜共振素子1のQ値が高いことを意味する。また、共振周波数fP以下の領域で減衰量が頻繁に急変しているのは、スプリアスの発生状態を示している。この変動量が小さいほど、スプリアスが小さいことを意味する。
図3は、図2の特性を評価するために試作した約2GHzの共振周波数を有する比較用の圧電薄膜共振素子の基本的な構造を示す図であり、図4は、その比較用の圧電薄膜共振素子の1ポート特性のリターンロスを測定した測定結果を示す図である。
図3に示す比較用の圧電薄膜共振素子の基本的な構造は、図1に示す第1実施形態の圧電薄膜共振素子1の基本的な構造に対して、付加膜8の短軸方向における長さが異なるのみである。
すなわち、図3(a)と図1(a)を対比すれば明らかなように、従来構成の圧電薄膜共振素子1’の付加膜8は、領域(D)の空隙9に重ならない部分にのみ設けられ、領域(B),(C)の部分まで延びていない構成となっている。なお、領域(D)の空隙9と重なる部分の寸法d2は約5μmである。
図2と図4のリターンロスの特性を比較すると、第1実施形態に係る圧電薄膜共振素子1の方がP点(共振周波数fp)で約0.025dB、Q点(反共振周波数fQ)で約0.06dB、減衰量が小さく、いずれの周波数でもQ値が高いことが分かる。また、共振周波数fp以下の領域の減衰量の変動幅も平均して第1実施形態に係る圧電薄膜共振素子1の方が小さく、スプリアスも小さくなっていることが分かる。
従って、FBARタイプの圧電薄膜共振素子1を図1に示す構造とすることにより、共振特性の高Q化とスプリアスの低減とを図ることができると言える。
次に、下面電極3の傾斜角αを25°〜55°の範囲に選定する技術的意義について説明する。
図5は、下面電極の端部の傾斜が圧電薄膜共振素子の共振特性に及ばす影響を数値解析によって考察するための圧電共振素子のモデル図である。図5(a)は平面図、図5(b)は(a)のA−A線断面図である。
図5に示す圧電薄膜共振素子のモデル図は、図1に示す圧電薄膜共振素子1に対して、付加膜8を設けていない点と、圧電膜4を端子電極6の上面まで設けている点で基本構成が異なるだけである。基板2の材料はシリコン、圧電膜4の材料は窒化アルミニウム、下部電極3及び端子電極6と上部電極5及び端子電極7の材料はルテニウムである。また、基板2の厚みHは300μm、圧電膜4の厚みH2は1200nm、下部電極3及び端子電極6の厚みD1と上部電極5及び端子電極7の厚みD2はそれぞれ250nmである。
数値解析は、簡単化のために波動は圧電層4の奥行き方向(図5(a)のY方向)には伝播せず、縦横方向(図5(b)のZ方向およびX方向)にのみ伝播し、圧電層4の右端面(図5の右側の端面)では波動エネルギーが全て吸収され、反射が生じないと仮定して、圧電性を考慮した有限要素法により圧電層4内の変位を計算することにより行った。
図6は、下部電極3の端部の傾斜角αをパラメータとして共振周波数frにおけるインピーダンスZfr(以下、「共振周波数インピーダンスZfr」という。)を計算した結果を示し、図7は、下部電極3の端部の傾斜角αをパラメータとして反共振周波数fnにおけるインピーダンスZfn(以下、「反共振周波数インピーダンスZfr」という。)を計算した結果を示す図である。
図6,図7によれば、共振周波数インピーダンスZfrは傾斜角αに関係なくほぼ一定であるが、反共振周波数インピーダンスZfnは傾斜角αの影響を受け、30°付近に極大値を有することが分かる。
ところで、反共振周波数インピーダンスZfnは、圧電膜4内での静電エネルギーと運動エネルギーの相互変換によって決定されるもので、静電エネルギーと運動エネルギーとが損失なく相互に変換される理想的な状態では無限大となるが、実際には必ず損失が生じるから、反共振周波数インピーダンスZfnは有限の値を有することになる。そして、反共振周波数インピーダンスZfnが大きければ大きいほど損失が少なく、共振素子のQ値は高いと言える。
図7によれば、図5に示すモデルの構造を備えた圧電薄膜共振素子は、反共振周波数インピーダンスZfnが傾斜角αに依存する特性を有し、しかもその特性は極大値を有するものであるから、傾斜角αを反共振周波数インピーダンスZfnが極大値となるおよそ30°の角度に選択すると、圧電薄膜共振素子のQ値を可及的に高くできることが分かる。
図8,図9は、傾斜角αを90°としたときの反共振周波数fnにおける圧電膜4の変位分布を数値解析した結果を示し、図10,図11は、傾斜角αを8°としたときの反共振周波数fnにおける圧電膜4の変位分布を数値解析した結果を示す図である。なお、圧電膜4の変位分布を計算するモデルは、図5(b)に示すモデル図において、共振部のほぼ中央のNを対称境界と仮定し、圧電膜4と基板2との界面が完全に固定されていると仮定したものである。
図8,図10は、圧電層4の厚み方向(図5(b)のZ方向)における変位の分布を示し、図9,図11は、圧電層4の横方向(図5(b)のX方向)における変位の分布を示している。また、図8〜図11のMは、圧電層4の表面の傾斜が始まる位置を示し、図5(b)のMの位置に相当している。図8〜図11では、Mよりも左側の領域が共振部に相当し、右側の領域が非共振部に相当する。また、圧電層4内の縞模様は等変位線を描いたもので、縞の密度が高い部分は変位が大きく、縞の密度が小さい部分は変位が小さいことを示している。
図10,図11によれば、傾斜角8°ではX方向の変位とZ方向の変位のいずれも共振部の方が非共振部よりも大きく、弾性波が共振部に集中していることが分かる。すなわち、傾斜角8°では共振部で発生した弾性波の非共振部への漏れが少ないと言える。一方、図8,図9によれば、傾斜角90°では、Z方向の変位は共振部の方が非共振部よりも大きいが、X方向の変位は共振部と非共振部とに差がなく、共振部で発生した弾性波の非共振部への漏れが大きくなっていることが分かる。
圧電薄膜共振素子1は、厚み方向(図5のZ方向)の振動(縦弾性波)を利用するものであるから、圧電膜4はZ方向に分極軸を有し、Z方向の振動(機械エネルギー)は電気エネルギーに変換されるが、X方向の振動(横弾性波)は電気エネルギーに変換されず、エネルギー損失となる。従って、傾斜角αが90°のときは、傾斜角αが8°よりもエネルギー損失が大きいと言える。
図8〜図11に示す変位分布解析は、図7に示す反共振周波数インピーダンスZfnの特性において、傾斜角αの範囲の両側付近で比較的インピーダンス値が近い8°と90°について調べたものである。図8〜図11の変位分布は、極大値を有する傾斜角30°よりも小さい領域の傾斜角8°と傾斜角30°よりも大きい領域の傾斜角90°とで弾性波の圧電層4における伝播モードが異なり、極大値を有する傾斜角30°の付近で伝播モードが変化することを示唆するものである。
図12は、図7の反共振周波数インピーダンスZfnの特性に、図5に示す圧電薄膜共振素子のモデルにおいて、右側の端面2aを完全に固定したと仮定した場合(すなわち、端面2aで弾性波が反射すると仮定した場合)の反共振周波数インピーダンスZfnの特性を重ねたものである。特性Aは、図7に示す反共振周波数インピーダンスZfnの特性であり、特性Bが端面2aで弾性波が反射する仮定した場合の特性である。また、図13は、図12に示した特性Bと特性Aの差分の特性を示したものである。
図13によれば、傾斜角αがおよそ25°から50°までほぼ直線的に上昇し、60°から90°ではほぼ平坦に変化する。直線T1は、25°から50°までの直線的な変化を代表する線であり、直線T2は60°から90°までの平坦な変化の代表する線である。直線T1と直線T2とが交差する点Rの傾斜角αはおよそ55°である。
反共振周波数インピーダンスZfnの差分の特性を点Rで直線T1と直線T2を結合した折れ線で近似すると、傾斜角αがおよそ25°以下では、反共振周波数インピーダンスZfnの差分の特性は不安定であるが、25°以上では安定し、しかも、25°〜55°の領域と55°〜90°の領域で特性が急変することが分かる。
25°〜55°の領域で反共振周波数インピーダンスZfnの差分の特性が直線的に上昇しているのは、傾斜角αが増加するのに応じて(下部電極3のエッジが立つのに応じて)、共振部で発生した弾性波(振動エネルギー)の非共振部への漏洩が増加することを示すものであり、55°以上になると、その特性が平坦になるのは、下部電極3のエッジによる弾性波の非共振部への漏洩の抑制効果が殆ど作用しなくなるからであると考えられる。従って、傾斜角αを90°以下にすれば、振動エネルギーの非共振部への漏洩を抑制できるようになるが、その抑制を効果的に作用させるには、55°以下に設定すれば良いと言える。
一方、傾斜角αを25°以下にすると、反共振周波数インピーダンスZfnの差分の特性が不安定になるが、これは、共振部にX方向の振動(横弾性波)が励起されることに起因していると考えられる。従って、傾斜角αを少なくとも25°〜55°の範囲に設定すれば、共振部での横弾波の励起を抑えるとともに、共振部で発生した縦弾性波の非共振部への漏洩を効果的に抑制することができる。
特に、図7によれば、傾斜角αをおよそ30°にすると、反共振周波数インピーダンスZfnが極大値を有するから、傾斜角αを30°付近に設定するのが好ましく、これによっても圧電薄膜共振素子1の高Q化が図られる。
第1実施形態では、図1に示すように、付加膜8を端子電極7から上面電極5まで延ばすように形成していたが、付加膜8の形成方法はこの方法に限定されるものではない。例えば、図14〜図16に示す形状で付加膜8を形成してもよい。
図14に示す圧電薄膜共振素子1Aは、付加膜8を領域(C)(下面電極3の傾斜部3aと上面電極5とが重なる領域)の部分にのみ設けるようにしたものである。以下、この実施形態を第2実施形態という。
第2実施形態に係る圧電薄膜共振素子1Aの領域(A),(B),(C),(D)の膜厚の大小関係を、図14(b)に示されるように、HD<HB=HA<HCとし、音響インピーダンスの大小関係をZD<ZB=ZA<ZCと設定する。第2実施形態でも領域(C)の音響インピーダンスZCが領域(A),(B),(D)の音響インピーダンスZA,ZB,ZDよりも大きくなるので、領域(A),(B)と領域(D)の音響インピーダンスの不整合は増大する。従って、楕円形状の共振部の中心Oから放射状に伝播した横弾性波のうち端子電極7側に伝播した高次の対称および非対称の横モードの弾性波が領域(C)で反射され、領域(D)には漏洩し難くなる。
従って、圧電薄膜共振素子1Aのエネルギー損失の低減と共振特性のQ値の向上を図ることができる。また、下部電極3の端部の傾斜角αをおよそ30°に設定することにより高Q化が図られる。
図15に示す圧電薄膜共振素子1Bは、付加膜8を領域(B),(C)(下面電極3の傾斜部3aと上面電極5とが重なる領域とその内側の一部領域)の部分にのみ設けるようにしたものである。以下、この実施形態を第3実施形態という。
第3実施形態に係る圧電薄膜共振素子1の領域(A),(B),(C),(D)の膜厚の大小関係を、図15(b)に示されるように、HD<HA<Hc<HBとし、音響インピーダンスの大小関係もZD<ZA<Zc<ZBと設定する。第3実施形態でも領域(B),(C)の音響インピーダンスZB,ZCが領域(A),(D)の音響インピーダンスZA,ZDよりも大きくなる。従って、領域(A)と領域(D)の音響インピーダンスの不整合は増大するので、楕円形状の共振部の中心Oから放射状に伝播した横弾性波のうち端子電極7側に伝播した高次の対称および非対称の横モードの弾性波が領域(B)で反射され、領域(D)には漏洩し難くなる。
従って、圧電薄膜共振素子1Bでもエネルギー損失の低減と共振特性のQ値の向上を図ることができる。また、下部電極3の端部の傾斜角αをおよそ30°に設定することにより高Q化が図られる。
また、付加膜8を領域(B),(C)に亘って形成するので、上部電極5及び端子電極7の傾斜部分にクラックが発生することを防止することができ、信頼性を向上させることができる。
図16に示す圧電薄膜共振素子1Cは、付加膜8を領域(C),(D)(下面電極3の傾斜部3aと上面電極5とが重なる領域とその外側の領域)の部分にのみ設けるようにしたものである。以下、この実施形態を第4実施形態という。
第4実施形態に係る圧電薄膜共振素子1の領域(A),(B),(C),(D)の膜厚の大小関係を、図16(b)に示されるように、HB=HA<HD<HCとし、音響インピーダンスの大小関係をZB=ZA<ZD<ZCと設定する。第4実施形態では領域(C)の音響インピーダンスZCが領域(D)の音響インピーダンスZDよりも大きくなり、領域(A),(B)の音響インピーダンスZA,ZBは領域(D)の音響インピーダンスZDよりも小さくなる。従って、第4実施形態でも領域(A)と領域(D)の音響インピーダンスの不整合は増大するので、楕円形状の共振部の中心Oから放射状に伝播した横弾性波のうち端子電極7側に伝播した高次の対称および非対称の横モードの弾性波が領域(C)で反射され、領域(D)には漏洩し難くなる。
従って、圧電薄膜共振素子1Cでもエネルギー損失の低減と共振特性のQ値の向上を図ることができる。また、下部電極3の端部の傾斜角αをおよそ30°に設定することにより高Q化が図られる。
なお、第2実施形態〜第4実施形態における付加膜8が楕円形状の共振部の端子電極7との境界部分にのみ設けられ、それ以外の部分には設けられていない点は第1実施形態と共通であるから、第2実施形態〜第4実施形態においても第1実施形態と同様の作用によりスプリアス特性が抑制される。
第1実施形態〜第4実施形態において、所望の効果を得るための付加膜8の膜厚は、Au/Tiの場合にはAu(200nm)/Ti(100nm)以上が望ましい。また、第1実施形態においては、付加膜8の膜厚と幅d1の最適値はお互いの値によっても影響を受け、圧電薄膜共振素子1の共振周波数、材料等にも依存するので、適宜FEM(Finite Element Method)等のシミュレーションと実験値から決定するとよい。
また、第1実施形態〜第4実施形態において、付加膜8に代えて上面電極5の付加膜8が形成される部分の膜厚を厚くするようにしてもよい。すなわち、図1、図14〜図16の付加膜8に代えて、上面電極5の付加膜8の形成部分の膜厚を当該付加膜8の厚み分だけ厚くするようにしても良い。
このように、付加膜8に代えて上面電極5の膜厚を部分的に変化させた場合にも上述した領域(A)〜(D)の音響インピーダンスZA〜ZDの大小関係を作ることができるので、上述した作用・効果と同様の作用・効果を得ることができる。
付加膜8が形成される領域や上面電極5の膜厚を厚くする範囲は、適宜FEM等のシミュレーションおよび実験値から最適値を導出するとよい。
また、付加膜8が形成される箇所は上面電極5の上面に限らず、下面電極3の上面や下面、あるいは圧電膜4の上面等であってもよい。領域(A)〜(D)の各領域の厚みを変える方法として、上面電極5や付加膜8に限らず、圧電膜4の膜厚を変えるようにしてもよい。
上記の第1実施形態〜第4実施形態ではFARタイプの圧電薄膜共振素子1について説明したが、本発明はSMRタイプの圧電薄膜共振素子にも適用できる。
図17は、SMRタイプの圧電薄膜共振素子に上記の第1実施形態に係る付加膜8を設けた実施形態の基本的な構造を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。
図17は、図1と比べれば明らかなように、図1の構造において、基板2に空隙9を設けず、この空隙9に代えて下面電極3及び端子電極6の電極と基板2との間に音響反射膜10を設けたものである。音響反射膜10は、周知のように音響インピーダンスの高い膜10aと音響インピーダンスの低い膜10bを交互にλ/4(λは弾性波の波長)の膜厚で積層したものである。
図17に示すSMRタイプの圧電薄膜共振素子1D(以下、この実施形態を「第5実施形態」という。)でも付加膜8により領域(A)〜(D)の膜厚の大小関係は、HA<HD<HC<HBとなるので、音響インピーダンスの大小関係もZA<ZD<ZC<ZBとなり、第1実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
なお、第5実施形態に係る圧電薄膜共振素子1Dの付加膜8の形状を図14〜図16に示す第2実施形態〜第4実施形態の形状に変えても良い。
本発明の効果を得るに当たり、上記の第1実施形態〜第5実施形態において、基板2、下面電極3、圧電膜4、上面電極5、端子電極6及び端子電極7の各材料は上記に限定されず,他の材料を使用してもよい。
また、下面電極3の下側に、例えば、補強材若しくはエッチングのストップ層としての役割を担う誘電体膜が設けられていても良い。また、上面電極5の上側に、例えば、パシベーション膜あるいは周波数調整用としての役割を担う誘電体膜が設けられていても良い。更に、下面電極3の下側や上面電極5の上側に設けられる誘電体膜の膜厚を変えることで、上記の第1実施形態〜第5実施形態における領域(A)〜(D)の各領域の厚みを変えるようにしてもよい。
上記の第1実施形態〜第5実施形態では、共振部の形状を楕円形状としたが、これに代えて平行な二辺を含まない多角形形状としても上記の作用・効果と同様の作用・効果を得ることができる。
図18は、本発明に係るフィルタの構造を示す平面図である。また、図19は、図18に示すフィルタの電気回路を示す図である。図18,図19に示すフィルタは、第1実施形態に係る圧電薄膜共振素子1を7個組み合わせたラダー型バンドパスフィルタである。なお、図19では上面電極5及び端子電極7は見やすくするために太線で描き、付加膜8には点描を付している。
バンドパスフィルタ11は2個の共振素子を逆L字型に接続してなるフィルタ(以下、「フィルタ単位」という。)を4個縦列させた4段構成のラダー型バンドパスフィルタである。なお、1段目のフィルタ単位と2段目のフィルタ単位は入出力の向きを逆にして接続され、3段目のフィルタ単位と4段目のフィルタ単位も入出力の向きを逆にして接続された構成であるので、2段目のフィルタ単位の並列共振素子と3段目のフィルタ単位の並列共振素子とは並列共振素子P2が共用されている。
図18において、符号In,Out,a,b,cはそれぞれ図19の入出力端子In,Outと接続点a,b,cに対応し、符号Gは接地点を示している。また、楕円形状の上面電極5の部分は共振部であり、各共振部に付したP1〜P3,S1〜〜S4は図19の共振素子P1〜P3,S1〜〜S4に対応している。
直列共振素子S1と並列共振素子P1は上面電極5側の端子電極7によって接続され、直列共振素子S1及び並列共振素子P1の端子電極7を一体化した電極の部分が入力端子Inとなっている。同様に、直列共振素子S4と並列共振素子P3も上面電極5側の端子電極7によって接続され、直列共振素子S4及び並列共振素子P3の端子電極7を一体化した電極の部分が出力端子Outとなっている。
直列共振素子S1と直列共振素子S2は下面電極3側の端子電極6によって接続され、直列共振素子S1及び直列共振素子S2の端子電極6は一体的に形成されている。同様に、直列共振素子S3と直列共振素子S4は下面電極3側の端子電極6によって接続され、直列共振素子S3及び直列共振素子S4の端子電極6は一体的に形成されている。更に、直列共振素子S2、並列共振素子P2及び直列共振素子S3は上面電極5側の端子電極7によって接続され、直列共振素子S2、並列共振素子P2及び直列共振素子S3の端子電極7は一体的に形成されている。
図20は、図18に示すラダー型バンドパスフィルタを試作し、そのバンドパスフィルタの通過特性を測定した測定結果を示す図である。
なお、第1実施形態の図2の説明では、試作した圧電薄膜共振素子1は、上面電極5及び端子電極7をルテニウム(Ru)240nmmの1層膜で構成していたが、試作したバンドパスフィルタ11では、入力端子In、出力端子Out及び接続点bの電極に相当する並列共振素子S1〜S4の上面電極5及び端子電極7はルテニウム(Ru)240nmmとクロム(Cr)110nmの2層膜で構成している。
図20において、特性Aは本発明に係るバンドパスフィルタの特性である。特性Bは、図20において直列共振素子S1〜S4及び並列共振素子P1〜P3の構造を図3に示す圧電薄膜共振素子の構造として試作したバンドパスフィルタ(以下、「比較用バンドパスフィルタ」という。)の特性である。比較用バンドパスフィルタは、図18において、付加膜8を端子電極7から上面電極5内まで延ばさない構成としたものである。
図20に示すように、本発明に係るバンドパスフィルタの方が比較用バンドパスフィルタよりも最小の挿入損失が約0.1dB改善され(1930MHz〜1970MHz参照)、−1.7dB帯域幅で約4MHzの広帯域化となっている。また、帯域内におけるリップルも本発明に係るバンドパスフィルタの方が小さくなっている。
以上のように、本発明に係る圧電薄膜共振素子を用いることにより、フィルタを構成した場合にもそのフィルタの挿入損失及びリップルの低減、広帯域化を図ることができる。
また、上記のラダー型バンドパスフィルタを、図21に示す整合回路121、送信用フィルタ122及び受信用フィルタ123を含む分波器12の送信用フィルタ122及び受信用フィルタ123に適用すれば、送信帯域内及び受信帯域内でリップルが少なく、低損失の分波器12を実現することができる。なお、図21において、整合回路121はアンテナ端子と送信用フィルタ122及び受信用フィルタ123のインピーダンス調整のための回路で、例えば、位相器などで構成される。この整合回路121は必要に応じて設けられるので、分波器12では省略することができる。
なお、フィルタを構成する共振子の数やレイアウト等は上記に限定されるものではない。
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備した圧電薄膜共振素子であって、前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
(付記2)前記傾斜部は、前記下面電極の外周の一部に設けられていることを特徴とする付記1に記載の圧電薄膜共振素子。
(付記3)所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層領域の一部の音響インピーダンスが前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側の積層領域の音響インピーダンスよりも大きく設定されていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
(付記4)所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記上面電極の前記傾斜部が対向する位置の一部に付加膜を設けることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
(付記5)前記付加膜は,前記上面電極の上面に設けられていることを特徴とする付記4に記載の圧電薄膜共振素子。
(付記6)前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は前記上面電極の前記傾斜部が対向する位置から前記端子電極に渡って設けられていることを特徴とする付記5に記載の圧電薄膜共振素子。
(付記7)前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は、前記上面電極の前記下面電極の傾斜部よりも内側から当該傾斜部が対向する位置を通って前記上面電極の前記端子電極に渡って設けられていることを特徴とする付記5に記載の圧電薄膜共振素子。
(付記8)前記付加膜は,導体であることを特徴とする付記4ないし付記7のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記9)前記付加膜に代えて、前記上面電極の当該付加膜が設けられる部分の膜厚をそれ以外の部分の膜厚よりも厚くすることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする付記4ないし付記7のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記10)所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記傾斜部に対向する前記圧電膜の膜厚を前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分に対向する前記圧電膜の膜厚より厚くすることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
(付記11)所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極と、前記下面電極の下面と前記上面電極の上面のいずれか一方又は両方に形成される誘電体膜の積層構造からなる共振部を具備し、前記傾斜部に対向する前記誘電体膜の膜厚を前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分に対向する前記誘電体膜の膜厚より厚くすることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
(付記12)前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分の積層厚と略同一の積層厚を有する前記共振部の外周部分における前記圧電膜に、膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部が設けられ、前記圧電膜の外周が前記上面電極の外周より内側に設定されていることを特徴とする付記4ないし付記7、付記10、付記11のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記13)前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されていることを特徴とする付記4ないし付記7、付記10、付記11のいずれに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記14)前記圧電膜は、(002)方向を主軸とする配向性を有する窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛であることを特徴とする付記1ないし付記7、付記10、付記11のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記15)前記共振部の平面形状は、楕円又は平行な二辺を含まない多角形であることを特徴とする付記1ないし付記7、付記10、付記11のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
(付記16)付記1ないし付記7、付記10、付記11のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子を少なくとも一つ含むことを特徴とする回路部品。
付記1,2,13に記載の圧電薄膜共振素子によれば、下部分極の傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されているので、圧電薄膜共振素子のQ値の向上を図ることができる。
付記3,4,9〜11,14に記載の圧電薄膜共振素子によれば、共振部の下面電極の傾斜部における積層領域の一部の音響インピーダンスが共振部の下面電極の傾斜部より内側の積層領域の音響インピーダンスよりも大きくなるので、横方向の弾性波の漏洩を抑制し、圧電薄膜共振素子のQ値の向上を図ることができる。また、共振部の平面視における音響インピーダンスの変化が非対称になるので、スプリアスの低減も図ることができる。
付記5に記載の圧電薄膜共振素子によれば、製造上悪影響を及ぼすことなく、付加膜を容易に設けることができる。
付記6に記載の圧電薄膜共振素子によれば、上面電極の端子電極にも付加膜を形成することにより、付加膜を導体とした場合、上面電極の端子電極の抵抗を下げることができる。これにより、さらに圧電薄膜共振素子のQ値を改善することができる。
付記7に記載の圧電薄膜共振素子によれば、上面電極における下面電極の傾斜部が対向する位置の付加膜の膜厚を所望の膜厚に安定して設定することができるので、圧電薄膜共振素子のQ値の向上、エネルギー損失とスプリアスの低減の特性改善を確実に果たすことができる。
付記8に記載の圧電薄膜共振素子によれば、上面電極の端子電極の抵抗を下げることができるので、圧電薄膜共振素子のQ値の改善に有利である。
付記12に記載の圧電薄膜共振素子によれば、共振部の外周で音響インピーダンスが中心部よりも高く設定されていない部分では、圧電膜の外周を上面電極の外周よりも内側にすることにより反共振インピーダンスが大きくなり、この部分での横方向の弾性波の漏洩も抑制することができる。これにより、更に圧電薄膜共振素子のQ値の向上を図ることができる。
付記15に記載の圧電薄膜共振素子によれば、スプリアスをある程度低減できるので、さらにスプリアスの少ない圧電薄膜共振素子を実現することができる。
付記16に記載の回路部品によれば、スプリアスの少ない、低損失のフィルタや分波器などの回路部品を実現することができる。

Claims (11)

  1. 所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備した圧電薄膜共振素子であって、
    前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
  2. 前記傾斜部は、前記下面電極の外周の一部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜共振素子。
  3. 所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層領域の一部の音響インピーダンスが前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側の積層領域の音響インピーダンスよりも大きく設定されていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
  4. 所定の平面形状を有する圧電膜と、この圧電膜の下面に形成され、外周に膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有する下面電極と、前記圧電膜の上面に形成される上面電極との積層構造からなる共振部を具備し、前記上面電極の前記傾斜部が対向する位置の一部に付加膜を設けることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする圧電薄膜共振素子。
  5. 前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は前記上面電極の上面の前記傾斜部が対向する位置から前記端子電極に渡って設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電薄膜共振素子。
  6. 前記上面電極には外部接続用の端子電極が延設されており、前記付加膜は、前記上面電極の前記下面電極の傾斜部よりも内側から当該傾斜部が対向する位置を通って前記上面電極の前記端子電極に渡って設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電薄膜共振素子。
  7. 前記付加膜に代えて、前記上面電極の当該付加膜が設けられる部分の膜厚をそれ以外の部分の膜厚よりも厚くすることにより、前記共振部の前記下面電極の傾斜部における積層厚のうち一部の積層厚が前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分における積層厚よりも厚くなっていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
  8. 前記共振部の前記下面電極の傾斜部より内側部分の積層厚と略同一の積層厚を有する前記共振部の外周部分における前記圧電膜に、膜面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部が設けられ、前記圧電膜の外周が前記上面電極の外周より内側に設定されていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
  9. 前記傾斜部の角度が25°から55°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
  10. 前記圧電膜は、(002)方向を主軸とする配向性を有する窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子。
  11. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の圧電薄膜共振素子を少なくとも一つ含むことを特徴とする回路部品。
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