JPWO2009008128A1 - 送液装置及び送液方法 - Google Patents

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亘彦 尾崎
杉原 宏和
宏和 杉原
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Abstract

本発明は、溶液の成分を順次変化させ、変化させた溶液を分配することができる送液装置及び送液方法に関する。チャンバチップ17には、注入チャンバ21、分岐チャンバ22、分岐後チャンバ23Aと23B、誘導流路24、及び分岐後流路25Aと25Bが設けられている。回転軸13まわりの回転がある回転速度に達すると遠心力が毛細管力を上回り、注入チャンバ21内の溶液は誘導流路24を介して分岐チャンバ22の分岐室29Aへ流入する。分岐室29Aが溶液で満杯となった後もさらに注入チャンバ21から分岐室29Aへ溶液が供給される。溶液は障壁22cの先端と壁面22aとの間の隙間28を通って分岐室29Aから隣接する分岐室29Bへ流入する。

Description

本発明は、回転基体に形成された微小流路部位において、溶液を送液するための送液装置、およびその装置を用いた送液方法に関する。
近年、診療所や家庭でのPOCT(Point of care test:その場診断)用途の健康診断チップとして使用される種々のバイオセンサが開発されている。これらのバイオセンサの多くは、マイクロタス(μ−TAS:Micro Total Analysis System)と呼ばれる微小流路構造を有するカード型デバイスである。このようなカード型デバイスのバイオセンサ等において、向心力または遠心力を利用して、微少な試料溶液を計量分配し、分配された溶液を送液する送液装置が開示されている(特許文献1参照)。以下、図1を参照して特許文献1の送液装置を説明する。
図1の送液装置は回転可能な基板1を備える。基板1は、注入チャンバR3;第1試料チャンバR4;オーバーフローチャンバR5;第2試料チャンバR6;第1試料チャンバR4と第2試料チャンバR6を接続する毛管通路X4を含む。第1試料チャンバR4と移動毛管通路X2が、試料の量を画定するセグメントとなる。
試料をセグメントから第1試料チャンバR4に移すための移動毛管通路X2;注入チャンバR3と第1試料チャンバR4の間に設定される分岐ポイント;分岐ポイントとオーバーフローチャンバR5を繋ぐオーバーフロー毛管通路X3;R3から分岐ポイントまでの毛管通路X1;第1試料チャンバR4への均一な試料の移動を防ぐための、移動通路内に配置された毛管ストッパ;チャンバR3〜R6からの空気抜き用のチャンネルV1〜V3が設けられている。
注入チャンバR3に注入された試料溶液はR3に溜まる。基板1を第1回転速度で回転させると、R3に溜まる溶液は、毛管通路X1および移動毛管通路X2を流れ、毛管ストッパを超えて第1試料チャンバR4に流入する。第1試料チャンバR4の容積以上の溶液が流入すると、余剰溶液はセグメントで規定された移動毛管通路X2を満たし、分岐ポイントまで達する。液面が分岐ポイントを超えると、余剰溶液はオーバーフロー毛管通路X3に流入し、オーバーフローチャンバR5に溜まっていく。
R3内の溶液の全てが、第1試料チャンバR4またはオーバーフローチャンバR5に分配された後に、第1回転速度よりも大きい第2回転速度で基板1を回転させる。すると、セグメントで計量された溶液が第2試料チャンバR6へ流入する。このように、基板1の回転速度を適宜に操作することで、試料溶液を計量分配して、第2試料チャンバR6に送液することができる。
特許文献1に開示された構成では、オーバーフローチャンバR5の下流側に試料チャンバは接続されていない。よって、一旦オーバーフローチャンバR5に溜まった溶液を利用することはできない。また、オーバーフローチャンバR5に流入する溶液は、注入チャンバR3から第1試料チャンバR4に一旦溜まることなく、オーバーフローチャンバR5に直接流入した溶液である。毛管通路X1の幅は約10〜500μm;深さは5μmであるため、セグメントで計量される以上の溶液は、毛管通路X1からオーバーフロー毛管通路X3へとひと続きに連続で流れていくためである。
特表2005−518531号公報
特許文献1に示された構成では、セグメントで計量された溶液(試料溶液)を分配して送液することができる。しかしながら、計量された溶液に何らかの処理(例えば、試薬との反応や、固形成分の遠心分離除去)を施した後に、その処理後の溶液を分配することはできない。本発明の課題は、溶液を計量分配するだけでなく、計量された溶液に何らかの処理を施したり、何らかの処理を受けた後の溶液を分配したりすることができる、送液装置を提供することである。
本発明の第1の態様は、以下に示す送液装置、およびそれを用いた送液方法に関する。[1]第1の態様の送液装置は、回転中心を有する回転可能な回転基体と、前記回転中心まわりに前記回転基体を回転させる回転駆動部とを備える送液装置であって、回転基体には、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路とが形成される。
1)注入チャンバ(容積V1)は、注入口を除いて空間的に閉じられている。2)分岐チャンバは、注入チャンバよりも回転中心から離れた位置に設けられており、空気口を除いて空間的に閉じられている。また分岐チャンバは、回転中心側の第1壁面と、第1壁面と対向する遠心側の第2壁面と、第2壁面から前記第1壁面へ向かって延びる1つ以上のn個の障壁とを備えている。障壁の壁面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有することを特徴とする。このn個の障壁によって、分岐チャンバは(n+1)個の分岐室に区画されており、互いに隣接する分岐室は、各障壁の先端と第1壁面との間の隙間を介して互いに連通している。ここで隙間は1.3mm以上であることを特徴とする。さらに、(n+1)個の分岐室の第1〜第n番目の分岐室の合計容量V2は、前記注入チャンバの容量V1よりも小さい。3)分岐後チャンバは、分岐チャンバよりも回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられている。4)誘導流路は、注入チャンバと分岐チャンバとを接続している。また誘導流路は、注入チャンバと接続する第1端部と、分岐チャンバの第1壁面に接続する第2端部とを有する。第1端部は、毛細管力によって前記注入チャンバ内の溶液を保持する。また第2端部は、分岐チャンバの第1分岐室と対向しており、第2端部の表面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有することを特徴とする。注入チャンバに流入された溶液は、誘導流路を介して、第2端部から第1分岐室に流入する。5)分岐後流路は、分岐チャンバと分岐後チャンバとを接続する。分岐後流路の、分岐チャンバと接続する端部は、毛細管力によって前記分岐チャンバ内の溶液を保持する。
前記[1]の回転基体の注入チャンバに注入された溶液を分岐チャンバで分配して、分配された溶液を送液することができる。
つまり、まず[1]に記載の回転基体の注入チャンバに、注入口から溶液を注入する。注入された溶液は、誘導流路の第1端部の毛細管力によって、注入チャンバ内に保持される。
次に、回転基体を第1回転速度で回転させて、誘導流路を介して注入チャンバ内の溶液を分岐チャンバの第1分岐室に流入させる。このとき、誘導流路の第1端部の溶液には、その毛細管力を上回る遠心力が作用する。誘導流路の第2端部の表面が、疎水性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)を有するので、第2端部から液滴形状の溶液が第1分岐室へと飛翔する。
第1分岐室が溶液で満たされた後も、回転基体を第1回転速度で回転させて、注入チャンバの溶液を第1分岐室に供給する。その結果、第1分岐室の溶液が、隙間を通って隣接する他の分岐室へ流入する。つまり第1分岐室の溶液は、障壁を乗り超えてオーバーフローすることにより、第1分岐室から隣接する他の分岐室へ供給される。障壁の壁面が疎水性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)を有するので、第1分岐室に溜まった溶液の体積は、第1分岐室の容積で規定される。その結果、第1分岐室には規定容量の溶液が蓄えられる。
一方、障壁の壁面が親水性(例えば、純水との静止接触角において40°以下)であると、障壁と接触した溶液は、毛細管現象により、自発的に障壁の周囲を濡らすので、第1分岐室内の溶液が次の分岐室へ流入する。よって、第1分岐室に溜まった溶液の容量を、第1分岐室の容積で規定することができない。
本発明の送液装置のように、障壁の壁面が疎水性を有すると、第1分岐室から次の分岐室に溶液が溢れる前に、第1分岐室に溜まる溶液の液面は障壁を濡らさない。そのため、第1分岐室に溜まる溶液の液面は凸形状に盛り上がる。
第1分岐室に溜まる溶液の液面は凸形状に盛り上がるため、前記隙間が1.3mm以下であると、盛り上がった液面が第1壁面に接触する。すると、第1壁面に設けられた誘導流路の第2端部の溶液と、第1分岐室内の溶液が液通する。液通により、注入チャンバの溶液は、第1分岐室に流入することなく、障壁を超えてそのまま第1分岐室に隣接する分岐室(第2分岐室)に流入する。一方、本発明の送液装置のように、隙間が1.3mm以上あると、盛り上がった液面も第1壁面に接触することができない。そのため、第2端部から液適様に溶液は飛翔する。よって注入チャンバの溶液は、第1分岐室内の溶液と空間を隔てて分割されたままとなる。つまり、注入チャンバの溶液の全ては、一旦第1分岐室に流入してから次の分岐室(第2分岐室)に分配され、注入チャンバの溶液がそのまま障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に流れてしまうことを防止する。
分岐後流路が接続された分岐室に蓄えられた溶液は、分岐後流路の端部の毛細管力によって、分岐室に保持される。その後、回転基体を第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させて、分岐後流路を介して分岐チャンバの溶液を分岐後チャンバに流入させる。このとき、分岐後流路の端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させる。
かかる構成により、分岐チャンバの各分岐室から、分岐後流路を介して分岐後チャンバに反応溶液を分配することができる。
本発明の第2の態様は、[1]に記載の送液装置であって、その分岐チャンバ内に試薬が配置された装置、およびそれを用いた反応方法に関する。
[2]第2の態様の送液装置は、[1]に記載の送液装置であって、分岐チャンバの2以上の分岐室のうちの1以上の分岐室に試薬が配置されている。全ての分岐室に試薬が配置されていても構わない。また、分岐後チャンバに試薬が配置されていてもよい。試薬は、注入チャンバに注入される溶液の成分を変化させることができる。
前記[2]に記載の送液装置を用いれば、注入チャンバに注入された溶液の成分を順次に反応させることができる。
つまり、まず[2]に記載の回転基体の注入チャンバに、注入口から溶液を注入する。注入された溶液は、誘導流路の第1端部の毛細管力によって、注入チャンバ内に保持される。
回転基体を第1回転速度で回転させて、注入チャンバの溶液を分岐チャンバの第1分岐室に送液する。第1分岐室に試薬(第1試薬)が配置されていれば、溶液は第1試薬と反応する。第1分岐室内の溶液を、障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に送液する。次の分岐室(第2分岐室)に第2試薬が配置されていれば、溶液は第2試薬と反応することができる。さらに、第2分岐室内の溶液を、障壁を超えて第2分岐室に隣接する次の分岐室(第3分岐室)に流入させても構わない。
所定の時間第1回転速度で回転させて、第1分岐室で第1試薬と反応させ;さらに第1試薬と反応した溶液を第2分岐室で第2試薬と反応させることができる。
回転基体を第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させることで、分岐後流路の端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させる。それにより分岐チャンバの各分岐室から、分岐後流路を介して分岐後チャンバに反応溶液を分配することができる。
分岐チャンバの分岐室のそれぞれに、分岐後流路と分岐後チャンバを設けることができる。すなわち、分岐チャンバの分岐室のそれぞれに、それぞれ別個の分岐後流路が接続され;分岐後流路のそれぞれに、別個の分岐後チャンバが接続されていてもよい。この構成により、分岐室それぞれに分配された溶液を、別個の分岐後チャンバへ送液することができる。
本発明の第3の態様は、以下に示す送液装置、およびそれを用いて、血球が除去された血漿成分を得る方法に関する。
[3]第3の態様の送液装置は、[1]の送液装置における分岐チャンバの2以上の分岐室のうち、第1分岐室には分岐後流路が接続されず、かつ第1分岐室以外の分岐室の一以上に、それぞれ別個の分岐後流路が接続されている装置である。第1分岐室以外の全ての分岐室に分岐後流路が接続されていてもよい。そして分岐後流路のそれぞれは、別個の分岐後チャンバに接続されている。
さらに第3の態様の送液装置は、誘導流路の第2端部からの遠心方向への延長線と、第1分岐室と、それに隣接する分岐室(第2分岐室)とを区画する障壁との距離が、1mm以上8mm以下とされていることを特徴とする。
前記[3]の送液装置を用いれば、血液試料から血球成分を取り除くことができる。まず注入口から注入チャンバに血液試料を供給する。血液試料が供給された回転基体を第1回転速度で回転させると、誘導流路の端部に保持された溶液に作用する遠心力が毛細管力を上回り、注入チャンバの血液試料は誘導流路を介して分岐チャンバの第1分岐室へ流入する。
注入チャンバの溶液を、誘導流路を介して第1分岐室に送液するとき、誘導流路の第2端部の表面が疎水性を有するので、第2端部から液滴形状の血液試料が第1分岐室へ飛翔する。そのため、注入チャンバの血液試料と、分岐チャンバの第1分岐室の溶液とは、液通することなく分断される。
さらに第1分岐室に流入した血液試料の血球成分(比重が大きい)は第2壁面側(遠心方向側)に沈降し、血漿成分(比重が小さい)は第1壁面側(回転中心側)に、互いに分離する。血液試料の血球成分に作用する沈降力は遠心力に比例し、遠心力は回転中心からの距離に依存する。そのため、回転中心に近い注入チャンバ内では血球分離は起こりにくく、回転中心から遠い第1分岐室内で起こりやすい。また、前記[3]の送液装置の第1分岐室には分岐後流路が接続されていないため、第1回転速度を大きくすることができる。第1回転速度を大きくすれば、迅速に血球分離を起こすことができる。
第1分岐室に流入した血液試料の血球成分は、遠心方向の沈降力以外にも、障壁を超えて隣接する分岐室(第2分岐室)に流入しようとする液の流れによる力を受ける。前記[3]の送液装置の誘導流路の、第2端部からの遠心方向への延長線と、第1分岐室と第2分岐室とを区画する障壁との距離は、1mm以上ある。よって、障壁を超えようとする液の流れによる力を受けても、血球成分は障壁を超えることはできず、第1分岐室内に沈降する。
第1分岐室が血液試料で満たされる前に、つまり血液試料が障壁を超えて、隙間を通って次の分岐室にあふれる前に、回転基体の回転速度を第2回転速度へ減少させる。前述の通り、第1分岐室では血球成分が第2壁面側(遠心方向側)に沈降して分離されている。よって、第1分岐室から障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に移る溶液は、第1分岐室の第1壁面側(回転中心側)に分離された血漿試料だけとなる。第2回転速度へ減少させると、第2分岐室以降の分岐室に接続された分岐後流路の端部にかかる毛管力によって、溶液(血漿試料)を各分岐室に保持しやすい。
回転基板の回転速度を、第2回転速度よりも速いある速度(第3回転速度)に上昇させると、分岐後流路の端部における毛細管力を遠心力が上回る。その結果、分岐チャンバの第2分岐室以降の分岐室内の血漿試料が、分岐後流路を介して分岐後チャンバに流入する。かかる構成により、第1分岐室で血球成分を取り除き、血漿試料を第2分岐室以降の分岐室から、分岐後チャンバに流入させることができる。
本発明の送液装置に含まれる回転基体は、前記の通り、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路を含む。回転基体自体に1)〜5)を含む流路部位を形成してもよいが、回転基体は、回転中心を有する回転基体本体と、1)〜5)を含む流路部位が形成されたチャンバチップを有していてもよい。例えば、チャンバチップは、回転基体本体に、着脱可能に取り付けられることが好ましい。また、1の回転基体本体に、複数のチャンバチップが取り付けられてもよい。
本発明の送液方法によれば、注入チャンバに供給された溶液のうちの一定量を、分岐チャンバの分岐室で定量することができ、かつ分岐室で定量された溶液は注入チャンバ内の溶液と分断されている(液通していない)。
そして、分岐室で定量された溶液を、それに隣接する分岐室(例えば、第1分岐室に隣接する第2分岐室)に送液したり、分岐後チャンバに送液したりすることにより、注入チャンバに供給された溶液の一定量を分配することができる。
また、本発明の送液方法によれば、注入チャンバに供給された溶液は、一旦第1分岐室に流入してから、隣接する分岐室に送液され、第1分岐室以外の分岐室に直接送液されることはない。よって、段階的な送液が実現される。
したがって、例えば分岐チャンバの第1分岐室に、溶液の成分と反応する試薬を配置すれば、一定量の溶液の成分を変化させ、成分が変化した後の溶液のみを隣接する分岐室に分配することができる。
また、第1分岐室で血液試料から遠心分離によって血球成分を分離すれば、血漿成分のみを隣接する分岐室に分配することも可能となる。
従来の送液装置の一例を示す部分平面図である。 本発明の実施の形態1に係る送液装置を示す模式的な平面図である。 実施の形態1のチャンバチップの平面図である。 図3のチャンバチップのIII−III線での断面図である。 注入チャンバへ試料溶液を注入した状態のチャンバチップの平面図である。 回転速度RV1で回転中(オーバーフロー前)のチャンバチップの平面図である。 分岐室29Aから分岐室29Bへ溶液がオーバーフローしている状態のチャンバチップの平面図である。 オーバーフローが終了したときのチャンバチップの平面図である。 各分岐室から分岐後チャンバへ送液している状態のチャンバチップの平面図である。 溶液に作用する毛細管力と遠心力を示す模式図である。 チャンバチップの第1の代案を示す平面図であり、分岐室29Bにのみ分岐後チャンバが接続されている。 チャンバチップの第1の代案を示す平面図であり、分岐チャンバが3つの分岐室を有する。 比較例のチャンバチップを示す模式的な平面図である。
(実施の形態1)
本発明の送液装置は、回転基体、およびそれを回転駆動させる駆動部を有する。回転基体は前述の通り、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路を含む。
図2には本発明の送液装置の一例が示される。図2に示される送液装置11は、回転基体12;回転基体12が固定された回転軸13;回転軸13を回転駆動するモータ14;及びモータ14の駆動回路15を備える。回転軸13はその軸線である回転中心Cが鉛直方向に延びる姿勢で配置される。回転基体12はモータ14によって回転駆動されて、平面視で時計方向R1および反時計方向R2のいずれにも回転可能である。
図2に示された回転基体12は、円板状の回転基体本体16と、回転基体本体16に設けられた収容孔16aに取り外し可能に収容された複数(図2では8つ)のチャンバチップ17とを有する。
チャンバチップ17には、溶液を注入される注入チャンバ;複数の分岐室を有する分岐チャンバ;分岐後チャンバ;注入チャンバと分岐チャンバとを接続する誘導流路;分岐チャンバと分岐後チャンバを接続する分岐後流路を含む流路部位が形成されている。
前述のように、回転基体には流路部位が形成されているが、前記流路部位は回転基体に取り外し可能に収容されたチャンバチップ17に形成されていてもよい。図3および図4を参照して、流路部位が形成されたチャンバチップ17を説明する。
以下の説明において、回転中心Cに対する位置や向きは、回転基体本体16に取り付けられたチャンバチップ17の状態を基準とする。図3および図4に示されたチャンバチップ17Aには、注入チャンバ21;分岐チャンバ22;および2つの分岐後チャンバ23Aおよび23Bが設けられている。
これらのチャンバ21,22,23Aおよび23Bのうち、注入チャンバ21が平面視で最も回転中心C側に配置される。分岐チャンバ22は、平面視で注入チャンバ21よりも回転中心Cから離れた位置に設けられている。つまり、分岐チャンバ22は注入チャンバ21よりも回転軸13の径方向r(図2参照)の外側に位置している。
また、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは、平面視で分岐チャンバ22よりも回転中心Cから離れた位置に設けられる。つまり、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは分岐チャンバ22よりも回転軸13の径方向rの外側に位置している。
注入チャンバ21と分岐チャンバ22は、回転軸13の径方向rに延びる誘導流路24によって接続されている。また、分岐チャンバ22と分岐後チャンバ23Aおよび23Bはそれぞれ、回転軸13の半径方向rに延びる別個の分岐後流路25Aおよび25Bによって接続されている。後に詳述するように、注入チャンバ21に注入された溶液は分岐チャンバ22に流入し;分岐チャンバ22で分配され;分岐後チャンバ23Aまたは分岐後チャンバ23Bに流入する。溶液は回転基体12の回転によって生じる遠心力により流路及びチャンバを移動する。
注入チャンバ21はチャンバチップ17Aの内部に形成され、空間的に閉じられている。図3で示されたように、注入チャンバ21は略直方体状の空間であり、平面視では矩形状であり得る。チャンバチップ17Aには、注入チャンバ21の頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、注入チャンバ21の内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる注入口26が形成されている。注入チャンバ21の遠心方向の壁面、すなわち径方向rの外側に位置する壁面21aには、誘導流路24の入口端部24aが接続している。注入口26は、誘導流路24の入口端部24aよりも回転中心Cに近い位置に形成されている。
分岐チャンバ22はチャンバチップ17Aの内部に形成され、空間的に閉じられている。図3または図4で示されたように、分岐チャンバ22は、その内部に障壁が形成された略直方体状の空間であって、平面視では回転軸13の径方向rと直交する方向に細長い矩形状の空間である。チャンバチップ17Aには、分岐チャンバ22の頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、分岐チャンバ22の内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる空気口27が形成されている。空気口27は分岐チャンバ22内に溶液が流入する際に、分岐チャンバ22内の空気をチャンバチップ17Aの外部に排出する機能を有する。分岐チャンバ22の向心方向の壁面、すなわち径方向rの内側に位置する壁面(第1壁面)22aに、誘導流路24の出口端部24bが接続している。
分岐チャンバ22の壁面のうち壁面22aと対向する遠心方向の壁面、すなわち径方向rの外側に位置する壁面(第2壁面)22bの一部は、壁面22aに向けて突出している。それにより、障壁22cが形成されている。障壁22cの基端側(遠心方向側)は、壁面22bに一体に接続されており、障壁22cの先端(回転中心側)は壁面21aに対して隙間28をあけて対向している。
また、障壁22cの下端は分岐チャンバ22の底壁(後述する下面基板36の上面)に一体に接続しており;かつ障壁22cの上端は分岐チャンバ22の頂壁(後述する上面基板37の下面)に一体に接続している。そのため障壁22cは、分岐チャンバ22の内部を、互いに隣接する2つの分岐室29Aと29Bとに分割している。分岐室29Aと29Bは互いに、障壁22cの先端と壁面22aとの間の隙間28を介して連通している。
図3に示されたように、誘導流路24の出口端部24bは、分岐チャンバ22の壁面22aと接続しており、平面視で障壁22cよりも分岐室(第1分岐室)29A側に位置している。つまり誘導流路24の出口端部24bは、回転軸13の径方向rに関して、分岐室29Aと対向している。
分岐室29Aの容量は正確に規定されていることが好ましい。分岐室29Aの容量とは、障壁22cを乗り超えて分岐室29Bへ溶液が流入することなく、またはオーバーフローを起こすことなく、分岐室29A内に蓄えることができる溶液の最大容量をいう。また、分岐室29Aの容量は注入チャンバ21の容量よりも小さいことが好ましい。
隙間28は毛管流路ではなく、毛細管現象が生じない程度の大きさを有する。また障壁22cの深さは、分岐チャンバ22の深さに等しくされていてもよい。
障壁22cの壁面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性であることが望ましい。障壁22cの材質を疎水性材料としてもよいし、表面改質して前述の疎水性を付与してもよい。障壁22cの壁面を疎水性とすることによって、分岐室29Aに収容可能な溶液の容量を規定することができる。障壁22cの壁面が純水との静止接触角において40°以下の表面であると、障壁22cに接触した溶液は、毛細管現象により障壁22cを濡らして、自発的に次の分岐室へ流入する。そのため分岐室29Aに収容可能な溶液の容量を規定することができない。
「疎水性である障壁22cの壁面」とは、少なくとも障壁22cの、壁面22aと対向する面を含む。
障壁22cと壁面22aとの隙間28の大きさは1.3mm以上あることが好ましい。特に、障壁22cと、誘導流路24の出口端部24bとの隙間が、1.3mm以上あることが好ましい。
障壁22cの壁面が疎水性であると、分岐室29Aに溜められた溶液の液面は凸形状に盛り上がり、分岐室29Bに溢れる前に障壁22cを濡らさない。通常、溶液(例えば水溶液)面の盛り上がりは、1.3mm未満である。よって隙間28の大きさが1.3mm未満であると、盛り上がった溶液面が壁面22aに接触することがある。溶液面が壁面22aに接触すると、壁面22aに設けられた誘導流路24の出口端部24bの溶液と、分岐室29A内の溶液が液通する。そのため、注入チャンバ21の溶液がそのまま障壁22cを超えて分岐室29Bに流入する。
一方、隙間28が1.3mm以上であると、盛り上がった溶液面が壁面22aに接触しない。よって、注入チャンバ21の溶液と、分岐室29Aの溶液は、空間を隔てて分断されたままとなる。そのため、注入チャンバ21の溶液の全ては一旦、分岐室29Aに流入し、分岐室29Aから分岐室29Bに流入する。つまり、注入チャンバ21の溶液が直接、分岐室29Bに流入することはない。かかる構成により、溶液を段階的に送液して、分配することが可能となる。
障壁22cの形状は特に限定されない。図3に示されるように、平面視での障壁22cの幅(径方向rと直交する方向の寸法)がほぼ一定とされていてもよい(矩形状)。障壁22cの形状は、壁面21aとの隙間28が確保され、かつ分岐室29Aおよび29Bの容積(特に、分岐室29Aの容積)が正確に規定される限り、特に限定されない。
分岐チャンバ22の遠心側の壁面22bには、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’が接続している。つまり、分岐後流路25Aの入口端部25aが分岐室29Aに接続して、かつ分岐後流路25Bの入口端部25a’が分岐室29Bに接続している。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bは、チャンバチップ17Aの内部に形成される。図3に示されるように、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは全体としては扁平な円柱状の空間であり、平面視では概ね円形とされうるが、特に形状は限定されない。分岐後チャンバ23Aおよび23Bの頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、分岐後チャンバ23Aおよび23Bの内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる空気口30Aおよび30Bが形成されている。空気口30Aおよび30Bは、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに溶液が流入する際に、分岐後チャンバ23Aおよび23B内の空気をチャンバチップ17Aの外部に排出する機能を有する。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bの回転中心側の壁面には、分岐後流路25Aおよび25Bの出口端部25bおよび25b’が接続している。
注入チャンバ21の溶液を、誘導流路24を通して分岐チャンバ22へ確実に送液するためには、誘導流路24を微細流路とする必要がある。誘導流路24の出口端部24bの表面が疎水性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)であると、出口端部24bから液滴形状の溶液が、分岐室29Aへ向かって飛翔することができる。
同様に、分岐チャンバ22の分岐室29Aまたは29Bの溶液が、分岐後流路25Aまたは25Bを通って分岐後チャンバ23Aまたは23Bへ、確実に送液されるためには、分岐後流路25Aおよび25Bは微細な流路である必要がある。
具体的には、誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの体積は、注入チャンバ21、分岐チャンバ22ならびに分岐後チャンバ23Aおよび23Bの容積と同等か又はそれよりも小さいことが好ましい。また、誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの幅と深さは、注入チャンバ21、分岐チャンバ22ならびに分岐後チャンバ23Aおよび23Bの幅と深さよりも小さいことが好ましい。
誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの流路断面積は、1μm〜4mmであることが好ましく、25μm〜100000μm以下であることがより好ましく、約10000μmであることがさらに好ましい。
誘導流路24の断面積は、分岐後流路25Aおよび25Bの断面積と同じであってもよく、小さくてもよい。誘導流路24の流路断面積が、分岐後流路25Aおよび25Bの流路断面積より大きいと、溶液を送液するときに分岐チャンバに溶液を留めやすい場合があるが、特に限定されない。溶液を送液するための力を発生させるメカニズムは、各流路の断面積だけに依らず、各チャンバの幅や深さを適宜に設計することで、分岐室29Aおよび29Bに作用する遠心力Fg(図6参照)などを変化させることによっても達成される。送液方法の詳細は後に説明する。
誘導流路24の入口端部24aは、注入チャンバ21の溶液を解除可能に保持するバルブとして機能する。同様に、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’は、分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bの溶液を解除可能に保持するバルブとして機能する。以下、このバルブ機能について詳述する。
まず、誘導流路24の入口端部24a、ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’のいずれの表面も、疎水性を有する。微細流路(誘導流路24や分岐後流路25Aおよび25B)の入口端部(24a,25aおよび25a’)の表面を疎水性とすると、溶液は表面張力による毛細管力Fcにより入口端部で保持されて、微細流路は溶液32で濡れない(図6を参照)。つまり入口端部(24a,25aおよび25a’)の流路壁面が疎水性を有すると、溶液と流路壁面の接触角θが鈍角となる。そのため、溶液32を注入チャンバ21や分岐チャンバ22の分岐室29Aまたは29B内に保持しようとする力である毛細管力Fcが発生する。
毛細管力Fcは、流路壁面と溶液32の界面に生じる表面張力T1〜Tnの合力であり、回転軸13の径方向rの内側方向(向心方向)に作用する。換言すると毛細管力Fcは、入口端部(24a,25aおよび25a’)から、注入チャンバ21や分岐チャンバ22の内部に向かう方向に発生する。毛細管力Fcの大きさは、以下の式(1)で表される。符号Tは水の表面張力、θは溶液の流路壁面に対する接触角、cは流路の周囲長をそれぞれ表す。
Figure 2009008128
前述のように入口端部(24a、25aおよび25a’)、および出口端部24bと障壁22cの壁面は疎水性を有する。一方、分岐後流路25Aおよび25Bの残りの部分の壁面、および注入チャンバ21、分岐チャンバ22の残りの部分の壁面は親水性であっても疎水性であってもよい。また分岐後チャンバ23Aおよび23Bの壁面も、親水性であっても疎水性であってもよい。
分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bのそれぞれには、反応試薬31Aおよび31Bが担持されていてもよい。反応試薬は、分岐室29Aおよび29Bに溜まった溶液に溶解し、反応を引き起こすことができる。反応試薬31Aおよび31B(不図示)のそれぞれの担持位置は、分岐室29Aおよび29B内にあればよく、好適には壁面22bに近い位置(遠心側)に担持される。
試薬31Aおよび31Bの担持方法は、当業者に公知の技術を用いてなされる。反応試薬31Aおよび31Bを含む溶液を、塗布後に乾燥させて担持してもよい。乾燥方法は、真空乾燥、凍結乾燥などを選択することができる。分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれにも、反応試薬31Cおよび31D(不図示)が担持されうる。
図4に示されたように、チャンバチップ17Aは、チャンバ基板35;下面基板36;及び上面基板37の積層体である3層構造を有しうる。
チャンバ基板35には、注入チャンバ21;分岐チャンバ22;分岐後チャンバ23Aおよび23Bが、厚み方向に貫通するように設けられ、かつ上面側に誘導流路24;分岐後流路25Aおよび25Bが形成されている。
下面基板36はチャンバ基板35の下面に接合されている。下面基板36には孔等は形成されていない。下面基板36の上面が注入チャンバ21、分岐チャンバ22、分岐後チャンバ23Aおよび23Bの底壁を構成する。
図4に示されるチャンバチップ17Aは3層構造を有するが、もちろん3層構造以外であっても構わない。例えばチャンバチップ17は、切削加工で流路とチャンバを形成することにより、チャンバ基板35と下面基板36を一体化した基板と、上面基板37とからなる2層構造であってもよい。
また図4に示されるチャンバチップの各流路は、チャンバ断面の上面基板37に接するように形成されているが、各流路の配置も特に限定されない。例えば、下面基板36側に流路が配置されていてもよく、チャンバの遠心側の断面の中央付近に流路が配置されていてもよい。
図2に示された送液装置11を使用した溶液の送液方法を説明する。
まず、図5Aに示すように、溶液32を注入口26から注入チャンバ21に注入し、注入チャンバ21を溶液32で満たす。誘導流路24の疎水性を有する入口端部24aで生じる毛細管力(図6参照)により、注入チャンバ21内の溶液32は誘導流路24内に浸入することなく、入口端部24aで保持される。
次に、回転軸13を中心に回転基体12(図2参照)を回転させる。回転により、毛細管力によって入口端部24aで保持されていた溶液32に、遠心力Fg(図6参照)が作用する。回転基体12の回転速度が一定の速度(回転速度RV1)に達して、遠心力Fgが入口端部24aにおける毛細管力Fc(前述の式(1)参照)を上回ると、入口端部24aの毛細管力による溶液32の保持が解除される。
その結果、図5Bに示すように、注入チャンバ21内の溶液32が誘導流路24を通って分岐チャンバ22に流入する。誘導流路24の出口端部24bの表面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有する。よって、出口端部24bから液滴形状の溶液が、分岐室29Aへと飛翔する。前述のように誘導流路24の出口端部24bは分岐室29Aと対向して設けられているので、注入チャンバ21から誘導流路24を介して分岐チャンバ22に流入する溶液32は、分岐室29Aに進入する。
分岐室29Aに流入した溶液32は、試薬31A(不図示)を溶解させ、試薬31Aによる化学反応が起こる。前述のように分岐室29Aの容量は注入チャンバ21の容量よりも小さく設定されている。よって回転速度RV1での回転を続けると、分岐室29Aが溶液32で満たされた後も、さらに注入チャンバ21からの溶液32の供給が続く。
前記障壁22cの壁面が疎水性であるので、分岐室29Aに溜まる溶液は、分岐室29Bに溢れる前に障壁22cを濡らさない。よって、分岐室29Aに溜まる溶液は凸形状に盛り上がる。隙間28が1.3mm以上であると、凸形状に盛り上がった溶液は壁面22aに接触することがないので、注入チャンバ21内の溶液と、分岐室29A内の溶液は空間を隔てて分断されたままとなり、出口端部24bから溶液が液適様に飛翔する。
出口端部24bから溶液32の供給がさらに続くと、図5Cに示すように、溶液32は障壁22cの先端と壁面22aとの隙間28を通って、分岐室29Aから分岐室29Bへ流入する。つまり、障壁22cを乗り超えてオーバーフローすることにより、分岐室29Aから分岐室29Bへ溶液32が供給される。
隙間28の大きさが1.3mm以上あれば、凸形状に盛り上がった溶液32は、壁面22aに接触することないので、やはり注入チャンバ21の溶液32と分岐室29A内の溶液32は、依然として空間を隔てて分断されたままとなる。よって、出口端部24bから溶液32は液適様に飛翔する。そのため注入チャンバ21の溶液32がそのまま、障壁22cを超えて次の分岐室29Bに流入することはない。つまり、注入チャンバ21の溶液32の全てが一旦、分岐室29Aに溜まってから、次の分岐室29Bに流れ込む。よって、分岐室29Bへ流れ込む溶液32の全ては、試薬31Aによる化学反応が引き起こされた後の溶液である。
分岐室29Bへ流れ込んだ溶液32は、さらに分岐室29Bに担持された試薬31Bを溶解し、試薬31Bによる化学反応を起こす。よって、分岐室29B内の溶液は、試薬31Aによる化学反応、および試薬31Bによる化学反応が起こった溶液となる。
図5Dに示されるように、注入チャンバ21内の溶液32のすべてが、分岐チャンバ22へ供給された状態では、分岐室29Aには規定容量の溶液が蓄えられ、分岐室29Bには注入チャンバ21の容積から分岐室29Aの容積を引いた差に相当する容量の溶液が蓄えられる。
前記障壁22cの壁面が、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性であると、分岐室29Aに溜まった溶液の容量は分岐室29Aの容積となる。一方、前記障壁22cの壁面が、純水との静止接触角において40°以下であると、障壁22cと接触した溶液は、毛細管現象により自発的に障壁22cの周囲を濡らして、分岐室29Aの溶液が次の分岐室29Bへと流入する。そのため、第1分岐室29Aに溜まった溶液の容量は、分岐室29Aの容積とならない。
前述の回転速度RV1の回転により、分岐室29Aおよび29Bに蓄えられた溶液32には遠心力が作用する。しかしながら、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’に毛細管力が生じるので、分岐室29Aおよび29B内の溶液32は、分岐後流路25Aおよび25Bに流入することなく保持される。
回転基体本体16を、前述の回転速度RV1を上回る速度(回転速度RV2)で回転させると、遠心力Fgが入口端部25aおよび25a’における毛細管力Fc(前述の式(1)参照)を上回り、入口端部25aおよび25a’による溶液32の保持が解除される。その結果、図5Eに示すように、分岐室29Aおよび29Bのそれぞれの溶液32は、分岐後流路25Aおよび25Bを通って、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに流入する(図5E参照)。
その結果、分岐後チャンバ23Aには、試薬31A(不図示)による化学反応が引き起こされた、分岐室29Aの容積に相当する溶液32が蓄えられる。一方、分岐後チャンバ23Bには、試薬31Aによる化学反応、および試薬31B(不図示)による化学反応が引き起こされた溶液であって、注入チャンバ21の容積から分岐室29Aの容積を引いた差に相当する容量の溶液32が蓄えられる。
もちろん、分岐後チャンバ23Aに試薬31C(不図示)を担持しておき、溶液32と反応させてもよい。その場合に溶液32は、試薬31Aとの反応後に、試薬31Cとの反応が引き起こされた溶液となる。同様に、分岐後チャンバ23Bに試薬31D(不図示)を担持しておき、溶液32と反応させてもよい。その場合に、分岐後チャンバ23Bの溶液32は、試薬31Aとの反応、および試薬31Bとの反応の後に、さらに試薬31Dとの反応が起こった溶液となる。
例えば、注入チャンバ21の容量が10μL;分岐チャンバ22の分岐室29Aの容量が5μLである場合は、分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれに、5μLの溶液32が供給される。
例えば、分岐室29Aに試薬31Aを反応検出のための共通試薬として配置し;分岐室29Bと分岐後チャンバ23Aのそれぞれに、試薬31Bと試薬31Cを特異的反応のための個別試薬として配置すると、分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれで、試薬31Bとの反応および試薬31Cとの反応が検出できる。
より具体的には、試薬31AとしてNADとジアホラーゼとフェリシアン化カリウムを分岐室29Aに担持させ;試薬31BとしてL−アスパラギン酸と2−オキソグルタル酸を分岐室29Bに担持させ;試薬31Cとして乳酸リチウムを分岐後チャンバ23Aに担持させる。
分岐後チャンバ23Aでは、乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの反応を触媒する酵素である、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
一方、分岐後チャンバ23Bでは、L−アスパラギン酸+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
一方、試薬31BとしてL−アラニンと2−オキソグルタル酸を分岐室29Bに担持させると、ALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
これらの反応により溶液の色が、フェリシアン化カリウムによる黄色から、透明に変化するので、吸光度の変化で反応を光学的に検出することもできるし、電極を用いて電気化学的に検出することもできる。血清中のLDH、ASTまたはALT活性の上昇は、心、肺および腎などの各種疾患、悪性腫瘍、白血病、悪性貧血などにみられる。よって、これらの活性を測定することは、臨床面ではこれらの疾患の診断、経過観察などにおいて有用である。
以上のように、注入チャンバ21から、遠心力によって分岐チャンバ22の分岐室29Aに供給した溶液32を、隔壁22cを超えて隣接する他方の分岐室29Bにオーバーフローさせて、それによって溶液32を定量する。定量された溶液32を分配し、かつ分配された溶液32に化学反応を起こさせている。これは、誘導流路24の出口端部24bを疎水性として、隙間28を分岐室29Aにおける液面の盛り上がりよりも大きくして、注入チャンバ21の溶液と、分岐室29A内の溶液とを分断しているために実現される。
つまりかかる構成によれば、分岐チャンバ22内の溶液を、分岐室毎に分配する部位(障壁部分22c)と、注入チャンバ21の溶液が供給される部位(誘導流路24の出口端部24b)とが空間的に分離される。そのため、注入チャンバ21内の溶液が分岐室29Bへと直接に流入する動作は起こらない。この点が、分岐室同士を毛細管で連結させたオーバーフロー用の流路構造と異なる。このようにして、溶液の成分を順次変化させ、変化させた溶液を分配することができる。
以下に本発明の送液装置の他の実施形態を示すが、本発明の送液装置は、分岐室の数;各分岐室の容量;分岐室に対する分岐後チャンバの数、などを含むチャンバや流路の配置の自由度が高い。よって、溶液の定量および分配、ならびに送液の順序などを組み合わせた複雑な送液制御が実現される。
(実施の形態2)
図7に示されるチャンバチップ17Bは、血液試料から血球成分を除去する機能を有するバイオセンサとして用いられうる。
図3に示されるチャンバチップ17Aと異なり、図7に示されるチャンバチップ17Bの分岐室29Aには分岐後流路や分岐後チャンバが接続されていない。また、誘導流路24の出口端部24bからの延長線と、障壁22cとの距離dが1mm以上8mm以下であることが好ましい。
以下、図7に示されるチャンバチップ17Bを用いて、血液試料から血球成分を取り除く手順を説明する。
まず、注入口26から注入チャンバ21に血液試料が供給される。基板を第1回転速度で回転させると、誘導流路24の入口端部24aに保持された溶液に作用する遠心力が毛細管力を上回り、注入チャンバ21内の血液試料は誘導流路24を介して分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入する。分岐室29Aに流入した血液試料のうち、比重の大きな血球成分は壁面22b側に沈降し;比重の小さな血漿成分は壁面22a側に移動して、互いが分離する。一方、血球成分と血漿成分の分離は分岐室29Aで起こり、注入チャンバ内では起こりにくい。なぜなら、下記式に示されるように、血球成分に作用する沈降力fDは、遠心力rω2に比例し、回転半径rに依存するためである。下記式においてdは血球の直径であり、σは血球の密度であり、ρは溶液の密度である。
Figure 2009008128
このとき、誘導流路24の出口端部24bの表面が疎水性であるので、血液試料は出口端部24bから液滴形状となって分岐室29Aへと飛翔する。そのため、分岐室29Aに流入した溶液と、注入チャンバ21の血液試料とは連続することなく分断される。
分岐室29Aには分岐後流路が接続されていないため、第1回転速度を大きくすることができ、迅速に血球成分と血漿成分との分離を起こすことができる。第1回転速度は1000rpm以上10000rpm以下が望ましく、より好適には5000rpmである。
分岐室29Aが血液試料で満たされ、血漿試料が障壁22cを超えて分岐室29Bに流入する前に、基板の回転を第2回転速度へ減少させる。第2回転速度は、分岐室29Bの分岐後流路25Bの入口端部25aにかかる毛管力が遠心力を上回り、分岐室29Bに流入した血漿試料が、分岐室29Bに溜まることができる回転速度であればよい。第2回転速度は、1000rpm以上3000rpm以下が望ましく、好適には1300rpm以上2000rpm以下である。
分岐室29Aが血液試料で満たされるころには、分岐室29Aの血液試料の血球成分と血漿成分は分離されている。よって、障壁22cを超えて分岐室29Bに移る溶液は、分岐室29Aの壁面22a側に分離された血漿試料のみとなる。
分岐室29Aに流入した血液試料に含まれる血球成分は、遠心方向の沈降力fDと、障壁に向かう液の流れによる2方向の力を受け、その合力方向へと導かれる。誘導流路24の出口端部24bからの遠心方向への延長線と、障壁22cとの距離dが1mm以上あるので、障壁22cを超えることはできず、全て分岐室29A内に沈降する。
回転駆動部が回転基板の回転速度を、前述の第2回転速度よりも速いある速度(第3回転速度)に上昇させると、遠心力が分岐後流路25Bの入口端部25a’における毛細管力を上回る。すると、分岐室29Bの血漿試料は分岐後流路25Bを介して分岐後チャンバ23Bに流入する。かかる構成により、分岐室29Aで血球を除去し;血漿試料のみを分岐室29Bに移送し;さらに血漿試料を分岐後チャンバ23Bに流入させることができる。
実施の形態2のその他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
(実施の形態3)
図8に示されるチャンバチップ17Cは、分岐チャンバ22に4つの分岐室29A〜29Dを有し;分岐室29A〜29Dはそれぞれ、分岐後流路25A〜25Dに接続され;分岐後流路25A〜25Dはそれぞれ、分岐後チャンバ23A〜23Dに接続している。分岐室29Aと29Bは障壁22cで分岐されており;分岐室29Bと29Cは障壁22c’で分岐されており;分岐室29Cと29Dは障壁22c”で分岐されている。
注入チャンバ21の容量V1は、分岐室29A〜29Cの合計容量V2よりも大きい。実施の形態1の図3に示されるチャンバチップと同様に、注入チャンバ21に溶液を注入し、第1回転速度で回転させて、各分岐室(29A〜29D)に溶液を分配する。障壁(22c、22c’および22c”)の壁面が疎水性を有し、かつ障壁と壁面22aとの隙間が1.3mm以上であるので、前述の通り、分岐室29A〜29Cに分配される溶液の容量はそれぞれ、分岐室29A〜29Cの容積によって規定され、各分岐室に溶液が正確に定量される。
図8に示されるチャンバチップ17Cの他の構成は、図3に示されるチャンバチップ17Aと同様である。
図8に示されるチャンバチップ17Cを用いれば、より溶液を多段階に送液でき、かつより分配数が多くなる。したがって、一度の送液操作で多項目検査が可能となる。
例えば分岐室29AにNAD、ジアホラーゼおよびフェリシアン化カリウムを含む試薬31A(不図示)を配置し;分岐室29Bに2−オキソグルタル酸、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む試薬31B(不図示)を配置し;分岐室29CにL−アスパラギン酸を含む試薬31C(不図示)を配置する。さらに分岐後チャンバ23Aに乳酸リチウムを含む試薬31Dを配置し;分岐後チャンバ23BにL−アラニンを含む試薬31Eを配置する。すると、分岐後チャンバ23AではLDHを測定することができ;分岐後チャンバ23BではALTを測定することができ;23CではASTを測定することができる。
(実施例1)
図2から図4に示される実施の形態1に係るチャンバチップ17Aを作製して、生体中の血液等に含まれる酵素である「乳酸デヒドロゲナーゼ(以下LDHと略す)」の濃度の測定を行うことによって、送液動作を評価した。
チャンバチップ17Aの作製について説明する。キャビティ中に、注入チャンバ21、分岐チャンバ22、分岐後チャンバ23Aおよび23B、誘導流路24、ならびに分岐後流路25Aおよび25Bに対応する突出部分を切削加工により形成した鉄鋼材料製の金型を製作した。製作した金型を使用して、ウレタン樹脂のインジェクション成型により、チャンバ基板35を作製した。
分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bの容積を、いずれも5μLに設定した。各チャンバの深さを1mmとした。
誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの、幅を200μm、深さを35μmとした。
障壁22cの幅を0.5mmとし、深さを1mmとした(チャンバの深さと同一)。隙間28の大きさを2mmとした。分岐室29Aは平面視で幅3mm、分岐室29A側の障壁22cの高さは1.65mmとした。これにより分岐室29A内の容積は5μLと規定される。分岐室29Bは平面視で幅3mm、分岐室29B側の障壁22cの高さは2mmとした。これにより分岐室29Bは、6μLの容積を有する。
ウレタン樹脂製のチャンバ基板35の下面にPET(ポリエチレンテレフタレート)製の下面基板36を接合した。さらに、チャンバ基板35の上面に樹脂製の粘着シートからなる上面基板37を接合した。
ウレタン樹脂からなるチャンバ基板35、PETからなる下面基板36、樹脂製の粘着シートからなる上面基板37はいずれも、純水との静止接触角は78°以上89°以下の表面を有する。よって、障壁22cの壁面は疎水性となる。上面基板37に注入口26と、空気口27,30Aおよび30Bを形成した。
分岐室29Aに試薬31Aとして、ニコチンアミドジヌクレオチド酸化体(以下「NAD」と略す)、ジアホラーゼ、およびフェリシアン化カリウムを;分岐後チャンバ23Aおよび分岐後チャンバ23Bのそれぞれに、試薬31Cおよび試薬31Dとして乳酸リチウムを、分岐室またはチャンバ内に滴下して、室温で真空乾燥15分間、乾燥させた。
各試薬濃度を以下に示す。
フェリシアン化カリウム(100mM):0.4μL
ジアホラーゼ(1000U/mL):0.5μL
乳酸リチウム(1M):0.4μL
NAD(100mM):0.4μL
一方、隙間28を2mmとして、障壁22cの壁面を親水性とした以外は、実施の形態1のチャンバチップ17Aと同一構造のチャンバチップ17Dを、同一の方法で製作した。さらに、隙間28を0.5mmとして、障壁22cの壁面を疎水性とした以外は、第1実施形態のチャンバチップ17Aと同一構造のチャンバチップ17Eを、同一の方法で製作した(図9参照)。
以下において、実施の形態1のチャンバチップに言及する場合には参照番号17Aを使用し;隙間28は2mmで、障壁22cが親水性であるチャンバチップに言及する場合には参照番号17Dを使用し(比較例1);隙間28は0.5mmで、障壁22cは疎水性であるチャンバチップに言及する場合には参照番号17Eを使用する(比較例2)。
次に、送液操作を説明する。50mMのTris−HCl緩衝液にLDHを終濃度が400U/Lとなるように溶解させた溶液10μLを試料溶液とした。試料溶液は目視で透明である。
試料溶液を、チャンバチップ17A,17Dまたは17Eの注入チャンバ21に注入した(図5A参照)。次に、各チャンバチップ17A,17Dまたは17Eを装着した回転基体本体(図2参照)を、800rpmで回転させた。回転したチャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれにおいても、溶液32は誘導流路24の入口端部24aで保持されて、注入チャンバ21内に留まった。
続いて、回転体基体本体の回転を800rpmから20rpm/秒の割合で上昇させ続けた。チャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれにおいても、1256rpmに達するまでに、注入チャンバ21内の溶液32が誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔して、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した(図5B参照)。溶液が出口端部24bから飛翔したときの具体的な回転速度は、チャンバチップ17Aは1128rpm;チャンバチップ17Dは1204rpm;チャンバチップ17Eは1256rpmであり、概ね同様であった。
チャンバチップ17A(実施例1)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。分岐室29Aに留まった溶液32は、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴い、溶液面が障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.75mmであった。
分岐室29A内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22cを乗り超えて)分岐室29Bに移動した(図5C参照)。分岐室29A内には、引き続き出口端部24bから液滴として飛び出した溶液が流入し、一旦、分岐室29Aで混合、拡散して黄色を呈していた。
注入チャンバ21からの溶液32の流入の終了後に、分岐室29Aと29Bにはそれぞれ障壁22cの高さまで溶液が満たされた。それぞれ4.9μL、5.1μLと、ほぼ同じ容積の液が分配された。溶液の色は両方ともに、黄色を呈していた。
チャンバチップ17D(比較例1)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。分岐室29Aに留まった溶液32は、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴い、溶液面が障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.61mmであった。
分岐室29A内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22cを乗り超えて)分岐室29Bに移動した(図5C参照)。分岐室29A内には、引き続き注入チャンバ21から溶液32が流入したが、この溶液32は出口端部24bから液滴として飛び出し、一旦分岐室29Aに混合、拡散して黄色を呈していた。
注入チャンバ21からの溶液32の流入の終了後も、分岐室29Aから分岐室29Bへの流入は止まらなかった。その結果、分岐室29Aにおける溶液面は、平面視で障壁22cの高さを頂点とする凹形状となった。分岐室29Aおよび29Bに収容された溶液の容積はそれぞれ、4.1μLおよび5.9μLとなった。つまり、分岐室29Aの容積で、分岐室29Aに収容される溶液32の容積を規定することができなかった。溶液の色は両方ともに、黄色を呈していた。その後、そのままの回転速度で回転させると、分岐室29Bの溶液が分岐後チャンバ23Bに流れてしまった。
チャンバチップ17E(比較例2)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。試薬31Aを溶解させ、溶液は黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴って、溶液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がった溶液面は、分岐チャンバ22の壁面22aに接触した。
その後、隙間28全面を満たしながら溶液32は拡がり、障壁22cを乗り超えて分岐室29Bに移動した。注入チャンバ21から溶液32の流入が止まった後も、分岐チャンバ22の壁面22aに接触した溶液は、障壁22cの右側壁面(分岐室29Bの面を構成する面)まで吸着したままであった。分岐室29Aおよび29Bに収容された溶液の容量は、6.7μLおよび3.3μLとなった。つまり、分岐室29Aの容積では、分岐室29Aに収容される溶液32の容積を規定できなかった。
しかも、分岐室29A内の溶液は黄色を呈していたが、分岐室29B内の溶液はほぼ透明であった。このことから、注入チャンバ21から、分岐室29Aを経ることなく、直接分岐室29B内に溶液が流入したことが推測された。
さらに基板の回転速度を、先ほどと同様の上昇率で上昇させた。分岐室29Aおよび29Bのそれぞれの溶液は、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに送液された。チャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれについても、回転速度が2120rpmに達するまでに、分岐室29Aおよび29Bから、分岐後チャンバ23Aおよび23Bへの溶液32の移動が生じた。
チャンバチップ17Aを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bからの流れ出しの起きる回転速度は、1370rpmと1410rpmで僅かに異なるが、分岐後チャンバ23Aと23Bにそれぞれ5μLの溶液が満たされた。
チャンバチップ17Dを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bからの流れ出しの起きる回転速度は、分岐室29Aで1594rpm;分岐室29Bで1204rpmであった。つまり、注入チャンバ21から分岐チャンバへ送液する時の回転速度である1204rpmのまま、分岐室29Bから溶液が流れてしまった。
チャンバチップ17Eを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bとからの流れ出しの起きる回転速度は、分岐室29Aで1280rpm;分岐室29Bで2120rpmであった。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bに送液された溶液の、30℃雰囲気中で送液完了の10秒後と3分後の吸光度を測定した。両時間における吸光度の差を吸光度変化として求めた。
チャンバチップ17A(実施例1)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.41と−0.39であり、ほぼ等しかった。これは、LDHに起因する乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、最終的にフェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明に変化したことを示している。
チャンバチップ17D(比較例1)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.43と−0.73であり、大きく異なっていた。吸光度変化は生じているので、LDHに起因する酵素反応は生じている。しかしながら、サンプル溶液が定量できていないため溶液量が異なるため、互いの吸光度変化が大きく異なる。さらに、分岐室29Bから分岐後チャンバ23Bへの溶液流出は、分岐室29Aから分岐後チャンバ23Aへの溶液流出が始まる前から起こっていた。そのため、反応時間が異なるために、応答値である吸光度がばらついたことが示唆される。
チャンバチップ17E(比較例2)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.92と−0.03であり、大きく異なっていた。つまり、分岐後チャンバ23BでのLDHに起因する酵素反応は起こっていない。このことからも、分岐室29Bには、注入チャンバ21から、分岐室29Aを経ずに直接流入したことが示唆されている。
以上の結果のように、実施例1に示したチャンバチップ17Aは、注入チャンバ21に供給された溶液32を、分配および定量でき、かつ試薬応答を精度よく検出することができることを確認した。
これに対して障壁22cの壁面が疎水性を有さないチャンバチップ17D(比較例1)か、または隙間28が小さいチャンバチップ17E(比較例2)は、試薬応答を精度よく検出することができなかった。
(実施例2)
図7に示す実施の形態2に係るチャンバチップ17Bを製作した。製作したチャンバチップ17Bを用いて、血液試料から血球成分を取り除き、実施例1と同様にして生体中の血液等に含まれる酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(以下LDHと略す)の濃度の測定を行うことによって、血球分離動作を評価した。チャンバチップ17Bの製作は実施例1と同様である。
分岐室29Bは平面視で幅2mm、分岐室29B側の障壁22cの高さは3mmとし、これにより分岐室29Bの容積は6μLとした。誘導流路24の出口端部24bと、障壁22cの距離を2.5mmとした。
分岐室29Bに、試薬31Bとしてニコチンアミドジヌクレオチド酸化体(以下、NADと略す)と、ジアホラーゼとフェリシアン化カリウムを;分岐後チャンバ23Bに、試薬31Dとして乳酸リチウムを、真空乾燥させた。
比較のために、誘導流路の出口端部24bと障壁22cの距離を0.3mmとした以外は、第2実施形態のチャンバチップ17と同一構造のチャンバチップ17B’を、同一の方法で製作した。
以下において、実施の形態2のチャンバチップを参照番号17Bとし(実施例2);出口端部24bと障壁22cの距離を0.3mmとしたチャンバチップを参照番号17B’とする(比較例3)。
次に、送液操作を説明する。試料溶液を、当日採血した血液(10μL)とした。試料溶液は目視で赤色である。試料溶液を、チャンバチップ17Bまたは17B’の注入チャンバ21に注入した。
試料液を注入されたチャンバチップ17Bまたは17B’を装着した回転基体本体(図2参照)を、3000rpmで回転させた。チャンバチップ17Bおよび17B’のいずれも、溶液32は注入チャンバ21から誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔して、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した。
分岐室29Aに溜まった血液は遠心力を受けて、血球が分岐チャンバの壁面22b側に0.5mm/sの速度で沈降した。3秒後に、障壁22cの高さにまで溶液面が到達したため、回転速度を2000rpmにして回転を続けた。
分岐室29Aの溶液32は、障壁22cを超えて、隙間28を通って分岐室29Bに流入した。各チャンバチップ17Bおよび17B’ともに、分岐室29Bに流入した溶液はすべて血漿であった。
さらに、注入チャンバ21の血液試料は、出口端部24bから液滴様として分岐室29Aに注入された。注入チャンバ21の全ての血液試料が分岐チャンバ22に送液されたとき、チャンバチップ17Bの分岐室29Bに分配された溶液は血漿のみであり、黄色を呈していた。一方、チャンバチップ17B’の分岐室29Bに分配された溶液は、血球が若干混じった血漿であり、桃色を呈していた。
17Bと17B’のいずれの場合にも、分岐室29Aに分配された溶液の容積は、5.0μL、分岐室29Bに分配された溶液の容積は5.0μLであり、同じであった。
さらに、回転速度を上昇させて、分岐チャンバ22の分岐室29Bの溶液を分岐後チャンバ23Bに送液した。チャンバチップ17Bおよび17B’のいずれの場合も、回転速度が2330rpmに達するまでに、分岐チャンバ22の分岐室29Bから分岐後チャンバ23Bへ溶液32が移動した。
分岐後チャンバ23Bに送液された溶液の吸光度を測定した。分岐後チャンバに送液されてから10秒後と3分後(30℃雰囲気中)の吸光度を測定した。両時間の吸光度の差を吸光度変化として求めた。
チャンバチップ17B(実施例2)における吸光度変化は、−0.4であった。これは、LDHに起因する乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、最終的にフェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明に変化したことを示している。
チャンバチップ17B’(比較例3)では、血球混入による赤色がバックグラウンドとなり、分岐後チャンバ29Bで吸光度が測定できず、吸光度変化が求められなかった。
以上の結果に見られるように、実施例2のチャンバチップ17Bは、注入チャンバ21に供給された血液試料から血球成分のみを分離して血漿成分のみを分配および定量でき、試薬応答を精度よく検出することができることが確認された。これに対して、誘導流路24の出口端部24bと、障壁22cの距離が小さい比較例3のチャンバチップ17B’では、試薬応答を精度よく検出することができなかった。
(実施例3)
図8に示されるチャンバチップ17Cを製作して、生体中の血液試料に含まれる多種類の酵素の活性を同時に測定することによって、チャンバチップ17Cの送液動作を評価した。図8に示されるチャンバチップ17Cの分岐チャンバ22は、4つの分岐室29A〜29Dを有し;4つの分岐室29A〜29Dはそれぞれ、分岐後チャンバ23A〜23Dに接続される。チャンバチップ17Cによって、例えば、LDH、ALTおよびASTを同時に測定することができる。
3つの分岐室29A、29Bおよび29Cは、平面視で幅を2mmとし;分岐室29Aと29Bとの間の障壁22c、分岐室29Bと29Cとの間の障壁22c’、分岐室29Cと29Dとの間の障壁22c”の高さをそれぞれ、2.5mmとした。分岐室29A、29Bおよび29Cはそれぞれ、5μLの容積を有する。一方、分岐室29Dは、平面視で幅を3mmとし;障壁22の高さを3mmとした。
誘導流路24の出口端部24bと障壁22cとの距離は、2.5mmとした。
分岐室29AにNADとジアホラーゼとフェリシアン化カリウム(試薬31A)を;分岐室29Bに2−オキソグルタル酸とグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(試薬31B)を;分岐室29CにL−アスパラギン酸(試薬31C)を;分岐後チャンバ23Aに乳酸リチウム(試薬31D)を;分岐後チャンバ23BにL−アラニン(試薬31E)を、それぞれ真空乾燥により配置した。
送液操作を説明する。試料溶液32として、終濃度100U/L LDHと、100U/L ALTと、200U/L ASTになるように、50mM Tris−HCl緩衝液 18μLに溶解させた溶液を用いた。試料溶液は目視で透明である。
試料溶液32をチャンバチップ17Cの注入チャンバ21に注入した。チャンバチップ17Cを装着した回転基体本体(図2参照)を800rpmで回転させたところ、溶液32はチャンバチップ17Cの誘導流路24の入口端部24aで保持されて、注入チャンバ21に留まった。続いて、回転体基体本体の回転を800rpmから20rpm/秒の速度で上昇させ続けた。1210rpmにおいて、注入チャンバ21内の溶液32は誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔し、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した。
出口端部24bから液滴様に飛翔する溶液32は、まず分岐室29Aにのみ流入して、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aに流入した溶液32の液面は、流入量の増加に伴い障壁22cの頂面に達して凸状に盛り上がった。液面の盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.68mmであった。その後に分岐室29A内の溶液32は、隙間28を通って(障壁22cを乗り越えて)分岐室29Bに移動した。分岐室29Aには、引き続き注入チャンバ21から液体32が流入したが、溶液32は出口端部24bから液滴として飛翔して、一旦、分岐室29Aに流入して、混合および拡散して黄色を呈した。
分岐室29Bに流入した溶液32は、試薬31Bを溶解させた。さらに、分岐室29Bへの流入量の増加に伴い、溶液32の液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。その後、分岐室29B内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22c’を乗り越えて)分岐室29Cに流入した。分岐室29Cに流入した溶液32は試薬31Cを溶解させた。さらに、流入量の増加に伴い溶液32bの液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。その後、分岐室29C内の溶液32は隙間28を通って(障壁22c”を乗り越えて)分岐室29Dにまで達した。
注入チャンバ21から液体32の流入が止まり、分岐室29A、29Bおよび29Cにはそれぞれ、4.9μL、5.1μLおよび5.0μLと、ほぼ同じ容積の溶液が分配された。残りの溶液は分岐室29Dへと分配され、分岐室29Dへ分配された溶液量はほぼ3μLであった。溶液の色はすべて、黄色を呈していた。
次に、回転速度を再度同じ上昇率で上昇させた。回転速度が2120rpmに達するまでに、分岐チャンバ22の分岐室29A、29Bおよび29Cのそれぞれから、分岐後チャンバ23A、23Bおよび23Cへの溶液32の移動が生じた。分岐後チャンバ23A〜Cに溶液32が送液されてから、30℃雰囲気中で5分間反応させた。反応後の各分岐後チャンバ内の溶液の色は、目視で、分岐後チャンバ23Cの溶液が最も濃く、分岐後チャンバ23B、分岐後チャンバ23Aの溶液の順に薄かった。分岐後チャンバ23Aの溶液はまだ黄色を呈していた。
分岐後チャンバ23Aでは、乳酸リチウム、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カリウムが混ぜ合わされる。
LDHに起因する、乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、LDH 100U/Lに相当する分だけ、最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する。溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。LDH 100U/Lに相当する分変化は小さいので、溶液の色はほぼ黄色のままであったことを示している。
一方、分岐後チャンバ23Bでは、L−アラニン、2−オキソグルタル酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カリウムが混ぜ合わされる。
L−アラニン+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、ALT活性に応じた第一の反応で、グルタミン酸が生成する。
生成したグルタミン酸は、さらに、グルタミン酸+NAD⇔2−オキソグルタル酸+NADHのグルタミン酸デヒドロゲナーゼが介在した第2の酵素反応によって変化し、ALT 100U/Lに相当する分だけ最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。
分岐後チャンバ23Cでは、L−アスパラギン酸、2−オキソグルタル酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カリウムが混ぜ合わされる。
L−アスパラギン酸+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、AST活性に応じた第一の反応で、グルタミン酸が生成する。
生成したグルタミン酸は、さらに、グルタミン酸+NAD⇔2−オキソグルタル酸+NADHの酵素反応が起こり、AST 200U/Lに相当する分だけ最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。
AST 200U/Lに相当する分変化は大きいので、溶液の色はほぼ透明になるまで変化したことを示している。
以上の結果に見られるように、本実施例に示したチャンバチップ17は、注入チャンバ21に供給した液体32を分岐及び定量化でき、1つのチップ構成で複数種類の試薬応答を同時に精度よく検出することができることが確認できた。
本出願は、2007年7月6日出願の特願2007−179080に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明の送液装置によれば、微量のサンプルで多項目の検査が可能となる。よって、本発明の送液装置は、POCT用途のバイオセンサとしても有用である。
[符号の説明]
1 基板
11 送液装置
12 回転基体
13 回転軸
14 モータ
15 駆動回路
16 回転基体本体
16a 収容孔
17 チャンバチップ
21 注入チャンバ
21a 注入チャンバの壁面
22 分岐チャンバ
22a 分岐チャンバの壁面
22b 分岐チャンバの壁面
22c 障壁
23A 分岐後チャンバ
23B 分岐後チャンバ
24 誘導流路
24a 誘導流路の入口端部
24b 誘導流路の出口端部
25A 分岐後流路
25a 入口端部
25b 出口端部
25B 分岐後流路
25a’ 入口端部
25b’ 出口端部
26 注入口
27 分岐チャンバの空気口
28 隙間
29A,29B,29C 分岐室
30A 分岐後チャンバの空気口
30B 分岐後チャンバの空気口
31A、31B、31C、31D 反応試薬
32 溶液
35 チャンバ基板
36 下面基板
37 上面基板
C 回転中心
R1,R2 回転方向
R3 注入チャンバ
R4 第1試料チャンバ
R5 オーバーフローチャンバ
R6 第2試料チャンバ
X1〜X4 毛管通路
V1〜V3 空気抜き用のチャンネル
d 誘導流路24の出口端部24bからの延長線と、障壁22cとの距離
本発明は、回転基体に形成された微小流路部位において、溶液を送液するための送液装置、およびその装置を用いた送液方法に関する。
近年、診療所や家庭でのPOCT(Point of care test:その場診断)用途の健康診断チップとして使用される種々のバイオセンサが開発されている。これらのバイオセンサの多くは、マイクロタス(μ−TAS:Micro Total Analysis System)と呼ばれる微小流路構造を有するカード型デバイスである。このようなカード型デバイスのバイオセンサ等において、向心力または遠心力を利用して、微少な試料溶液を計量分配し、分配された溶液を送液する送液装置が開示されている(特許文献1参照)。以下、図1を参照して特許文献1の送液装置を説明する。
図1の送液装置は回転可能な基板1を備える。基板1は、注入チャンバR3;第1試料チャンバR4;オーバーフローチャンバR5;第2試料チャンバR6;第1試料チャンバR4と第2試料チャンバR6を接続する毛管通路X4を含む。第1試料チャンバR4と移動毛管通路X2が、試料の量を画定するセグメントとなる。
試料をセグメントから第1試料チャンバR4に移すための移動毛管通路X2;注入チャンバR3と第1試料チャンバR4の間に設定される分岐ポイント;分岐ポイントとオーバーフローチャンバR5を繋ぐオーバーフロー毛管通路X3;R3から分岐ポイントまでの毛管通路X1;第1試料チャンバR4への均一な試料の移動を防ぐための、移動通路内に配置された毛管ストッパ;チャンバR3〜R6からの空気抜き用のチャンネルV1〜V3が設けられている。
注入チャンバR3に注入された試料溶液はR3に溜まる。基板1を第1回転速度で回転させると、R3に溜まる溶液は、毛管通路X1および移動毛管通路X2を流れ、毛管ストッパを超えて第1試料チャンバR4に流入する。第1試料チャンバR4の容積以上の溶液が流入すると、余剰溶液はセグメントで規定された移動毛管通路X2を満たし、分岐ポイントまで達する。液面が分岐ポイントを超えると、余剰溶液はオーバーフロー毛管通路X3に流入し、オーバーフローチャンバR5に溜まっていく。
R3内の溶液の全てが、第1試料チャンバR4またはオーバーフローチャンバR5に分配された後に、第1回転速度よりも大きい第2回転速度で基板1を回転させる。すると、セグメントで計量された溶液が第2試料チャンバR6へ流入する。このように、基板1の回転速度を適宜に操作することで、試料溶液を計量分配して、第2試料チャンバR6に送液することができる。
特許文献1に開示された構成では、オーバーフローチャンバR5の下流側に試料チャンバは接続されていない。よって、一旦オーバーフローチャンバR5に溜まった溶液を利用することはできない。また、オーバーフローチャンバR5に流入する溶液は、注入チャンバR3から第1試料チャンバR4に一旦溜まることなく、オーバーフローチャンバR5に直接流入した溶液である。毛管通路X1の幅は約10〜500μm;深さは5μmであるため、セグメントで計量される以上の溶液は、毛管通路X1からオーバーフロー毛管通路X3へとひと続きに連続で流れていくためである。
特表2005−518531号公報
特許文献1に示された構成では、セグメントで計量された溶液(試料溶液)を分配して送液することができる。しかしながら、計量された溶液に何らかの処理(例えば、試薬との反応や、固形成分の遠心分離除去)を施した後に、その処理後の溶液を分配することはできない。本発明の課題は、溶液を計量分配するだけでなく、計量された溶液に何らかの処理を施したり、何らかの処理を受けた後の溶液を分配したりすることができる、送液装置を提供することである。
本発明の第1の態様は、以下に示す送液装置、およびそれを用いた送液方法に関する。[1]第1の態様の送液装置は、回転中心を有する回転可能な回転基体と、前記回転中心まわりに前記回転基体を回転させる回転駆動部とを備える送液装置であって、回転基体には、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路とが形成される。
1)注入チャンバ(容積V1)は、注入口を除いて空間的に閉じられている。2)分岐チャンバは、注入チャンバよりも回転中心から離れた位置に設けられており、空気口を除いて空間的に閉じられている。また分岐チャンバは、回転中心側の第1壁面と、第1壁面と対向する遠心側の第2壁面と、第2壁面から前記第1壁面へ向かって延びる1つ以上のn個の障壁とを備えている。障壁の壁面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有することを特徴とする。このn個の障壁によって、分岐チャンバは(n+1)個の分岐室に区画されており、互いに隣接する分岐室は、各障壁の先端と第1壁面との間の隙間を介して互いに連通している。ここで隙間は1.3mm以上であることを特徴とする。さらに、(n+1)個の分岐室の第1〜第n番目の分岐室の合計容量V2は、前記注入チャンバの容量V1よりも小さい。3)分岐後チャンバは、分岐チャンバよりも回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられている。4)誘導流路は、注入チャンバと分岐チャンバとを接続している。また誘導流路は、注入チャンバと接続する第1端部と、分岐チャンバの第1壁面に接続する第2端部とを有する。第1端部は、毛細管力によって前記注入チャンバ内の溶液を保持する。また第2端部は、分岐チャンバの第1分岐室と対向しており、第2端部の表面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有することを特徴とする。注入チャンバに流入された溶液は、誘導流路を介して、第2端部から第1分岐室に流入する。5)分岐後流路は、分岐チャンバと分岐後チャンバとを接続する。分岐後流路の、分岐チャンバと接続する端部は、毛細管力によって前記分岐チャンバ内の溶液を保持する。
前記[1]の回転基体の注入チャンバに注入された溶液を分岐チャンバで分配して、分配された溶液を送液することができる。
つまり、まず[1]に記載の回転基体の注入チャンバに、注入口から溶液を注入する。注入された溶液は、誘導流路の第1端部の毛細管力によって、注入チャンバ内に保持される。
次に、回転基体を第1回転速度で回転させて、誘導流路を介して注入チャンバ内の溶液を分岐チャンバの第1分岐室に流入させる。このとき、誘導流路の第1端部の溶液には、その毛細管力を上回る遠心力が作用する。誘導流路の第2端部の表面が、疎水性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)を有するので、第2端部から液滴形状の溶液が第1分岐室へと飛翔する。
第1分岐室が溶液で満たされた後も、回転基体を第1回転速度で回転させて、注入チャンバの溶液を第1分岐室に供給する。その結果、第1分岐室の溶液が、隙間を通って隣接する他の分岐室へ流入する。つまり第1分岐室の溶液は、障壁を乗り超えてオーバーフローすることにより、第1分岐室から隣接する他の分岐室へ供給される。障壁の壁面が疎水
性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)を有するので、第1分岐室に溜まった溶液の体積は、第1分岐室の容積で規定される。その結果、第1分岐室には規定容量の溶液が蓄えられる。
一方、障壁の壁面が親水性(例えば、純水との静止接触角において40°以下)であると、障壁と接触した溶液は、毛細管現象により、自発的に障壁の周囲を濡らすので、第1分岐室内の溶液が次の分岐室へ流入する。よって、第1分岐室に溜まった溶液の容量を、第1分岐室の容積で規定することができない。
本発明の送液装置のように、障壁の壁面が疎水性を有すると、第1分岐室から次の分岐室に溶液が溢れる前に、第1分岐室に溜まる溶液の液面は障壁を濡らさない。そのため、第1分岐室に溜まる溶液の液面は凸形状に盛り上がる。
第1分岐室に溜まる溶液の液面は凸形状に盛り上がるため、前記隙間が1.3mm以下であると、盛り上がった液面が第1壁面に接触する。すると、第1壁面に設けられた誘導流路の第2端部の溶液と、第1分岐室内の溶液が液通する。液通により、注入チャンバの溶液は、第1分岐室に流入することなく、障壁を超えてそのまま第1分岐室に隣接する分岐室(第2分岐室)に流入する。一方、本発明の送液装置のように、隙間が1.3mm以上あると、盛り上がった液面も第1壁面に接触することができない。そのため、第2端部から液適様に溶液は飛翔する。よって注入チャンバの溶液は、第1分岐室内の溶液と空間を隔てて分割されたままとなる。つまり、注入チャンバの溶液の全ては、一旦第1分岐室に流入してから次の分岐室(第2分岐室)に分配され、注入チャンバの溶液がそのまま障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に流れてしまうことを防止する。
分岐後流路が接続された分岐室に蓄えられた溶液は、分岐後流路の端部の毛細管力によって、分岐室に保持される。その後、回転基体を第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させて、分岐後流路を介して分岐チャンバの溶液を分岐後チャンバに流入させる。このとき、分岐後流路の端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させる。
かかる構成により、分岐チャンバの各分岐室から、分岐後流路を介して分岐後チャンバに反応溶液を分配することができる。
本発明の第2の態様は、[1]に記載の送液装置であって、その分岐チャンバ内に試薬が配置された装置、およびそれを用いた反応方法に関する。
[2]第2の態様の送液装置は、[1]に記載の送液装置であって、分岐チャンバの2以上の分岐室のうちの1以上の分岐室に試薬が配置されている。全ての分岐室に試薬が配置されていても構わない。また、分岐後チャンバに試薬が配置されていてもよい。試薬は、注入チャンバに注入される溶液の成分を変化させることができる。
前記[2]に記載の送液装置を用いれば、注入チャンバに注入された溶液の成分を順次に反応させることができる。
つまり、まず[2]に記載の回転基体の注入チャンバに、注入口から溶液を注入する。注入された溶液は、誘導流路の第1端部の毛細管力によって、注入チャンバ内に保持される。
回転基体を第1回転速度で回転させて、注入チャンバの溶液を分岐チャンバの第1分岐室に送液する。第1分岐室に試薬(第1試薬)が配置されていれば、溶液は第1試薬と反応する。第1分岐室内の溶液を、障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に送液する。次の分岐室(第2分岐室)に第2試薬が配置されていれば、溶液は第2試薬と反応することができる。さらに、第2分岐室内の溶液を、障壁を超えて第2分岐室に隣接する次の分岐室(第3分岐室)に流入させても構わない。
所定の時間第1回転速度で回転させて、第1分岐室で第1試薬と反応させ;さらに第1
試薬と反応した溶液を第2分岐室で第2試薬と反応させることができる。
回転基体を第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させることで、分岐後流路の端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させる。それにより分岐チャンバの各分岐室から、分岐後流路を介して分岐後チャンバに反応溶液を分配することができる。
分岐チャンバの分岐室のそれぞれに、分岐後流路と分岐後チャンバを設けることができる。すなわち、分岐チャンバの分岐室のそれぞれに、それぞれ別個の分岐後流路が接続され;分岐後流路のそれぞれに、別個の分岐後チャンバが接続されていてもよい。この構成により、分岐室それぞれに分配された溶液を、別個の分岐後チャンバへ送液することができる。
本発明の第3の態様は、以下に示す送液装置、およびそれを用いて、血球が除去された血漿成分を得る方法に関する。
[3]第3の態様の送液装置は、[1]の送液装置における分岐チャンバの2以上の分岐室のうち、第1分岐室には分岐後流路が接続されず、かつ第1分岐室以外の分岐室の一以上に、それぞれ別個の分岐後流路が接続されている装置である。第1分岐室以外の全ての分岐室に分岐後流路が接続されていてもよい。そして分岐後流路のそれぞれは、別個の分岐後チャンバに接続されている。
さらに第3の態様の送液装置は、誘導流路の第2端部からの遠心方向への延長線と、第1分岐室と、それに隣接する分岐室(第2分岐室)とを区画する障壁との距離が、1mm以上8mm以下とされていることを特徴とする。
前記[3]の送液装置を用いれば、血液試料から血球成分を取り除くことができる。まず注入口から注入チャンバに血液試料を供給する。血液試料が供給された回転基体を第1回転速度で回転させると、誘導流路の端部に保持された溶液に作用する遠心力が毛細管力を上回り、注入チャンバの血液試料は誘導流路を介して分岐チャンバの第1分岐室へ流入する。
注入チャンバの溶液を、誘導流路を介して第1分岐室に送液するとき、誘導流路の第2端部の表面が疎水性を有するので、第2端部から液滴形状の血液試料が第1分岐室へ飛翔する。そのため、注入チャンバの血液試料と、分岐チャンバの第1分岐室の溶液とは、液通することなく分断される。
さらに第1分岐室に流入した血液試料の血球成分(比重が大きい)は第2壁面側(遠心方向側)に沈降し、血漿成分(比重が小さい)は第1壁面側(回転中心側)に、互いに分離する。血液試料の血球成分に作用する沈降力は遠心力に比例し、遠心力は回転中心からの距離に依存する。そのため、回転中心に近い注入チャンバ内では血球分離は起こりにくく、回転中心から遠い第1分岐室内で起こりやすい。また、前記[3]の送液装置の第1分岐室には分岐後流路が接続されていないため、第1回転速度を大きくすることができる。第1回転速度を大きくすれば、迅速に血球分離を起こすことができる。
第1分岐室に流入した血液試料の血球成分は、遠心方向の沈降力以外にも、障壁を超えて隣接する分岐室(第2分岐室)に流入しようとする液の流れによる力を受ける。前記[3]の送液装置の誘導流路の、第2端部からの遠心方向への延長線と、第1分岐室と第2分岐室とを区画する障壁との距離は、1mm以上ある。よって、障壁を超えようとする液の流れによる力を受けても、血球成分は障壁を超えることはできず、第1分岐室内に沈降する。
第1分岐室が血液試料で満たされる前に、つまり血液試料が障壁を超えて、隙間を通って次の分岐室にあふれる前に、回転基体の回転速度を第2回転速度へ減少させる。前述の通り、第1分岐室では血球成分が第2壁面側(遠心方向側)に沈降して分離されている。よって、第1分岐室から障壁を超えて次の分岐室(第2分岐室)に移る溶液は、第1分岐室の第1壁面側(回転中心側)に分離された血漿試料だけとなる。第2回転速度へ減少させると、第2分岐室以降の分岐室に接続された分岐後流路の端部にかかる毛管力によって、溶液(血漿試料)を各分岐室に保持しやすい。
回転基板の回転速度を、第2回転速度よりも速いある速度(第3回転速度)に上昇させると、分岐後流路の端部における毛細管力を遠心力が上回る。その結果、分岐チャンバの第2分岐室以降の分岐室内の血漿試料が、分岐後流路を介して分岐後チャンバに流入する。かかる構成により、第1分岐室で血球成分を取り除き、血漿試料を第2分岐室以降の分岐室から、分岐後チャンバに流入させることができる。
本発明の送液装置に含まれる回転基体は、前記の通り、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路を含む。回転基体自体に1)〜5)を含む流路部位を形成してもよいが、回転基体は、回転中心を有する回転基体本体と、1)〜5)を含む流路部位が形成されたチャンバチップを有していてもよい。例えば、チャンバチップは、回転基体本体に、着脱可能に取り付けられることが好ましい。また、1の回転基体本体に、複数のチャンバチップが取り付けられてもよい。
本発明の送液方法によれば、注入チャンバに供給された溶液のうちの一定量を、分岐チャンバの分岐室で定量することができ、かつ分岐室で定量された溶液は注入チャンバ内の溶液と分断されている(液通していない)。
そして、分岐室で定量された溶液を、それに隣接する分岐室(例えば、第1分岐室に隣接する第2分岐室)に送液したり、分岐後チャンバに送液したりすることにより、注入チャンバに供給された溶液の一定量を分配することができる。
また、本発明の送液方法によれば、注入チャンバに供給された溶液は、一旦第1分岐室に流入してから、隣接する分岐室に送液され、第1分岐室以外の分岐室に直接送液されることはない。よって、段階的な送液が実現される。
したがって、例えば分岐チャンバの第1分岐室に、溶液の成分と反応する試薬を配置すれば、一定量の溶液の成分を変化させ、成分が変化した後の溶液のみを隣接する分岐室に分配することができる。
また、第1分岐室で血液試料から遠心分離によって血球成分を分離すれば、血漿成分のみを隣接する分岐室に分配することも可能となる。
(実施の形態1)
本発明の送液装置は、回転基体、およびそれを回転駆動させる駆動部を有する。回転基体は前述の通り、1)注入チャンバと、2)分岐チャンバと、3)分岐後チャンバと、4)誘導流路と、5)分岐後流路を含む。
図2には本発明の送液装置の一例が示される。図2に示される送液装置11は、回転基体12;回転基体12が固定された回転軸13;回転軸13を回転駆動するモータ14;及びモータ14の駆動回路15を備える。回転軸13はその軸線である回転中心Cが鉛直方向に延びる姿勢で配置される。回転基体12はモータ14によって回転駆動されて、平面視で時計方向R1および反時計方向R2のいずれにも回転可能である。
図2に示された回転基体12は、円板状の回転基体本体16と、回転基体本体16に設けられた収容孔16aに取り外し可能に収容された複数(図2では8つ)のチャンバチップ17とを有する。
チャンバチップ17には、溶液を注入される注入チャンバ;複数の分岐室を有する分岐チャンバ;分岐後チャンバ;注入チャンバと分岐チャンバとを接続する誘導流路;分岐チャンバと分岐後チャンバを接続する分岐後流路を含む流路部位が形成されている。
前述のように、回転基体には流路部位が形成されているが、前記流路部位は回転基体に取り外し可能に収容されたチャンバチップ17に形成されていてもよい。図3および図4を参照して、流路部位が形成されたチャンバチップ17を説明する。
以下の説明において、回転中心Cに対する位置や向きは、回転基体本体16に取り付けられたチャンバチップ17の状態を基準とする。図3および図4に示されたチャンバチップ17Aには、注入チャンバ21;分岐チャンバ22;および2つの分岐後チャンバ23Aおよび23Bが設けられている。
これらのチャンバ21,22,23Aおよび23Bのうち、注入チャンバ21が平面視で最も回転中心C側に配置される。分岐チャンバ22は、平面視で注入チャンバ21よりも回転中心Cから離れた位置に設けられている。つまり、分岐チャンバ22は注入チャンバ21よりも回転軸13の径方向r(図2参照)の外側に位置している。
また、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは、平面視で分岐チャンバ22よりも回転中心Cから離れた位置に設けられる。つまり、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは分岐チャンバ22よりも回転軸13の径方向rの外側に位置している。
注入チャンバ21と分岐チャンバ22は、回転軸13の径方向rに延びる誘導流路24によって接続されている。また、分岐チャンバ22と分岐後チャンバ23Aおよび23Bはそれぞれ、回転軸13の半径方向rに延びる別個の分岐後流路25Aおよび25Bによ
って接続されている。後に詳述するように、注入チャンバ21に注入された溶液は分岐チャンバ22に流入し;分岐チャンバ22で分配され;分岐後チャンバ23Aまたは分岐後チャンバ23Bに流入する。溶液は回転基体12の回転によって生じる遠心力により流路及びチャンバを移動する。
注入チャンバ21はチャンバチップ17Aの内部に形成され、空間的に閉じられている。図3で示されたように、注入チャンバ21は略直方体状の空間であり、平面視では矩形状であり得る。チャンバチップ17Aには、注入チャンバ21の頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、注入チャンバ21の内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる注入口26が形成されている。注入チャンバ21の遠心方向の壁面、すなわち径方向rの外側に位置する壁面21aには、誘導流路24の入口端部24aが接続している。注入口26は、誘導流路24の入口端部24aよりも回転中心Cに近い位置に形成されている。
分岐チャンバ22はチャンバチップ17Aの内部に形成され、空間的に閉じられている。図3または図4で示されたように、分岐チャンバ22は、その内部に障壁が形成された略直方体状の空間であって、平面視では回転軸13の径方向rと直交する方向に細長い矩形状の空間である。チャンバチップ17Aには、分岐チャンバ22の頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、分岐チャンバ22の内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる空気口27が形成されている。空気口27は分岐チャンバ22内に溶液が流入する際に、分岐チャンバ22内の空気をチャンバチップ17Aの外部に排出する機能を有する。分岐チャンバ22の向心方向の壁面、すなわち径方向rの内側に位置する壁面(第1壁面)22aに、誘導流路24の出口端部24bが接続している。
分岐チャンバ22の壁面のうち壁面22aと対向する遠心方向の壁面、すなわち径方向rの外側に位置する壁面(第2壁面)22bの一部は、壁面22aに向けて突出している。それにより、障壁22cが形成されている。障壁22cの基端側(遠心方向側)は、壁面22bに一体に接続されており、障壁22cの先端(回転中心側)は壁面21aに対して隙間28をあけて対向している。
また、障壁22cの下端は分岐チャンバ22の底壁(後述する下面基板36の上面)に一体に接続しており;かつ障壁22cの上端は分岐チャンバ22の頂壁(後述する上面基板37の下面)に一体に接続している。そのため障壁22cは、分岐チャンバ22の内部を、互いに隣接する2つの分岐室29Aと29Bとに分割している。分岐室29Aと29Bは互いに、障壁22cの先端と壁面22aとの間の隙間28を介して連通している。
図3に示されたように、誘導流路24の出口端部24bは、分岐チャンバ22の壁面22aと接続しており、平面視で障壁22cよりも分岐室(第1分岐室)29A側に位置している。つまり誘導流路24の出口端部24bは、回転軸13の径方向rに関して、分岐室29Aと対向している。
分岐室29Aの容量は正確に規定されていることが好ましい。分岐室29Aの容量とは、障壁22cを乗り超えて分岐室29Bへ溶液が流入することなく、またはオーバーフローを起こすことなく、分岐室29A内に蓄えることができる溶液の最大容量をいう。また、分岐室29Aの容量は注入チャンバ21の容量よりも小さいことが好ましい。
隙間28は毛管流路ではなく、毛細管現象が生じない程度の大きさを有する。また障壁22cの深さは、分岐チャンバ22の深さに等しくされていてもよい。
障壁22cの壁面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性で
あることが望ましい。障壁22cの材質を疎水性材料としてもよいし、表面改質して前述の疎水性を付与してもよい。障壁22cの壁面を疎水性とすることによって、分岐室29Aに収容可能な溶液の容量を規定することができる。障壁22cの壁面が純水との静止接触角において40°以下の表面であると、障壁22cに接触した溶液は、毛細管現象により障壁22cを濡らして、自発的に次の分岐室へ流入する。そのため分岐室29Aに収容可能な溶液の容量を規定することができない。
「疎水性である障壁22cの壁面」とは、少なくとも障壁22cの、壁面22aと対向する面を含む。
障壁22cと壁面22aとの隙間28の大きさは1.3mm以上あることが好ましい。特に、障壁22cと、誘導流路24の出口端部24bとの隙間が、1.3mm以上あることが好ましい。
障壁22cの壁面が疎水性であると、分岐室29Aに溜められた溶液の液面は凸形状に盛り上がり、分岐室29Bに溢れる前に障壁22cを濡らさない。通常、溶液(例えば水溶液)面の盛り上がりは、1.3mm未満である。よって隙間28の大きさが1.3mm未満であると、盛り上がった溶液面が壁面22aに接触することがある。溶液面が壁面22aに接触すると、壁面22aに設けられた誘導流路24の出口端部24bの溶液と、分岐室29A内の溶液が液通する。そのため、注入チャンバ21の溶液がそのまま障壁22cを超えて分岐室29Bに流入する。
一方、隙間28が1.3mm以上であると、盛り上がった溶液面が壁面22aに接触しない。よって、注入チャンバ21の溶液と、分岐室29Aの溶液は、空間を隔てて分断されたままとなる。そのため、注入チャンバ21の溶液の全ては一旦、分岐室29Aに流入し、分岐室29Aから分岐室29Bに流入する。つまり、注入チャンバ21の溶液が直接、分岐室29Bに流入することはない。かかる構成により、溶液を段階的に送液して、分配することが可能となる。
障壁22cの形状は特に限定されない。図3に示されるように、平面視での障壁22cの幅(径方向rと直交する方向の寸法)がほぼ一定とされていてもよい(矩形状)。障壁22cの形状は、壁面21aとの隙間28が確保され、かつ分岐室29Aおよび29Bの容積(特に、分岐室29Aの容積)が正確に規定される限り、特に限定されない。
分岐チャンバ22の遠心側の壁面22bには、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’が接続している。つまり、分岐後流路25Aの入口端部25aが分岐室29Aに接続して、かつ分岐後流路25Bの入口端部25a’が分岐室29Bに接続している。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bは、チャンバチップ17Aの内部に形成される。図3に示されるように、分岐後チャンバ23Aおよび23Bは全体としては扁平な円柱状の空間であり、平面視では概ね円形とされうるが、特に形状は限定されない。分岐後チャンバ23Aおよび23Bの頂壁からチャンバチップ17Aの上面に貫通し、分岐後チャンバ23Aおよび23Bの内部をチャンバチップ17Aの外部と連通させる空気口30Aおよび30Bが形成されている。空気口30Aおよび30Bは、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに溶液が流入する際に、分岐後チャンバ23Aおよび23B内の空気をチャンバチップ17Aの外部に排出する機能を有する。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bの回転中心側の壁面には、分岐後流路25Aおよび25Bの出口端部25bおよび25b’が接続している。
注入チャンバ21の溶液を、誘導流路24を通して分岐チャンバ22へ確実に送液する
ためには、誘導流路24を微細流路とする必要がある。誘導流路24の出口端部24bの表面が疎水性(純水との静止接触角において40°以上130°以下)であると、出口端部24bから液滴形状の溶液が、分岐室29Aへ向かって飛翔することができる。
同様に、分岐チャンバ22の分岐室29Aまたは29Bの溶液が、分岐後流路25Aまたは25Bを通って分岐後チャンバ23Aまたは23Bへ、確実に送液されるためには、分岐後流路25Aおよび25Bは微細な流路である必要がある。
具体的には、誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの体積は、注入チャンバ21、分岐チャンバ22ならびに分岐後チャンバ23Aおよび23Bの容積と同等か又はそれよりも小さいことが好ましい。また、誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの幅と深さは、注入チャンバ21、分岐チャンバ22ならびに分岐後チャンバ23Aおよび23Bの幅と深さよりも小さいことが好ましい。
誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの流路断面積は、1μm〜4mmであることが好ましく、25μm〜100000μm以下であることがより好ましく、約10000μmであることがさらに好ましい。
誘導流路24の断面積は、分岐後流路25Aおよび25Bの断面積と同じであってもよく、小さくてもよい。誘導流路24の流路断面積が、分岐後流路25Aおよび25Bの流路断面積より大きいと、溶液を送液するときに分岐チャンバに溶液を留めやすい場合があるが、特に限定されない。溶液を送液するための力を発生させるメカニズムは、各流路の断面積だけに依らず、各チャンバの幅や深さを適宜に設計することで、分岐室29Aおよび29Bに作用する遠心力Fg(図6参照)などを変化させることによっても達成される。送液方法の詳細は後に説明する。
誘導流路24の入口端部24aは、注入チャンバ21の溶液を解除可能に保持するバルブとして機能する。同様に、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’は、分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bの溶液を解除可能に保持するバルブとして機能する。以下、このバルブ機能について詳述する。
まず、誘導流路24の入口端部24a、ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’のいずれの表面も、疎水性を有する。微細流路(誘導流路24や分岐後流路25Aおよび25B)の入口端部(24a,25aおよび25a’)の表面を疎水性とすると、溶液は表面張力による毛細管力Fcにより入口端部で保持されて、微細流路は溶液32で濡れない(図6を参照)。つまり入口端部(24a,25aおよび25a’)の流路壁面が疎水性を有すると、溶液と流路壁面の接触角θが鈍角となる。そのため、溶液32を注入チャンバ21や分岐チャンバ22の分岐室29Aまたは29B内に保持しようとする力である毛細管力Fcが発生する。
毛細管力Fcは、流路壁面と溶液32の界面に生じる表面張力T1〜Tnの合力であり、回転軸13の径方向rの内側方向(向心方向)に作用する。換言すると毛細管力Fcは、入口端部(24a,25aおよび25a’)から、注入チャンバ21や分岐チャンバ22の内部に向かう方向に発生する。毛細管力Fcの大きさは、以下の式(1)で表される。符号Tは水の表面張力、θは溶液の流路壁面に対する接触角、cは流路の周囲長をそれぞれ表す。
Figure 2009008128
前述のように入口端部(24a、25aおよび25a’)、および出口端部24bと障
壁22cの壁面は疎水性を有する。一方、分岐後流路25Aおよび25Bの残りの部分の壁面、および注入チャンバ21、分岐チャンバ22の残りの部分の壁面は親水性であっても疎水性であってもよい。また分岐後チャンバ23Aおよび23Bの壁面も、親水性であっても疎水性であってもよい。
分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bのそれぞれには、反応試薬31Aおよび31Bが担持されていてもよい。反応試薬は、分岐室29Aおよび29Bに溜まった溶液に溶解し、反応を引き起こすことができる。反応試薬31Aおよび31B(不図示)のそれぞれの担持位置は、分岐室29Aおよび29B内にあればよく、好適には壁面22bに近い位置(遠心側)に担持される。
試薬31Aおよび31Bの担持方法は、当業者に公知の技術を用いてなされる。反応試薬31Aおよび31Bを含む溶液を、塗布後に乾燥させて担持してもよい。乾燥方法は、真空乾燥、凍結乾燥などを選択することができる。分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれにも、反応試薬31Cおよび31D(不図示)が担持されうる。
図4に示されたように、チャンバチップ17Aは、チャンバ基板35;下面基板36;及び上面基板37の積層体である3層構造を有しうる。
チャンバ基板35には、注入チャンバ21;分岐チャンバ22;分岐後チャンバ23Aおよび23Bが、厚み方向に貫通するように設けられ、かつ上面側に誘導流路24;分岐後流路25Aおよび25Bが形成されている。
下面基板36はチャンバ基板35の下面に接合されている。下面基板36には孔等は形成されていない。下面基板36の上面が注入チャンバ21、分岐チャンバ22、分岐後チャンバ23Aおよび23Bの底壁を構成する。
図4に示されるチャンバチップ17Aは3層構造を有するが、もちろん3層構造以外であっても構わない。例えばチャンバチップ17は、切削加工で流路とチャンバを形成することにより、チャンバ基板35と下面基板36を一体化した基板と、上面基板37とからなる2層構造であってもよい。
また図4に示されるチャンバチップの各流路は、チャンバ断面の上面基板37に接するように形成されているが、各流路の配置も特に限定されない。例えば、下面基板36側に流路が配置されていてもよく、チャンバの遠心側の断面の中央付近に流路が配置されていてもよい。
図2に示された送液装置11を使用した溶液の送液方法を説明する。
まず、図5Aに示すように、溶液32を注入口26から注入チャンバ21に注入し、注入チャンバ21を溶液32で満たす。誘導流路24の疎水性を有する入口端部24aで生じる毛細管力(図6参照)により、注入チャンバ21内の溶液32は誘導流路24内に浸入することなく、入口端部24aで保持される。
次に、回転軸13を中心に回転基体12(図2参照)を回転させる。回転により、毛細管力によって入口端部24aで保持されていた溶液32に、遠心力Fg(図6参照)が作用する。回転基体12の回転速度が一定の速度(回転速度RV1)に達して、遠心力Fgが入口端部24aにおける毛細管力Fc(前述の式(1)参照)を上回ると、入口端部24aの毛細管力による溶液32の保持が解除される。
その結果、図5Bに示すように、注入チャンバ21内の溶液32が誘導流路24を通って分岐チャンバ22に流入する。誘導流路24の出口端部24bの表面は、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有する。よって、出口端部24bから液滴形状の溶液が、分岐室29Aへと飛翔する。前述のように誘導流路24の出口端部2
4bは分岐室29Aと対向して設けられているので、注入チャンバ21から誘導流路24を介して分岐チャンバ22に流入する溶液32は、分岐室29Aに進入する。
分岐室29Aに流入した溶液32は、試薬31A(不図示)を溶解させ、試薬31Aによる化学反応が起こる。前述のように分岐室29Aの容量は注入チャンバ21の容量よりも小さく設定されている。よって回転速度RV1での回転を続けると、分岐室29Aが溶液32で満たされた後も、さらに注入チャンバ21からの溶液32の供給が続く。
前記障壁22cの壁面が疎水性であるので、分岐室29Aに溜まる溶液は、分岐室29Bに溢れる前に障壁22cを濡らさない。よって、分岐室29Aに溜まる溶液は凸形状に盛り上がる。隙間28が1.3mm以上であると、凸形状に盛り上がった溶液は壁面22aに接触することがないので、注入チャンバ21内の溶液と、分岐室29A内の溶液は空間を隔てて分断されたままとなり、出口端部24bから溶液が液適様に飛翔する。
出口端部24bから溶液32の供給がさらに続くと、図5Cに示すように、溶液32は障壁22cの先端と壁面22aとの隙間28を通って、分岐室29Aから分岐室29Bへ流入する。つまり、障壁22cを乗り超えてオーバーフローすることにより、分岐室29Aから分岐室29Bへ溶液32が供給される。
隙間28の大きさが1.3mm以上あれば、凸形状に盛り上がった溶液32は、壁面22aに接触することないので、やはり注入チャンバ21の溶液32と分岐室29A内の溶液32は、依然として空間を隔てて分断されたままとなる。よって、出口端部24bから溶液32は液適様に飛翔する。そのため注入チャンバ21の溶液32がそのまま、障壁22cを超えて次の分岐室29Bに流入することはない。つまり、注入チャンバ21の溶液32の全てが一旦、分岐室29Aに溜まってから、次の分岐室29Bに流れ込む。よって、分岐室29Bへ流れ込む溶液32の全ては、試薬31Aによる化学反応が引き起こされた後の溶液である。
分岐室29Bへ流れ込んだ溶液32は、さらに分岐室29Bに担持された試薬31Bを溶解し、試薬31Bによる化学反応を起こす。よって、分岐室29B内の溶液は、試薬31Aによる化学反応、および試薬31Bによる化学反応が起こった溶液となる。
図5Dに示されるように、注入チャンバ21内の溶液32のすべてが、分岐チャンバ22へ供給された状態では、分岐室29Aには規定容量の溶液が蓄えられ、分岐室29Bには注入チャンバ21の容積から分岐室29Aの容積を引いた差に相当する容量の溶液が蓄えられる。
前記障壁22cの壁面が、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性であると、分岐室29Aに溜まった溶液の容量は分岐室29Aの容積となる。一方、前記障壁22cの壁面が、純水との静止接触角において40°以下であると、障壁22cと接触した溶液は、毛細管現象により自発的に障壁22cの周囲を濡らして、分岐室29Aの溶液が次の分岐室29Bへと流入する。そのため、第1分岐室29Aに溜まった溶液の容量は、分岐室29Aの容積とならない。
前述の回転速度RV1の回転により、分岐室29Aおよび29Bに蓄えられた溶液32には遠心力が作用する。しかしながら、分岐後流路25Aおよび25Bの入口端部25aおよび25a’に毛細管力が生じるので、分岐室29Aおよび29B内の溶液32は、分岐後流路25Aおよび25Bに流入することなく保持される。
回転基体本体16を、前述の回転速度RV1を上回る速度(回転速度RV2)で回転させると、遠心力Fgが入口端部25aおよび25a’における毛細管力Fc(前述の式(
1)参照)を上回り、入口端部25aおよび25a’による溶液32の保持が解除される。その結果、図5Eに示すように、分岐室29Aおよび29Bのそれぞれの溶液32は、分岐後流路25Aおよび25Bを通って、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに流入する(図5E参照)。
その結果、分岐後チャンバ23Aには、試薬31A(不図示)による化学反応が引き起こされた、分岐室29Aの容積に相当する溶液32が蓄えられる。一方、分岐後チャンバ23Bには、試薬31Aによる化学反応、および試薬31B(不図示)による化学反応が引き起こされた溶液であって、注入チャンバ21の容積から分岐室29Aの容積を引いた差に相当する容量の溶液32が蓄えられる。
もちろん、分岐後チャンバ23Aに試薬31C(不図示)を担持しておき、溶液32と反応させてもよい。その場合に溶液32は、試薬31Aとの反応後に、試薬31Cとの反応が引き起こされた溶液となる。同様に、分岐後チャンバ23Bに試薬31D(不図示)を担持しておき、溶液32と反応させてもよい。その場合に、分岐後チャンバ23Bの溶液32は、試薬31Aとの反応、および試薬31Bとの反応の後に、さらに試薬31Dとの反応が起こった溶液となる。
例えば、注入チャンバ21の容量が10μL;分岐チャンバ22の分岐室29Aの容量が5μLである場合は、分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれに、5μLの溶液32が供給される。
例えば、分岐室29Aに試薬31Aを反応検出のための共通試薬として配置し;分岐室29Bと分岐後チャンバ23Aのそれぞれに、試薬31Bと試薬31Cを特異的反応のための個別試薬として配置すると、分岐後チャンバ23Aおよび23Bのそれぞれで、試薬31Bとの反応および試薬31Cとの反応が検出できる。
より具体的には、試薬31AとしてNADとジアホラーゼとフェリシアン化カリウムを分岐室29Aに担持させ;試薬31BとしてL−アスパラギン酸と2−オキソグルタル酸を分岐室29Bに担持させ;試薬31Cとして乳酸リチウムを分岐後チャンバ23Aに担持させる。
分岐後チャンバ23Aでは、乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの反応を触媒する酵素である、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
一方、分岐後チャンバ23Bでは、L−アスパラギン酸+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
一方、試薬31BとしてL−アラニンと2−オキソグルタル酸を分岐室29Bに担持させると、ALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)活性に応じた、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する反応を生じさせることができる。
これらの反応により溶液の色が、フェリシアン化カリウムによる黄色から、透明に変化するので、吸光度の変化で反応を光学的に検出することもできるし、電極を用いて電気化学的に検出することもできる。血清中のLDH、ASTまたはALT活性の上昇は、心、肺および腎などの各種疾患、悪性腫瘍、白血病、悪性貧血などにみられる。よって、これらの活性を測定することは、臨床面ではこれらの疾患の診断、経過観察などにおいて有用である。
以上のように、注入チャンバ21から、遠心力によって分岐チャンバ22の分岐室29
Aに供給した溶液32を、隔壁22cを超えて隣接する他方の分岐室29Bにオーバーフローさせて、それによって溶液32を定量する。定量された溶液32を分配し、かつ分配された溶液32に化学反応を起こさせている。これは、誘導流路24の出口端部24bを疎水性として、隙間28を分岐室29Aにおける液面の盛り上がりよりも大きくして、注入チャンバ21の溶液と、分岐室29A内の溶液とを分断しているために実現される。
つまりかかる構成によれば、分岐チャンバ22内の溶液を、分岐室毎に分配する部位(障壁部分22c)と、注入チャンバ21の溶液が供給される部位(誘導流路24の出口端部24b)とが空間的に分離される。そのため、注入チャンバ21内の溶液が分岐室29Bへと直接に流入する動作は起こらない。この点が、分岐室同士を毛細管で連結させたオーバーフロー用の流路構造と異なる。このようにして、溶液の成分を順次変化させ、変化させた溶液を分配することができる。
以下に本発明の送液装置の他の実施形態を示すが、本発明の送液装置は、分岐室の数;各分岐室の容量;分岐室に対する分岐後チャンバの数、などを含むチャンバや流路の配置の自由度が高い。よって、溶液の定量および分配、ならびに送液の順序などを組み合わせた複雑な送液制御が実現される。
(実施の形態2)
図7に示されるチャンバチップ17Bは、血液試料から血球成分を除去する機能を有するバイオセンサとして用いられうる。
図3に示されるチャンバチップ17Aと異なり、図7に示されるチャンバチップ17Bの分岐室29Aには分岐後流路や分岐後チャンバが接続されていない。また、誘導流路24の出口端部24bからの延長線と、障壁22cとの距離dが1mm以上8mm以下であることが好ましい。
以下、図7に示されるチャンバチップ17Bを用いて、血液試料から血球成分を取り除く手順を説明する。
まず、注入口26から注入チャンバ21に血液試料が供給される。基板を第1回転速度で回転させると、誘導流路24の入口端部24aに保持された溶液に作用する遠心力が毛細管力を上回り、注入チャンバ21内の血液試料は誘導流路24を介して分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入する。分岐室29Aに流入した血液試料のうち、比重の大きな血球成分は壁面22b側に沈降し;比重の小さな血漿成分は壁面22a側に移動して、互いが分離する。一方、血球成分と血漿成分の分離は分岐室29Aで起こり、注入チャンバ内では起こりにくい。なぜなら、下記式に示されるように、血球成分に作用する沈降力fDは、遠心力rω2に比例し、回転半径rに依存するためである。下記式においてdは血球の直径であり、σは血球の密度であり、ρは溶液の密度である。
Figure 2009008128
このとき、誘導流路24の出口端部24bの表面が疎水性であるので、血液試料は出口端部24bから液滴形状となって分岐室29Aへと飛翔する。そのため、分岐室29Aに流入した溶液と、注入チャンバ21の血液試料とは連続することなく分断される。
分岐室29Aには分岐後流路が接続されていないため、第1回転速度を大きくすることができ、迅速に血球成分と血漿成分との分離を起こすことができる。第1回転速度は1000rpm以上10000rpm以下が望ましく、より好適には5000rpmである。
分岐室29Aが血液試料で満たされ、血漿試料が障壁22cを超えて分岐室29Bに流
入する前に、基板の回転を第2回転速度へ減少させる。第2回転速度は、分岐室29Bの分岐後流路25Bの入口端部25aにかかる毛管力が遠心力を上回り、分岐室29Bに流入した血漿試料が、分岐室29Bに溜まることができる回転速度であればよい。第2回転速度は、1000rpm以上3000rpm以下が望ましく、好適には1300rpm以上2000rpm以下である。
分岐室29Aが血液試料で満たされるころには、分岐室29Aの血液試料の血球成分と血漿成分は分離されている。よって、障壁22cを超えて分岐室29Bに移る溶液は、分岐室29Aの壁面22a側に分離された血漿試料のみとなる。
分岐室29Aに流入した血液試料に含まれる血球成分は、遠心方向の沈降力fDと、障壁に向かう液の流れによる2方向の力を受け、その合力方向へと導かれる。誘導流路24の出口端部24bからの遠心方向への延長線と、障壁22cとの距離dが1mm以上あるので、障壁22cを超えることはできず、全て分岐室29A内に沈降する。
回転駆動部が回転基板の回転速度を、前述の第2回転速度よりも速いある速度(第3回転速度)に上昇させると、遠心力が分岐後流路25Bの入口端部25a’における毛細管力を上回る。すると、分岐室29Bの血漿試料は分岐後流路25Bを介して分岐後チャンバ23Bに流入する。かかる構成により、分岐室29Aで血球を除去し;血漿試料のみを分岐室29Bに移送し;さらに血漿試料を分岐後チャンバ23Bに流入させることができる。
実施の形態2のその他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
(実施の形態3)
図8に示されるチャンバチップ17Cは、分岐チャンバ22に4つの分岐室29A〜29Dを有し;分岐室29A〜29Dはそれぞれ、分岐後流路25A〜25Dに接続され;分岐後流路25A〜25Dはそれぞれ、分岐後チャンバ23A〜23Dに接続している。分岐室29Aと29Bは障壁22cで分岐されており;分岐室29Bと29Cは障壁22c’で分岐されており;分岐室29Cと29Dは障壁22c”で分岐されている。
注入チャンバ21の容量V1は、分岐室29A〜29Cの合計容量V2よりも大きい。実施の形態1の図3に示されるチャンバチップと同様に、注入チャンバ21に溶液を注入し、第1回転速度で回転させて、各分岐室(29A〜29D)に溶液を分配する。障壁(22c、22c’および22c”)の壁面が疎水性を有し、かつ障壁と壁面22aとの隙間が1.3mm以上であるので、前述の通り、分岐室29A〜29Cに分配される溶液の容量はそれぞれ、分岐室29A〜29Cの容積によって規定され、各分岐室に溶液が正確に定量される。
図8に示されるチャンバチップ17Cの他の構成は、図3に示されるチャンバチップ17Aと同様である。
図8に示されるチャンバチップ17Cを用いれば、より溶液を多段階に送液でき、かつより分配数が多くなる。したがって、一度の送液操作で多項目検査が可能となる。
例えば分岐室29AにNAD、ジアホラーゼおよびフェリシアン化カリウムを含む試薬31A(不図示)を配置し;分岐室29Bに2−オキソグルタル酸、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む試薬31B(不図示)を配置し;分岐室29CにL−アスパラギン酸を含む試薬31C(不図示)を配置する。さらに分岐後チャンバ23Aに乳酸リチウムを含む試薬31Dを配置し;分岐後チャンバ23BにL−アラニンを含む試薬31E
を配置する。すると、分岐後チャンバ23AではLDHを測定することができ;分岐後チャンバ23BではALTを測定することができ;23CではASTを測定することができる。
(実施例1)
図2から図4に示される実施の形態1に係るチャンバチップ17Aを作製して、生体中の血液等に含まれる酵素である「乳酸デヒドロゲナーゼ(以下LDHと略す)」の濃度の測定を行うことによって、送液動作を評価した。
チャンバチップ17Aの作製について説明する。キャビティ中に、注入チャンバ21、分岐チャンバ22、分岐後チャンバ23Aおよび23B、誘導流路24、ならびに分岐後流路25Aおよび25Bに対応する突出部分を切削加工により形成した鉄鋼材料製の金型を製作した。製作した金型を使用して、ウレタン樹脂のインジェクション成型により、チャンバ基板35を作製した。
分岐チャンバ22の分岐室29Aおよび29Bの容積を、いずれも5μLに設定した。各チャンバの深さを1mmとした。
誘導流路24ならびに分岐後流路25Aおよび25Bの、幅を200μm、深さを35μmとした。
障壁22cの幅を0.5mmとし、深さを1mmとした(チャンバの深さと同一)。隙間28の大きさを2mmとした。分岐室29Aは平面視で幅3mm、分岐室29A側の障壁22cの高さは1.65mmとした。これにより分岐室29A内の容積は5μLと規定される。分岐室29Bは平面視で幅3mm、分岐室29B側の障壁22cの高さは2mmとした。これにより分岐室29Bは、6μLの容積を有する。
ウレタン樹脂製のチャンバ基板35の下面にPET(ポリエチレンテレフタレート)製の下面基板36を接合した。さらに、チャンバ基板35の上面に樹脂製の粘着シートからなる上面基板37を接合した。
ウレタン樹脂からなるチャンバ基板35、PETからなる下面基板36、樹脂製の粘着シートからなる上面基板37はいずれも、純水との静止接触角は78°以上89°以下の表面を有する。よって、障壁22cの壁面は疎水性となる。上面基板37に注入口26と、空気口27,30Aおよび30Bを形成した。
分岐室29Aに試薬31Aとして、ニコチンアミドジヌクレオチド酸化体(以下「NAD」と略す)、ジアホラーゼ、およびフェリシアン化カリウムを;分岐後チャンバ23Aおよび分岐後チャンバ23Bのそれぞれに、試薬31Cおよび試薬31Dとして乳酸リチウムを、分岐室またはチャンバ内に滴下して、室温で真空乾燥15分間、乾燥させた。
各試薬濃度を以下に示す。
フェリシアン化カリウム(100mM):0.4μL
ジホラーゼ(1000U/mL):0.5μL
乳酸リチウム(1M):0.4μL
NAD(100mM):0.4μL
一方、隙間28を2mmとして、障壁22cの壁面を親水性とした以外は、実施の形態1のチャンバチップ17Aと同一構造のチャンバチップ17Dを、同一の方法で製作した。さらに、隙間28を0.5mmとして、障壁22cの壁面を疎水性とした以外は、第1実施形態のチャンバチップ17Aと同一構造のチャンバチップ17Eを、同一の方法で製
作した(図9参照)。
以下において、実施の形態1のチャンバチップに言及する場合には参照番号17Aを使用し;隙間28は2mmで、障壁22cが親水性であるチャンバチップに言及する場合には参照番号17Dを使用し(比較例1);隙間28は0.5mmで、障壁22cは疎水性であるチャンバチップに言及する場合には参照番号17Eを使用する(比較例2)。
次に、送液操作を説明する。50mMのTris−HCl緩衝液にLDHを終濃度が400U/Lとなるように溶解させた溶液10μLを試料溶液とした。試料溶液は目視で透明である。
試料溶液を、チャンバチップ17A,17Dまたは17Eの注入チャンバ21に注入した(図5A参照)。次に、各チャンバチップ17A,17Dまたは17Eを装着した回転基体本体(図2参照)を、800rpmで回転させた。回転したチャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれにおいても、溶液32は誘導流路24の入口端部24aで保持されて、注入チャンバ21内に留まった。
続いて、回転体基体本体の回転を800rpmから20rpm/秒の割合で上昇させ続けた。チャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれにおいても、1256rpmに達するまでに、注入チャンバ21内の溶液32が誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔して、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した(図5B参照)。溶液が出口端部24bから飛翔したときの具体的な回転速度は、チャンバチップ17Aは1128rpm;チャンバチップ17Dは1204rpm;チャンバチップ17Eは1256rpmであり、概ね同様であった。
チャンバチップ17A(実施例1)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。分岐室29Aに留まった溶液32は、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴い、溶液面が障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.75mmであった。
分岐室29A内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22cを乗り超えて)分岐室29Bに移動した(図5C参照)。分岐室29A内には、引き続き出口端部24bから液滴として飛び出した溶液が流入し、一旦、分岐室29Aで混合、拡散して黄色を呈していた。
注入チャンバ21からの溶液32の流入の終了後に、分岐室29Aと29Bにはそれぞれ障壁22cの高さまで溶液が満たされた。それぞれ4.9μL、5.1μLと、ほぼ同じ容積の液が分配された。溶液の色は両方ともに、黄色を呈していた。
チャンバチップ17D(比較例1)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。分岐室29Aに留まった溶液32は、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴い、溶液面が障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.61mmであった。
分岐室29A内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22cを乗り超えて)分岐室29Bに移動した(図5C参照)。分岐室29A内には、引き続き注入チャンバ21から溶液32が流入したが、この溶液32は出口端部24bから液滴として飛び出し、一旦分岐室29Aに混合、拡散して黄色を呈していた。
注入チャンバ21からの溶液32の流入の終了後も、分岐室29Aから分岐室29Bへの流入は止まらなかった。その結果、分岐室29Aにおける溶液面は、平面視で障壁22
cの高さを頂点とする凹形状となった。分岐室29Aおよび29Bに収容された溶液の容積はそれぞれ、4.1μLおよび5.9μLとなった。つまり、分岐室29Aの容積で、分岐室29Aに収容される溶液32の容積を規定することができなかった。溶液の色は両方ともに、黄色を呈していた。その後、そのままの回転速度で回転させると、分岐室29Bの溶液が分岐後チャンバ23Bに流れてしまった。
チャンバチップ17E(比較例2)では、まず分岐室29Aにのみ溶液32が溜まった。試薬31Aを溶解させ、溶液は黄色を呈した。分岐室29Aへの流入量の増加に伴って、溶液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。盛り上がった溶液面は、分岐チャンバ22の壁面22aに接触した。
その後、隙間28全面を満たしながら溶液32は拡がり、障壁22cを乗り超えて分岐室29Bに移動した。注入チャンバ21から溶液32の流入が止まった後も、分岐チャンバ22の壁面22aに接触した溶液は、障壁22cの右側壁面(分岐室29Bの面を構成する面)まで吸着したままであった。分岐室29Aおよび29Bに収容された溶液の容量は、6.7μLおよび3.3μLとなった。つまり、分岐室29Aの容積では、分岐室29Aに収容される溶液32の容積を規定できなかった。
しかも、分岐室29A内の溶液は黄色を呈していたが、分岐室29B内の溶液はほぼ透明であった。このことから、注入チャンバ21から、分岐室29Aを経ることなく、直接分岐室29B内に溶液が流入したことが推測された。
さらに基板の回転速度を、先ほどと同様の上昇率で上昇させた。分岐室29Aおよび29Bのそれぞれの溶液は、分岐後チャンバ23Aおよび23Bに送液された。チャンバチップ17A,17Dおよび17Eのいずれについても、回転速度が2120rpmに達するまでに、分岐室29Aおよび29Bから、分岐後チャンバ23Aおよび23Bへの溶液32の移動が生じた。
チャンバチップ17Aを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bからの流れ出しの起きる回転速度は、1370rpmと1410rpmで僅かに異なるが、分岐後チャンバ23Aと23Bにそれぞれ5μLの溶液が満たされた。
チャンバチップ17Dを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bからの流れ出しの起きる回転速度は、分岐室29Aで1594rpm;分岐室29Bで1204rpmであった。つまり、注入チャンバ21から分岐チャンバへ送液する時の回転速度である1204rpmのまま、分岐室29Bから溶液が流れてしまった。
チャンバチップ17Eを使用した場合には、分岐チャンバ22の分岐室29Aと29Bとからの流れ出しの起きる回転速度は、分岐室29Aで1280rpm;分岐室29Bで2120rpmであった。
分岐後チャンバ23Aおよび23Bに送液された溶液の、30℃雰囲気中で送液完了の10秒後と3分後の吸光度を測定した。両時間における吸光度の差を吸光度変化として求めた。
チャンバチップ17A(実施例1)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.41と−0.39であり、ほぼ等しかった。これは、LDHに起因する乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、最終的にフェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明に変化したことを示している。
チャンバチップ17D(比較例1)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.43と−0.73であり、大きく異なっていた。吸光度変化
は生じているので、LDHに起因する酵素反応は生じている。しかしながら、サンプル溶液が定量できていないため溶液量が異なるため、互いの吸光度変化が大きく異なる。さらに、分岐室29Bから分岐後チャンバ23Bへの溶液流出は、分岐室29Aから分岐後チャンバ23Aへの溶液流出が始まる前から起こっていた。そのため、反応時間が異なるために、応答値である吸光度がばらついたことが示唆される。
チャンバチップ17E(比較例2)での、分岐後チャンバ23Aと23Bにおけるそれぞれの吸光度変化は、−0.92と−0.03であり、大きく異なっていた。つまり、分岐後チャンバ23BでのLDHに起因する酵素反応は起こっていない。このことからも、分岐室29Bには、注入チャンバ21から、分岐室29Aを経ずに直接流入したことが示唆されている。
以上の結果のように、実施例1に示したチャンバチップ17Aは、注入チャンバ21に供給された溶液32を、分配および定量でき、かつ試薬応答を精度よく検出することができることを確認した。
これに対して障壁22cの壁面が疎水性を有さないチャンバチップ17D(比較例1)か、または隙間28が小さいチャンバチップ17E(比較例2)は、試薬応答を精度よく検出することができなかった。
(実施例2)
図7に示す実施の形態2に係るチャンバチップ17Bを製作した。製作したチャンバチップ17Bを用いて、血液試料から血球成分を取り除き、実施例1と同様にして生体中の血液等に含まれる酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(以下LDHと略す)の濃度の測定を行うことによって、血球分離動作を評価した。チャンバチップ17Bの製作は実施例1と同様である。
分岐室29Bは平面視で幅2mm、分岐室29B側の障壁22cの高さは3mmとし、これにより分岐室29Bの容積は6μLとした。誘導流路24の出口端部24bと、障壁22cの距離を2.5mmとした。
分岐室29Bに、試薬31Bとしてニコチンアミドジヌクレオチド酸化体(以下、NADと略す)と、ジアホラーゼとフェリシアン化カリウムを;分岐後チャンバ23Bに、試薬31Dとして乳酸リチウムを、真空乾燥させた。
比較のために、誘導流路の出口端部24bと障壁22cの距離を0.3mmとした以外は、第2実施形態のチャンバチップ17と同一構造のチャンバチップ17B’を、同一の方法で製作した。
以下において、実施の形態2のチャンバチップを参照番号17Bとし(実施例2);出口端部24bと障壁22cの距離を0.3mmとしたチャンバチップを参照番号17B’とする(比較例3)。
次に、送液操作を説明する。試料溶液を、当日採血した血液(10μL)とした。試料溶液は目視で赤色である。試料溶液を、チャンバチップ17Bまたは17B’の注入チャンバ21に注入した。
試料液を注入されたチャンバチップ17Bまたは17B’を装着した回転基体本体(図2参照)を、3000rpmで回転させた。チャンバチップ17Bおよび17B’のいずれも、溶液32は注入チャンバ21から誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔して、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した。
分岐室29Aに溜まった血液は遠心力を受けて、血球が分岐チャンバの壁面22b側に0.5mm/sの速度で沈降した。3秒後に、障壁22cの高さにまで溶液面が到達した
ため、回転速度を2000rpmにして回転を続けた。
分岐室29Aの溶液32は、障壁22cを超えて、隙間28を通って分岐室29Bに流入した。各チャンバチップ17Bおよび17B’ともに、分岐室29Bに流入した溶液はすべて血漿であった。
さらに、注入チャンバ21の血液試料は、出口端部24bから液滴様として分岐室29Aに注入された。注入チャンバ21の全ての血液試料が分岐チャンバ22に送液されたとき、チャンバチップ17Bの分岐室29Bに分配された溶液は血漿のみであり、黄色を呈していた。一方、チャンバチップ17B’の分岐室29Bに分配された溶液は、血球が若干混じった血漿であり、桃色を呈していた。
17Bと17B’のいずれの場合にも、分岐室29Aに分配された溶液の容積は、5.0μL、分岐室29Bに分配された溶液の容積は5.0μLであり、同じであった。
さらに、回転速度を上昇させて、分岐チャンバ22の分岐室29Bの溶液を分岐後チャンバ23Bに送液した。チャンバチップ17Bおよび17B’のいずれの場合も、回転速度が2330rpmに達するまでに、分岐チャンバ22の分岐室29Bから分岐後チャンバ23Bへ溶液32が移動した。
分岐後チャンバ23Bに送液された溶液の吸光度を測定した。分岐後チャンバに送液されてから10秒後と3分後(30℃雰囲気中)の吸光度を測定した。両時間の吸光度の差を吸光度変化として求めた。
チャンバチップ17B(実施例2)における吸光度変化は、−0.4であった。これは、LDHに起因する乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、最終的にフェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明に変化したことを示している。
チャンバチップ17B’(比較例3)では、血球混入による赤色がバックグラウンドとなり、分岐後チャンバ29Bで吸光度が測定できず、吸光度変化が求められなかった。
以上の結果に見られるように、実施例2のチャンバチップ17Bは、注入チャンバ21に供給された血液試料から血球成分のみを分離して血漿成分のみを分配および定量でき、試薬応答を精度よく検出することができることが確認された。これに対して、誘導流路24の出口端部24bと、障壁22cの距離が小さい比較例3のチャンバチップ17B’では、試薬応答を精度よく検出することができなかった。
(実施例3)
図8に示されるチャンバチップ17Cを製作して、生体中の血液試料に含まれる多種類の酵素の活性を同時に測定することによって、チャンバチップ17Cの送液動作を評価した。図8に示されるチャンバチップ17Cの分岐チャンバ22は、4つの分岐室29A〜29Dを有し;4つの分岐室29A〜29Dはそれぞれ、分岐後チャンバ23A〜23Dに接続される。チャンバチップ17Cによって、例えば、LDH、ALTおよびASTを同時に測定することができる。
3つの分岐室29A、29Bおよび29Cは、平面視で幅を2mmとし;分岐室29Aと29Bとの間の障壁22c、分岐室29Bと29Cとの間の障壁22c’、分岐室29Cと29Dとの間の障壁22c”の高さをそれぞれ、2.5mmとした。分岐室29A、29Bおよび29Cはそれぞれ、5μLの容積を有する。一方、分岐室29Dは、平面視で幅を3mmとし;障壁22の高さを3mmとした。
誘導流路24の出口端部24bと障壁22cとの距離は、2.5mmとした。
分岐室29AにNADとジアホラーゼとフェリシアン化カリウム(試薬31A)を;分岐室29Bに2−オキソグルタル酸とグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(試薬31B)を;分岐室29CにL−アスパラギン酸(試薬31C)を;分岐後チャンバ23Aに乳酸リチウム(試薬31D)を;分岐後チャンバ23BにL−アラニン(試薬31E)を、それぞれ真空乾燥により配置した。
送液操作を説明する。試料溶液32として、終濃度100U/L LDHと、100U/L ALTと、200U/L ASTになるように、50mM Tris−HCl緩衝液
18μLに溶解させた溶液を用いた。試料溶液は目視で透明である。
試料溶液32をチャンバチップ17Cの注入チャンバ21に注入した。チャンバチップ17Cを装着した回転基体本体(図2参照)を800rpmで回転させたところ、溶液32はチャンバチップ17Cの誘導流路24の入口端部24aで保持されて、注入チャンバ21に留まった。続いて、回転体基体本体の回転を800rpmから20rpm/秒の速度で上昇させ続けた。1210rpmにおいて、注入チャンバ21内の溶液32は誘導流路24を通って、出口端部24bから液滴様に飛翔し、分岐チャンバ22の分岐室29Aに流入した。
出口端部24bから液滴様に飛翔する溶液32は、まず分岐室29Aにのみ流入して、試薬31Aを溶解させて黄色を呈した。分岐室29Aに流入した溶液32の液面は、流入量の増加に伴い障壁22cの頂面に達して凸状に盛り上がった。液面の盛り上がり高さは、障壁22cの頂面から0.68mmであった。その後に分岐室29A内の溶液32は、隙間28を通って(障壁22cを乗り越えて)分岐室29Bに移動した。分岐室29Aには、引き続き注入チャンバ21から液体32が流入したが、溶液32は出口端部24bから液滴として飛翔して、一旦、分岐室29Aに流入して、混合および拡散して黄色を呈した。
分岐室29Bに流入した溶液32は、試薬31Bを溶解させた。さらに、分岐室29Bへの流入量の増加に伴い、溶液32の液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。その後、分岐室29B内の溶液32は、その後隙間28を通って(障壁22c’を乗り越えて)分岐室29Cに流入した。分岐室29Cに流入した溶液32は試薬31Cを溶解させた。さらに、流入量の増加に伴い溶液32bの液面は障壁22cの頂面に達し、凸状に盛り上がった。その後、分岐室29C内の溶液32は隙間28を通って(障壁22c”を乗り越えて)分岐室29Dにまで達した。
注入チャンバ21から液体32の流入が止まり、分岐室29A、29Bおよび29Cにはそれぞれ、4.9μL、5.1μLおよび5.0μLと、ほぼ同じ容積の溶液が分配された。残りの溶液は分岐室29Dへと分配され、分岐室29Dへ分配された溶液量はほぼ3μLであった。溶液の色はすべて、黄色を呈していた。
次に、回転速度を再度同じ上昇率で上昇させた。回転速度が2120rpmに達するまでに、分岐チャンバ22の分岐室29A、29Bおよび29Cのそれぞれから、分岐後チャンバ23A、23Bおよび23Cへの溶液32の移動が生じた。分岐後チャンバ23A〜Cに溶液32が送液されてから、30℃雰囲気中で5分間反応させた。反応後の各分岐後チャンバ内の溶液の色は、目視で、分岐後チャンバ23Cの溶液が最も濃く、分岐後チャンバ23B、分岐後チャンバ23Aの溶液の順に薄かった。分岐後チャンバ23Aの溶液はまだ黄色を呈していた。
分岐後チャンバ23Aでは、乳酸リチウム、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カ
リウムが混ぜ合わされる。
LDHに起因する、乳酸+NAD⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が起こり、LDH
100U/Lに相当する分だけ、最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化する。溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。LDH 100U/Lに相当する分変化は小さいので、溶液の色はほぼ黄色のままであったことを示している。
一方、分岐後チャンバ23Bでは、L−アラニン、2−オキソグルタル酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カリウムが混ぜ合わされる。
L−アラニン+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、ALT活性に応じた第一の反応で、グルタミン酸が生成する。
生成したグルタミン酸は、さらに、グルタミン酸+NAD⇔2−オキソグルタル酸+NADHのグルタミン酸デヒドロゲナーゼが介在した第2の酵素反応によって変化し、ALT 100U/Lに相当する分だけ最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。
分岐後チャンバ23Cでは、L−アスパラギン酸、2−オキソグルタル酸、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NAD、ジアホラーゼ、フェリシアン化カリウムが混ぜ合わされる。
L−アスパラギン酸+2−オキソグルタル酸⇔ピルビン酸+グルタミン酸の反応を触媒する酵素である、AST活性に応じた第一の反応で、グルタミン酸が生成する。
生成したグルタミン酸は、さらに、グルタミン酸+NAD⇔2−オキソグルタル酸+NADHの酵素反応が起こり、AST 200U/Lに相当する分だけ最終的にジアホラーゼの酵素反応により、フェリシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに変化し、溶液の色が黄色から透明へと変化したことを示している。
AST 200U/Lに相当する分変化は大きいので、溶液の色はほぼ透明になるまで変化したことを示している。
以上の結果に見られるように、本実施例に示したチャンバチップ17は、注入チャンバ21に供給した液体32を分岐及び定量化でき、1つのチップ構成で複数種類の試薬応答を同時に精度よく検出することができることが確認できた。
本出願は、2007年7月6日出願の特願2007−179080に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明の送液装置によれば、微量のサンプルで多項目の検査が可能となる。よって、本発明の送液装置は、POCT用途のバイオセンサとしても有用である。
従来の送液装置の一例を示す部分平面図である。 本発明の実施の形態1に係る送液装置を示す模式的な平面図である。 実施の形態1のチャンバチップの平面図である。 図3のチャンバチップのIII−III線での断面図である。 注入チャンバへ試料溶液を注入した状態のチャンバチップの平面図である。 回転速度RV1で回転中(オーバーフロー前)のチャンバチップの平面図である。 分岐室29Aから分岐室29Bへ溶液がオーバーフローしている状態のチャンバチップの平面図である。 オーバーフローが終了したときのチャンバチップの平面図である。 各分岐室から分岐後チャンバへ送液している状態のチャンバチップの平面図である。 溶液に作用する毛細管力と遠心力を示す模式図である。 チャンバチップの第1の代案を示す平面図であり、分岐室29Bにのみ分岐後チャンバが接続されている。 チャンバチップの第1の代案を示す平面図であり、分岐チャンバが3つの分岐室を有する。 比較例のチャンバチップを示す模式的な平面図である。
1 基板
11 送液装置
12 回転基体
13 回転軸
14 モータ
15 駆動回路
16 回転基体本体
16a 収容孔
17 チャンバチップ
21 注入チャンバ
21a 注入チャンバの壁面
22 分岐チャンバ
22a 分岐チャンバの壁面
22b 分岐チャンバの壁面
22c 障壁
23A 分岐後チャンバ
23B 分岐後チャンバ
24 誘導流路
24a 誘導流路の入口端部
24b 誘導流路の出口端部
25A 分岐後流路
25a 入口端部
25b 出口端部
25B 分岐後流路
25a’ 入口端部
25b’ 出口端部
26 注入口
27 分岐チャンバの空気口
28 隙間
29A,29B,29C 分岐室
30A 分岐後チャンバの空気口
30B 分岐後チャンバの空気口
31A、31B、31C、31D 反応試薬
32 溶液
35 チャンバ基板
36 下面基板
37 上面基板
C 回転中心
R1,R2 回転方向
R3 注入チャンバ
R4 第1試料チャンバ
R5 オーバーフローチャンバ
R6 第2試料チャンバ
X1〜X4 毛管通路
V1〜V3 空気抜き用のチャンネル
d 誘導流路24の出口端部24bからの延長線と、障壁22cとの距離

Claims (8)

  1. 回転中心を有する回転可能な回転基体と、前記回転中心まわりに前記回転基体を回転させる回転駆動部とを備え、前記回転基体に導入された溶液の一定量を段階的に送液させる送液装置であって、
    前記回転基体には、
    1)注入口を除いて空間的に閉じられた容積V1の注入チャンバと、
    2)前記注入チャンバよりも前記回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられた分岐チャンバであって、
    回転中心側の第1壁面と、前記第1壁面と対向する遠心側の第2壁面と、前記第2壁面から前記第1壁面へ向かって延びる1つ以上のn個の障壁とを備え、
    前記n個の障壁によって(n+1)個の分岐室に区画され、互いに隣接する前記分岐室は前記障壁の先端と前記第1壁面との間の隙間を介して互いに連通し、
    前記(n+1)個の分岐室の第1〜第n番目の分岐室の合計容量V2は、前記注入チャンバの容量V1よりも小さい分岐チャンバと、
    3)前記分岐チャンバよりも前記回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられた分岐後チャンバと、
    4)前記注入チャンバと前記分岐チャンバとを接続する誘導流路であって、
    前記注入チャンバと接続し、毛細管力によって前記注入チャンバ内の溶液を保持しうる第1端部と、
    前記分岐チャンバの前記第1壁面に接続し、前記分岐チャンバの第1分岐室と対向する第2端部を有する誘導流路と、
    5)前記分岐チャンバと前記分岐後チャンバとを接続する分岐後流路であって、前記分岐チャンバと接続する端部は毛細管力によって前記分岐チャンバ内の溶液を保持しうる分岐後流路と、が形成され、
    前記第2端部と前記障壁の壁面が、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有し、かつ前記隙間が1.3mm以上である、送液装置。
  2. 前記2以上の分岐室のうちの1以上の分岐室に、前記溶液の成分を変化させる試薬が配置されている、請求項1に記載の送液装置。
  3. 前記2以上の分岐室のうちの1以上の分岐室に、別個の前記分岐後流路が接続され、かつ
    前記分岐後流路のそれぞれは、別個の前記分岐後チャンバに接続している、請求項1に記載の送液装置。
  4. 前記2以上の分岐室のうちの前記第1分岐室を除く分岐室のそれぞれに、別個の前記分岐後流路が接続され、
    前記分岐後流路のそれぞれは、別個の前記分岐後チャンバに接続しており、かつ
    前記誘導流路の前記第2端部からの遠心方向への延長線と、前記第1分岐室とそれに隣接する分岐室とを区画する障壁との距離が、1mm〜8mmである、請求項1に記載の送液装置。
  5. 溶液を定量して、かつ定量された溶液を段階的に送液する送液方法であって、
    請求項1に記載の回転基体を準備するステップ、
    前記注入口から前記注入チャンバに溶液を注入するステップ、
    前記回転基体を第1回転速度で回転させて、前記誘導流路の第1端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記注入チャンバ内の溶液を、前記誘導流路を介して前記分岐チャンバの第1分岐室に流入させるステップ、
    前記第1分岐室が溶液で満たされた後も、前記回転基体を前記第1回転速度で回転させて、前記注入チャンバの溶液を前記第1分岐室に供給して、前記第1分岐室の溶液を、前記隙間を通して隣接する他の前記分岐室へ流入させるステップ、および
    前記回転基体を前記第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させ、前記分岐後流路の前記端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記分岐チャンバの溶液を、前記分岐後流路を介して前記分岐後チャンバに流入させるステップ、を含む送液方法。
  6. 溶液を定量して、定量された溶液を試薬と段階的に反応させる反応方法であって、
    請求項2に記載の回転基体を準備するステップ、
    前記注入口から前記注入チャンバに溶液を注入するステップ、
    前記回転基体を第1回転速度で回転させ、前記誘導流路の第1端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記注入チャンバ内の溶液を、前記誘導流路を介して前記分岐チャンバの第1分岐室に流入させるステップ、
    前記第1分岐室が満たされた後も、前記回転基体を回転させて、前記第1分岐室に供給された溶液を、前記隙間を通して隣接する他の前記分岐室へ流入させ、さらに所定の時間回転基体を回転させるステップ、
    前記回転基体を、前記第1回転速度よりも速い第2回転速度で回転させ、前記分岐後流路の前記端部の溶液に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記分岐チャンバの溶液を、前記分岐後流路を介して前記分岐後チャンバに流入させるステップ、を含む反応方法。
  7. 血液試料から血球成分を取り除いて、一定量の血漿成分を得る方法であって、
    請求項4に記載の回転基体を準備するステップ、
    前記注入口から前記注入チャンバに血液試料を注入するステップ、
    前記回転基体を第1回転速度で回転させ、前記誘導流路の第1端部の前記血液試料に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記注入チャンバ内の前記血液試料を、前記誘導流路を介して前記分岐チャンバの第1分岐室に流入させるステップ、
    前記第1分岐室が血液試料で満たされる前に、前記回転基体を前記第1の回転速度より遅い第2の回転速度で回転させ、前記第1分岐室内の血液試料の血球を前記第2の面に沈降させて血漿を分離するステップ、
    前記第1分岐室で分離された血漿を、前記隙間を通して前記第1分岐室から隣接する他の前記分岐室へ流入させるステップ、
    前記回転基体を前記第2回転速度よりも速い第3回転速度で回転させ、前記分岐後流路の前記端部の前記血漿に、その毛細管力を上回る遠心力を作用させて、前記分岐チャンバの溶液を、前記分岐後流路を介して前記分岐後チャンバに流入させるステップ、を含む方法。
  8. 回転中心を有する回転基体であって、
    1)注入口を除いて空間的に閉じられた、容積V1の注入チャンバと、
    2)前記注入チャンバよりも回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられた分岐チャンバであって、
    回転中心側の第1壁面と、前記第1壁面と対向する遠心側の第2壁面と、前記第2壁面から前記第1壁面へ向かって延びる1つ以上のn個の障壁とを備え、
    前記n個の障壁によって(n+1)個の分岐室に区画され、互いに隣接する前記分岐室は前記障壁の先端と前記第1壁面との間の隙間を介して互いに連通し、
    前記(n+1)個の分岐室の第1〜第n番目の分岐室の合計容量V2は、前記注入チャンバの容量V1よりも小さい分岐チャンバと、
    3)前記分岐チャンバよりも前記回転中心から離れた位置に設けられ、空気口を除いて空間的に閉じられた分岐後チャンバと、
    4)前記注入チャンバと前記分岐チャンバとを接続する誘導流路であって、
    前記注入チャンバと接続し、毛細管力によって前記注入チャンバ内の溶液を保持しうる第1端部と、
    前記分岐チャンバの前記第1壁面に接続し、前記分岐チャンバの前記第1分岐室と対向する第2端部を有する誘導流路と、
    5)前記分岐チャンバと前記分岐後チャンバとを接続する分岐後流路であって、前記分岐チャンバと接続する端部は毛細管力によって前記分岐チャンバ内の溶液を保持しうる分岐後流路と、を備え、
    前記第2端部と前記障壁の壁面が、純水との静止接触角において40°以上130°以下の疎水性を有し、かつ前記隙間が1.3mm以上である、回転基体。
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