JPWO2008105174A1 - 細胞性免疫誘導用リポソーム - Google Patents

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Abstract

抗原性物質を封入した、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチドを表面に有するリポソーム。本発明のリポソームは、抗原提示細胞に対してMHCクラスI分子を介した抗原提示を選択的に行わせることが出来、細胞性免疫を特異的に誘導することができる。また本発明のリポソームは、成熟化した樹状細胞に対しても抗原提示を誘起することができる。

Description

本発明は、細胞性免疫を誘導することのできるリポソームに関し、該リポソームは各種の感染症や癌に対するワクチンとなり得る。
ウイルスやガンなどに対する免疫治療、すなわち患者個体に対してウイルス感染細胞や癌細胞を異物として認識させ排除させるためには、細胞性免疫を誘起することが重要である。この細胞性免疫において、ウイルス感染細胞や癌細胞を特異的に認識し、選択的に殺傷する細胞は、抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTLと呼ばれる)である。CTLは、ウイルス感染細胞や癌細胞を、T細胞レセプターなどを介して特異的に認識して攻撃する。
CTLのT細胞レセプターは、ウイルス感染細胞や癌細胞の表面に発現されている特異抗原を直接認識して活性化されるのではなく、マクロファージ、樹状細胞といった抗原提示細胞が提示するMHCクラスI分子/抗原特異的オリゴペプチド複合体によって活性化される。具体的には、抗原提示細胞に取り込まれた特異抗原は細胞内のプロテアーゼ複合体(プロテアゾームと呼ばれる)により分解されてオリゴペプチドとなり、その一部である9〜10アミノ酸残基程度のオリゴペプチドが小胞体膜に存在する輸送タンパク質(Transporter in antigen processing、TAP)により細胞質から小胞体膜内に輸送され、さらにMHCクラスI分子との親和性の高い抗原特異的オリゴペプチドがMHCクラスI分子と結合して、MHCクラスI分子/抗原特異的オリゴペプチドとして抗原提示細胞表面に提示される。
従って、癌、ウイルス疾患または自己免疫疾患の治療または予防を目的として患者の細胞性免疫を誘導するためには、特異抗原を発現する癌細胞もしくはウイルス感染細胞それ自身で生体を免疫するか、または特異抗原またはそれ由来のオリゴペプチドを投与して、抗原提示細胞内での上記の経路を経て提示されるMHCクラスI分子/抗原特異的オリゴペプチド複合体を発現させて、抗原特異的なCTLを活性化することが重要である。しかし、特異抗原は、抗原提示細胞に取り込まれた後、MHCクラスII分子/抗原特異的オリゴペプチド複合体として抗原提示細胞の表面に提示され、体液性免疫反応を誘起するのが通常である。
そのため、MHCクラスI分子/抗原特異的オリゴペプチドを抗原提示細胞表面に提示させるためには、菌体抽出成分やマンナン被覆リポソーム(特許文献1)などのアジュバントで抗原提示細胞を処理して、抗原のクロスプレゼンテーションを誘導する方法が一般的である。また、抗原特異的オリゴペプチドをインビトロ実験で特定し、これを直接投与して細胞性免疫を誘導する方法も行われている。
しかしこの方法には、菌体抽出成分などのアジュバント自体が毒性を有するという問題を伴う他、クロスプレゼンテーションは、抗原提示細胞をアジュバント処理することで、もともとMHCクラスII分子/抗原特異的オリゴペプチド複合体の提示を、無理やりMHCクラスI分子/抗原特異的オリゴペプチドの提示に変更させる方法であることから、抗原提示をMHCクラスII分子からMHCクラスI分子に完全に切り替えることは困難である。実際に、pH感受性リポソームや膜融合性リポソームなどの従来のリポソームを用いて抗原提示細胞内に抗原を送達しても、MHCクラスII分子を介した抗原提示が誘起され、MHCクラスI分子を介した抗原提示のみを選択的に誘起することは困難である。
また、抗原特異的オリゴペプチドの投与では、逆に抗原特異的な免疫抑制が引き起こされる、あるいは十分かつ持続した細胞免疫応答が得にくい、等の問題を伴う(非特許文献1)。
さらに、様々な刺激によって成熟化した抗原提示細胞は、未成熟状態の抗原提示細胞に比べて著しく高い抗原提示能力(断片化抗原の細胞表面提示効率および提示期間)を有するが、一方で細胞内への抗原物質の取り込み機構が遮断されてしまう。成熟化した抗原提示細胞に新たに抗原を導入することは、より高効率かつ持続的に細胞性免疫を誘導できると期待されるが、その様な技術はまだ報告されていない。
本発明者らは、細胞の核内にDNA等を運搬するという細胞性免疫誘導とは全く別の目的の下に、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチドを表面に有するリポソームを開発した(特許文献2)。特許文献2には、当該リポソームの細胞性免疫誘導能については全く記載されていない。
Rosenbergら、Nat. Med.、1998年、第4巻、第321−327頁 国際特許出願公開第WO92/4887号パンフレット 国際特許出願公開第WO2005/032593号パンフレット
本発明は、菌体抽出成分などのアジュバントの利用を必要とせず、選択的に細胞性免疫を誘導することのできる新たな医薬を提供することを課題とする。
本発明者らは、意外なことに、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチドを表面に有するリポソームで抗原性物質を封入し、これを投与することで、抗原提示細胞に対してMHCクラスI分子特異的な抗原提示を促し、細胞性免疫を選択的に誘導することができることを見いだし、下記の各発明を完成した。
(1)抗原性物質を封入した、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチドを表面に有するリポソーム。
(2)前記ペプチドが連続した4〜20個のアルギニン残基を含む、(1)に記載のリポソーム。
(3)前記ペプチドがアルギニン残基のみからなる、(1)又は(2)記載のリポソーム。
(4)前記ペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、前記疎水性基又は前記疎水性化合物が脂質二重層に挿入され、前記ペプチドが前記脂質二重層から露出している(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソーム。
(5)前記疎水性基がステアリル基である(4)に記載のリポソーム。
(6)(1)〜(5)の何れかに記載のリポソームを有効成分とする、細胞性免疫誘導剤。
(7)抗原性物質が腫瘍抗原である、(6)に記載の細胞性免疫誘導剤。
(8)悪性新生物を治療するための、(7)に記載の細胞性免疫誘導剤。
(9)腫瘍抗原を封入した(1)〜(5)のいずれかに記載のリポソームを有効成分とする、悪性新生物治療用ワクチン。
本発明のリポソームによって、選択的にMHCクラスI分子を介した抗原提示が誘起されることを示すグラフである。 本発明のリポソームの取込能、及びMHCクラスI分子を介した抗原提示を誘起する作用を、オクタリジン(K8)リポソームと比較したグラフである。 マクロピノサイトーシス阻害剤であるアミロライドによって、本発明のリポソームの取込が阻害されることを示す顕微鏡写真である。左の写真が阻害剤無し、右の写真が阻害剤ありの結果を示す。 マクロピノサイトーシス阻害剤であるアミロライドによって、K8リポソームの取込が阻害されることを示す顕微鏡写真である。左の写真が阻害剤無し、右の写真が阻害剤ありの結果を示す。 本発明のリポソームに封入された物質が細胞質に放出されていることを示す顕微鏡写真である。左がオクタアルギニンペプチド(R8)リポソーム、右がK8リポソームを示す。 本発明のリポソームが成熟化した樹状細胞(DC)に取り込まれることを示すグラフである。 本発明のリポソームが成熟化したDCに対しても、MHCクラスI分子を介した抗原提示を誘起することを示すグラフである。 本発明のリポソームが投与されたマウスにおける細胞傷害活性の上昇を示すグラフである。 腫瘍抗原を封入した本発明のリポソームが投与されたマウス(n=4)において、移植された腫瘍細胞の増殖が抑制されることを示すグラフである。図中、■はリポソーム未投与コントロールを、○は腫瘍抗原が封入されていないR8リポソーム投与群を、●は腫瘍抗原が封入されたR8リポソーム投与群を、それぞれ表す。
本発明のリポソームは、抗原性物質を封入した、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチド(以下、ポリアルギニンペプチドと表す)を表面に有するリポソームである。
本発明におけるポリアルギニンペプチドを表面に有するリポソームは、前記特許文献2に記載されているリポソームである。その形態は、脂質二重層膜構造を有する閉鎖小胞である限り、脂質二重層の数は特に限定されるものではなく、多重膜リポソーム(MLV)であってもよいし、SUV(small unilamella vesicle)、LUV(large unilamella vesicle)、GUV(giant unilamella vesicle)等の一枚膜リポソームであってもよい。また、本発明のリポソームのサイズは特に限定されるものではないが、直径50〜800nmであることが好ましく、直径80〜150nmであることがさらに好ましい。
本発明のリポソームにおいて、脂質二重層を構成する脂質の種類は特に限定されるものではなく、その具体例としては、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン等のリン脂質又はこれらの水素添加物;スフィンゴミエリン、ガングリオシド等の糖脂質が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。リン脂質は、卵黄、大豆その他の動植物に由来する天然脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、合成脂質又は半合成脂質のいずれであってもよい。
脂質二重層には、脂質二重層を物理的又は化学的に安定させたり、膜の流動性を調節したりするために、例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等の動物由来のステロール;スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロール等の微生物由来のステロール;グリセロール、シュクロース等の糖類;トリオレイン、トリオクタノイン等のグリセリン脂肪酸エステルのうち、1種又は2種以上を含有させることができる。その含有量は特に限定されるものでないが、脂質二重層を構成する総脂質に対して5〜40%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましい。
脂質二重層には、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、ステアリルアミン、オレイルアミン等の正荷電を付与する荷電物質、ジセチルホスフェート等の負電荷を付与する荷電物質、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質等の膜タンパク質を含有させることができ、その含有量は適宜調節することができる。
本発明のリポソームは、ポリアルギニンペプチドを表面に露出している。ここにいう「露出」は、ペプチドあるいはペプチド部分が脂質二重層に埋包されていない状態を意味する。またポリアルギニンペプチドは、疎水性基又は疎水性化合物で修飾されている場合もいない場合も含め、脂質二重層の外表面に露出して存在していることが好ましい。また、多重膜からなるリポソームの場合、ポリアルギニンペプチドは各脂質膜の外表面に露出して存在することが好ましい。ただしいずれの場合も、ポリアルギニンペプチドが脂質膜の内側にも露出して存在することを妨げない。
ポリアルギニンペプチドにおける連続したアルギニン残基の個数は、複数個である限り特に限定されるものではないが、通常4〜20個、好ましくは6〜12個、さらに好ましくは7〜10個である。ポリアルギニンペプチド全体を構成するアミノ酸残基の個数は特に限定されるものではないが、通常4〜35個、好ましくは6〜30個、さらに好ましくは8〜23個である。ポリアルギニンペプチドは、連続した複数個のアルギニン残基のC末端及び/又はN末端に付加された任意のアミノ酸配列を含んでいてもよいが、アルギニン残基のみからなることが好ましい。もっとも好ましいポリアルギニンペプチドは、8個のアルギニン残基のみからなるオクタアルギニンペプチド(R8)である。
連続した複数個のアルギニン残基のC末端又はN末端に付加され得るアミノ酸配列は、剛直性を有するアミノ酸配列(例えば、ポリプロリン)であることが好ましい。ポリプロリンは、柔らかくて不規則な形をとっているポリエチレングリコール(PEG)と異なり、直線的で、ある程度の堅さを保持している。
本発明のリポソームの表面に存在するポリアルギニンペプチドの量は、脂質二重層を構成する総脂質に対して通常0.1〜30%(モル比)、好ましくは1〜25%(モル比)、さらに好ましくは2〜20%(モル比)である。本発明のリポソームの表面に存在するポリアルギニンペプチドの量が、脂質二重層を構成する総脂質に対して2%(モル比)未満、好ましくは1.5%(モル比)未満、さらに好ましくは1%(モル比)未満であると、本発明のリポソームは、主にエンドサイトーシスを介して細胞内へ移行することができる。このときのポリアルギニンペプチド量の下限値は、脂質二重層を構成する総脂質に対して通常0.1%(モル比)、好ましくは0.5%(モル比)、さらに好ましくは0.7%(モル比)である。本発明のリポソームの表面に存在するポリアルギニンペプチドの量が、脂質二重層を構成する総脂質に対して2%(モル比)以上、好ましくは3%(モル比)以上、さらに好ましくは4%(モル比)以上であると、本発明のリポソームは、主にマクロピノサイトーシスを介して細胞内へ移行することができる。このときのポリアルギニンペプチド量の上限値は、脂質二重層を構成する総脂質に対して通常30%(モル比)、好ましくは25%(モル比)、さらに好ましくは20%(モル比)である。
本発明のリポソームの細胞内移行経路がエンドサイトーシスに依存する場合、脂質二重層はその主要成分としてカチオン性脂質を含む必要があるが、本発明のリポソームの細胞内移行経路は、エンドサイトーシスにのみ依存するわけではないので、脂質二重層にカチオン性脂質が含まれている必要はない。すなわち、本発明のリポソームの脂質二重層は、カチオン性脂質及び非カチオン性脂質のいずれか一方で構成されていてもよいし、両方で構成されていてもよい。但し、カチオン性脂質は細胞毒性を有するので、本発明のリポソームの細胞毒性を低減させる点からは、脂質二重層に含まれるカチオン性脂質の量を出来る限り少なくすることが好ましく、脂質二重層を構成する総脂質に対するカチオン性脂質の割合は0〜40%(モル比)であることが好ましく、0〜20%(モル比)であることがさらに好ましい。
カチオン性脂質としては、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(dioctadecyldimethylammonium chloride、DODAC)、N−(2,3−オレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium、DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide、DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−dioleoyloxy−3−trimethylammonio propane、DOTAP)、3β−N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモールコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol、DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium、DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate、DOSPA)等が挙げられる。
「非カチオン性脂質」とは、中性脂質又はアニオン性脂質を意味し、中性脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられ、アニオン性脂質としては、例えば、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエチレングリコール、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
本発明のリポソームの好ましい態様として、ポリアルギニンペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、疎水性基又は疎水性化合物が脂質二重層に挿入され、ポリアルギニンペプチドが脂質二重層から露出しているリポソームを例示することができる。ここにいう「ポリアルギニンペプチドが脂質二重層から露出している」には、ポリアルギニンペプチドが脂質二重層の外表面又は内表面のいずれか一方から露出している場合、両方から露出している場合が含まれる。
疎水性基又は疎水性化合物は、脂質二重層に挿入され得る限り特に限定されるものでない。疎水性基としては、例えば、ステアリル基等の飽和又は不飽和の脂肪酸基、コレステロール基又はその誘導体等が挙げられるが、これらのうち特に炭素数10〜20の脂肪酸基(例えば、パルミトイル基、オレイル基、ステアリル基、アラキドイル基等)が好ましい。また、疎水性化合物としては、例えば、上記に例示したリン脂質、糖脂質又はステロール、長鎖脂肪族アルコール(例えば、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロール等)、ポリオキシプロピレンアルキル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
本発明のリポソームは、例えば、水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法等の公知の方法を用いて作製することができる。例えば水和法の場合、脂質二重層の構成成分である脂質と、疎水性基又は疎水性化合物で修飾されたポリアルギニンペプチドとを有機溶剤に溶解した後、有機溶剤を蒸発除去することにより脂質膜を得た後、脂質膜を水和させ、攪拌又は超音波処理することにより、ポリアルギニンペプチドを表面に有するリポソームを製造することができる。また、脂質二重層の構成成分である脂質を有機溶剤に溶解した後、有機溶剤を蒸発除去することにより脂質膜を得、この脂質膜を水和させ、攪拌又は超音波処理することによりリポソームを製造する。次いで、このリポソームの外液に、疎水性基又は疎水性化合物で修飾されたポリアルギニンペプチドを添加することにより、リポソームの表面にポリアルギニンペプチドを導入することができる。
上記の方法において、有機溶媒として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、所定のポアサイズのフィルターを通過させることにより、一定の粒度分布を持ったリポソームを得ることができる。また、公知の方法に従って、多重膜リポソームから一枚膜リポソームへの転換、一枚膜リポソームから多重膜リポソームへの転換を行うことができる。
上記のリポソームに封入される抗原性物質は、本発明のリポソームを利用して誘導される細胞性免疫のターゲットとなる抗原性物質を意味する。好ましくは抗原性タンパク質であり、種々の腫瘍抗原、ウイルスタンパク質、感染性微生物由来のタンパク質、毒素タンパク質、病原性タンパク質などを好適な例として挙げることができる。
抗原性物質が水溶性である場合には、リポソームの製造にあたり脂質膜を水和する際に使用される水性溶媒に抗原性物質を添加することにより、リポソーム内部の水相に抗原性物質を封入することができる。また、抗原性物質が脂溶性である場合には、リポソームの製造にあたり使用される有機溶剤又は界面活性剤溶液に抗原性物質を添加することにより、リポソームの脂質二重層に抗原性物質を封入することができる。
本発明のリポソームは、例えば、分散液の状態で使用することができる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。
本発明のリポソームは、分散液を乾燥(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等)させた状態で使用することもできる。乾燥させたリポソームは、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を加えて分散液とすることができる。
本発明のリポソームは、in vivo及びin vitroのいずれにおいても使用することもできる。本発明のリポソームをin vivoにおいて使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられ、投与量及び投与回数は、リポソームに封入された抗原性物質の種類や量等に応じて適宜調節することができる。本発明のリポソームは、0〜40℃という広範な温度域(効果的な温度域は4〜37℃)において細胞内移行性を発揮することができるので、目的に応じた温度条件を設定することができる。本発明のリポソームの表面に存在するポリアルギニンペプチドの量が脂質二重層を構成する総脂質に対して2%(モル比)以上、好ましくは3%(モル比)以上、さらに好ましくは4%(モル比)以上であると、本発明のリポソームは、低温(通常4〜10℃、好ましくは4〜6℃)において細胞内移行性を効果的に発揮することができる。このときのポリアルギニンペプチド量の上限値は、脂質二重層を構成する総脂質に対して通常30%(モル比)、好ましくは25%(モル比)、さらに好ましくは20%(モル比)である。
本発明のリポソームは、後の実施例に示すように、抗原提示細胞に対してMHCクラスI分子を介した抗原提示のみを選択的に誘起することから、細胞性免疫誘導剤として使用することができる。MHCクラスI分子を介した抗原提示は、その後のヘルパーT細胞等が関与する細胞性免疫応答を誘導し、MHCクラスI分子と共に提示された抗原を有する細胞や異物等を免疫的に攻撃する。従って、本発明のリポソームを有効成分とする細胞性免疫誘導剤は、リポソームに封入された抗原性物質を有する細胞、例えば腫瘍細胞やウイルス等に感染した細胞、あるいは感染性微生物などに向けられた細胞性免疫応答を誘導し、リポソームを投与された生体の前記細胞等に対する免疫的攻撃能を高めることが出来る。
また本発明のリポソームは、外来物質の取り込み機構が遮断されている成熟化した樹状細胞にも効率よく取り込まれる性質を有している。そのため、本発明のリポソームは、未成熟の抗原提示細胞のみならず、成熟化した抗原提示細胞に対しても、高効率かつ持続的な抗原提示を誘起させ、細胞性免疫を誘導することが出来る。
以下、非限定的な実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
1)抗原性物質を封入したオクタアルギニン修飾リポソームの調製
1.116mg のDOPE、97.34μgのEPC及び0.24mgのCHEMS(DOPE:EPC:CHEMS=7.5:1.5:1)を0.2mLのクロロホルムに溶解した溶液をガラス試験管に分取し、窒素ガスを吹き付けて蒸発乾固させ、脂質膜を形成させた。疑似抗原性物質である卵白アルブミン(OVA)1000μgを10mM HEPES緩衝液に溶解してOVA溶液1mgを脂質膜に添加し、室温で10分間放置することによって水和させた。水和後、超音波槽で超音波処理(数秒間)することにより、OVAが封入されたリポソームを調製した。このリポソームに2mg/mLの ステアリル化オクタアルギニン溶液を総脂質の5モル%となるように添加し、室温で30分間放置することにより、リポソームの表面にオクタアルギニン(R8)を導入して、本発明のリポソーム(R8リポソーム)を得た。また、ステアリル化オクタアルギニンの代わりにステアリル化オクタリジン溶液を用いて、リポソームの表面にオクタリジン(K8)ペプチドを有し、R8リポソームと同じ脂質組成(DOPE/CHEMS/EPC)からなるOVA封入リポソーム(K8リポソーム)を調製した。さらに、DOPEに代えて等量のDOTAPを用いてR8もK8も持たないコントロールリポソームを調製した。
2)樹状細胞へのリポソームの取込と抗原提示能の確認
C57BL/6マウスの骨髄から単離した樹状細胞(DC)(1×10cells)に、1)で調製したR8リポソーム、コントロールリポソーム及びリポソームに封入されていないOVA(それぞれ1.2μgのOVAに相当する量)をそれぞれ添加し、10ng/mL GM−CSFを含む無血清培地で2時間培養後に、10ng/mL GM−CSFを含む血清培地を1.5mL添加し、さらに3時間培養した。培養後、細胞を回収し、同じ組成の培地で2回洗浄した後、回収したDC(2×10cells)とT細胞(B3Z、OTIIZ、1×10cells)を96ウェルプレートで混合(培地容量0.2mL)し、15時間培養した。培養後、PBSで細胞を洗浄し、シャストリらの方法(Shastri N.、 Proc. Natl. Acad. Sci.USA、1992年、第89巻、第6020−6024頁)に従い、塩化マグネシウムを含む4mM CPRG (NP−40)を0.1mL添加して37℃で4時間インキュベートした後、595nmの吸光度を測定し、各リポソームを取り込んだDC細胞の表面における、MHCクラスI分子及びMHCクラスII分子の抗原提示効率を評価した(図1)。
その結果、本発明のリポソームの場合にはMHCクラスI分子を介した抗原提示のみが認められ、MHCクラスII分子を介した抗原提示は殆ど認められなかった(図1の各グラフの左)。一方、コントロールの場合には、MHCクラスI分子を介した弱い抗原提示と、MHCクラスII分子を介した強力な抗原提示が確認された。
3)オクタアルギニンペプチドの特異性の確認
1.116mgのDOPE、0.38mgのEPC、0.608μgのCHEMS(DOPE:EPC:CHEMS =75:23.75:1.25)を0.2mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLをガラス試験管に分取し、窒素ガスを吹き付けて蒸発乾固させ、脂質膜を形成させた。疑似抗原性物質である卵白アルブミン(OVA)5mg/mL及び10mMスルホローダミンB(Sulforhodamine B)を含む10mM HEPES緩衝液0.2mLを脂質膜に添加し、室温で10分間放置することによって水和させた。水和後、超音波槽で超音波処理(数秒間)することにより、OVAが封入されたリポソームを調製した。このリポソームに2mg/mLのステアリル化オクタアルギニン溶液又はステアリル化オクタリジンを総脂質量の5モル%になるように添加し、室温で30分間放置することにより、リポソームの表面にオクタアルギニン(R8)又はオクタリジン(K8)を導入して、OVA及びスルホローダミンBを含むR8リポソームとK8リポソームを調製した。
C57BL/6マウスの骨髄から単離したDCを10ng/mL GM−CSFを含む無血清培地に懸濁し、1.5×106 cells/wellのDCに対して、上記の各リポソームを、脂質濃度0、40、60、80、100μMになるように添加(最終容量は500μL/well)して、37℃、5%CO2で2時間培養後、10ng/mL GM−CSFを含む血清培地を1.5mL添加し、さらに3時間培養した。培養後、細胞を回収し、同じ組成の培地で2回洗浄した後、サンプルを抗原提示定量用と取り込み定量用に分けた。
イ)リポソームの取り込み定量用サンプルを1.4mMコール酸で処理し、450×g、4℃、5分間遠心処理した沈殿を0.1%w/vアジ化ナトリウム/PBS 1mLに懸濁し、再度450×g、4℃、5分間遠心処理して、1mLの1.4mMコール酸/PBS1mLを加えピペッティングし、450×g、4℃、5分間の遠心処理を2回繰り返した。その後、1mL PBSで細胞を2回洗浄し、PBSに懸濁した後、ナイロンメッシュに通してFACSチューブへ移し、FACS測定を行った。
ロ)抗原提示用サンプルを450×g、4℃、5分間遠心処理して、血清培地に懸濁(1×106 cells/mL)した後、96穴プレートに2×105 cellsのDCと1×105 cellsのS3Zを入れ、37℃、5%CO2、15時間共培養した。共培養したDCとB3Zの上清をマイクロチューブに回収し、各ウェルを200μL PBSで洗浄し、洗液をマイクロチューブに回収した後、各ウェルにクロロフェノールレッドβ−D−ガラクトピラノシド(CPRG)緩衝液50μLを加えた。2000rpm、4℃、5分間遠心処理後、細胞をCPRG緩衝液 50μLで再懸濁し、遮光下で37℃、4時間インキュベートして、595nmの吸光度を測定した。
以上の結果、両リポソームともDCへの取り込み量は同程度であったが、MHCクラスI分子を介した抗原提示は、R8リポソームにおいてのみ認められ、K8リポソームでは見られなかった(図2)。
4)リポソームの取り込み経路の確認
1.2mgのEPC、0.022mgのコレステロール(Chol)、0.608μgのCHEMS(EPC:Chol:CHEMS=75:28.75:1.25)を0.2mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLをガラス試験管に分取し、窒素ガスを吹き付けて蒸発乾固させ、脂質膜を形成させた。10mMスルホローダミンBを含む10mM HEPES緩衝液0.2mLを脂質膜に添加し、室温で10分間放置することによって水和させた。水和後、超音波槽で超音波処理(数秒間)することにより、スルホローダミンBが封入されたリポソームを調製した。このリポソームに2mg/mLのステアリル化オクタアルギニン溶液又はステアリル化オクタリジンを総脂質量の5モル%になるように添加し、室温で30分間放置することにより、リポソームの表面にオクタアルギニン(R8)又はオクタリジン(K8)を導入して、スルホローダミンBを含むR8リポソームとK8リポソームを調製した。
C57BL/6マウスの骨髄から単離したDCを10ng/mL GM−CSFを含む無血清培地に懸濁し、1.0×106 cells/wellのDCに対して、終濃度2mMとなるようにアミロライドを加え、最終容量を500μLに調節して37℃、5%CO2、30分間インキュベーション後、上記の各リポソームを脂質濃度50μMになるように添加して、37℃、5%CO2で1時間インキュベーションした。10ng/mL GM−CSFを含む血清培地を1.0mL添加してピペッティングした後、細胞を遠心処理して回収し、さらにさらに1.4mMコール酸/PBSを1mL加えピペッティングして室温で3分間放置し、PBSで洗浄後、ナイロンメッシュを通してFACSチューブに移した。FACS測定の後、細胞を3時間培養した。培養後、細胞を回収し、同じ組成の培地で2回洗浄した後、サンプルをAchroplan 6.3x/0.9 W Ph3を用いて顕微鏡観察した。
マクロピノサイトーシス阻害剤であるアミロライドを共存させると、両リポソームともに、取りこみが有意に阻害された(図3a、図3b各右写真)。このことから、R8修飾リポソームもK8修飾リポソームも同じ取り込みメカニズムで、取り込まれることが示唆された。
5)リポソームの封入物放出能の確認
1.116mgのDOPE、0.38mgのEPC、0.608μgのCHEMS(DOPE:EPC:CHEMS=75:23.75:1.25)を0.2mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLをガラス試験管に分取し、窒素ガスを吹き付けて蒸発乾固させ、脂質膜を形成させた。0.25mg/mL ローダミンラベル化デキストラン(70kDa)を含む10mM HEPES緩衝液0.2mLを脂質膜に添加し、室温で10分間放置することによって水和させた。水和後、超音波槽で超音波処理(数秒間)することにより、ローダミンラベル化デキストランが封入されたリポソームを調製した。このリポソームに2mg/mLの ステアリル化オクタアルギニン溶液又はステアリル化オクタリジンを総脂質量の5モル%になるように添加し、室温で30分間放置することにより、リポソームの表面にオクタアルギニン(R8)又はオクタリジン(K8)を導入して、ローダミンラベル化デキストランを含むR8リポソームとK8リポソームを調製した。
4)と同様にしてDCを回収し、上記のリポソームを脂質濃度100μMになるように添加した(最終容量500μL)後、37℃、5%CO2、2時間インキュベーションし、10ng/mL GM−CSFを含む血清培地を加え、全量を1mLとした。37℃、5%CO2、16時間インキュベーションし、細胞懸濁液100μLをガラスボトムディッシュに播いてさらに37℃、5%CO2、20分間インキュベーションした。細胞を洗浄後、100μLの無血清培地と0.5μLの10μM Lysotrackerを加え、共焦点レーザースキャン顕微鏡(レンズ:Plan−Apochromat 63×/1.4 Oil DIC)で観察した。
両リポソームを取り込んだ細胞は、いずれも細胞質が赤色に染まっていることが観察され、リポソームに内封していたデキストランが細胞質中に放出され、拡散していることが明らかになった(図4)。
6)成熟化したDCへのリポソームの取り込み
マウス骨髄から単離し、10%牛胎児血清、PS、10ng/mLのGM−CSFを含む1mL RPMI1640培地で7日間分化誘導したDC(5×10個)を培養プレートに播種したものに、アジュバントとして1μg/mL CpG−オリゴDNAを添加した。異なる経過時間(0、2、5、11、23、47時間後)において細胞を回収し、PBSで2回洗浄後、4)で調製したスルホローダミンBを含むR8リポソーム及びK8リポソームをそれぞれ最終脂質濃度が0.1mMとなるように含む無血清培地0.5mLに細胞を懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート終了後、培地を除去し、フローサイトメトリー用のバッファー(0.5%牛血清および0.1%NaN3を含むPBS)で3回洗浄した。洗浄後、細胞を0.5mLのフローサイトメトリー用バッファーで懸濁し、ナイロンメッシュを通した後、フローサイトメーター(BD Biosciences製)によって細胞に含まれる蛍光量を定量した。
DCの免疫表現形解析は、成熟化マーカーであるCD86を対象としたフローサイトメーターを用いて行った。DCをフローサイトメトリー用バッファーで2回洗浄した後、同バッファーに懸濁した後、過剰量のコントロールモノクロナール抗体(IgG1κ)を加え、30分インキュベートすることで、非特異的な抗体の結合をブロッキング処理した。その後、細胞をフローサイトメトリー用バッファーで2回洗浄し、FITC結合抗マウスCD86抗体を加えて、暗所4℃で30分インキュベートした。その後、フローサイトメトリー用バッファーで2回洗浄し、上記と同様にフローサイトメーターによって細胞の蛍光量を測定し、Cell Quest Software(BD Biosciences製)を用いて解析した。DCの成熟化は、CD86の相対的な発現レベルに基づいて評価した。イソタイプのコントロールとして、抗ラットCD86(IgG2a)を用いた。
その結果、DCが成熟化するにつれてR8非修飾リポソームの取り込み量は低下する一方、R8リポソームは未成熟状態から既にR8非修飾リポソームに比べて非常に高い取り込み量を示し、その取り込み量はDCが成熟化しても維持されていることが明らかになった(図5)。
7)成熟化したDCでの抗原提示
6)と同様に分化誘導したDC(1.2×106cells)に、2μg/mLのOVA溶液及び同量のOVAを封入したR8リポソームをそれぞれ添加し、37℃で2時間インキュベーションした。細胞をPBSで二回洗浄し、10%牛胎児血清、PS、及び50μMのメルカプトエタノールを含むRPMI1640培地2mLを添加し、最終的な成熟化を誘導するために、1μg/mLのCpG−オリゴDNAを添加し、22時間培養した。
また、6)と同様の操作によって成熟化させたDCに、2μg/mLのOVA溶液及び同量のOVAを封入したR8リポソームをそれぞれ添加し、37℃で2時間インキュベーションし、PBSで2回洗浄した。2×105cells/wellのDCと1×105cells/wellのB3ZT細胞を平底96ウェルプレート中で一晩共培養した後、細胞を0.1mLのPBSで洗浄し、0.1mLの5mM発色性lacZ基質溶液(CPRG及び0.5%NP40を含むPBS)を細胞溶解液中に添加し、37℃で4時間インキュベートした後の595nmにおける吸光度を測定することによってlacZ活性を評価した。
その結果、未成熟状態のDCに取り込ませたR8リポソームのみならず、成熟状態のDCでも著しく高い抗原提示が確認された。また、モデル抗原のみを取り込ませた場合に比べて、R8リポソームを取り込ませた場合において高い抗原提示が確認された(図6)。
8)細胞性免疫誘導
6)と同様にしてアジュバント(CpG)を用いて成熟化させたDCに対して、OVA封入R8リポソームを添加して24時間インキュベートした細胞を、C57BL/6マウスの皮下に投与した。1週間毎に2回、R8リポソームで刺激したDCを投与し、さらに1週間後に、OVA抗原発現細胞(EG−7)とコントロール細胞(EL−4)をターゲット細胞として(E:T比=200:1)、クロムリリースアッセイによって細胞傷害活性(CTL活性)を評価した。その結果、高い特異的CTL活性(約40%)が認められた(図7)。
9)仮想腫瘍抗原に対する免疫誘導
前記1)と同様にしてOVA40μgを封入したオクタアルギニンリポソーム(R8リポソーム)を作製し、C57BL/6マウス (雌7週齢)のわき腹皮下に660nmolの同リポソームを1週間おきに2回投与し、さらにその1週間後にOVAを仮想腫瘍抗原として発現するマウス腫瘍細胞(E.G.7−OVA、ATCC社より購入)8×10個を、皮下に接種した。その後、腫瘍の大きさを継時的に測定した。一方、OVAを封入していないR8リポソーム660nmolを作製し、これを1週間おきに2回、わき腹皮下に投与したC57BL/6マウス、及びコントロールとして何も投与していないC57BL/6マウスにおいても、同様にE.G.7−OVA 8×10個を接種する実験を行い、腫瘍の大きさを継時的に測定した。
その結果、何も封入していないR8リポソーム、及び何も投与していないコントロール群では腫瘍細胞が著しく増殖したのに対して、OVAを封入したR8リポソームを投与した群では腫瘍細胞の増殖が抑制されたことが確認された(図8)。これらの結果により、R8リポソームは封入された抗原に対する細胞性免疫を誘導し、癌に対するワクチンとなり得ることが確認された。
本発明のリポソームは、抗原提示細胞に対してMHCクラスI分子を介した抗原提示を選択的に行わせることが出来、細胞性免疫を特異的に誘導することができる。また本発明のリポソームは、成熟化した樹状細胞に対しても抗原を取り込ませることが出来る。
公知のpH感受性リポソームや膜融合性リポソームなどを用いて細胞質に抗原を送達するだけでは、MHCクラスII分子を介した抗原提示が誘起されるのに対して、本発明のリポソームは、MHCクラスI分子を介した抗原提示のみを特異的に誘起することができる。このことから、本発明のリポソームは、細胞性免疫誘導剤として利用することが出来る。また、本発明のリポソームは、抗原性物質の取り込み機構が遮断されている成熟化樹状細胞にも効率よく取り込まれることから、成熟化抗原提示細胞に対して高効率かつ持続的な抗原提示を誘起することが出来る。

Claims (9)

  1. 抗原性物質を封入した、連続した複数個のアルギニン残基を含むペプチドを表面に有するリポソーム。
  2. 前記ペプチドが連続した4〜20個のアルギニン残基を含む、請求項1に記載のリポソーム。
  3. 前記ペプチドがアルギニン残基のみからなる、請求項1又は2記載のリポソーム。
  4. 前記ペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、前記疎水性基又は前記疎水性化合物が脂質二重層に挿入され、前記ペプチドが前記脂質二重層から露出している請求項1〜3のいずれかに記載のリポソーム。
  5. 前疎水性基がステアリル基である請求項4に記載のリポソーム。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のリポソームを有効成分とする、細胞性免疫誘導剤。
  7. 抗原性物質が腫瘍抗原である、請求項6に記載の細胞性免疫誘導剤。
  8. 悪性新生物を治療するための、請求項7に記載の細胞性免疫誘導剤。
  9. 腫瘍抗原を封入した請求項1〜5のいずれかに記載のリポソームを有効成分とする、悪性新生物治療用ワクチン。
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