以下、発明を実施するための最良の形態として、本発明の情報再生装置及び方法、並びにコンピュータプログラムに係る実施形態の説明を進める。
(情報再生装置の実施形態)
本発明の情報再生装置に係る実施形態は、記録媒体から読み取られた読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得する振幅制限手段と、前記振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得するフィルタリング手段とを備え、前記振幅制限手段は、前記振幅制限値の上限及び下限の夫々を、個別に設定する。
本発明の情報再生装置に係る実施形態によれば、振幅制限手段の動作により、記録媒体から読み取られた読取信号の振幅レベルが制限される。具体的には、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限よりも大きい又は下限より小さい信号成分は、振幅レベルが振幅制限値の上限又は下限に制限される。他方、読取信号のうち振幅レベルが振幅制限値の上限以下且つ下限以上である信号成分は、振幅レベルが制限されることはない。このように振幅レベルの制限が施された読取信号は、振幅制限信号としてフィルタリング手段へ出力される。フィルタリング手段においては、振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行う。その結果、等化補正信号が取得される。その後は、等化補正信号に対して、例えば2値化処理や復号化処理等が行われる。これにより、記録媒体に記録された記録データ(例えば、映像データや音声データ等)の再生処理を行うことができる。
これにより、フィルタリング手段上において、読取信号(又はそのサンプル値)のばらつき(つまり、ジッタ)の発生を抑制することができ、その結果、符号間干渉を生じさせることなく、読取信号の高域強調を行うことができる。
本実施形態では特に、振幅制限手段は、振幅制限値の上限及び下限の夫々を個別に(言い換えれば、別個独立に)設定することができる。その結果、本実施形態においては、振幅制限値の上限と振幅制限値の下限とが、リファレンスレベル(例えば、ゼロレベル)に対して対称な位置にある関係にならない場合があり得る。言い換えれば、振幅制限値の上限の絶対値と振幅制限値の下限絶対値とが異なる値になる場合があり得る。
このため、例えば読取信号にアシンメトリ等が生じた場合であっても、該アシンメトリ等の影響を考慮して振幅制限値の上限及び下限の夫々を個別に設定することができる。このため、アシンメトリ等が発生していることに起因して、振幅制限値の上限又は振幅制限値の下限が、読取信号の振幅レベルに対して過度に大きく又は小さくなってしまうという不都合を好適に防止することができる。このため、符号間干渉を生じさせることなく、読取信号の高域強調を行うことができる。
このように、本実施形態に係る情報再生装置によれば、より良好に振幅制限を行いながら波形等化を行うことができる。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の一の態様は、前記振幅制限値の上限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以上の値を有するサンプル値の平均値である。
この態様によれば、振幅制限値の上限を好適に設定することができる。
尚、本実施形態における「リファレンスサンプル点」とは、読取信号の信号レベルがリファレンスレベルと同一となる点を示す。リファレンスレベルがゼロレベルである場合には、リファレンスサンプル点は、ゼロクロス点に相当する。
また、本実施形態における「サンプル値」とは、通常用いられるサンプリング周波数で読取信号がサンプリングされた際に得られるサンプル値を示すことに加えて、該サンプル値に対して補間処理を行うことで得られる補間サンプル値をも示す趣旨である。要は、アナログ信号としての読取信号から時間軸上において離散的に分散して得られる(つまり、デジタル的に得られる)サンプル値は、本実施形態における「サンプル値」に相当する。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の他の態様は、前記振幅制限値の下限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以下の値を有するサンプル値の平均値である。
この態様によれば、振幅制限値の下限を好適に設定することができる。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の他の態様は、前記振幅制限値の上限は、前記読取信号のうちランレングスの最も短い記録データ(例えば、記録媒体がDVDであればランレングス3Tの記録データであり、記録媒体がBlu−ray Discであればランレングス2Tの記録データ)を読み取った際に得られる読取信号の信号レベルよりも大きく且つ前記読取信号のうちランレングスが2番目に短い記録データ例えば、記録媒体がDVDであればランレングス4Tの記録データであり、記録媒体がBlu−ray Discであればランレングス3Tの記録データ)を読み取った際に得られる読取信号の信号レベルよりも小さい。
この態様によれば、振幅制限値の上限を好適に設定することができる。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の他の態様は、前記振幅制限値の下限は、前記読取信号のうちランレングスの最も短い記録データを読み取った際に得られる読取信号の信号レベルよりも小さく且つ前記読取信号のうちランレングスが2番目に短い記録データを読み取った際に得られる読取信号の信号レベルよりも大きい。
この態様によれば、振幅制限値の下限を好適に設定することができる。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の他の態様は、前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方は、(i)前記読取信号のうちランレングスが最も長い記録データを読み取った際に得られる読取信号の最大振幅に対する、前記読取信号のうちランレングスが最も短い記録データを読み取った際に得られる読取信号の振幅中心のずれ量を示すアシンメトリ値、(ii)前記読取信号の振幅中心の平均値を示す全体β値、及び(iii)前記読取信号のうちランレングスが最も短い記録データを読み取った際に得られる読取信号の振幅中心と、前記読取信号のうちランレングスが2番目に短い記録データを読み取った際に得られる読取信号の振幅中心とのずれを示す部分β値の少なくとも一つに応じて設定される。
この態様によれば、ランレングスが異なる各記録データを読み取った際に得られる各読取信号の振幅ずれ又は振幅中心ずれ等の影響を考慮して、振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。つまり、実際に発生しているアシンメトリ値やβ値(具体的には、全体β値や部分β値)に応じた最適な振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。
上述の如くアシンメトリ値、全体β値及び部分β値の少なくとも一つに応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方が設定される情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の上限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以上の値を有するサンプル値の平均値に対して、前記アシンメトリ値、前記全体β値及び前記部分β値の少なくとも一つに応じて設定されるオフセット値を加算することで設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、実際に発生しているアシンメトリ値や全体β値や部分β値を考慮して設定されるオフセット値を加算することで、振幅制限値の上限を設定することができる。つまり、アシンメトリ値や全体β値や部分β値に応じた最適な振幅制限値の上限を、比較的容易に設定することができる。
上述の如くアシンメトリ値、全体β値及び部分β値の少なくとも一つに応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方が設定される情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の下限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以下の値を有するサンプル値の平均値に対して、前記アシンメトリ値、前記全体β値及び前記部分β値の少なくとも一つに応じて設定されるオフセット値を加算することで設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、実際に発生しているアシンメトリ値や全体β値や部分β値を考慮して設定されるオフセット値を加算することで、振幅制限値の下限を設定することができる。つまり、アシンメトリ値や全体β値や部分β値に応じた最適な振幅制限値の下限を、比較的容易に設定することができる。
上述の如くアシンメトリ値、全体β値及び部分β値の少なくとも一つに応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方が設定される情報再生装置の態様では、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以上の値を有するサンプル値の平均値及び前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以下の値を有するサンプル値の平均値のうち絶対値の小さい方の値が、前記振幅制限値の上限及び下限の一方として設定され、前記2つの平均値(つまり、読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以上の値を有するサンプル値の平均値及び前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以下の値を有するサンプル値の平均値)のうち絶対値の小さい方の値に前記部分β値の2倍の値を加算した値が、前記振幅制限値の上限及び下限の他方として設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、部分β値を考慮して、振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。つまり、部分β値に応じた最適な振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。
上述の如くアシンメトリ値、全体β値及び部分β値の少なくとも一つに応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方が設定される情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の上限と下限との和が、前記全体β値がゼロである場合における前記振幅制限値の上限と下限の和と等しくなるように、前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方が設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、全体β値がゼロである場合(つまり、読取信号の振幅中心の平均値がゼロレベルである場合)における上限及び下限との関係を考慮して、振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を個別に設定することができる。
本発明の情報再生装置に係る実施形態の他の態様は、前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方は、前記読取信号の波形歪み量に応じて設定される。
この態様によれば、波形歪みの影響を考慮して、振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。つまり、実際に発生している波形歪み量に応じた最適な振幅制限値の上限や振幅制限値の下限を設定することができる。
尚、波形歪みは、長パターンの記録データ(例えば、記録媒体がDVDであればランレングス11Tの記録データであり、記録媒体がBlu−ray Discであればランレングス8Tの記録データ)を再生することで得られる読取信号に発生しやすい。
上述の如く波形歪み量に応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を設定する情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の上限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以上の値を有するサンプル値の平均値に対して、前記波形歪み量に応じて設定されるオフセット値を加算することで設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、実際に発生している波形歪みを考慮して設定されるオフセット値を加算することで、振幅制限値の上限を設定することができる。つまり、波形歪み量に応じた最適な振幅制限値の上限を、比較的容易に設定することができる。
上述の如く波形歪み量に応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を設定する情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の下限は、前記読取信号のリファレンスサンプル点前又は前記リファレンスサンプル点後のサンプル値であって且つリファレンスレベル以下の値を有するサンプル値の平均値に対して、前記波形歪み量に応じて設定されるオフセット値を加算することで設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、実際に発生している波形歪みを考慮して設定されるオフセット値を加算することで、振幅制限値の下限を設定することができる。つまり、波形歪み量に応じた最適な振幅制限値の下限を、比較的容易に設定することができる。
上述の如く波形歪み量に応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を設定する情報再生装置の態様では、前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方は、前記振幅制限値の上限及び下限の夫々が前記波形歪みと交わらなくなるように設定されるように構成してもよい。
このように構成すれば、波形歪みの影響を排除して、高域強調を行うことができる。
上述の如く波形歪み量に応じて振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を設定する情報再生装置の態様では、前記振幅制限手段は、記録データのうちユーザデータ(特に、長パターンのユーザデータ)に相当する読取信号の振幅レベルを制限する場合における前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を、前記ユーザデータに相当する読取信号の波形歪み量に応じて設定し、前記記録データのうち前記ユーザデータを再生する際の同期を取るために用いられる同期データに相当する読取信号の振幅レベルを制限する場合における前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を、前記同期データに相当する読取信号の波形歪み量に応じて設定するように構成してもよい。
このように構成すれば、記録データを再生する際に重要な同期データに相当する読取信号に対しても、波形歪みの影響を排除することができる。
尚、前記振幅制限手段は、ユーザデータに相当する読取信号及び同期データに相当する読取信号の夫々の振幅レベルを制限する場合における前記振幅制限値の上限及び下限の少なくとも一方を、前記同期データに相当する読取信号の波形歪み量に応じて設定するように構成してもよい。
(情報再生方法の実施形態)
本発明の情報再生方法に係る実施形態は、記録媒体から読み取られた読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得する振幅制限工程と、前記振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得するフィルタリング工程とを備え、前記振幅制限工程においては、前記振幅制限値の上限及び下限の夫々が、個別に設定される。
本発明の情報再生方法に係る実施形態によれば、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態が享受することができる各種効果と同様の効果を享受することができる。
尚、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明の情報再生方法に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
(コンピュータプログラムの実施形態)
本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態は、記録媒体から読み取られた読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得する振幅制限手段と、前記振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得するフィルタリング手段とを備え、前記振幅制限手段は、前記振幅制限値の上限及び下限の夫々を、個別に設定する情報再生装置(即ち、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態(但し、その各種態様を含む))に備えられたコンピュータを制御する再生制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記振幅制限手段及び前記フィルタリング手段の少なくとも一部として機能させる。
本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態によれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態を比較的簡単に実現できる。
尚、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態は、記録媒体から読み取られた読取信号の振幅レベルを所定の振幅制限値にて制限して振幅制限信号を取得する振幅制限手段と、前記振幅制限信号に対して高域強調フィルタリング処理を行うことで等化補正信号を取得するフィルタリング手段とを備え、前記振幅制限手段は、前記振幅制限値の上限及び下限の夫々を、個別に設定する情報再生装置(即ち、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態(但し、その各種態様を含む))に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記振幅制限手段及び前記フィルタリング手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態によれば、当該コンピュータプログラム製品を格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラム製品をコンピュータに読み込めば、或いは、例えば伝送波である当該コンピュータプログラム製品を、通信手段を介してコンピュータにダウンロードすれば、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態を比較的容易に実施可能となる。更に具体的には、当該コンピュータプログラム製品は、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態として機能させるコンピュータ読取可能なコード(或いはコンピュータ読取可能な命令)から構成されてよい。
尚、上述した本発明の情報再生装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラム製品に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされよう。
以上説明したように、本発明の情報再生装置に係る実施形態によれば、振幅制限手段と、フィルタリング手段とを備え、振幅制限手段は、振幅制限値の上限及び下限の夫々を個別に設定する。本発明の情報再生方法に係る実施形態によれば、振幅制限工程と、フィルタリング工程とを備え、振幅制限工程は、振幅制限値の上限及び下限の夫々を個別に設定する。本発明のコンピュータプログラムに係る実施形態によれば、コンピュータを本発明の情報再生装置に係る実施形態として機能させる。従って、より良好に振幅制限を行いながら波形等化を行うことができる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(1) 第1実施例
初めに、図1を参照して、本発明の情報再生装置に係る第1実施例について説明を進める。ここに、図1は、第1実施例に係る情報再生装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施例に係る情報再生装置1は、スピンドルモータ10と、ピックアップ(PU:Pick Up)11と、HPF(High Pass Filter)12と、A/D変換器13と、プリイコライザ(Pre Equalizer)14と、リミットイコライザ(Limit Equalizer)15と、2値化回路16と、復号回路17とを備えている。
ピックアップ11は、スピンドルモータ10によって回転する光ディスク100の記録面にレーザ光LBを照射した際の反射光を光電変換して読取信号RRFを生成する。
HPF12は、ピックアップより出力される読取信号RRFの低域成分を除去し、その結果得られる読取信号RHCをA/D変換器13へ出力する。
A/D変換器13は、不図示のPLL(Phased Lock Loop)等から出力されるサンプリングクロックに応じて読取信号をサンプリングし、その結果得られる読取サンプル値系列RSをプリイコライザ14へ出力する。
プリイコライザ14は、ピックアップ11及び光ディスク100から構成される情報読取系の伝送特性に基づく符号間干渉を除去し、その結果得られる読取サンプル値系列RSCをリミットイコライザ15へ出力する。
リミットイコライザ15は、符号間干渉を増加させることなく読取サンプル値系列RSCに対して高域強調処理を施し、その結果得られる高域強調読取サンプル値系列RSHを、2値化回路16へ出力する。
2値化回路16は、高域強調読取サンプル値系列RSHに対して2値化処理を行い、その結果得られる2値化信号を復号回路17へ出力する。
復号回路17は、2値化信号に対して復号処理等を行い、その結果得られる再生信号を、ディスプレイやスピーカ等の外部再生機器へ出力する。その結果、光ディスク100に記録された記録データ(例えば、映像データや音声データ等)が再生される。
続いて、図2を参照して、リミットイコライザ15のより詳細な構成について説明する。ここに、図2は、第1実施例に係るリミットイコライザ15の構成を概念的に示すブロック図である。
図2に示すように、リミットイコライザ15は、本発明における「振幅制限手段」の一具体例を構成する振幅制限値設定ブロック151と、本発明における「振幅制限手段」の一具体例を構成する振幅制限ブロック152と、本発明における「フィルタリング手段」の一具体例を構成する高域強調ブロック153とを備えている。
振幅制限値設定ブロック151は、読取サンプル値系列RSCに基づいて、振幅制限ブロック152において用いられる振幅制限値の上限L1及び下限L2を設定する。振幅制限ブロック152は、振幅制限値設定ブロック151において設定された振幅制限値の上限L1及び下限L2に基づいて、読取サンプル値系列RSCの振幅制限処理を行う。振幅制限処理が行われたサンプル値系列RSLIMは、高域強調ブロック153へ出力される。高域強調ブロック153は、振幅制限処理が行われたサンプル値系列RSLIMに対して、高域を強調するためのフィルタリング処理を行う。その結果、高域強調読取サンプル値系列RSHが得られる。
より具体的には、リファレンスサンプルタイミング検出回路1511により、読取サンプル値系列RSCに基づいて、リファレンスサンプルタイミングが検出される。検出されたリファレンスサンプルタイミングは、1クロックの遅延を付与する遅延器1512及びOR回路1513を介してサンプルホールド回路1514へ出力される。サンプルホールド回路1514においては、遅延器1512及びOR回路1513を介して出力されるリファレンスサンプルタイミングに応じて、補間フィルタ1522より出力されるサンプル値系列RSPがサンプルホールドされる。
尚、補間フィルタ1522は、読取サンプル値系列RSCに対して補間演算処理を施すことにより、光ディスク100から読み取られた読取信号RRFを、A/D変換器14において用いられるサンプリングクロックによるクロックタイミングの中間タイミングでサンプリングした際に得られる補間サンプル値系列を生成する。生成された補間サンプル値系列は、読取サンプル値系列RSCに含められて、サンプル値系列RSPとして、上限リミッタ1523、下限リミッタ1524及びセレクタ1525、並びにサンプルホールド回路1514へ出力される。
サンプルホールドされた読取サンプル値系列RSPは、減算器1515においてリファレンスレベルRfが減算される。減算結果は、平均化回路1516へ出力される。平均化回路1516においては、サンプル値の平均値が算出される。算出されたサンプル値の平均値は、振幅制限値の上限L1及び下限L2として設定される。
このとき、平均化回路1516は、上限L1及び下限L2を、別個独立に(言い換えれば、個別に)設定する。つまり、平均化回路1516は、サンプルホールドされたサンプル値系列RSPのうち、リファレンスレベル以上の値の平均値と、リファレンスレベル以下の値の平均値とを別個独立に算出する。
具体的に、図3を参照して、振幅制限値設定ブロック151において設定される振幅制限値の上限L1及び下限L2について説明する。ここに、図3は、振幅制限値の上限L1及び下限L2の設定動作を、サンプル値系列RSC上で概念的に示す波形図である。
図3には、読取信号のうち、ランレングスが相対的に短い記録データ(具体的には、光ディスク100がBlu−ray Discである場合においては、ランレングスが2T、3T及び4Tの記録データ)を読み取った際に得られる読取信号RRFとそのサンプル値系列RSCを示す。図3に示すように、リファレンスサンプル点の前(つまり、時間的に前)に位置する補間サンプル値(つまり、補間フィルタ1522において生成されたサンプル値)の平均値が、振幅制限値の上限L1として設定される。リファレンスサンプル点の後(つまり、時間的に後)に位置する補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の下限L2として設定される。言い換えれば、リファレンスサンプル点の前後に位置する補間サンプル値であって且つリファレンスレベル以上の補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の上限L1として設定される。同様に、リファレンスサンプル点の前後に位置する補間サンプル値であって且つリファレンスレベル以下の補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の下限L2として設定される。
尚、図3に示す例では、リファレンスサンプル点の前に位置する補間サンプル値が、リファレンスレベルRf以上であるため、リファレンスサンプル点の前(時間的に前)に位置する補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の上限L1として設定される。他方で、リファレンスサンプル点の前に位置する補間サンプル値が、リファレンスレベルRf以下である場合には、リファレンスサンプル点の前に位置する補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の下限L2として設定される。
同様に、図3に示す例では、リファレンスサンプル点の後に位置する補間サンプル値が、リファレンスレベルRf以下であるため、リファレンスサンプル点の後に位置する補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の下限L2として設定される。他方で、リファレンスサンプル点の後に位置する補間サンプル値が、リファレンスレベルRf以下である場合には、リファレンスサンプル点の後に位置する補間サンプル値の平均値が、振幅制限値の上限L1として設定される。
このように、第1実施例においては、振幅制限値の上限L1及び下限L2が別個独立に設定される。言い換えれば、本実施例においては、リファレンスサンプル点の前及び後の夫々に位置する補間サンプル値の絶対値の平均値を算出することなく、リファレンスサンプル点の前に位置する補間サンプル値の平均値と、リファレンスサンプル点の後に位置する補間サンプル値の平均値とを個別に算出している。
尚、図3に示す例において、リファレンスレベルがゼロレベルと一致する場合には、リファレンスサンプル点は、ゼロクロス点と一致する。
再び図2において、上限リミッタ1523は、振幅制限値設定ブロック151において設定された上限L1に基づいて、サンプル値系列RSPに対して振幅制限を行う。具体的には、サンプル値系列RSPに含まれるサンプル値が、上限L1よりも小さい場合には、そのサンプル値をそのままサンプル値系列RSLIMとして出力する。他方、サンプル値系列RSPに含まれるサンプル値が、上限L1以上である場合には、上限L1をサンプル値系列RSLIMとして出力する。
同様に、下限リミッタ1524は、振幅制限値設定ブロック151において設定された下限L2に基づいて、サンプル値系列RSPに対して振幅制限を行う。具体的には、サンプル値系列RSPに含まれるサンプル値が、下限L2よりも大きい場合には、そのサンプル値をそのままサンプル値系列RSLIMとして出力する。他方、サンプル値系列RSPに含まれるサンプル値が、下限L2以下である場合には、下限L2をサンプル値系列RSLIMとして出力する。
セレクタ1525は、上限リミッタ1523及び下限リミッタ1524の夫々の出力を適宜切り替えて、サンプル値系列RSLIMを高域強調ブロック153へ出力する。具体的には、サンプル値系列RSLIMに含まれるサンプル値がリファレンスレベルRfよりも大きい場合には、セレクタ1525は、上限リミッタ1523からの出力を、サンプル値系列RSLIMとして高域強調ブロック153へ出力する。同様に、サンプル値系列RSLIMに含まれるサンプル値がリファレンスレベルRfよりも小さい場合には、セレクタ1525は、下限リミッタ1524からの出力を、サンプル値系列RSLIMとして高域強調ブロック153へ出力する。
このとき、サンプル値系列RSLIMに含まれるサンプル値が、2‘sComp表現で示されている場合には、サンプル値とリファレンスレベルRfとの比較を行うことに代えて、サンプル値の符号ビットを参照するように構成してもよい。サンプル値の符号ビットが正(+)を示していれば、セレクタ1525は、上限リミッタ1523からの出力を、サンプル値系列RSLIMとして高域強調ブロック153へ出力する。同様に、サンプル値の符号ビットが負(−)を示していれば、セレクタ1525は、下限リミッタ1524からの出力を、サンプル値系列RSLIMとして高域強調ブロック153へ出力する。
高域強調ブロック153においては、サンプル値系列RSLIM中における最もランレングスが短い記録データ(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス3Tの記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス2Tの記録データ)に対応するサンプル値系列RSLIMのみ、その信号レベルを増大させる。
具体的には、高域強調ブロック153へ入力されるサンプル値系列RSLIMは、そのまま又は1クロックの遅延を付加する遅延器1532、1533及び1534を介して、乗算係数−kを有する係数乗算器1535及び1538、並びに乗算係数kを有する係数乗算器1536及び1537へ入力される。係数乗算器1536、1536、1537及び1538の出力は、加算器1539において加算される。その加算結果である高域読取サンプル値RSHIGは、加算器1531において、3クロックの遅延を付加する遅延器1530を介して加算器1531に入力される読取サンプル値系列RSCと加算される。その結果、高域強調読取サンプル値系列RSHが得られる。
ここで、図4を参照して、高域強調読取サンプル値系列RSHの取得動作についてより詳細に説明する。ここに、図4は、高域強調読取サンプル値系列RSHの取得動作を、サンプル値系列RSC上で概念的に示す波形図である。
図4(a)に示すように、加算器1531から出力される高域読取サンプル値RSHIGは、サンプル値系列RSLIM中における時点D(−1.5)、D(−0.5)、D(0.5)及びD(1.5)の夫々でのサンプル値に基づいて算出される。具体的には、サンプル値系列RSLIM中における時点D(−1.5)、D(−0.5)、D(0.5)及びD(1.5)の夫々でのサンプル値を、Sip(−1)、Sip(0)、Sip(1)及びSip(2)とすると、RSHIG=(−k)×Sip(−1)+k×Sip(0)+k×Sip(1)+(−k)×Sip(2)となる。
このとき、図4(b)に示すように、ランレングス2Tの記録データに対応する時点D(−1.5)及びD(−0.5)におけるサンプル値Sip(−1)及びSip(0)は、互いに略同一となる。また、ランレングス2Tの記録データに対応する時点D(0.5)及びD(1.5)におけるサンプル値Sip(1)及びSip(2)は、互いに略同一となる。
また、図4(c)に示すように、ランレングス3T及び4Tの夫々の記録データに対応する時点D(−1.5)及びD(−0.5)におけるサンプル値Sip(−1)及びSip(0)は、振幅制限ブロック152による振幅制限により、共に振幅制限値の上限L1となる。同様に、ランレングス3T及び4Tの夫々の記録データに対応する時点D(0.5)及びD(1.5)におけるサンプル値Sip(1)及びSip(2)は、振幅制限ブロック152による振幅制限により、共に振幅制限値の下限L2となる。つまり、リファレンスサンプル点前後のサンプル値のばらつきが強制的に抑制される。
このため、高域強調を強くかけるために、係数乗算器1536、1536、1537及び1538の係数kの値を大きくしても、リファレンスサンプル時点D(0)において得られる高域読取サンプル値RSHIGは一定値に維持される。従って、符号間干渉は生じない。
以上説明したように、第1実施例に係る情報再生装置1によれば、高域強調した際に、符号間干渉が生ずる原因となるところの読取信号中におけるリファレンスサンプル点前後のサンプル値のばらつきが強制的に抑えられる。このため、高域強調ブロック153において十分な高域強調を行っても符号間干渉が生ずることはない。
特に、第1実施例に係る情報再生装置1によれば、振幅制限値の上限L1及び下限L1の夫々を個別に設定することができる。このため、例えば読取信号RRFにアシンメトリが生じた場合であっても、該アシンメトリの影響を考慮して振幅制限値の上限L1及び下限L2の夫々を個別に設定することができる。これにより、アシンメトリが発生していることに起因して、振幅制限値の上限L1又は下限L2が、読取信号RRFの振幅レベルに対して過度に大きく又は小さくなってしまうという不都合を好適に防止することができる。このため、このような不都合が生じえる可能性を排除して、読取信号RRFの高域強調を好適に行うことができる。もちろん、β値がゼロでない場合や、波形歪みが発生している場合においても、同様の効果を享受することができる。
このような効果について、図5及び図6を参照してより詳細に説明する。ここに、図5は、アシンメトリが発生している場合における、サンプル値系列RSC並びに振幅制限値の上限L1及び下限L2を概念的に示す波形図であり、図6は、アシンメトリ対ジッタ値の相関関係を概念的に示すグラフである。
図5(a)に示すように、読取信号RRFにアシンメトリが発生しているとする。ここで、図5(a)に示すように、振幅制限値の上限L1及び下限L2を、リファレンスレベル(又は、ゼロレベル)を基準として上下対称となるように設定した(つまり、上述した背景技術に開示された手法で設定した)とする。この場合、振幅制限値の上限L1側のサンプル値の値が相対的に大きいことに起因して、振幅制限値の下限L2の絶対値が大きくなってしまう。このため、時点D(0.5)におけるサンプル値Sip(1)は、振幅制限がかからない。これでは、時点D(0.5)におけるサンプル値Sip(1)と、時点(D1.5)におけるサンプル値Sip(2)とが同一の値とはならず、その結果、符合間干渉が発生してしまう。
他方で、第1実施例の如く、振幅制限値の上限L1及び下限L2を個別に設定すれば、振幅制限値の上限L1側のサンプル値の値が相対的に大きかったとしても、振幅制限値の下限L2側のサンプル値の値によって、振幅制限値の下限L2が設定されるため、振幅制限値の下限L2の絶対値が大きくなる不都合は生じない。このため、図5(b)に示すように、時点D(0.5)におけるサンプル値Sip(1)と、時点(D1.5)におけるサンプル値Sip(2)との夫々に振幅制限がかかって、夫々のサンプル値Sip(1)及びSip(2)が下限L2となる。このため、時点D(0.5)におけるサンプル値Sip(1)と、時点(D1.5)におけるサンプル値Sip(2)とが同一となり、その結果、符合間干渉は発生しない。
このような第1実施例に係る情報再生装置1の効果は、ジッタ値からも分かる。図6に示すように、振幅制限値の上限L1及び下限L2を個別に設定した場合(つまり、振幅制限値の上限L1及び下限L2を、リファレンスレベル(又は、ゼロレベル)を基準として上下非対称となるように設定した場合)には、振幅制限値の上限L1及び下限L2を、リファレンスレベル(又は、ゼロレベル)を基準として上下対称となるように設定した場合と比較して、ジッタが改善されていることが分かる。これは、符号間干渉が発生しない又はそれほど発生していないことを示している。
このように、第1実施例に係る情報再生装置1によれば、上述した背景技術に開示された技術(つまり、振幅制限値の上限L1及び下限L2を、リファレンスレベル(又は、ゼロレベル)を基準として上下対称となるように設定する技術)と比較しても、高域強調をより好適に行うことができる。
(2) 第2実施例
続いて、図7から図26を参照して、本発明の情報再生装置に係る第2実施例について説明する。
(2−1)基本構成
初めに、図7を参照して、本発明の情報再生装置に係る第2実施例の基本構成について説明する。ここに、図7は、第2実施例に係る情報再生装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。尚、上述した第1実施例に係る情報再生装置1と同様の構成については、同一の参照符号を付してその詳細な説明については省略する。
図7に示すように、第2実施例に係る情報再生装置2は、スピンドルモータ10と、ピックアップ(PU:Pick Up)11と、HPF(High Pass Filter)12と、A/D変換器13と、プリイコライザ(Pre Equalizer)14と、リミットイコライザ(Limit Equalizer)25と、2値化回路16と、復号回路17とを備えている。
つまり、第2実施例に係る情報再生装置2は、第1実施例に係る情報再生装置1と比較して、リミットイコライザ25の構成が異なっている。より具体的には、第2実施例に係る情報再生装置2においては、振幅制限値設定ブロック151において設定された上限L1及び下限L2に対して、オフセット調整を行うことができる。以下、オフセット調整に関する構成について、より詳細に説明する。
続いて、図8を参照して、リミットイコライザ25のより詳細な構成について説明する。ここに、図8は、リミットイコライザ25の構成を概念的に示すブロック図である。
図8に示すように、リミットイコライザ25は、振幅制限値設定ブロック151と、振幅制限ブロック152と、高域強調ブロック153と本発明における「振幅制限手段」の一具体例を構成するオフセット算出ブロック154を備えている。
オフセット算出ブロック154は、読取サンプル値系列RSCに基づいて、振幅制限値設定ブロック151において設定された上限L1に加算されるオフセット値OFS1を算出する。上限リミッタ1523は、オフセット生成ブロック154において算出されたオフセット値OFS1を振幅制限値設定ブロック151において設定された上限L1に加算することで得られる新たな上限L1を用いて、読取サンプル値系列RSPに対する振幅制限を行う。
同様に、オフセット算出ブロック154は、読取サンプル値系列RSCに基づいて、振幅制限値設定ブロック151において設定された下限L2に加算されるオフセット値OFS2を算出する。下限リミッタ1524は、オフセット生成ブロック154において算出されたオフセット値OFS2を振幅制限値設定ブロック151において設定された下限L2に加算することで得られる新たな下限L2を用いて、読取サンプル値系列RSPに対する振幅制限を行う。
尚、オフセット値OFS1及びOFS2の算出動作については、様々な態様が考えられる。以下に、オフセット値OFS1及びOFS2の算出動作のうち、いくつかの態様を一例として例示する。
(2−2)β値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出
初めに、図9から図12を参照して、β値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出動作について説明する。ここに、図9は、β値を概念的に示す波形図であり、図10は、β値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出するオフセット算出ブロック154aの構成を概念的に示すブロック図であり、図11は、β値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の一の動作の流れを概念的に示すフローチャートであり、図12は、β値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の他の動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図9に示すように、β値は、全ての種類のランレングスの記録データ(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス3Tから11T及び14Tの夫々の記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス2Tから9Tの記録データ)に対応する夫々の読取信号RRFの振幅中心の平均位置を示す。具体的には、全ての種類のランレングスの記録データに対応する読取信号RRFの振幅中心(つまり、全Tセンターレベル)を基準とする(つまり、原点又は基点とする)上側(正側)の最大振幅(トップ振幅)の大きさをA1とし、全ての種類のランレングスの記録データに対応する読取信号RRFの振幅中心を基準とする下側(負側)の最大振幅(ボトム振幅)の大きさをA2とすると、β=(A1+A2)/(A1−A2)にて示される。つまり、ここで説明するβ値は、本発明における「全体β値」の一具体例である。
図10に示すように、オフセット算出ブロック154aは、Tmin+4トップ振幅検出回路1541aと、Tmin+4ボトム振幅検出回路1542aと、加算器1543aと、増幅器1544aとを備えている。Tmin+4トップ振幅検出回路1541aにおいて検出されるトップ振幅と、Tmin+4ボトム振幅検出回路1542aにおいて検出されるボトム振幅との和が、加算器1543aにおいて加算される。加算器1543aの出力が全振幅で正規化されないβ値となる。そして、増幅器1544aにおいて2倍に増幅されたβ値(つまり、2β)が、実際に上限リミッタ1523及び下限リミッタ1524へ出力されるオフセット値OFS1又はOFS2となる。
尚、Tminは、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号RRF(より具体的には、該読取信号RRFに対応する読取サンプル値系列RSC)を示している。従って、Tmin+4は、ランレングスが5番目に短い記録データに対応する読取信号RRFを示している。例えば、光ディスク100がDVDであれば、Tmin+4は、ランレングスが7Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。例えば、光ディスク100がBlu−ray Discであれば、Tmin+4は、ランレングスが6Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。
但し、ここでは、全てのランレングスを簡略的に示すために(つまり、計算の便宜のために)Tmin+4を用いている。このため、全てのTに対して同様の処理(つまり、トップ振幅とボトム振幅との和の算出処理)を行い、それらの平均値をβ値としてもよいことは言うまでもない。
このようにして算出されるオフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に随時加算されてもよい。具体的には、図11に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、1データブロックの再生が新たに開始されるか否かが判定される(ステップS103)。
ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されない(つまり、それまでのデータブロックの再生を継続する)と判定された場合には(ステップS103:No)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されると判定された場合には(ステップS103:Yes)、続いて、オフセット算出ブロック154aの動作によりβ値が算出される(ステップS104)。その後、β値が0であるか、β値が正の値であるか、又はβ値が負の値であるか否かが判定される(ステップS105)。
ステップS105における判定の結果、β値が0であると判定された場合には、OFS1及びOFS2はゼロとなる。従って、オフセット値OFS1及びOFS2の加算を行うことなく、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
ステップS105における判定の結果、β値が正の値であると判定された場合には、OFS1が2βに設定され、OFS2はゼロに設定される(ステップS106)。従って、オフセット値OFS1をそれまで用いていた上限L1に加算することで得られる上限L1を用いて、再生動作を継続する。
ステップS105における判定の結果、β値が負の値であると判定された場合には、OFS2が2βに設定され、OFS1はゼロに設定される(ステップS107)。従って、オフセット値OFS2をそれまで用いていた下限L2に加算することで得られる下限L2を用いて、再生動作を継続する。
或いは、オフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に再生エラーが生じた場合に加算されてもよい。具体的には、図12に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、SER(Symbol Error Rate)の値が正常であるか否かが判定される(ステップS111)。
ステップS111における判定の結果、SERの値が正常であると判定された場合には(ステップS111:Yes)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS111における判定の結果、SERの値が正常でないと判定された場合には(ステップS111:No)、続いて、オフセット算出ブロック154aの動作によりβ値が算出される(ステップS104)。その後、β値が0であるか、β値が正の値であるか、又はβ値が負の値であるか否かが判定される(ステップS105)。以降の動作は、図11に示した例と同一である。
このように、β値に応じたオフセット値OFS1及びOFS2を上限L1及び下限L2に加算することで得られる新たな上限L1及び下限L2を用いることで、β値による影響(つまり、振幅中心のずれによる影響を)を排除しながら上述した各種効果を享受することができる。
尚、β値がゼロでない場合には、図11及び図12のステップS106及びステップS107におけるオフセット値OFS1及びOFS2の算出動作に代えて、上限L1と下限L2との和が、β値がゼロであると仮定した場合における上限L1と下限L2との和と等しくなるように、上限L1及び下限L2を設定するように構成してもよい。
また、図9に示すβ値とは異なる視点から求められる別のβ値に基づいて、オフセット値OFS1及びOFS2を算出するように構成してもよい。係る構成について、図13及び図14を参照して説明する。ここに、図13は、別のβ値を概念的に示す波形図であり、図14は、別のβ値を算出するオフセット算出ブロック154bの構成を概念的に示すブロック図である。
図13に示すように、別のβ値は、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号RFの振幅中心と、ランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号RFの振幅中心とのずれを示す。具体的には、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心をIminCntとし、IminCntを基準とするランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号RRFのトップ振幅の大きさをImin+1Hとし、IminCntを基準とするランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号RRFのボトム振幅の大きさをImin+1Lとすると、別のβ値=(Imin+1H+Imin+1L)/(Imin+1H−Imin+1L)にて示される。つまり、ここで説明するβ値は、本発明における「部分β値」の一具体例である。尚、IminCntは、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号RRFのトップ振幅値IminHとボトム振幅値IminLとの平均値である。
図14に示すように、オフセット算出ブロック154bは、Tminトップ振幅検出回路1541bと、Tminボトム振幅検出回路1542bと、Tmin+1トップ振幅検出回路1543bと、Tmin+1ボトム振幅検出回路1544bと、加算器1545b及び1546bと、減算器1547bと、増幅器1548bと、増幅器1549bとを備えている。Tminトップ振幅検出回路1541bにおいて検出されるトップ振幅及びTminボトム振幅検出回路1542bにおいて検出されるボトム振幅の和が増幅器1548bにおいて1/2に増幅された値と、Tmin+1トップ振幅検出回路1543bにおいて検出されるトップ振幅及びTmin+1ボトム振幅検出回路1544bにおいて検出されるボトム振幅の和との差分が、差分器1547bにおいて算出される。差分器1547bの出力がTmin+1の振幅で正規化されない別のβ値となる。そして、増幅器1549bにおいて2倍に増幅された別のβ値(つまり、2β)が、実際に上限リミッタ1523及び下限リミッタ1524へ出力されるオフセット値OFS1又はOFS2となる。
尚、別のβ値を直接的に用いて、振幅制限値の上限L1及び下限L2を設定するように構成してもよい。具体的には、第1実施例の動作により算出される(つまり、サンプル値の平均値である)上限L1及び下限L2に対して、上限L1の絶対値が下限L2の絶対値よりも小さければ、上限L1の絶対値に2βを加算した値であって更に符号を反転させた値を新たな下限L1としてもよい。同様に、第1実施例の動作により算出される上限L1及び下限L2について、下限L2の絶対値が上限L1の絶対値よりも小さければ、下限L2の絶対値に2βを加算した値であって更に符号を反転させた値を新たな上限L1としてもよい。
(2−3)アシンメトリ値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出
続いて、図15から図18を参照して、アシンメトリ値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出動作について説明する。ここに、図15は、アシンメトリ値を概念的に示す波形図であり、図16は、アシンメトリ値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出するオフセット算出ブロック154cの構成を概念的に示すブロック図であり、図17は、アシンメトリ値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の一の動作の流れを概念的に示すフローチャートであり、図18は、アシンメトリ値に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の他の動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図15に示すように、アシンメトリ値は、ランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRFの振幅中心に対する、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号の振幅中心のずれを示す。具体的には、ランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRFの振幅中心をImaxCntとし、ImaxCntを基準とするランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRFのトップ振幅の大きさをImaxHとし、ImaxCntを基準とするランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRFのボトム振幅の大きさをImaxLとし、ImaxCntを基準とするランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号RRFのトップ振幅の大きさをIminHとし、ImaxCntを基準とするランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号RRFのボトム振幅の大きさをIminLとすると、アシンメトリ値Asy=((ImaxH+ImaxL)−(IminH+IminL))/(2×(ImaxH+ImaxL))にて示される。尚、ImaxCntは、ランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRFのトップ振幅値とボトム振幅値との平均値である。
図16に示すように、オフセット算出ブロック154cは、Tmaxトップ振幅検出回路1541cと、Tmaxボトム振幅検出回路1542cと、Tminトップ振幅検出回路1543cと、Tminボトム振幅検出回路1544cと、加算器1545c及び1546cと、減算器1547cと、増幅器1548cと、増幅器1549cとを備えている。Tmaxトップ振幅検出回路1541cにおいて検出されるトップ振幅及びTmaxボトム振幅検出回路1542cにおいて検出されるボトム振幅との和と、Tminトップ振幅検出回路1543cにおいて検出されるトップ振幅及びTminボトム振幅検出回路1544cにおいて検出されるボトム振幅との和との差分が、差分器1547cにおいて算出される共に、差分器1547cの出力が増幅器1548cにおいて1/2にされる。増幅器1548cの出力がアシンメトリ値Asyとなる。そして、実際に上限リミッタ1523及び下限リミッタ1524へ出力されるオフセット値OFS1又はOFS2は、増幅器1549cにおいて2倍に増幅されたアシンメトリ値Asy(つまり、2Asy)となる。
尚、Tmaxは、ランレングスが最も長い記録データに対応する読取信号RRF(より具体的には、該読取信号RRFに対応する読取サンプル値系列RSC)を示している。例えば、光ディスク100がDVDであれば、Tmaxは、ランレングスが11Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。例えば、光ディスク100がBlu−ray Discであれば、Tmaxは、ランレングスが8Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。
このようにして算出されるオフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に随時加算されてもよい。具体的には、図17に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、1データブロックの再生が新たに開始されるか否かが判定される(ステップS103)。
ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されない(つまり、それまでのデータブロックの再生を継続する)と判定された場合には(ステップS103:No)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されると判定された場合には(ステップS103:Yes)、続いて、オフセット算出ブロック154cの動作によりアシンメトリ値Asyが算出される(ステップS121)。その後、アシンメトリ値Asyが0であるか、アシンメトリ値Asyが正の値であるか、又はアシンメトリ値Asyが負の値であるか否かが判定される(ステップS122)。
ステップS122における判定の結果、アシンメトリ値Asyが0であると判定された場合には、OFS1及びOFS2はゼロとなる。従って、オフセット値OFS1及びOFS2の加算を行うことなく、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
ステップS122における判定の結果、アシンメトリ値Asyが正の値であると判定された場合には、OFS1が2Asyに設定され、OFS2はゼロに設定される(ステップS123)。従って、オフセット値OFS1をそれまで用いていた上限L1に加算することで得られる上限L1を用いて、再生動作を継続する。
ステップS122における判定の結果、アシンメトリ値Asyが負の値であると判定された場合には、OFS2が2Asyに設定され、OFS1はゼロに設定される(ステップS124)。従って、オフセット値OFS2をそれまで用いていた下限L2に加算することで得られる下限L2を用いて、再生動作を継続する。
或いは、オフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に再生エラーが生じた場合に加算されてもよい。具体的には、図18に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、SER(Symbol Error Rate)の値が正常であるか否かが判定される(ステップS111)。
ステップS111における判定の結果、SERの値が正常であると判定された場合には(ステップS111:Yes)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS111における判定の結果、SERの値が正常でないと判定された場合には(ステップS111:No)、続いて、オフセット算出ブロック154cの動作によりアシンメトリ値Asyが算出される(ステップS121)。その後、アシンメトリ値Asyが0であるか、アシンメトリ値Asyが正の値であるか、又はアシンメトリ値Asyが負の値であるか否かが判定される(ステップS122)。以降の動作は、図15に示した例と同一である。
このように、アシンメトリ値Asyに応じたオフセット値OFS1及びOFS2を上限L1及び下限L2に加算することで得られる新たな上限L1及び下限L2を用いることで、アシンメトリによる影響(つまり、振幅中心のずれによる影響を)を排除しながら上述した各種効果を享受することができる。
(2−4)波形歪み量に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出
続いて、図19から図23を参照して、波形歪み量に基づくオフセット値OFS1及びOFS2の算出動作について説明する。ここに、図19は、波形歪みを概念的に示す波形図であり、図20は、波形歪み量に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出するオフセット算出ブロック154dの構成を概念的に示すブロック図であり、図21は、他の波形歪みを概念的に示す波形図であり、図22は、波形歪み量に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の一の動作の流れを概念的に示すフローチャートであり、図23は、波形歪み量に基づくオフセット値OFS1及びOFS2を算出する場合の、第2実施例に係る情報再生装置2の他の動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
図19(a)に示すように、波形歪みは、本来とるべき信号レベルと実際に読取信号RRFに現れた信号レベルとの差を示す。この波形歪みは、読取信号RRFの最大振幅Aに対する歪み量D及びリファレンスレベルから波形歪みの頂点までの信号レベルである歪み量D’で定量的に定義される。図19(a)において、太い点線は、波形歪みが発生していないときに本来とるべき信号レベルを示している。波形歪みが発生していない場合には、当然に波形歪み量Dはゼロである。
尚、図19(a)に示す波形歪みは、読取信号RRFの前端部及び後端部の信号レベルと比較して、中間部の信号レベルが変化してしまった波形歪みを示している。このような波形歪み以外にも、図19(b)に示すように、読取信号RRFの後端部の信号レベルと比較して、前端部及び中間部の信号レベルが変化してしまった波形歪みや、図19(c)に示すように、読取信号RRFの前端部の信号レベルと比較して、中間部及び後端部の信号レベルが変化してしまった波形歪みも存在しえる。いずれの波形歪みを対象としていても、後述する構成及び動作を採用することができることは言うまでもない。
また、本実施例においては、ランレングスが相対的に長い記録マーク(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス11Tの記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス8Tの記録データ)に対応する読取信号に発生する波形歪みに着目することが好ましい。
図20に示すように、オフセット算出ブロック154dは、リファレンスサンプルタイミング検出回路1541dと、Tmax検出回路1542dと、2クロックの遅延を付与する遅延回路1543dと、夫々が1クロックの遅延を付与する複数の遅延回路1544dと、最大値検出回路1545dと、サンプルホールド回路1546dと、リミッタ1547dとを備える。
オフセット算出ブロック154dに入力される読取サンプル値系列RSCは、リファレンスサンプルタイミング検出回路1541dと、遅延回路1543dの夫々に出力される。リファレンスサンプルタイミング検出回路1541dにおいては、読取サンプル値系列RSCに基づいて、リファレンスサンプルタイミングが検出される。検出されたリファレンスサンプルタイミングは、Tmax検出回路1542dにおけるTmaxの検出動作(具体的には、Tmaxに対応するサンプル値の検出動作)に用いられる。Tmax検出回路1542dにおいて検出されたTmaxは、サンプルホールド回路1546dへ出力される。他方、遅延回路1543dにおいては、2クロックの遅延が読取サンプル値系列RSCに付与される。その後、読取サンプル値系列RSCは、遅延回路1544dの動作により、2クロックの遅延が付与される毎に最大値検出回路1545dへ出力される。つまり、最大値検出回路1545dへは、図19において示す前端部の信号レベル、中間部の信号レベル及び後端部の夫々の信号レベルが出力される。従って、最大値検出回路1545dからは、前端部の信号レベル、中間部の信号レベル及び後端部の夫々の信号レベルのうち最大の信号レベル(つまり、図19に示す‘波形歪み量D’)が出力される。その後、サンプルホールド回路1546dにおいて、Tmax検出回路1542dにおいて検出されたTmaxが、最大値検出回路1545dの出力によりサンプルホールドされ、その結果、波形歪み量D’が取得される。この場合に取得された波形歪み量D’は、下限リミッタ1524へ出力されるオフセット値OFS2を算出する際に用いられる。実際に下限リミッタ1524へ出力されるオフセット値OFS2は、振幅制限値設定ブロック151から出力される振幅制限値の下限L2に応じたレベル制限をかけるリミッタ1547dにより、D’>L2の場合は、D’−L2となり、D’≦L2の場合には0となる。
尚、ここでは、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が減少する光ディスク100を対象とした動作について説明した。つまり、リファレンスレベル以下の信号レベルにおいて、信号レベルが意図せず増加するような波形歪みが発生する場合を対象とした動作について説明した。しかしながら、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が増加する光ディスク100を対象としてもよい。つまり、図21(a)から図21(c)に示すように、リファレンスレベル以上の信号レベルにおいて、信号レベルが意図せず減少するような波形歪みが発生する場合を対象としてもよい。この場合、図20に示すオフセット算出ブロック154d中の最大値検出回路1545dは、最小値検出回路1547dに置き換えられ、リミッタ1547dは、振幅制限値設定ブロック151から出力される振幅制限値の上限L1に応じたレベル制限をかける。また、この場合に取得された波形歪み量D’は、上限リミッタ1523へ出力されるオフセット値OFS1を算出する際に用いられる。実際に上限リミッタ1523へ出力されるオフセット値OFS1は、振幅制限値設定ブロック151から出力される振幅制限値の上限L1に応じたレベル制限をかけるリミッタ1547dにより、D’<L1の場合は、D’−L1となり、D’≧L1の場合には0となる。
このようにして算出されるオフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に随時加算されてもよい。具体的には、図22に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、1データブロックの再生が新たに開始されるか否かが判定される(ステップS103)。
ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されない(つまり、それまでのデータブロックの再生を継続する)と判定された場合には(ステップS103:No)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS103における判定の結果、1データブロックの再生が新たに開始されると判定された場合には(ステップS103:Yes)、続いて、オフセット算出ブロック154dの動作により波形歪み量Dが算出される(ステップS131)。その後、波形歪み量Dが0未満であり且つ下限L2より大きいか否かが判定される(ステップS132)。
ステップS132における判定の結果、波形歪み量Dが0未満でない又は波形歪み量Dが下限L2以下であると判定された場合には(ステップS132:No)、OFS1及びOFS2はゼロとなる。従って、オフセット値OFS1及びOFS2の加算を行うことなく、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS132における判定の結果、波形歪み量D’が0未満であり且つ下限L2より大きいと判定された場合には(ステップS132:Yes)、OFS1がゼロに設定され、OFS2はD’−L2に設定される(ステップS133)。従って、オフセット値OFS2をそれまで用いていた下限L2に加算することで得られる下限L2を用いて、再生動作を継続する。
尚、ここでは、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が減少する光ディスク100を対象とした動作について説明した。しかしながら、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が増加する光ディスク100を対象としてもよい。この場合、ステップS132においては、波形歪み量D’が0より大きく且つ上限L1より小さいか否かが判定される。また、波形歪み量D’が0より大きく且つ上限L1より小さいか否かが判定された場合に行われるステップS133においては、OFS1がD’−L1に設定され、OFS2はゼロに設定される。
或いは、オフセット値OFS1及びOFS2は、再生動作中に再生エラーが生じた場合に加算されてもよい。具体的には、図23に示すように、再生動作が行われている際に(ステップS101)、適宜再生動作を終了するか否かが判定される(ステップS102)。
ステップS102における判定の結果、再生動作を終了すると判定された場合には(ステップS102:Yes)、そのまま再生動作を終了する。
他方、ステップS102における判定の結果、再生動作を終了しないと判定された場合には(ステップS102:No)、続いて、SER(Symbol Error Rate)の値が正常であるか否かが判定される(ステップS111)。
ステップS111における判定の結果、SERの値が正常であると判定された場合には(ステップS111:Yes)、ステップS101へ戻り、再生動作を継続する。
他方、ステップS111における判定の結果、SERの値が正常でないと判定された場合には(ステップS111:No)、続いて、オフセット算出ブロック154dの動作により波形歪み量D’が算出される(ステップS131)。その後、波形歪み量D’が0未満であり且つ下限L2より大きいか否かが判定される(ステップS132)。以降の動作は、図15に示した例と同一である。
このように、波形歪み量D’に応じたオフセット値OFS1及びOFS2を上限L1及び下限L2に加算することで得られる新たな上限L1及び下限L2を用いることで、波形歪みによる影響を排除しながら上述した各種効果を享受することができる。この波形歪みによる影響を排除する効果について、図24及び図25を参照しながら説明する。ここに、図24は、振幅制限値の上限L1及び下限L2を背景技術の手法で設定した場合及び振幅制限値の上限L1及び下限L2を個別に設定した場合の夫々における高域強調読取サンプル値系列RSHの取得動作を、波形歪みが発生しているサンプル値系列RSC上で概念的に示す波形図であり、図25は、振幅制限値の上限L1又は下限L2と波形歪みとの位置関係に対するシンボルエラーレートの変化を示すグラフである。
図24(a)に示すように、波形歪みが発生している場合には、波形歪みが振幅制限値の下限L2を上回る信号レベルと取りかねない。ここで、波形歪み量D’に応じたオフセット値OFS2を加算することなく、上述した振幅制限ブロック152及び高域強調ブロック153による動作を行うとする。この場合、高域強調ブロック153から出力される高域強調読取サンプル値系列RSHは、高域強調読取サンプル値系列RSHIGとS(0)との和であり、RSHIGは、(−k)×Sip(−1)+k×Sip(0)+k×Sip(1)+(−k)×Sip(2)にて示されることは前述した。ここで、Sip(−1)とSip(2)は、下限L2に抑制されるため、RSH=S(0)+k×(−2×L2+Sip(0)+Sip(1))となる。これでは、下限L2とSip(0)とSip(1)の和をK倍した値だけ、高域強調読取サンプル値系列RSHの値が大きくなってしまう。これは、本来発生するべきでない波形歪みを強調してしまっているため好ましくない。
他方、図24(b)に示すように、波形歪み量D’に応じたオフセット値OFS2を加算して、上述した振幅制限ブロック152及び高域強調ブロック153による動作を行うとする。この場合、新たな下限L2は、それまで用いていた下限L2(ここでは、分かりやくすL2’にて示す)に、OFS2=D’−L2’を加算した値となる。従って、新たな下限L2は、D’となる。つまり、新たな下限L2は、波形歪みに相当する波形と交差することがなくなる。つまり、オフセット値OFS2の加算は、下限L2が波形歪みと交差しないことを目的として行われる。このため、Sip(−1)とSip(0)と、Sip(1)とSip(2)は、下限L2に抑制されるため、RSH=S(0)となる。このため、波形歪みを強調する不都合を防ぐことができる。
このように波形歪み量D’に応じたオフセット値OFS1及びOFS2を上限L1及び下限L2に加算する情報再生装置2の効果は、上限L1又は下限L2と波形歪みとの位置関係に対するシンボルエラーレートの変化からも分かる。図25に示すように、下限L2と波形歪みとが交わっている場合(つまり、L2−波形歪み量D’がマイナスとなる場合)と比較して、下限L2と波形歪みとが交わっていない場合(つまり、L2−波形歪み量D’がプラスとなる場合)におけるSERの値は改善している。もちろん、上限L1と波形歪みとの位置関係に対するシンボルエラーレートの変化についても同様のことが言える。
尚、光ディスク100に記録される記録データには、通常のユーザデータに加えて、該ユーザデータを再生する際の同期をとるために用いられる同期データ(例えば、光ディスク100がDVDであればランレングス14Tの記録データであり、光ディスク100がBlu−ray Discであればランレングス9Tの記録データ)が含まれている。このような同期データが記録データに含まれていることを考慮して、図26に示す構成を用いて波形歪み量D’に基づいてオフセット値OFS1及びOFS2を算出するように構成してもよい。ここに、図26は、同期データが記録データに含まれていることを考慮しながら、波形歪み量D’に基づいてオフセット値OFS1及びOFS2を算出するオフセット算出ブロック154eの構成を概念的に示すブロック図である。
図26に示すように、オフセット算出ブロック154eは、Tmax波形歪み量検出ブロック1541eと、Tsync波形歪み量検出ブロック1542eと、リミッタ1543eと、リミッタ1544eと、セレクタ1545eとを備えている。
Tmax波形歪み量検出回路1541eは、上述したオフセット算出ブロック154dと同様の構成を有している。つまり、Tmax波形歪み量検出回路1541eは、ランレングスがTmaxである記録データに対応する読取信号の波形歪み量D’1を検出する。
Tsync波形歪み量検出回路1542eは、上述したオフセット算出ブロック154dのうちTmax検出回路1542dを、Tsync検出回路に置き換えた構成を有している。つまり、Tsync波形歪み量検出回路1542eは、ランレングスがTsyncである記録データに対応する読取信号の波形歪み量D’2を検出する。
尚、Tsyncは、同期データ(言い換えれば、syncデータ)に対応する読取信号RRF(より具体的には、該読取信号RRFに対応する読取サンプル値系列RSC)を示している。例えば、光ディスク100がDVDであれば、Tsyncは、ランレングスが14Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。例えば、光ディスク100がBlu−ray Discであれば、Tsyncは、ランレングスが9Tの記録データに対応する読取信号RRFを示している。
Tmax波形歪み量検出回路1541eにおいて検出された波形歪み量D’1は、リミッタ1543eにおいて、振幅制限値設定ブロック151において設定される下限L2による制限を受ける。つまり、波形歪み量D’1が下限L2以下の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが下限L2と交わらない)場合には、オフセット値OFS2として0がセレクタ1545eへ出力される。波形歪み量D’1が下限L2以上の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが下限L2と交わる)場合には、オフセット値OFS2としてD’1−L2がセレクタ1545eへ出力される。
同様に、Tsync波形歪み量検出回路1542eにおいて検出された波形歪み量D’2は、リミッタ1544eにおいて、振幅制限値設定ブロック151において設定される下限L2による制限を受ける。つまり、波形歪み量D’2が下限L2以下の値を有している(つまり、Tsyncの読取信号の波形歪みが下限L2と交わらない)場合には、オフセット値OFS2として0がセレクタ1545eへ出力される。波形歪み量D’2が下限L2以上の値を有している(つまり、Tsyncの読取信号の波形歪みが下限L2と交わる)場合には、オフセット値OFS2としてD’2−L2がセレクタ1545eへ出力される。
セレクタ1545eにおいては、同期データが出現するタイミングに立ち上がりパルスを有するGATE信号に基づいて、リミッタ1543e及びリミッタ1544eの夫々の出力を適宜切り替えて、オフセット値OFS2を出力する。具体的には、GATE信号により立ち上がりパルスが発生していないタイミング(つまり、通常のユーザデータが再生されているタイミング)では、リミッタ1543eの出力をオフセット値OFS2OFSとして出力する。他方、GATE信号により立ち上がりパルスが発生しているタイミング(つまり、同期データが再生されているタイミング)では、リミッタ1544eの出力をオフセット値OFS2として出力する。
このように、同期データが記録データに含まれていることを考慮しながら波形歪み量D’に基づいてオフセット値OFS1及びOFS2を算出することで、ユーザデータよりもその重要性が高い同期データの高域強調を好適に行うことができ、その結果同期データの再生を好適に行うことができる。これにより、再生動作の安定性をより一層高めることができる。
尚、図26における説明では、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が減少する光ディスク100を対象とした動作について説明した。しかしながら、記録データを記録することによって、レーザ光LBの反射率が増加する光ディスク100を対象としてよい。この場合、図26に示すオフセット算出ブロック154e中のリミッタ1543e及び1544eの夫々は、振幅制限値設定ブロック151から出力される振幅制限値の上限L1に応じたレベル制限をかける。このため、リミッタ1543eからは、波形歪み量D’1が上限L1以上の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが上限L1と交わらない)場合には、オフセット値OFS1として0がセレクタ1545eへ出力される。波形歪み量D’1が上限L1以下の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが上限L1と交わる)場合には、オフセット値OFS1としてD’1−L1がセレクタ1545eへ出力される。同様に、リミッタ1544eからは、波形歪み量D’2が上限L1以上の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが上限L1と交わらない)場合には、オフセット値OFS1として0がセレクタ1545eへ出力される。波形歪み量D’2が上限L1以下の値を有している(つまり、Tmaxの読取信号の波形歪みが上限L1と交わる)場合には、オフセット値OFS1としてD’1−L1がセレクタ1545eへ出力される。
また、図26を用いて示した例においては、ユーザデータの波形歪み量D1と同期データの波形歪み量D2とを適宜切り替えてオフセット値OFS1やOFS2を算出する構成を示している。しかしながら、同期データの重要性に重点をおけば、同期データの波形歪み量D2を常に用いてオフセット値OFS1やOFS2を算出するように構成してもよい。
尚、第2実施例においては、オフセット値OFS1及びOFS2として、2Asyや、2βやDをそのまま用いている。しかしながら、検出されるアシンメトリ値Asyやβ値や波形歪み量D’に応じて適切な値を、オフセット値OFS1及びOFS2として設定してもよい。つまり、アシンメトリ値Asyやβ値や波形歪み量D’を変数とする所定の関数等により特定される値を、オフセット値OFS1及びOFS2として設定してもよい。
また、第2実施例においては、アシンメトリ値やβ値や波形歪み量に応じて算出されるオフセット値OFS1又はOFS2を上限L1又は下限L2に加算する構成について説明したが、任意のオフセット値を加算するように構成してもよい。或いは、上限L1及び下限L2を任意の値に設定するように構成してもよい。この場合、上限L1は、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号よりも大きく且つランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号よりも小さいことが好ましい。また、下限L2は、ランレングスが最も短い記録データに対応する読取信号よりも小さく且つランレングスが2番目に短い記録データに対応する読取信号よりも大きいことが好ましい。
尚、上述の説明では、データを記録することで、レーザ光の反射率が減少する光ディスク100について説明を進めた。しかしながら、データを記録することで、レーザ光の反射率が増加する光ディスクについても同様の動作を行ってもよいことは言うまでもない。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報再生装置及び方法、並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。