JPWO2008050673A1 - 貼付剤 - Google Patents

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Abstract

支持体と、該支持体上に積層された薬物層とを備え、薬物層は、S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きいシタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、粘着基剤と、を含有する貼付剤。

Description

本発明は、貼付剤に関し、より詳しくは、S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きいシタロプラム含有貼付剤に関する。
シタロプラムは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)であり、大うつ病性障害、神経症性障害、急性ストレス障害、摂食障害等の改善のための薬物として用いられている。その投与方法としては、経口投与が一般的である。
このようなシタロプラムには、R体及びS体の光学異性体が存在することが知られている。そして、例えば、特許文献1及び2に示されているように、これらの光学異性体のうち、S体((+)体)のみが薬物として有効な活性を有している。
シタロプラムのようなSSRIは、患者に経口投与した場合に、嘔気、下痢、消化管障害のような副作用が懸念されており、さらに、服薬中止等のようなコンプライアンス低下の不具合も生じている。そこで、近年では経口投与以外の投与方法が検討されている。例えば、特許文献3では、経皮投与によるSSRI等の抗うつ剤の投与が検討されており、抗うつ剤における薬物の一例としてシタロプラムが挙げられている。
しかしながら、シタロプラムを経皮投与した場合には副作用として強い皮膚刺激が生じるという問題点があった。
これに対し、特許文献4には、シタロプラムのようにフリー体の状態で用いた場合に皮膚刺激が生じる薬物は、塩の状態で用いることにより皮膚刺激性が低下することが報告されている。
特表2004−527551号公報 特開平2−36177号公報 米国特許出願公開第2002/0192302号明細書 米国特許第6203817号明細書
しかしながら、本発明者らはかかる方法においてもシタロプラムによる皮膚刺激性は十分に低減されないことを見出した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に皮膚刺激性が低減された、シタロプラム含有貼付剤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らはシタロプラム及びその塩による皮膚刺激性について鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに次のような結果が得られた。
すなわち、従来は薬物として有効な活性を有するS体のシタロプラムのみが、その副作用ともいえる皮膚刺激性を有するものと考えられていた。これに対し、シタロプラムにおいては、参考例として後述するようにラセミ体、S体及びR体それぞれについてほぼ同等の皮膚刺激性を有することが明らかとなった。
この知見等に基づき、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、支持体と、該支持体上に積層された薬物層とを備え、薬物層は、S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きいシタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、粘着基剤とを含有する貼付剤により、上記目的を達成できることを見出した。
本発明によれば、十分に皮膚刺激性が低減された、シタロプラム含有貼付剤が提供される。
シタロプラム及びその薬学的に許容される塩におけるS体及びR体の存在比率は98.5:1.5〜100:0であることが好ましい。これにより、貼付剤の皮膚刺激性がさらに低減される。
本発明の貼付剤は、上記シタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量が、薬物層全質量基準で3〜15質量%であることが好ましい。
シタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量が3質量%未満である場合には、上記範囲の場合と比較して、薬効が十分に発揮されない傾向にある。また、シタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量が15質量%を超える場合には、上記範囲の場合と比較して、皮膚刺激性の低減効果が十分に発揮されない傾向にある。
本発明の貼付剤は、薬学的に許容される塩が、シュウ酸塩、臭化水素酸塩及び塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、シュウ酸塩であることがより好ましい。これにより、製剤中の薬効成分の安定性が向上する。
本発明の貼付剤は、粘着基剤が、アクリル系高分子及びゴム系高分子からなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含むことが好ましい。これにより、皮膚刺激性の低減効果がより高い水準で発揮される。
本発明の貼付剤は、薬物層が、炭素数6〜20の脂肪族アルコール、炭素数6〜20の脂肪族エーテル、炭素数6〜20の脂肪酸、炭素数6〜20の脂肪酸エステル、炭素数6〜20の脂肪酸アミド、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類(以上の化合物は飽和及び不飽和のいずれであってもよく、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、環状構造を含むものであってもよい。)からなる群より選択される少なくとも1種の吸収促進剤をさらに含有することが好ましい。これにより、皮膚刺激性の低減効果がさらに高い水準で発揮される。
本発明によれば、十分に皮膚刺激性が低減され、経皮吸収性に優れ、かつ十分な薬効を有しており、安全性の高いシタロプラム含有貼付剤を提供することができる。
本発明による貼付剤の好適な一実施形態を示す斜視図である。
符号の説明
1…貼付剤、2…支持体、3…薬物層、4…剥離ライナー。
以下、本発明の貼付剤の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の貼付剤は、支持体と、該支持体上に積層された薬物層とを備える。そして、薬物層は、S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きいシタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、粘着基剤とを含有する。なお、「S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きい」とは、薬物層に含まれるシタロプラムのうち、S体の存在比率が50%を超えることをいう。
本発明において、シタロプラムにおけるS体及びR体の存在比率は、70:30〜100:0であることが好ましく、90:10〜100:0であることがより好ましく、98.5:1.5〜100:0であることがさらに好ましく、100:0であることが特に好ましい。R体の存在比率が小さければ小さいほど皮膚刺激性の低減効果は向上し、R体の存在比率が0であるものも本発明に含まれる。
薬学的に許容される塩としては、特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩が挙げられる。この中で、製剤中の薬効成分の安定性の観点から、シュウ酸塩、臭化水素酸塩及び塩酸塩が好ましく、シュウ酸塩がより好ましい。
薬物層は、上述のシタロプラム及びその薬学的に許容される塩をそれぞれ単独で含有していても、あるいは混合物として含有していてもよい。そして、上述のシタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量は、薬物層全質量基準で3〜15質量%であることが好ましく、5〜12.5質量%であることがより好ましい。
シタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量が上記範囲内にあることにより、上記範囲内にない場合と比較して、薬効がより十分に発揮されるとともに、皮膚刺激性の低減効果がより顕著になる。
粘着基剤としては、粘着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性エラストマー、アクリル系高分子、ゴム系高分子、ポリウレタン系高分子及びシリコーン系高分子が挙げられる。この中で、皮膚刺激性の低減効果の観点から、アクリル系高分子及びゴム系高分子が好ましく、ゴム系高分子がより好ましい。さらに、薬物を持続的に吸収させることができるという観点からはアクリル系高分子が好ましく、薬物を速やかに吸収させることができるという観点からはゴム系高分子が好ましい。
アクリル系高分子としては、(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであれば特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートの共重合体が挙げられる。この中で、2−エチルヘキシルアクリレートを50質量%以上含有するものが好ましい。
アクリル系高分子の具体例としては、医薬品添加物事典2000(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ナショナルスターチアンドケミカル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)等が挙げられる。
さらに上記のアクリル系高分子の中でも、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系高分子が好ましく用いられる。このようなアクリル系高分子としては水酸基及び/又はカルボキシル基を有するものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・アクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ハイドロキシエチル共重合体、Duro-Tak87-2100、Duro-Tak87-2852、Duro-Tak87-2194、Duro-Tak87-2196、Duro-Tak87-2353、Duro-Tak87-2051、Duro-Tak87-2052、Duro-Tak87-2054、Duro-Tak87-2825、Duro-Tak87-2677、Duro-Tak87-2510、Duro-Tak87-2287、Duro-Tak87-4287、Duro-Tak87-2516、Duro-Tak87-2525(ナショナルスターチ&ケミカル社製)等が挙げられる。
ゴム系高分子としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、「PIB」ともいう。)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合(以下、「SBS」ともいう。)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、「SBR」ともいう。)、ポリシロキサン等が挙げられる。この中で、SIS、PIB及びポリシロキサンが好ましく、特にSIS、PIBが好ましい。
このような粘着基剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができ、特にSIS及びPIBを混合して用いることが好ましい。これにより、粘着基剤のタックが向上し、より高い付着性を示す貼付剤が得られる。
そして、粘着基剤の含有量は、薬物層全質量基準で5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。粘着基剤の含有量を上記範囲とすることにより、上記範囲外である場合と比較して、形成される薬物層の安定性及び薬物の皮膚透過性が向上する。
薬物層は、さらに吸収促進剤、有機酸、可塑剤、粘着付与剤及び塩基性化合物等の添加剤をさらに含有してもよい。
吸収促進剤としては、従来皮膚への吸収促進作用が認められている化合物であれば特に限定されず、例えば、炭素数6〜20の脂肪族アルコール、炭素数6〜20の脂肪族エーテル、炭素数6〜20の脂肪酸、炭素数6〜20の脂肪酸エステル、炭素数6〜20の脂肪酸アミド、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル、芳香族系有機エーテル(以上の化合物は飽和及び不飽和のいずれであってもよく、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、環状構造を含むものであってもよい。)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)ポリソルベート系(Tween系)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油が挙げられる。これらの中で、皮膚刺激性の低減効果の観点から、炭素数6〜20の脂肪族アルコール、炭素数6〜20の脂肪族エーテル、炭素数6〜20の脂肪酸、炭素数6〜20の脂肪酸エステル、炭素数6〜20の脂肪酸アミド、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類が好ましく、炭素数6〜20の脂肪酸エステル、炭素数6〜20の脂肪族アルコール及びプロピレングリコール類がより好ましく、その中でもミリスチン酸イソプロピル及びミリスチルアルコールが特に好ましい。
このような吸収促進剤としては、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HCO−60、ピロチオデカン、オリーブ油及びソルビタンモノオレエートが好ましく、特にオレイン酸、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ピロチオデカン及びソルビタンモノオレエートが好ましい。
このような吸収促進剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができ、ミリスチルアルコール及びミリスチン酸イソプロピルを混合して用いることが好ましい。ミリスチルアルコール及びミリスチン酸イソプロピルを混合して用いることにより、皮膚刺激性がさらに低減され、製剤の凝集力及び粘着性を保持しつつ、経皮吸収性が向上する。
そして、吸収促進剤の含有量は、薬物層全質量基準で0.01〜40質量%であることが好ましく、0.05〜15質量%であることがより好ましい。吸収促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、上記範囲外である場合と比較して、薬物の皮膚透過性が向上し、発赤、浮腫等の皮膚への刺激性が低下する。
可塑剤としては、可塑性を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴム)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンが挙げられる。この中で、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましく、特に流動パラフィンが好ましい。
このような可塑剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。そして、可塑剤の含有量は、薬物層全質量基準で10〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量を上記範囲とすることにより、上記範囲外である場合と比較して、薬物の皮膚透過性が向上し、貼付剤としての凝集力が向上する。
薬物層の粘着力が不足している場合には粘着付与剤を含有させることが好ましい。粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えばアルコンP100、荒川化学工業)、脂肪族1系炭化水素樹脂(例えばクイントンB170、日本ゼオン)、テルペン樹脂(例えばクリアロンP−125ヤスハラケミカル)及びマレイン酸レジン等が挙げられる。この中で、特に水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂及びテルペン樹脂が好ましい。
このような粘着付与剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。そして、粘着付与剤の含有量は、薬物層全質量基準で5〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量が5質量%未満である場合には、上記範囲である場合と比較して、貼付剤としての粘着力が低下する傾向にある。また、粘着付与剤の含有量が70質量%を超える場合には、上記範囲である場合と比較して、剥離時の皮膚への刺激が強くなる傾向がある。
薬学的に許容される塩として酸付加塩を用いる場合には、薬物層中に塩基性化合物を含有させることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、塩基性窒素を含有する低分子化合物(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン等)、塩基性窒素を含有する高分子化合物(例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピリジン等)、塩基性アルカリ金属塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。この中で、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましく、特にトリエタノールアミン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
このような塩基性化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。塩基性化合物の含有量は、シタロプラムの酸付加塩の当量に対して0.5〜3当量であることが好ましく、1〜2当量であることがより好ましい。また、塩基性化合物の含有量は、薬物層全質量基準で0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜9質量%であることがより好ましく、1〜7質量%であることがさらに好ましい。このような塩基性化合物を含有することにより、塩基性化合物がシタロプラムの薬学的に許容される酸付加塩に作用し、シタロプラム塩の皮膚透過性が向上する。特に、塩基性化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、上記範囲外である場合と比較して皮膚透過性の向上効果がより顕著になる。
本発明の貼付剤は、溶剤法、ホットメルト法等といった従来法により製造することができる。例えば、溶剤法により製造する場合には、配合される組成物の有機溶剤溶液に、他の成分を添加、攪拌後、支持体に展延し、乾燥させ薬物層を形成することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。また、配合される組成物がホットメルト法により塗工可能であるものである場合には、高温で組成物を溶解させた後、支持体に展延し薬物層を形成することにより、本発明の貼付剤を得ることもできる。
溶剤法により製造する場合に用いられる溶剤としては、例えば、低級アルコール、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサンなどの製造溶媒、製剤の可塑剤として用いる化合物が挙げられる。この中で、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサンが好ましく、特にメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチルが好ましい。
なお、支持体の代わりに後述する剥離ライナーを用いて薬物層を形成した後に、支持体を貼り合わせることにより本発明の貼付剤を得ることもできる。
また、本発明の貼付剤は、薬物層が上記のような組成からなり、それを支持する支持体を有するものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されない。例えば、本発明の貼付剤は、支持体及び薬物層の他、薬物層上に設けられる剥離ライナーを含むことができる。また、本発明の貼付剤は、本発明の効果を損なわない限り、粘着基剤を含む層を2層以上備えていてもよい。
支持体としては、薬物層を支持するのに適したものであれば特に限定されないが、伸縮性及び非伸縮性のものを用いることができる。その具体例としては、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート等、又はそれらの複合素材が挙げられる。また、本発明の貼付剤を長時間(例えば24時間以上)貼付する場合には、必要に応じて、貼付剤をさらに覆ってはがれを防止するためのカバー材を用いることもできる。
剥離ライナーとしては、薬物層からの十分な剥離性を有するものであれば特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等を好適に用いることができる。これらの剥離ライナーとしてはシリコーン処理を施されていることが好ましい。
図1は、上述の本発明の貼付剤における好適な一実施形態を示す斜視図である。図1に示す貼付剤1は、シート状の支持体2と、支持体の一方面上に積層された薬物層3と、薬物層3の支持体2と反対側の面に積層された剥離ライナー4とで構成される。貼付剤1は、剥離ライナー4を剥がしてから、患者等の皮膚に薬物層3が密着するように貼付して用いられる。
また、本発明の貼付剤によれば、活性な薬物の適用量についても、貼付剤を裁断すること等により、患者の症状、年齢、体重、性別等に応じて、容易に調節することができる。本発明の貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積は特に限定されないが、5〜50cmであることが好ましく、5〜30cmであることがより好ましい。貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積を50cm以下にすることによって適用時の扱いが好適なものになり、5cm以上にすることによって、薬物の十分な皮膚透過性を維持することが容易になる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(参考例)
ウサギ皮膚一次刺激性試験により、エスシタロプラム(シタロプラムのS体)、シタロプラムのラセミ体及びシタロプラムのR体について皮膚刺激性を検討した。それぞれの化合物の0.1%及び0.3%の生理食塩水溶液を調製し、ウサギの背部に皮内投与した。Draizeの基準により皮膚刺激性を観察し、皮膚刺激性をスコア(Primary Irritation Index,P.I.I)として評価した(n=4)。得られた結果を表1に示す。
Figure 2008050673
この結果から、シタロプラムのS体、ラセミ体、R体、いずれの化合物においても、その刺激性にはほとんど差がなく、同程度の皮膚刺激性を有することが明らかである。
(実施例1)
エスシタロプラム(シタロプラムのS体、ZHEJIANG HAISEN PHARMACEUTICAL CO., LTD製、純度98.5%以上)、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン及びミリスチルアルコールを十分に混合した。そして、得られた混合物に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS5002,JSR製)、ポリイソブチレン(Vistanex L−100:LM−MH=1:3(質量比),エクソンモービル製)、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100,荒川化学工業製)及びトルエンからなる混合液を加えて、薬物層用塗工液を調製した。次に、得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製剥離ライナーに塗布し、溶剤を乾燥除去して薬物層を形成した。さらに、支持体としてのポリエステル製編布を薬物層に張り合わせて実施例1の貼付剤を得た。なお、各成分の質量割合に関しては、表2に示す通りとした。
(実施例2〜12)
ゴム系高分子、薬物及び添加剤を表2に示す質量割合とした他は実施例1と同様にして、実施例2〜12の貼付剤を製造した。
(比較例1)
ゴム系高分子、薬物及び添加剤を表2に示す質量割合とした他は実施例1と同様にして、比較例1の貼付剤を製造した。
Figure 2008050673
(実施例13)
シュウ酸エスシタロプラム、ホウ酸、軽質無水ケイ酸(アエロジル)、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノオレート及びアクリル系高分子(アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、DuroTak87-2516、ナショナルスターチアンドケミカル社製)を酢酸エチル−エタノール−ヘプタン−メタノールの混合溶媒に溶解したものを混合し、塗工液を調製した。次に得られた塗工液をポリエチレンテレフタラート製離型ライナーに塗布し、溶剤を乾燥除去して薬物層を形成した。さらに、ポリエステル製編布を薬物層に張り合わせて実施例13の貼付剤を得た。なお、各成分の質量割合に関しては、表3に示す通りとした。
(実施例14、15)
アクリル系高分子、薬物及び添加剤を表3に示す質量割合とした他は実施例13と同様にして、実施例14、15の貼付剤を製造した。
(比較例2)
臭化水素酸シタロプラム、ピロチオデカン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンモノラウレート、酢酸ナトリウム、アクリル系高分子(商品名:MatriDerm C)及び酢酸エチルを混合し、塗工液を調製した。次に得られた塗工液をポリエチレンテレフタラート製離型ライナーに塗布し、溶剤を乾燥除去して薬物層を形成した。さらに、ポリエステル製編布を薬物層に張り合わせて比較例2の貼付剤を得た。なお、各成分の質量割合に関しては、表3に示す通りとした。
Figure 2008050673
[貼付剤の評価]
上述の実施例1〜4、13〜15及び比較例1、2でそれぞれ得られた貼付剤の皮膚透過性試験及び皮膚一次刺激性試験を行った。
(皮膚透過性試験)
まず、ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター側層として、32℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に、皮膚の角質層側に、実施例1〜4、13〜15及び比較例1、2の各貼付剤(薬物層適用面積5cm)を貼付し、レセプター層としてリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて5ml/hrで2時間毎に24時間までレセプター溶液をサンプリングし、その流量を測定すると共に、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物濃度を測定した。得られた測定値から1時間当たりの薬物の皮膚透過速度を算出し、定常状態における皮膚の単位面積当たりの薬物の皮膚透過速度を求めた。試験開始から24時間までの間に得られた薬物の皮膚透過速度の最大値(最大皮膚透過速度)及び透過した薬物量の合計(薬物皮膚透過量)を表4及び表5に示す。
(皮膚一次刺激性試験)
ウサギ(日本白色種)背部に、実施例1〜4、13〜15及び比較例1、2の各貼付剤(薬物層適用面積4cm)を24時間貼付し、剥離後1,24及び48時間後にDraizeの基準により皮膚刺激性を観察し、皮膚刺激性をスコア(Primary Irritation Index,P.I.I)として評価した(n=6)。得られた結果を表4及び表5に示す。
Figure 2008050673
Figure 2008050673
これらの結果から明らかであるように、ゴム系高分子を用いた実施例1〜4の貼付剤は、同じゴム系高分子を用いた比較例1の貼付剤と比べて、皮膚刺激性が小さい。また、アクリル系高分子を用いた実施例13〜15の貼付剤は、アクリル系高分子を用いた比較例2の貼付剤と比べて、皮膚刺激性が小さい。このことから明らかであるように、粘着基剤として、ゴム系高分子及びアクリル系高分子のどちらを用いても、S体のシタロプラムを含有する貼付剤はラセミ体のシタロプラムを含有する貼付剤よりも皮膚刺激性が小さい。
さらに上述したようにラセミ体及びS体のシタロプラムは同程度の皮膚刺激性を有しているにもかかわらず、実施例1〜4と比較例1とにおける薬物の質量比から予想される皮膚刺激性スコア以上に皮膚刺激性スコアが低下している。このことは、ゴム系高分子を用いた場合には、ミリスチン酸イソプロピル等の添加剤の影響により、皮膚刺激性が低下していることを示唆している。
さらに、S体及びR体の皮膚透過性が同程度であると考えると、薬効を示すS体のシタロプラムを用いた場合の皮膚透過量はラセミ体のシタロプラムを用いた場合の1/2の値で同程度の効果が得られるものと考えられる。これに対し、実施例1〜4の貼付剤の累積皮膚透過量は、比較例1の貼付剤の累積皮膚透過量の1/2の値よりも大きいことから、十分な薬効が得られるものと考えられる。

Claims (7)

  1. 支持体と、該支持体上に積層された薬物層とを備え、
    薬物層は、S体の存在比率がR体の存在比率よりも大きいシタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、粘着基剤と、を含有する貼付剤。
  2. 前記シタロプラム及びその薬学的に許容される塩におけるS体及びR体の存在比率が98.5:1.5〜100:0である、請求項1記載の貼付剤。
  3. 前記シタロプラム及びその薬学的に許容される塩の合計の含有量は、薬物層全質量基準で3〜15質量%である、請求項1記載の貼付剤。
  4. 薬学的に許容される塩は、シュウ酸塩、臭化水素酸塩及び塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の貼付剤。
  5. 薬学的に許容される塩はシュウ酸塩である、請求項1記載の貼付剤。
  6. 粘着基剤は、アクリル系高分子及びゴム系高分子からなる群より選択される少なくとも1種の高分子を含む、請求項1記載の貼付剤。
  7. 薬物層は、炭素数6〜20の脂肪族アルコール、炭素数6〜20の脂肪族エーテル、炭素数6〜20の脂肪酸、炭素数6〜20の脂肪酸エステル、炭素数6〜20の脂肪酸アミド、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類からなる群より選択される少なくとも1種の吸収促進剤をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の貼付剤。
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