JPWO2008029523A1 - キノリニウムイオン誘導体、キノリニウムイオン誘導体の製造方法、キノリニウムイオン誘導体を用いた製品、キノリニウムイオン誘導体を用いた還元方法および酸化方法 - Google Patents

キノリニウムイオン誘導体、キノリニウムイオン誘導体の製造方法、キノリニウムイオン誘導体を用いた製品、キノリニウムイオン誘導体を用いた還元方法および酸化方法 Download PDF

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Abstract

長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子を提供する。本発明の化合物は、下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩である。【化1】前記式(I)中、R1は、水素原子、アルキル基等であり、Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基である。本発明の化合物は、前記構造を有することで、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られ、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、色素増感型太陽電池、有機EL素子等の種々の製品に使用可能である。

Description

本発明は、キノリニウムイオン誘導体、キノリニウムイオン誘導体の製造方法、キノリニウムイオン誘導体を用いた製品、キノリニウムイオン誘導体を用いた還元方法および酸化方法に関する。
電子供与体・受容体連結分子としては、従来、ポルフィリンなどの色素分子が数多く報告され、その電荷分離状態が報告されている。これら電子供与体・受容体連結分子は、産業上利用性の観点から、電荷分離状態の寿命の長さ、酸化力の強さ、還元力の強さ等の特性が要求されており、さらなる特性向上のために研究が重ねられている。
しかし、産業上利用性の観点から十分満足できる還元力を有する電子供与体・受容体連結分子はいまだ報告されていない。そのため、電子供与体・受容体連結分子における前記各特性の中でも、還元力の向上が重要な研究課題となっている。例えば、これまで最も長寿命の電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子としては、9-メシチル-10-メチルアクリジニウムイオン(非特許文献1および2参照)がある。しかし、その電子移動状態(電荷分離状態)は、低エネルギーのため還元力があまり強くないという問題があった。
S. Fukuzumi, H. Kotani, K. Ohkubo, S. Ogo, N. V. Tkachenko, H. Lemmetyinen, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1600 K. Ohkubo, H. Kotani, S. Fukuzumi, Chem. Commun. 2005, 4520.
したがって、本発明は、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子の提供を目的とする。さらに、本発明は、前記電子供与体・受容体連結分子の製造方法を提供する。さらに、本発明は、そのような電子供与体・受容体連結分子を用いた製品、還元方法および酸化方法を提供する。
本発明者らは、前記課題を解決するために、還元電位が低いキノリニウムイオンに着目し、鋭意研究を重ねた。その結果、キノリニウムイオンのピリジン環部位に電子供与性部位を結合させることで、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子が得られることを見出した。
本発明の化合物は、下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩である。
Figure 2008029523
前記式(I)中、
R1は、水素原子、アルキル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である。
Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
ただし、R1がエチル基であり、Ar1およびAr3がフェニル基であり、かつ、Ar2が水素原子、メチル基またはフェニル基である場合を除く。
本発明の製造方法は、下記式(II)で表されるキノリン誘導体と下記式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含む、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩の製造方法である。
Figure 2008029523
前記式(II)中、Ar1〜Ar3は、前記式(I)と同じである。
前記式(III)中、R1は、前記式(I)と同じであり、Qは電子吸引基である。
本発明の製品は、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、または有機EL素子として用いられる製品である。本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、および有機EL素子は、それぞれ、下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を含む。

Figure 2008029523
前記式(I’)中、
R100は、水素原子または任意の置換基である。
Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
本発明の還元方法は、
前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を用いて被還元物質を還元する方法であり、
前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、
前記励起種から前記被還元物質に電子を移動させて前記被還元物質を還元する工程と、
を含む還元方法である。
本発明の酸化方法は、
前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を用いて被酸化物質を酸化する方法であり、
前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、
前記被酸化物質から前記励起種に電子を移動させて前記被酸化物質を酸化する工程と、
を含む酸化方法である。
前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩(以下、単に「化合物(I’)」ということがある)は、前記構造を有する電子供与体・受容体連結分子であることにより、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる。このことは、前述の通り、本発明者らが鋭意研究の結果見出した。
化合物(I’)は、高還元力のため、還元剤に好適に用いることができる。さらに、化合物(I’)は、高還元力のみならず電荷分離状態の長寿命および高酸化力をも併せ持つため、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、電池、色素増感型太陽電池、有機EL素子等の種々の製品に使用可能である。例えば、化合物(I’)を白金触媒と組み合わせることで、水素発生光触媒とすることも可能である。また、本発明の電池は、前記化合物(I’)を色素として含むことで、色素増感型太陽電池として用いることもできる。これらの用途は、全て、本発明者らの発明に係る用途である。
本発明の還元方法は、化合物(I’)を用いることにより、長寿命および高還元力を併せ持つ電荷分離状態が得られるため、高還元力を必要とする被還元物質にも適用可能である。同様に、本発明の酸化方法は、化合物(I’)を用いることにより、長寿命および高酸化力を併せ持つ電荷分離状態が得られるため、高酸化力を必要とする被酸化物質にも適用可能である。さらに、本発明の還元方法および酸化方法は、光照射により化合物(I’)を励起して還元力あるいは酸化力を生じさせるため、簡便に行うことができる。
化合物(I’)のうち、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩(以下、単に「本発明の化合物」ということがある)は、本発明者らが発明した新規化合物である。本発明の化合物は、前記本発明の製造方法により製造することができるが、この製造方法に限定されず、どのような方法により製造しても良い。さらに、本発明の化合物は、前記各用途に限定されず、どのような用途に使用しても良い。
図1は、本発明のキノリニウムイオン誘導体の還元波(サイクリックボルタモグラム)の一例を示す図である。 図2は、本発明のキノリニウムイオン誘導体のフェムト秒レーザーフラッシュフォトリシス(レーザー時間分解分光)における過渡吸収スペクトルの一例を示す図である。 図3は、本発明のキノリニウムイオン誘導体からヘキシルビオローゲンへの電子移動反応における過渡吸収スペクトルの一例を示す図である。
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明において数値により発明の範囲を限定する場合は、厳密にその数値範囲の場合も含むが、約その数値範囲である場合も含むものとする。例えば、「100〜200℃」という場合は、厳密に100〜200℃の場合も含むが、約100℃から約200℃の場合も含むものとする。また、例えば、炭素原子数が「1〜6」という場合は厳密に1〜6の場合も約1〜6の場合も含むものとする。
[本発明の化合物]
本発明の化合物は、前述の通り、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩である。以下、本発明の化合物の好ましい構造等について説明する。
前記式(I)中、R1は、例えば、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にカルボキシル基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミノ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖であることが好ましい。PEG鎖は、前記ポリエーテル鎖の一例であるが、前記ポリエーテル鎖の種類は、これに限定されず、どのようなポリエーテル鎖でも良い。R1において、前記ポリエーテル鎖の重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。前記ポリエーテル鎖がPEG鎖の場合、重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。また、Ar1〜Ar3は、例えば、それぞれ、水素原子、アルキル基、または芳香環であることが好ましく、前記アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基であることがより好ましい。Ar1〜Ar3において、前記芳香環は環上にさらに1または複数の置換基を有していても良く、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
前記式(I)中、Ar1〜Ar3において、前記芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環またはピレン環であることがより好ましい。また、Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルであることがより好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルであることがさらに好ましい。前記第2級アミンとしては、特に限定されないが、例えばアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基がより好ましい。前記第3級アミンとしては、特に限定されないが、例えばジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基を有するジアルキルアミノ基がより好ましい。
なお、Ar1〜Ar3における前記芳香環上の置換基において「カルボン酸」とは、カルボキシル基または末端にカルボキシル基が付加した基(例えばカルボキシアルキル基等)をいい、「カルボン酸エステル」とは、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のカルボン酸エステル基、およびアシルオキシ基をいう。前記カルボキシアルキル基中のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基が好ましく、前記アルコキシカルボニル基中のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基が好ましい。
前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体のうち、電荷分離状態の長寿命、高酸化力、高還元力等の観点から特に好ましいのは、例えば、下記式1〜5のいずれかで表されるキノリニウムイオン誘導体である。

Figure 2008029523
また、前記化合物1〜5の他には、例えば、下記表1に示す化合物6〜36等が特に好ましい。下記表1および表2に、化合物6〜36の構造を、前記式(I)におけるR1およびAr1〜Ar3の組み合わせで示す。また、これら化合物6〜36は、後述の実施例を参照することにより、当業者であれば、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等をすることなく、化合物1〜5に準じて容易に製造し、かつ使用することが出来る。

Figure 2008029523

Figure 2008029523
なお、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の化合物に含まれる。さらに、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体の塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体が塩基付加塩を形成し得る場合は、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体またはその異性体に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。また、前記式(I)中のR1およびAr1〜Ar3に異性体が存在する場合はどの異性体でも良く、例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
また、本発明の化合物において、吸収帯は特に限定されないが、可視光領域に吸収体を有することが好ましい。可視光領域に吸収帯を有することで、可視光励起が可能となり得るためである。これによれば、太陽光をエネルギー源として利用できるので、例えば、太陽電池等への適用も可能である。
なお、本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられ、アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)においても同様である。また、ペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられ、ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基、等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。さらに、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
[本発明の製造方法]
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、前述の通り、下記式(II)で表されるキノリン誘導体と下記式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含む、本発明の化合物(前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩)の製造方法である。

Figure 2008029523
前記式(II)中、Ar1〜Ar3は、前記式(I)と同じである。
前記式(III)中、R1は、前記式(I)と同じであり、Qは電子吸引基である。
前記式(III)中、Qは、電子吸引基であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等が挙げられ、中でも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルスルホニル基、およびトリフルオロメチルカルボニル基等がより好ましい。
前記式(II)で表されるキノリン誘導体と前記式(III)で表される化合物との反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。キノリン誘導体(II)と化合物(III)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:4、特に好ましくは1:1である。また、例えば、キノリン誘導体(II)および化合物(III)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、アセトン等のケトン、およびアセトニトリル等のニトリル溶媒等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。溶媒を用いる場合、キノリン誘導体(II)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.01〜0.2mol/L、好ましくは0.02〜0.1mol/L、より好ましくは0.03〜0.05mol/Lである。反応温度は特に限定されないが、例えば0〜80℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば10〜40時間、好ましくは20〜30時間、より好ましくは25〜30時間である。
さらに、キノリニウムイオンを製造した後、必要に応じ、陰イオン交換処理しても良い。前記陰イオン交換処理の方法は特に限定されず、必要に応じて任意の方法を用いることができる。前記陰イオン交換処理に使用可能な物質としては、例えば、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸、および、四フッ化ホウ素、六フッ化リンが挙げられ、単独で用いても二種類以上併用しても良く、また、これら以外の反応物質、溶媒等を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。
前記式(II)で表されるキノリン誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、第1の製造方法として、下記式(IV)で表されるハロゲン化キノリンと下記式(V)で表されるボロン酸エステルを反応させて製造することが好ましい。

Figure 2008029523
前記式(IV)中、
X1は、ピリジン環上のハロゲン基であり、1つでも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
前記式(V)中、
R2およびR3は、水素原子または炭化水素基であり、R2とR3は一体となっていても良い。
Armのmは1〜3のいずれかの整数である。
ボロン酸エステル(V)は単一でも複数種類でも良い。
R2およびR3は、それぞれ水素原子もしくはアルキル基であるか、または一体となってアルキレン基を形成していることが好ましく、アルキル基の場合は炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基がより好ましく、アルキレン基の場合は、炭素数1〜12の直鎖または分枝アルキレン基がより好ましく、エチレン基(ジメチレン基)、またはトリメチレン基が特に好ましい。
前記式(IV)で表されるハロゲン化キノリンと前記式(V)で表されるボロン酸エステルとの反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。ハロゲン化キノリン(IV)とボロン酸エステル(V)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:2〜1:10、好ましくは1:2〜1:4、特に好ましくは1:2である。また、例えば、ハロゲン化キノリン(IV)およびボロン酸エステル(V)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、ハロゲン化キノリン(IV)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.2〜2.0mol/L、好ましくは0.3〜1.5mol/L、より好ましくは0.5〜1.0mol/Lである。ハロゲン化キノリン(IV)およびボロン酸エステル(V)以外の反応物質としては、例えば触媒を用いても良い。前記触媒としては、例えば、パラジウム触媒等が挙げられる。前記パラジウム触媒としては、特に限定されないが、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2等が特に好ましい。また、これら触媒は、必要に応じ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記触媒の使用量は特に限定されないが、ハロゲン化キノリン(IV)のモル数に対し、例えば0.002〜0.1倍、好ましくは0.005〜0.04倍、より好ましくは0.01〜0.02倍である。さらに、これら触媒は、必要に応じ、他の物質と併用しても良いし、併用しなくても良い。前記他の物質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、トリエチルアミン等の塩基性物質が挙げられ、K2CO3、トリエチルアミン等が特に好ましい。これらの使用量は特に限定されないが、ハロゲン化キノリン(IV)のモル数に対し、例えば50〜500倍、好ましくは100〜400倍、より好ましくは200〜300倍である。また、前記化合物(IV)および(V)の反応に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、チオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル、およびジクロロエタン、DMF等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えば50〜120℃、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば10〜50時間、好ましくは15〜30時間、より好ましくは20〜25時間である。
前記式(II)で表されるキノリン誘導体の第2の製造方法として、下記式(VI)で表される1-アシル-2-アミノベンゼンと下記式(VII)で表されるケトンを反応させて製造することが好ましい。
Figure 2008029523
前記式(VI)中、Ar1は、前記式(I)と同じである。前記式(VII)中、Ar2およびAr3は、前記式(I)と同じである。
前記式(VI)で表される1-アシル-2-アミノベンゼンと前記式(VII)で表されるケトンとの反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)とケトン(VII)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:3〜1:10、好ましくは1:3〜1:5、特に好ましくは1:3である。また、例えば、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.2〜3.0mol/L、好ましくは0.5〜2.0mol/L、より好ましくは0.8〜1.0mol/Lである。1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)以外の反応物質としては、例えば、ジフェニルフォスファイト等のフォスファイト(ホスファイト)、および水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、必要に応じ、単独で用いても二種類以上併用しても良い。これらの使用量は特に限定されないが、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)のモル数に対し、例えば2〜10倍、好ましくは3〜8倍、より好ましくは5〜6倍である。また、1-アシル-2-アミノベンゼン(VI)およびケトン(VII)の反応に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、特に限定されないが極性溶媒が好ましく、例えば、ヒドロキシベンゼン、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のフェノール、およびDMF,DMSO等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えば100〜200℃、好ましくは120〜160℃、より好ましくは130〜140℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば5〜30時間、好ましくは10〜25時間、より好ましくは20〜25時間である。
前記式(VI)で表される化合物の製造方法も特に限定されないが、例えば、下記式(VIII)で表される化合物と、下記式(IX)で表されるハロゲン化物を反応させて製造することが好ましい。

Figure 2008029523
前記式(VIII)中、R4およびR5は、それぞれ水素原子またはアルキル基であり、同一でも異なっていても良い。前記式(IX)中、Ar1は前記式(VI)と同じであり、X2はハロゲンである。R4およびR5は、それぞれ水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基であることが好ましく、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基が特に好ましい。
前記式(VIII)で表される化合物と前記式(IX)で表されるハロゲン化物との反応条件は、特に限定されず、例えば、公知の類似反応の条件等を参考にして適宜設定できる。化合物(VIII)とハロゲン化物(IX)との物質量比(モル比)は、特に限定されないが、例えば1:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.5、特に好ましくは1:1である。また、例えば、化合物(VIII)およびハロゲン化物(IX)以外の反応物質や溶媒を、必要に応じ適宜用いても良いし、用いなくても良い。溶媒を用いる場合、化合物(VIII)の濃度は、特に限定されないが、例えば0.05〜0.8mol/L、好ましくは0.1〜0.5mol/L、より好ましくは0.2〜0.3mol/Lである。化合物(VIII)およびハロゲン化物(IX)以外の反応物質としては、例えばn-ブチルリチウム等の有機リチウム試薬等が挙げられ、必要に応じ単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記有機リチウム試薬の使用量は特に限定されないが、化合物(VIII)のモル数に対し、例えば1.5〜2.5倍、好ましくは1.6〜2.3倍、より好ましくは1.9〜2.1倍である。また、前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、チオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。反応温度は特に限定されないが、例えばマイナス100〜マイナス50℃、好ましくはマイナス80〜マイナス60℃、より好ましくはマイナス80〜マイナス70℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば1〜5時間、好ましくは2〜4時間、より好ましくは2〜3時間である。
以上、本発明の製造方法について説明した。これらの反応に用いる反応物質、溶媒等は、前述の通り特に限定されないが、適切な組み合わせで用いることが好ましい。例えば、n-ブチルリチウム等の物質は水との反応性が高いため、溶媒中の水により反応性に影響が出る場合がある。そのような場合は、溶媒中から水をなるべく除いて用いることが好ましい。また、本発明の化合物の製造方法は、前述の通り、これらに限定されず、どのような製造方法でも良い。
[本発明の製品、還元方法、酸化方法]
次に、本発明の製品、還元方法、酸化方法について説明する。
本発明の製品、還元方法および酸化方法には、前述の通り、化合物(I’)を用いる。前記式(I’)中、R100は、水素原子または任意の置換基であるが、例えば、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖であることが好ましい。また、化合物(I’)は、本発明の化合物すなわち本発明者らが発明した新規化合物(前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩)であることがより好ましい。
化合物(I’)によれば、前述の通り、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる。本発明の製品すなわち本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、および有機EL素子は、この電荷分離状態の生成により、その優れた機能を発揮し得る。すなわち、化合物(I’)は、例えば、前記電荷分離状態の生成により、前記式(I’)で表される分子間で、あるいは前記式(I’)の分子と他の物質との間で電子移動を起こすことが可能である。これにより、化合物(I’)は、前記分子間あるいは物質間の電子移動に関する用途、すなわち前述の酸化剤、還元剤、電池等に好適に用いることができる。特に、化合物(I’)は、還元力に優れることにより、前述の通り還元剤に好適に用いることができる。例えば、化合物(I’)の電荷分離状態から、ビオローゲン等の電子アクセプター物質に電子を移動させ、電子移動還元反応を行うことが可能である。また、本発明の還元剤が還元できる物質(被還元物質)は、前記ビオローゲン等の電子アクセプター物質に限定されない。本発明の還元剤は、種々の物質の還元反応に用いることが可能である。前記被還元物質としては、特に限定されないが、例えば、キノン類、ニトロベンゼン類、シアノベンゼン類等が挙げられる。
また、本発明の有機EL素子については、例えば以下の通りである。まず、一般的な有機EL素子の構造の一例として、透明基板上に、透明電極(陽極)、有機発光層および金属電極(陰極)がこの順序で積層されている。前記有機発光層は、発光物質を含んでいる。このような有機EL素子は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入される。前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが前記発光物質を励起する。そして、励起された前記発光物質が基底状態に戻るときに発光する。本発明の有機EL素子は、例えば、前記発光物質として化合物(I’)を含む有機EL素子であっても良い。この構成によれば、例えば、化合物(I’)が励起により電荷分離状態を生じ、さらに励起状態(電荷分離状態)から基底状態に戻ることにより発光する。なお、本発明の有機EL素子は、この説明により何ら限定されない。
化合物(I’)の電荷分離状態を生成させる方法は、特に限定されないが、例えば光励起が好ましく、可視光励起がより簡便であるため特に好ましい。可視光励起を行うためには、前述の通り、化合物(I’)が可視光領域に吸収帯を有することが好ましい。これにより、長寿命、高酸化力および高還元力を併せ持つ電荷分離状態を簡便に生成させることも可能である。
化合物(I’)は、光励起により電荷分離状態を生じ、前述のような分子間あるいは物質間の電子移動を起こすことで、光触媒、光増感剤等に使用可能である。例えば、前述の通り、化合物(I’)を白金触媒と組み合わせることで、水素発生光触媒とすることもできる。さらに、化合物(I’)は、可視光領域に吸収帯を有する場合は色素として使用可能である。例えば、前述の通り、本発明の電池は、前記化合物(I’)を色素として含むことで、色素増感型太陽電池として用いることもできる。
化合物(I’)を光励起する方法は特に限定されないが、例えば、化合物(I’)を溶媒に溶解して溶液とした後、光照射しても良い。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水でも有機溶媒でも良く、前記有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒、THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル、DMF(ジメチルホルムアミド)等のアミド、DMSO(ジメチルスルホキシド)等のスルホキシド、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコール等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記溶媒としては、化合物(I’)の溶解度、励起状態の安定性等の観点から、極性の高い溶媒が好ましく、例えば、溶解度の観点からアセトニトリルが特に好ましい。
前記溶液において、化合物(I’)の濃度は特に限定されず、必要に応じて適宜調整すれば良いが、前記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体の濃度が、例えば5×10-5M以上、好ましくは1×10-4〜1×10-3Mとなるようにする。
また、励起光も特に限定されないが、例えば可視光が好ましい。特に、太陽光等の自然光に含まれる可視光を利用すれば、簡便に励起可能である。照射する可視光の波長のうち、より好ましい波長は、化合物(I’)が有する吸収帯によるが、キノリニウムイオン誘導体が前記式1〜5のいずれかで表される場合、例えば300〜450nmがより好ましく、300〜360nmがさらに好ましい。可視光を照射する際の温度も特に限定されないが、例えば、キノリニウムイオン誘導体が前記式1〜5のいずれかで表される場合、10〜30℃程度の室温で反応(励起)を進行させることも可能である。
また、本発明の還元方法は、前述の通り、化合物(I’)を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、前記励起種から被還元物質に電子を移動させて前記被還元物質を還元する工程とを含む。同様に、本発明の酸化方法は、化合物(I’)を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、被酸化物質から前記励起種に電子を移動させて前記被酸化物質を還元する工程とを含む。すなわち、化合物(I’)は、光励起を用いた前記本発明の還元方法または酸化方法により、還元剤または酸化剤として用いることもできる。
本発明の還元方法または酸化方法を行う具体的な方法は、特に限定されない。例えば、光照射により前記励起種を生成させる工程は、前述のように、化合物(I’)を溶媒に溶解して溶液とした後、光照射することにより行っても良い。また、化合物(I’)を、前記被還元物質または前記被酸化物質と共に溶媒に溶解して混合溶液とした後、光照射することにより行っても良い。これらの場合の使用溶媒、溶液濃度、照射光波長、温度等の各種条件は、特に限定されないが、例えば前述の通りである。前記還元工程または酸化工程も特に限定されない。例えば、本発明の還元方法においては、前記混合溶液への光照射後、前記励起種から前記被還元物質への電子移動が自動的に起こることをもって前記還元工程としても良い。同様に、本発明の酸化方法においては、前記混合溶液への光照射後、前記被酸化物質から前記励起種への電子移動が自動的に起こることをもって前記還元工程としても良い。
本発明の還元方法において、前記被還元物質は、特に限定されないが、例えば、キノン類、ニトロベンゼン類、シアノベンゼン類等が挙げられる。前記式(I’)で表される分子と前記被還元物質の物質量比(モル比)は特に限定されず、前記式(I’)で表される分子と前記被還元物質の種類等に応じて適宜選択可能であるが、例えば1:0.001〜1:1000、好ましくは1:0.005〜1:100、より好ましくは1:0.01〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:1である。
本発明の酸化方法において、前記被酸化物質は、特に限定されないが、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルアントラセン類、NADH類縁体等が挙げられる。前記式(I’)で表される分子と前記被酸化物質の物質量比(モル比)は特に限定されず、前記式(I’)で表される分子と前記被酸化物質の種類等に応じて適宜選択可能であるが、例えば1:0.001〜1:1000、好ましくは1:0.005〜1:100、より好ましくは1:0.01〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:1である。
さらに、化合物(I’)のうち、本発明の化合物、すなわち本発明者らの発明に係る新規化合物(前記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩)の化合物の用途および使用方法は、以上の説明に限定されず、あらゆる用途および使用方法が可能である。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、以下の実施例において述べる反応機構等の理論的考察は、推定可能な機構等の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定しない。
以下の実施例において、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL社製の機器JNM-AL300 NMR spectrometer(商品名)(1H測定時300MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、Shimadzu社製の機器Kratos Compact MALDI I(商品名)を用い、MALDI-TOF-MS法により測定した。元素分析値は、Perkin-Elmer社製Model 240C(商品名)を用いて測定した。ボルタンメトリーは、BAS社製の機器ALS630B electrochemical analyzer(商品名)を用いて測定した。吸光度は、Hewlett-Packard社製の機器8453 photodiode array spectrophotometer(商品名)を用いて測定した。レーザー照射には、Continuum社製の機器Nd:YAG laser(SLII-10, 4-6 ns fwhm)(商品名)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、東京化成、和光純薬、Aldrich社から購入した。
<実施例1〜5>
以下の通り、前記式1〜5で表されるキノリニウムイオン誘導体の塩を合成し(それぞれ実施例1〜5とする)、それらの酸化還元電位、光励起による電荷分離状態形成等の特性について確認した。
[1]キノリニウムイオン誘導体1〜5の合成
前記式1〜5で表されるキノリニウム誘導体の塩を合成した。なお、前記式1〜5を下に再掲する。
Figure 2008029523
[1−1]キノリニウムイオン誘導体1〜3の合成(実施例1〜3)
下記スキーム1に従い、キノリニウムイオン誘導体2(3-(1-ナフチル)キノリニウムイオン)の過塩素酸塩を合成した。

Figure 2008029523
以下、前記スキーム1についてさらに詳しく説明する。
前記スキーム1の反応を行うに先立ち、まず、1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)を合成した。すなわち、まず、10mLの脱水THF中において、1-ナフチルブロマイド(2.07g, 10.0mmol)とマグネシウム(0.27g, 11.0mmol)の反応によってグリニヤール試薬を生成させた。次に、このグリニヤール試薬を、-78℃でトリメトキシボラン(2.08g, 20.0mmol)の脱水THF溶液10mLに加え、1時間攪拌した。反応終了後、溶媒を除去し、得られた白色固体をトルエン50mL中で攪拌しながらエチレングリコール5mLを加えた。その後、115℃で12時間還流し、反応させた。反応終了後、室温に冷却し、トルエン相のみ抽出し溶媒を除去した。その結果、1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)が得られた(1.60g, 81%)。以下に、この1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)の機器分析データを示す。
1-ナフチルボロン酸エステル(2-1):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.73(d, J=7.5Hz, 1H), 8.11(s, J=7.5Hz, 1H),7.95(s, J=7.5Hz, 1H), 7.84(s, J=7.5Hz, 1H), 7.56-7.45(m, 3H), 4.52(s, 4H).
次に、前記1-ナフチルボロン酸エステル(2-1)(1.00g, 5.00mmol)と3-ブロモキノリン(0.62g, 3.00mmol)のジメトキシエタン(DME)溶液4mLに、2.0 M 炭酸カリウム水溶液1.0mL、およびトリストリフェニルホスフィンパラジウム[Pd(PPh3)4](30mg, 0.026mmol)を加えて90℃で12時間還流した。反応終了後、室温に冷却し、クロロホルム100mLを加え、水100mLでの洗浄処理を2回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)を得た(84mg, 11%)。以下に、この3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)の機器分析データを示す。
3-(1-ナフチル)キノリン(2-2):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 9.06(s, 1H), 8.28(s, 1H), 8.21(d, J=8.4Hz, 1H), 7.97-7.75(m, 5H), 7.65-7.46(m, 5H).
さらに、前記3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)(70mg, 0.27mmol)をアセトン10ml中に溶解させ、さらに、ヨウ化メチルを(130μl, 2mmol)加え10時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール20mLを加え、過塩素酸ナトリウム(0.12g, 1.0mmol)を加えて塩交換(イオン交換)し、3-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体2)の過塩素酸塩を得た。得られたキノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩の収量は93mgであり、前記3-(1-ナフチル)キノリン(2-2)からの収率は93%であった。以下に、このキノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩の機器分析データを示す。
キノリニウムイオン誘導体2過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 9.25 (s, 1H), 9.20(s, 1H), 8.42(t, J=8.4 Hz, 2H), 8.30(t, J=8.4 Hz, 1H), 8.15-8.08(m, 3H), 7.86(d, J=8.4Hz, 1H), 7.74-7.56(m, 4H), 4.63(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 270(M+ Calcd for C20H16N 270.1). Anal. Calcd for C20H16ClNO4: C, 64.96; H, 4.36; N, 3.79. Found: C, 64.80; H, 4.24; N, 3.82.
さらに、1-ナフチルブロマイドに代えてメシチルブロマイドを用いる以外は前記スキーム1と同様にしてキノリニウムイオン誘導体1の過塩素酸塩を得た。また、1-ナフチルブロマイドに代えて2-メチル-1-ナフチルブロマイドを用いる以外は前記スキーム1と同様にしてキノリニウムイオン誘導体3の過塩素酸塩を得た。以下に、これらキノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩、キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩およびそれらの中間体の機器分析データを示す。
3-(1-メシチル)キノリン(キノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩の中間体):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.67(s, 1H), 8.14(d, J=8.4Hz, 1H), 7.96(s, 1H), 7.76-7.55(m, 3H), 7.00(s, 2H), 2.34(s, 3H), 2.03(s, 6H).
3-[1-(2-メチル)ナフチル)]キノリン(キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩の中間体):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.85(s, 1H), 8.22(d, J=8.4Hz, 1H), 8.10(s, 1H), 7.89-7.60(m, 6H), 7.49-7.32(m, 3H), 2.29(s, 3H).
キノリニウムイオン誘導体1過塩素酸塩:
1H NMR(300MHz, CD3CN) δ 8.93(s, 1H), 8.90(s, 1H), 8.39(d, J=7.8Hz, 1H), 8.33(d, J=7.8 Hz, 1H), 8.26(t, J=7.8 Hz, 1H), 8.04(t, J=7.8Hz, 1H), 7.08(s, 2H), 2.04(s, 6H), 4.57(s, 3H), 2.35(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 262(M+ Calcd for C19H20N 261.8). Anal. Calcd for C19H20ClNO4: C, 63.07; H, 5.57; N, 3.87. Found: C, 62.91; H, 5.49; N, 3.89.
キノリニウムイオン誘導体3過塩素酸塩:
1H NMR(300MHz, CD3CN) δ 9.09(s, 1H), 9.05(s, 1H), 8.49-8.25(m, 3H), 7.96-8.12(m, 3H), 7.62-7.32(m, 4H), 4.61(s, 3H), 2.38(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 284(M+ Calcd for C21H18N 284.1). Anal. Calcd for C21H18ClNO4: C, 65.71; H, 4.73; N, 3.65. Found: C, 65.58; H, 4.73; N, 3.65.
[1−2]キノリニウムイオン誘導体4および5の合成(実施例4〜5)
下記スキーム2に従い、キノリニウムイオン誘導体5(2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン)の過塩素酸塩を合成した。

Figure 2008029523
前記スキーム2の反応は、具体的には以下のように行った。すなわち、まず、アントラニル酸N-メトキシ-N-メチルアミド(5-1)(2.00g, 11.1mmol)と1-ナフチルブロマイド(5-2)(2.29g, 11.1mmol)を、脱水THF60mLに溶かした。次に、この溶液を-78℃に冷却し、その温度のまま攪拌しながら、n-ブチルリチウムヘキサン溶液(13.8mL, 1.6M, 22.2mmol)を20分間かけて滴下した。滴下後、1N塩酸20mLを加え、酢酸エチル150mLで抽出し、水100mLでの洗浄処理を2回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。有機溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)を得た。収量は500mg、収率は18%であった。以下に、この1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)の機器分析データを示す。
1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.97-7.93(m, 3H), 7.49-7.42(m, 4H), 7.28-7.20(m, 2H), 6.73 (d, J=7.5Hz, 1H), 6.52(bs, 1H), 6.43(t, J=7.5Hz, 3H).
次に、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)(400mg, 1.6mmol)とアセトフェノン(400mg, 4.4mmol)にジフェニルフォスファイト(DPP)(2.5g, 10.0mmol)とm-クレゾール(1.6g, 14.8mmol)を加え、140℃で5時間攪拌した。反応終了後、室温に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液100mLと塩化メチレン100mLを加えた。塩化メチレンを分離回収し、水100mLでの洗浄処理を3回行い、続いて飽和食塩水50mLで洗浄処理を行った。溶媒を除去し、クロロホルムを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製し、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4)を得た。収量は150mg、1'-ナフチル-2-アミノベンゾフェノン(5-3)からの収率は28%であった。以下に、この2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4)の機器分析データを示す。
2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリン(5-4):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.27(d, J= 8.5 Hz, 1H), 8.21(d, J=8.5 Hz, 2H), 7.97(t, J=8.5 Hz, 2H), 7.91s, 1H), 7.71 (t, J=8.5Hz, 1H), 7.61-7.32(m, 11H).
さらに、4-ナフチル-2-フェニルキノリン(5-4)(150mg, 0.45mmol)の塩化メチレン溶液10mLにメチルトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸メチル)(82mg, 0.50mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール20mLを加え、過塩素酸ナトリウム(0.12g, 1.0mmol)を加え過塩素酸塩へと塩交換した。熱メタノールで再結晶を行い、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の過塩素酸塩を190mg得た。4-ナフチル-2-フェニルキノリン(5-4)からの収率は95%であった。以下に、キノリニウムイオン誘導体5過塩素酸塩の機器分析データを示す。
キノリニウムイオン誘導体5過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 8.52(d, J=9.0Hz, 1H), 8.25(t, J=9.0Hz, 1H), 8.18(d, J=9.0Hz, 1H), 8.08(d, J=9.0Hz, 1H), 8.05(s, 1H), 7.82-7.69(m, 8H), 7.61(t, J=9.0Hz, 2H), 7.45(t, J=9.0Hz, 1H), 7.41(d, J=9.0Hz, 1H), 4.44(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 346(M+ Calcd for C20H16N 346.2). Anal. Calcd for C26H20ClNO4: C, 70.03; H, 4.52; N, 3.14. Found: C, 69.78; H, 4.39; N, 3.19.
さらに、1-ナフチルブロマイドに代えてブロモベンゼンを用いる以外は前記スキーム2と同様にしてキノリニウムイオン誘導体4の過塩素酸塩を得た。以下に、キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩およびその中間体の機器分析データを示す。
2,4-ジフェニルキノリン(キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩の中間体):
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.26-8.18(m, 2H), 7.90(d, J=8.4Hz, 1H), 7.82(s, 1H), 7.73(t, J=8.4Hz, 1H), 7.57-7.43(m, 10H).
キノリニウムイオン誘導体4過塩素酸塩:
1H NMR (300MHz, CD3CN) δ 8.48(d, J=8.4Hz, 1H), 8.31-8.25(m, 2H), 7.98(t, J=8.4Hz, 1H), 7.95(s, 1H), 7.75-7.67(m, 10H), 4.36(s, 3H), MALDI-TOF-MS m/z 270(M+ Calcd for C20H16N 270.1). Anal. Calcd for C22H18ClNO4: C, 66.75; H, 4.58; N, 3.54.
[2]ボルタンメトリー
前記の通り合成したキノリニウムイオン誘導体1〜5の過塩素酸塩(実施例1〜5の化合物)をそれぞれ用い、それぞれのキノリニウムイオン誘導体について、サイクリックボルタンメトリー法および第二高調波ボルタンメトリー法によって酸化還元電位を測定した。図1に、0.1Mテトラブチルアンモニウム過塩素酸塩を含むアセトニトリル溶液中で測定を行ったキノリニウムイオン誘導体5すなわち2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(2.0mM)の還元波(サイクリックボルタモグラム)を示す。図1の還元波より、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の還元電位は-0.90V vs SCEと非常に低いことが確認された。このことは、キノリニウムイオン誘導体5の還元力が強いことを示唆している。また、キノリニウムイオン誘導体5の酸化電位については、第二高調波ボルタンメトリー法による測定で1.87V vs SCEであることを確認した。すなわち、キノリニウムイオン誘導体5の電子移動状態(電荷分離状態)のエネルギーは2.77eVと非常に高いことが確認できた。
また、キノリニウムイオン誘導体1〜4についても、同様の測定により、還元電位が低いことおよび電子移動状態(電荷分離状態)のエネルギーが高いことを確認した。例えば、サイクリックボルタンメトリーによれば、キノリニウムイオン誘導体2の還元電位は-0.88V vs SCEであり、キノリニウムイオン誘導体4の還元電位は-0.89V vs SCEであった。そして、キノリニウムイオン誘導体2の酸化電位については、第二高調波ボルタンメトリー法による測定で1.82V vs SCEであることを確認した。すなわち、キノリニウムイオン誘導体2の電子移動状態(電荷分離状態)のエネルギーは2.70eVと非常に高いことが確認できた。
なお、前述の通り、従来、下記式(X)で表される9-メシチル-10-メチルアクリジニウムイオン(非特許文献1および2参照)が知られていたが、その還元電位は-0.49V vs SCEであった。すなわち、本実施例のキノリニウムイオン誘導体は、9-メシチル-10-メチルアクリジニウムイオンと構造は類似であるにもかかわらず、還元力を示す指標である還元電位は格段に低いことが確認できた。このように、本実施例のキノリニウムイオン誘導体において電子移動状態(電荷分離状態)のエネルギーが非常に高いことおよび還元電位が非常に低いことは、還元剤としての有用性を示している。
Figure 2008029523
[3]励起
2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の脱酸素アセトニトリル溶液(0.1mM)に光照射を行うと、キノリニウムイオンと比較して、蛍光強度の有意な減少を生じた。このような蛍光強度の減少は、キノリニウムイオンの一重項励起状態から連結したナフタレンへの光誘起電子移動に起因すると考えられる。また、その他のキノリニウムイオン誘導体についても同様の測定を行ったところ、有意な蛍光強度の減少が観測された。
さらに、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)について、アセトニトリル中におけるフェムト秒レーザーフラッシュフォトリシス(レーザー時間分解分光)を行い、過渡吸収スペクトルを測定した。その結果、光誘起電子移動の発生が確認された。
前記フェムト秒レーザーフラッシュフォトリシスは、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)過塩素酸塩の脱酸素アセトニトリル溶液(0.1mM)に、298K(25℃)でフェムト秒レーザー(390nm)を照射して行った。照射後10ps後に過渡吸収スペクトルを測定した。
図2に、前記過渡吸収スペクトルを示す。図示の通り、この過渡吸収スペクトルは、400〜500nm間に1つの吸収帯を有し、さらに、700nm付近にもう1つの吸収帯を有する。すなわち、この過渡吸収スペクトルは、アセトニトリル中のキノリニルラジカルに由来する吸収帯(420nm)とナフタレンラジカルカチオンに由来する吸収帯(700nm)との重ね合わせに一致する。従って、この過渡吸収スペクトルは、キノリニウムイオン誘導体5について光誘起電子移動が起こったことを示すと考えられる。より詳しくは、キノリニウムイオン誘導体5への光照射によりキノリニウムイオン部位の一重項励起状態が生成し、その一重項励起状態から連結しているナフタレン部位への電子移動が起こり、電子移動状態が形成されたと推測される。ただし、これらの考察は、本発明を限定するものではない。
さらに、実施例1〜4のキノリニウムイオン誘導体についても同様のフェムト秒レーザーフラッシュフォトリシス測定を行い、同様の現象を確認した。このように、実施例1〜5のキノリニウムイオン誘導体は、良好な電子移動状態(電荷分離状態)を形成した。
以上の通り、実施例1〜5では、キノリニウムイオン誘導体1〜5を合成した。これらは、サイクリックボルタンメトリーおよびフェムト秒レーザーフラッシュフォトリシスにより確認されたとおり、優れた電子移動特性を有していた。具体的には、キノリニウムイオン誘導体1〜5の電荷分離状態(電子移動状態)は、高エネルギーかつ長寿命であり、高い還元力および酸化力を有していた。これらのことは、実施例1〜5のキノリニウムイオン誘導体が、電荷分離状態を用いた産業上の用途、例えば還元剤、酸化剤、光触媒等の種々の用途に有用な優れた電子供与体・受容体連結分子(ドナー・アクセプター連結分子)であることを示す。
なお、キノリニウムイオン誘導体2および5について、密度汎関数理論(B3LYP/6-31G法)により電子軌道を計算したところ、いずれも、LUMO(最低被占有軌道)はキノリン環部分に局在化し、HOMO(最高被占有軌道)はナフタレン環部分に局在化していた。さらに、キノリン環とナフタレン環はほぼ直交していた。これらの理論計算結果は、キノリニウムイオン誘導体2および5について、光励起を行うことによって生成する電荷分離状態における軌道相互作用(ドナー部位とアクセプター部位のπ共役等)がほとんど無いことを示唆している。一般に、電子供与体・受容体連結分子(ドナー・アクセプター連結分子)は、ドナー部位とアクセプター部位の軌道相互作用が小さくなくてはならない。本発明の化合物は、この軌道相互作用がほとんど無く、ドナー・アクセプター連結系分子として優れていると考えられる。ただし、この計算結果は、理論計算による考察の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定しない。
<実施例6;還元剤および還元方法>
実施例1〜5で合成したキノリニウムイオン誘導体1〜5について、電子移動状態(電荷分離状態)から電子アクセプター分子への電子移動反応(還元反応)を行い、前記電子移動状態(電荷分離状態)の還元能力を確認した。前記電子アクセプター分子(被還元物質)としては、ヘキシルビオローゲンを用いた。
以下、前記電子移動反応(還元反応)についてさらに具体的に説明する。すなわち、まず、前記実施例5により合成した2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の過塩素酸塩とヘキシルビオローゲンを、ともに脱酸素アセトニトリル中に溶解させ、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオンとヘキシルビオローゲンの混合溶液とした。この混合溶液の濃度は、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン濃度が0.1mMであり、ヘキシルビオローゲン濃度が1.0mMとなるようにした。次に、前記混合溶液に波長355nmのレーザー光を298K(25℃)で照射してナノ秒レーザー励起を行い、照射後1.2マイクロ秒後および照射後20マイクロ秒後における過渡吸収スペクトルを測定した。
図3に、その過渡吸収スペクトルを示す。図中、(■)は、照射後1.2マイクロ秒後の過渡吸収スペクトルであり、(○)は、照射後20マイクロ秒後の過渡吸収スペクトルである。図示の通り、照射後1.2マイクロ秒後の過渡吸収スペクトル(■)における吸収帯は、図2のスペクトルが示す吸収帯と良く一致した。この吸収帯によれば、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)について、ナノ秒レーザー励起により、図2と同様の電子移動状態(電荷分離状態)が形成されたと推測される。さらに、その電子移動状態(電荷分離状態)が、レーザー光照射後1.2マイクロ秒後にも持続するほど長寿命であることを示唆すると考えられる。さらに、照射後20マイクロ秒後の過渡吸収スペクトル(○)は、図示の通り、キノリニルラジカルに起因すると思われる吸収帯(420nm)が減少するとともに、ヘキシルビオローゲンラジカルカチオンに起因すると思われる吸収帯(390nmと600nm)が出現した。これは、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)からヘキシルビオローゲンへの電子移動すなわち還元反応が効率よく起こったことを示唆する。
さらに、実施例1〜4のキノリニウムイオン誘導体についても同様の測定を行い、同様の現象を確認した。
以上の通り、本実施例では、実施例1〜5のキノリニウムイオン誘導体を本発明の還元剤に用い、被還元物質を還元した。また、本実施例では、前述の通り、キノリニウムイオン誘導体と被還元物質の混合溶液に光照射して前記キノリニウムイオン誘導体を励起した。そして、その励起種(電荷分離状態)から前記被還元物質への電子移動により前記被還元物質を還元した。したがって、本実施例は、本発明の還元方法の実施例でもある。
<実施例7;酸化剤および酸化方法>
実施例5のキノリニウムイオン誘導体を用いて被酸化物質を酸化した。すなわち、下記スキーム3に従い、下記式(XX)で表される化合物(以下、(BNA)2と呼ぶことがある)を、下記式(XXX)で表される化合物(以下、BNA+と呼ぶことがある)に酸化分解した。具体的には以下の通りである。
Figure 2008029523
すなわち、まず、前記の通り合成した2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン(キノリニウムイオン誘導体5)の過塩素酸塩と(BNA)2を、ともに脱酸素アセトニトリル中に溶解させ、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオンの混合溶液とした。この混合溶液の濃度は、2-フェニル-4-(1-ナフチル)キノリニウムイオン濃度が0.13mMであり、(BNA)2濃度が0.070mM(7.0×10-5M)となるようにした。次に、前記混合溶液にキセノンランプを298K(25℃)で照射して、照射後60マイクロ秒後における吸光度(過渡吸収スペクトル)を測定した。その結果、420nmと510nmに、BMA+由来と考えられる吸収が生成していたことから、(BNA)2が酸化分解されてBNA+となっていることが確認された。
さらに、実施例1〜4のキノリニウムイオン誘導体についても同様の測定を行い、上記と同様の現象を確認した。
このように、本実施例では、実施例1〜5のキノリニウムイオン誘導体を本発明の酸化剤に用い、被酸化物質を酸化した。また、本実施例では、前述の通り、キノリニウムイオン誘導体と被酸化物質の混合溶液に光照射して前記キノリニウムイオン誘導体を励起した。そして、前記被酸化物質から前記励起種(電荷分離状態)への電子移動により前記被酸化物質を還元した。したがって、本実施例は、本発明の酸化方法の実施例でもある。
以上説明した通り、本発明によれば、長寿命および高酸化力のみならず、高還元力をも併せ持つ電荷分離状態が得られる電子供与体・受容体連結分子およびその製造方法を提供することができる。本発明の製品すなわち本発明の光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、および有機EL素子は、前記のような電荷分離状態の生成により、その優れた機能を発揮し得る。また、本発明の還元方法および酸化方法は、高還元力を必要とする被還元物質あるいは高酸化力を必要とする被酸化物質にも適用可能であり、かつ、簡便に行うことができる。さらに、本発明の化合物は、前記各用途に限定されず、あらゆる用途に使用可能である。

Claims (18)

  1. 下記式(I)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
    Figure 2008029523
    前記式(I)中、
    R1は、水素原子、アルキル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である。
    Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
    ただし、R1がエチル基であり、Ar1およびAr3がフェニル基であり、かつ、Ar2が水素原子、メチル基またはフェニル基である場合を除く。
  2. 前記式(I)中、R1が、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にカルボキシル基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミノ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖である請求の範囲1記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  3. 前記式(I)中、Ar1〜Ar3が、それぞれ、水素原子、アルキル基、または芳香環であり、前記芳香環は環上にさらに1または複数の置換基を有していても良く、前記置換基は複数の場合は同一でも異なっていても良い、請求の範囲1記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  4. Ar1〜Ar3において、前記アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である請求の範囲3記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  5. Ar1〜Ar3において、前記芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環またはピレン環である請求の範囲3記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  6. Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルである請求の範囲3記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  7. Ar1〜Ar3において、前記芳香環上の置換基が、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、第1級〜第3級アミン、カルボン酸、またはカルボン酸エステルである請求の範囲3記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。
  8. 下記式1〜5のいずれかで表される請求の範囲1記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩。

    Figure 2008029523
  9. 下記式(II)で表されるキノリン誘導体と下記式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含む、請求の範囲1記載のキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩の製造方法。

    Figure 2008029523
    前記式(II)中、Ar1〜Ar3は、前記式(I)と同じである。
    前記式(III)中、R1は、前記式(I)と同じであり、Qは電子吸引基である。
  10. 下記式(IV)で表されるハロゲン化キノリンと下記式(V)で表されるボロン酸エステルを反応させて前記式(II)で表されるキノリン誘導体を製造する工程を含む、請求の範囲9記載の製造方法。
    Figure 2008029523
    前記式(IV)中、
    X1は、ピリジン環上のハロゲン基であり、1つでも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
    前記式(V)中、
    R2およびR3は、水素原子または炭化水素基であり、R2とR3は一体となっていても良い。
    Armのmは1〜3のいずれかの整数である。
    ボロン酸エステル(V)は単一でも複数種類でも良い。
  11. 下記式(VI)で表される1-アシル-2-アミノベンゼンと下記式(VII)で表されるケトンを反応させて前記式(II)で表されるキノリン誘導体を製造する工程を含む、請求の範囲9記載の塩の製造方法。
    Figure 2008029523
    前記式(VI)中、Ar1は、前記式(II)と同じである。
    前記式(VII)中、Ar2およびAr3は、前記式(II)と同じである。
  12. 下記式(VIII)で表される化合物と、下記式(IX)で表されるハロゲン化物を反応させて前記式(VI)で表される化合物を製造する工程をさらに含む、請求の範囲11記載の製造方法。
    Figure 2008029523
    前記式(VIII)中、R4およびR5は、それぞれ水素原子またはアルキル基であり、同一でも異なっていても良い。
    前記式(IX)中、Ar1は前記式(VI)と同じであり、X2はハロゲンである。
  13. 下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を含み、光触媒、光増感剤、色素、酸化剤、還元剤、電池、色素増感型太陽電池、または有機EL素子として用いられる製品。

    Figure 2008029523
    前記式(I’)中、
    R100は、水素原子または任意の置換基である。
    Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
  14. 前記式(I’)中、R100が、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である請求の範囲13記載の製品。
  15. 下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を用いて被還元物質を還元する方法であり、
    下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、
    前記励起種から前記被還元物質に電子を移動させて前記被還元物質を還元する工程と、
    を含む還元方法。

    Figure 2008029523
    前記式(I’)中、
    R100は、水素原子または任意の置換基である。
    Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
  16. 前記式(I’)中、R100が、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である請求の範囲15記載の還元方法。
  17. 下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を用いて被酸化物質を酸化する方法であり、
    下記式(I’)で表されるキノリニウムイオン誘導体、その立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの塩を光照射により励起して電子移動状態(電荷分離状態)の励起種を生成させる工程と、
    前記被酸化物質から前記励起種に電子を移動させて前記被酸化物質を酸化する工程と、
    を含む酸化方法。

    Figure 2008029523
    前記式(I’)中、
    R100は、水素原子または任意の置換基である。
    Ar1〜Ar3は、それぞれ水素原子または電子供与基であり、同一でも異なっていても良く、Ar1〜Ar3の少なくとも一つは電子供与基である。
  18. 前記式(I’)中、R100が、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシル基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖である請求の範囲17記載の酸化方法。
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