100・・・確率密度関数分離装置、110・・・領域変換部、120・・・標準偏差算出部、130・・・ランダム成分算出部、132・・・周波数領域算出部、134・・・複素数列算出部、136・・・フーリエ逆変換部、138・・・時間領域算出部、140・・・ピークツゥピーク値検出部、150・・・確定成分算出部、152・・・トータルジッタ算出部、154・・・判定部、160・・・合成部、170・・・比較部、200・・・ノイズ分離装置、202・・・増幅器、204・・・レベル比較部、206・・・コンパレータ、208・・・コンパレータ、210・・・サンプリング部、212・・・可変遅延回路、214・・・可変遅延回路、216・・・タイミング比較部、218・・・フリップフロップ、220・・・補正部、222・・・フリップフロップ、224・・・タイミング発生部、226・・・エンコーダ、228・・・メモリ、230・・・タイミング発生器、232・・・確率密度関数算出部、300・・・試験装置、310・・・判定部、400・・・被試験デバイス、500・・・ビット誤り率測定装置、502・・・可変電圧源、504・・・レベル比較器、510・・・期待値生成部、512・・・サンプリング部、514・・・期待値比較部、506・・・タイミング発生部、508・・・可変遅延回路、516・・・カウンタ、518・・・トリガカウンタ、520・・・確率密度関数算出部、522・・・オフセット部、524・・・増幅器、526・・・サンプリング部、528・・・比較計数部、530・・・可変遅延回路、532・・・プロセッサ、534・・・フリップフロップ、536・・・スイッチ部、538・・・フリップフロップ、548・・・周波数測定部、546・・・制御部、540・・・確率密度関数算出部、542・・・確率密度関数分離装置、544・・・可変遅延回路、550・・・セレクタ、552・・・ベース遅延、554・・・可変遅延回路、556・・・フリップフロップ、558・・・カウンタ、560・・・周波数カウンタ、562・・・確率密度関数算出部、600・・・電子デバイス、610・・・動作回路、612・・・位相比較器、614・・・チャージポンプ、616・・・電圧制御発振器、618・・・分周器、700・・・測定回路、800・・・伝達関数測定装置、820・・・伝達関数算出部、810・・・信号発生部、830・・・確率密度関数算出部、1900・・・コンピュータ、2082・・・ホスト・コントローラ、2000・・・CPU、2020・・・RAM、2075・・・グラフィック・コントローラ、2080・・・表示装置、2084・・・入出力コントローラ、2030・・・通信インターフェース、2040・・・ハードディスクドライブ、2060・・・CD−ROMドライブ、2010・・・ROM、2050・・・フレキシブルディスク・ドライブ、2070・・・入出力チップ、2090・・・フレキシブルディスク、2095・・・CD−ROM
以下、発明の実施の形態を通じて本発明の一つの側面を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態に係る確率密度関数分離装置100の構成の一例を示す図である。確率密度関数分離装置100は、与えられる確率密度関数から、所定の成分を分離する装置であって、領域変換部110、標準偏差算出部120、ランダム成分算出部130、ピークツゥピーク値検出部140、及び確定成分算出部150を備える。
本例における確率密度関数分離装置100は、与えられる確率密度関数(以下、入力PDFを称する)のランダム成分及び確定成分を分離する。また、確率密度関数分離装置100は、入力PDFから、ランダム成分及び確定成分の一方を分離してもよい。この場合、確率密度関数分離装置100は、標準偏差算出部120とランダム成分算出部130、又はピークツゥピーク値検出部140と確定成分算出部150のいずれかの組み合わせを有してよい。
領域変換部110は、入力PDFが与えられ、入力PDFを周波数領域のスペクトルに変換する。例えば入力PDFは、所定の信号について、エッジが存在する確率をそれぞれのタイミング毎に示す関数であってよい。この場合、確率密度関数分離装置100は、当該信号に含まれるランダムジッタ成分及び確定ジッタ成分を分離する。
尚、入力PDFは、時間軸の関数とは限られない。領域変換部110は、所定の変数の入力PDFを受け取った場合、当該変数を時間の変数とみなし、入力PDFの周波数領域のスペクトルを生成してよい。即ち、本発明は、時間軸の関数でない入力PDFに対する所定の成分を分離する装置、方法等を含む。
また、領域変換部110は、入力PDFをフーリエ変換することにより周波数領域のスペクトルを算出してよい。また、入力PDFはデジタルデータであってよく、また領域変換部110は、アナログ信号で与えられる入力PDFをデジタル信号に変換する手段を有してもよい。
標準偏差算出部120は、入力PDFに含まれるランダム成分の標準偏差を、領域変換部110が出力するスペクトルに基づいて算出する。入力PDFに含まれるランダム成分はガウス分布に従うので、標準偏差算出部120は、当該ガウス分布の標準偏差を算出する。具体的な算出方法は、図2から図7、および、図17から図19において後述する。
ランダム成分算出部130は、標準偏差算出部120が算出した標準偏差に基づいて、ランダム成分の確率密度関数を算出する。例えば、図2から図7において後述するように、本例における確率密度関数分離装置100によれば、入力PDFに含まれるランダム成分(ガウス分布)を、標準偏差に基づいて一意に定めることができる。
ランダム成分算出部130は、標準偏差に基づくガウス分布を出力してよく、また当該標準偏差を出力してもよい。また、ランダム成分算出部130は、時間領域における当該ガウス分布又は当該標準偏差を出力してよい。
ピークツゥピーク値検出部140は、入力PDFのピークツゥピーク値を、領域変換部110が出力するスペクトルに基づいて検出する。具体的な算出方法は、図2から図7において後述する。
確定成分算出部150は、ピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値に基づいて、入力PDFの確定成分を算出する。具体的な算出方法は、図2から図7において後述する。確定成分算出部150は、時間領域における確定成分の確率密度関数を出力してよく、また当該ピークツゥピーク値を出力してもよい。
図2は、入力PDFの波形の一例を示す図である。本例において入力PDFは、確定成分としてサイン波の確率密度関数を含む。但し、入力PDFに含まれる確定成分は、サイン波には限定されない。確定成分は、一様分布の確率密度関数、三角形triangular分布、デュアルディラックモデルの確率密度関数、その他予め定められた関数により規定される波形であってよい。また入力PDFに含まれるランダム成分の確率密度関数はガウス分布に従う。また、確定成分は、一様分布、サイン波分布、三角形分布、デュアルディラック分布を組み合わせたものでもよい。例えば確定成分は下式で示されてよい。
d1(t)−α×d2(β×t)
ここで、α、βは任意に設定される係数、d1(t)、d2(t)は、上述したいずれかの分布を示す関数である。
また、確定成分は、その確率密度関数のピーク間隔D(p−p)により定められる。例えば、確定成分がサイン波である場合、その確率密度関数にはサイン波の振幅に応じた位置でピークがあらわれる。また、確定成分が方形波である場合、その確率密度関数には、方形波の振幅に応じた位置でピークがあらわれる。また、確定成分の確率密度関数がデュアルディラックモデルであらわされる場合、確定成分は、二つのデルタ関数の間隔D(p−p)により定義される。また、確定成分が三角形分布である場合、その確率密度関数には、三角形の振幅に応じた位置でピークがあらわれる。
確定成分とランダム成分とを合成した合成成分(入力PDF)は、図2に示すように、確定成分の確率密度関数と、ランダム成分の確率密度関数との畳み込み積分により与えられる。このため、合成成分のピーク間隔D(δδ)は、確定成分のピーク間隔D(p−p)より小さくなる。従来の曲線適合法は、確定成分を決定するピーク間隔として、D(δδ)を検出している。しかし、上述したように、D(δδ)は、真値であるD(p−p)より小さい値となるので、分離した確定成分に誤差が生じてしまう。
また、従来の曲線適合法は、図2の下段において実線で示される左右両側のピークのそれぞれを、ガウス分布で近似する。そして、近似した左右両側のガウス分布の標準偏差(σleft、σright)の二乗和を開平することにより、ランダム成分の標準偏差σを算出する。しかし、図2に示すようにσleft、σrightは、真値であるσtrueより大きい。このため、算出される標準偏差σは、真値であるσtrueより大きくなり、誤差が生じてしまう。
図3は、ランダム成分の確率密度関数の一例を示す図である。図3の左の波形は時間領域のランダム成分の確率密度関数を示し、図3の右の波形は周波数領域のランダム成分の確率密度関数を示す。時間領域におけるランダム成分p(t)はガウス分布であり、次式で示される。
式(1)
ここで、σはガウス分布の標準偏差を示し、uはガウス分布がピークを示す時間を示す。
そして、時間領域のランダム成分p(t)をフーリエ変換した、周波数領域のランダム成分P(f)は、次式で示される。
式(2)
式(2)に示されるように、ガウス分布をフーリエ変換したものも、またガウス分布を示す。このとき、周波数領域のガウス分布は、ゼロ周波数においてピークを有する。
図4Aは、確定成分の確率密度関数の一例を示す図である。図4Aの左の波形は、時間領域の確定成分の確率密度関数を示し、図4Aの右の波形は、周波数領域の確定成分の確率密度関数を示す。また、時間領域の確定成分の確率密度関数のピーク間隔を2T0とする。
係る時間領域の波形をフーリエ変換したスペクトルには、1/(2T0)に所定の乗算係数αを乗じた周波数に、第1ナルがあらわれる。即ち、周波数領域のスペクトルの第1ナル周波数を検出することにより、確定成分を定義するピーク間隔2T0を求めることができる。尚、乗算係数αは、確率密度関数に含まれる確定成分の分布の種類に応じて定めることができる。
図4Bは、一様分布の確定成分の確率密度関数の一例を示す図である。また、図4Cは、サイン波分布の確定成分の確率密度関数の一例を示す図である。また、図4Dは、デュアルディラック分布の確定成分の確率密度関数の一例を示す図である。また、図4Eは、三角形分布の確定成分の確率密度関数の一例を示す図である。
図4B、図4C、図4D、及び図4Eの左の波形は、時間領域の確定成分の確率密度関数を示し、図4B、図4C、図4D、及び図4Eの右の波形は、周波数領域の確定成分の確率密度関数を示す。また、時間領域の確定成分の確率密度関数のピーク間隔を2T0とする。
図4Bに示すように、一様分布の確定成分の確率密度関数をフーリエ変換したスペクトルの第1ナル周波数は、ほぼ1/2T0で与えられる。即ち、当該第1ナル周波数の逆数に、乗算係数α=1を乗算することにより、ピーク間隔2T0を算出することができる。
また、図4Cに示すように、サイン波分布の確定成分の確率密度関数をフーリエ変換したスペクトルの第1ナル周波数は、ほぼ0.765/2T0で与えられる。即ち、当該第1ナル周波数の逆数に、乗算係数α=0.765を乗算することにより、ピーク間隔2T0を算出することができる。
また、図4Dに示すように、デュアルディラック分布の確定成分の確率密度関数をフーリエ変換したスペクトルの第1ナル周波数は、ほぼ0.500/2T0で与えられる。即ち、当該第1ナル周波数の逆数に、乗算係数α=0.500を乗算することにより、ピーク間隔2T0を算出することができる。
更に、図4Eに示すように、三角形分布の確定成分の確率密度関数をフーリエ変換したスペクトルの第1ナル周波数は、ほぼ2.000/2T0で与えられる。即ち、当該第1ナル周波数の逆数に、乗算係数α=2.000を乗算することにより、ピーク間隔2T0を算出することができる。
図5は、確定成分とランダム成分とを合成した確率密度関数のスペクトルの一例を示す図である。時間領域において、確定成分の確率密度関数と、ランダム成分の確率密度関数とを合成(畳み込み積分)したものが、入力PDFとなる。また、時間領域における畳み込み積分は、周波数領域におけるスペクトルの乗算となる。即ち、入力PDFのスペクトルは、確定成分の確率密度関数のスペクトルと、ランダム成分の確率密度関数のスペクトルとの積で示される。
図5では、確定成分を破線で示し、ランダム成分を実線のガウス曲線で示す。確定成分にランダム成分を乗算した場合、確定成分のそれぞれのピークスペクトルは、ガウス曲線のロスに比例して減衰される。このため、入力PDF、すなわち合成成分のスペクトルの所定の周波数のレベルを検出することにより、周波数領域においてランダム成分を与えるガウス曲線を求めることができる。
標準偏差算出部120は、入力PDFのスペクトルの所定の周波数のレベルに基づいて、ガウス曲線の標準偏差を算出してよい。ランダム成分算出部130は、図5に示すように、周波数領域におけるガウス曲線を算出してよい。このとき、図3において説明したように、周波数領域のガウス曲線はゼロ周波数が基準となる。このため、ランダム成分算出部130は、標準偏差算出部120が算出した標準偏差に基づいて、当該ガウス曲線を簡単に算出することができる。
また、図4において説明したように、確定成分を定義するD(p−p)=2T0は、確定成分のスペクトルの第1ナル周波数から求めることができる。確定成分のスペクトルのピークツゥピーク値は、ガウス曲線を乗算した場合にも保存されるので、入力PDFのスペクトルの第1ナル周波数から、D(p−p)の値を算出することができる。
ピークツゥピーク値検出部140は、入力PDFのスペクトルの第1ナル周波数からピークツゥピーク値を検出する。上述したように、ピークツゥピーク値検出部140は、与えられる確率密度関数のスペクトルの第1ナル周波数に、当該確率密度関数に含まれる確定成分の分布の種類に応じた乗算係数αを乗じ、確定成分の確率密度関数のピークツゥピーク値を算出してよい。
また、ピークツゥピーク値検出部140は、確定成分の分布の種類毎の乗算係数を予め格納し、通知される確定成分の分布の種類に対応する乗算係数を用いて、ピークツゥピーク値を算出してよい。例えばピークツゥピーク値検出部140は、サイン波、一様分布、三角形triangular分布、デュアルディラックモデル等のそれぞれの確定成分の分布に対する乗算係数αを予め格納してよい。それぞれの確定成分に対する乗算係数αは、例えばピークツゥピーク値が既知の確定成分の確率密度関数をフーリエ変換し、スペクトルの第1ナル周波数を検出することにより予め求めることができる。
また、ピークツゥピーク値検出部140は、予め与えられるそれぞれの乗算係数αを用いた場合のそれぞれのピークツゥピーク値を算出してよい。確定成分算出部150は、ピークツゥピーク値検出部140が算出したそれぞれのピークツゥピーク値から、最も確からしい値を選択してよい。例えば確定成分算出部150は、それぞれのピークツゥピーク値に基づいて、確定成分の確率密度関数をそれぞれ算出して、与えられる確率密度関数と比較することにより、ピークツゥピーク値を選択してよい。
また確定成分算出部150は、それぞれのピークツゥピーク値に対応する確率密度関数、及びランダム成分算出部130が算出したランダム成分の確率密度関数を合成した合成確率密度関数と、与えられる確率密度関数とを比較することにより、ピークツゥピーク値を選択してよい。
スペクトルのピークに比べ、スペクトルのナルは急峻に値が変化するので、スペクトルのピークの周波数に基づいてピークツゥピーク値を算出する場合に比べ、より精度よくピークツゥピーク値を検出することができる。また、周波数の絶対値が大きくなるほど、ナル周波数は、ピークツゥピーク値に対する誤差が大きくなる。このため、周波数の絶対値が最も小さい第1ナル周波数に基づいてピークツゥピーク値を検出することにより、より精度よくピークツゥピーク値を検出することができる。
但し、ピークツゥピーク値を検出する場合に、周波数の絶対値が最も小さいナル周波数に限定する必要はない。例えば、周波数の絶対値が小さい方から所定数選択した少なくとも一つのナル周波数に基づいて、ピークツゥピーク値を検出してよい。
また、乗算係数αは、図4B、図4C、及び図4Dにおいて説明した値には限定されない。ピークツゥピーク値検出部140は、当該値と実質的に等しい乗算係数αを適宜用いることができる。また、ピークツゥピーク値検出部140は、確率密度関数のスペクトルを周波数で微分し、微分結果に基づいて第1ナル周波数を検出してもよい。つまり、ナル周波数とは、スペクトルにおいて明確に検出されうるナル周波数に限定されない。例えば、図6B、図7に示すように、スペクトルg(f)において明確に検出することが困難であっても、2階微分スペクトルg''(f)から検出される周波数f1を、ナル周波数として扱ってよい。
図6Aは、ランダム成分の確率密度関数g(t)のスペクトルG(ω)を周波数で2階微分した結果dB(2)(ω)の一例を示す。なお、図6Aの確率密度関数g(t)は、確定成分を含まない。2階微分スペクトルdB(2)(ω)は一定であり、ピークをもたない。したがって、ランダム成分および確定成分を含む確率密度関数の2階微分スペクトルのピークは、確定成分の2階微分スペクトルのピーク(即ち、確定成分のスペクトルの第1ナル周波数)に対応する。
図6Bは、ランダム成分および確定成分を含む確率密度関数のスペクトルを、周波数で微分した結果の一例を示す図である。本例において、スペクトルの第1ナル周波数をf1とする。図4Aに示したように、与えられる確率密度関数にノイズが少ない場合、スペクトルの第1ナル周波数は精確に検出することができる。これに対し、与えられる確率密度関数にノイズが含まれる場合、図6Bのスペクトルg(f)に示すように、検出されるべき周波数f1において、第1ナルを検出することができないことがある。
この場合、図6Bに示すように、当該スペクトルを周波数で微分することにより、第1ナル周波数を精度よく検出することができる。図6Bに示すように、当該スペクトルg(f)の2階微分スペクトルg''(f)のピークが、スペクトルg(f)のナルに対応する。このため、ピークツゥピーク値検出部140は、確率密度関数のスペクトルを2階微分し、微分波形のピーク周波数に基づいて、第1ナル周波数を検出してよい。
図7は、確率密度関数のスペクトルを周波数で微分した結果の他の例を示す。本例では、図4Aに示したような、ノイズの無い確率密度関数のスペクトルを微分した結果を示す。
スペクトルのナルは、スペクトルの傾きが負から正に変化する点であるので、2階微分スペクトルg''(f)のピークを検出することにより、スペクトルのナルを検出することができる。
このような方法により、図6Bに示したように、ノイズが大きい場合であっても、より精確に第1ナル周波数を検出することができる。ピークツゥピーク値検出部140は、2階微分スペクトルg''(f)のピークのうち、周波数の絶対値が最も小さい周波数を、第1ナル周波数として検出してよい。
図8は、D(p−p)の値が異なる確定成分のスペクトルの一例を示す図である。図8の左の波形は、D(p−p)=2T0の場合のスペクトルを示し、図8の右の波形は、D(p−p)=T0の場合のスペクトルを示す。D(p−p)の値が変化した場合であっても、ゼロ周波数のメインロブのレベルと、それぞれのサイドロブのピーク・レベルとの比は、変化しない。即ち、確定成分の確率密度関数のそれぞれのスペクトルの相対レベルは、確定成分がサイン波、一様分布、三角形triangular分布、デュアルディラックモデル等のいずれであるかにより一意的に定まる。
このため、確定成分のスペクトルと、入力PDFのスペクトルとにおいて、対応するピーク・レベルの比を検出することにより、ランダム成分のスペクトルを求めることができる。ここで、当該レベル比は、ランダム成分による確定成分のスペクトルの減衰によることに注意されたい。
図9は、ランダム成分の標準偏差を算出する方法の例を説明する図である。ランダム成分を示す周波数領域のガウス曲線は、式(2)で与えられる。式(2)について底がeの対数をとると、式(3)のようにfの二次関数を得る。
式(3)
ここで、図9に示すように、入力PDFのスペクトル(合成成分)の第1のピークの周波数をf1、レベルをA(f1)とし、第2のピークの周波数をf2、レベルをA(f2)とする。このとき、第1のピーク及び第2のピークのレベル比は、式(4)であらわされる。
式(4)
このため、入力PDFのスペクトルの2つの周波数成分のレベル比に基づいて、標準偏差を算出することができる。標準偏差算出部120は、入力PDFのスペクトルの第1の周波数成分と、第2の周波数成分とのレベル比に基づいて、標準偏差を算出してよい。式(4)は、デュアルディラックに対して精確な測定を与える。また、他の確定成分に対しては近似解を与える。
また、当該2つの周波数成分は、入力PDFのスペクトルのピークであることが好ましい。標準偏差算出部120は、入力PDFのいずれか2つのピークのレベル比に基づいて、標準偏差を算出してよい。
入力PDFのスペクトルのピークのレベルは、確定成分のスペクトルのピークを、ランダム成分のスペクトルに応じて減衰したものである。このため、確定成分のスペクトルのそれぞれのピークのレベルが一定である場合は、式(4)に基づいて標準偏差を精度よく算出することができる。
また、確定成分のスペクトルのそれぞれのピークのレベルが一定でない場合、標準偏差算出部120は、確定成分のスペクトルのピークのレベルに更に基づいて、標準偏差を算出してよい。即ち、標準偏差算出部120は、入力PDFのスペクトルの所定の周波数成分と、確定成分の確率密度関数を周波数領域に変換したスペクトルにおいて対応する周波数成分とのレベル比に基づいて、標準偏差を算出してよい。この場合、標準偏差算出部120は、式(5)に基づいて標準偏差を算出してよい。但し、B(f1)は、確定成分のスペクトルの第1のピークのレベル、B(f2)は、確定成分のスペクトルの第2のレベルである。また、周波数f2は、スペクトルのメインロブに含まれる周波数でよく、サイドロブに含まれる周波数でもよい。
式(5)
尚、標準偏差は、式(5)と等価な手順により求めることができる。例えば、式(5)では、第2の周波数成分における入力PDF及び確定成分のスペクトルのレベル比A(f2)/B(f2)を、第1の周波数成分におけるレベル比A(f1)/B(f1)で除算した値に基づいて、標準偏差を算出している。同様に、入力PDFにおける第2の周波数成分及び第1の周波数成分のレベル比A(f2)/A(f1)を、確定成分における第2の周波数成分及び第1の周波数成分のレベル比B(f2)/B(f1)で除算した値に基づいて、標準偏差を求めてもよい。
更に、図3および図4Aから図4Eに示されるように、ランダム成分の確率密度関数のスペクトルおよび確定成分の確率密度関数のスペクトルの両方とも、dc(f=0)において最大値となる。したがって、f1=dcにおけるスペクトルの値を用いて、それぞれの周波数成分のレベルを除算すると、A(f1)=B(f1)=1.0となり、A(f2)/A(f1)=A(f2)、B(f2)/B(f1)=B(f2)となる。このため、一つの周波数f2の成分のレベルを用いて、ランダム成分の標準偏差を算出することができる。
この場合、確定成分の確率密度関数のスペクトルにおける、第2の周波数成分のレベルと第1の周波数成分のレベルとの比は、予め与えられてよい。標準偏差算出部120は、当該レベル比を予めメモリに格納してよい。当該レベル比は、入力PDFに含まれる確定成分の分布の種類に応じて、予め決定することができる。特に、確定成分がデュアルディラックの関数で与えられる場合、当該レベル比は1.0である。
また、確定成分のスペクトルは、上述したD(p−p)に基づいて求めることができる。確定成分は、上述したようにD(p−p)の値と、確定成分がサイン波、一様分布、三角形triangular分布、デュアルディラック等のいずれの関数で与えられるかにより定まる。
確定成分算出部150は、確定成分を定めるサイン波、一様分布、三角形triangular分布、デュアルディラック等に対応する関数が予め与えられており、当該関数にピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値を適用することにより、確定成分を算出してよい。この場合、ランダム成分算出部130は、確定成分算出部150が算出した確定成分のスペクトルに基づいて、ランダム成分を算出する。
また、式(5)においてf1=0とすると、f1=0における入力PDFのスペクトルのレベルと、確定成分におけるスペクトルのレベルとは等しいので、式(5)は、式(6)のように変形される。周波数f2は、スペクトルのメインロブに含まれる周波数でよく、サイドロブに含まれる周波数でもよい。
式(6)
標準偏差算出部120は、式(6)に基づいて標準偏差を算出してもよい。即ち、標準偏差算出部120は、入力PDF及び確定成分の確率密度関数のスペクトルにおいて、対応するいずれかのピークのレベル比に基づいて、標準偏差を算出してもよい。この場合、より簡易な測定で、かつ精度よく標準偏差を算出することができる。
また、式(5)及び式(6)に基づいて算出される標準偏差は、周波数領域におけるガウス分布の標準偏差である。標準偏差算出部120は、周波数領域の標準偏差σfに基づいて、時間領域の標準偏差σtを算出してよい。σfとσtとの関係は式(7)によりあらわされる。
式(7)
これにより、ランダム成分の時間領域における確率密度関数を算出することができる。
σfを用いて式(2)から周波数領域のガウス曲線を求めることができる。この周波数領域のガウス曲線をフーリエ変換することにより、式(1)の時間領域のガウス曲線を直接もとめてもよい。すなわち、ランダム成分の時間領域における確率密度関数は、周波数領域のガウス曲線から直接求めることができる。
図10は、図9に関連して説明した確率密度関数分離装置100の測定結果と、図2において説明した従来の曲線適合法の測定結果の一例を示す。本例においては、測定対象の確率密度関数として、確定成分のピークツゥピーク値が50psであり、ランダム成分が4.02psである分布を用いた。また、測定対象をサンプリングするサンプリングタイミングにエラーが生じている場合、エラーが生じていない場合のそれぞれについて測定を行った。図10に示すように、確率密度関数分離装置100は、いずれの場合においても従来の曲線適合法よりも誤差の小さい測定結果を得ることができた。
図11は、ランダム成分の標準偏差を算出する方法の一例を説明する図である。図11において横軸は周波数を示しており、縦軸は確率密度関数のスペクトルのレベルを示す。また、波線で示されるスペクトルB(f)は、確率密度関数に含まれる確定成分についての理想的なスペクトルを示しており、実線で示されるスペクトルA(f)は、与えられる確率密度関数のスペクトルを示す。
図9に関連した方法では、サイドロブのレベルに基づいて、ランダム成分の標準偏差を算出した。但し、測定誤差等により、与えられる(又は測定される)確率密度関数には誤差が生じている。サイドロブのレベルは、メインロブより小さいので、当該誤差の影響は、サイドロブの方がより顕著となる。このため、サイドロブのレベルに基づいてランダム成分の標準偏差を算出すると、標準偏差の誤差が比較的に大きくなる場合がある。ここで、スペクトルのメインロブとは、例えば0Hz又は信号のキャリア周波数の周波数成分を含むロブであり、サイドロブとは、メインロブ以外のロブであってよい。
これに対し、本例の確率密度関数分離装置100は、確率密度関数のスペクトルのメインロブにおける所定の周波数(fm)の成分のレベル(A(fm))に基づいて、ランダム成分の標準偏差を算出する。例えば、標準偏差算出部120は、与えられる確率密度関数のスペクトル(A(f))のメインロブにおける所定の周波数(fm)の成分のレベル(A(fm))と、確率密度関数の確定成分の理想的なスペクトル(B(f))のメインロブにおける、当該周波数(fm)の成分のレベル(B(fm))とに基づいて、ランダム成分の標準偏差を算出してよい。
ここで、確定成分の理想的なスペクトルは、確率密度関数に含まれる確定成分の種類、及び第1ナル周波数(fα)から求めることができる。例えば、図4に関連して説明したように、第1ナル周波数(fα)及び確定成分の種類から、確定成分のピークツゥピーク値が算出できる。
そして、当該ピークツゥピーク値を有する、当該種類の確定成分の確率密度分布は、図4に示すように一意に定まるので、当該確率密度分布をフーリエ変換することにより、確定成分の理想的なスペクトルを求めることができる。本例の確率密度関数分離装置100においては、確定成分算出部150が、確定成分の理想的なスペクトルを算出して、標準偏差算出部120に通知してよい。
標準偏差算出部120は、上述したように、各スペクトルのレベルA(fm)、B(fm)から、ランダム成分の標準偏差を算出する。より具体的には、例えば式(6)と同様に、下式に基づいて標準偏差σを算出してよい。
また、スペクトルのレベルを検出すべき所定の周波数fmは、使用者等により予め定められてよい。また、標準偏差算出部120は、確定成分の理想的なスペクトルのメインロブにおける、周波数fmの成分の減衰量が、予め定められた値より小さくなる範囲の周波数を、当該所定の周波数fmとして用いてよい。当該周波数範囲は、使用者等により与えられてよい。
図12は、サイン波及び一様分布の確定成分の理想的なスペクトルの一例を示す図である。図12では、サイン波の確定成分のスペクトルを実線で示しており、一様分布の確定成分のスペクトルを破線で示している。また、図12では、各スペクトルのメインロブを示す。
図12に示すように、同一の第1ナル周波数に対応する、異なる種類の確定成分のスペクトルのメインロブの波形は異なる。このため、確率密度関数に含まれる確定成分の種類が不明である場合、算出する標準偏差の値に、当該波形の違いに応じた誤差が生じる可能性がある。
上述したように、標準偏差算出部120は、確定成分の理想的なスペクトルのメインロブにおける、周波数fmの成分のレベル差(Δ(fm))が、予め定められた値より小さくなる範囲の周波数を、当該所定の周波数fmとして用いてよい。図12に示すように、当該レベル差(Δ(fm))は、周波数に応じて増大するので、標準偏差算出部120は、当該レベル差(Δ(fm))が、予め定められた値と等しくなる周波数fmaxを上限として、所定の周波数fmを選択してよい。
それぞれの確定成分の理想的なスペクトルは、検出した第1ナル周波数fαに基づいて、確定成分算出部150が算出して、標準偏差算出部120に通知してよい。また、当該予め定められた値は、要求される測定精度(許容される測定誤差等)に応じて定められてよい。
また図11に示すように、所定の周波数fmを、0Hzの近傍に設定した場合、測定すべきスペクトルA(f)のレベルと、理想的なスペクトルB(f)のレベルとの差が略零となってしまい、標準偏差を算出することが困難となる。このため、標準偏差算出部120は、0Hzでない予め定められた周波数fminを下限として、所定の周波数fmを選択してよい。また、標準偏差算出部120は、上述した上限周波数fmaxの略半分の周波数を、所定の周波数fmとして選択してよい。
また、異なる種類の確定成分のスペクトルは、同一の第1ナル周波数を有する場合であっても、メインロブの特性は異なる。すなわち、ある種類の確定成分のメインロブにおけるレベル変化Δ(fm)は、ほかの種類の確定成分のメインロブにおけるレベル変化Δ(fm)に比べて大きくなることがある。この点からも、本例の確率密度関数分離装置100は、より精度よく、ランダム成分の標準偏差を算出することができる。
図13は、図11及び図12に関連して説明した確率密度関数分離装置100の測定結果の一例を示す図である。図13は従来の曲線適合法(TailFit法とQ−Scale法)の測定結果を示す。
尚、本例の確率密度関数分離装置100は、確率密度関数に含まれる確定成分がサイン波であるとして測定した。図13に示すように、本例の確率密度関数分離装置100の測定値は、従来の2つの曲線適合法の測定値に比べより小さい標準偏差を示している。すなわち、本例の確率密度関数分離装置100はより真値に近い測定結果を提供できる。
図14は、図11及び図12に関連して説明した確率密度関数分離装置100のデータ依存ジッタ(Data Dependent Jitter)の測定結果を示す。本例では、7ステージの擬似ランダム系列(PRBS)発生回路を用いて、2.5Gbps、6400800ビットのデータパターンを生成した。本例の確率密度関数分離装置100は、同一の確率密度関数に対して、確定成分が一様分布であるとしてジッタを分離し、測定結果を算出した。
確率密度関数分離装置100の測定値は、従来の2つの曲線適合法の測定値に比べ、より小さい標準偏差を示している。すなわち、本例の確率密度関数分離装置100はより真値に近い測定結果を提供できる。
また、確率密度関数分離装置100は、ランダム成分(RJ)の標準偏差σの測定において、従来の2つの曲線適合法の測定値に比べ、より小さい測定値を示している。図2において説明したように、従来の曲線適合法におけるランダム成分の標準偏差の測定値は、真値より大きくなる。このため、確率密度関数分離装置100の測定結果が真値に近く、妥当であることがわかる。
また、確率密度関数分離装置100は、確定成分(DDJ)のピークツゥピーク値の測定において、従来の2つの曲線適合法の測定値に比べ、同等もしくは大きい測定値を示している。図2において説明したように、従来の曲線適合法における確定成分のピークツゥピーク値の測定値は、真値より小さくなる。このため、確率密度関数分離装置100の測定結果が真値に近く、妥当であることがわかる。
図15は、周波数領域のガウス曲線から直接ランダム成分の時間領域の確率密度関数を算出する方法の一例を示すフローチャートである。まず、周波数領域の標準偏差σfを式(2)に代入し、周波数領域のガウス曲線G(f)を取得する(S30)。このとき必要に応じて、時間領域のガウス曲線を入力PDFの平均値μのまわりに分布させるべく、時間推移則(time shifting)をもちいて、G(f)にexp(j2πμf)を乗じたものを、G(f)としてもよい。
次に、G(f)を実数部とし、虚数部をゼロとした複素数列(実際には実数列であることに注意されたい)を取得する(S32)。そして、取得した複素数列にフーリエ逆変換を施した時間領域の関数g(t)を取得する(S34)。このとき、元の信号が実数であるから、フーリエ逆変換に変えてフーリエ変換又はコサイン変換(cosine transform)を施してもよい。
次に、S34において取得したg(t)の実数部の二乗と、虚数部の二乗の和を開平し、時間領域のガウス曲線を取得する(S36)。つまり、g(t)の実数部及び虚数部の二乗和の平方根を算出することにより、時間領域のガウス曲線を取得する。このような処理により、時間領域のガウス曲線を取得することができる。
図16は、ランダム成分算出部130の構成の一例を示す図である。本例におけるランダム成分算出部130は、図15において説明した方法で、時間領域のガウス曲線を取得する。ランダム成分算出部130は、周波数領域算出部132、複素数列算出部134、フーリエ逆変換部136、及び時間領域算出部138を有する。
周波数領域算出部132は、標準偏差算出部120が算出した周波数領域のランダム成分の標準偏差に基づいて、周波数領域のガウス曲線G(f)を算出する。このとき、周波数領域算出部132は、図15において説明したS30のステップと同様の方法で、周波数領域のガウス曲線G(f)を算出してよい。
複素数列算出部134は、G(f)を実数部とし、虚数部をゼロとした複素数列を算出する。フーリエ逆変換部136は、当該複素数列をフーリエ逆変換(又はフーリエ変換)した時間領域の関数g(t)を算出する。時間領域算出部138は、時間領域の関数g(t)の実数部と虚数部との2乗和を開平し、時間領域のガウス曲線、すなわちランダム成分の時間領域における確率密度関数を取得する。
尚、図15及び図16において説明した処理は、確率密度関数に対する処理には限られない。即ち、図15及び図16において説明した処理と同様の処理を用いて、任意の周波数領域のスペクトルから、時間領域の波形を推測することができる。
この場合、図16において説明した時間領域算出部138には、被測定信号の振幅スペクトルが与えられる。そして、時間領域算出部138は、当該振幅スペクトルを時間領域の関数に変換することにより、時間領域の波形を算出する。振幅スペクトルを時間領域の関数に変換する場合、当該振幅スペクトルに対してフーリエ変換、フーリエ逆変換、コサイン変換等を適用することにより、当該時間領域の関数を求めることができる。そして、時間領域算出部138は、当該時間領域の実数部及び虚数部の二乗和を開平することにより、時間領域の波形を推測することができる。
このように、周波数領域のスペクトルから時間領域の波形を算出する算出装置は、時間領域算出部138に加え、被測定信号の振幅スペクトルを検出する周波数領域測定部を更に備えてよい。周波数領域測定部は、検出した振幅スペクトルを時間領域算出部138に供給する。このような構成により、被測定信号の振幅スペクトルのみに基づいて、被測定信号の時間領域における波形を推測することができる。
以上説明したように、本例における確率密度関数分離装置100によれば、与えられる確率密度関数のランダム成分及び確定成分を精度よく分離することができる。例えば、ランダム成分に対しては、従来の曲線適合等の近似を行うことなく、周波数領域において算出した標準偏差に基づいてランダム成分を精度よく算出することができる。また確定成分に対しては、従来のように誤差を有するD(δδ)に対して、より真値に近い値D(p−p)を検出することができる。
図17Aは、確率密度関数分離装置100の他の構成例を示す図である。本例の確率密度関数分離装置100は、ピークツゥピーク値検出部140、標準偏差算出部120、確定成分算出部150、および、ランダム成分算出部130を備える。各構成要素は、図1において同一の符号を付した構成要素と同一であってよい。
図17Bは、図17Aに示した確率密度関数分離装置100の動作の一例を示すフローチャートである。本例の確率密度関数分離装置100は、図4AからEに関連して説明したように、確率密度関数のスペクトルにおける第1ナル周波数から確定成分に対応する確率密度関数を算出する。
領域変換部110の動作は、図1に関連して説明した領域変換部110と同一である。つまり、領域変換部110は、与えられる確率密度関数を周波数領域のスペクトルに変換する(S60)。
次に、ピークツゥピーク値検出部140は、スペクトルの第1ナル周波数を検出する(S62)。例えばピークツゥピーク値検出部140は、図6Bおよび図7に関連して説明したように、スペクトルを2階微分した波形に基づいて、スペクトルの第1ナル周波数を検出してよい。
また、ピークツゥピーク値検出部140は、スペクトルの第1ナル周波数に基づいて、確定成分に対応する確率密度関数のピークツゥピーク値を算出してよい。例えばピークツゥピーク値検出部140は、図4AからDに関連して説明したように、ピークツゥピーク値を算出してよい。
次に、確定成分算出部150は、第1ナル周波数(またはピークツゥピーク値)から、確定成分に対応する確率密度関数を算出する(S64)。確定成分算出部150は、確定成分に対応する確率密度関数の周波数領域のスペクトルを算出してよい。例えば確定成分算出部150は、図5または図11において破線で示されるようなスペクトルを算出してよい。
次に、ランダム成分算出部130は、入力確率密度関数のスペクトルを、確定成分に対応する確率密度関数のスペクトルで除算して、ランダム成分に対応する確率密度関数のスペクトルを算出する(S66)。ランダム成分算出部130は、入力確率密度関数のスペクトルの絶対値(振幅スペクトル)を、確定成分に対応する確率密度関数のスペクトルの絶対値で除算してよい。例えばランダム成分算出部130は、図5または図11において実線で示される入力確率密度関数のスペクトルの絶対値を、図5または図11において破線で示されるスペクトルの絶対値で除算してよい。
このような処理により、ランダム成分および確定成分の確率密度関数をそれぞれ算出することができる。また、標準偏差算出部120は、算出したランダム成分に対応する確率密度関数のスペクトルから、ランダム成分の標準偏差を算出してよい。このとき、標準偏差算出部120は、ランダム成分に対応する確率密度関数のスペクトルを、対数軸のスペクトルに変換してよい。
また、S64およびS66の処理に代えて、標準偏差算出部120は、図11に関連して説明したように、入力確率密度関数のスペクトルのメインロブにおける所定の周波数成分のレベルから、ランダム成分の標準偏差を算出してもよい。また、ランダム成分算出部130は、ランダム成分の標準偏差から、ランダム成分に対応する確率密度関数を算出してよい。
図18Aは、図17において説明した確率密度関数分離装置100の動作を説明する図である。上述したように、領域変換部110は、確率密度関数のスペクトルD(f)R(f)を出力する。ランダム成分R(f)のスペクトルは、スペクトルD(f)R(f)を、確定成分の振幅スペクトル|D(f)|で除算することにより与えられる。
なお、スペクトルの全帯域に渡って、D(f)R(f)を|D(f)|で除算せずとも、式(5)および式(6)において説明したように、所定の周波数成分の減衰量から、ランダム成分を求めることができる。つまり、所定の周波数f2における、入力確率密度関数のスペクトルD(f)R(f)の値と、確定成分のスペクトルD(f)の値との比から、ランダム成分を求めることができる。所定の周波数f2は、入力確率密度関数のスペクトルのメインロブにおける周波数であってよく、サイドロブにおける周波数であってもよい。
図18Bは、スペクトルのメインロブにおける所定の周波数成分の減衰量を用いて、ランダム成分を算出する例を説明する図である。確率密度関数分離装置100は、図11に関連して説明したように、入力確率密度関数のスペクトルのメインロブにおける所定の周波数成分f2のレベルから、ランダム成分に対応する確率密度関数のスペクトルを算出してよい。
例えば、確定成分として小振幅のサイン波が含まれると、入力確率密度関数のスペクトルのサイドロブの誤差成分が顕著となる。確率密度関数分離装置100は、入力確率密度関数の確定成分がサイン波であり、且つサイン波のエネルギーが所定値より小さいとき、入力確率密度関数および確定成分のスペクトルのメインロブにおける、所定の周波数成分の比から、ランダム成分の標準偏差を算出してよい。例えば確率密度関数分離装置100は、確定成分として意図しないサイン波が発生しているとき、当該サイン波のエネルギーが所定値より小さい場合に、スペクトルのメインロブを用いてランダム成分の標準偏差を算出してよい。
図18Cは、スペクトルのサイドロブにおける所定の周波数成分の減衰量を用いて、ランダム成分を算出する例を説明する図である。確率密度関数分離装置100は、入力確率密度関数のスペクトルのサイドロブにおける所定の周波数成分f2のレベルから、ランダム成分に対応する確率密度関数のスペクトルを算出してよい。確率密度関数分離装置100は、入力確率密度関数に含まれる確定成分がサイン波でない場合に、入力確率密度関数および確定成分のスペクトルのサイドロブにおける、所定の周波数成分の比から、ランダム成分の標準偏差を算出してよい。また、確率密度関数分離装置100は、入力確率密度関数に含まれる確定成分がサイン波である場合において、当該サイン波のエネルギーが所定値より大きいとき、スペクトルのサイドロブを用いてランダム成分の標準偏差を算出してよい。
また、図18Aに示すように、確率密度関数のスペクトルD(f)R(f)は、周波数が高くなるに従い誤差成分が大きくなる。このため、確定成分算出部150は、算出した確定成分のスペクトルD(f)のうち、メインロブの周波数を含む予め定められた周波数範囲のスペクトルを、時間領域の関数に変換することにより、確定成分の時間領域の確率密度関数を算出してよい。また、確定成分算出部150は、算出した確定成分のスペクトルD(f)から、メインロブの近傍における所定の個数のサイドロブを抽出し、抽出したメインロブ及びサイドロブを時間領域の関数に変換してもよい。このような処理により、高周波領域における誤差の影響を低減することができる。
図19Aは、入力確率密度関数h(t)、および、入力確率密度関数のスペクトル|H(f)|の一例を示す図である。本例では、15段の擬似ランダムビットシーケンス(PRBS)を同軸ケーブルに入力して、同軸ケーブルから出力されるデータ列のジッタの確率密度関数を、入力確率密度関数h(t)として取得した。当該データ列には、同軸ケーブルの長さに応じたデータ依存ジッタDDJ(Data Dependent Jitter)が生じる。本例の同軸ケーブルの長さは5mである。
図19Bは、入力確率密度関数h(t)、および、入力確率密度関数のスペクトル|H(f)|の他の例を示す図である。本例では、図19Aにおいて説明した条件において、同軸ケーブルの長さを15mとしたときの、入力確率密度関数h(t)、および、入力確率密度関数のスペクトル|H(f)|を示す。図19Aに示した例に比べ、データ依存ジッタDDJがより顕著となっている。
また、図17に関連して説明した確率密度関数分離方法により、入力確率密度関数からランダムジッタRJおよび確定ジッタDJを分離して、トータルジッタTJを算出した。トータルジッタTJは、例えば下式で算出できる。
TJ=DJ(p−p)+12×RJ
式(8)
ただし、係数12は、ビット誤り率に応じて定まる値であり、例えば図19Dに示す表から与えられる。本例では、ビット誤り率10−9に対応する係数を用いた。
図19Cは、図17に関連して説明した確率密度関数分離方法を用いて算出したトータルジッタTJの値と、一般のビット誤り率測定器で測定したトータルジッタの値とを比較する図である。図19Cでは、トータルジッタの値を、1/Tb/f−3dBに対してプロットしている。ただし、Tbは、擬似ランダムビットシーケンスのビット時間間隔(bit interval)であり、f−3dBは、同軸ケーブルの3dB帯域幅である。
なお、今回の測定では、確率密度関数分離方法と、ビット誤り率測定器とで、測定データ数が異なる。(確率密度関数分離方法における確率密度関数の測定データ数は3×104、ビット誤り率測定器における測定データ数は109)このため、1/Tb/f−3dBが小さく、ランダムジッタが支配的な領域では、ビット誤り率測定器の測定値に対する確率密度関数分離方法の測定値の誤差が50%程度となり、1/Tb/f−3dBが大きく、確定ジッタが支配的な領域では、誤差が10%以下となった。
ランダムジッタの測定誤差は、被測定対象のビット誤り率に対応した測定データ数から確率密度関数のヒストグラムを取得することにより、低減することができる。このため、図17に関連して説明した確率密度関数分離方法を利用したトータルジッタの測定は、従来のビット誤り率測定器の測定と相関を有することが確認できた。
図19Eは、確率密度関数分離装置100の他の構成例を示す図である。本例の確率密度関数分離装置100は、図1または図17Aに示したいずれかの確率密度関数分離装置100の構成に加え、トータルジッタ算出部152および判定部154を更に備える。図19Eには、図17Aに示した確率密度関数分離装置100に、トータルジッタ算出部152および判定部154を付加した構成を示す。また、本例の確率密度関数分離装置100には、被測定信号に含まれるノイズ成分の確率密度関数が与えられる。
トータルジッタ算出部152は、確定成分算出部150(またはピークツゥピーク値検出部140)が算出したピークツゥピーク値に基づいて、被測定信号に含まれるトータルジッタの値を算出する。トータルジッタ算出部152は、式(8)に関連して説明した方法で、トータルジッタの値を算出してよい。
例えばトータルジッタ算出部152は、ランダム成分算出部130が算出したランダム成分を受け取り、当該ランダム成分と、上述したピークツゥピーク値とに基づいてトータルジッタの値を算出してよい。また、トータルジッタ算出部152は、確率密度関数に含まれるランダム成分の値が使用者等から与えられてもよい。この場合、確率密度関数分離装置100は、標準偏差算出部120およびランダム成分算出部130を備えずともよい。
判定部154は、トータルジッタ算出部152が算出したトータルジッタの値に基づいて、被測定信号の良否を判定する。例えば判定部154は、トータルジッタの値が、予め設定される範囲内であるか否かに基づいて、被測定信号の良否を判定してよい。
図20は、確率密度関数分離装置100の構成の他の例を示す図である。本例における確率密度関数分離装置100は、図1に関連して説明した確率密度関数分離装置100の構成に加え、合成部160及び比較部170を更に備える。他の構成要素は、図1において同一の符号を付して説明した構成要素と同一の機能を有する。
合成部160は、ランダム成分算出部130が算出したランダム成分の確率密度関数と、確定成分算出部150が算出した確定成分の確率密度関数とを合成(畳み込み積分)した合成確率密度関数(以下、合成PDFと称する)を生成する。
比較部170は、合成部160が出力する合成PDFと、入力PDFとを比較する。図9において説明したように、確定成分算出部150は、ピークツゥピーク値を未知数とする関数が予め与えられ、ピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値を関数に代入することにより、確定成分の確率密度関数を算出する。
このとき、当該関数は、確定成分が例えばサイン波、一様分布、三角形triangular分布、デュアルディラック等のいずれの分布であるかにより異なる。このため、ピークツゥピーク値に基づいて、確定成分の確率密度関数を算出するには、確定成分の関数がいずれであるかが判定できることが好ましい。
確定成分算出部150は、予め確定成分の関数がいずれの関数であるかが与えられてよい。また、確定成分算出部150には、確定成分の分布の種類に応じて複数の関数が予め与えられ、ピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値をそれぞれの関数に代入し、確定成分の分布のそれぞれの種類に対する確率密度関数をそれぞれ算出してもよい。
この場合、合成部160は、確定成分算出部150が出力するそれぞれの確率密度関数と、ランダム成分算出部130が出力する確率密度関数とをそれぞれ合成する。比較部160は、合成部160がそれぞれ合成した合成PDFと、入力PDFとをそれぞれ比較する。比較部170は、それぞれの合成PDFに対する比較結果に基づいて、入力PDFに含まれる確定成分を示す関数として適切な関数を選択する。例えば比較部170は、合成PDFと入力PDFとの差分が最も小さくなる関数を選択してよい。
そして、確定成分算出部150は、比較部170が選択した関数に対応する確定成分の確率密度関数を、適切な確率密度関数として出力してよい。このような処理により、確定成分がいずれの種類の分布であるかが不明であっても、予め定められた種類の分布から適切な分布を選択し、入力PDFに含まれる確定成分の確率密度関数を算出することができる。
また、ピークツゥピーク値検出部140は、予め定められた測定分解能でピークツゥピーク値を検出する。この場合、検出したピークツゥピーク値には、測定分解能に応じた誤差が含まれる。本例における確率密度関数分離装置100は、当該測定誤差を低減する処理を行うこともできる。また、確率密度関数分離装置100は、上述した確定成分を規定する関数の選択と、以下で後述する測定誤差を低減する処理との双方を行ってもよい。
例えば、確定成分算出部150は、ピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値を基準として、ピークツゥピーク値を順次変化させた場合の、それぞれのピークツゥピーク値に対応する確定成分を算出する。このとき、確定成分算出部150は、測定分解能に応じた範囲で、ピークツゥピーク値を順次変化させてよい。
例えば、測定分解能が2aであり、ピークツゥピーク値検出部140が検出したピークツゥピーク値が2T0である場合、確定成分算出部150は、ピークツゥピーク値を2T0−a〜2T0+aの範囲で順次変化させてよい。このとき、ピークツゥピーク値を変動させる分解能は、測定分解能より十分小さいことが好ましい。
合成部160は、確定成分算出部150が順次出力するそれぞれの確定成分の確率密度関数と、ランダム成分の確率密度関数とを順次合成した合成PDFを順次生成する。比較部170は、それぞれの合成PDFと、入力PDFとを比較し、比較結果に基づいて、いずれかのピークツゥピーク値を、最適値として選択する。このような処理により、測定分解能により生じる測定誤差を低減することができる。
図21は、図20に示した確率密度関数分離装置100の動作の一例を示す図である。本例では、上述した測定誤差を低減する場合の動作を説明する。まず、領域変換部110が、入力PDFを周波数領域のスペクトルに変換する。
そして、標準偏差算出部120が、当該スペクトルに基づいて、入力PDFに含まれるランダム成分の標準偏差を算出する(S10)。そして、ランダム成分算出部130が、当該標準偏差に基づいて、当該ランダム成分の確率密度関数を算出する(S12)。
次に、ピークツゥピーク値検出部140が、入力PDFのスペクトルのピークツゥピーク値を算出する(S14)。そして、確定成分算出部150は、当該ピークツゥピーク値に基づいて、確定成分の確率密度関数を算出する(S16)。
次に、合成部160は、ランダム成分の確率密度関数と、確定成分の確率密度関数とを合成した合成PDFを生成する(S18)。当該合成は、それぞれの時間領域の確率密度関数の畳み込み積分により行ってよい。
次に、比較部170は、入力PDFと合成PDFとを比較する(S20)。比較部170は、入力PDFと合成PDFとの誤差を算出してよい。当該誤差は、それぞれ設定した時刻区間についての誤差の二乗平均等であってよい。この時間区間としては、確率密度関数の両端のテール部を指定してもよい。
次に、ピークツゥピーク値を、予め定められる全範囲において変化させ、入力PDFと合成PDFとを比較したかを判定する(S22)。変化させていない範囲がある場合、ピークツゥピーク値を比較すべき値に変化させ(S24)、S16からS20の処理を繰り返す。
全範囲についてピークツゥピーク値を変化させた場合、それぞれのピークツゥピーク値に対する、S20における比較結果に基づいて、あたえる誤差が小さいピークツゥピーク値を決定する(S26)。
このような処理により、測定誤差を低減し、最適なピークツゥピーク値を決定することができる。このピークツゥピーク値をもつ確定成分の確率密度関数をもちいて、式(5)のB(f)を再計算し、ランダム成分の標準偏差をより高い精度で算出してもよい。
確率密度関数の両端のテールは、ランダム成分により決まる。逆に、両端から中央部にかけて、確率密度関数の値を所定の閾値と比べ、当該閾値より大きい確率密度をもつ時間幅を検出することにより、D(p−p)を算出することもできる。
図22Aは、確定ジッタとして、サイン波のみを含む確定成分の確率密度関数を示す。本例におけるサイン波のD(p−p)の期待値は50psである。
図22Bは、図22Aに示した確率密度関数を周波数領域に変換したスペクトルを示す。当該スペクトルのナル周波数は、期待値の15.3GHz(0.765/50ps)である。
図23Aは、確定ジッタとして、サイン波と、当該サイン波よりエネルギーが相対的に小さいサイン波とを含む確定成分の確率密度関数を示す。この場合、当該確率密度関数は、当該二つのサイン波が畳み込み積分されたものとなる。小さいサイン波は、確率密度関数に雑音として作用することがわかる。
本例における大きいサイン波のD(p−p)の期待値は50psである。図23Bは、図23Aに示した確率密度関数を周波数領域に変換したスペクトルを示す。当該スペクトルのナル周波数は、15.3GHzである。つまり、確率密度関数の雑音はナル周波数には影響をあたえていないことがわかる。即ち、ナル周波数に基づいてD(p−p)を検出する本方法は、確率密度関数の雑音の影響を低減して、D(p−p)を検出することができる。
図23Cは、非対称な確率密度関数を示す。図23Dは、図23Cに示した非対称な確率密度関数を周波数領域に変換したスペクトルを示す。本例においても、D(p−p)の期待値は50psであり、当該スペクトルのナル周波数は、16.5GHzである。つまり、従来法は再現性あるD(p−p)を検出できないが、ナル周波数に基づいてD(p−p)を検出する本方法は、8%の誤差でD(p−p)を検出できる。
図24Aは、確定ジッタとして、サイン波と、当該サイン波と同等のエネルギーのサイン波とを含む確定成分の確率密度関数を示す。本例におけるD(p−p)の期待値は100psである。
図24Bは、図24Aに示した確率密度関数を周波数領域に変換したスペクトルを示す当該スペクトルのナル周波数は、期待値の10GHzに対し、5GHz程度の誤差を有する。
図25Aは、図24Aに示した確率密度関数について、所定の閾値処理を施した一様分布を示す図である。つまり、当該確率密度関数のそれぞれの値のうち所定の閾値より大きい値を当該閾値に置き換え、所定の閾値より小さい値を0に置き換えることにより、一様分布に変換した確率密度関数を示す。
図25Bは、図25Aに示した一様分布を周波数領域に変換したスペクトルを示す図である。閾値処理を施すことにより、D(p−p)として、ほぼ期待値と等しい10.1GHzを得ることができる。期待値に対してほぼ一致するD(p−p)を与える閾値は、例えば閾値を順次変化させて、それぞれの閾値に対するD(p−p)を算出し、D(p−p)がほぼ変化しない閾値を検出することにより定めることができる。
図26は、複数の確定ジッタを含む確率密度関数に対して、閾値処理により測定したD(p−p)と、従来の方法により測定したD(δδ)の値とを示す。図24及び図25において説明したように、二つのサイン波を畳み込み積分した確率密度関数を測定した場合、従来の曲線適合法では、確定成分のピークツゥピーク値の期待値が100psであるのに対し、D(δδ)=80.5psの結果を得る。
これに対し、閾値処理を施した測定では、ほぼ期待値と等しいD(p−p)=99.0psを得ることができる。同様に、確定ジッタとしてサイン波及び相対的に小さいサイン波の二つのサイン波を畳み込み積分した確率密度関数を測定した場合、閾値処理を施した測定では、ほぼ期待値と等しいD(p−p)=49.0psを得ることができる。また従来、複数の確定成分が畳み込み積分された確率密度関数については、それぞれの確定成分を分離することはできなかった。
図27Aは、サイン波の確定成分の確率密度関数のスペクトルと、二つのサイン波が畳み込み積分された確定成分の確率密度関数のスペクトルとを示す。二つのサイン波が畳み込み積分された確率密度関数のスペクトルは、ひとつのサイン波の確率密度関数のスペクトルの2乗となるので、0Hz付近のメインロブのレベルが変化する。
つまり、図27Bに示すように、二つのサイン波が畳み込み積分された確率密度関数のスペクトルを0.5乗すれば、ひとつのサイン波の確率密度関数とメインロブが一致することになる。上記の原理を利用して、確率密度関数に含まれる確定成分の数を求めることができる。
図28は、確率密度関数に含まれる確定成分の数を求める方法の一例を示すフローチャートである。まず、入力PDFを周波数領域のスペクトルに変換する(S50)。S50のステップは、領域変換部110が行ってよい。
次に、スペクトルのメインロブをβ乗する(S52)。そして、予め定められた確定成分の確率密度関数のスペクトルのメインロブと、S52において求めたメインロブのβ乗とが一致するか否かを判定する(S54)。メインロブが一致するか否かは、メインロブ間の誤差が予め定められた範囲内となった場合に一致したと判定してよい。予め定められた確定成分の確率密度関数は、使用者が指定してよい。また図10に関連して説明したように、確定成分算出部150が、予め与えられる複数の関数から、確定成分の確率密度関数を選択してもよい。
S54において、メインロブが一致しないと判定した場合、βを変更し(S58)、S52及びS54の処理を繰り返す。またS54において、メインロブが一致したと判定した場合、S56において確定成分の数を算出する。
S56においては、1/βを確定成分の数として算出する。このとき、βは整数とは限らない。βの小数点以下の値は、異なる大きさの確定成分が含まれていることを示す。
例えば、図24及び図25において説明した二つのサイン波のD(p−p)が共に50psである場合、全体のD(p−p)は100psとなる。そして、例えば図25において説明した閾値処理を施すと、確定ジッタのD(p−p)として100psとほぼ等しい値が測定される。
更に、図28において関連して説明した方法により、確定成分の数を算出する。二つのサイン波のD(p−p)が略等しいので、β=0.5が算出され、確定成分の数は二つとなる。以上の結果より、それぞれのサイン波のD(p−p)を50psと算出することができる。
以上のように、当該方法によれば、複数の確定成分を含む確率密度関数から、確定成分の数を推定することができる。確定成分の数は、上述した方法により、確定成分算出部150が算出してよい。
図29は、本発明の実施形態に係るノイズ分離装置200の構成の一例を示す図である。ノイズ分離装置200は、被測定信号の確率密度関数から、所定のノイズ成分の確率密度関数を分離する。例えば、ノイズ分離装置200は、被測定信号に含まれるノイズの確率密度関数から、ランダムノイズ成分と確定ノイズ成分とを分離する。
ノイズ分離装置200は、サンプリング部210及び確率密度関数分離装置100を備える。確率密度関数分離装置100は、図1から図28において説明した確率密度関数分離装置100と同一の機能及び構成を有してよい。
サンプリング部210は、与えられるサンプリング信号に応じて、被測定信号をサンプリングし、被測定信号の確率密度関数を生成する。例えば、サンプリング部210は、被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数を生成してよく、被測定信号の振幅ノイズの確率密度関数を生成してもよい。
図30は、サンプリング部210が生成する被測定信号の確率密度関数の一例を示す図である。本例におけるサンプリング部210は、図29において説明したように、被測定信号の確率密度関数を出力する。図30は、横軸を時間とし、縦軸を被測定信号のレベルとした場合の、被測定信号のアイダイアグラムを示す。サンプリング部210は、当該アイダイアグラムを取得してよい。
被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数を生成する場合、サンプリング部210は、それぞれの時間について、被測定信号のエッジが存在する確率を算出する。例えば、サンプリング部210は、被測定信号の遷移領域において、被測定信号に対するそれぞれの相対タイミングにつき、それぞれ複数回被測定信号をサンプリングしてよい。そして、サンプリング結果に基づいて、それぞれの相対タイミングにおいてエッジが存在する確率を取得してよい。
また、被測定信号の振幅ノイズの確率密度関数を生成する場合、サンプリング部210は、被測定信号のそれぞれの振幅値について、被測定信号が当該振幅値となる確率を取得する。例えば、サンプリング部210は、被測定信号の定常領域において、被測定信号に対して略同一の相対タイミングで被測定信号の振幅値を取得する。
サンプリング部210が、参照電圧と被測定信号のレベルとを比較するコンパレータである場合、当該参照電圧を変化させ、それぞれの参照電圧について複数回サンプリングしてよい。サンプリング部210は、サンプリング結果に基づいて、それぞれの振幅値となる確率を取得する。
確率密度関数分離装置100は、サンプリング部210から与えられる確率密度関数に対して、ランダム成分と確定成分とを分離する。例えば、当該確率密度関数が、被測定信号のジッタの確率密度関数である場合、確率密度関数分離装置100は、被測定信号のランダムジッタと確定ジッタとを精度よく分離することができる。
また、当該確率密度関数が、被測定信号の振幅ノイズの確率密度関数である場合、確率密度関数分離装置100は、被測定信号の振幅ノイズのランダム成分と確定成分とを精度よく分離することができる。このため、本例におけるノイズ分離装置200によれば、被測定信号のノイズ成分を精度よく分離することができ、被測定信号を精度よく解析することができる。
また、ノイズ分離装置200は、サンプリング部210に与えられるサンプリング信号のノイズについても、ランダム成分と確定成分とを分離することができる。例えば、サンプリング部210は、被測定信号のレベルをサンプリング信号に応じてデジタル値に変換するコンパレータ、又はADCを有する。
被測定信号としてアナログのサイン波形ジッタ、又は振幅ノイズが与えられた場合、サンプリング部210のコンパレータ、又はADCが出力するデジタルデータの確率密度関数は、図2に示したように両端が急峻に減衰する特性を示す。しかし、サンプリング信号に内部ノイズが生じ、デジタルデータに測定誤差が生じると、当該確率密度関数は、ランダム成分と確定成分との合成成分となる。
サンプリング部210は、ノイズの少ない被測定信号をサンプリングした結果に基づいて、被測定信号の確率密度関数を生成する。そして、確率密度関数分離装置100は、当該確率密度関数に含まれるランダム成分と確定成分とを分離する。これにより、サンプリング信号のノイズを精度よく測定することができる。また、ノイズ分離装置200は、ADCの試験にも利用できる。即ち、ADCのコードエラーにより生じる確定成分を分離することもできる。
図31は、ノイズのないサイン波をADCがサンプリングした場合の、ADCの各コードの確率密度を示す図である。ここで、ADCのコードとは、ADCが出力するそれぞれのデジタル値に対応するコードである。ADCは、入力される信号のレベルがどのコードに対応するかを判別し、当該コードに応じたデジタル値を出力する。
本例においてADCは0から255のコードを有する。ここで、例えば213番目のコードにエラーが生じ、当該コードに対応するレベルを検出できない場合を説明する。この場合、図31に示すように、コード213の確率密度が低下し、コード213に隣接するコード(本例ではコード214)の確率密度が上昇する。これは、本来コード213で検出されるべきサイン波のレベルを、コード214が検出するからである。
図31に示した確率密度関数は、入力されるサイン波による確定成分と、ADCのコードエラーに起因する確定成分とを含む。図28に関連して説明したように、確率密度関数分離装置100は、これらの確定成分を分離することができる。
図32は、ノイズ分離装置200の構成の他の例を示す図である。本例におけるノイズ分離装置200は、図29に関連して説明したノイズ分離装置200の構成に加え、補正部220を更に備える。本例におけるノイズ分離装置200は、上述したサンプリング信号の内部ノイズの影響を低減して、被測定信号の確率密度関数から確定成分とランダム成分とを分離する。
例えば、サンプリング信号のノイズの影響を低減する場合、まず、サンプリング部210は、上述したように、サンプリング信号自身の確率密度関数を算出するサンプリング信号測定部として機能する。このとき、サンプリング部210には、ノイズの少ない基準信号が与えられることが好ましい。
また、サンプリング部210は、測定すべき測定信号の確率密度関数を算出する被測定信号測定部として機能する。このとき、サンプリング部210は、図24において説明したサンプリング部210と同様の動作を行ってよい。
確率密度関数分離装置100は、被測定信号の確率密度関数、及びタイミング信号の確率密度関数のそれぞれについて、ランダム成分及び確定成分を分離する。
そして、補正部220は、被測定信号の確率密度関数のパラメータを、タイミング信号の確率密度関数に基づいて補正することにより、より精度よく被測定信号のランダム成分及び確定成分を分離する。
例えば、補正部220は、被測定信号に係るランダム成分のエネルギーから、タイミング信号に係るランダム成分のエネルギーを減じることにより、被測定信号に係るランダム成分を補正してよい。また、補正部220は、被測定信号に係る確定成分から、タイミング信号に係る確定成分を減じることにより、被測定信号に係る確定成分を補正してよい。このような処理により、被測定信号に係るランダム成分及び確定成分を精度よく分離することができる。
図33は、本発明の実施形態に係る試験装置300の構成の一例を示す図である。試験装置300は、被試験デバイス400を試験する装置であって、ノイズ分離装置200及び判定部310を備える。
ノイズ分離装置200は、図29から図32において説明したノイズ分離装置200と略同一の構成を有し、被試験デバイス400が出力する被測定信号を測定する。本例においては、図32に示したノイズ分離装置200と略同一の構成を有する。ノイズ分離装置200は、図32に示すように、タイミング信号を生成するタイミング発生器230を有してよい。他の構成要素は、図29から28に関連して同一の符号を付して説明した構成要素と同一である。
判定部310は、ノイズ分離装置200が分離したランダムノイズ成分及び確定ノイズ成分に基づいて、被試験デバイス400の良否を判定する。例えば、判定部310は、ランダムノイズ成分の標準偏差が、所定の範囲内であるか否かに基づいて被試験デバイス400の良否を判定してよい。
また、判定部310は、確定ノイズ成分のピークツゥピーク値が、所定の範囲内であるか否かに基づいて被試験デバイス400の良否を判定してよい。判定部310は、ランダムノイズ成分の標準偏差と確定ノイズ成分のピークツゥピーク値からトータルジッタ(total jitter)を算出し,被試験デバイス400の良否を判定してよい。判定部310は、例えば14×σ+D(p−p)により与えられるトータルジッタを算出してよい。ここで、係数14は、図19Dに示したビット誤り率10−12に対応する値である。当該係数は、被測定対象のビット誤り率に応じた値を用いてよい。
本例における試験装置300によれば、被測定信号の確率密度関数を精度よく分離することができるので、被試験デバイス400の良否を精度よく判定することができる。また、試験装置300は、被試験デバイス400に試験信号を入力し、所定の出力信号を出力させるパターン発生部を更に備えてよい。
図34は、ジッタ分離装置200によるジッタの測定結果と、従来方法によるジッタの測定結果の一例を示す図である。図34に示すように、ジッタ分離装置200は、被測定信号にランダムジッタのみが含まれている場合、ランダムジッタとサイン波ジッタ(確定ジッタ)とが含まれている場合、及びサンプリング信号にノイズが含まれている場合のそれぞれの場合について、ランダムジッタ及び確定ジッタのいずれの測定結果においても、従来方法より精度のよい測定結果を得ることができる。
図35は、図34において説明した従来の測定結果を示す図である。上述したように、従来の測定方法は、図35において波線で示される入力PDFに対し、テール部分を曲線適合する。その結果、図35において実線で示すようなランダム成分を検出する。また、当該ランダム成分のピークの間隔を確定成分として検出する。このような測定方法を用いた場合、曲線適合という近似を用いているので、それぞれの成分を精度よく測定することはできない。このため、図34に示すように期待値に対して大きな誤差を有する測定結果となる。
また、当該方法は、上述したサンプリング信号の誤差による確定成分、ADCのコードエラーによる確定成分を分離することができない。このため、図34に示すように例えばサンプリングエラーが生じている場合においても、精度のよい測定を行うことができない。
図36は、図34において説明した本発明の測定結果を示す図である。図36Aは、入力PDFを示し、図36Bは、確率密度関数分離装置100により分離した確定成分及びランダム成分を合成した確率密度関数を示す。
確率密度関数分離装置100は、上述したように入力PDFのランダム成分及び確定成分を精度よく分離することができる。このため、図34に示すように、期待値に対して誤差の小さい測定結果を得ることができる。更に、本発明は複数の確定成分を分離することができるので、例えばサイン波による確定成分と、サンプリング信号のタイミングエラーによる確定成分とを分離することができる。この結果、より高い精度の測定が可能となる。
図37は、図33において説明したサンプリング部210の構成の一例を示す図である。サンプリング部210は、増幅器202、レベル比較部204、可変遅延回路212、可変遅延回路214、タイミング比較部216、エンコーダ226、メモリ228、及び確率密度関数算出部232を有する。
増幅器202は、被試験デバイス400の出力信号を受け取り、所定の増幅率で増幅して出力する。レベル比較部204は、出力信号のレベルと、与えられる参照値とを比較し、比較結果を出力する。本例においてレベル比較部204は、コンパレータ206及びコンパレータ208を有する。コンパレータ206は、Hレベルの参照値が与えられる。またコンパレータ208は、Lレベルの参照値が与えられる。
タイミング比較部216は、レベル比較部204が出力する比較結果を、与えられるタイミング信号に応じてサンプリングし、デジタルデータに変換する。本例においてタイミング比較部216は、フリップフロップ218及びフリップフロップ222を有する。
フリップフロップ218は、タイミング発生部224が出力するタイミング信号を、可変遅延回路212を介して受け取る。またフリップフロップ218は、コンパレータ206が出力する比較結果を、当該タイミング信号に応じてサンプリングする。
フリップフロップ222は、タイミング発生部224が出力するタイミング信号を、可変遅延回路214を介して受け取る。またフリップフロップ222は、コンパレータ208が出力する比較結果を、当該タイミング信号に応じてサンプリングする。
本例においてレベル比較部204は、2つのコンパレータ206及び208を有しているが、レベル比較部204は、1つのコンパレータによる比較結果を出力してよく、また3以上のコンパレータによる比較結果を出力してよい。つまり、レベル比較部204は、多値の比較結果を出力してよい。タイミング比較部216は、レベル比較部204が有するコンパレータに応じた数のフリップフロップを有してよい。
可変遅延回路212及び214は、タイミング信号を遅延させて出力する。可変遅延回路212及び214は、タイミング信号の位相を所定の位相に調整してタイミング比較部216に供給する。
エンコーダ226はタイミング比較部216が出力するデジタルデータをエンコードする。例えばエンコーダ226は、フリップフロップ218及びフリップフロップ222が出力するそれぞれのデジタルデータに基づいて、多値のデジタルデータを生成してよい。メモリ228は、エンコーダ226が生成したデジタルデータを格納する。
確率密度関数算出部232は、メモリ228が格納したデジタルデータに基づいて、出力信号の確率密度関数を算出する。例えば確率密度関数算出部232は、図30において説明したジッタの確率密度関数を生成してよく、また図30において説明した振幅劣化成分の確率密度関数を生成してもよい。
ジッタの確率密度関数を生成する場合、タイミング発生部224は、出力信号に対する位相が順次変化するタイミング信号を生成する。タイミング信号の位相は、可変遅延回路212及び214における遅延量を変化させることにより調整してもよい。また、レベル比較部204には、参照値が与えられる。
タイミング比較部216は、出力信号に対する位相が順次変化するタイミング信号に応じて出力信号の論理値をサンプリングする。確率密度関数算出部232は、メモリ228が格納したサンプル値列と、与えられる期待値列とを比較する。
また、確率密度関数算出部232は、当該比較結果に基づいて、出力信号の位相を検出する。例えば、確率密度関数算出部232は、当該比較結果に基づいて、出力信号のエッジの位相を検出してよい。また、確率密度関数算出部232は、出力信号の論理値が遷移するタイミングを検出してもよい。このとき、確率密度関数算出部232は、出力信号のデータが同一の論理値を連続して示す場合であっても、出力信号の各データ区間の境界のタイミングを検出することができる。
また、タイミング比較部216及び確率密度関数算出部232は、出力信号の論理値と期待値との比較を、それぞれのタイミング信号の位相について複数回行い、エラーカウント値を得る。当該エラーカウント値より、それぞれの位相において出力信号の論理値が生起する確率を算出することができる。つまり、ジッタの確率密度関数を生成することができる。例えば、タイミング比較部216及び確率密度関数算出部232は、それぞれのタイミング信号の位相について、出力信号の論理値と期待値との比較を複数回ずつ行う。そして、対応するタイミング信号の位相が隣り合うエラーカウント値の差分を算出することにより、確率密度関数を算出してよい。
次に、出力信号の振幅劣化成分の確率密度関数を生成する場合を説明する。この場合、タイミング発生部224は、出力信号に略同期したタイミング信号を生成する。つまり、タイミング信号のエッジは、出力信号に対して一定の位相を有する。また、レベル比較部204には、異なる参照値が順次与えられる。
タイミング比較部216は、出力信号に同期したタイミング信号に応じて比較結果をサンプリングする。つまり、タイミング比較部216は、タイミング信号のエッジタイミングにおける出力信号のレベルと、参照値との比較結果を検出する。当該比較結果を、それぞれの参照値について複数回検出することにより、出力信号の振幅劣化成分の確率密度関数を生成することができる。
確率密度関数算出部232は、生成した確率密度関数を、確率密度関数分離装置100に供給する。このような構成により、出力信号のノイズ成分を精度よく分離することができ、被試験デバイス400を精度よく試験することができる。例えば、被試験デバイス400の出力信号に含まれるランダムジッタを試験する場合において、タイミング信号に確定的なジッタが生じた場合、被試験デバイス400の良否を精度よく判定できないが、本例における試験装置300によれば、タイミング信号による確定ジッタの成分を同時に分離し、出力信号のランダムジッタの成分を検出することができる。
図38は、図37に関連して説明した試験装置300の測定結果と、図2において説明した従来の曲線適合法の測定結果の一例を示す図である。図2では、それぞれの測定結果と、期待される測定結果との誤差を示す。
尚、本例における従来法の測定結果は、下記の文献から引用した。G.Hansel,K.Stieglbauer,"Implementation of an Economic Jitter Compliance Test for a Multi-Gigabit Device on ATE,"in Proc.IEEE int.Test Conf.,Charlotte,NC,October 26-28,2004,pp.1303-1311
また、本例の測定では、被試験デバイス400の出力信号のジッタの確率密度関数を、ランダム成分及び確定成分に分離した。また、従来法の測定結果は、確定成分として振幅が40ps程度の大きなサイン波成分が含まれるケースと、振幅が5ps程度の小さなサイン波成分が含まれるケースに対応する。図38に示すように、試験装置300は、いずれのケースにおいても従来の曲線適合法よりも誤差の小さい測定結果を得ることができた。
図39は、本発明の実施形態に係るビット誤り率測定装置500の構成の一例を示す図である。ビット誤り率測定装置500は、被試験デバイス400等から与えられる出力データのビット誤り率を測定する装置であって、可変電圧源502、レベル比較器504、期待値生成部510、サンプリング部512、期待値比較部514、タイミング発生部506、可変遅延回路508、カウンタ516、トリガカウンタ518、確率密度関数算出部520、及び確率密度関数分離装置100を備える。
レベル比較器504は、出力データのレベルと、与えられる参照値とを比較し、比較データを出力する。例えば、レベル比較器504は、出力データのレベルと、与えられる参照値との大小関係を2値の論理値で示す比較データを出力する。可変電圧源502は、当該参照値を生成する。サンプリング部512は、レベル比較器504が出力するデータ値を、与えられるタイミング信号に応じてサンプリングする。
タイミング発生部506は、タイミング信号を生成し、可変遅延回路508を介してサンプリング部512に供給する。タイミング発生部506は、出力データと略同一の周期のタイミング信号を生成してよい。可変遅延回路508は、タイミング信号を所定の位相に調整する。
期待値生成部510は、サンプリング部512が出力するデータ値が有するべき期待値を生成する。期待値比較部514は、サンプリング部512が出力するデータ値と、期待値生成部510が出力する期待値とを比較する。期待値比較部514は、例えば当該データ値と当該期待値との排他的論理和を出力してよい。
カウンタ516は、期待値比較部514における比較結果が、所定の論理値を示す回数を計数する。例えば、期待値比較部514が出力する排他的論理和が1である回数を計数する。また、トリガカウンタ518は、タイミング信号のパルスを計数する。
このような構成により、タイミング信号の位相に対応する出力データのデータ値が誤っている回数を計数することができる。また、図37において説明した試験装置300と同様に、タイミング信号の位相を順次変化させることにより、タイミング信号の各位相について、エラーカウント値を求める。確率密度関数算出部520は、対応するタイミング信号の位相が隣り合うエラーカウント値の差分を算出することにより、出力データのジッタの確率密度関数を算出してよい。
尚、図37において説明した試験装置300と同様に、確率密度関数算出部520は、出力信号のデータが同一の論理値を連続して示す場合であっても、出力データの各データ区間の境界のタイミングを検出することができる。
また、図37において説明した試験装置300と同様に、可変電圧源502が生成する参照値を順次変化させることにより、確率密度関数算出部520は、出力データの振幅劣化成分の確率密度関数を算出することができる。この場合、出力データに対するタイミング信号の位相は、略一定に制御される。
確率密度関数分離装置100は、図33に関連して説明した確率密度関数分離装置100と同一である。即ち、与えられる確率密度関数の確定成分と、ランダム成分とを分離する。
このような構成によって、与えられる出力データの確率密度関数を生成し、確定成分とランダム成分とを同時に分離することができる。つまり、確定成分により生じるビット誤りと、ランダム成分により生じるビット誤りとを同時に分離して解析することができる。
図40は、ビット誤り率測定装置500の構成の他の例を示す図である。本例におけるビット誤り率測定装置500は、オフセット部522、増幅器524、サンプリング部526、比較計数部528、可変遅延回路530、及びプロセッサ532を備える。
オフセット部522は、出力データの波形に所定のオフセット電圧を加算する。増幅器524は、オフセット部522が出力する信号を、所定の増幅率で出力する。
サンプリング部526は、増幅器524が出力する信号のデータ値を、与えられるタイミングクロックに応じてサンプリングする。タイミングクロックは、例えば出力データから生成される再生クロックであってよい。可変遅延回路530は、タイミングクロックを所定の位相に調整する。
比較計数部528は、サンプリング部526が出力するデータ値と、与えられる期待値とを比較し、比較結果を計数する。比較計数部528は、図39において説明した期待値比較部514及びカウンタ516と同一の機能を有してよい。
プロセッサ532は、オフセット部522及び可変遅延回路530を制御する。例えば、オフセット電圧を所定のレベルに調整し、可変遅延回路530における遅延量を制御する。このような構成により、タイミングクロックの位相に対応する出力データのデータ値が誤っている確率を算出することができる。
また、プロセッサ532は、図39において説明した確率密度関数算出部520及び確率密度関数分離装置100としても機能する。図37において説明した試験装置300と同様に、タイミングクロックの位相を順次変化させることにより、プロセッサ532は、出力データのジッタの確率密度関数を算出することができる。例えば、可変遅延回路530における遅延量を変化させることにより、タイミングクロックの位相を変化させることができる。
ここで、出力データのジッタとは、出力データの各データ区間の境界のタイミングのジッタであってよい。確率密度関数算出部520は、出力信号のデータが同一の論理値を連続して示す場合であっても、出力信号の各データ区間の境界のタイミングを検出することができる。
また、オフセット部522が加算するオフセット電圧を順次変化させることにより、図39において説明した参照値を変化させた場合と同等の測定を行うことができる。この場合、プロセッサ532は、出力データの振幅劣化成分の確率密度関数を算出することができる。この場合、出力データに対するタイミングクロックの位相は、略一定に制御される。
確率密度関数分離装置100は、図33に関連して説明した確率密度関数分離装置100と同一である。即ち、与えられる確率密度関数の確定成分と、ランダム成分とを分離する。
このような構成によっても、与えられる出力データの確率密度関数を生成し、確定成分とランダム成分とを分離することができる。つまり、確定成分により生じるビット誤りと、ランダム成分により生じるビット誤りとを同時に分離して解析することができる。
図41は、ビット誤り率測定装置500の構成の他の例を示す図である。本例におけるビット誤り率測定装置500は、フリップフロップ534、スイッチ部536、フリップフロップ538、周波数測定部548、制御部546、確率密度関数算出部540、及び確率密度関数分離装置542を備える。
フリップフロップ534は、出力データのデータ値を、与えられるタイミングクロックに応じてサンプリングする。スイッチ部536は、経路長の異なる複数の経路から一つの経路を選択し、フリップフロップ534が出力するデータ値を、選択した経路に応じた固定遅延量で遅延して出力する。ラッチ部538は、スイッチ部536により位相が調整されたデータ値を、与えられるタイミングクロックに応じてラッチする。
つまり、図40に示したビット誤り率測定装置500は、タイミングクロックの位相を調整することにより、出力データに対するサンプリングクロックの相対位相を調整したが、本例におけるビット誤り率測定装置500は、出力データの位相を調整することにより、出力データに対するサンプリングクロックの相対位相を調整する。
図40に図示するように、可変遅延回路を用いてクロックのタイミングを大きなレンジでコントロールすると、遅延設定を変化させたとき、不完全なクロックが生成されてしまう(When delay setting changes are made, the variable delay element will output incomplete or partial clock)。本例におけるビット誤り率測定装置500は、可変遅延回路544の遅延レンジを小さくすることができ、不完全なクロックが生成されることを低減できる。
周波数測定部548は、タイミングクロックの周波数を測定する。制御部546は、期待されているタイミングクロックの周波数と、設定すべきサンプリングクロックの相対位相とに基づいて、可変遅延回路544における遅延量を制御する第1コントロール信号と、スイッチ部536における遅延量を制御する第2コントロール信号を生成する。
確率密度関数算出部540は、ラッチ部538が順次ラッチするデータ値に基づいて、出力データの確率密度関数を算出する。例えば、図40において説明したビット誤り率測定装置500と同様に、出力データに対するタイミングクロックの相対位相を順次変化させることにより、出力データのジッタの確率密度関数を算出することができる。また、図40において説明したビット誤り率測定装置500と同様に、本例においても、振幅劣化成分の確率密度関数を算出する手段を更に備えてよい。
確率密度関数分離装置542は、図33に関連して説明した確率密度関数分離装置100と同一である。即ち、与えられる確率密度関数の確定成分と、ランダム成分とを分離する。
このような構成によっても、与えられる出力データの確率密度関数を生成し、確定成分とランダム成分とを分離することができる。つまり、確定成分により生じるビット誤りと、ランダム成分により生じるビット誤りとを同時に分離して解析することができる。
尚、ビット誤り率測定装置500の構成は、図39から図41において説明した構成には限定されない。従来のビット誤り率測定装置の構成に、確率密度関数分離装置及び確率密度関数算出部を付加することにより、ビット誤り率の確率密度関数のランダム成分と確定成分とを同時に分離し、測定することができる。
図42は、本発明の実施形態に係る電子デバイス600の構成の一例を示す図である。電子デバイス600は、所定の信号を生成する半導体チップ等であってよい。電子デバイス600は、動作回路610、測定回路700、確率密度関数算出部562、及び確率密度関数分離装置100を備える。
動作回路610は、与えられる入力信号に応じて、所定の信号を出力する。本例において動作回路610は、位相比較器612、チャージポンプ614、電圧制御発振器616、及び分周器618を有するPLL回路である。尚、動作回路610は、PLL回路に限定されない。
測定回路700は、セレクタ550、ベース遅延552、可変遅延回路554、フリップフロップ556、カウンタ558、及び周波数カウンタ560を有する。セレクタ550は、動作回路610の出力信号と、可変遅延回路554が出力する一巡ループ信号とのいずれかを選択して出力する。
ベース遅延552は、セレクタ550が出力する信号を、所定の遅延量で遅延させる。また、可変遅延回路554は、ベース遅延552が出力する信号を、設定される遅延量で遅延させる。
フリップフロップ556は、セレクタ550が出力する信号を、可変遅延回路554が出力する信号に応じてサンプリングする。可変遅延回路554における遅延量を制御することにより、フリップフロップ556は、セレクタ550が出力する信号を所望の位相でサンプリングすることができる。
カウンタ558は、フリップフロップ556が出力するデータが、所定の論理値を示す回数を計数する。セレクタ550が、動作回路610の出力信号を選択した場合において、可変遅延回路554における遅延量を変化させることにより、動作回路610の出力信号のそれぞれの位相においてエッジが存在する確率を求めることができる。
確率密度関数算出部562は、カウンタ558が出力する計数結果に基づいて、出力信号の確率密度関数を算出する。確率密度関数算出部562は、図37において説明した確率密度関数算出部232と同様の動作で確率密度関数を算出してよい。
確率密度関数分離装置100は、確率密度関数算出部562が算出した確率密度関数の所定の成分を分離する。確率密度関数分離装置100は、図1から図31に関連して説明した確率密度関数分離装置100と同一又は同様の機能及び構成を有してよい。
また、本例における確率密度関数分離装置100は、図1から図31に関連して説明した確率密度関数分離装置100の一部の構成を備えてよい。例えば確率密度関数分離装置100は、図1において説明したランダム成分算出部130又は確定成分算出部150を備えず、標準偏差算出部120又はピークツゥピーク値検出部140が検出したランダム成分の標準偏差又は確定成分のピークツゥピーク値を外部の装置に出力してもよい。
このような構成により、動作回路610と同一のチップ内に設けた回路により、動作回路610が出力する信号の確率密度関数を所定の成分に分離することができる。ベース遅延552や可変遅延回路554に因る確定成分の影響をうけずに、動作回路610が出力する信号のランダム成分の標準偏差を高い精度でもとめることができる。これにより、動作回路610の解析等を容易に行うことができる。
また、セレクタ550が可変遅延回路554の出力信号を選択した場合、可変遅延回路554の出力信号は、ベース遅延552に一巡ループして入力される。周波数カウンタ560は、所定の期間内において、当該ループを伝送するパルス信号を計数することにより、パルス信号の周波数を計測する。当該周波数は、可変遅延回路554に設定される遅延量に応じて変化するので、当該周波数を計測することにより、可変遅延回路554における遅延量を測定できる。
図43は、電子デバイス600の構成の他の例を示す図である。本例における電子デバイス600は、図42において説明した電子デバイス600の構成に対し、同一の構成要素を備える。但し、各構成要素の接続関係が異なる。
本例においてセレクタ550は、動作回路610に入力される入力信号を分岐して受け取る。セレクタ550は、当該入力信号と、可変遅延回路554の出力信号とのいずれかを選択して出力する。
また、ベース遅延552は、動作回路610とフリップフロップ556との間に設けられる。本例においてベース遅延552は、分周器618が出力する信号を遅延してフリップフロップ556に入力する。
このような構成によっても、図42において説明した電子デバイス600と同様に、動作回路610が生成する信号の確率密度関数を算出することができる。また、当該確率密度関数を所定の成分に分離することができる。ベース遅延552や可変遅延回路554に因る確定成分の影響をうけずに、動作回路610が出力する信号のランダム成分の標準偏差を高い精度でもとめることができる。
尚、測定回路700の構成は、図42又は図43において説明した構成に限定されない。測定回路700は、多様な構成を採用することができる。例えば測定回路700は、図37において説明した試験装置300と同様の構成を有してよく、また図39から図41において説明したビット誤り率測定装置500と同様の構成を有してよい。
また、以上において説明した確率密度関数分離装置100は、高純度の信号を被測定対象の回路に入力し、被測定対象の回路が出力する信号の確率密度関数を算出してよい。高純度の信号とは、例えばノイズ成分が、信号成分に対して十分小さい信号である。
また、確率密度関数分離装置100は、ジッタ、振幅劣化等の成分が既知の信号を被測定対象の回路に入力してもよい。即ち、確率密度関数のランダム成分が既知の信号を被測定対象の回路に入力してよい。この場合、確率密度関数分離装置100は、被測定対象の回路が出力する信号の確率密度関数のランダム成分を分離してよい。そして、入力した信号のランダム成分と、出力された信号のランダム成分とを比較することにより、被測定対象の回路において生じたランダム成分を算出してよい。当該機能は、試験装置200、ビット誤り率測定装置500、又は電子デバイス600が備える確率密度関数分離装置100のいずれも有してよい。
図44Aは、本発明の実施形態に係る、伝達関数測定装置800の構成の一例を示す図である。伝達関数測定装置800は、確率密度関数分離装置100、伝達関数算出部820、および、信号発生部810を備える。信号発生部810は、試験信号を生成して被試験デバイス400に供給する。信号発生部810は、サイン波ジッタ等の確定ジッタを、試験信号に印加する機能を有する。また、信号発生部810は、確定ジッタの振幅を調整する機能を有する。
伝達関数算出部820は、信号発生部810に、所定の振幅のジッタを生じさせる。例えば伝達関数算出部820は、一定のピークツゥピーク値を有するサイン波ジッタ等の確定ジッタを、信号発生部810に生じさせてよい。
確率密度関数分離装置100は、被試験デバイス400が試験信号に応じて出力する被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数から、確定成分およびランダム成分を分離する。確率密度関数分離装置100は、図1から図43において説明した確率密度関数分離装置100と同一であってよい。
また、確率密度関数分離装置100は、確率密度関数算出部830が生成した確率密度関数を受け取ってよい。確率密度関数算出部830は、図37から図43に関連して説明したいずれかの確率密度関数算出部(232、520、540、562)と同一であってよい。確率密度関数算出部830は、被試験デバイス400と確率密度関数分離装置100との間に設けられ、被試験デバイス400が出力する被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数を生成してよい。また、確率密度関数算出部830は、伝達関数測定装置800の内部に設けられてもよい。
伝達関数算出部820は、信号発生部810に生じさせたジッタと、確率密度関数分離装置100が分離したジッタ成分とに基づいて、被試験デバイス400におけるジッタ伝達関数を算出する。例えば伝達関数算出部820は、信号発生部810に生じさせた確定成分のピークツゥピーク値と、確率密度関数分離装置100が分離した確定成分のピークツゥピーク値とに基づいて、被試験デバイス400のジッタ伝達関数を算出してよい。
図44Bは、伝達関数測定装置800の他の構成例を示す図である。本例における伝達関数測定装置800は、図44Aに示した伝達関数測定装置800と同一の構成を有してよい。ただし、本例における確率密度関数分離装置100は、信号発生部810が出力する試験信号を測定するチャンネルと、被試験デバイス400が出力する被測定信号を測定するチャンネルとを有する。確率密度関数分離装置100は、図1から図43に関連して説明した確率密度関数分離装置100の構成および機能を、各チャンネルに有してよい。
確率密度関数分離装置100は、確率密度関数算出部830から入力される確率密度関数と、被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数とから、それぞれ確定成分を分離してよい。確率密度関数分離装置100は、試験信号および被測定信号に対する測定および処理を同時に行ってよい。
伝達関数算出部820は、確率密度関数分離装置100が、試験信号および被測定信号のそれぞれに対して分離したジッタ成分に基づいて、被試験デバイス400におけるジッタ伝達関数を算出する。例えば伝達関数算出部820は、試験信号における確定成分のピークツゥピーク値と、被測定信号における確定成分のピークツゥピーク値とに基づいて、被試験デバイス400のジッタ伝達関数を算出してよい。
図45は、本実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。コンピュータ1900は、与えられるプログラムに基づいて、図1から図44において説明した確率密度関数分離装置100、ノイズ分離装置200、算出装置、試験装置300、ビット誤り率測定装置500、伝達関数測定装置800として機能する。
例えば、コンピュータ1900が確率密度関数分離装置100として機能する場合、プログラムは、コンピュータ1900を、図1から図28に関連して説明した確率密度関数分離装置100の各構成要素として機能させてよい。また、コンピュータ1900がノイズ分離装置200として機能する場合、プログラムは、コンピュータ1900を、図29から図36に関連して説明したノイズ分離装置200の各構成要素として機能させてよい。
また、コンピュータ1900が算出装置として機能する場合、プログラムは、コンピュータ1900を、図11及び図12において説明した時間領域算出部138を含む算出装置として機能させてよい。例えば、周波数領域のガウス曲線から直接ランダム成分の時間領域の確率密度関数を算出する算出装置としてコンピュータ1900を機能させる場合、プログラムは、コンピュータ1900を、図9において説明したランダム成分算出部130の各構成要素として機能させてよい。
また、任意の周波数領域のスペクトルから、時間領域の波形を算出する算出装置としてコンピュータ1900を機能させる場合、プログラムは、コンピュータ1900を、時間領域算出部138及び図12に関連して説明した周波数領域測定部として機能させてよい。また、当該プログラムは、コンピュータ1900を、図37から図43において説明した確率密度関数算出部及び確率密度関数分離装置100として機能させてもよい。
また、コンピュータ1900が伝達関数測定装置800として機能する場合、プログラムは、コンピュータ1900を、図44Aおよび図44Bに関連して説明した伝達関数測定装置800の各構成要素として機能させてよい。例えばプログラムは、コンピュータ1900を、確率密度関数分離装置100および伝達関数算出部820として機能させてよい。
本実施形態に係るコンピュータ1900は、CPU周辺部、入出力部、及びレガシー入出力部を備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有する。入出力部は、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェース2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有する。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェース2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラムや、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050や、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
当該プログラムは、コンピュータ1900にインストールされる。当該プログラムは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、前述した確率密度関数分離装置100、ノイズ分離装置200、算出装置、試験装置300、又はビット誤り率測定装置500として機能させる。
以上に示したプログラムは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVDやCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明の一つの側面を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
上記説明から明らかなように、本発明の実施形態によれば、与えられる確率密度関数からランダム成分及び確定成分を精度よく分離することができる。