JPWO2007119381A1 - アルミニウム耐性に関与する遺伝子、およびその利用 - Google Patents

アルミニウム耐性に関与する遺伝子、およびその利用 Download PDF

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Abstract

アルミニウム感受性突然変異体(als1変異体)と、カサラスとの交配によって得られたF2集団個体を用いたマップベースクローニングによって、アルミニウム耐性に関与する遺伝子(Als1遺伝子)を同定し、新規遺伝子として単離した。本発明によれば、これまでに同定されていないアルミニウム耐性に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子の利用方法を提供することができる。

Description

本発明は、アルミニウム耐性に関与する新規遺伝子およびその利用に関するものである。
酸性土壌は、世界の耕地面積の約4割を占めている。酸性土壌は、植物の生育を阻害することが問題となる土壌である。植物の生育阻害は、アルミニウム毒性によって引き起こされる。アルミニウムイオンは、低濃度(数μM)でも、すばやく根の伸張阻害を引き起こし、根からの養水分の吸収を阻害する。その結果、植物が、様々なストレスに弱くなる。このため、酸性土壌での植物の生産性は、非常に低い。
アルミニウムによる生育阻害は、植物の種類によって異なる。つまり、植物の種類によって、アルミニウム耐性は大きく異なる。イネ科植物(禾穀類)は、アルミニウム耐性が強い種とされている。特に、イネのアルミニウム耐性は、イネ科植物の中で最も強い。イネ科植物のアルミニウム耐性は、イネ,ライ麦>コムギ>オオムギの順となる。
アルミニウム耐性は、植物の品種間でも大きく異なる。例えば、日本型イネ品種のアルミニウム耐性は、インド型イネ品種よりも強い。
しかし、イネの生産量が多い地域は、酸性土壌であることが多い。例えば、酸性硫酸土水稲栽培地域および酸性陸栽培地域であることが多い。しかも、イネの生産量が多い地域では、アルミニウム耐性の弱い品種のイネが栽培される。このため、イネの生産性が、非常に低くなる。このため、酸性土壌での植物の生産性を向上するために、アルミニウム耐性の強いイネの作出が、求められる。
このように、アルミニウムイオンは、植物の生育を阻害する最大の因子である。
本願発明者は、植物のアルミニウム耐性について、精力的に研究を行っている(例えば、特許文献1〜3,非特許文献1〜4参照)。
日本国公開特許公報「特開2004−105164号公報(2004年4月8日公開)」 日本国公開特許公報「特開2004−344024号公報(2004年12月9日公開)」 日本国公開特許公報「特開2005−058022号公報(2005年3月10日公開)」 Ma, J. F. 2005. Plant root responses to three abundant soil mineral: silicon, aluminum and iron. Crit. Rev. Plant Sci. 24, 267-281. Ma, J. F., Nagao, S., Huang, C. F., Nishimura, M. 2005. Isolation and characterization of a rice mutant hypersensitive to Al. Plant Cell Physiol. 46, 1054-1061. Ma, J. F., Shen, R., Zhao, Z., Wissuwa, M., Takeuchi, Y., Ebitani, T. and Yano, M.: Response of rice to Al stress and identification of quantitative trait loci for Al tolerance. Plant Cell Physiol. 43:652-659 (2002). Delhaize E, Ryan PR, Hebb DM, Yamamoto Y, Sasaki T and Matsumoto H 2004: Engineering high-level aluminum tolerance in barley with the ALMT1 gene. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 15249-15254
しかしながら、アルミニウム耐性に関与する遺伝子は未だ同定されておらず、植物のアルミニウム耐性メカニズムは、解明されていない。
本発明の目的は、アルミニウム耐性に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子の利用方法を提供することにある。
本発明者は、これまでに取得されていなかったアルミニウム耐性に関与する遺伝子について鋭意に検討した。その結果、アルミニウム感受性突然変異体(als1変異体)と、カサラスとの交配によって得られたF2集団個体を用いたマップベースクローニングによって、当該遺伝子を同定し、その配列を特定することに成功して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであって、
下記の(a)または(b)のポリヌクレオチド:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなることを特徴としている。
ここで、本発明において、「アルミニウム耐性」とは、アルミニウム存在下においても正常に成長できる植物の能力のことである。言い換えると、「アルミニウム耐性」は、アルミニウムによる生育阻害に対する抵抗性のことである。「アルミニウム」は、イオン化されているものでも、塩を形成しているものであってもよい。また、「アルミニウム」は、アルミニウムおよびアルミニウムを含む化合物を示すものとする。「アルミニウム耐性に関与する」とは、アルミニウム耐性能を有する(付与する)ことを示す。
上記のポリヌクレオチドによれば、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを翻訳産物として得ることができる。
本発明にかかるポリペプチドは、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドであって、
下記の(a)または(b)のポリペプチド:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを特徴としている。
上記のポリペプチドによれば、アルミニウム耐性を付与することができる。
このような、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドは、例えば、イネでは、第6染色体に座乗する遺伝子にコードされるアミノ酸を含む領域に存在する。イネは、アルミニウム耐性が特に強い。すなわち、イネは、アルミニウム耐性に寄与するポリペプチド(ポリヌクレオチド)を有している。しかし、この領域にコードされるアミノ酸の一部が欠失したポリペプチドは、アルミニウム耐性をほとんど有さない。例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、123〜127番目のアミノ酸が欠失したポリペプチド等は、アルミニウム耐性能をほとんど有さない(アルミニウム感受性である)。なお、配列番号2に示されるポリペプチドは、イネのアルミニウム耐性に関与するポリペプチドのアミノ酸配列である。
本発明にかかるポリペプチドは、アルミニウムによる根の伸長阻害を防ぐものであってもよい。これにより、根からアルミニウムを排除して、アルミニウムによる生育阻害を防ぐことができる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記いずれかのポリペプチドをコードするものであってもよい。上記のポリヌクレオチドによれば、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを、翻訳産物として得ることができる。なお、このポリヌクレオチドとしては、例えば、前述した、上記(a)または(b)のポリヌクレオチド等が挙げられる。
本発明にかかる形質転換体選抜用マーカー遺伝子は、上記の何れかのポリヌクレオチドからなるものである。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、それが発現している細胞(特に植物細胞)に、アルミニウム耐性を付与することができる。
また、これらのマーカー遺伝子は、アルミニウム耐性が強い品種を選抜するためにも、利用することができる。
本発明にかかる組換え発現ベクターは、上記の何れかのポリヌクレオチドを含むものである。上記の組換え発現ベクターは、本発明にかかるポリヌクレオチドを細胞に導入するための組換え発現ベクターとして利用できるだけでなく、本発明にかかるポリヌクレオチドを選抜用マーカーとして用いた場合には、他の遺伝子を細胞に導入するための組換え発現ベクターとしても利用できる。
本発明にかかる形質転換体は、上記のポリヌクレオチドまたは上記の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを発現しているものである。ここで、上記ポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであるため、上記形質転換体は、植物(形質転換植物)であることが好ましい。
この形質転換体は、上記ポリヌクレオチドまたは組換え発現ベクターが、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入されている。このため、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを発現させることによって、この形質転換体のアルミニウム耐性を高めることができる。
アルミニウム耐性が高められた形質転換体は、アルミニウムによる生育阻害が低減されるため、酸性土壌での生産性を高めることができる。
本発明にかかる形質転換キットは、少なくとも上記のポリヌクレオチド、あるいは、上記の組換え発現ベクターのいずれかを含むことを特徴とするものである。上記の形質転換キットを用いれば、本発明にかかるポリペプチドを発現する形質転換体を簡便かつ効率的に得ることができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドによれば、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを産生することによって、アルミニウム耐性を付与することができる。本発明のポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターがポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入された本発明の形質転換体には、アルミニウム耐性が付与されるため、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
Als1遺伝子およびその遺伝子にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を示す模式図である。 Als1遺伝子、および、T−DNA挿入株とTos17破壊株の挿入場所を示す模式図である。 実施例2における、Als1遺伝子の発現量を、定量RT−PCRによって解析した結果を示す図である。 Als1遺伝子をマッピングした模式図である。 野生型イネとals1変異体との生育状態を比較する図である。 野生型イネとals1変異体との生育状態を比較する図である。 実施例3において、根の相対伸長を比較したグラフである。 野生型イネの根とシュートについて、アルミニウムの有無によるAls1遺伝子の発現量を比較したグラフである。 野生型イネの根とシュートについて、Als1遺伝子およびアクチンの発現を確認した定量RT−PCRの結果を示す図である。 野生型イネの根の異なる部位とシュートについて、Als1遺伝子およびアクチンの発現を確認した定量RT−PCRの結果を示す図である。 野生型イネの根の異なる部位とシュートについて、Als1遺伝子の発現量を比較したグラフである。 図8(a)および図8(b)における根端および根基部の位置を示す図である。 als1変異体Als1遺伝子を導入した形質転換体のアルミニウム耐性の解析結果を示すグラフである。 図9の各植物の根に存在するアルミニウムを染色した結果を示す図である。 Als1−GFP融合遺伝子を導入した形質転換体について、Als1タンパク質の発現部位を示す図である。 Als1タンパク質に対する抗体を用いた抗体染色の結果を示す図である。 Als1遺伝子の発現量と、アルミニウム処理後の経過時間との関係を示すグラフである。 Als1遺伝子の発現量と、アルミニウム処理濃度との関係を示すグラフである。 コシヒカリおよびals1変異体について、細胞内のアルミニウムを確認した図である。
本発明の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。なお、配列番号1は、Als1遺伝子(cDNA)の塩基配列である。配列番号2は、Als1タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号3および4は、配列番号1の塩基配列に、非翻訳領域(UTR)が結合してなる完全cDNA(full cDNA)の塩基配列である。配列番号5は、Als遺伝子を含む野生型イネ(コシヒカリ)のゲノム遺伝子の塩基配列である。
(1)本発明にかかるポリヌクレオチド
本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドをコードするものである。
ここで、上記「ポリヌクレオチド」は、「核酸」または「核酸分子」とも換言でき、ヌクレオチドの重合体が意図されている。また、「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」とも換言でき、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。また、「配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド」とは、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列からなるポリヌクレオチドを示している。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであって、下記の(a)または(b)のポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
上記(a)または(b)のポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性(抵抗性)に関与するポリヌクレオチドである。
上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味し、例えば、60℃で2×SSC 洗浄条件下で結合することを意味する。上記ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning (Third Edition)」 (J. Sambrook & D. W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001) に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる。
上記のポリヌクレオチドのうち、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、植物界において初めて同定された、アルミニウム耐性に関与する遺伝子である。
配列番号1のポリヌクレオチドは、野生型(日本型)イネの由来のAls1遺伝子の塩基配列(cDNA配列)である。イネは、アルミニウム耐性の強い代表的な植物である。特に、日本型イネ品種は、強いアルミニウム耐性を有するため、酸性土壌で栽培しても、生育は阻害されにくい。このように、配列番号1は、アルミニウム耐性の強い野生型イネに由来するアルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチド(野生型Als1遺伝子)である。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)または(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
上記「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、置換、もしくは付加ができる程度の数(例えば20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下)のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されることを意味する。このような変異ポリペプチドは、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在する同様の変異ポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
配列番号2は、本発明が見出したアルミニウム耐性に関与するポリペプチドである。このポリペプチドは、例えば、配列番号1に示される野生型Als1遺伝子にコードされる。
このようなアミノ酸の変異は、本発明にかかるポリヌクレオチドの変異(欠失、置換、もしくは付加)によって生じる。後述の実施例のように、アルミニウムに感受性を示す突然変異体(als1変異体)は、野生型のイネに比べてアルミニウム耐性が弱い。als1変異体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、123番目〜127番目のアミノ酸が欠失している。これにより、als1変異体のアルミニウム耐性は、顕著に低下する。このため、als1変異体は、アルミニウムに対して感受性となり、アルミニウムにより生育が阻害される。
従って、配列番号2に示されるアミノ酸に生じる変異は、123番目〜127番目のアミノ酸を保持するような変異であることが好ましい。
本発明者は、後述する実施例に示すように、本発明にかかるポリヌクレオチドの1つであるイネのアルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドが、イネの第6染色体に座乗することを明らかにした。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記ポリヌクレオチドのフラグメントであるオリゴヌクレオチドであってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖(コード鎖)およびアンチセンス鎖(非コード鎖)といった各1本鎖DNAやRNA(例えば、mRNA)を包含する。また、DNAには例えばクローニングや化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。本発明にかかるポリヌクレオチドの一例である、配列番号1に示す塩基配列は、配列番号2に示すポリペプチドのcDNA配列である。
さらに、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。例えば、配列番号1に示すcDNA配列は、配列番号2に示すポリペプチドのORF(Open Reading Frame)である。配列番号3および4に示す塩基配列は、配列番号1に示すcDNA配列に、非翻訳領域を含んだ全長cDNA配列である。なお、配列番号5に示す塩基配列は、野生型コシヒカリ第6染色体のゲノム配列の部分配列である。配列番号3および4に示す塩基配列は、配列番号5に示す塩基配列に由来する、cDNA配列でもある。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公知の技術により、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、本発明にかかるポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列および/または長さのものを用いてもよい。このプローブは、配列番号1に示すAls1遺伝子において、als1変異体では欠失している配列の少なくとも一部に、特異的にハイブリダイズするものであることが好ましい。これにより、確実にアルミニウム耐性に関与する遺伝子を取得できる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明にかかるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。また、例えば、公知のイネの配列情報に基づいて、Als1遺伝子領域を増幅できるようなプライマーを設計し、そのプライマーを用いて、ゲノムDNA(またはcDNA)またはRT−PCR産物を鋳型にして、Als1遺伝子領域を増幅することによっても、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得することができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、イネ科植物であることが好ましい。後述する実施例においては、野生型のイネ(コシヒカリ)から本発明にかかるポリヌクレオチドの1つを取得しているが、これに限定されるものではない。
なお、本発明にかかるポリヌクレオチドは、これまでに明らかにされてこなかった、植物のアルミニウム耐性メカニズムの解明に利用することができる。
(2)本発明にかかるポリペプチド
本発明にかかるポリペプチドは、上記(1)に記載したポリヌクレオチドの翻訳産物であり、少なくともアルミニウム耐性に関与するものである。
ここで、上記「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」とも換言できる。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片を示している。
本発明にかかるポリペプチドは、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。ここで、「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質を示す。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されたものとする。
本発明にかかるポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主によっては、本発明にかかるポリペプチドは、グリコシル化など、糖鎖修飾される場合もある。本発明にかかるポリペプチドには、このような修飾されたポリペプチドも含まれる。
本発明にかかるポリペプチドとしては、例えば、少なくともアルミニウム耐性に関与するポリペプチドであって、以下の(a)または(b)のポリペプチドである。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、Als1遺伝子にコードされる291アミノ酸からなるAls1タンパク質である。配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号1〜3のいずれかに示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの翻訳産物である。また、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、123〜127番目のアミノ酸は、als1変異体では欠失している。このため、上記(b)のポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、123〜127番目のアミノ酸を保持するものであることが好ましい。
なお、図1に示すように、Als1遺伝子は、ABCトランスポーターのATPaseドメイン様タンパク質にコードされている。
また、上記ポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合してなるポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含むものであってもよい。ここでいうポリペプチド以外の構造としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
(3)形質転換用マーカー遺伝子
本発明にかかるポリヌクレオチドは、形質転換用マーカー遺伝子として利用することができる。すなわち、本発明にかかる形質転換体選抜用マーカー遺伝子は、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチドからなるものであればよい。本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性を付与する。このため、本発明にかかるポリヌクレオチドを導入された細胞は、アルミニウム存在下でも、生育が阻害されない。これは、アルミニウムを排除した結果、アルミニウム蓄積量が減少するためである。従って、アルミニウム存在下での生育状態またはアルミニウムの蓄積量(アルミニウム吸収量)を測定することにより、当該ポリヌクレオチドが導入された細胞を選抜することができる。
具体的には、本発明にかかるポリヌクレオチドを形質転換用マーカー遺伝子として利用するには、例えば、当該ポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを構築し、当該発現ベクターを目的の細胞に導入する。当該発現ベクターが導入され、アルミニウム耐性を付与するポリペプチドが発現している細胞のアルミニウム蓄積量は減少する。従って、アルミニウム存在下で培養して、発現ベクターの導入前後のアルミニウム蓄積量を測定することによって、アルミニウムに関与しているポリヌクレオチドが発現している細胞を選抜することができる。また、例えば、アルミニウム耐性が強い品種を選抜することもできる。
上述の例では、本発明にかかるポリヌクレオチドを形質転換細胞に発現させる遺伝子とマーカー遺伝子との両方の目的で用いているが、本発明にかかるポリヌクレオチドをマーカー遺伝子としてのみ用いることも可能である。また、例えば、植物のカルス細胞に特異的な転写プロモーターを使用することにより、本発明にかかるポリヌクレオチドの選択マーカーとしての発現時期の制御も可能である。この場合は、さらに目的の細胞内で発現させたいタンパク質をコードする遺伝子を挿入した発現ベクターを構築し、当該発現ベクターを用いて形質転換すればよい。また、本発明にかかるポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを構築せずに、本発明にかかるポリヌクレオチドを単独で目的の細胞に導入することも可能である。
また、配列番号1に示されるポリヌクレオチドのうち、3182〜3196番目の塩基は、als1変異体では欠失している。このため、配列番号1に示される塩基配列の3182〜3196番目の塩基を含むポリヌクレオチドは、本発明にかかるマーカー遺伝子として利用することができる。
例えば、配列番号1に示されるポリヌクレオチドにおいて、3182〜3196番目の塩基を含む20〜100個の連続した塩基からなるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性の強い細胞を選抜するために利用することができる。
すなわち、このようなポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与する細胞(アルミニウム耐性の強い細胞)を選抜するためのマーカー遺伝子として利用することができる。
(4)本発明にかかる組換え発現ベクターおよび形質転換キット
本発明にかかる組換え発現ベクターは、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されるものではない。例えば、配列番号1〜3に示すcDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。また、作製方法も公知の方法を用いて行えばよい。
ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、ホスト細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。
本組換え発現ベクターは、本発明にかかるポリペプチドを発現させるために用いることができることはいうまでもないが、本発明にかかるポリヌクレオチドをマーカー遺伝子として利用し、他の遺伝子を組み込んで当該他の遺伝子がコードするタンパク質を発現させるための組換え発現ベクターとしても利用できる。
本発明にかかるポリヌクレオチドがホスト細胞に導入されたか否か、さらにはホスト細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、ハイグロマイシンのような抗生物質に抵抗性を与える薬剤耐性遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明にかかるポリヌクレオチドとを含むプラスミド等を発現ベクターとしてホスト細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明の遺伝子の導入を確認することができる。
上記ホスト細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、イネ,きゅうり,アブラナ,またはトマト等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
上記発現ベクターをホスト細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、アグロバクテリウム感染法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびパーティクルガン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
本発明にかかる形質転換キットは、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチド、または、本発明にかかる組換え発現ベクターの少なくともいずれかを含むものであればよい。その他の具体的な構成については特に限定されるものではなく、必要な試薬や器具等を適宜選択してキットの構成とすればよい。当該形質転換キットを用いることにより、簡便かつ効率的に形質転換細胞を得ることができる。
(5)本発明にかかる形質転換体
本発明にかかる形質転換体は、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチド、または、上記(4)に記載の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドが発現している形質転換体であれば、特に限定されるものではない。ここで「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、生物個体を含む意味である。
また、ここで、「ポリヌクレオチドが導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味するが、本発明では、これに加えてゲノム中に含まれる本発明のポリヌクレオチドが生体内で発現している場合も含むものとする。
形質転換体の作製方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、例えば、上述した組換え発現ベクターをホスト細胞に導入して形質転換する方法を挙げることができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記(4)においてホスト細胞として例示した植物細胞等を挙げることができる。
本発明にかかる形質転換体は、植物細胞または植物体であることが好ましい。このような形質転換植物には、アルミニウム耐性が付与される。このため、細胞内または植物体内において、アルミニウムの含有量(蓄積量)を減少することができる。そして、上記ポリヌクレオチドまたは組み換え発現ベクターが、ポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入された上記形質転換体では、アルミニウム耐性が付与されることにより、根からアルミニウムを排除する結果、アルミニウムの吸収が抑制され、アルミニウムの蓄積量を減少させることができる。これにより、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。
本発明の形質転換植物は、本発明にかかるポリヌクレオチドを導入されているため、アルミニウム耐性を有する。このため、アルミニウムによる生育阻害を低減することができる。
なお、植物体の形質転換に用いられる組換え発現ベクターは、当該植物細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば、特に限定されるものではない。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系等のバイナリーベクターを用いることが好ましい。バイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。また、植物体内で遺伝子を発現させることが可能なプロモーターを有するベクターであることが好ましい。プロモーターとしては公知のプロモーターを好適に用いることができ、具体的には、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、ユビキチンプロモーターやアクチンプロモーターを挙げることができる。なお、植物細胞には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
植物細胞への組み換え発現ベクターの導入には、アグロバクテリウム感染法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびパーティクルガン法等、従来公知の方法を用いることができる。また、形質転換細胞から植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて公知の方法で行うことが可能である。
ゲノム内に本発明にかかるポリヌクレオチドが導入された形質転換植物体がいったん得られれば、当該植物体から得られる種子にも当該ポリヌクレオチドが導入されている。本発明には、形質転換植物から得られる種子も含まれる。
(6)本発明にかかる食品
本発明の食品は、本発明にかかる形質転換体を含むものである。すなわち、この食品は、アルミニウム耐性が付与された形質転換体を含むものである。
本発明の食品には、ヒトが摂取するものはもちろん、家畜に与える飼料なども含まれる。
コメは、日本ばかりではなく、世界各地で主食とされている消費量の多い植物である。また、果物や野菜も、生産量および消費量が多い。このため、これらの農作物は、特に安全性が重要視される。
従って、高いアルミニウム耐性が付与された形質転換体を含む食品は、コメ、野菜、および果物のような農産物であることが好ましい。これにより、安全性が高く、有用な米(イネ)、野菜、および果物の栽培を実現できる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下の実施例では、アルミニウム感受性突然変異体(als1変異体)を利用したマップベースクローニングによって、アルミニウム耐性遺伝子の単離に成功した。なお、als1変異体は、本発明者が以前に取得したものであり、アルミニウム耐性の強い日本型イネ品種(コシヒカリ)から単離されたものである。図5(a)および図5(b)は、野生型イネ(WT)およびals1変異体について、アルミニウム存在下または非存在下における、生育状態を示す図である。図5(a)および図5(b)に示すように、als1変異体は、酸性土壌で生育が阻害されており(図5(a))、特にアルミニウム存在下、根の伸張が阻害されている(図5(b))。
〔実施例1〕
als1変異体と、カサラスとの交配から得たF2集団を用いて、まずはInDelマーカーにより、目的遺伝子であるAls1遺伝子をラフマッピングした。その結果、Als1遺伝子は、第6染色体に座乗していることが明らかとなった。
図4は、Als1遺伝子のマッピングの模式図である。図4に示すように、Als1遺伝子(図中Als1)は、第6染色体の、113.4〜115.6cMの間の領域に存在する。すなわち、Als1遺伝子は、マーカーMaOs0624とマーカーMaOs0617との間の領域に存在する。そして、この領域を含む、PACクローンAP003770と、PACクローンAP003771とを選抜した。
次に、選抜したクローンを用いて、新たなInDelマーカーおよびCAPSマーカーを設計し、ファインマッピングを行った。その結果、Als1遺伝子の候補領域を88kbにまで絞り込むことができた。Als1遺伝子の候補領域は、マーカーMaOs0642とマーカーMaOs0654との間に存在した。
TIGRの予測から、Als1遺伝子の候補領域(マーカーMaOs0642とマーカーMaOs0654との間の領域)には、14個の遺伝子(図4の上から3段目)が存在した。このうち、7個の遺伝子は、レトロトランスポゾン関連の遺伝子であったため、残り7個の遺伝子の翻訳領域について、野生型とals1変異体との配列を比較した。その結果、als1変異体に15塩基対が欠損した遺伝子を見出し、その遺伝子をAls1遺伝子と推定した。
図2は、Als1遺伝子、および、T−DNA挿入株とTos17破壊株の挿入場所を示す模式図である。Als1遺伝子(ゲノム遺伝子)は、全長3015bpからなる。Als1遺伝子は、4つのエクソン(876bP)と、3つのイントロンとから構成される。配列番号5において4つのエクソンは、354〜894番目の塩基,992〜1179番目の塩基,3126〜3470番目の塩基,および,3567〜4027番目の塩基である。
〔実施例2〕
次に、推定Als1遺伝子のTos17破壊株およびT−DNA挿入株を用いて、実施例1でクローニングした遺伝子(推定Als1遺伝子)の確認を行った。T−DNA挿入株としては、推定Als1遺伝子のエクソンまたはイントロンが破壊された系(3D−02176,3A−02044)を用い、Tos17破壊株としては、エクソンに外来遺伝子が挿入された系(NG0545)を用いた。
その結果、Tos17破壊株およびT−DNA挿入株のアルミニウム耐性は、著しく低下していた。
図3は、Als1遺伝子の発現量を、定量RT−PCRによって解析した結果を示す図である。図3に示すように、野生型(WT)では確認されたAls1遺伝子の発現が、Tos17およびT−DNA系では確認されなかった。なお、アクチンは全ての系で確認された。
〔実施例3〕
次に、野生型イネと、als1変異体と、実施例2のTos破壊株およびT−DNA挿入株との機能解析を行った。
図6は、各系における、根の伸長量を比較したグラフである。なお、このグラフでは、コントロール(アルミニウム非存在下での根の伸長量)に対する%を示している。図6に示すように、野生型イネ以外の系では、根の相対伸長が、顕著に低下した。
図7(a)は、野生型イネの根とシュートについて、アルミニウム存在下および非存在下における、Als1遺伝子の発現量を比較したグラフである。図7(b)は、同じく、Als1遺伝子およびアクチンの発現を確認した定量RT−PCRを示す図である。図7(a)および(b)に示すように、Als1遺伝子は、アルミニウム存在下、根に局在化して発現した。
図8(a)は、野生型イネについて、根の先端(根端から1cmまで),根の基部(根端からさらに1cm),およびシュートにおけるAls1遺伝子およびアクチンの発現を確認した定量RT−PCRを示す図である。図8(b)は、図8(a)と同じく、各部におけるAls1遺伝子の発現量を比較した図である。図8(c)は、図8(a)および図8(b)における、根端および根基部の位置を示す図である。図8に示すように、Als1遺伝子は、シュート(地上部)に比べて、根で多く発現しており、特に、アルミニウムによって根の先端での発現がより多く増加した。
〔実施例4〕
次に、単離したアルミニウム耐性遺伝子(Als1遺伝子)をals1変異体に導入し、相補性実験を行った。その結果、独立した形質転換植物4ライン(B79−1,8−1,19−2,35−1)を得た。図9は、これらの形質転換植物について、アルミニウム耐性を解析した結果を示すグラフである。このグラフでは、比較のために、WT(野生型イネ)、als変異体、ベクター制御系ラインについての根の伸長率の結果も示している。図9のように、Als遺伝子が導入された組換え系(形質転換植物)では、アルミニウム耐性が付与されている。これにより、単離したAls1遺伝子が、アルミニウム耐性遺伝子であることが確認された。
また、図10は、図9の各植物(als1変異体(1本),WT(1本),形質転換植物(TG)(2本),ベクターコントロール(VC)(2本))の根に存在するアルミニウムを、エリオクロムシアニン(Eriochrom Cyanine)により、染色した結果を示す図である。図10のように、Als遺伝子が導入された形質転換植物(TG)では、野生型(WT)と同様に、根のアルミニウム沈積が少なくなっていることが確認された。
〔実施例5〕
次に、Als1遺伝子に、Als1プロモータおよびGFPの誘導遺伝子を連結させたベクターを用いてイネを形質転換した。図11は、形質転換体について、Als1タンパク質の発現部位を検討した結果を示す図である。図11中、「+Al」はアルミニウム処理したことを示し、「−Al」はアルミニウム処理していないことを示し、「2mmおよび20mm」は、それぞれ根の先端からの位置を示している。図11のように、Als1タンパク質は、根の先端では全ての細胞に発現し、根の基部(側根)では表皮細胞を除く細胞に発現することが確認された。さらに、Als1タンパク質が細胞膜に局在していることも確認された。
また、図12は、Als1タンパク質に対する抗体を用いて、抗体染色した結果を示す図である。図12のように、図11のGFPの結果と同様、Als1タンパク質は、根の先端では略全ての細胞に発現し、根の基部では表皮細胞を除く細胞に局在化していることが確認された。
〔実施例6〕
次に、コシヒカリおよびals1変異体について、Als1遺伝子の発現量に対するアルミニウム処理濃度およびアルミニウム処理経過時間の影響について検討した。図13は、Als1遺伝子の発現量と、アルミニウム処理後の経過時間との関係を示すグラフであり、図14は、Als1遺伝子の発現量と、アルミニウム処理濃度との関係を示すグラフである。これらの図のように、Als1タンパク質の発現は、アルミニウム処理開始後2時間程度で誘導され(図13)、5μMのアルミニウムにより誘導され(図14)、ことが確認された。なお、図13および図14の縦軸は、アクチンの発現量を基準にした、Als1遺伝子の発現量の相対値である。
〔実施例7〕
次に、コシヒカリおよびals1変異体について、Morinにより細胞内のアルミニウムを観察した。図15は、その結果を示す図である。図15のように、als1変異体では細胞内にアルミニウムのシグナルが観察されたのに対し、野生型(コシヒカリ)ではそのシグナルは観察されなかった。これにより、Als1タンパク質が、細胞内に進入したアルミニウムを、細胞外に放出していることが確認された。
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
本発明のポリヌクレオチドは、植物において初めて同定された、アルミニウム耐性に関与する遺伝子である。この遺伝子を発現させることにより、アルミニウムによる植物の生育阻害を、低減できる。それゆえ、本発明は、特に農業、および食品産業に、好適に利用することができる。
【0021】

Claims (10)

  1. アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであって、
    下記の(a)または(b)のポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
    (i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
    (ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  2. アルミニウム耐性に関与するポリペプチドであって、
    下記の(a)または(b)のポリペプチド:
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  3. アルミニウムによる根の伸長阻害を防ぐものである請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 請求項2または3に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  5. 請求項1または4に記載のポリヌクレオチドからなる形質転換体選抜用マーカー遺伝子。
  6. 請求項1または4に記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
  7. 請求項1または4に記載のポリヌクレオチド、または、請求項6に記載の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを発現してなる形質転換体。
  8. 下記の(a)または(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを発現してなる形質転換体。
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  9. 請求項7または8に記載の形質転換体を含む食品。
  10. 請求項1または4に記載のポリヌクレオチド、あるいは、請求項5に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含むことを特徴とする形質転換キット。
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