JP2008054532A - アルミニウム耐性に関与する遺伝子、およびその利用 - Google Patents

アルミニウム耐性に関与する遺伝子、およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム耐性に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子の利用方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム感受性突然変異体(als2変異体)と、カサラスとの交配によって得られたF集団を用いたマップベースクローニングによって、アルミニウム耐性に関与する遺伝子(Als2遺伝子)を同定し、新規遺伝子として単離した。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム耐性に関与する新規遺伝子およびその利用に関するものである。
酸性土壌は、世界の耕地面積の約4割を占めている。また、酸性土壌は、植物の生育が阻害される典型的な問題土壌である。植物の生育阻害は、アルミニウム毒性によって引き起こされる。アルミニウムイオンは、低濃度(数μM)でも、すばやく根の伸長阻害を引き起こし、根からの養水分の吸収を阻害する。その結果、植物が、様々なストレスに弱くなる。このため、酸性土壌での植物の生産性は、非常に低い。
アルミニウムによる生育阻害は、植物の種類によって異なる。つまり、植物の種類によって、アルミニウム耐性は大きく異なる。イネ科植物の中では、イネのアルミニウム耐性は最も強い。イネ科植物のアルミニウム耐性は、イネ,ライ麦>コムギ>オオムギの順となる。
アルミニウム耐性は、植物の品種間でも大きく異なる。例えば、日本型イネ品種のアルミニウム耐性は、インド型イネ品種よりも強い。
しかし、イネの生産量が多い地域は、酸性土壌であることが多い。例えば、酸性硫酸土水稲栽培地域および酸性陸栽培地域であることが多い。しかも、イネの生産量が多い地域では、アルミニウム耐性の弱い品種のイネが栽培される。このため、イネの生産性が、非常に低くなる。このため、酸性土壌での植物の生産性を向上するために、アルミニウム耐性の強いイネの作出が、求められる。
このように、アルミニウムイオンは、植物の生育を阻害する最大の因子である。
本願発明者は、植物のアルミニウム耐性について、精力的に研究を行っており(例えば、特許文献1〜3,非特許文献1〜4参照)、イネからアルミニウム耐性に関与する遺伝子(Als1遺伝子)を単離することに成功している(特許文献4 本願出願時において未公開)。
特開2004−105164号公報(2004年4月8日公開) 特開2004−344024号公報(2004年12月9日公開) 特開2005−058022号公報(2005年3月10日公開) 特願2006−072706(2006年3月16日出願) Ma, J. F. 2005. Plant root responses to three abundant soil mineral: silicon, aluminum and iron. Crit. Rev. Plant Sci. 24, 267-281. Ma, J. F., Nagao, S., Huang, C. F., Nishimura, M. 2005. Isolation and characterization of a rice mutant hypersensitive to Al. Plant Cell Physiol. 46, 1054-1061. Ma, J. F., Shen, R., Zhao, Z., Wissuwa, M., Takeuchi, Y., Ebitani, T. and Yano, M.: Response of rice to Al stress and identification of quantitative trait loci for Al tolerance. Plant Cell Physiol. 43:652-659 (2002). Delhaize E, Ryan PR, Hebb DM, Yamamoto Y, Sasaki T and Matsumoto H 2004: Engineering high-level aluminum tolerance in barley with the ALMT1 gene. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 15249-15254
しかしながら、アルミニウム耐性に関与する遺伝子は、本願発明者によって、Als1遺伝子が同定されたにすぎず、植物のアルミニウム耐性メカニズムも、ほとんど解明されていない。
本発明の目的は、アルミニウム耐性に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子の利用方法を提供することにある。
本発明者は、アルミニウム耐性に関与する遺伝子について鋭意に検討した。その結果、アルミニウム感受性突然変異体(als2変異体)と、カサラスとの交配によって得られたF集団を用いたマップベースクローニングによって、当該遺伝子を同定し、その配列を特定することに成功して、本発明を完成させるに至った。
本発明の形質転換体の生産方法は、下記の(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを、発現可能に導入することを特徴としている。
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(d)以下の(iii)もしくは(iv)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(iii)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは、
(iv)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
上記の発明によれば、アルミニウム耐性が促進された(アルミニウム耐性が付与された)形質転換体を生産することができる。
ここで、本発明において「アルミニウム耐性」とは、アルミニウム存在下においても正常に成長できる植物の能力のことである。言い換えると、「アルミニウム耐性」は、アルミニウムによる生育阻害に対する抵抗性のことである。「アルミニウム」は、イオン化されているものでも、塩を形成しているものであってもよい。また、「アルミニウム」は、アルミニウムおよびアルミニウムを含む化合物を示すものとする。「アルミニウム耐性を促進する」とは、アルミニウム耐性能を向上させる(付与する)ことを示す。
本発明の形質転換体は、下記の(a)または(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(c)または(d)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが導入されており、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドを発現してなる形質転換体。
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド;
(c)配列番号6に示されるアミノ酸配列;
(d)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド。
この形質転換体は、異なる染色体に座乗するアルミニウム耐性を促進するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されており、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドを発現している。このため、この形質転換体は、アルミニウム耐性が付与されることにより、根からアルミニウムを排除する結果、アルミニウムの吸収が抑制され、アルミニウムの蓄積量を減少させることができる。これにより、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。それゆえ、酸性土壌での生産性を高めることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドであって、下記の(a)または(b)のポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
上記の発明によれば、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドを翻訳産物として得ることができる。
本発明のポリペプチドは、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドであって、下記の(a)または(b)のポリペプチドである。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列。
上記の発明によれば、アルミニウム耐性を抑制することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであってもよい。
上記の発明によれば、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドを翻訳産物として得ることができる。
本発明の形質転換体選抜用マーカー遺伝子は、前記いずれかのアルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドの少なくとも一部を含んでいることを特徴としている。
本発明にかかるアルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドは、それが発現している細胞(特に植物細胞)のアルミニウム耐性を抑制することができる。このため、そのようなポリヌクレオチドを含むマーカー遺伝子は、アルミニウム耐性が弱い品種を選抜するために、利用することができる。
なお、アルミニウム耐性を促進するポリヌクレオチドの少なくとも一部を含むマーカー遺伝子によれば、アルミニウム耐性を抑制することができる。このため、そのようなポリヌクレオチドを含むマーカー遺伝子は、アルミニウム耐性が強い品種を選抜するために、利用することができる。
本発明にかかる組換え発現ベクターは、上記の何れかのアルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドを含むものである。上記の組換え発現ベクターは、本発明にかかるポリヌクレオチドを細胞に導入するための組換え発現ベクターとして利用できるだけでなく、本発明にかかるポリヌクレオチドを選抜用マーカーとして用いた場合には、他の遺伝子を細胞に導入するための組換え発現ベクターとしても利用できる。
本発明にかかる形質転換体は、上記のポリヌクレオチドまたは上記の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドを発現しているものである。ここで、上記ポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであるため、上記形質転換体は、植物(形質転換植物)であることが好ましい。
この形質転換体は、上記アルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドまたは組換え発現ベクターが、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入されている。このため、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドを発現させることによって、この形質転換体のアルミニウム耐性を減少させることができる。
本発明の食品は、前記形質転換体を含むことを特徴としている。すなわち、この食品は、アルミニウム耐性が促進または抑制された形質転換体を含むものである。
本発明の形質転換キットは、少なくとも上記のポリヌクレオチド、あるいは、上記の組換え発現ベクターのいずれかを含むことを特徴とするものである。本発明にかかる形質転換キットは、上記の形質転換キットを用いれば、本発明にかかるポリペプチドを発現する形質転換体を簡便かつ効率的に得ることができる。
本発明によれば、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを産生させることによって、アルミニウム耐性を促進または抑制することができる。
特に、本発明のポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターがポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入された、アルミニウム耐性が高められた形質転換体には、アルミニウム耐性が付与されるため、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。それゆえ、酸性土壌での生産性を高めることができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。なお、配列番号1は、変異型イネ(als2変異体)に由来する変異型als2遺伝子(cDNA)の塩基配列である。配列番号2は、配列番号1の変異型als2遺伝子にコードされるポリペプチド(変異型als2タンパク質)アミノ酸配列である。配列番号3は、野生型イネ(日本晴およびコシヒカリ)に由来する野生型Als2遺伝子(cDNA)の塩基配列である。配列番号4は、配列番号3の野生型Als2遺伝子にコードされるポリペプチド(野生型Als2タンパク質)のアミノ酸配列である。
(1)本発明にかかるポリヌクレオチド
本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドをコードするものである。「アルミニウム耐性に関与する」とは、アルミニウム耐性を促進(増強)または抑制(減少)させることを示す。
ここで、上記「ポリヌクレオチド」は、「核酸」または「核酸分子」とも換言でき、ヌクレオチドの重合体が意図されている。また、「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」とも換言でき、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。また、「配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド」とは、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列からなるポリヌクレオチドを示している。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリヌクレオチドであって、下記の(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(c)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(d)以下の(iii)もしくは(iv)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(iii)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(iv)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
上記(a)または(b)のポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドである。上記(c)または(d)のポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性を促進するポリヌクレオチドである。このように、配列番号1および3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与する遺伝子である。
具体的には、配列番号1のポリヌクレオチドは、イネの変異体(als2変異体)由来の変異型als2遺伝子の塩基配列(cDNA配列)である。als2変異体は、野生型のイネに比べてアルミニウム耐性能が低い突然変異体である。このように、配列番号1は、アルミニウム耐性能が低いals2変異体由来のアルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチド(変異型als2遺伝子)である。
一方、配列番号3のポリヌクレオチドは、野生型イネ(日本晴およびコシヒカリ)において発現している、野生型イネ由来の野生型Als2遺伝子の塩基配列(cDNA)である。イネは、アルミニウム耐性の強い代表的な植物である。特に、日本型イネ品種は、強いアルミニウム耐性を有するため、酸性土壌で栽培しても、生育は阻害されにくい。このように、配列番号3は、アルミニウム耐性能が強い野生型イネに由来するアルミニウム耐性を促進するポリヌクレオチド(野生型Als2遺伝子)である。
上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味し、例えば、60℃で 2×SSC 洗浄条件下で結合することを意味する。上記ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning (Third Edition)」 (J. Sambrook & D. W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加され、かつ、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチド;
(c)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加され、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド。
上記「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、置換、もしくは付加ができる程度の数(例えば20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下)のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されることを意味する。このような変異ポリペプチドは、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在する同様の変異ポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
配列番号4は、本発明者が見出したアルミニウム耐性を促進するポリペプチドである。このポリペプチドは、例えば、配列番号3に示される野生型Als1遺伝子にコードされる。また、配列番号4のポリペプチドに変異が生じると、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドとなる。
このようなアミノ酸の変異は、本発明にかかるポリヌクレオチドの変異(欠失、置換、もしくは付加)によって生じる。例えば、後述の実施例のように、アルミニウムに感受性を示す突然変異体(als2変異体)は、野生型のイネに比べてアルミニウム耐性が弱い。そこで、配列番号1の変異型als2遺伝子と、配列番号3の野生型Als2遺伝子とを比較すると、変異型als2遺伝子では、野生型Als2遺伝子の953番目の塩基(G)が欠失している。このため、野生型Als2タンパク質と変異型als2タンパク質とでは、その欠失部位以降の遺伝子にコードされるアミノ酸配列が異なる。そして、このようなアミノ酸配列の変異により、変異型als2タンパク質は、アルミニウム耐性が抑制される。つまり、als2変異体のアルミニウム耐性は、野生型イネのアルミニウム耐性よりも。顕著に低くなる。その結果、als2変異体は、アルミニウムに対して感受性となり、アルミニウムにより生育が阻害される。
本発明者は、後述する実施例に示すように、本発明にかかるポリヌクレオチドの1つであるイネのアルミニウム耐性を向上させるポリヌクレオチド(Als2遺伝子)が、イネの第12染色体に座乗することを明らかにした。
なお、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記ポリヌクレオチドのフラグメントであるオリゴヌクレオチドであってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖(コード鎖)およびアンチセンス鎖(非コード鎖)といった各1本鎖DNAやRNA(例えば、mRNA)を包含する。また、DNAには例えばクローニングや化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。本発明にかかるポリヌクレオチドの一例である、配列番号1に示す塩基配列は、配列番号2に示すポリペプチドのcDNA配列である。
さらに、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公知の技術により、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、本発明にかかるポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列および/または長さのものを用いてもよい。このプローブは、配列番号3に示すAls2遺伝子において、als2変異体では欠失している配列の少なくとも一部に、特異的にハイブリダイズするものであることが好ましい。これにより、確実にアルミニウム耐性を促進する遺伝子を取得できる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明にかかるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。また、例えば、公知のイネの配列情報に基づいて、Als2遺伝子領域を増幅できるようなプライマーを設計し、そのプライマーを用いて、ゲノムDNA(またはcDNA)またはRT−PCR産物を鋳型にして、Als2遺伝子領域を増幅することによっても、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得することができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、イネ科植物であることが好ましい。後述する実施例においては、野生型のイネ(コシヒカリ)およびals2変異体から本発明にかかるポリヌクレオチド(野生型Als2遺伝子および変異型als2遺伝子)を取得しているが、これに限定されるものではない。
このような本発明にかかるポリヌクレオチドは、植物のアルミニウム耐性メカニズムの解明に利用することができる。
(2)本発明にかかるポリペプチド
本発明にかかるポリペプチドは、上記(1)に記載したポリヌクレオチドの翻訳産物であり、少なくともアルミニウム耐性に関与するものである。
ここで、上記「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」とも換言できる。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片を示している。
本発明にかかるポリペプチドは、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。ここで、「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質を示す。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されたものとする。
本発明にかかるポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主によっては、本発明にかかるポリペプチドは、グリコシル化など、糖鎖修飾される場合もある。本発明にかかるポリペプチドには、このような修飾されたポリペプチドも含まれる。
本発明にかかるポリペプチドとしては、例えば、少なくともアルミニウム耐性に関与するポリペプチドであって、以下の(a)〜(d)のいずれかのポリペプチドである。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドである。
(c)配列番号4に示されるアミノ酸配列;または
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド。
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、変異型als2遺伝子にコードされる471アミノ酸(開始コドンを含む)からなる変異型als2タンパク質である。配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの翻訳産物である。
一方、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、野生型Als2遺伝子にコードされる465アミノ酸(開始コドンを含む)からなる野生型Als2タンパク質である。配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの翻訳産物である。
配列番号1に示される塩基配列(変異型als2遺伝子)は、配列番号3に示される塩基配列(野生型Als2遺伝子)の953番目の塩基(G)が欠失している。このため、野生型Als2タンパク質と変異型als2タンパク質とでは、その欠失部位以降の遺伝子にコードされるアミノ酸配列が異なる。このような変異により、上記(a)または(b)のポリペプチドは、アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドとなり、上記(c)または(d)のポリペプチドは、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドとなる。
なお、配列番号3の953番目の塩基(G)が欠失する変異以外にも、配列番号4のポリペプチドをコードするような変異が、配列番号1のポリヌクレオチドに生じることによっても、同様の結果となる。
また、上記ポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合してなるポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含むものであってもよい。ここでいうポリペプチド以外の構造としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
(3)形質転換用マーカー遺伝子
本発明にかかるポリヌクレオチドは、形質転換用マーカー遺伝子として利用することができる。すなわち、本発明にかかる形質転換体選抜用マーカー遺伝子は、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチドからなるものであればよい。本発明にかかるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与する遺伝子である。
特に、野生型Als2タンパク質をコードする野生型Als2遺伝子は、アルミニウム耐性を促進する。このため、野生型Als2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入された細胞は、アルミニウム存在下でも、生育が阻害されない。これは、アルミニウムを排除した結果、アルミニウム蓄積量が減少するためである。従って、アルミニウム存在下での生育状態またはアルミニウムの蓄積量(アルミニウム吸収量)を測定することにより、当該ポリヌクレオチドが導入された細胞を選抜することができる。
具体的には、本発明にかかるポリヌクレオチドを形質転換用マーカー遺伝子として利用するには、例えば、当該ポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを構築し、当該発現ベクターを目的の細胞に導入する。当該発現ベクターが導入され、アルミニウム耐性を付与するポリペプチドが発現している細胞のアルミニウム蓄積量は減少する。従って、アルミニウム存在下で培養して、発現ベクターの導入前後のアルミニウム蓄積量を測定することによって、アルミニウムに関与しているポリヌクレオチドが発現している細胞を選抜することができる。また、例えば、アルミニウム耐性が強い品種を選抜することもできる。
上述の例では、本発明にかかるポリヌクレオチドを形質転換細胞に発現させる遺伝子とマーカー遺伝子との両方の目的で用いているが、本発明にかかるポリヌクレオチドをマーカー遺伝子としてのみ用いることも可能である。また、例えば、植物のカルス細胞に特異的な転写プロモーターを使用することにより、本発明にかかるポリヌクレオチドの選択マーカーとしての発現時期の制御も可能である。この場合は、さらに目的の細胞内で発現させたいタンパク質をコードする遺伝子を挿入した発現ベクターを構築し、当該発現ベクターを用いて形質転換すればよい。また、本発明にかかるポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを構築せずに、本発明にかかるポリヌクレオチドを単独で目的の細胞に導入することも可能である。
また、配列番号3に示されるポリヌクレオチドのうち、953番目の塩基は、配列番号1に示される変異型als2遺伝子では欠失している。このため、配列番号3に示される塩基配列の953番目の塩基を含むポリヌクレオチドは、本発明にかかるマーカー遺伝子として利用することができる。
例えば、配列番号3に示されるポリヌクレオチドにおいて、953番目の塩基を含む20〜100個の連続した塩基からなるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性の強い細胞を選抜するために利用することができる。すなわち、このようなポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性の強い細胞を選抜するためのマーカー遺伝子として利用することができる。
一方、配列番号1に示されるポリヌクレオチドにおいて、953番目の塩基を含む20〜100個の連続した塩基からなるポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性の弱い細胞を選抜するためのマーカー遺伝子として利用することができる。
(4)本発明にかかる組換え発現ベクターおよび形質転換キット
本発明にかかる組換え発現ベクターは、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されるものではない。例えば、配列番号1または3に示すcDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。また、作製方法も公知の方法を用いて行えばよい。
ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、ホスト細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。
本組換え発現ベクターは、本発明にかかるポリペプチドを発現させるために用いることができることはいうまでもないが、本発明にかかるポリヌクレオチドをマーカー遺伝子として利用し、他の遺伝子を組み込んで当該他の遺伝子がコードするタンパク質を発現させるための組換え発現ベクターとしても利用できる。
本発明にかかるポリヌクレオチドがホスト細胞に導入されたか否か、さらにはホスト細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、ハイグロマイシンのような抗生物質に抵抗性を与える薬剤耐性遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明にかかるポリヌクレオチドとを含むプラスミド等を発現ベクターとしてホスト細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明の遺伝子の導入を確認することができる。
上記ホスト細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、イネ,きゅうり,アブラナ,またはトマト等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
上記発現ベクターをホスト細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、アグロバクテリウム感染法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびパーティクルガン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
本発明にかかる形質転換キットは、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチド、または、本発明にかかる組換え発現ベクターの少なくともいずれかを含むものであればよい。その他の具体的な構成については特に限定されるものではなく、必要な試薬や器具等を適宜選択してキットの構成とすればよい。当該形質転換キットを用いることにより、簡便かつ効率的に形質転換細胞を得ることができる。
(5)本発明にかかる形質転換体
本発明にかかる形質転換体は、上記(1)に記載した本発明にかかるポリヌクレオチド、または、上記(4)に記載の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドが発現している形質転換体であれば、特に限定されるものではない。ここで「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、生物個体を含む意味である。
また、ここで、「ポリヌクレオチドが導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味するが、本発明では、これに加えてゲノム中に含まれる本発明のポリヌクレオチドが生体内で発現している場合も含むものとする。
形質転換体の作製方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、例えば、上述した組換え発現ベクターをホスト細胞に導入して形質転換する方法を挙げることができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記(4)においてホスト細胞として例示した植物細胞等を挙げることができる。
本発明にかかる形質転換体は、植物細胞または植物体であることが好ましい。このような形質転換植物には、アルミニウム耐性が促進または抑制される。このため、細胞内または植物体内において、アルミニウムの含有量(蓄積量)を減少または増加させることができる。そして、上記ポリヌクレオチドまたは組み換え発現ベクターが、ポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入された上記形質転換体では、アルミニウム耐性が促進または抑制され、細胞内のアルミニウムを減少または増加させることができる。すなわち、野生型Als2タンパク質をコードする遺伝子が導入されると、アルミニウム耐性が促進され、変異型als2タンパク質をコードが導入されると、アルミニウム耐性が抑制される。
特に、アルミニウム耐性を促進するポリヌクレオチドまたは組み換え発現ベクターが、ポリペプチドの発現を促進させるプロモーターとともに導入された上記形質転換体では、アルミニウム耐性が付与されることにより、根からアルミニウムを排除する結果、アルミニウムの吸収が抑制され、アルミニウムの蓄積量を減少させることができる。これにより、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。
ここで、本発明者は、既に、イネにおけるアルミニウム耐性に関与する別の遺伝子(Als1遺伝子)を単離し、その塩基配列を特定している(特許文献4)。
配列番号5は、野生型イネのAls1遺伝子(cDNA)の塩基配列である。配列番号6は、配列番号5の野生型イネのAls1遺伝子にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列である。野生型Als1遺伝子は、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドをコードする。
Als1遺伝子は、イネの第6染色体に座乗しており、Als2遺伝子とは異なる部位に存在する。そして、この遺伝子の変異によって、アルミニウム耐性能が大きく異なる。
このようなアミノ酸の変異は、野生型Als1遺伝子の変異(欠失、置換、もしくは付加)によって生じる。アルミニウムに感受性を示す突然変異体(als1変異体)は、野生型のイネに比べてアルミニウム耐性が弱い。als1変異体は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、123番目〜127番目のアミノ酸が欠失している。これにより、als1変異体のアルミニウム耐性は、顕著に低下する。このため、als1変異体は、アルミニウムに対して感受性となり、アルミニウムにより生育が阻害される。
従って、配列番号6に示されるアミノ酸に生じる変異は、123番目〜127番目のアミノ酸を保持するような変異であることが好ましい。
また、野生型Als1タンパク質と野生型Als2タンパク質とは、いずれも、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドである。しかし、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、異なる染色体に座乗している。このため、野生型Als1遺伝子および野生型Als2遺伝子の少なくともいずれか一方を、植物に導入すれば、植物にアルミニウム耐性能を付与することができる。
さらに、野生型Als1遺伝子および野生型Als2遺伝子の両方を導入することによって、一方の遺伝子を導入した場合よりも、アルミニウムに対して強い耐性を有する植物を作製することができる。
すなわち、本発明にかかる形質転換体は、下記の(a)または(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、下記の(c)または(d)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが導入されており、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドを発現してなるものであってもよい。
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列アミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド;
(c)配列番号6に示されるアミノ酸配列;
(d)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたなアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドポリペプチド。
上記(a)および(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、野生型のAls2遺伝子であり、(c)および(d)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、野生型のAls1遺伝子である。いずれの遺伝子にコードされるポリペプチドも、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドである。このため、この形質転換体は、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドを発現させることによって、アルミニウム耐性が付与される。これにより、アルミニウム存在下でも、生育が阻害されない。これは、根からアルミニウムを排除する結果、アルミニウムの吸収が抑制され、アルミニウム蓄積量が減少するためである。従って、野生型Als1タンパク質および野生型Als2タンパク質を発現する形質転換体によれば、アルミニウムによる生育阻害を低減できる。
なお、ゲノム内に本発明にかかるポリヌクレオチドが導入された形質転換植物体がいったん得られれば、当該植物体から得られる種子にも当該ポリヌクレオチドが導入されている。本発明には、形質転換植物から得られる種子も含まれる。
植物体の形質転換に用いられる組換え発現ベクターは、当該植物細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば、特に限定されるものではない。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系等のバイナリーベクターを用いることが好ましい。バイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。また、植物体内で遺伝子を発現させることが可能なプロモーターを有するベクターであることが好ましい。プロモーターとしては公知のプロモーターを好適に用いることができ、具体的には、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、ユビキチンプロモーターやアクチンプロモーターを挙げることができる。なお、植物細胞には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
植物細胞への組み換え発現ベクターの導入には、アグロバクテリウム感染法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびパーティクルガン法等、従来公知の方法を用いることができる。また、形質転換細胞から植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて公知の方法で行うことが可能である。
(6)本発明にかかる食品
本発明の食品は、本発明にかかる形質転換体を含むものである。この食品は、アルミニウム耐性が付与された形質転換体を含むものであることが好ましい。TLO本発明の食品には、ヒトが摂取するものはもちろん、家畜に与える飼料なども含まれる。
コメは、日本ばかりではなく、世界各地で主食とされている消費量の多い植物である。また、果物や野菜も、生産量および消費量が多い。このため、これらの農作物は、特に安全性が重要視される。
従って、高いアルミニウム耐性が付与された形質転換体を含む食品は、コメ、野菜、および果物のような農産物であることが好ましい。これにより、安全性が高く、有用な米(イネ)、野菜、および果物の栽培を実現できる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下の実施例では、アルミニウムがすばやくイネの伸長阻害を起こす特徴を利用して、γ線照射したイネ(コシヒカリ)のM3の種子から、アルミニウム感受性突然変異体(als2変異体)をまず単離した。その後、この変異体とインド型イネ(Kasalath)と交配し、マッピング用の集団を作った。そして、マイクロサテライトマーカーなどを利用して、Als2遺伝子のクローニングを行った。また、以下の実施例では、比較のため、本発明者が既に取得しているals1変異体を用いた。
〔Al感受性の評価〕
als2変異体、als1変異体、および野生型(品種:コシヒカリ)間において、Al感受性を比較するために、0.5mM CaClを含む0、10、30および50μMのAl溶液に、5日齢の苗を、24時間曝した。相対的な根の伸長(RRE)を用いて、それぞれの種のAl感受性を評価した。図2は、根の伸長に及ぼすAl濃度の影響を示すグラフである。図2に示すように、10、30、および50μM Alにおける根の伸長は、als2変異体では、それぞれ36%、17%および12%まで抑制された。また、野生型(WT)では、それぞれ73%、51%、および32%まで抑制され、als1変異体では、それぞれ11%、8%、および8%まで抑制された。このことは、als2変異体のAl感受性が、als1変異体よりも低いことを示唆している。なお、相対的な根の伸長(RRE)は、(Al存在下における根の伸長/Al非存在下における根の伸長×100)として算出した。また、データは、平均値±SD(n=10)で示した。
また、als2変異体、als1変異体、野生型(品種:コシヒカリ)、およびals2変異体とals1変異体との交配群(als1×als2,als2×als1)の相対的な根の伸長(RRE)を比較したところ、図3に示すように、als1変異体およびals2変異体の根の伸長が、Alによって顕著に抑制されていることが確認された。
さらにこれらの感受性を比較するために、als2変異体、als1変異体および野生型の種を、酸性土壌(pH4.6)、石灰により調整された酸性土壌(pH5.4)、およびアルミニウム毒性のない沖積土壌(pH5.4)上にそれぞれ播種し、これらの植物を、毎日水道水を与えて培養した。1週間後、苗を慎重に抜き取った。根の泥を落すための洗浄後、それらの根の長さを比較した。図4および図5は、その結果を示す図である。これらの図に示すように、中性の土壌において成長させたときのals1変異体、als2変異体および野生型との間に、根の長さの違いは生じなかった。しかしながら、これらを酸性の土壌において成長させたとき、als1変異体およびals2変異体の根の成長はかなり抑制されたが、野生型の根の成長は抑制されなかった。興味深いことに、石灰を加えた酸性の土壌において、als2変異体の根の成長は、抑制されなかったが、als1変異体の根の成長は顕著に抑制された。この結果は、溶液中で成長させた結果と一致した。
〔Al含有量の決定〕
als2変異体と野生型との間で根におけるAlの蓄積を比較するため、als2変異体および野生型の根の各20本を、0.5mMのCaClを含む0、10、20および100μMのAl溶液に、12時間曝した。その後、3つの根の切片(0−1cm、1−2cm、および2−3cm)を、根から切り取った。図6(a)〜図6(c)は、根の異なる部分のAl含有量を示すグラフである。図6(a)〜図6(c)に示すように、Al濃度には関係なく、als2変異体の根の先端(0−1cm)におけるAl含有量は、野生型よりも顕著に高かった(図6(a))。しかし、基部では野生型と変異体との間にアルミニウム含量の差がほとんどなかった(図6(b)図6(c))。このことは、根の先端からAlを排除する効果は、als2変異体では崩壊していることを示唆している。なお、Al濃度の測定は、グラファイトファーネス原子吸光分析装置を用い、データは、平均値±SD(n=3)で示した。
〔遺伝子解析〕
als2変異体の遺伝子解析のために、als2変異体および野生型植物間の戻し交配から得られた164本のFの苗を用いた。まず、20μMのAl溶液におけるFの苗のAl感受性を調べた。そして、各々の苗の相対的な根の伸長(RRE)をそれらの親株と比較して、各苗の表現型を決定した。図7は、そのF集団のAl感受性を示すグラフである。図7に示すように、40本の苗(RRE<30%)がAl感受性を示し、124本の苗(RRE>40%)がAlに対して耐性を有していた。Al耐性の苗、およびAl感受性の苗の分離は、3:1の比率に一致した(x=0.033、0.75<P<0.9)。このことは、als2変異体のAl感受性は、単一の劣性遺伝子により制御されていることを示唆している。
〔Als2遺伝子のラフマッピング〕
イネのAl抵抗性に必要とされるAls2遺伝子のマッピングのために、als2変異体およびインディカ品種Kasalathの間の交配から得られた196本のFの苗のAl抵抗性を、20μM Al溶液を用いて評価した。図8は、そのF集団のAl感受性を示すグラフである。図8に示すように、RREの測定結果は、複峰性分布(bi-modal分布)を示した。2つのグループ間に重なりがあるものの、F集団はAl感受性グループと、Al抵抗性グループとに分離された。なお、RREが20%より少ない46本の苗をAl感受性であるとみなし、150本の苗(RRE>20%)をAl抵抗性であるとみなした。分離比率は1:3(x=0.245、0.5<P<0.75)であり、これにより、als2変異体は、単一の劣勢遺伝子により制御されていることが確認された。
次に、バルク法により、Als2遺伝子のマッピングを行った。バルク法による解析を行うために、Al感受性F植物およびAl耐性F植物のそれぞれ10本のDNAを同量、プールすることによって、2つの親株DNAおよび2つのバルクDNAを準備した。すべてのイネゲノムを網羅する、59の多型InDelマーカーを、Als2遺伝子の連鎖を調べるために用いた。また、プールしたDNAを用いて、Als2遺伝子に対する連鎖を調べた。その結果、Als2遺伝子は、第12染色体の短腕上に座乗していることが明らかとなった。図9は、Als2遺伝子をイネ第12染色体の短腕上にマッピングした模式図である。Al感受性の46本のF植物を用いた共分離解析により、図9に示すように、Als2遺伝子は、第12染色体上のC62896マーカーがこの遺伝子に連結される。また、Als2遺伝子は、C62896マーカーから13.7cMの距離を有していることを確認した。さらに、3つの多型マーカーMaOs1219、MaOs1229、およびMaOs1210を追加して、Als2遺伝子のマッピングしたところ、イネ第12染色体の短腕上にあるMaOs1219およびMaOs1229間において、1.1cMおよび4.5cM間隔で、それぞれAls2遺伝子をマッピングした(図9)。
〔Als2遺伝子のファインマッピング〕
次に、als2変異体/Kasalathからの986本のF植物の集団を用い、Als2遺伝子のファインマッピングを行った。図10は、Als2遺伝子をマッピングした遺伝子地図である。なお、図10中の数字は、それぞれのマーカーおよび遺伝子間の組換え体を示す。イネ第12染色体(12S〜12L)を示す線は、BACクローン(BACs)を示す線に部分的に重なる。Als2遺伝子は、後述のように、最終的に、InDelマーカーMaOs1250とMaOs1246の間にある38.5kbの候補領域にマッピングされた。
具体的には、初めに、als2変異体/Kasalath集団のAl感受性植物を用いて、3つの重複するBACクローンを網羅するInDelマーカーMaOs1219およびMaOs1237間において、Als2遺伝子をマッピングした。次に、MaOs1219およびMaOs1237間の25本の組み換え植物の遺伝子型を、F種子を用いてさらに確認した。これと同時に、2つのマーカー間に、5つの多型マーカーを発生させた。組み換え植物および多型マーカーを用いたこの遺伝子のさらなるマッピングにより、Als2遺伝子は、2つの重複するBACクローン(AL954825およびAL731761)上において、MaOs1250とMaOs1246との間に、2つのマーカーおよび遺伝子間の3および2の組換体のそれぞれとともに、位置することが示された。他の2つのマーカーMaOs1249およびMaOs1248は、この遺伝子に堅く結合されていた。
2つの堅く結合されたマーカーを用いて、この遺伝子の候補領域をさらに狭めるために、als2変異体/93−11からの356本のF植物を有するもう1つのマッピング集団を用いた。この集団において、MaOs1246とこの遺伝子との間に1つの組み換えが生じたが、2つのマーカーと遺伝子との間に組み換えは生じなかった。
図10に示すように、TIGRウェブサイト上の予想から、Als2遺伝子の候補領域(MaOs1250およびMaOs1246間の領域)には、35kbにわたり、6つの候補遺伝子が存在する。als2変異体におけるこれらの候補遺伝子のORFs配列は、1つの候補遺伝子(塗りつぶされた遺伝子)のコード配列において、ATGから953個目の塩基対の欠失が存在することが示される。これは、その候補遺伝子が、Als2遺伝子であることを示唆する。そして、Als2遺伝子の全長cDNAのアライメントから、この遺伝子がイントロンを有さず、ORFの長さは1398bpであることが明らかとなった。従って、Als2遺伝子は、465のアミノ酸からなるAls2タンパク質をコードすることが予測された。なお、図中の2つの矢印は、この遺伝子のRT−PCRのためのプライマーを示す。
〔Als2遺伝子の塩基配列〕
Als2遺伝子の候補遺伝子の配列を決定するために、als2変異体における候補遺伝子のORFを増幅させるようにプライマーを設計した。抽出されたPCR産物を、QuickStepTM2 PCR精製キットを用いて、そのプロトコルに従って精製した。その後、鋳型として用いる精製産物を、BigDye Terminator V3.1 cycle配列決定キットを用いて増幅させ、製造業者の使用方法に沿ってABI PRISMTM310シーケンサーを通して、配列を決定した。
なお、PCRおよび電気泳動の条件は、以下の通りである。1×PCRバッファ、1.5mM MgCl、50ng DNA、プライマーをそれぞれ0.5μM、dNTPをそれぞれ0.2mM、および0.5U Taq DNAポリメラーゼを含む10μl溶液中において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)遺伝子増幅を行った。PCRを以下のように遂行した。94℃で10分間おいた後、94℃での30秒間の変性を35回行った。次に、55℃で1分間アニーリングし、72℃で30秒間伸長させた。そして、72℃で5分間伸長させた。PCR産物を、0.5×TBEバッファ中の3%アガロースゲル上に分離させた。臭化エチジウムで染色し、UV下で可視化した。
〔マルチプル配列アライメントおよび系統樹〕
Als2遺伝子にコードされるAls2タンパク質のマルチプル配列アライメントを、BioEditソフトウエアのClustalW programを用いて行った。選択されたC2H2 Znフィンガータンパク質間の系統発生上の関係を分析するために、まずマルチプル配列アライメントを最初に行った。図1は、コシヒカリ、Kasalathおよびals2変異体のAls2タンパク質のアミノ酸配列を比較する図である。なお、マルチプル配列アライメントには、BioEditソフトウエアのClustalWプログラムを用いた。図1において、四角で囲った部分は、保存ドメインC2H2を示す。
また、ClustalX(1.81)ソフトウエアを用いて、neighbor−joining法により、系統樹を組み立てた。系統樹を、TreeViewにより表示した。図11は、作成した系統樹であり、C2H2型Znフィンガータンパク質間の系統発生的関係を示している。図11において、NP_915688、XP_470361、XP_483797、XP_474579、XP_466369、BAD36700、XP_475336、BAD82620、BAD29652、BAB64188、BAD30494、BAD72204、およびBAD35514は、イネ由来である。At1g34370、At5g22890、AtTT1、AtWIP2、AtWIP3、AtWIP4、AtWIP5、およびAtWIP6は、シロイヌナズナ由来である。ZmID1、ZmID−R1、ZmID−R7、ZmID−R10、およびZmID−R9は、トウモロコシ由来である。スケールバーは、1部位当たりのアミノ酸置換数を示している。
なお、ブラスト検索の結果、Als2遺伝子は、C2H2型のZnフィンガーファミリーに属することが示された。C2H2型のZnフィンガーファミリーは、亜鉛イオンと等位の、2つの保存システインおよびヒスチジンを含み、かつ核酸結合に関与することが予想される。C−X(1−5)−C−X12−H−X(3−6)−Hのパターンが、C2H2Znフィンガータンパク質の多くに見られた。このパターンのXは、いずれのアミノ酸であっても良く、数字は残基の数を示している。このパターンによると、Als2タンパク質は、2つのZnフィンガー構造を有する(図1)。コシヒカリおよびKasalathのいずれも、遺伝子中に2つの保存ドメインを有している。しかし、471個のアミノ酸配列に引き伸ばされた変異型als2タンパク質は、フレームシフトにより1個のZnフィンガードメインを失っている(図1)。なお、イネおよびシロイヌナズナ由来のAls2遺伝子のホモログが、それぞれ、5つおよび2つ、データベース上で発見された。そして、これらが1つの集団に分類されることが系統発生解析により示された(図11)。しかしながら、これらの機能は未知である。
〔RNAの単離およびリアルタイムRT−PCR〕
野生型イネ(品種:コシヒカリ)を用いて、Als2遺伝子の発現パターンを調べた。6日齢の野生型の苗を、それぞれ0または50μMのAl溶液を含む、0.5mM CaCl溶液に6時間曝した。次に、根の先端(0−1cm)、根の基底部(1−2cm)、および新芽を切り取り、RNA抽出およびcDNAを調製した。Als2遺伝子の相対的な発現を調べるために、リアルタイムRT−PCRを行った。図12は、Als2遺伝子の発現量を示すグラフである。図12に示すように、根の先端におけるこの遺伝子の発現レベルが、地上部における発現レベルの7倍を示した。また、これらを50μM Alに6時間曝したとき、根および地上部のいずれも、この遺伝子がAlにより誘導されなかった。なお、OsHistone3をコントロールとして用い、データは平均値±SD(n=3)で示した。
以上のように、als2変異体は、als1変異体と異なる。すなわち、als2変異体は、水溶液および土壌培地の両方において、als1変異体よりもAlに対して感受性が低かった(図2および5)。als2変異体の根におけるAlの蓄積パターンは、als1変異体とは異なっていた。als2変異体の根におけるAl蓄積量は、特に根の先端において、野生型のAl蓄積量よりも高く、外部のAl濃度に対して相関的に増加した(図6)。このことは、als2変異体において、根の先端からAlを排除するメカニズムが崩壊していることを示唆している。一方、als1変異体は、根の先端(0−1cm)において、野生型と同量のAlを蓄積し、根の基底部において、野生型よりも少ないAlを蓄積した(図示せず)。このことは、根の先端のような感受性の高い組織から、他のより感受性の低い組織への内部転流が、als1変異体において損傷を受けている可能性を示唆している。さらに、2つの遺伝子は異なるタンパク質をコードしていた。Als2遺伝子は、転写因子であると予想され、同定されていないC2H2型のZnフィンガーをコードしていると予想される。一方、Als1遺伝子は、推定上のABCトランスポーターをコードしている。従って、Als2遺伝子およびAls1遺伝子は、異なるプロセスによって、Alを解毒すると考えられる。
遺伝子地図に基づくクローニングアプローチを用いて、C2H2型ZnフィンガーをAls2遺伝子の候補遺伝子として定義した。これは、下記の2つの理由に基づく。
1)大きいマッピング集団(2つの集団からの総数1342のF植物)を用い、2つの近接して隣り合うマーカー、および遺伝子のそれぞれの間に、それぞれ3つの組換え体が存在した(図10)。さらに、2つの堅く結合したマーカーMaOs1248およびMaOs1249は、C2H2型Znフィンガーから6kbおよび2kbしか離れていなかった。
2)変異体における6つの候補遺伝子のORF配列は、この遺伝子(C2H2型Znフィンガー)のみが、そのコード配列に1塩基対の欠失を有することを示した。この欠失の結果、フレームシフトが生じるため、多くのアミノ酸が変化し、1つのZnフィンガードメインを失った。C2H2型Znフィンガーは、核酸結合に関与していると予想されたが、下流の遺伝子が、この転写因子によって調節されているかは明確ではない。
本発明のポリヌクレオチドは、アルミニウム耐性に関与する遺伝子である。このため、アルミニウム耐性を促進する遺伝子を発現させることにより、アルミニウムによる植物の生育阻害を、低減できる。それゆえ、本発明は、特に農業、および食品産業に、好適に利用することができ、ひいては、世界の食糧不足問題の解決に寄与する。
コシヒカリ、Kasalathおよびals2変異体のAls2タンパク質のアミノ酸配列を比較する図である。 als1変異体,als2変異体,および野生型イネの根の伸長に及ぼすAl濃度の影響を示すグラフである。 als1変異体,als2変異体,野生型イネ,およびals1変異体とals2変異体との交雑体(F)のAl耐性を比較するグラフである。 als2変異体,および野生型イネの生育状態を比較する図である。 als1変異体,als2変異体,および野生型イネの生育状態を比較する図である。 (a)〜(c)は、野生型イネ(コシヒカリ)およびals2変異体における、根の異なる部分のAl含有量を示すグラフである。 als2変異体および野生型イネ(コシヒカリ)の戻し交配から得られたF集団のAl感受性を示すグラフである。 als2変異体およびインド型イネ(Kasalath)の戻し交配から得られたF集団のAl感受性を示すグラフである。 Als2遺伝子をイネ第12染色体の短腕上にマッピングした模式図である。 Als2遺伝子の遺伝子地図である。 Als2遺伝子の系統図である。 Als2遺伝子の発現量を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 下記の(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを、発現可能に導入することを特徴とするアルミニウム耐性が促進された形質転換体の生産方法。
    (a)配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
    (b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (d)以下の(iii)もしくは(iv)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
    (iii)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは、
    (iv)配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  2. 下記の(a)または(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(c)または(d)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが導入されており、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチドを発現してなる形質転換体。
    (a)配列番号4に示されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド;
    (c)配列番号6に示されるアミノ酸配列;
    (d)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からり、かつ、アルミニウム耐性を促進するポリペプチド。
  3. アルミニウム耐性を抑制するポリヌクレオチドであって、
    下記の(a)または(b)のポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
    (i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
    (ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  4. アルミニウム耐性を抑制するポリペプチドであって、
    下記の(a)または(b)のポリペプチド:
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列。
  5. 請求項4に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項3または5に記載のポリヌクレオチドの少なくとも一部を含む形質転換体選抜用マーカー遺伝子。
  7. 請求項3または5に記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
  8. 請求項3または5に記載のポリヌクレオチド、または、請求項7に記載の組換え発現ベクターが導入されており、かつ、アルミニウム耐性に関与するポリペプチドを発現してなる形質転換体。
  9. 請求項2または8に記載の形質転換体を含む食品。
  10. 少なくとも請求項3または5に記載のポリヌクレオチド、あるいは、請求項5に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含むことを特徴とする形質転換キット。
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