JPWO2007105764A1 - 試料液分析用ディスク - Google Patents

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Abstract

本発明は、試料液と試薬との化学反応を検出する手段を有する試料液分析用ディスクであって、特に、試料液に固体状の試薬を「迅速かつ均一」に溶解させることにより、試料液の成分検出の正確性が向上された試料液分析用ディスクを提供することを目的とする。具体的に本発明は、ディスク状部材内に設けられた1または2以上のチャンバーと、各チャンバーを連結する流路を具備する試料液分析用ディスクであって;前記チャンバーのうち少なくとも1つに多孔質体が配置され、かつ前記多孔質体に試料液中の特定成分と反応する試薬が担持されている、試料液分析用ディスクを提供する。本発明の試料液分析用ディスクは、回転による遠心力、およびチャンバーや流路に生じる毛細管力により、試料液を移動させることができる。

Description

本発明は試料液分析用ディスクに関する。特に本発明は、ディスク内部に供給される血液などの試料液と、ディスク内部に配置された試薬を作用させて、その化学反応量を検出することにより、試料液の分析を行うための試料液分析用ディスクに関する。
近年、分析・解析・検査技術の進歩により、様々な物質の量を測定することが可能となってきている。特に臨床検査分野において、生化学反応、酵素反応または免疫反応などの特異反応に基づく測定原理の開発により、病態に反映する体液中の物質の量を測定できるようになった。
特に病態に反映する体液中の物質の量の測定は、ポイント・オブ・ケアテスティング(POCT)と呼ばれる臨床検査分野において注目される。POCTは、簡易かつ迅速に測定する方法、つまり検体を採取してから測定結果がでるまでの時間が短縮された測定方法を必要とする。したがって、POCTにおいて要求される測定装置は、簡易な測定原理であり、かつ小型で携帯性があり、操作性がよいことが求められる。
今日、POCTに対応する実用性の高い測定機器が提供されつつある。これらの提供は、簡易測定原理の構築、それに伴う生体成分の固相化技術、センサデバイス化技術、センサシステム化技術、微細加工技術、およびマイクロ流体制御技術などの進歩による。POCTに対応する測定機器として、ディスク上に展開した試料の定性・定量分析を行う装置の利用が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1に記載の技術を用いた測定機器は、血液等の試料を分析し、病気の診断などを行うことができる。図1は特許文献1における分析装置100を示す構成図である。分析装置100の構成は、いわゆる光ディスク装置に類似している。分析装置100は、分析用ディスク101;分析用ディスク101を回転させるスピンドルモーター201;分析用ディスク101内に供給される試料900(図2参照)または試料900と反応する試薬106(図2参照)に光ビームを照射する光ピックアップ212;光ピックアップ212をディスク101の半径方向に移動させるための送りモータ213;などを有する。
図2は、分析用ディスク101を示す構成図である。分析用ディスク101には、試料注入孔104および流路105が設けられ、流路105中には試料と反応して光学特性(透過率・色など)が変化する試薬106が塗布されている。前記試料注入孔104から試料900が注入された分析用ディスク101を、分析装置100に装着する。
分析装置100に装着された分析用ディスク101を、スピンドルモーター201によって回転させる。供給された試料900は、回転の遠心力により分析用ディスク101の流路105内に展開され、流路105内に塗布された試薬106と反応する。反応終了後、分析用ディスク101を回転させながら、光ピックアップ212を用いて、流路105内の試料900または試薬106に光ビームを照射する。照射された光ビームの反射光もしくは透過光を検出することで、試料900または試薬106の反応状態を検出して、試料の分析を行う。
特許文献1に記載された分析用ディスク101の機能に、複数の試薬を順次に溶解させたり、反応させたりするために、試料液を自在に移動および停止させる機能を付加した分析用ディスクも提案されている(例えば特許文献2を参照)。例えば、それぞれ異なる試薬が塗布された複数のチャンバーと、チャンバーそれぞれの間を連結する流路を設ける提案がされている。それにより例えば、血液中の血球を遠心分離により除去した後、血漿成分のみを試薬と反応させたりすることができる。
特許文献2に提案された、試料液分析用ディスクに展開された試料液を自在に移動および停止させるメカニズムを、図3を用いて説明する。
図3には、試料液分析用ディスクの回転中心300から円周上外側へ向けての一部分が示される。流路302は、試料液流動の上流側チャンバー301と、下流側チャンバー303とを連結する。流路302と上流側チャンバー301との接続部301aは、上流側チャンバー301における、回転中心300からの遠位部にある。一方、流路302と下流側チャンバー303との接続部303aは、下流側チャンバー303における、回転中心300からの近位部にある。図3における矢印310は遠心力がかかる方向である
流路302は、接続部301aから回転中心300から遠ざかる方向に延びた後;一旦、回転中心300に近づく方向に向かい、上流側チャンバー301の上流側の壁面よりも回転中心300に近い部位302aにまで延び;その後、再び回転中心300から遠ざかる方向に向かい、接続部303aに連結する。
チャンバー303の深さは、流路302の深さよりも深いので、流路302内を毛細管現象により移動した試料液は、接続部303aで毛細管現象による移動が妨げられる。そのため、試料液の移動は接続部303aで停止し、チャンバー303へ流入しない。試料液が停止した状態で、ディスクを回転させて遠心力を与えると、停止していた試料液が下流側チャンバー303に流入する。
流路304は、下流側チャンバー303と透過光測定チャンバー305とを、流路302と同様に連通している。
前述の通り、流路302は、一旦、上流側チャンバー301における回転中心300側の壁面よりも、回転中心300に近い部位302aにまで延びて、その後、回転中心300から遠ざかる方向に延びる。流路302がこのような構造を有するため、遠心力を加えると、サイフォン効果により、上流側チャンバー301に溜まっている試料液のほぼ全量が、流路302を経由して下流側チャンバー303に流入することができる。
遠心力により下流側チャンバー303に流入した試料液は、毛細管現象により流路304に浸入するが;遠心力が作用している限り、下流側チャンバー303の試料液の液面よりも回転中心300に近い部位にまでは浸入できない。したがって流路304を、上述した流路302と同様に、下流側チャンバー303における回転中心300側の壁面よりも、回転中心300に近い部位304aにまで延びる構造にしておけば、遠心力が作用している間は304a付近で試料液の移動が停止する。よって、透過光測定チャンバー305に流入することはない。
そして、試料液分析用ディスクの回転を停止して遠心力の作用をなくすと、試料液が毛細管現象により流路304を移動して、次のチャンバーである透過光測定チャンバー305の接続部305aまで到達して停止する。
試料液が接続部305aで停止した状態で再び遠心力を作用させると、透過光測定チャンバー305に試料液が流入する。透過光測定チャンバー305に流入した試料液の透過光を測定することにより、試料液の特定成分を検出することができる。
この状態で遠心力の作用をやめると、透過光測定チャンバー305に流入した試料液が、毛細管現象により流路304を逆流して、透過光測定チャンバー305内の試料液量が不足することがある。従って、透過光測定時にも遠心力を作用させることが好ましい。
また各チャンバーの上部の、試料液が到達し得ない部分に、空気穴306、307および308を設けて、各チャンバーへの試料液の流入を円滑にすることができる。それにより、試料液に試薬を十分溶解させて、反応させることができる。
図3に示された試料液分析用ディスクの下流側チャンバー303に、試料液中の特定成分の測定に必要な反応試薬を乾燥担持して、反応試薬層を配置することができる。例えば、反応に必要な濃度以上の試薬濃度の水溶液を、下流側チャンバー303に滴下して乾燥するか;または下流側チャンバー303の容量の試料液が反応するために必要な量の試薬を下流側チャンバー303内に担持できるように、濃度と滴下量を設定された試薬溶液を滴下して乾燥すればよい。
国際公開第0026677号パンフレット 特表2002−534096号公報
図3に示されたような、従来の試料液分析用ディスクを用いることにより、種々の試料液の成分を測定するためのデバイスが構築されうる。例えば、以下に示される反応機構に関与する反応試薬を、試料液分析用ディスクのチャンバに配置すれば、血漿中などのTG(トリグリセリド)、すなわち中性脂質の濃度が測定されうる。
A)TG→グリセロール(酵素:リポ蛋白リパーゼ)
B)グリセロール+NAD→ジヒドロキシアセトン+NADH(酵素:グルセロールデヒドロゲナーゼ)
C)NADH+WST−9→NAD+ホルマザン(酵素:ジアホラーゼ)
また、以下に示される反応機構に関与する反応試薬を、試料液分析用ディスクのチャンバーに配置すれば、血漿中の総コレステロールの濃度が測定されうる(下記式Yにおいて、NADHはNADの還元体である)。
X)EC(コレステロールエステル)→Chol(コレステロール)
(酵素:コレステロールエステラーゼ(ChE))
Y)Chol+NAD(ニコチンアデニンジヌクレオチド)→コレステノン+NADH
(酵素:コレステロールデヒドロゲナーゼ(ChDH))
Z)NADH+WST−9→NAD+ホルマザン
(酵素:ジアホラーゼ)
さらに、適切な濃度のポリカチオン性の化合物と二価カチオンを、血漿中に溶解して数分静置すると、血漿中のリポ蛋白質のうち、高密度リポ蛋白質(HDL)以外のリポタンパク質が凝集する。凝集物を遠心分離などによって除去したあと、前記反応式X)〜Z)の反応を順に行うと「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」の濃度が測定されうる。
HDL以外のリポ蛋白質を凝集および沈殿させて除去する方法は「沈殿法」として知られている。HDL以外のリポ蛋白質を凝集させて沈殿させるためには、試料液中に、試薬(ポリカチオン性化合物と2価カチオン)を均一に溶解させることが重要である。
図3に示されたような試料液分析用ディスクのチャンバー303に、試薬溶液の乾燥などにより反応試薬(ポリカチオン性化合物と二価カチオン)の層を形成して;反応試薬の層が形成されたチャンバー303に血漿を流入させても、リポ蛋白質のうちのHDL以外のリポ蛋白質を選択的に凝集させることは難しい。チャンバー303に最初に流入した試料液(血漿)には多量の反応試薬が溶解し、HDL以外のリポ蛋白質のみが凝集するに留まらず、HDLも凝集してしまうので、HDLに含まれるコレステロールも沈殿除去されるからである。したがって、従来の試料液分析用ディスクを用いてHDLコレステロールを正確に測定することは困難である。
本発明は、試料液と試薬との化学反応を検出する手段を有する試料液分析用ディスクであって、特に、試料液に固体状の試薬を「迅速かつ均一」に溶解させることにより、試料液の成分検出の正確性が向上された試料液分析用ディスクを提供することを目的とする。
本発明の第一は、以下に示す試料液分析用ディスクに関する。
[1] ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、前記開口部に連結する流路と、前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
前記多孔質体を含む前記チャンバーに、前記ディスクの回転による遠心力により前記開口部の1つを経由して前記試料液が流入する試料液分析用ディスクであって、
前記遠心力が、少なくとも前記多孔質体に前記試料液が浸透してから前記多孔質体に含浸された前記化学物質が前記試料液によって溶解するまで、前記試料液が前記多孔質体中に保持され得る範囲に設定され、かつ
前記ディスクの回転の増加により前記遠心力を増加させた際に、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、試料液分析用ディスク。
[2] 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、[1]に記載の試料液分析用ディスク。
本発明の第二は、以下に示す試料分析用ディスクに関する。
[3] ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、前記開口部に連結する流路と、前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
前記多孔質体に前記試料液をディスク状部材の外部から含浸させることができるように、前記多孔質体は前記チャンバーから露出されて配置され、かつ前記多孔質体は前記ディスク状部材の回転の中心に対して、前記チャンバーよりも近くに配置された試料液分析用ディスクであって、
前記多孔質体に含浸された試料液が、前記多孔質体に担持された試薬を溶解するまで、前記多孔質体中に保持され、
前記ディスクの回転による遠心力によって、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、試料液分析用ディスク。
[4] 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、請求項1に記載の試料液分析用ディスク。
本発明の試料液分析用ディスクを用いれば、供給する試料液と、ディスク(例えば、ディスク内のチャンバー)に配置された固体状試薬との化学反応を検出することにより、試料液の分析を行うことができ;かつ試料液に固体状試薬を迅速かつ均一に溶解させる(濃度分布を一定とする)ことができる。したがって、試薬濃度によって反応性が変わる反応であっても、反応のばらつきを抑制することができるので、試料液分析用ディスクの分析精度を向上させることができる。
さらに本発明の試料液分析用ディスクにおいて、試薬が溶解した試料液を回収しやすく;回収された試料液を、次の反応や測定に容易に供することできる。また、試料液と試薬の反応によって凝集物が生じた場合や、または反応前の試料液に固形物が含まれている場合に、反応後の試料液を回収するときに、凝集物や固形物を除去することが容易になる。
本発明の試料液分析用ディスクによって、試料液中の特定成分を化学反応検出により検出すれば、検出の正確性と迅速性が向上する。
従来の試料液分析装置を示す構成図である。 従来の試料液分析装置で使用される試料液分析用ディスクの一例を示す断面図である。 従来の試料液分析用ディスクにおける、試料液を移動する機構を説明する模式図である。 試料液分析用ディスクのディスク部材に設けられたチャンバーの多孔質体の配置の一例を示す図である。 試料液分析用ディスクのディスク部材に設けられたチャンバーの多孔質体の配置の一例を示す図である。 試料液分析用ディスクの第一の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第二の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第三の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第四の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第五の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 回転構造体と、それに保持される試料液分析用ディスクを含む分析装置を示す構成図である。 本発明の試料液分析用ディスクを用いて、血漿中のHDLコレステロール濃度を測定した結果を示すグラフである。
本発明の試料液分析用ディスクは、ディスク状部材を具備する。ディスク状部材の形状は円形であってもよいが、特に限定されず、試料液分析用ディスクの回転中心を有すればよい。試料液分析用ディスクの回転による遠心力を搬送手段として、ディスク状部材内に設けられたチャンバーや流路(後述)へ試料液を搬送することができる。また、チャンバーや流路に生じる毛細管力を搬送手段として、チャンバーや流路(後述)へ試料液を搬送することができる。
試料液分析用ディスクが具備するディスク状部材には、1または2以上のチャンバーが設けられ、通常は2以上のチャンバーが設けられる。チャンバーの例には、外部から供給された試料液を貯留する貯留チャンバー;試料液と反応させるための試薬が配置された試薬チャンバー;試薬と反応後の試料液が流入し、物性(吸光度や電気特性など)を測定するための部位となる測定チャンバーなどが含まれる。
各チャンバーは、1または2以上の開口部を有する。開口部は、流路と連結しているか、または空気口として用いられてもよい。通常のチャンバーは、試料液を流入させるための開口部;および試料を排出させるための開口部を有する。しかしながら、例えば前記測定チャンバーは、試料を排出するための開口部を必ずしも必要としないので、開口部が1つしかない場合もある。
ディスク状部材に設けられたチャンバーは、1以上の開口部を有する以外は、通常は密閉された空間であることが好ましい。チャンバーの深さは、通常は、流路の深さよりも深い。したがってチャンバーの深さは、ディスク平面に対して約0.2mm以上であることが好ましい。一方、加工性の観点から通常は、チャンバーの深さは約1mm以下である。また、チャンバーの深さが深すぎると、チャンバー内の試料液の流動性が強くなるので、回転していたディスクを静止させたときにキャピラリバルブ効果が得られないことがある。
チャンバーの面積は、導入される試料液の量に応じて適宜調整される。導入される試料液の量は、通常は100μl以下であるので、チャンバーの面積は約2〜100mmであればよい。またチャンバーの面積は、ディスクの投影面積に応じて設定されるが、ディスクの投影面積をあまり大きくできないため、上記の範囲に設定されることが好ましい。
2以上のチャンバーは、互いに流路によって連通され、試料液が移動することができる。2以上のチャンバーは、連通される順に、試料液分析用ディスクの回転中心から遠くに配置されることが好ましい。遠心力を用いて、各チャンバーに試料液を段階的に移動させるためである。
試料液分析用ディスクが具備するディスク状部材は、1または2以上の流路を有する。流路は、チャンバーの開口部に連結される。ディスク状部材に2以上のチャンバーが設けられている場合は、流路がチャンバー同士を連通する。
ディスク部材に形成された流路は、試料液が毛細管現象で移動できるようにされていることが好ましい。流路の深さは、ディスク平面に対して約50μm〜300μmであることが好ましく;流路の幅は、約0.2mm〜1.5mmであることが好ましい。
試料液分析用ディスクの回転による遠心力と、前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力により、ディスク状部材内に設けられたチャンバーおよび流路の内部で、試料液を移動させることができる。
試料液分析用ディスクの「回転中心に近い側のチャンバー」から「回転中心から遠い側のチャンバー」に接続する流路の軌道は、1)回転中心から遠ざかる軌道と、回転中心に近づく軌道とを組み合わせた軌道であってもよく、2)一意に回転中心から遠ざかる軌道であってもよい。
1)回転中心から遠ざかる軌道と、回転中心に近づく軌道とを組み合わせた軌道の流路の例は、従来技術として説明した図3に示された試料分析用ディスクに形成された流路(302や304)である。このような軌道の流路でチャンバー間を連通すると、遠心力によって、各チャンバーに段階的に試料液を搬送させやすい。
2)一意に回転中心から遠ざかる軌道の流路の例は、図8に示される流路(6bや6c)である。このような軌道の流路でチャンバー間を連通する場合には、主に流路の断面積や流路の内壁面の疎水性の程度を制御することによって、試料液の流路への浸入に対する抵抗力を調整する。それにより、各チャンバーへ段階的に試料液を移動させることができる。試料液の流路への浸入に対する抵抗力の調整の詳細は後述する。
さらに本発明の試料液分析用ディスクのディスク状部材内に設けられたチャンバーの少なくとも一つには、多孔質体が配置される。チャンバーに配置された多孔質体は、チャンバーの内部空間に収められて配置されていてもよく;外部に露出して配置されていてもよい。
内部空間に収められた多孔質体を有するチャンバーには、流路を通じて試料液を流入させることができ;一方、露出された多孔質体を有するチャンバーには、ディスクの外部から試料液を供給することができる。
チャンバーの内部空間に配置された多孔質体は、チャンバーの内部空間の全体に配置されてもよく(つまり、多孔質体がチャンバーの内部空間と同じ大きさを有する);またはチャンバーの内部空間の一部だけに配置されてもよい(つまり、チャンバーの内部空間には、多孔質体が存在しない「空隙部」がある)。
チャンバーの内部空間の一部だけに多孔質体が配置される場合は、試料液分析用ディスクを回転させたときの回転中心に近い部位に配置されることが好ましい。つまりチャンバーの内部空間の、回転中心から遠い側に空隙部が形成される。チャンバーの内部空間の一部だけに配置された多孔質体は、その一部の内部空間に隙間なく配置されることが好ましい。例えば、「チャンバー内部の、ディスクの回転の遠心方向に直行する断面」と、「チャンバー内に配置された多孔質体の、ディスクの回転の遠心方向に直行する断面」とは、同一の形状および大きさを有している。チャンバーに供給された全ての試料液を、多孔質体に含浸させるためである。
多孔質体において試薬と反応した試料液は、空隙部に移動する。
図4および図5には、チャンバーの内部空間の一部に多孔質体を配置する例が示される。図4および図5におけるチャンバー3−1は、流路6−1および流路6−2と連結している。チャンバー3−1および流路6−1および流路6−2は、下基板14;流路を形成するスペーサ13(不図示);上基板12で形成される。流路6−1は、流路6−2よりも試料液分析用ディスクの回転中心の近くに配置される。
チャンバー3−1は、ディスクの回転による遠心力が加わっても、多孔質体8を所定の位置に固定することができるように、例えば下基板14にストッパ11を配置して段差を設けてもよい。図5に示されるようにストッパ11を部分的に設けてもよく;図4に示されるように、ストッパ11でチャンバー3−1の多孔質体8の遠位側全体を浅くしてもよい。ただし図4に示される構造とすると、多孔質体8から毛細管現象によって、多孔質体に保持された試料液が吸い出され、多孔質体8が試料液を保持できないことがある。その場合には、図5に示すような構造とすることが好ましい。
一方、図10には、露出された多孔質体がチャンバーに配置された例が示される。露出された多孔質体8に、外部から直接、試料液を点着することができる。図10Aに示されたように、多孔質体8は、チャンバー10よりも、試料液分析用ディスクの回転中心9に近づけて配置されることが好ましい。点着された試料液は、試料液分析用ディスクの回転による遠心力で、チャンバー10に搾り出される。
チャンバーに配置される多孔質体の例には、ガラス繊維やセルロースなどの高分子の繊維からなる不織布;および多孔体構造を有する海綿状の構造体などが含まれる。また多孔質体の材質は、試料液や試薬と化学反応しない材質であれば特に制限されない。なかでもガラス不織布が好ましい。
多孔質体は、試料液分析用ディスクに供給される試料液を保液することができる。「保液する」とは、内部に液体を吸収し、かつその液体を内部に保持することをいう。
多孔質体が試料液を保液することができる容量(保液量)は、試料液分析用ディスクに供給される試料液の量よりも多いことが好ましい。分析のために供給された試料液の全てを多孔質体に吸収させて、多孔質体の内部空間で何らかの反応をさせるためである。
多孔質体の保液量は、多孔質体の材質および寸法により規定されるが、本発明の試料分析用ディスクで使用するためには、約2.0〜10.0μlであることが好ましい。例えば、ガラス不織布は、不織布の体積に対して、約9割の試料液を保液することができる。
また多孔質体は、内部に吸収した試料液を、ある程度保持する能力(保持力)を有することが好ましい。多孔質体に吸収された試料液に遠心力が作用しても、保持力により試料液が多孔質体から搾り出されずに、必要な反応が終わるまで試料液を多孔質体に保持できるからである。
試料液の移動のために必要とされるディスクの最小回転数によって遠心力が付与されても、「多孔質体の回転中心からの遠位側側面」から、試料液が流出しないことが必要である。そこで、ディスクにおける多孔質体の配置位置(特に、回転中心から多孔質体の遠位側側面までの距離)と、送液操作のためにディスクに付与すべき最小回転数、多孔質体に供給される試料液量を設定し;設定条件下において、試料液が多孔質体にすべて吸収され、かつ漏れ出さないように、多孔質体の寸法や材質を実験的に決定することが好ましい。
少なくとも一つのチャンバーに配置された多孔質体には、試料液分析用ディスクに供給される試料液中の特定成分と反応する試薬が担持される。担持される試薬は、試料液に可溶であることが好ましい。
多孔質体に担持される試薬は、試料に含まれる特定成分と反応する試薬であれば特に制限されないが、溶解した試薬の濃度分布によって影響を受けやすい反応を引き起こす試薬である場合に、本発明の効果がより有効に作用する。
例えば、試料液が血漿である場合には、ポリアニオン性化合物またはその塩、および血漿中で二価陽イオンを生じる化合物を含む試薬を、多孔質体に担持する。それにより、血漿中のリポタンパク質の、HDL以外のタンパク質を凝集させる。アニオン性化合物の例には、ヘパリン、デキストラン硫酸、リンタングステン酸などが含まれる。二価陽イオンの例には、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが含まれる。
前記多孔質体に試薬を担持するには、例えば、試薬を含む溶液を多孔質体に滴下して、乾燥(例えば風乾)して担持すればよい。
ディスク状部材の材質は、通常は樹脂である。図4、図5または図10Bに示されるように、試料分析用ディスクは、下基板14;スペーサ13;上基板12を有する。
下基板14には、試料液貯留チャンバー2、試薬チャンバー3、測定チャンバー5、および流路バルブ4(図6を参照)などを構成する凹部が形成される。下基板14の凹部は、機械加工または射出成形により形成されうる。スペーサ13は、流路の平面パターンに対応する部分が切り抜かれた板材である。上基板12は、流路およびチャンバー全体を覆う板材であり、試料液供給口1や空気口15(図6を参照)などが形成される。
試料液分析用ディスクは、下基板14のチャンバー部に固体状試薬や、多孔質体8を実装したのち;スペーサ13および上基板12を貼り合わせて形成されうる。貼り合わせは、例えば、スペーサ13の両面に接着剤を塗布し、それぞれの面に下基板14および上基板12を貼り合わせることによってなされる。接着剤を用いて貼り合わせる代わりに、熱硬化性の粘着剤を用いて貼り合わせたり、超音波融着で貼り合わせたりすることができる。さらに測定試薬の変質、変性をもたらさない方法であれば任意の方法を用いて貼り合わせることができる。
試料液分析用ディスク内のチャンバーや流路は、ディスク状部材と一体不可分に形成されてもよく;また取り替え可能な部材としてディスク状部材に搭載されてもよい。
例えば、ディスク状部材を構成する下基板;スペーサ;上基板と、チャンバーや流路の下基板;スペーサ;上基板とを共用してもよい。また、ディスク状部材を構成する部材と、チャンバーや流路を構成する部材を別の部材として、チャンバーや流路をディスク状部材の上に搭載してもよい。
本発明の試料液分析用ディスクを用いて試料液を分析するには、1)所定の試薬と反応させた試料液に光を照射して、その吸光度や透過度を測定(光学的に測定)するか、または2)所定の試薬と反応させた試料液に流れる電流値を測定(電気的に測定)すればよい。もちろん、他の手段によって分析してもよい。
例えば、試料液に含まれる血漿の、HDL以外のリポ蛋白質を除去した試料液のコレステロール濃度(即ちHDLコレステロール濃度)を光学的に測定する場合には、試料液のHDLコレステロールを、1)コレステロールエステルをコレステロールに変換させる酵素(コレステロールエステラーゼ)と、2)コレステロールを酸化させる酵素(例えばコレステロールデヒドロゲナーゼ)と、3)コレステロールの酸化による電子移動を仲介するための試薬であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、さらに4)NADの還元体であるNADHとの間で電子授受を行い、吸光度が変化するWST−9などの色素と反応させて、反応前後の試料液の吸光度の変化を測定すればよい。
一方、HDLコレステロール濃度を電気的に測定する場合には、上記の光学的に測定する方法と同様の、コレステロールエステラーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼにより触媒される反応を経て、NADHとの間で電子授受が可能なレドックス化合物と、試料液のHDLコレステロールとを反応させて;その反応後に、測定用に設けられた電極を適切な電位に設定したときに、試料液に流れる電流を測定すればよい。前記レドックス化合物の例には、水溶液中でフェリシアン化物イオンを生成するフェリシアン化カリウムが含まれ、フェリシアン化物イオンは還元されてフェロシアン化物イオンとなる。
試料液に流れる電流を測定するには、測定チャンバー(図6などを参照)に少なくとも対極と作用極の役割を果たす電極を設けて電圧を印加することで、還元体(フェロシアン化物イオンなど)が酸化される際に生じる酸化電流値を計測して測定すればよい。分析装置には、ディスク外部から前記電極に接触するための端子を設けておくことが好ましい。
以下において、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
[試料液分析用ディスクの第一の例]
図6は、試料液分析用ディスクの第一の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。試料液分析用ディスクは、試料液供給口1を有する試料液貯留チャンバー2;多孔質体が配置された試薬チャンバー3a;試薬チャンバー3b;測定チャンバー5を有する。さらに試料液分析用ディスクは、試料液貯留チャンバー2と試薬チャンバー3aとを連通する流路6a;試薬チャンバー3aと試薬チャンバー3bとを連通する流路6b;試薬チャンバー3bと測定チャンバー5とを連通する流路6c;測定チャンバー5と接続し、一方の端に空気口15を有する流路6dを具備する。流路6aには、試料液貯留チャンバー2からの試料液の流出を制御するための流路バルブ4が配置される。図6において矢印310は遠心力がかかる方向を示し、矢印320はディスクの回転方向を示す。
試料液貯留チャンバー2から延びる流路6aは、いったん試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の液面16よりも回転中心9に近い部位にまで延びた後;試薬チャンバー3aとの接続部にまで延びる。
流路6bは、試薬チャンバー3aの回転中心9から遠い位置の端部近傍から延び、いったん回転中心9に近い部位にまで延びた後;試薬チャンバー3bとの接続部にまで延びる。
試薬チャンバー3aに配置された多孔質体8は、試薬チャンバー3aの回転中心9に近い部位に配置される。多孔質体8は、回転方向と平行な断面が試薬チャンバー3aの断面と等しくなるように成型されている。試薬チャンバー3aに流入した試薬の全てを、多孔質体8に吸収させるためである。
多孔質体8には、固体状試薬が担持されていることが好ましく、多孔質体8に均一に担持されていることがより好ましい。多孔質体8に担持された固体状試薬は、表面積が極めて大きいので、多孔質体に吸収される試料液に速やかに溶解する。
試薬チャンバー3bにも固体状試薬が配置される。例えば、試薬チャンバー3bの壁面などに、固体状試薬の溶液を滴下して乾燥するか;または凍結乾燥法などで固形化された試薬を試薬チャンバー3bに配置すればよい。
試料液分析用ディスクには分析される試料液が供給されるが(後述)、試薬チャンバー3aに配置された多孔質体8の保液量は、導入される試料液の容量よりも大きいことが好ましい。つまり、多孔質体8の空隙の合計の容量が、導入される試料液の容量よりも大きいことが好ましい。
図6に示される試料液分析用ディスクを用いて試料液を分析するには、試料液供給口1から試料液を供給する。供給された試料液は、試料液貯留チャンバー2に、いったん貯留される。試料液貯留チャンバー2を設けることなく、試料液を、多孔質体が配置された試薬チャンバー3aに直接供給する(点着する)構成としてもよい(図10参照)。その場合には、試料液の点着の仕方によって、試薬チャンバー3aへの試料液の流入速度が変動することがあるので、多孔質体に担持された固体状試薬の試料液中での溶解状態の再現性に留意することが好ましい。
試料液に含まれる固形物を除去する必要がある場合には、試料液貯留チャンバー2において、遠心分離処理をして除去してもよい。例えば試料液が血液であれば、血球などの固形物をあらかじめ除去してもよい。
試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の流路6aへの流出を、いったん防止するために流路バルブ4が設けられる。流路バルブ4において、流路6aの幅および/または高さが不連続的に高められる。そのため、毛細管現象によって流路6aを流れる試料液は、流路6aの流路バルブ4(不連続的に幅と高さが増大する部分)で停止する。このようにして毛細管現象による流れを制御する技術は、一般的に知られている。
流路バルブ4は、試料液分析用ディスクを回転させたときの、試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の液面16よりも、回転中心9から遠い位置に配置されることが好ましい。試料液分析用ディスクを回転させると、遠心力で試料液が移動して、流路バルブ4を超える。遠心力により流路バルブ4を超えた試料液は、遠心力が作用している間は、試料液の液面16よりも回転中心9に近づくことはできないが、回転を止めて遠心力の作用を解除すると、毛細管現象により流路6aを進み、試薬チャンバー3aとの接続部に到達する。
試薬チャンバー3aの深さは、後述するように多孔質体8の厚みに等しくする。したがって一般的には、試薬チャンバー3aの深さは流路6aの天井高より大きくなる。したがって、毛細管現象による流路6aにおける試料液の移動は、試薬チャンバー3aとの接続部で停止する。仮に流路6aの天井高と試薬チャンバー3aの天井高が同等の場合には、試薬チャンバー3aと流路6aとの接続部近傍にバルブを設けてもよい。
試料液が試薬チャンバー3aと流路6aとの接続部に到達したら、ディスクを回転させる。ディスクの回転による遠心力で、試料液は試薬チャンバー3aに流入する。前述の通り、多孔質体8は、回転方向と平行な断面が試薬チャンバー3aの断面と等しくなるように成型されているので、流入した試料液の全てが多孔質体8に吸収される。
試薬チャンバー3aに流入した試料液の全てを多孔質体8に吸収させるために、ディスクを回転させて作用させる遠心力は、多孔質体8が試料液を滞留させる力、すなわち多孔質体8の「保持力」を上回らないことが好ましい。
試料液が多孔質体8の全体に含浸して、多孔質体8に担持された固体状試薬が完全に溶解した後に、ディスクの回転速度をさらに上げて、作用する遠心力を高める。遠心力が多孔質体8の試料液を保持する力(保持力)を上回ると、多孔質体8の回転中心9から遠い位置の側面から、試料液が搾り出される。
試薬チャンバー3aの回転中心9の近位側に多孔質体8が配置され、回転中心9からの遠位側に空隙部が設けられる。前記空隙部の容量は、多孔質体8に保液された試料液のうち、ディスクの回転によって多孔質体8から搾り出される液の容量以上であることが好ましい。試料液分析用ディスク回転の遠心力によって多孔質体8から搾り出された試料液のすべてを、空隙部に貯留するためである。多孔質体8に担持された固体状試薬によって惹き起こされた反応によって生じた凝集物や、多孔質体8を透過した固形物を、空隙部において遠心分離処理して除去してもよい。
試薬チャンバー3aの空隙部に試料液を絞り出した後、試料液分析用ディスクの回転を停止させると、試料液は毛細管力で流路6bの内部を移動して、試薬チャンバー3bの手前に到達する。試薬チャンバー3bは、固体状試薬を内包する。
その後、試料液分析用ディスクの回転と停止の操作により、試料液を測定チャンバー5に導き、測定チャンバー5において前記試料液の化学反応を、吸光度などを用いて光学的に測定することで、目的の特定成分を定量することができる。
[試料液分析用ディスクの第二の例]
図7は、試料液分析用ディスクの第二の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図7に示される試料液分析用ディスクは、多孔質体を配置された試薬チャンバー3aに流路6eを介して接続された凝集物分離チャンバー10を有する。図7に示される試料液分析用ディスクの試薬チャンバー3aには、試薬チャンバー3aの内部形状と同じ大きさで、かつ同じ形状の多孔質体8が挿入される。挿入された多孔質体8から遠心力によって搾り出された試料液が、凝集物分離チャンバー10に流入して貯留される。チャンバー10の容量は、多孔質体8に保液された試料液のうち、ディスクの回転により多孔質体8から搾り出される液の容量よりも大きいことが好ましい。
流路6eは、試薬チャンバー3aから凝集物分離チャンバー10に向かって、回転中心9から遠ざかる方向に直線的に延びている。したがって多孔質体8から搾り出された試料液は、試料液分析用ディスクの回転数を高めると、速やかに凝集物分離チャンバー10に流入する。凝集物分離チャンバー10において、必要に応じて遠心分離処理などにより固形物を除去してもよい。
図7の試料液分析用ディスクは、多孔質体8の厚みが十分でない場合に特に好適である。他の部材については、図6に示された試料液分析用ディスクと同様である。
[試料液分析用ディスクの第三の例]
図8は、試料液分析用ディスクの第三の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図8に示された試料液分析用ディスクのチャンバーの構成は、図1に示された試料液分析用ディスクのチャンバーと同様である。図8に示された試料液分析用ディスクのチャンバーのそれぞれを連結する流路6bや流路6cは、回転中心から遠ざかる方向へ直線的に延びている(一意に回転中心から遠ざかる軌道を有する)点で、図6に示された試料液分析用ディスクと相違する。
図8に示される試料液分析用ディスクは、図1に示される試料液分析用ディスクと比べて、流路やチャンバーを構成するために必要な部材が少ないという利点を有する。一方、図8に示される試料液分析用ディスクは、流路6bまたは流路6cを精密に設計する必要がある。例えば、回転中心に近い試薬チャンバー3aから、試薬チャンバー3bに試料液を移送するためにディスクを回転させると、試薬チャンバー3bに移送された試料液が、試薬チャンバー3bに留まることなく、測定チャンバー5にまで流入してしまうことがある。
試料液分析用ディスクの回転による遠心力によって、試料液が、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部を超えて流路6bに流れ込もうとする力は、1)回転直後の試薬チャンバー3aにおける試料液の液面から、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部までの距離、2)回転数、3)回転中心から、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部までの距離、に依存する。
一方、試薬チャンバー3a内の試料液の、流路6bへの流入に対する抵抗力も存在する。前記抵抗力は、流路6bの内壁面の、試料液に対する表面張力、粘性などに依存するが、一般的に流路6bの断面積が小さい方が大きくなる。また、流路の内壁面を疎水化するほど、前記抵抗力は大きくなる。
従って、流路6bの断面積を適切に設定すれば、ある回転数αによる遠心力で多孔質体8から搾り出された試料液を、試薬チャンバー3bまで移動させることなく、チャンバー3aに留めておくことができる。回転数αを上げて回転数βとして、チャンバー3aに留められた試料液を、チャンバー3bに流入させる。
さらに、回転数βの遠心力によりチャンバー3bに流入した試料液を、測定チャンバー5まで移動させることなく、測定チャンバー3bに留めることが好ましい。そのため、試薬チャンバー3bと測定チャンバー5の間とを連通する流路6cの断面積と、試薬チャンバー3bの寸法を適切に調整する。
そして、回転数βを上げて回転数γとして、チャンバー3bに留められた試料液を、チャンバー5に流入させることが好ましい。
[試料液分析用ディスクの第四の例]
図9は、試料液分析用ディスクの第四の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図9に示された試料液分析用ディスクは、試料液供給口1を有する試料液貯留チャンバー2;流路バルブ4を有する流路6a;多孔質体8が配置された試薬チャンバー3a;を有する点は、図6に示された試料液分析用ディスクと同様である。一方、図9に示された試料液分析用ディスクは、試薬チャンバー3bが測定チャンバー5を兼ねている点で、図6に示された試料液分析用ディスクと相違する。
図9に示された試料液分析用ディスクは、図6に示された試料液分析用ディスクと比較して、試料液移送の段数を減らすことができ、かつ流路やチャンバーを構成するために必要な部材を少なくすることができる。一方、試薬チャンバー3bに流入した試料液に、試薬を均一に溶解させて反応させるために必要な時間が長くなることがある。したがって、試薬の特性に応じて、試薬チャンバー3bと測定チャンバー5とを別途に設けるか否かを検討することが好ましい。
[試料液分析用ディスクの第五の例]
チャンバーに配置される多孔質体は、必ずしもチャンバーに内包されていなくてはならないわけではなく、露出されていてもよい。図10には、チャンバーに配置される多孔質体が露出している例が示される。
図10Aは、試料液分析用ディスクの第五の例の主要部分の構成を示す平面断面図である。一方、図10Bは、その主要部分の縦断面を示す模式図である。図10には、図6で示される試薬チャンバー3a(多孔質体が配置された試薬チャンバー)に対応する部材だけが示されており、その他の部材は省略されている。
図10に示される多孔質体8は、チャンバー10の内部に閉じこめられずに、露出して配置されている。つまり多孔質体8は、試料液分析用ディスクを構成する基板上に露出している。多孔質体8に接するようにチャンバー10が設けられる。チャンバー10は大きな開口部を有し、その開口部を多孔質体8が覆っている。
また多孔質体8は、チャンバー10よりも、試料液分析用ディスクの回転中心9に近い位置に配置される。したがってチャンバー10の内部空間に、多孔質体8から遠心力によって搾り出される試料液を貯めることができる。
チャンバー10の内壁面(例えばチャンバー10の下基板側)に配置されたストッパ11によって多孔質体8を固定して、試料液分析用ディスクの回転による遠心力が作用しても移動させないようにすることが好ましい。より確実に多孔質体8を固定するために、多孔質体の下基板14と接する面に、難水溶性の接着剤を塗布してもよい。
図10に示される試料液分析用ディスクのように、チャンバーに配置された多孔質体が露出している場合は、ディスクが回転していないときに、試料液を多孔質体に直接点着することができる。よって、試料液供給口1を有する試料液貯留チャンバー2(図6など参照)はなくてもよい。点着された試料液は多孔質体に吸収して漏れ出すことはない。
点着された試料液に、多孔質体中の試薬が充分に溶解し、反応が進行した後に、回転中心9を中心にして試料液分析用ディスクを回転させる。回転による遠心力で、多孔質体中の試料液が搾り出されてチャンバー10に流入する。
図10に示される試料液分析用ディスクは、試料液の前処理(例えば全血における血球の分離など)が不要な場合に有用である。
本発明の実施の形態について説明したが、特に詳細に説明しなかった事項については、従来公知の方法や手段を用いることができる。また、上記実施の形態は、本発明の思想の範囲内で種々の設計変更を行うことが可能である。
本発明の試料液分析用ディスクは、回転中心を有する。ディスクの回転中心に設けられた穴にかみ合う形状の固定部材を有する回転装置に、ディスクを固定して回転させることができる。回転装置が測定機能を有していれば、測定チャンバーに流入した試料液の物性を測定して、試料分析を行なうことができる。
一方、試料液の物性を測定する測定器に設けられた回転構造体が、回転中の試料液分析用ディスクを保持する機構を備えていてもよい。回転構造体は、モータなどの駆動装置に連結される軸や、軸受け構造を有し;かつ回転軸に垂直な面内に試料液分析用ディスクを保持する。その場合には、試料液分析用ディスクに回転軸を設けなくてもよく、ディスク外形の投影形状は、円形以外の種々の形状とすることができる。例えば図11に示すように、試料液分析用ディスク101を、駆動装置402に駆動される回転構造体401の窪みにはめ込み、回転させることができる。
回転構造体に試料液分析用ディスクを保持させる場合には、測定器に設けられた回転構造体が試料液分析用ディスクを回転させたときに、ディスクの回転中心がぶれないように留意することが好ましい。例えば、ディスクを回転させる回転構造体の重心が、ディスクの回転軸上になるように、重量配分を予め最適化したり、調整機構を設けたりする。
以下において実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の範囲は、これらの実施例により限定して解釈されることはない。
[実施例1]
図6に示された試料液分析用ディスクを準備して、血漿中のHDLコレステロール(HDL−C)濃度を測定した。
上基板および下基板となる2枚のポリカーボネート製の板材と、両面に粘着剤を塗布したポリエチレンテレフタレート製の厚み100μmのスペーサ板材とを用いて、試料液分析用ディスクを作製した。
下基板14の片面に、試料液貯留チャンバー2;試薬チャンバー3a;試薬チャンバー3b;測定チャンバー5を成型した。
下基板14における試薬チャンバー3aの平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦8mm;横5mmの長方形とした。試薬チャンバー3aの深さは、多孔質体が格納される部分を0.2mm;それ以外の部分を0.1mmとした。多孔質体が格納される部分の平面形状は、縦3mm;横5mmの長方形であって、回転中心9に近い側に設けた。
下基板14における試料液貯留チャンバー2の平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦5mm;横5mmとして、深さを0.3mmとした。試薬貯留チャンバー2と試薬チャンバー3aとを連通する流路6aとの連結部分は、試薬貯留チャンバー2の、ディスクを回転させたときに一番外側になる位置に設けられた。流路6aの途中には、深さ0.3mm;直径1.0mmの円柱を設けた。下基板14における試薬チャンバー3bの平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦3mm;横5mmとして、その深さを0.2mmとした。下基板14における測定チャンバー5の平面形状は直径2mmの円形として、深さを0.3mmとした。
チャンバーを成型した下基板に、100μmのスペーサ板材を挟んで上基板12を貼り合わせた。したがって、試薬チャンバー3aの底面から天井までの距離(つまり試薬チャンバー3aの深さ)は、0.3mmまたは0.2mmとなった。各々のチャンバーを連通する流路はスペーサ部材で形成されるので、流路の深さは100μmとなった。また、各流路の幅は全て0.5mmとした。
多孔質体を格納する部分に「3mm×5mm」に裁断されたガラス不織布(ワットマン社製のF147-11、厚み約300μm)を格納した。ガラス不織布(多孔質体)の、回転中心9からの遠位側側面を、回転中心9から36mmの位置に配置した。
ガラス不織布に、5μlの試薬溶液(リンタングステン酸ナトリウム6mg/ml;および塩化マグネシウム12水和物4mg/mlの混合水溶液)を滴下して、乾燥させた。ガラス不織布への試薬乾燥は、ガラス不織布を裁断する前に行ってもよい。その場合にはもちろん、ガラス不織布の大きさに見合うだけの量の試薬溶液を滴下して乾燥する。
試薬チャンバー3bを、「試薬チャンバー3bの回転中心9から近位側の側面」が「試薬チャンバー3aの回転中心9から遠位側の側面」よりも遠くになるように配置した。試薬チャンバー3aと試薬チャンバー3bとを流路6bで連通させた。上基板を貼り合わせた後の、試薬チャンバー3bの深さは300μmであった。
一方、以下の成分の混合水溶液を凍結乾燥して得られた粉末を、押し固めてシートとした。このシートを6枚重ねて、試薬チャンバー3b内に配置した。
コレステロールデヒドロゲナーゼ(アマノエンザイム製のAmano5)0.7kunits/ml;
シュクロース2.5Wt%水溶液2μl;
コレステロールエステラーゼ((株)旭化成製のT−18)0.5kunits/ml;
ジアホラーゼ((株)旭化成)630units/ml;
NAD(ニコチンアデニンジヌクレオチド)60mM水溶液2μl;
WST−9(水溶性テトラゾリウム、同仁化学(株)製)60mM;および
2.5%シュクロース水溶液2μl
反応時の試料液のpHを調整するため、試薬チャンバー3bに配置するシートの成分として、Trisバッファーを用いることが好ましい。しかしながら、Trisバッファーは凍結乾燥に適さないので、試薬チャンバー3bの底面に0.3MのTrisバッファーを(3μl)を滴下して風乾させて固形化した。
測定チャンバー5を設けて、試薬チャンバー3bと連通させた。測定チャンバー5の、貼り合わせ後の深さを400μmとした。
作製した試料液分析用ディスクの試料液供給口1(図6参照)から、5μlの試料液(血漿)を供給した。ディスクを2000rpmで10秒間回転させて、流路6aに試料液を浸入させて、流路バルブ4を超えさせた。
ディスクの回転を止めると、試料液は流路6aをさらに流動して試薬チャンバー3aの手前で静止した。ここで、ディスクを1000rpmで5秒間回転させたところ、速やかに多孔質体8に試料液が染み込んだ。このとき多孔質体8の、回転中心9からの遠位側から、試料液が漏れることはなかった。
その後、回転速度を6000rpmに上げて、多孔質体8から試料液を、試薬チャンバー3aの空隙部に搾りだした。30秒間で、供給した試料液(血漿)の約半部(2.5〜3μl)が空隙部に流出した。回転時間をのばしても、搾り出される試料液は増えなかった。一方、回転数をさらに上げると、回収率が向上したが、機器の安定性を勘案して、回転数を6000rpmとした。
試薬チャンバー3aの空隙部で、HDL以外のリポ蛋白質の凝集を進めるため、回転数を1000rpmに低下させて遠心力を弱めて、1分間回転を続けた。その後、再び6000rpmに上げて、生成した凝集物を遠心力で除去した。
さらに、従来の試料液分析用ディスクの試料液移送の機構に準じた様式で試料液を移動させて;試薬チャンバー3bで固体状試薬と溶解させて反応させて;さらに測定チャンバー5に導かれた試料液の、波長650nmでの吸光度を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す(「■」のシンボル)。図12のグラフの縦軸は、測定された吸光度を;横軸は、同一の試料液のHDLコレステロール濃度を、検定器(日立製作所(株)製の日立7020)で別途に測定した値を示す。図12に示されたように、測定された吸光度と、検定器で測定されたHDLコレステロール濃度は、比例関係にあることがわかる。図12におけるかっこ内の数字は、CV値、つまり変動係数(%)である。
[比較例1]
ガラス不織布(多孔質体)に、凝集形成のための試薬(リンタングステン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウム)を担持しないこと以外は、同様の試料液分析用ディスクを用いて同様の測定を行った。つまり、総コレステロールの濃度に依存する吸光度変化を示す系で吸光度を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す(「◆」のシンボル)。縦軸は、測定された吸光度を;横軸は、同一の試料液のHDLコレステロール濃度を、検定器によって別途に測定した値を示す。
図12に示されるように、HDLコレステロール濃度の検定器による測定値と、試料液分析用ディスクを用いて測定した吸光度との相関(■)は、総コレステロール濃度の検定器による測定値と、試料液分析用ディスクを用いて測定した吸光度との相関(◆)と、非常によく一致した。
図6に示された構造の試料液分析用ディスク以外にも、本発明の試料液分析用ディスクを用いれば、同様の測定結果を得ることができる。
血漿中のHDLコレステロール濃度以外の所望の成分に対する化学反応により生じた変化を、光学的あるいは電気的に検出可能な反応系を用いれば、本発明により当該成分を測定することができる。
本発明の液体試料液分析用ディスクを用いれば、試料液と反応した試薬の化学変化を検出することにより試料液を分析することができる。ここで、前記固体状試薬を試料液に、迅速かつ均一に溶解させることができるので、溶解した試薬濃度のムラが抑えることができ、検出の正確性を確保することができる。したがって、本発明の液体試料液分析用ディスクは血液成分の測定装置などに有用である。
本出願は、2006年3月16日出願の出願番号JP2006−072224に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明は試料液分析用ディスクに関する。特に本発明は、ディスク内部に供給される血液などの試料液と、ディスク内部に配置された試薬を作用させて、その化学反応量を検出することにより、試料液の分析を行うための試料液分析用ディスクに関する。
近年、分析・解析・検査技術の進歩により、様々な物質の量を測定することが可能となってきている。特に臨床検査分野において、生化学反応、酵素反応または免疫反応などの特異反応に基づく測定原理の開発により、病態に反映する体液中の物質の量を測定できるようになった。
特に病態に反映する体液中の物質の量の測定は、ポイント・オブ・ケアテスティング(POCT)と呼ばれる臨床検査分野において注目される。POCTは、簡易かつ迅速に測定する方法、つまり検体を採取してから測定結果がでるまでの時間が短縮された測定方法を必要とする。したがって、POCTにおいて要求される測定装置は、簡易な測定原理であり、かつ小型で携帯性があり、操作性がよいことが求められる。
今日、POCTに対応する実用性の高い測定機器が提供されつつある。これらの提供は、簡易測定原理の構築、それに伴う生体成分の固相化技術、センサデバイス化技術、センサシステム化技術、微細加工技術、およびマイクロ流体制御技術などの進歩による。POCTに対応する測定機器として、ディスク上に展開した試料の定性・定量分析を行う装置の利用が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1に記載の技術を用いた測定機器は、血液等の試料を分析し、病気の診断などを行うことができる。図1は特許文献1における分析装置100を示す構成図である。分析装置100の構成は、いわゆる光ディスク装置に類似している。分析装置100は、分析用ディスク101;分析用ディスク101を回転させるスピンドルモーター201;分析用ディスク101内に供給される試料900(図2参照)または試料900と反応する試薬106(図2参照)に光ビームを照射する光ピックアップ212;光ピックアップ212をディスク101の半径方向に移動させるための送りモータ213;などを有する。
図2は、分析用ディスク101を示す構成図である。分析用ディスク101には、試料注入孔104および流路105が設けられ、流路105中には試料と反応して光学特性(透過率・色など)が変化する試薬106が塗布されている。前記試料注入孔104から試料900が注入された分析用ディスク101を、分析装置100に装着する。
分析装置100に装着された分析用ディスク101を、スピンドルモーター201によって回転させる。供給された試料900は、回転の遠心力により分析用ディスク101の流路105内に展開され、流路105内に塗布された試薬106と反応する。反応終了後、分析用ディスク101を回転させながら、光ピックアップ212を用いて、流路105内の試料900または試薬106に光ビームを照射する。照射された光ビームの反射光もしくは透過光を検出することで、試料900または試薬106の反応状態を検出して、試料の分析を行う。
特許文献1に記載された分析用ディスク101の機能に、複数の試薬を順次に溶解させたり、反応させたりするために、試料液を自在に移動および停止させる機能を付加した分析用ディスクも提案されている(例えば特許文献2を参照)。例えば、それぞれ異なる試
薬が塗布された複数のチャンバーと、チャンバーそれぞれの間を連結する流路を設ける提案がされている。それにより例えば、血液中の血球を遠心分離により除去した後、血漿成分のみを試薬と反応させたりすることができる。
特許文献2に提案された、試料液分析用ディスクに展開された試料液を自在に移動および停止させるメカニズムを、図3を用いて説明する。
図3には、試料液分析用ディスクの回転中心300から円周上外側へ向けての一部分が示される。流路302は、試料液流動の上流側チャンバー301と、下流側チャンバー303とを連結する。流路302と上流側チャンバー301との接続部301aは、上流側チャンバー301における、回転中心300からの遠位部にある。一方、流路302と下流側チャンバー303との接続部303aは、下流側チャンバー303における、回転中心300からの近位部にある。図3における矢印310は遠心力がかかる方向である
流路302は、接続部301aから回転中心300から遠ざかる方向に延びた後;一旦、回転中心300に近づく方向に向かい、上流側チャンバー301の上流側の壁面よりも回転中心300に近い部位302aにまで延び;その後、再び回転中心300から遠ざかる方向に向かい、接続部303aに連結する。
チャンバー303の深さは、流路302の深さよりも深いので、流路302内を毛細管現象により移動した試料液は、接続部303aで毛細管現象による移動が妨げられる。そのため、試料液の移動は接続部303aで停止し、チャンバー303へ流入しない。試料液が停止した状態で、ディスクを回転させて遠心力を与えると、停止していた試料液が下流側チャンバー303に流入する。
流路304は、下流側チャンバー303と透過光測定チャンバー305とを、流路302と同様に連通している。
前述の通り、流路302は、一旦、上流側チャンバー301における回転中心300側の壁面よりも、回転中心300に近い部位302aにまで延びて、その後、回転中心300から遠ざかる方向に延びる。流路302がこのような構造を有するため、遠心力を加えると、サイフォン効果により、上流側チャンバー301に溜まっている試料液のほぼ全量が、流路302を経由して下流側チャンバー303に流入することができる。
遠心力により下流側チャンバー303に流入した試料液は、毛細管現象により流路304に浸入するが;遠心力が作用している限り、下流側チャンバー303の試料液の液面よりも回転中心300に近い部位にまでは浸入できない。したがって流路304を、上述した流路302と同様に、下流側チャンバー303における回転中心300側の壁面よりも、回転中心300に近い部位304aにまで延びる構造にしておけば、遠心力が作用している間は304a付近で試料液の移動が停止する。よって、透過光測定チャンバー305に流入することはない。
そして、試料液分析用ディスクの回転を停止して遠心力の作用をなくすと、試料液が毛細管現象により流路304を移動して、次のチャンバーである透過光測定チャンバー305の接続部305aまで到達して停止する。
試料液が接続部305aで停止した状態で再び遠心力を作用させると、透過光測定チャンバー305に試料液が流入する。透過光測定チャンバー305に流入した試料液の透過光を測定することにより、試料液の特定成分を検出することができる。
この状態で遠心力の作用をやめると、透過光測定チャンバー305に流入した試料液が、毛細管現象により流路304を逆流して、透過光測定チャンバー305内の試料液量が
不足することがある。従って、透過光測定時にも遠心力を作用させることが好ましい。
また各チャンバーの上部の、試料液が到達し得ない部分に、空気穴306、307および308を設けて、各チャンバーへの試料液の流入を円滑にすることができる。それにより、試料液に試薬を十分溶解させて、反応させることができる。
図3に示された試料液分析用ディスクの下流側チャンバー303に、試料液中の特定成分の測定に必要な反応試薬を乾燥担持して、反応試薬層を配置することができる。例えば、反応に必要な濃度以上の試薬濃度の水溶液を、下流側チャンバー303に滴下して乾燥するか;または下流側チャンバー303の容量の試料液が反応するために必要な量の試薬を下流側チャンバー303内に担持できるように、濃度と滴下量を設定された試薬溶液を滴下して乾燥すればよい。
国際公開第0026677号パンフレット 特表2002−534096号公報
図3に示されたような、従来の試料液分析用ディスクを用いることにより、種々の試料液の成分を測定するためのデバイスが構築されうる。例えば、以下に示される反応機構に関与する反応試薬を、試料液分析用ディスクのチャンバに配置すれば、血漿中などのTG(トリグリセリド)、すなわち中性脂質の濃度が測定されうる。
A)TG→グリセロール(酵素:リポ蛋白リパーゼ)
B)グリセロール+NAD→ジヒドロキシアセトン+NADH(酵素:グルセロールデヒドロゲナーゼ)
C)NADH+WST−9→NAD+ホルマザン(酵素:ジアホラーゼ)
また、以下に示される反応機構に関与する反応試薬を、試料液分析用ディスクのチャンバーに配置すれば、血漿中の総コレステロールの濃度が測定されうる(下記式Yにおいて、NADHはNADの還元体である)。
X)EC(コレステロールエステル)→Chol(コレステロール)
(酵素:コレステロールエステラーゼ(ChE))
Y)Chol+NAD(ニコチンアデニンジヌクレオチド)→コレステノン+NADH
(酵素:コレステロールデヒドロゲナーゼ(ChDH))
Z)NADH+WST−9→NAD+ホルマザン
(酵素:ジアホラーゼ)
さらに、適切な濃度のポリカチオン性の化合物と二価カチオンを、血漿中に溶解して数分静置すると、血漿中のリポ蛋白質のうち、高密度リポ蛋白質(HDL)以外のリポタンパク質が凝集する。凝集物を遠心分離などによって除去したあと、前記反応式X)〜Z)の反応を順に行うと「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」の濃度が測定されうる。
HDL以外のリポ蛋白質を凝集および沈殿させて除去する方法は「沈殿法」として知られている。HDL以外のリポ蛋白質を凝集させて沈殿させるためには、試料液中に、試薬(ポリカチオン性化合物と2価カチオン)を均一に溶解させることが重要である。
図3に示されたような試料液分析用ディスクのチャンバー303に、試薬溶液の乾燥などにより反応試薬(ポリカチオン性化合物と二価カチオン)の層を形成して;反応試薬の
層が形成されたチャンバー303に血漿を流入させても、リポ蛋白質のうちのHDL以外のリポ蛋白質を選択的に凝集させることは難しい。チャンバー303に最初に流入した試料液(血漿)には多量の反応試薬が溶解し、HDL以外のリポ蛋白質のみが凝集するに留まらず、HDLも凝集してしまうので、HDLに含まれるコレステロールも沈殿除去されるからである。したがって、従来の試料液分析用ディスクを用いてHDLコレステロールを正確に測定することは困難である。
本発明は、試料液と試薬との化学反応を検出する手段を有する試料液分析用ディスクであって、特に、試料液に固体状の試薬を「迅速かつ均一」に溶解させることにより、試料液の成分検出の正確性が向上された試料液分析用ディスクを提供することを目的とする。
本発明の第一は、以下に示す試料液分析用ディスクに関する。
[1] ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、前記開口部に連結する流路と、前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
前記多孔質体を含む前記チャンバーに、前記ディスクの回転による遠心力により前記開口部の1つを経由して前記試料液が流入する試料液分析用ディスクであって、
前記遠心力が、少なくとも前記多孔質体に前記試料液が浸透してから前記多孔質体に含浸された前記化学物質が前記試料液によって溶解するまで、前記試料液が前記多孔質体中に保持され得る範囲に設定され、かつ
前記ディスクの回転の増加により前記遠心力を増加させた際に、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、試料液分析用ディスク。
[2] 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、[1]に記載の試料液分析用ディスク。
本発明の第二は、以下に示す試料分析用ディスクに関する。
[3] ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、前記開口部に連結する流路と、前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
前記多孔質体に前記試料液をディスク状部材の外部から含浸させることができるように、前記多孔質体は前記チャンバーから露出されて配置され、かつ前記多孔質体は前記ディスク状部材の回転の中心に対して、前記チャンバーよりも近くに配置された試料液分析用ディスクであって、
前記多孔質体に含浸された試料液が、前記多孔質体に担持された試薬を溶解するまで、前記多孔質体中に保持され、
前記ディスクの回転による遠心力によって、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、試料液分析用ディスク。
[4] 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、請求項1に記載の試料液分析用ディスク。
本発明の試料液分析用ディスクを用いれば、供給する試料液と、ディスク(例えば、ディスク内のチャンバー)に配置された固体状試薬との化学反応を検出することにより、試料液の分析を行うことができ;かつ試料液に固体状試薬を迅速かつ均一に溶解させる(濃度分布を一定とする)ことができる。したがって、試薬濃度によって反応性が変わる反応であっても、反応のばらつきを抑制することができるので、試料液分析用ディスクの分析精度を向上させることができる。
さらに本発明の試料液分析用ディスクにおいて、試薬が溶解した試料液を回収しやすく;回収された試料液を、次の反応や測定に容易に供することできる。また、試料液と試薬の反応によって凝集物が生じた場合や、または反応前の試料液に固形物が含まれている場合に、反応後の試料液を回収するときに、凝集物や固形物を除去することが容易になる。
本発明の試料液分析用ディスクによって、試料液中の特定成分を化学反応検出により検出すれば、検出の正確性と迅速性が向上する。
本発明の試料液分析用ディスクは、ディスク状部材を具備する。ディスク状部材の形状は円形であってもよいが、特に限定されず、試料液分析用ディスクの回転中心を有すればよい。試料液分析用ディスクの回転による遠心力を搬送手段として、ディスク状部材内に設けられたチャンバーや流路(後述)へ試料液を搬送することができる。また、チャンバーや流路に生じる毛細管力を搬送手段として、チャンバーや流路(後述)へ試料液を搬送することができる。
試料液分析用ディスクが具備するディスク状部材には、1または2以上のチャンバーが設けられ、通常は2以上のチャンバーが設けられる。チャンバーの例には、外部から供給された試料液を貯留する貯留チャンバー;試料液と反応させるための試薬が配置された試薬チャンバー;試薬と反応後の試料液が流入し、物性(吸光度や電気特性など)を測定するための部位となる測定チャンバーなどが含まれる。
各チャンバーは、1または2以上の開口部を有する。開口部は、流路と連結しているか、または空気口として用いられてもよい。通常のチャンバーは、試料液を流入させるための開口部;および試料を排出させるための開口部を有する。しかしながら、例えば前記測定チャンバーは、試料を排出するための開口部を必ずしも必要としないので、開口部が1つしかない場合もある。
ディスク状部材に設けられたチャンバーは、1以上の開口部を有する以外は、通常は密閉された空間であることが好ましい。チャンバーの深さは、通常は、流路の深さよりも深い。したがってチャンバーの深さは、ディスク平面に対して約0.2mm以上であることが好ましい。一方、加工性の観点から通常は、チャンバーの深さは約1mm以下である。また、チャンバーの深さが深すぎると、チャンバー内の試料液の流動性が強くなるので、回転していたディスクを静止させたときにキャピラリバルブ効果が得られないことがある。
チャンバーの面積は、導入される試料液の量に応じて適宜調整される。導入される試料液の量は、通常は100μl以下であるので、チャンバーの面積は約2〜100mmであればよい。またチャンバーの面積は、ディスクの投影面積に応じて設定されるが、ディスクの投影面積をあまり大きくできないため、上記の範囲に設定されることが好ましい。
2以上のチャンバーは、互いに流路によって連通され、試料液が移動することができる。2以上のチャンバーは、連通される順に、試料液分析用ディスクの回転中心から遠くに配置されることが好ましい。遠心力を用いて、各チャンバーに試料液を段階的に移動させるためである。
試料液分析用ディスクが具備するディスク状部材は、1または2以上の流路を有する。流路は、チャンバーの開口部に連結される。ディスク状部材に2以上のチャンバーが設けられている場合は、流路がチャンバー同士を連通する。
ディスク部材に形成された流路は、試料液が毛細管現象で移動できるようにされていることが好ましい。流路の深さは、ディスク平面に対して約50μm〜300μmであることが好ましく;流路の幅は、約0.2mm〜1.5mmであることが好ましい。
試料液分析用ディスクの回転による遠心力と、前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力により、ディスク状部材内に設けられたチャンバーおよび流路の内部で、試料液を移動させることができる。
試料液分析用ディスクの「回転中心に近い側のチャンバー」から「回転中心から遠い側のチャンバー」に接続する流路の軌道は、1)回転中心から遠ざかる軌道と、回転中心に近づく軌道とを組み合わせた軌道であってもよく、2)一意に回転中心から遠ざかる軌道であってもよい。
1)回転中心から遠ざかる軌道と、回転中心に近づく軌道とを組み合わせた軌道の流路の例は、従来技術として説明した図3に示された試料分析用ディスクに形成された流路(302や304)である。このような軌道の流路でチャンバー間を連通すると、遠心力によって、各チャンバーに段階的に試料液を搬送させやすい。
2)一意に回転中心から遠ざかる軌道の流路の例は、図8に示される流路(6bや6c)である。このような軌道の流路でチャンバー間を連通する場合には、主に流路の断面積や流路の内壁面の疎水性の程度を制御することによって、試料液の流路への浸入に対する抵抗力を調整する。それにより、各チャンバーへ段階的に試料液を移動させることができる。試料液の流路への浸入に対する抵抗力の調整の詳細は後述する。
さらに本発明の試料液分析用ディスクのディスク状部材内に設けられたチャンバーの少なくとも一つには、多孔質体が配置される。チャンバーに配置された多孔質体は、チャンバーの内部空間に収められて配置されていてもよく;外部に露出して配置されていてもよい。
内部空間に収められた多孔質体を有するチャンバーには、流路を通じて試料液を流入させることができ;一方、露出された多孔質体を有するチャンバーには、ディスクの外部から試料液を供給することができる。
チャンバーの内部空間に配置された多孔質体は、チャンバーの内部空間の全体に配置されてもよく(つまり、多孔質体がチャンバーの内部空間と同じ大きさを有する);またはチャンバーの内部空間の一部だけに配置されてもよい(つまり、チャンバーの内部空間には、多孔質体が存在しない「空隙部」がある)。
チャンバーの内部空間の一部だけに多孔質体が配置される場合は、試料液分析用ディスクを回転させたときの回転中心に近い部位に配置されることが好ましい。つまりチャンバーの内部空間の、回転中心から遠い側に空隙部が形成される。チャンバーの内部空間の一部だけに配置された多孔質体は、その一部の内部空間に隙間なく配置されることが好ましい。例えば、「チャンバー内部の、ディスクの回転の遠心方向に直行する断面」と、「チャンバー内に配置された多孔質体の、ディスクの回転の遠心方向に直行する断面」とは、同一の形状および大きさを有している。チャンバーに供給された全ての試料液を、多孔質体に含浸させるためである。
多孔質体において試薬と反応した試料液は、空隙部に移動する。
図4および図5には、チャンバーの内部空間の一部に多孔質体を配置する例が示される。図4および図5におけるチャンバー3−1は、流路6−1および流路6−2と連結している。チャンバー3−1および流路6−1および流路6−2は、下基板14;流路を形成するスペーサ13(不図示);上基板12で形成される。流路6−1は、流路6−2よりも試料液分析用ディスクの回転中心の近くに配置される。
チャンバー3−1は、ディスクの回転による遠心力が加わっても、多孔質体8を所定の位置に固定することができるように、例えば下基板14にストッパ11を配置して段差を設けてもよい。図5に示されるようにストッパ11を部分的に設けてもよく;図4に示されるように、ストッパ11でチャンバー3−1の多孔質体8の遠位側全体を浅くしてもよい。ただし図4に示される構造とすると、多孔質体8から毛細管現象によって、多孔質体に保持された試料液が吸い出され、多孔質体8が試料液を保持できないことがある。その場合には、図5に示すような構造とすることが好ましい。
一方、図10には、露出された多孔質体がチャンバーに配置された例が示される。露出された多孔質体8に、外部から直接、試料液を点着することができる。図10Aに示されたように、多孔質体8は、チャンバー10よりも、試料液分析用ディスクの回転中心9に近づけて配置されることが好ましい。点着された試料液は、試料液分析用ディスクの回転による遠心力で、チャンバー10に搾り出される。
チャンバーに配置される多孔質体の例には、ガラス繊維やセルロースなどの高分子の繊維からなる不織布;および多孔体構造を有する海綿状の構造体などが含まれる。また多孔質体の材質は、試料液や試薬と化学反応しない材質であれば特に制限されない。なかでもガラス不織布が好ましい。
多孔質体は、試料液分析用ディスクに供給される試料液を保液することができる。「保液する」とは、内部に液体を吸収し、かつその液体を内部に保持することをいう。
多孔質体が試料液を保液することができる容量(保液量)は、試料液分析用ディスクに供給される試料液の量よりも多いことが好ましい。分析のために供給された試料液の全てを多孔質体に吸収させて、多孔質体の内部空間で何らかの反応をさせるためである。
多孔質体の保液量は、多孔質体の材質および寸法により規定されるが、本発明の試料分析用ディスクで使用するためには、約2.0〜10.0μlであることが好ましい。例えば、ガラス不織布は、不織布の体積に対して、約9割の試料液を保液することができる。
また多孔質体は、内部に吸収した試料液を、ある程度保持する能力(保持力)を有することが好ましい。多孔質体に吸収された試料液に遠心力が作用しても、保持力により試料液が多孔質体から搾り出されずに、必要な反応が終わるまで試料液を多孔質体に保持できるからである。
試料液の移動のために必要とされるディスクの最小回転数によって遠心力が付与されても、「多孔質体の回転中心からの遠位側側面」から、試料液が流出しないことが必要である。そこで、ディスクにおける多孔質体の配置位置(特に、回転中心から多孔質体の遠位側側面までの距離)と、送液操作のためにディスクに付与すべき最小回転数、多孔質体に供給される試料液量を設定し;設定条件下において、試料液が多孔質体にすべて吸収され、かつ漏れ出さないように、多孔質体の寸法や材質を実験的に決定することが好ましい。
少なくとも一つのチャンバーに配置された多孔質体には、試料液分析用ディスクに供給される試料液中の特定成分と反応する試薬が担持される。担持される試薬は、試料液に可溶であることが好ましい。
多孔質体に担持される試薬は、試料に含まれる特定成分と反応する試薬であれば特に制限されないが、溶解した試薬の濃度分布によって影響を受けやすい反応を引き起こす試薬である場合に、本発明の効果がより有効に作用する。
例えば、試料液が血漿である場合には、ポリアニオン性化合物またはその塩、および血漿中で二価陽イオンを生じる化合物を含む試薬を、多孔質体に担持する。それにより、血漿中のリポタンパク質の、HDL以外のタンパク質を凝集させる。アニオン性化合物の例には、ヘパリン、デキストラン硫酸、リンタングステン酸などが含まれる。二価陽イオンの例には、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが含まれる。
前記多孔質体に試薬を担持するには、例えば、試薬を含む溶液を多孔質体に滴下して、乾燥(例えば風乾)して担持すればよい。
ディスク状部材の材質は、通常は樹脂である。図4、図5または図10Bに示されるように、試料分析用ディスクは、下基板14;スペーサ13;上基板12を有する。
下基板14には、試料液貯留チャンバー2、試薬チャンバー3、測定チャンバー5、および流路バルブ4(図6を参照)などを構成する凹部が形成される。下基板14の凹部は、機械加工または射出成形により形成されうる。スペーサ13は、流路の平面パターンに対応する部分が切り抜かれた板材である。上基板12は、流路およびチャンバー全体を覆
う板材であり、試料液供給口1や空気口15(図6を参照)などが形成される。
試料液分析用ディスクは、下基板14のチャンバー部に固体状試薬や、多孔質体8を実装したのち;スペーサ13および上基板12を貼り合わせて形成されうる。貼り合わせは、例えば、スペーサ13の両面に接着剤を塗布し、それぞれの面に下基板14および上基板12を貼り合わせることによってなされる。接着剤を用いて貼り合わせる代わりに、熱硬化性の粘着剤を用いて貼り合わせたり、超音波融着で貼り合わせたりすることができる。さらに測定試薬の変質、変性をもたらさない方法であれば任意の方法を用いて貼り合わせることができる。
試料液分析用ディスク内のチャンバーや流路は、ディスク状部材と一体不可分に形成されてもよく;また取り替え可能な部材としてディスク状部材に搭載されてもよい。
例えば、ディスク状部材を構成する下基板;スペーサ;上基板と、チャンバーや流路の下基板;スペーサ;上基板とを共用してもよい。また、ディスク状部材を構成する部材と、チャンバーや流路を構成する部材を別の部材として、チャンバーや流路をディスク状部材の上に搭載してもよい。
本発明の試料液分析用ディスクを用いて試料液を分析するには、1)所定の試薬と反応させた試料液に光を照射して、その吸光度や透過度を測定(光学的に測定)するか、または2)所定の試薬と反応させた試料液に流れる電流値を測定(電気的に測定)すればよい。もちろん、他の手段によって分析してもよい。
例えば、試料液に含まれる血漿の、HDL以外のリポ蛋白質を除去した試料液のコレステロール濃度(即ちHDLコレステロール濃度)を光学的に測定する場合には、試料液のHDLコレステロールを、1)コレステロールエステルをコレステロールに変換させる酵素(コレステロールエステラーゼ)と、2)コレステロールを酸化させる酵素(例えばコレステロールデヒドロゲナーゼ)と、3)コレステロールの酸化による電子移動を仲介するための試薬であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、さらに4)NADの還元体であるNADHとの間で電子授受を行い、吸光度が変化するWST−9などの色素と反応させて、反応前後の試料液の吸光度の変化を測定すればよい。
一方、HDLコレステロール濃度を電気的に測定する場合には、上記の光学的に測定する方法と同様の、コレステロールエステラーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼにより触媒される反応を経て、NADHとの間で電子授受が可能なレドックス化合物と、試料液のHDLコレステロールとを反応させて;その反応後に、測定用に設けられた電極を適切な電位に設定したときに、試料液に流れる電流を測定すればよい。前記レドックス化合物の例には、水溶液中でフェリシアン化物イオンを生成するフェリシアン化カリウムが含まれ、フェリシアン化物イオンは還元されてフェロシアン化物イオンとなる。
試料液に流れる電流を測定するには、測定チャンバー(図6などを参照)に少なくとも対極と作用極の役割を果たす電極を設けて電圧を印加することで、還元体(フェロシアン化物イオンなど)が酸化される際に生じる酸化電流値を計測して測定すればよい。分析装置には、ディスク外部から前記電極に接触するための端子を設けておくことが好ましい。
以下において、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
[試料液分析用ディスクの第一の例]
図6は、試料液分析用ディスクの第一の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。試料液分析用ディスクは、試料液供給口1を
有する試料液貯留チャンバー2;多孔質体が配置された試薬チャンバー3a;試薬チャンバー3b;測定チャンバー5を有する。さらに試料液分析用ディスクは、試料液貯留チャンバー2と試薬チャンバー3aとを連通する流路6a;試薬チャンバー3aと試薬チャンバー3bとを連通する流路6b;試薬チャンバー3bと測定チャンバー5とを連通する流路6c;測定チャンバー5と接続し、一方の端に空気口15を有する流路6dを具備する。流路6aには、試料液貯留チャンバー2からの試料液の流出を制御するための流路バルブ4が配置される。図6において矢印310は遠心力がかかる方向を示し、矢印320はディスクの回転方向を示す。
試料液貯留チャンバー2から延びる流路6aは、いったん試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の液面16よりも回転中心9に近い部位にまで延びた後;試薬チャンバー3aとの接続部にまで延びる。
流路6bは、試薬チャンバー3aの回転中心9から遠い位置の端部近傍から延び、いったん回転中心9に近い部位にまで延びた後;試薬チャンバー3bとの接続部にまで延びる。
試薬チャンバー3aに配置された多孔質体8は、試薬チャンバー3aの回転中心9に近い部位に配置される。多孔質体8は、回転方向と平行な断面が試薬チャンバー3aの断面と等しくなるように成型されている。試薬チャンバー3aに流入した試薬の全てを、多孔質体8に吸収させるためである。
多孔質体8には、固体状試薬が担持されていることが好ましく、多孔質体8に均一に担持されていることがより好ましい。多孔質体8に担持された固体状試薬は、表面積が極めて大きいので、多孔質体に吸収される試料液に速やかに溶解する。
試薬チャンバー3bにも固体状試薬が配置される。例えば、試薬チャンバー3bの壁面などに、固体状試薬の溶液を滴下して乾燥するか;または凍結乾燥法などで固形化された試薬を試薬チャンバー3bに配置すればよい。
試料液分析用ディスクには分析される試料液が供給されるが(後述)、試薬チャンバー3aに配置された多孔質体8の保液量は、導入される試料液の容量よりも大きいことが好ましい。つまり、多孔質体8の空隙の合計の容量が、導入される試料液の容量よりも大きいことが好ましい。
図6に示される試料液分析用ディスクを用いて試料液を分析するには、試料液供給口1から試料液を供給する。供給された試料液は、試料液貯留チャンバー2に、いったん貯留される。試料液貯留チャンバー2を設けることなく、試料液を、多孔質体が配置された試薬チャンバー3aに直接供給する(点着する)構成としてもよい(図10参照)。その場合には、試料液の点着の仕方によって、試薬チャンバー3aへの試料液の流入速度が変動することがあるので、多孔質体に担持された固体状試薬の試料液中での溶解状態の再現性に留意することが好ましい。
試料液に含まれる固形物を除去する必要がある場合には、試料液貯留チャンバー2において、遠心分離処理をして除去してもよい。例えば試料液が血液であれば、血球などの固形物をあらかじめ除去してもよい。
試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の流路6aへの流出を、いったん防止するために流路バルブ4が設けられる。流路バルブ4において、流路6aの幅および/または高さが不連続的に高められる。そのため、毛細管現象によって流路6aを流れる試料液は、流路6aの流路バルブ4(不連続的に幅と高さが増大する部分)で停止する。このよう
にして毛細管現象による流れを制御する技術は、一般的に知られている。
流路バルブ4は、試料液分析用ディスクを回転させたときの、試料液貯留チャンバー2に貯留された試料液の液面16よりも、回転中心9から遠い位置に配置されることが好ましい。試料液分析用ディスクを回転させると、遠心力で試料液が移動して、流路バルブ4を超える。遠心力により流路バルブ4を超えた試料液は、遠心力が作用している間は、試料液の液面16よりも回転中心9に近づくことはできないが、回転を止めて遠心力の作用を解除すると、毛細管現象により流路6aを進み、試薬チャンバー3aとの接続部に到達する。
試薬チャンバー3aの深さは、後述するように多孔質体8の厚みに等しくする。したがって一般的には、試薬チャンバー3aの深さは流路6aの天井高より大きくなる。したがって、毛細管現象による流路6aにおける試料液の移動は、試薬チャンバー3aとの接続部で停止する。仮に流路6aの天井高と試薬チャンバー3aの天井高が同等の場合には、試薬チャンバー3aと流路6aとの接続部近傍にバルブを設けてもよい。
試料液が試薬チャンバー3aと流路6aとの接続部に到達したら、ディスクを回転させる。ディスクの回転による遠心力で、試料液は試薬チャンバー3aに流入する。前述の通り、多孔質体8は、回転方向と平行な断面が試薬チャンバー3aの断面と等しくなるように成型されているので、流入した試料液の全てが多孔質体8に吸収される。
試薬チャンバー3aに流入した試料液の全てを多孔質体8に吸収させるために、ディスクを回転させて作用させる遠心力は、多孔質体8が試料液を滞留させる力、すなわち多孔質体8の「保持力」を上回らないことが好ましい。
試料液が多孔質体8の全体に含浸して、多孔質体8に担持された固体状試薬が完全に溶解した後に、ディスクの回転速度をさらに上げて、作用する遠心力を高める。遠心力が多孔質体8の試料液を保持する力(保持力)を上回ると、多孔質体8の回転中心9から遠い位置の側面から、試料液が搾り出される。
試薬チャンバー3aの回転中心9の近位側に多孔質体8が配置され、回転中心9からの遠位側に空隙部が設けられる。前記空隙部の容量は、多孔質体8に保液された試料液のうち、ディスクの回転によって多孔質体8から搾り出される液の容量以上であることが好ましい。試料液分析用ディスク回転の遠心力によって多孔質体8から搾り出された試料液のすべてを、空隙部に貯留するためである。多孔質体8に担持された固体状試薬によって惹き起こされた反応によって生じた凝集物や、多孔質体8を透過した固形物を、空隙部において遠心分離処理して除去してもよい。
試薬チャンバー3aの空隙部に試料液を絞り出した後、試料液分析用ディスクの回転を停止させると、試料液は毛細管力で流路6bの内部を移動して、試薬チャンバー3bの手前に到達する。試薬チャンバー3bは、固体状試薬を内包する。
その後、試料液分析用ディスクの回転と停止の操作により、試料液を測定チャンバー5に導き、測定チャンバー5において前記試料液の化学反応を、吸光度などを用いて光学的に測定することで、目的の特定成分を定量することができる。
[試料液分析用ディスクの第二の例]
図7は、試料液分析用ディスクの第二の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図7に示される試料液分析用ディスクは、多孔質体を配置された試薬チャンバー3aに流路6eを介して接続された凝集物分離チャン
バー10を有する。図7に示される試料液分析用ディスクの試薬チャンバー3aには、試薬チャンバー3aの内部形状と同じ大きさで、かつ同じ形状の多孔質体8が挿入される。挿入された多孔質体8から遠心力によって搾り出された試料液が、凝集物分離チャンバー10に流入して貯留される。チャンバー10の容量は、多孔質体8に保液された試料液のうち、ディスクの回転により多孔質体8から搾り出される液の容量よりも大きいことが好ましい。
流路6eは、試薬チャンバー3aから凝集物分離チャンバー10に向かって、回転中心9から遠ざかる方向に直線的に延びている。したがって多孔質体8から搾り出された試料液は、試料液分析用ディスクの回転数を高めると、速やかに凝集物分離チャンバー10に流入する。凝集物分離チャンバー10において、必要に応じて遠心分離処理などにより固形物を除去してもよい。
図7の試料液分析用ディスクは、多孔質体8の厚みが十分でない場合に特に好適である。他の部材については、図6に示された試料液分析用ディスクと同様である。
[試料液分析用ディスクの第三の例]
図8は、試料液分析用ディスクの第三の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図8に示された試料液分析用ディスクのチャンバーの構成は、図1に示された試料液分析用ディスクのチャンバーと同様である。図8に示された試料液分析用ディスクのチャンバーのそれぞれを連結する流路6bや流路6cは、回転中心から遠ざかる方向へ直線的に延びている(一意に回転中心から遠ざかる軌道を有する)点で、図6に示された試料液分析用ディスクと相違する。
図8に示される試料液分析用ディスクは、図1に示される試料液分析用ディスクと比べて、流路やチャンバーを構成するために必要な部材が少ないという利点を有する。一方、図8に示される試料液分析用ディスクは、流路6bまたは流路6cを精密に設計する必要がある。例えば、回転中心に近い試薬チャンバー3aから、試薬チャンバー3bに試料液を移送するためにディスクを回転させると、試薬チャンバー3bに移送された試料液が、試薬チャンバー3bに留まることなく、測定チャンバー5にまで流入してしまうことがある。
試料液分析用ディスクの回転による遠心力によって、試料液が、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部を超えて流路6bに流れ込もうとする力は、1)回転直後の試薬チャンバー3aにおける試料液の液面から、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部までの距離、2)回転数、3)回転中心から、試薬チャンバー3aと流路6bとの接続部までの距離、に依存する。
一方、試薬チャンバー3a内の試料液の、流路6bへの流入に対する抵抗力も存在する。前記抵抗力は、流路6bの内壁面の、試料液に対する表面張力、粘性などに依存するが、一般的に流路6bの断面積が小さい方が大きくなる。また、流路の内壁面を疎水化するほど、前記抵抗力は大きくなる。
従って、流路6bの断面積を適切に設定すれば、ある回転数αによる遠心力で多孔質体8から搾り出された試料液を、試薬チャンバー3bまで移動させることなく、チャンバー3aに留めておくことができる。回転数αを上げて回転数βとして、チャンバー3aに留められた試料液を、チャンバー3bに流入させる。
さらに、回転数βの遠心力によりチャンバー3bに流入した試料液を、測定チャンバー5まで移動させることなく、測定チャンバー3bに留めることが好ましい。そのため、試薬チャンバー3bと測定チャンバー5の間とを連通する流路6cの断面積と、試薬チャンバー3bの寸法を適切に調整する。
そして、回転数βを上げて回転数γとして、チャンバー3bに留められた試料液を、チ
ャンバー5に流入させることが好ましい。
[試料液分析用ディスクの第四の例]
図9は、試料液分析用ディスクの第四の例の構成を示す平面図であり、回転中心9から半径方向外側へむけての一部分が示される。図9に示された試料液分析用ディスクは、試料液供給口1を有する試料液貯留チャンバー2;流路バルブ4を有する流路6a;多孔質体8が配置された試薬チャンバー3a;を有する点は、図6に示された試料液分析用ディスクと同様である。一方、図9に示された試料液分析用ディスクは、試薬チャンバー3bが測定チャンバー5を兼ねている点で、図6に示された試料液分析用ディスクと相違する。
図9に示された試料液分析用ディスクは、図6に示された試料液分析用ディスクと比較して、試料液移送の段数を減らすことができ、かつ流路やチャンバーを構成するために必要な部材を少なくすることができる。一方、試薬チャンバー3bに流入した試料液に、試薬を均一に溶解させて反応させるために必要な時間が長くなることがある。したがって、試薬の特性に応じて、試薬チャンバー3bと測定チャンバー5とを別途に設けるか否かを検討することが好ましい。
[試料液分析用ディスクの第五の例]
チャンバーに配置される多孔質体は、必ずしもチャンバーに内包されていなくてはならないわけではなく、露出されていてもよい。図10には、チャンバーに配置される多孔質体が露出している例が示される。
図10Aは、試料液分析用ディスクの第五の例の主要部分の構成を示す平面断面図である。一方、図10Bは、その主要部分の縦断面を示す模式図である。図10には、図6で示される試薬チャンバー3a(多孔質体が配置された試薬チャンバー)に対応する部材だけが示されており、その他の部材は省略されている。
図10に示される多孔質体8は、チャンバー10の内部に閉じこめられずに、露出して配置されている。つまり多孔質体8は、試料液分析用ディスクを構成する基板上に露出している。多孔質体8に接するようにチャンバー10が設けられる。チャンバー10は大きな開口部を有し、その開口部を多孔質体8が覆っている。
また多孔質体8は、チャンバー10よりも、試料液分析用ディスクの回転中心9に近い位置に配置される。したがってチャンバー10の内部空間に、多孔質体8から遠心力によって搾り出される試料液を貯めることができる。
チャンバー10の内壁面(例えばチャンバー10の下基板側)に配置されたストッパ11によって多孔質体8を固定して、試料液分析用ディスクの回転による遠心力が作用しても移動させないようにすることが好ましい。より確実に多孔質体8を固定するために、多孔質体の下基板14と接する面に、難水溶性の接着剤を塗布してもよい。
図10に示される試料液分析用ディスクのように、チャンバーに配置された多孔質体が露出している場合は、ディスクが回転していないときに、試料液を多孔質体に直接点着することができる。よって、試料液供給口1を有する試料液貯留チャンバー2(図6など参照)はなくてもよい。点着された試料液は多孔質体に吸収して漏れ出すことはない。
点着された試料液に、多孔質体中の試薬が充分に溶解し、反応が進行した後に、回転中心9を中心にして試料液分析用ディスクを回転させる。回転による遠心力で、多孔質体中の試料液が搾り出されてチャンバー10に流入する。
図10に示される試料液分析用ディスクは、試料液の前処理(例えば全血における血球の分離など)が不要な場合に有用である。
本発明の実施の形態について説明したが、特に詳細に説明しなかった事項については、従来公知の方法や手段を用いることができる。また、上記実施の形態は、本発明の思想の範囲内で種々の設計変更を行うことが可能である。
本発明の試料液分析用ディスクは、回転中心を有する。ディスクの回転中心に設けられた穴にかみ合う形状の固定部材を有する回転装置に、ディスクを固定して回転させることができる。回転装置が測定機能を有していれば、測定チャンバーに流入した試料液の物性を測定して、試料分析を行なうことができる。
一方、試料液の物性を測定する測定器に設けられた回転構造体が、回転中の試料液分析用ディスクを保持する機構を備えていてもよい。回転構造体は、モータなどの駆動装置に連結される軸や、軸受け構造を有し;かつ回転軸に垂直な面内に試料液分析用ディスクを保持する。その場合には、試料液分析用ディスクに回転軸を設けなくてもよく、ディスク外形の投影形状は、円形以外の種々の形状とすることができる。例えば図11に示すように、試料液分析用ディスク101を、駆動装置402に駆動される回転構造体401の窪みにはめ込み、回転させることができる。
回転構造体に試料液分析用ディスクを保持させる場合には、測定器に設けられた回転構造体が試料液分析用ディスクを回転させたときに、ディスクの回転中心がぶれないように留意することが好ましい。例えば、ディスクを回転させる回転構造体の重心が、ディスクの回転軸上になるように、重量配分を予め最適化したり、調整機構を設けたりする。
以下において実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の範囲は、これらの実施例により限定して解釈されることはない。
[実施例1]
図6に示された試料液分析用ディスクを準備して、血漿中のHDLコレステロール(HDL−C)濃度を測定した。
上基板および下基板となる2枚のポリカーボネート製の板材と、両面に粘着剤を塗布したポリエチレンテレフタレート製の厚み100μmのスペーサ板材とを用いて、試料液分析用ディスクを作製した。
下基板14の片面に、試料液貯留チャンバー2;試薬チャンバー3a;試薬チャンバー3b;測定チャンバー5を成型した。
下基板14における試薬チャンバー3aの平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦8mm;横5mmの長方形とした。試薬チャンバー3aの深さは、多孔質体が格納される部分を0.2mm;それ以外の部分を0.1mmとした。多孔質体が格納される部分の平面形状は、縦3mm;横5mmの長方形であって、回転中心9に近い側に設けた。
下基板14における試料液貯留チャンバー2の平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦5mm;横5mmとして、深さを0.3mmとした。試薬貯留チャンバー2と試薬チャンバー3aとを連通する流路6aとの連結部分は、試薬貯留チャンバー2の、ディスクを回転させたときに一番外側になる位置
に設けられた。流路6aの途中には、深さ0.3mm;直径1.0mmの円柱を設けた。下基板14における試薬チャンバー3bの平面形状は、ディスクを回転させたときに加わる遠心力の向きを「縦方向」とした場合に、縦3mm;横5mmとして、その深さを0.2mmとした。下基板14における測定チャンバー5の平面形状は直径2mmの円形として、深さを0.3mmとした。
チャンバーを成型した下基板に、100μmのスペーサ板材を挟んで上基板12を貼り合わせた。したがって、試薬チャンバー3aの底面から天井までの距離(つまり試薬チャンバー3aの深さ)は、0.3mmまたは0.2mmとなった。各々のチャンバーを連通する流路はスペーサ部材で形成されるので、流路の深さは100μmとなった。また、各流路の幅は全て0.5mmとした。
多孔質体を格納する部分に「3mm×5mm」に裁断されたガラス不織布(ワットマン社製のF147-11、厚み約300μm)を格納した。ガラス不織布(多孔質体)の、回転中心9からの遠位側側面を、回転中心9から36mmの位置に配置した。
ガラス不織布に、5μlの試薬溶液(リンタングステン酸ナトリウム6mg/ml;および塩化マグネシウム12水和物4mg/mlの混合水溶液)を滴下して、乾燥させた。ガラス不織布への試薬乾燥は、ガラス不織布を裁断する前に行ってもよい。その場合にはもちろん、ガラス不織布の大きさに見合うだけの量の試薬溶液を滴下して乾燥する。
試薬チャンバー3bを、「試薬チャンバー3bの回転中心9から近位側の側面」が「試薬チャンバー3aの回転中心9から遠位側の側面」よりも遠くになるように配置した。試薬チャンバー3aと試薬チャンバー3bとを流路6bで連通させた。上基板を貼り合わせた後の、試薬チャンバー3bの深さは300μmであった。
一方、以下の成分の混合水溶液を凍結乾燥して得られた粉末を、押し固めてシートとした。このシートを6枚重ねて、試薬チャンバー3b内に配置した。
コレステロールデヒドロゲナーゼ(アマノエンザイム製のAmano5)0.7kunits/ml;
シュクロース2.5Wt%水溶液2μl;
コレステロールエステラーゼ((株)旭化成製のT−18)0.5kunits/ml;
ジアホラーゼ((株)旭化成)630units/ml;
NAD(ニコチンアデニンジヌクレオチド)60mM水溶液2μl;
WST−9(水溶性テトラゾリウム、同仁化学(株)製)60mM;および
2.5%シュクロース水溶液2μl
反応時の試料液のpHを調整するため、試薬チャンバー3bに配置するシートの成分として、Trisバッファーを用いることが好ましい。しかしながら、Trisバッファーは凍結乾燥に適さないので、試薬チャンバー3bの底面に0.3MのTrisバッファーを(3μl)を滴下して風乾させて固形化した。
測定チャンバー5を設けて、試薬チャンバー3bと連通させた。測定チャンバー5の、貼り合わせ後の深さを400μmとした。
作製した試料液分析用ディスクの試料液供給口1(図6参照)から、5μlの試料液(血漿)を供給した。ディスクを2000rpmで10秒間回転させて、流路6aに試料液を浸入させて、流路バルブ4を超えさせた。
ディスクの回転を止めると、試料液は流路6aをさらに流動して試薬チャンバー3aの
手前で静止した。ここで、ディスクを1000rpmで5秒間回転させたところ、速やかに多孔質体8に試料液が染み込んだ。このとき多孔質体8の、回転中心9からの遠位側から、試料液が漏れることはなかった。
その後、回転速度を6000rpmに上げて、多孔質体8から試料液を、試薬チャンバー3aの空隙部に搾りだした。30秒間で、供給した試料液(血漿)の約半部(2.5〜3μl)が空隙部に流出した。回転時間をのばしても、搾り出される試料液は増えなかった。一方、回転数をさらに上げると、回収率が向上したが、機器の安定性を勘案して、回転数を6000rpmとした。
試薬チャンバー3aの空隙部で、HDL以外のリポ蛋白質の凝集を進めるため、回転数を1000rpmに低下させて遠心力を弱めて、1分間回転を続けた。その後、再び6000rpmに上げて、生成した凝集物を遠心力で除去した。
さらに、従来の試料液分析用ディスクの試料液移送の機構に準じた様式で試料液を移動させて;試薬チャンバー3bで固体状試薬と溶解させて反応させて;さらに測定チャンバー5に導かれた試料液の、波長650nmでの吸光度を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す(「■」のシンボル)。図12のグラフの縦軸は、測定された吸光度を;横軸は、同一の試料液のHDLコレステロール濃度を、検定器(日立製作所(株)製の日立7020)で別途に測定した値を示す。図12に示されたように、測定された吸光度と、検定器で測定されたHDLコレステロール濃度は、比例関係にあることがわかる。図12におけるかっこ内の数字は、CV値、つまり変動係数(%)である。
[比較例1]
ガラス不織布(多孔質体)に、凝集形成のための試薬(リンタングステン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウム)を担持しないこと以外は、同様の試料液分析用ディスクを用いて同様の測定を行った。つまり、総コレステロールの濃度に依存する吸光度変化を示す系で吸光度を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す(「◆」のシンボル)。縦軸は、測定された吸光度を;横軸は、同一の試料液のHDLコレステロール濃度を、検定器によって別途に測定した値を示す。
図12に示されるように、HDLコレステロール濃度の検定器による測定値と、試料液分析用ディスクを用いて測定した吸光度との相関(■)は、総コレステロール濃度の検定器による測定値と、試料液分析用ディスクを用いて測定した吸光度との相関(◆)と、非常によく一致した。
図6に示された構造の試料液分析用ディスク以外にも、本発明の試料液分析用ディスクを用いれば、同様の測定結果を得ることができる。
血漿中のHDLコレステロール濃度以外の所望の成分に対する化学反応により生じた変化を、光学的あるいは電気的に検出可能な反応系を用いれば、本発明により当該成分を測定することができる。
本発明の液体試料液分析用ディスクを用いれば、試料液と反応した試薬の化学変化を検出することにより試料液を分析することができる。ここで、前記固体状試薬を試料液に、
迅速かつ均一に溶解させることができるので、溶解した試薬濃度のムラが抑えることができ、検出の正確性を確保することができる。したがって、本発明の液体試料液分析用ディスクは血液成分の測定装置などに有用である。
本出願は、2006年3月16日出願の出願番号JP2006−072224に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
従来の試料液分析装置を示す構成図である。 従来の試料液分析装置で使用される試料液分析用ディスクの一例を示す断面図である。 従来の試料液分析用ディスクにおける、試料液を移動する機構を説明する模式図である。 試料液分析用ディスクのディスク部材に設けられたチャンバーの多孔質体の配置の一例を示す図である。 試料液分析用ディスクのディスク部材に設けられたチャンバーの多孔質体の配置の一例を示す図である。 試料液分析用ディスクの第一の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第二の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第三の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第四の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 試料液分析用ディスクの第五の例のチャンバーおよび流路部分の構成を示す平面図である。 回転構造体と、それに保持される試料液分析用ディスクを含む分析装置を示す構成図である。 本発明の試料液分析用ディスクを用いて、血漿中のHDLコレステロール濃度を測定した結果を示すグラフである。

Claims (16)

  1. ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、
    前記開口部に連結する流路と、
    前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、
    前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
    前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
    前記多孔質体を含む前記チャンバーに、前記ディスクの回転による遠心力により前記開口部の1つを経由して前記試料液が流入する試料液分析用ディスクであって、
    前記遠心力が、少なくとも前記多孔質体に前記試料液が浸透してから前記多孔質体に含浸された前記化学物質が前記試料液によって溶解するまで、前記試料液が前記多孔質体中に保持され得る範囲に設定され、かつ
    前記ディスクの回転の増加により前記遠心力を増加させた際に、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、
    試料液分析用ディスク。
  2. 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、請求項1に記載の試料液分析用ディスク。
  3. ディスク状部材内に設けられた、1または2以上の開口部を有する空間で構成された1または2以上のチャンバーと、
    前記開口部に連結する流路と、
    前記チャンバーのうち少なくとも1つに配置された多孔質体と、
    前記多孔質体に含浸された、試料液中の特定成分と反応しかつ前記試料液に可溶な化学物質を含む試薬と、を具備し、
    前記流路および前記チャンバーへの前記試料液の搬送手段として、前記ディスクの回転による遠心力と前記チャンバーおよび前記流路に生じる毛細管力を用いることができ、
    前記多孔質体に前記試料液をディスク状部材の外部から含浸させることができるように、前記多孔質体は前記チャンバーから露出されて配置され、かつ前記多孔質体は前記ディスク状部材の回転の中心に対して、前記チャンバーよりも近くに配置された試料液分析用ディスクであって、
    前記多孔質体に含浸された試料液が、前記多孔質体に担持された試薬を溶解するまで、前記多孔質体中に保持され、
    前記ディスクの回転による遠心力によって、前記多孔質体に浸透した前記試料液が、前記多孔質体から搾り出されることが可能な構造を有する、
    試料液分析用ディスク。
  4. 前記ディスク状部材内に設けられたチャンバーの数は2以上であり、前記チャンバーのそれぞれは前記流路で連通されている、請求項3に記載の試料液分析用ディスク。
  5. 前記多孔質体が配置されたチャンバーの内部空間の大きさと、前記多孔質体の大きさが同じである、請求項1に記載の試料液分析用ディスク。
  6. 前記多孔質体が配置されたチャンバーの内部空間は、前記ディスクの回転の中心から遠位側に空隙部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の試料液分析用ディスク。
  7. 前記多孔質体が配置されたチャンバーの内壁は、前記多孔質体を固定するための段差を有する、請求項6に記載の試料液分析用ディスク。
  8. 前記空隙部の容量は、前記多孔質体から搾り出される液量よりも大きい、請求項6に記載の試料液分析用ディスク。
  9. 前記多孔質体が配置されたチャンバーの内部空間の、前記ディスクの回転の遠心方向と直行する断面の形状および大きさは、
    前記多孔質体の、前記ディスクの回転の遠心方向と直行する断面の形状および大きさと同じである、請求項6に記載の試料液分析用ディスク。
  10. 前記多孔質体が配置された第1のチャンバーと、前記多孔質体から搾り出される液量よりも大きい容量を有する第2のチャンバーと、試料液の分析に用いる試薬が配置された第3のチャンバーとを具備し、
    前記多孔質体が配置された第1のチャンバーの内部空間の大きさと、前記多孔質体の大きさが同じであり、
    前記第1のチャンバーは、前記第2のチャンバーよりも、前記ディスクの回転中心の近くに配置され;前記第2のチャンバーは、前記第3のチャンバーよりも前記ディスクの回転中心の近くに配置される請求項2に記載の試料液分析用ディスク。
  11. 前記多孔質体が配置された第1のチャンバーと試料液の分析に用いる試薬が配置された第3のチャンバーを具備し、
    前記多孔質体が配置された第1のチャンバーの内部空間は、前記ディスクの回転の中心から遠位側に空隙部を有し、かつ前記空隙部の容量は前記多孔質体から搾り出される液量よりも大きく、
    前記第1のチャンバーは、前記第3のチャンバーよりも前記ディスクの回転中心の近くに配置される、請求項2または4に記載の試料液分析用ディスク。
  12. 前記チャンバーそれぞれは、連通される順に前記回転中心から遠ざかるように配置され、
    前記順に遠ざかるように配置されたチャンバーの間を連通する流路は、回転中心に近い側のチャンバーから、遠い側のチャンバーに接続するまで、一意に回転中心から遠ざかる軌道を有する請求項11に記載の試料液分析用ディスク。
  13. 前記ディスクの回転により、前記試料液を、回転中心に近い側のチャンバー(チャンバーA)から、遠い側のチャンバー(チャンバーB)へ移動させることができ、
    前記チャンバーAは、多孔質体を配置され、かつ回転中心から遠位側に空隙部を有し、
    前記回転は、前記チャンバーAに配置された多孔質体に保持された試料液に、多孔質体の保持力よりも大きい遠心力を付与し、かつ
    前記回転は、前記チャンバーAの空隙部の試料液に、前記チャンバーBに向かう流路への流入に対する抵抗力よりも小さい遠心力を付与する、請求項12に記載の試料液分析用ディスク。
  14. 前記多孔質体に含浸される試薬は、ポリアニオン性化合物またはその塩、および前記試料液中で2価陽イオンを生じる化合物を含む、請求項1または3に記載の試料液分析用ディスク。
  15. 前記ポリアニオン性化合物はヘパリンであり、前記2価陽イオンはマグネシウムイオンまたはカルシウムイオンである、請求項14に記載の試料液分析用ディスク。
  16. 前記ポリアニオン性化合物がデキストラン硫酸もしくはリンタングステン酸、またはこれらの塩であり、前記2価陽イオンがマグネシウムイオンである、請求項14に記載の試料液分析用ディスク。
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