本発明は、無線通信ネットワーク、特にモバイル環境下におけるアドホックネットワーク通信に関する。
近年、UWB(Ultra Wide Band)無線通信方法について様々なものが提案されてきている。UWB無線通信は、1Gbpsを超えるような広帯域通信であるため、伝送容量の大きな動画伝送などに適用が検討されている。一方、UWBはその通信可能範囲の狭さゆえにオフィス環境などでは使い勝手がよいとは言えず、むしろ今日注目されつつあるPAN(Personal Area Network)に向いているといえる。但し、PANと一口に言っても、黎明期であるPANの有力なアプリケーションはなかなか見つけにくい。広帯域性故にそれを利用する機器は、一般的に電力を多く使用することになるが、PANの場合、あまり多くのバッテリーを携帯して移動するのは難しいためである。
PANを利用し、かつUWBの広帯域性を必要とするアプリケーションの一つは、ファイル交換アプリケーションである。その基本的な動作原理は、例えば特許文献1に開示されている。モバイル環境における無作為なファイル交換(特許文献1にはメッセージ交換と記されている)にてミニコミュニティを作ることが可能となる。特許文献1には記されていないが、やり取りされるデータはテキストドキュメントに限らず、音楽・画像・動画などのファイルの交換も可能である。特にUWBにおいては、その実効伝送速度が100Mbpsから数Gbpsにも及ぶため、人と人がすれ違いざまに大きなサイズのファイル交換が可能であり、このようなファイルの交換は、UWBに適したアプリケーションであるといえる。
そのUWBで使用される伝送方式は、IEEE802.15にて様々な議論がなされている。PAN(特にモバイルPAN)環境で実装されるMACプロトコルは、自律分散処理による方式である場合が多い。これは、各端末が、五月雨のようにすれ違っているようなPAN環境下では、マスタ−スレーブの関係をその都度構築し、データスロットを割り振るなどの通信環境をそろえた後に通信を開始することが、大きなオーバヘッドになるからである。
また、非特許文献1は、自律分散型のPANにおける無線通信方式を開示している。
図1は、TDMA(Time Division Multiple Access)によるスーパフレームの構成を示す図である。
図1において、スーパフレームはビーコンピリオド2201とデータピリオド2202に分割される。
ビーコン2203は、ビーコンピリオド2201内で各無線通信装置から送信されるが、近隣のノードのビーコンは衝突することなく近隣のノードに伝わることが保証されている。
しかしながら、非特許文献1に記載の無線通信方式の場合、ビーコンピリオドを共有するスーパフレームグループが混在したとき、データスロットとビーコンピリオドの衝突が発生してしまうことがあった。
これを解決する一つの方法として、PANに属する全てのノードが常時スーパフレームグループの衝突を検出し、分散的にこれに適応するアルゴリズムを構成することが考えられる。
しかしながら、上記の方法では、無線通信装置は常にビーコン受信部を受信待ち状態に保つ必要があり、受信待ち電力が大きくなる。これは、UWB通信では許容しがたく、モバイル通信装置のような電池による電力供給しか望めない環境下では、大きなデメリットになる。
また、無線通信装置は、周囲の無線通信装置の有無に関わらず常にビーコンを出し続けなくてはならないため、さらに電力消費することになる。
本発明の目的は、アドホックネットワークにおいて、電力消費を従来より低減可能であって、他の無線通信装置のスーパフレームとの同期が可能な無線通信方法及び無線通信装置を提供することにある。
本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する無線通信方法であって、一の無線通信装置が、スーパフレームの終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、他の無線通信装置が、そのエンドトーンを受信したときに、自己のスーパフレームの終端を同期させるステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さいトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信装置は、トーン信号を送受信するトーン信号通信部と、変調して広帯域信号でデータを送受信するデータ信号通信部と、時刻管理部と、フレーム送受信部とを有している。その時刻管理部は、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンをトーン信号通信部から送信したり、あるいはエンドトーンをトーン信号通信部から受信し、自己の終端時刻以前に最初に受信したエンドトーンを基準にして終端時刻を再設定する。また、フレーム送受信部は、時刻管理部が再設定した終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをトーン信号通信部から送信し、当該送受信トーンの送信完了後、データをデータ信号通信部から送信したり、あるいは送受信トーンを受信したときデータ信号通信部を受信可能状態にしてデータをデータ信号通信部から受信したりする。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
本発明によれば、無線通信装置は、アドホックネットワークにおいて、従来に比べ待機時の電力消費を低減しつつ、モビリティ環境下での、スーパフレームの同期調整が可能となる。その結果、他の無線通信装置と最小時間で通信を開始することができる。
従来の無線通信方法におけるTDMAによるスーパフレームの構成を示す図
本発明の実施の形態1における無線通信装置の構成を示す図
本発明の実施の形態1におけるトーン信号とフレームの送受信プロトコルを示すタイミングチャート
本発明の実施の形態1における各トーン信号の長さを示す図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの同期処理を説明するフロー図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの同期動作を示す図
本発明の実施の形態1における2つのスーパフレームグループの配置を示す図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの再同期処理を説明するフロー図
本発明の実施の形態1における無線通信装置の再同期エンドトーンの送受信動作を示す図
本発明の実施の形態1におけるデータ送受信の動作を示す図
図11Aは、本発明の実施の形態1における要求側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図、図11Bは、本発明の実施の形態1における応答側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図
図12Aは、本発明の実施の形態1における無線通信装置が2ホップ内に位置したときの配置図、図12Bは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図、図12Cは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図
図13Aは、本発明の実施の形態1における無線通信装置が3ホップ内に位置したときの配置図、図13Bは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図
本発明の実施の形態1における無線通信装置がトーン信号を受信した場合の動作を示した図
本発明の実施の形態1における無線通信装置がトーン信号を受信した場合の動作を示した図
本発明の実施の形態1におけるRTS/CTSによる衝突回避を説明する図
本発明の実施の形態2における無線通信装置の配置を示す図
本発明の実施の形態3におけるスーパフレームのトーン信号とフレームを説明するタイミングチャート
本発明の実施の形態3における無線通信装置の構成を示す図
図20Aは、本発明の実施の形態3におけるプローブ要求元の無線通信装置の動作フロー図、図20Bは、本発明の実施の形態2におけるプローブ応答する無線通信装置の動作フロー図
本発明の実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置の構成を示す図
本発明の実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置が管理する音楽ソフトのファイルリストを示す図
本発明の実施の形態5におけるモバイルファイル交換装置の構成を示す図
本発明の実施の形態5におけるモバイルファイル交換装置がアクセスポイントに接続するシーケンスを示す図
本発明の実施の形態6における信号通信部の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態7における信号通信部の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態7における信号通信部の信号波形を示すタイミングチャート
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。以下の実施の形態において、無線通信装置は、データ通信手段をミリ波UWBで行うものとする。
(実施の形態1)
図2は、本発明の本実施の形態における無線通信装置の構成図である。
図2において、無線通信装置は、アンテナ105と指向性制御部106と広帯域通信部101と狭帯域通信部102とMAC制御部103と上位層処理部104とを備えている。
アンテナ105は、各セクタを担当する複数の指向性アンテナからなるものであり、指向性制御部106は、そのアンテナ105を構成する指向性アンテナを制御して、通信範囲を決定するものである。また、広帯域通信部101は、UWB信号を送受信するものであり、狭帯域通信部102は変調し、または、変調せずに狭帯域信号をトーン信号として送受信するものである。但し、広帯域信号がDS―UWB(Direct Sequence UWB)の場合は、狭帯域信号を送信するために、DS―UWBのパルス幅を広げて送信するようにそれぞれの発信機を共有しても良い。
上位層処理部104は、各種のアプリケーションを実行し、コンテンツデータなどの送信データを生成し、MAC制御部103へ送出したり、MAC制御部103から受信データを受けてアプリケーション処理を行うものである。
MAC制御部103は、MACプロトコル処理を行うものであり、フレーム送受信部131、時刻管理部132、再同期制御部133、ビギニングトーン制御部134、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135、プローブ受信部136、およびプローブ送信部137とを有している。
フレーム送受信部131は、データ通信することを通知する送受信トーンを送受信したり、その後のフレームを後述するRTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)の拡張方式(RTS/CTS−e方式)で広帯域信号により送受信するものである。
時刻管理部132は、スーパフレームの開始時刻からの時刻を管理するものであり、自己のスーパフレームの終端を通知するエンドトーンの送信時刻を計測したり、他ノード(無線通信装置など)のエンドトーンとの同期をとるために、狭帯域通信部102とタイミングの受け渡しを行うものである。
再同期制御部133は、他のスーパフレームグループと同期するために狭帯域通信部102を介して再同期信号を送信するものである。また、再同期制御部133は、スーパフレーム全域でエンドトーンを監視し、他のスーパフレームとの同期タイミングを時刻管理部132に通知するものである。
ビギニングトーン制御部134は、データ通信の衝突を回避するためのビギニングトーン1あるいはビギニングトーン2を、トーンをキャリアとしてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)手順に従って送信したり、受信したりするものである。
RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、上位層処理部104から受けとったデータを送信するためにフレームを生成し、フレーム送受信部131へ送出するものである。また、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、後述するRTS/CTSの拡張方式(RTS/CTS−e方式)のRTSコマンドを生成し、フレーム送受信部131へ送出する。
プローブ受信部136は、他の無線通信装置のプローブ要求を受けて、自己の属性や通信環境などの情報を生成し、要求元のノードへ応答するものである。このプローブ要求とは、要求先に対し、そのノードの属性や通信環境などの情報を要求するものである。
プローブ送信部137は、周囲のノードへ属性や通信環境などの情報を要求するためのプローブ要求を生成し、周囲のノードへ送信するものである。また、プローブ送信部137は、プローブ要求先のノードからプローブ応答を受信したとき、応答としてプローブエンドを送信する。
ここで、本発明に係る各種トーン信号とフレームについて説明する。まず、トーン信号の定義について述べる。ここでは、トーン信号とは、狭帯域信号の変調/無変調を問わず、決められた時間送信を続けることによって識別される電気信号を指す。例えば、BTMA(Busy-Tone Multiple Access)やDBTMA(Dual Busy-Tone Multiple Access)などのように信号を出している状態を周囲のノードに伝えるために使用されるビジートーンと構成が良く似ている。
図3は、これらのトーン信号とフレームの送受信プロトコルを示すタイミングチャートである。
図3において、スーパフレーム221は、エンドトーンスロット222とプローブスロット223とデータピリオド224とに分かれている。
エンドトーンスロット222は、エンドトーン(END)201、202が送受信される期間である。また、プローブスロット223は、ビギニングトーン1(BT1)(203)、ビギニングトーン2(BT2)(204)と、プローブ要求(PB)211、プローブ応答(PR)212、アクノリッジ(PACK)213、及びプローブエンド(PE)214とが送受信される期間である。また、データピリオド224は、送受信トーン(SR)205、206とデータ215、ACK/NACK216が送受信される期間である。
図4は、各トーン信号の長さを示す図である。すなわち、ビギニングトーン1の継続時間T2は、送受信トーンの継続時間T1の2倍であり、ビギニングトーン2の継続時間T3はビギニングトーン1の継続時間T2の2倍、エンドトーンの継続時間T4はビギニングトーン2の継続時間T3の2倍である。なお、ビギニングトーン2の継続時間T3は、エンドトーンの継続時間T4の1/2以下でなくてはならないが、それ以外は上記の比率である必要はなく、大小関係が守られていればよい。これは、ビギニングトーン2が2つ以上が同時に検出されても、ビギニングトーン2と判定しなくてはならないからである。なお、3つ以上のビギニングトーン2が直列に並んで2倍以上になることはごく稀であると判断される。
たとえば、送受信トーンが10マイクロ秒であると規定されている場合、狭帯域通信部102は、トーン信号を受信すると、継続時間が10マイクロ秒未満のトーン信号を送受信トーンとして判定する。狭帯域通信部102は、10マイクロ秒からビギニングトーン1の継続時間までのトーン信号をビギニングトーン1として判定する。さらに、狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1の継続時間からビギニングトーン2の継続時間までのトーン信号はビギニングトーン2として判定し、それ以上の継続時間のトーン信号はエンドトーンであると判定する。
次に、このように構成された無線通信装置について、以下にその動作、作用を説明する。
初めに、スーパフレームの同期処理について説明する。
図5は、スーパフレームの同期処理を説明するフロー図である。
図5において、まず、時刻管理部132は、狭帯域通信部102から他ノードのエンドトーンの検出通知がないと(ステップS401)、自己のエンドトーンを送信する時刻であるか否かをチェックする(ステップS402)。
自己のエンドトーンの送信時刻でない場合、ステップS401へ戻り、送信時刻である場合は、時刻管理部132が自己のエンドトーンの送信を狭帯域通信部102へ指示する。狭帯域通信部102は、これを受けて、エンドトーンを送信し(ステップS403)、後述するステップS408へ処理を移行する。
一方、狭帯域通信部102が他ノードからのエンドトーンを検出すると、時刻管理部132へ通知する。時刻管理部132は、今回のエンドトーン検出が自己のエンドトーン出力以前であって、現エンドトーンスロット内で最初に通知されたものか否かをチェックする(ステップS404)。そして、最初でない場合は後述する再同期処理を行い(ステップS405)、処理を終了する。
一方、最初に通知されたものである場合、時刻管理部132は、自己が管理するスーパフレーム周期の開始時刻を現在時刻に合わせる(ステップS406)。
次に、時刻管理部132は、狭帯域通信部102からの通知が他ノードからのエンドトーンの終端を知らせるものであるか否かをチェックする(ステップS407)。
狭帯域通信部102は、エンドトーンの終端でない場合、ステップS402へ戻り、終端である場合は、ステップS403へ移行し、自己のエンドトーンを送信する処理を行う(ステップS403)。また、エンドトーン送信の終了後、時刻管理部132は、自己のエンドトーンスロットの期間が終了しているかどうかの確認を行う(ステップS408)。もし、自己のエンドトーンスロットの期間が終了していれば、処理を終了する。自己のエンドトーンスロットの期間が終了していなければ、ステップ401へ戻る。
このように、時刻管理部132は、エンドトーンの出力時刻を計測したときにエンドトーン201を送信するが、エンドトーンスロット222の範囲内に、周囲のノードから送信されたエンドトーン202を検出すると、自己のエンドトーン201との時間誤差を計測する。そして、時刻管理部132は、自己よりも早いタイミングで検出したエンドトーン202の開始時刻に自己のスーパフレームの終端時刻を合わせる。
また、時刻管理部132は、周囲のノードも同じエンドトーンスロット222内にエンドトーンを送信するが、この中で最も早いエンドトーンを送信したノードのエンドトーン送信開始時刻にすべてのノードが自己のエンドトーンの開始時刻を合わせる。なお、他ノードの送信する最も早いエンドトーンを受信中に自己のエンドトーン送信開始時刻になれば、エンドトーンを送信するが、自己のエンドトーンの送信開始時刻より前にエンドトーンを受信完了した場合は、その時点で自己のエンドトーンを送信する。
これにより、各ノードは、スーパフレームにおいて最も早いエンドトーンに同期することが可能となる。
そして、時刻管理部132は、この同期されたスーパフレーム221の開始時刻を基準にして、プローブスロット223や、データピリオド224内のデータスロットのタイミングを計測する。なお、スーパフレームを64ms、エンドトーンスロット222の長さを512マイクロ秒と定義したとすると、時刻管理部132は、エンドトーンスロット222の中間時点である256マイクロ秒経過時にエンドトーンを送信する。これは、自己のエンドトーン開始時刻がばらついても、他の無線通信装置のエンドトーンスロット222内に収まるようにするためである。
次に、具体例をもって、このスーパフレームの同期動作を説明する。
図6は、同一スーパフレームグループの各無線通信装置が、スーパフレーム周期を同期させる動作を示す図である。ここで、図中の楕円は、無線通信装置の通信可能エリアを示す。無線通信装置A乃至無線通信装置Gは、互いに図のように隣接した状態にあるとする。なお、図6において、各無線通信装置の上段の信号が受信を示し、下段の信号が送信を示す。
図6において、無線通信装置Bは、スーパフレーム周期のエンドトーン送出のタイミングでエンドトーン502の送信を行っているが、自己のエンドトーン502の送信よりも先に無線通信装置Aのエンドトーン501を検出したので、自己の計測しているスーパフレーム周期の開始タイミングを無線通信装置Aのスーパフレーム周期の開始タイミング501に合わせる。また、同様に無線通信装置Cは、自己のスーパフレームの開始時刻を無線通信装置Bのエンドトーン502に同期させる。これにより、無線通信装置Bや無線通信装置Cの遅延時間は、自己のスーパフレーム周期分の固有遅延時間に徐々に収束していく。
無線通信装置D乃至Fについても同様に同期処理が行われ、自己の通信可能エリア内で最も早くエンドトーンを送信する無線通信装置のスーパフレームに同期する。
無線通信装置Gのエンドトーン送信時刻503は、無線通信装置Fのエンドトーン504の送信した後であるので、無線通信装置Fがエンドトーン504を送信し終えた時刻から無線通信装置Gのエンドトーンを送信する。そして、次のスーパフレームにおいて、無線通信装置Gは、他の無線通信装置のスーパフレーム開始タイミングに追いつく。
次に、他のスーパフレームグループと混在したときに行うスーパフレームの再同期処理について説明する。
このスーパフレームの再同期処理は、無線通信装置が、スーパフレーム全体に対してエンドトーンの検出を行い、他のスーパフレームグループのエンドトーンを検出した場合、最も早くエンドトーンを送信した他のスーパフレームグループのスーパフレームに同期する処理である。
図7は、無線通信装置601〜603が互いにスーパフレームグループを構成し、無線通信装置604〜606が別のスーパフレームグループを構成していることを示す図である。図7において、無線通信装置604と無線通信装置606は、無線通信装置603の通信可能エリアに入ってきている。
このようなときに、無線通信装置603が、他のスーパフレームグループのエンドトーンをエンドトーンスロット外で検出すると、それを起点にして無線通信装置603と同一スーパフレームグループの無線通信装置が再同期処理を行い、最終的には無線通信装置601乃至606が同一のスーパフレームを共有することになる。
図8は、スーパフレームの再同期処理をエンドトーン送受信終了時に開始するか否かを決定するフロー図である。
図8において、再同期制御部133は、自己がスーパフレーム期間中に送受信スロットなどでエンドトーンを受信したかどうかをチェックする(ステップS701)。エンドトーンを受信していない場合、再同期制御部133は、自己が前回の再同期処理を終えてからスーパフレームの同期回数が所定回数(N回とする)以上のノードであり、かつ再同期を行うことを決定しているか否かをチェックする(ステップS702)。この同期回数は、多くすればそれだけスーパフレーム全体を受信待ちにする回数が減るので消費電力は低減するが、他のグループとの通信開始を遅らせることになる。一般的には1秒に一回程度となる同期回数が望ましい。そして、この条件を満足する場合、再同期制御部133は、他のノードと関係なく再同期用のエンドトーンを送信する(ステップS703)。この再同期用のエンドトーンとは、自己のスーパフレームグループのエンドトーン送信終了後、10数マイクロ秒経過した時点で、再び送信するエンドトーンのことであり、他のノードに再同期処理を開始することを通知するものである。その後、再同期制御部133は、再同期処理を行う(S704)。ここで、再同期処理とは、スーパフレーム全体にわたって同期すべきエンドトーンの受信を行う処理のことである。この再同期用のエンドトーンを受信したが、まだスーパフレーム同期回数が所定回数N以上になっていないノードは、スーパフレーム回数をリセットして、再同期用エンドトーンを中継して再同期状態に入る。
また、S701において、自己がスーパフレーム中に他のスーパフレームグループのエンドトーンを受信した場合には、再同期制御部133は、再同期用エンドトーンを送信する(ステップS703)。その後、速やかに同期するため、再同期処理に入る(ステップS704)。なお、再同期用エンドトーンを送信するまでの待ち時間は、上記の例では、10数マイクロ秒であるが、これはエンドトーンの長さに依存するものである。通常、エンドトーンの3倍以上の時間に同じスーパフレームグループのノードがエンドトーンを送信することは無いので、この3倍の時間程度間を置いた後にスーパフレームを送信すればよい。しかし、あまり離れると違うスーパフレームグループのエンドトーンを間違って再同期エンドトーンと混乱する可能性があるので、その点を考慮する必要がある。
図9は、他のスーパフレームグループを検知した無線通信装置が、再同期エンドトーンの送受信を行う動作を示す図である。図6と同様に無線通信装置Aから無線通信装置Gが図のように隣接している。また、図9において、各無線通信装置の上段の信号が受信を示し、下段の信号が送信を示す。ここで無線通信装置Dが他のスーパフレームグループの存在を検知し、再同期用のエンドトーン801を送信する。周囲のスーパフレームグループの無線通信装置C、Eが受信した再同期用のエンドトーンを再同期用エンドトーン802、803により中継する。しかし、無線通信装置Aと無線通信装置Gは、その同期用エンドトーン804、805が中継されて届く前にエンドトーンスロットが終了してしまうため、無線通信装置Aと無線通信装置Gは、再同期状態に入らない。
しかし、無線通信装置A、Gは、無線通信装置B乃至Fが同期して出力するエンドトーンに同期するように、次のスーパフレームで再同期用エンドフレームを送信することになり、全体としてひとつの同期タイミングに収束していく。
以上がスーパフレームの再同期処理についての説明である。
次に、データを送受信する動作について説明する。
まず、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、データフレームを生成後、フレーム送受信部131へデータフレームの送信を指示する。フレーム送受信部131はこれを受けると、狭帯域通信部102を介して送受信トーン205を送信する。フレーム送受信部131は、送受信トーン205を送信完了後、広帯域通信部101を介して広帯域信号でデータを送信する。
これにより、フレームの待ち状態にあるノードは、常に狭帯域信号のみを待てばよく、常に広帯域信号を待つ状態に比べて小さな消費電力で待ち受けが可能となる。
図10は、このデータ送受信の動作を示す図である。
無線通信装置Aが、無線通信装置Bにデータフレームを送信してそのアクノリッジフレーム(ACK)を受け取る。両者ともに狭帯域信号を自身が送信しているのでなければ受信待ち状態となる。無線通信装置Aは、データ902送信前に送受信トーン(SR)901を送信し、これを受信した無線通信装置Bは広帯域通信の受信待ち状態に移行する(S911)。また、無線通信装置Bも同様に、送受信トーン(SR)903を送信した後にACK904を送信する。この送受信トーンは、いかなるフレームであってもフレームの送信前に送信される。
次に、周辺のノードの通信状態を取得するためのプローブ処理について説明する。
無線通信装置は、通信を開始するにあたって、通信相手の存在や宛先を知る必要がある。また、送受信信号が他のノードからの通信信号と衝突しないようにするために、周囲のノードの存在を確認する必要がある。このため、本実施の形態では、プローブコマンドを用いて、周囲のノードの属性や、通信環境などを取得する。
プローブスロット(Probe Slot)223は、プローブの送受信のみを行うことが可能であるが、必要に応じてダイナミックにその長さを変えることができる。もし、プローブ送信の要求がないのであれば、その時点でプローブスロットを終了することも可能である。しかし、プローブスロットでは、無線通信装置は、1スーパフレームで一組のプローブの送受信しかできないため、複数の要求が衝突する可能性がある。これを解消するためにビギニングトーン1(203、209)、ビギニングトーン2(204、210)を用いる。
マルチキャストを行う場合には、通常次近接の位置にあるノードと衝突を覚悟して送信するが、ビギニングトーン1、2を使用すると衝突を回避するように各ノードが、プローブ要求元ノードとプローブ応答ノードと沈黙ノードに自己を分類する。
図11Aは、要求側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図であり、図11Bは、応答側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図ある。
図11Aにおいて、まず、プローブ要求するノードのプローブ送信部137は、トーン信号のキャリアセンスを行い、それをクリアするとビギニングトーン制御部134へビギニングトーン1(BT1(203))の送信を指示する。ビギニングトーン制御部134は、エンドトーンスロットが終了した時点で狭帯域通信部102を介して、ビギニングトーン1(203)を送信する(ステップS101)。このとき、狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1を送信する。そして、ビギニングトーン1を送信できたノードは、このプローブスロットにおいて広帯域通信部101を通電状態にし(ステップS102)、要求ノードとして動作する。
一方、図11Bにおいて、プローブ要求をしないノードの狭帯域通信部102は、トーン信号の受信状態にあるが、ビギニングトーン1を受信すると(ステップS121)、ビギニングトーン制御部134へ通知する。ビギニングトーン制御部134は、これを受けて、ビギニングトーン2(BT2(204))を送信する(ステップS122)。そして、このビギニングトーン1を受信したノードは、現在のプローブスロット223において広帯域通信部101に通電し駆動状態にして(ステップS123)、応答ノードとして動作する。なお、プローブ要求を予定していたノードの狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1を受信すると応答ノードなり、ビギニングトーン1の送信を中止する。
また、ビギニングトーン1を受信したノードから送信されたビギニングトーン2を受信したノードは(ステップS131)、そのプローブスロット223の間、広帯域通信部101を非通電状態に保ち、沈黙ノードとして動作する。
次に、図11Aにおいて、要求ノードのビギニングトーン制御部134は、ビギニングトーン2の受信をチェックし(ステップS103)、受信を確認するとプローブ送信部137へ通知する。プローブ送信部137はこれを受けて、プローブ要求フレームをフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131はこれを受けて、広帯域通信部101を通電状態にし、広帯域通信部101を介してプローブ要求(PB(211))を送信する(ステップS104)。
一方、図11Bにおいて、応答ノードの広帯域通信部101は、プローブ要求のフレームを受信すると(ステップS124)、そのフレームをフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131は受信したフレームがプローブ要求であると判定すると、プローブ受信部136へ通知する。プローブ受信部136はこれを受けて、自己の属性や通信環境の情報を生成する(ステップS125)。そして、プローブ受信部136は、それらの情報を含むプローブ応答を送信するようにフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131はこれを受けて、広帯域通信部101を介してプローブ応答(PR(212))を送信する(ステップS126)。
このとき、フレーム送受信部131は、他の応答ノードから送信されるプローブ応答(PR(212))と衝突しないようにバックオフをかけてランダムなタイミングで応答する。このバックオフとは、衝突を検出したときに再送信を行うタイミングをさらにランダムに算出し、その算出時間経過後に再送する方式をいう。
また、フレーム送受信部131は、プローブ応答212を広帯域通信で送信する前に、通常のフレーム送信と同様に、送受信トーン207を送信する。
なお、沈黙ノードでは、広帯域通信部101が非通電状態にあるので、広帯域通信部101は、プローブ要求やプローブ応答を受信することはない。
次に、図11Aにおいて、要求ノードの狭帯域通信部102は、送受信トーン207を受信した時点でこの送受信トーンを中継する。これにより、応答を開始した無線通信装置(応答ノード)とプローブ要求者を介して反対側にある応答ノードが、同時に応答プローブを送信し始めるのを抑制することができる。その結果、通常行うRTS/CTSによる衝突回避処理を大幅に短縮することが可能になる。
その後、要求ノードの広帯域通信部101は、プローブ応答のフレームを受信すると(ステップS105)、フレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131は、受信したフレームがプローブ要求であると判定するとプローブ送信部137へ通知する。プローブ送信部137はこれを受けて、周囲のノードの属性や通信環境の情報として蓄積したり、更新したりする(ステップS106)。
その後、プローブ送信部137は、プローブ応答に対する応答としてACK、あるいはNACKの送信をフレーム送受信部131へ指示する。フレーム送受信部131は、狭帯域通信部102を介して送受信トーン208を送出後、広帯域通信部101を介してACK、あるいはNACKフレームを送信する(ステップS107)。
一方、図11Bにおいて、応答ノードはこのACK、あるいはNACKの応答を受信すると(ステップS127)、プローブスロットの終了を通知するプローブエンドの受信待ち状態になる。
また、このACK、あるいはNACKの応答を受信した他の応答ノードであって、プローブ応答を未送信のものは、バックオフのカウントダウンを再開する。そして、その応答ノードは、カウント完了後、プローブ応答の送信を行う(ステップS126)。
一方、図11Aにおいて、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブ要求の送信後カウント開始した最大バックオフカウントが完了するまでステップS105へ戻り(ステップS108)、他の応答ノードからの応答プローブの受信処理を行う。この最大バックオフカウントは、バックオフによる応答を考慮した、所定時間をカウントするものであり、プローブ送信部137はこの最大バックオフカウントが完了したときに、プローブスロットが終了したとみなす。なお、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブ応答の受信している最中は、応答ノードと同じくカウントダウンを中止し、万一バックオフの途中で衝突が起こった場合には、新たに最大バックオフカウントをカウントダウンしはじめる。これにより応答ノードがもれなく応答できるような十分な時間を確保しつつ、応答するノードの数が少ないときには、これに応じて少ない時間待ちでプローブを終了することを可能にする。
その後、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブスロットの終了を通知するために、プローブエンドフレームを送信する。このとき、プローブ送信部137は、ビギニングトーン制御部134に再度ビギニングトーン1の送信を指示する。ビギニングトーン制御部134は、ステップS101と同様にしてビギニングトーン1(209)を、狭帯域通信部102を介して送信する(ステップS109)。これにより、2ホップ圏内の沈黙ノードが通常の送受信モードに戻ることができる。
そして、ステップS103と同様に、ビギニングトーン制御部134がビギニングトーン2(210)を受信すると(ステップS110)、プローブ送信部137は、フレーム送受信部131へプローブエンドの送信を指示する。フレーム送受信部131は、これを受けて、広帯域通信部101を介してプローブエンド(PE(214))を送信し(ステップS111)、このプローブスロットを終了させる。
他方、図11Bにおいて、応答ノードのビギニングトーン制御部134は、ビギニングトーン1を受信すると(ステップS128)、ビギニングトーン2を送信し(ステップS129)、送信完了後、フレーム送受信部131がプローブエンド(214)を受信して(ステップS130)、プローブスロットの終了とみなす。このように、プローブ処理が行われたとき、1ホップ圏内で二つ以上のノードがビギニングトーン1を送信すると、キャリアセンスによりどちらか一方が送信できて、一方は受信待ちになる。
次に、具体例をもって、プローブ動作を説明する。
図12は、無線通信装置A乃至Dが2ホップ内に位置したときのビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図である。
図12Aにおいて、無線通信装置Aと無線通信装置Dがプローブ要求をするノードであるとする。このとき、図12Bに示すように、無線通信装置Aが最初にビギニングトーン1(1101)を送信し、そのビギニングトーン1の送信完了後、無線通信装置Dがビギニングトーン1を送信しようとしてキャリアセンスする。この場合、無線通信装置B、Cが既に無線通信装置Aからのビギニングトーン1(1101)に対して、ビギニングトーン2(1102)を送信しているため、無線通信装置Dは、キャリアセンスしている間もしくはキャリアセンスする前にビギニングトーン2(1102)を受信するので、自己を沈黙ノードにする。従って、無線通信装置Aは、プローブ要求の送信権を得ることになる。
次に、図12Cに示すように、無線通信装置Aによるビギニングトーン1の送信と無線通信装置Dによるビギニングトーン1の送信とがビギニングトーン1の継続時間以下のずれで送信されたとき、無線通信装置B、Cはビギニングトーン1の継続時間よりも長く、エンドトーンの継続時間よりも短いトーン信号1110を受信することになる。このため、無線通信装置B、Cは、受信したトーン信号をビギニングトーン2と判断する。従って、無線通信装置B、Cは沈黙ノードとなり、現在のプローブスロットでは応答を行わない。無線通信装置B、Cは、プローブ処理に参加できないが、沈黙ノードとなることで無線通信装置A、Dの通信を邪魔することはない。
このように、本発明のビギニングトーン1、2を用いたプローブ処理により、各無線通信装置は、プローブスロットにおいて、それぞれ適正なノード(要求ノード、応答ノード、および沈黙ノード)になることができる。
次に、3ホップ圏内で二つ以上のノードがプローブ要求を行うときの動作を説明する。
図13は、無線通信装置A乃至Eが3ホップ内に位置したときのビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図である。
図13Aにおいて、無線通信装置A、Eがプローブ要求をするノードであるとする。このとき、図13Bに示すように、無線通信装置Aが最初にビギニングトーン1(1201)を送信し、そのビギニングトーン1が送信完了する前のタイミングで無線通信装置Eからビギニングトーン1(1203)を送信している。この場合、無線通信装置B、Cは、無線通信装置Aからのみビギニングトーン1(1201)を受信するので、それに対してのビギニングトーン2(1202)を送信する。このため、無線通信装置Dは、無線通信装置Eからのビギニングトーン1(1203)を受信中にビギニングトーン2(1202)を受信開始することになるので、ビギニングトーン1の継続時間よりも長く、エンドトーンの継続時間よりも短いトーン信号1210を受信することになる。このため、無線通信装置Dは、受信したトーン信号をビギニングトーン2と判断し、沈黙ノードとなる。
このように、本発明のプローブ処理によれば、複数のプローブ処理がほぼ同時に発生しても、一方のプローブ処理を成功させ、他方のプローブ要求ノードを沈黙させることで、両者のプローブ要求を衝突なしに円滑に進めることができる。
なお、プローブ要求は、プローブスロットに一つだけ実行されるが、沈黙ノードはビギニングトーン2を複数受信する場合もある。この場合、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を受信した回数分だけ、プローブエンドを送信する前のビギニングトーン2の受信がなければ通常の待機状態に戻ることはできない。何らかの理由で2つのビギニングトーン2の受信がなかったときには、沈黙ノードは最大バックオフカウント時間の間、沈黙し続けることになる。
以上の説明をまとめて、図14と図15に示す。
図14と図15は、トーン信号を受信した場合の本発明にかかる無線通信装置の動作を表したものである。
図14、図15において、各行はスーパフレームのスロットを示し、各列に受信するトーン信号を記している。例えば、プローブスロットでビギニングトーン1をプローブ要求受信前に受信したときには、ビギニングトーン2を送信して、プローブ要求を受信するために広帯域信号の同期を開始することを示している。
また、本発明によれば、送受信を行うもののみがビーコンなどの管理コマンドのフレームを送信するように制限したMACプロトコルとすることもできる。すなわち、送受信を行っていないものは、スリープ状態モードとしてビーコンなどを送信する必要がない。
さらに、本実施の形態における、RTS/CTSは、従来のRTS/CTSを拡張した方式(RTS/CTS−e方式)である。
RTS/CTS方式では、本来無線通信装置がそのコマンドフレームを送信した直後の帯域を使用してデータを送信するが、本実施の形態においては、指定可能な時間(例えば、64ms)までの時間を指定してデータ送信時間帯を予約する。これにより、TDMAの時間予約の代わりとなる。
また、無線通信装置が連続して予約する場合、次回のRTS/CTS−e交換用のスロットも予約する。これにより、アイソクロナス通信などにも対応が可能になる。
本実施の形態において、RTS/CTS−e方式は、4ウェイのハンドシェイク方式である。すなわち、最初のハンドシェイクで、相手方の空時間を確かめ、次のRTS/CTS−eのハンドシェイクで実際の送信時間を確定し周囲に通知する。
このような4ウェイ方式を取るのはNAV(Network Allocation Vector)で他の無線通信装置のRTS/CTS−eの更新を抑えることにより、現時点での最新の相手方のスケジュールを確かめられるからである。
予約時刻の指定方法は、実時間指定の方法と同期タイミングにそったスロット指定の方法とがある。スロット指定方法の場合には、自己の次のスーパフレーム周期の開始時刻までの時間を付加することで、他のスーパフレームグループと衝突した場合にも、スロット位置の判定が可能になる。そして、その他のスーパフレームグループのスロットに対応する、自己のスーパフレームのスロット位置を使用禁止にすることにより、他のスーパフレームグループとの衝突も回避できる。
このように、スロット指定方法は、実時間指定方法に比べ通信するデータ量を少なくできる反面、必要以上の時間を占有してしまう可能性がある。しかしながら、指定方法はどちらの方法でも構わない。
また、ミリ波UWBを使用することにより指向性を利用することが可能である。すなわち、フレーム送受信部131が一連のトーン信号やRTS/CTSフレームを無指向性の電波で送信する。その後、フレーム送受信部131は、実際のデータやACKなどの送信を、RTS/CTSを受信したときの電波の到来方向を予測し、実際にデータを送信する際には、予測された到来方向に対して指向性の電波を向けて送信もしくは受信する。
図16は、無線通信装置がRTS/CTSを無指向性の電波で送信し、データ交換をRTS/CTSの到来方向を推定した場合の衝突回避を説明する図である。
図16において、無線通信装置DがRTSを無指向性の電波で送信しているときに、無線通信装置Bが無線通信装置Aに指向性の電波でデータを送信すれば、無線通信装置Bの通信エリア1302が無線通信装置Cを含まない。このため、無線通信装置Cへはデータの電波1301が届かず、RTSの受信を邪魔することはない。
このように、送受信を行う無線通信装置の他は、ビーコンもしくはRTS/CTS−eの交換を行わないことにより、モビリティ環境における無駄な送受信を回避することができる。さらに、常に周囲の無線通信装置を確認しながら、随時通信を開始することも可能になる。
なお、本実施の形態のトーン信号は、継続時間の相違により各トーンを識別していたが、これに限らず、周波数の違い、電界強度の大小、電界強度の時間的変動、あるいは間欠信号のパターンなどによっても同様の効果を得られる。
以上のように本発明によれば、ビーコンの代わりにトーン信号を使用することで、無線通信装置は、モビリティ環境下での頻繁なビーコンの整列を行うことなしに、スーパフレーム内の時刻調整が可能になる。これにより、無線通信装置は、プローブ要求と応答を最小時間で他の無線通信装置と行うことができる。また、通信する無線通信装置のみが広帯域通信部を通電状態にすればよいので、多くの時間をスリープ状態にすることが可能となる。
また、本発明の無線通信装置は、狭帯域信号であるトーン信号が、コマンドやデータを通信する広帯域信号を送信する前に送信されるので、狭帯域信号のみを受信待ち状態にしておけば良い。このため、無線通信装置は、広帯域信号に常時通電する場合に比較して、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
(実施の形態2)
本実施の形態における無線通信装置は、周囲のノードにくまなく指向性アンテナでプローブ要求を送信したり、あるいは応答を返すものである。本実施の形態における無線通信装置の構成は、実施の形態の構成1における構成と同一であるが、指向性アンテナの通信範囲は、プローブ要求フレームの到達範囲の全ノードが互いに通信可能であるようなエリアである必要がある。例えば、図17に示すように、指向性アンテナの到達範囲が半径rのエリアとしたとき、アンテナの向いている方向でr/2の地点を中心とする半径r/2の円内にある任意のノードB、Cは互いに送受信可能な状態になる。このような配置にある各無線通信装置がプローブ要求を出した場合には、その応答が通常のキャリアセンスで衝突回避できる。
なお、本実施の形態における無線通信装置は、いろいろと向きの変わる移動通信端末よりも、常に向きが固定されているアクセスポイントに適している。
このように構成された無線通信装置のプローブ要求と応答の動作について以下に説明する。
本実施の形態におけるプローブ要求・応答動作は、プローブ要求ノードが周囲のすべてのノードにビギニングトーン1を送信した後に、セクタ毎にプローブ要求を行う点が実施の形態1の動作と異なる。
まず、プローブ要求ノードは、通常のプローブと同じようにビギニングトーン1を送信する。一方、応答ノードはビギニングトーン2を送信する。そして、プローブ要求ノードは、セクタプローブであることを宣言して、プローブ要求が開始したことを通知する。次に、プローブ要求ノードは、各セクタに指向性を絞った状態で、送受信トーンのみを送信する。このようなデータのない送受信トーンを受信した周囲の応答ノードは、バックオフカウンタを走らせてランダムにその応答を返答する。また、プローブ要求ノードは、各セクタに割り振られる最大バックオフ時間を計測し、すべてのセクタをサーチすると再びビギニングトーン1を送信した後、プローブエンドを送信する。
以上のように本発明によれば、セクタプローブは、通常のプローブに比べ送信する範囲を狭めることが特徴で、これによりキャリアセンスのみで衝突の可能性をなくすことができる。また、通信範囲が狭いので最大バックオフカウント数などを制限できるため、プローブ応答がより高速に収束する可能性もある。
なお、セクタプローブも、通常のプローブ要求と同様にプローブスロットに一つだけ実行されるが、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を複数受信する場合もある。この場合、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を受信した回数分だけ、プローブエンドを送信する前のビギニングトーン2の受信がなければ、通常の待機状態に戻ることはできない。何らかの理由で2つのビギニングトーン2の受信がなかったときには、沈黙ノードは最大バックオフカウントの間、沈黙し続けることになる。
(実施の形態3)
本実施の形態における無線通信方法は、実施の形態1と同様、送受信トーンとエンドトーンを用いるが、ビギニングトーン1、2を使用しない点が異なる。
図18は、本実施の形態におけるスーパフレームのトーン信号とフレームを説明するタイミングチャートである。
図18において、スーパフレーム1501は、エンドトーンスロット1502と送受信ピリオド1503のみから構成される。また、トーン信号は、エンドトーン1511と送受信トーン1513の2つのみであり、エンドトーンを送信した後の特別な時間帯であるエンドトーン再同期スロット1504において送信する送受信トーン1512を、特にプローブトーンいう。
送受信トーンは、送受信ピリオド1503で受信した場合、実施の形態1と同じく広帯域信号によるコマンドやデータフレームが送受信されることを通知する。しかし、エンドトーンスロット内でエンドトーン受信後に受信した送受信トーン1512は、次のスーパフレームの間、広帯域信号を受信待ちにして、RTS/CTS−eコントロールフレームを収集することを通知する。そして、無線通信装置は、コントロールフレームの収集した次のスーパフレームにおいて、プローブ応答をランダムなタイミングで送信する。
また、エンドトーンについては、実施の形態1と同一の処理となる。
図19は、本実施の形態における無線通信装置の構成を示す構成図である。本実施の形態は、実施の形態1において図2で示した構成とは、ビギニングトーン制御部134の代わりに、プローブトーン制御部161を有している点が異なる。
プローブトーン制御部161は、他の無線通信装置からのプローブトーン信号を受信したとき、フレーム送受信部131に対してそのスーパフレームの間でRTS/CTS−eフレームの受信を行うように指示するものである。また、プローブトーン制御部161は、プローブ送信部137が上位層処理部104から周囲の状況の問い合わせを受けたときに、プローブ送信部137からプローブトーンを送信するように指示される。そして、プローブトーン制御部161は、エンドトーンに引き続いて送受信トーン、すなわちプローブトーンを狭帯域通信部102に送信させる。
以上の構成を有する無線通信装置が、プローブ要求とその応答を行う動作について以下に説明する。
図20Aは、プローブ要求元の無線通信装置の動作フローであり、図20Bはプローブ応答する無線通信装置の動作フローである。
図20Aにおいて、まず、プローブ送信部137が上位層処理部104から周囲の状況の問い合わせを受けるとプローブ要求発生と認識し(ステップS1701)、プローブトーン制御部161にプローブトーンを送信するように指示する。プローブトーン制御部161は、これを受けて、エンドトーンの送信に引き続いて(ステップS1702)、送受信トーン1512、すなわちプローブトーンを狭帯域通信部102を介して送信する(ステップS1703)。
その後、時刻管理部132がエンドトーンを送信し、広帯域通信部101に通電した後、プローブ応答フレームの受信待ち状態になる(ステップS1704)。そして、広帯域通信部101がプローブ応答フレームを受信すると、フレーム送受信部131は、取得した送信元無線通信装置の属性や通信環境などの情報を蓄積したり、更新したりする(ステップS1705)。
次に、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、自己の属性とあった通信相手であれば、送受信を開始するために、RTS−eコマンドとデータ送信開始までの時間予約情報を送信する(ステップS1706)。
その後、予約時間経過すると(ステップS1707)、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、データフレームを送信する(ステップS1708)。なお、ステップS1705乃至S1708については、複数の無線通信装置からプローブ応答を受信することにより、並行して処理が行われる。
一方、図20Bにおいて、無線通信装置はプローブトーンを受信すると(ステップS1720)、応答ノードとなり、広帯域通信部101に通電する(ステップS1721)。そして、広帯域通信部101がそのスーパフレームの間、広帯域信号の受信待ち状態となり、他の無線通信装置が送信したRTS/CTS−eフレームを受信する(ステップS1722)。
そして、時刻管理部132がエンドトーンを受信し(ステップS1723)、次のスーパフレームになると、プローブ受信部136がプローブ応答するための属性や通信環境などの情報を生成し、フレーム送受信部131へプローブ応答の送信を指示する。フレーム送受信部131は、送受信ピリオドでバックオフカウントし、空きのスロットにおいて、プローブ応答フレームを送信する(ステップS1724)。
このように本発明によれば、プローブ応答ノードは、RTS/CTS−eの受信を、RTS/CTS−eで予約できる最大時間である1スーパフレーム分の間収集済であるので、プローブ要求ノードとプローブ応答ノードとが即座にRTS/CTS−eシーケンスを開始できる。また、本実施の形態における無線通信方法は、プローブスロットを設けないので、その時間もデータの送受信に使用できる。さらに、ビギニングトーンを使用しないので、エンドトーンを短くすることも可能となる。
なお、本実施の形態では、トーン信号は継続時間の相違により各トーンを識別していたが、これに限らず、周波数の違い、電界強度の大小、電界強度の時間的変動、あるいは間欠信号のパターンなどによっても同様の効果を得られる。
(実施の形態4)
本実施の形態における無線通信装置は、実施の形態3の無線通信方法を行うMACプロトコルを実装した、モバイルファイル交換装置である。また、交換するファイルは音楽ファイル、動画ファイル、およびゲームソフトである。
図21は、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置の構成図である。
図21において、モバイルファイル交換装置は、タッチパネルディスプレイ1801、音声端子1802、画像入出力コマンド受付部1803、音声入出力音声コーデック1804、メインCPU1805、ハードディスク装置1806、MACインタフェース用メモリ1807、外部メディア部1808、広帯域通信部101、狭帯域通信部102、MAC制御部103、およびアンテナ105を有している。
広帯域通信部101、狭帯域通信部102、MAC制御部103、およびアンテナ105は、実施の形態2に記載のものと同一である。
以下に、モバイルファイル交換装置の動作を説明する。
初めに、音楽ソフト、画像ソフト、ゲームソフトの再生動作について説明する。
まず、ユーザは、自身が使用したいソフトを外部メディア部1808からインストールして、ハードディスク装置1806に保存する。その後、タッチパネルディスプレイ1801から入力されたコマンドは、画像入出力コマンド受付部1803で複数の信号に変換された後、メインCPU1805に通知される。
音楽再生のコマンドが入力された場合は、メインCPU1805が音声入出力音声コーデック1804に指示してハードディスク装置1806から、音楽ソフトをデコードして音声端子1802より出力する。
動画像やゲームを行うコマンドが入力された場合には、メインCPU1805が音声再生に加えて、画像入出力コマンド受付部1803を介してタッチパネルディスプレイ1801に動画も表示する。
次に、音楽ソフト、画像ソフト、ゲームソフトを他のモバイルファイル交換装置とファイル交換する動作について説明する。
まず、ファイル交換を始めるにあたってミリ波UWB(広帯域通信)の通信手順を開始するため、MAC制御部103はメインCPU1805から起動命令を受けると、狭帯域通信部102にエンドトーンをサーチさせる。そして、狭帯域通信部102がエンドトーンを検知したとき、最初に検知したエンドトーンに同期させる再同期処理を開始する。
次に、MAC制御部103は、プローブトーンを受信すると、狭帯域通信部102がプローブレスポンスを送信するためにRTS/CTS−eコントロールフレームの受信待ち状態になる。そして、広帯域通信部101は、1スーパフレーム後のスーパフレームにてランダムにレスポンスを送信する。
次に、狭帯域通信部102は、N回に一回エンドトーンの再同期のためのエンドトーンを送信する。回数Nは、スーパフレーム周期の時間にもよるが、1〜2秒周期となるような回数が適している。新規にスーパフレームグループに加入したノードは、加入したタイミングから、また、他のノードは前回のスーパフレームグループの再同期処理の実行からの回数を数える。これらのノードは、再同期処理の間はエンドトーンの受信待ちとなり、新しいエンドトーンを受信したときのタイミングで同期する。
所定回数のエンドトーンの内に1回もプローブトーンを送受信しなかった場合や、エンドトーンの再同期処理により新たなスーパフレームグループに加わったときには、各ノードは、プローブトーンを送信する。プローブトーンを受信した各ノードは、再同期処理を行いつつ、RTS/CTS−eフレームを受信する。そして、プローブトーンを受信した各ノードは、1スーパフレーム受信待ちした後、ランダム時間経過後にプローブ応答を送信する。但し、各ノードがプローブ応答を送信するのはプローブトーンを送信した次のスーパフレームの間である。
次に、プローブ要求ノードは、応答のあったノードの属性リストを確認して、音楽ソフト交換、動画像交換、およびゲームソフト交換のそれぞれの属性を応答したものに対して、差分交換、すなわち一方が所有していて、他方が所有していないソフトのみを交換する。このため、交換を開始したノードは、まず自己の交換可能なソフトのIDの一覧を送信する。そして、交換を提示されたノードは、受信した一覧に対して、自己の交換可能なソフトのIDの一覧を送信すると共に、自己が所有していないで、ここ数ヶ月の間に交換経験の無い、相手ノードの持っているソフトの転送要求を出す。
ファイル交換要求を起動したノードは、これに基づいてソフトの転送に応じるとともに、自己の転送要求を応答側に求める。ファイルの交換処理は、交互に所定量、例えば50MBのファイルずつ転送する動作を繰り返し、相手ノードが近隣のノードでなくなるか、あるいは転送が終了するまで継続する。そして、必要であれば、要求ノードは、RTS/CTS−eフレームの再交換により、転送時間を更新する。
図22は、モバイルファイル交換装置が管理する音楽ソフトのファイルリストである。
図22において、各音楽のIDは、TOC(Table of Content)1901とトラック番号1904で識別する。タイトル名1902とアーティスト名1903は、ユーザ入力もしくは、アクセスポイント経由のCDDB(CDの曲目のデータベース)による入力となる。これらはユーザ情報でありファイル交換動作に直接関係しない。
CDあるいはインターネットなどから取得した音楽ファイルは、外部メディア部1808によりハードディスク装置1806にコピーされる。このときのメディアフラグ1905はオン、シャドウフラグ1906はオフで、期限1907は無限大である。そして、他のモバイルファイル交換装置とのメディア交換時に送信する一覧には、メディアフラグ1905がオンとなっているもののみを記載する。交換されたソフトも、メディアフラグ1905がオン状態の曲として自己のファイルリストに残るが、期限が設定される。例えば、シャドウ化期限として100日としたとき、100日経過しても一度も再生されないものはシャドウファイル化される。ここで、シャドウファイルとは、ユーザからファイルの存在を認識できるが再生できないファイルをいう。但し、メディアフラグ1905がオンであって、実際にハードディスク装置1806に音楽ファイルが存在するので、自己の交換ファイルのひとつとして取り扱うことができる。
ファイルは、シャドウ化期限を過ぎるか、あるいは再生可能な回数分再生され終わるとシャドウファイル化され、新たな期限が設定される。そして、これを削除期限として新たに100日が設定される。この期間を過ぎると、ハードディスク装置1806から音楽ファイルソフトが削除される。このとき、ファイルリストにはメディアフラグ1905がオフ、シャドウフラグがオンのエントリーが再エントリー抑制期限を設定されて残される。この再エントリー抑制期限とは、既に音楽ファイルは無いが一旦試聴を行ったファイルを再度エントリーさせることを制限するものであり、これにより、同じファイルが何度も聞けるような状態を防ぐことができる。そして、再エントリー抑制期限が過ぎるとエントリー自体が消え、再エントリーが可能となる。
また、数多く交換されるファイルの内、例えば、ジャンルを指定したり、聞ける音楽フォーマットを制限して、より好みに合ったものだけを選定することも可能である。好みの違うファイルは、たちまちシャドウファイル化され、ユーザの目に付くことなく期限が過ぎれば削除される。
また、ユーザがそのメディアを外部メディア部1808から他の機器にコピーする場合には、メインCPU1805はメディアフラグがオンであることを確認した上で、ミリ波UWBのアクセスポイントを移動して探す。あるいは、ユーザは、ミリ波UWBで中継可能な携帯電話からIP網に接続し、電子商取引を用いて認証・課金が行なわれたことを確認後、ファイルリストに期限無限大のエントリーを作成する。そして、メインCPU1805は、シャドウフラグ1906をオフにして、ハードディスク装置内のソフトファイルを外部メディアにコピーする。なお、外部メディアから自己のモバイルファイル交換装置に購入済のソフトをインストールする場合も、課金は必要ないが認証は必要である。それは、流布したくないソフトの交換が可能になってしまうからである。
また、ミリ波UWBでIPネットワークに中継するときは、IP処理をアクセスポイント、あるいは携帯電話などで終端することが好ましい。そうでなければ、ミリ波UWBは、IPアドレスを割り振ることになるが、通常のIPv4で行われるプライベートアドレスでは、移動通信のときに混乱の原因になってしまうからである。しかしながら、アクセスポイントごとにネットワークアドレスを使用するのではアドレスの非効率割り当てになってしまうので、IPv6を使用するか、あるいはミリ波UWBのリンク上にはTCP/IP以上のデータをやり取りするように構成するのが好ましい。
なお、上記の実施例では、交換するファイルを音楽ファイルに限定して説明したが、動画像ファイルやゲームソフトのファイル交換も同様にして管理することができる。
また、ソフトの一覧を交換するときに、ファイルリストの期限が無限大(即ち購入済)の情報も交換すると、周辺のユーザが購入済のソフトのランキングを作成することができる。これは、ユーザにとって購入の手助けとなり得る。また、そのランキング表にソフトのお勧めなどのコメントを入れるようにしても良い。
さらに、モバイルファイル交換装置自身の制御ソフトウェアをモバイルファイル交換装置がファイル受信すれば、自動的にアップデートすることも可能である。この場合、ファイルに優先度を示すフラグなどを付加することにより、優先的にファイル交換できるようにするのが好ましい。
(実施の形態5)
図23は、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置の構成図である。実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置の構成とは、単方向指向性アンテナ2001をさらに有する点が異なる。
このアンテナ2001はユーザが通信したい相手を視覚的に認識しながらファイル交換を行いたい場合に用いる。
図24は、モバイルファイル交換装置がアクセスポイントに接続する際のシーケンス図である。
モバイルファイル交換装置2102は、アクセスポイント2101に向けてプローブ要求コマンドをタッチパネルから入力されると、モバイルファイル交換装置2102はプローブトーンを自己のエンドトーンのタイミングで送信する。このとき、他のモバイルファイル交換装置2103がエンドトーンを送信すると、モバイルファイル交換装置2102はこれに再同期して再度プローブトーンを送信する。
次に、プローブトーンによってスリープからさめたアクセスポイント2101は、プローブ応答を送信する。
次に、モバイルファイル交換装置2102はこのプローブ応答で送信されてきた、アクセスポイント2101の属性情報などをタッチパネルディスプレイ1801に表示する。例えば、「アクセスポイント・音楽ファイル交換」というように表示される。
次に、ユーザは、そのアクセスポイントを選択すると、あとはインターネットのハイパーテキスト(http)などを利用したデータ交換により、タッチパネルディスプレイの表示が変更され、例えば「接続」などのコマンド入力を行う。このとき、例えば、音楽ソフトの課金が行われる。
以上のように、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置によれば、対象のノードに対して物理的にアンテナを向けるといった限定により、要求ノードが通信を開始できるので、誤って相手ノードを指定することを防止できる。
また、複数のモバイルファイル交換装置が指定した方向に存在していて、応答が複数ある場合は、プローブ応答の到来方向の推定により各プローブ応答の到来方向のずれを平面図でディスプレイに表示する。これにより、ユーザは、多くのプローブ応答の中でどのモバイルファイル交換装置を選択するかを決定することが容易になる。
(実施の形態6)
図25を参照して、実施の形態6の構成を説明する。図25は、本実施の形態における無線通信装置の信号通信部2500の構成を示すブロック図である。
本実施の形態における無線通信装置は、実施の形態1と比較すると、広帯域通信部101および狭帯域通信部102の部分が分離した2つの独立したブロックではなくて、一体化した一つのブロックである信号通信部2500を備えて構成されている点が異なる。実施の形態1におけるMAC制御部103等の、広帯域通信部101および狭帯域通信部102以外の部分に相当する本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1の構成および動作と同一であり、説明を省略する。
信号通信部2500は、トーン信号通信部2510、データ信号通信部2520および搬送波信号源2502から構成される。トーン信号通信部2510は、フィルタ2512、送受切り替えスイッチ2514、周波数変換器2516、周波数変換器2518およびトーン信号制御部2519を備える。同様にデータ信号通信部2520は、フィルタ2522、送受切り替えスイッチ2524、復調器2526、変調器2528およびデータ信号制御部2529を備える。
トーン信号通信部2510は、送信時にはMAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号から所定の長さをもつトーン信号を生成し、周波数変換して分配器2530へ出力する。尚、トーン信号の制御信号とは、図4のような所定の長さをもつトーン信号そのものではなく、いわばどのトーン信号であるかを示す論理的なトーン信号を意味する。実施の形態1乃至5では、単にトーン信号ということがある。また、トーン信号通信部2510は、受信時には分配器2530から入力したトーン信号を周波数変換してトーン信号の制御信号に変換して、MAC制御部103へ出力する。
なお、トーン信号は、ベースバンドトーン信号の発生を制御する「トーン信号制御信号」、振幅や位相等の変調を行なうことのない「トーン信号」、トーン信号に搬送波周波数を乗じて生成した「搬送波と重畳したトーン信号」をそれぞれ意味する。
フィルタ2512は、送信時には送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、分配器2530へ出力する。フィルタ2512は、受信時には分配器2530から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2514に出力する。
送受切り替えスイッチ2514は、送信時には周波数変換器2518から入力した周波数変換後のトーン信号をフィルタ2512へ出力する一方、受信時にはフィルタ2512から入力したトーン信号を周波数変換器2516へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
周波数変換器2516は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号の周波数変換を行う。すなわち、周波数変換器2516は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号をベースバンド信号に変換し、変換した信号をトーン信号制御部2519へ出力する。
周波数変換器2518は、送信時にはトーン信号制御部2519から入力したトーン信号を周波数変換、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2514へ出力する。
トーン信号制御部2519は、送信時にはMAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、トーン信号制御部2519に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を生成し、周波数変換器2518に出力する。トーン信号制御部2519は、受信時には周波数変換器2516から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。
同様に、データ信号通信部2520は、送信時にはMAC制御部103から入力したデータ信号を変調して分配器2530へ出力する。また、データ信号通信部2520は、受信時には分配器2530から入力したデータ信号を周波数変換して、MAC制御部103へ出力する。
フィルタ2522は、送信時には送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、分配器2530へ出力する。フィルタ2522は、受信時には分配器2530から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2524に出力する。
送受切り替えスイッチ2524は、送信時には変調器2528から入力した変調後のデータ信号をフィルタ2522へ出力する一方、受信時にはフィルタ2522から入力したデータ信号を復調器2526へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
復調器2526は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号の復調を行う。すなわち、復調器2526は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてデータ信号をベースバンド信号に変換し、データ信号制御部2529へ出力する。
変調器2528は、送信時にはデータ信号制御部2529から入力したデータ信号を変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2524へ出力する。
データ信号制御部2529は、送信時にはMAC制御部103から入力したデータ信号を変調器2528へ出力する。データ信号制御部2529は、受信時には復調器2526から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
搬送波信号源2502は、搬送波を生成し、周波数変換器2516および復調器2526へ搬送波を出力する。図25では、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520が、搬送波信号源2502を共有している構成を示している。
尚、トーン信号とデータ信号とで異なる中心周波数の信号を使う場合も同一の中心周波数を使う場合も、搬送波信号源を別にする構成にすることもできる。実施の形態1において、広帯域通信部101にデータ信号通信部2520と搬送波信号源とを使用し、狭帯域通信部102にトーン信号通信部2510と別の搬送波信号源とを使用した場合は、そのような構成になる。また搬送波信号源は一つであっても、ミキサ等の周波数変換する素子を用いて搬送波信号源2502の周波数から周波数変更することにより、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とは、異なる中心周波数を使うことができる。また、アンテナについても信号帯域に応じてトーン信号用のアンテナとデータ信号用のアンテナに分けた複数にする構成にしてもよい。
本実施の形態のトーン信号については、狭帯域信号を用いて、データ信号については広帯域信号を用いることがより好ましいが、本発明は、それに限定されるわけではなく、帯域の大小に関わりなく、トーン信号とデータ信号の帯域を設定することは可能である。
尚、実施の形態2乃至実施の形態5の狭帯域通信部と広帯域通信部を本実施の形態のトーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520と搬送波信号源2502に置き換えた構成も本発明に含まれることはいうまでもない。
次に、実施の形態6の無線通信装置の信号通信部2500の動作を説明する。
まず、トーン信号通信部2510の動作を説明する。送信時には、トーン信号制御部2519は、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、トーン信号制御部2519に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を生成し、周波数変換器2518へ出力する。
次に、周波数変換器2518は、トーン信号制御部2519から入力したトーン信号を周波数変換、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、周波数変換されたトーン信号を送受切り替えスイッチ2514へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2514は、周波数変換器2518から入力した周波数変換後のトーン信号をフィルタ2512へ出力する。そして、フィルタ2512は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたトーン信号を分配器2530へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2512は、分配器2530から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたトーン信号を送受切り替えスイッチ2514に出力する。
送受切り替えスイッチ2514は、フィルタ2512から入力したトーン信号を周波数変換器2516へ出力する。周波数変換器2516は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号の周波数変換を行う。すなわち、周波数変換器2516は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号をベースバンド信号に変換し、変換された信号をトーン信号制御部2519へ出力する。
トーン信号制御部2519は、周波数変換器2516から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、生成されたトーン信号の制御信号をMAC制御部103へ出力する。
次に、データ信号通信部2520の動作を説明する。
データ信号通信部2520の送信時には、データ信号制御部2529は、MAC制御部103から入力したデータ信号を変調器2528へ出力する。
次に、変調器2528は、データ信号制御部2529から入力したデータ信号を変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、変調されたデータ信号を送受切り替えスイッチ252へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2524は、変調器2528から入力した変調後のデータ信号をフィルタ2522へ出力する。そして、フィルタ2522は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたデータ信号を分配器2530へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2522は、分配器2530から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたデータ信号送受切り替えスイッチ2524に出力する。
送受切り替えスイッチ2524は、フィルタ2522から入力したデータ信号を復調器2526へ出力する。復調器2526は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号の復調を行う。すなわち、復調器2526は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてデータ信号をベースバンド信号に変換し、変換された信号をデータ信号制御部2529へ出力する。
データ信号制御部2529は、復調器2526から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
このように、本実施の形態においては、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とが搬送波信号源2502を共通に使用する構成をとるため、部品点数の少ない低コストの無線通信装置を提供することができる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7に係る無線通信装置の構成および動作について説明する。
実施の形態6の図25においては、広帯域信号とトーン信号を同時送信するために、2つの送信系として、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とを備えた例を説明した。しかし、同時送信をしない場合は、送信系は1つ備えれば足りるので、このような構成の無線通信装置を実施の形態7として、その構成及び動作を以下に説明する。
図26を参照して、実施の形態7の構成を説明する。図26は、本実施の形態における無線通信装置の信号通信部2600の構成を示すブロック図である。
実施の形態1におけるMAC制御部103等の、広帯域通信部101および狭帯域通信部102以外の部分に相当する本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1の構成および動作と同一であり、説明を省略する。
信号通信部2600は、通信部2610および搬送波信号源2502から構成される。通信部2610は、フィルタ2612、送受切り替えスイッチ2614、復調器2616、変調器2618および信号制御部2619を備える。
通信部2610は、トーン信号の送信時には、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号からトーン信号を生成し、そのトーン信号を、変調器2618に出力する。通信部2610は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。
通信部2610は、データ信号の送信時には、MAC制御部103から入力したデータ信号を変調して指向性制御部106へ出力する。また、通信部2610は、データ信号の受信時には、指向性制御部106から入力したデータ信号を復調して、MAC制御部103へ出力する。
フィルタ2612は、送信時には送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、指向性制御部106へ出力する。フィルタ2612は、受信時には指向性制御部106から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2614に出力する。
送受切り替えスイッチ2614は、送信時には変調器2618から入力した周波数変換後または変調後のトーン信号またはデータ信号をフィルタ2612へ出力する。一方、受信時にはフィルタ2612から入力したトーン信号またはデータ信号を復調器2616へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
復調器2616は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号の周波数変換または復調を行う。すなわち、復調器2616は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号またはデータ信号をベースバンド信号に変換し、信号制御部2619へ出力する。
変調器2618は、送信時には、信号制御部2619から入力したトーン信号またはデータ信号を周波数変換または変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2614へ出力する。
信号制御部2619は、トーン信号送信時には、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、信号制御部2619に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を変調器2618に出力する。信号制御部2619は、データの送信時には、MAC制御部103から入力したデータ信号を、変調器2618に出力する。
信号制御部2619は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別してトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。また、信号制御部2619は、データ信号の受信時には、復調器2616から入力したデータ信号を入力し、MAC制御部103へ出力する。
次に、実施の形態7に係る無線通信装置の動作を説明する。
トーン信号の送信時には、信号制御部2619は、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、信号制御部2619に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を変調器2618に出力する。データ信号の送信時には、信号制御部2619は、MAC制御部103から入力したデータ信号を、変調器2618に出力する。
次に、変調器2618は、信号制御部2619から入力したトーン信号またはデータ信号を周波数変換または変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換または変調し、変調器出力信号2702を送受切り替えスイッチ2614へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2614は、変調器2618から入力した周波数変換または変調後のトーン信号またはデータ信号(変換器出力信号2702)をフィルタ2612へ出力する。そして、フィルタ2612は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限された信号を指向性制御部106へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2612は、指向性制御部106から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限された信号を送受切り替えスイッチ2614に出力する。
送受切り替えスイッチ2614は、フィルタ2612から入力したトーン信号またはデータ信号を復調器2616へ出力する。復調器2616は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号の周波数変換または復調を行う。すなわち、復調器2616は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号またはデータ信号をベースバンド信号に変換し、変換した信号を信号制御部2619へ出力する。
信号制御部2619は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別してトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。信号制御部2619は、データ信号の受信時には、復調器2616から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
この場合の変調器2618が、入力する変調器入力信号2701を周波数変換または変調した後の変調器出力信号2702の信号波形の一例を図27に示す。変調器2618へ入力する信号においては、トーン信号2710の信号幅2711とデータ信号2720の信号幅2721が異なり、この信号幅に応じて正弦波成分を含む変調器出力信号も幅の異なる信号となる。なお、幅の広い信号は、狭帯域の信号であり、幅の狭い信号が広帯域の信号であることは言うまでもない。一例を挙げると、トーン信号2710の信号幅は、例えば1μsecであり、データ信号2720の信号幅は、例えば1nsecであるが、適用するシステムにより大きく変動しうるため、これらに限定されるものではない。また、トーン信号は必ずしも狭帯域信号でなくてもよく、トーン信号の信号幅2711が、データ信号の信号幅2721と等しいか小さい関係にあってもよい。
また、受信の際のトーン信号とデータ信号の分離方法については、例えばトーン信号とデータ信号の周波数が異なる場合は、フィルタ帯域により両者を分離することが可能である。同様に、トーン信号とデータ信号が同時送信しない場合は、時間的に分離が可能である。また、同一周波数、同一時間に送信されている場合は、送信信号電力を変えることにより分離可能である。この場合、例えば信号時間の長いトーン信号の振幅を小さくして送信電力を小さく、データ信号の振幅を大きくして送信電力を大きくすることで、復調器2616での受信電力しきい値による分離が可能である。
このように、本実施の形態においては、トーン信号とデータ信号とを一つの信号通信部で処理する構成をとるため、構成が簡単で部品点数が少なくなり、低コストで電力消費の少ない無線通信装置を提供することができる。
本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する無線通信方法であって、一の無線通信装置がスーパフレームの終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、他の無線通信装置がそのエンドトーンを受信したときに、自己のスーパフレームの終端を同期させるステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さいトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、スーパフレームの終端から所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、その送受信トーンの送信完了後に、データ信号を送信するステップとをさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、トーン信号のみ監視することによりデータ受信の開始を検出できるので、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、他の無線通信装置からの送受信トーンを受信した後に、前記データ信号を受信可能にしてデータ信号を受信するステップと、そのデータ信号を正常に受信したとき、前記送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップとをさらに有している。
これにより、無線通信装置は、UWBのようなデータ信号を受信待ちする必要がないので、待機時の消費電力を低減することができる。
また、本発明の無線通信方法は、前記エンドトーンを送信するステップが、前記一の無線通信装置が、スーパフレームの終端を識別するための狭帯域信号のエンドトーンを送信するステップである。
これにより、無線通信装置は、変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さい狭帯域のトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置がスーパフレームの終端から所定の時間経過後にデータ送信を通知するための狭帯域信号の送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、前記一の無線通信装置が前記送受信トーンの送信完了後に、広帯域のデータ信号を送信するステップとをさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、狭帯域信号のみ監視することによりデータ受信の開始を検出できるので、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が他の無線通信装置からの送受信トーンを受信した後に、広帯域信号を受信可能にし、前記データ信号を受信するステップと、前記一の無線通信装置が前記データ信号を正常に受信したとき、前記狭帯域の送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、をさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、UWBのような広帯域信号を受信待ちする必要がないので、待機時の消費電力を低減することができる。
また、本発明の無線通信方法は、エンドトーンがスーパフレームの終端の前後に設定されたエンドトーンスロット内で送信されるものであって、前記一の無線通信装置はエンドトーンスロット内で最初に受信したエンドトーンを基準にしてスーパフレームの終端を再設定するものである。
これにより、スーパフレームグループの各無線通信装置は、スーパフレームにおいて最も早いエンドトーンに同期することが可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、他の無線通信装置から受信したエンドトーンが、エンドトーンスロット内で最初のものであって、自己のエンドトーンの送信開始以前に受信完了したとき、その完了時点でスーパフレームの終端を再設定するステップと、エンドトーンを受信したタイミングで自己のエンドトーンを送信するステップとを有するものである。
これにより、最初に受信したエンドトーンと自己のエンドトーンとの時間差をより小さく維持できるので、全体として短時間に同じスーパフレームに同期することが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、スーパフレームを共有する無線通信装置のグループであるスーパフレームグループが複数混在したとき、第1のスーパフレームグループの無線通信装置が、自己のスーパフレームグループの他の無線通信装置へ第2のスーパフレームと同期することを通知するステップと、第1のスーパフレームグループの当該無線通信装置が、スーパフレーム全体にわたって第2のスーパフレームグループからのエンドトーンを受信待ちし、受信した当該エンドトーンを基準にしてスーパフレームの終端を再設定するものである。
これにより、無線通信装置は、モバイル環境下で他のスーパフレームグループと遭遇しても送受信を開始することが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、第1のスーパフレームグループに属する無線通信装置が現在の終端を通知するエンドトーンを送信した後に、エンドトーンスロット内で再度エンドトーンを送信することにより、他の無線通信装置へ第2のスーパフレームグループのスーパフレームと同期することを通知し、その同期することを通知するエンドトーンを受信した、第1のスーパフレームグループに属する他の無線通信装置が、現在の終端を通知するエンドトーンを送信した後に、エンドトーンスロット内で再度エンドトーンを送信するものである。
これにより、無線通信装置は、再同期をスーパフレームグループ単位で実行することになり、現時点での通信が途絶える心配が無く、グループが収束して纏まるのですべての通信が可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、狭帯域信号トーンに継続時間を変化させて定義するビギニングトーン1とビギニングトーン2を設けたものであって、無線通信装置が通信の衝突回避のための狭帯域信号のビギニングトーン1をキャリアセンスしながら送信するステップと、そのビギニングトーン1を受信した無線通信装置が、狭帯域信号のビギニングトーン2を送信するステップと、そのビギニングトーン1もしくはビギニングトーン2を受信した無線通信装置が、現在のスーパフレーム内では自己からの狭帯域信号のビギニングトーン1を送信することを中止するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、マルチキャスト通信などで複数の応答がされるとき、一つずつ応答するように各無線通信装置が送信を抑制するようになる。
また、本発明の無線通信方法は、ビギニングトーン1を送信した無線通信装置がビギニングトーン2を受信した無線通信装置へ属性および/または通信環境を問い合わせるプローブ要求を広帯域信号で送信するステップと、そのプローブ要求を受信した無線通信装置が、自己の属性や通信環境の情報を含むプローブ応答を広帯域信号で送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、マルチキャストによるプローブ要求をビギニングトーンを使用して行わせることにより、同じ時間帯に複数の地理的再利用が可能となる。
本発明の無線通信方法は、プローブ要求を受信した無線通信装置がプローブ応答を送信する前に送受信トーンを送信するステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置が前記送受信トーンを受信したとき、受信した送受信トーンを転送するステップと、プローブ要求を送信していない無線通信装置が送受信トーンを受信したとき、自己からのプローブ応答の送信開始を停止するステップとを有するものである。
これにより、要求側の無線通信装置と、次近接の位置にある応答側の無線通信装置との競合を極力抑えることが可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求を送信した無線通信装置がプローブ応答を受信完了するまでの所定時間をバックオフによりカウントするステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置が所定時間をカウント終了したとき、プローブ要求期間の終了通知を近隣の無線通信装置へ送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、必要最小限の時間でプローブを終了することができる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求においてプローブ要求を送信した無線通信装置が複数の指向性アンテナにより複数のセクタを構成し、各セクタ内の無線通信装置は、互いに送受信可能な状態であるとき、プローブ要求を送信した無線通信装置が行う送受信トーンの送信が、各指向性アンテナによりセクタ毎に順番に行われるものである。
これにより、固定式の無線通信装置のプローブ処理はセクタを決めて行うことで能率的にプローブ動作を実行可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求を送信した無線通信装置がセクタ毎に、プローブ応答を受信完了するまでの所定時間をバックオフによりカウントするステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置がすべてのセクタにおいて所定時間のカウントを終了したとき、プローブ要求期間の終了通知を近隣の無線通信装置へ送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、セクタの待ち時間も必要最小限にすることができる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置がエンドトーンスロット内でエンドトーンに続いて送受信トーンを受信したとき、当該エンドトーンスロット終了後のスーパフレームにおいて、近隣の無線通信装置が送信するデータ送受信予約情報を含むコントロールフレームを収集し、次のスーパフレームのコントロールフレームで予約されていない時間帯に、自己の属性や通信環境情報、および/またはコントロールフレームで予約された時間帯の情報を含むプローブ応答を送信するものである。
これにより、無線通信装置は、RTS/CTS−eを利用した通信を行うことでデータピリオドの全区間を時間予約できるので、従来方式に比べスーパフレームの全体を有効に利用可能になる。
また、本発明の無線通信方法で使用する狭帯域信号(トーン信号)の継続時間は、送受信トーン、ビギニングトーン1、ビギニングトーン2、エンドトーンの順に長く、エンドトーンはビギニングトーン2の少なくとも2倍以上である。
これにより、無線通信装置の送受信トーンは、スループットに関係するので最も小さくなくてはならないが、エンドトーンが3倍以上重なってもエンドトーンであると検出できる。また、ビギニングトーン1が同時期に二つ以上吹かれても、ビギニングトーン2であると見なされることになる。
また、本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する一の無線通信装置の無線通信方法であって、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、最初に送信したエンドトーンを基にして再設定された終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンを送信するステップと、当該送受信トーンの送信完了後、データ信号を送信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信方法では、前記エンドトーン及び送受信トーンは、狭帯域信号であり、前記データ信号は、広帯域信号のデータ信号である。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、通信の衝突回避のための狭帯域信号のビギニングトーン1をキャリアセンスしながら送信するステップと、前記一の無線通信装置が、前記ビギニングトーン1を受信した他の無線通信装置により送信されたビギニングトーン2を受信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信方法は、前記ビギニングトーン1を送信した一の無線通信装置が、前記ビギニングトーン2を送信した前記他の無線通信装置へ、属性および/または通信環境を問い合わせるプローブ要求を広帯域信号で送信するステップと、前記プローブ要求を受信した前記他の無線通信装置から、自己の属性および/または通信環境の情報を含むプローブ応答を広帯域信号で受信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信装置は、トーン信号を送受信するトーン信号通信部と、変調して広帯域信号でデータを送受信するデータ信号通信部と、時刻管理部と、フレーム送受信部とを有している。その時刻管理部は、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンをトーン信号通信部から送信したり、あるいはエンドトーンをトーン信号通信部を介して受信し、自己の終端時刻以前に最初に受信したエンドトーンを基準にして終端時刻を再設定する。また、フレーム送受信部は、時刻管理部が再設定した終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをトーン信号通信部から送信し、当該送受信トーンの送信完了後、データをデータ信号通信部を介して送信したり、あるいは送受信トーンを受信したときデータ信号通信部を受信可能状態にしてデータをデータ信号通信部から受信したりする。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
また、本発明の無線通信装置は、前記トーン信号通信部が、狭帯域のトーン信号を送受信する狭帯域通信部であり、前記データ信号通信部が、変調して広帯域信号でデータを送受信する広帯域通信部である。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
また、本発明の無線通信装置は、再同期制御部をさらに有している。その再同期制御部は、スーパフレームを共有する自己と同一グループに属する他の無線通信装置へ、スーパフレームを共有していない他のグループのスーパフレームに同期することを通知する。そして、スーパフレームの全期間において、他のグループのエンドトーンを監視し、当該エンドトーンを受信したとき、スーパフレームの終端に再設定してエンドトーンを狭帯域通信部を介して送信する。
これにより、無線通信装置は、他のスーパフレームグループのスーパフレームと同期をとることが可能になる。
また、本発明の無線通信装置は、ビギニングトーン制御部へビギニングトーン1の送信を指示し、その後当該ビギニングトーン制御部からビギニングトーン2の受信を通知されたとき、他の無線通信装置へ属性や通信環境情報の通知を要求するプローブ要求フレームの送信を前記フレーム送受信部へ指示するプローブ送信部と、前記プローブ要求を受信したとき、自己の属性および/または通信環境情報を送信するように前記フレーム送受信部へ指示するプローブ受信部とをさらに有するものである。
この構成により、無線通信装置は、ビーコンにて実施されてきたノードの生存確認をプローブにて実施することができる。
2005年12月7日出願の特願2005−352992の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容はすべて本願に援用される。
本発明は、アドホックネットワークにおける無線通信方法及び無線通信装置に有用であり、特にモビリティ環境下において無線通信装置間でファイル交換するのに適している。
本発明は、無線通信ネットワーク、特にモバイル環境下におけるアドホックネットワーク通信に関する。
近年、UWB(Ultra Wide Band)無線通信方法について様々なものが提案されてきている。UWB無線通信は、1Gbpsを超えるような広帯域通信であるため、伝送容量の大きな動画伝送などに適用が検討されている。一方、UWBはその通信可能範囲の狭さゆえにオフィス環境などでは使い勝手がよいとは言えず、むしろ今日注目されつつあるPAN(Personal Area Network)に向いているといえる。但し、PANと一口に言っても、黎明期であるPANの有力なアプリケーションはなかなか見つけにくい。広帯域性故にそれを利用する機器は、一般的に電力を多く使用することになるが、PANの場合、あまり多くのバッテリーを携帯して移動するのは難しいためである。
PANを利用し、かつUWBの広帯域性を必要とするアプリケーションの一つは、ファイル交換アプリケーションである。その基本的な動作原理は、例えば特許文献1に開示されている。モバイル環境における無作為なファイル交換(特許文献1にはメッセージ交換と記されている)にてミニコミュニティを作ることが可能となる。特許文献1には記されていないが、やり取りされるデータはテキストドキュメントに限らず、音楽・画像・動画などのファイルの交換も可能である。特にUWBにおいては、その実効伝送速度が100Mbpsから数Gbpsにも及ぶため、人と人がすれ違いざまに大きなサイズのファイル交換が可能であり、このようなファイルの交換は、UWBに適したアプリケーションであるといえる。
そのUWBで使用される伝送方式は、IEEE802.15にて様々な議論がなされている。PAN(特にモバイルPAN)環境で実装されるMACプロトコルは、自律分散処理による方式である場合が多い。これは、各端末が、五月雨のようにすれ違っているようなPAN環境下では、マスタ−スレーブの関係をその都度構築し、データスロットを割り振るなどの通信環境をそろえた後に通信を開始することが、大きなオーバヘッドになるからである。
また、非特許文献1は、自律分散型のPANにおける無線通信方式を開示している。
図1は、TDMA(Time Division Multiple Access)によるスーパフレームの構成を示す図である。
図1において、スーパフレームはビーコンピリオド2201とデータピリオド2202に分割される。
ビーコン2203は、ビーコンピリオド2201内で各無線通信装置から送信されるが、近隣のノードのビーコンは衝突することなく近隣のノードに伝わることが保証されている。
しかしながら、非特許文献1に記載の無線通信方式の場合、ビーコンピリオドを共有するスーパフレームグループが混在したとき、データスロットとビーコンピリオドの衝突が発生してしまうことがあった。
これを解決する一つの方法として、PANに属する全てのノードが常時スーパフレームグループの衝突を検出し、分散的にこれに適応するアルゴリズムを構成することが考えられる。
しかしながら、上記の方法では、無線通信装置は常にビーコン受信部を受信待ち状態に保つ必要があり、受信待ち電力が大きくなる。これは、UWB通信では許容しがたく、モバイル通信装置のような電池による電力供給しか望めない環境下では、大きなデメリットになる。
また、無線通信装置は、周囲の無線通信装置の有無に関わらず常にビーコンを出し続けなくてはならないため、さらに電力消費することになる。
本発明の目的は、アドホックネットワークにおいて、電力消費を従来より低減可能であって、他の無線通信装置のスーパフレームとの同期が可能な無線通信方法及び無線通信装置を提供することにある。
本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する無線通信方法であって、一の無線通信装置が、スーパフレームの終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、他の無線通信装置が、そのエンドトーンを受信したときに、自己のスーパフレームの終端を同期させるステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さいトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信装置は、トーン信号を送受信するトーン信号通信部と、変調して広帯域信号でデータを送受信するデータ信号通信部と、時刻管理部と、フレーム送受信部とを有している。その時刻管理部は、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンをトーン信号通信部から送信したり、あるいはエンドトーンをトーン信号通信部から受信し、自己の終端時刻以前に最初に受信したエンドトーンを基準にして終端時刻を再設定する。また、フレーム送受信部は、時刻管理部が再設定した終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをトーン信号通信部から送信し、当該送受信トーンの送信完了後、データをデータ信号通信部から送信したり、あるいは送受信トーンを受信したときデータ信号通信部を受信可能状態にしてデータをデータ信号通信部から受信したりする。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
本発明によれば、無線通信装置は、アドホックネットワークにおいて、従来に比べ待機時の電力消費を低減しつつ、モビリティ環境下での、スーパフレームの同期調整が可能となる。その結果、他の無線通信装置と最小時間で通信を開始することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。以下の実施の形態において、無線通信装置は、データ通信手段をミリ波UWBで行うものとする。
(実施の形態1)
図2は、本発明の本実施の形態における無線通信装置の構成図である。
図2において、無線通信装置は、アンテナ105と指向性制御部106と広帯域通信部101と狭帯域通信部102とMAC制御部103と上位層処理部104とを備えている。
アンテナ105は、各セクタを担当する複数の指向性アンテナからなるものであり、指向性制御部106は、そのアンテナ105を構成する指向性アンテナを制御して、通信範囲を決定するものである。また、広帯域通信部101は、UWB信号を送受信するものであり、狭帯域通信部102は変調し、または、変調せずに狭帯域信号をトーン信号として送受信するものである。但し、広帯域信号がDS―UWB(Direct Sequence UWB)の場合は、狭帯域信号を送信するために、DS―UWBのパルス幅を広げて送信するようにそれぞれの発信機を共有しても良い。
上位層処理部104は、各種のアプリケーションを実行し、コンテンツデータなどの送信データを生成し、MAC制御部103へ送出したり、MAC制御部103から受信データを受けてアプリケーション処理を行うものである。
MAC制御部103は、MACプロトコル処理を行うものであり、フレーム送受信部131、時刻管理部132、再同期制御部133、ビギニングトーン制御部134、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135、プローブ受信部136、およびプローブ送信部137とを有している。
フレーム送受信部131は、データ通信することを通知する送受信トーンを送受信したり、その後のフレームを後述するRTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)の拡張方式(RTS/CTS−e方式)で広帯域信号により送受信するものである。
時刻管理部132は、スーパフレームの開始時刻からの時刻を管理するものであり、自己のスーパフレームの終端を通知するエンドトーンの送信時刻を計測したり、他ノード(無線通信装置など)のエンドトーンとの同期をとるために、狭帯域通信部102とタイミングの受け渡しを行うものである。
再同期制御部133は、他のスーパフレームグループと同期するために狭帯域通信部102を介して再同期信号を送信するものである。また、再同期制御部133は、スーパフレーム全域でエンドトーンを監視し、他のスーパフレームとの同期タイミングを時刻管理部132に通知するものである。
ビギニングトーン制御部134は、データ通信の衝突を回避するためのビギニングトーン1あるいはビギニングトーン2を、トーンをキャリアとしてCSMA/CA(Carrier
Sense Multiple Access with Collision Avoidance)手順に従って送信したり、受信したりするものである。
RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、上位層処理部104から受けとったデータを送信するためにフレームを生成し、フレーム送受信部131へ送出するものである。また、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、後述するRTS/CTSの拡張方式(RTS/CTS−e方式)のRTSコマンドを生成し、フレーム送受信部131へ送出する。
プローブ受信部136は、他の無線通信装置のプローブ要求を受けて、自己の属性や通信環境などの情報を生成し、要求元のノードへ応答するものである。このプローブ要求とは、要求先に対し、そのノードの属性や通信環境などの情報を要求するものである。
プローブ送信部137は、周囲のノードへ属性や通信環境などの情報を要求するためのプローブ要求を生成し、周囲のノードへ送信するものである。また、プローブ送信部137は、プローブ要求先のノードからプローブ応答を受信したとき、応答としてプローブエンドを送信する。
ここで、本発明に係る各種トーン信号とフレームについて説明する。まず、トーン信号の定義について述べる。ここでは、トーン信号とは、狭帯域信号の変調/無変調を問わず、決められた時間送信を続けることによって識別される電気信号を指す。例えば、BTMA(Busy-Tone Multiple Access)やDBTMA(Dual Busy-Tone Multiple Access)などのように信号を出している状態を周囲のノードに伝えるために使用されるビジートーンと構成が良く似ている。
図3は、これらのトーン信号とフレームの送受信プロトコルを示すタイミングチャートである。
図3において、スーパフレーム221は、エンドトーンスロット222とプローブスロット223とデータピリオド224とに分かれている。
エンドトーンスロット222は、エンドトーン(END)201、202が送受信される期間である。また、プローブスロット223は、ビギニングトーン1(BT1)(203)、ビギニングトーン2(BT2)(204)と、プローブ要求(PB)211、プローブ応答(PR)212、アクノリッジ(PACK)213、及びプローブエンド(PE)214とが送受信される期間である。また、データピリオド224は、送受信トーン(SR)205、206とデータ215、ACK/NACK216が送受信される期間である。
図4は、各トーン信号の長さを示す図である。すなわち、ビギニングトーン1の継続時間T2は、送受信トーンの継続時間T1の2倍であり、ビギニングトーン2の継続時間T3はビギニングトーン1の継続時間T2の2倍、エンドトーンの継続時間T4はビギニングトーン2の継続時間T3の2倍である。なお、ビギニングトーン2の継続時間T3は、エンドトーンの継続時間T4の1/2以下でなくてはならないが、それ以外は上記の比率である必要はなく、大小関係が守られていればよい。これは、ビギニングトーン2が2つ以上が同時に検出されても、ビギニングトーン2と判定しなくてはならないからである。なお、3つ以上のビギニングトーン2が直列に並んで2倍以上になることはごく稀であると判断される。
たとえば、送受信トーンが10マイクロ秒であると規定されている場合、狭帯域通信部
102は、トーン信号を受信すると、継続時間が10マイクロ秒未満のトーン信号を送受信トーンとして判定する。狭帯域通信部102は、10マイクロ秒からビギニングトーン1の継続時間までのトーン信号をビギニングトーン1として判定する。さらに、狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1の継続時間からビギニングトーン2の継続時間までのトーン信号はビギニングトーン2として判定し、それ以上の継続時間のトーン信号はエンドトーンであると判定する。
次に、このように構成された無線通信装置について、以下にその動作、作用を説明する。
初めに、スーパフレームの同期処理について説明する。
図5は、スーパフレームの同期処理を説明するフロー図である。
図5において、まず、時刻管理部132は、狭帯域通信部102から他ノードのエンドトーンの検出通知がないと(ステップS401)、自己のエンドトーンを送信する時刻であるか否かをチェックする(ステップS402)。
自己のエンドトーンの送信時刻でない場合、ステップS401へ戻り、送信時刻である場合は、時刻管理部132が自己のエンドトーンの送信を狭帯域通信部102へ指示する。狭帯域通信部102は、これを受けて、エンドトーンを送信し(ステップS403)、後述するステップS408へ処理を移行する。
一方、狭帯域通信部102が他ノードからのエンドトーンを検出すると、時刻管理部132へ通知する。時刻管理部132は、今回のエンドトーン検出が自己のエンドトーン出力以前であって、現エンドトーンスロット内で最初に通知されたものか否かをチェックする(ステップS404)。そして、最初でない場合は後述する再同期処理を行い(ステップS405)、処理を終了する。
一方、最初に通知されたものである場合、時刻管理部132は、自己が管理するスーパフレーム周期の開始時刻を現在時刻に合わせる(ステップS406)。
次に、時刻管理部132は、狭帯域通信部102からの通知が他ノードからのエンドトーンの終端を知らせるものであるか否かをチェックする(ステップS407)。
狭帯域通信部102は、エンドトーンの終端でない場合、ステップS402へ戻り、終端である場合は、ステップS403へ移行し、自己のエンドトーンを送信する処理を行う(ステップS403)。また、エンドトーン送信の終了後、時刻管理部132は、自己のエンドトーンスロットの期間が終了しているかどうかの確認を行う(ステップS408)。もし、自己のエンドトーンスロットの期間が終了していれば、処理を終了する。自己のエンドトーンスロットの期間が終了していなければ、ステップ401へ戻る。
このように、時刻管理部132は、エンドトーンの出力時刻を計測したときにエンドトーン201を送信するが、エンドトーンスロット222の範囲内に、周囲のノードから送信されたエンドトーン202を検出すると、自己のエンドトーン201との時間誤差を計測する。そして、時刻管理部132は、自己よりも早いタイミングで検出したエンドトーン202の開始時刻に自己のスーパフレームの終端時刻を合わせる。
また、時刻管理部132は、周囲のノードも同じエンドトーンスロット222内にエンドトーンを送信するが、この中で最も早いエンドトーンを送信したノードのエンドトーン
送信開始時刻にすべてのノードが自己のエンドトーンの開始時刻を合わせる。なお、他ノードの送信する最も早いエンドトーンを受信中に自己のエンドトーン送信開始時刻になれば、エンドトーンを送信するが、自己のエンドトーンの送信開始時刻より前にエンドトーンを受信完了した場合は、その時点で自己のエンドトーンを送信する。
これにより、各ノードは、スーパフレームにおいて最も早いエンドトーンに同期することが可能となる。
そして、時刻管理部132は、この同期されたスーパフレーム221の開始時刻を基準にして、プローブスロット223や、データピリオド224内のデータスロットのタイミングを計測する。なお、スーパフレームを64ms、エンドトーンスロット222の長さを512マイクロ秒と定義したとすると、時刻管理部132は、エンドトーンスロット222の中間時点である256マイクロ秒経過時にエンドトーンを送信する。これは、自己のエンドトーン開始時刻がばらついても、他の無線通信装置のエンドトーンスロット222内に収まるようにするためである。
次に、具体例をもって、このスーパフレームの同期動作を説明する。
図6は、同一スーパフレームグループの各無線通信装置が、スーパフレーム周期を同期させる動作を示す図である。ここで、図中の楕円は、無線通信装置の通信可能エリアを示す。無線通信装置A乃至無線通信装置Gは、互いに図のように隣接した状態にあるとする。なお、図6において、各無線通信装置の上段の信号が受信を示し、下段の信号が送信を示す。
図6において、無線通信装置Bは、スーパフレーム周期のエンドトーン送出のタイミングでエンドトーン502の送信を行っているが、自己のエンドトーン502の送信よりも先に無線通信装置Aのエンドトーン501を検出したので、自己の計測しているスーパフレーム周期の開始タイミングを無線通信装置Aのスーパフレーム周期の開始タイミング501に合わせる。また、同様に無線通信装置Cは、自己のスーパフレームの開始時刻を無線通信装置Bのエンドトーン502に同期させる。これにより、無線通信装置Bや無線通信装置Cの遅延時間は、自己のスーパフレーム周期分の固有遅延時間に徐々に収束していく。
無線通信装置D乃至Fについても同様に同期処理が行われ、自己の通信可能エリア内で最も早くエンドトーンを送信する無線通信装置のスーパフレームに同期する。
無線通信装置Gのエンドトーン送信時刻503は、無線通信装置Fのエンドトーン504の送信した後であるので、無線通信装置Fがエンドトーン504を送信し終えた時刻から無線通信装置Gのエンドトーンを送信する。そして、次のスーパフレームにおいて、無線通信装置Gは、他の無線通信装置のスーパフレーム開始タイミングに追いつく。
次に、他のスーパフレームグループと混在したときに行うスーパフレームの再同期処理について説明する。
このスーパフレームの再同期処理は、無線通信装置が、スーパフレーム全体に対してエンドトーンの検出を行い、他のスーパフレームグループのエンドトーンを検出した場合、最も早くエンドトーンを送信した他のスーパフレームグループのスーパフレームに同期する処理である。
図7は、無線通信装置601〜603が互いにスーパフレームグループを構成し、無線
通信装置604〜606が別のスーパフレームグループを構成していることを示す図である。図7において、無線通信装置604と無線通信装置606は、無線通信装置603の通信可能エリアに入ってきている。
このようなときに、無線通信装置603が、他のスーパフレームグループのエンドトーンをエンドトーンスロット外で検出すると、それを起点にして無線通信装置603と同一スーパフレームグループの無線通信装置が再同期処理を行い、最終的には無線通信装置601乃至606が同一のスーパフレームを共有することになる。
図8は、スーパフレームの再同期処理をエンドトーン送受信終了時に開始するか否かを決定するフロー図である。
図8において、再同期制御部133は、自己がスーパフレーム期間中に送受信スロットなどでエンドトーンを受信したかどうかをチェックする(ステップS701)。エンドトーンを受信していない場合、再同期制御部133は、自己が前回の再同期処理を終えてからスーパフレームの同期回数が所定回数(N回とする)以上のノードであり、かつ再同期を行うことを決定しているか否かをチェックする(ステップS702)。この同期回数は、多くすればそれだけスーパフレーム全体を受信待ちにする回数が減るので消費電力は低減するが、他のグループとの通信開始を遅らせることになる。一般的には1秒に一回程度となる同期回数が望ましい。そして、この条件を満足する場合、再同期制御部133は、他のノードと関係なく再同期用のエンドトーンを送信する(ステップS703)。この再同期用のエンドトーンとは、自己のスーパフレームグループのエンドトーン送信終了後、10数マイクロ秒経過した時点で、再び送信するエンドトーンのことであり、他のノードに再同期処理を開始することを通知するものである。その後、再同期制御部133は、再同期処理を行う(S704)。ここで、再同期処理とは、スーパフレーム全体にわたって同期すべきエンドトーンの受信を行う処理のことである。この再同期用のエンドトーンを受信したが、まだスーパフレーム同期回数が所定回数N以上になっていないノードは、スーパフレーム回数をリセットして、再同期用エンドトーンを中継して再同期状態に入る。
また、S701において、自己がスーパフレーム中に他のスーパフレームグループのエンドトーンを受信した場合には、再同期制御部133は、再同期用エンドトーンを送信する(ステップS703)。その後、速やかに同期するため、再同期処理に入る(ステップS704)。なお、再同期用エンドトーンを送信するまでの待ち時間は、上記の例では、10数マイクロ秒であるが、これはエンドトーンの長さに依存するものである。通常、エンドトーンの3倍以上の時間に同じスーパフレームグループのノードがエンドトーンを送信することは無いので、この3倍の時間程度間を置いた後にスーパフレームを送信すればよい。しかし、あまり離れると違うスーパフレームグループのエンドトーンを間違って再同期エンドトーンと混乱する可能性があるので、その点を考慮する必要がある。
図9は、他のスーパフレームグループを検知した無線通信装置が、再同期エンドトーンの送受信を行う動作を示す図である。図6と同様に無線通信装置Aから無線通信装置Gが図のように隣接している。また、図9において、各無線通信装置の上段の信号が受信を示し、下段の信号が送信を示す。ここで無線通信装置Dが他のスーパフレームグループの存在を検知し、再同期用のエンドトーン801を送信する。周囲のスーパフレームグループの無線通信装置C、Eが受信した再同期用のエンドトーンを再同期用エンドトーン802、803により中継する。しかし、無線通信装置Aと無線通信装置Gは、その同期用エンドトーン804、805が中継されて届く前にエンドトーンスロットが終了してしまうため、無線通信装置Aと無線通信装置Gは、再同期状態に入らない。
しかし、無線通信装置A、Gは、無線通信装置B乃至Fが同期して出力するエンドトー
ンに同期するように、次のスーパフレームで再同期用エンドフレームを送信することになり、全体としてひとつの同期タイミングに収束していく。
以上がスーパフレームの再同期処理についての説明である。
次に、データを送受信する動作について説明する。
まず、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、データフレームを生成後、フレーム送受信部131へデータフレームの送信を指示する。フレーム送受信部131はこれを受けると、狭帯域通信部102を介して送受信トーン205を送信する。フレーム送受信部131は、送受信トーン205を送信完了後、広帯域通信部101を介して広帯域信号でデータを送信する。
これにより、フレームの待ち状態にあるノードは、常に狭帯域信号のみを待てばよく、常に広帯域信号を待つ状態に比べて小さな消費電力で待ち受けが可能となる。
図10は、このデータ送受信の動作を示す図である。
無線通信装置Aが、無線通信装置Bにデータフレームを送信してそのアクノリッジフレーム(ACK)を受け取る。両者ともに狭帯域信号を自身が送信しているのでなければ受信待ち状態となる。無線通信装置Aは、データ902送信前に送受信トーン(SR)901を送信し、これを受信した無線通信装置Bは広帯域通信の受信待ち状態に移行する(S911)。また、無線通信装置Bも同様に、送受信トーン(SR)903を送信した後にACK904を送信する。この送受信トーンは、いかなるフレームであってもフレームの送信前に送信される。
次に、周辺のノードの通信状態を取得するためのプローブ処理について説明する。
無線通信装置は、通信を開始するにあたって、通信相手の存在や宛先を知る必要がある。また、送受信信号が他のノードからの通信信号と衝突しないようにするために、周囲のノードの存在を確認する必要がある。このため、本実施の形態では、プローブコマンドを用いて、周囲のノードの属性や、通信環境などを取得する。
プローブスロット(Probe Slot)223は、プローブの送受信のみを行うことが可能であるが、必要に応じてダイナミックにその長さを変えることができる。もし、プローブ送信の要求がないのであれば、その時点でプローブスロットを終了することも可能である。しかし、プローブスロットでは、無線通信装置は、1スーパフレームで一組のプローブの送受信しかできないため、複数の要求が衝突する可能性がある。これを解消するためにビギニングトーン1(203、209)、ビギニングトーン2(204、210)を用いる。
マルチキャストを行う場合には、通常次近接の位置にあるノードと衝突を覚悟して送信するが、ビギニングトーン1、2を使用すると衝突を回避するように各ノードが、プローブ要求元ノードとプローブ応答ノードと沈黙ノードに自己を分類する。
図11Aは、要求側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図であり、図11Bは、応答側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図である。
図11Aにおいて、まず、プローブ要求するノードのプローブ送信部137は、トーン信号のキャリアセンスを行い、それをクリアするとビギニングトーン制御部134へビギ
ニングトーン1(BT1(203))の送信を指示する。ビギニングトーン制御部134は、エンドトーンスロットが終了した時点で狭帯域通信部102を介して、ビギニングトーン1(203)を送信する(ステップS101)。このとき、狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1を送信する。そして、ビギニングトーン1を送信できたノードは、このプローブスロットにおいて広帯域通信部101を通電状態にし(ステップS102)、要求ノードとして動作する。
一方、図11Bにおいて、プローブ要求をしないノードの狭帯域通信部102は、トーン信号の受信状態にあるが、ビギニングトーン1を受信すると(ステップS121)、ビギニングトーン制御部134へ通知する。ビギニングトーン制御部134は、これを受けて、ビギニングトーン2(BT2(204))を送信する(ステップS122)。そして、このビギニングトーン1を受信したノードは、現在のプローブスロット223において広帯域通信部101に通電し駆動状態にして(ステップS123)、応答ノードとして動作する。なお、プローブ要求を予定していたノードの狭帯域通信部102は、ビギニングトーン1を受信すると応答ノードなり、ビギニングトーン1の送信を中止する。
また、ビギニングトーン1を受信したノードから送信されたビギニングトーン2を受信したノードは(ステップS131)、そのプローブスロット223の間、広帯域通信部101を非通電状態に保ち、沈黙ノードとして動作する。
次に、図11Aにおいて、要求ノードのビギニングトーン制御部134は、ビギニングトーン2の受信をチェックし(ステップS103)、受信を確認するとプローブ送信部137へ通知する。プローブ送信部137はこれを受けて、プローブ要求フレームをフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131はこれを受けて、広帯域通信部101を通電状態にし、広帯域通信部101を介してプローブ要求(PB(211))を送信する(ステップS104)。
一方、図11Bにおいて、応答ノードの広帯域通信部101は、プローブ要求のフレームを受信すると(ステップS124)、そのフレームをフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131は受信したフレームがプローブ要求であると判定すると、プローブ受信部136へ通知する。プローブ受信部136はこれを受けて、自己の属性や通信環境の情報を生成する(ステップS125)。そして、プローブ受信部136は、それらの情報を含むプローブ応答を送信するようにフレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131はこれを受けて、広帯域通信部101を介してプローブ応答(PR(212))を送信する(ステップS126)。
このとき、フレーム送受信部131は、他の応答ノードから送信されるプローブ応答(PR(212))と衝突しないようにバックオフをかけてランダムなタイミングで応答する。このバックオフとは、衝突を検出したときに再送信を行うタイミングをさらにランダムに算出し、その算出時間経過後に再送する方式をいう。
また、フレーム送受信部131は、プローブ応答212を広帯域通信で送信する前に、通常のフレーム送信と同様に、送受信トーン207を送信する。
なお、沈黙ノードでは、広帯域通信部101が非通電状態にあるので、広帯域通信部101は、プローブ要求やプローブ応答を受信することはない。
次に、図11Aにおいて、要求ノードの狭帯域通信部102は、送受信トーン207を受信した時点でこの送受信トーンを中継する。これにより、応答を開始した無線通信装置(応答ノード)とプローブ要求者を介して反対側にある応答ノードが、同時に応答プロー
ブを送信し始めるのを抑制することができる。その結果、通常行うRTS/CTSによる衝突回避処理を大幅に短縮することが可能になる。
その後、要求ノードの広帯域通信部101は、プローブ応答のフレームを受信すると(ステップS105)、フレーム送受信部131へ送出する。フレーム送受信部131は、受信したフレームがプローブ要求であると判定するとプローブ送信部137へ通知する。プローブ送信部137はこれを受けて、周囲のノードの属性や通信環境の情報として蓄積したり、更新したりする(ステップS106)。
その後、プローブ送信部137は、プローブ応答に対する応答としてACK、あるいはNACKの送信をフレーム送受信部131へ指示する。フレーム送受信部131は、狭帯域通信部102を介して送受信トーン208を送出後、広帯域通信部101を介してACK、あるいはNACKフレームを送信する(ステップS107)。
一方、図11Bにおいて、応答ノードはこのACK、あるいはNACKの応答を受信すると(ステップS127)、プローブスロットの終了を通知するプローブエンドの受信待ち状態になる。
また、このACK、あるいはNACKの応答を受信した他の応答ノードであって、プローブ応答を未送信のものは、バックオフのカウントダウンを再開する。そして、その応答ノードは、カウント完了後、プローブ応答の送信を行う(ステップS126)。
一方、図11Aにおいて、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブ要求の送信後カウント開始した最大バックオフカウントが完了するまでステップS105へ戻り(ステップS108)、他の応答ノードからの応答プローブの受信処理を行う。この最大バックオフカウントは、バックオフによる応答を考慮した、所定時間をカウントするものであり、プローブ送信部137はこの最大バックオフカウントが完了したときに、プローブスロットが終了したとみなす。なお、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブ応答の受信している最中は、応答ノードと同じくカウントダウンを中止し、万一バックオフの途中で衝突が起こった場合には、新たに最大バックオフカウントをカウントダウンしはじめる。これにより応答ノードがもれなく応答できるような十分な時間を確保しつつ、応答するノードの数が少ないときには、これに応じて少ない時間待ちでプローブを終了することを可能にする。
その後、プローブ要求ノードのプローブ送信部137は、プローブスロットの終了を通知するために、プローブエンドフレームを送信する。このとき、プローブ送信部137は、ビギニングトーン制御部134に再度ビギニングトーン1の送信を指示する。ビギニングトーン制御部134は、ステップS101と同様にしてビギニングトーン1(209)を、狭帯域通信部102を介して送信する(ステップS109)。これにより、2ホップ圏内の沈黙ノードが通常の送受信モードに戻ることができる。
そして、ステップS103と同様に、ビギニングトーン制御部134がビギニングトーン2(210)を受信すると(ステップS110)、プローブ送信部137は、フレーム送受信部131へプローブエンドの送信を指示する。フレーム送受信部131は、これを受けて、広帯域通信部101を介してプローブエンド(PE(214))を送信し(ステップS111)、このプローブスロットを終了させる。
他方、図11Bにおいて、応答ノードのビギニングトーン制御部134は、ビギニングトーン1を受信すると(ステップS128)、ビギニングトーン2を送信し(ステップS129)、送信完了後、フレーム送受信部131がプローブエンド(214)を受信して
(ステップS130)、プローブスロットの終了とみなす。このように、プローブ処理が行われたとき、1ホップ圏内で二つ以上のノードがビギニングトーン1を送信すると、キャリアセンスによりどちらか一方が送信できて、一方は受信待ちになる。
次に、具体例をもって、プローブ動作を説明する。
図12は、無線通信装置A乃至Dが2ホップ内に位置したときのビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図である。
図12Aにおいて、無線通信装置Aと無線通信装置Dがプローブ要求をするノードであるとする。このとき、図12Bに示すように、無線通信装置Aが最初にビギニングトーン1(1101)を送信し、そのビギニングトーン1の送信完了後、無線通信装置Dがビギニングトーン1を送信しようとしてキャリアセンスする。この場合、無線通信装置B、Cが既に無線通信装置Aからのビギニングトーン1(1101)に対して、ビギニングトーン2(1102)を送信しているため、無線通信装置Dは、キャリアセンスしている間もしくはキャリアセンスする前にビギニングトーン2(1102)を受信するので、自己を沈黙ノードにする。従って、無線通信装置Aは、プローブ要求の送信権を得ることになる。
次に、図12Cに示すように、無線通信装置Aによるビギニングトーン1の送信と無線通信装置Dによるビギニングトーン1の送信とがビギニングトーン1の継続時間以下のずれで送信されたとき、無線通信装置B、Cはビギニングトーン1の継続時間よりも長く、エンドトーンの継続時間よりも短いトーン信号1110を受信することになる。このため、無線通信装置B、Cは、受信したトーン信号をビギニングトーン2と判断する。従って、無線通信装置B、Cは沈黙ノードとなり、現在のプローブスロットでは応答を行わない。無線通信装置B、Cは、プローブ処理に参加できないが、沈黙ノードとなることで無線通信装置A、Dの通信を邪魔することはない。
このように、本発明のビギニングトーン1、2を用いたプローブ処理により、各無線通信装置は、プローブスロットにおいて、それぞれ適正なノード(要求ノード、応答ノード、および沈黙ノード)になることができる。
次に、3ホップ圏内で二つ以上のノードがプローブ要求を行うときの動作を説明する。
図13は、無線通信装置A乃至Eが3ホップ内に位置したときのビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図である。
図13Aにおいて、無線通信装置A、Eがプローブ要求をするノードであるとする。このとき、図13Bに示すように、無線通信装置Aが最初にビギニングトーン1(1201)を送信し、そのビギニングトーン1が送信完了する前のタイミングで無線通信装置Eからビギニングトーン1(1203)を送信している。この場合、無線通信装置B、Cは、無線通信装置Aからのみビギニングトーン1(1201)を受信するので、それに対してのビギニングトーン2(1202)を送信する。このため、無線通信装置Dは、無線通信装置Eからのビギニングトーン1(1203)を受信中にビギニングトーン2(1202)を受信開始することになるので、ビギニングトーン1の継続時間よりも長く、エンドトーンの継続時間よりも短いトーン信号1210を受信することになる。このため、無線通信装置Dは、受信したトーン信号をビギニングトーン2と判断し、沈黙ノードとなる。
このように、本発明のプローブ処理によれば、複数のプローブ処理がほぼ同時に発生し
ても、一方のプローブ処理を成功させ、他方のプローブ要求ノードを沈黙させることで、両者のプローブ要求を衝突なしに円滑に進めることができる。
なお、プローブ要求は、プローブスロットに一つだけ実行されるが、沈黙ノードはビギニングトーン2を複数受信する場合もある。この場合、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を受信した回数分だけ、プローブエンドを送信する前のビギニングトーン2の受信がなければ通常の待機状態に戻ることはできない。何らかの理由で2つのビギニングトーン2の受信がなかったときには、沈黙ノードは最大バックオフカウント時間の間、沈黙し続けることになる。
以上の説明をまとめて、図14と図15に示す。
図14と図15は、トーン信号を受信した場合の本発明にかかる無線通信装置の動作を表したものである。
図14、図15において、各行はスーパフレームのスロットを示し、各列に受信するトーン信号を記している。例えば、プローブスロットでビギニングトーン1をプローブ要求受信前に受信したときには、ビギニングトーン2を送信して、プローブ要求を受信するために広帯域信号の同期を開始することを示している。
また、本発明によれば、送受信を行うもののみがビーコンなどの管理コマンドのフレームを送信するように制限したMACプロトコルとすることもできる。すなわち、送受信を行っていないものは、スリープ状態モードとしてビーコンなどを送信する必要がない。
さらに、本実施の形態における、RTS/CTSは、従来のRTS/CTSを拡張した方式(RTS/CTS−e方式)である。
RTS/CTS方式では、本来無線通信装置がそのコマンドフレームを送信した直後の帯域を使用してデータを送信するが、本実施の形態においては、指定可能な時間(例えば、64ms)までの時間を指定してデータ送信時間帯を予約する。これにより、TDMAの時間予約の代わりとなる。
また、無線通信装置が連続して予約する場合、次回のRTS/CTS−e交換用のスロットも予約する。これにより、アイソクロナス通信などにも対応が可能になる。
本実施の形態において、RTS/CTS−e方式は、4ウェイのハンドシェイク方式である。すなわち、最初のハンドシェイクで、相手方の空時間を確かめ、次のRTS/CTS−eのハンドシェイクで実際の送信時間を確定し周囲に通知する。
このような4ウェイ方式を取るのはNAV(Network Allocation Vector)で他の無線通信装置のRTS/CTS−eの更新を抑えることにより、現時点での最新の相手方のスケジュールを確かめられるからである。
予約時刻の指定方法は、実時間指定の方法と同期タイミングにそったスロット指定の方法とがある。スロット指定方法の場合には、自己の次のスーパフレーム周期の開始時刻までの時間を付加することで、他のスーパフレームグループと衝突した場合にも、スロット位置の判定が可能になる。そして、その他のスーパフレームグループのスロットに対応する、自己のスーパフレームのスロット位置を使用禁止にすることにより、他のスーパフレームグループとの衝突も回避できる。
このように、スロット指定方法は、実時間指定方法に比べ通信するデータ量を少なくできる反面、必要以上の時間を占有してしまう可能性がある。しかしながら、指定方法はどちらの方法でも構わない。
また、ミリ波UWBを使用することにより指向性を利用することが可能である。すなわち、フレーム送受信部131が一連のトーン信号やRTS/CTSフレームを無指向性の電波で送信する。その後、フレーム送受信部131は、実際のデータやACKなどの送信を、RTS/CTSを受信したときの電波の到来方向を予測し、実際にデータを送信する際には、予測された到来方向に対して指向性の電波を向けて送信もしくは受信する。
図16は、無線通信装置がRTS/CTSを無指向性の電波で送信し、データ交換をRTS/CTSの到来方向を推定した場合の衝突回避を説明する図である。
図16において、無線通信装置DがRTSを無指向性の電波で送信しているときに、無線通信装置Bが無線通信装置Aに指向性の電波でデータを送信すれば、無線通信装置Bの通信エリア1302が無線通信装置Cを含まない。このため、無線通信装置Cへはデータの電波1301が届かず、RTSの受信を邪魔することはない。
このように、送受信を行う無線通信装置の他は、ビーコンもしくはRTS/CTS−eの交換を行わないことにより、モビリティ環境における無駄な送受信を回避することができる。さらに、常に周囲の無線通信装置を確認しながら、随時通信を開始することも可能になる。
なお、本実施の形態のトーン信号は、継続時間の相違により各トーンを識別していたが、これに限らず、周波数の違い、電界強度の大小、電界強度の時間的変動、あるいは間欠信号のパターンなどによっても同様の効果を得られる。
以上のように本発明によれば、ビーコンの代わりにトーン信号を使用することで、無線通信装置は、モビリティ環境下での頻繁なビーコンの整列を行うことなしに、スーパフレーム内の時刻調整が可能になる。これにより、無線通信装置は、プローブ要求と応答を最小時間で他の無線通信装置と行うことができる。また、通信する無線通信装置のみが広帯域通信部を通電状態にすればよいので、多くの時間をスリープ状態にすることが可能となる。
また、本発明の無線通信装置は、狭帯域信号であるトーン信号が、コマンドやデータを通信する広帯域信号を送信する前に送信されるので、狭帯域信号のみを受信待ち状態にしておけば良い。このため、無線通信装置は、広帯域信号に常時通電する場合に比較して、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
(実施の形態2)
本実施の形態における無線通信装置は、周囲のノードにくまなく指向性アンテナでプローブ要求を送信したり、あるいは応答を返すものである。本実施の形態における無線通信装置の構成は、実施の形態の構成1における構成と同一であるが、指向性アンテナの通信範囲は、プローブ要求フレームの到達範囲の全ノードが互いに通信可能であるようなエリアである必要がある。例えば、図17に示すように、指向性アンテナの到達範囲が半径rのエリアとしたとき、アンテナの向いている方向でr/2の地点を中心とする半径r/2の円内にある任意のノードB、Cは互いに送受信可能な状態になる。このような配置にある各無線通信装置がプローブ要求を出した場合には、その応答が通常のキャリアセンスで衝突回避できる。
なお、本実施の形態における無線通信装置は、いろいろと向きの変わる移動通信端末よりも、常に向きが固定されているアクセスポイントに適している。
このように構成された無線通信装置のプローブ要求と応答の動作について以下に説明する。
本実施の形態におけるプローブ要求・応答動作は、プローブ要求ノードが周囲のすべてのノードにビギニングトーン1を送信した後に、セクタ毎にプローブ要求を行う点が実施の形態1の動作と異なる。
まず、プローブ要求ノードは、通常のプローブと同じようにビギニングトーン1を送信する。一方、応答ノードはビギニングトーン2を送信する。そして、プローブ要求ノードは、セクタプローブであることを宣言して、プローブ要求が開始したことを通知する。
次に、プローブ要求ノードは、各セクタに指向性を絞った状態で、送受信トーンのみを送信する。このようなデータのない送受信トーンを受信した周囲の応答ノードは、バックオフカウンタを走らせてランダムにその応答を返答する。また、プローブ要求ノードは、各セクタに割り振られる最大バックオフ時間を計測し、すべてのセクタをサーチすると再びビギニングトーン1を送信した後、プローブエンドを送信する。
以上のように本発明によれば、セクタプローブは、通常のプローブに比べ送信する範囲を狭めることが特徴で、これによりキャリアセンスのみで衝突の可能性をなくすことができる。また、通信範囲が狭いので最大バックオフカウント数などを制限できるため、プローブ応答がより高速に収束する可能性もある。
なお、セクタプローブも、通常のプローブ要求と同様にプローブスロットに一つだけ実行されるが、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を複数受信する場合もある。この場合、沈黙ノードは、ビギニングトーン2を受信した回数分だけ、プローブエンドを送信する前のビギニングトーン2の受信がなければ、通常の待機状態に戻ることはできない。何らかの理由で2つのビギニングトーン2の受信がなかったときには、沈黙ノードは最大バックオフカウントの間、沈黙し続けることになる。
(実施の形態3)
本実施の形態における無線通信方法は、実施の形態1と同様、送受信トーンとエンドトーンを用いるが、ビギニングトーン1、2を使用しない点が異なる。
図18は、本実施の形態におけるスーパフレームのトーン信号とフレームを説明するタイミングチャートである。
図18において、スーパフレーム1501は、エンドトーンスロット1502と送受信ピリオド1503のみから構成される。また、トーン信号は、エンドトーン1511と送受信トーン1513の2つのみであり、エンドトーンを送信した後の特別な時間帯であるエンドトーン再同期スロット1504において送信する送受信トーン1512を、特にプローブトーンいう。
送受信トーンは、送受信ピリオド1503で受信した場合、実施の形態1と同じく広帯域信号によるコマンドやデータフレームが送受信されることを通知する。しかし、エンドトーンスロット内でエンドトーン受信後に受信した送受信トーン1512は、次のスーパフレームの間、広帯域信号を受信待ちにして、RTS/CTS−eコントロールフレームを収集することを通知する。そして、無線通信装置は、コントロールフレームの収集した次のスーパフレームにおいて、プローブ応答をランダムなタイミングで送信する。
また、エンドトーンについては、実施の形態1と同一の処理となる。
図19は、本実施の形態における無線通信装置の構成を示す構成図である。本実施の形態は、実施の形態1において図2で示した構成とは、ビギニングトーン制御部134の代わりに、プローブトーン制御部161を有している点が異なる。
プローブトーン制御部161は、他の無線通信装置からのプローブトーン信号を受信したとき、フレーム送受信部131に対してそのスーパフレームの間でRTS/CTS−eフレームの受信を行うように指示するものである。また、プローブトーン制御部161は、プローブ送信部137が上位層処理部104から周囲の状況の問い合わせを受けたときに、プローブ送信部137からプローブトーンを送信するように指示される。そして、プローブトーン制御部161は、エンドトーンに引き続いて送受信トーン、すなわちプローブトーンを狭帯域通信部102に送信させる。
以上の構成を有する無線通信装置が、プローブ要求とその応答を行う動作について以下に説明する。
図20Aは、プローブ要求元の無線通信装置の動作フローであり、図20Bはプローブ応答する無線通信装置の動作フローである。
図20Aにおいて、まず、プローブ送信部137が上位層処理部104から周囲の状況の問い合わせを受けるとプローブ要求発生と認識し(ステップS1701)、プローブトーン制御部161にプローブトーンを送信するように指示する。プローブトーン制御部161は、これを受けて、エンドトーンの送信に引き続いて(ステップS1702)、送受信トーン1512、すなわちプローブトーンを狭帯域通信部102を介して送信する(ステップS1703)。
その後、時刻管理部132がエンドトーンを送信し、広帯域通信部101に通電した後、プローブ応答フレームの受信待ち状態になる(ステップS1704)。そして、広帯域通信部101がプローブ応答フレームを受信すると、フレーム送受信部131は、取得した送信元無線通信装置の属性や通信環境などの情報を蓄積したり、更新したりする(ステップS1705)。
次に、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、自己の属性とあった通信相手であれば、送受信を開始するために、RTS−eコマンドとデータ送信開始までの時間予約情報を送信する(ステップS1706)。
その後、予約時間経過すると(ステップS1707)、RTS/CTS−eデータフレーム送信部135は、データフレームを送信する(ステップS1708)。なお、ステップS1705乃至S1708については、複数の無線通信装置からプローブ応答を受信することにより、並行して処理が行われる。
一方、図20Bにおいて、無線通信装置はプローブトーンを受信すると(ステップS1720)、応答ノードとなり、広帯域通信部101に通電する(ステップS1721)。そして、広帯域通信部101がそのスーパフレームの間、広帯域信号の受信待ち状態となり、他の無線通信装置が送信したRTS/CTS−eフレームを受信する(ステップS1722)。
そして、時刻管理部132がエンドトーンを受信し(ステップS1723)、次のスー
パフレームになると、プローブ受信部136がプローブ応答するための属性や通信環境などの情報を生成し、フレーム送受信部131へプローブ応答の送信を指示する。フレーム送受信部131は、送受信ピリオドでバックオフカウントし、空きのスロットにおいて、プローブ応答フレームを送信する(ステップS1724)。
このように本発明によれば、プローブ応答ノードは、RTS/CTS−eの受信を、RTS/CTS−eで予約できる最大時間である1スーパフレーム分の間収集済であるので、プローブ要求ノードとプローブ応答ノードとが即座にRTS/CTS−eシーケンスを開始できる。また、本実施の形態における無線通信方法は、プローブスロットを設けないので、その時間もデータの送受信に使用できる。さらに、ビギニングトーンを使用しないので、エンドトーンを短くすることも可能となる。
なお、本実施の形態では、トーン信号は継続時間の相違により各トーンを識別していたが、これに限らず、周波数の違い、電界強度の大小、電界強度の時間的変動、あるいは間欠信号のパターンなどによっても同様の効果を得られる。
(実施の形態4)
本実施の形態における無線通信装置は、実施の形態3の無線通信方法を行うMACプロトコルを実装した、モバイルファイル交換装置である。また、交換するファイルは音楽ファイル、動画ファイル、およびゲームソフトである。
図21は、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置の構成図である。
図21において、モバイルファイル交換装置は、タッチパネルディスプレイ1801、音声端子1802、画像入出力コマンド受付部1803、音声入出力音声コーデック1804、メインCPU1805、ハードディスク装置1806、MACインタフェース用メモリ1807、外部メディア部1808、広帯域通信部101、狭帯域通信部102、MAC制御部103、およびアンテナ105を有している。
広帯域通信部101、狭帯域通信部102、MAC制御部103、およびアンテナ105は、実施の形態2に記載のものと同一である。
以下に、モバイルファイル交換装置の動作を説明する。
初めに、音楽ソフト、画像ソフト、ゲームソフトの再生動作について説明する。
まず、ユーザは、自身が使用したいソフトを外部メディア部1808からインストールして、ハードディスク装置1806に保存する。その後、タッチパネルディスプレイ1801から入力されたコマンドは、画像入出力コマンド受付部1803で複数の信号に変換された後、メインCPU1805に通知される。
音楽再生のコマンドが入力された場合は、メインCPU1805が音声入出力音声コーデック1804に指示してハードディスク装置1806から、音楽ソフトをデコードして音声端子1802より出力する。
動画像やゲームを行うコマンドが入力された場合には、メインCPU1805が音声再生に加えて、画像入出力コマンド受付部1803を介してタッチパネルディスプレイ1801に動画も表示する。
次に、音楽ソフト、画像ソフト、ゲームソフトを他のモバイルファイル交換装置とファ
イル交換する動作について説明する。
まず、ファイル交換を始めるにあたってミリ波UWB(広帯域通信)の通信手順を開始するため、MAC制御部103はメインCPU1805から起動命令を受けると、狭帯域通信部102にエンドトーンをサーチさせる。そして、狭帯域通信部102がエンドトーンを検知したとき、最初に検知したエンドトーンに同期させる再同期処理を開始する。
次に、MAC制御部103は、プローブトーンを受信すると、狭帯域通信部102がプローブレスポンスを送信するためにRTS/CTS−eコントロールフレームの受信待ち状態になる。そして、広帯域通信部101は、1スーパフレーム後のスーパフレームにてランダムにレスポンスを送信する。
次に、狭帯域通信部102は、N回に一回エンドトーンの再同期のためのエンドトーンを送信する。回数Nは、スーパフレーム周期の時間にもよるが、1〜2秒周期となるような回数が適している。新規にスーパフレームグループに加入したノードは、加入したタイミングから、また、他のノードは前回のスーパフレームグループの再同期処理の実行からの回数を数える。これらのノードは、再同期処理の間はエンドトーンの受信待ちとなり、新しいエンドトーンを受信したときのタイミングで同期する。
所定回数のエンドトーンの内に1回もプローブトーンを送受信しなかった場合や、エンドトーンの再同期処理により新たなスーパフレームグループに加わったときには、各ノードは、プローブトーンを送信する。プローブトーンを受信した各ノードは、再同期処理を行いつつ、RTS/CTS−eフレームを受信する。そして、プローブトーンを受信した各ノードは、1スーパフレーム受信待ちした後、ランダム時間経過後にプローブ応答を送信する。但し、各ノードがプローブ応答を送信するのはプローブトーンを送信した次のスーパフレームの間である。
次に、プローブ要求ノードは、応答のあったノードの属性リストを確認して、音楽ソフト交換、動画像交換、およびゲームソフト交換のそれぞれの属性を応答したものに対して、差分交換、すなわち一方が所有していて、他方が所有していないソフトのみを交換する。このため、交換を開始したノードは、まず自己の交換可能なソフトのIDの一覧を送信する。そして、交換を提示されたノードは、受信した一覧に対して、自己の交換可能なソフトのIDの一覧を送信すると共に、自己が所有していないで、ここ数ヶ月の間に交換経験の無い、相手ノードの持っているソフトの転送要求を出す。
ファイル交換要求を起動したノードは、これに基づいてソフトの転送に応じるとともに、自己の転送要求を応答側に求める。ファイルの交換処理は、交互に所定量、例えば50MBのファイルずつ転送する動作を繰り返し、相手ノードが近隣のノードでなくなるか、あるいは転送が終了するまで継続する。そして、必要であれば、要求ノードは、RTS/CTS−eフレームの再交換により、転送時間を更新する。
図22は、モバイルファイル交換装置が管理する音楽ソフトのファイルリストである。
図22において、各音楽のIDは、TOC(Table of Content)1901とトラック番号1904で識別する。タイトル名1902とアーティスト名1903は、ユーザ入力もしくは、アクセスポイント経由のCDDB(CDの曲目のデータベース)による入力となる。これらはユーザ情報でありファイル交換動作に直接関係しない。
CDあるいはインターネットなどから取得した音楽ファイルは、外部メディア部1808によりハードディスク装置1806にコピーされる。このときのメディアフラグ190
5はオン、シャドウフラグ1906はオフで、期限1907は無限大である。そして、他のモバイルファイル交換装置とのメディア交換時に送信する一覧には、メディアフラグ1905がオンとなっているもののみを記載する。交換されたソフトも、メディアフラグ1905がオン状態の曲として自己のファイルリストに残るが、期限が設定される。例えば、シャドウ化期限として100日としたとき、100日経過しても一度も再生されないものはシャドウファイル化される。ここで、シャドウファイルとは、ユーザからファイルの存在を認識できるが再生できないファイルをいう。但し、メディアフラグ1905がオンであって、実際にハードディスク装置1806に音楽ファイルが存在するので、自己の交換ファイルのひとつとして取り扱うことができる。
ファイルは、シャドウ化期限を過ぎるか、あるいは再生可能な回数分再生され終わるとシャドウファイル化され、新たな期限が設定される。そして、これを削除期限として新たに100日が設定される。この期間を過ぎると、ハードディスク装置1806から音楽ファイルソフトが削除される。このとき、ファイルリストにはメディアフラグ1905がオフ、シャドウフラグがオンのエントリーが再エントリー抑制期限を設定されて残される。この再エントリー抑制期限とは、既に音楽ファイルは無いが一旦試聴を行ったファイルを再度エントリーさせることを制限するものであり、これにより、同じファイルが何度も聞けるような状態を防ぐことができる。そして、再エントリー抑制期限が過ぎるとエントリー自体が消え、再エントリーが可能となる。
また、数多く交換されるファイルの内、例えば、ジャンルを指定したり、聞ける音楽フォーマットを制限して、より好みに合ったものだけを選定することも可能である。好みの違うファイルは、たちまちシャドウファイル化され、ユーザの目に付くことなく期限が過ぎれば削除される。
また、ユーザがそのメディアを外部メディア部1808から他の機器にコピーする場合には、メインCPU1805はメディアフラグがオンであることを確認した上で、ミリ波UWBのアクセスポイントを移動して探す。あるいは、ユーザは、ミリ波UWBで中継可能な携帯電話からIP網に接続し、電子商取引を用いて認証・課金が行なわれたことを確認後、ファイルリストに期限無限大のエントリーを作成する。そして、メインCPU1805は、シャドウフラグ1906をオフにして、ハードディスク装置内のソフトファイルを外部メディアにコピーする。なお、外部メディアから自己のモバイルファイル交換装置に購入済のソフトをインストールする場合も、課金は必要ないが認証は必要である。それは、流布したくないソフトの交換が可能になってしまうからである。
また、ミリ波UWBでIPネットワークに中継するときは、IP処理をアクセスポイント、あるいは携帯電話などで終端することが好ましい。そうでなければ、ミリ波UWBは、IPアドレスを割り振ることになるが、通常のIPv4で行われるプライベートアドレスでは、移動通信のときに混乱の原因になってしまうからである。しかしながら、アクセスポイントごとにネットワークアドレスを使用するのではアドレスの非効率割り当てになってしまうので、IPv6を使用するか、あるいはミリ波UWBのリンク上にはTCP/IP以上のデータをやり取りするように構成するのが好ましい。
なお、上記の実施例では、交換するファイルを音楽ファイルに限定して説明したが、動画像ファイルやゲームソフトのファイル交換も同様にして管理することができる。
また、ソフトの一覧を交換するときに、ファイルリストの期限が無限大(即ち購入済)の情報も交換すると、周辺のユーザが購入済のソフトのランキングを作成することができる。これは、ユーザにとって購入の手助けとなり得る。また、そのランキング表にソフトのお勧めなどのコメントを入れるようにしても良い。
さらに、モバイルファイル交換装置自身の制御ソフトウェアをモバイルファイル交換装置がファイル受信すれば、自動的にアップデートすることも可能である。この場合、ファイルに優先度を示すフラグなどを付加することにより、優先的にファイル交換できるようにするのが好ましい。
(実施の形態5)
図23は、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置の構成図である。実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置の構成とは、単方向指向性アンテナ2001をさらに有する点が異なる。
このアンテナ2001はユーザが通信したい相手を視覚的に認識しながらファイル交換を行いたい場合に用いる。
図24は、モバイルファイル交換装置がアクセスポイントに接続する際のシーケンス図である。
モバイルファイル交換装置2102は、アクセスポイント2101に向けてプローブ要求コマンドをタッチパネルから入力されると、モバイルファイル交換装置2102はプローブトーンを自己のエンドトーンのタイミングで送信する。このとき、他のモバイルファイル交換装置2103がエンドトーンを送信すると、モバイルファイル交換装置2102はこれに再同期して再度プローブトーンを送信する。
次に、プローブトーンによってスリープからさめたアクセスポイント2101は、プローブ応答を送信する。
次に、モバイルファイル交換装置2102はこのプローブ応答で送信されてきた、アクセスポイント2101の属性情報などをタッチパネルディスプレイ1801に表示する。例えば、「アクセスポイント・音楽ファイル交換」というように表示される。
次に、ユーザは、そのアクセスポイントを選択すると、あとはインターネットのハイパーテキスト(http)などを利用したデータ交換により、タッチパネルディスプレイの表示が変更され、例えば「接続」などのコマンド入力を行う。このとき、例えば、音楽ソフトの課金が行われる。
以上のように、本実施の形態におけるモバイルファイル交換装置によれば、対象のノードに対して物理的にアンテナを向けるといった限定により、要求ノードが通信を開始できるので、誤って相手ノードを指定することを防止できる。
また、複数のモバイルファイル交換装置が指定した方向に存在していて、応答が複数ある場合は、プローブ応答の到来方向の推定により各プローブ応答の到来方向のずれを平面図でディスプレイに表示する。これにより、ユーザは、多くのプローブ応答の中でどのモバイルファイル交換装置を選択するかを決定することが容易になる。
(実施の形態6)
図25を参照して、実施の形態6の構成を説明する。図25は、本実施の形態における無線通信装置の信号通信部2500の構成を示すブロック図である。
本実施の形態における無線通信装置は、実施の形態1と比較すると、広帯域通信部101および狭帯域通信部102の部分が分離した2つの独立したブロックではなくて、一体
化した一つのブロックである信号通信部2500を備えて構成されている点が異なる。実施の形態1におけるMAC制御部103等の、広帯域通信部101および狭帯域通信部102以外の部分に相当する本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1の構成および動作と同一であり、説明を省略する。
信号通信部2500は、トーン信号通信部2510、データ信号通信部2520および搬送波信号源2502から構成される。トーン信号通信部2510は、フィルタ2512、送受切り替えスイッチ2514、周波数変換器2516、周波数変換器2518およびトーン信号制御部2519を備える。同様にデータ信号通信部2520は、フィルタ2522、送受切り替えスイッチ2524、復調器2526、変調器2528およびデータ信号制御部2529を備える。
トーン信号通信部2510は、送信時にはMAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号から所定の長さをもつトーン信号を生成し、周波数変換して分配器2530へ出力する。尚、トーン信号の制御信号とは、図4のような所定の長さをもつトーン信号そのものではなく、いわばどのトーン信号であるかを示す論理的なトーン信号を意味する。実施の形態1乃至5では、単にトーン信号ということがある。また、トーン信号通信部2510は、受信時には分配器2530から入力したトーン信号を周波数変換してトーン信号の制御信号に変換して、MAC制御部103へ出力する。
なお、トーン信号は、ベースバンドトーン信号の発生を制御する「トーン信号制御信号」、振幅や位相等の変調を行なうことのない「トーン信号」、トーン信号に搬送波周波数を乗じて生成した「搬送波と重畳したトーン信号」をそれぞれ意味する。
フィルタ2512は、送信時には送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、分配器2530へ出力する。フィルタ2512は、受信時には分配器2530から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2514に出力する。
送受切り替えスイッチ2514は、送信時には周波数変換器2518から入力した周波数変換後のトーン信号をフィルタ2512へ出力する一方、受信時にはフィルタ2512から入力したトーン信号を周波数変換器2516へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
周波数変換器2516は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号の周波数変換を行う。すなわち、周波数変換器2516は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号をベースバンド信号に変換し、変換した信号をトーン信号制御部2519へ出力する。
周波数変換器2518は、送信時にはトーン信号制御部2519から入力したトーン信号を周波数変換、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2514へ出力する。
トーン信号制御部2519は、送信時にはMAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、トーン信号制御部2519に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を生成し、周波数変換器2518に出力する。トーン信号制御部2519は、受信時には周波数変換器2516から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。
同様に、データ信号通信部2520は、送信時にはMAC制御部103から入力したデータ信号を変調して分配器2530へ出力する。また、データ信号通信部2520は、受信時には分配器2530から入力したデータ信号を周波数変換して、MAC制御部103へ出力する。
フィルタ2522は、送信時には送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、分配器2530へ出力する。フィルタ2522は、受信時には分配器2530から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2524に出力する。
送受切り替えスイッチ2524は、送信時には変調器2528から入力した変調後のデータ信号をフィルタ2522へ出力する一方、受信時にはフィルタ2522から入力したデータ信号を復調器2526へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
復調器2526は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号の復調を行う。すなわち、復調器2526は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてデータ信号をベースバンド信号に変換し、データ信号制御部2529へ出力する。
変調器2528は、送信時にはデータ信号制御部2529から入力したデータ信号を変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2524へ出力する。
データ信号制御部2529は、送信時にはMAC制御部103から入力したデータ信号を変調器2528へ出力する。データ信号制御部2529は、受信時には復調器2526から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
搬送波信号源2502は、搬送波を生成し、周波数変換器2516および復調器2526へ搬送波を出力する。図25では、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520が、搬送波信号源2502を共有している構成を示している。
尚、トーン信号とデータ信号とで異なる中心周波数の信号を使う場合も同一の中心周波数を使う場合も、搬送波信号源を別にする構成にすることもできる。実施の形態1において、広帯域通信部101にデータ信号通信部2520と搬送波信号源とを使用し、狭帯域通信部102にトーン信号通信部2510と別の搬送波信号源とを使用した場合は、そのような構成になる。また搬送波信号源は一つであっても、ミキサ等の周波数変換する素子を用いて搬送波信号源2502の周波数から周波数変更することにより、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とは、異なる中心周波数を使うことができる。また、アンテナについても信号帯域に応じてトーン信号用のアンテナとデータ信号用のアンテナに分けた複数にする構成にしてもよい。
本実施の形態のトーン信号については、狭帯域信号を用いて、データ信号については広帯域信号を用いることがより好ましいが、本発明は、それに限定されるわけではなく、帯域の大小に関わりなく、トーン信号とデータ信号の帯域を設定することは可能である。
尚、実施の形態2乃至実施の形態5の狭帯域通信部と広帯域通信部を本実施の形態のトーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520と搬送波信号源2502に置き換えた構成も本発明に含まれることはいうまでもない。
次に、実施の形態6の無線通信装置の信号通信部2500の動作を説明する。
まず、トーン信号通信部2510の動作を説明する。送信時には、トーン信号制御部2519は、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、トーン信号制御部2519に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を生成し、周波数変換器2518へ出力する。
次に、周波数変換器2518は、トーン信号制御部2519から入力したトーン信号を周波数変換、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、周波数変換されたトーン信号を送受切り替えスイッチ2514へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2514は、周波数変換器2518から入力した周波数変換後のトーン信号をフィルタ2512へ出力する。そして、フィルタ2512は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたトーン信号を分配器2530へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2512は、分配器2530から入力したトーン信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたトーン信号を送受切り替えスイッチ2514に出力する。
送受切り替えスイッチ2514は、フィルタ2512から入力したトーン信号を周波数変換器2516へ出力する。周波数変換器2516は、送受切り替えスイッチ2514から入力したトーン信号の周波数変換を行う。すなわち、周波数変換器2516は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号をベースバンド信号に変換し、変換された信号をトーン信号制御部2519へ出力する。
トーン信号制御部2519は、周波数変換器2516から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、生成されたトーン信号の制御信号をMAC制御部103へ出力する。
次に、データ信号通信部2520の動作を説明する。
データ信号通信部2520の送信時には、データ信号制御部2529は、MAC制御部103から入力したデータ信号を変調器2528へ出力する。
次に、変調器2528は、データ信号制御部2529から入力したデータ信号を変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、変調されたデータ信号を送受切り替えスイッチ252へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2524は、変調器2528から入力した変調後のデータ信号をフィルタ2522へ出力する。そして、フィルタ2522は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたデータ信号を分配器2530へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2522は、分配器2530から入力したデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限されたデータ信号送受切り替えスイッチ2524に出力する。
送受切り替えスイッチ2524は、フィルタ2522から入力したデータ信号を復調器2526へ出力する。復調器2526は、送受切り替えスイッチ2524から入力したデータ信号の復調を行う。すなわち、復調器2526は、搬送波信号源2502から出力す
る搬送波をもとにしてデータ信号をベースバンド信号に変換し、変換された信号をデータ信号制御部2529へ出力する。
データ信号制御部2529は、復調器2526から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
このように、本実施の形態においては、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とが搬送波信号源2502を共通に使用する構成をとるため、部品点数の少ない低コストの無線通信装置を提供することができる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7に係る無線通信装置の構成および動作について説明する。
実施の形態6の図25においては、広帯域信号とトーン信号を同時送信するために、2つの送信系として、トーン信号通信部2510とデータ信号通信部2520とを備えた例を説明した。しかし、同時送信をしない場合は、送信系は1つ備えれば足りるので、このような構成の無線通信装置を実施の形態7として、その構成及び動作を以下に説明する。
図26を参照して、実施の形態7の構成を説明する。図26は、本実施の形態における無線通信装置の信号通信部2600の構成を示すブロック図である。
実施の形態1におけるMAC制御部103等の、広帯域通信部101および狭帯域通信部102以外の部分に相当する本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1の構成および動作と同一であり、説明を省略する。
信号通信部2600は、通信部2610および搬送波信号源2502から構成される。通信部2610は、フィルタ2612、送受切り替えスイッチ2614、復調器2616、変調器2618および信号制御部2619を備える。
通信部2610は、トーン信号の送信時には、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号からトーン信号を生成し、そのトーン信号を、変調器2618に出力する。通信部2610は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別して対応するトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。
通信部2610は、データ信号の送信時には、MAC制御部103から入力したデータ信号を変調して指向性制御部106へ出力する。また、通信部2610は、データ信号の受信時には、指向性制御部106から入力したデータ信号を復調して、MAC制御部103へ出力する。
フィルタ2612は、送信時には送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、指向性制御部106へ出力する。フィルタ2612は、受信時には指向性制御部106から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、送受切り替えスイッチ2614に出力する。
送受切り替えスイッチ2614は、送信時には変調器2618から入力した周波数変換後または変調後のトーン信号またはデータ信号をフィルタ2612へ出力する。一方、受信時にはフィルタ2612から入力したトーン信号またはデータ信号を復調器2616へ出力するように、送信と受信とで信号の接続および方向の切り替えを行う。
復調器2616は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号の周波数変換または復調を行う。すなわち、復調器2616は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号またはデータ信号をベースバンド信号に変換し、信号制御部2619へ出力する。
変調器2618は、送信時には、信号制御部2619から入力したトーン信号またはデータ信号を周波数変換または変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換し、送受切り替えスイッチ2614へ出力する。
信号制御部2619は、トーン信号送信時には、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、信号制御部2619に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を変調器2618に出力する。信号制御部2619は、データの送信時には、MAC制御部103から入力したデータ信号を、変調器2618に出力する。
信号制御部2619は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別してトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。また、信号制御部2619は、データ信号の受信時には、復調器2616から入力したデータ信号を入力し、MAC制御部103へ出力する。
次に、実施の形態7に係る無線通信装置の動作を説明する。
トーン信号の送信時には、信号制御部2619は、MAC制御部103から入力したトーン信号の制御信号に従って、信号制御部2619に持っている固有のデータパターンに基づくトーン信号を変調器2618に出力する。データ信号の送信時には、信号制御部2619は、MAC制御部103から入力したデータ信号を、変調器2618に出力する。
次に、変調器2618は、信号制御部2619から入力したトーン信号またはデータ信号を周波数変換または変調、すなわち搬送波信号源2502から出力する搬送波を中心周波数とした信号に変換または変調し、変調器出力信号2702を送受切り替えスイッチ2614へ出力する。
次に、送受切り替えスイッチ2614は、変調器2618から入力した周波数変換または変調後のトーン信号またはデータ信号(変換器出力信号2702)をフィルタ2612へ出力する。そして、フィルタ2612は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限された信号を指向性制御部106へ出力する。
一方、受信時には、フィルタ2612は、指向性制御部106から入力したトーン信号またはデータ信号を所定の周波数に帯域制限して、帯域制限された信号を送受切り替えスイッチ2614に出力する。
送受切り替えスイッチ2614は、フィルタ2612から入力したトーン信号またはデータ信号を復調器2616へ出力する。復調器2616は、送受切り替えスイッチ2614から入力したトーン信号またはデータ信号の周波数変換または復調を行う。すなわち、復調器2616は、搬送波信号源2502から出力する搬送波をもとにしてトーン信号またはデータ信号をベースバンド信号に変換し、変換した信号を信号制御部2619へ出力する。
信号制御部2619は、トーン信号の受信時には、復調器2616から入力したトーン
信号を入力し、トーン信号の長さによりトーン信号の種類を判別してトーン信号の制御信号を生成し、MAC制御部103へ出力する。信号制御部2619は、データ信号の受信時には、復調器2616から入力したデータ信号をMAC制御部103へ出力する。
この場合の変調器2618が、入力する変調器入力信号2701を周波数変換または変調した後の変調器出力信号2702の信号波形の一例を図27に示す。変調器2618へ入力する信号においては、トーン信号2710の信号幅2711とデータ信号2720の信号幅2721が異なり、この信号幅に応じて正弦波成分を含む変調器出力信号も幅の異なる信号となる。なお、幅の広い信号は、狭帯域の信号であり、幅の狭い信号が広帯域の信号であることは言うまでもない。一例を挙げると、トーン信号2710の信号幅は、例えば1μsecであり、データ信号2720の信号幅は、例えば1nsecであるが、適用するシステムにより大きく変動しうるため、これらに限定されるものではない。また、トーン信号は必ずしも狭帯域信号でなくてもよく、トーン信号の信号幅2711が、データ信号の信号幅2721と等しいか小さい関係にあってもよい。
また、受信の際のトーン信号とデータ信号の分離方法については、例えばトーン信号とデータ信号の周波数が異なる場合は、フィルタ帯域により両者を分離することが可能である。同様に、トーン信号とデータ信号が同時送信しない場合は、時間的に分離が可能である。また、同一周波数、同一時間に送信されている場合は、送信信号電力を変えることにより分離可能である。この場合、例えば信号時間の長いトーン信号の振幅を小さくして送信電力を小さく、データ信号の振幅を大きくして送信電力を大きくすることで、復調器2616での受信電力しきい値による分離が可能である。
このように、本実施の形態においては、トーン信号とデータ信号とを一つの信号通信部で処理する構成をとるため、構成が簡単で部品点数が少なくなり、低コストで電力消費の少ない無線通信装置を提供することができる。
本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する無線通信方法であって、一の無線通信装置がスーパフレームの終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、他の無線通信装置がそのエンドトーンを受信したときに、自己のスーパフレームの終端を同期させるステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さいトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、スーパフレームの終端から所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、その送受信トーンの送信完了後に、データ信号を送信するステップとをさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、トーン信号のみ監視することによりデータ受信の開始を検出できるので、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、他の無線通信装置からの送受信トーンを受信した後に、前記データ信号を受信可能にしてデータ信号を受信するステップと、そのデータ信号を正常に受信したとき、前記送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップとをさらに有している。
これにより、無線通信装置は、UWBのようなデータ信号を受信待ちする必要がないの
で、待機時の消費電力を低減することができる。
また、本発明の無線通信方法は、前記エンドトーンを送信するステップが、前記一の無線通信装置が、スーパフレームの終端を識別するための狭帯域信号のエンドトーンを送信するステップである。
これにより、無線通信装置は、変調信号によるビーコンを使用することなく、消費電力の小さい狭帯域のトーン信号を使用してスーパフレームと同期を取るので、消費電力を従来の方法に比べ低減することができるようになる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置がスーパフレームの終端から所定の時間経過後にデータ送信を通知するための狭帯域信号の送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、前記一の無線通信装置が前記送受信トーンの送信完了後に、広帯域のデータ信号を送信するステップとをさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、狭帯域信号のみ監視することによりデータ受信の開始を検出できるので、待機時の消費電力を低く抑えることが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が他の無線通信装置からの送受信トーンを受信した後に、広帯域信号を受信可能にし、前記データ信号を受信するステップと、前記一の無線通信装置が前記データ信号を正常に受信したとき、前記狭帯域の送受信トーンをキャリアセンスしながら送信するステップと、をさらに有するものである。
これにより、無線通信装置は、UWBのような広帯域信号を受信待ちする必要がないので、待機時の消費電力を低減することができる。
また、本発明の無線通信方法は、エンドトーンがスーパフレームの終端の前後に設定されたエンドトーンスロット内で送信されるものであって、前記一の無線通信装置はエンドトーンスロット内で最初に受信したエンドトーンを基準にしてスーパフレームの終端を再設定するものである。
これにより、スーパフレームグループの各無線通信装置は、スーパフレームにおいて最も早いエンドトーンに同期することが可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、他の無線通信装置から受信したエンドトーンが、エンドトーンスロット内で最初のものであって、自己のエンドトーンの送信開始以前に受信完了したとき、その完了時点でスーパフレームの終端を再設定するステップと、エンドトーンを受信したタイミングで自己のエンドトーンを送信するステップとを有するものである。
これにより、最初に受信したエンドトーンと自己のエンドトーンとの時間差をより小さく維持できるので、全体として短時間に同じスーパフレームに同期することが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、スーパフレームを共有する無線通信装置のグループであるスーパフレームグループが複数混在したとき、第1のスーパフレームグループの無線通信装置が、自己のスーパフレームグループの他の無線通信装置へ第2のスーパフレームと同期することを通知するステップと、第1のスーパフレームグループの当該無線通信装置が、スーパフレーム全体にわたって第2のスーパフレームグループからのエンドトーンを受信待ちし、受信した当該エンドトーンを基準にしてスーパフレームの終端を再設定す
るものである。
これにより、無線通信装置は、モバイル環境下で他のスーパフレームグループと遭遇しても送受信を開始することが可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、第1のスーパフレームグループに属する無線通信装置が現在の終端を通知するエンドトーンを送信した後に、エンドトーンスロット内で再度エンドトーンを送信することにより、他の無線通信装置へ第2のスーパフレームグループのスーパフレームと同期することを通知し、その同期することを通知するエンドトーンを受信した、第1のスーパフレームグループに属する他の無線通信装置が、現在の終端を通知するエンドトーンを送信した後に、エンドトーンスロット内で再度エンドトーンを送信するものである。
これにより、無線通信装置は、再同期をスーパフレームグループ単位で実行することになり、現時点での通信が途絶える心配が無く、グループが収束して纏まるのですべての通信が可能になる。
また、本発明の無線通信方法は、狭帯域信号トーンに継続時間を変化させて定義するビギニングトーン1とビギニングトーン2を設けたものであって、無線通信装置が通信の衝突回避のための狭帯域信号のビギニングトーン1をキャリアセンスしながら送信するステップと、そのビギニングトーン1を受信した無線通信装置が、狭帯域信号のビギニングトーン2を送信するステップと、そのビギニングトーン1もしくはビギニングトーン2を受信した無線通信装置が、現在のスーパフレーム内では自己からの狭帯域信号のビギニングトーン1を送信することを中止するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、マルチキャスト通信などで複数の応答がされるとき、一つずつ応答するように各無線通信装置が送信を抑制するようになる。
また、本発明の無線通信方法は、ビギニングトーン1を送信した無線通信装置がビギニングトーン2を受信した無線通信装置へ属性および/または通信環境を問い合わせるプローブ要求を広帯域信号で送信するステップと、そのプローブ要求を受信した無線通信装置が、自己の属性や通信環境の情報を含むプローブ応答を広帯域信号で送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、マルチキャストによるプローブ要求をビギニングトーンを使用して行わせることにより、同じ時間帯に複数の地理的再利用が可能となる。
本発明の無線通信方法は、プローブ要求を受信した無線通信装置がプローブ応答を送信する前に送受信トーンを送信するステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置が前記送受信トーンを受信したとき、受信した送受信トーンを転送するステップと、プローブ要求を送信していない無線通信装置が送受信トーンを受信したとき、自己からのプローブ応答の送信開始を停止するステップとを有するものである。
これにより、要求側の無線通信装置と、次近接の位置にある応答側の無線通信装置との競合を極力抑えることが可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求を送信した無線通信装置がプローブ応答を受信完了するまでの所定時間をバックオフによりカウントするステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置が所定時間をカウント終了したとき、プローブ要求期間の終了通知を近隣の無線通信装置へ送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、必要最小限の時間でプローブを終了することができる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求においてプローブ要求を送信した無線通信装置が複数の指向性アンテナにより複数のセクタを構成し、各セクタ内の無線通信装置は、互いに送受信可能な状態であるとき、プローブ要求を送信した無線通信装置が行う送受信トーンの送信が、各指向性アンテナによりセクタ毎に順番に行われるものである。
これにより、固定式の無線通信装置のプローブ処理はセクタを決めて行うことで能率的にプローブ動作を実行可能となる。
また、本発明の無線通信方法は、プローブ要求を送信した無線通信装置がセクタ毎に、プローブ応答を受信完了するまでの所定時間をバックオフによりカウントするステップと、プローブ要求を送信した無線通信装置がすべてのセクタにおいて所定時間のカウントを終了したとき、プローブ要求期間の終了通知を近隣の無線通信装置へ送信するステップとを有するものである。
これにより、無線通信装置は、セクタの待ち時間も必要最小限にすることができる。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置がエンドトーンスロット内でエンドトーンに続いて送受信トーンを受信したとき、当該エンドトーンスロット終了後のスーパフレームにおいて、近隣の無線通信装置が送信するデータ送受信予約情報を含むコントロールフレームを収集し、次のスーパフレームのコントロールフレームで予約されていない時間帯に、自己の属性や通信環境情報、および/またはコントロールフレームで予約された時間帯の情報を含むプローブ応答を送信するものである。
これにより、無線通信装置は、RTS/CTS−eを利用した通信を行うことでデータピリオドの全区間を時間予約できるので、従来方式に比べスーパフレームの全体を有効に利用可能になる。
また、本発明の無線通信方法で使用する狭帯域信号(トーン信号)の継続時間は、送受信トーン、ビギニングトーン1、ビギニングトーン2、エンドトーンの順に長く、エンドトーンはビギニングトーン2の少なくとも2倍以上である。
これにより、無線通信装置の送受信トーンは、スループットに関係するので最も小さくなくてはならないが、エンドトーンが3倍以上重なってもエンドトーンであると検出できる。また、ビギニングトーン1が同時期に二つ以上吹かれても、ビギニングトーン2であると見なされることになる。
また、本発明の無線通信方法は、複数の無線通信装置がアドホックネットワークにおいて相互に通信する一の無線通信装置の無線通信方法であって、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンを送信するステップと、最初に送信したエンドトーンを基にして再設定された終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンを送信するステップと、当該送受信トーンの送信完了後、データ信号を送信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信方法では、前記エンドトーン及び送受信トーンは、狭帯域信号であり、前記データ信号は、広帯域信号のデータ信号である。
また、本発明の無線通信方法は、前記一の無線通信装置が、通信の衝突回避のための狭
帯域信号のビギニングトーン1をキャリアセンスしながら送信するステップと、前記一の無線通信装置が、前記ビギニングトーン1を受信した他の無線通信装置により送信されたビギニングトーン2を受信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信方法は、前記ビギニングトーン1を送信した一の無線通信装置が、前記ビギニングトーン2を送信した前記他の無線通信装置へ、属性および/または通信環境を問い合わせるプローブ要求を広帯域信号で送信するステップと、前記プローブ要求を受信した前記他の無線通信装置から、自己の属性および/または通信環境の情報を含むプローブ応答を広帯域信号で受信するステップと、を有するものである。
また、本発明の無線通信装置は、トーン信号を送受信するトーン信号通信部と、変調して広帯域信号でデータを送受信するデータ信号通信部と、時刻管理部と、フレーム送受信部とを有している。その時刻管理部は、スーパフレーム内の経過時間を計測し、終端を識別するためのエンドトーンをトーン信号通信部から送信したり、あるいはエンドトーンをトーン信号通信部を介して受信し、自己の終端時刻以前に最初に受信したエンドトーンを基準にして終端時刻を再設定する。また、フレーム送受信部は、時刻管理部が再設定した終端時刻を基準に、所定の時間経過後にデータ送信を通知するための送受信トーンをトーン信号通信部から送信し、当該送受信トーンの送信完了後、データをデータ信号通信部を介して送信したり、あるいは送受信トーンを受信したときデータ信号通信部を受信可能状態にしてデータをデータ信号通信部から受信したりする。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
また、本発明の無線通信装置は、前記トーン信号通信部が、狭帯域のトーン信号を送受信する狭帯域通信部であり、前記データ信号通信部が、変調して広帯域信号でデータを送受信する広帯域通信部である。
この構成により、無線通信装置はビーコンを使用することなく、スーパフレームグループ間のスーパフレーム同期を実現することができる。
また、本発明の無線通信装置は、再同期制御部をさらに有している。その再同期制御部は、スーパフレームを共有する自己と同一グループに属する他の無線通信装置へ、スーパフレームを共有していない他のグループのスーパフレームに同期することを通知する。そして、スーパフレームの全期間において、他のグループのエンドトーンを監視し、当該エンドトーンを受信したとき、スーパフレームの終端に再設定してエンドトーンを狭帯域通信部を介して送信する。
これにより、無線通信装置は、他のスーパフレームグループのスーパフレームと同期をとることが可能になる。
また、本発明の無線通信装置は、ビギニングトーン制御部へビギニングトーン1の送信を指示し、その後当該ビギニングトーン制御部からビギニングトーン2の受信を通知されたとき、他の無線通信装置へ属性や通信環境情報の通知を要求するプローブ要求フレームの送信を前記フレーム送受信部へ指示するプローブ送信部と、前記プローブ要求を受信したとき、自己の属性および/または通信環境情報を送信するように前記フレーム送受信部へ指示するプローブ受信部とをさらに有するものである。
この構成により、無線通信装置は、ビーコンにて実施されてきたノードの生存確認をプローブにて実施することができる。
2005年12月7日出願の特願2005−352992の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容はすべて本願に援用される。
本発明は、アドホックネットワークにおける無線通信方法及び無線通信装置に有用であり、特にモビリティ環境下において無線通信装置間でファイル交換するのに適している。
従来の無線通信方法におけるTDMAによるスーパフレームの構成を示す図
本発明の実施の形態1における無線通信装置の構成を示す図
本発明の実施の形態1におけるトーン信号とフレームの送受信プロトコルを示すタイミングチャート
本発明の実施の形態1における各トーン信号の長さを示す図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの同期処理を説明するフロー図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの同期動作を示す図
本発明の実施の形態1における2つのスーパフレームグループの配置を示す図
本発明の実施の形態1におけるスーパフレームの再同期処理を説明するフロー図
本発明の実施の形態1における無線通信装置の再同期エンドトーンの送受信動作を示す図
本発明の実施の形態1におけるデータ送受信の動作を示す図
図11Aは、本発明の実施の形態1における要求側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図、図11Bは、本発明の実施の形態1における応答側無線通信装置のプローブ処理を説明するフロー図
図12Aは、本発明の実施の形態1における無線通信装置が2ホップ内に位置したときの配置図、図12Bは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図、図12Cは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図
図13Aは、本発明の実施の形態1における無線通信装置が3ホップ内に位置したときの配置図、図13Bは、本発明の実施の形態1における無線通信装置のビギニングトーン1、2の送受信動作を示す図
本発明の実施の形態1における無線通信装置がトーン信号を受信した場合の動作を示した図
本発明の実施の形態1における無線通信装置がトーン信号を受信した場合の動作を示した図
本発明の実施の形態1におけるRTS/CTSによる衝突回避を説明する図
本発明の実施の形態2における無線通信装置の配置を示す図
本発明の実施の形態3におけるスーパフレームのトーン信号とフレームを説明するタイミングチャート
本発明の実施の形態3における無線通信装置の構成を示す図
図20Aは、本発明の実施の形態3におけるプローブ要求元の無線通信装置の動作フロー図、図20Bは、本発明の実施の形態2におけるプローブ応答する無線通信装置の動作フロー図
本発明の実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置の構成を示す図
本発明の実施の形態4におけるモバイルファイル交換装置が管理する音楽ソフトのファイルリストを示す図
本発明の実施の形態5におけるモバイルファイル交換装置の構成を示す図
本発明の実施の形態5におけるモバイルファイル交換装置がアクセスポイントに接続するシーケンスを示す図
本発明の実施の形態6における信号通信部の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態7における信号通信部の構成を示すブロック図
本発明の実施の形態7における信号通信部の信号波形を示すタイミングチャート