JPWO2007052635A1 - 口腔細菌の迅速検出方法 - Google Patents

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Abstract

迅速、特異的、安価かつ簡便な、歯科臨床現場で実用可能な口腔細菌、特に口腔感染症関連細菌の迅速検出系を提供する。検体中のホモシステインおよび/またはシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、口腔細菌の検出方法。前記酵素活性の測定は、硫化水素とビスマスとの反応により生じた呈色の測定が好ましい。

Description

本発明は、口腔細菌、特に口腔感染症関連の細菌を検出する方法および口臭・歯周病診断キットに関する。
近年、歯科の2大疾患であるう蝕と歯周病は、口腔感染症関連細菌による感染症と考えられている。これまで、これらの疾患に対して、感染症に対する基本的な検査である細菌検査はあまり行われてこなかったが、当該疾患が細菌感染症である以上、当然行われるべきである。また、治療効果の判定や評価、疾患予後の判定などにおいて、細菌検査は極めて重要な役割を担っている。これまで歯科医療において、細菌検査が積極的に導入されてこなかった経緯の1つとして、簡便かつ正確な細菌検査法が無かったことが挙げられる。保険診療において、歯内治療における細菌簡易検査として細菌培養法が唯一認められているが、一般歯科医院で普及しているとは言い難い。これは細菌培養検査の操作性および迅速性に問題があるためと考えられる。
歯科領域では、歯周病、口臭、加えて、う蝕の続発症である歯髄炎は、患者が病院を訪れる主要な理由であり、その患者数は非常に多い。また、衛生意識の向上により口臭についての関心が高まっており、口臭を主訴とする歯科受診患者が近年増加傾向にある。厚生省の「平成11年度保健福祉動向調査」によると、男性の15.8%、女性の13.2%、総数で14.5%の人が口臭があるという悩みを持っている。口腔保健関係者は、口臭に対して積極的に取り組むべき時代を迎えているといえる。これらの疾患は共通して口腔内細菌群による感染症といえる。よって、前記細菌群の簡便、安価な検出方法は病気の診断・治療に必須であり、そのニーズは高い。
歯周病患者が口臭を有する割合が高いことから、歯周病と口臭の関係が以前から指摘されてきた。Miyazakiらは、18〜64歳の2,672名の被験者について、歯および歯周組織の健康状態や清掃状態などを調べるのと同時に、呼気中に含まれる揮発性硫化物を、ポータブルサルファイドモニターを用いて測定している。その結果、呼気中の揮発性硫化物量は、歯周組織の健康状態と舌苔の付着量に相関することが明らかになった(非特許文献1)。また歯周ポケットが深い群(プロービングデプス、4mm以上)やプロービング時出血が認められる群は、そうでない群と比較して、高濃度の揮発性硫化物が歯肉溝から検出されることも明らかになっている(非特許文献2)。以上のことから、歯周病原細菌による口臭原因物質の産生能についていくつかの報告がなされており、なかでも歯周病患者の呼気に顕著に検出されるメチルメルカプタンは、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)やフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、トレポネマ デンティコラ(Treponema denticola)などの偏性嫌気性菌の有するホモシステイン分解酵素がメチオニンを分解した結果生じる物質であることが報告されている(非特許文献3〜5)。これらの菌はホモシステイン分解能以外にも顕著なシステイン分解能を示すことが報告されている。
一方で、歯周病原細菌以外の細菌においても顕著なシステイン分解能を有する細菌の存在も報告されている。Yoshidaらは、グラム陽性細菌であるストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)が高いシステイン分解能を示すことを明らかにしている(非特許文献6)。この菌の有するシステイン分解酵素が赤血球に含まれるヘモグロビンを修飾し溶血に到らせること(非特許文献7)、さらに本菌が膿瘍部位から高頻度に検出されることなどから、膿瘍形成の有力な原因菌として注目されている。
口腔感染症の診断は臨床症状、画像診断、細菌学的検査を効果的に組み合わせて行う必要があるが、実際に菌を分離・同定する細菌培養法は、部位により検体採取が容易でないこと、細菌の種類によっては検出率が必ずしも高くないこと、培養にある程度時間がかかることなどから限界がある。これらのデメリットを解消するために開発されたのが口腔感染症関連細菌の遺伝子検査法であり、なかでもポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いた検出方法についての研究が数多く報告されている。しかしながら、サーマルサイクラーなどの高額な装置が必要であること、検出過程が別途必要であること、またチェアサイドで行えるような簡便性に欠くこと、さらに1試験あたりのコストが高価であること等のデメリットについては解決されないままである。そこで、PCR法より簡易、迅速、精確な遺伝子検査法として近年Loop-mediated Isothermal Amplification(LAMP)法が開発されたが、コスト面の改善が不十分であること、また検出感度が極めて高いため、ごく微量に菌のDNAが残存している病変部位と、菌が活発に増殖している状態の部位との区別がかえって困難であるという問題がある。口臭の検査については、官能試験とガスクロマトグラフィー法が主に用いられている。官能試験は臭いの程度を試験者によって判定するものであり、定量性に乏しく、結果の評価に対する患者の満足度は装置や検査試薬を使用するものと比較して劣る。一方、ガスクロマトグラフィー法は直接口臭原因物質を定量するものであり、信頼性は高いが設備や維持費が高額であり、一般診療所向きではない。
菌の有する酵素活性を指標とした検査試薬としては、サンスター株式会社の「ペリオチェック(登録商標)」がすでに商品化されている。これは歯周病原細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(旧名バクテロイデス・ジンジバリス)やトレポネマ デンティコラなどの有するペプチダーゼ活性を検出することで菌の存在を判定するというものである(特許文献1)。しかし、歯周病原細菌のなかには同様のペプチダーゼ活性を有さないものもあることや、検出試薬に別の酵素が含まれるために使用期限が短いこと、さらに試薬が高価であることなど、一般開業医が検査目的で利用するにはまだまだ多くの問題点がある。
特開平1−144997号公報 Miyazaki, Hら、「J. Periodontol」1995年、第66巻、679-684. Coil, J. M.ら、「J. Clin. Dent.」、1992年、第3巻、97-103. Yoshimura, M.ら、「Infect. Immun.」、2000年、第68巻、6912-6916. Yoshimura, M.ら、「FEBS Lett.」、2002年、第523巻、119-122. Fukamachi, H.ら、「Biochem. Biophys. Res. Commun.」2005年、第331巻、127-131. Yoshida, Y.ら、「Biochem. Biophys. Res. Commun.」、2002年、第300巻、55-60. Yoshida, Y.ら、「Microbiology.」、2002年、第148巻、3961-3970.
本発明の課題は、迅速、特異的、安価かつ簡便な、歯科臨床現場で実用可能な口腔細菌、好ましくは口腔感染症関連細菌の迅速検出系を提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑み、口腔細菌、特に口腔感染症関連細菌に高頻度にみられるホモシステイン分解酵素およびシステイン分解酵素に着目し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)検体中のホモシステインおよび/またはシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、口腔細菌の検出方法。
(2)前記口腔細菌が、歯周病原細菌、口臭原因物質産生細菌、根管内感染細菌または根尖病巣細菌である、(1)記載の検出方法。
(3)前記酵素活性の測定が硫化水素とビスマスとの反応により生じた呈色の測定である(1)または(2)に記載の検出方法。
(4)口腔内から採取した試料中のホモシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、歯周病原細菌の同定方法。
(5)口腔内から採取した試料中のシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、歯髄炎、根尖性歯周炎または根管内感染の病原細菌の同定方法。
(6)前記酵素活性の測定が硫化水素とビスマスとの反応により生じた呈色の測定である(4)または(5)に記載の同定方法。
(7)口腔内から試料を採取する工程、
前記採取した試料を、ビスマスとホモシステインまたはシステインとを含む反応液に加えて保温する工程、
前記保温工程後の反応液の呈色を測定する工程、ならびに
前記測定結果に基づいて、口腔内に存在する口腔細菌群を識別する工程
を含む、口腔細菌の検出方法。
(8)前記口腔細菌群が高ホモシステイン分解活性群、中ホモシステイン分解活性群、高システイン分解活性群および中システイン分解活性群から構成されるものである、(7)に記載の検出方法。
(9)前記高ないし中ホモシステイン分解活性群が、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、プレボテラ・インターメディア、トレポネマ・デンディコラおよびタネレラ・フォーサイシアである(7)に記載の検出方法。
(10)前記高ないし中システイン分解活性群が、ストレプトコッカス・アンギノーサス、プレボテラ・ニグレスセンスおよびエンテロコッカス・フェカーリスである(7)に記載の検出方法。
(11)口臭、歯周病、歯髄炎または根管内感染の治療の指標として用いられる(1)〜(3)、(7)〜(10)のいずれか1つに記載の検出方法または(4)〜(6)のいずれか1つに記載の同定方法。
(12)検体中のホモシステインまたはシステイン分解酵素活性を測定することにより口腔細菌を検出するための試薬であって、ビスマスとホモシステインまたはシステインを含む試薬。
(13)さらに界面活性剤を含む(12)に記載の試薬。
(14)口腔内から試料を採取するための採取手段と、(12)または(13)に記載の試薬とを含む、口臭、歯周病、歯髄炎または根管内感染の診断用キット。
本発明による口腔細菌の検出方法は、採取した検体または試料を反応液中で一定時間加温することにより行われ、口腔細菌の存否の判定は肉眼での観察もしくは分光光度計を用いた吸光度の測定によって可能であることから、従来の方法と比較してもはるかに簡便かつ迅速である。また、本発明による歯周病、歯髄炎または根管内感染の病原細菌の同定方法も、同様に簡便かつ迅速に病原細菌の存否を判定できる。また、本発明による歯周病、歯髄炎、根管内感染または口臭の検出方法も、同様に簡便かつ迅速に当該疾患の有無を検出できる。さらに、本発明の検出方法及び同定方法に必要な試薬は非常に安価であり、広く一般に用いられる検出薬として応用価値が非常に高い。よって、本発明の検出方法、同定方法、試薬およびキットは、歯周病、歯髄炎、根管内感染、口臭などの口腔感染症を患う患者に、迅速、簡便、安価かつ精確な診断を提供でき、該感染症の早期発見・治療などに非常に有用である。
図1は、口腔細菌について、それぞれのホモシステインおよびシステイン分解酵素活性を座標として、それぞれ酵素活性が高い群、中間の群、低い群に配置した図である。 図2は、ビスマス反応液を用いた酵素活性の検出結果と反応液中の菌数との相関性を示すグラフである。 図3は、反応時間に対する、反応液の吸光度の経時的変化を示す。 図4は、各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性をそれぞれ30分後および60分後に測定した結果を示す。 図5は、各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性をそれぞれ30分後および60分後に測定した結果を示す。 図6は、各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性をそれぞれ30分後および60分後に測定した結果を示す。 図7は、各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性をそれぞれ30分後および60分後に測定した結果を示す。 図8は、各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性をそれぞれ30分後および60分後に測定した結果を示す。 図9は、各温度条件に対する反応液の405nmにおける吸光度を経時的に示したグラフである。横軸は温度を、縦軸は吸光度を示す。 図10は、各pH条件に対する反応液の405nmにおける吸光度を経時的に示したグラフである。横軸はpHを、縦軸は吸光度を示す。 図11は、各濃度のTriton X−100を添加した場合の、反応液の405nmにおける吸光度を経時的に示したグラフである。横軸はTriton X−100の濃度を、縦軸は吸光度を示す。 図12は、ペーパーポイントを用いて採取した検体についての再現性を示したグラフである。横軸はpHを、縦軸は吸光度を示す。 図13は、水酸化ナトリウムを最終濃度が0.1、0.15、0.2Nになるように添加した場合の、反応液の405nmにおける吸光度を経時的に示したグラフである。 図14は、参考例1において、本発明の検出方法に及ぼすヒト由来組織の影響について調べたグラフである。 図15は、ペーパーポイントを用いて採取した検体のホモシステイン分解酵素活性について、採取した患者の歯周ポケットの深さと吸光度の相関性を示したグラフである。横軸は歯周ポケットの深さを、縦軸は吸光度を示す。 図16は、ペーパーポイントを用いて採取した検体のシステイン分解酵素活性について、採取した患者の歯周ポケットの深さと吸光度の相関性を示したグラフである。横軸は歯周ポケットの深さを、縦軸は吸光度を示す。
(口腔細菌の検出方法)
本発明の口腔細菌の検出方法(以下、本発明の検出方法ともいう)は、検体中のホモシステインまたはシステイン分解酵素活性を測定することにより、検体中に含まれる口腔細菌、好ましくは口腔感染症関連細菌を検出するものである。
ホモシステインおよびシステインは、それぞれホモシステイン分解酵素及びシステイン分解酵素により分解され硫化水素を生じる。
ホモシステイン分解酵素は一般にはL−メチオニン−α−デアミノ−γ−メルカプトメタン−リアーゼとして知られる酵素であり、メチオニンを基質としてメチルメルカプタンを産生することが知られているが、最近ではメチオニンよりホモシステインをよく分解することが報告されている。反応式は以下の通りである。
L−ホモシステイン→硫化水素+α−ケト酪酸+アンモニア
L−メチオニン→メチルメルカプタン+α−ケト酪酸+アンモニア
また、システイン分解酵素はβC−Sリアーゼとして知られる酵素であり、その反応式は以下の通りである。
L−システイン→硫化水素+ピルビン酸+アンモニア
本発明の検出方法は、上記の酵素学的性質を利用して、検体中のホモシステインおよび/またはシステイン分解酵素活性を、酵素反応によって生じる硫化水素を測定することにより行うものである。生じた硫化水素を測定する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
好ましい態様として、硫化水素の測定方法としては、Claessonら(Claesson, R.ら、Oral Microbiol. Immunol. 1990年、第5巻、137-142参照)の方法に改良を加えたものが挙げられる。具体的には、まず、検体(口腔内から採取した試料)をビスマス反応液に加える。酵素反応により硫化水素が生じると、ビスマスが硫化水素と反応して黒色の硫化ビスマスに転じる。一定時間加温後、反応液の黒変を観察するか、あるいは405nmにおける吸光度を測定することにより、目的の口腔細菌、好ましくは口腔感染症関連細菌を検出できる。
本発明の検出方法は、基質としてメチオニンを用いて生成したメチルメルカプタンを測定することにより行ってもよい。メチルメルカプタンの検出としては、直接検出する方法としてガスクロマトグラフがあげられる。また、間接的に検出する方法として、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノン ヒドラゾンを含む試薬を用い、メチルメルカプタン生成反応の副産物であるα−ケト酪酸の生成を335nmにおける吸光度を測定することで検出する方法がある。
(口腔細菌)
本発明において、口腔細菌とは広く口腔内に存在する細菌のことを指す。また口腔感染症関連細菌とは、口腔細菌のなかでも特に口腔感染症を引き起こす原因となる細菌(病原細菌)のことをいい、例えば、歯周病原細菌、口臭原因物質産生細菌、根管内感染細菌、根尖病巣細菌などが挙げられる。口腔細菌の具体的な例示としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・デンティコラ(Prevotella denticola)、プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、プレボテラ・パレンス(Prevotella pallens)、プレボテラ・ロシェイ(Prevotella loescheii)、プレボテラ・ベロラリス(Prevotella veroralis)、プレボテラ・ビビア(Prevotella bivia)、プレボテラ・ニグレスセンス(Prevotella nigrescens)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococus gordonii)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)などが挙げられる。
これらの口腔細菌について、ホモシステインおよびシステイン分解酵素活性が高い群、中間の群、低い群に分けて表にしたものを図1に示す。高ホモシステイン分解酵素活性および高システイン分解酵素活性を示したポルフィロモナス・ジンジバリスおよびフソバクテリウム・ヌクレアタムは、歯周病原細菌として知られている菌である。また、これらの菌の有するホモシステイン・システイン分解酵素によって生じる硫化水素や同酵素によってメチオニンから生じるメチルメルカプタンが口臭の強度と相関があるという報告もなされている(Persson, S.ら、Oral Microbiol. Immunol. 1990年、第5巻、195-201参照)。同様に、中等度のホモシステイン分解酵素活性を示したプレボテラ・インターメディアおよび中等度のシステイン分解酵素活性を示したプレボテラ・ニグレスセンスも歯周病患者のポケットから高頻度に検出されることが知られている。一方、高システイン分解酵素活性を示したストレプトコッカス・アンギノーサスは膿瘍部位から頻繁に検出される菌であり(Whitworth, J. M.ら、J. Med. Microbiol. 1990年、第33巻、135-151参照)、膿瘍形成との関与が示唆されている。また、中等度のシステイン分解酵素活性を示したエンテロコッカス・フェカーリスは根尖病巣を有する歯牙のうち、およそ40%の根管内から検出されることが報告されている(Pinheiro, E.T.ら、Oral Microbiol. Immunol.2003年、第18巻、100-103参照)。歯髄炎は、ストレプトコッカス・アンギノーサスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム、ポルフィロモナス・ジンジバリスやトレポネマ・デンティコラなどの複合感染によって引き起こされるという報告がある(奥田克爾、最新口腔微生物学、一世出版、2005年、402-404参照)。本発明は、ホモシステイン分解活性とシステイン分解活性の測定を組み合わせることにより、口腔細菌を上述の群に簡便に分類することもできる。
(歯周病、歯髄炎または根管内感染の病原細菌の同定方法)
本発明によって、口腔内から採取した試料中のホモシステイン分解酵素活性を、上記の検出方法の場合と同様に測定して、歯周病の病原細菌を同定する方法が提供される。
さらに、本発明により、口腔内から採取した試料中のシステイン分解酵素活性を上記の検出方法の場合と同様に測定して、歯髄炎、根尖性歯周炎または根管内感染の病原細菌を同定する方法を提供することができる。
口腔内より試料を採取する方法としては既存の方法を用いることができ、例えば、歯周ポケットの歯肉溝滲出液や唾液は市販のペーパーポイント(紙縒りの硬い棒状のもの)およびろ紙などを用いて、また歯垢は綿棒およびキュレットなどを用いて採取できる。さらに、舌表面から舌苔を採取する場合は、ろ紙およびへらなどを用いてもよい。
採取した試料はそのまま本発明の検出方法に供してもよいし、実施例に説明するようにして培養した後、その培養液(菌液)を本発明の検出方法に供してもよいが、検出時間短縮のためには前者が好ましい。
以下、硫化水素検出系について詳述する。
(反応液)
本発明において、反応液とは、最も基本的にはビスマスとホモシステインまたはシステインとを含むものである。
ビスマスとしては、溶液中で硫化水素と反応しうる化合物を限定なく用いることができ、例えば、塩化ビスマス、酢酸ビスマス、リン酸ビスマス、フッ化ビスマスなどが挙げられる。
ホモシステインについては、L体を用いるのが望ましいが、DL体を用いてもよい。またシステインについても、L体を用いるのが望ましいが、DL体を用いてもよい。
反応液には緩衝剤が含まれていてもよく、緩衝剤としては、通常用いるものであれば特に限定はなく、例えば、トリエタノールアミン緩衝液(例:トリエタノールアミン塩酸塩など)、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液などが挙げられる。
また、反応液には、細菌の細胞膜を溶解して酵素を菌体外に放出させるため、さらに界面活性剤が含まれていることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、Triton X−100、ノニデットP40、Tween 20、などが挙げられ、好ましくはTriton X−100を用いる。
反応液のpH調整にはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などを用いる。
反応液に、ホモシステインとシステインのどちらかを含有させて、2種類の反応液を準備する。口腔細菌の有するそれぞれの分解酵素活性に応じて反応液を選択する。
好ましくは、ホモシステイン分解酵素活性検出用反応液ではpH8〜pH9.5の範囲、システイン分解酵素活性検出用反応液ではpH8.0〜pH9.0の範囲である。
反応液中、ビスマスの最終濃度は、通常0.1〜5.0mM、好ましくは0.5〜2.0mMであり、ホモシステインまたはシステインの最終濃度は、通常10〜40mM、好ましくは15〜25mMである。これらの濃度を下回ると反応が十分に起こらず、上回るとバックグラウンドの上昇が見られる。またこれらの濃度の範囲であれば、試料中の細菌が有する酵素と基質の反応、及び反応産物である硫化水素とビスマスの呈色反応が定量的に進行する。反応液が界面活性剤を含む場合、その濃度は、通常0.1〜2.0%、好ましくは0.2〜0.5%である。
(保温工程)
次に、試料を反応液に加える場合の最適条件について述べる。
検体と反応液の接触は、例えば、試験管、マイクロチューブ、セル、バイアル瓶などの中で行う。
検体の培養液(菌液)を反応液に加える場合、反応液500μlに対し、菌数がおよそ0.3〜2.5×10個となるように懸濁するのが好ましい。
また、検体を採取したペーパーポイントを直接反応液に浸して接触させる場合、1回の測定で用いる反応液は、通常0.5〜1mlである。
ホモシステイン分解酵素活性について見る場合は、保温温度は35℃〜50℃の範囲の比較的高温条件が適しており、通常30分以上、好ましくは60分程度反応を進行させる。これに対し、システイン分解酵素活性について見る場合は、30℃〜40℃程度が適しており、通常30分以上、好ましくは60分程度反応を進行させる。
(測定工程)
本発明の検出方法では、上記条件で30分以上、好ましくは60分程度、反応を進行させた後、反応液の吸光度を測定するか、あるいは反応液の黒変を目視により観察して反応液の呈色を測定し、口腔細菌・歯周病原菌群の存在を識別する。
反応液の吸光度を測定する場合、その測定方法は特に限定されず、分光光度計などの既存の方法を用いて測定する。具体的には、例えば、反応が十分に進行した後、分光光度計を用いて、405nmにおける反応液の吸光度を測定する。
また、反応液の吸光度を測定する場合、反応液の吸光度はそのままの状態では経時的に上昇するため、反応終了直後に測定が行えなかった場合を想定し、反応を停止させ、一定時間、吸光度を安定な状態に保つことが好ましい。この場合、水酸化ナトリウムを添加して反応を停止させる。添加する水酸化ナトリウムの濃度は、最終濃度として0.1〜0.3N、好ましくは、0.15〜0.2Nである。
また、肉眼で反応液の黒変を観察する場合、反応液の黒変の度合を、例えば日本工業規格(JIS Z 8721)に準拠した日本規格協会発行の標準色票やその他のカラーシートなどと比較して判定してもよい。
判定の方法としては、ホモシステインを含む反応液が呈色していれば、歯周病原細菌である偏性嫌気性菌感染であるとされる。また、システインを含む反応液が呈色していれば、歯髄炎、根尖性歯周炎および根管内感染の原因となる細菌感染があると判定される。ホモシステインおよびシステインを含む反応液の呈色の度合によって、口臭の度合も客観的に評価することができるが、ホモシステインを含む反応液の呈色の度合が強い方が、口臭が重度であると判定される。
このようにして検体中のホモシステインおよびシステイン分解酵素活性を測定することにより、歯周病、歯髄炎、根尖性歯周炎および根管内感染の有無を簡便に診断することができる。
(検出用試薬)
さらに、本発明により、検体中のホモシステインまたはシステイン分解酵素活性を測定することにより口腔細菌、好ましくは口腔感染症関連細菌を検出するための試薬が提供される。本発明の試薬は、ビスマスとホモシステインまたはシステインを含むものである。さらに、本発明の試薬には界面活性剤が含まれていてもよい。
本発明の試薬は基質となるホモシステインおよびシステインに関しては公知の方法により乾燥粉末化または顆粒化した固形の形態で保存するのが望ましく、用時に緩衝液(溶媒)で調製して使用するのが望ましい。
(キット)
またさらに、本発明は、口腔内から検体をそれぞれ採取するための採取手段と上記検出用試薬とを含む、口臭、歯周病、歯髄炎または根管内感染の診断用キットを提供する。ここで、患部としては上述した通り、歯周ポケット、舌表面、歯表面などが挙げられ、検体としては歯肉溝滲出液、唾液、歯垢、舌苔などが挙げられ、採取手段としてはペーパーポイント、ろ紙、綿棒およびキュレットなどが挙げられる。また、本発明は、さらに根管内から菌体を採取するためのペーパーポイントと、上記検出用試薬とを含む、口腔細菌の有無を検出することにより根管治療における治療効果判定用キットを提供する。これらのキットには、試薬の黒変を観察する場合に用いるカラーシートが含まれていてもよい。
(用途)
本発明の検出方法およびキットを用いることにより、多様な口腔細菌、とりわけ歯周病原細菌などの口腔感染症関連細菌を検出することができるため、本発明の検出方法およびキットは口腔感染症、具体的には、歯周炎(慢性歯周炎、壊死性潰瘍性歯周炎、妊娠性歯周炎、根尖性歯周炎など)、歯髄炎(急性化膿性歯髄炎、慢性潰瘍性歯髄炎、歯根嚢胞など)、根管内感染の診断・予防に対し非常に有用である。また、本発明の検出方法およびキットは、前記疾患の治療の指標として用いられるほか、根管治療における治療効果の判定、口臭の程度の測定など、口腔内の様々な疾患に係る問題に対応することも可能である。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を限定するものではない。
本発明の実施例に用いた各菌株を表1に示す。
Figure 2007052635
また、本発明の実施例で用いたビスマス反応液は、0.5mMの塩化ビスマス、10mMのEDTA、および20mMのDL−ホモシステインもしくは20mMのL−システインを含む200mMトリエタノールアミン塩酸塩である。
実施例1:酵素活性の検出結果と反応液中の菌数との相関性
ビスマス反応液を用いた酵素活性の検出結果が反応液中の菌数と相関することを確認するために、ポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277株)の菌液を段階希釈し、10×10、5×10、2.5×10、1.25×10、0.63×10、0.31×10、0.16×10および0.07×10 CFU/mlになるようにホモシステインを含むビスマス反応液(pH8.0)で懸濁し、37℃で60分加温したのち405nmにおける吸光度を測定した。
その結果、図2に示すように、反応液中の菌数に相関して吸光度が上昇することが明らかになった。また、吸光度の上昇は、図3に示すように反応時間に相関することがわかった。
実施例2:各口腔細菌の有するホモシステインおよびシステイン分解酵素活性の測定
各口腔細菌について、それぞれのホモシステインおよびシステイン分解酵素活性を比較した。各菌はBrain Heart Infusion 1リットルあたりに5gのYeast Extract、1gのL−システイン塩酸塩、5mgのヘミンおよび1mgのビタミンKを含む培地(enriched BHIブロス)を用いて、37℃で嫌気的に一昼夜培養した後、定常期に達した菌液を新鮮な培地に植え継ぎ、対数増殖期に達するまで培養した。その後、培養液を遠心分離して上清を取り除き、新鮮な培地を用いて600nmにおける吸光度が1.0になるように調整した。こうして得られた菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いたのち、菌体を1%Triton X−100を含むビスマス反応液(pH8.0)500μlで懸濁し、37℃で30分または60分反応させたのち405nmにおける吸光度を測定した。
結果を図4〜図8に示す。この結果により、ホモシステインおよびシステイン分解酵素活性の検出が口腔細菌の存在を知る指標として有用であることが明らかになった。
実施例3:反応条件の検討
(1)反応温度
ポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277株)をenriched BHIブロスを用いて37℃で嫌気的に一昼夜培養した後、定常期に達した菌液を新鮮な培地に植え継ぎ、対数増殖期に達するまで培養した。その後、培養液を遠心分離して上清を取り除き、新鮮な培地を用いて600nmにおける吸光度が1.0になるように調整した。上記の菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いたのち、菌体を500μlのビスマス反応液(pH8.0)で懸濁した。その後25℃から50℃の範囲で条件を変えて加温しつつ、405nmにおける吸光度を経時的に観察した。
結果を図9に示す(図中、縦軸は吸光度を表す)。これより、ホモシステイン分解酵素活性については、反応温度が35℃から50℃の範囲の、比較的高温条件下での反応が適していることがわかった。これに対し、システイン分解酵素活性は30℃から40℃程度が適していることがわかった。
(2)反応pH
(1)で記した方法で調製した菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いたのち、菌体をpH7.0からpH9.5までのビスマス反応液500μlで懸濁し、37℃で加温しながら405nmにおける吸光度を経時的に観察した。
結果を図10に示す(図中、縦軸は吸光度を表す)。これより、ホモシステイン分解酵素活性はpH8からpH9.5の範囲が反応に適していることが明らかになった。これに対して、システイン分解酵素活性の検出に適した反応液のpHは、pH8.0からpH9.0であった。
(3)界面活性剤
ホモシステイン分解酵素は菌体内酵素であるため、何らかの方法で菌を溶菌させて、細胞内の酵素が基質と直接接触できるようにした方が検出効率が良いと考えられる。そこで、等量の菌体を含む反応液中に界面活性剤等を添加した場合と添加しない場合とで、吸光度の上昇を比較することにした。(1)で記載した方法で調製した菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いたのち、0.1%から2%のTriton X−100を含むビスマス反応液もしくは含まないビスマス反応液500μl(pH8.0)で懸濁し、37℃で加温し405nmにおける吸光度を経時的に観察した。
結果を図11に示す(図中、縦軸は吸光度、横軸はTriton X−100濃度を表す)。反応液にTriton X−100を添加した場合において、添加しない場合より検出効率が改善されることが明らかになった。
実施例4:ペーパーポイントを用いて採取した検体についての再現性の確認
実際に患者から検体を採取する際にはペーパーポイントなどの採取手段を用いて行う。そこで、ペーパーポイントに付着した菌体を反応液に浸した場合でも、直接菌体を反応液に懸濁した場合と同じ結果が得られることを確認するために以下の実験を行った。まず、600nmにおける吸光度が1.0になるように調整した菌液10mlを遠心分離し、菌体を回収したのち新鮮な培地500μlで懸濁した。この菌液にペーパーポイントを10秒浸したのち、直ちに0.5%のTriton X−100を含むpH7.0からpH9.5までのビスマス反応液500μlに浸した。その後37℃で加温しながら405nmにおける吸光度を経時的に観察した。
結果を図12に示す(図中、縦軸は吸光度を表す)。この結果より、ペーパーポイントに菌を吸着させたのちビスマス反応液に浸すという方法でも酵素活性が検出できることを確認した。また、ペーパーポイントを用いて採取した検体についても、反応液にTriton X−100を添加することによって検出効率を倍近く向上させることができることが明らかになった。
実施例5:反応停止条件の検討
実施例3の(1)で記した方法で調製した菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いたのち、菌体を500μlのビスマス反応液(pH8.0)で懸濁し、37℃で20分間加温した。その後水酸化ナトリウムを最終濃度が0.1、0.15、0.2規定になるように添加し、室温で405nmにおける吸光度を経時的に観察した。
結果を図13に示す。図13によれば、最終濃度0.1Nでは反応は停止せず、0.15Nでは値は小さいものの、ゆるやかな吸光度の上昇がみられた。これに対し、最終濃度0.2Nの水酸化ナトリウムを添加した場合では、3日間にわたり安定した測定値を得ることができた。
参考例1:ヒト由来組織による影響についての検討
歯周ポケットなどの実際に患者からの検体を採取する部位では、しばしば炎症による出血や剥離した上皮細胞などの存在が認められる。歯周病に罹患した患者の歯周ポケットは易出血性であり、検体を採取する際に血液で汚染される可能性が高い。そこで、ヒト由来の細胞が酵素活性の検出に影響を与えるかをしらべるため、末梢血およびヒト歯肉線維芽細胞由来細胞株を反応液に添加し、添加しなかった場合との吸光度の比較を行った。
まず、ポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277株)をenriched BHIブロスを用いて37℃で嫌気的に一昼夜培養した後、定常期に達した菌液を新鮮な培地に植え継ぎ、対数増殖期に達するまで培養した。その後、培養液を遠心分離して上清を取り除き、新鮮な培地を用いて600nmにおける吸光度が1.0になるように調整した。上記の菌液500μlを遠心分離して上清を取り除いた。こうして得られた菌体を、ヒト末梢血を0.5もしくは1μl、またはヒト歯肉線維芽細胞由来細胞株であるHSC−2 1×10個をあらかじめ加えたビスマス反応液(1% Triton X−100を含む)500μlで懸濁した。その後37℃で30分間加温し、405nmにおける吸光度を測定した。なお、末梢血は健康な成人よりヘパリン存在下で採血し、HSC−2は10%牛血清、2mM L−グルタミン、100μg/mlストレプトマイシンおよび6μg/mlペニシリンを含むRPMI 1640培地にて培養したものを用いた。
結果を図14に示す。この結果により、反応液中に1/500量の血液が含まれる場合では、血液自体の色により全体に数値が底上げされた状態になったが、1/1000量の血液および1×10個の細胞が含まれる場合においては、血液および細胞の混在がない場合の値と比較して、硫化ビスマス生成を指標とするホモシステインおよびシステイン分解酵素活性の検出に影響を与えないことがわかった。
実施例6:歯周ポケットの深さとビスマス反応の吸光度の相関性の検討
本検出系と歯周病の病態との関連を検討するため、歯肉溝浸出液を採取して、歯周ポケットの深さとホモシステインおよびシステイン分解酵素活性との関係を検討した。ヒト歯肉溝浸出液の採取方法は以下の通りであった。まず、口腔内を6画分に分け、各画分の最も深いポケットをサンプル採取対象とした。次に、サンプル採取対象となる歯周ポケットについて、周囲の唾液を除去した後、ペーパーポイントを挿入し10秒間静置後、0.5% TritonX−100を含むビスマス反応液に入れ、ホモシステイン分解酵素活性の検出については45℃で60分、システイン分解酵素活性の検出については37℃で60分反応させ、405nmにおける吸光度を測定した。
九州歯科大学附属病院外来患者12名69部位についての解析結果を図15、16に示す。図15はホモシステイン分解活性と歯周ポケットの深さについて、図16はシステイン分解活性と歯周ポケットの深さについての解析結果である。いずれの酵素活性についてもポケット深さが深くなるほど、酵素活性が高いことが明らかになった。特に、ホモシステイン分解活性について、その傾向が強いことが明らかになった。
本発明によれば、歯科臨床現場で実用可能な口腔細菌の迅速検出系を提供し、迅速、特異的、安価かつ簡便に口腔感染症関連細菌を検出することができる。
本出願は、日本で出願された特願2005−318312(出願日:2005年11月1日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (14)

  1. 検体中のホモシステインおよび/またはシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、口腔細菌の検出方法。
  2. 前記口腔細菌が、歯周病原細菌、口臭原因物質産生細菌、根管内感染細菌または根尖病巣細菌である、請求項1記載の検出方法。
  3. 前記酵素活性の測定が硫化水素とビスマスとの反応により生じた呈色の測定である請求項1または2に記載の検出方法。
  4. 口腔内から採取した試料中のホモシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、歯周病原細菌の同定方法。
  5. 口腔内から採取した試料中のシステイン分解酵素活性を測定することを特徴とする、歯髄炎、根尖性歯周炎または根管内感染の病原細菌の同定方法。
  6. 前記酵素活性の測定が硫化水素とビスマスとの反応により生じた呈色の測定である請求項4または5に記載の同定方法。
  7. 口腔内から試料を採取する工程、
    前記採取した試料を、ビスマスとホモシステインまたはシステインとを含む反応液に加えて保温する工程、
    前記保温工程後の反応液の呈色を測定する工程、ならびに
    前記測定結果に基づいて、口腔内に存在する口腔細菌群を識別する工程
    を含む、口腔細菌の検出方法。
  8. 前記口腔細菌群が高ホモシステイン分解活性群、中ホモシステイン分解活性群、高システイン分解活性群および中システイン分解活性群から構成されるものである、請求項7に記載の検出方法。
  9. 前記高ないし中ホモシステイン分解活性群が、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、プレボテラ・インターメディア、トレポネマ・デンディコラおよびタネレラ・フォーサイシアである請求項7に記載の検出方法。
  10. 前記高ないし中システイン分解活性群が、ストレプトコッカス・アンギノーサス、プレボテラ・ニグレスセンスおよびエンテロコッカス・フェカーリスである請求項7に記載の検出方法。
  11. 口臭、歯周病、歯髄炎または根管内感染の治療の指標として用いられる請求項1〜3、請求項7〜10のいずれか1つに記載の検出方法または請求項4〜6のいずれか1つに記載の同定方法。
  12. 検体中のホモシステインまたはシステイン分解酵素活性を測定することにより口腔細菌を検出するための試薬であって、ビスマスとホモシステインまたはシステインを含む試薬。
  13. さらに界面活性剤を含む請求項12に記載の試薬。
  14. 口腔内から試料を採取するための採取手段と、請求項12または13に記載の試薬とを含む、口臭、歯周病、歯髄炎または根管内感染の診断用キット。
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