JPWO2007046426A1 - Atr阻害剤 - Google Patents

Atr阻害剤 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2007046426A1
JPWO2007046426A1 JP2007541012A JP2007541012A JPWO2007046426A1 JP WO2007046426 A1 JPWO2007046426 A1 JP WO2007046426A1 JP 2007541012 A JP2007541012 A JP 2007541012A JP 2007541012 A JP2007541012 A JP 2007541012A JP WO2007046426 A1 JPWO2007046426 A1 JP WO2007046426A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
atr
cells
atm
sisandrin
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007541012A
Other languages
English (en)
Inventor
浩志 西田
浩志 西田
康雄 濱森
康雄 濱森
小西 徹也
徹也 小西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NLLGATA TLO LNC
Original Assignee
NLLGATA TLO LNC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NLLGATA TLO LNC filed Critical NLLGATA TLO LNC
Publication of JPWO2007046426A1 publication Critical patent/JPWO2007046426A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07DHETEROCYCLIC COMPOUNDS
    • C07D317/00Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms
    • C07D317/08Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3
    • C07D317/44Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3 ortho- or peri-condensed with carbocyclic rings or ring systems
    • C07D317/70Heterocyclic compounds containing five-membered rings having two oxygen atoms as the only ring hetero atoms having the hetero atoms in positions 1 and 3 ortho- or peri-condensed with carbocyclic rings or ring systems condensed with ring systems containing two or more relevant rings
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/075Ethers or acetals
    • A61K31/085Ethers or acetals having an ether linkage to aromatic ring nuclear carbon
    • A61K31/09Ethers or acetals having an ether linkage to aromatic ring nuclear carbon having two or more such linkages
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/335Heterocyclic compounds having oxygen as the only ring hetero atom, e.g. fungichromin
    • A61K31/357Heterocyclic compounds having oxygen as the only ring hetero atom, e.g. fungichromin having two or more oxygen atoms in the same ring, e.g. crown ethers, guanadrel
    • A61K31/36Compounds containing methylenedioxyphenyl groups, e.g. sesamin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

本発明は、ATRプロテインキナーゼの阻害剤として有用な、各種シザンドリン類及びゴミシン類などの三環性化合物を有効成分として含有するATR阻害剤を提供することを目的とする。

Description

本発明は、ATR(ataxia−telangiectasia mutated and rad3−related)の活性を阻害するATR阻害剤に係り、詳しくは、三環性化合物を有効成分として含有するATR阻害剤に関する。
ATM(ataxia−telangiectasia mutated)及びATR(ataxia−telangiectasia mutated and rad3−related)プロテインキナーゼ(以下、単に、ATM及びATRとも称する。)は、細胞のDNA損傷に係る修復において、重要な役割を演じることが知られている(非特許文献1)。紫外線(UV)や電離放射線(IR)照射により、細胞は、DNA損傷を受け、チェックポイントシグナルカスケードが惹起され、DNA損傷を修復したりアポトーシスを起こすように、細胞周期をG1/S、中間S期及びG2/M期にアレスト(arrest)される。ATMを欠損するAT(ataxia−telangiectasia;血管拡張性失調症)患者由来の細胞は、G1/S及びG2/Mチェックポイントが欠落した発現型を示すため、IRに感受的である。従って、ATM及びその下流の経路は、染色体の維持に重要である。さらに、一過的又は安定的なATRの欠損により、染色体の安定性が著しく損なわれ、或いは初期胚の段階で致死に至る(非特許文献2)。興味深いことに、ATRによるp53タンパク(以下、単にp53と称する。)又はNBS1のリン酸化は、ATMの存在により遅延することが知られている。このことは、ATRがDNA損傷反応の点で、ATMの協調的な分子種であることを示唆する。事実、ATRは、DNA損傷から防御するのに中心的な役割を演じる。これらの事項は、ATM又はATR活性の制御は、染色体の安定性を保持するのに必要であるのみならず、化学療法や放射線治療などの抗癌治療への適用が可能であることを示すものである。
非特許文献3は、カフェイン(3,7−ジヒドロ−1,3,7−トリメチル−1H−プリン−2,6−ジオン)で補助した化学療法により、非増殖性の骨肉腫に係る腫瘍の切除が最小限ですむことを開示する。カフェインは、化学療法で惹起されたDNA損傷に反応してATM及びATRのプロテインキナーゼ活性を阻害すると考えられるが、カフェインは、相対的にATRよりもATMを阻害することが知られている。
近年、細胞にsiRNAをトランスフェクトしたり、組み換え体のキナーゼからキナーゼ活性部位を欠落させたタンパク質を過剰発現させるなどして、ATR及びATMの主要な役割の解明がなされている(非特許文献4乃至6)。しかしながら、ステーブル(stable)なATRのノックアウトマウスは致死的であるため、ATMに比較してATRの機能を報告した例はあまり知られていない。また、ATRの特異的な阻害剤が知られていない現状において、カフェインや、PI3キナーゼの阻害剤であるワートマンニンを用いて、化学的にATM及びATRのプロテインキナーゼ活性を阻害する研究が広く行われている。従って、ATRの特異的な阻害剤の発見により、DNA損傷応答反応における生化学的な情報、ひいては抗癌治療の研究に多くの利点がもたらされることになり、ATRの活性を阻害する薬物が望まれていた。
これらのなかで、ATM及びATRは、細胞におけるDNA損傷に対する反応の間、p53の15番目のセリン残基をリン酸化する。p53は、DNA損傷で誘導されるG1/Sチェックポイントにおいて、中心的な役割を演じる。近年の知見により、UV光を曝露した場合、p53の15番目のセリン残基が直接的にATM又はATRからリン酸化されてG1期での細胞周期停止が起こることが示されている。従って、p53の15番目のセリン残基のリン酸化は、UVで誘導したDNA損傷の後においてATM又はATRを起点としたG1/Sチェックポイントが機能しているか否かを評価する妥当な指標である。また、このリン酸化は、UVに対する損傷反応において、ATRの活性を反映するものである。G2/Mチェックポイントは、G1/Sと同様に、DNA損傷細胞において、ATRとATMとで制御される。G2/Mチェックポイントは、非常に重要であり、p53欠損又は突然変異腫瘍などの多くの癌細胞において良く保存されている。特に、p53の機能を欠いた細胞もまた、G2/Mチェックポイントの廃止は、DNA損傷に対して感受的である。事実、G2/Mチェックポイントに関連する場合、ATRは、分裂細胞の染色体維持に重要である。これらの結果により、ATRプロテインキナーゼ活性の阻害を含むG2/Mチェックポイントに係る一群を阻害することが抗癌治療の候補になると示唆される。
一方、五味子(Schisandrae Fructus)に由来する、各種シザンドリン類及びゴミシン類は、ジベンゾシクロオクタジン誘導体であり、生薬製剤として最もよく使用されている化合物群である。この化合物群の一つの有用性として、非特許文献8は、SMMC−7721肝臓癌細胞において、シザンドリンBがカスパーゼ−3依存性アポトーシスを誘導することを開示する。この化合物により腫瘍を含む多種類の細胞において、他のシグナル調節物質又は他の効果について、さらなる研究が望まれている。元来信じられているのは、中国における数千年の経験から、各種シザンドリン類及びゴミシン類を含む伝統的な生薬、五味子において、多くの可能性が残されている、ということである。抗癌剤の70%以上は、天然物由来であり、或いはより少ない副作用を期待された類似物である。本願出願人は、抗癌治療増感剤という観点で、各種シザンドリン類及びゴミシン類をDNA損傷に係る反応におけるシグナル伝達経路に適用することを想到した。
特開平7−206751号公報 特開平6−192133号公報 特開平2−48592号公報 特開平5−123184号公報 米国特許出願公開第2005/0282910号明細書 Shiloh Y著、"ATM and ATR: networking cellular responses to DNA damage"、Curr Opin.Genet.Dev.、2001年、11巻、71−7頁 Cortez Dら著、"ATR and ATRIP: partners in checkpoint signaling"、Science、2001年、294巻、1713〜6頁 Tsuchiya Hら著、"Caffeine−assisted chemotherapy and minimized tumor excision for nonmetastatic osteosarcoma."、Anticancer Res.、1998年、18巻、657〜66頁 Shackelford REら著、"The Ataxia telangiectasia gene product is required for oxidative stress−induced G1 and G2 checkpoint function in human fibroblasts."、J.Biol.Chem.、2001年、276巻、21951〜9頁 Wright JAら著、"Protein kinase mutants of human ATR increase sensitivity to UV and ionizing radiation and abrogate cell cycle checkpoint control."、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1998年、95巻、7445〜50頁 Shigeta Tら著、"Defective control of apoptosis and mitotic spindle checkpoint in heterozygous carriers of ATM mutations."、Cancer Res.、1999年、59巻、2602〜7頁 Sarkaria JNら著、"Inhibition of ATM and ATR kinase activities by the radiosensitizing agent, caffeine."、Cancer Res.、1999年、59巻、4375〜82頁 Wu YFら著、"Down−modulation of heat shock protein 70 and up−modulation of Caspase−3 during schisandrin B−induced apoptosis in human hepatoma SMMC−7221 cells"、World J.Gastroenterol、2004年、10巻、2944〜48頁 Tibbettsら著、Gene & Development、2000年、14巻、2989〜3002頁 Canmanら著、Science、、1998年281巻、1677〜9頁 Rouetら著、Proc.Natl.Acad.Scie.USA、1994年、91巻、6064〜8頁 Chem. Pharm. Bull.、2003年、51巻、11号、1233〜1236頁 Acta Pharmacologica Sinica、1998年、19巻、4号、313〜316頁
そこで、本発明は、ATRプロテインキナーゼの阻害剤として有用な、各種シザンドリン類及びゴミシン類などの三環性化合物を有効成分として含有するATR阻害剤を提供することを目的とする。
本発明によるATR阻害剤は、 下記式(1)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、 下記式(2)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(3)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(4)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(5)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(6)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(7)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(8)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(9)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明によるATR阻害剤は、
下記式(10)
に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
なかでも、本発明によるATR阻害剤として、上記式(1)乃至(5)に示す化合物を有効成分として含有することが好ましい。
本発明によるATR阻害剤において、前記ATR活性は、タンパクリン酸化活性であることが好ましい。
本発明によるATR阻害剤において、前記タンパクリン酸化活性は、細胞周期関連タンパクをリン酸化する活性であることが好ましい。
本発明によるATR阻害剤において、 前記細胞周期関連タンパクは、p53であることが好ましい。
本発明によるATR阻害剤において、 前記細胞周期関連タンパクは、Brca1及びChk1からなる群から選択されたものであることが好ましい。
本発明によれば、in vitroにおいてもin vivoにおいても、ATR活性を特異的に阻害することが可能となる。
UV照射したA549細胞におけるシザンドリンBによる生存率への影響を示すグラフである。 UV照射したA549細胞におけるシザンドリンBによる細胞周期に対する影響を示す図であって、(A)は、全細胞数に対するリン酸化ヒストンH3量を示す図であり、(B)は、リン酸化ヒストンH3量を指標として、全細胞に占める分裂細胞数の割合をグラフ化したものである。 電離放射線照射したA549細胞における分裂細胞数に対するシザンドリンBの影響を示すグラフである。 UV照射又は電離放射線照射したA549細胞におけるp53リン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響を示す図である。 UV照射したA549細胞におけるp53リン酸化に及ぼすシザンドリンBの濃度依存的影響を示す図である。 UV照射したA549細胞におけるp53リン酸化に及ぼす本発明によるATR阻害剤の影響を示す図である。 A549細胞における細胞周期に対するシザンドリンBの影響を示す図である。 シザンドリンBによるATR及びATMの有するリン酸化活性に及ぼす影響を示すグラフであって、(A)は、ATRに対応し、(B)は、ATMに対応するグラフである。 UV照射したAT2KY細胞における各種蛋白のリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響を示す図である。 ATR又はATM発現を阻害してUV照射したA549細胞における各種蛋白のリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響を示す図である。 A549細胞におけるMAPKのリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響を示す図である。
本発明によるATR阻害剤は、合成品、天然品など、種々の市販で利用可能な化合物を利用してもよく、特許文献1等に記載の公知の合成方法により製造したものであってもよく、さらに、五味子(Schisandra Chinensis)由来のFructus Schisandrae等の天然生薬から特許文献2等の公知の方法により抽出/精製したものであってもよい。
具体的には、上記式(1)で示すシザンドリンB(Schizandrin B;SchB)としては、特許文献2に記載の通り、五味子(Fructus Schisandrae)を、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤又はメタノールなどのアルコール系溶剤で加熱下一定時間抽出した後、カラムクロマトグラフィーにかけて得た非水溶性物質と水溶性物質の混合物を含む溶液を濃縮乾固し、これに水酸化カリウムとメタノールの混液を加えて鹸化した原料に、メタノールを加えて撹拌溶解した後、水酸化カリウム水溶液で溶解した後、上述のメタノールを留去し、目的物質である非水溶性物質を析出させて得たものであってもよい。
また、上記式(2)で示すゴミシンC(Gomisin C;GC)としては、上述の特許文献3で示す方法の通り、石油エーテルなどの低極性溶媒で抽出した後、さらに石油エーテル、n−ヘプタンなどの低極性水不溶性溶媒とメタノールなどの高極性水溶性溶媒とを用いた分配抽出を行ったのち、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどで目的物質を分離したものであってもよい。
また、上記式(3)で示すゴミシンG(Gomisin G;GG)としては、上述の非特許文献12に示す通り、Shizandra arisanensisの乾燥幹から酢酸エチルで抽出し、必要に応じてカラムクロマトグラフィーを用いて精製したものであってもよい。
また、上記式(4)で示すゴミシンH(Gomisin H;GH)としては、特許文献5に記載の通り、Schizandra chinensisに由来するものであってもよい。
また、上記式(5)で示すゴミシンJ(Gomisin C;GJ)としては、特許文献1に示す通り、五味子から抽出したデオキシシザンドリンをアシル化して合成した下記式(B)に示す化合物を得た後、脱アルキル化(式中のR基)し、脱アシル化(式中、COR基)して得たものであってもよい。
(式中、Rは、低級アルキル基を示し、Rは、水素原子又は低級アルキル基を示す。)
また、上記式(6)で示すシザンドリン(Schizandrin;Sch)としては、特許文献3に示す通り、石油エーテルなどの低極性溶媒で抽出した後、さらに石油エーテル、n−ヘプタンなどの低極性水不溶性溶媒とメタノールなどの高極性水溶性溶媒とを用いた分配抽出を行ったのち、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどで目的物質を分離したものであってもよい。
また、上記式(7)で示すゴミシンA(Gomisin A;GA)としては、上述の特許文献3に従った方法の他、特許文献4に記載の通り、下記式(A)に示す化合物の5員環を還元してジヒドロキシ化した後、酸化反応、メタンスルホニル化反応を付して得られるdl−シザンドリン(III)から、光学異性体を分離して得たものであってもよい。
また、上記式(8)で示すゴミシンB(Gomisin H;GB)としては、非特許文献12に示す通り、Shizandra arisanensisの乾燥幹から酢酸エチルで抽出し、必要に応じてカラムクロマトグラフィーを用いて精製したものであってもよい。
また、上記式(9)で示すゴミシンN(Gomisin N;GN)としては、特許文献5に記載の通り、Schizandra chinensisに由来するものであってもよい。
また、上記式(10)で示すシザンドリンC(Schizandrin C;SC)としては、非特許文献13に示す通り、五味子の石油エーテル抽出物を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したものであってもよい。
(実施例1)UV照射したA549細胞におけるシザンドリンBによる生存率への影響
A549細胞(American Tissue Type Collection社製)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100μg/mLストレプトマイシン及び100ユニット/mLペニシリン含有DMEM培地(以下、増殖培地と称する。)中で500個/60mmディッシュとなるように播種して一昼夜培養した後、最終濃度1μM及び10μMとなるように培地中にシザンドリンB(10g/LとなるようにシザンドリンB含有DMSO溶液を調製し、培地中で5g/L未満のDMSO濃度となるようにさらに培地で希釈して用いた。以下、同様。)を添加した。
添加1時間後、培地を除去し、Stratalinker(Stratagene社製)を用いて20及び50J/mのUV(波長254nmを使用。以下同様。)を照射し、再度上述と同濃度のシザンドリンBを有する培地(以下、シザンドリンB含有培地と称する。)に交換して14日間継続培養後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、2%メチレンブルーを用いて、クローン形成法に従って、生存細胞数をカウントした。結果を図1に示す。図1中、横軸は、照射したUVの線量を示し、縦軸は、未処理群に対する処理群における生存細胞の比率を百分率で示す。図中、○は、シザンドリンBを処理しない群を示し、▲は、1μMのシザンドリンBで処理した群を示し、■は、10μMのシザンドリンBで処理した群を示す。なお、各群とも、平均±標準誤差(n=3)で示す。
(実施例2−1)UV照射したA549細胞におけるシザンドリンBによる細胞周期に対する影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10mmディッシュに播種して一昼夜培養した後、最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。1時間後、培地を除去し、20及び50J/mのUVを照射し、上述と同濃度のシザンドリンB含有培地で細胞を1時間培養した。その後、下述のヒストンH3リン酸化量の測定に従って、細胞中のヒストンH3リン酸化量を測定した。結果を図2に示す。図2(A)は、シザンドリンBで処理した際に得られたフローサイトメトリーの結果であって、図2(A)中、丸で囲った部分は、G2/M期の細胞群を示し、その上方に記載の数値は、全細胞数に対するG2/M期の細胞群の数の割合を示す。また、図2(B)は、この割合をグラフで示したものである。
(実施例2−2)
実施例2−1において、20及び50J/mのUVの代わりに20J/mのUVを照射し、最終濃度30μMのシザンドリンBの代わりに、上記式(1)乃至(10)に示す化合物、及び下記式(C)に示すアンジェロイルゴミシンA(Angeloylgomisin A;AGA)(最終濃度30μM)を用いた以外は、実施例2−1と同様に行い、全細胞数に対するG2/M期の細胞群の数の割合を得た。結果を表1に示す。
(実施例3)電離放射線照射したA549細胞における分裂細胞数に対するシザンドリンBの影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した後、最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。1時間後、培地を除去し、3Gyの電離放射線を照射し、上述と同濃度のシザンドリンB含有培地で細胞を1時間培養した。この細胞に関し、下述のヒストンH3リン酸化量の測定を行った。結果を図3に示す。それぞれの数値は、図2(B)と同様である。
(実施例4)UV照射又は電離放射線照射したA549細胞におけるp53リン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した後、最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。1時間後、培地を除去し、20J/mのUVを照射し3時間培養した(以下、この細胞群を、UV細胞群と称する。)。
また、同様に、一昼夜培養し最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加し1時間培養したA549細胞の培地を除去し、10Gyの電離放射線(γ線)を照射し、上述と同濃度のシザンドリンB含有培地で2時間培養した(以下、この細胞群をIR細胞群と称する。)。
なお、UV細胞群及びIR細胞群のいずれも、照射の15分前から下述の細胞の回収まで、50μmのN−アセチル−L−ロイシル−L−ロイシル−L−ノルロイシナル(N−acetyl−L−Leucyl−L−Leucyl−L−norleucinal):以下、LLnLと称する。)、Sigma社製、MO、米国)の存在下で細胞を培養した。その後、下述の蛋白調製に準じて細胞中の蛋白質を抽出した後、下述のイムノブロット分析に準じて、p53蛋白の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))、p53蛋白(p53)、ATM蛋白の1981番目のセリン残基のリン酸化体(P−ATM(Ser1981))及びグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に関して、イムノブロット分析を行った。結果を図4に示す。
(実施例5−1)UV照射したA549細胞におけるp53リン酸化に及ぼすシザンドリンBの濃度依存的影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した後、最終濃度10、30及び100μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。1時間後、培地を除去し、20J/mのUVを照射した。なお、実施例4と同様にLLnLを用いて細胞を処理した。その後、上述と同濃度のシザンドリンBで1時間処理した細胞を、下述のイムノブロット分析に準じて、p53及びp53の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))の発現を検討した。結果を図5−1に示す。
(実施例5−2)
実施例5−1において、最終濃度10、30及び100μmとなるように培地中にシザンドリンBを添加するのに代えて、上記式(1)乃至(10)に示す化合物及び上記式(C)に示す化合物(最終濃度30μM)をそれぞれ添加し、20J/mのUVを照射する代わりに、25J/mのUVを照射した以外は、実施例5−1と同様に行い、p53の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))の発現を検討した。この際に得た電気泳動像を図5−2に示し、P−p53(Ser15)に該当するバンド強度(チューブリンで標準化したもの)について、UV照射して得たものを100%とした際の各化合物で得たバンド強度の相対比を表2に示す。
(実施例6)A549細胞における細胞周期に対するシザンドリンBの影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した後、最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。4時間後、下述のFACS分析に準じて、細胞周期を検討した。FACS分析の結果を図6に示す。
(実施例7−1)シザンドリンBによるATR及びATMの有するリン酸化活性に及ぼす影響
基質として1μgのリコンビナントPHAS−Iタンパク(Alexis Biochemicals社製)を、下述のリン酸化反応用ATR混液及びATM混液の調製に従って得たリン酸化反応用ATR混液及びATM混液に添加すると同時にシザンドリンBを加え、適当な濃度の32P−ATPを有する300μMATPを添加して、30℃で20分間反応させた。この反応液の4倍の量のSDSサンプルローディングバッファー(200mMTris−HCl(pH6.8)、400mMDTT及び8%SDS)で反応を停止し、この混液を12%SDS−PAGEにかけ、ゲルを乾燥後、上述の混液中の32P−PHAS−Iに対応するバンドに関し、オートラジオグラフィーで、γ線量をカウントした。結果を図7に示す。(A)及び(B)は、それぞれATR及びATMの相対活性を示し、横軸は、シザンドリンBの濃度を示し、縦軸は、シザンドリンB無添加に対するカウントの相対値で示す。
(実施例7−2)本発明によるATR阻害剤によるATRの有するリン酸化活性に及ぼす影響
実施例7−1において、シザンドリンBの代わりに、上記式(1)乃至(5)に示す化合物及び上記式(C)に示す化合物を用いた以外は、実施例7−1と同様に行い、得た直線から、IC50値を算出した。この値を、表3に示す。
(実施例8)UV照射したAT2KY細胞における各種蛋白のリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響
AT2KY細胞(ヘルスサイエンス振興財団(大阪))を、15%FBS、100μg/mLストレプトマイシン及び100ユニット/mLペニシリン含有RPMI1640培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した。最終濃度30μMとなるように培地中にシザンドリンBを添加した。添加1時間後、培地を除去し、20J/mのUVを照射した。その後、上述と同濃度のシザンドリンBで4時間処理した細胞について、下述のイムノブロット分析に準じて、p53の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(Ser15))、Brca1の1423番目のセリン残基のリン酸化体(P−Brca1(S1423))及びChk1の345番目のセリン残基のリン酸化体(P−Chk1(S345))の発現を検討した。結果を図8に示す。
(実施例9)ATR又はATM発現を阻害してUV照射したA549細胞における各種蛋白のリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した。その後、Oligofectamine(Invitrogen社製)とOpti−MEM(Invitrogen社製)とを用いて、細胞に、下述のsiRNAの調製に従って得た各二本鎖siRNA(siGFP、siATM及びsiATR)をトランスフェクトした。一晩培養した後、新鮮な増殖培地に交換して72時間後、30μmのシザンドリンBで1時間処理し、培地を除去し、20J/mのUVを照射した。その後、上述と同濃度のシザンドリンBで3時間処理した細胞について、下述のイムノブロット分析に準じて、p53の15番目のセリン残基のリン酸化体(P−p53(S15))、Chk1の345番目のセリン残基のリン酸化体(P−Chk1(S345))、ATM蛋白(ATM)、ATM蛋白の1981番目のセリン残基のリン酸化体(P−ATM(Ser1981))及びATR蛋白(ATR)の発現を検討した。結果を図9に示す。なお、図9中、P−p53(S15)及びP−Chk1(S345)欄の下に記した発現比率は、コントロールであるsiGFPとUVとで処理して得たそれぞれの蛋白のバンド強度を1.0とした際のそれぞれのバンドの相対強度を示す。
(実施例10)A549細胞におけるMAPKのリン酸化に及ぼすシザンドリンBの影響
A549細胞を増殖培地中で3×10個/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した後、無血清の増殖培地で16時間さらに培養した。その後、細胞を、50μMPD098059(Sigma社製)又は30μMシザンドリンBで処理し、さらに、100ng/mLフォルボール 12−ミリスチン酸 13−酢酸(PMA;Sigma社製)で5分間処理した。その後、細胞を下述のイムノブロット分析に準じて、42kDa及び44kDaマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p42MAPK及びp44MAPK)並びにこれらのリン酸化体の発現を検討した。結果を図10に示す。
(ヒストンH3リン酸化量の測定)
細胞をPBSで洗浄した後、70%氷冷エタノールで固定した。これに、0.25%Triton X−100含有PBSを添加し、氷上で30分間載置した後、細胞を回収し、遠心分離(500G、5分間)して得た細胞ペレットに、1%ウシ血清アルブミン(BSA)及び1μg抗ウサギ血清(ヒストンH3の13番目のセリン残基のリン酸化体に特異的なもの)含有PBS(100μL)を添加して、室温で4時間載置した。その後、これを1%BSA含有PBSで洗浄し、1%BSA含有PBSで100倍に希釈したFITCでコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG抗体を添加し、暗所で30分間、載置した。さらに、下述のFACS分析に準じてPI染色を行った後、フローサイトメトリー(Beckman−Coulter社製)でリン酸化ヒストンH3量を測定した。
(イムノブロット分析)
50μgの蛋白(下述の蛋白調製に準じて調製したもの)をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(12.5%)を行い、泳動後の各蛋白を、定法に従いニトロセルロース膜に転写し、5%スキムミルク及び0.1%Triton X−100含有トリス緩衝生理食塩水(TBS−T)を用い、室温で1時間、ブロッキング反応を行った。得た膜を、以下に示す所望の抗体で4℃16時間インキュベートし、その後、西洋わさび由来ペルオキシダーゼでコンジュゲートした二次抗血清(上述の所望の抗体の由来動物に対するもの)で、室温1時間インキュベートした。その後、標的蛋白を、ECL reaction kit(Amersham社製)及びchemiluminescence film(Amersham社製)で可視化して、蛋白像を得た。
<抗体>
p53抗体(Calbiochem社製)
リン酸化p53抗体(Cell signaling technology社製)
リン酸化ATM抗体(Rockland社製)
リン酸化Chk1抗体(Cell signaling technology社製)
ATR抗体(Bethyl社製)
チューブリン抗体(Sigma社製)
GAPDH抗体(Santa Cruz社製)
リン酸化Brca1抗体(Upstate社製)
抗MAPK抗体及び抗リン酸化MAPK抗体(Cell Signaling社製)
(蛋白調製)
細胞を、氷冷PBSで培養ディッシュから剥離し、冷PBSで2回洗浄した後、遠心分離して得た細胞ペレットに、下述のUTB緩衝液で可溶化して、細胞由来の蛋白混合物を調製した。蛋白量は、Protein Assay Kit(Bio−Rad社製)で測定した。
<UTB緩衝液>
8mM 尿素
150mM 2−メルカプトエタノール
50mM Tris(pH 7.5)
(FACS分析)
細胞をPBSで洗浄した後、70%氷冷エタノールで固定した。遠心分離により回収したペレットにPBSを加え洗浄した後、再度遠心分離を行った。ペレットを最終濃度100μMのPropidium Iodide(Sigma社、以下PI)と40μg/mLのRNaseAを含む溶液(PI Solution)で懸濁し30分間室温にて培養した。その後フローサイトメトリー(Beckman−Coulter社製)で細胞周期の解析を行った。
(リン酸化反応用ATR混液及びATM混液の調製)
リン酸化反応用ATR混液には、非特許文献9等の公知の方法を用いて製造されたFlagでタグ付けしたATRを用いた。詳しくは、非特許文献9に開示の方法は、ATR遺伝子(配列番号4)のBamH1−SwaIフラグメント(1kb)を、Flag(DYKDDDDK)をN末端に有するATRに対応する遺伝子に置き換えてPCRで増幅させた遺伝子産物を、pcDNA3.1に導入したプラスミドから合成する方法である。また、リン酸化反応用ATM混液には、非特許文献10及び11等の公知の方法及びQuikchange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)を用いて製造されたFlagでタグ付けしたATMを用いた。
これらFlagでタグ付けしたATR及びATMプラスミド(配列番号4及び5)を、下述のリン酸カルシウム法に準じて、293T細胞(ATCC番号CRL−11268)にトランスフェクトし、2日間培養した。その後、上述のUTB緩衝液を下述のIP緩衝液に変更して行った上述の蛋白調製に準じて得た蛋白混合物5mgを、4℃4時間、20μgの抗Flag−M2モノクローナル抗体(Sigma社製)で、免疫沈降させた。これと、4℃1時間、プロテインGセファロース(Amersham社製)でコンジュゲートしたビーズとをインキュベートした。得た免疫複合体を、下記のTGN緩衝液で2回洗浄し、さらに、下記のキナーゼ緩衝液で1回洗浄し、リン酸化反応用ATR混液及びATM混液(配列番号6及び7)を得た。
<IP緩衝液>
10mM Tris(pH7.5)
1mM EDTA
1mM EGTA
150mM NaCl
0.5% NP−40
1% Triton X−100
1mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド(PMSF)
2μg/mL ペプスタチン
2μg/mL アプロチニン
1mM p,p’−ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)
<TGN緩衝液>
50mM Tris(pH7.4)
50mM グリセロリン酸
150mM NaCl
1% Tween20
10% グリセロール
<キナーゼ緩衝液>
10mM Hepes(pH7.5)
50mM グリセロリン酸
50mM NaCl
10mM MgCl
10mM MnCl
<リン酸カルシウム法>
293T細胞を増殖培地中で2×10/cmとなるように10cmディッシュに播種して一昼夜培養した。その後、上述のFlag−ATM及びFlag−ATRを最終濃度25mMのBES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)と25mMのCaClとに混合して、細胞にトランスフェクトさせた。一晩培養後、新鮮な増殖培地に交換して2日間培養した。
(siRNAの調製)
ATR、ATM及び緑色蛍光タンパク質(GFP)に対する二本鎖siRNA(それぞれ配列表に記載の配列番号1、2及び3に対応)を、HP GenomeWide siRNA(キアゲン社製)に従って、それぞれ合成した。得た二本鎖siRNAをそれぞれ、siATR、siATM及びsiGFPとする。
(考察)
ATM(ataxia telangiectsia mutated)及びATR(ataxia telangiectasia and Rad−3−related)は、細胞周期のDNA損傷に対する反応に係るシグナル伝達において、重要な役割を演じる。ATM及びATRは、Chk1、p53、NBS1、Brca1、SMC1などのいわゆるチェックポイント・タンパク質群や転写因子をリン酸化する。発癌の原因ともなる次の世代へのDNA損傷の持ち越しを防ぐために、上述のチェックポイントシグナルは、細胞周期全体を制御している。ATM又はATRの不全は、UV若しくはIR照射又は障害誘導性薬剤により誘導されたDNA損傷により、細胞の生存率を低下させる。このことは、損傷を受けたDNAの修復、維持、及び管理において、ATM及びATRが必要であることを、示す。本発明において、本願出願人は、Schisandra Chinensisの成分であるシザンドリンBがUV照射後の細胞の生存率を濃度依存的に低下させることを、示した。このことは、in vivoでのDNA損傷反応におけるチェックポイントシグナル伝達経路に対してシザンドリンBが阻害効果を有することを示す。
ヒストンH3は、正常な分裂細胞においてその10番目のセリン残基がリン酸化され、G2期からM期への移行の指標となるが、DNA損傷により、G2期/M期チェックポイントが機能すると、リン酸化ヒストンH3陽性細胞の割合は減少する。図2によると、20及び50J/mのUV照射によりリン酸化ヒストンH3の割合が減少した。一方、50J/mのUV照射では有意ではなかったが、20J/mのUV照射により、上記式(1)で示すシザンドリンBは、G2/Mチェックポイントを顕著に崩壊させた。事実、低線量のUV照射において、DNA損傷に対する反応中、シザンドリンBは、G2/Mチェックポイントを完全に無効にした。また、上記式(1)乃至(10)に示す化合物及び上記(C)に示す化合物によっても、G2/Mチェックポイントを完全に無効にした。一方、A549細胞にIR照射した場合、G2/Mチェックポイントの劇的な阻害は起きなかった。一般的に、IR照射は、ATMを活性化させ、UV照射は、ATRを活性化させ、細胞周期チェックポイントを機能させることが知られている。これらの結果により、シザンドリンBは、低線量のUV照射で誘導されたDNA損傷の過程中のG2/Mチェックポイントにおいて、ATMよりもむしろATR活性に対して阻害効果を有することが、示唆された。同様の事項は、上記式(1)乃至(10)に示す化合物など、本発明によるATR阻害剤の他の化合物についても、適用可能である。
in vivoにおけるATRキナーゼ活性に及ぼす、本発明によるATR阻害剤の阻害活性を検証するため、IR又はUV照射により誘導されるDNA損傷の後のp53リン酸化を検討した。p53は、in vivoにおいて、種々のプロテインキナーゼにより、複数の部位でリン酸化を受け、細胞にとって大変重要な転写因子として知られている。癌治療におけるDNA損傷反応時のp53の機能を考えた場合、p53は、細胞がUV照射、γIR照射及びメチル化剤により障害された際、15番目のセリン残基において、ATR及びATMにより特異的にリン酸化される。本発明において、A549細胞に対して20J/mのUV照射を行った後、p53リン酸化は、シザンドリンBにより減少したが、IR照射では減少しなかった。IR照射の後にATMの1981番目のセリン残基が顕著に活性化され、20J/mのUV照射によりわずかながら活性化されたが、シザンドリンBは、いずれのDNA損傷においても、ATM活性に影響を及ぼさなかった。また、シザンドリンBによる細胞周期の局所的な蓄積や偏りも認められなかった。また、上記式(1)乃至(10)に示す化合物によっても、p53リン酸化の阻害が観察された。これらの結果により、20J/mのUV照射によるp53の15番目のセリン残基のリン酸化の減少は、ATRによってのみ起こることが示された。
非特許文献7は、A549アデノカルシノーマ細胞におけるATM及びATRプロテインキナーゼに対するカフェインの阻害効果を開示する。本願出願人は、この文献と同一の方法により、in vitroにおけるATM及びATRのプロテインキナーゼ活性に及ぼすシザンドリンBの影響を検討した。シザンドリンBをキナーゼ緩衝液とインキュベートすると、ATM及びATRの両者を阻害するが、シザンドリンBは、ATMよりもATRプロテインキナーゼの阻害が顕著である。事実、シザンドリンBによるATRに対するIC50は、ATMの約240倍であった。また、上記式(1)乃至(5)に示す化合物によっても、ATRプロテインキナーゼ活性の阻害が顕著に観察された。細胞の生存率及びキナーゼ活性の結果が示すのは、細胞のDNA損傷を誘導するUV照射の反応中、ATRプロテインキナーゼ活性が阻害されたということである。
シザンドリンBのDNA損傷に係るチェックポイント対する影響を検討するため、AT患者由来の繊維芽細胞(AT2KY細胞)及びsiRNA処理細胞を用いた。AT2KY細胞をUV照射すると、リン酸化p53のみならずチェックポイント経路におけるATM及びATRの下流分子としての、Brca1(Ser1423)及びChk1(Ser345)のリン酸化体が増加した。さらに、コントロール及びATMに係るsiRNAで処理した細胞においてのみ、シザンドリンBによるp53及びChk1のリン酸化が減少した。また、siATRで処理した細胞では、チェックポイントのタンパク質に係るリン酸化の減少が観察されなかった。これらの結果から、シザンドリンBは、in vivoにおいて、ATRプロテインキナーゼ活性の阻害を介して、DNA損傷に係るチェックポイントのシグナル伝達経路を阻害した。
in vivoにおけるATR阻害に対するシザンドリンBの特異性を確認するため、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)とも称されるERKの血清刺激及びPMA処理による特異的な活性化システムによるリン酸化に対するシザンドリンBの効果を検討した。ERKのリン酸化は、上述の参照方法により、強く促進された。シザンドリンBにより、このERKリン酸化は、全く影響を受けなかった。従って、DNA損傷に対する反応において、シザンドリンBの有効性は、ATR活性に高度に特異的であることが分かった。
本発明において、細胞に対するUV照射で誘導されるDNA損傷応答反応(チェックポイント)におけるシザンドリンBの効果を示した。ATRのノックアウトにより胚細胞は致死的であるので、ATRが哺乳類の発生に段階において重要な役割を演じることは予想されていた。これは、クロマチンの不安定化や、生体内で連続的に生成するラジカルに対するチェックポイントの欠損、さらには発生過程での細胞性DNAの複製ストレスによってもチェックポイントにATRが必須であることを示している。一方、ATRはATMのバックアップとしても機能するので、AT患者の細胞(遺伝的にATMが機能しない細胞)におけるチェックポイントを維持している。これらは、腫瘍発生を含む増殖性の細胞において、ATRプロテインキナーゼが大変重要であることを示している。シザンドリンBは患者におけるDNA損傷チェックポイントをATRのキナーゼ活性阻害を介して阻止し得るので、本発明の知見により、放射線療法や化学療法などの抗癌治療に利点をもたらし得る。カフェインは、ATRに比べATMの活性を1/5のIC50を有している。従って臨床における癌治療の際、シザンドリンB単独、又はカフェインとを組み合わせて放射線治療や抗癌剤療法を行うと、これらの感受性を顕著に増加させることが予想される。
非特許文献3は、化学療法剤又は放射線治療の補助として、臨床で試験的にカフェインを適用することを報告する。この文献は、カフェインで補助した治療により、化学療法剤又は放射線療法を個々に処理するよりも、骨肉腫の寸法を減少かつ最小限化したことを示す。この結果が示すのは、カフェインは、ATM及びATRプロテインキナーゼ活性を阻害することであり、増殖する腫瘍の細胞周期のいずれにおいても、DNA損傷に係るチェックポイントの阻害をもたらす。このことにより、シザンドリンBで補助した化学療法及び放射線療法として、シザンドリンBは、臨床で試験的に適用し得る可能性がある。さらなる検討に関し、カフェインの臨床試験と同時に、腫瘍を消失又は最小限化させることに関して効率化が可能かどうかについて、シザンドリンBとの併用効果を試験する必要がある。特に、シザンドリンBは、患者において、副作用が全くないかほとんどないことが期待される天然の植物抽出物中の成分である。上述のようなATM又はATR阻害剤は化学療法/放射線療法の投与量や線量を最低限に引き下げても、従来と同じかそれ以上の効果が期待されるので、化学療法/放射線療法に対してシザンドリンBとカフェインとを組み合わせることにより、患者に対する副作用を最小限に抑えることが期待できる。
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。

Claims (14)

  1. 下記式(1)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  2. 下記式(2)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  3. 下記式(3)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  4. 下記式(4)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  5. 下記式(5)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  6. 下記式(6)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  7. 下記式(7)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  8. 下記式(8)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  9. 下記式(9)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  10. 下記式(10)
    に示す化合物を有効成分として含有することを特徴とするATR阻害剤。
  11. 前記ATR活性は、タンパクリン酸化活性であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のATR阻害剤。
  12. 前記タンパクリン酸化活性は、細胞周期関連タンパクをリン酸化する活性であることを特徴とする請求項11に記載のATR阻害剤。
  13. 前記細胞周期関連タンパクは、p53であることを特徴とする請求項12に記載のATR阻害剤。
  14. 前記細胞周期関連タンパクは、Brca1及びChk1からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項12又は13に記載のATR阻害剤。
JP2007541012A 2005-10-21 2006-10-18 Atr阻害剤 Pending JPWO2007046426A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005307534 2005-10-21
JP2005307534 2005-10-21
PCT/JP2006/320756 WO2007046426A1 (ja) 2005-10-21 2006-10-18 Atr阻害剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2007046426A1 true JPWO2007046426A1 (ja) 2009-04-23

Family

ID=37962519

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007541012A Pending JPWO2007046426A1 (ja) 2005-10-21 2006-10-18 Atr阻害剤

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20100048923A1 (ja)
EP (1) EP1946757A1 (ja)
JP (1) JPWO2007046426A1 (ja)
CN (1) CN101291668A (ja)
CA (1) CA2626681A1 (ja)
WO (1) WO2007046426A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009047488A1 (en) * 2007-10-09 2009-04-16 The Council Of The Queensland Institute Of Medical Research Method of screening for anticancer agents
WO2013003112A1 (en) 2011-06-27 2013-01-03 The Jackson Laboratory Methods and compositions for treatment of cancer and autoimmune disease
JP2013209299A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Kose Corp Dna損傷抑制剤並びにこれを含有する皮膚外用剤、化粧料および飲食物
JP2023545196A (ja) 2020-10-16 2023-10-26 シャンハイ ドーァ ノボ ファーマテック カンパニー,リミティド 三複素環誘導体、その医薬組成物及び使用
JP2024520141A (ja) * 2021-06-04 2024-05-21 リペア セラピューティクス インコーポレイテッド 結晶形、それを含有する組成物、およびそれらの使用方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0248592A (ja) * 1988-08-09 1990-02-19 Tsumura & Co ジベンゾシクロオクタジエン型リグナンの製造法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0248592A (ja) * 1988-08-09 1990-02-19 Tsumura & Co ジベンゾシクロオクタジエン型リグナンの製造法

Also Published As

Publication number Publication date
CA2626681A1 (en) 2007-04-26
CN101291668A (zh) 2008-10-22
US20100048923A1 (en) 2010-02-25
EP1946757A1 (en) 2008-07-23
WO2007046426A1 (ja) 2007-04-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Rong et al. Salidroside induces apoptosis and protective autophagy in human gastric cancer AGS cells through the PI3K/Akt/mTOR pathway
Xiang et al. Physalin D attenuates hepatic stellate cell activation and liver fibrosis by blocking TGF-β/Smad and YAP signaling
Liu et al. Enhancement of 26S proteasome functionality connects oxidative stress and vascular endothelial inflammatory response in diabetes mellitus
Jung et al. Sugiol inhibits STAT3 activity via regulation of transketolase and ROS-mediated ERK activation in DU145 prostate carcinoma cells
Qiang et al. Inhibition of glioblastoma growth and angiogenesis by gambogic acid: an in vitro and in vivo study
Wicaksono et al. Antiproliferative effect of the methanol extract of Piper crocatum Ruiz & Pav leaves on human breast (T47D) cells in-vitro
Pang et al. Molecular mechanisms of p21 and p27 induction by 3‐methylcholanthrene, an aryl‐hydrocarbon receptor agonist, involved in antiproliferation of human umbilical vascular endothelial cells
Semlali et al. Effects of tetrahydrocannabinols on human oral cancer cell proliferation, apoptosis, autophagy, oxidative stress, and DNA damage
Pi et al. BMK1/ERK5 is a novel regulator of angiogenesis by destabilizing hypoxia inducible factor 1α
Liu et al. Rho kinase inhibition by fasudil suppresses lipopolysaccharide-induced apoptosis of rat pulmonary microvascular endothelial cells via JNK and p38 MAPK pathway
Xiao et al. Fisetin inhibits the proliferation, migration and invasion of pancreatic cancer by targeting PI3K/AKT/mTOR signaling
Gu et al. P7C3 inhibits LPS-induced microglial activation to protect dopaminergic neurons against inflammatory factor-induced cell death in vitro and in vivo
Liu et al. Proteasome inhibition increases tau accumulation independent of phosphorylation
Ma et al. Genipin stimulates glucose transport in C2C12 myotubes via an IRS-1 and calcium-dependent mechanism
Maiuolo et al. Ethanol-induced cardiomyocyte toxicity implicit autophagy and NFkB transcription factor
JPWO2007046426A1 (ja) Atr阻害剤
Opperman et al. Tumor necrosis factor alpha stimulates p62 accumulation and enhances proteasome activity independently of ROS
Yang et al. Induction of HO‐1 by 5, 8‐Dihydroxy‐4′, 7‐dimethoxyflavone via activation of ROS/p38 MAPK/Nrf2 attenuates thrombin‐induced connective tissue growth factor expression in human cardiac fibroblasts
Yao et al. Punicalagin from pomegranate promotes human papillary thyroid carcinoma BCPAP cell death by triggering ATM-mediated DNA damage response
Tsuji et al. Temozolomide has anti-tumor effects through the phosphorylation of cPLA2 on glioblastoma cells
Cai et al. Patchouli alcohol suppresses castration-resistant prostate cancer progression by inhibiting NF-κB signal pathways
Kim et al. A novel anti-cancer role of β-apopicropodophyllin against non-small cell lung cancer cells
US20240009163A1 (en) Anti-Oncogenic Phytochemicals and Methods and Uses for Treating Cancer
Lee et al. Interferon regulatory factor-1 (IRF-1) regulates VEGF-induced angiogenesis in HUVECs
Ogura et al. Prenylated quinolinecarboxylic acid derivative suppresses immune response through inhibition of PAK2

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091019

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20110228

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20110228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120515

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20121029