JPWO2007032265A1 - アルコール生産細菌の連続培養装置及びその方法 - Google Patents
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Abstract
嫌気性細菌を用いるエタノール連続発酵において、不純物の多い基質においても、発酵液の基質濃度を低いレベルで一定に保ち、基質ロスが少ない連続培養装置を提供する。アルコール生産細菌を培養する発酵槽(1)と、発酵槽に基質液を供給する供給ポンプ(12)と、発酵槽から排出される炭酸ガス流量値を検出する流量計(4)と、流量計の出力に基づき供給ポンプを制御する制御部(5)とを備え、制御部は、炭酸ガス流量値が所定範囲を下回ったとき、それをトリガとして供給手段に基質液を発酵槽へ供給させる。供給手段が基質液を供給する時間と、発酵槽に基質液を供給する時間当たりのレートとは、一定である。
Description
本発明は、アルコール生産細菌(Zymomonas mobillis等の嫌気性菌及びアルコール発酵能が付与された大腸菌を含むが、酵母は除く。)の連続培養装置及びその方法に関する。更に詳しくは、本発明は、基質供給液を連続的もしくは断続的に発酵槽に供給するにあたり、排気としての炭酸ガスの流量変化を指標にして発酵内の基質の消費を予測し、発酵槽内の基質濃度が低濃度一定の値となるよう、基質液の供給と発酵液の引抜を制御する技術に関する。
発酵産業では、微生物による各種アミノ酸、有機酸、エタノール、アセトン・ブタノール、核酸関連物質等の発酵また微生物菌体そのものの生産(例えば、酵母菌体の生産)のために、微生物による発酵が利用される。そして、これら工業生産では、糖などの基質を主原料として、ほとんどすべて回分発酵法によって行われている。したがって、発酵そのもの以外に仕込み、装置の準備、種発酵、発酵が終わった後の後始末・洗浄を繰り返さなければならず、発酵槽の正味稼働時間は非常に短く、生産性が低い。
この問題を解決するため、発酵槽を数基直列に並べて発酵生産を行うカスケード法が酵母を用いるエタノール発酵に用いられているが、これは抜本的な解決策とは言えない。また回分発酵では、発酵経過の監視のために、手作業によって頻繁な糖濃度分析などが必要で、このための人手確保も工場運転管理の負担となる。
ところで、すべての発酵方法において、高濃度基質による阻害を防ぎ、基質を有効に利用し、発酵液の残糖濃度を可能な限り低く抑えて、基質ロスを少なくすることが必要である。又、発酵を終了した液からの生産物の分離を容易にし、廃液処理工程のコスト負担を可能な限り小さくするために、生産物分離工程への、菌の食べ残しの基質の流出を極小化する必要がある。
残基質濃度を低く一定に制御して基質供給と発酵液の抜き出しを行い、長時間安定した連続発酵を行うことが可能であれば、発酵工程の装置生産性が飛躍的に向上する。またこのようなプロセスでは糖濃度管理のための分析作業をほとんど皆無にすることができるので、無駄な人手を省き、労賃を大幅低減できる上、夜間作業を皆無にすることができる。
本発明者らは、特許文献1(特開2003−274934号公報)において、Zymomonas mobillisなど嫌気性細菌を用いるエタノール連続発酵に関する方法を提案した。この方法は、菌の代謝にともなう発酵液のpH変化量が基質消費量とエタノール生産量に対応するという原理を用いて連続発酵を可能にするものである。
すなわち、発酵液pHの変化を修正するため、アルカリ(アンモニア、苛性ソーダ、その他)添加量の積算値に対応する一定量の基質を供給し、それに対応する発酵液を引き抜き、発酵槽の発酵液量を一定に保ちながら連続発酵を行う。しかしながら、この方法をモラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料に適用しようとすると、pH変化量は必ずしも基質消費とは対応せず、この方法での連続発酵が困難になる場合があることがわかった。
特開2003−274934号公報
そこで本発明は、Zymomonas mobillisなど嫌気性細菌を用いるエタノール連続発酵において、モラセスや食品廃棄物、食品工場廃液など安価であるが不純物の多い基質においても、正確に糖消費量と残糖濃度を予測し、発酵液の基質濃度を低いレベルで一定に保つことができ、基質ロスが少ないアルコール生産細菌の連続培養装置及びその関連技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決を目指して鋭意研究の結果、モラセスなどの工業用原料を用いる嫌気性細菌によるエタノール連続発酵において、排気として発酵槽外に流出する炭酸ガス量の変化を正確に捉えれば発酵槽内の基質消費量を正確に把握できるという点に着目した。さらに、発酵液中の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の減少を炭酸ガス流量低下として検出し、これを指標として、制御部によって基質供給と発酵液の引き抜きを制御し、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定的に連続発酵が可能な連続培養方法を完成した。
第1の発明に係るアルコール生産細菌の連続培養方法は、アルコール生産細菌を培養する発酵槽に、基質液を供給するとともに、基質液の供給量にあわせた量の発酵液を発酵槽から引き抜く方法であって、発酵槽から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回るとき、それをトリガとして発酵槽に基質液を供給する。
この構成によれば、発酵槽内の基質がほとんど枯渇する状態で、基質液の供給と発酵液の引き抜きが実施されるので、細菌の食べ残しによる基質ロスはほとんど生じない。また、後述する実施例により明らかなように、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる。
さらには、発酵槽に基質液を供給する時間と、発酵槽に基質液を供給する時間当たりのレートとは、一定であることが望ましい。
即ち、1回の基質液の供給量は、供給開始直前の数時間前の基質消費速度を予め計算し、それに基づき添加された基質を微生物が食べ尽くして発酵槽内にほとんど残らないようにする供給レートと供給時間を与えるのが望ましい。
所定範囲は、炭酸ガス流量値の閾値により定められることが望ましい。
本発明によれば、細菌の食べ残しによる基質ロスはほとんどなく、しかも、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる。
1 発酵槽
2 攪拌機
3 泡トラップ
4 流量計
5 制御部
6 インターフェイス
7 CPU
8 ROM
9 濁度計
10 pH計
11 基質液槽
12 基質液供給ポンプ
13 中和剤槽
14 中和剤供給ポンプ
15 循環ポンプ
16 クロスフローろ過器
17 切替弁
18 引抜ポンプ
19 引抜液槽
2 攪拌機
3 泡トラップ
4 流量計
5 制御部
6 インターフェイス
7 CPU
8 ROM
9 濁度計
10 pH計
11 基質液槽
12 基質液供給ポンプ
13 中和剤槽
14 中和剤供給ポンプ
15 循環ポンプ
16 クロスフローろ過器
17 切替弁
18 引抜ポンプ
19 引抜液槽
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。まず、具体的構成の説明に先立ち、本形態の要点をまとめると次のとおりである。
本形態は、資化可能なあらゆる発酵資源を基質液として用いることができるZymomonas mobillisなど嫌気性細菌のエタノール連続発酵法に関する。連続発酵の開始は、基質液を初回添加し、発酵初期に予め求めておいた供給レートで基質液を一定時間添加することによる。予め求めておいた供給レートは、菌株、培地組成、発酵条件を特定し、回分発酵による発酵試験によって、菌濃度と糖消費速度を測定し、その関係から求められる。それ以降の基質液の供給は、発酵槽内の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の減少をマスフローセンサーなどで検出し、細菌が基質飢餓状態にならないように実施され、発酵槽内の基質濃度は、常に低レベルの一定範囲内に保たれる。
以上をふまえて、次に図1を参照しながら、本形態における連続培養装置について説明する。発酵槽1は、その内部でZymomonas mobillisなど嫌気性細菌を培養する。本形態の発酵槽1は、容積3リッターの小型の槽であり、圧力容器ではないため、内圧の制御を行うのは難しく実施していない。しかしながら、圧力容器である発酵槽を使用することもできるし、そのときは内圧の制御もあわせて実施するのが好ましい。発酵槽1内の温度は、所定値になるように管理されており、発酵槽1に設けられた攪拌器2により発酵槽1内の内容物は、一定の速度でゆっくりと撹拌される。
発酵槽1からの排出管は、泡を除去する泡トラップ3を介して流量計4に接続される。流量計4は、発酵槽1から排出される炭酸ガスの流量値を計測し、例えば、マスフローセンサ、排気ガス流量計、圧力計等から構成される。流量計4が計測した炭酸ガス流量値は、制御部5のインターフェイス6へ出力される。勿論、炭酸ガスの流量値に一意に対応する他の物理量を計測してもよい。
制御部5は、図1に示す連続培養装置全体を制御する。制御部5のインターフェイス6には、流量計4からの炭酸ガス流量値の他、発酵槽1の内部の濁度を計測する濁度計9(レーザ濁度計が望ましい)からの濁度値と、発酵槽1の内部のpH値を計測するpH計10からのpH値とが入力される。CPU7は、制御部5の中核をなし、ROM8に記憶されている制御プログラムを実行する。この制御プログラムには、図2のフローチャートに従う供給制御プログラムが含まれる。また、CPU7は、適宜インターフェイス6を介し、基質液供給ポンプ12、中和剤供給ポンプ14、循環ポンプ15、切替弁17、引抜ポンプ18に制御信号を出力し、これにより連続培養装置全体を制御する。
基質液槽11は、後記実施例に示すような基質液を貯蔵する。基質液供給ポンプ12にインターフェイス6から基質供給信号が入力されると、所定のレートで所定の時間、基質液槽11から基質液が発酵槽1内へ供給される。その結果、発酵槽1内の残糖量は上昇する。
中和剤槽13は、例えばアンモニア等の中和剤を貯蔵する。発酵槽1内で発酵が進行すると、細菌の増殖に伴い、発酵槽1内のpHが低下する。本形態では、pH値が常に4.5乃至6程度の一定値(条件により異なる)になるように、CPU7は、中和剤供給ポンプ14に中和剤供給信号を出力し、発酵槽1内のpH値を制御する。
発酵槽1には、インターフェイス6からの循環指示信号にしたがって、クロスフローろ過器16に発酵槽1内の発酵液を引き抜いて圧送する循環ポンプ15が接続されている。クロスフローろ過器16は、引き抜かれた発酵液の一部を発酵槽1内へ戻すとともに、ろ液を切替弁17の一方の入力ポートへ接続する。また、切替弁17の他方の入力ポートには、発酵槽1内の発酵液が連通する。
切替弁17は、インターフェイス6からの切替信号にしたがって、一方/他方の入力ポートのいずれかを出力ポートへ接続する。引抜ポンプ18は、インターフェイス6からの引抜指示信号にしたがい、切替弁17の出力ポートからろ液/発酵液のいずれかを引抜液槽19へ圧送する。これにより、引抜液槽19には、エタノールを含む発酵液が取り出される。なお、クロスフローろ過器16に替えて、遠心分離器により構成しても良い。
次に、図2を参照しながら、制御部5による基質液の供給制御の各プロセスを説明する。このプロセスでは、制御部5が、発酵槽1から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回ったとき、それをトリガとして基質液供給ポンプ12(供給手段)に基質供給信号を出力し、基質液を発酵槽1へ供給させる点が重要である。
そして、循環ポンプ15、クロスフローろ過器16、切替弁17及び引抜ポンプ18は、発酵槽1から発酵液を引き抜く引抜手段に相当し、制御部5は、基質液供給ポンプ12が発酵槽1に基質液を供給する供給量にあわせた量の発酵液をこの引抜手段が発酵槽1から引き抜くように、この引抜手段を制御する。なお、CPU7は、濁度計9からの濁度値を参照し、発酵槽1内の発酵液菌濃度が低ければクロスフローろ過器16からろ液を引き抜き(切替弁17は図1の状態)、菌濃度が高ければ発酵槽1から(切替弁17は図1とは反対の状態)発酵液を引き抜いて、発酵槽1内の発酵液菌濃度が一定に保たれる。
図2、図3を参照しながら説明する。まず図2のステップ1に示すように、発酵槽1への種菌及び基質液の調整・投入が行われ、ステップ2にて、待ち時間T0、炭酸ガスの流量値閾値Th、供給時間T1及び供給レートR1がセットされる。これらの所値は条件に応じて予め設定されており、必要に応じて適宜修正される。図3の時刻t=t0において、発酵が開始される。
供給レートR1は、発酵液の基質濃度が枯渇直前の低いレベルが維持できるように、予め求めておいた菌体濃度と糖消費速度との関係式によって与えられる値を設定し、ROM8に格納しておく。
発酵開始当初は、発酵槽1内において、菌濃度が低く(図3(a))、基質は豊富に存在する(図3(b))。その後、アルコール生産細菌の特徴として、基質が残っていても増殖は停止する。そこで、菌濃度を増加させるために、培養液を循環し、ろ液を引き抜きその分の培地を補充しながら濃縮培養を行い、菌濃度を上昇させる。菌濃度が設定値に達したら、濁度制御を開始し連続発酵に入る。
細菌の増殖が活発化するにつれ、細菌の濃度が上昇し、発酵槽1内の残糖量は低下する。また、発酵が進むと、炭酸ガスの流量値は上昇する(図3(c))。この際、CPU7は、待ち時間T0が経過したかチェックしており(ステップ3)、経過するまで基質供給を行わない。
図3(c)に示すように、時刻t0における初回基質液添加終了後、待ち時間T0を経過すると、CPU7は、ステップ4にて、炭酸ガスの流量値が閾値Thを下回ったかどうかチェックする。例えば、時刻t=t0+T0のとき、炭酸ガスの流量値は、閾値Thを上回っており、このときは、CPU7は、ステップ8にて処理が終了すべきでないことを確認した上で、ステップ4へ処理を戻し、再度上記チェックを行う。
時刻t=t1において、発酵槽1内の基質が枯渇すると、炭酸ガスの発生量が急に減少し、閾値Thを下回る。これをトリガとして、ステップ4からステップ5へ処理が移る。即ち、CPU7は、基質供給信号をインターフェイス6を介して基質液供給ポンプ12へ出力し、基質液供給ポンプ12は、基質液槽11から基質液を供給レートR1にしたがって発酵槽1へ供給し始め(ステップ5)、所定時間T1だけこの状態が継続する(ステップ6)。その結果、図3(b)に示すように、殆どゼロであった発酵槽1内の残糖量が増加に転じる。即ち、時刻t=t1の時点で、基質供給を再開してやれば制限基質濃度に近い低い残基質濃度で運転を継続できる。
さて、グルコースを基質とするエタノール発酵における炭酸ガス発生量と発酵との関係式は、周知のごとく以下の理論式で与えられる。
C6H12O6→2C2H5OH+2CO2 (1)
すなわち、グルコース1モルに対し2モルのエタノールを生成するとき2モルの炭酸ガスを発生するので、糖が枯渇してエタノール生成が停止すれば炭酸ガスの発生は起こらない。したがって炭酸ガス排出量の減少を指標にすることによって、基質の枯渇を信頼性高く検出することができる。
すなわち、グルコース1モルに対し2モルのエタノールを生成するとき2モルの炭酸ガスを発生するので、糖が枯渇してエタノール生成が停止すれば炭酸ガスの発生は起こらない。したがって炭酸ガス排出量の減少を指標にすることによって、基質の枯渇を信頼性高く検出することができる。
この連続発酵の発酵系で菌濃度は濁度計9によって一定に制御されているが、実際に供給を行って、基質消費が制御部にインプットした予測値より早くなったり遅くなったりする場合もあるので、供給のタイミングは微妙に調整するのが好ましい。
そして、時刻t1から所定時間T1が経過したら、CPU7は、基質液供給ポンプ12に基質供給を停止せよとの信号を出力し(ステップ7)、基質液供給ポンプ12は、基質の供給を停止する。そのため、図3(b)に示すように、残糖量は、再び減少へ転じ、時刻t2にて、再度炭酸ガスの流量値が閾値Thを下回る結果となる。
以降、時刻t2,t3,t4・・・において、同様の処理が繰り返される(ステップ3〜8)。
かくして、第2回以降(時刻t1以降)の基質供給は、発酵槽1内の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の急激な減少を流量計4が検出し、閾値Thに達したとき開始される。
このようにして、微生物の発生する炭酸ガスを逐次チェックしながら糖などの基質を枯渇させることなく基質液を連続的に添加することが可能となり、発酵槽内基質濃度を容易に5g/リッター以下の低レベルに抑えることが可能となる。モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質としpH変化量に依存したのでは連続発酵が困難になりうる場合においても、この点は妥当するため、従来技術よりもより広汎で材料費が低廉な発酵を行える。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。勿論、以下の実施例により本発明が限定されるわけではない。
(実施例1)
種菌は、YMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobillis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌は、YMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobillis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、ブラジル産モラセスを水道水で5.3倍に希釈し、120℃、10分間オートクレーブ滅菌したものを用いた。この培地2リッターを予め滅菌した小型の(容積3リッター)発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するので、pH計によってオンラインでpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
発酵開始後15時間で菌増殖が頭打ちとなったので、発酵液の循環濃縮を行い、菌濃度を上昇させた。発酵槽外に設置したクロスフローろ過器(日本ポール製、0.45mμ,0.1m2カートリッジ)に発酵液を循環し、ろ液を発酵槽外に抜き出して発酵開始時と同じ培地を補充して発酵槽液量を一定に維持しながら菌濃度の上昇を図った。
このようにして、発酵開始約24時間で菌濃度約4g/リッターに達した。以後連続発酵の全時間255時間にわたりレーザー濁度計(ASR社製Model LA−301型)によって、図4に示すように、菌濃度は4.0±0.2g/リッターに制御できた。菌濃度が一定となったところで、グルコース/スクロース アナライザーによって発酵液中の残基質濃度を測定したところ、グルコース/スクロース合計として10g/リッターであったので、発酵開始時と同じブラジル産モラセスを水道水で5.7倍に希釈し、120℃、10分間オートクレーブ滅菌したものを基質液として950g/hの供給レートで4時間連続供給した。
4時間の供給を行った後供給を停止したところ、細菌は発酵液中に残っていたわずかな基質をたちまち食べ尽くし、供給停止後約15分で排気炭酸ガスの急激な低下が認められた。排気炭酸ガスの発生量が設定値の0.08リッター/minに達したとき、基質が枯渇したものと判断し供給を再開した。実際炭酸ガス発生が設定下限に達したときの残糖濃度はアナライザーによればほとんど0g/リッターである。この操作は制御プログラムによって自動的に行われる。
以後1,000g/hの供給レートで4時間の供給を行い、一時供給を停止して排気炭酸ガスの急激な減少を確認し、排気炭酸ガス流量が閾値に達したとき供給を再開するプログラムを働かせて連続運転を行った。供給を停止した後炭酸ガス発生の急激な減少が起こるまでの時間によって、供給中の発酵液残糖濃度を推測することができる。この時間の長さから、残糖濃度が高いと判断したときは供給レートを少し小さく、逆ならば速度を大きくして微調整を行う。
ただし、ここで基質供給の設定値は、発酵の方式や基質の種類などの発酵条件、使用菌株の性能などにより異なる場合もある。又、本実施例では毎回の基質液の添加時間を4時間にしたが、前述のごとく、菌の活性が大きく変らない時間内であれば、この添加時間を一定にする必要はなく時間ロスを少なくするために徐々に長く取った方が望ましい。
図4において、この発酵の経過を濁度制御の状態(上段)、マスフローセンサーによる排気炭酸ガスの発生(下段)を示し、発酵槽内エタノール濃度、発酵槽内残糖濃度を併せて示す。上述した供給プログラムにより安定した連続運転が255時間継続した。この間、供給中の発酵液残糖濃度はにグルコース/スゥロース合量として約10.0±5g/リッターに維持された。また、発酵液の平均エタノール濃度は約68g/リッターであった。正味連続運転230時間でエタノール68g/リッターを含む発酵液220リッターを得た。
(実施例2)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液はコーンスターチ糖化液にCSL(コーン・スティープ・リカー)を添加したものを用いた。
コーンスターチ200g/リッターを水に懸濁しスラリーとした後、攪拌しながらpHを6.0に調整し、Termamyl 120L(Novo)0.5μリッター/g starchを加えwater bath上で90℃,1h液化処理を行う。これを冷却後pHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。その結果グルコース濃度178g/リッターの糖液を得た。
これを水にてグルコース濃度130g/リッターとなるよう希釈し、予め遠心分離によって固形分を除いたCSL(サンエイ糖化KK)5g/リッターを加え、pH調整後オートクレーブ滅菌処理したものを培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは950g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、200hの連続運転で58g/リッターのエタノールを含む発酵液180リッターを得た。
(実施例3)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液はキャッサバデンプン糖化液にモラセスを添加したものを用いた。
キャッサバデンプン(タイ国産)200g/リッターを水に懸濁しスラリーとした後、攪拌しながらpHを6.0に調整し、Termamyl 120L(Novo)0.5μリッター/g starchを加えwater bath上で90℃,1h液化処理を行う。これを冷却後pHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。その結果グルコース濃度175g/リッターの糖液を得た。これを水にてグルコース濃度130g/リッターとなるよう希釈し、実施例1において用いたモラセス5.7.倍希釈液を1:1に混合し、pH調整後オートクレーブ滅菌処理したものを培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは1,000g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、200hの連続運転で58g/リッターのエタノールを含む発酵液175リッターを得た。
(実施例4)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液は生ゴミを原料とする発酵想定したモデル生ゴミ糖化液である。
ご飯(白米)250g、キャベツ59g、ゆでたにんじん50g、バナナ(可食部)50g、サシミ50g、を適量の水を加えてジューサーミキサーで粉砕ジュース化した後、全量1リッターの水を加えて希釈する。攪拌しながらpHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。糖化後のグルコース濃度85g/リッターの糖液を得た。これをそのままオートクレーブ滅菌処理して、培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは1,200g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、150hの連続運転で41g/リッターのエタノールを含む発酵液150リッターを得た。
以上の実施例により、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる点は明らかであり、本発明は従来技術に比べ顕著な利点がある。
以下、βラクタム系抗生物質に関する比較例1及び実施例5、6を説明する。実施例5、6に共通する事項は次のとおりである。
Zymomonas mobilisを用いるエタノール発酵を連続させエタノール生産を行うにあたり、最初に発酵槽に仕込む培地を加熱蒸気殺菌した後冷却し、初発培地とする。また、滅菌した冷水にペニシリンGカリウムを溶解させたものを、初発培地に最終濃度5−20IU/ミリリッターになるように添加し、種菌(シード)を加えて発酵開始する。
実施例1と同様に、回分培養で菌濃度を上昇させ、菌濃縮を行って細胞濃度を目標値まで上昇させる。細胞濃度が目標に達したら初発培地同様の手順でペニシリンGカリウムを溶解し、最終濃度5−20IU/ミリリッターになるように添加した基質液を連続的に添加して連続発酵を行う。
また、菌濃縮に用いるクロスフローろ過器16についても、ペニシリンGカリウムを最終濃度5−20IU/ミリリッターとなるように添加して温度30℃で2時間インキュベートし、クロスフローろ過器16の膜内や配管細部に残存するコンタミ菌を死滅させる。
これらの点が、実施例1から4までと、実施例5,6との相違点である。以下、実施例5、6により詳細に説明するように、これらの処置により、Zymomonas mobilisによるエタノール連続発酵は、350時間の長期に亘り全くコンタミ菌の侵入・増殖を受けることなく、常時最大速度でエタノールを発酵生産できた。もちろんこの方法はZymomonas mobilisに限らずアルコール発酵能の付与された遺伝子組み換え大腸菌を用いる発酵においても有効である。
ここで、抗生物質は、ペニシリンに限定されるものではなく、アンピシリンを初めグラム陽性細菌に有効な全てのβラクタム系抗生物質を用いても同様の効果を得ることが出来る。
次に、実施例5、6に先立ち、比較例1を説明する。
(比較例1)
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、結晶ブドウ糖140g/リッター,酵母エキス5g/リッター,味液(大豆フレーク酸加水分解液)0.5vol%からなる組成の培地を、pH5.5に調整し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌したものを用いた。この培地2リッターを予め滅菌した3リッター容小型発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するので、pH計10によってpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
図5は、比較例1における発酵過程を示すグラフである。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器による菌濃縮を開始し、基質液によって基質を追加すると共に除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度の上昇を行った。
培養開始約40時間で細胞濃度が約5g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。図5に示されているように、培養開始後80時間(連続発酵に入って40時間)までは、菌濃度はほぼ6g/リッターを維持し、エタノール濃度も漸減ではあるものの60g/リッター以上を維持できており、炭酸ガス発生量も減少傾向にはあるものの250ミリリッター/min(約10mmol/min)程度であり、エタノール生産速度は約30g/h程度を維持できている。
しかしながら、連続発酵開始40時間目以降、急激に炭酸ガスの発生速度が低下し、エタノール濃度も急落し、アンモニア消費速度が急上昇する異常発酵となっている。培養120時間目に至り、発酵は全く制御不可能となったために、培養を打ち切った。これは培養40時間(連続発酵開始とほとんど同時に)乳酸菌がコンタミし、これが80時間目以降急激に増殖したためであると考えられる。因みに、実際培養100時間目の培養液を寒天プレート培地で培養したところ、多数の乳酸菌のコロニーが確認された。
(実施例5)
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し、115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し、115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、結晶ブドウ糖140g/リッター,酵母エキス5g/リッター,味液(大豆フレーク酸加水分解液)0.5vol%からなる組成の培地をpH5.5.に調整し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌したものである。培養に用いた初発培地・菌の濃縮に用いた基質液・連続発酵基質液はすべて熱殺菌したものを冷却しそこに最終濃度5IU/ミリリッターになるようにペニシリンGカリウムを加えたものを用いた。
この培地2リッターを予め滅菌した3リッター容小型発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するのでpH計10によってpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
システムは、実施例1に係る図1に示したものと同じである。比較例1でのべたように過去の培養においてコンタミネーションの被害が発生したので、ろ過器16の内部等にコンタミ菌が残留している可能性がある。このため、培養に先立ち残存するコンタミ菌を徹底的に駆除すべく、先にコンタミした培養に用いたフィルターカートリッジを、発酵終了後完全に分解洗浄し、アルカリ液に数日浸漬し、徹底的に滅菌した。しかる後、ペニシリン洗浄によって残存コンタミ菌の撲滅を試みた。すなわち、図1のシステムの隅々まで、ペニシリンにより洗浄し、また上述のように、ペニシリン洗浄したフィルターカートリッジを、発酵槽1に取り付け、菌濃縮循環に使用した。
図6は、培養結果を示す。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器16による菌濃縮を開始し、ペニシリンGカリウムを最終濃度5IU/ミリリッターを添加した基質液を供給して基質を追加する。また、除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度の上昇を行った。
培養開始約30時間で細胞濃度が約5g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。
連続発酵の基質液は、三温糖140g/リッター,酵母エキス(YE)5g/リッター,味液5ミリリッター/リッターをpH5.5に調整後120℃20分オートクレーブ滅菌後冷却し、ペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加したものとした。
図6は、実施例5による連続発酵の結果を示す。150時間の長期にわたり全くコンタミネーションに犯されることなく終始健全な発酵でエタノールを連続生産できた。全ての連続運転期間中菌濃度は5±0.5g/リッターに維持され、CO2発生量は350ミリリッター/min(約15mmol/min)程度、エタノール生産速度は約42g/h程度であり、高い生産速度を維持できた。基質液の供給速度と培養液の引き抜き速度は、図6に示すように安定しており、培養中変化なく、連続発酵が定常状態を維持し長時間連続運転できた。培養液のエタノール濃度は、全期間に亘り65±5g/リッター(約8.2%)であった。このようにろ過器16のペニシリン洗浄と培地へのペニシリン添加の効果は顕著であり、エタノール連続発酵を長時間にわたりコンタミネーションの被害を受けず実施することが可能となった。
(実施例6)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件は実施例5と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件は実施例5と同一である。
初発培地・菌濃縮時基質液・連続発酵基質液は同一組成、同じ調整法によった。すなわち、糖液はコーンスターチ酵素糖化液を水で希釈し、これにCSL(コーン・スティープ・リカー)5ミリリッター/リッターの濃度に添加して、pH5.5とした後、糖濃度140g/リッターに最終調整し、120℃20分オートクレーブ滅菌した。殺菌後冷却し、培地が十分冷えたところでペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加して培養に用いた。クロスフローろ過器16のペニシリン洗浄・コンタミ菌除去の要領は、実施例5と同一である。
図7は、実施例6による培養結果を示す。システムは、実施例1と同一である。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器による菌濃縮を開始し、ペニシリンGカリウムを最終濃度5IU/ミリリッターを添加した基質液を供給して基質を追加する。また、除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度を上昇させた。
培養開始約27時間で細胞濃度が約6g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。連続発酵の基質液は、前述のコーンスターチ酵素糖化液(糖濃度140g/リッター)−CSL(コーン・スティープ・リカー)5ミリリッター/リッターをpH5.5に調整後、120℃20分オートクレーブ滅菌後冷却し、ペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加したものである。
図7に示すように、全350時間の長期にわたり全くコンタミネーションに犯されることなく終始健全な発酵でエタノールを連続生産できた。全ての連続運転期間中菌濃度は6±0.5g/リッターに維持され、炭酸ガス発生量は500ミリリッター/min(約21mmol/min)、エタノール生産速度は約58g/hであり、高い生産速度を全培養時間にわたって維持できた。
基質液の供給速度と培養液の引き抜き速度は、図7下段に示すように安定しており、培養中変化なく、連続発酵が定常状態を維持し長時間連続運転できた。培養液のエタノール濃度は、全期間に亘り65±5g/リッター(約8.2%)であった。このようにろ過器16のペニシリン洗浄と培地へのペニシリン添加の効果は顕著で、エタノール連続発酵を長時間にわたりコンタミネーションの被害を受けず実施できた。
本発明は、アルコール生産細菌(Zymomonas mobillis等の嫌気性菌及びアルコール発酵能が付与された大腸菌を含む。)の連続培養装置及びその方法に関する。更に詳しくは、本発明は、基質供給液を連続的もしくは断続的に発酵槽に供給するにあたり、排気としての炭酸ガスの流量変化を指標にして発酵内の基質の消費を予測し、発酵槽内の基質濃度が低濃度一定の値となるよう、基質液の供給と発酵液の引抜を制御する技術に関する。
発酵産業では、微生物による各種アミノ酸、有機酸、エタノール、アセトン・ブタノール、核酸関連物質等の発酵また微生物菌体そのものの生産(例えば、酵母菌体の生産)のために、微生物による発酵が利用される。そして、これら工業生産では、糖などの基質を主原料として、ほとんどすべて回分発酵法によって行われている。したがって、発酵そのもの以外に仕込み、装置の準備、種発酵、発酵が終わった後の後始末・洗浄を繰り返さなければならず、発酵槽の正味稼働時間は非常に短く、生産性が低い。
この問題を解決するため、発酵槽を数基直列に並べて発酵生産を行うカスケード法が酵母を用いるエタノール発酵に用いられているが、これは抜本的な解決策とは言えない。また回分発酵では、発酵経過の監視のために、手作業によって頻繁な糖濃度分析などが必要で、このための人手確保も工場運転管理の負担となる。
ところで、すべての発酵方法において、高濃度基質による阻害を防ぎ、基質を有効に利用し、発酵液の残糖濃度を可能な限り低く抑えて、基質ロスを少なくすることが必要である。又、発酵を終了した液からの生産物の分離を容易にし、廃液処理工程のコスト負担を可能な限り小さくするために、生産物分離工程への、菌の食べ残しの基質の流出を極小化する必要がある。
残基質濃度を低く一定に制御して基質供給と発酵液の抜き出しを行い、長時間安定した連続発酵を行うことが可能であれば、発酵工程の装置生産性が飛躍的に向上する。またこのようなプロセスでは糖濃度管理のための分析作業をほとんど皆無にすることができるので、無駄な人手を省き、労賃を大幅低減できる上、夜間作業を皆無にすることができる。
本発明者らは、特許文献1(特開2003−274934号公報)において、Zymomonas mobillisなど嫌気性細菌を用いるエタノール連続発酵に関する方法を提案した。この方法は、菌の代謝にともなう発酵液のpH変化量が基質消費量とエタノール生産量に対応するという原理を用いて連続発酵を可能にするものである。
すなわち、発酵液pHの変化を修正するため、アルカリ(アンモニア、苛性ソーダ、その他)添加量の積算値に対応する一定量の基質を供給し、それに対応する発酵液を引き抜き、発酵槽の発酵液量を一定に保ちながら連続発酵を行う。しかしながら、この方法をモラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料に適用しようとすると、pH変化量は必ずしも基質消費とは対応せず、この方法での連続発酵が困難になる場合があることがわかった。
特開2003−274934号公報
そこで本発明は、Zymomonas mobillisなど嫌気性細菌を用いるエタノール連続発酵において、モラセスや食品廃棄物、食品工場廃液など安価であるが不純物の多い基質においても、正確に糖消費量と残糖濃度を予測し、発酵液の基質濃度を低いレベルで一定に保つことができ、基質ロスが少ないアルコール生産細菌の連続培養装置及びその関連技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決を目指して鋭意研究の結果、モラセスなどの工業用原料を用いる嫌気性細菌によるエタノール連続発酵において、排気として発酵槽外に流出する炭酸ガス量の変化を正確に捉えれば発酵槽内の基質消費量を正確に把握できるという点に着目した。さらに、発酵液中の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の減少を炭酸ガス流量低下として検出し、これを指標として、制御部によって基質供給と発酵液の引き抜きを制御し、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定的に連続発酵が可能な連続培養方法を完成した。
第1の発明に係るアルコール生産細菌の連続培養方法は、アルコール生産細菌を培養する発酵槽に、基質液を供給するとともに、基質液の供給量にあわせた量の発酵液を発酵槽から引き抜く方法であって、発酵槽から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回るとき、それをトリガとして発酵槽に基質液を供給する。
この構成によれば、発酵槽内の基質がほとんど枯渇する状態で、基質液の供給と発酵液の引き抜きが実施されるので、細菌の食べ残しによる基質ロスはほとんど生じない。また、後述する実施例により明らかなように、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる。
さらには、発酵槽に基質液を供給する時間と、発酵槽に基質液を供給する時間当たりのレートとは、一定であることが望ましい。
即ち、1回の基質液の供給量は、供給開始直前の数時間前の基質消費速度を予め計算し、それに基づき添加された基質を微生物が食べ尽くして発酵槽内にほとんど残らないようにする供給レートと供給時間を与えるのが望ましい。
所定範囲は、炭酸ガス流量値の閾値により定められることが望ましい。
本発明によれば、細菌の食べ残しによる基質ロスはほとんどなく、しかも、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる。
1 発酵槽
2 攪拌機
3 泡トラップ
4 流量計
5 制御部
6 インターフェイス
7 CPU
8 ROM
9 濁度計
10 pH計
11 基質液槽
12 基質液供給ポンプ
13 中和剤槽
14 中和剤供給ポンプ
15 循環ポンプ
16 クロスフローろ過器
17 切替弁
18 引抜ポンプ
19 引抜液槽
2 攪拌機
3 泡トラップ
4 流量計
5 制御部
6 インターフェイス
7 CPU
8 ROM
9 濁度計
10 pH計
11 基質液槽
12 基質液供給ポンプ
13 中和剤槽
14 中和剤供給ポンプ
15 循環ポンプ
16 クロスフローろ過器
17 切替弁
18 引抜ポンプ
19 引抜液槽
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。まず、具体的構成の説明に先立ち、本形態の要点をまとめると次のとおりである。
本形態は、資化可能なあらゆる発酵資源を基質液として用いることができるZymomonas mobillisなど嫌気性細菌のエタノール連続発酵法に関する。連続発酵の開始は、基質液を初回添加し、発酵初期に予め求めておいた供給レートで基質液を一定時間添加することによる。予め求めておいた供給レートは、菌株、培地組成、発酵条件を特定し、回分発酵による発酵試験によって、菌濃度と糖消費速度を測定し、その関係から求められる。それ以降の基質液の供給は、発酵槽内の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の減少をマスフローセンサーなどで検出し、細菌が基質飢餓状態にならないように実施され、発酵槽内の基質濃度は、常に低レベルの一定範囲内に保たれる。
以上をふまえて、次に図1を参照しながら、本形態における連続培養装置について説明する。発酵槽1は、その内部でZymomonas mobillisなど嫌気性細菌を培養する。本形態の発酵槽1は、容積3リッターの小型の槽であり、圧力容器ではないため、内圧の制御を行うのは難しく実施していない。しかしながら、圧力容器である発酵槽を使用することもできるし、そのときは内圧の制御もあわせて実施するのが好ましい。発酵槽1内の温度は、所定値になるように管理されており、発酵槽1に設けられた攪拌器2により発酵槽1内の内容物は、一定の速度でゆっくりと撹拌される。
発酵槽1からの排出管は、泡を除去する泡トラップ3を介して流量計4に接続される。流量計4は、発酵槽1から排出される炭酸ガスの流量値を計測し、例えば、マスフローセンサ、排気ガス流量計、圧力計等から構成される。流量計4が計測した炭酸ガス流量値は、制御部5のインターフェイス6へ出力される。勿論、炭酸ガスの流量値に一意に対応する他の物理量を計測してもよい。
制御部5は、図1に示す連続培養装置全体を制御する。制御部5のインターフェイス6には、流量計4からの炭酸ガス流量値の他、発酵槽1の内部の濁度を計測する濁度計9(レーザ濁度計が望ましい)からの濁度値と、発酵槽1の内部のpH値を計測するpH計10からのpH値とが入力される。CPU7は、制御部5の中核をなし、ROM8に記憶されている制御プログラムを実行する。この制御プログラムには、図2のフローチャートに従う供給制御プログラムが含まれる。また、CPU7は、適宜インターフェイス6を介し、基質液供給ポンプ12、中和剤供給ポンプ14、循環ポンプ15、切替弁17、引抜ポンプ18に制御信号を出力し、これにより連続培養装置全体を制御する。
基質液槽11は、後記実施例に示すような基質液を貯蔵する。基質液供給ポンプ12にインターフェイス6から基質供給信号が入力されると、所定のレートで所定の時間、基質液槽11から基質液が発酵槽1内へ供給される。その結果、発酵槽1内の残糖量は上昇する。
中和剤槽13は、例えばアンモニア等の中和剤を貯蔵する。発酵槽1内で発酵が進行すると、細菌の増殖に伴い、発酵槽1内のpHが低下する。本形態では、pH値が常に4.5乃至6程度の一定値(条件により異なる)になるように、CPU7は、中和剤供給ポンプ14に中和剤供給信号を出力し、発酵槽1内のpH値を制御する。
発酵槽1には、インターフェイス6からの循環指示信号にしたがって、クロスフローろ過器16に発酵槽1内の発酵液を引き抜いて圧送する循環ポンプ15が接続されている。クロスフローろ過器16は、引き抜かれた発酵液の一部を発酵槽1内へ戻すとともに、ろ液を切替弁17の一方の入力ポートへ接続する。また、切替弁17の他方の入力ポートには、発酵槽1内の発酵液が連通する。
切替弁17は、インターフェイス6からの切替信号にしたがって、一方/他方の入力ポートのいずれかを出力ポートへ接続する。引抜ポンプ18は、インターフェイス6からの引抜指示信号にしたがい、切替弁17の出力ポートからろ液/発酵液のいずれかを引抜液槽19へ圧送する。これにより、引抜液槽19には、エタノールを含む発酵液が取り出される。なお、クロスフローろ過器16に替えて、遠心分離器により構成しても良い。
次に、図2を参照しながら、制御部5による基質液の供給制御の各プロセスを説明する。このプロセスでは、制御部5が、発酵槽1から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回ったとき、それをトリガとして基質液供給ポンプ12(供給手段)に基質供給信号を出力し、基質液を発酵槽1へ供給させる点が重要である。
そして、循環ポンプ15、クロスフローろ過器16、切替弁17及び引抜ポンプ18は、発酵槽1から発酵液を引き抜く引抜手段に相当し、制御部5は、基質液供給ポンプ12が発酵槽1に基質液を供給する供給量にあわせた量の発酵液をこの引抜手段が発酵槽1から引き抜くように、この引抜手段を制御する。なお、CPU7は、濁度計9からの濁度値を参照し、発酵槽1内の発酵液菌濃度が低ければクロスフローろ過器16からろ液を引き抜き(切替弁17は図1の状態)、菌濃度が高ければ発酵槽1から(切替弁17は図1とは反対の状態)発酵液を引き抜いて、発酵槽1内の発酵液菌濃度が一定に保たれる。
図2、図3を参照しながら説明する。まず図2のステップ1に示すように、発酵槽1への種菌及び基質液の調整・投入が行われ、ステップ2にて、待ち時間T0、炭酸ガスの流量値閾値Th、供給時間T1及び供給レートR1がセットされる。これらの所値は条件に応じて予め設定されており、必要に応じて適宜修正される。図3の時刻t=t0において、発酵が開始される。
供給レートR1は、発酵液の基質濃度が枯渇直前の低いレベルが維持できるように、予め求めておいた菌体濃度と糖消費速度との関係式によって与えられる値を設定し、ROM8に格納しておく。
発酵開始当初は、発酵槽1内において、菌濃度が低く(図3(a))、基質は豊富に存在する(図3(b))。その後、アルコール生産細菌の特徴として、基質が残っていても増殖は停止する。そこで、菌濃度を増加させるために、培養液を循環し、ろ液を引き抜きその分の培地を補充しながら濃縮培養を行い、菌濃度を上昇させる。菌濃度が設定値に達したら、濁度制御を開始し連続発酵に入る。
細菌の増殖が活発化するにつれ、細菌の濃度が上昇し、発酵槽1内の残糖量は低下する。また、発酵が進むと、炭酸ガスの流量値は上昇する(図3(c))。この際、CPU7は、待ち時間T0が経過したかチェックしており(ステップ3)、経過するまで基質供給を行わない。
図3(c)に示すように、時刻t0における初回基質液添加終了後、待ち時間T0を経過すると、CPU7は、ステップ4にて、炭酸ガスの流量値が閾値Thを下回ったかどうかチェックする。例えば、時刻t=t0+T0のとき、炭酸ガスの流量値は、閾値Thを上回っており、このときは、CPU7は、ステップ8にて処理が終了すべきでないことを確認した上で、ステップ4へ処理を戻し、再度上記チェックを行う。
時刻t=t1において、発酵槽1内の基質が枯渇すると、炭酸ガスの発生量が急に減少し、閾値Thを下回る。これをトリガとして、ステップ4からステップ5へ処理が移る。即ち、CPU7は、基質供給信号をインターフェイス6を介して基質液供給ポンプ12へ出力し、基質液供給ポンプ12は、基質液槽11から基質液を供給レートR1にしたがって発酵槽1へ供給し始め(ステップ5)、所定時間T1だけこの状態が継続する(ステップ6)。その結果、図3(b)に示すように、殆どゼロであった発酵槽1内の残糖量が増加に転じる。即ち、時刻t=t1の時点で、基質供給を再開してやれば制限基質濃度に近い低い残基質濃度で運転を継続できる。
さて、グルコースを基質とするエタノール発酵における炭酸ガス発生量と発酵との関係式は、周知のごとく以下の理論式で与えられる。
C6H12O6→2C2H5OH+2CO2 (1)
すなわち、グルコース1モルに対し2モルのエタノールを生成するとき2モルの炭酸ガスを発生するので、糖が枯渇してエタノール生成が停止すれば炭酸ガスの発生は起こらない。したがって炭酸ガス排出量の減少を指標にすることによって、基質の枯渇を信頼性高く検出することができる。
すなわち、グルコース1モルに対し2モルのエタノールを生成するとき2モルの炭酸ガスを発生するので、糖が枯渇してエタノール生成が停止すれば炭酸ガスの発生は起こらない。したがって炭酸ガス排出量の減少を指標にすることによって、基質の枯渇を信頼性高く検出することができる。
この連続発酵の発酵系で菌濃度は濁度計9によって一定に制御されているが、実際に供給を行って、基質消費が制御部にインプットした予測値より早くなったり遅くなったりする場合もあるので、供給のタイミングは微妙に調整するのが好ましい。
そして、時刻t1から所定時間T1が経過したら、CPU7は、基質液供給ポンプ12に基質供給を停止せよとの信号を出力し(ステップ7)、基質液供給ポンプ12は、基質の供給を停止する。そのため、図3(b)に示すように、残糖量は、再び減少へ転じ、時刻t2にて、再度炭酸ガスの流量値が閾値Thを下回る結果となる。
以降、時刻t2,t3,t4・・・において、同様の処理が繰り返される(ステップ3〜8)。
かくして、第2回以降(時刻t1以降)の基質供給は、発酵槽1内の基質が枯渇するときに生ずる炭酸ガス発生の急激な減少を流量計4が検出し、閾値Thに達したとき開始される。
このようにして、微生物の発生する炭酸ガスを逐次チェックしながら糖などの基質を枯渇させることなく基質液を連続的に添加することが可能となり、発酵槽内基質濃度を容易に5g/リッター以下の低レベルに抑えることが可能となる。モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質としpH変化量に依存したのでは連続発酵が困難になりうる場合においても、この点は妥当するため、従来技術よりもより広汎で材料費が低廉な発酵を行える。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。勿論、以下の実施例により本発明が限定されるわけではない。
(実施例1)
種菌は、YMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobillis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌は、YMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobillis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、ブラジル産モラセスを水道水で5.3倍に希釈し、120℃、10分間オートクレーブ滅菌したものを用いた。この培地2リッターを予め滅菌した小型の(容積3リッター)発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するので、pH計によってオンラインでpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
発酵開始後15時間で菌増殖が頭打ちとなったので、発酵液の循環濃縮を行い、菌濃度を上昇させた。発酵槽外に設置したクロスフローろ過器(日本ポール製、0.45mμ,0.1m2カートリッジ)に発酵液を循環し、ろ液を発酵槽外に抜き出して発酵開始時と同じ培地を補充して発酵槽液量を一定に維持しながら菌濃度の上昇を図った。
このようにして、発酵開始約24時間で菌濃度約4g/リッターに達した。以後連続発酵の全時間255時間にわたりレーザー濁度計(ASR社製Model LA−301型)によって、図4に示すように、菌濃度は4.0±0.2g/リッターに制御できた。菌濃度が一定となったところで、グルコース/スクロース アナライザーによって発酵液中の残基質濃度を測定したところ、グルコース/スクロース合計として10g/リッターであったので、発酵開始時と同じブラジル産モラセスを水道水で5.7倍に希釈し、120℃、10分間オートクレーブ滅菌したものを基質液として950g/hの供給レートで4時間連続供給した。
4時間の供給を行った後供給を停止したところ、細菌は発酵液中に残っていたわずかな基質をたちまち食べ尽くし、供給停止後約15分で排気炭酸ガスの急激な低下が認められた。排気炭酸ガスの発生量が設定値の0.08リッター/minに達したとき、基質が枯渇したものと判断し供給を再開した。実際炭酸ガス発生が設定下限に達したときの残糖濃度はアナライザーによればほとんど0g/リッターである。この操作は制御プログラムによって自動的に行われる。
以後1,000g/hの供給レートで4時間の供給を行い、一時供給を停止して排気炭酸ガスの急激な減少を確認し、排気炭酸ガス流量が閾値に達したとき供給を再開するプログラムを働かせて連続運転を行った。供給を停止した後炭酸ガス発生の急激な減少が起こるまでの時間によって、供給中の発酵液残糖濃度を推測することができる。この時間の長さから、残糖濃度が高いと判断したときは供給レートを少し小さく、逆ならば速度を大きくして微調整を行う。
ただし、ここで基質供給の設定値は、発酵の方式や基質の種類などの発酵条件、使用菌株の性能などにより異なる場合もある。又、本実施例では毎回の基質液の添加時間を4時間にしたが、前述のごとく、菌の活性が大きく変らない時間内であれば、この添加時間を一定にする必要はなく時間ロスを少なくするために徐々に長く取った方が望ましい。
図4において、この発酵の経過を濁度制御の状態(上段)、マスフローセンサーによる排気炭酸ガスの発生(下段)を示し、発酵槽内エタノール濃度、発酵槽内残糖濃度を併せて示す。上述した供給プログラムにより安定した連続運転が255時間継続した。この間、供給中の発酵液残糖濃度はにグルコース/スゥロース合量として約10.0±5g/リッターに維持された。また、発酵液の平均エタノール濃度は約68g/リッターであった。正味連続運転230時間でエタノール68g/リッターを含む発酵液220リッターを得た。
(実施例2)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液はコーンスターチ糖化液にCSL(コーン・スティープ・リカー)を添加したものを用いた。
コーンスターチ200g/リッターを水に懸濁しスラリーとした後、攪拌しながらpHを6.0に調整し、Termamyl 120L(Novo)0.5μリッター/g starchを加えwater bath上で90℃,1h液化処理を行う。これを冷却後pHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。その結果グルコース濃度178g/リッターの糖液を得た。
これを水にてグルコース濃度130g/リッターとなるよう希釈し、予め遠心分離によって固形分を除いたCSL(サンエイ糖化KK)5g/リッターを加え、pH調整後オートクレーブ滅菌処理したものを培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは950g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、200hの連続運転で58g/リッターのエタノールを含む発酵液180リッターを得た。
(実施例3)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液はキャッサバデンプン糖化液にモラセスを添加したものを用いた。
キャッサバデンプン(タイ国産)200g/リッターを水に懸濁しスラリーとした後、攪拌しながらpHを6.0に調整し、Termamyl 120L(Novo)0.5μリッター/g starchを加えwater bath上で90℃,1h液化処理を行う。これを冷却後pHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。その結果グルコース濃度175g/リッターの糖液を得た。これを水にてグルコース濃度130g/リッターとなるよう希釈し、実施例1において用いたモラセス5.7.倍希釈液を1:1に混合し、pH調整後オートクレーブ滅菌処理したものを培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは1,000g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、200hの連続運転で58g/リッターのエタノールを含む発酵液175リッターを得た。
(実施例4)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件、及び主発酵に用いた装置は、実施例1と同一である。
主発酵培地及び基質液は生ゴミを原料とする発酵想定したモデル生ゴミ糖化液である。
ご飯(白米)250g、キャベツ59g、ゆでたにんじん50g、バナナ(可食部)50g、サシミ50g、を適量の水を加えてジューサーミキサーで粉砕ジュース化した後、全量1リッターの水を加えて希釈する。攪拌しながらpHを4.5に調整し、Dextrozyme(Novo)0.6μリッター/g starchを加え恒温槽内で60℃,24h糖化処理を行った。糖化後のグルコース濃度85g/リッターの糖液を得た。これをそのままオートクレーブ滅菌処理して、培地・基質液として用いた。
発酵の手順及び制御プログラムは実施例1と全く同じである。
供給レートは1,200g/h、1回の供給継続時間は実施例1と同じ4h、排気炭酸ガスの閾値は実施例1と同じ0.08リッター/minである。
発酵は安定して長時間継続し、150hの連続運転で41g/リッターのエタノールを含む発酵液150リッターを得た。
以上の実施例により、モラセスのような不明の不純物を多く含む安価な工業原料を基質とする場合においても、発酵槽の基質濃度を低い一定のレベルに保ちながら、長時間安定に連続発酵できる点は明らかであり、本発明は従来技術に比べ顕著な利点がある。
以下、βラクタム系抗生物質に関する比較例1及び実施例5、6を説明する。実施例5、6に共通する事項は次のとおりである。
Zymomonas mobilisを用いるエタノール発酵を連続させエタノール生産を行うにあたり、最初に発酵槽に仕込む培地を加熱蒸気殺菌した後冷却し、初発培地とする。また、滅菌した冷水にペニシリンGカリウムを溶解させたものを、初発培地に最終濃度5−20IU/ミリリッターになるように添加し、種菌(シード)を加えて発酵開始する。
実施例1と同様に、回分培養で菌濃度を上昇させ、菌濃縮を行って細胞濃度を目標値まで上昇させる。細胞濃度が目標に達したら初発培地同様の手順でペニシリンGカリウムを溶解し、最終濃度5−20IU/ミリリッターになるように添加した基質液を連続的に添加して連続発酵を行う。
また、菌濃縮に用いるクロスフローろ過器16についても、ペニシリンGカリウムを最終濃度5−20IU/ミリリッターとなるように添加して温度30℃で2時間インキュベートし、クロスフローろ過器16の膜内や配管細部に残存するコンタミ菌を死滅させる。
これらの点が、実施例1から4までと、実施例5,6との相違点である。以下、実施例5、6により詳細に説明するように、これらの処置により、Zymomonas mobilisによるエタノール連続発酵は、350時間の長期に亘り全くコンタミ菌の侵入・増殖を受けることなく、常時最大速度でエタノールを発酵生産できた。もちろんこの方法はZymomonas mobilisに限らずアルコール発酵能の付与された遺伝子組み換え大腸菌を用いる発酵においても有効である。
ここで、抗生物質は、ペニシリンに限定されるものではなく、アンピシリンを初めグラム陽性細菌に有効な全てのβラクタム系抗生物質を用いても同様の効果を得ることが出来る。
次に、実施例5、6に先立ち、比較例1を説明する。
(比較例1)
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、結晶ブドウ糖140g/リッター,酵母エキス5g/リッター,味液(大豆フレーク酸加水分解液)0.5vol%からなる組成の培地を、pH5.5に調整し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌したものを用いた。この培地2リッターを予め滅菌した3リッター容小型発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するので、pH計10によってpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
図5は、比較例1における発酵過程を示すグラフである。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器による菌濃縮を開始し、基質液によって基質を追加すると共に除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度の上昇を行った。
培養開始約40時間で細胞濃度が約5g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。図5に示されているように、培養開始後80時間(連続発酵に入って40時間)までは、菌濃度はほぼ6g/リッターを維持し、エタノール濃度も漸減ではあるものの60g/リッター以上を維持できており、炭酸ガス発生量も減少傾向にはあるものの250ミリリッター/min(約10mmol/min)程度であり、エタノール生産速度は約30g/h程度を維持できている。
しかしながら、連続発酵開始40時間目以降、急激に炭酸ガスの発生速度が低下し、エタノール濃度も急落し、アンモニア消費速度が急上昇する異常発酵となっている。培養120時間目に至り、発酵は全く制御不可能となったために、培養を打ち切った。これは培養40時間(連続発酵開始とほとんど同時に)乳酸菌がコンタミし、これが80時間目以降急激に増殖したためであると考えられる。因みに、実際培養100時間目の培養液を寒天プレート培地で培養したところ、多数の乳酸菌のコロニーが確認された。
(実施例5)
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し、115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
種菌はYMブロス(Difco Laboratories,Detroit)を培地とし、規定濃度に調整後、試験管に10ミリリッターを分注し、115℃で10分間加熱滅菌したもので調製した。これにZymomonas mobilis NRRL B−14023を接種し、30℃にて18時間静置発酵したものを用いた。
主発酵は、結晶ブドウ糖140g/リッター,酵母エキス5g/リッター,味液(大豆フレーク酸加水分解液)0.5vol%からなる組成の培地をpH5.5.に調整し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌したものである。培養に用いた初発培地・菌の濃縮に用いた基質液・連続発酵基質液はすべて熱殺菌したものを冷却しそこに最終濃度5IU/ミリリッターになるようにペニシリンGカリウムを加えたものを用いた。
この培地2リッターを予め滅菌した3リッター容小型発酵槽に入れ、先に述べたように調製した種発酵液100ミリリッターを添加し、温度30℃、攪拌100rpmにて発酵を開始した。菌増殖とともに発酵液pHが低下するのでpH計10によってpHをモニターしながら1Nアンモニア水によってpHを5.5に保つようにした。
システムは、実施例1に係る図1に示したものと同じである。比較例1でのべたように過去の培養においてコンタミネーションの被害が発生したので、ろ過器16の内部等にコンタミ菌が残留している可能性がある。このため、培養に先立ち残存するコンタミ菌を徹底的に駆除すべく、先にコンタミした培養に用いたフィルターカートリッジを、発酵終了後完全に分解洗浄し、アルカリ液に数日浸漬し、徹底的に滅菌した。しかる後、ペニシリン洗浄によって残存コンタミ菌の撲滅を試みた。すなわち、図1のシステムの隅々まで、ペニシリンにより洗浄し、また上述のように、ペニシリン洗浄したフィルターカートリッジを、発酵槽1に取り付け、菌濃縮循環に使用した。
図6は、培養結果を示す。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器16による菌濃縮を開始し、ペニシリンGカリウムを最終濃度5IU/ミリリッターを添加した基質液を供給して基質を追加する。また、除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度の上昇を行った。
培養開始約30時間で細胞濃度が約5g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。
連続発酵の基質液は、三温糖140g/リッター,酵母エキス(YE)5g/リッター,味液5ミリリッター/リッターをpH5.5に調整後120℃20分オートクレーブ滅菌後冷却し、ペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加したものとした。
図6は、実施例5による連続発酵の結果を示す。150時間の長期にわたり全くコンタミネーションに犯されることなく終始健全な発酵でエタノールを連続生産できた。全ての連続運転期間中菌濃度は5±0.5g/リッターに維持され、CO2発生量は350ミリリッター/min(約15mmol/min)程度、エタノール生産速度は約42g/h程度であり、高い生産速度を維持できた。基質液の供給速度と培養液の引き抜き速度は、図6に示すように安定しており、培養中変化なく、連続発酵が定常状態を維持し長時間連続運転できた。培養液のエタノール濃度は、全期間に亘り65±5g/リッター(約8.2%)であった。このようにろ過器16のペニシリン洗浄と培地へのペニシリン添加の効果は顕著であり、エタノール連続発酵を長時間にわたりコンタミネーションの被害を受けず実施することが可能となった。
(実施例6)
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件は実施例5と同一である。
シード(種)に用いた菌、培地、発酵法、発酵条件は実施例5と同一である。
初発培地・菌濃縮時基質液・連続発酵基質液は同一組成、同じ調整法によった。すなわち、糖液はコーンスターチ酵素糖化液を水で希釈し、これにCSL(コーン・スティープ・リカー)5ミリリッター/リッターの濃度に添加して、pH5.5とした後、糖濃度140g/リッターに最終調整し、120℃20分オートクレーブ滅菌した。殺菌後冷却し、培地が十分冷えたところでペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加して培養に用いた。クロスフローろ過器16のペニシリン洗浄・コンタミ菌除去の要領は、実施例5と同一である。
図7は、実施例6による培養結果を示す。システムは、実施例1と同一である。シード後、回分培養によって菌増殖が開始され、細胞濃度が1g/リッターを超えた時点でクロスフローろ過器による菌濃縮を開始し、ペニシリンGカリウムを最終濃度5IU/ミリリッターを添加した基質液を供給して基質を追加する。また、除菌液の培養系からの抜き出しを行い、細胞濃度を上昇させた。
培養開始約27時間で細胞濃度が約6g/リッターの目標値に達したので、図1のシステムを用いて連続発酵モードに入った。連続発酵の基質液は、前述のコーンスターチ酵素糖化液(糖濃度140g/リッター)−CSL(コーン・スティープ・リカー)5ミリリッター/リッターをpH5.5に調整後、120℃20分オートクレーブ滅菌後冷却し、ペニシリンGカリウムを5IU/ミリリッターになるように添加したものである。
図7に示すように、全350時間の長期にわたり全くコンタミネーションに犯されることなく終始健全な発酵でエタノールを連続生産できた。全ての連続運転期間中菌濃度は6±0.5g/リッターに維持され、炭酸ガス発生量は500ミリリッター/min(約21mmol/min)、エタノール生産速度は約58g/hであり、高い生産速度を全培養時間にわたって維持できた。
基質液の供給速度と培養液の引き抜き速度は、図7下段に示すように安定しており、培養中変化なく、連続発酵が定常状態を維持し長時間連続運転できた。培養液のエタノール濃度は、全期間に亘り65±5g/リッター(約8.2%)であった。このようにろ過器16のペニシリン洗浄と培地へのペニシリン添加の効果は顕著で、エタノール連続発酵を長時間にわたりコンタミネーションの被害を受けず実施できた。
Claims (11)
- アルコール生産細菌を培養する発酵槽と、
前記発酵槽に基質液を供給する供給手段と、
前記発酵槽から排出される炭酸ガス流量値又はその関数値を検出する計測器と、
前記計測器の出力に基づいて前記供給手段を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記発酵槽から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回ったことを示すとき、それをトリガとして前記供給手段に基質液を前記発酵槽へ供給させることを特徴とするアルコール生産細菌の連続培養装置。 - 前記供給手段が前記発酵槽に基質液を供給する時間と、前記供給手段が前記発酵槽に基質液を供給する時間当たりのレートとは、一定である請求の範囲第1項記載のアルコール生産細菌の連続培養装置。
- 前記所定範囲は、炭酸ガス流量値の閾値により定められる請求の範囲第1項記載のアルコール生産細菌の連続培養装置。
- 前記発酵槽から発酵液を引き抜く引抜手段をさらに備え、
前記制御部は、前記供給手段が前記発酵槽に基質液を供給する供給量にあわせた量の発酵液を前記引抜手段が前記発酵槽から引き抜くように、前記引抜手段を制御する請求の範囲第1項記載のアルコール生産細菌の連続培養装置。 - アルコール生産細菌を培養する発酵槽に、基質液を供給するとともに、前記基質液の供給量にあわせた量の発酵液を前記発酵槽から引き抜くアルコール生産細菌の連続培養方法であって、
前記発酵槽から排出される炭酸ガス流量値が所定範囲を下回るとき、それをトリガとして前記発酵槽に基質液を供給することを特徴とするアルコール生産細菌の連続培養方法。 - 前記発酵槽に基質液を供給する時間と、前記発酵槽に基質液を供給する時間当たりのレートとは、一定である請求の範囲第5項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
- 前記所定範囲は、炭酸ガス流量値の閾値により定められる請求の範囲第5項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
- βラクタム系抗生物質を添加するステップをさらに含む請求の範囲第5項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
- 前記βラクタム系抗生物質は、ペニシリンである請求の範囲第8項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
- 前記βラクタム系抗生物質は、前記発酵槽を含む連続培養装置の全部又は一部を洗浄する際に添加される請求の範囲第8項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
- 前記βラクタム系抗生物質は、前記発酵槽を含む連続培養装置の運転中に添加される請求の範囲第8項記載のアルコール生産細菌の連続培養方法。
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2006
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