JPWO2006126682A1 - アルツハイマー病の予防・治療用ワクチン - Google Patents

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Abstract

副作用が少なく安全で且つ簡便使用が可能なアルツハイマー病予防・治療用ワクチン及びその作製方法を提供する。アルツハイマー病の原因となる老人班の構成成分であるAβ分子種を、乳酸菌で例示される細菌の表層に発現させることにより、当該生成物の投与により惹起される抗体の作用による従来にはない安全かつ安価な経口タイプのアルツハイマー病予防・治療用ワクチンを可能とする。

Description

本願発明は、医療用医薬品に関する。詳細には、高齢化に伴い増加する老人性痴呆症の約半分を占めるアルツハイマー病の予防・治療用ワクチン、当該ワクチンの製造方法、及び当該製造方法に使用されるワクチン抗原発現用ベクターに関する。
我が国の65歳以上の老人の約10%が老年期痴呆であると報告されている。その老年期痴呆の二大原因の一つがアルツハイマー病であり、割合でも約50%を占めている。更に85歳以上では2人に1人がアルツハイマー病あるいはその前段階である軽度認知障害に罹患するといわれ、我国はもとより欧米に於いても大きな社会的問題となっている。その患者数は世界で約1500万人、我が国では150万人以上と報告されている。
現在、アルツハイマー病治療薬として世界で市販されているのは、エーザイ株式会社が開発したドネペジルとメルツ社が開発したメマンチンの2つであるが、両薬剤は病気の進行を遅らせる作用しかなく病気を根治させることは出来ない。
そのアルツハイマー病の病態仮説として、アミロイドβ(以下、Aβと略すことがある)の凝集・沈着による老人斑の形成が原因であるとするアミロイドカスケード仮説が有力である。この仮説をもとにアルツハイマー病の新しい治療法としてワクチン(免疫)療法が注目されている。本ワクチン療法の目的はAβをワクチンとして投与し、それに対する抗体を体内で産生させ、抗体が老人斑を除去し、さらに分泌されたAβの凝集・沈着を抑制することにより神経細胞の脱落を防止しようとするものである。
エラン(Elan)社のシェンク(Schenk)らはアルツハイマー病の動物モデルマウスにAβをワクチンとしてアジュバントと共に皮下投与したところ、老人斑の形成が減少したことを最初に報告した(非特許文献1参照)。このデータをもとにエラン・ワイス(ElanWyeth)社によるアルツハイマー病患者への臨床治験(AN−1792)が開始された。しかし臨床試験第II相で6%(298名中18名)の患者に髄膜脳炎の副作用が報告され中断された。
一方、国立長寿医療センター研究所の田平らは、経口ワクチンにより腸管免疫系を利用すれば抗体産生は誘導されるが、細胞性免疫は誘導され難いことに着目し、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに分泌型AβcDNAを組み込み、アルツハイマーマウスに経口投与して効果を調べた結果、Aβに対する抗体が誘導され、血清中のAβに対する抗体は、4週後をピークとして、6ヶ月間持続した(特許文献1参照)。13ヶ月齢のアミロイド前駆体タンパク質(以下、APPと略すことがある)トランスジェニックマウス脳組織を免疫染色で詳細に検索した結果、治療したマウス脳において明らかにアミロイド沈着・老人斑形成がコントロールに比べ減少していた。この研究によってアルツハイマー病が経口投与という患者にとって負担の少ない方法で治療できる可能性が示されたと言える。しかしながら、経口投与とはいえ、アデノ随伴ウイルスはヒトへの感染性が高いウイルスであり、病原性を備えている。しかも、アデノ随伴ウイルスを培養してワクチンとして精製するには多くの費用と時間を要する。つまり、ウイルスベクターを利用したワクチンは、安全性やコストの面で理想的とはいえない。
特開2005−021149号 Schenk D.ら、1999 Jul 8, Nature; 400(6740): p.173-7, "Immunization with amyloid-beta attenuates Alzheimer-disease-like pathology in the PDAPP mouse"
本願発明は、社会的問題となっているアルツハイマー病の予防・治療に供与されうる副作用の少ない安全で且つ簡便な投与形態が可能なアルツハイマー病の予防・治療用ワクチンを提供することを目的とする。
また、本願発明の他の目的は、アルツハイマー病の予防・治療用ワクチンの作製の際に用いられる、微生物表面にワクチン抗原たるAβ分子種を発現させるための発現ベクターの提供であり、且つ当該発現ベクターで形質転換された宿主微生物の提供である。また、Aβ分子種を発現する微生物を個体に投与することによる、抗Aβ抗体を誘導する方法、及び前記抗Aβ抗体を誘導する方法に基づくアルツハイマー病の予防及び/または治療方法の提供である。なお、本願明細書において、Aβ分子種とは、Aβ完全長分子及び当該分子に基づくAβの液性免疫惹起部位を内包する部分ポリペプチド群の総称である。
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本願発明者らは、アルツハイマー病の主たる病因と考えられているAβに対する抗体惹起を目的とし、Aβの液性免疫惹起部位を含む断片をコードするDNAをもとに、これより該ペプチドを微生物の表面に発現することができる発現ベクターを構築し、これを用いて好適な微生物を形質転換させると、所望のペプチドを表層に発現し得ることを見出し、アルツハイマー病の予防・治療用ワクチンを提供し得る本願発明を達成するに至った。とりわけ、宿主微生物として乳酸菌を選択した場合、経口投与可能な好ましいワクチンを提供することができる。
本願発明による最適実施態様である乳酸菌を用いたアルツハイマー病ワクチンを用いれば、従来の乳酸菌の食品と同様の感覚と簡便さでアルツハイマーの予防及び治療薬を摂取することが可能となる。特に本疾患が老人に多い事を考えれば、簡便に摂取できる経口投与と低コストの実現は、これからの高齢化社会における患者のQOLの向上と医療経済の面からも非常に大きなメリットを社会に与える発明と言える。
図1は、本願発明のAβ42の乳酸菌細胞表層提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42の遺伝子地図である。
図2は、本願発明のAβ42提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42で形質転換された乳酸菌のウエスタンブロッティングの結果であり、Aβ42の細胞膜画分での表層発現を示す。M:分子量マーカー、C:Aβ遺伝子を有しない乳酸菌(コントロール)全細胞画分、1:形質転換体全細胞画分、2:形質転換体細胞質画分、3:形質転換体細胞膜画分。
図3は、本願発明のAβ42提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42で形質転換された乳酸菌のAβ42の細胞膜画分での表層での発現を示す図であり、Facs scanに基づいている。
図4は、本願発明のAβN-20提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20の遺伝子地図である。
図5は、本願発明のAβN-20提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20で形質転換された乳酸菌のウエスタンブロッティングの結果であり、AβN-20の細胞膜画分での表層発現を示す。M:分子量マーカー、C:Aβ遺伝子を有しない乳酸菌(コントロール)全細胞画分、1:形質転換体全細胞画分、2:形質転換体細胞質画分、3:形質転換体細胞膜画分。
図6は、本願発明のAβN-20提示用組換え発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20で形質転換された乳酸菌のAβN-20の細胞膜画分での表層での発現を示す図であり、Facs scanに基づいている。
図7は、実施例2で得たpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20(AβN-20発現用ベクター)で形質転換した乳酸菌をマウスC57BL6株に経口投与したときのマウス血清中の抗体価の測定をELISA法により行った結果を示す。パネル(A)およびパネル(B)は、それぞれAβのN末端側から16アミノ酸残基および42アミノ酸残基を固相化した場合の結果を示す。
図8は、実施例1で得たpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42(Aβ42発現用ベクター)で形質転換した乳酸菌をマウスC57BL6株に経口投与したときのマウス血清中の抗体価の測定をELISA法により行った結果を示す。パネル(A)およびパネル(B)は、それぞれAβのN末端側から16アミノ酸残基および42アミノ酸残基を固相化した場合の結果を示す。
本願発明による、とりわけ好適な態様として乳酸菌で例示される微生物の表面にAβ分子種を産生するための発現ベクターは、Aβの液性免疫惹起部位を含む断片をコードするDNAを、機能しうる形態で含んでなり、これより該ペプチドを微生物の表面に発現することができる。ここで、「機能しうる形態で含んでなる」とは、適切な調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーターなど)の制御下に、導入遺伝子(DNA)の発現を可能にする様式で、そのベクター中に該導入遺伝子が挿入されていることを意味する。
Aβの液性免疫惹起部位エピトープは複数存在すると考えられるが、そのエピトープを含む断片を調製するには、例えば、該エピトープがAβの第4〜10アミノ酸の領域(Aβ4−10)に存在すれば、それらを微生物表面に産生させる発現ベクターにはAβ4−10をコードする遺伝子を含むことになる。
このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第12〜30ヌクレオチドが挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることによって発現量を上げることも可能である。
本願発明の好適な実施態様によれば、前記抗原ペプチド断片は、Aβペプチドの第1から42アミノ酸(Aβ1−42)を含んでなるものである。Aβ1−42のアミノ酸配列としては、配列番号5で表されるアミノ酸配列が例示され、従って、前記抗原ペプチド断片は、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むことになる。このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることも出来る。
本願発明の他の好ましい実施態様によれば、前記抗原ペプチド断片は、Aβペプチドの第1〜20アミノ酸(Aβ1−20)を含んでなるものである。Aβ1−20のアミノ酸配列としては、配列番号5で表されるアミノ酸配列中の第1〜20アミノ酸を含むものが挙げられる。このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されうるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることも出来る。
前記Aβ4−10、Aβ1−42及びAβ1−20のアミノ酸配列には、エピトープが存在すると考えられるが、本願発明によるAβ分子種が発現された微生物によって経口投与された場合には、主に抗体産生が誘導される。
本願発明によるベクターは、目的のDNAを効率よく発現させるための調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーターなどを含んでいてもよく、発現ユニットを複数連結してもよい。
本願発明によるベクターは、当該技術分野で周知となっている標準的方法により調製することができる。例えば、特表2005−500054号及びそこに引用される参考文献には、適切な種々のベクター、並びにそれらのベクターの作製方法が記されている。
本願発明者らは、アルツハイマー病の予防・治療を目的とする経口免疫法を更に簡便で安全に実施するために、とりわけ乳酸菌で例示される微生物の表層発現系を応用した。乳酸菌の表層発現系とは、乳酸菌の表層に目的タンパクを発現させるものである。この系を利用すればワクチン抗原となるタンパクを乳酸菌表層に発現させ、その乳酸菌を経口投与することによって、腸管免疫担当細胞へ認識させることが可能となる。乳酸菌そのものが、古くから安全な食品として広く食されており、最近ではプロバイオティクスとして積極的に健康食品や医薬品として利用されつつある。そのように安全で健康にも有用な乳酸菌は遺伝子発現の宿主として利用されている。成らは乳酸菌の表層にワクチン抗原を発現させたものを経口投与することによりワクチンとしての有用性を証明している(特表2005−500054号参照)。今回、本願発明者らはこの方法を応用することにより、安全で経済的な経口ワクチンの開発に先鞭をつけた。
細菌の細胞外膜タンパク質を用いて外来タンパク質を細胞表層へ発現させるためには細胞外膜タンパク質と外来タンパク質を遺伝子のレベルで連結して融合タンパク質が生合成されるようにし、これを安定的に細胞内膜を通過して細胞外膜に付着させ、維持するようにしなければならない。このためには細胞外膜タンパク質を選定して表層発現のモチーフとして使用しなければならない(S. Y. Lee, J. H. Choi, Z. Xu, Trends Biotechnol., 21, 45(2003)参照)。グラム陽性菌である乳酸菌の表層へのタンパク質の提示については、種々の検討が行なわれているが(S. Y. Lee, J. H. Choi, Z. Xu, Trends Biotechnol., 21, 45 (2003);P. Samuelson, E. Gunneriusson, P. A. Nygren, S. Stahl, J. Biotechnol., 96, 129 (2002);K. Leenhouts, G. Buist, J. Kok, Antonie Van Leeuwenhoek, 76, 367 (1999);E. Gunneriusson, P. Samuelson, M. Uhlen, P. A. Nygren, S. Stahl, J. Bacteriol., 178, 1341 (1996);S. Stahl, A. Robert, E. Gunneriusson, H. Wernerus, F. Cano, S. Liljeqvist, M. Hansson, T. N. Nguyen, P. Samuelson, Int. J. Med. Microbiol., 290, 571 (2000);L. Steidler, J. Viaene, W. Fiers, E. Remaut, Appl. Environ. Microbiol., 64, 342 (1998);J. C. Piard, I. Hautefort, V. A. Fischetti, S. D. Ehrlich, M. Fons, A. Gruss, J. Bacteriol., 179, 3068 (1997);K. Savijoki, M. Kahala, A. Palva, Gene, 186, 255 (1997);A. Strauss, F. Gotz, Mol. Microbiol., 21, 491 (1996);及びS. Avall-Jaaskelainen, A. Lindholm, A. Palva, Appl. Environ. Microbiol., 69, 2230 (2003)参照)、現在のところ表層に提示可能なタンパク質のサイズやモチーフの安定性などに問題があることが指摘されている。
一方、成らは、新規なモチーフとして、細菌の細胞表層への目的タンパクの発現に、バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素の遺伝子を含む発現プラスミドを用いて検討した結果、グラム陽性菌である乳酸菌やグラム陰性菌である大腸菌などの表層へ種々のタンパク質を提示できることを示している(特表2005−500054号)。
本願発明において、発明者らはAβ分子種の発現に特表2005−500054号記載のシステムを応用することとした。本願発明において、発明者らが採用した微生物の表層発現系においては、微生物の表面へ外来タンパク質を大量に発現させる新しい表面発現キャリアとしてバチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質を選択して、これを用いて外来タンパク質またはペプチド(本願発明においてはAβ分子種)を微生物表面へ発現させる表面発現用のベクターを作製し、当該ベクターにより形質転換された多様な形質転換体から外来タンパク質が効率的に形質転換体の表面へ発現されることを特徴とする。
前記の目的を達成するために、本願発明は、ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素(pgs)複合体を構成している遺伝子である、pgsA、pgsB及びpgsC中のどれか一つまたは二つ以上を含む表面発現ベクターを提供する。詳細には、本願発明は、微生物表面においてAβ分子種を発現するための表面発現ベクターを提供し、例えば、一つの実施態様であるpgsA遺伝子は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相同性あるヌクレオチド配列を含んでいる。加えて、表面発現ベクターはまた、微生物表面にAβ分子種タンパク質を発現するために提供され、それはAβ分子種をコードする遺伝子のみならず、3’末端に転写終止コドンを含んでいる。さらに、最適態様として例示される乳酸菌をはじめとする細胞形質転換体は、上記発現ベクターを用い形質転換されるように提供される。
本願発明によるAβ分子種を表層に発現させた、とりわけ乳酸菌を最適実施態様とする微生物を本態とするアルツハイマー病ワクチンは、哺乳動物のアルツハイマー病の治療及び/または予防に用いることができる。従って、本願発明によれば、治療・予防上有効量の本願発明によるアルツハイマー病ワクチンを被験者に投与することを含んでなる、アルツハイマー病の治療・予防方法、並びにアルツハイマー病治療・予防剤の製造における、本願発明によるアルツハイマー病ワクチンの使用が提供される。投与対象は、哺乳動物、例えば、イヌ、霊長類などであり、好ましくはヒトである。
本願発明によってもたらされるアルツハイマー病ワクチンの投与方法は、特段の制約はなく一般的な方法が適用され得るが、本願発明のワクチンの宿主たる乳酸菌が経口投与できるという利点を有することから、経口投与が被験者が自ら投与できるという点で特に好適な態様である。これ以外にも、例えば、腹腔内注入、気管内注入、気管支内注入および直接的な気管支内滴注、皮下注入、経皮輸送、動脈内注入、静脈内注入、経鼻投与等が例示される。
投与されるアルツハイマー病ワクチンの量は治療上有効量であればよく、このような量は当該技術分野における当業者であれば容易に決定することができる。また、投与量は被験者の病態の重篤度、性別、年齢、体重等によって調整されることが好ましいが、このような投与量の調整は、医師または獣医師によって適宜実施され得る。
本願発明によるアルツハイマー病ワクチンは、一旦被験者に投与されると、比較的長期間に渡ってアルツハイマー病の治療作用が持続することが期待される。特に、経口投与した場合には、腸管上皮細胞において抗原が長期間提示され、これに対する抗体産生が誘導されることが確認されている。この点に鑑み、当業者であれば適切な投薬計画を作成することができる。
本願発明によるアルツハイマー病ワクチンは、最適実施態様として乳酸菌を含む医薬組成物として被験者に投与することができる。従って、本願発明によれば、本願発明による乳酸菌を含んでなるアルツハイマー病を治療・予防するための医薬組成物が提供される。本願発明の好ましい実施形態によれば、この医薬組成物は経口投与のためのものとされる。
本願発明による医薬組成物は、その投与経路および剤型に応じて、当技術分野において公知の方法により調製することができる。例えば、経口投与のための医薬組成物としては、カプセル剤、溶液剤等の剤型が使用可能である。従って、本願発明による医薬組成物は、それぞれの剤型に応じて、医薬上許容される担体、希釈剤、保存剤等を含んでもよい。
以下に、実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明するが、本願発明はこの例示に限定されるものではない。
(Aβ1−42からなる完全長のAβ(Aβ42と略す)を細胞表層に提示する乳酸菌の作製)
(1)乳酸菌細胞表層へのAβ42提示用ベクターの構築
先ず、ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素の一つであるpgsAの遺伝子(配列番号1)を含むプラスミドpHCEILB-pgsBCA(BioLeaders Corporationより入手)を鋳型とし、配列番号2および配列番号3記載の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドを各プライマーとして用いたPCR反応(MJ Research PTC-200, Peltier Thermal Cycler、以下のPCR反応は同機を利用)、94℃ 5分/(94℃・1分/55℃・1分/72℃・1分20秒:30cycle)/72℃・10分/15℃保持を行ない、反応終了後はNucleoSpin Extract kit(MACHEREY-NAGEL社)を用いpgsA遺伝子を精製した。
次に、Homo sapiens Amyloid beta (A4) precursor protein (APP:Accession No. 41406056)のAβをコードする塩基配列(配列番号4)を参考に、乳酸菌での発現効率を高めるような使用頻度の高いコドンへの最適化を行うための配列番号6及び配列番号7記載の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR反応、94℃・5分/(94℃・1分/50℃・1分/72℃・10秒:15cycle)/15℃保持にて行い、新たなAβ42の遺伝子を合成した(配列番号8)。反応終了後、NucleoSpin Extract kit(MACHEREY-NAGEL社)を用い精製した。さらに、合成したAβ42遺伝子を鋳型として用い、配列番号9及び配列番号10記載の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR反応、94℃ 5分/(94℃・1分/55℃・1分/72℃・1分:30cycle)/72℃・10分/15℃保持を行って制限酵素配列を付加したAβ42の遺伝子を増幅した(配列番号11)。先のPCRと同様に反応終了後はNucleoSpin Extract kit(MACHEREY-NAGEL社)を用い目的とするAβ42遺伝子を精製した。この増幅したAβ42の遺伝子は目的とする配列番号11に示す145bpの増幅された遺伝子となっている。合成したAβ42遺伝子の両端は、上記配列番号9及び配列番号10のプライマーにて制限酵素BamHIとXbaIの認識部位が存在するように構成されている。上記増幅されたAβ42の遺伝子を制限酵素BamHIとXbaIで切断し、乳酸菌表層発現用のベクターpHCEIILB-pgsA-Lの構成遺伝子で、細胞表層へのアンカータンパク質となるpgsAに続くリンカー配列の3'-末端部位に翻訳コドンを合わせて挿入し、TAKARA Ligation Kit Version 2.1(Takara Bio社)によって連結することにより、pgsA-L-Aβ42をこの順で有する、目的のAβ42提示用ベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42を得た(図1)。
このベクターを制限酵素BamHIとXbaIで消化し、Aβ42の遺伝子導入を確認し、ABI PRISM(登録商標)3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用い、その塩基配列を確認した。
(2)細胞表層にAβ42を提示する乳酸菌の作製
上記(1)で得たAβ42表層発現用のベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42を、大腸菌(E. coli DH5α)コンピテントセルにヒートショック法によって形質転換し、500μg/mlのエリスロマイシンを含むLuria-Bertain(以下、LB)寒天培地(トリプトン1w/v%、酵母エキス0.5w/v%、塩化ナトリウム1w/v%、および寒天末1.5w/v%)で形質転換体を選択した。次いで、得られた形質転換体をLB液体培地で培養し、菌体を回収した後、Wizeard(登録商標)Plus SV Miniprepsp(Promega社)にてpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42を精製した。次いで、得られた表層発現ベクターpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42をLactobacillus casei BLS525株にエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、20μg/mlのエリスロマイシンを含むMRS寒天培地(Oxoid社)上に塗布し、37℃で48時間培養後、形質転換体を得た。得られた形質転換体をMRS液体培地で37℃で24時間培養し、7000r.p.m.、10分間の遠心分離にて菌体を回収した。回収した菌体はPBS緩衝液(pH7.4)にて洗浄後、同緩衝液に再懸濁した後、氷上に保持し、超音波破砕機(出力4、2分間×2回/トミー精工社)にて破砕した。その破砕液を3,000r.p.m.、5分間×3回にて遠心分離して不純物を除去し、16,500r.p.m.、20分間の遠心分離にて分画した。全細胞、細胞質および細胞膜画分をそれぞれサンプルバッファーに懸濁後、100℃で10分間熱変性させ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動した。電気泳動後、PVDFメンブラン(Millipore社)に転写した。PVDFメンブランをブロッキング緩衝溶液(PBS、5%スキムミルク、pH8.0)で1時間振とうし、ブロッキングさせた後、pgsAのポリクローナル抗体(BioLeaders Corporationより入手)を一次抗体としてブロッキング緩衝液で1000倍希釈して37℃、12時間反応させた。反応終了後、メンブランをTBST緩衝液(1L中にNaCl 8.8g/1M Tris-HCl pH8.0/0.5ml Tween20)にて洗浄し、ビオチン標識された抗ウサギIgG抗体(Vector社)を二次抗体とし、ブロッキング緩衝液で2000倍希釈して3時間反応させた。反応終了後、メンブランを洗浄し、vectastain ABC kit standard(Vector社)にてアビジン化し、さらにperoxidase substrate kits DAB/Ni substrate(Vector社)にて発色させ、細胞膜画分にpgsAと融合したAβ42の発現を確認した(図2)。同様にAβ42に対するモノクローナル抗体(Chemicon international社)とビオチン標識された抗マウスIgG抗体(Vector社)を二次抗体として用いたウエスタンブロッティングを行って細胞膜画分にAβ42の乳酸菌細胞表層への発現を確認した。
次いで、Fluorescence-activating cell sorting (Facs) flow cytometryによるAβの表層発現を観察した。発現菌体をPBS緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した後、ブロッキング用PBS緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。一次抗体としてAβに対するモノクローナル抗体を用い、4℃で12時間反応させ、反応終了後、PBS緩衝液にて洗浄し、ビオチン標識された二次抗体を4℃で3時間反応させた。反応終了後、ビオチン特異的なストレプトアビジン-R-ピコトリエンにて発色させ、菌体をPBS緩衝液で2回洗浄後、Facs scanにて測定した。その結果、コントロールと比較して、Aβ42が細胞表層に発現していることを確認した(図3)。
(Aβ1−20からなるAβ分子種(AβN-20と略す)を表層提示する乳酸菌の作製)
(1)乳酸菌細胞表層へのAβN-20提示用ベクターの構築
前述のAβ42の表層発現用ベクターと同様の乳酸菌表層発現ベクターpHCEIILB-pgsA-LにAβのN末端から20アミノ酸までのエピトープを示す部位を導入するために、pHCEIILB-pgA-L-Aβ42に導入されているpgsA、リンカー配列及びAβ42の遺伝子までを鋳型として用いて、配列番号12及び配列番号13記載の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR反応、94℃ 5分/(94℃・1分/55℃・1分/72℃・1分:30cycle)/72℃・10分/15℃保持を行って、pgsA遺伝子の364bp目の塩基配列から、リンカー配列及びAβ42のN末端から20アミノ酸までの遺伝子を増幅した。前述の実施例1のPCRと同様に、反応終了後はNucleoSpin Extract kit(MACHEREY-NAGEL社)を用い目的とするAβN-20遺伝子を精製した。このとき増幅された遺伝子部位は888bpの大きさであった。上記配列番号12及び配列番号13のプライマーは制限酵素PstIとXbaIの認識部位が存在するように構成されている。
上記増幅されたpgsAの遺伝子363bp目から、リンカー配列及びAβN-20遺伝子を制限酵素PstI、XbaIで切断し、乳酸菌表層発現用のベクターpHCEIILB-pgsA-Lの構成遺伝子で、細胞表層へのアンカータンパク質となるpgsAに続くリンカー配列の3'-末端部位に翻訳コドンを合わせて挿入し、TAKARA Ligation Kit Version 2.1(Takara社)によって連結することにより、pgsA-L-AβN-20をこの順で有する、目的のAβN-20提示用ベクターpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20を得た(図4)。このベクターを制限酵素PstIとXbaIで消化し、AβN-20の遺伝子導入を確認し、ABI PRISM(登録商標)3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用い、その塩基配列を確認した。
(2)細胞表層にAβN-20を提示する乳酸菌の作製
(1)で得た表層発現用のベクターpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20を用いて実施例1と同様な方法でAβN-20の発現を確認した。
図5に示すように、細胞膜画分にpgsA抗体においてアンカータンパク質であるpgsAとの融合タンパク質としてAβN-20の発現が確認できた。同様にAβのモノクローナル抗体においても細胞膜画分にpgsAとの融合タンパク質としてAβN-20の発現が確認できた。さらにFacs scanにおいてもAβN-20の表層発現が確認された(図6)。
(Aβ発現乳酸菌の経口投与による免疫実験)
実施例1および2で構築したAβを表層に発現する乳酸菌の経口投与による免疫原性を調べた。
(1)乳酸菌投与方法
接種動物として1群6匹のマウスC57BL6株を用い、実施例1で得たpHCEIILB-pgsA-L-Aβ42(Aβ42発現用ベクター)で形質転換した乳酸菌または実施例2で得たpHCEIILB-pgsA-L-AβN-20(AβN-20発現用ベクター)で形質転換した同乳酸菌を経口投与した。投与量は、Aβ42発現用ベクターについては1×109cfu/ml(3-1)、1×1010cfu/ml(3-2)または5×1010cfu/ml(3-3)、AβN-20発現用ベクターについては1×109cfu/ml(2-1)または1×1010cfu/ml(2-2)であった。対照として、pHCEIILB-pgsA-L(Aβを発現しないコントロールベクター)で形質転換した同乳酸菌を1×1010cfu/ml(1-1)の投与量にて同マウスに経口投与した。
具体的には以下の手順を行った。上記乳酸菌の各種形質転換体を37℃で前培養した後、1×109〜5×1010cfu/mlまで培養した。遠心分離にて菌体を回収し、PBSで洗浄した後、死菌化した。ついで、死菌化した菌体を凍結乾燥工程を経て粉末化した。粉末化した菌体を1×109〜5×1010cfu/mlの濃度になるようにPBSに再懸濁した。この懸濁液の100μlを上記に示した各投与量にてマウスに経口投与した。投与期間としては、1週間の内6日間連続投与で行い、4週間継続した。血液中のAβに対する抗体生産を確認するために、採血を、実験開始前、投与開始から3週間後、5週間後、6週間後、7週間後の計5回の採血スケジュールで行い、血清サンプルを得た。得られた血清サンプルは測定時まで−20℃で保存した。
(2)血中抗体価の測定
血清中の抗体価の測定は以下のELISA法で実施した。Aβの42アミノ酸残基およびN末端側から16アミノ酸残基を合成した。各合成したペプチドを96穴プレートに500ng/100μl/well(重炭酸緩衝液:pH9.6)の濃度で添加し、4℃で12〜14時間固相化した。各合成ペプチドで固相化したプレートを300μlのPBSTで5回洗浄した。10%スキムミルクで2時間室温状態でブロッキングした。再度プレートを300μlのPBSTで5回洗浄した。2%スキムミルクで希釈(1:50)した陽性スタンダード、陰性コントロールおよびマウスの血清をそれぞれ100μl/wellで添加し、37℃で1時間反応させた。再度プレートを300μlのPBSTで5回洗浄した。2%スキムミルクで希釈した(1:1000)ペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgGを100μl/wellでプレートに添加し、37℃で1時間反応させた。再度プレートを300μlのPBSTで5回洗浄した。基質であるOPDを100μl/wellで添加し、室温暗所で15〜20分間反応させた。2M H2SO4を50μl/wellで添加し、反応を停止させ、450nmの波長での吸収を測定した。
その結果を図7および図8に示す。図7および図8から明らかなように、AβN-20およびAβ42の各ペプチドを表層発現させた乳酸菌をマウスに経口投与し、その血清中の抗体上昇をELISA法にて測定した結果、AβN-20およびAβ42の各ペプチドを発現させた乳酸菌投与群のマウスでコントロール群のマウスに比べ血清中の有意な抗体上昇が認められた。この結果から、本発明者らが作製した菌体表面にAβ分子種を発現する乳酸菌を経口投与することによりAβに対する抗体を誘導できることが明らかとなった。
本願発明は、アルツハイマー病の予防・治療に供与されうる副作用の少ない安全で且つ簡便な投与形態が可能なアルツハイマー病の予防・治療用ワクチンを提供するものである。本願発明による最適実施態様である乳酸菌を用いたアルツハイマー病ワクチンを用いれば、従来の乳酸菌の食品と同様の感覚と簡便さでアルツハイマーの予防及び治療薬を摂取することが可能となる。特に本疾患が老人に多い事を考えれば、簡便に摂取できる経口投与と低コストの実現は、これからの高齢化社会における患者のQOLの向上と医療経済の面からも非常に大きなメリットを社会に与える発明と言える。
【0005】
子が挿入されていることを意味する。
[0021]
Aβの液性免疫惹起部位エピトープは複数存在すると考えられるが、そのエピトープを含む断片を調製するには、例えば、該エピトープがAβの第4〜10アミノ酸の領域(Aβ4−10)に存在すれば、それらを微生物表面に産生させる発現ベクターにはAβ4−10をコードする遺伝子を含むことになる。
[0022]
このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第12〜30ヌクレオチドが挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることによって発現量を上げることも可能である。
[0023]
本願発明の好適な実施態様によれば、前記抗原ペプチド断片は、Aβペプチドの第1から42アミノ酸(Aβ1−42)を含んでなるものである。Aβ1−42のアミノ酸配列としては、配列番号5で表されるアミノ酸配列が例示され、従って、前記抗原ペプチド断片は、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むことになる。このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることも出来る。
[0024]
本願発明の他の好ましい実施態様によれば、前記抗原ペプチド断片は、Aβペプチドの第1〜20アミノ酸(Aβ1−20)を含んでなるものである。Aβ1−20のアミノ酸配列としては、配列番号5で表されるアミノ酸配列中の第1〜20アミノ酸を含むものが挙げられる。このアミノ酸配列をコードするDNAのヌクレオチド配列は特に制限されうるものではないが、例えば、配列番号4で表されるヌクレオチド配列中の第1〜60ヌクレオチドを含むものが挙げられる。また、アミノ酸配列は同じでも塩基配列は異なるコドンを使用することによって、使用する乳酸菌などの微生物の好むコドンを用いることも出来る。
[0025]
前記Aβ4−10、Aβ1−42及びAβ1−20のアミノ酸配列には、エピトープが存在すると考えられるが、本願発明によるAβ分子種が発現された微生物によって経口投与された場合には、主に抗体産生が誘導される。

Claims (14)

  1. 微生物の表面にアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクター。
  2. ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素複合体をコードするpgsA、pgsB及びpgsCから選択される一つまたは二つ以上の遺伝子及びアミロイドβ分子種をコードする遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1記載のアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクター。
  3. 前記pgsA、pgsB及びpgsCから選択される一つまたは二つ以上の遺伝子が、ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素複合体を産生するバチルス属菌株から由来する、請求項2記載のアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクター。
  4. アミロイドβ分子種が、アミロイドβのN末端配列より42番目までのアミノ酸配列よりなるポリペプチド及びアミロイドβのN末端配列より20番目までのアミノ酸配列よりなるポリペプチドより選択される、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクター。
  5. 微生物が乳酸菌である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクター。
  6. 微生物の表面にアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクターで形質転換された乳酸菌。
  7. 微生物の表面にアミロイドβ分子種を産生するための発現ベクターが請求項1ないし請求項5に記載の発現ベクターである、請求項6記載の形質転換された乳酸菌。
  8. 前記乳酸菌が、Lactobacillus属であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の形質転換された乳酸菌。
  9. アミロイドβ分子種を発現する微生物を個体に投与することによる、抗アミロイドβ抗体を誘導する方法。
  10. アミロイドβ分子種を発現する微生物を個体に経口的に投与することを特徴とする、請求項9記載の抗アミロイドβ抗体を誘導する方法。
  11. アミロイドβ分子種を発現する微生物が、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の乳酸菌である、請求項9または請求項10のいずれかに記載の方法。
  12. アミロイドβ分子種を発現する微生物を個体に投与することによって、アミロイドβ分子種に対する免疫を個体に誘導することを特徴とするアルツハイマー病の予防及び/または治療方法。
  13. アミロイドβ分子種を発現する微生物が、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の乳酸菌である、請求項12記載のアルツハイマー病の予防及び/または治療方法 。
  14. 請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の乳酸菌を主たる構成成分とするアルツハイマー病の予防・治療用ワクチン。
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